説明

基板の撓み補正装置および基板の取り出し方法

【課題】既存の設備の大幅な改良を伴うことなく、搬送アームと基板との衝突を確実に防止すること。
【解決手段】撓み補正装置3は、キャリア1に収納されたウエハ(基板)Wの表面に略直交する方向に移動可能な支持棒5(付勢手段)を備える。支持棒5は、キャリア1に収納されたウエハWの中央部に当接または対向し、当該ウエハWの中央部を付勢することにより、ウエハWの撓みを補正する。このようにウエハWの撓みを防止した状態で、搬送アーム2をウエハWの下側に挿入してウエハWを取り出すことにより、搬送アーム2とウエハWとの衝突を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ等の基板の撓みを補正する装置、および、これを用いた基板の取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程、検査工程等においては、複数のウエハを収納するキャリアが用いられる。キャリアは、箱状容器の相対する内側面に、ウエハの周縁部を載せる棚状のウエハ受け部を上下に複数段備えたものである。ウエハをキャリアから取り出す際には、キャリアの前面の開口部からU字型の搬送アームをウエハの下側に挿入し、ウエハをウエハ受け部から1mm程度持ち上げて、キャリアから取り出す。
【0003】
近年、厚みが200μm以下の薄型ウエハが広く用いられるようになっている。このような薄型のウエハは、例えば外径を6インチとした場合に、自重により1.5mm程度の撓みが生じることが知られている。そのため、搬送アームをウエハの下側に挿入する際、搬送アームとウエハとが衝突し、ウエハまたはアームが破損するという問題がある。
【0004】
ウエハの反りによるクラックや割れの発生を防止する技術としては、キャリアに、ウエハの周縁部を支持する第1の支持部と、ウエハの中央を支持する第2の支持部とを設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、反りが生じやすい大型のガラス基板をキャリアから取り出す技術に関し、ガラス基板の両端部を保持するコの字状の側部支持アームと、ガラス基板の中央を保持する中央支持アームを設け、側部支持アームと中央支持アームとの間に、ガラス基板の反り量に対応する段差を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、ウエハやガラス板等の基板を収納したキャリアを全体的に傾斜させることにより、基板の重力加重を垂直方向と水平方向に分散し、撓み量を低減する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−332097号公報(図6、図8参照)
【特許文献2】特開2005−285823号公報(図5参照)
【特許文献3】特開平9−159616号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1〜3に開示された技術では、搬送アームやキャリアなど、基板を取り出す装置に大幅な改良が必要であり、製造コストが上昇する原因となる。また、特許文献1〜3に開示された技術では、厚みが200μm以下のウエハなど、外径に比して自重による撓み量が大きい基板は考慮されていないため、これらの技術を適用しても、搬送アームと基板との衝突を十分に防止することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、既存の設備の大幅な改良を伴うことなく、搬送アームと基板との衝突を防止できるようにすることを目的とする。
【0010】
本発明に係る基板の撓み補正装置は、キャリアに収納された基板の表面に略直交する方向に移動可能な付勢手段を備え、前記付勢手段が、前記キャリアに収納された前記基板の中央部に当接または対向し、当該基板の中央部を付勢することにより、前記基板の撓みを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、付勢手段が、基板の中央部を付勢して撓みを補正するため、この状態で基板の下側に搬送アームを挿入して基板の取り出しを行えば、基板と搬送アームとの衝突を防止することができる。また、従来の搬送アームを用いることができるため、既存の設備の大幅な改良が不要であり、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態における基板の撓み補正装置の基本構成を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるキャリアを示す斜視図である。
【図3】図2に示した線分III−IIIにおける断面図である。
【図4】図1に示した線分IV−IVにおける断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における搬送アームによるウエハ(基板)の取り出しを説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における支持棒とウエハと搬送アームとの位置関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるウエハの取り出し工程を説明するための図である。
【図8】比較例におけるウエハの取り出し方法を示す正面図(A)および断面図(B)である。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるウエハの撓み補正装置の基本構成を示す正面図である。
【図10】図9に示した線分X−Xにおける断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態におけるウエハの撓み補正装置の基本構成を示す正面図である。
【図12】図11に示した線分XII−XIIにおける断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態におけるウエハWの取り出し工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態における基板の撓み補正装置の基本構成を示す正面図である。第1の実施の形態における基板の撓み補正装置(以下、撓み補正装置3とする)は、例えば、半導体の製造工程や検査工程等において、ウエハ(基板)をキャリア1から取り出す際に用いられるものである。ここでは、ウエハの一例として、外径Dが6インチ(150mm)、厚さが200μm以下のウエハ(薄ウエハ)について説明するが、これに限定されるものではない。
【0014】
まず、キャリア1について説明する。図2は、キャリア1を示す斜視図である。図3は、図2に示した線分III−IIIにおける断面図である。図2および図3に示すように、キャリア1は、前面が開放された箱状の容器であり、上下に相対する天板13および底板14と、左右に相対する側板11,12と、前後に相対する開口16および背面板17とを有している。ここでは、鉛直方向、すなわち天板13と底板14の相対する方向をZ方向とし、左右方向、すなわち側板11,12の相対する方向をX方向とする。また、前後方向、すなわち開口16と背面板17とが対向する方向をY方向とする。
【0015】
両側板11,12には、ウエハWの周縁部を載せて保持する棚状のウエハ受け部15が、互いに対向するように形成されている。ウエハ受け部15は、それぞれ、Z方向に所定の間隔(例えば4.8mm)を開けて複数段に形成されている。ウエハ受け部15は、いずれもY方向に延在するリブであり、ウエハWの周縁部(より具体的には、ウエハWのX方向両端部分)を上面で保持する。
【0016】
キャリア1の前面は、上述した開口16となっており、この開口16を介して、キャリア1内にウエハWが収納され、また、キャリア1からウエハWが取り出される。キャリア1の底板14の中央部(ウエハWの中央部にに対応する部分)には、後述する支持棒5を通過させるための開口部14aが形成されている。なお、底板14は、開口部14aに限らず、支持棒5を通過させることができる構成を有していればよい。
【0017】
図1において、本実施の形態における撓み補正装置3は、Z方向に移動可能な付勢手段(当接部材)としての支持棒5を備えている。支持棒5は、ここでは、軸線方向をZ方向とする柱状(例えば円柱状)の部材であり、材質は、フッ素樹脂、より具体的にはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)が好ましい。
【0018】
支持棒5は、駆動手段としてのモータ6によりZ方向に駆動され、キャリア1の底板14の開口部14a(図2)からキャリア1内に挿入される。支持棒5は、少なくとも、キャリア1の底板14よりも下方に退避した位置から、キャリア1の最上段のウエハ受け部15に対応する位置まで、Z方向に移動可能である。
【0019】
図4は、図1に示した線分IV−IVにおける断面図である。図4に示すように、支持棒5は、XY面内における位置が、キャリア1のウエハ受け部15に保持されたウエハWの中央部(すなわちウエハWの重心近傍)に対応するように配置されている。支持棒5とウエハWとの当接部分(接触面)5aの形状は、どのような形状でも良いが、一例としては円形が好ましい。また、当接部分5aの外径dは、ウエハWの外径Dの1/5以下であることが好ましい。
【0020】
なお、支持棒5は、例えば、キャリア1を載置するためのXY面に平行な載置面を有する載置台4(テーブル)に取り付けられているものとする。また、支持棒5を駆動するための上記モータ6は、制御部7によって駆動制御されるものとする。これら支持棒5およびモータ6により、本実施の形態における撓み補正装置3が構成されている。
【0021】
図5は、キャリア1からウエハWを取り出す搬送アーム2を示す図である。搬送アーム2は、ウエハWを保持するためのU字状の先端部21を有している。搬送アーム2は、図示しないアクチュエータにより、開口16からキャリア1内にY方向に挿入され、ウエハ受け部15に保持されたウエハWを先端部21で保持し、キャリア1の外部に搬出する。
【0022】
図6は、キャリア1内に挿入された搬送アーム2と、ウエハWと、支持棒5との位置関係を示す図である。搬送アーム2の先端部21における一対のY方向延在部21a,21bの間隔(X方向の間隔)は、支持棒5の外径dよりも広い。すなわち、搬送アーム2の先端部21がキャリア1内に挿入されてウエハWを取り出す際に、搬送アーム2の先端部21と支持棒5とが干渉することがない。
【0023】
なお、搬送アーム2は、撓み補正装置3のモータ6を制御する制御部7によって制御されるものとする。
【0024】
次に、本実施の形態における、キャリア1からのウエハWの取り出し方法について、図7を参照して説明する。まず、複数のウエハWが収納されたキャリア1が、載置台4に載置される。載置台4上には、キャリア1のXY面内における位置を規制するガイド部材(図示せず)が配設されており、キャリア1に収納されたウエハWの中央部のXY面内における位置と、支持棒5のXY面内における位置とが一致するようになっている。
【0025】
キャリア1を載置台4に載置する段階では、支持棒5は、キャリア1の載置動作に干渉しないよう、キャリア1の底板14よりも下方に退避している。
【0026】
続いて、制御部7がモータ6を駆動して、支持棒5を上昇させる。図7に示すように、支持棒5は、キャリア1の底板14の開口部14aを介してキャリア1内に侵入し、最下段のウエハ受け部15に保持されたウエハWの中央部に当接する。厚さが200μm以下のウエハWは、自重によって下方に撓み、中央部が周縁部よりも1.5mmほど低くなっている。支持棒5がウエハWの中央部を、ウエハ受け部15に保持された周縁部と同じ高さまで押し上げる(付勢する)ことにより、ウエハWの撓みが補正される。
【0027】
支持棒5が、ウエハWを(撓み補正に必要な押し上げ量だけ)押し上げた状態で、制御部7は支持棒5の上昇を停止する。この状態で、制御部7は、搬送アーム2をキャリア1の開口16からキャリア1内にY方向に侵入させ、最下段のウエハWの下側(図7に示す領域A)に挿入する。このとき、支持棒5によりウエハWの撓みが補正されているため、搬送アーム2とウエハWとの衝突が防止される。
【0028】
続いて、制御部7は、搬送アーム2を1mmほど上昇させ、ウエハWをウエハ受け部15から持ち上げる。このとき、搬送アーム2のU字状の先端部21(図6)は、支持棒5のX方向両側に位置しているため、支持棒5と干渉することがない。さらに、制御部7は、搬送アーム2を、キャリア1の開口16から外部に移動させ、ウエハWをキャリア1の外部に搬出する。そののち、搬送アーム2により、キャリア1から搬出したウエハWを、半導体製造工程または検査工程における他の装置まで搬送する。
【0029】
ウエハWがキャリア1の外部に搬出された後、制御部7は、モータ6を駆動して支持棒5を再び上昇させ、下から2段目のウエハ受け部15に保持されたウエハWの中央部を押圧して、撓みを補正する。この状態で、制御部7が、搬送アーム2を、再びキャリア1の開口16からキャリア1内にY方向に侵入させ、下から2段目のウエハWの下側に挿入する。さらに、制御部7は、搬送アーム2を1mmほど上昇させて、ウエハWをウエハ受け部15から持ち上げ、搬送アーム2をキャリア1から外部に移動させ、ウエハWをキャリア1の外部に搬出する。
【0030】
同様にして、下から3段目のウエハ受け部15に保持されたウエハWから、最上段のウエハ受け部15に保持されたウエハWまでを、全てキャリア1の外部に搬出する。全てのウエハWがキャリア1から搬出された後、制御部7は、支持棒5を降下させ、キャリア1の底板14よりも下側まで退避させる。そののち、キャリア1は、載置台4上から取り外され、新たに、ウエハWが収納されたキャリア1が載置台4上に載置される。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、支持棒5によりウエハWの中央部を押し上げて撓みを補正した状態で、搬送アーム2によるウエハWの取り出しを行うため、撓み量の大きい(例えば厚みが200μm以下の)ウエハWであっても、搬送アーム2の挿入時にウエハWと衝突することが防止される。そのため、ウエハWおよび搬送アーム2の損傷を防止することができる。
【0032】
また、搬送アーム2として、従来の搬送アームを使用できるため、既存の設備の改良が少なくて済み、製造コストを低減することができる。また、キャリア1として、底板14に開口部14aを設けるだけで、従来のキャリアを使用できるため、製造コストをさらに低減することができる。
【0033】
さらに、支持棒5が、ウエハWの中央部に当接するように構成されているため、ウエハWの撓みを効果的に補正できる上、ウエハWを取り出す際の搬送アーム2のU字状の先端部21に干渉することがない。
【0034】
また、支持棒5とウエハWとの接触面の外径dが、ウエハWの外径Dの1/5以下であるため、搬送アーム2の先端部21との干渉を防止できる上、ウエハWの下面と支持棒5との接触による傷を最小限に抑制することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、キャリア1の下段(支持棒5が配置された側の段)から順にウエハWの取り出しを行うため、最下段から最上段までの全てのウエハを、撓みを補正しながら取り出すことができる。
【0036】
比較例.
ここで、本実施の形態に対する比較例について説明する。
図8は、本実施の形態における撓み補正装置3を用いない場合のウエハの取り出し方法を示す正面図(A)および断面図(B)である。
上述したとおり、厚みが200μm以下のウエハWを用いた場合には、ウエハWがキャリア1に保持された状態で、下方に1.5mm以上の撓みが生じる。すなわち、ウエハWの中央部が周縁部に対して下方に1.5mm以上低い状態となる。
【0037】
このようにウエハWの中央部が周縁部に対して下方に1.5mm以上低くなった状態で、搬送アーム2をウエハWの下側に挿入しようとすると、ウエハWの撓みのため、図8に示す領域Bにおいて、搬送アーム2のU字状の先端部21がウエハWに衝突し、ウエハWまたは搬送アーム2が損傷する可能性がある。
【0038】
これに対し、上述した本実施の形態(図1〜図7)によれば、支持棒5によりウエハWの中央部を押し上げて撓みを補正した状態で、搬送アーム2によるウエハWの取り出しを行うため、例えば厚みが200μm以下のウエハWであっても、搬送アーム2とウエハWとの衝突が防止される。そのため、ウエハWおよび搬送アーム2の損傷を防止することができる。
【0039】
第2の実施の形態.
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図9及び図10は、第2の実施の形態における撓み補正装置3(基板の撓み補正装置)の基本構成を示す正面図およびXY断面図である。第2の実施の形態における撓み補正装置3は、第1の実施の形態における支持棒5の代わりに、付勢手段(気体噴出部材)としての噴出管8を設けたものである。
【0040】
第2の実施の形態における噴出管8は、例えば、軸線方向をZ方向とする管状の部材であり、第1の実施の形態と同様、モータ6によりZ方向に駆動され、キャリア1の底板14の下方に退避した位置から、最上段のウエハ受け部15に達する位置まで、移動可能に構成されている。
【0041】
噴出管8は、キャリア1に保持されたウエハWの中央部に対向する上端面に、一つ以上の噴出口(噴出口)80を有している。噴出口80の数は、ここでは4つとするが、これに限定されるものではない。各噴出口80の開口面積は、例えば、5mmとする。
【0042】
噴出口80は、噴出管8の内部に形成された図示しない通気孔に繋がっており、ポンプ等の気体供給装置82から空気が供給される。噴出口80から噴出される空気の流量は、ウエハWの撓みを補正できる程度の流量であればよく、ここでは3m/秒とする。気体供給装置82は、例えば、制御部7により制御されるものとする。なお、噴出口80から噴出する気体は、空気に限らず、他の気体であってもよい。
【0043】
なお、噴出管8の上端面8aの形状は、どのような形状であってもよいが、一例としては円形が好まく、また、その外径dは、ウエハWの外径Dの1/5以下であることが好ましい。これら噴出管8、気体供給装置82およびモータ6により、本実施の形態における撓み補正装置3が構成されている。他の構成要素は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0044】
次に、本実施の形態における、キャリア1からのウエハWの取り出し方法について説明する。まず、第1の実施の形態と同様に、複数のウエハWが収納されたキャリア1を載置台4に載置したのち、制御部7がモータ6を駆動して、噴出管8を上昇させ、底板14の開口部14aを介してキャリア1内に侵入させる。噴出管8の上端面が、最下段のウエハ受け部15に保持されたウエハWの中央部に対し、所定の間隔をあけて対向した状態で、制御部7は噴出管8の上昇を停止する。
【0045】
制御部7は、さらに、気体供給装置82からの空気供給を開始し、噴出管8の噴出口80から、所定の流量(例えば3m/秒)で空気を噴出する。噴出口80から噴出された空気は、ウエハWの中央部に吹き付けられ、これにより、ウエハWの中央部が押し上げられる。厚さが200μm以下のウエハWは、自重による撓みのため、中央部が周縁部よりも1.5mmほど低くなっているが、噴出口80から噴出された空気がウエハWの中央部を、ウエハ受け部15に保持された周縁部と同じ高さまで押し上げることにより、ウエハWの撓みが補正される。
【0046】
この状態で、制御部7は、搬送アーム2を、最下段のウエハ受け部15に保持されたウエハWの下側に挿入する。このとき、噴出口80から噴出された空気によりウエハWの撓みが補正されているため、搬送アーム2とウエハWとの衝突が防止される。
【0047】
そののち、制御部7は、第1の実施の形態で説明したように、搬送アーム2を1mm程度上昇させてウエハWをウエハ受け部15から持ち上げて、キャリア1から外部に搬出する。なお、搬送アーム2がウエハWを持ち上げた後、次のウエハWの撓み補正を開始するまで気体供給装置82を停止するようにしてもよい。
【0048】
同様にして、下から2段目のウエハ受け部15に保持されたウエハWから、最上段のウエハ受け部15に保持されたウエハWまでを、全てキャリア1の外部に搬出する。全てのウエハWをキャリア1から搬出した後、制御部7は、噴出管8を降下させ、キャリア1の底板14よりも下方まで退避させる。そののち、キャリア1は、載置台4上から取り外され、新たに、ウエハWが収納されたキャリア1が載置台4上に載置される。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、噴出管8から噴出する空気によりウエハWの中央部を押し上げて撓みを補正した状態で、搬送アーム2によるウエハWの取り出しを行うため、ウエハWの撓み量が大きい場合であっても、ウエハWと搬送アーム2との衝突を防止することができ、これによりウエハWおよび搬送アーム2の損傷を防止することができる。
【0050】
また、噴出管8が、ウエハWの空気を吹き付けて非接触で持ち上げるよう構成されているため、ウエハWの裏面に接触による傷が生じることがない。
【0051】
さらに、噴出管8が、ウエハWの中央部に対向するよう構成されていると共に、噴出管8の上端面8a(ウエハWとの対向部分)の外径dが、ウエハWの外径Dの1/5以下であるため、ウエハWを取り出す際の噴出管8と搬送アーム2の先端部21との干渉を確実に防止することができる。
【0052】
また、キャリア1の下段(噴出管8が配置された側の段)から順にウエハWの取り出しを行うため、最下段から最上段までの全てのウエハWを、撓みを補正しながら取り出すことができる。
【0053】
第3の実施の形態.
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図11及び図12は、第3の実施の形態における撓み補正装置3(基板の撓み補正装置)の基本構成を示す正面図およびXY断面図である。第3の実施の形態における撓み補正装置3は、第2の実施の形態における噴出管8の代わりに、付勢手段(気体吸入部材)としての吸入管9を設けたものである。
【0054】
第3の実施の形態における吸入管9は、載置台4上に載置されたキャリア1よりも上方に配置されている。吸入管9は、例えば、軸線方向をZ方向とする管状の部材であり、モータ6によりZ方向に駆動され、キャリア1の天板13よりも上方に退避した位置から、キャリア1の最下段のウエハ受け部15に達する位置までZ方向に移動可能に構成されている。
【0055】
吸入管9は、キャリア1に収納されたウエハWの中央部に対向する下端面に、一つ以上の吸入口90(吸入口)を有している。吸入口90の数は、ここでは4つとするが、これに限定されるものではない。各吸入口90の開口面積は、例えば、5mmとする。
【0056】
吸入口90は、吸入管9の内部に形成された通気孔(図示せず)に繋がっており、ポンプ等の気体吸入装置92から空気が吸入される。吸入口90から吸入される空気の流量は、ウエハWの撓みを補正できる程度の流量であればよく、ここでは3m/秒とする。気体吸入装置92は、例えば、制御部7により制御されるものとする。なお、吸入口90から吸入する気体は、空気に限らず、他の気体であってもよい。
【0057】
吸入管9の下端面9aの形状は、どのような形状であってもよいが、一例としては円形が好まく、また、その外径dは、ウエハWの外径Dの1/5以下であることが好ましい。
【0058】
なお、本実施の形態では、付勢手段としての吸入管9がキャリア1よりも上方に配置されるため、吸入管9およびモータ6は、図示しない支持部により、キャリア1よりも上方で支持されているものとする。また、キャリア1の天板13には、吸入管9を通過させるための開口部13aが設けられている。これら吸入管9、気体吸入装置92およびモータ6により、本実施の形態における撓み補正装置3が構成されている。他の構成要素は、第2の実施の形態で説明したとおりである。
【0059】
次に、本実施の形態における、キャリア1からのウエハWの取り出し方法について説明する。まず、第1の実施の形態と同様に、複数のウエハWが収納されたキャリア1を載置台4上に載置したのち、制御部7がモータ6を駆動して、吸入管9を下降させ、天板13の開口部13aを介してキャリア1内に侵入させる。吸入管9の下端面が、最上段のウエハ受け部15に保持されたウエハWの中央部に対し、所定の間隔をあけて対向した状態で、制御部7は吸入管9の下降を停止する。
【0060】
制御部7は、さらに、気体吸入装置92による空気吸入を開始し、吸入管9の吸入口90から所定の流量(例えば3m/秒)で空気を吸入する。吸入口90からの空気の吸入に伴って生じる負圧によって、ウエハWの中央部が押し上げられる。厚さが200μm以下のウエハWは、自重による撓みのため、中央部が周縁部よりも1.5mmほど低くなっているが、吸入口90からの空気吸入によって、ウエハWの中央部が、ウエハ受け部15に保持された周縁部と同じ高さまで押し上げられ、ウエハWの撓みが補正される。
【0061】
この状態で、制御部7は、搬送アーム2を、最上段のウエハ受け部15に保持されたウエハWの下側に挿入する。このとき、吸入口90からの空気吸入によりウエハWの撓みが補正されているため、搬送アーム2とウエハWとの衝突が防止される。
【0062】
そののち、制御部7は、第1の実施の形態で説明したように、搬送アーム2を1mm程度上昇させてウエハWをウエハ受け部15から持ち上げて、キャリア1から外部に搬出する。なお、搬送アーム2がウエハWを持ち上げた後、次のウエハWの撓み補正まで、気体吸入装置92を停止するようにしてもよい。
【0063】
同様にして、上から2段目のウエハ受け部15に保持されたウエハWから、最下段のウエハ受け部15に保持されたウエハWまでを、全てキャリア1の外部に搬出する。全てのウエハWがキャリア1から搬出された後、制御部7は、吸入管9を上昇させ、キャリア1の天板13よりも上方まで退避させる。そののち、キャリア1は、載置台4上から取り外され、新たに、ウエハWが収納されたキャリア1が載置台4上に載置される。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、吸入管9からの空気吸入によりウエハWの中央部を押し上げて撓みを補正した状態で、搬送アーム2によるウエハWの取り出しを行うため、ウエハWの撓み量が大きい場合であっても、ウエハWと搬送アーム2との衝突を防止することができ、これにより、ウエハWおよび搬送アーム2の損傷を防止することができる。さらに、吸入管9からの空気吸入により、ウエハWの表面へのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0065】
また、吸入管9は、ウエハWに対向する位置で空気を吸入することによりウエハWを非接触で押し上げるため、ウエハWの表面に接触による傷が生じることがない。
【0066】
さらに、吸入管9が、ウエハWの中央部に対向するように構成されていると共に、吸入管9の下端面9a(ウエハWとの対向部分)の外径dが、ウエハWの外径Dの1/5以下であるため、ウエハWを取り出す際の吸入管9と搬送アーム2の先端部21との干渉を確実に防止することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、キャリア1の上段(吸入管9が配置された側の段)から順にウエハWの取り出しを行うため、支持棒5と搬送アーム2との干渉を生じることなく、最下段のウエハWまでの全ウエハの取り出しを行うことができる。
【0068】
変形例.
なお、上述した各実施の形態は、適宜、組み合わせることができる。例えば、第1の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合わせる(すなわち、支持棒5と吸入管9の両方を備える)ことにより、ウエハWをキャリア1の下段から順に取り出したい場合には、支持棒5(図1)を用いた撓み補正を行い、ウエハWをキャリア1の上段から順に取り出したい場合には、吸入管9(図11)を用いた撓み補正を行う、という選択が可能になる。同様に、第2の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合わせてもよい。
【0069】
上述した各実施の形態およびその変形例では、基板の一例として、厚みが200μm以下のウエハについて説明したが、本発明は、どのような種類のウエハにも適用することができ、また、ウエハ以外の基板(例えばガラス基板)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 キャリア、 15 ウエハ受け部、 16 開口、 2 搬送アーム、 21 先端部、 3 撓み補正装置(基板の撓み補正装置)、 4 載置台、 5 支持棒(付勢手段、当接部材)、 6 モータ(駆動手段)、 7 制御部、 8 噴出管(付勢手段、気体噴出部材)、 80 噴出口、 82 気体供給装置、 9 吸入管(付勢手段、気体吸入部材)、 90 吸入口、 92 気体吸入装置、 W ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアに収納された基板の表面に略直交する方向に移動可能な付勢手段を備え、
前記付勢手段が、前記キャリアに収納された前記基板の中央部に当接または対向する位置まで移動し、前記基板の中央部を付勢することにより、前記基板の撓みを補正すること
を特徴とする基板の撓み補正装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記基板の表面に略直交する方向に移動可能で、前記キャリアの下側から前記キャリア内に移動可能な当接部材を有し、
前記当接部材が、前記キャリアに収納された前記基板の中央部に当接し、前記基板の中央部を押し上げることにより、前記基板の撓みを補正すること
を特徴とする請求項1に記載の基板の撓み補正装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記基板の表面に略直交する方向に移動可能で、前記キャリアの下側から前記キャリア内に移動可能な気体噴出部材を有し、
前記気体噴出部材は、前記基板に対向する面に噴出口を有し、
前記気体噴出部材は、前記噴出口を前記キャリアに収納された前記基板の中央部に対向させる位置まで移動し、前記噴出口から前記基板に気体を吹き付けることにより、前記基板の撓みを補正すること
を特徴とする請求項1に記載の基板の撓み補正装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記基板の表面に略直交する方向に移動可能で、前記キャリアの上側から前記キャリア内に移動可能な気体吸入部材を有し、
前記気体吸入部材は、前記基板に対向する面に吸入口を有し、
前記気体吸入部材は、前記吸入口を前記キャリアに収納された前記基板の中央部に対向させる位置まで移動し、前記吸入口から気体を吸入することにより、前記基板の撓みを補正すること
を特徴とする請求項1に記載の基板の撓み補正装置。
【請求項5】
前記付勢手段が、前記基板に当接または対向する部分の外径は、前記基板の外径の1/5以下であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の基板の撓み補正装置。
【請求項6】
前記付勢手段は、前記キャリアの下側に退避した退避位置から、前記キャリアに収納された基板に当接または対向する位置まで、移動可能であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の基板の撓み補正装置。
【請求項7】
前記基板は、ウエハであることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の基板の撓み補正装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の基板の撓み補正装置を用い、
前記基板の撓み補正装置により撓みが補正された前記基板の下側に搬送アームを挿入し、前記基板を前記キャリアから取り出す工程
を含むことを特徴とする基板の取り出し方法。
【請求項9】
複数の基板を複数段に収納するキャリアを用い、
前記基板を前記キャリアから取り出す工程において、
複数の前記基板を、前記キャリアの前記付勢手段が配置された側の段から順に取り出すことを特徴とする請求項8に記載の基板の取り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−84715(P2012−84715A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230293(P2010−230293)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】