説明

基材の接合方法及び基材の接合装置

【課題】設備を簡素化して設備コストを抑えるとともに、板状の薄物を基材として互いに接合できるようにする。
【解決手段】互いに接合する電解質膜1とガスケット3とを吸着板11,41にそれぞれ真空吸引により吸着保持させるとともに、固定基台9と可動基台39との間のシール部材13に囲まれた密閉空間15内を、吸着板11,41に対する真空吸引よりも低い真空度となるよう真空吸引して減圧する。このとき電解質膜1とガスケット3とは互いに離間した状態であり、この状態から油圧プレス機械49により、電解質膜保持具5をガスケット保持具7に向けて加圧して荷重を付与し、シール部材13を圧縮させて電解質膜1とガスケット3とを互いに加圧接触させて接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の基材を互いに接合する基材の接合方法及び基材の接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基材相互を接合する際に、基材相互間の接合面における気泡を排除するために、基材を保持する保持部全体を収容部によって基材とともに密閉空間内に収容し、該密閉空間を真空吸引するものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
一方、下記特許文献2には、基材を上下から加圧する一対のプレス加熱板を設け、この一対のプレス加熱板相互間における基材の外周縁の外側位置にシール部材を設けることで、シール部材の内側の基材の設置領域のみ真空吸引するものが開示されている。
【特許文献1】特開2006−48855号公報
【特許文献2】特開2000−325773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

ところで、上記した特許文献1に記載のものは、基材を保持する保持部全体を基材とともに密閉空間内に収容しているので、設備全体が大掛かりとなって設備コストが高くなる。
【0005】
一方、特許文献2に記載のものは、シール部材の内側の基材の設置領域のみ真空吸引するので、特許文献1に記載のものに比較して設備が簡素化でき設備コストを抑えることができる。
【0006】
ところが、特許文献2に記載のものは、一方のプレス加熱板に設けた金属フランジの内側に、他方のプレス加熱板に設けた金属フランジの貫入部を貫入してその内側に密閉空間を形成する構造であることから、基材として板状の薄物を互いに接合することが困難である。すなわち、一対の薄物基材を、上下の各プレス加熱板を保持部としてそれぞれ保持し接合する際には、各保持部(プレス加熱板)に金属フランジが対向配置されているので、該金属フランジが邪魔となって、一対の薄物基材相互を接触させることが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、設備を簡素化して設備コストを抑えるとともに、板状の薄物を基材として互いに接合できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対の基材をそれぞれ対応する基材保持部に背後から真空吸引により吸着保持させた後、これら一対の基材が互いに離間した状態となるよう基材保持部相互を互いに接近させ、かつ、一対の基材の外側に位置するシール部材によってその内側の密閉空間を真空吸引して減圧させ、シール材を圧縮させつつ各基材保持部を互いに接近移動させ、一対の基材を互い加圧接触させて接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対の基材の外側に位置するシール部材によってその内側の基材が位置する側に密閉空間を形成しているので、基材を保持する保持部全体を基材とともに密閉空間内に収容する場合に比較して、設備を簡素化して設備コストを抑えることができる。また、一対の基材を、基材保持部により背後から真空吸引により吸着保持し、かつ、一対の基材の外側に位置するシール部材によってその内側の基材が位置する側に密閉空間を形成しているので、一対の基材相互を接合する際には、シール部材を圧縮させるようにして基材保持部相互を接近させればよく、したがって板状の薄物を基材として互いに接合することが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる基材の接合装置を示す断面図で、ここでの一対の基材は、燃料電池で使用される固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜と呼ぶ)1とガスケット3とで構成している。電解質膜1は、厚さ125μmの例えば矩形状にカットしたもので、ガスケット3は、電解質膜1と外形がほぼ同じ矩形状でかつ電解質膜1の周縁に沿って接合するように中央部分を削除した枠形状とし、厚さ150μmとしている。
【0012】
このガスケット3の枠形状の内側に対応する電解質膜1の領域が、燃料電池として組み付けたときの電極(発電領域)を構成することになる。
【0013】
電解質膜1は、図1中で下部に位置する基材保持部としての電解質膜保持具5に保持され、ガスケット3は、図1中で上部に位置する基材保持部としてのガスケット保持具7に保持される。これら電解質膜保持具5及びガスケット保持具7は、回動連結具8によって互いに回動可能に連結され、ここではガスケット保持具7が、図1に示す互いに対向する状態と、後述する図2に示す離反した状態との間を変位可能なように回動可能となっている。
【0014】
電解質膜保持具5は、固定基台9の表面の中央に凹部9aを形成し、この凹部9aに多孔質体としての吸着板11を収容固定する。このとき、固定基台9の表面と吸着板11の表面とはほぼ同一面を形成している。吸着板11としては、金属多孔質体であれば、例えば、金属メッシュ、金属繊維を編み合わせたもの、金属粉末を接着剤によって固形化したものでよく、セラミックス多孔質体であれば、多孔質カーボン,酸化物系(アルミナ)多孔質板でよい。
【0015】
電解質膜1及びガスケット3の外周縁のさらに外側における固定基台9上には、これら電解質膜1及びガスケット3の周囲を囲むようにシール部材13を配置して、このシール部材13の内側の電解質膜1及びガスケット3を設けた領域に密閉空間15を形成する。
【0016】
そして、この密閉空間15内に対し、空気を吸引して圧力を低下させる密閉空間吸引部としての真空吸引ポンプ17を設けている。すなわち、密閉空間15に対応する位置の固定基台9には、一端が密閉空間15に開口する排気通路19を複数形成し、これら複数の排気通路19のそれぞれの他端を、固定基台9内に設けてある環状の連通路21によって互いに連通する。
【0017】
この環状の連通路21の一部位に対応する位置の固定基台9には、下部に突出する突出部23を形成し、この突出部23に、連通路21に一端が連通する排気通路25を形成し、排気通路25の他端に、前記した真空吸引ポンプ17を配管27を介して接続する。また、突出部23には、排気通路25を開閉する開閉弁29を設けている。
【0018】
さらに、固定基台9内には、吸着板11の多孔質部に一端が連通する排気通路31を形成し、排気通路31の他端は配管33の一端に接続してその途中部位には、開閉弁35を取り付けるとともに、配管33の他端には基材吸引部としての真空吸引ポンプ37を接続する。
【0019】
一方、ガスケット保持具7は、可動基台39の表面に、前記ガスケット3の枠形状に対応する凹部39aを形成し、この凹部39aに凹部39aとほぼ同形状の多孔質体としての吸着板41を収容固定する。このとき、可動基台39の表面と吸着板41の表面とはほぼ同一面を形成している。吸着板41は、前記した吸着板11と同様のものを使用する。
【0020】
また、可動基台39内には、吸着板41の多孔質部に一端が連通する排気通路43を形成し、排気通路43の他端は配管45の一端に接続してその他端に開閉弁47を取り付ける。この配管45の他端は、図示しない接続用配管を介して前記した真空吸引ポンプ37に着脱可能に接続する。
【0021】
次に、上記した接合装置による接合方法を説明する。図2(a)に示すように、ガスケット保持具7を電解質膜保持具5に対して離反させてこれら各保持具5,7をその表面が互いにほぼ同一平面上となるようにする。上記図2(a)の状態で、図2(b)に示すように、電解質膜保持具5側の吸着板11上に、電解質膜1を載置してセットする。この際、電解質膜1は、その外周縁全周が吸着板11の外周縁全周よりも外側に位置し、吸着板11の全域を覆う状態となる。
【0022】
一方、ガスケット保持具7の吸着板41上には、ガスケット3を載置してセットする。この際、枠形状のガスケット3は、その外周縁全周が吸着板41の外周縁全周よりも外側に位置するとともに、内周縁全周が吸着板41の内周縁全周よりも内側に位置し、これによりガスケット3は吸着板41の全域を覆うことになる。
【0023】
そして、この状態で、開閉弁35,47を開放させ、真空吸引ポンプ37を作動させることで、真空吸引によって電解質膜1を吸着板11に吸着保持させるとともに、ガスケット3を吸着板41に吸着保持される。なお、このとき真空吸引ポンプ37は、図1に示すように配管33に接続されるとともに、図示しない接続用配管によって配管45にも接続されている。
【0024】
また、このときの真空吸引ポンプ37による真空吸引系統の真空度は5hPa以下とし、吸着保持後は開閉弁35,47を閉じることで、5hPa以下の真空度を確保しておく。
【0025】
電解質膜1及びガスケット3を吸着板11及び41にそれぞれ吸着保持させたら、図3(a)に示すように、ガスケット保持具7を、回動連結具8を支点として回動させて電解質膜保持具5に接近させ、これら各保持具5,7相互を対向させた状態とする。このとき、図1に示してある真空吸引ポンプ37と配管45とを接続する図示しない接続用配管は、例えば可撓性を有する部材で構成して上記したガスケット保持具7の回動変位に追従可能とする。
【0026】
上記図3(a)の状態では、シール部材13は対向する可動基台39に接触することで前記した密閉空間15を形成するが、電解質膜1とガスケット3とは互いに離間した状態となっている。
【0027】
そして、図3(a)の状態で開閉弁29を開放させてから、図3(b)に示すように、真空吸引ポンプ17を作動させることで、密閉空間15内を真空吸引して10hPa以下まで減圧する。このときの真空吸引動作に伴ってシール材13は徐々に圧縮され、規定の圧力まで減圧した時点での吸着板11,41相互間の距離は、300μm以上とする。したがって、このとき電解質膜1とガスケット3とは、依然として互いに離間状態であり、その後は、開閉弁29を閉じておく。
【0028】
上記した密閉空間15内に対する真空吸引作業においては、図示しない電磁弁などの駆動機構によって、もしくは手動によって、開閉弁29の開度を制御することで、規定の圧力(10hPa以下)まで減圧する。
【0029】
次に、前記図1に示すように、加圧部としての油圧プレス機械49により、ガスケット保持具7を電解質膜保持具5に向けて加圧して荷重を付与し、シール部材13をさらに圧縮させて電解質膜1とガスケット3とを互いに加圧接触させて接合する。
【0030】
なお、加圧部としては油圧プレス機械49に限ることはなく、空圧や電動モータを利用するなど他の機構を用いてもよい。
【0031】
そして、上記した加圧状態を所定時間継続させた後、油圧プレス機械49による荷重付与を解除し、さらに各真空吸引ポンプ17,37の動作を停止させるか、あるいは真空ポンプ17,37の接続を解除するなどすることで、これらの真空吸引系統を大気圧に戻し、さらに可動基台39を前記図2に示す状態となるように、固定基台9に対し回動連結具8を支点として回動させて離間させる。その後、電解質膜1とガスケット3との接合体を固定基台9上から取り出す。
【0032】
このようにして製造した電解質膜1とガスケット3とからなる接合体においては、真空吸引する際に、前記図3(b)に示すように、電解質膜1とガスケット3とが互いに離間した状態を維持することで、接合面での気泡発生を抑えることができ、これらを燃料電池に組み込んだ際の製品としての信頼性を高めることができる。
【0033】
そして、このようにして製造した接合体は、一対の基材である電解質膜1及びガスケット3の外側に位置するシール部材13によってその内側の電解質膜1及びガスケット3が位置する側に密閉空間15を形成しているので、電解質膜1及びガスケット3を保持する保持部全体を電解質膜1及びガスケット3とともに密閉空間内に収容する場合に比較して、設備を簡素化して設備コストを抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態では、電解質膜1及びガスケット3を、吸着板11及び41を介して背後から真空吸引により吸着保持し、かつ、電解質膜1及びガスケット3の外側に位置するシール部材13によってその内側の電解質膜1及びガスケット3が位置する側に密閉空間15を形成している。このため、電解質膜1及びガスケット3相互を接合する際には、シール部材13を圧縮させるように固定基台9と可動基台39とを互いに接近させればよく、したがって基材として板状の薄物である電解質膜1とガスケット3とを互いに接合することが容易にできる。
【0035】
また、本実施形態では、電解質膜保持具5及びガスケット保持具7により電解質膜1及びガスケット3をそれぞれ保持させるための真空吸引による真空度を、密閉空間15の真空度よりも高く設定している。これにより、電解質膜1及びガスケット3を電解質膜保持具5及びガスケット保持具7に、より確実に保持させることができ、もって電解質膜1とガスケット3との互いの離間状態をより確実に維持できて気泡発生をより確実に抑えることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、電解質膜保持具5及びガスケット保持具7の電解質膜1及びガスケット3を保持させるための真空吸引系統と、密閉空間15を真空吸引するための真空吸引系統とを互いに別系統としているが、この際、密閉空間15側の真空吸引系統に調整機構を設けて真空吸引の際の真空度を調整してもよい。
【0037】
電解質膜1は、水分を吸湿しているので、この吸湿状態を確保するために、真空中に晒される時間を可能な限り短くかつより低真空の状態で接合することや、品質安定化のために真空度がより安定する状況下で接合することが望まれる。これらの条件を満たすために、以下のような調整機構によって真空度を調整する。
【0038】
例えば図4(a)に示すように、固定基台9に、一端が密閉空間15に連通するリーク弁通路51を設け、このリーク弁通路51の他端を外部に設けたリーク弁53に接続する。密閉空間15に対し真空吸引している際に、リーク弁53を適宜開放することで、規定の真空度までの到達速度を遅らせる。
【0039】
また、図4(b)に示すように、固定基台9の突出部23に、一端が排気通路25に連通するレデューサ通路55を設け、このレデューサ通路55の他端を外部に設けたレデューサ57に接続する。レデューサ57は、例えば排気通路25を絞るなどして排気流量を少なくするもので、密閉空間15に対し真空吸引している際に、レデューサ57を適宜調整することで、規定の真空度までの到達速度を遅らせる。
【0040】
図5は、真空吸引する際の真空度と時間との相関図である。例えば曲線CやBの場合は、曲線Aに比較して真空度が急激に変化しかつ高真空となっているが、このような急激な真空度の変化や高真空状態は、電解質膜1が破損するなどの悪影響を及ぼす。このため、曲線Aのように規定の真空度までの到達速度を緩やかして遅くしかつ、到達真空度をより低くすることで、電解質膜1を保護することができる。
【0041】
また、本実施形態では、電解質膜保持具5及びガスケット保持具7は、電解質膜1及びガスケット3が接触する吸着板11及び41を固定基台9及び可動基台39の表面にそれぞれ備え、これら各吸着板11及び41に、固定基台9及び可動基台39に設けた排気通路31及び43の一端を連通させ、排気通路31及び43の他端を外部に設けた真空吸引ポンプ37に連通させている。
【0042】
これにより、真空吸引ポンプ37を作動させることにより、吸着板11及び41を介して電解質膜1及びガスケット3を電解質膜保持具5及びガスケット保持具7に、より確実に保持させることができ、気泡発生を抑制する上で有効である。
【0043】
図6(a)は、本発明の第2の実施形態に係わる基材の接合装置を示す断面図である。この実施形態は、固定基台9を台座59上に設置し、可動基台39を固定基台9よりも外形寸法を大きくして固定基台9の周縁に対して外側に突出した突出部39aと台座59との間に、規制ピン61を介在させている。
【0044】
規制ピン61は、上端を可動基台39の下面に接触させる一方、下端を台座59の上面に設けたピン挿入穴59a内に移動可能に挿入し、ピン挿入穴59aの下部の台座59内に設けた油圧機構63によって支持させてある。したがって、可動基台39は固定基台9に対し規制ピン61を介して接近離反移動可能である。上記した規制ピン61と油圧機構63とにより規制手段を構成している。
【0045】
なお、図6では前記図1に示してある排気通路31,43や真空吸引ポンプ17,37などの真空吸引系統は省略してあり、これらの構成については、図1に示した第1の実施形態と同様であり、また図1のものと同一構成要素には同一符号を付してある。
【0046】
油圧機構63は、シール部材13が可動基台39にほぼ接触し、かつ、電解質膜1とガスケット3とが互いに離間した状態となるように、油圧力を調整しておく。すなわち、油圧機構63による油圧力が、可動基台39や規制ピン61の自重よりも大きくなるよう調整する。
【0047】
なお、本実施形態での電解質膜1及びガスケット3のセット作業としては、可動基台39を上記図6(a)の位置から上昇させて固定基台9との間隔を広くした状態で行う。この際、ガスケット3については、外周縁を可動基台39の下面に対し、容易に離脱可能なように例えば接着剤などにより仮止めしておく。
【0048】
そして、各開閉弁35,47を開放させて真空吸引ポンプ37を作動させることで、前記第1の実施形態と同様に、電解質膜1及びガスケット3を吸着板11及び41にそれぞれ吸着保持させる。その後、真空吸引ポンプ17を作動させることで、可動基台39が下降してシール材13は徐々に圧縮されて図6(a)の状態となる。この状態では、電解質膜1とガスケット3とは互いに離間した状態を維持している。
【0049】
その後、図6(b)に示すように、油圧プレス機械49により、電解質膜保持具5をガスケット保持具7に向けて加圧して荷重を付与し、シール部材13をさらに圧縮させて電解質膜1とガスケット3とを互いに加圧接触させて接合する。
【0050】
その後、上記した加圧状態を所定時間継続させた後、荷重付与を解除し、さらに各真空吸引ポンプ17,37の動作を停止させるなどすることで、これらの真空吸引系統を大気圧に戻してから、油圧プレス機械49を上昇させるとともに、可動基台39を固定基台9から離反する方向に油圧機構63によって上昇させる。そして、回転電解質膜1とガスケット3との接合体を固定基台9上から取り出す。
【0051】
なお、油圧プレス機械49による可動基台39の移動距離は、最大で1mm程度とする。
【0052】
このように、第2の実施形態では、規制手段である規制ピン61及び油圧機構63によって、図6(a)の状態で固定基台9と可動基台39との間隔、換言すれば、電解質膜1とガスケット3との間隔をより確実に維持できる。このため、密閉空間15を真空吸引する際の接合面での気泡発生をより確実に抑えることが可能となる。
【0053】
なお、上記第2の実施形態において、油圧機構63に代えてコイルスプリングを用いてもよい。この場合には、コイルスプリングを固定基台9の上面に形成した縦穴内に収容配置し、規制ピン61をこの縦穴内に上端が位置するコイルスプリングに下端が接触した状態とする。
【0054】
すなわち、コイルスプリングによって可動基台39を、規制ピン61を介して弾性支持することで、電解質膜1とガスケット3とが離間した状態を確保する。その後、密閉空間15を真空吸引する際にコイルスプリングが撓んで可動基台39が下降するが、このとき電解質膜1とガスケット3とは離間した状態を維持している。続いて、油圧プレス機械49により可動基台39に荷重を付与する際には、コイルスプリングがさらに撓み、電解質膜1とガスケット3とが互いに加圧接触して接合される。
【0055】
上記したコイルスプリングを使用する場合には、図6に示す油圧機構65を使用した場合に比較して簡素な構造で設備コストを低く抑えることができる。
【0056】
上述したように、本発明では、第1,第2の各実施形態のいずれにおいても、密閉空間15内を真空吸引する際には、図3(b)や図6(a)に示すように、電解質膜1とガスケット3とが互いに離間した状態とすることで、接合面相互間の気泡発生を抑えている。
【0057】
これに対し、比較例として、密閉空間15内を真空吸引する際に、電解質膜1とガスケット3とが互いに離間せずに接触した状態として接合作業を行った場合には、接合面相互間に気泡が残留した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる基材の接合装置を示す断面図である。
【図2】(a)は図1の接合装置におけるガスケット保持具を電解質膜保持具に対して離反させた状態を示す動作説明図、(b)は(a)の状態からガスケット保持具及び電解質膜保持具に電解質膜及びガスケットをそれぞれセットした状態を示す動作説明図である。
【図3】(a)はガスケット保持具を電解質膜保持具に接近させ、これら各保持具,相互を対向させた状態を示す動作説明図、(b)は(a)の状態から密閉空間に対して真空吸引している状態を示す動作説明図である。
【図4】(a)は調整機構としてリーク弁を設けた例を示す、図1に対応する断面図、(b)は調整機構としてレデューサを設けた例を示す、図1に対応する断面図である。
【図5】密閉空間を真空吸引する際の真空度と時間との相関図である。
【図6】(a)は、本発明の第2の実施形態に係わる基材の接合装置を示す断面図、(b)は(a)の接合装置によって電解質膜とガスケットとを接合している状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 電解質膜(基材)
3 ガスケット(基材)
5 電解質膜保持具(基材保持部)
7 ガスケット保持具(基材保持部)
9 固定基台(基台)
11,41 吸着板(多孔質体)
13 シール部材
15 密閉空間
17 真空吸引ポンプ(真空吸引系統,密閉空間吸引部)
19,25 排気通路(真空吸引系統)
21 連通路(真空吸引系統)
27 配管(真空吸引系統)
29 開閉弁(真空吸引系統)
31,43 排気通路(真空吸引系統)
33,45 配管(真空吸引系統)
35,47 開閉弁(真空吸引系統)
37 真空吸引ポンプ(真空吸引系統,基材吸引部)
39 可動基台(基台)
49 油圧プレス機械(加圧部)
53 リーク弁(調整機構)
57 レデューサ(調整機構)
61 規制ピン(規制手段)
63 油圧機構(規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合する一対の基材を、それぞれ対応する基材保持部に背後から真空吸引により吸着保持させた後、前記各基材保持部を、前記一対の基材が互いに離間した状態で対向するよう互いに接近させ、かつ、前記各基材保持部相互間に位置して前記一対の基材の外側に位置するシール部材によってその内側の基材が位置する側に密閉空間を形成し、この密閉空間を、前記一対の基材が互いに離間した状態を維持しつつ真空吸引して減圧させて、前記シール材を圧縮させつつ前記各基材保持部を互いに接近移動させ、前記一対の基材を互い加圧接触させて接合することを特徴とする基材の接合方法。
【請求項2】
前記各基材保持部の前記一対の基材を保持させるための真空度を、前記密閉空間の真空度よりも高く設定することを特徴とする請求項1に記載の基材の接合方法。
【請求項3】
前記各基材保持部の前記一対の基材を保持させるための真空吸引系統と、前記密閉空間を真空吸引するための真空吸引系統とを互いに別系統とし、かつ、前記密閉空間側の真空吸引系統に設けた調整機構によって真空吸引の際の真空度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の基材の接合方法。
【請求項4】
互いに接合する一対の基材を、それぞれ背後から真空吸引により保持する一対の基材保持部と、前記真空吸引を行う基材吸引部と、前記各基材保持部相互間の前記一対の基材の外側に位置し、かつ、前記各基材保持部を、前記一対の基材が互いに離間した状態で対向するよう互いに接近させた状態でその内側の基材が位置する側に密閉空間を形成するシール部材と、前記密閉空間を真空吸引する密閉空間吸引部と、前記シール材を圧縮させつつ前記各基材保持部相互を接近移動させ、前記一対の基材相互を加圧接触させて接合する加圧部、とを有することを特徴とする基材の接合装置。
【請求項5】
前記基材保持部は、前記基材が接触する多孔質体を基台の表面に備え、この多孔質体に、前記基台に設けた排気通路の一端を連通させ、前記排気通路の他端を外部に設けた前記基材吸引部に接続したことを特徴とする請求項4に記載の基材の接合装置。
【請求項6】
前記各基材保持部を互いに接近移動させて前記一対の基材が互いに離間した状態を維持するための、前記接近移動を規制する規制手段を、前記一対の基材保持部相互間に設けたことを特徴とする請求項4または5に記載の基材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−115663(P2010−115663A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288619(P2008−288619)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】