基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および修正キャリア
【課題】基板の研削工程において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を定盤に配置した両面研削装置を使用する場合に適した、基板の製造方法を提供する。
【解決手段】固定砥粒11が研削面に配備された上定盤と下定盤10を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、修正部材53、55を備える修正キャリア51を前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリア51の修正部材53、55と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて定盤の面修正を行う修正工程を有し、修正キャリア51は、上定盤および下定盤10にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材53、55とからなり、修正部材53、55は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている。
【解決手段】固定砥粒11が研削面に配備された上定盤と下定盤10を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、修正部材53、55を備える修正キャリア51を前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリア51の修正部材53、55と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて定盤の面修正を行う修正工程を有し、修正キャリア51は、上定盤および下定盤10にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材53、55とからなり、修正部材53、55は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および修正キャリア等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の超LSIデバイスの高密度、高精度化によりマスクブランク用基板に要求される形状精度(平坦性)が厳しくなっており、超高平坦性マスクブランク用基板が要求されている。
従来、マスクブランク用ガラス基板の研削工程では、表面に格子状の溝が設けられた2つの鋳鉄定盤間に、キャリアに保持されたガラス基板を所定圧力で挟み込み、遊離砥粒を含む研削液(スラリー)をガラス基板と定盤との間に供給しながら、定盤上でガラス基板を遊星運動させることで、基板両主表面の研削(ラッピング)が行われている。しかし、研削時、定盤面自体も削れること等に起因し、処理バッチ数が増えていくと定盤面の平坦度が悪化していく。このため、所定のバッチ数を処理する毎に、修正用のキャリアである修正キャリア(修正部材は鋳鉄製)を用いて、研削工程と同様に、定盤上で修正キャリア(修正部材)を遊星運動させることで、定盤面の平坦度修正を行っている。
一方、磁気ディスク用ガラス基板の研削工程においては、近年、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を定盤の研削面に配備した両面研削装置が用いられている。このダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を研削面に配備した定盤を用いる場合においても、処理バッチ数の増加による定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度の悪化は避けらず、所定バッチ数毎に、修正キャリアを用い、修正部材として金属及びガラスを順次用いて、定盤面の平坦度修正が行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−254166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、マスクブランク用基板の研削工程においても、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を定盤の研削面に配備した両面研削装置の使用が検討されている。
本発明は、マスクブランク用基板等のガラス基板の研削工程等において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒などの固定砥粒を定盤の研削面に配備した研削装置等を使用する場合に適した、基板の製造方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下のことが判った。
特許文献1に開示されているように、修正キャリアは、回転摩擦力等の問題を考慮し、修正部材を修正キャリア本体部の外周側にのみ配置した構成(例えばリング状の修正キャリア本体部に修正部材を複数配置した構成)とするのが一般的である。
しかし、定盤の固定砥粒(研削面)に対する前記修正部材のオーバーハング量を大きく取り過ぎると、修正部材がキャリアの外周側にのみ配置されていることや、修正キャリアを遊星運動させることで固定砥粒(研削面)を修正することに起因する問題が生じることが判明した。具体的には、図8に示すように、定盤10の固定砥粒(研削面)11に対する前記修正部材53のオーバーハング量を大きく取り過ぎると、修正部材53が一度定盤の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも外に飛び出した後、再度、外周端部11a側から定盤10の固定砥粒(研削面)11に向かって入っていくような軌道を描くようになる。この外周端部11a側から定盤10の固定砥粒(研削面)11に向かって修正部材53が入っていくことが生じることで、外周端部11a側の固定砥粒(研削面)11を必要以上に削ってしまい、定盤10の固定砥粒(研削面)11の平坦度修正の精度向上の妨げになる場合がある(例えば定盤の半径が約800mmで定盤面の平坦度は35μm程度までしか修正できない)ことを本発明者は見い出した。修正部材53が一度定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも外(内周側)に飛び出した後、再度、内周端部11b側から定盤10の固定砥粒(研削面)11に向かって入っていくような軌道を描く場合も同様である。
さらに、図5に示すように、定盤10上の任意の半径方向において、修正キャリア51の修正部材53の外周端部53aが定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも外周側になるとともに、修正キャリア51の修正部材53の内周端部53bが定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも内周側になるように、定盤10の外周側に修正部材53をオーバーハングさせ、かつ、修正キャリア51の修正部材53の外周端部53aが定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも内周側になるとともに、修正キャリア51の修正部材53の内周端部53bが定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも外周側になるように、定盤10の内周側に修正部材53をオーバーハングさせるようにして定盤10の固定砥粒(研削面)11の平坦度修正を行うことによって、定盤10の固定砥粒(研削面)11の平坦度修正の精度を、大きく改善できる(例えば定盤の半径が約800mmで定盤面の平坦度を20μm程度以下にできる)ことを本発明者は見い出し、出願を行っている(特願2011−67476)。
【0006】
一方、上記のような修正キャリアを用い、定盤の固定砥粒(研削面)に対する前記修正部材のオーバーハング量を最適化する上記技術を適用して、定盤上の固定砥粒の平坦度修正を行っても、定盤(下定盤)の半径方向で見て、外周縁側と内周縁側から中央側に向かって凸形状(極小さい)に修正されてしまう場合があることが判明した。定盤上の固定砥粒がこのような凸形状に修正されてしまうと、定盤研削面の平坦度を更に向上させることができないため、この研削装置を用いて、研削されたガラス基板の平坦度も更に向上させることができず、課題となることがわかった。
この定盤上の固定砥粒が凸形状(極小さい)に修正されてしまう上記問題は、定盤の固定砥粒(研削面)に対して前記修正部材のオーバーハング量を大きく取り過ぎた場合、定盤面の平坦度の絶対値が大きすぎるため、顕在化していなかった。
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、
修正部材を備える修正キャリアを前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリアの修正部材と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて前記定盤の面修正を行う修正工程を有し、
前記修正キャリアは、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されていることを特徴とする基板の製造方法。
(構成2)
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする構成1に記載の基板の製造方法。
(構成3)
前記定盤は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備されていることを特徴とする構成1または2に記載の基板の製造方法。
(構成4)
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成5)
前記修正工程は、遊離砥粒を含む研削液を供給しながら、修正部材と、前記定盤の研削面とを、互いに押圧させて摺動させて行うことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成6)
前記修正工程は、固定砥粒を定盤の研削面に配備する固定砥粒配備工程に続いて行うことを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成7)
前記修正キャリアは、本体部の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上で前記修正キャリアを自転しながら公転することを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成8)
構成1から7のいずれかに記載の基板の製造方法で製造された基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成9)
構成8に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成10)
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置に対し、前記定盤の面修正を行うときに用いられる修正キャリアであって、
外周に前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合う外ギヤが設けられ、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、
前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている
ことを特徴とする修正キャリア。
(構成11)
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする構成10に記載の修正キャリア。
(構成12)
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする構成10または11に記載の修正キャリア。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、修正キャリア上の修正部材の配置を、修正キャリアの外周側に沿って配置することに加え、修正キャリアの半径又は直径方向にも配置することにより、以下の効果が得られる。
(1)定盤の半径方向における中央側の修正レートが、定盤の半径方向における外周縁側や内周縁側よりも速くなるため、中央側の修正量が相対的に多くなり、中央側が凸形状に修正されてしまう現象を抑制できる。
(2)修正キャリアの全面に修正部材を配置してしまうと、修正部材と定盤上の固定砥粒との間の摩擦力が過大になり、装置への負荷が大きくなってしまうが、それを抑制できる。
(3)修正キャリアの外周にのみ修正部材を配置し、定盤上の固定砥粒(定盤面)の平坦度修正を進めていくと、上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じとなる現象が生じる。上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じであると、定盤上の修正レートが面内で同じになってしまい、凸形状の傾向を修正できなくなる現象が生じる。しかし、この場合でも、本発明の修正キャリアを適用することにより、定盤の半径方向における中央側の修正レートが相対的に速くなるため、形状修正ができるようになる。
本発明によれば、前記定盤が、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒などの固定砥粒が研削面に配備されている場合においても、上記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的平面図である。
【図2】一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的平面図である。
【図4】本発明の実施形態に用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的な部分断面図である。
【図5】比較例で用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的平面図である。
【図6】比較例で用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的な部分断面図である。
【図7】実施例および比較例における研削面の測定位置を示す模式的平面図である。
【図8】参考例で用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的平面図である。
【図9】ダイヤモンドシートを貼り付けた直後の上定盤の断面プロフィールを示すグラフである。
【図10】ダイヤモンドシートを貼り付けた直後の下定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図11】実施例の修正キャリアで修正後の上定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図12】実施例の修正キャリアで修正後の下定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図13】比較例の修正キャリアで修正後の上定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図14】比較例の修正キャリアで修正後の下定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の基板の製造方法は、固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、
修正部材を備える修正キャリアを前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリアの修正部材と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて前記定盤の面修正を行う修正工程を有し、
前記修正キャリアは、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されていることを特徴とする(構成1)。
上記構成によれば、修正キャリア上の修正部材の配置を、修正キャリアの外周側に沿って配置することに加え、修正キャリアの半径又は直径方向にも配置することにより、以下の効果が得られる。
(1)定盤の半径方向における中央側の修正レートが、定盤の半径方向における外周縁側や内周縁側よりも速くなるため、中央側の修正量が相対的に多くなり、中央側が凸形状に修正されてしまう現象を抑制できる。
(2)修正キャリアの全面に修正部材を配置してしまうと、修正部材と定盤上の固定砥粒との間の摩擦力が過大になり、装置への負荷が大きくなってしまうが、それを抑制できる。
(3)修正キャリアの外周にのみ修正部材を配置し、定盤上の固定砥粒(定盤面)の平坦度修正を進めていくと、上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じとなる現象が生じる。上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じであると、定盤上の修正レートが面内で同じになってしまい、凸形状の傾向を修正できなくなる現象が生じる。しかし、この場合でも、本発明の修正キャリアを適用することにより、定盤の半径方向における中央側の修正レートが相対的に速くなるため、形状修正ができるようになる。
本発明においては、前記定盤が、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒などの固定砥粒が研削面に配備されている場合においても、上記効果を得ることができる。
また、本発明によれば、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度を、求められる数値(具体的には定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約540mmであるときの高低差が20μm程度)よりも向上できる。例えば、定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約540mmであるときの平坦度修正の精度を、固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が15μm程度まで向上できる。
本発明は、定盤の半径が約1100mmより大きい研削装置を用いる場合に適する。
【0011】
本発明において、修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上とは、例えば、修正キャリアの自転軸(中心)を通り、修正キャリアの外周側に向かって伸びる直線上の任意点を結ぶ直線上である。例えば、修正キャリアの自転軸(中心)を通り、修正キャリアの半径上の任意点を結ぶ直線上である。
本発明においては、修正キャリアの外周側に沿って修正部材を配置することに加えて、外周側よりも自転軸(中心)側における前記直線を含む領域又は前記半径もしくは前記半径の一部を含む領域に修正部材を配置することができる。
【0012】
本発明において、前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されている構成とすることができる(構成2)。
本発明においては、例えば、修正キャリアの少なくとも1つの直径方向に修正部材を配置することができる。
本発明においては、修正キャリアにおける複数の直径方向に修正部材を配置することができる。例えば、十字方向(互いに90度をなす2つの方向)に修正部材を配置することができる。
本発明においては、前記直線を含む領域又は前記直径もしくは前記直径の一部を含む領域に修正部材を配置することができる。
【0013】
本発明においては、修正部材の摩擦抵抗が大きくなりすぎ修正部材(修正キャリア)が定盤に対し相対的に動作不可となるのを避ける観点、スラリーなどの流動性を良好に確保する観点から、修正部材は、修正キャリアの本体部における外周部分(外周部)に断続的に配置することが好ましい。
本発明において、前記修正部材は、複数の修正部材を、修正キャリアの中心から等しい距離で、互いに等間隔で、修正キャリアの本体部における外周部分(外周部)に配置することができる。この場合、複数の修正部材は、同一形状とすることができる。複数の修正部材は、異なる形状とすることもできる。
本発明において、前記修正部材の形状としては、円形、扇形、矩形、正方形、角がトリミングされた略正方形、角がトリミングされた扇形、角がトリミングされた矩形、角がトリミングされた正方形の形状、その他任意形状が挙げられる。複数の修正部材における各修正部材に関しても同様である。
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部における直径方向の領域(直径部)の全面に形成することができる。
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部における直径方向の領域(直径部)に、部分的に形成することもできる。
【0014】
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部において、下定盤側及び上定盤側の双方に、配備する。
両面研削装置における上下定盤の固定砥粒(研削面)を同時に平坦化でき、しかも一方ずつ修正する場合よりも上下定盤の固定砥粒(研削面)の修正精度が向上する。
本発明においては、前記修正工程は、上下2つの定盤の研削面の間に前記修正キャリアを挟み込み、前記修正キャリアの前記修正部材が上下2つの定盤の両研削面に押圧させた状態で摺動させることで前記上下2つの定盤の面修正を行う。
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部において、下定盤側、又は、上定盤側、のいずれか一方に配備することもできる。この場合は、下定盤側、又は、上定盤側、のいずれか一方のみの面修正を行う。
【0015】
本発明において、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部および内周端部は、定盤の中心から、それぞれ等しい距離(半径)の円周上に配置にすることが好ましい。
本発明において、固定砥粒は、多数の砥粒を適当な結合剤(ボンド)で固定したものである。
本発明において、定盤上の固定砥粒を構成する砥粒(粒子)としては、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)、炭化ケイ素、アルミナなどの砥粒(粒子)が挙げられる。
本発明において、定盤上の固定砥粒は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された定盤と、同等の作用(例えば研削作用)を示すものであればいかなるものでもよい。
【0016】
本発明において、前記定盤は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備されていることが好ましい(構成3)。
本発明において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒としては、ダイヤモンドペレット、ダイヤモンドシート、などが挙げられる。
ダイヤモンドペレットは、ダイヤモンド砥粒(粒子)を、樹脂(レジンボンド)、金属(メタルボンド)、粘土質結合材(ビトリファイドボンド)で固結したものであり、薄い円板状などの固結体である。このペレットの複数個を定盤上に接着剤で貼り付けて使用する。
ダイヤモンドシートは、ダイヤモンド粒子をガラスで固めてできた砥粒を、さらに樹脂(レジンボンド)で固めてシート状にしたものである。
本発明において、定盤上の固定砥粒を構成するダイヤモンド砥粒(粒子)の粒度は、#1000〜#4000程度が好ましく、#3000程度(例えば#2900〜#3100)が更に好ましい。
【0017】
本発明において、前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることが好ましい(構成4)。
他の固定砥粒を用いる場合に比べ、修正後の定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度に関し、求められる数値(例えば定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約540mmであるときの研削面の平坦度を20μm程度)を達成可能となる。また、加工時間も相対的に短くなる。
前記修正部材において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒としては、ダイヤモンドペレット、ダイヤモンドシート、などが挙げられる。
ダイヤモンドペレットは、ダイヤモンド砥粒(粒子)を、樹脂(レジンボンド)、金属(メタルボンド)、粘土質結合材(ビトリファイドボンド)で固結したものであり、薄い円板状などの固結体である。このペレットの複数個を定盤上に接着剤で貼り付けて使用する。
ダイヤモンドシートは、ダイヤモンド粒子をガラスで固めてできた砥粒を、さらに樹脂(レジンボンド)で固めてシート状にしたものである。
前記修正部材において、前記固定砥粒を構成するダイヤモンド砥粒(粒子)の粒度は、#1000〜#4000程度が好ましく、#3000程度(例えば#2900〜#3100)が更に好ましい。
本発明において、前記修正部材は、合成石英や、金属材料等で構成されたものとすることができる。この場合は、修正部材がダイヤモンド粒子を含む固定砥粒で構成される場合に比べ、研削レートが低下し、修正時間は長くなる。
本発明において、前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒等が配備された定盤の研削面を修正できるものであればいかなるものでもよい。
【0018】
本発明において、前記修正工程は、遊離砥粒を含む研削液を供給しながら、前記修正部材と、前記定盤の研削面とを、互いに押圧させて摺動させて行うことが好ましい(構成5)。
例えば、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備された定盤と、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成された修正部材の修正面とを、互いに押圧させて摺動させた場合、双方がダイヤモンド粒子であると表層のダイヤモンド粒子がすぐに目つぶれした状態になり、レジンボンド(定盤の研削面)を研削することができない。遊離砥粒を含む研削液を供給すると、双方のレジンボンドを同時に研削することができる。
遊離砥粒としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化ケイ素などの砥粒が挙げられる。遊離砥粒としては、アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒が好ましい。
本発明において、遊離砥粒(粒子)の粒度は、#1000〜#4000程度が好ましく、#3000程度(例えば#2900〜#3100)が更に好ましい。
【0019】
本発明において、前記修正工程は、固定砥粒を定盤の研削面に配備する固定砥粒配備工程に続いて行うことができる(構成6)。
本発明は、定盤の研削面の初期条件出しに優れる。このため、例えば、ダイヤモンドシートの貼り替えのたびに、高い精度で再現性良く定盤の研削面の平坦度の初期条件出しができる。
詳しくは、本発明によれば、固定砥粒が研削面に配備された定盤の面修正を修正キャリアによって行う場合であって、固定砥粒が研削面に配備された定盤を準備し、この定盤の固定砥粒(研削面)に初期の平滑性を付与する(初期の修正を行う)場合においても、修正後の定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度に関し、求められる数値(例えば定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約
540mmであるときの研削面の平坦度を20μm程度)を達成可能となる(初期平滑性を準備可能となる)。これにより、この定盤を用いて研削されるガラス基板等は、初期の修正を行う毎に、所定値以上の平坦度のものに仕上げることが可能となる。
【0020】
本発明において、前記修正工程は、固定砥粒が研削面に配備された定盤を用いてガラス基板の主表面を研削する研削工程の後に行うことができる。
本発明は、定盤の研削面の平坦度の回復にも優れる。所定のバッチ数を処理する毎に、高い精度で再現性良く定盤の研削面の平坦度を回復できる。
詳しくは、本発明によれば、マスクブランク用基板等のガラス基板の研削工程を実施後に、固定砥粒が研削面に配備された定盤の面修正を修正キャリアによって行う場合においても、修正後の定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度を、求められる数値以上に確実に回復させることができる。
【0021】
本発明において、前記修正キャリアは、本体部の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上で前記修正キャリアを自転しながら公転させるものであることが好ましい(構成7)。
本発明の前記修正キャリアは、前記研削装置において、被研削基板であるガラス基板を保持するキャリアと置換可能な構成とすることで、定盤の面修正の際に前記研削装置の構成を利用できる。
【0022】
本発明において修正キャリアは、固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置に対し、前記定盤の面修正を行うときに用いられる修正キャリアであって、
外周に前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合う外ギヤが設けられ、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、
前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている構成とすることができる(構成10)。
このような構成の修正キャリアによれば、前記研削装置において、被研削基板であるガラス基板を保持するキャリアと置換可能な構成となるので、定盤の面修正の際に前記研削装置の構成を利用できる。
また、このような構成の修正キャリアによれば、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度を、求められる数値(具体的には固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が20μm程度)よりも向上できる。例えば、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度を、固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が15μm程度まで向上できる。
さらに、このような構成の修正キャリアによれば、両面研削装置における上下定盤の固定砥粒(研削面)を同時に平坦化できる。
本発明において、前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されている構成とすることができる(構成11)。上記構成2で説明したのと同様である。
本発明において、前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されているものとすることができる(構成12)。上記構成4で説明したのと同様である。
【0023】
本発明において、修正キャリアの本体部(フレーム)は、研削面の修正工程中における修正キャリアの変形を微小にするためにも、剛性の高い材質で形成されていることが望ましい。例えば、金属製(SUS製)などが好ましい。
本発明において、修正キャリアの本体部は、リング状(円環状)の部分(外周部)と、リング状の部分(外周部)の直径方向にリング状の部分(外周部)と連接して形成された部分(直径部)と、を有する構成であることが好ましい。修正キャリアの本体部が、このような形状であると、修正キャリアの本体部が円板状(切り欠きなし)の場合と比べ、切りくず等が排除されやすく、修正キャリアの取り扱いが容易である。
【0024】
本発明において、前記修正工程は、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における前記修正部材の外周端部が前記固定砥粒の外周端部よりも外周側になるとともに、前記修正部材の内周端部が前記固定砥粒の外周端部よりも内周側になるように、前記定盤の外周側に前記修正部材をオーバーハングさせ、かつ、
前記修正部材の外周端部が前記固定砥粒の内周端部よりも内周側になるとともに、前記修正部材の内周端部が前記固定砥粒の内周端部よりも外周側になるように、前記定盤の内周側に前記修正部材をオーバーハングさせることが好ましい。
上記構成によれば、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部および内周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が完全にはみ出すことがない。このため、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度に関し、求められる数値(具体的には、固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が20μm程度)を達成可能となる。
オーバーハングは、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部付近を通過するとき、または、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が、定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部付近を通過するとき、などに生じる。
本発明において、オーバーハングは、定盤上の任意の半径方向(1以上のある半径方向)において、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が定盤の半径方向で定盤の中心から遠ざかるほうに(定盤の外周側に)ずれる(はみ出す)こと(但し完全にはみ出さないこと)、及び、定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が定盤の半径方向で定盤の中心に近づくほうに(定盤の内周側に)ずれる(はみ出す)こと(但し完全にはみ出さないこと)、である。
定盤に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材が相対運動するに従って、修正部材が最大にオーバーハングする定盤上の半径方向の位置も変化する。定盤に対し修正部材が相対運動で取り得るすべての位置関係において、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部および内周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が完全にはみ出さないことが必要である。
【0025】
本発明は、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ソーダライムガラス等の基板の研削に適用できる。また、本発明は、例えばアモルファスガラスであれば、SiO2−TiO2系ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等の基板の研削に適用できる。
本発明における基板の製造方法は、マスクブランク用ガラス基板、液晶や有機ELを用いる表示装置用ガラス基板、磁気ディスク用ガラス基板などに適用可能である。
本発明において、前記基板がマスクブランク用ガラス基板に用いられる場合は、合成石英ガラスまたはSiO2−TiO2系ガラス等の低熱膨張ガラスであることが好ましい。本発明は、合成石英ガラスやSiO2−TiO2系ガラス等の低熱膨張ガラスからなる基板の研削に特に適しているからである。
【0026】
本発明のマスクブランクの製造方法は、上記本発明の基板の製造方法で製造されたマスクブランク用基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜を形成することを特徴とする(構成8)。
上記構成により、所定値以下の高い平坦度の基板を有するマスクブランクを製造することが可能となる。
【0027】
本発明の転写用マスクの製造方法は、上記本発明のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする(構成9)。
上記構成により、所定値以下の高い平坦度の基板を有する転写用マスクを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に添付図面を参照して本発明による基板の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、特にマスクブランク用ガラス基板の研削の場合について説明するが、液晶や有機ELを用いる表示装置用ガラス基板、磁気ディスク用ガラス基板の研削の場合においても、応用可能である。図中、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、同様の要素は同一の参照符号によって表示する。
【0029】
図1は、一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的平面図であり、キャリアの遊星運動を説明するための図である。被研削・研磨基板(ガラス基板)100は、下定盤10の上にて、外周に外ギヤを有するキャリア50に保持され、このキャリア50の外ギヤを、サンギヤ(太陽歯車)30とインターナルギヤ(内歯歯車)40の間で両ギヤ30、40とそれぞれ噛合させる。例えば、サンギヤ30、インターナルギヤ40をそれぞれ矢印方向に回転させることにより、各キャリア50はそれぞれの矢印方向に遊星歯車として自転しながら公転する。
【0030】
図2は、一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的断面図であり、下定盤10に対して上定盤20が上下方向に移動可能であって、上下から被研削・研磨基板(ガラス基板)100を挟み、被研削・研磨基板(ガラス基板)100の両主表面の研削・研磨を行う様子を示している。図2に示すように、上定盤20と下定盤10には、それぞれ、研削の際には固定砥粒11、21が研削面に配備され(あるいは上下定盤の表面を格子状の溝が切られた形状とし、そのまま研削面として用いる)、研磨の際には研磨パッド(ポリシャ)11、21が研磨面に配備される。例えば、上下定盤10、20が回転することにより、ガラス基板100の主表面が研削・研磨される。
なお、上下定盤10、20を非駆動とし、サンギヤ30とインターナルギヤ40を駆動させる2ウエイ方式、インターナルギヤ40を固定し上下定盤10、20とサンギヤ30を駆動させる3ウエイ方式(インターナル固定型)、上定盤20を固定し下定盤10、サンギヤ30、インターナルギヤ40を駆動させる3ウエイ方式(上定盤固定型)、上下定盤10、20、サンギヤ30、インターナルギヤ40の4軸すべてを駆動させる4ウエイ方式、が適用可能である。
遊星歯車方式の研削・研磨装置は、両面研削・研磨装置、片面研削・研磨装置に適用可能である。
【0031】
本発明の実施形態の目的は、固定砥粒11、21が研削面に配備された上下の定盤10、20の面修正を行うことである(図3、図4参照)。
定盤の面修正を行うには、修正部材を用いて定盤の固定砥粒(研削面)の平坦性を修正する。
【0032】
図3は本発明の実施形態に用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す図である。図4は定盤の部分断面図を示し、図3のA−A断面図である。
図3、図4に示す修正キャリア51は、図1に示すキャリア50と置換可能な構成を有する。すなわち、前記修正キャリア51は、本体部を構成する外周部52の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤ30およびインターナルギヤ40の間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上10、20で前記修正キャリア51を自転しながら公転させることができる。
【0033】
本発明では、例えば、図1に示すように被研削・研磨基板(ガラス基板)100の研削・研磨時には遊星歯車として各キャリア50を用い、定盤の面修正の時には、各キャリア50に換えて、図3、図4に示す修正キャリア51を遊星歯車として設置することが可能である。
修正キャリアを用いて定盤の面修正を行う場合において、図1に示すキャリア50を全て取り除き、図3に示す修正キャリア51をキャリア50と置換する形で配置する。修正キャリア51は、定盤上に最低一つ配置すればよいが、修正時間を短縮したい場合などは、修正キャリア51を複数配置してもよい。
【0034】
図3、図4に示すように、定盤10、20の半径方向において、定盤の外周端部10a、20aよりも適当量(具体的には5〜100mm)内周側に固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aが位置し、かつ、定盤10、20の内周端部10b、20bよりも適当量(具体的には5〜100mm)外周側に固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bが位置するような配置にする。このような配置とすることで、基板の研磨中や研削中に基板をオーバーハングさせないことを前提として設計された研磨装置や研削装置を用いる場合でも、本願発明の基板の製造方法を適用できる。
この場合、定盤10、20上の固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aおよび内周端部11b、21bは、定盤の中心Oから、それぞれほぼ等しい距離(半径)の円周上に配置にする。
定盤10、20上の固定砥粒(研削面)11、21としては、ダイヤモンドシート(ダイヤモンド粒子の粒度#3000)を使用する。
【0035】
図3に示すように、同一サイズの複数の円形の修正部材53が、修正キャリア51におけるリング(円環)状の部分(外周部と称す)52の円周に沿って貼り付けられている。複数の修正部材53は、修正キャリア51の中心O’からほぼ等しい距離で、互いにほぼ等間隔で、修正キャリア51のリング状の外周部52に配置されている。
修正キャリア51における中央部には、リング状の外周部52の直径方向にリング状の外周部52と連接して形成された部分(直径部と称す)54を有している。修正部材55は、修正キャリア51における直径部54の中心付近を除いた部分に形成されている。修正部材55は、修正キャリア51における直径部54に、全面的に形成することもできる。
修正キャリア51の本体部は、外周部52と直径部54で構成される。本発明では、修正キャリアの本体部(金属製のフレーム)を構成する外周部52および直径部54の上下の面(本体部に対向する2つの面)にそれぞれ修正部材53および55を貼り付けたものである。
図3に示すように、修正部材53は、修正キャリア51のリング状の外周部52の円周に沿って配置されていて、リング状の外周部52の全体は修正部材53によって被覆されていない。これは、リング状の外周部52の全体が修正部材53で被覆されると、定盤と接触した場合に摩擦力が大きくなりすぎ、定盤に対して修正キャリアを回転させることが難しくなったり、固定砥粒に対して過大なせん断力が掛かって固定砥粒がシートから脱落したり、シート自体が定盤から剥離したりする恐れがある。
また、この修正自体の目的即ち相対運動による定盤の研削面の平滑性の向上という目的の達成の面から、修正部材53、55のサイズ、間隔、配置(貼り付け位置)等を、調整する必要がある。
【0036】
修正部材53の面積の合計をBとした場合、修正部材55の面積の合計は、0.4〜0.8Bが好ましく、0.5〜0.7Bがさらに好ましい。
図3に示す半径rの円の面積をCとした場合、修正部材55の面積の合計は、0.1〜0.6Cが好ましく、0.3〜0.5Cがさらに好ましい。
【0037】
図3、図4に示すように、修正キャリア51のリング状の外周部52における修正部材53の配置は、定盤の中心Oおよび修正キャリア51の中心O’を通る定盤の半径方向において、
修正部材53の外周端部53aが固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aよりも外周側になるとともに、修正部材53の内周端部53bが固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aよりも内周側になり、かつ、
修正部材53の外周端部53aが固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bよりも内周側になるとともに、修正部材53の内周端部53b(修正キャリア51の中心O’に近い側の端)が固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bよりも外周側になるような配置にする。
【0038】
修正部材53、55としては、ダイヤモンドシート(ダイヤモンド粒子の粒度#3000)を使用する。
なお、修正部材53、55の修正面の平坦度(触針式表面真直度測定装置を用いて測定)は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0039】
修正部材53の面積をSとした場合、オーバーハング量の最大値は0.05〜0.5S(オーバーハング量は修正部材の全面積Sの半分以下)が好ましい。
同様に、修正部材における修正キャリアの半径方向の長さhとした場合、オーバーハング量の最大値は0.5h以下(オーバーハング量は修正部材における修正キャリアの半径方向の長さhの半分以下)が好ましい(図3参照)。
なお、上下定盤によって掛けられる圧力によって修正部材は圧縮される。上下定盤の固定砥粒(研削面)11、21の端部から修正部材がオーバーハングする(はみ出る、外に飛び出す)と、修正部材におけるオーバーハングした部分(はみ出した部分、外に飛び出した部分)は圧力解放されて厚さが厚くなる。この圧力解放されて厚さが厚くなった修正部材におけるオーバーハングした部分(はみ出した部分、外に飛び出した部分)が、上下定盤の固定砥粒(研削面)11、21に向かって入っていく際に、この部分の固定砥粒(研削面)を必要以上に削ってしまい、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度向上の妨げになる。
このような、上下定盤によって修正部材にかかる圧力解放による影響等を軽減する等の観点からは、オーバーハング量の最大値は、0.1〜0.4Sが好ましく、0.2〜0.3Sがさらに好ましい。
【0040】
修正キャリア51の半径をRとしたとき、修正キャリアの外周部52における修正キャリアの半径方向の幅wは、0.1〜0.3R程度が好ましく、0.2R前後がさらに好ましい(図3参照)。
修正キャリアの外周部52における修正キャリアの半径方向の幅をwとしたとき、修正部材53における修正キャリアの半径方向の幅hは、0.1〜0.7w程度が好ましく、0.4w前後(例えば0.35〜0.45w)がさらに好ましい(図3参照)。
【0041】
図4に示すように、上下の定盤10、20の固定砥粒を配備した研削面11、21の平滑性の修正時には、修正キャリア51を、被研削・研磨基板(ガラス基板)100の研削時と同様に上下の定盤10、20で挟み、互いに押圧させて摺動させる。これによって、固定砥粒を配備した研削面11、21が削られ、それらの高さが一様になる。すなわち、定盤の準備工程で初期の平坦性付与が必要な研削面や、研削工程において低下した研削面の平坦性が修正され、基板の研削時に、研削対象である被研削・研磨基板(ガラス基板)100に対して、平坦性を付与できる状態にまで、研削面の平坦性を付与、回復できる。
このとき、遊離砥粒(例えば、粒径4〜15μm)を含むスラリーを用いて修正することが好ましい。遊離砥粒としては、アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒が好ましい。
上記修正工程において、上下の定盤10、20の固定砥粒を配備した研削面11、21の取代は、5〜50μmとするとよい。
【0042】
修正キャリア51の本体部を構成する外周部52又は直径部54と修正部材53又は55とを加えた厚さは、それぞれ図2に示す被研削・研磨基板(ガラス基板)100よりも厚くすることが好ましい。
このような厚さを持たせる理由は、修正キャリア51の修正能力を高めるためである。上下の定盤10、20のような両面研磨機の場合、それらの間に挟まれる被加工対象の厚さが厚いほど、曲げ強度が強くなるため修正キャリアが変形しにくく、精度の高い修正加工がしやすい。修正キャリア51によって上下の定盤10、20を修正するときも同様であり、修正キャリア51の本体部を構成する外周部52又は直径部54と修正部材53又は55とを加えた厚さが厚いほど修正能力は向上する。
このような厚さで構成された修正キャリア51の修正部材53、55の修正面と、上下の定盤10、20の研削面11、21とを、遊離砥粒を供給しながら、互いに押圧させて摺動させることにより、上下の定盤10、20の研削面11、21の平坦性を高めることができる。
【0043】
本発明のマスクブランク用基板の製造方法において、研削の条件は、例えば、研磨液(アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒(平均粒径4〜15μm)+水)、加工荷重50〜200g/cm2、研磨時間2〜60分、修正キャリア自転回転数0.5〜10rpm、修正キャリア公転回転数0.5〜10rpm、研磨定盤回転数2〜20rpm、等が好ましい。
【0044】
[実施例]
(実施例1、比較例1)
両面研削(ラッピング)装置の上下定盤に、固定砥粒(研削面)11、21として、それぞれ4枚のダイヤモンドシート(#3000)を貼り付けた(図7参照)。
ダイヤモンドシートを貼り付けた直後(修正前)の上下の定盤の研削面のプロファイルを測定した。その結果を図9および図10に示す。
図3、図4に示す修正キャリア(修正部材53はダイヤモンドシート(#3000)とした)で初期修正を実施した(実施例1)。修正後に上下定盤の研削面のプロファイルを測定した結果を図11および図12に示す。
図5、図6に示す修正キャリア(修正部材53はダイヤモンドシート(#3000)とした)で初期修正を実施した(比較例1)。修正後に上下定盤の研削面のプロファイルを測定した結果を図13および図14に示す。なお、図5、図6は、図3、図4において修正キャリア51における直径部54および修正部材55を有しないこと以外は図3、図4と同様であるので、図3、図4と同様の番号を付して説明を省略する。
図8に示す修正キャリア(修正部材53はダイヤモンドシート(#3000)とした)で初期修正を実施した(参考例1)。
なお、初期修正は、以下の条件で行った。
研削液:アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒(平均粒径10μm)+水
加工荷重:100g/cm2
研削時間:10分
修正キャリア自転回転数:2rpm
修正キャリア公転回転数:5rpm
定盤回転数:12rpm
定盤の半径:約1800mm
両面研削は、4ウエイ方式で、上下定盤の回転方向は逆、サンギヤとインターナルギヤの回転方向は逆とした。
また、図7に示すように、定盤の中心にはサンギヤ30があるので、定盤の直径方向では測定機でプロファイルを測定できない。このため、図7に示す測定位置で、測定機でプロファイル(全面)を測定した。この測定データに基づいて、図7に示す左側の固定砥粒部分の測定データからプロファイル(左)が得られ、図7に示す右側の固定砥粒部分の測定データからプロファイル(右)が得られる。このプロファイル(左)またはプロファイル(右)から算出される固定砥粒の平坦度は、固定砥粒の半径方向の平坦度と同等あるいはそれよりも大きく算出される。このため、プロファイル(左)またはプロファイル(右)から算出される固定砥粒の平坦度は、固定砥粒の半径方向の平坦度に代替することができる。このようにして、図9、10、11、12、13、14に示す測定データを得た。
実施例1、比較例1および参考例1においては、定盤の半径方向において、定盤の外周端部10a、20aよりも100mm内周側に固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aが位置し、かつ、定盤の内周端部10b、20bよりも100mm外周側に固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bが位置するような配置にしてある。
【0045】
図9および図10に示すように、定盤上にダイヤモンドシートを数枚に分けて貼った場合、ダイヤモンドシートの段差を修正する必要がある(研磨前の初期の修正)。
実施例1では、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された研削面の平坦度修正は、図9および図10に示す状態[上定盤の定盤面(研削面)は凹状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は60μm程度、下定盤の定盤面(研削面)は凸状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は55μm程度]から図11および図12に示す状態[上定盤の定盤面(研削面)は凹状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は20μm程度、下定盤の定盤面(研削面)は凸状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は15μm程度]に修正できた。また、平坦度修正の精度は、求められる数値(定盤の半径約800mmで上下の定盤面の平坦度がそれぞれ20μm程度)よりも向上できる(定盤の半径約800mmで下定盤面の平坦度を15μmに向上できた)。
比較例1では、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された研削面の平坦度修正は、図9および図10に示す状態から図13および図14に示す状態[上定盤の定盤面(研削面)は凹状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は20μm程度、下定盤の定盤面(研削面)は凸状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は20μm程度]に修正できた。また、平坦度修正の精度は、求められる数値(定盤の半径約800mmで上下の定盤面の平坦度がそれぞれ20μm程度)は達成できた。しかし、定盤(下定盤)の半径方向で見て、外周縁側と内周縁側から中央側に向かって凸形状(極小さい)に修正されてしまうことがわかる。
比較例1では、修正キャリアの外周にのみ修正部材を配置し、定盤上の固定砥粒(定盤面)の平坦度修正を進めていくと、図13および図14に示すように、上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じとなる(定盤面(研削面)のプロファイルが同じ形状の山になる)現象が生じる。上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じであると、定盤上の修正レートが面内で同じになってしまい、凸形状の傾向を修正できなくなる現象が生じる。
【0046】
参考例1では図8に示すように、定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aに対し前記修正部材53が前記定盤10の外周側で最大にオーバーハングするときにおいて、前記修正部材53の内周側の端53bが、定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも外周側に位置している、即ち、定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aに対し、前記修正部材53全体がはみ出している。同様に、定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bに対し、前記修正部材53が前記定盤10の内周側で最大にオーバーハングするときにおいて、前記修正部材53の内周側の端53bが、定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも内周側に位置している、即ち、定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bに対し、前記修正部材53全体がはみ出している。このため、比較例1では、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された研削面の平坦度修正は、求められる数値(例えば定盤の半径約800mmで定盤面の平坦度20μm程度)よりも劣る数値(例えば定盤の半径約800mmで定盤面の平坦度35μm程度)までにしか修正できない。
なお、参考例1においては、比較例1で示す定盤上の固定砥粒が凸形状(極小さい)に修正されてしまう問題は、定盤の固定砥粒(研削面)に対して前記修正部材のオーバーハング量を大きく取り過ぎた場合、顕在化しないことがわかる。
【0047】
(マスクブランク用基板の研削)
合成石英ガラス基板(約6インチ×約6インチ)の端面を面取加工、および両面ラッピング装置によって少なくとも第1研削加工を施したガラス基板を、上述の実施例1および比較例1で定盤の研削面の平坦度修正を行った両面研削装置にセットし、以下の研削条件で研削工程を行った。尚、加工荷重、研削時間は適宜調整して行った。
研削液:研削用薬剤+水
研削工程後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
実施例1のダイヤモンドシートが貼りつけられた定盤を用いて研削されるガラス基板等は、表裏の両面で、絶対値で1.0μm以下の平坦度のものに仕上げることが可能となる。このため、本発明は、従来の鋳鉄定盤による研削工程の代替のみならず、後述する粗研磨工程(第1ポリシング)の省略や簡略化なども可能であり、非常に有用である(研磨工程の一部を包含することが可能)。このことから、上述した本発明において(本明細書において)「研削」を「研磨」に置き換えた構成は、本発明に含まれる。例えば、請求項、発明の詳細な説明、発明の実施の形態、実施例等において「研削」を「研磨」に置き換えた構成は、本発明に含まれる。
比較例1の定盤を用いて研削されるガラス基板等は、表裏の両面で、絶対値で1.3μm以下の平坦度のものを得ることは困難であった。
【0048】
(実施例2)
数十バッチのガラス基板の主表面を研削する研削工程の後に、研削工程にて低下した定盤10、20の研削面の平坦度を修正するため、修正を実施例1と同様にして行った。
上記実施例1の初期修正の結果と同様の傾向が認められた。
【0049】
(実施例3)
(マスクブランク用基板の製造)
(1)精密研磨工程
実施例1および比較例1の各定盤を用いて研削したガラス基板を準備し、両面研磨装置にセットし、以下の研磨条件で精密研磨工程を行った。加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。よって、従来、精密研磨工程前に行われた粗研磨工程(平均粒径2〜3μmの酸化セリウム研磨液で行われる研磨工程)は省略したことになる。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径1μm)+水
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
精密研磨工程終了後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0050】
(2)超精密研磨工程
上述の両面研磨装置にセットし、以下の研磨条件で超精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨液:コロイダルシリカ(平均粒径100nm)+水
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
超精密研磨工程終了後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0051】
(3)平坦度測定工程
超精密研磨工程が行われた後の実施例1、および比較例1の基板(各12枚)について、主表面の142mm角の領域における平坦度(TIR)を平坦度測定器(Corning Tropel社製 UltraFlat200M)で測定した。その結果、実施例1の基板については、主表面の形状は、いずれも平坦度が0μm以上かつ+0.2μm以内の範囲の凸形状となっていた。これに対し、比較例1の基板については、主表面の形状は、平坦度(TIR)が+0.2μmよりも大きい凸形状のものが大多数を占め(平均9枚)、歩留りが悪いという結果となった。
【0052】
本発明の基板の製造方法においては、例えば、第1研削工程(Lap1)、第2研削工程(Lap2)、粗研磨工程(第1ポリシング)、エッジ研磨工程、精密研磨工程(第2ポリシング)、超精密研磨工程1(第3ポリシング)、超精密研磨工程2(第4ポリシング)の工程において、例えば、第1研削工程(Lap1)および粗研磨工程(第1ポリシング)に替えて、本発明の修正キャリアを用いて定盤面(研削面)を初期修正した上下定盤を有する両面研削装置を使用して基板の加工を第2研削工程後に実施する工程を行うことが可能となる。この場合、最終的な基板の平坦度(TIR)等の品質は維持することが可能である。また、この場合、第1研削工程(Lap1)等における取り代を30%程度削減することが可能となる。
【0053】
(マスクブランクおよびフォトマスクを作製しての評価)
上記の実施例1で得た各ガラス基板の一方の主表面上に、モリブデン、ケイ素および窒素を含有する遮光層(MoSiN膜)と、モリブデン、ケイ素および窒素を含有する反射防止層(MoSiN膜)が2層積層した構造の遮光膜(合計膜厚60nm)をそれぞれスパッタリング法によって形成し、バイナリ型のマスクブランクを製造した。
次に、製造した各マスクブランクの遮光膜上にスピンコート法でレジスト膜を塗布形成した。続いて、レジスト膜に所望の微細パターンを露光・現像することで形成した。さらに、レジスト膜をマスクとして、遮光膜に対してドライエッチングを行うことで、遮光膜に転写パターンを形成し、バイナリ型の転写用マスクを作製した。
【0054】
実施例1の基板から作製された各転写用マスクを用い、露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(ウェハ上のレジスト膜等)にArFエキシマレーザー光を照射する露光転写を行った。その結果、転写対象物に所望のパターンが正常に転写されていることが確認された。
【0055】
(反射型マスクブランクおよび反射型マスクを作製しての評価)
上記の実施例1で得た各ガラス基板の一方の主表面上に、モリブデン(Mo層)とケイ素(Si層)を交互に積層した多層反射膜を形成した。具体的には、ガラス基板側からSi層を4.2nm、Mo層を2.8nmそれぞれ成膜し、これを40周期繰り返し、最後にSi層を4.0nm成膜して多層反射膜を形成した。次に、多層反射膜上に、ルテニウムを含有する材料からなる保護膜を2.5nm形成した。最後に、保護膜上に、タンタルを主成分とする吸収体膜を形成し、反射型マスクブランクを製造した。
【0056】
次に、製造した各反射マスクブランクの遮光膜上にスピンコート法でレジスト膜を塗布形成した。続いて、レジスト膜に所望の微細パターンを露光・現像することで形成した。さらに、レジスト膜をマスクとして、吸収体膜に対してドライエッチングを行うことで、吸収体膜に転写パターンを形成し、反射型マスクを作製した。
【0057】
実施例1の基板から作製された各反射型マスクを用い、露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(ウェハ上のレジスト膜等)にEUV(Extreme Ultra Violet)光を照射する露光転写を行った。その結果、転写対象物に所望のパターンが正常に転写されていることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
10 下定盤
20 上定盤
30 サンギヤ(太陽歯車)
40 インターナルギヤ(内歯歯車)
50 キャリア
51 修正キャリア
52 外周部
53 修正部材
54 直径部
55 修正部材
100 被研削・研磨基板(ガラス基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および修正キャリア等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の超LSIデバイスの高密度、高精度化によりマスクブランク用基板に要求される形状精度(平坦性)が厳しくなっており、超高平坦性マスクブランク用基板が要求されている。
従来、マスクブランク用ガラス基板の研削工程では、表面に格子状の溝が設けられた2つの鋳鉄定盤間に、キャリアに保持されたガラス基板を所定圧力で挟み込み、遊離砥粒を含む研削液(スラリー)をガラス基板と定盤との間に供給しながら、定盤上でガラス基板を遊星運動させることで、基板両主表面の研削(ラッピング)が行われている。しかし、研削時、定盤面自体も削れること等に起因し、処理バッチ数が増えていくと定盤面の平坦度が悪化していく。このため、所定のバッチ数を処理する毎に、修正用のキャリアである修正キャリア(修正部材は鋳鉄製)を用いて、研削工程と同様に、定盤上で修正キャリア(修正部材)を遊星運動させることで、定盤面の平坦度修正を行っている。
一方、磁気ディスク用ガラス基板の研削工程においては、近年、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を定盤の研削面に配備した両面研削装置が用いられている。このダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を研削面に配備した定盤を用いる場合においても、処理バッチ数の増加による定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度の悪化は避けらず、所定バッチ数毎に、修正キャリアを用い、修正部材として金属及びガラスを順次用いて、定盤面の平坦度修正が行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−254166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、マスクブランク用基板の研削工程においても、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を定盤の研削面に配備した両面研削装置の使用が検討されている。
本発明は、マスクブランク用基板等のガラス基板の研削工程等において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒などの固定砥粒を定盤の研削面に配備した研削装置等を使用する場合に適した、基板の製造方法等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下のことが判った。
特許文献1に開示されているように、修正キャリアは、回転摩擦力等の問題を考慮し、修正部材を修正キャリア本体部の外周側にのみ配置した構成(例えばリング状の修正キャリア本体部に修正部材を複数配置した構成)とするのが一般的である。
しかし、定盤の固定砥粒(研削面)に対する前記修正部材のオーバーハング量を大きく取り過ぎると、修正部材がキャリアの外周側にのみ配置されていることや、修正キャリアを遊星運動させることで固定砥粒(研削面)を修正することに起因する問題が生じることが判明した。具体的には、図8に示すように、定盤10の固定砥粒(研削面)11に対する前記修正部材53のオーバーハング量を大きく取り過ぎると、修正部材53が一度定盤の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも外に飛び出した後、再度、外周端部11a側から定盤10の固定砥粒(研削面)11に向かって入っていくような軌道を描くようになる。この外周端部11a側から定盤10の固定砥粒(研削面)11に向かって修正部材53が入っていくことが生じることで、外周端部11a側の固定砥粒(研削面)11を必要以上に削ってしまい、定盤10の固定砥粒(研削面)11の平坦度修正の精度向上の妨げになる場合がある(例えば定盤の半径が約800mmで定盤面の平坦度は35μm程度までしか修正できない)ことを本発明者は見い出した。修正部材53が一度定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも外(内周側)に飛び出した後、再度、内周端部11b側から定盤10の固定砥粒(研削面)11に向かって入っていくような軌道を描く場合も同様である。
さらに、図5に示すように、定盤10上の任意の半径方向において、修正キャリア51の修正部材53の外周端部53aが定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも外周側になるとともに、修正キャリア51の修正部材53の内周端部53bが定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも内周側になるように、定盤10の外周側に修正部材53をオーバーハングさせ、かつ、修正キャリア51の修正部材53の外周端部53aが定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも内周側になるとともに、修正キャリア51の修正部材53の内周端部53bが定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも外周側になるように、定盤10の内周側に修正部材53をオーバーハングさせるようにして定盤10の固定砥粒(研削面)11の平坦度修正を行うことによって、定盤10の固定砥粒(研削面)11の平坦度修正の精度を、大きく改善できる(例えば定盤の半径が約800mmで定盤面の平坦度を20μm程度以下にできる)ことを本発明者は見い出し、出願を行っている(特願2011−67476)。
【0006】
一方、上記のような修正キャリアを用い、定盤の固定砥粒(研削面)に対する前記修正部材のオーバーハング量を最適化する上記技術を適用して、定盤上の固定砥粒の平坦度修正を行っても、定盤(下定盤)の半径方向で見て、外周縁側と内周縁側から中央側に向かって凸形状(極小さい)に修正されてしまう場合があることが判明した。定盤上の固定砥粒がこのような凸形状に修正されてしまうと、定盤研削面の平坦度を更に向上させることができないため、この研削装置を用いて、研削されたガラス基板の平坦度も更に向上させることができず、課題となることがわかった。
この定盤上の固定砥粒が凸形状(極小さい)に修正されてしまう上記問題は、定盤の固定砥粒(研削面)に対して前記修正部材のオーバーハング量を大きく取り過ぎた場合、定盤面の平坦度の絶対値が大きすぎるため、顕在化していなかった。
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、
修正部材を備える修正キャリアを前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリアの修正部材と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて前記定盤の面修正を行う修正工程を有し、
前記修正キャリアは、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されていることを特徴とする基板の製造方法。
(構成2)
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする構成1に記載の基板の製造方法。
(構成3)
前記定盤は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備されていることを特徴とする構成1または2に記載の基板の製造方法。
(構成4)
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成5)
前記修正工程は、遊離砥粒を含む研削液を供給しながら、修正部材と、前記定盤の研削面とを、互いに押圧させて摺動させて行うことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成6)
前記修正工程は、固定砥粒を定盤の研削面に配備する固定砥粒配備工程に続いて行うことを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成7)
前記修正キャリアは、本体部の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上で前記修正キャリアを自転しながら公転することを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成8)
構成1から7のいずれかに記載の基板の製造方法で製造された基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成9)
構成8に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成10)
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置に対し、前記定盤の面修正を行うときに用いられる修正キャリアであって、
外周に前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合う外ギヤが設けられ、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、
前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている
ことを特徴とする修正キャリア。
(構成11)
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする構成10に記載の修正キャリア。
(構成12)
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする構成10または11に記載の修正キャリア。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、修正キャリア上の修正部材の配置を、修正キャリアの外周側に沿って配置することに加え、修正キャリアの半径又は直径方向にも配置することにより、以下の効果が得られる。
(1)定盤の半径方向における中央側の修正レートが、定盤の半径方向における外周縁側や内周縁側よりも速くなるため、中央側の修正量が相対的に多くなり、中央側が凸形状に修正されてしまう現象を抑制できる。
(2)修正キャリアの全面に修正部材を配置してしまうと、修正部材と定盤上の固定砥粒との間の摩擦力が過大になり、装置への負荷が大きくなってしまうが、それを抑制できる。
(3)修正キャリアの外周にのみ修正部材を配置し、定盤上の固定砥粒(定盤面)の平坦度修正を進めていくと、上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じとなる現象が生じる。上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じであると、定盤上の修正レートが面内で同じになってしまい、凸形状の傾向を修正できなくなる現象が生じる。しかし、この場合でも、本発明の修正キャリアを適用することにより、定盤の半径方向における中央側の修正レートが相対的に速くなるため、形状修正ができるようになる。
本発明によれば、前記定盤が、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒などの固定砥粒が研削面に配備されている場合においても、上記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的平面図である。
【図2】一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的平面図である。
【図4】本発明の実施形態に用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的な部分断面図である。
【図5】比較例で用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的平面図である。
【図6】比較例で用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的な部分断面図である。
【図7】実施例および比較例における研削面の測定位置を示す模式的平面図である。
【図8】参考例で用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す模式的平面図である。
【図9】ダイヤモンドシートを貼り付けた直後の上定盤の断面プロフィールを示すグラフである。
【図10】ダイヤモンドシートを貼り付けた直後の下定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図11】実施例の修正キャリアで修正後の上定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図12】実施例の修正キャリアで修正後の下定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図13】比較例の修正キャリアで修正後の上定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【図14】比較例の修正キャリアで修正後の下定盤の断面プロファイルを示すグラフである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の基板の製造方法は、固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、
修正部材を備える修正キャリアを前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリアの修正部材と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて前記定盤の面修正を行う修正工程を有し、
前記修正キャリアは、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されていることを特徴とする(構成1)。
上記構成によれば、修正キャリア上の修正部材の配置を、修正キャリアの外周側に沿って配置することに加え、修正キャリアの半径又は直径方向にも配置することにより、以下の効果が得られる。
(1)定盤の半径方向における中央側の修正レートが、定盤の半径方向における外周縁側や内周縁側よりも速くなるため、中央側の修正量が相対的に多くなり、中央側が凸形状に修正されてしまう現象を抑制できる。
(2)修正キャリアの全面に修正部材を配置してしまうと、修正部材と定盤上の固定砥粒との間の摩擦力が過大になり、装置への負荷が大きくなってしまうが、それを抑制できる。
(3)修正キャリアの外周にのみ修正部材を配置し、定盤上の固定砥粒(定盤面)の平坦度修正を進めていくと、上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じとなる現象が生じる。上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じであると、定盤上の修正レートが面内で同じになってしまい、凸形状の傾向を修正できなくなる現象が生じる。しかし、この場合でも、本発明の修正キャリアを適用することにより、定盤の半径方向における中央側の修正レートが相対的に速くなるため、形状修正ができるようになる。
本発明においては、前記定盤が、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒などの固定砥粒が研削面に配備されている場合においても、上記効果を得ることができる。
また、本発明によれば、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度を、求められる数値(具体的には定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約540mmであるときの高低差が20μm程度)よりも向上できる。例えば、定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約540mmであるときの平坦度修正の精度を、固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が15μm程度まで向上できる。
本発明は、定盤の半径が約1100mmより大きい研削装置を用いる場合に適する。
【0011】
本発明において、修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上とは、例えば、修正キャリアの自転軸(中心)を通り、修正キャリアの外周側に向かって伸びる直線上の任意点を結ぶ直線上である。例えば、修正キャリアの自転軸(中心)を通り、修正キャリアの半径上の任意点を結ぶ直線上である。
本発明においては、修正キャリアの外周側に沿って修正部材を配置することに加えて、外周側よりも自転軸(中心)側における前記直線を含む領域又は前記半径もしくは前記半径の一部を含む領域に修正部材を配置することができる。
【0012】
本発明において、前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されている構成とすることができる(構成2)。
本発明においては、例えば、修正キャリアの少なくとも1つの直径方向に修正部材を配置することができる。
本発明においては、修正キャリアにおける複数の直径方向に修正部材を配置することができる。例えば、十字方向(互いに90度をなす2つの方向)に修正部材を配置することができる。
本発明においては、前記直線を含む領域又は前記直径もしくは前記直径の一部を含む領域に修正部材を配置することができる。
【0013】
本発明においては、修正部材の摩擦抵抗が大きくなりすぎ修正部材(修正キャリア)が定盤に対し相対的に動作不可となるのを避ける観点、スラリーなどの流動性を良好に確保する観点から、修正部材は、修正キャリアの本体部における外周部分(外周部)に断続的に配置することが好ましい。
本発明において、前記修正部材は、複数の修正部材を、修正キャリアの中心から等しい距離で、互いに等間隔で、修正キャリアの本体部における外周部分(外周部)に配置することができる。この場合、複数の修正部材は、同一形状とすることができる。複数の修正部材は、異なる形状とすることもできる。
本発明において、前記修正部材の形状としては、円形、扇形、矩形、正方形、角がトリミングされた略正方形、角がトリミングされた扇形、角がトリミングされた矩形、角がトリミングされた正方形の形状、その他任意形状が挙げられる。複数の修正部材における各修正部材に関しても同様である。
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部における直径方向の領域(直径部)の全面に形成することができる。
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部における直径方向の領域(直径部)に、部分的に形成することもできる。
【0014】
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部において、下定盤側及び上定盤側の双方に、配備する。
両面研削装置における上下定盤の固定砥粒(研削面)を同時に平坦化でき、しかも一方ずつ修正する場合よりも上下定盤の固定砥粒(研削面)の修正精度が向上する。
本発明においては、前記修正工程は、上下2つの定盤の研削面の間に前記修正キャリアを挟み込み、前記修正キャリアの前記修正部材が上下2つの定盤の両研削面に押圧させた状態で摺動させることで前記上下2つの定盤の面修正を行う。
本発明において、前記修正部材は、修正キャリアの本体部において、下定盤側、又は、上定盤側、のいずれか一方に配備することもできる。この場合は、下定盤側、又は、上定盤側、のいずれか一方のみの面修正を行う。
【0015】
本発明において、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部および内周端部は、定盤の中心から、それぞれ等しい距離(半径)の円周上に配置にすることが好ましい。
本発明において、固定砥粒は、多数の砥粒を適当な結合剤(ボンド)で固定したものである。
本発明において、定盤上の固定砥粒を構成する砥粒(粒子)としては、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)、炭化ケイ素、アルミナなどの砥粒(粒子)が挙げられる。
本発明において、定盤上の固定砥粒は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された定盤と、同等の作用(例えば研削作用)を示すものであればいかなるものでもよい。
【0016】
本発明において、前記定盤は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備されていることが好ましい(構成3)。
本発明において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒としては、ダイヤモンドペレット、ダイヤモンドシート、などが挙げられる。
ダイヤモンドペレットは、ダイヤモンド砥粒(粒子)を、樹脂(レジンボンド)、金属(メタルボンド)、粘土質結合材(ビトリファイドボンド)で固結したものであり、薄い円板状などの固結体である。このペレットの複数個を定盤上に接着剤で貼り付けて使用する。
ダイヤモンドシートは、ダイヤモンド粒子をガラスで固めてできた砥粒を、さらに樹脂(レジンボンド)で固めてシート状にしたものである。
本発明において、定盤上の固定砥粒を構成するダイヤモンド砥粒(粒子)の粒度は、#1000〜#4000程度が好ましく、#3000程度(例えば#2900〜#3100)が更に好ましい。
【0017】
本発明において、前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることが好ましい(構成4)。
他の固定砥粒を用いる場合に比べ、修正後の定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度に関し、求められる数値(例えば定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約540mmであるときの研削面の平坦度を20μm程度)を達成可能となる。また、加工時間も相対的に短くなる。
前記修正部材において、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒としては、ダイヤモンドペレット、ダイヤモンドシート、などが挙げられる。
ダイヤモンドペレットは、ダイヤモンド砥粒(粒子)を、樹脂(レジンボンド)、金属(メタルボンド)、粘土質結合材(ビトリファイドボンド)で固結したものであり、薄い円板状などの固結体である。このペレットの複数個を定盤上に接着剤で貼り付けて使用する。
ダイヤモンドシートは、ダイヤモンド粒子をガラスで固めてできた砥粒を、さらに樹脂(レジンボンド)で固めてシート状にしたものである。
前記修正部材において、前記固定砥粒を構成するダイヤモンド砥粒(粒子)の粒度は、#1000〜#4000程度が好ましく、#3000程度(例えば#2900〜#3100)が更に好ましい。
本発明において、前記修正部材は、合成石英や、金属材料等で構成されたものとすることができる。この場合は、修正部材がダイヤモンド粒子を含む固定砥粒で構成される場合に比べ、研削レートが低下し、修正時間は長くなる。
本発明において、前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒等が配備された定盤の研削面を修正できるものであればいかなるものでもよい。
【0018】
本発明において、前記修正工程は、遊離砥粒を含む研削液を供給しながら、前記修正部材と、前記定盤の研削面とを、互いに押圧させて摺動させて行うことが好ましい(構成5)。
例えば、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備された定盤と、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成された修正部材の修正面とを、互いに押圧させて摺動させた場合、双方がダイヤモンド粒子であると表層のダイヤモンド粒子がすぐに目つぶれした状態になり、レジンボンド(定盤の研削面)を研削することができない。遊離砥粒を含む研削液を供給すると、双方のレジンボンドを同時に研削することができる。
遊離砥粒としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化ケイ素などの砥粒が挙げられる。遊離砥粒としては、アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒が好ましい。
本発明において、遊離砥粒(粒子)の粒度は、#1000〜#4000程度が好ましく、#3000程度(例えば#2900〜#3100)が更に好ましい。
【0019】
本発明において、前記修正工程は、固定砥粒を定盤の研削面に配備する固定砥粒配備工程に続いて行うことができる(構成6)。
本発明は、定盤の研削面の初期条件出しに優れる。このため、例えば、ダイヤモンドシートの貼り替えのたびに、高い精度で再現性良く定盤の研削面の平坦度の初期条件出しができる。
詳しくは、本発明によれば、固定砥粒が研削面に配備された定盤の面修正を修正キャリアによって行う場合であって、固定砥粒が研削面に配備された定盤を準備し、この定盤の固定砥粒(研削面)に初期の平滑性を付与する(初期の修正を行う)場合においても、修正後の定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度に関し、求められる数値(例えば定盤の半径方向における上下の定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの長さが約
540mmであるときの研削面の平坦度を20μm程度)を達成可能となる(初期平滑性を準備可能となる)。これにより、この定盤を用いて研削されるガラス基板等は、初期の修正を行う毎に、所定値以上の平坦度のものに仕上げることが可能となる。
【0020】
本発明において、前記修正工程は、固定砥粒が研削面に配備された定盤を用いてガラス基板の主表面を研削する研削工程の後に行うことができる。
本発明は、定盤の研削面の平坦度の回復にも優れる。所定のバッチ数を処理する毎に、高い精度で再現性良く定盤の研削面の平坦度を回復できる。
詳しくは、本発明によれば、マスクブランク用基板等のガラス基板の研削工程を実施後に、固定砥粒が研削面に配備された定盤の面修正を修正キャリアによって行う場合においても、修正後の定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度を、求められる数値以上に確実に回復させることができる。
【0021】
本発明において、前記修正キャリアは、本体部の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上で前記修正キャリアを自転しながら公転させるものであることが好ましい(構成7)。
本発明の前記修正キャリアは、前記研削装置において、被研削基板であるガラス基板を保持するキャリアと置換可能な構成とすることで、定盤の面修正の際に前記研削装置の構成を利用できる。
【0022】
本発明において修正キャリアは、固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置に対し、前記定盤の面修正を行うときに用いられる修正キャリアであって、
外周に前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合う外ギヤが設けられ、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、
前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている構成とすることができる(構成10)。
このような構成の修正キャリアによれば、前記研削装置において、被研削基板であるガラス基板を保持するキャリアと置換可能な構成となるので、定盤の面修正の際に前記研削装置の構成を利用できる。
また、このような構成の修正キャリアによれば、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度を、求められる数値(具体的には固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が20μm程度)よりも向上できる。例えば、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度を、固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が15μm程度まで向上できる。
さらに、このような構成の修正キャリアによれば、両面研削装置における上下定盤の固定砥粒(研削面)を同時に平坦化できる。
本発明において、前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されている構成とすることができる(構成11)。上記構成2で説明したのと同様である。
本発明において、前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されているものとすることができる(構成12)。上記構成4で説明したのと同様である。
【0023】
本発明において、修正キャリアの本体部(フレーム)は、研削面の修正工程中における修正キャリアの変形を微小にするためにも、剛性の高い材質で形成されていることが望ましい。例えば、金属製(SUS製)などが好ましい。
本発明において、修正キャリアの本体部は、リング状(円環状)の部分(外周部)と、リング状の部分(外周部)の直径方向にリング状の部分(外周部)と連接して形成された部分(直径部)と、を有する構成であることが好ましい。修正キャリアの本体部が、このような形状であると、修正キャリアの本体部が円板状(切り欠きなし)の場合と比べ、切りくず等が排除されやすく、修正キャリアの取り扱いが容易である。
【0024】
本発明において、前記修正工程は、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における前記修正部材の外周端部が前記固定砥粒の外周端部よりも外周側になるとともに、前記修正部材の内周端部が前記固定砥粒の外周端部よりも内周側になるように、前記定盤の外周側に前記修正部材をオーバーハングさせ、かつ、
前記修正部材の外周端部が前記固定砥粒の内周端部よりも内周側になるとともに、前記修正部材の内周端部が前記固定砥粒の内周端部よりも外周側になるように、前記定盤の内周側に前記修正部材をオーバーハングさせることが好ましい。
上記構成によれば、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部および内周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が完全にはみ出すことがない。このため、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度に関し、求められる数値(具体的には、固定砥粒(研削面)の内周端部から外周端部までの高低差が20μm程度)を達成可能となる。
オーバーハングは、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部付近を通過するとき、または、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が、定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部付近を通過するとき、などに生じる。
本発明において、オーバーハングは、定盤上の任意の半径方向(1以上のある半径方向)において、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が定盤の半径方向で定盤の中心から遠ざかるほうに(定盤の外周側に)ずれる(はみ出す)こと(但し完全にはみ出さないこと)、及び、定盤の固定砥粒(研削面)の内周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が定盤の半径方向で定盤の中心に近づくほうに(定盤の内周側に)ずれる(はみ出す)こと(但し完全にはみ出さないこと)、である。
定盤に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材が相対運動するに従って、修正部材が最大にオーバーハングする定盤上の半径方向の位置も変化する。定盤に対し修正部材が相対運動で取り得るすべての位置関係において、定盤の固定砥粒(研削面)の外周端部および内周端部に対し、修正キャリアの本体部の外周部分(外周部)における修正部材(複数ある修正部材の1つ、又は修正部材の一部)が完全にはみ出さないことが必要である。
【0025】
本発明は、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ソーダライムガラス等の基板の研削に適用できる。また、本発明は、例えばアモルファスガラスであれば、SiO2−TiO2系ガラス、結晶化ガラスであれば、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等の基板の研削に適用できる。
本発明における基板の製造方法は、マスクブランク用ガラス基板、液晶や有機ELを用いる表示装置用ガラス基板、磁気ディスク用ガラス基板などに適用可能である。
本発明において、前記基板がマスクブランク用ガラス基板に用いられる場合は、合成石英ガラスまたはSiO2−TiO2系ガラス等の低熱膨張ガラスであることが好ましい。本発明は、合成石英ガラスやSiO2−TiO2系ガラス等の低熱膨張ガラスからなる基板の研削に特に適しているからである。
【0026】
本発明のマスクブランクの製造方法は、上記本発明の基板の製造方法で製造されたマスクブランク用基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜を形成することを特徴とする(構成8)。
上記構成により、所定値以下の高い平坦度の基板を有するマスクブランクを製造することが可能となる。
【0027】
本発明の転写用マスクの製造方法は、上記本発明のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする(構成9)。
上記構成により、所定値以下の高い平坦度の基板を有する転写用マスクを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に添付図面を参照して本発明による基板の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、特にマスクブランク用ガラス基板の研削の場合について説明するが、液晶や有機ELを用いる表示装置用ガラス基板、磁気ディスク用ガラス基板の研削の場合においても、応用可能である。図中、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、同様の要素は同一の参照符号によって表示する。
【0029】
図1は、一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的平面図であり、キャリアの遊星運動を説明するための図である。被研削・研磨基板(ガラス基板)100は、下定盤10の上にて、外周に外ギヤを有するキャリア50に保持され、このキャリア50の外ギヤを、サンギヤ(太陽歯車)30とインターナルギヤ(内歯歯車)40の間で両ギヤ30、40とそれぞれ噛合させる。例えば、サンギヤ30、インターナルギヤ40をそれぞれ矢印方向に回転させることにより、各キャリア50はそれぞれの矢印方向に遊星歯車として自転しながら公転する。
【0030】
図2は、一般的な遊星歯車方式の研削・研磨装置の構成を説明するための模式的断面図であり、下定盤10に対して上定盤20が上下方向に移動可能であって、上下から被研削・研磨基板(ガラス基板)100を挟み、被研削・研磨基板(ガラス基板)100の両主表面の研削・研磨を行う様子を示している。図2に示すように、上定盤20と下定盤10には、それぞれ、研削の際には固定砥粒11、21が研削面に配備され(あるいは上下定盤の表面を格子状の溝が切られた形状とし、そのまま研削面として用いる)、研磨の際には研磨パッド(ポリシャ)11、21が研磨面に配備される。例えば、上下定盤10、20が回転することにより、ガラス基板100の主表面が研削・研磨される。
なお、上下定盤10、20を非駆動とし、サンギヤ30とインターナルギヤ40を駆動させる2ウエイ方式、インターナルギヤ40を固定し上下定盤10、20とサンギヤ30を駆動させる3ウエイ方式(インターナル固定型)、上定盤20を固定し下定盤10、サンギヤ30、インターナルギヤ40を駆動させる3ウエイ方式(上定盤固定型)、上下定盤10、20、サンギヤ30、インターナルギヤ40の4軸すべてを駆動させる4ウエイ方式、が適用可能である。
遊星歯車方式の研削・研磨装置は、両面研削・研磨装置、片面研削・研磨装置に適用可能である。
【0031】
本発明の実施形態の目的は、固定砥粒11、21が研削面に配備された上下の定盤10、20の面修正を行うことである(図3、図4参照)。
定盤の面修正を行うには、修正部材を用いて定盤の固定砥粒(研削面)の平坦性を修正する。
【0032】
図3は本発明の実施形態に用いる修正キャリアおよび修正部材の例を示す図である。図4は定盤の部分断面図を示し、図3のA−A断面図である。
図3、図4に示す修正キャリア51は、図1に示すキャリア50と置換可能な構成を有する。すなわち、前記修正キャリア51は、本体部を構成する外周部52の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤ30およびインターナルギヤ40の間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上10、20で前記修正キャリア51を自転しながら公転させることができる。
【0033】
本発明では、例えば、図1に示すように被研削・研磨基板(ガラス基板)100の研削・研磨時には遊星歯車として各キャリア50を用い、定盤の面修正の時には、各キャリア50に換えて、図3、図4に示す修正キャリア51を遊星歯車として設置することが可能である。
修正キャリアを用いて定盤の面修正を行う場合において、図1に示すキャリア50を全て取り除き、図3に示す修正キャリア51をキャリア50と置換する形で配置する。修正キャリア51は、定盤上に最低一つ配置すればよいが、修正時間を短縮したい場合などは、修正キャリア51を複数配置してもよい。
【0034】
図3、図4に示すように、定盤10、20の半径方向において、定盤の外周端部10a、20aよりも適当量(具体的には5〜100mm)内周側に固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aが位置し、かつ、定盤10、20の内周端部10b、20bよりも適当量(具体的には5〜100mm)外周側に固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bが位置するような配置にする。このような配置とすることで、基板の研磨中や研削中に基板をオーバーハングさせないことを前提として設計された研磨装置や研削装置を用いる場合でも、本願発明の基板の製造方法を適用できる。
この場合、定盤10、20上の固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aおよび内周端部11b、21bは、定盤の中心Oから、それぞれほぼ等しい距離(半径)の円周上に配置にする。
定盤10、20上の固定砥粒(研削面)11、21としては、ダイヤモンドシート(ダイヤモンド粒子の粒度#3000)を使用する。
【0035】
図3に示すように、同一サイズの複数の円形の修正部材53が、修正キャリア51におけるリング(円環)状の部分(外周部と称す)52の円周に沿って貼り付けられている。複数の修正部材53は、修正キャリア51の中心O’からほぼ等しい距離で、互いにほぼ等間隔で、修正キャリア51のリング状の外周部52に配置されている。
修正キャリア51における中央部には、リング状の外周部52の直径方向にリング状の外周部52と連接して形成された部分(直径部と称す)54を有している。修正部材55は、修正キャリア51における直径部54の中心付近を除いた部分に形成されている。修正部材55は、修正キャリア51における直径部54に、全面的に形成することもできる。
修正キャリア51の本体部は、外周部52と直径部54で構成される。本発明では、修正キャリアの本体部(金属製のフレーム)を構成する外周部52および直径部54の上下の面(本体部に対向する2つの面)にそれぞれ修正部材53および55を貼り付けたものである。
図3に示すように、修正部材53は、修正キャリア51のリング状の外周部52の円周に沿って配置されていて、リング状の外周部52の全体は修正部材53によって被覆されていない。これは、リング状の外周部52の全体が修正部材53で被覆されると、定盤と接触した場合に摩擦力が大きくなりすぎ、定盤に対して修正キャリアを回転させることが難しくなったり、固定砥粒に対して過大なせん断力が掛かって固定砥粒がシートから脱落したり、シート自体が定盤から剥離したりする恐れがある。
また、この修正自体の目的即ち相対運動による定盤の研削面の平滑性の向上という目的の達成の面から、修正部材53、55のサイズ、間隔、配置(貼り付け位置)等を、調整する必要がある。
【0036】
修正部材53の面積の合計をBとした場合、修正部材55の面積の合計は、0.4〜0.8Bが好ましく、0.5〜0.7Bがさらに好ましい。
図3に示す半径rの円の面積をCとした場合、修正部材55の面積の合計は、0.1〜0.6Cが好ましく、0.3〜0.5Cがさらに好ましい。
【0037】
図3、図4に示すように、修正キャリア51のリング状の外周部52における修正部材53の配置は、定盤の中心Oおよび修正キャリア51の中心O’を通る定盤の半径方向において、
修正部材53の外周端部53aが固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aよりも外周側になるとともに、修正部材53の内周端部53bが固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aよりも内周側になり、かつ、
修正部材53の外周端部53aが固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bよりも内周側になるとともに、修正部材53の内周端部53b(修正キャリア51の中心O’に近い側の端)が固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bよりも外周側になるような配置にする。
【0038】
修正部材53、55としては、ダイヤモンドシート(ダイヤモンド粒子の粒度#3000)を使用する。
なお、修正部材53、55の修正面の平坦度(触針式表面真直度測定装置を用いて測定)は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0039】
修正部材53の面積をSとした場合、オーバーハング量の最大値は0.05〜0.5S(オーバーハング量は修正部材の全面積Sの半分以下)が好ましい。
同様に、修正部材における修正キャリアの半径方向の長さhとした場合、オーバーハング量の最大値は0.5h以下(オーバーハング量は修正部材における修正キャリアの半径方向の長さhの半分以下)が好ましい(図3参照)。
なお、上下定盤によって掛けられる圧力によって修正部材は圧縮される。上下定盤の固定砥粒(研削面)11、21の端部から修正部材がオーバーハングする(はみ出る、外に飛び出す)と、修正部材におけるオーバーハングした部分(はみ出した部分、外に飛び出した部分)は圧力解放されて厚さが厚くなる。この圧力解放されて厚さが厚くなった修正部材におけるオーバーハングした部分(はみ出した部分、外に飛び出した部分)が、上下定盤の固定砥粒(研削面)11、21に向かって入っていく際に、この部分の固定砥粒(研削面)を必要以上に削ってしまい、定盤の固定砥粒(研削面)の平坦度修正の精度向上の妨げになる。
このような、上下定盤によって修正部材にかかる圧力解放による影響等を軽減する等の観点からは、オーバーハング量の最大値は、0.1〜0.4Sが好ましく、0.2〜0.3Sがさらに好ましい。
【0040】
修正キャリア51の半径をRとしたとき、修正キャリアの外周部52における修正キャリアの半径方向の幅wは、0.1〜0.3R程度が好ましく、0.2R前後がさらに好ましい(図3参照)。
修正キャリアの外周部52における修正キャリアの半径方向の幅をwとしたとき、修正部材53における修正キャリアの半径方向の幅hは、0.1〜0.7w程度が好ましく、0.4w前後(例えば0.35〜0.45w)がさらに好ましい(図3参照)。
【0041】
図4に示すように、上下の定盤10、20の固定砥粒を配備した研削面11、21の平滑性の修正時には、修正キャリア51を、被研削・研磨基板(ガラス基板)100の研削時と同様に上下の定盤10、20で挟み、互いに押圧させて摺動させる。これによって、固定砥粒を配備した研削面11、21が削られ、それらの高さが一様になる。すなわち、定盤の準備工程で初期の平坦性付与が必要な研削面や、研削工程において低下した研削面の平坦性が修正され、基板の研削時に、研削対象である被研削・研磨基板(ガラス基板)100に対して、平坦性を付与できる状態にまで、研削面の平坦性を付与、回復できる。
このとき、遊離砥粒(例えば、粒径4〜15μm)を含むスラリーを用いて修正することが好ましい。遊離砥粒としては、アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒が好ましい。
上記修正工程において、上下の定盤10、20の固定砥粒を配備した研削面11、21の取代は、5〜50μmとするとよい。
【0042】
修正キャリア51の本体部を構成する外周部52又は直径部54と修正部材53又は55とを加えた厚さは、それぞれ図2に示す被研削・研磨基板(ガラス基板)100よりも厚くすることが好ましい。
このような厚さを持たせる理由は、修正キャリア51の修正能力を高めるためである。上下の定盤10、20のような両面研磨機の場合、それらの間に挟まれる被加工対象の厚さが厚いほど、曲げ強度が強くなるため修正キャリアが変形しにくく、精度の高い修正加工がしやすい。修正キャリア51によって上下の定盤10、20を修正するときも同様であり、修正キャリア51の本体部を構成する外周部52又は直径部54と修正部材53又は55とを加えた厚さが厚いほど修正能力は向上する。
このような厚さで構成された修正キャリア51の修正部材53、55の修正面と、上下の定盤10、20の研削面11、21とを、遊離砥粒を供給しながら、互いに押圧させて摺動させることにより、上下の定盤10、20の研削面11、21の平坦性を高めることができる。
【0043】
本発明のマスクブランク用基板の製造方法において、研削の条件は、例えば、研磨液(アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒(平均粒径4〜15μm)+水)、加工荷重50〜200g/cm2、研磨時間2〜60分、修正キャリア自転回転数0.5〜10rpm、修正キャリア公転回転数0.5〜10rpm、研磨定盤回転数2〜20rpm、等が好ましい。
【0044】
[実施例]
(実施例1、比較例1)
両面研削(ラッピング)装置の上下定盤に、固定砥粒(研削面)11、21として、それぞれ4枚のダイヤモンドシート(#3000)を貼り付けた(図7参照)。
ダイヤモンドシートを貼り付けた直後(修正前)の上下の定盤の研削面のプロファイルを測定した。その結果を図9および図10に示す。
図3、図4に示す修正キャリア(修正部材53はダイヤモンドシート(#3000)とした)で初期修正を実施した(実施例1)。修正後に上下定盤の研削面のプロファイルを測定した結果を図11および図12に示す。
図5、図6に示す修正キャリア(修正部材53はダイヤモンドシート(#3000)とした)で初期修正を実施した(比較例1)。修正後に上下定盤の研削面のプロファイルを測定した結果を図13および図14に示す。なお、図5、図6は、図3、図4において修正キャリア51における直径部54および修正部材55を有しないこと以外は図3、図4と同様であるので、図3、図4と同様の番号を付して説明を省略する。
図8に示す修正キャリア(修正部材53はダイヤモンドシート(#3000)とした)で初期修正を実施した(参考例1)。
なお、初期修正は、以下の条件で行った。
研削液:アルミナ、ジルコニア、シリカの混合砥粒(平均粒径10μm)+水
加工荷重:100g/cm2
研削時間:10分
修正キャリア自転回転数:2rpm
修正キャリア公転回転数:5rpm
定盤回転数:12rpm
定盤の半径:約1800mm
両面研削は、4ウエイ方式で、上下定盤の回転方向は逆、サンギヤとインターナルギヤの回転方向は逆とした。
また、図7に示すように、定盤の中心にはサンギヤ30があるので、定盤の直径方向では測定機でプロファイルを測定できない。このため、図7に示す測定位置で、測定機でプロファイル(全面)を測定した。この測定データに基づいて、図7に示す左側の固定砥粒部分の測定データからプロファイル(左)が得られ、図7に示す右側の固定砥粒部分の測定データからプロファイル(右)が得られる。このプロファイル(左)またはプロファイル(右)から算出される固定砥粒の平坦度は、固定砥粒の半径方向の平坦度と同等あるいはそれよりも大きく算出される。このため、プロファイル(左)またはプロファイル(右)から算出される固定砥粒の平坦度は、固定砥粒の半径方向の平坦度に代替することができる。このようにして、図9、10、11、12、13、14に示す測定データを得た。
実施例1、比較例1および参考例1においては、定盤の半径方向において、定盤の外周端部10a、20aよりも100mm内周側に固定砥粒(研削面)11、21の外周端部11a、21aが位置し、かつ、定盤の内周端部10b、20bよりも100mm外周側に固定砥粒(研削面)11、21の内周端部11b、21bが位置するような配置にしてある。
【0045】
図9および図10に示すように、定盤上にダイヤモンドシートを数枚に分けて貼った場合、ダイヤモンドシートの段差を修正する必要がある(研磨前の初期の修正)。
実施例1では、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された研削面の平坦度修正は、図9および図10に示す状態[上定盤の定盤面(研削面)は凹状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は60μm程度、下定盤の定盤面(研削面)は凸状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は55μm程度]から図11および図12に示す状態[上定盤の定盤面(研削面)は凹状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は20μm程度、下定盤の定盤面(研削面)は凸状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は15μm程度]に修正できた。また、平坦度修正の精度は、求められる数値(定盤の半径約800mmで上下の定盤面の平坦度がそれぞれ20μm程度)よりも向上できる(定盤の半径約800mmで下定盤面の平坦度を15μmに向上できた)。
比較例1では、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された研削面の平坦度修正は、図9および図10に示す状態から図13および図14に示す状態[上定盤の定盤面(研削面)は凹状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は20μm程度、下定盤の定盤面(研削面)は凸状(定盤面を水平方向から見て上に凸状)で平坦度は20μm程度]に修正できた。また、平坦度修正の精度は、求められる数値(定盤の半径約800mmで上下の定盤面の平坦度がそれぞれ20μm程度)は達成できた。しかし、定盤(下定盤)の半径方向で見て、外周縁側と内周縁側から中央側に向かって凸形状(極小さい)に修正されてしまうことがわかる。
比較例1では、修正キャリアの外周にのみ修正部材を配置し、定盤上の固定砥粒(定盤面)の平坦度修正を進めていくと、図13および図14に示すように、上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じとなる(定盤面(研削面)のプロファイルが同じ形状の山になる)現象が生じる。上定盤と下定盤の各研削面間の距離が同じであると、定盤上の修正レートが面内で同じになってしまい、凸形状の傾向を修正できなくなる現象が生じる。
【0046】
参考例1では図8に示すように、定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aに対し前記修正部材53が前記定盤10の外周側で最大にオーバーハングするときにおいて、前記修正部材53の内周側の端53bが、定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aよりも外周側に位置している、即ち、定盤10の固定砥粒(研削面)11の外周端部11aに対し、前記修正部材53全体がはみ出している。同様に、定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bに対し、前記修正部材53が前記定盤10の内周側で最大にオーバーハングするときにおいて、前記修正部材53の内周側の端53bが、定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bよりも内周側に位置している、即ち、定盤10の固定砥粒(研削面)11の内周端部11bに対し、前記修正部材53全体がはみ出している。このため、比較例1では、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が配備された研削面の平坦度修正は、求められる数値(例えば定盤の半径約800mmで定盤面の平坦度20μm程度)よりも劣る数値(例えば定盤の半径約800mmで定盤面の平坦度35μm程度)までにしか修正できない。
なお、参考例1においては、比較例1で示す定盤上の固定砥粒が凸形状(極小さい)に修正されてしまう問題は、定盤の固定砥粒(研削面)に対して前記修正部材のオーバーハング量を大きく取り過ぎた場合、顕在化しないことがわかる。
【0047】
(マスクブランク用基板の研削)
合成石英ガラス基板(約6インチ×約6インチ)の端面を面取加工、および両面ラッピング装置によって少なくとも第1研削加工を施したガラス基板を、上述の実施例1および比較例1で定盤の研削面の平坦度修正を行った両面研削装置にセットし、以下の研削条件で研削工程を行った。尚、加工荷重、研削時間は適宜調整して行った。
研削液:研削用薬剤+水
研削工程後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
実施例1のダイヤモンドシートが貼りつけられた定盤を用いて研削されるガラス基板等は、表裏の両面で、絶対値で1.0μm以下の平坦度のものに仕上げることが可能となる。このため、本発明は、従来の鋳鉄定盤による研削工程の代替のみならず、後述する粗研磨工程(第1ポリシング)の省略や簡略化なども可能であり、非常に有用である(研磨工程の一部を包含することが可能)。このことから、上述した本発明において(本明細書において)「研削」を「研磨」に置き換えた構成は、本発明に含まれる。例えば、請求項、発明の詳細な説明、発明の実施の形態、実施例等において「研削」を「研磨」に置き換えた構成は、本発明に含まれる。
比較例1の定盤を用いて研削されるガラス基板等は、表裏の両面で、絶対値で1.3μm以下の平坦度のものを得ることは困難であった。
【0048】
(実施例2)
数十バッチのガラス基板の主表面を研削する研削工程の後に、研削工程にて低下した定盤10、20の研削面の平坦度を修正するため、修正を実施例1と同様にして行った。
上記実施例1の初期修正の結果と同様の傾向が認められた。
【0049】
(実施例3)
(マスクブランク用基板の製造)
(1)精密研磨工程
実施例1および比較例1の各定盤を用いて研削したガラス基板を準備し、両面研磨装置にセットし、以下の研磨条件で精密研磨工程を行った。加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。よって、従来、精密研磨工程前に行われた粗研磨工程(平均粒径2〜3μmの酸化セリウム研磨液で行われる研磨工程)は省略したことになる。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径1μm)+水
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
精密研磨工程終了後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0050】
(2)超精密研磨工程
上述の両面研磨装置にセットし、以下の研磨条件で超精密研磨工程を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨液:コロイダルシリカ(平均粒径100nm)+水
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
超精密研磨工程終了後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、洗浄を行った。
【0051】
(3)平坦度測定工程
超精密研磨工程が行われた後の実施例1、および比較例1の基板(各12枚)について、主表面の142mm角の領域における平坦度(TIR)を平坦度測定器(Corning Tropel社製 UltraFlat200M)で測定した。その結果、実施例1の基板については、主表面の形状は、いずれも平坦度が0μm以上かつ+0.2μm以内の範囲の凸形状となっていた。これに対し、比較例1の基板については、主表面の形状は、平坦度(TIR)が+0.2μmよりも大きい凸形状のものが大多数を占め(平均9枚)、歩留りが悪いという結果となった。
【0052】
本発明の基板の製造方法においては、例えば、第1研削工程(Lap1)、第2研削工程(Lap2)、粗研磨工程(第1ポリシング)、エッジ研磨工程、精密研磨工程(第2ポリシング)、超精密研磨工程1(第3ポリシング)、超精密研磨工程2(第4ポリシング)の工程において、例えば、第1研削工程(Lap1)および粗研磨工程(第1ポリシング)に替えて、本発明の修正キャリアを用いて定盤面(研削面)を初期修正した上下定盤を有する両面研削装置を使用して基板の加工を第2研削工程後に実施する工程を行うことが可能となる。この場合、最終的な基板の平坦度(TIR)等の品質は維持することが可能である。また、この場合、第1研削工程(Lap1)等における取り代を30%程度削減することが可能となる。
【0053】
(マスクブランクおよびフォトマスクを作製しての評価)
上記の実施例1で得た各ガラス基板の一方の主表面上に、モリブデン、ケイ素および窒素を含有する遮光層(MoSiN膜)と、モリブデン、ケイ素および窒素を含有する反射防止層(MoSiN膜)が2層積層した構造の遮光膜(合計膜厚60nm)をそれぞれスパッタリング法によって形成し、バイナリ型のマスクブランクを製造した。
次に、製造した各マスクブランクの遮光膜上にスピンコート法でレジスト膜を塗布形成した。続いて、レジスト膜に所望の微細パターンを露光・現像することで形成した。さらに、レジスト膜をマスクとして、遮光膜に対してドライエッチングを行うことで、遮光膜に転写パターンを形成し、バイナリ型の転写用マスクを作製した。
【0054】
実施例1の基板から作製された各転写用マスクを用い、露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(ウェハ上のレジスト膜等)にArFエキシマレーザー光を照射する露光転写を行った。その結果、転写対象物に所望のパターンが正常に転写されていることが確認された。
【0055】
(反射型マスクブランクおよび反射型マスクを作製しての評価)
上記の実施例1で得た各ガラス基板の一方の主表面上に、モリブデン(Mo層)とケイ素(Si層)を交互に積層した多層反射膜を形成した。具体的には、ガラス基板側からSi層を4.2nm、Mo層を2.8nmそれぞれ成膜し、これを40周期繰り返し、最後にSi層を4.0nm成膜して多層反射膜を形成した。次に、多層反射膜上に、ルテニウムを含有する材料からなる保護膜を2.5nm形成した。最後に、保護膜上に、タンタルを主成分とする吸収体膜を形成し、反射型マスクブランクを製造した。
【0056】
次に、製造した各反射マスクブランクの遮光膜上にスピンコート法でレジスト膜を塗布形成した。続いて、レジスト膜に所望の微細パターンを露光・現像することで形成した。さらに、レジスト膜をマスクとして、吸収体膜に対してドライエッチングを行うことで、吸収体膜に転写パターンを形成し、反射型マスクを作製した。
【0057】
実施例1の基板から作製された各反射型マスクを用い、露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(ウェハ上のレジスト膜等)にEUV(Extreme Ultra Violet)光を照射する露光転写を行った。その結果、転写対象物に所望のパターンが正常に転写されていることが確認された。
【符号の説明】
【0058】
10 下定盤
20 上定盤
30 サンギヤ(太陽歯車)
40 インターナルギヤ(内歯歯車)
50 キャリア
51 修正キャリア
52 外周部
53 修正部材
54 直径部
55 修正部材
100 被研削・研磨基板(ガラス基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、
修正部材を備える修正キャリアを前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリアの修正部材と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて前記定盤の面修正を行う修正工程を有し、
前記修正キャリアは、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されていることを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記定盤は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記修正工程は、遊離砥粒を含む研削液を供給しながら、修正部材と、前記定盤の研削面とを、互いに押圧させて摺動させて行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記修正工程は、固定砥粒を定盤の研削面に配備する固定砥粒配備工程に続いて行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記修正キャリアは、本体部の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上で前記修正キャリアを自転しながら公転することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の基板の製造方法で製造された基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項10】
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置に対し、前記定盤の面修正を行うときに用いられる修正キャリアであって、
外周に前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合う外ギヤが設けられ、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、
前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている
ことを特徴とする修正キャリア。
【請求項11】
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする請求項10に記載の修正キャリア。
【請求項12】
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の修正キャリア。
【請求項1】
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置を用いてガラス基板の2つの主表面を両面研削する研削工程を有する基板の製造方法であって、
修正部材を備える修正キャリアを前記定盤上で自転させながら公転させ、修正キャリアの修正部材と定盤の研削面とを互いに押圧させて摺動させて前記定盤の面修正を行う修正工程を有し、
前記修正キャリアは、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されていることを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記定盤は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒が研削面に配備されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記修正工程は、遊離砥粒を含む研削液を供給しながら、修正部材と、前記定盤の研削面とを、互いに押圧させて摺動させて行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記修正工程は、固定砥粒を定盤の研削面に配備する固定砥粒配備工程に続いて行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記修正キャリアは、本体部の外周に外ギヤが設けられており、前記外ギヤが、前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合うことで、前記定盤上で前記修正キャリアを自転しながら公転することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の基板の製造方法で製造された基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクにおける前記薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項10】
固定砥粒が研削面に配備された上定盤と下定盤を備える研削装置に対し、前記定盤の面修正を行うときに用いられる修正キャリアであって、
外周に前記研削装置のサンギヤおよびインターナルギヤの間で両ギヤとそれぞれ噛み合う外ギヤが設けられ、上定盤および下定盤にそれぞれ対向する2つの対向面を有する本体部と、
前記2つの対向面にそれぞれ配置された修正部材とからなり、
前記修正部材は、対向面の外周側に沿って配置され、かつ修正キャリアの自転軸と外周側の特定点とを結ぶ直線上の対向面にも配置されている
ことを特徴とする修正キャリア。
【請求項11】
前記修正部材は、前記特定点と前記自転軸とを結ぶ直線を、前記特定点とは前記自転軸を挟んだ反対側の外周側の点まで延伸した直線上にも配置されていることを特徴とする請求項10に記載の修正キャリア。
【請求項12】
前記修正部材は、ダイヤモンド粒子を含む固定砥粒を配備して構成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の修正キャリア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−71212(P2013−71212A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212687(P2011−212687)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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