説明

基板の搬送装置及び搬送方法

【課題】基板表面が乾燥しないように水中で基板の表面に非接触で基板を保持し、効率良く搬送する。
【解決手段】液中に水平に浸漬された基板の上方に設けられた噴射ノズルで前記基板の上方から前方に向けて液体を噴射して基板を前方に送り出す基板の搬送装置において、基板4の搬送方向に沿って往復動可能に搬送ユニット30を設け、前記搬送ユニット30は、上下に揺動可能に設けられ基板4を静止させるストッパ34と、前記ストッパ34の後方に設けられ、前記基板4の後端よりもやや後方から液体45を前方に向けて噴射する噴射ノズル35とを一体に備え、 前記噴射ノズル35からの液体45の噴射により、基板4を浮上させると共に前記ストッパ34に基板4を当接させて静止させた状態で搬送ユニット30を移動させて基板4を搬送するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ等の基板を搬送する基板の搬送装置及び搬送方法に関する。さらに詳しくは、基板を水等の液中に浸漬した状態で搬送する基板の搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池や半導体チップ等の製造にあたり、シリコン等のインゴットがワイヤソー等の切断装置で枚葉状に切断され、多数のウエハが形成されている。
【0003】
例えばワイヤソーで切断されて形成されたウエハは、切断屑や切断時に使用されるスラリ等で汚染されているため、各種の洗浄液で洗浄され、その後、切断時に固定されていたカーボンやセラミック等のダミー部材が剥離されることで、多数枚の積層されたウエハが得られる。
【0004】
そして、上記の積層されたウエハは、上記の洗浄工程において、汚れの乾燥による固着やウォータースポットによるシミの残りを防止するために水中で1枚ずつ分離され、カセットに収納された後、乾燥工程等の次工程に搬送される(例えば特許文献1)。
【0005】
また、上記特許文献1のようなウエハの処理システムは、大掛かりでコストも高く付くものとなるため、特に太陽電池の製造においては、一連の工程において未だ手作業で行われている現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−237770号公報、図3、図14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1においては、積層されたウエハを一枚ずつ分離するにあたり、水中に積層されたウエハに搬送方向と反対側の斜め上方から第1噴射ノズルで水を噴射し、最上部のウエハの浮き上がりを防止しながら、この状態で第2の噴射ノズルで積層されたウエハの最上部の上面に対して搬送方向の斜め上方から水を噴射して、積層されたウエハを最上部から1枚ずつ分離するようになっている。
【0008】
しかしながら、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルの噴射方向が互いに打ち消し合うように作用するため、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルの噴射する水圧や噴射方向の調整が微妙であり、調整に時間を要する問題があった。
【0009】
また、ウエハの端部を下方向から受けるシュータ(ガイドレールに相当)に乗って水流で搬送されるようになっているが、水の抵抗によりウエハの先端が上下方向にばたついて円滑に移動しない問題があった。
【0010】
また、ウエハの自重と上方からの水圧により、ウエハがシュータに押し付けられ、さらに第1噴射ノズルの水流でウエハを上方から押え付けるので、搬送距離が長くなるとシュータにウエハが貼り付いてウエハが停止し、ウエハを搬送できなくなる問題があった。
【0011】
また、水流のみにより、ウエハを移動させるため、水流の乱れによりウエハを正確に搬送することが困難な問題や水流速度を一定以上高めることが困難であり、水流速度を保つことも困難であることから、搬送速度にばらつきが生じ、高速化することが困難であった。
【0012】
また、吸着パッドで吸着して搬送する場合は、ウエハに吸着痕が残ったり、また、水中から取り出した場合は、ウエハの表面が乾燥して汚れが固着したり、ウォータースポットが生じたりして、その後の工程で取り除くことが非常に困難になる問題があった。
【0013】
そこで、本発明の課題は、液中でウエハ等の基板面に非接触で搬送でき、さらに液中でウエハを安定で高速に搬送できる基板の搬送装置及び搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで請求項1の発明は、液中に水平に浸漬された基板の上方に設けられた噴射ノズルで前記基板の上方から前方に向けて液体を噴射して基板を前方に送り出す基板の搬送装置において、前記基板の搬送方向に沿って往復動可能に搬送ユニットを設け、前記搬送ユニットは、上下に揺動可能に設けられ前記基板を静止させるストッパと、前記ストッパの後方に設けられ、前記基板の後端よりもやや後方から液体を前方に向けて噴射する噴射ノズルとを一体に備え、前記噴射ノズルからの液体の噴射により、基板を浮上させると共に前記ストッパに基板を当接させて静止させた状態で搬送ユニットを移動させて基板を搬送するようにした構成を採用した基板の搬送装置である。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、前記噴射ノズルからの液体の噴射が、前記基板の後端よりも前方から液体を前方に向けて噴射するようにした構成を採用した基板の搬送装置である。
【0016】
また、請求項3の発明は、液中に水平に浸漬された基板の上方から前方に向けて噴射ノズルから液体を噴射して前記基板を前方に送り出す基板の搬送方法において、搬送ユニットの後方に設けられた噴射ノズルにより、液体を前記基板の後端部付近から前方に向けて噴射し、基板を浮上させると共に前記液体の噴射により搬送ユニットの前端部に設けられたストッパに前記基板を当接させて静止させた状態で前記搬送ユニットを移動させて基板を搬送するようにした構成を採用した基板の搬送方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板面とは非接触に、しかも、基板を乾燥させること無く搬送できるので、基板面にウォータースポット等のシミの残存を防止できる。
【0018】
本発明によれば、基板を液中で安定に保持できるので、液流だけで搬送する場合のように液流の乱れによる基板のばたつきを防止でき、しかも、基板を液中で基板面と非接触に保持しながら、基板を搬送ユニットで直接移動させるので液流の方向や速度に依存せず安定で高速な搬送が行える。
【0019】
さらに本発明によれば、基板を搬送ユニットから容易に非接触で離脱できるので、基板を傷付けることなく、その後のカセット等への収納が容易に行なえ、また、基板の割れや欠けによる不良品を容易に離脱させて排除することができる。
【0020】
また、本発明によれば、噴射ノズルで基板への浮力とストッパ方向への推進力を与えるだけで、基板を搬送ユニットに保持できるので、複数の噴射ノズルの方向調整や複数の噴射ノズルの噴射力の微妙な調整が必要なく、設置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は、本発明の基板搬送装置を組込んだウエハ分離収納装置の一実施形態を表す平面図である。
【図2】は、図1のA−A方向矢視断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の基板搬送動作を表す説明図である。
【図4】(c)及び(d)は、本発明の基板搬送動作を表す説明図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明の基板搬送装置の一実施形態を表す説明図である。
【図6】は、基板の浮上状態を説明する説明図である。
【図7】は、図3(b)のバッファ部を搬送方向前方から見た基板受渡し動作を表す説明図である。
【図8】(a)及び(b)は本発明の基板搬送装置の別の実施形態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の基板搬送装置の一実施形態について図1乃至図8に基づいて以下に説明する。なお、理解が容易なようにウエハの厚みについてはやや誇張して描いてある。また、噴射ノズル等の固定部材についても一部省略して描いてある。
【0023】
図1は、本発明の基板搬送装置を組込んだウエハ分離収納装置の全体を表す平面図であり、図2は図1のA−A方向から見た矢視断面図である。
【0024】
図1及び図2のようにウエハ分離収納装置1は、全体が側壁2で構成される貯水槽3内に形成され、ウエハ4の一連の分離収納工程は、ウエハ4を貯水槽3に張られた水中に浸漬した状態で行うようになっている。
【0025】
前記ウエハ分離収納装置1は、左側から順に、積層したウエハ4を載置するウエハ載置部5と、前記ウエハ載置部5の搬送方向側方(図1及び図2の図示右方向)に沿ってウエハ4の幅方向両端部を夫々支持するように設けられたガイドレール6、6と、前記ガイドレール6の前端部に設けられ、ウエハ載置部5から取り出されたウエハ4を一時的に待機させるバッファ部7と、前記バッファ部7の搬送方向側方に設けられ割れや欠けのある異常なウエハ4を排出するウエハ排出部8と、バッファ部7から搬送されるウエハ4の幅方向両端部を夫々支持するように設けられたガイドレール9、9と、ガイドレール9上に搬送されたウエハ4を収納するウエハ収納部10とが横方向に沿って一列に設けられている。また、前記バッファ部7とウエハ収納部10間の上方には、ウエハ4を搬送する搬送ユニット30が設けられている。
【0026】
次にウエハ分離収納装置1の詳細について図1及び図2に基づいて以下に説明する。
【0027】
前記ウエハ載置部5は、ウエハ分離収納装置1の左側側壁2の下方に垂直に設けられた支持板11上に形成され、支持板11の幅方向両側部には、ウエハ4の横方向への動きを規制するガイド板16が立設されている。
【0028】
また、この支持板11の後端上には側壁2に沿ってレール13が立設されており、同じくこの支持板11上には支持板11と分離してL字形状の昇降枠12が設けられ、この昇降枠12の後方に設けられたスライダ14が前記レール13と摺動可能に嵌合することで昇降枠12は、図示しない適宜の駆動源で昇降可能になっている。
【0029】
また、前記昇降枠12は、ウエハ4を積層する積層面がコの字状に形成され、ウエハ4との接触が最低限となるようになっており、その上面の後方にはウエハ4の後端をガイドする2本の支柱15が立設されている。なお、この支柱15のウエハ4との接触部は適宜なシリコーンゴム等の柔軟な部材が設けられ、ウエハ4が支柱15と接触しても破損しないようになっている。
【0030】
また、このウエハ載置部5の水面46の上方には、水45を噴射する噴射ノズル17が搬送方向に対して前下がり傾斜状態で図示しない支持枠に固定して設けられており、この噴射ノズル17には、水45を供給する図示しない適宜な供給源が設けられている。なお、上記は適宜、気泡を含有する水を噴射する噴射ノズルを使用しても良い。
【0031】
また、前記噴射ノズル17から噴射する水45は、ノズル先端から放射状に広がり、噴射した水面に放射円が生じるものを好ましく使用できるが、これに限定されず、横方向に扇状に広がるようなものであっても良い。
【0032】
前記ウエハ載置部5の搬送方向側方(図1及び図2の図示右側)には、ウエハ載置部5に積層されたウエハ4の前方側面に向けて気泡を含んだ水45を噴射する噴射ノズル18が設けられ図示しない適宜な支持枠に固定されている。
【0033】
前記噴射ノズル18は、円筒状に形成され、そのノズルの途中に上下方向に貫通した穴20が設けられ、前記噴射ノズル18の下方には前記穴20の下方にパイプの開口端が位置するようにエアパイプ21が設けられている。なお、前記噴射ノズル18の先端部はパイプ状のものが使用され、水45等の液体を噴射できれば形状は限定されない。
【0034】
また、前記噴射ノズル18は適時バルブを切り替えて水を供給できるように図示しない水供給ホースが接続され、エアパイプ21には、エア供給源がエアホースによって接続されている。
【0035】
従って、噴射ノズル18に水を供給するとともにエアパイプ22に空気を導入することでエアパイプ22から気泡が発生され、気泡が水中を上昇して穴20の内部に進入するようになっている。この時、噴射ノズル18の上側の穴20からは、噴射ノズル18を通る水流の勢いによって周囲の水45が引き込まれ、噴射ノズル18の下側の穴20からは気泡が吸い込まれて、噴射ノズル18の先端から気泡を含んだ水45が噴射されるようになっている。
【0036】
前記ガイドレール6は、断面がL字形状に形成され(図7参照)、ウエハ載置部5とバッファ部7との間にウエハ4の幅方向の両端部が端部から5mm程度重なるように搬送方向に沿って設けられ、図示しない適宜の支持枠に固定されている。なお、このガイドレール6は、水面46から5mm程度下方に位置するように設けられている。また、ウエハ載置部5とバッファ部7との間には、図示しない適宜の光学センサが設けられ、ウエハ4に光を照射して割れや欠けを検出するようになっている。
【0037】
また、前記ガイドレール6、6間の後端部(ウエハ載置部5側の端部)下方には、搬送方向と垂直に積層ウエハ4の最上段のみ通過できる高さのストッパ壁51が立設されており、ウエハ4の複数枚の飛び出しを防止している。なお、このストッパ壁51のウエハ4と接触する可能性のある部分にゴム等の柔軟な部材を設けておくことで、ウエハ4のストッパ壁51への接触による破損を防止できる。
【0038】
前記バッファ部7について図1及び図2並びに図7に基づいて説明する。前記バッファ部7は、ガイドレール6の前端部に形成され、ガイドレール6の前方には、水面から僅かに突出するようにストッパ22が設けられ、ガイドレール6上を水流によって搬送されてきたウエハ4の前端部と当接してウエハ4を静止させるようになっている。
【0039】
前記ストッパ22は、搬送されるウエハ4の幅方向に間隔を開けて2本立設され、ストッパ22の下端は、逆L字形状の固定ブロック23に固定されており、この固定ブロック23の他端は、搬送方向に垂直に設けられた軸24に軸止されている。
【0040】
図7のように前記軸24の一端には従動プーリ25が軸止されており、この従動プーリ25の上方には固定枠28が水面上に設けられている。また、この固定枠28の立設部に設けられたモータ29の軸に駆動プーリ27が軸止され、この駆動プーリ27と前記従動プーリ25との間にベルト26が張設されている。従って、前記モータ28を駆動させて軸24を搬送方向に回転させることで、前記ストッパ22が搬送経路上のウエハ保持位置から退避位置へと揺動するようになっている。
【0041】
図1及び図2のように前記搬送ユニット30は、貯水槽3の側壁2間に搬送方向に沿って懸架された支持枠31上にバッファ部7とウエハ収納部10との間に渡って敷設されたレール32上を往復動可能に設けられている。前記搬送ユニットは、前記レール32に沿ってレール32の手前側に立設されたベース板33と、このベース板33の前端部に設けられたストッパ34と、前記ストッパ34の後方で前記ベース板33の後端部付近に設けられた噴射ノズル35とで構成されている。
【0042】
また、前記ベース板33上には、搬送方向と垂直に奥側に向けて支持板36が延設され、この支持板36のベース板33と他端側にはスライダ37が前記レール32と摺動可能に嵌合されており、図示しない適宜の駆動源により、搬送ユニット30は、レール32に沿ってバッファ部7とウエハ収納部10との間を往復動可能になっている。
【0043】
また、前記ベース板33の前端部には、搬送方向と垂直に固定枠38が図示手前側に向けて懸架され、前記固定枠38に沿って設けられた軸39がこの固定枠38の一端に軸支されており、この軸39に間隔を開けて2個の固定ブロック40、40が軸止されている。前記両固定ブロック40、40の夫々の下端にはストッパ34が下方に向けて立設されている。
【0044】
また、前記固定枠38の後端部には、図示しない適宜の光学センサが設けられ、後述するウエハ4を静止状態で保持した際にウエハ4の有無を検出するようになっている。
【0045】
また、前記軸39は、ベース板33を介してモータ41に接続されており、このモータ41を駆動させることで、前記ストッパ34は、ウエハ4と当接してウエハ4を静止させるウエハ保持位置とウエハ4との当接を解除してウエハ4を開放する退避位置との間を揺動可能になっている。
【0046】
また、前記ストッパ34はウエハ保持位置に位置する際、その先端部が水中で前記ガイドレール6上に位置するウエハ4の前端面と当接する程度の長さに形成されており、このストッパ34の先端部には後述するウエハ4を静止させて保持する際にウエハ4の前端部がストッパ34から滑って外れないようにその外周に滑り止め42が設けられている。なお、ストッパ34には、ウエハ4との当接位置にウエハがストッパ34からずれないように溝を形成しても良い。
【0047】
前記ベース板33の後端部付近には、後下がり傾斜状態で支持アーム43が設けられており(図2及び図5(a)参照)、この支持アーム43の傾斜下端には図示手前方向に向けてノズル固定板44が延設され、このノズル固定板44には、保持するウエハ4の幅方向中央の後端部付近に向けて前下がり傾斜状態で噴射ノズル35が設けられている。また、前記噴射ノズル35は、図示しない適宜のバルブと水を供給する適宜のポンプが接続され、ノズル先端から水45を放射状に噴射するようになっている。
【0048】
上記噴射ノズル35からウエハ4に向けて水45を噴射することで、詳細は後述するが、ウエハ4が水中で浮上させられてストッパ34に当接し、ウエハ4が、搬送ユニット30に静止状態で保持されるようになっている。また、前記のようにウエハ4を保持した状態で搬送ユニット30がバッファ部7とウエハ収納部10との間を往復動してウエハ4を搬送するようになっている。
【0049】
次にウエハ排出部8について説明すると、ウエハ排出部8では、ウエハ載置部5からバッファ部7に至るまでの間に設けられた図示しない適宜の光学センサでウエハ4の割れや欠け等が検査されるようになっており、ウエハ排出部8には、この検査で異常が認められたウエハ4を収納する収納ボックス50が図示しない適宜な支持枠に取出し可能に固定されている。
【0050】
上記の検査で異常が認められなかったウエハ4は、搬送ユニット30によって上記のウエハ排出部8をそのまま通過し、ガイドレール9上を経由してウエハ収納部10に向けて搬送される。なお、検査を必要としない場合は、このウエハ排出部8を省略した構成とすれば、さらに高速にウエハ4の収納が行える。
【0051】
前記ウエハ排出部8とウエハ収納部10との間には、前記ガイドレール6と同様にガイドレール9が設けられ、搬送ユニット30が保持したウエハ4をウエハ収納部10に収納する際にガイドするようになっている。
【0052】
次にウエハ収納部10について図2に基づいて説明すると、ウエハ収納部10には、収納カセット55を載置固定する逆L字形状の載置台56が設けられており、この載置台56はその背面にスライダ57が設けられ、このスライダ57が貯水槽3の側壁2に立設されたレール58と摺動可能に嵌合することにより載置台56は図示しない適宜な駆動源により昇降可能になっている。
【0053】
前記載置台56には、スリット状に溝が形成された複数の支柱59が立設されることにより形成された収納カセット55が固定され、この収納カセット55の支柱59に形成された溝部の下段からウエハ4が順次上段に向けて収納されていくようになっている。従って、収納されたウエハ4は順次収納カセット55と共に水中方向に下降して行くことになり、空気中に晒されることが無い。なお、この収納カセット55の収納ピッチはウエハ4の厚み、その後の工程に応じて適宜選択できる。また、収納カセット55の形状もウエハ4の形状に合わせ適宜のものが使用できる。
【0054】
このウエハ収納部10の搬送方向手前(図2の左方向)には水45を噴射する噴射ノズル48が収納カセット55の斜め下方に前上がり傾斜状態で設けられ、ガイドレール9の前端部を通過したウエハ4に水流を与えて収納カセット55内に送り出すようになっている。なお、ガイドレール9の前端部上には適宜ガイドローラを設けて、上方向のウエハ4の移動を規制するようにしても良い。
【0055】
以上が本発明の基板の搬送装置である搬送ユニット30を適用したウエハ分離収納装置1の構成であり、次に上記ウエハ分離収納装置1の動作及び本発明の基板の搬送装置の動作について図3乃至図7に基づいて以下に説明する。
【0056】
図3(a)及び(b)は、本発明の基板の搬送装置を適用したウエハ分離収納装置1の動作説明図である。
【0057】
まず、図3(a)のようにウエハ載置部5に設けられた昇降枠12上にワイヤソー等で切断され、粗洗浄が終了したウエハ4を積層状態で載置する。前記ウエハ4の載置は、前工程から自動的にラインで送られてくるようにしても良い。なお、ウエハ4の最上段は、水面46から3〜5mm程度の位置に位置させる(ウエハ4の厚みや大きさに応じて、この値は適宜変更すれば良い)。
【0058】
また、ウエハ4が載置された後、ウエハ載置部5の水中前方に設けられた噴射ノズル18に水45を供給すると共に穴20にエアパイプ21から空気を導入することで噴射ノズル18から気泡を含んだ水45が積層ウエハ4の前端側側面の上段付近に向けて噴射される。
【0059】
なお、ここで噴射する水45に含有させる気泡の大きさは、使用するウエハ4の材質や厚みで適正な大きさが決まるため特に限定はしないが、好ましくは、10μm以上3mm以下のものが利用できる。また、例えば150〜300μm厚みのシリコンウエハであれば、ウエハ4の間の隙間を的確な間隔に維持するとともに円滑に抵抗無くウエハ4を1枚ずつ分離させる面から0.5mm以上1mm以下の気泡径のものが好ましく利用できる。なお、あまり、気泡径が大きいとウエハ4が暴れたり、ウエハ4の隙間内に気泡56を維持できなくなる問題があり、逆に気泡径が小さすぎると、ウエハ4に達するまでに気泡56が消失したり、ウエハ4の隙間を維持できなくなる問題があるが、気泡径はウエハ4の材質や厚みに応じて適宜選択すれば良い。
【0060】
このように気泡を含んだ水45が積層されたウエハ4の前端側面に噴射されることで、水流の勢いによってウエハ4間に隙間が生じ、さらにその隙間に気泡が導入される。なお、この時、水流のみでは、一度開いたウエハ4間の隙間が閉じ易いため、気泡を含んだ水を噴射することが好ましく、この介在した気泡が潤滑作用によりウエハ4のその後の分離を容易にする。なお、適宜、水温を高めるヒータ等を設ければ、水45の分子運動を活性化でき、ウエハ4の分離が円滑に行える。
【0061】
この気泡を含んだ水45を積層されたウエハ4の前端側面に噴射した状態で、ウエハ載置部5上に設けられた噴射ノズル17及びウエハ載置部5の前方に設けられた噴射ノズル19から水45を噴射させる。この時、噴射する水45は放射状に拡散するものを好ましく用いることができるが、これに限定されず、各種の噴射形状のノズルを用いることができる。すなわち、搬送方向へのウエハ4への推進力を付与すると共にウエハ4の上面にウエハ下面よりも速い水流を形成できるものが好ましく使用でき、このことにより、ベルヌーイ効果により、ウエハ4の上面に負圧が作用してウエハ4が浮上する。また、同時にウエハ4の上面の水45が噴射ノズル17の噴射により押しのけられることでウエハ4に浮力が発生し、ウエハ4が浮上することになる。
【0062】
また、噴射ノズル19からの水45の噴射により、ウエハ載置部5の最上段のウエハ4はガイドレール6に沿って搬送される。この時、ウエハ載置部5の前方には最上段のウエハ4のみが通過できるように、ストッパ壁51が設けられているので、ウエハ4の複数枚取りが防止される。
【0063】
この後、前記ウエハ4は、水流によってガイドレール6の前端部のバッファ部7まで搬送され、前記バッファ部7に搬送されたウエハ4は、バッファ部7の前端に設けられたストッパ22と当接して静止する。
【0064】
次に図3(b)のように搬送ユニット30がレール32に沿ってバッファ部7まで移動しながら、ストッパ34がバッファ部7上のウエハ4に当接したことを図示しない適宜の光学センサで検出することで搬送ユニット30は停止する。この時、図7のようにバッファ部7のストッパ22と搬送ユニット30のストッパ34は、干渉しないように設けられているので、ウエハ4は、両ストッパ22、34に当接して静止している。
【0065】
上記の状態で、図3(b)のように搬送ユニット30に設けられた噴射ノズル35から水45をウエハ4の幅方向中央後端部付近に向けて噴射する。
【0066】
上記の水45の噴射により、ウエハ4の上面にはウエハ4の前端部に向けてウエハ4の下面よりも速い水流が発生し、ベルヌーイ効果により、ウエハ4の上面側が負圧な状態となって、ウエハ4はガイドレール6から水面付近に浮上する。
【0067】
さらに、図6のように、ウエハ4上面側の水45が押しのけられることにより、ウエハ4に浮力が発生し、ウエハ4は水面付近に浮上する。また、図5(a)及び(b)のように噴射ノズル35から噴射され、ウエハ4の後端から後方にはみ出した水45は、ウエハ4の後端下面から前方に向けて気泡を含有した巻上げ流を発生し、噴射による上からの押圧力を緩和させてウエハ4を水面付近で水平に保つ作用をもたらす。この時、上記気泡が、ウエハ4の下面に回り込んでさらに浮力を付与し、ウエハ4の姿勢を水平に保つことになる。そして、ウエハ4は、浮上状態で搬送方向への水流により、ストッパ34に当接して静止状態で搬送ユニット30に保持される。
【0068】
次に図4(c)のように、割れや欠け等の無い正常なウエハ4は、搬送ユニット30に静止状態で保持されたまま、搬送ユニット30のレール32に沿った移動により、ウエハ排出部8上をそのまま通過してガイドレール9上に搬送される。
【0069】
次にガイドレール9の前端部下方に設けられた噴射ノズル60から搬送方向斜め上方に向けて水45を噴射すると共に図4(d)のごとく搬送ユニット30の軸39をモータ41の駆動で反時計方向に回転させることでストッパ34を上方に回転させて退避位置に位置させる。
【0070】
上記のストッパ34の退避により、搬送ユニット30に静止状態で保持されていたウエハ4が開放され、噴射ノズル35及び噴射ノズル60からの水45の噴射による水流により、ウエハ4は支柱59の溝に案内されながら収納カセット55内に収納される。
【0071】
上記と同時にバッファ部7のモータ29を反時計回りに駆動して固定ブロック23を回転させてストッパ22を初期状態のウエハ保持位置に位置させる。
【0072】
上記の動作を繰り返しながら、順次ウエハ載置部5の昇降枠12を上昇させて1枚ずつウエハ4を分離搬送すると共にウエハ収納部10の載置台56を下降させて、ウエハ4を収納カセット55に1枚ずつ収納していく。なお、搬送ユニット30がバッファ部7でウエハ4を受け取った後、搬送ユニット30でウエハ4を搬送している時に、ウエハ載置部5から、図3(a)のように次のウエハ4を分離してバッファ部7に送り出すようにすれば、ウエハ4の分離収納動作が並列的に行え、作業の効率化が行える。
【0073】
また、上記の工程においてウエハ4に割れや欠け、複数枚取りが認められた場合は、図4(c)において搬送ユニット30をウエハ排出部8上で停止させて、搬送ユニット30のストッパ34を退避位置に退避することでウエハ4を開放し、ウエハ排出部8に設けられた収納ボックス50内にウエハ4を排出する。なお、ウエハ4の割れや欠けを検出した場合とウエハ4が複数枚重なっていた場合とで別の収納ボックスを用意するようにし、自動的に入れ替えるようにしておけば、複数枚取りの場合に再度、ウエハ4を利用に供するようにすることができる。
【0074】
以上が本発明のウエハ分離装置1の動作であるが、次に前記搬送ユニット30の第2の実施形態について図8(a)及び(b)に基づいて以下に説明する。なお、基本的な構成は同じであるので第1の実施形態と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0075】
本実施形態では、第1の実施形態に対し、噴射ノズル35を前方にスライドさせ、噴射ノズル35から噴射される水45がウエハ上面内に収まるようになっている(ウエハ4の後端部から水45がはみ出さないように噴射される)。
【0076】
このようにすることで、ウエハ4の後端部に作用する浮力よりも噴射ノズル35からの噴射の勢いが強くなり、ウエハ4の前端部が前上がり状態でストッパ34に当接してウエハ4が静止状態で搬送ユニット30に保持される。上記の実施形態は、搬送する基板の形状等に応じて適宜使い分けすることができる。
【0077】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明は上記に限定されず、発明の範囲内で適宜に変更できる。
【0078】
例えば、ストッパ34は軸39の回転により保持位置と退避位置間を揺動可能に構成したが、上下に突没可能に設けたり、幅方向に開閉可能にしたりする等、基板の形状に応じて数量や位置等、適宜変更できる。
【0079】
また、噴射ノズル35から噴射する水も放射状だけではなく、直線状や、シャワー状、扇状等各種のものが使用でき、基板面上に搬送方向の推進力と浮力を働かせることが可能なノズルを各種使用できる。
【0080】
また、噴射ノズル35の位置や数量も本実施形態に限定されず、基板面上に搬送方向の推進力と浮力を働かせることが可能であれば良い。また、搬送する基板もウエハに限定されず、板状のものであればガラス基板等、各種のものに適用できる。また、基板の形状も矩形状、円形等各種のものに適用できる。また、噴射する液体も水だけではなく、その基板の搬送工程に適した洗浄液等各種のものが各種適用できる。
【0081】
また、搬送方向も直線状だけでなく、搬送ユニット30を回転可能に設け、搬送方向も自在に回転可能に設ければ、各方向に移動自在にすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ウエハ分離収納装置
2 側壁
3 貯水槽
4 ウエハ(基板)
5 ウエハ載置部
6 ガイドレール
7 バッファ部
8 ウエハ排出部
9 ガイドレール
10 ウエハ収納部
11 支持板
12 昇降枠
13 レール
14 スライダ
15 支柱
16 ガイド板
17 噴射ノズル
18 噴射ノズル
19 噴射ノズル
20 穴
21 エアパイプ
22 ストッパ
23 固定ブロック
24 軸
25 従動プーリ
26 ベルト
27 駆動プーリ
28 固定枠
29 モータ
30 搬送ユニット
31 支持枠
32 レール
33 ベース板
34 ストッパ
35 噴射ノズル
36 支持板
37 スライダ
38 固定枠
39 軸
40 固定ブロック
41 モータ
42 滑り止め
43 支持アーム
44 ノズル固定板
45 水(液体)
46 水面
50 収納ボックス
51 ストッパ壁
55 収納カセット
56 載置台
57 スライダ
58 レール
59 支柱
60 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中に水平に浸漬された基板の上方に設けられた噴射ノズルで前記基板の上方から前方に向けて液体を噴射して基板を前方に送り出す基板の搬送装置において、
前記基板の搬送方向に沿って往復動可能に搬送ユニットを設け、
前記搬送ユニットは、上下に揺動可能に設けられ前記基板を静止させるストッパと、
前記ストッパの後方に設けられ、前記基板の後端よりもやや後方から液体を前方に向けて噴射する噴射ノズルとを一体に備え、
前記噴射ノズルからの液体の噴射により、基板を浮上させると共に前記ストッパに基板を当接させて静止させた状態で搬送ユニットを移動させて基板を搬送するようにしたことを特徴とする基板の搬送装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルからの液体の噴射が、前記基板の後端よりも前方から液体を前方に向けて噴射するようにしたことを特徴とする請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項3】
液中に水平に浸漬された基板の上方から前方に向けて噴射ノズルから液体を噴射して前記基板を前方に送り出す基板の搬送方法において、
搬送ユニットの後方に設けられた噴射ノズルにより、液体を前記基板の後端部付近から前方に向けて噴射し、基板を浮上させると共に前記液体の噴射により搬送ユニットの前端部に設けられたストッパに前記基板を当接させて静止させた状態で前記搬送ユニットを移動させて基板を搬送するようにしたことを特徴とする基板の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−205041(P2011−205041A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73483(P2010−73483)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000132954)株式会社タカトリ (65)
【Fターム(参考)】