説明

基材を動的に位置決めするためのコンポーネント・マニピュレータ、被覆方法、及びコンポーネント・マニピュレータの使用

【課題】溶射プロセスにおいて処理すべき基材を動的に位置決めするためのコンポーネント・マニピュレータの提供。
【解決手段】熱処理プロセスにおいて処理すべき基材2を動的に位置決めするためのコンポーネント・マニピュレータ1。このコンポーネント・マニピュレータ1は、主要回転軸線3を中心として回転可能な主要駆動軸30と、連結要素4と、連結要素4に連結可能な基材ホルダ5とを備える。連結要素4は、セラミック連結要素4であり、基材ホルダ5の連結セグメント51が、プラグ/回転連結部により、プラグ/回転連結部の連結軸Vに対して引き抜き抵抗性を有し回転可能に固定された態様で、連結要素4に連結可能であり、基材ホルダ5は、連結軸Vを中心として回転自在に配置される。本発明は、被覆方法、被覆装置、及びコンポーネント・マニピュレータ1の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各カテゴリの独立請求項の前文に記載された、熱処理プロセスにおいて処理すべき基材を動的に位置決めするためのコンポーネント(component)マニピュレータ、そのコンポーネント・マニピュレータを使用する被覆方法、及び熱被覆方法により基材を被覆するためのコンポーネント・マニピュレータの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な工作物の表面の被覆はほぼ無数の用途を有し、そのために産業技術における経済的な重要度が高い。この点に関連して、被覆は、非常に多様な理由により非常に多様な基材上に付着させることが可能であると有利である。例えば、シリンダ又は内燃エンジン若しくは圧縮機のピストンリングの滑動表面上などの、機械的に大きな負荷をかけられるパーツ上の摩耗保護層が大きな役割を果たす。耐摩耗性の他には、良好な滑動特性などのさらに他の要件が存在する。したがって、良好な摩擦特性及びさらには優れたドライ回転特性がパーツに与えられる。特に、様々な溶射方法、とりわけ公知のプラズマ溶射方法が、そのような要求及び類似の要求に対して非常に好ましいことが判っている。
【0003】
高負荷をかけられるツール上に硬質層を形成するために、被覆は、特にフライス盤、ドリル等々のチップ除去ツール上へのアーク蒸着、PVDプロセス又はCVDプロセスによって非常に好適に作製される。しかし、具体的には、既述のプロセスの利用は、例えば宝石類若しくは腕時計のハウジングの被覆のため、又は保護層の塗布のため、又は単に用具の装飾のためなど、他の適用分野においても非常に広範に及んでいる。
【0004】
例えばガス窒化などのさらに他の方法が、十分に確立された方法として存在するが、これらは腐食保護に関してとりわけ非常に重要である。
【0005】
これに関連して、非常に大面積の工作物の、又は複雑な表面形状(ジオメトリ)を有する部材の被覆は、一般的に問題が非常に多い。
【0006】
一般的には、溶射は、特に個別のパーツの製造において及び工業的連続生産において長期にわたり確立されてきたため、これらの一般的に問題の比較的多い場合についても様々な変形形態が確立されてきた。特に大量の基材表面の被覆の連続形成においても利用される最も一般的な溶射方法は、例えば、溶射粉末若しくは溶射ワイヤを用いたフレーム溶射、アーク溶射、高速フレーム溶射(HVOF)、フレーム衝撃溶射、又はプラズマ溶射などである。上記で列挙した溶射方法は、決して包括的なものではない。当業者には、列挙された方法の多数の変形形態、及び例えばフレーム溶射溶接などの特殊な処置などの他の方法がさらに知られている。これに関連して、いわゆる「冷ガス溶射」をさらに挙げておくべきであろう。
【0007】
この点において、溶射は、他の適用分野に対しても利用可能になされてきた。一般的には、表面溶射方法としての溶射は、その適用分野に関して、おそらく最大の適用範囲を有する被覆技術であると結論付けることができる。前述の溶射方法の適用分野の限定が、必ずしも適切なものとは限らない。なぜならば、適用分野が重複する可能性があるからである。
【0008】
この点に関して、複雑な表面ジオメトリを有する部材において十分な均一性を実現することが、長年にわたり課題となっている。このような部材の典型的な実例は、地上支持タービン又は空気支持タービン及び/又はあらゆる種類の航空機の動力ユニット用のタービン翼である。
【0009】
こういった状況において、例えばSulzer Metcoによる欧州特許第0776594号などに示唆される方法により、幅広プラズマ電流を用いてジオメトリ的に複雑な部材にのみならず、例えばシートメタルパーツの上などの大面積にも均一な被覆を形成できる熱低圧プロセス(「LPPS方法」)を実施することよって状況が打開された。他方において、これは溶射ガンのジオメトリ設計によって達成されるが、大きな差圧が溶射ガンの内部と外部との間に存在することがさらに必要不可欠になる。これに関連して、工作物又は少なくとも工作物の被覆すべき表面領域がコーティング・チャンバ内に位置し、例えば100ミリバール未満などの負圧が溶射ガンの内部に対して生成され、その一方で、例えば約1000ミリバールなどの圧力が溶射ガンにおいて実現され、すなわちほぼ環境圧力が、実現される。溶射ガンの内部とコーティング・チャンバとの間にこのような圧力勾配を設定することにより、広範且つ長いコーティング・ビームを発生させることが可能となり、これにより、工作物の表面が、これまで実現不可能であった均一性をもって被覆できる。
【0010】
この点において、この方法の本質的な利点は、コーティング・ビームの「シャドウ(影領域)」内に位置し、そのため従来的なプラズマ被覆方法の利用においてはほぼ実現不可能であった領域においても、被覆がある程度は可能となることにある。すなわち、そのような部材は、従来の被覆方法では、全ての表面に十分な均一被覆を施すことが不可能であり、特に、コーティング・ビームに対して影になる(シェード)領域に位置する表面での被覆が、十分な品質をもって形成されない。
【0011】
この点において、しばらくすると、基本原理が大幅にさらに展開された。例えば、欧州特許出願公開第1479788号は、欧州特許第0776594号の基礎的方法に基づく折衷方法を示す。
【0012】
これに関連して、これらの方法は、様々な金属被覆又は非金属被覆、とりわけ薄層中のセラミック層、炭素性層、又は窒素性層を付着させることに特に適する。
【0013】
特にタービン翼の被覆のために、Sulzer MetcoのいわゆるLPPS薄膜プロセス(PS‐TF)が、これに関連して確立されている。このプロセスは、当時、低圧プラズマ溶射に革新的な変化を明確に与えた。これに関しては、従来のLPPSプラズマ溶射方法が、工程的観点から変更された。これに関しては、プラズマ(「プラズマ・フレーム」又は「プラズマ・ビーム」)が流れる空間が、特にプロセス・チャンバにおける、及びプラズマ・フレーム又はプラズマ・ビーム自体における圧力パラメータの溶射パラメータを適切に設定することにより、最大で2.5mの長さまで拡大及び拡張される。プラズマのジオメトリ拡張により、供給ガスによりプラズマ中に注入される粉末ビームの均一な拡張、すなわち「非焦点化」が得られる。プラズマ内で雲状に分散しそこで部分的に又は完全に溶融される粉末ビームの材料は、均一に分散された状態で基材の広範な表面上に到達する。層厚10μm未満が可能であり均一な分布により高密度被覆を形成する薄層が、この基材上に出現する。薄層を複数にわたり塗布することによりいくつかの特性を有する比較的厚い層を作製することが可能となる。そこでは、1つの被覆が1つの機能層として使用可能なものとなる、例えば、触媒活性材料のためのサポートとして適する多孔性層が、多層塗布により作製され得る(EP1034843を参照)。
【0014】
一例としてタービン翼について考慮すると、タービン層を形成する基礎本体上に塗布された機能層は、一般的には、多数の部分層から構成される。例えば、高いプロセス温度で作動されるガス・タービン(定置式ガス・タービン又は航空機タービン)については、翼は、耐高温ガス腐食性を有する第1の1つ又は複数の層からなる部分層により被覆される。この第1の部分被覆上に塗布されるセラミック材料が使用される第2の被覆が、熱障壁被覆を形成する。以前より知られているLPPSプラズマ溶射方法は、この第1の層の作製に特に適するものであった。熱障壁被覆は、柱状ミクロ構造を有する被覆が出現するという点において、生成することが有利であった。この構造を有する層は、基材表面に対して垂直方向に配列された中心軸を有するほぼ円筒状の本体又は微粒子から構成される。蒸着された材料の濃度が微粒子の濃度よりも低い遷移領域により、微粒子を横方向に制限する。この異方性ミクロ構造を有する被覆は、反復的に生じる温度変化による張力変動に起因する歪みに対して耐性のより大きい構造体である。この被覆は、概して可逆的にこの変動張力に応答する。すなわち、クラックが形成されないため、この被覆の寿命は、柱状ミクロ構造を有さない一般的な被覆の寿命に比べて大幅に延長され得る。
【0015】
異方性ミクロ構造は、蒸着方法である薄膜方法により形成できる。「EB‐PVD」(電子ビーム‐物理蒸着)と呼ばれるこの方法においては、熱障壁被覆として蒸着されるべき物質が、高真空中において電子ビームにより気相状態にされ、気相から被覆すべき構成部材要素上に蒸着される。プロセスパラメータが適切に選択されれば、柱状ミクロ構造が得られる。この蒸着方法の欠点は、とりわけ設備費用が非常に高額であることである。それに加えて、複数の部分層を含む被覆の作製においては、同一の設備を、LPPSプラズマ溶着方法と、EB‐PVDプロセスとの両方に使用できない。そのため、この被覆については、複数の作業サイクルを実施することが必要となる。
【0016】
この問題は、Sulzer Metcoによる欧州特許第1495151号に記載された発明により、初めて十分に解消された。この発明では、プラズマ溶射方法が、初めて利用可能となり、この方法により、熱障壁被覆の作製が可能となり、1つの作業サイクルにおいて、部分層としての熱障壁被覆を含む被覆をタービン翼上に塗布することが可能となった。
【0017】
これは、被覆すべき材料が粉末ビームの形態で金属基材の表面上に、特にタービン翼上に溶射された、新規のプラズマ溶着方法により実現される。これに関して、被覆材料は、100ミリバール未満の低いプロセス圧力にて粉末ビームを非焦点化させるプラズマ中に注入され、そこで部分的に又は完全に溶融される。これに関しては、十分な大きさの比エンタルピーを有するプラズマが生成され、それにより、少なくとも5重量パーセントであるかなりの割合の被覆材料が気相に移行され、異方性構造を有する層が基材上に形成される。異方性ミクロ構造を形成する長尺の微粒子が、この層において基材表面に対してほぼ垂直方向に配列される。材料が少ない移行領域は、微粒子を相互に結合させる。
【0018】
この点において、欧州特許第1495151号に記載の方法は、EB‐PVDにより柱状構造を有する層を作製するための既知の方法よりもさらに決定的な利点を有する。すなわち、同一の層厚についてのプロセス時間が、大幅に短縮される。
【0019】
しばらく経つと、Sulzer Metcoによる欧州特許第1495151号に記載の方法は、PS‐PVD(略称)により決定的に改良され、さらに展開され、市場において確立された。この出願の枠組みにおいて説明されるコンポーネント・マニピュレータは、好ましくは既知のPS‐PVD方法である特許請求される被覆方法との関連において、有利に使用し得るため、以下において詳細に説明する。したがって、以下のPS‐PVDの説明は、本発明の説明の一部を成す。
【0020】
本発明のコンポーネント・マニピュレータは、当然ながら任意の熱処理プロセスにおいて使用することが可能であり、したがって原則的には、任意の被覆方法において有利に使用され得ることが当然ながら理解される。
【0021】
「プラズマ溶射‐物理蒸着」の略称であるPS‐PVDは、気相から被覆を蒸着させるための低圧プラズマ溶射技術である。これに関して、PS‐PVDは、本出願人が上述のLPPS技術の基礎に基づき開発した新しい折衷プロセスの一群の一部である(Journal of Thermal Spray Technology、502、vol.19(1−2)、2010年1月)。これに関して、この一群には、PS‐PVD以外には、とりわけ、「プラズマ溶射‐化学蒸着」(PS‐CVD)プロセス及び「プラズマ溶射‐薄膜」(PS‐TF)プロセスがさらに含まれる。従来の真空プラズマ溶射プロセス及び/又は従来のLPPSプロセスに比べると、これらの新しいプロセスは、2ミリバール未満の作用圧力で作動される高エネルギー・プラズマ・ガンを使用することにより特徴づけられる。これにより、独特の特殊被覆を作製するために使用し得る、従来のものとは異なるプラズマ・ビームの特徴が得られる。PS‐PVDプロセスの重要な新しい特性は、溶融流体材料以外からも被覆を形成できる点であり、これらの層は、基材に付着すると固化するいわゆる液体「薄板」により構成される。しかし、PS‐PVDは、気相から直接的に層を形成することをさらに可能にする。したがって、PS‐PVDは、従来のPVD技術と標準的な溶射技術との間の間隙を埋めるものである。被覆材料を気相に転移させ、それにより気相から層を直接的に蒸着することが可能となることにより、新規の構造を有する他の固有層及び/又は固有層システムを形成できるという全く新しい可能性が開かれる。
【0022】
これらの新しい層構造の特性は、これまでに知られている層に比べて、特にEP‐PVDにより作製された層に比べて、多数の面においてはるかに優れている。すなわち、既述のように、いわゆる「薄板」の溶融材料の層は、基材の表面上に液体溶射材料を凍結させるプロセスによって最終的に形成されることが、あらゆる溶射プロセスにとって一般的である。これは、被覆がプロセス・チャンバ内において気相から基材上に形成され、被覆材料が例えば約10−4などの低圧でプロセス・チャンバ内において気相へと転移される、従来のPVDプロセスとは対照的である。すなわち、高温の被覆材料が、液相から冷温の基材表面上には蒸着されないが、この被覆材料は、気相から基材表面上に凝結することとなる。これにより、一般的な溶射方法では実現できない、被覆の非常に特徴的な特性が得られる。PVD層は、本質的に知られているように非常に均質的なものとなることが可能となり、これに関連して、非常に薄く、高密度で、硬質で、且つ気密なものとなることが可能となり、又は特定の予め定めることの可能なミクロ構造を有することが可能となる。
【0023】
例えば、EP‐PVD(電子ビーム‐物理蒸着)により蒸着されたイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)の柱状構造が、非常に応力緩和された及び/又は応力耐性を有することが必要な熱障壁被覆(TBC)に特に適する。
【0024】
溶射との比較におけるPVD方法の決定的な欠点は、投資コストの高さ及び蒸着率の低さ、したがって高いプロセス・コストである。そのため、PVDプロセスは、主に、非常に薄い層に対して、及び大量生産において利用され、さらには、例えば航空機のタービンの作動翼又は案内翼などの非常に有用な又は安全性に関与するパーツの被覆にも利用される。
【0025】
さらに、従来のPVD技術では、被覆源に対して直接見通し線上に位置する、すなわち被覆源に対してシェード領域には位置しない層のみの被覆が可能である。そのため、例えばタービン翼などの切欠部又は複雑なジオメトリを有する構成要素を、効果的に且つ高い費用対効果で、高品質の所定のミクロ構造からなる均質な層で被覆することは、これまでは常に困難か又は不可能であった。
【0026】
そのため、溶射及びPVDプロセスの利点を単一のプロセスに統合した装置及び方法を可能にすることが、最新技術において長年にわたり求められてきた。これは、原初のLPPSプロセスのさらなる発展形態であり、溶射による気相からの被覆を可能にすることにより、所定のミクロ構造を有し所定の特性を有する高品質の被覆が、低コストで大量に非常に効率的に作製することが可能となるSulzer Metcoにより近年開発されたPS‐PVDプロセスによって実現されている。この新しい方法は、とりわけ、被覆源に対してシェード領域に位置する、すなわち被覆源の直接見通し線上には位置しない表面領域を、均一に並びに所望の厚さ及び品質にて被覆するものである。
【0027】
これに関して、PS‐PVDプロセスは、典型的には例えばプロセス・チャンバ内のアルゴン・ガスなどの不活性ガス雰囲気内において、所定のプロセス雰囲気で、及び周囲環境圧力に比べて低いガス圧で、LPPSプロセスと同様に実施される。典型的なプロセスガス圧力は、0.5ミリバール〜2ミリバールである。プラズマ・フレーム又はプラズマ・ビームは、プロセス・チャンバ内における減圧により、例えば長さ2m超、直径200mmから最大400mmへ膨張され、圧力パラメータの適切な選択により、さらに大きなプラズマ・フレームを設定することも当然ながら可能となる。特に、温度及び粒子速度の非常に均質な分布は、プラズマ・フレーム又はプラズマ・ビームの膨張により、プラズマ・フレーム内で実現され、それにより、非常に均一な厚さの層を、例えばタービン翼などの非常に複雑な構成要素上に、さらにはシェード表面領域においても生成することが可能となる。
【0028】
この点に関して、基材の表面は、好ましくは、予熱及び/又は洗浄される。これは、例えば、プラズマ・ビームにより、又はプロセス・チャンバに組み込まれたアーク・プロセスにより行われる。
【0029】
例えば1ミリバールのPS‐PVD作動圧力は、従来のPVDプロセスについて用いられるような約10−4ミリバールの作動圧力よりも著しく高いが、プラズマ・フレーム及び/又はプラズマ・ジェットにおける低いプロセス圧力と、大きいプラズマ・エネルギー及び/又はエンタルピーとの組合せにより、プラズマ・フレーム中に注入される粉末の所定の気化が得られ、これにより、このPS‐PVDプロセスにおける気相からの蒸着の制御が可能となる。
【0030】
これとは対照的に、基材表面の方向への気化された材料の移動は、EB‐PVDにおける移動速度が制限された拡散プロセスである。したがって、結果的には、塗布すべき表面層の成長速度が制限された拡散プロセスでもある。これは、約1ミリバールの圧力で約2000m/s〜最大で4000m/sの超音波速度にて、約6,000K〜10,000Kの温度にてプラズマ・ジェット中に気化された被覆材料を移動させるPS‐PVDプロセスとは異なる。これにより、基材における層の成長速度が上昇し、均一な高品質で基材の切欠部又はシェード領域をさらに被覆することも可能となる。
【0031】
したがって、このPS‐PVDプロセスにより、例えば熱障壁被覆システムによって効率的に、以前には知られていなかった品質で、自動的に、及び大量に、例えばタービン翼などの非常に複雑に成形されたパーツを被覆することさえもが初めて可能となった。
【0032】
しかし、コスト上の圧力の高まりにより、この場合でもさらなる改良が要求される。すなわち、上述のプロセスの本質的な特性は、被覆すべき構成要素がほぼ均一な極限値に調節されなければならない点にある。例えば、これは、加熱が、被覆プロセスが実施されるプロセス・チャンバのチャンバ壁部において実施され、それにより、ある極限値の範囲内において複数の側部から被覆すべき構成要素が均一に調節されることにより、既知のEP‐PVD方法において実施される。当然ながらこれは、EP‐PVD方法の欠点である。なぜならば、比較的要求度の高い加熱が、チャンバ壁部においてさらに実施されなければならず、当然ながらさらに操作されなければならないからである。LPPS方法においては、特にPS‐PVD方法においては、構成要素は、一般的にコーティング・ビームにより予熱されるに過ぎず、このことは、チャンバ壁部におけるさらなる加熱を削減するという利点を有するが、当然ながらコーティング・チャンバ内に非常に不均質な温度場をもたらす。そのため、コーティング・ビームが構成要素の表面を部分的にのみ覆う及び/又は包入するような、例えば被覆すべき部品の膨張が大きな場合など、被覆すべき構成要素の膨張が、コーティング・ビームによってはもはや十分に均質的には調節されないような場合には、十分な速度で所定の角度領域内において構成要素上にコーティング・ビームを往復移動させ、それにより、構成要素の全ての表面が、この被覆の際にコーティング・ビームにより周期的に十分に走査され、それにより、一方においては表面全体が均一に被覆され、他方においては被覆すべき構成要素が予め定められたパラメータ極限値の範囲内で十分に均一に調節又は予熱されるように、逐次全ての表面領域が、コーティング・ビームを繰返し受けるようにすることが知られている。被覆すべき基材上を走査(scan)するためのコーティング・ビームのこのほぼ周期的な移動は、しばしばコーティング・ビームの「走査(sweeping)」とも呼ばれる。
【0033】
均一な調節及び被覆の効果を向上させるために、例えばタービン翼を回転自在基材ホルダ上に設置することにより、基材もコーティング・ビームの走査と同時に回転軸線を中心として回転され、それにより、コーティング・ビームが、全ての側部から基材に対して実質的に直接塗布されるようにすることもまた知られている。明瞭化のために、図1を参照として、本質的に既知のこの装置を再度説明する。
【0034】
図1においては、航空機タービンのタービン翼を被覆するための、先行技術により知られている1つの方法が、概略的に図示される。
【0035】
本発明を先行技術からより良く区別するために、公知方法に関する図1の符号は、アポストロフィを伴い、本発明に関する他の図の符号は、アポストロフィを伴わない点に留意されたい。
【0036】
図1は、先行技術により良く知られている方法を示す。この実例においては航空機用のタービン翼2’である基材2’の上に機能構造層20’を形成する。この方法においては、コーティング・ビームBS’の形態の被覆材料200’が、明瞭化のため図1には詳細には図示しないプロセス・チャンバ内で、プラズマ溶射方法により所定の低いプロセス圧力P’で基材2’の表面210’上に溶射される。これに関して、被覆材料200’は、例えば約1ミリバールであることが可能な低いプロセス圧力P’で、コーティング・ビームBS’を非焦点化させるプラズマ中に注入され、そこで部分的に又は完全に溶融される。十分な大きさの比エンタルピーを有するプラズマが生成されることにより、被覆材料200’の実質的に可能な限りの多量の被覆材料200’が、気相へと転移し、構造層20’が、基材2’上に形成される。可能な限り均一なタービン翼2’に被覆を実現するために、タービン翼2’は、回転軸3’を中心として回転可能な基材プレート5’に設置され、コーティング・ビームBS’内で回転される。それと同時に、コーティング・ビームBS’は、被覆すべきタービン翼2’上を、角度領域Ω’内にて左右に走査される。
【0037】
しかし、残念ながら、これまでは、PS‐PVDによるこの態様においては、せいぜい単一の過度な大きさを有さない基材を被覆することが可能であるに過ぎなかった。
【0038】
走査時にコーティング・ビームによって完全にはカバーできない程の広さの表面を有し、例えば回転プレートの回転時などにいくつかの表面領域がコーティング・ビームのビーム軸から非常に離れているため、コーティング・ビームがそれらの領域には到達しないような非対称形状を有する空間的に広い基材は、これまではPS‐PVD方法で十分に被覆することができなかった。コーティング・チャンバ内で走査されるコーティング・ビームの角度領域の最大値は当然ながら制限され、それと同時に、被覆すべき基材は、コーティング・ビームを生成する溶射ガンに対して離間距離を大きくしなければならなかった。とりわけ、回転基材ホルダ上に理論的には複数の基材が配置され得るが、1つの作業サイクルにおいては、既知のPS‐PVD方法で同時に被覆することは、不可能であると一般的には考えられた。
【0039】
当然ながら、回転基材ホルダの適切な回転により、コーティング・ビームの同時的な適切な走査移動時にコーティング・ビームが全ての表面に達することが後に可能となったが、それでも、PS‐PVD方法により基材上に均一な層を塗布することは不可能であると考えられてきた。
【0040】
この仮説の理由には、妥当な物理的根拠がある。すなわち、LPPS方法において上記で説明したように、特にPS‐PVD方法においては、基材がコーティング・ビームにより可能な限り均一に予熱されなければならないことが必須となる。すなわち、被覆すべき基材が、少なくとも部分的には、短い時間平均でコーティング・ビームに実質的に常に完全にさらされなければならない。これに関して、この時間平均は、例えば、コーティング・ビームの走査時又は基材ホルダの回転時に、基材のある表面領域が短時間にわたりコーティング・ビームにさらされず、それにより、これらの表面領域の温度が、コーティング・ビームにさらされる表面領域の温度に比べてほんの僅かだけ低下することを意味する。そうでない場合には、かかる大きな温度勾配が基材において生じるか、又はコーティング・ビームに断続的にはさらされない表面領域の温度が低下するため、所要の高品質を有する層を塗布することはこれまで不可能であった。
【0041】
特に、コーティング・ビームへの露出を、基材ホルダ上に設けられた基材から断続的にほぼ取り止めた場合には、これらの基材は冷え、被覆のためのコーティング・ビームにもう一度さらされた際に高品質要件に応じた被覆を形成することが不可能であった。
【0042】
この好ましくない効果は、非常に深くに位置する若しくは組み込まれた切欠部を有するか、又は例えば最新型の極度の高負荷を被る航空機タービン用の二重翼などの異なる態様で複雑に形成された、非常に複雑に形状設定された基材については、さらに甚大に増幅される。なぜならば、例えばシェード表面領域は、コーティング・ビームによりさらに比較的低頻度で又はさらに比較的短い時間で加熱されるため、層品質及び/又は層構造に関して最高の要件を有する十分に均一な被覆が不可能となるからである。
【0043】
この点において、先述の問題は、同一のコーティング・ビームにより複数の基材を同時に被覆しようと試みた場合にのみ懸念されるものではない。
【0044】
単一の基材のみがコーティング・ビーム内に配置された場合でも、上述の問題は依然として生ずる。その本質的な理由は、既知の基材ホルダによれば、コーティング・ビーム内における被覆すべき基材の位置決めが、非常に制限された形態でのみ可能だからである。
【0045】
これは主に、基材の処理が、困難な環境条件で実施されることに関連している。例えば、処理は、まれに、埃の多い環境において、高圧又は低圧で、及び特に最高1000℃までの又はさらに高い温度にて実施される。
【0046】
既知の基材ホルダは、可能な限り少数の可動部品を有する単純な設計のものとなる。その理由は、例えば追加の軸を中心として構成要素が回転自在又は枢動自在になるように基材ホルダを設計するために必要な公知の軸受は、過酷な環境条件(特に高温)にさらされることが不可能であるか、又は非常に短時間しか過酷な環境条件にさらされることができないからである。例えば一般的に被覆プロセスが1時間又はそれ以上を要し得るなど、非常に長い処理時間が溶射時には頻繁に必要となるため、基材ホルダは、基材を回転又は枢動させるための公知の軸受であれば、短時間で機能不全となる場合がある。そのため、これまでは、非常に限定された態様で基材の動的位置を許容するに過ぎない非常に単純な基材ホルダのみが、使用可能であった。
【0047】
公知の基材ホルダのさらなる欠点は、被覆すべき基材を基材ホルダから熱的に切り離すことができない点である。例えば、溶射においては、被覆すべき基材、すなわち例えば熱被覆すべきタービン翼からの、相当の温度放出、さらには多くの場合変則的な温度放出が、対象を支持し基材ホルダ間で案内する搬送手段に対して生じるという効果を有する。このほぼ制御不能な温度放出が、コーティング・ビームに対する基材の配列自在性及び可動性の欠如と組み合わされることにより、層品質の甚大な低下及び/又は大きな不良品発生率が生じ、したがって許容し得ない高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】欧州特許第0776594号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1479788号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第EP1034843号明細書
【特許文献4】欧州特許第1495151号明細書
【非特許文献】
【0049】
【非特許文献1】Journal of Thermal Spray Technology、第502頁、第19巻(1−2)、2010年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
本発明の目的は、先行技術より知られている基材ホルダの欠点を回避して、特に処理プロセス中に少なくとも1つの軸を中心として構成要素を移動させることを可能にする熱処理プロセス、特に溶射プロセスにおいて処理すべき基材を動的に位置決めするためのコンポーネント・マニピュレータを提示することである。処理すべき基材が、予め定めることの可能な態様でコンポーネント・マニピュレータから熱的結合を切り離されるか、或いは、被覆すべき基材の熱結合及び/又は熱流が、被覆・プロセス中にもコンポーネント・マニピュレータを介して設定可能、変更可能、及び/又は制御可能である。
【0051】
本発明の他の目的は、先行技術より知られている問題が回避されることにより、特に複数の基材が理想的にさらに同時に処理され、それにより、非常に高品質及び均一な品質の表面層が、LPPS方法、特にPS‐PVDプロセスによって、複数の基材上にも同時に、及び/又は非常に大きな基材上に、及び/又は非常に複雑なジオメトリの基材上に、コスト及び時間の面で効率的に蒸着される被覆方法及びコンポーネント・マニピュレータの使用を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0052】
この目的にかなう本発明の主題が、各カテゴリの独立請求項により特徴づけられる。
【0053】
各従属請求項は、本発明の特に有利な具体例に関する。
【0054】
したがって、本発明は、熱処理プロセスにおいて処理すべき基材を動的に位置決めするためのコンポーネント・マニピュレータであって、主要回転軸線を中心として回転可能な主要駆動軸と、連結要素と、連結要素に連結可能な基材ホルダとを備えるコンポーネント・マニピュレータに関する。本発明によれば、連結要素は、セラミック連結要素であり、基材ホルダの連結セグメントが、プラグ/回転連結部により、プラグ/回転連結部の連結軸に対して引き抜き抵抗性を有し回転可能(rotationally)に固定された態様で、連結要素に連結可能であり、基材ホルダは、連結軸を中心として回転可能に配置される。
【0055】
連結要素がセラミック連結要素であることが、本発明にとっては必須である。連結要素が、非常に導電性の低いセラミック材料から作製されることにより、基材ホルダ及びその上に配置された被覆すべき基材は、本発明によるコンポーネント・マニピュレータから非常に良好に熱的に切り離される。そのため、例えば熱被覆時に基材からコンポーネント・マニピュレータへの熱流を低い値の所定の度合いまで低減させることが初めて可能となり、それにより、さらに同時に温度流が、基材ホルダを介して、処理すべき基材すなわち例えば熱被覆すべきタービン翼などから、コンポーネント・マニピュレータへ均一に放出される。それにより、本質的に既知の損傷を与える制御不能な温度流が生じず、層品質がこの効果により既に著しく向上されて、不良品発生率が低下し、したがって許容し得るコストが達成される。
【0056】
セラミック連結要素が、基材ホルダを介した基材からコンポーネント・マニピュレータへの熱流を大幅に低減させることにより、初めて、伝動ユニットが影響を被ることなく、又はさらには伝動ユニットが過度の熱的影響により作動状態において破壊されることなく、基材ホルダを連結軸を中心として回転可能にするための駆動ユニット及び/又は伝動ユニットを実現することも可能となる。これに関して、本発明は、特に3部式遊星伝動装置を有するコンポーネント・マニピュレータに関する。これは、特に複数の連結要素が複数の基材ホルダを受けるためにコンポーネント・マニピュレータに同時に設けられる特定の例にとって、非常に重要である。この場合には、全ての連結要素が、コンポーネント・マニピュレータに設けられた伝動ユニットにより単一の主要駆動軸を介して同時に駆動されることが可能となり、連結軸を中心として回転されることが可能となる。それにより、例えば複数の基材を熱被覆する際には、これらは、コーティング・ビーム内において回転可能となり、それにより特にこれまでは実現不可能であった品質のさらに均一な被覆が形成できるようになる。
【0057】
基材ホルダのための連結セグメントが、プラグ/回転連結部により、プラグ/回転連結部の連結軸に対して引き抜き抵抗性を有し回転可能に固定された態様で、連結要素に連結可能であるため、基材ホルダは、コンポーネント・マニピュレータにて複雑な取り付け作業を実施する必要がなく、非常に簡単に交換できるようになる。特定の好ましい一具体例においては、プラグ/回転連結部は、本質的に知られているように、バヨネット(bayonet)クロージャ機構の形態で設計される。
【0058】
好ましい一具体例においては、1つ又は複数の連結要素を同時に受けることが可能であり、必須ではないが好ましくは例えば3つの連結要素を同時に設置することが可能である、基材ホルダを伴う連結要素を受けるために主要駆動軸に回転可能に固定的に連結されるベース・プレートが設けられ、それにより、同一のコンポーネント・マニピュレータに複数の基材を同時に設置することが可能となる。この点に関して、複数の連結要素は、主要回転軸線に対して偏心してベース・プレートに設置されることは特に有利である。それにより、例えば被覆プロセスの際などの作動状態において、基材ホルダに設置された基材が、主要駆動軸線を中心として回転することによりコーティング・ビームの様々な領域と接触状態になることが可能となり、それにより、特に、基材の被覆の均一性が大幅に向上され得る。
【0059】
例えば熱被覆による基材の層品質をさらに向上させるために、連結要素は、基材ホルダの連結軸を中心として回転するように、すなわち基材ホルダの連結軸を中心として基材ホルダを回転駆動させるために、駆動ユニットを介して接触要素と連結状態になることが可能である。特に好ましい一具体例においては、コンポーネント・マニピュレータの主要駆動軸は、接触要素に対して回転自在に配置される。
【0060】
これに関して、実施に特に関連性のある一具体例においては、接触要素は、駆動ユニットにより連結要素を駆動させるために歯車を有する主要駆動軸線に対して固定されたシャフト・ジャケットに配置された歯車である。
【0061】
これに関して、プラグ/回転連結部の連結軸が、主要回転軸線に対して所定の傾斜角度で傾斜されることにより、例えば一方において、コーティング・ビーム内における被覆すべき基材の非対称移動が可能となる。それにより、さらに例えばタービン翼などのアンダーカットを備えることが想定される形状体上において非対称に設計された構成要素が全ての表面について、とりわけアクセスの困難なアンダーカットの表面においても、非常に均一に被覆することが可能となり、特に好ましい。さらに、以下においてさらに説明されるように、基材が相互に傾斜され、それと同時に相互にそれぞれの回転軸を中心として回転することにより、その後2つの基材のそれぞれ異なる基材セクションが相互に対面することと、被覆材料が基材表面から異なる基材の表面上に反射され得ることにより、コーティング・ビームの方向とは異なる方向への被覆効果がさらに可能となる。
【0062】
これに関して、連結要素は、軸受ハウジング内において軸受要素により支持され、好ましくは、3つの軸受要素が、軸受ハウジング内に設けられ、3点軸受を形成する。
【0063】
実施に特に関連性のある一具体例においては、好ましくは、ベース・プレートは、連結要素を介して主要駆動軸に回転可能に固定的に連結されており、基材に冷却液体を供給する。実際には、冷却流体は、ベース・プレート及び冷却ラインに設置された冷却用分配機を介して、例えば連結要素から連結要素に、及び基材ホルダの連結セグメントに供給することが可能である。これに関して、さらに、実施に特に関連性のある一具体例においては、軸受要素は、冷却流体と間接的に接触することにより冷却され得る。
【0064】
連結要素に対する基材ホルダ及び/又は連結セグメントの確実な連結を確保するために、連結セグメントは、回転に対する保護部材により、連結要素に対する回転に対して固定され得る。この回転に対する保護部材は、ロッキング・ピンであり、特に好ましくは、例えば連結要素に設けられた安全テープにより固定され得るセラミック・ロッキング・ピンである。
【0065】
これに関して、連結要素は、例えば温度放射に対する保護のために、又はコーティング・ビームに対する保護のために、又は作動状態において連結要素に影響を及ぼし得る他の損傷的影響に対する保護のために、カプセル内に包入される。
【0066】
さらに、本発明は、コンポーネント・マニピュレータを使用する際の被覆方法と、本発明のコンポーネント・マニピュレータの使用とに関する。基材は、特に、航空機タービン用、ガス・タービン用、蒸気タービン用、又は水力タービン用のタービン翼である。
【0067】
これに関して、本発明による被覆方法は、特に、基材上に機能構造層を形成するための被覆方法に関するが、それだけに限定されない。これに関して、被覆材料が、プラズマ溶射方法により、プロセス・チャンバ内において所定の低いプロセス圧力にてコーティング・ビームの形態で基材の表面上に溶射されるが、被覆材料は、200ミリバール未満の低いプロセス圧力にてコーティング・ビームを非焦点化プラズマ中に注入され、十分に大きな比エンタルピーを有するプラズマが生成される。それにより、被覆材料の少なくとも5重量パーセントの割合であるかなりの割合の被覆材料が、気相に転移して、構造層が基材上に形成される。これに関して、被覆すべき基材は、基材の第1の表面及び基材の第2の表面が互いに整列されることにより、プラズマ溶射時に、気相に転移した被覆材料の少なくとも一部が基材の第1の表面から基材の第2の表面の上に偏向されるように、主要回転軸線を中心として回転可能な基材ホルダに配置される。
【0068】
これに関して、本発明の被覆方法にとって重要なことは、とりわけ、例えばコーティング・ビーム内などにおけるコンポーネント・マニピュレータによる基材の動的な位置決めが可能となることにより、本発明によるコンポーネント・マニピュレータによって初めて実現可能となった以下の効果である。
【0069】
他方においては、少なくとも断続的にコーティング・ビームにさらされないか、又は直接的にはさらされない表面においても、それらの表面が、例えば少なくともいくつかの場合においては基材ホルダの回転などによりコーティング・ビームの作用領域から断続的に又は部分的に出されることにより、所定の技術的に必要とされる範囲内において基材の予熱温度を実質的に維持することが可能となる。基材中において均一に分布された予熱温度を維持するこの好ましい効果は、セラミック連結要素により初めて可能となる非常に良好な熱的絶縁により、さらに支援及び増幅される。
【0070】
例えば表面形状の理由などから、基材のその表面が、例えばアンダーカットにより、又は他の基材が基材ホルダに配置されることにより、コーティング・ビームから完全に又は部分的に遮蔽されることによって、コーティング・ビームに全く又は十分にはさらされない表面についても、類似の利点が存在する。実際に、先行技術により知られているこの好ましくないシェード効果は、殆どの場合において、本発明によるコンポーネント・マニピュレータを使用することにより、防止することが初めて可能となる。すなわち、例えば基材ホルダの傾斜された配置により、及び/又は2つの異なる回転軸線を中心とする基材の回転により、基材が、主要回転軸及び連結軸を中心としてコーティング・ビーム内において同時に極めて大きい自由度で及び動的に位置決めすることが可能となる。当然ながら、極めて複雑な基材ジオメトリについては、先述のシェード効果を完全には解消することはできないことが理解される。
【0071】
本発明により、さらにこの表面を所要の前処理温度にて作製することを可能にすることと、気相にある被覆材料の一部が第1の表面から第2の表面に偏向及び/又は反射され、それによりコーティング・ビームに長時間には、又は全くさらされない表面にも高温の被覆蒸気が十分な量で付着するように、1つ又は2つの基材の2つの表面を相互に基材ホルダに配置することとが実現される。
【0072】
これに関して、「長時間」は、基材が少なくともコーティング・ビームにさらされない表面領域において本発明による反射効果を伴わずに強力に冷却されるような長さの、及び/又は、所要の予熱温度を実現しないことにより、該当表面が再度コーティング・ビームにさらされた場合に、少なくとも所要の品質での被覆がもはや不可能となる期間として理解すべきである。これに関連して、本発明によるコンポーネント・マニピュレータを使用した場合に、セラミック連結要素による熱的絶縁により熱放出が著しく遅滞するため、この「長時間」は大幅に拡大される。すなわち、前述の問題は、本発明による反射効果とは別に、セラミック連結要素によって既に大幅に緩和される。
【0073】
他方において、例えば非常に大きなアンダーカットを有するなど、表面形状の観点から非常に複雑であり、そのため例えば通常はコーティング・ビームにさらされない表面が生じるような基材が、十分には予熱されるだけでなく、さらには本発明による方法を使用することにより被覆され得る。
【0074】
これに関して、被覆すべき表面がコーティング・ビームに常に直接的にさらされなければならない。例えば従来のプラズマ溶射又はフレーム溶射などの他の熱被覆方法とは対照的に、具体的には種々のLPPS方法は、原則的にはシェード表面も被覆することが知られている。すなわち、コーティング・ビームに直接的にはさらされない表面が、原則的には被覆され得る点に留意されたい。これに関連して、LPPSによりシェード表面領域の被覆が可能であることは、欧州特許出願第2025772号において、複数のタービン翼を備え、例えば高負荷をかけられる航空機タービン用の二重翼を形成する単一のタービンセグメントの実例を参照として既に説明されている。
【0075】
しかし、LPPS方法の、特にPS‐PVD方法の可能性は、当然ながら限界を有する。特に、例えば前述の高負荷をかけられる航空機タービン用の二重翼などの複数の基材が、やや複雑に形成された基材ホルダに同時に配置される場合には、先行技術において既知の被覆方法により、被覆すべき基材の全ての表面を均一に及び所要の品質で被覆することは不可能である。
【0076】
したがって、被覆すべき基材をコンポーネント・マニピュレータに本発明にしたがって配置することにより、先行技術による複数の重大な問題が同時に解消される。
【0077】
他方において、基材又は基材の複数部分が、例えば基材ホルダの回転によりコーティング・ビームに対する直接的な暴露を常時又は少なくとも断続的に排除された場合に、許容し得ないレベルにまで冷却されることが防止される。
【0078】
第2に、本発明による方法の適用を伴わない場合には十分には予熱され得ない基材の表面領域が、被覆プロセス全体にわたりコーティング・ビームにさらされない場合にも、問題を伴わずに所要の予熱温度にされることが可能になる。ついでながら、それにより、追加的な加熱は、例えばコーティング・チャンバのチャンバ壁部において追加的な加熱が必ず行われなければならないEP‐PVD方法などの場合のようには、ほぼ全く必要とはならない。
【0079】
第3に、本発明による方法を使用することにより、前述の表面及び基材の被覆すべき表面全体を均一に及び所望の高品質で被覆することが、初めて可能となる。さらに、本発明の方法により、複数の基材、特に同一の基材ホルダに互いに短い離間距離にて配置される基材を同時に配置することと、単一の作業サイクルにおいてこれらの基材を被覆することとが、初めて可能となる。したがって、本発明の被覆方法は、1つの作業サイクルにおいてそれぞれ単一の複雑な基材のみを被覆することが可能である先行技術により知られている方法に比べて、極めて効率的である。
【0080】
これに関して、本発明によるこの効果は、従来のPVD方法によっても、又は従来の溶射方法によっても、又はよく知られているEP‐PVD方法によっても実現することが不可能であり、完全に予期せぬ驚くべきことであることを強調しなければならない。したがって、前述の既知の方法はいずれも、本発明の目的の解消には寄与することができず、又はさらには本発明の目的に対するいかなる示唆ももたらし得ない。すなわち、本発明の1つの認識点は、本発明による方法を複雑な形状の基材を又は同時に複数の基材を被覆するために実際に好適に使用し得るには、一般的にはLPPS方法の、及び特にPS‐PVD方法の基本的に2つの特定の特性が必要となることである。
【0081】
本発明による方法とは対照的に、従来のPVD方法及びさらにはEP‐PVD方法の両方については、基材表面の方向への気化された材料の輸送は、拡散プロセスである。すなわち指向性のない、又はせいぜい微弱な指向性を有するプロセスである。したがって、せいぜい被覆すべき基材の表面にて生じる虞のある反射プロセスも、実質的には指向性を有さず、すなわちほぼ拡散的な特性を有する。したがって、基材表面のシェード部分の特定の及び十分な加熱及び/又は被覆も不可能であることは明らかである。実際に、複数の基材を同時に装填し得る回転可能な基材プレートを使用することが、従来のPVDプロセス及び/又はEB‐PVDプロセスでも知られている。しかし、これは、本発明による方法の場合のようには、指向性コーティング・ビームの反射を設定する役割を十分には果たさず、単にプロセス・チャンバ内における被覆材料の蒸気の拡散分布のある程度の不均質性を補償する役割を果たすに過ぎない。
【0082】
例えば大気圧でのプラズマ溶射において又はフレーム溶射においてなど、例えば比較的高いプロセス圧力での従来のプラズマ・被覆などにおけるように、従来の熱被覆においては、指向性コーティング・ビームが実際に使用され、さらには複数の基材が同時に装填される回転基材ホルダを使用することが知られている。しかし、やはりこの場合においても、本発明による効果は概して不可能である。すなわち、前述の溶射プロセスにおいては、被覆材料は、実際にはほぼ溶融状態で、すなわちほぼ液体状態で基材表面に付着するので、本発明による方法の場合のように気相では基材表面に付着しない。これは、具体的には、これらの既知の被覆プロセスの特性である。これらの既知の方法に関して冒頭において既に述べたように、これらの被覆は、基材上への付着時に基材にて溶融物から固化し、蒸気状材料の蒸着によっては形成されない、いわゆる液体「薄板」により形成される。実質的に液体の材料が被覆すべき基材の表面上に付着する場合には、液滴の反射は実際に全く生じないことは当然ながら理解される。すなわち、基材の比較的冷温の表面に衝突する際に、固体「薄板」へと単に即座に凝結し、その表面に固着するに過ぎず、したがって、反射は実際には生じない。
【0083】
実施時には、有利には、第1の表面を備える少なくとも1つの基材及び第2の表面を備える少なくとも1つの第2の基材は、プラズマ溶射時に、気相に転移した被覆材料の少なくとも一部が第1の基材の第1の表面から第2の基材の第2の表面上に偏向及び/又は反射されるように、互いに基材ホルダに配置及び配列され、それにより、基材の第2の表面は、第1の基材の第1の表面から偏向及び/又は反射された被覆材料によって被覆及び/又は予熱される。
【0084】
これに関して、第2の表面がコーティング・ビームに直接的にはさらされないときに、第2の表面が所定の表面温度に維持されるように、第1の表面から第2の表面上に偏向及び/又は反射される蒸気状被覆材料の量が設定されることが好ましい。これに関して、偏向及び/又は反射される被覆材料の量を適切に設定することを可能にするための複数の措置が可能である。この場合、例えば、これに応じて、第2の表面に対する第1の表面の配向を最適化することが可能である。又は、これに応じて、プラズマの加熱力、プロセス・チャンバ内におけるプロセス圧力、コーティング・ビームの超音波速度、又は他の溶射パラメータなどの、種々の溶射パラメータを設定することが可能である。
【0085】
さらに、回転可能な基材ホルダを、主要回転軸線を中心として、及び/又は連結軸を中心として、所定の設定速度又は可変回転速度にて回転させることが可能であり、及び/又は、その回転速度を、偏向及び/又は反射される被覆材料の量又は任意の種々の被覆パラメータが最適化されるように設定又は調整することが可能である。
【0086】
好ましくは、コーティング・ビームは、本質的に既知の態様で所定の空間角度領域に対して被覆すべき基材上を反復的に枢動される。これは、「走査」とも呼ばれ、既述の目的に関して、又は例えば基材を所定の温度に均一に調節するためなどの他の目的に関して、冒頭において既に詳細に説明している。
【0087】
さらに、コンポーネント・マニピュレータとプラズマを生成するプラズマ源との間の離間距離を、所定の経路間隔内で変更することも可能である。これは、例えば、コンポーネント・マニピュレータとプラズマ源及び/又はプラズマ源を含む溶射ガンとの間の相互離間距離が変更されるように、プラズマ源の位置及び/又はコンポーネント・マニピュレータの位置を変更することにより実施できる。
【0088】
当然ながら、コンポーネント・マニピュレータが、所定の枢動領域内においてコーティング・ビームに対して全体的に枢動されることも可能である。
【0089】
これに関して、コーティング・チャンバ内のプロセス圧力は、多くの場合には、実施の際に20ミリバール未満、好ましくは10ミリバール未満、特に0.1〜2ミリバールとなるように選択される。
【0090】
これに関して、コーティング・ビームは、1,500m/s〜3,000m/sの音速を有する超音波速度で概して作動され、好ましくは約2,000m/sで作動され、及び/又は、コーティング・ビームは、4,000K〜20,000Kの温度を有し、好ましくは6,000K〜10,000Kの温度を有する。
【0091】
これに関連して、実施に関連性のある殆どの場合について、被覆材料は、溶射粉末の形態で本質的に既知の態様で用意される。
【0092】
これに関して、被覆装置の上述のプロセスパラメータ及び/又は形状パラメータは、10重量パーセント超の割合の被覆材料が、気相に転移し、好ましい一具体例においては、好ましくは50重量パーセント超が、特に80重量パーセント超が、気相に転移するように設定される。
【0093】
これに関して、本発明による方法は、複数のタービン翼を、特に複数の二重翼を1つの被覆プロセスにおいて同時に被覆するのに特に適しており、構造層は、多くの場合において、実際には本質的に既知の熱障壁被覆である。
【0094】
さらに、本発明は、基材上に機能構造層を形成するための本発明による上述の方法を実施するための被覆装置に関する。これに関して、本発明によるこの被覆装置は、被覆材料がプラズマ溶射方法により所定の低いプロセス圧力にてコーティング・ビームの形態で基材の表面上に溶射され得るプロセス・チャンバを備える。被覆材料は、200ミリバール未満である低いプロセス圧力にてコーティング・ビームを非焦点化させるプラズマ中に注入され、そこで部分的に又は完全に溶融可能である。これに関して、十分な大きさのエンタルピーを有するプラズマを生成するためのプラズマ源及び/又はプラズマ源を備える溶射ピストルが設けられ、それにより被覆材料の少なくとも5重量パーセントの割合であるかなりの割合の被覆材料が、気相へ転移し、構造層が基材上に形成可能となる。本発明によるコンポーネント・マニピュレータが、処理すべき基材を動的に位置決めするために設けられる。
【0095】
これに関して、好ましくは、本発明によるこの被覆装置はコンポーネント・マニピュレータと共に構成され、被覆プロセスの際に、気相に遷移した被覆材料の少なくとも一部がプラズマ溶射時に基材の第1の表面から基材の第2の表面上に偏向及び/又は反射されるように、基材の第1の表面及び基材の第2の表面が互いに基材ホルダに整列され得るように、被覆すべき基材がコンポーネント・マニピュレータに配置され得る。
【0096】
当然ながら、特定の実施例においては、本発明による被覆装置及び/又は本発明によるコンポーネント・マニピュレータは、構造上の観点から、上述のようなさらに他の方法の変更例を実施することも可能となるように構成され得ることが理解される。
【0097】
以下、図面を参照として本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】先行技術により知られている航空機用動力装置のタービン翼の被覆法を示す図。
【図2a】本発明によるコンポーネント・マニピュレータの第1の非常に単純な実施例を示す図。
【図2b】取外し状態における、図2aの実施例を示す図。
【図3】本発明によるコンポーネント・マニピュレータの特に好ましい一実施例を示す図。
【図4a】包入を伴わない図3の実施例を示す図。
【図4b】図4aの方向Iからの図4aの実施例を示す図。
【図4c】ベース・プレートを伴わない、図4a及び/又は図4bの斜視図。
【図4d】図4a及び/又は図4bの駆動方向においてベース・プレートを示す図。
【図4e】主要駆動軸を伴うシャフト・ジャケットを示す図。
【図5a】連結要素を伴う軸受ハウジングの構成の斜視図。
【図5b】連結要素を伴わない図5aの軸受ハウジングを示す図。
【図5c】セラミック連結要素を示す図。
【図6a】基材ホルダと連結要素との間におけるプラグ/回転連結部の形成を示す図。
【図6b】基材ホルダと連結要素との間のプラグ/回転連結部を示す図。
【図6c】ロッキング・ピンによるプラグ/回転連結部の回転に対する保護を示す図。
【図6d】連結要素を部分透視図において示した、プラグ/回転連結部の回転に対する保護を示す図。
【図7】本発明による、複数のタービン翼を同時被覆するための方法を示す図。
【図8】視認方向Bから図7の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、冒頭で先行技術を論じた際に既に説明した。したがって、ここからは、図2〜図8に記載の本発明による実施例の説明を行う。
【0100】
初めに図2a及び図2bを参照して、以降において符号1で全体的に示される本発明によるコンポーネント・マニピュレータの第1の非常に単純な実施例を説明する。図2aの実施例は、プラグ/回転連結部の機能を強調するために、図2bにおいては取外し状態において示される。すなわち、プラグ/回転連結部が、図2bにおいては基材ホルダ5と連結要素4との間で離され、連結要素51が連結要素4から引き抜かれている。
【0101】
図2a及び図2bの本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1の単純な実施例は、熱処理プロセスにおいて処理すべき基材2を動的に位置決めするために、基材2を伴う単一の基材ホルダ5を受けることを可能にするに過ぎない。この非常に単純な実施例においては、コンポーネント・マニピュレータは、主要回転軸線3を中心として回転可能な主要駆動軸30と、セラミック連結要素4と、連結要素4に連結可能な基材ホルダ5とを主要な要素として備える。本発明によれば、セラミック連結要素4は、基材ホルダ5が連結軸Vを中心として回転可能に配置されるように、プラグ/回転連結部により、プラグ/回転連結部の連結軸Vに対して引き抜き抵抗性を有し回転可能に取り付けられた態様で、基材ホルダ5の連結セグメント51に連結される。
【0102】
次に、図3〜図6dを参照して、本発明によるコンポーネント・マニピュレータの実施に特に関連する一実施例を示す。
【0103】
この例においては熱処理プロセスで処理すべき基材2は二重タービン翼2である。基材2を動的に位置決めするための図3の本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1は、主要回転軸線3を中心として回転可能な主要駆動軸30と、連結要素4と、連結要素4に連結可能な基材ホルダ5とを備える。この点に関して、本発明によれば、連結要素4は、セラミック連結要素4であり、基材ホルダ5の連結セグメント51が、プラグ/回転連結部により連結軸Vに対して引き抜き抵抗性を有し回転可能に固定された態様で、連結要素4に連結される。この点に関して、プラグ/回転方向の各連結軸Vが、主要回転軸線3に対して傾斜αの所定の角度で傾斜され、傾斜角度αは、実際には90°よりも概ね大きいか又は小さく、好ましい一実施例においては約30°である。この点に関して、各基材ホルダ5が、作動状態において連結軸Vを中心として回転可能であり、全ての基材ホルダ5が、主要駆動軸30を介して主要回転軸線3を中心として総じて回転可能であることが好ましい。
【0104】
明瞭に示すように、複数の連結要素4が、複数の基材ホルダ5を受けるために、主要回転軸線3から偏心してベース・プレート6に設けられる。
【0105】
詳細な図面を参照として以下にさらに詳細に説明するように、連結要素4は、例えば温度放射に対する保護のために、この例においては図示しないコーティング・ビームBSに対する保護のために、又は作動状態において連結要素4に影響を及ぼし得る他の損傷的影響に対する保護のために、カプセル12内に包入される。
【0106】
これに関して、カプセル12は、図3においてカプセル12により覆われる主要駆動軸30に回転可能に固定的に連結されたベース・プレート6を収容する。そのため、基材ホルダ5を伴う連結要素4を受けるための必須要素として見なすことはできない。
【0107】
ベース・プレート6も、カプセル12により覆われ、そのため図3においては視認できないが、ベース・プレート6は、冷媒流体KFを供給するために、連結要素32を介して主要駆動軸30に回転可能に固定的に連結される。連結要素4は、やはりカプセル12内に位置する駆動ユニット7により基材ホルダ5を回転させるために、接触要素8と有効連結状態にある。すなわち、特に主要駆動軸30は、接触要素8に対して回転自在に配置され、接触要素8は、特に好ましくは、駆動ユニット7により連結要素4を駆動させるための歯を有する、主要駆動軸30に対して固定的なシャフト・ジャケット31に配置された歯車となる。
【0108】
図3及び図2の本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1の実施例の構成要素を、図2の実施例において示される限りにおいて、以下の図4a〜図4eを参照として詳細に説明する。
【0109】
図4aを参照すると、図3の実施例が、包入を伴わずに示される。すなわち、カプセル12が除去された状態で示されるため、カプセル12の内部の構成要素及びそれらの協働をさらに良好に認識することができる。基材2を取り付けられた基材ホルダ5も、明瞭化のために除去される。
【0110】
初めに明瞭に認識されるように、主要駆動軸30は、主要駆動軸30に対して非回転シャフト・ジャケット31により、すなわち固定シャフト・ジャケット31により案内されて、主要回転軸線3を中心として回転可能である。これに関して、主要駆動軸30は、例えば適切な電気モータ又は油圧モータ又は空気圧モータ又は任意の他の適切な駆動装置によってなど、図示しない駆動装置により、作動状態において回転される。
【0111】
接触要素8はシャフト・ジャケット31に配置されるが、主要駆動軸30が上記のように案内され、接触要素8は、シャフト・ジャケットに対して回転可能に固定的に連結される。したがって、この実例においては、接触要素8は、駆動ユニット7により連結要素4を駆動するための歯を有する、シャフト主要駆動軸30に対して固定的なシャフト・ジャケット31に配置された歯車となる。
【0112】
それぞれ軸受ハウジング41内に配置された3つの連結要素4が、ベース・プレート6に設けられる。
【0113】
ベース・プレート6は、図4aにおいては視認できない連結要素32により主要駆動軸30に回転可能に固定的に連結され、それにより、ベース・プレート6は、主要回転軸線3を中心として主要駆動軸30により回転されることが可能となる。
【0114】
連結要素4がそれぞれ、駆動ユニット7を介して接触要素8と回転可能に固定された係合状態にあり、他方で駆動ユニット7が、歯車71により、固定歯車として設計された接触要素8と回転可能に固定された係合状態にあるため、固定接触要素8に対してベース・プレート6が回転すると、セラミック連結要素4もまた回転する。原則的に非常に単純な伝達機構となり得るこのタイプの駆動装置は、他の出願により当業者には知られており、したがって連結要素4の回転駆動の機能は、図4aより当業者には自明である。
【0115】
さらに認識されるように、ベース・プレート6に配置された冷却用分配器9が、軸受ハウジング41における連結部を介して、分離冷却ラインKLを経由して連結要素4までライン連結状態にてそれぞれ連結される。
【0116】
後に詳細に説明されるように、冷却用分配部9は、例えば、主要駆動軸30を介して、又は図4bに図示されるように連結要素32の供給開口を介して、冷却流体KFを中央に供給する。この冷却流体KFは、次いで、冷却ラインKLを経由して連結要素4にて基材ホルダ5及び/又は基材2を冷却するために、さらに案内され得る。これに関して、特に、窒素ガス若しくは希ガス、又は対応する機械加工プロセスに適する任意の他の適切なガス状冷却流体KF若しくは液体冷却流体KFなどのガスである、任意の適切な冷却流体が、冷却流体KFとして議論となる。
【0117】
これに関して、一般的には、さらにベース・プレート6が冷却流体KFにより冷却されるか、又は、ベース・プレート6を冷却するための追加ユニットが設けられるが、このユニットは例えば水又は適切なガスなどの他の冷却流体によりベース・プレート6を冷却することも可能である。
【0118】
図4bは、明瞭化のため図4aの方向Iから見た図である。この側面図においては、側方供給開口を介して冷却用分配器9まで冷却流体を供給する連結要素32が、明瞭に示される。
【0119】
この例においては、駆動機構の作動モードも、非常に明瞭に把握することが可能である。歯車として設計された接触要素8は、ねじにより固定軸シャフトに回転可能に固定的に連結される。連結要素32が、固定軸シャフト31及び/又は固定接触要素8に対してさらに螺合され、それにより、連結要素32も主要駆動軸30及び/又はベース・プレート6に対して固定される。これに関して、冷却用分配器9は、回転自在なベース・プレート6に対して回転可能に固定的に連結され、作動状態においてこのベース・プレート6と共に回転する。これに関して、冷却流体KFは、固定された連結要素から回転する冷却用分配器に中央ラインを経由して供給される。連結要素32内の冷却用分配器9は、この中央ラインにより、伝導的に連結されるが、回転可能に固定的には連結されない。
【0120】
図4a及び/又は図4bは、ベース・プレート6を伴わずに歯車71を介して連結要素4を駆動するために先述の駆動機構をさらに良好に理解するために、図4cの斜視図において再度示される。
【0121】
最後に、図4d及び図4eは共に、図4a及び/又は図4bの、主要駆動軸30を有する、駆動ユニット7を有するベース・プレート6及び/又は固定軸シャフト31を、個別にそれぞれ詳細に再度示す。
【0122】
図4dから分かるように、ベース・プレート6は、主要回転軸線3を中心として回転自在に配置されるが、駆動ユニット7の歯車71が、歯車形状接触要素8と係合状態にあるため、主要回転軸線3を中心とするベース・プレート6の回転により、図示しない連結要素4が、連結軸Vを中心として回転される。
【0123】
主要回転軸線3を中心として回転可能な固定シャフト・ジャケット31内に配置された、主要駆動軸30の構成及び機能が、図4eに明瞭に示される。
【0124】
図5aを参照すると、連結要素を有する軸受ハウジングの構成が、部分的に切断開口されたハウジングを伴う斜視図において概略的に示される。
【0125】
明瞭に示すように、連結要素4は、軸受ハウジング41内において軸受要素42により支持され、3つの軸受要素42が、軸受ハウジング41に設けられて、3点軸受を形成する。2つの軸受要素のみが、軸受ハウジング41の切断された領域に見ることができる。第3の軸受要素は、軸受ハウジング41の切断されない部分の下方に位置するため、図5aにおいては認識できない。3×2個の軸受ローラ72による連結要素4の支持は、連結要素4と軸受ローラ72との間の遊びが良好に形成可能となるという大きな利点を有する。さらに、連結要素4と軸受ローラ72との間に比較的狭い接触表面が形成される。それにより、熱伝達が比較的小さくされ、これらの軸受を小さなものに保つことが可能となり、それによりコストが削減される。これに関連して、軸受要素42は、CrNiとセラミックとの組合せにより、最大約500℃までの作動範囲向けに製造される。例えばSiセラミックは、最大約800℃まで軸受要素42に使用することが可能であり有利である。原則的には、Alが、軸受の材料としてさらに議論となり、最大で1900℃までの温度も可能となる。
【0126】
好ましくは、以下においてさらに説明される。例えば軸受の又は安全テープ11の必要なシールが、問題を伴わずに最大で1100℃までの作動温度を可能にする(例えばニードル・フリース3.5mmなどの)ニードル・フリースから製造され得る。
【0127】
これに関して、軸受要素42は、冷却流体KFと間接接触状態になされるので、冷却ラインKLを介して冷却流体KFにより冷却され得る。
【0128】
図5bは、さらに良好な理解のために連結要素4を伴わない、図5aの軸受ハウジング41を示す。連結要素4のための3点軸受を形成する3つの軸受要素42が明瞭に示される。これに関して、軸受ハウジング41は、例えば、熱の影響に対する保護のために、例えば最大で1100℃までの高い作動温度も許容するニードル・フリースにより被覆され得る。
【0129】
図5cは、軸受ハウジング41において使用するための連結要素4を示す。軸受ローラ72を受けるための受け溝Nが明瞭に示される。さらに、連結要素の内部に冷却流体KFを案内し得る貫通開口DGが明瞭に示される。この図面に関する連結要素の下方領域WZは、好ましくは金属から作製され、駆動ユニット7との結合をもたらす歯車を受ける役割を果たす。これに関して、連結要素は、例えばAl、SiO、又は異なる適切な工業用セラミックから製造される。図5c。ほぼ矩形の開口400が、この図による連結要素4の上方領域に明瞭に示されるが、この開口400は、基材ホルダ5の連結セグメント51を受ける役割を果たし、したがって基材ホルダ5と連結要素4との間にプラグ/回転連結部を形成する役割を果たす。
【0130】
さらに、回転に対する保護部材10であるセラミック・ロッキング・ピンのための穴101と、穴101内にセラミック・ロッキング・ピンを固定するための安全テープ11用の安全溝111とが明瞭に認識され得るが、これらについては以下の図6a〜図6dにおいて詳細に言及する。
【0131】
図6aを参照すると、プラグ/回転連結部が、基材ホルダ5の連結セグメント51と連結要素4との間においてどのように形成されるかが強調されている。既述のように、連結要素は、例えば、ほぼ矩形の開口400を有し、この開口400の中に、連結要素が挿入され得る。開口400は、当然ながら、任意の他の適切な形状を有することも可能である。これに関連して、連結要素51が、ほぼ矩形のクロージャ・パーツ511及び/又は任意の他のタイプの適切な形態部分をも有し、これにより、連結要素4の開口400内にある配向においてクロージャ・パーツ511を形状合致的に挿入することが可能となる。これに関して、連結パーツ51は、本実例においては中空部として設計され、それにより、開口400内に挿入する際には、ガイド・ピン401により定位置に受けられることが可能となる。ガイド・ピン401は、例えば、SiO(溶融石英)材料若しくはAl材料から、又は任意の他の高温耐熱性材料から構成することが可能である。連結パーツ51が、所定の深さで開口400内に挿入されると、基材ホルダ5及び/又は連結パーツ51は、例えば約90°又は180°又は任意の異なる角度などのある角度だけ回転され、クロージャ・パーツ511は、クロージャ溝により本質的に既知の態様にて開口400の内部にインターロックされ、それにより連結パーツ51は開口400内にしっかりと固定される。すなわち、連結パーツ51は、連結軸の方向へは基本的にもはや動くことができない。この状態が図6bに図示される。
【0132】
図6aからも分かるように、ガイド・ピン401は、中央穴を有し、この穴を介して、冷却流体KFは、連結パーツ51を経由して基材ホルダ5内に案内され得る。図6bによるこの特殊な実施例においては、基材ホルダ5は、冷却流体KFが、本実例においてはタービン翼である基材2の内部にさらに案内され、それにより例えば溶射プロセスの際に基材2を冷却するように構成される。冷却流体KFは、基材2を貫通して流れ、2つの矢印KFにより示されるように、最終的には基材2から周囲環境内に、例えば基材2がその時点において被覆されつつあるプロセス・チャンバ内に流れる。
【0133】
例えば被覆すべき基材2がタービン翼である場合には、冷却穴は、多くの場合にタービン翼内に設計され、この冷却穴を介して冷却ガスがタービン翼の作動状態において多くの場合に案内されるため、翼が比較的良好に冷却される。当然ながら、これらの冷却穴は、被覆プロセス中に被覆材料により閉鎖されてはならないことが理解される。そのため、冷却流体KFは、好ましくは、本発明による被覆プロセスの際に前述の冷却穴を経由して運び去られ、これは、タービン翼の冷却穴から流出する冷却流体KFによって、冷却穴から被覆材料が排除されるという好ましい効果を有する。
【0134】
連結パーツ51は、開口400内において連結軸Vを中心とする回転に対して固定されなければならないだけであることが明らかであり、図6cを参照としてこれを簡単に説明する。そうでないと、連結パーツ51が、開口400から再度滑り出ることが可能となるように、開口400内において回転するという事態が生じる虞がある。
【0135】
半径方向穴101が、連結パーツ51の回転を防ぐために、連結要素4及び連結パーツ51に設けられる。これらの穴は、開口400内に連結パーツ51が組み込まれた状態においては、例えば金属製又はセラミック製のロッキング・ピンの形態などの回転に対する保護部材10が、連結要素4及び連結パーツ51の穴101内に挿入され得るように相互に合致し、それにより、これらのロッキング・ピンは、連結要素4に対する連結パーツ51の連結軸Vを中心とする回転を防止する。これらのロッキング・ピンは、例えばCrNi鋼又は任意の他の適切な材料から作製され得る。
【0136】
連結要素4の上方部分が透視的に図示される図6dにおいては、回転に対する保護部材10、すなわちロッキング・ピン10が回転に対してどのように保護され得るかを明瞭に理解することができる。ロッキング・ピンが、作動状態においては半径方向穴から外されず、すなわち滑り出ないように、ロッキング・ピンは、図6dによれば、安全溝111内において連結要素4の周囲に円周方向に設けられた安全テープ11によってさらに固定され、それにより、ロッキング・ピン10の半径方向変位を効果的に防止する。
【0137】
当然ながら、本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1の用途によっては、1つのみ又は複数の基材ホルダ5が、連結要素4に、例えば図6bによれば回転可能な連結要素4に配置される。したがって連結軸Vを中心としてさらに回転可能となり、全ての基材ホルダが、コンポーネント・マニピュレータ1に対して単に回転可能に固定的に配置された、すなわち連結軸Vを中心としてさらに回転可能ではない、本質的に既知の基材ホルダとなることが理解される。又は、例えば図6bによれば、実際に好ましいものであるが、全ての基材ホルダ5が、回転可能な連結要素4に配置されるので、連結軸Vを中心としてさらに回転可能となる。
【0138】
図7及び図8においては、本実例においてはタービン翼2である複数の基材2を同時に被覆するための本発明による1つの方法が、本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1により概略的に示される。明瞭化のため、本発明によるコンポーネント・マニピュレータの詳細は、図7及び図8においては省略した。図7及び図8のコンポーネント・マニピュレータ1は、例えば図3のコンポーネント・マニピュレータであることが可能であり、3つの基材2の代わりに例えば4つの基材2などが、この実例においては同時に被覆される。
【0139】
図7及び図8のタービン翼2は、高負荷をかけられる航空機用タービン用の、本質的に既知のいわゆる二重翼2である。明瞭化のため、プロセス・チャンバ2は詳細には図示せず、4つのタービン翼2が、実例としてコンポーネント・マニピュレータ1上に示される。これに関して、図8は、図7の図を方向Bから見た図であり、被覆材料200の反射機構をさらによく理解させるための役割を果たすに過ぎない。そのため、以下の説明は、同時に図7及び図8に関するものである。
【0140】
当然ながら、実際には、さらに4つ未満の基材2がコンポーネント・マニピュレータ1に設けられ得ることが理解される。しかし、本発明によるこの方法の、及びコンポーネント・マニピュレータ1の1つの利点は、さらに5つ以上の基材2を同時に被覆することが可能であり、これにより本発明の方法が極めて効率的なものとなる点である。
【0141】
したがって、図7を参照すると、基材2に機能構造層20を形成するための本発明による被覆装置及び/又は被覆方法の好ましい一実施例が、概略的に示される。この方法においては、被覆材料200は、本実例においては冒頭に説明したPS‐PVD方法であるプラズマ溶射方法により、所定の低いプロセス圧力Pのプロセス・チャンバ内において、コーティング・ビームBSの形態で、基材2の基材表面211、212上に溶射される。これに関して、被覆材料200は、本実例においては約1ミリバールである低いプロセス圧力Pにてコーティング・ビームBSを焦点を有さない(defocusing)プラズマ中に注入され、そこで部分的に又は完全に溶融される。この場合には、十分に大きな比エンタルピーを有するプラズマが生成されるため、被覆材料200の大部分が気相になる。この実例においては、気化された材料のかなりの割合は、60重量パーセント超となる。構造層20は基材2に形成される。これに関して、本発明によれば、被覆すべき基材2は上述の本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1に配置される。すなわち、基材2の第1の表面211及び基材2の第2の表面212がコンポーネント・マニピュレータ1にて互いに整列され、それにより気相に転移した被覆材料200の少なくとも一部がプラズマ溶射時に第1の基材2の第1の表面211から第2の基材2の第2の表面212上に偏向及び/又は反射され、それにより第2の表面212が第1の表面211により偏向及び/又は反射された蒸気状被覆材料200によって被覆され、熱エネルギーが同時に与えられ、したがって十分な温度に維持される。
【0142】
これに関して、蒸気状の被覆材料200の反射プロセスは、図8において特に明瞭に認識できる。第1の表面211を備える第1のタービン翼2及び第2の表面212を備える第2のタービン翼2が、コンポーネント・マニピュレータ1に配置されることにより、これらの表面が相互に配列され、それにより気相の被覆材料200の少なくとも一部がプラズマ溶射時に第1の基材2の第1の表面211から第2の基材2の第2の表面212上に偏向及び/又は反射され、それにより第2の表面212がコーティング・ビームBSに対するシェード領域でも理想的に被覆できるかが明瞭に認識できる。
【0143】
これに関して、1つ又は複数の基材2が、上述のように主要回転軸線3を中心とするコンポーネント・マニピュレータ1の回転に加えて、連結軸Vを中心としてさらに回転可能となるので、それにより、交互に異なる表面211、212が、反射するように互いに正反対に配設され、それにより、第1の表面211から第2の表面212上への反射が、様々な角度で逐次行われ得るようになり、それにより、形成された機能構造層が、さらにより均一に、さらにより高い品質にて作製できる。
【0144】
用途に応じて、1つのみ又は複数の基材ホルダ5が、本発明によるコンポーネント・マニピュレータ1に配設される。例えば、図6bによれば回転可能な連結要素4の上に配設され、したがって、連結軸Vを中心としてさらに回転可能となる。全ての他の基材ホルダは、コンポーネント・マニピュレータ1に対して単に回転可能に固定的に配置され、すなわち連結軸Vを中心としてさらに回転可能ではない本質的に既知の基材ホルダとなる。又は、実際に好ましいものであるが、全ての基材ホルダ5が、例えば図6bによれば回転可能な連結要素4に配置され、したがって連結軸Vを中心としてさらに回転可能となる。
【0145】
これに関して、第1の表面211から第2の表面212上に偏向及び/又は反射される蒸気状被覆材料200の量は、第2の表面212がコーティング・ビームBSに直にさらされない場合に、例えば図7及び図8に図示されるように、コンポーネント・マニピュレータ1が被覆プロセスの際に所定のVDにて主要回転軸線3を中心として回転されることにより、第2の表面212が所定の表面温度に維持され十分に被覆されるように設定することが可能である。
【0146】
主要回転軸線3を中心とするコンポーネント・マニピュレータ1の回転及び/又は連結軸Vを中心とする基材2の回転に加えて、コーティング・ビームBSは、実例として図7及び図8に示すように、被覆プロセスの際に所定の角度空間領域Ωにおいて被覆すべき基材2上に反復的に枢動されることが可能であり、それによりコーティング・ビームBSに対する基材2のさらにより均一な露出が実現される。それと同時に、基材2がコーティング・ビームBSに対して直接的にはさらされない時間が短くなり、それにより、基材2のさらにより均一な調節も実現される。
【0147】
さらに、本実例においては、プラズマ源Qが、1つ又は複数の空間方向にその経路に沿って変位され得る、及び/又はコンポーネント・マニピュレータの位置が、1つ又は複数の空間方向に変更され得る、及び/又はマニピュレータが、経路Yに沿って1つ又は複数の空間方向に変更され得る点において、コンポーネント・マニピュレータ1と、1つ又は複数の空間方向に所定の経路間隔X、Yでプラズマを生成するプラズマ源Qとの間の空間距離が設定可能となる。
【0148】
さらに、コンポーネント・マニピュレータ1は、図7及び図8の特定の実施例における所定の枢動領域Θ内で、コーティング・ビームBSに対して枢動され得る。
【0149】
例えば、タービン翼2の上に熱障壁被覆を形成するための本質的に既知の細粒溶射粉末を、被覆材料200として使用することが可能である。コーティング・ビーム自体は、本実例においては約2,000m/sとなる音速の超音波速度で作動され、衝撃状波又は衝撃状状態が、コーティング・ビーム6において形成され得る。本実例におけるコーティング・ビーム6は、6,000K〜10,000Kの温度を有する。
【0150】
当然ながら、本発明は、説明された実施例に限定されず、特に、本明細書の枠組み内において説明された本発明によるこれらの実施例は、任意の適切な態様で相互に組み合わせることも当然ながら可能であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理プロセスにおいて処理すべき基材(2)を動的に配置するためのコンポーネント・マニピュレータであって、主要回転軸線(3)を中心として回転可能な主要駆動軸(30)と、連結要素(4)と、前記連結要素(4)に連結可能な基材ホルダ(5)とを備えるコンポーネント・マニピュレータにおいて、
前記連結要素(4)は、セラミック連結要素(4)であり、
前記基材ホルダ(5)の連結セグメント(51)が、プラグ/回転連結部により、前記プラグ/回転連結部の連結軸(V)に対して引き抜き抵抗性を有し回転可能に固定された態様で、前記連結要素(4)に連結可能であり、
前記基材ホルダ(5)は、前記連結軸(V)を中心として回転自在に配置されることを特徴とする、コンポーネント・マニピュレータ。
【請求項2】
前記基材ホルダ(5)を伴う前記連結要素(4)を受けるために、前記主要駆動軸(30)に回転可能に固定的に連結されるベース・プレート(6)が設けられている、請求項1に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項3】
前記ベース・プレート(6)は、冷却流体(KF)を供給するために、連結要素(32)を介して前記主要駆動軸線(3)に回転可能に固定的に連結される、請求項2に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項4】
複数の連結要素(4)が、複数の基材ホルダ(5)を受けるために、前記主要回転軸線(3)に対して偏心して前記ベース・プレート(6)に設けられる、請求項1又は請求項2に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項5】
前記連結要素(4)は、前記基材ホルダ(5)を受けるために、駆動ユニット(7)を介して接触要素(8)と作動連結状態にある、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項6】
前記主要駆動軸(30)は、前記接触要素(8)に対して回転自在に配置される、請求項5に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項7】
前記接触要素(8)は、前記主要駆動軸(30)に対して動かないように固定されたシャフト・ジャケット(31)に配置された歯車であり、前記駆動ユニット(7)により前記連結要素(4)を駆動するための歯を有する、請求項5又は請求項6に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項8】
前記プラグ/回転連結部の前記連結軸(V)は、前記主要回転軸線(3)に対して所定の傾斜角度(α)で傾斜している、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項9】
前記冷却流体(KF)は、前記ベース・プレート(6)及び冷却ライン(KL)に配置された冷却用分配器(9)を経由して、前記連結要素(4)まで、及び前記基材ホルダ(5)の前記連結セグメント(51)まで供給可能である、請求項3から請求項8までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項10】
前記連結要素(4)は、軸受ハウジング(41)内において軸受要素(42)により支持され、好ましくは3つの軸受要素(42)が、前記軸受ハウジング(41)内に設けられて3点軸受を形成し、前記軸受要素(42)が、前記冷却流体(KF)との間接的接触により冷却され得るようになっている、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項11】
前記連結要素(51)は、回転に対する保護部材(10)により前記連結要素(4)に対するねじれを防ぐように固定され、前記回転に対する保護部材(10)は、ロッキング・ピンであり、特に金属製又はセラミック製のロッキング・ピンであり、前記ロッキング・ピンは、前記連結要素(4)に設けられた安全テープにより固定される、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ(1)を使用する被覆方法。
【請求項13】
基材(2)上に機能構造層(20)を形成するための請求項12に記載された被覆方法であって、
被覆材料(200)が、プラズマ溶射法により、プロセス・チャンバ内において所定の低いプロセス圧力(P)にてコーティング・ビーム(BS)の形態で基材(2)の表面上に溶射され、
前記被覆材料(200)は、200ミリバール未満である低いプロセス圧力(P)にて前記コーティング・ビーム(BS)を非焦点化させるプラズマ中に注入されて、十分な大きさの比エンタルピーを有するプラズマが生成され、それにより、前記被覆材料の少なくとも5重量パーセントの割合であるかなりの割合の前記被覆材料(200)が気相へ転移して、前記機能構造層(20)が前記基材(2)上に形成され、
被覆すべき前記基材(2)が、前記基材(2)の第1の表面(211)及び前記基材の第2の表面(212)が相互に整列されることにより、プラズマ溶射時に、気相へ転移した前記被覆材料(200)の少なくとも一部が前記基材(2)の前記第1の表面(211)から前記基材(2)の前記第2の表面(212)に偏向されるように、主要回転軸線(3)を中心として回転可能な前記基材ホルダ(5)に配置される、被覆方法。
【請求項14】
基材(2)上に機能構造層(20)を形成するための請求項12又は請求項13に記載された被覆方法を実施するための被覆装置であって、被覆材料(200)がプラズマ溶射方法により所定の低いプロセス圧力(P)にてコーティング・ビーム(BS)の形態で基材(2)の表面上に溶射されるプロセス・チャンバを備え、前記被覆材料(200)は、200ミリバール未満である低いプロセス圧力(P)にて前記コーティング・ビーム(BS)を非焦点化させるプラズマ中に注入されて部分的に又は完全に溶融可能であり、十分な大きな比エンタルピーを有するプラズマを生成することが可能なプラズマ源(Q)及び/又はプラズマ源(Q)を備える溶射ピストルが設けられ、それにより前記被覆材料の量の少なくとも5重量パーセントの割合であるかなりの割合の前記被覆材料(200)が、気相へと転移可能であり、前記構造層(20)が前記基材(2)上に形成可能となる、被覆装置において、請求項1から11までのいずれか一項に記載のコンポーネント・マニピュレータが、処理すべき前記基材(2)を動的に位置決めするために設けられることを特徴とする、被覆装置。
【請求項15】
前記基材(2)が、特に航空機タービン用の、ガス・タービン用の、蒸気タービン用の、又は水力タービン用のタービン翼である請求項12又は請求項13に記載された被覆方法により基材(2)を被覆するための請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載されたコンポーネント・マニピュレータ(1)の使用又は請求項14に記載された被覆装置の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−193450(P2012−193450A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41315(P2012−41315)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(500063790)ズルツァー・メットコ・アクチェンゲゼルシャフト (30)
【氏名又は名称原語表記】Sulzer Metco AG
【Fターム(参考)】