説明

基板乾燥装置、基板乾燥方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】エアナイフの下流側に設備を追加することなく、基板を乾燥させる能力を向上させる。
【解決手段】表面又は裏面に洗浄液2が供給された基板1を移動しながら、基板1の上方又は下方に基板1の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けたエアナイフ30から、基板1の表面又は裏面へエアを吹き付ける。基板1の上方又は下方のエアナイフ30より上流側に設けた第1の吸引ノズル40により、エアナイフ30からのエアにより押し流された洗浄液1を基板1の表面又は裏面から吸引する。基板1の表面又は裏面のエアナイフ30からのエアが当たる部分では、洗浄液2の液膜の厚さが薄く制御され、エアナイフ30からのエアによって洗浄液2の液膜が容易に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、基板の乾燥を行う基板乾燥装置、基板乾燥方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に係り、特に、エアナイフを用いた基板乾燥装置、基板乾燥方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造工程では、基板上に回路パターンやカラーフィルタ等を形成するため、基板の露光、現像、エッチング、剥離等の処理が行われる。現像、エッチング、剥離等の薬液処理の前又は後には、純水等の洗浄液を用いた基板の洗浄、及び洗浄後の基板の乾燥が必要である。基板の薬液処理、洗浄、及び乾燥を含む一連の処理は、ローラコンベア等の移動手段を用いて基板を移動しながら行われることが多く、基板の乾燥は、エアナイフを用いて基板へエアを吹き付けることにより、洗浄液を基板の表面から押し流して除去するのが一般的である。
【0003】
エアナイフを用いた基板の乾燥は、基板を乾燥させる能力が高い反面、エアナイフからのエアによって基板の表面から吹き飛ばされた洗浄液のミストが基板の表面に再付着し、乾燥むらが発生することがある。これに対して、特許文献1には、エアナイフを用いて基板の表面全体に連続した液膜を形成し、形成した液膜を基板の端から順番に連続して除去することにより、基板をむらなく均一に乾燥させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−117993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板を移動しながら基板に対して一連の処理を行う場合、タクトタイムを短縮するためには、基板の移動を高速で行う必要がある。特に、近年の表示用パネルの大画面化に伴い基板が大型化する程、タクトタイムを従来以下に抑えるためには、基板を従来よりも高速で移動しながら、基板に対して一連の処理を行わなければならない。
【0006】
従来のエアナイフを用いた基板の乾燥では、基板の移動を高速で行うと、洗浄液の一部が基板の表面から除去しきれずに点在して残り、洗浄液の残存した部分が乾燥後にしみとなって、乾燥むらが発生することがあった。特に、基板の表面にパターン等の凹凸が形成されている場合、基板の表面の凹凸によって洗浄液の移動が阻害されるので、洗浄液の残存による乾燥むらが発生する可能性が高い。この様な乾燥むらを抑制するためには、基板の移動を高速で行う程、大量のエアを高速で吹き付ける必要があった。
【0007】
一方、特許文献1に記載の技術は、エアナイフを用いて基板の表面に液膜を形成した後、形成した液膜を除去するために、ハロゲンランプヒータ等の液膜除去手段をエアナイフの下流側に設ける必要があり、工程が複雑になって装置の設置面積が増加するという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、エアナイフの下流側に設備を追加することなく、基板を乾燥させる能力を向上させることである。また、本発明の課題は、高品質な表示用パネル基板を効率良く製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板乾燥装置は、表面又は裏面に洗浄液が供給された基板を移動する基板移動手段と、基板移動手段により移動される基板の上方又は下方に、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けられ、基板の表面又は裏面へエアを吹き付けるエアナイフと、基板移動手段により移動される基板の上方又は下方のエアナイフより上流側に設けられ、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引する第1の吸引ノズルとを備えたものである。
【0010】
また、本発明の基板乾燥方法は、表面又は裏面に洗浄液が供給された基板を移動しながら、基板の上方又は下方に基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けたエアナイフから、基板の表面又は裏面へエアを吹き付け、基板の上方又は下方のエアナイフより上流側に設けた第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引するものである。
【0011】
基板の上方又は下方のエアナイフより上流側に設けた第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引するので、基板の表面又は裏面のエアナイフからのエアが当たる部分では、洗浄液の液膜の厚さが薄く制御され、エアナイフからのエアによって洗浄液の液膜が容易に除去される。従って、基板を乾燥させる能力が向上し、また、第1の吸引ノズルを、基板の上方又は下方のエアナイフより上流側に設けるので、エアナイフの下流側には設備が追加されず、装置の設置面積が増加しない。
【0012】
さらに、本発明の基板乾燥装置は、基板移動手段が、水平に設置された複数のローラを有し、第1の吸引ノズルが、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けられ、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するものである。
【0013】
また、本発明の基板乾燥方法は、基板を水平に移動し、第1の吸引ノズルを、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設け、第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するものである。
【0014】
基板を水平に移動しながら基板の乾燥を行う場合、第1の吸引ノズルを、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設け、第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するので、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板の表面又は裏面に再付着して乾燥むらが発生するのが抑制される。
【0015】
あるいは、本発明の基板乾燥装置は、基板移動手段が、水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾けて設置された複数のローラを有し、第1の吸引ノズルが、複数のローラにより移動される傾斜した基板の下側の上方又は下方に配置され、複数のローラにより移動される傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置され、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引する第2の吸引ノズルを備えたものである。
【0016】
また、本発明の基板乾燥方法は、基板を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動し、第1の吸引ノズルを、傾斜した基板の下側の上方又は下方に配置し、第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、第2の吸引ノズルを、傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置し、第2の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するものである。
【0017】
基板を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動しながら基板の乾燥を行う場合、第2の吸引ノズルを、傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置し、第2の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するので、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板の表面に再付着して乾燥むらが発生するのが抑制される。
【0018】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかの基板乾燥装置又は基板乾燥方法を用いて基板の乾燥を行うものである。基板を乾燥させる能力が向上し、また乾燥むらが抑制されるので、高品質な表示用パネル基板が効率良く製造される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の基板乾燥装置及び基板乾燥方法によれば、基板の上方又は下方のエアナイフより上流側に設けた第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引することにより、エアナイフの下流側に設備を追加することなく、基板を乾燥させる能力を向上させることができる。
【0020】
さらに、基板を水平に移動し、第1の吸引ノズルを、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設け、第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することにより、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板の表面又は裏面に再付着して乾燥むらが発生するのを抑制することができる。
【0021】
あるいは、基板を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動し、第1の吸引ノズルを、傾斜した基板の下側の上方又は下方に配置し、第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、第2の吸引ノズルを、傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置し、第2の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することにより、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板の表面又は裏面に再付着して乾燥むらが発生するのを抑制することができる。
【0022】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、基板を乾燥させる能力を向上させることができ、また乾燥むらを抑制することができるので、高品質な表示用パネル基板を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は本発明の一実施の形態による基板乾燥装置の上面図、図1(b)は同側面図である。
【図2】図2(a)は吸引ノズルの側面図、図2(b)は図2(a)のA−A部の断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による基板乾燥装置の吸引ノズルの動作を説明する図である。
【図4】図4(a)は本発明の他の実施の形態による基板乾燥装置の上面図、図4(b)は同正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態による基板乾燥装置の吸引ノズルの動作を説明する図である。
【図6】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図7】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(a)は本発明の一実施の形態による基板乾燥装置の上面図、図1(b)は同側面図である。本実施の形態は、基板を水平に移動しながら基板の乾燥を行う基板乾燥装置の例を示している。基板乾燥装置は、ローラ10、エアナイフ30、及び吸引ノズル40を含んで構成されている。なお、後述する様に、エアナイフ30と吸引ノズル40との間には、空気が吸引ノズル40側からエアナイフ30側へ回り込むのを防止するための壁が設けられているが、図1(a),(b)ではこの壁が省略されている。
【0025】
図1(a),(b)において、基板1は、複数のローラ10上に搭載され、ローラ10の回転により、矢印で示す基板移動方向へ移動される。各ローラ10は、水平に設置されており、図示しない駆動機構により回転されて、基板1を水平に移動する。
【0026】
ローラ10により移動される基板1の上方及び下方の基板乾燥装置より上流側(図1(a),(b)の図面左側)には、ノズルヘッダー20が、基板1の基板移動方向と直交する方向の幅Lに渡って、基板1と平行に設置されている。図1(b)において、ノズルヘッダー20には、基板移動方向と直交する方向(図1(b)の図面奥行き方向)に、複数のノズル20aが設けられている。図示しない洗浄液供給源からノズルヘッダー20へ、洗浄液が供給される。ノズルヘッダー20は、ノズル20aから、洗浄液をローラ10により移動される基板1の表面又は裏面へ供給する。表面及び裏面に洗浄液が供給された基板1は、ローラ10により、基板乾燥装置へ搬入される。
【0027】
なお、本実施の形態では、ノズルヘッダー20が1つだけ設けられているが、ノズルヘッダー20を基板移動方向に2つ以上設けてもよい。
【0028】
図1(a)において、ローラ10により移動される基板1の上方及び下方には、エアナイフ30が、基板1の基板移動方向と直交する方向の幅Lに渡って、基板1と平行に設置されている。エアナイフ30は、基板1の基板移動方向と直交する方向に対して、所定の角度θ1だけ傾けて設けられている。エアナイフ30は、例えば、長尺のケーシングの内部に加圧室を形成し、加圧室に通じるエア通路を長手方向にスリット状に設けて構成されている。図示しないエア供給源からエアナイフ30へ、エアが供給される。エアナイフ30は、エア通路の先端から、エアを基板1の表面又は裏面へ基板移動方向と反対側の向きに所定の入射角度で長手方向に渡って均一に吹き付ける。
【0029】
さらに、ローラ10により移動される基板1の上方及び下方のエアナイフ30より上流側(図面左側)には、吸引ノズル40が、基板1の基板移動方向と直交する方向の幅Lに渡って、基板1と平行に設置されている。吸引ノズル40は、エアナイフ30と同様、基板1の基板移動方向と直交する方向に対して、所定の角度θ1だけ傾けて設けられている。
【0030】
図2(a)は吸引ノズルの側面図、図2(b)は図2(a)のA−A部の断面図である。図2(a)に示す様に、吸引ノズル40は、長尺のケーシング40aと、ケーシング40aの一端に設けられた継手40bとを含んで構成されている。図2(b)に示す様に、ケーシング40aは、断面の外形が菱形で、内部に空間が形成されている。ケーシング40aの下端には、内部の空間に通じる幅Wの吸引口40cが、長手方向(図2(b)の図面手前方向及び図面奥行き方向)にスリット状に設けられている。継手40bの内部には、ケーシング40aの内部の空間に通じる吸引路40dが設けられており、吸引路40dは、図示しないポンプへ接続されている。図示しないポンプを作動すると、吸引口40cから吸引された液体又は気体が、ケーシング40aの内部の空間から吸引路40dを通ってポンプへ吸引される。
【0031】
図3は、本発明の一実施の形態による基板乾燥装置の吸引ノズルの動作を説明する図である。図3に示す様に、エアナイフ30と吸引ノズル40との間には、空気が吸引ノズル40側からエアナイフ30側へ回り込むのを防止するための壁50が設けられている。基板1の表面及び裏面の洗浄液2は、エアナイフ30から吹き付けたエアにより、基板移動方向と反対側へ押し流される。吸引ノズル40は、エアナイフ30からのエアにより押し流された洗浄液2を基板1の表面又は裏面から吸引する。
【0032】
実験の結果、吸引圧力を1.8kPaとしたとき、洗浄液2を吸引可能な吸引ノズル40の設置高さ(洗浄液2の液面から吸引口40cまでの高さ)の最大は、3.5±0.5mmであった。また、吸引圧力を5.0kPaとしたとき、洗浄液2を吸引可能な吸引ノズル40の設置高さの最大は、4.3±0.5mmであった。また、吸引圧力を8.8kPaとしたとき、洗浄液2を吸引可能な吸引ノズル40の設置高さの最大は、5.1±0.5mmであった。
【0033】
図3において、吸引ノズル40が洗浄液2を基板1の表面又は裏面から吸引することにより、基板1の表面又は裏面のエアナイフ30からのエアが当たる部分では、洗浄液2の液膜の厚さが薄く制御され、エアナイフ30からのエアによって洗浄液2の液膜が容易に除去される。従って、基板1を乾燥させる能力が向上し、また、吸引ノズル40を、基板1の上方又は下方のエアナイフ30より上流側に設けるので、エアナイフ30の下流側には設備が追加されず、装置の設置面積が増加しない。
【0034】
基板1の表面側及び裏面側では、エアナイフ30からのエアにより洗浄液2が飛び散り、洗浄液のミストが発生する。エアナイフ30と吸引ノズル40との間に設けられた壁50は、洗浄液のミストを含む空気が吸引ノズル40側からエアナイフ30側へ回り込むのを防止する。吸引ノズル40は、エアナイフ30からのエアにより押し流された洗浄液2を基板1の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフ30からのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引する。図3では、この洗浄液のミストの流れが矢印で示されている。
【0035】
基板1を水平に移動しながら基板1の乾燥を行う場合、吸引ノズル40を、基板1の基板移動方向と直交する方向の幅Lに渡って設け、吸引ノズル40により、エアナイフ30からのエアにより押し流された洗浄液2を基板1の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフ30からのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するので、エアナイフ30からのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板1の表面又は裏面に再付着して乾燥むらが発生するのが抑制される。
【0036】
図4(a)は本発明の他の実施の形態による基板乾燥装置の上面図、図4(b)は同正面図である。本実施の形態は、基板を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動しながら基板の乾燥を行う基板乾燥装置の例を示している。基板乾燥装置は、ローラ11、エアナイフ31、及び吸引ノズル41,42を含んで構成されている。なお、図4(b)では、基板1の下方に設けられた洗浄液ノズル21、エアナイフ31、及び吸引ノズル41,42が省略されている。
【0037】
図4(a)において、基板1は、複数のローラ11上に搭載され、ローラ11の回転により、矢印で示す基板移動方向へ移動される。図4(b)に示す様に、各ローラ11は、水平に対して基板移動方向と直交する方向に所定の角度αだけ傾けて設置されており、図示しない駆動機構により回転されて、基板1を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動する。傾けて設置された一番下側のローラ11には、基板1の側面を案内するためのフランジ12が設けられている。
【0038】
図4(a)において、ローラ11により移動される基板1の上方及び下方の基板乾燥装置より上流側(図4(a)の図面左側)には、洗浄液ノズル21が設置されている。洗浄液ノズル21は、例えば、長尺のケーシングに、ノズル口を長手方向にスリット状に又は所定の間隔で設けて構成され、傾斜した基板1の上側の上方に、基板移動方向に沿って設けられている。図示しない洗浄液供給源から洗浄液ノズル21へ、洗浄液が供給される。洗浄液ノズル21は、ノズル口から、洗浄液を基板1の表面又は裏面の上側へ供給する。基板1の表面及び裏面の上側へ供給された洗浄液は、基板1の傾斜に沿って基板1の表面及び裏面の下側へ流れ落ちる。表面及び裏面に洗浄液が供給された基板1は、ローラ11により、基板乾燥装置へ搬入される。
【0039】
ローラ11により移動される基板1の上方及び下方には、エアナイフ31が、基板1の基板移動方向と直交する方向の幅Lに渡って、基板1と平行に設置されている。エアナイフ31は、基板1の基板移動方向と直交する方向に対して、所定の角度θ2だけ傾けて設けられている。エアナイフ31は、例えば、長尺のケーシングの内部に加圧室を形成し、加圧室に通じるエア通路を長手方向にスリット状に設けて構成されている。図示しないエア供給源からエアナイフ31へ、エアが供給される。エアナイフ31は、エア通路の先端から、エアを基板1の表面又は裏面へ基板移動方向と反対側の向きに所定の入射角度で長手方向に渡って均一に吹き付ける。
【0040】
さらに、ローラ11により移動される基板1の上方及び下方のエアナイフ31より上流側(図4(a)の図面左側)には、吸引ノズル41,42が、基板1と平行に設置されている。吸引ノズル41は、傾斜した基板1の下側の上方又は下方に、基板移動方向に沿って設けられている。吸引ノズル42は、傾斜した基板1の上側の上方又は下方に、基板移動方向に沿って設けられている。吸引ノズル41,42の構造は、図2に示した吸引ノズル40の構造と同様である。
【0041】
図5は、本発明の他の実施の形態による基板乾燥装置の吸引ノズルの動作を説明する図である。洗浄液ノズル21から基板1の表面及び裏面の上側へ供給された洗浄液2は、基板1の傾斜に沿って基板1の下側へ流れ落ちながら、エアナイフ31から吹き付けたエアにより、基板移動方向と反対側へ押し流される。図5(a)において、傾斜した基板1の下側の上方に設置された吸引ノズル41は、エアナイフ31からのエアにより押し流された洗浄液2を基板1の表面から吸引する。吸引ノズル41が洗浄液2を基板1の表面から吸引することにより、基板1の表面のエアナイフ31からのエアが当たる部分では、洗浄液2の液膜の厚さが薄く制御され、エアナイフ31からのエアによって洗浄液2の液膜が容易に除去される。従って、基板1を乾燥させる能力が向上し、また、吸引ノズル41を、基板1の上方のエアナイフ31より上流側に設けるので、エアナイフ31の下流側には設備が追加されず、装置の設置面積が増加しない。
【0042】
基板1の表面側及び裏面側では、エアナイフ31からのエアにより洗浄液2が飛び散り、洗浄液のミストが発生する。図5(b)において、傾斜した基板1の上側の上方に設置された吸引ノズル42は、エアナイフ31からのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引する。図5(b)では、この洗浄液のミストの流れが矢印で示されている。
【0043】
基板1を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動しながら基板1の乾燥を行う場合、吸引ノズル41を、傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置し、吸引ノズル41により、エアナイフ31からのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引するので、エアナイフ31からのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板1の表面に再付着して乾燥むらが発生するのが抑制される。
【0044】
以上説明した実施の形態によれば、基板1の上方又は下方のエアナイフ30,31より上流側に設けた吸引ノズル40,41により、エアナイフ30,31からのエアにより押し流された洗浄液2を基板1の表面又は裏面から吸引することにより、エアナイフ30,31の下流側に設備を追加することなく、基板1を乾燥させる能力を向上させることができる。
【0045】
さらに、基板1を水平に移動し、吸引ノズル40を、基板1の基板移動方向と直交する方向の幅Lに渡って設け、吸引ノズル40により、エアナイフ30からのエアにより押し流された洗浄液2を基板1の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフ30からのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することにより、エアナイフ30からのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板1の表面又は裏面に再付着して乾燥むらが発生するのを抑制することができる。
【0046】
あるいは、基板1を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動し、吸引ノズル41を、傾斜した基板1の下側の上方又は下方に配置し、吸引ノズル41により、エアナイフ31からのエアにより押し流された洗浄液を基板1の表面又は裏面から吸引すると共に、吸引ノズル42を、傾斜した基板1の上側の上方又は下方に配置し、吸引ノズル42により、エアナイフ31からのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することにより、エアナイフ31からのエアにより飛び散った洗浄液のミストが基板1の表面又は裏面に再付着して乾燥むらが発生するのを抑制することができる。
【0047】
図6は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等により感光樹脂材料(フォトレジスト)を塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、プロキシミティ露光装置や投影露光装置等を用いて、マスクのパターンをフォトレジスト膜に転写する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄工程及び乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0048】
また、図7は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄工程及び乾燥工程が実施される。
【0049】
本発明の基板乾燥装置又は基板乾燥方法を用いて基板の乾燥を行うことにより、基板を乾燥させる能力を向上させることができ、また乾燥むらを抑制することができるので、高品質な表示用パネル基板を効率良く製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 基板
2 洗浄液
10,11 ローラ
12 フランジ
20 ノズルヘッダー
21 洗浄液ノズル
30,31 エアナイフ
40,41,42 吸引ノズル
40a ケーシング
40b 継手
40c 吸引口
40d 吸引路
50 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面又は裏面に洗浄液が供給された基板を移動する基板移動手段と、
前記基板移動手段により移動される基板の上方又は下方に、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けられ、基板の表面又は裏面へエアを吹き付けるエアナイフと、
前記基板移動手段により移動される基板の上方又は下方の前記エアナイフより上流側に設けられ、前記エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引する第1の吸引ノズルとを備えたことを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項2】
前記基板移動手段は、水平に設置された複数のローラを有し、
前記第1の吸引ノズルは、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けられ、前記エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、前記エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することを特徴とする請求項1に記載の基板乾燥装置。
【請求項3】
前記基板移動手段は、水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾けて設置された複数のローラを有し、
前記第1の吸引ノズルは、前記複数のローラにより移動される傾斜した基板の下側の上方又は下方に配置され、
前記複数のローラにより移動される傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置され、前記エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引する第2の吸引ノズルを備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板乾燥装置。
【請求項4】
表面又は裏面に洗浄液が供給された基板を移動しながら、
基板の上方又は下方に基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設けたエアナイフから、基板の表面又は裏面へエアを吹き付け、
基板の上方又は下方のエアナイフより上流側に設けた第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引することを特徴とする基板乾燥方法。
【請求項5】
基板を水平に移動し、
第1の吸引ノズルを、基板の基板移動方向と直交する方向の幅に渡って設け、
第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することを特徴とする請求項4に記載の基板乾燥方法。
【請求項6】
基板を水平に対して基板移動方向と直交する方向に傾斜した状態で移動し、
第1の吸引ノズルを、傾斜した基板の下側の上方又は下方に配置し、第1の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより押し流された洗浄液を基板の表面又は裏面から吸引すると共に、
第2の吸引ノズルを、傾斜した基板の上側の上方又は下方に配置し、第2の吸引ノズルにより、エアナイフからのエアにより飛び散った洗浄液のミストを吸引することを特徴とする請求項4に記載の基板乾燥方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の基板乾燥装置を用いて基板の乾燥を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の基板乾燥方法を用いて基板の乾燥を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181761(P2010−181761A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26953(P2009−26953)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】