説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】選択エッチングの選択比を向上させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供すること。
【解決手段】シリル化剤が基板Wに供給されることにより、基板Wがシリル化される。その後、エッチング剤が基板Wに供給されることにより、シリル化された基板Wがエッチングされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、シリコン窒化膜(SiN膜)とシリコン酸化膜(SiO膜)とが形成された基板の表面にエッチング液としての高温(たとえば、120℃〜160℃)のリン酸水溶液を供給して、シリコン窒化膜を選択的に除去する選択エッチングが必要に応じて行われる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−258405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
選択エッチングの選択比(窒化膜の除去量/酸化膜の除去量)は高いことが好ましい。
そこで、この発明の目的は、選択エッチングの選択比を向上させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、シリル化剤を基板(W)に供給するシリル化工程と、前記シリル化工程が行われた後に、エッチング剤を前記基板に供給するエッチング工程とを含む、基板処理方法である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【0006】
この発明によれば、エッチング剤の供給によって基板がエッチングされる前に、シリル化剤の供給によって基板がシリル化される。したがって、シリル化された基板がエッチングされる。後述するように、酸化膜と窒化膜とが形成された基板をシリル化することにより、酸化膜がエッチングされることを抑制することができる。したがって、シリル化された基板をエッチングすることにより、選択比(窒化膜の除去量/酸化膜の除去量)を向上させることができる。
【0007】
前記基板処理方法は、前記エッチング工程が行われた後に、リンス液を前記基板に供給するリンス工程と、前記リンス工程が行われた後に、前記基板を乾燥させる乾燥工程とをさらに含んでいてもよい。
また、前記基板処理方法は、前記シリル化工程と並行して行われる工程であって、前記基板を加熱する加熱工程をさらに含んでいてもよい。この場合、基板の温度が上昇するから、基板に供給されたシリル化剤の温度の低下を抑制できる。したがって、シリル化剤の活性が温度の変化に伴って変化する場合には、シリル化剤の活性を安定させることができる。さらに、基板の温度が、当該基板に供給されたシリル化剤の温度よりも高い場合には、基板に供給されたシリル化剤の温度を上昇させることができる。したがって、シリル化剤の活性が温度の上昇に伴って高まる場合には、シリル化剤の活性を高めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記シリル化工程と前記エッチング工程とを含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を含む、請求項1記載の基板処理方法である。
この発明によれば、シリル化された基板がエッチングされる。その後、エッチングされた基板が再びシリル化される。そして、シリル化された基板が再びエッチングされる。すなわち、エッチングが中断され、このエッチングの中断期間中に基板が再びシリル化される。エッチング剤の供給が長時間継続されると、シリル化剤によって与えられた酸化膜のエッチング抑制能力が途中で低下し、選択比が低下してしまう場合がある。したがって、再び基板をシリル化することにより、酸化膜のエッチング抑制能力を回復させることができる。そのため、エッチングを再開したときに酸化膜がエッチングされることを抑制できる。したがって、選択比の低下を抑制または防止することができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記サイクルは、前記エッチング工程が行われた後に、リンス液を前記基板に供給するリンス工程をさらに含む、請求項2記載の基板処理方法である。
この発明によれば、シリル化された基板がエッチングされる。その後、エッチングされた基板にリンス液が供給され、基板に付着している液体や異物が洗い流される。そして、再び、シリル化工程、エッチング工程、およびリンス工程が順次行われる。エッチングされた基板にはエッチングによって生じた異物が付着している場合がある。特に、基板に供給されるエッチング剤がベーパである場合には、エッチング剤が液体である場合に比べて、異物が基板に残り易い。エッチングによって生じた異物が付着している状態で基板をシリル化すると、この異物が基板から取れ難くなる場合がある。したがって、再びシリル化工程を行う前に、基板に付着している異物を除去することにより、この異物が基板から取れ難くなることを抑制または防止することができる。これにより、異物が基板に残ることを抑制または防止することができる。したがって、基板の清浄度を向上させることができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記サイクルは、前記エッチング工程が行われた後に、紫外線を前記基板に照射する紫外線照射工程をさらに含む、請求項2または3記載の基板処理方法である。
この発明によれば、シリル化工程、エッチング工程、および紫外線照射工程を含む一連のサイクルが複数回行われる。各サイクルでは、シリル化剤およびエッチング剤が供給された基板に紫外線が照射され、2回目以降のサイクルでは、紫外線が照射された基板にシリル化剤およびエッチング剤が供給される。シリル化された基板に紫外線を照射することにより、基板に付着しているシリル化剤を除去することができる。したがって、基板の清浄度を向上させることができる。また、2回目以降のサイクルでは、紫外線の照射によって有機物などの異物が除去された基板にシリル化剤およびエッチング剤が供給される。したがって、2回目以降のサイクルにおいて基板に対するシリル化剤およびエッチング剤の反応性を向上させることができる。これにより、選択比を向上させることができる。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記シリル化工程が行われる前に、紫外線を前記基板に照射するシリル化前紫外線照射工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、紫外線が基板に照射された後に、シリル化剤およびエッチング剤が基板に順次供給される。紫外線を基板に照射することにより、基板に付着している有機物などの異物を除去することができる。したがって、基板に対するシリル化剤およびエッチング剤の反応性を向上させることができる。これにより、選択比を向上させることができる。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記シリル化工程が行われた後に、紫外線を前記基板に照射するシリル化後紫外線照射工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。
この発明によれば、シリル化された基板に紫外線が照射される。シリル化された基板に紫外線を照射することにより、基板に付着しているシリル化剤を除去することができる。したがって、基板の清浄度を向上させることができる。
【0013】
また、前記エッチング工程において基板に供給されるエッチング剤は、請求項7記載の発明のように、フッ酸とエチレングリコールとを含む混合液であってもよい。
請求項8記載の発明は、前記シリル化剤は、非水溶性であり、前記エッチング剤は、水を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理方法である。非水溶性のシリル化剤は、水に全く溶けないシリル化剤であってもよいし、水に殆ど溶けないシリル化剤であってもよい。
【0014】
この発明によれば、非水溶性のシリル化剤が基板に供給された後に、水を含むエッチング剤が当該基板に供給される。シリル化剤が非水溶性であるから、基板に付着しているシリル化剤は、基板に供給されたエッチング剤に溶けない。したがって、酸化膜のエッチングが抑制される状態を維持することができる。これにより、選択比の低下を抑制または防止することができる。
【0015】
また、前記エッチング工程において基板に供給されるエッチング剤は、請求項9記載の発明のように、エッチング成分を有するベーパであってもよい。
請求項10記載の発明は、シリル化位置(P1、P2)およびエッチング位置(P2)で基板を保持する基板保持手段(14、38、414、478)と、前記基板保持手段に前記シリル化位置で保持された基板にシリル化剤を供給するシリル化剤供給手段(28、258、458)と、前記基板保持手段に前記エッチング位置で保持された基板にエッチング剤を供給するエッチング剤供給手段(39、475)と、前記シリル化剤供給手段を制御することにより、前記基板保持手段に前記シリル化位置で保持された基板にシリル化剤を供給させるシリル化工程と、前記エッチング剤供給手段を制御することにより、前記シリル化工程が行われた後に、前記基板保持手段に前記エッチング位置で保持された前記基板にエッチング剤を供給させるエッチング工程とを実行する制御手段(4)とを含む、基板処理装置(1、201、401、501、601)である。この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0016】
請求項11記載の発明は、前記シリル化位置およびエッチング位置が、同じ位置(P2)である、請求項10記載の基板処理装置(201)である。この発明によれば、基板に対するシリル化剤の供給およびエッチング剤の供給が同じ位置で行われる。したがって、基板に対するシリル化剤の供給が行われた後に、エッチング位置まで基板を移動させなくてもよい。これにより、基板の搬送時間を短縮できるから、基板の処理時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るシリル化ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係るエッチングユニットの概略構成を示す模式図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る基板処理装置によって行われる基板の処理の一例を説明するための図である。
【図5】シリル化されていない基板をエッチングしたときのエッチング時間とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。
【図6】シリル化された基板をエッチングしたときのエッチング時間とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。
【図7】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係るシリル化・エッチングユニットの概略構成を示す模式図である。
【図9】この発明の第2実施形態に係る遮断板およびこれに関連する構成の底面図である。
【図10】この発明の第2実施形態に係る基板処理装置によって行われる基板の処理の一例を説明するための図である。
【図11】この発明の第3実施形態に係る遮断板の断面図である。
【図12】この発明の第4実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図13】この発明の第4実施形態に係るシリル化ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図14】この発明の第4実施形態に係るシリル化ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図15】この発明の第4実施形態に係るエッチングユニットの概略構成を示す模式図である。
【図16】この発明の第4実施形態に係る基板処理装置によって行われる基板の処理の一例を説明するための図である。
【図17】シリル化されていない基板をエッチングしたときの基板の温度とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。
【図18】シリル化された基板をエッチングしたときの基板の温度とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。
【図19】この発明の第5実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図20】この発明の第5実施形態に係る冷却ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図21】この発明の第5実施形態に係る基板処理装置によって行われる基板の処理の一例を説明するための図である。
【図22】この発明の第6実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図23】この発明の第6実施形態に係る紫外線照射ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図24】この発明の第6実施形態に係る紫外線照射ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図25】この発明の第6実施形態に係る基板処理装置によって行われる基板の処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
基板処理装置1は、薬液やリンス液などの処理液によって半導体ウエハ等の円形の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、インデクサブロック2と、インデクサブロック2に結合された処理ブロック3と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置4とを備えている。
【0019】
インデクサブロック2は、キャリア保持部5と、インデクサロボットIRと、IR移動機構6とを備えている。キャリア保持部5は、複数枚の基板Wを収容できるキャリアCを保持する。複数のキャリアCは、水平なキャリア配列方向Uに配列された状態で、キャリア保持部5に保持される。IR移動機構6は、キャリア配列方向UにインデクサロボットIRを移動させる。インデクサロボットIRは、キャリア保持部5に保持されたキャリアCに基板Wを搬入する搬入動作、および基板WをキャリアCから搬出する搬出動作を行う。
【0020】
一方、処理ブロック3は、基板Wを処理する複数(たとえば、4つ以上)の処理ユニット7と、センターロボットCRとを備えている。複数の処理ユニット7は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。複数の処理ユニット7は、基板Wをシリル化するシリル化ユニット7aと、基板Wをエッチングするエッチングユニット7bとを含む。センターロボットCRは、処理ユニット7に基板Wを搬入する搬入動作、および基板Wを処理ユニット7から搬出する搬出動作を行う。さらに、センターロボットCRは、複数の処理ユニット7間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサロボットIRから基板Wを受け取ると共に、インデクサロボットIRに基板Wを渡す。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、制御装置4によって制御される。
【0021】
図2は、この発明の第1実施形態に係るシリル化ユニット7aの概略構成を示す模式図である。以下では、シリル化ユニット7aの概略構成、およびシリル化ユニット7aにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。最初に、シリル化ユニット7aの概略構成について説明する。
シリル化ユニット7aは、チャンバ8を備えている。チャンバ8は、たとえば、直方体状である。チャンバ8は、水平に対向する2つの側壁9および側壁10と、上下に対向する上壁11および底壁12とを含む。シリル化ユニット7aは、上壁11の外面(上面)に沿って配置された冷却装置13をさらに備えている。チャンバ8は、冷却装置13によって冷却されている。冷却装置13は、たとえば、水冷の冷却装置である。
【0022】
シリル化ユニット7aは、チャンバ8内に設けられた基板保持台14(基板保持手段)をさらに備えている。第1実施形態では、基板保持台14と、後述のスピンチャック38とによって、基板保持手段が構成されている。チャンバ8内に搬入された一枚の基板Wは、基板保持台14上に載置された状態で、保持位置P1(シリル化位置)で基板保持台14に保持される。基板保持台14は、鉛直方向に延びる回転軸15の上端に固定されている。回転軸15には、回転軸15の中心軸線まわりに回転軸15を回転させる基板回転機構16が結合されている。基板回転機構16は、たとえば、モータを含む機構である。
【0023】
基板保持台14の内部には、基板保持台14に保持された基板Wを加熱するためのヒータ17が埋設されている。さらに、基板保持台14上には、ヒータ17による加熱時に基板Wの温度を均一化する均熱リング18が設けられている。均熱リング18は、基板保持台14上における基板Wの保持位置P1を取り囲むリング状に形成されている。
基板保持台14に関連して、基板保持台14に対して基板Wを昇降させる複数本(たとえば、3本)のリフトピン19が設けられている。複数本のリフトピン19は、チャンバ8の底壁12に挿通され、チャンバ8外において、共通の支持部材20に支持されている。支持部材20には、シリンダを含むリフトピン昇降機構21が結合されている。リフトピン昇降機構21は、複数本のリフトピン19の先端が基板保持台14の上方に突出する位置と、複数本のリフトピン19の先端が基板保持台14の下方に退避する位置との間で、複数本のリフトピン19を一体的に昇降させる。
【0024】
また、チャンバ8の一方の側壁9(図2では、左側の側壁)には、チャンバ8内に対する基板Wの搬入/搬出のためのゲート22が形成されている。側壁9の外側には、ゲート22を開閉するゲートシャッタ23が設けられている。ゲートシャッタ23には、シリンダを含むゲート開閉機構24が結合されている。ゲート開閉機構24は、ゲートシャッタ23が側壁9の外面に密着してゲート22を密閉する閉鎖位置と、ゲートシャッタ23が側壁9の側方へ離間しつつ下降してゲート22を大きく開放する開放位置との間で、ゲートシャッタ23を移動させる。
【0025】
また、チャンバ8の他方の側壁10(図2では、右側の側壁)には、不活性ガスの一例である窒素ガスをチャンバ8内に導入する側方導入管25が設けられている。側方導入管25には、側方ガスバルブ26を介して窒素ガスが供給される。側方導入管25は、側壁10を貫通している。側方導入管25のチャンバ8内に臨む端面は、側壁10の内面とほぼ面一となっている。側壁10の内面には、その内面のほぼ全域を覆うサイズの拡散板27が設けられている。拡散板27は、チャンバ8内に臨む多数の吐出口(図示せず)を有している。側方導入管25に供給される窒素ガスは、拡散板27の多数の吐出口から分散して吐出される。したがって、側方導入管25に供給される窒素ガスは、チャンバ8内において、側壁10の内面と平行な面内でほぼ均一な流速となるシャワー状に拡散する。
【0026】
また、チャンバ8の上壁11を貫通して、シリル化剤のベーパと窒素ガスとをチャンバ8内に導入するシリル化剤導入管28(シリル化剤供給手段)が設けられている。シリル化剤導入管28には、シリル化剤バルブ29および上方ガスバルブ30をそれぞれ介してシリル化剤および窒素ガスが供給される。シリル化剤導入管28のチャンバ8内に臨む端面は、上壁11の内面(下面)とほぼ面一となっている。上壁11の内面には、基板Wよりも大きな径を有する円板状の拡散板31が設けられている。この拡散板31は、チャンバ8内に臨む多数の吐出口(図示せず)を有している。シリル化剤導入管28に供給されるシリル化剤および窒素ガスは、拡散板31の多数の吐出口から分散して吐出される。したがって、シリル化剤導入管28に供給されるシリル化剤および窒素ガスは、チャンバ8内において、上壁11の内面と平行な面内でほぼ均一な流速となるシャワー状に拡散する。
【0027】
シリル化剤としては、たとえば、TMSI(N-Trimethylsilyimidazole)、BSTFA(N,O-bis [Trimethylsilyl] trifluoroacetamide)、BSA(N,O-bis [Trimethylsilyl] acetamide)、MSTFA(N-Methyl-N-trimethylsilyl-trifluoacetamide)、TMSDMA(N-Trimethylsilyldimethylamine)、TMSDEA(N-Trimethylsilyldiethylamine)、MTMSA(N,O-bis (trimethylsilyl) trifluoroacetamide)、TMCS(with base)(Trimethylchlorosilane)、HMDS(Hexamethyldisilazane)、疎水基を有するアミン、有機シリコン化合物、TMS(tetramethylsilane)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、およびオルガノシラン化合物が挙げられる。シリル化剤導入管28には、これらのシリル化剤のうちのいずれか一つのベーパが供給される。シリル化剤導入管28に供給されるシリル化剤のベーパは、シリル化剤の微粒子のみを含むものであってもよいし、シリル化剤の微粒子とキャリアガス(たとえば、不活性ガス)とを含むものであってもよい。
【0028】
また、チャンバ8の底壁12には、基板保持台14の周囲を取り囲む平面視円環状の周囲排気口32が形成されている。周囲排気口32には、先端が排気源(図示せず)に接続された排気管33の基端が接続されている。排気管33の途中部には、周囲排気バルブ34が介装されている。周囲排気バルブ34が開かれると、チャンバ8内の雰囲気が周囲排気口32から排気され、周囲排気バルブ34が閉じられると、周囲排気口32からの排気が停止される。
【0029】
また、チャンバ8の底壁12には、周囲排気口32の外側において、側壁9に沿って延びる平面視略長方形状のゲート側排気口35が形成されている。ゲート側排気口35には、先端が排気源(図示せず)に接続された排気管36の基端が接続されている。排気管36の途中部には、ゲート側排気バルブ37が介装されている。ゲート側排気バルブ37が開かれると、チャンバ8内の雰囲気がゲート側排気口35から排気され、ゲート側排気バルブ37が閉じられると、ゲート側排気口35からの排気が停止される。
【0030】
次に、シリル化ユニット7aにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。
センターロボットCRは、シリル化ユニット7a内に基板Wを搬入する。シリル化ユニット7a内への基板Wの搬入に先立ち、ゲート開閉機構24が制御装置4によって駆動される。これにより、ゲートシャッタ23が開放位置に配置され、ゲート22が開放される。ゲート22が開放されている間、側方ガスバルブ26が制御装置4によって開かれて、側方導入管25からチャンバ8内に窒素ガスが導入される。さらに、ゲート側排気バルブ37が制御装置4によって開かれて、チャンバ8内の雰囲気がゲート側排気口35から排気される。これにより、基板保持台14のゲート22と反対側、つまり側壁10側からゲート22へ向かう窒素ガスの気流がチャンバ8内に形成され、この気流によって、チャンバ8の外部の雰囲気がチャンバ8内に流入することが防止される。ゲート22が開放されている間、シリル化剤バルブ29、上方ガスバルブ30および周囲排気バルブ34は閉じられている。
【0031】
また、シリル化ユニット7a内への基板Wの搬入に先立ち、リフトピン昇降機構21が制御装置4によって駆動される。これにより、リフトピン19は、その先端が基板保持台14の上方に突出する位置に配置される。そして、基板Wが、センターロボットCRによってチャンバ8内に搬入される。チャンバ8内に搬入された基板Wは、センターロボットCRによってリフトピン19上に載置される。その後、センターロボットCRが、チャンバ8内から退避する。センターロボットCRがチャンバ8内から退避した後は、ゲート開閉機構24が制御装置4によって駆動される。これにより、ゲートシャッタ23が閉鎖位置に配置され、ゲート22がゲートシャッタ23により密閉される。
【0032】
ゲート22が密閉された後は、制御装置4は、側方ガスバルブ26およびゲート側排気バルブ37を閉じ、上方ガスバルブ30および周囲排気バルブ34を開く。これにより、シリル化剤導入管28からチャンバ8内に窒素ガスが導入されると共に、チャンバ8内の雰囲気が周囲排気口32から急速に排気される。その結果、チャンバ8内の雰囲気は、シリル化剤導入管28から導入される窒素ガスに短時間で置換される。また、チャンバ8内の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換されるのと並行して、リフトピン昇降機構21が制御装置4によって駆動される。これにより、リフトピン19は、その先端が基板保持台14の下方に退避する位置に下降される。このリフトピン19の下降により、リフトピン19上の基板Wが基板保持台14上に移載される。これにより、基板Wが、保持位置P1で基板保持台14に保持される。
【0033】
基板Wが基板保持台14上に移載された後は、制御装置4は、上方ガスバルブ30を閉じ、シリル化剤バルブ29を開く。これにより、シリル化剤導入管28からチャンバ8内にシリル化剤のベーパが導入され、このシリル化剤のベーパが基板Wの上面に供給される。また、シリル化剤の供給と並行して、基板回転機構16が制御装置4によって駆動されて、基板Wが回転される。これにより、シリル化剤が基板Wの上面の全域にむらなく供給される。さらに、シリル化剤の供給と並行して、ヒータ17が制御装置4によって駆動されて、常温(室温と同じ。たとえば、20℃〜30℃)よりも高い温度まで基板Wが加熱される。基板保持台14に保持された基板Wは、シリル化剤の供給によってシリル化される。
【0034】
シリル化剤の供給が所定時間にわたって行われると、リフトピン昇降機構21が制御装置4によって駆動される。これにより、リフトピン19が上昇され、基板Wが基板保持台14に対して上方に離間する位置(たとえば、センターロボットCRとの間で基板Wの受け渡しが可能な位置)まで持ち上げられる。そして、制御装置4が、シリル化剤バルブ29を閉じ、上方ガスバルブ30を開く。これにより、シリル化剤導入管28からチャンバ8内に常温の窒素ガスが導入され、この窒素ガスが基板Wの上面に供給される。その結果、高温の基板Wは、常温の窒素ガスにより冷却される。基板Wが窒素ガスによって冷却されている間、周囲排気バルブ34は開かれたままである。そのため、チャンバ8内の雰囲気は、シリル化剤導入管28から導入される窒素ガスに急速に置換される。
【0035】
チャンバ8内の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換された後は、ゲート開閉機構24が制御装置4によって駆動される。これにより、ゲートシャッタ23が開放位置に配置され、ゲート22が開放される。また、ゲート22が開放されると、制御装置4は、上方ガスバルブ30および周囲排気バルブ34を閉じ、側方ガスバルブ26およびゲート側排気バルブ37を開く。これにより、側壁10側からゲート22へ向かう窒素ガスの気流がチャンバ8内に形成され、この気流によって、チャンバ8の外部の雰囲気がチャンバ8内に流入することが防止される。この状態で、リフトピン19によって支持された基板Wが、センターロボットCRによってチャンバ8から搬出される。
【0036】
図3は、この発明の第1実施形態に係るエッチングユニット7bの概略構成を示す模式図である。以下では、エッチングユニット7bの概略構成、およびエッチングユニット7bにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。最初に、エッチングユニット7bの概略構成について説明する。
エッチングユニット7bは、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック38(基板保持手段)と、スピンチャック38に保持された基板Wの上面にエッチング剤としてエッチング液を供給するエッチング剤ノズル39(エッチング剤供給手段)と、スピンチャック38に保持された基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液ノズル40と、スピンチャック38、エッチング剤ノズル39、およびリンス液ノズル40を収容するチャンバ41とを備えている。
【0037】
スピンチャック38は、基板Wを水平に保持して当該基板Wの中心を通る鉛直軸線まわりに回転可能な円盤状のスピンベース42と、このスピンベース42を鉛直軸線まわりに回転させるスピンモータ43とを含む。スピンチャック38は、基板Wを水平方向に挟んで当該基板Wを水平に保持する挟持式のチャックであってもよいし、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)を吸着することにより当該基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。第1実施形態では、スピンチャック38は、挟持式のチャックである。スピンチャック38は、保持位置P2で基板Wを水平に保持する。第1実施形態では、保持位置P2は、エッチング位置である。
【0038】
エッチング剤ノズル39は、エッチング剤バルブ44が介装されたエッチング剤供給管45に接続されている。エッチング剤ノズル39へのエッチング液の供給は、エッチング剤バルブ44の開閉により制御される。エッチング剤ノズル39に供給されたエッチング液は、スピンチャック38に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。エッチング剤ノズル39に供給されるエッチング液としては、常温から70℃のフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液、高温(たとえば、120℃〜190℃)のリン酸水溶液、および常温または高温(常温よりも高い温度)のフッ酸が挙げられる。
【0039】
リンス液ノズル40は、リンス液バルブ46が介装されたリンス液供給管47に接続されている。リンス液ノズル40へのリンス液の供給は、リンス液バルブ46の開閉により制御される。リンス液ノズル40に供給されたリンス液は、スピンチャック38に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。リンス液ノズル40に供給されるリンス液としては、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0040】
チャンバ41は、チャンバ41内に対する基板Wの搬入/搬出のための開口48が形成された隔壁49と、この開口48を覆うゲートシャッタ50とを含む。ゲートシャッタ50は、隔壁49の外に配置されている。ゲートシャッタ50には、シリンダを含むゲート開閉機構51が結合されている。ゲート開閉機構51は、ゲートシャッタ50が隔壁49の外面に密着して開口48を密閉する閉鎖位置と、ゲートシャッタ50が隔壁49の側方へ離間しつつ下降して開口48を大きく開放する開放位置との間で、ゲートシャッタ50を移動させる。
【0041】
次に、エッチングユニット7bにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。
センターロボットCRは、エッチングユニット7b内に基板Wを搬入する。エッチングユニット7b内への基板Wの搬入に先立ち、ゲート開閉機構51が制御装置4によって駆動される。これにより、ゲートシャッタ50が開放位置に配置され、チャンバ41の開口48が開放される。その後、センターロボットCRが、チャンバ41内に基板Wを搬入し、この基板Wをスピンチャック38上に載置する。制御装置4は、センターロボットCRによってスピンチャック38上に基板Wを載置させた後、チャンバ41内からセンターロボットCRを退避させる。その後、ゲート開閉機構51が制御装置4によって駆動され、ゲートシャッタ50が閉鎖位置に配置される。これにより、チャンバ41の開口48がゲートシャッタ50により密閉される。チャンバ41の開口48が密閉された後、制御装置4は、スピンモータ43を制御することにより、スピンチャック38に保持された基板Wを回転させる。
【0042】
次に、エッチング液を基板Wに供給して、基板Wをエッチングするエッチング処理が行われる。具体的には、制御装置4は、スピンチャック38によって基板Wを回転させながら、エッチング剤バルブ44を開いて、エッチング剤ノズル39からスピンチャック38に保持された基板Wの上面中央部に向けてエッチング液を吐出させる。エッチング剤ノズル39から吐出されたエッチング液は、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域にエッチング液が供給され、基板Wの上面全域がエッチングされる。そして、エッチング剤バルブ44が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置4は、エッチング剤バルブ44を閉じてエッチング剤ノズル39からのエッチング液の吐出を停止させる。
【0043】
次に、リンス液を基板Wに供給して、基板Wに付着しているエッチング液を洗い流すリンス処理が行われる。具体的には、制御装置4は、スピンチャック38によって基板Wを回転させながら、リンス液バルブ46を開いて、リンス液ノズル40からスピンチャック38に保持された基板Wの上面中央部に向けてリンス液を吐出させる。リンス液ノズル40から吐出されたリンス液は、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給され、基板Wに付着しているエッチング液が洗い流される。そして、リンス液バルブ46が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置4は、リンス液バルブ46を閉じてリンス液ノズル40からのリンス液の吐出を停止させる。
【0044】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御装置4は、スピンモータ43を制御して、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着しているリンス液に大きな遠心力が作用し、当該リンス液が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wからリンス液が除去され、基板Wが乾燥する。乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御装置4は、スピンモータ43を制御して、スピンチャック38による基板Wの回転を停止させる。その後、ゲート開閉機構51が制御装置4によって駆動され、ゲートシャッタ50が開放位置に配置される。これにより、チャンバ41の開口48が開放される。その後、スピンチャック38に保持された基板WがセンターロボットCRによってチャンバ41内から搬出される。
【0045】
図4は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例を説明するための図である。以下では、酸化膜の一例であるSiO膜と、窒化膜の一例であるSiN膜とが形成された基板Wの表面にエッチング剤を供給して、SiN膜を選択的に除去する選択エッチングの一例について説明する。基板Wの表面に形成された酸化膜は、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を用いて形成された膜(TEOS膜)であってもよい。以下では、図1および図4を参照する。
【0046】
キャリア保持部5に保持されたキャリアC内に収容された未処理の基板Wは、インデクサロボットIRによって搬出される。そして、キャリアC内から搬出された基板Wは、インデクサロボットIRからセンターロボットCRに渡される。センターロボットCRは、インデクサロボットIRから受け取った未処理の基板Wをシリル化ユニット7a内に搬入する。
【0047】
図4(a)に示すように、シリル化ユニット7aでは、前述のようにしてシリル化剤のベーパが基板Wに供給され、基板Wがシリル化される(シリル化処理。シリル化工程)。具体的には、シリル化剤の一例であるHMDSのベーパが、基板保持台14に保持位置P1で保持された基板Wの表面に供給され、基板Wの表面がシリル化される。そして、基板Wの表面がシリル化された後は、シリル化ユニット7a内に配置された基板Wが、センターロボットCRによってシリル化ユニット7a内から搬出される。シリル化ユニット7a内から搬出された基板Wは、センターロボットCRによって、エッチングユニット7b内に搬入される。
【0048】
図4(b)に示すように、エッチングユニット7bでは、前述のようにしてエッチング剤が基板Wに供給され、基板Wがエッチングされる(エッチング処理。エッチング工程)。具体的には、エッチング剤の一例であるフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液が、スピンチャック38に保持位置P2で保持された基板Wの表面に供給される。これにより、基板Wの表面に形成されたSiN膜が選択的に除去される。その後、図4(c)に示すように、リンス液の一例である純水が、スピンチャック38に保持位置P2で保持された基板Wの表面に供給され、基板Wの表面に付着しているエッチング剤が洗い流される(リンス処理。リンス工程)。そして、図4(d)に示すように、基板Wの高速回転によって基板Wに付着しているリンス液が基板Wから除去される。これにより、スピンチャック38に保持位置P2で保持された基板Wが乾燥する(乾燥処理。乾燥工程)。
【0049】
エッチングユニット7bにおいて乾燥処理が行われた後は、センターロボットCRによってエッチングユニット7b内から基板Wが搬出される。そして、エッチングユニット7b内から搬出された基板Wは、センターロボットCRからインデクサロボットIRに渡される。インデクサロボットIRは、センターロボットCRから受け取った処理済みの基板Wをキャリア保持部5に保持されたキャリアCに搬入する。これにより、基板処理装置1での一連の処理が終了する。制御装置4は、このような動作を繰り返し実行させ、複数枚の基板Wを一枚ずつ処理させる。
【0050】
図5は、シリル化されていない基板Wをエッチングしたときのエッチング時間とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。図6は、シリル化された基板Wをエッチングしたときのエッチング時間とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。図5は、比較例のグラフであり、図6は、本発明の実施例のグラフである。
図5および図6では、SiO膜とSiN膜とが形成された基板Wの表面に、フッ酸とエチレングリコールとを含む水溶液を供給して、基板Wをエッチングしたときのエッチング量および選択比が示されている。基板Wのエッチングに用いられたフッ酸とエチレングリコールとを含む水溶液は、50%のフッ酸(フッ化水素の水溶液)と100%のエチレングリコールとが、4:96(フッ酸が4で、エチレングリコールが96)の割合で混合され、60℃に温度調整されたものである。
【0051】
図6に示すエッチング量および選択比は、エッチング液を基板Wに供給する前に、HMDSを基板Wに供給したときの値である。すなわち、図5に示すエッチング量および選択比は、シリル化されていない基板Wをエッチングしたときの値であり、図6に示すエッチング量および選択比は、シリル化された基板Wをエッチングしたときの値である。
図5に示すように、シリル化されていない基板Wをエッチングした場合、SiO膜およびSiN膜のエッチング量は、処理時間の増加に伴って増加しており、その変化の割合は、ほぼ同じである。したがって、シリル化されていない基板Wをエッチングした場合、選択比(窒化膜の除去量/酸化膜の除去量)は、処理時間に拘わらずほぼ一定である。
【0052】
一方、図6に示すように、シリル化された基板Wをエッチングした場合、SiN膜のエッチング量は、処理時間の増加に伴って増加しているが、SiO膜のエッチング量は、処理時間に拘わらずほぼ一定である。したがって、シリル化された基板Wをエッチングした場合、選択比は、処理時間の増加に伴って増加している。
シリル化されていない基板WをエッチングしたときのSiN膜のエッチング量と、シリル化された基板WをエッチングしたときのSiN膜のエッチング量とを比較すると、処理時間が同じであれば両者は殆ど変わらない。一方、シリル化されていない基板WをエッチングしたときのSiO膜のエッチング量と、シリル化された基板WをエッチングしたときのSiO膜のエッチング量とを比較すると、基板Wがシリル化されている場合の方が少ない。すなわち、酸化膜は、水酸基(OH基)を有しているので、シリル化剤と反応するが、窒化膜は、水酸基を有していないので、シリル化剤と反応しない。そのため、シリル化剤を基板Wに供給した後にエッチング液を基板Wに供給すると、酸化膜のエッチングがシリル化剤の供給によって抑制される。したがって、シリル化剤を基板Wに供給した後にエッチング液を基板Wに供給することにより、選択比を向上させることができる。
【0053】
以上のように第1実施形態では、シリル化剤を基板Wに供給した後に、エッチング剤としてエッチング液を基板Wに供給する。したがって、シリル化された基板Wがエッチングされる。前述のように、酸化膜と窒化膜とが形成された基板Wをシリル化することにより、酸化膜がエッチングされることを抑制することができる。したがって、シリル化された基板Wをエッチングすることにより、選択比を向上させることができる。
【0054】
また第1実施形態では、基板Wに供給されるシリル化剤が、シリル化剤の一例である非水溶性のシリル化剤を含むので、非水溶性のシリル化剤が、基板Wに供給される。さらに、フッ酸とエチレングリコールとを含む水溶液などの水を含むエッチング液が、基板Wに供給される。したがって、第1実施形態では、非水溶性のシリル化剤が基板Wに供給された後に、水を含むエッチング剤が当該基板Wに供給される。この場合、シリル化剤が非水溶性であるから、基板Wに付着しているシリル化剤は、基板Wに供給されたエッチング液に溶けない。したがって、酸化膜のエッチングが抑制される状態を維持することができる。これにより、選択比の低下を抑制または防止することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、この発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、処理ユニットの構成が異なることである。すなわち、第1実施形態では、複数の処理ユニットが、基板Wをシリル化するシリル化ユニットと、基板Wをエッチングするエッチングユニットとを含む場合について説明したが、第2実施形態では、複数の処理ユニットが、基板Wをシリル化すると共に基板Wをエッチングするシリル化・エッチングユニットを含む。以下の図7〜図10において、前述の図1〜図6に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図7は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置201のレイアウトを示す図解的な平面図である。
第2実施形態に係る基板処理装置201は、複数の処理ユニットを除き、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様の構成を備えている。すなわち、基板処理装置201は、第1実施形態に係る複数の処理ユニット7に代えて、複数の処理ユニット207を含む。複数の処理ユニット207は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。複数の処理ユニット207は、基板Wをシリル化すると共に基板Wをエッチングするシリル化・エッチングユニット207aを含む。第2実施形態では、全ての処理ユニット207が、シリル化・エッチングユニット207aである。
【0057】
図8は、この発明の第2実施形態に係るシリル化・エッチングユニット207aの概略構成を示す模式図である。図9は、この発明の第2実施形態に係る遮断板252およびこれに関連する構成の底面図である。以下では、図8を参照する。図9については適宜参照する。
シリル化・エッチングユニット207aは、スピンチャック38(基板保持手段)と、エッチング剤ノズル39と、リンス液ノズル40と、チャンバ41とを備えている。第2実施形態では、スピンチャック38によって、基板保持手段が構成されている。シリル化・エッチングユニット207aは、チャンバ41内においてスピンチャック38の上方に配置された遮断板252と、チャンバ41の上部からチャンバ41内にクリーンエアを供給するファン・フィルタ・ユニット253(FFU253)と、チャンバ41の下部からチャンバ41内の雰囲気を排出する排気機構(図示せず)とをさらに備えている。FFU253および排気機構は、常時駆動されており、チャンバ41の上部からチャンバ41の下部に向かって流れる気流をチャンバ41内に形成している。
【0058】
遮断板252は、水平に配置された円板部254と、円板部254の外周縁に沿って設けられた筒状部255と、円板部254に接続されたヒータ256とを含む。筒状部255は、円板部254の外周縁から下方に向かって鉛直に延びている。筒状部255は、円筒状である。円板部254と筒状部255とは、同軸である。円板部254は、基板Wの直径よりも大きい直径を有している。筒状部255は、スピンベース42よりも大きい内径を有している。円板部254は、水平な姿勢で支軸257の下端部に連結されている。遮断板252の中心軸線は、スピンチャック38の回転軸線上に配置されている。遮断板252は、円板部254の下面が水平になるように配置されている。基板Wがスピンチャック38に保持されている状態では、円板部254の下面が基板Wの上面に対向する。
【0059】
円板部254は、円板部254の中央部を鉛直方向に貫通する貫通孔を有している。この貫通孔は、円板部254の下面中央部で開口している。支軸257は中空軸であり、支軸257の内部空間は貫通孔に連通している。支軸257には、シリル化剤導入管258(シリル化剤供給手段)が非接触状態で挿通されており、シリル化剤導入管258の下端は貫通孔内に達している。図9に示すように、シリル化剤導入管258の下端には、シリル化剤を吐出するシリル化剤吐出口259と、窒素ガスを吐出する中心ガス吐出口260とが形成されている。また、支軸257とシリル化剤導入管258との間には、シリル化剤導入管258を取り囲む筒状のガス供給路261が形成されている。ガス供給路261の下端は、円板部254の下面で開口している。図9に示すように、ガス供給路261の下端は、窒素ガスを吐出する環状ガス吐出口262を形成している。
【0060】
シリル化剤導入管258には、シリル化剤供給管263および第1ガス供給管264が接続されている。シリル化剤導入管258には、シリル化剤供給管263および第1ガス供給管264をそれぞれ介してシリル化剤および窒素ガスが供給される。シリル化剤導入管258に供給されるシリル化剤は、シリル化剤のベーパであってもよいし、シリル化剤の液体であってもよい。シリル化剤供給管263には、シリル化剤導入管258へのシリル化剤の供給および供給停止を制御するシリル化剤バルブ265が介装されており、第1ガス供給管264には、シリル化剤導入管258への窒素ガスの供給および供給停止を制御する第1ガスバルブ266が介装されている。
【0061】
また、支軸257の上端部には、第2ガスバルブ267が介装された第2ガス供給管268が接続されている。ガス供給路261には、この第2ガス供給管268を介して窒素ガスが供給される。ガス供給路261に供給された窒素ガスは、環状ガス吐出口262から下方に吐出される。
支軸257は、遮断板昇降機構269に結合されている。遮断板昇降機構269は、円板部254の下面がスピンチャック38に保持された基板Wの上面に近接する近接位置(図10(a)に示す位置)と、円板部254の下面がスピンチャック38の上方に大きく退避した退避位置(図8に示す位置)との間で、支軸257および遮断板252を一体的に昇降させる。遮断板252が近接位置に位置する状態では、円板部254の下面が基板Wの上面に近接すると共に、遮断板252の筒状部255が、基板Wの周囲を取り囲む。
【0062】
図10は、この発明の第2実施形態に係る基板処理装置201によって行われる基板Wの処理の一例を説明するための図である。以下では、酸化膜の一例であるSiO膜と、窒化膜の一例であるSiN膜とが形成された基板Wの表面にエッチング剤としてエッチング液を供給して、SiN膜を選択的に除去する選択エッチングの一例について説明する。また、以下では、図7、図8、および図10を参照する。
【0063】
キャリア保持部5に保持されたキャリアC内に収容された未処理の基板Wは、インデクサロボットIRによって搬出される。そして、キャリアC内から搬出された基板Wは、インデクサロボットIRからセンターロボットCRに渡される。センターロボットCRは、インデクサロボットIRから受け取った未処理の基板Wをシリル化・エッチングユニット207a内に搬入する。
【0064】
具体的には、シリル化・エッチングユニット207a内への基板Wの搬入に先立ち、ゲート開閉機構51が制御装置4によって駆動される。これにより、ゲートシャッタ50が開放位置に配置され、チャンバ41の開口48が開放される。その後、センターロボットCRが、チャンバ41内に基板Wを搬入し、この基板Wをスピンチャック38上に載置する。基板Wがスピンチャック38上に載置されるとき、遮断板252は、スピンチャック38の上方に大きく退避した退避位置に配置されている。
【0065】
制御装置4は、センターロボットCRによってスピンチャック38上に基板Wを載置させた後、チャンバ41内からセンターロボットCRを退避させる。その後、ゲート開閉機構51が制御装置4によって駆動され、ゲートシャッタ50が閉鎖位置に配置される。これにより、チャンバ41の開口48がゲートシャッタ50により密閉される。チャンバ41の開口48が密閉された後は、制御装置4は、スピンモータ43を制御することにより、スピンチャック38に保持された基板Wを回転させる。
【0066】
次に、図10(a)に示すように、シリル化剤を基板Wに供給して、基板Wをシリル化するシリル処理(シリル化工程)が行われる。具体的には、制御装置4は、遮断板昇降機構269を制御することにより、遮断板252を退避位置から近接位置に移動させる。これにより、遮断板252の円板部254の下面が基板Wの上面に近接すると共に、遮断板252の筒状部255が、基板Wの周囲を取り囲む。制御装置4は、遮断板252が近接位置に位置する状態で、第1ガスバルブ266および第2ガスバルブ267を開いて、中心ガス吐出口260および環状ガス吐出口262から窒素ガスを吐出させる。これにより、円板部254とスピンベース42との間の雰囲気(水分を含む雰囲気)が、窒素ガス雰囲気に置換される。
【0067】
続いて、制御装置4は、遮断板252が近接位置に位置する状態で、シリル化剤バルブ265を開いて、シリル化剤の一例であるHMDSの液体をシリル化剤吐出口259から吐出させる。シリル化剤吐出口259から吐出されたHMDSは、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域にHMDSが供給され、基板Wの上面全域がシリル化される。そして、シリル化剤バルブ265が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置4は、シリル化剤バルブ265を閉じてシリル化剤吐出口259からのHMDSの吐出を停止させる。HMDSが基板Wに供給されている間、ヒータ256が制御装置4によって駆動されて、基板Wが加熱されてもよい。
【0068】
HMDSの吐出が停止された後は、制御装置4は、遮断板252が近接位置に位置する状態で、再び、第1ガスバルブ266および第2ガスバルブ267を開いて、中心ガス吐出口260および環状ガス吐出口262から窒素ガスを吐出させる。これにより、円板部254とスピンベース42との間の雰囲気が、窒素ガス雰囲気に置換される。また、窒素ガスの供給によって円板部254とスピンベース42との間から排出された雰囲気は、排気機構(図示せず)によってチャンバ41内から排出される。
【0069】
このように、HMDSが基板Wに供給される前に、水分を含む雰囲気が基板Wの近傍から除去される。これにより、HMDSが水と反応してアンモニアガスが発生することを抑制または防止することができる。また、HMDSが基板Wに供給された後に、遮断板252とスピンベース42との間の雰囲気がチャンバ41内から除去される。したがって、HMDSと基板Wとの反応によって生成されたアンモニアガスがチャンバ41内から除去される。
【0070】
次に、図10(b)に示すように、エッチング剤の一例である、フッ酸とエチレングリコールとを含む混合液を基板Wに供給して、基板Wをエッチングするエッチング処理(エッチング工程)が行われる。具体的には、制御装置4は、スピンチャック38によって基板Wを回転させながら、エッチング剤バルブ44を開いて、エッチング剤ノズル39からスピンチャック38に保持された基板Wの上面中央部に向けてフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液を吐出させる。エッチング剤ノズル39から吐出されたフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液は、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域にフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液が供給され、基板Wの上面全域がエッチングされる。そして、エッチング剤バルブ44が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置4は、エッチング剤バルブ44を閉じてエッチング剤ノズル39からのフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液の吐出を停止させる。
【0071】
次に、図10(c)に示すように、リンス液の一例である純水を基板Wに供給して、基板Wに付着しているフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液を洗い流すリンス処理(リンス工程)が行われる。具体的には、制御装置4は、スピンチャック38によって基板Wを回転させながら、リンス液バルブ46を開いて、リンス液ノズル40からスピンチャック38に保持された基板Wの上面中央部に向けて純水を吐出させる。リンス液ノズル40から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、基板Wに付着しているフッ酸とエチレングリコールとを含む混合液が洗い流される。そして、リンス液バルブ46が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置4は、リンス液バルブ46を閉じてリンス液ノズル40からの純水の吐出を停止させる。
【0072】
次に、図10(d)に示すように、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ。乾燥工程)が行われる。具体的には、制御装置4は、スピンモータ43を制御して、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、当該純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御装置4は、スピンモータ43を制御して、スピンチャック38による基板Wの回転を停止させる。その後、ゲート開閉機構51が制御装置4によって駆動され、ゲートシャッタ50が開放位置に配置される。これにより、チャンバ41の開口48が開放される。
【0073】
チャンバ41の開口48が開放された後は、スピンチャック38に保持された基板WがセンターロボットCRによってシリル化・エッチングユニット207a内から搬出される。そして、シリル化・エッチングユニット207a内から搬出された基板Wは、センターロボットCRからインデクサロボットIRに渡される。インデクサロボットIRは、センターロボットCRから受け取った処理済みの基板Wをキャリア保持部5に保持されたキャリアCに搬入する。これにより、基板処理装置201での一連の処理が終了する。制御装置4は、このような動作を繰り返し実行させ、複数枚の基板Wを一枚ずつ処理させる。
【0074】
以上のように第2実施形態では、シリル化剤およびエッチング剤が、スピンチャック38に保持された基板Wに供給される。すなわち、第2実施形態では、シリル化位置とエッチング位置とが同じ位置であり、基板Wに対するシリル化剤の供給およびエッチング剤の供給が同じ位置で行われる。したがって、基板Wに対するシリル化剤の供給が行われた後に、エッチング位置まで基板Wを移動させなくてもよい。これにより、基板Wの搬送時間を短縮できる。したがって、基板Wの処理時間を短縮できる。
【0075】
[第3実施形態]
なお、第2実施形態では、遮断板252の筒状部255が、円筒状である場合について説明したが、筒状部255は、円錐台状であってもよい。具体的には、図11に示す第3実施形態に係る遮断板352のように、筒状部355は、円板部254の外周縁に沿って設けられており、円板部254の外周縁から外方に広がるように下方に延びていてもよい。さらに、筒状部355は、筒状部355の下端に近づくに従って肉厚が減少していてもよい。
【0076】
[第4実施形態]
次に、この発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、エッチング剤のベーパによって基板Wがエッチングされることである。以下の図12〜図18において、前述の図1〜図11に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図12は、この発明の第4実施形態に係る基板処理装置401のレイアウトを示す図解的な平面図である。
基板処理装置401は、基板Wを処理する複数の処理ユニット407を含む。複数の処理ユニット407は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット407との間で基板Wを搬送すると共に、複数の処理ユニット407間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット407は、基板Wをシリル化するシリル化ユニット407aと、基板Wをエッチングするエッチングユニット407bと、リンス液を基板Wに供給すると共に当該基板Wを乾燥させる洗浄ユニット407cとを含む。
【0078】
図示はしないが、洗浄ユニット407cは、スピンチャック38と、リンス液ノズル40(リンス液供給手段)と、チャンバ41とを備えている(図3参照)。洗浄ユニット407cでは、リンス液ノズル40から吐出された純水が、スピンチャック38に保持されている基板Wの上面全域に供給されることにより、基板Wに付着している液体や異物が洗い流される(リンス処理。リンス工程)。その後、スピンチャック38が基板Wを高回転速度で回転させることにより、基板Wから純水が除去される。これにより、基板Wが乾燥する(乾燥処理。乾燥工程)。
【0079】
図13および図14は、この発明の第4実施形態に係るシリル化ユニット407aの概略構成を示す模式図である。以下では、シリル化ユニット407aの概略構成、およびシリル化ユニット407aにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。最初に、シリル化ユニット407aの概略構成について説明する。
シリル化ユニット407aは、基板Wを保持する基板保持台414と、基板保持台414に保持されている基板Wを加熱するヒータ417と、基板保持台414を支持する支持部材412とを含む。基板保持台414は、たとえば、基板Wよりも大きい直径を有する円板状のプレートである。ヒータ417は、基板保持台414に埋設されている。基板Wは、基板Wの中心と基板保持台414の中心とが共通の鉛直軸線上に位置するように基板保持台414上に水平に載置される。これにより、基板Wが基板保持台414によって保持位置P1で水平に保持される。第4実施形態では、基板保持台414と、後述のホットプレート478とによって、基板保持手段が構成されている。基板保持台414は、支持部材412の上方に配置されている。支持部材412は、たとえば、基板保持台414よりも大きい直径を有する円板状のプレートである。支持部材412の外周部は、基板保持台414よりも外方に張り出している。
【0080】
また、シリル化ユニット407aは、基板保持台414の上方で基板Wを支持する複数のリフトピン419と、複数のリフトピン419を一体的に昇降させるリフトピン昇降機構421とをさらに含む。各リフトピン419は、鉛直方向に延びている。各リフトピン419の上端は、同じ高さに配置されている。基板保持台414および支持部材412には、基板保持台414および支持部材412を鉛直方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。リフトピン昇降機構421が、複数のリフトピン419を退避位置(図13に示す位置)から突出位置(図14に示す位置)に上昇させると、複数のリフトピン419がそれぞれ複数の貫通孔に挿入され、各リフトピン419の上端が基板保持台414の上面から突出する。一方、リフトピン昇降機構421が複数のリフトピン419を突出位置から退避位置に下降させると、各リフトピン419の上端が基板保持台414の上面よりも下方に移動する。
【0081】
複数のリフトピン419は、基板Wの下面を支持することにより、当該基板Wを水平に保持する。複数のリフトピン419が突出位置で基板Wを保持している状態で、リフトピン昇降機構421が、複数のリフトピン419を退避位置まで下降させると、複数のリフトピン419に保持されている基板Wが、基板保持台414に載置される。これにより、保持位置P1に基板Wが搬送され、基板保持台414によって保持位置P1で基板Wが水平に保持される。その一方で、基板保持台414に基板Wが保持されている状態で、リフトピン昇降機構421が複数のリフトピン419を退避位置から突出位置まで上昇させると、基板保持台414に保持されている基板Wが、複数のリフトピン419によって支持され、保持位置P1よりも上方に搬送される。このようにして、基板保持台414と複数のリフトピン419との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0082】
また、シリル化ユニット407aは、支持部材412の上方に配置されている遮断板452をさらに含む。遮断板452は、水平に配置された円板部454と、円板部454の外周縁に沿って設けられた筒状部455とを含む。筒状部455は、円板部454の外周縁から下方に向かって鉛直に延びている。筒状部455は、円筒状である。円板部454と筒状部455とは、同軸である。円板部454は、基板保持台414よりも大きい直径を有している。筒状部455は、基板保持台414の直径よりも大きい内径を有している。筒状部455の内径は、支持部材412の外径よりも小さい。遮断板452は、円板部454の下面が水平になるように配置されている。基板Wが基板保持台414に保持されている状態では、円板部454の下面が基板Wの上面に対向する。遮断板452は、円板部454の中心と基板保持台414の中心とが共通の鉛直軸線上に位置するように配置されている。
【0083】
筒状部455の下端は、支持部材412の上面周縁部に対向している。筒状部455の下端と支持部材412の上面周縁部との間には、基板保持台414よりも大きい内径を有する環状のシール部材470(たとえば、Oリング)が配置されている。第4実施形態では、シール部材470は、支持部材412の上面周縁部に保持されている。シール部材470は、支持部材412に限らず、筒状部455の下端に保持されていてもよい。シール部材470は、支持部材412の上面周縁部に沿って支持部材412の周方向に延びている。遮断板452は、遮断板昇降機構269に結合されている。遮断板昇降機構269は、密閉位置(図13に示す位置)と、密閉位置の上方に設けられた開放位置(図14に示す位置)との間で遮断板452を昇降させる。遮断板昇降機構269が、遮断板452を退避位置から密閉位置に下降させると、筒状部455の下端と支持部材412の上面との間の隙間がシール部材470によって密閉される。これにより、保持位置P1を含む収容空間471(図13参照)が密閉される。その一方で、遮断板昇降機構269が、遮断板452を密閉位置から退避位置に上昇させると、筒状部455がシール部材470から離れ、収容空間471が開放される。
【0084】
円板部454の下面中央部には、吐出口472が形成されている。シリル化剤導入管458(シリル化剤供給手段)は、吐出口472に接続されている。シリル化剤導入管458には、シリル化剤供給管463を介してシリル化剤のベーパが供給される。また、シリル化剤導入管458には、窒素ガス供給管464を介して窒素ガスが供給される。シリル化剤供給管463には、シリル化剤導入管458へのシリル化剤の供給および供給停止を制御するシリル化剤バルブ465が介装されており、窒素ガス供給管464には、シリル化剤導入管458への窒素ガスの供給および供給停止を制御する窒素ガスバルブ466が介装されている。シリル化剤導入管458に供給されたシリル化剤のベーパおよび窒素ガスは、吐出口472から下方に吐出される。
【0085】
また、支持部材412の上面には、平面視において基板保持台414を取り囲む環状の排気口432が形成されている。排気口432は、収容空間471に連通している。排気管433の一端部は、排気口432に接続されている。排気管433には、圧力調整弁473が介装されている。遮断板452が密閉位置に位置する状態では収容空間471が密閉されているから、この状態で、シリル化剤のベーパまたは窒素ガスが吐出口472から吐出されると、収容空間471の気圧が高まる。そして、収容空間471の気圧が所定値に達すると、圧力調整弁473が開いて、収容空間471の雰囲気が排出口432から排出される。これにより、収容空間471の気圧が低下する。そして、収容空間471の気圧が所定値未満になると、圧力調整弁473が閉じる。したがって、遮断板452が密閉位置に位置する状態で、シリル化剤のベーパまたは窒素ガスが吐出口472から吐出されると、収容空間471の気体がパージされ、収容空間471の雰囲気がシリル化剤のベーパまたは窒素ガスに置換される。その後、吐出口472からのシリル化剤のベーパまたは窒素ガスの吐出が停止されると、圧力調整弁473が閉じ、シリル化剤のベーパまたは窒素ガスが収容空間471に充満している状態が維持される。
【0086】
次に、シリル化ユニット407aにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。
シリル化ユニット407aに基板Wが搬入されるときには、予め、遮断板452が開放位置に配置され、複数のリフトピン419が突出位置に配置される。この状態で、制御装置4は、センターロボットCRによって複数のリフトピン419上に基板Wを載置させる。そして、制御装置4は、センターロボットCRを退避させた後、リフトピン昇降機構421によって複数のリフトピン419を退避位置まで下降させる。これにより、複数のリフトピン419に支持されている基板Wが、基板保持台414に載置され、基板保持台414によって保持位置P1で基板Wが保持される。そして、制御装置4は、複数のリフトピン419を退避位置まで移動させた後、遮断板昇降機構269によって遮断板452を密閉位置まで下降させる。これにより、収容空間471が密閉される。そのため、基板Wは、密閉空間内で保持される。
【0087】
次に、収容空間471の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換される。具体的には、制御装置4は、遮断板452が密閉位置に位置する状態で、窒素ガスバルブ466を開いて、吐出口472から窒素ガスを吐出させる。これにより、窒素ガスが収容空間471に供給される。そのため、収容空間471の気圧が上昇し、圧力調整弁473が開く。したがって、収容空間471の気体が排出口432から排出される。これにより、収容空間471の雰囲気が、窒素ガスに置換される。その後、制御装置4は、窒素ガスバルブ466を閉じる。これにより、圧力調整弁473が閉じ、収容空間471からの気体の排出が停止される。そのため、窒素ガスが収容空間471に充満している状態が維持される。
【0088】
次に、シリル化剤の一例であるHMDSのベーパが基板Wに供給される。具体的には、制御装置4は、遮断板452が密閉位置に位置する状態で、シリル化剤バルブ465を開いて、HMDSのベーパを吐出口472から吐出させる。これにより、HMDSのベーパが収容空間471に供給される。そのため、圧力調整弁473が開き、収容空間471に充満している窒素ガスがHMDSのベーパに置換される。その後、制御装置4は、シリル化剤バルブ465を閉じる。これにより、圧力調整弁473が閉じ、収容空間471からの気体の排出が停止される。そのため、HMDSのベーパが収容空間471に充満している状態が維持される。HMDSのベーパが収容空間471に充満することにより、基板保持台414に保持位置P1で保持されている基板WにHMDSのベーパが供給される。また、基板保持台414に保持されている基板Wは、ヒータ417による加熱によって室温よりも高い一定の温度(たとえば、50〜100℃の範囲内の一定の温度)に保持されている。したがって、一定の温度に保持されている基板WにHMDSのベーパが供給される。これにより、シリル化処理(シリル化工程)が実行され、基板Wの上面全域がシリル化される。
【0089】
次に、収容空間471の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換される。具体的には、制御装置4は、遮断板452が密閉位置に位置する状態で、窒素ガスバルブ466を開いて、窒素ガスを吐出口472から吐出させる。これにより、窒素ガスが収容空間471に供給される。そのため、圧力調整弁473が開き、収容空間471に充満しているHMDSのベーパや、基板WとHMDSとの反応で生成されたガスが、窒素ガスに置換される。そして、制御装置4は、収容空間471の雰囲気が窒素ガスに置換された後に、窒素ガスバルブ466を閉じる。これにより、圧力調整弁473が閉じ、収容空間471からの気体の排出が停止される。そのため、窒素ガスが収容空間471に充満している状態が維持される。
【0090】
次に、シリル化ユニット407aから基板Wが搬出される。具体的には、制御装置4は、遮断板昇降機構269によって遮断板452を退避位置まで上昇させる。その後、制御装置4は、リフトピン昇降機構421によって複数のリフトピン419を突出位置まで上昇させる。これにより、基板保持台414に保持されている基板Wが、複数のリフトピン419によって支持され、保持位置P1の上方に配置される。制御装置4は、複数のリフトピン419を突出位置に移動させた後、複数のリフトピン419によって支持されている基板WをセンターロボットCRによって搬出させる。これにより、シリル化ユニット407aから基板Wが搬出される。
【0091】
図15は、この発明の第4実施形態に係るエッチングユニット407bの概略構成を示す模式図である。以下では、エッチングユニット407bの概略構成、およびエッチングユニット407bにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。最初に、エッチングユニット407bの概略構成について説明する。
エッチングユニット407bは、フッ酸水溶液474を密閉状態で貯留するベーパ発生容器475(エッチング剤供給手段)と、ベーパ発生容器475を収容するハウジング476とを備えている。このベーパ発生容器475の下方には、エッチング剤の一例であるフッ酸のベーパを下方に吐出する多数の貫通孔が形成されたパンチングプレート477が設けられている。さらに、パンチングプレート477の下方には、基板Wをパンチングプレート477に対向させた状態で、当該基板Wを保持位置P2で水平に保持するホットプレート478が配置されている。ホットプレート478は、回転軸479の上端に固定されている。モータ等を含む回転駆動機構480が回転軸479を回転させると、ホットプレート478は、回転軸479と共に鉛直軸線まわりに回転する。ホットプレート478に保持されている基板Wは、ホットプレート478によって加熱される。
【0092】
エッチングユニット407bは、ホットプレート478の周囲に設けられた筒状のベローズ482をさらに備えている。ホットプレート478は、ベローズ482内に配置されている。ベローズ482は、ハウジング476の底面476aに対して上下に収縮可能である。図示しない駆動機構は、ベローズ482の上端縁がパンチングプレート477に当接し、ホットプレート478の周囲の空間が密閉される密閉位置(実線で示す位置)と、ベローズ482の上端縁がホットプレート478の上面478aよりも下方に退避した退避位置(破線で示す位置)との間で、ベローズ482を伸縮させる。ベローズ482内の気体は、ハウジング476の底面476aに接続された排気管483を介して排気機構484により排気される。
【0093】
また、ハウジング476の側壁には、ホットプレート478の側方に位置する開口485が形成されている。開口485は、シャッタ486によって開閉される。エッチングユニット407bに基板Wが搬入されるときには、予め、ベローズ482が退避位置(破線の位置)に配置されると共に、開口485が開かれる。そして、この状態で、センターロボットCRによって、ホットプレート478上に基板Wが載置される。その後、開口485がシャッタ486によって閉じられる。一方、エッチングユニット407bから基板Wが搬出されるときには、ベローズ482が退避位置に配置されると共に、開口485が開かれる。そして、この状態で、ホットプレート478に保持されている基板WがセンターロボットCRによって搬出される。その後、開口485がシャッタ486によって閉じられる。
【0094】
ベーパ発生容器475には、ベーパ発生容器475に設けられたベーパ充満空間487にキャリアガスとしての窒素ガスを供給する窒素ガス供給管488が接続されている。窒素ガス供給源489からの窒素ガスは、流量コントローラ(MFC)490、バルブ491、および窒素ガス供給管488を介してベーパ充満空間487に供給される。また、ベーパ充満空間487は、バルブ492を介してベーパ供給路493に接続されている。窒素ガス供給源489からの窒素ガスは、流量コントローラ494、バルブ495および窒素ガス供給管496を介してベーパ供給路493に供給される。バルブ492が開かれている状態では、ベーパ充満空間487に漂うフッ酸のベーパが、窒素ガスの流れによってバルブ492を介してベーパ供給路493に供給される。そして、ベーパ供給路493に供給されたフッ酸のベーパは、窒素ガスの流れによってベーパ供給路493を介してパンチングプレート477に導かれる。
【0095】
ベーパ発生容器475内に貯留されているフッ酸水溶液474は、いわゆる擬似共弗組成となる濃度(たとえば、1気圧、室温のもとで、約39.6%)に調製されている。この擬似共弗組成のフッ酸水溶液474は、水とフッ化水素との蒸発速度が等しく、そのため、バルブ492を介してベーパ充満空間487からベーパ供給路493にフッ酸のベーパが導かれることによってベーパ発生容器475内のフッ酸水溶液474が減少したとしても、ベーパ供給路493に導かれるフッ酸のベーパの濃度は一定に保持される。
【0096】
次に、エッチングユニット407bにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。
基板Wの表面をエッチングするときには、基板Wがホットプレート478によって保持されており、ベローズ482が密着位置(実線の位置)に位置する状態で、制御装置4が、3つのバルブ491、492、495を開く。これにより、ベーパ発生容器475内で生成されたフッ酸のベーパが、窒素ガス供給管488からの窒素ガスによって、バルブ492を介してベーパ供給路493へと押し出される。さらに、このフッ酸のベーパは、窒素ガス供給管496からの窒素ガスによって、パンチングプレート477へと運ばれる。そして、このフッ酸のベーパは、パンチングプレート477に形成された貫通孔を介して、ホットプレート478に保持されている基板Wの上面(表面)に供給される。フッ酸のベーパが基板Wに供給されているとき、制御装置4は、回転駆動機構480によって一定の回転速度で基板Wを鉛直軸線まわりに回転させている。さらに、制御装置4は、ホットプレート478によって基板Wを加熱することにより、基板Wの温度をたとえば40〜150℃の範囲内の一定の温度に維持している。このようにして、一定の温度に保持された基板Wの表面全域にフッ酸のベーパが供給され、基板Wの表面がエッチングされる(エッチング処理。エッチング工程)。
【0097】
図16は、この発明の第4実施形態に係る基板処理装置401によって行われる基板Wの処理の一例を説明するための図である。以下の説明におけるシリル化処理、エッチング処理、およびリンス処理は、それぞれ、シリル化ユニット407a、エッチングユニット407b、および洗浄ユニット407cによって行われる処理である。以下では、酸化膜の一例であるSiO膜と、窒化膜の一例であるSiN膜とが形成された基板Wの表面にエッチング剤の一例であるフッ酸のベーパを供給して、SiN膜を選択的に除去する選択エッチングの一例について説明する。
【0098】
第4処理例1では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化ユニット407aによってシリル化処理を実行する。これにより、基板Wの上面全域がシリル化される。そして、制御装置4は、センターロボットCRによって、シリル化ユニット407aからエッチングユニット407bに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、エッチングユニット407bによってエッチング処理を実行する。これにより、基板Wの上面全域がエッチングされる。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0099】
第4処理例2では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化処理およびエッチング処理を順次実行する。そして、エッチング処理が行われた後、制御装置は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから洗浄ユニット407cに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行する。これにより、基板Wに付着している液体や異物が洗い流される。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0100】
第4処理例3では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化処理およびエッチング処理を順次実行する。そして、エッチング処理が行われた後、制御装置4は、再びシリル化処理およびエッチング処理を順次実行する。すなわち、第4処理例3では、制御装置4は、シリル化処理およびエッチング処理を含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を実行する。そして、繰り返し工程が行われた後は、制御装置4は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから洗浄ユニット407cに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0101】
第4処理例4では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理を順次実行する。そして、乾燥処理が行われた後、制御装置4は、再びシリル化処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理を順次実行する。すなわち、第4処理例4では、制御装置4は、シリル化処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理を含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を実行する。そして、繰り返し工程が行われた後は、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0102】
図17は、シリル化されていない基板Wをエッチングしたときの基板Wの温度とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。図18は、シリル化された基板Wをエッチングしたときの基板Wの温度とエッチング量および選択比との関係を示すグラフである。図17は、比較例のグラフであり、図18は、本発明の実施例のグラフである。
図17および図18では、SiO膜とSiN膜とが形成された基板Wの表面に、フッ酸のベーパを供給して、基板Wをエッチングしたときのエッチング量および選択比が示されている。エッチングに用いられたフッ酸のベーパの濃度は、39.6%である。各グラフにおける基板Wの温度は、フッ酸のベーパが基板Wに供給されているときの基板Wの温度である。
【0103】
図17に示すように、シリル化されていない基板Wをエッチングした場合、基板Wの温度が30℃のときは、SiN膜のエッチング量(●参照。4.66nm)に対して、SiO膜のエッチング量(■参照。90.00nm)が極めて大きい。すなわち、基板Wの温度が30℃のときは、選択比(窒化膜の除去量/酸化膜の除去量)の分母が分子に対して極めて大きいため、選択比が小さい(▲参照。0.05)。また、基板Wの温度が40℃、50℃、70℃のとき、SiN膜のエッチング量は、3.97nm(40℃)、3.39nm(50℃)、1.68nm(70℃)であり、30℃のときと比べて大きな変化はない。また、基板Wの温度が40℃、50℃、70℃のとき、SiO膜のエッチング量は、2.09nm(40℃)、0.31nm(50℃)、0.27nm(70℃)であり、30℃のときよりも少ないが、SiO膜は、エッチングされている。基板Wの温度が40℃、50℃、70℃のときの選択比は、1.90(40℃)、11.09(50℃)、6.31(70℃)である。このように、シリル化されていない基板Wをフッ酸のベーパによってエッチングした場合、基板Wの温度がいずれの温度であっても、選択比は、約11以下である。
【0104】
一方、図18に示すように、シリル化された基板Wをエッチングした場合、基板Wの温度が30℃のときは、SiN膜のエッチング量(●参照。4.65nm)に対して、SiO膜のエッチング量(■参照。89.00nm)が極めて大きいため、選択比(▲参照)が小さい(0.05)。また、基板Wの温度が40℃、50℃、70℃のとき、SiN膜のエッチング量は、3.92nm(40℃)、3.48nm(50℃)、1.38nm(70℃)であり、30℃のときと比べて大きな変化はない。さらに、基板Wがシリル化されていない場合と比較しても、大きな差はない。一方、基板Wの温度が40℃、50℃、70℃のとき、SiO膜のエッチング量は、−0.05nm(40℃)、−0.06nm(50℃)、−0.07nm(70℃)である。エッチング量がマイナスということは、膜厚が増加しており、エッチングされていない、すなわち、エッチング量が零ということを示している。したがって、基板Wの温度が40℃以上のときには、選択比の分母が零であるので、選択比は無限大である。このように、基板Wをエッチングする前に当該基板Wをシリル化することにより、基板Wの温度が40℃以上のときにおいて選択比を大幅に向上させることができる。
【0105】
以上のように第4実施形態では、シリル化された基板Wがエッチングされる。その後、エッチングされた基板Wが再びシリル化される。そして、シリル化された基板Wが再びエッチングされる。すなわち、エッチングが中断され、このエッチングの中断期間中に基板Wが再びシリル化される。エッチング剤の供給が長時間継続されると、シリル化剤によって与えられた酸化膜のエッチング抑制能力が途中で低下し、酸化膜のエッチングを十分に抑制できなくなる場合がある。したがって、再び基板Wをシリル化することにより、酸化膜のエッチング抑制能力を回復させることができる。そのため、エッチングを再開したときに酸化膜がエッチングされることを抑制できる。したがって、選択比の低下を抑制または防止することができる。
【0106】
また第4実施形態では、シリル化された基板Wがエッチングされた後に、リンス液が基板Wに供給され、基板Wに付着している液体や異物が洗い流される。そして、再び、シリル化工程、エッチング工程、およびリンス工程が順次行われる。エッチングされた基板Wにはエッチングによって生じた異物が付着している場合がある。エッチングによって生じた異物が付着している状態で基板Wをシリル化すると、この異物が基板Wから取れ難くなる場合がある。したがって、再びシリル化工程を行う前に、基板Wに付着している異物を除去することにより、この異物が基板Wから取れ難くなることを抑制または防止することができる。これにより、異物が基板Wに残ることを抑制または防止することができる。したがって、基板Wの清浄度を向上させることができる。
【0107】
[第5実施形態]
次に、この発明の第5実施形態について説明する。この第5実施形態と前述の第4実施形態との主要な相違点は、複数の処理ユニットが、基板Wを冷却する冷却ユニットをさらに含むことである。以下の図19〜図21において、前述の図1〜図18に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0108】
図19は、この発明の第5実施形態に係る基板処理装置501のレイアウトを示す図解的な平面図である。
基板処理装置501は、基板Wを処理する複数の処理ユニット507を含む。複数の処理ユニット507は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット507との間で基板Wを搬送すると共に、複数の処理ユニット507間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット507は、シリル化ユニット407aと、エッチングユニット407bと、洗浄ユニット407cとを含む。さらに、複数の処理ユニット507は、基板Wを冷却する冷却ユニット507dを含む。
【0109】
図20は、この発明の第5実施形態に係る冷却ユニット507dの概略構成を示す模式図である。
冷却ユニット507dは、基板保持台414と、支持部材412と、リフトピン419と、リフトピン昇降機構421とを含む。さらに、冷却ユニット507dは、基板保持台414に保持されている基板Wを冷却する冷却装置517を含む。冷却装置517は、たとえば、水冷式の冷却装置である。冷却装置517は、基板保持台414に埋設されている。基板保持台414に保持されている基板Wは、基板保持台414との接触によって冷却される(冷却処理。冷却工程)。これにより、たとえば室温以下の一定の温度まで基板Wの温度が低下し、基板Wがこの一定の温度に保持される。
【0110】
図21は、この発明の第5実施形態に係る基板処理装置501によって行われる基板Wの処理の一例を説明するための図である。図21におけるシリル化処理、エッチング処理、リンス処理、および冷却処理は、それぞれ、シリル化ユニット407a、エッチングユニット407b、洗浄ユニット407c、および冷却ユニット507dによって行われる処理である。以下では、酸化膜の一例であるSiO膜と、窒化膜の一例であるSiN膜とが形成された基板Wの表面にエッチング剤の一例であるフッ酸のベーパを供給して、SiN膜を選択的に除去する選択エッチングの一例について説明する。
【0111】
第5処理例1では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化ユニット407aによってシリル化処理を実行する。そして、制御装置4は、センターロボットCRによってシリル化ユニット407aから冷却ユニット507dに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、冷却ユニット507dによって冷却処理を実行する。これにより、基板Wの温度が室温以下の一定の温度まで低下する。そして、制御装置4は、センターロボットCRによって冷却ユニット507dからエッチングユニット407bに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、エッチングユニット407bによってエッチング処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0112】
第5処理例2では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化処理、冷却処理、およびエッチング処理を順次実行する。そして、制御装置4は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから洗浄ユニット407cに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0113】
第5処理例3では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化処理、冷却処理、およびエッチング処理を順次実行する。そして、エッチング処理が行われた後、制御装置4は、再びシリル化処理、冷却処理、およびエッチング処理を順次実行する。すなわち、第5処理例3では、制御装置4は、シリル化処理、冷却処理、およびエッチング処理を含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を実行する。そして、繰り返し工程が行われた後は、制御装置4は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから洗浄ユニット407cに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0114】
第5処理例4では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化処理、冷却処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理を順次実行する。そして、乾燥処理が行われた後、制御装置4は、再びシリル化処理、冷却処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理を順次実行する。すなわち、第5処理例4では、制御装置4は、シリル化処理、冷却処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理を含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を実行する。そして、繰り返し工程が行われた後は、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0115】
[第6実施形態]
次に、この発明の第6実施形態について説明する。この第6実施形態と前述の第5実施形態との主要な相違点は、複数の処理ユニットが、紫外線(ultraviolet radiation)を基板Wに照射する紫外線照射ユニットをさらに含むことである。以下の図22〜図25において、前述の図1〜図21に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0116】
図22は、この発明の第6実施形態に係る基板処理装置601のレイアウトを示す図解的な平面図である。
基板処理装置601は、基板Wを処理する複数の処理ユニット607を含む。複数の処理ユニット607は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット607との間で基板Wを搬送すると共に、複数の処理ユニット607間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット607は、シリル化ユニット407aと、エッチングユニット407bと、洗浄ユニット407cと、冷却ユニット507dとを含む。さらに、複数の処理ユニット607は、紫外線を基板Wに照射する紫外線照射ユニット607eを含む。
【0117】
図23および図24は、この発明の第6実施形態に係る紫外線照射ユニット607eの概略構成を示す模式図である。
紫外線照射ユニット607eは、基板保持台414と、基板保持台414を収容するチャンバ608とを備えている。チャンバ608は、ゲート622が形成された隔壁649と、ゲート622を開閉するゲートシャッタ623と、隔壁649とゲートシャッタ623との間を密閉するシール部材670(たとえば、Oリング)と、ゲート622を開閉させるゲート開閉機構624とを含む。シール部材670は、ゲート622に沿って隔壁649に取り付けられている。シール部材670は、隔壁649に限らず、ゲートシャッタ623に取り付けられていてもよい。ゲートシャッタ623は、ゲート開閉機構624に結合されている。ゲート開閉機構624は、ゲート622がゲートシャッタ623によって閉じられる閉鎖位置と、ゲート622が開かれる開放位置との間で、ゲートシャッタ623を移動させる。ゲートシャッタ623が閉塞位置に配置されると、ゲートシャッタ623と隔壁649との間の隙間がシール部材670によって密閉される。これにより、チャンバ608内の空間が密閉される。
【0118】
また、紫外線照射ユニット607eは、複数のリフトピン419と、リフトピン昇降機構421とをさらに含む。隔壁649の底壁612と基板保持台414とには、基板保持台414および底壁612を鉛直方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。リフトピン昇降機構421が、複数のリフトピン419を退避位置(図23に示す位置)から突出位置(図24に示す位置)に上昇させると、複数のリフトピン419がそれぞれ複数の貫通孔に挿入され、各リフトピン419の上端が基板保持台414の上面から突出する。また、リフトピン昇降機構421が複数のリフトピン419を突出位置から退避位置に下降させると、各リフトピン419の上端が基板保持台414の上面よりも下方に移動する。基板保持台414と複数のリフトピン419との間で基板Wの受け渡しは、複数のリフトピン419の昇降によって行われる。
【0119】
また、紫外線照射ユニット607eは、窒素ガスをチャンバ608内に導入する側方導入管625をさらに備えている。側方導入管625は、隔壁649の側壁609に取り付けられている。側方導入管625には、窒素ガスバルブ626が介装されている。窒素ガスバルブ626が開かれると、側壁609に形成された吐出口697からチャンバ608内に窒素ガスが吐出される。
【0120】
また、底壁612の上面には、平面視において基板保持台414を取り囲む環状の排気口632が形成されている。排気口632は、チャンバ608内に連通している。排気管433の一端部は、排気口632に接続されている。排気管433には、圧力調整弁473が介装されている。ゲート622が閉じられている状態で、吐出口697から窒素ガスが吐出されると、チャンバ608内の気圧が高まる。そして、チャンバ608内の気圧が所定値に達すると、圧力調整弁473が開いて、チャンバ608内から排出口632に気体が排出される。これにより、チャンバ608内の気圧が低下する。そして、チャンバ608内の気圧が所定値未満になると、圧力調整弁473が閉じる。
【0121】
また、紫外線照射ユニット607eは、紫外線照射ランプ698(紫外線照射手段)をさらに備えている。紫外線照射ランプ698は、隔壁649の上壁611に取り付けられている。紫外線照射ランプ698は、基板保持台414に保持されている基板Wに対向する位置に配置されている。紫外線照射ランプ698は、基板保持台414に保持されている基板Wの上面に向けて紫外線を照射する。これにより、紫外線が基板Wの上面に均一に照射される。紫外線照射ランプ698は、たとえば185〜254nmの波長の紫外線、もしくは20〜200nmの波長の紫外線を照射する。
【0122】
次に、紫外線照射ユニット607eにおいて行われる基板Wの処理の一例について説明する。
まず、紫外線照射ランプ698が185〜254nmの波長の紫外線を照射する場合の処理について説明する。
紫外線照射ユニット607eに基板Wが搬入されるときには、予め、ゲートシャッタ623が開放位置に配置され、複数のリフトピン419が突出位置に配置される。この状態で、制御装置4は、センターロボットCRによって複数のリフトピン419上に基板Wを載置させる。そして、制御装置4は、センターロボットCRを退避させた後、リフトピン昇降機構421によって複数のリフトピン419を退避位置まで下降させる。これにより、複数のリフトピン419に支持されている基板Wが、基板保持台414に載置され、基板保持台414によって基板Wが保持される。そして、制御装置4は、複数のリフトピン419を退避位置まで移動させた後、ゲート開閉機構624によってゲートシャッタ623を閉鎖位置まで下降させる。これにより、チャンバ608内が密閉される。そのため、基板Wは、密閉空間内で保持される。
【0123】
次に、紫外線が基板Wに照射される。具体的には、制御装置4は、ゲートシャッタ623が閉鎖位置に位置する状態で、紫外線照射ランプ698から紫外線を照射させる。これにより、基板保持台414に保持されている基板Wの上面に紫外線が均一に照射される。基板Wは、紫外線が照射されることにより加熱される。さらに、基板Wに付着している有機物などの異物は、紫外線の照射によって除去される。このようにして、UV処理(紫外線照射工程)が行われる。そして、紫外線の照射が所定時間にわたって行われると、制御装置4は、紫外線照射ランプ698からの紫外線の照射を停止させる。
【0124】
次に、チャンバ608内の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換される。具体的には、制御装置4は、ゲートシャッタ623が閉鎖位置に位置する状態で、窒素ガスバルブ626を開いて、吐出口697から窒素ガスを吐出させる。これにより、窒素ガスがチャンバ608内に供給される。そのため、チャンバ608内の気圧が上昇し、圧力調整弁473が開く。したがって、チャンバ608内の雰囲気が排出口632から排出される。これにより、チャンバ608内の雰囲気が、窒素ガスに置換される。
【0125】
次に、紫外線照射ユニット607eから基板Wが搬出される。具体的には、制御装置4は、ゲート開閉機構624によってゲートシャッタ623を開放位置に移動させる。その後、制御装置4は、リフトピン昇降機構421によって複数のリフトピン419を突出位置まで上昇させる。これにより、基板保持台414に保持されている基板Wが、複数のリフトピン419によって支持される。制御装置4は、複数のリフトピン419を突出位置に移動させた後、複数のリフトピン419によって支持されている基板WをセンターロボットCRによって搬出させる。これにより、紫外線照射ユニット607eから基板Wが搬出される。
【0126】
次に紫外線照射ランプ698が20〜200nmの波長の紫外線を照射する場合の処理について説明する。
紫外線照射ユニット607eに基板Wが搬入されるときには、予め、ゲートシャッタ623が開放位置に配置され、複数のリフトピン419が突出位置に配置される。この状態で、制御装置4は、センターロボットCRによって複数のリフトピン419上に基板Wを載置させる。そして、制御装置4は、センターロボットCRを退避させた後、リフトピン昇降機構421によって複数のリフトピン419を退避位置まで下降させる。これにより、複数のリフトピン419に支持されている基板Wが、基板保持台414に載置され、基板保持台414によって基板Wが保持される。そして、制御装置4は、複数のリフトピン419を退避位置まで移動させた後、ゲート開閉機構624によってゲートシャッタ623を閉鎖位置まで下降させる。これにより、チャンバ608内が密閉される。そのため、基板Wは、密閉空間内で保持される。
【0127】
次に、チャンバ608内の雰囲気に窒素ガスが導入される。具体的には、制御装置4は、ゲートシャッタ623が閉鎖位置に位置する状態で、窒素ガスバルブ626を開いて、吐出口697から窒素ガスを吐出させる。これにより、窒素ガスがチャンバ608内に供給される。そのため、チャンバ608内の気圧が上昇し、圧力調整弁473が開く。したがって、チャンバ608内の雰囲気が排出口632から排出される。これにより、チャンバ608内に、窒素ガスが導入される。このとき、チャンバ608内の雰囲気中酸素濃度が1〜10%となるように窒素ガスが導入される。その後、制御装置4は、窒素ガスバルブ626を閉じる。これにより、圧力調整弁473が閉じ、チャンバ608内からの気体の排出が停止される。そのため、空気および窒素ガスがチャンバ608内に充満している状態が維持される。
【0128】
次に、紫外線が基板Wに照射される。具体的には、制御装置4は、ゲートシャッタ623が閉鎖位置に位置する状態で、紫外線照射ランプ698から紫外線を照射させる。これにより、基板保持台414に保持されている基板Wの上面に紫外線が均一に照射される。また、チャンバ608内の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換されているので、基板Wの上面には、窒素ガス雰囲気で紫外線が照射される。基板Wは、紫外線が照射されることにより加熱される。さらに、基板Wに付着している有機物などの異物は、紫外線の照射によって除去される。このようにして、UV処理(紫外線照射工程)が行われる。そして、紫外線の照射が所定時間にわたって行われると、制御装置4は、紫外線照射ランプ698からの紫外線の照射を停止させる。
【0129】
次に、チャンバ608内の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換される。具体的には、制御装置4は、ゲートシャッタ623が閉鎖位置に位置する状態で、窒素ガスバルブ626を開いて、吐出口697から窒素ガスを吐出させる。これにより、窒素ガスがチャンバ608内に供給される。そのため、チャンバ608内の気圧が上昇し、圧力調整弁473が開く。したがって、チャンバ608内の雰囲気が排出口632から排出される。これにより、チャンバ608内の雰囲気が、窒素ガスに置換される。
【0130】
次に、紫外線照射ユニット607eから基板Wが搬出される。具体的には、制御装置4は、ゲート開閉機構624によってゲートシャッタ623を開放位置に移動させる。その後、制御装置4は、リフトピン昇降機構421によって複数のリフトピン419を突出位置まで上昇させる。これにより、基板保持台414に保持されている基板Wが、複数のリフトピン419によって支持される。制御装置4は、複数のリフトピン419を突出位置に移動させた後、複数のリフトピン419によって支持されている基板WをセンターロボットCRによって搬出させる。これにより、紫外線照射ユニット607eから基板Wが搬出される。
【0131】
図25は、この発明の第6実施形態に係る基板処理装置601によって行われる基板Wの処理の一例を説明するための図である。図25におけるシリル化処理、エッチング処理、リンス処理、およびUV処理は、それぞれ、シリル化ユニット407a、エッチングユニット407b、洗浄ユニット407c、および紫外線照射ユニット607eによって行われる処理である。以下では、酸化膜の一例であるSiO膜と、窒化膜の一例であるSiN膜とが形成された基板Wの表面にエッチング剤の一例であるフッ酸のベーパを供給して、SiN膜を選択的に除去する選択エッチングの一例について説明する。
【0132】
第6処理例1では、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCから紫外線照射ユニット607eに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、紫外線照射ユニット607eによってUV処理(シリル化前紫外線照射工程)を実行する。これにより、基板Wから有機物が除去される。そして、制御装置4は、センターロボットCRによって紫外線照射ユニット607eからシリル化ユニット407aに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、シリル化ユニット407aによってシリル化処理を実行する。そして、制御装置4は、センターロボットCRによってシリル化ユニット407aからエッチングユニット407bに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、エッチングユニット407bによってエッチング処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0133】
第6処理例2では、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCから紫外線照射ユニット607eに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、UV処理(シリル化前紫外線照射工程)、シリル化処理、およびエッチング処理を順次実行する。そして、制御装置4は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから紫外線照射ユニット607eに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、紫外線照射ユニット607eによってUV処理(シリル化後紫外線照射工程)を実行する。これにより、基板Wからシリル化剤(たとえば、HMDS)が除去される。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0134】
前述の第6処理例1において、制御装置4は、エッチング処理を実行した後に洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行して、基板Wに付着している液体や異物を洗い流してもよい(第6処理例3参照)。さらに、制御装置4は、第6処理例1、3において、シリル化処理を実行した後であってエッチング処理を実行する前に冷却ユニット507dによって冷却処理を実行してもよい。同様に、制御装置4は、第6処理例2において、2回目のUV処理を実行した後に洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行して、基板Wに付着している液体や異物を洗い流してもよい(第6処理例4参照)。さらに、制御装置4は、第6処理例2、4において、シリル化処理を実行した後であってエッチング処理を実行する前に冷却ユニット507dによって冷却処理を実行してもよい。
【0135】
第6処理例5では、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCから紫外線照射ユニット607eに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、UV処理(シリル化前紫外線照射工程)、シリル化処理、およびエッチング処理を順次実行する。そして、エッチング処理が行われた後、制御装置4は、再びシリル化処理およびエッチング処理を順次実行する。すなわち、第6処理例5では、制御装置4は、UV処理を行った後に、シリル化処理およびエッチング処理を含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を実行する。そして、繰り返し工程が行われた後は、制御装置4は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから洗浄ユニット407cに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0136】
第6処理例6では、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、キャリアCから紫外線照射ユニット607eに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、UV処理(シリル化前紫外線照射工程)、シリル化処理、およびエッチング処理を順次実行する。そして、エッチング処理が行われた後、制御装置4は、再びシリル化処理およびエッチング処理を順次実行する。すなわち、第6処理例6では、制御装置4は、UV処理を行った後に、シリル化処理およびエッチング処理を含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を実行する。そして、繰り返し工程が行われた後は、制御装置4は、センターロボットCRによってエッチングユニット407bから紫外線照射ユニット607eに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、紫外線照射ユニット607eによってUV処理(シリル化後紫外線照射工程)を実行する。そして、制御装置4は、センターロボットCRによって紫外線照射ユニット607eから洗浄ユニット407cに基板Wを搬送させる。その後、制御装置4は、洗浄ユニット407cによってリンス処理および乾燥処理を実行する。そして、制御装置4は、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRによって、基板WをキャリアC内に搬入させる。
【0137】
前述の第6処理例5において、制御装置4は、シリル化処理およびエッチング処理と併せて、リンス処理および乾燥処理を繰り返し実行してもよい。すなわち、第6処理例5において繰り返し工程が行われた後に実行されるリンス処理および乾燥処理が一連のサイクルに含まれており、シリル化処理、エッチング処理、リンス処理、および乾燥処理が順次繰り返し実行されてもよい(第6処理例7参照)。同様に、第6処理例6において繰り返し工程が行われた後に実行されるUV処理、リンス処理、および乾燥処理が、一連のサイクルに含まれており、シリル化処理、エッチング処理、UV処理、リンス処理、および乾燥処理が順次繰り返し実行されてもよい(第6処理例8参照)。さらに、第6処理例5〜8において、シリル化処理が実行された後であって、エッチング処理が実行される前に、冷却処理が実行されてもよい。すなわち、第6処理例5〜8の一連のサイクルに冷却処理が含まれていてもよい。第6処理例8に示すように、UV処理(紫外線照射工程)が一連のサイクルに含まれる場合、各サイクルのUV処理は、同じサイクルのシリル化処理(シリル化工程)が行われた後に実行されるから、当該UV処理は、シリル化後紫外線照射工程である。また、各サイクルのUV処理は、次のサイクルのシリル化処理が行われる前に実行されるから、当該UV処理は、シリル化前紫外線照射工程でもある。
【0138】
以上のように第6実施形態では、紫外線が照射された基板Wにシリル化剤およびエッチング剤が順次供給される。紫外線が基板Wに照射されることにより、基板Wに付着している有機物などの異物を除去することができる。したがって、基板Wに対するシリル化剤およびエッチング剤の反応性を向上させることができる。これにより、選択比を向上させることができる。さらに、第6実施形態では、シリル化された基板Wに紫外線が照射されるので、基板Wに付着しているHMDSなどのシリル化剤を除去することができる。したがって、基板Wの清浄度を向上させることができる。
【0139】
また第6実施形態では、シリル化工程、エッチング工程、および紫外線照射工程を含む一連のサイクルが複数回行われる。すなわち、同じサイクルでは、シリル化剤およびエッチング剤が供給された基板Wに紫外線が照射され、2回目以降のサイクルでは、紫外線が照射された基板Wにシリル化剤およびエッチング剤が供給される。前述のように、シリル化された基板Wに紫外線を照射することにより、基板Wに付着しているシリル化剤を除去することができる。したがって、基板Wの清浄度を向上させることができる。また、2回目以降のサイクルでは、紫外線の照射によって有機物などの異物が除去された基板Wにシリル化剤およびエッチング剤が供給される。したがって、2回目以降のサイクルにおいて基板Wに対するシリル化剤およびエッチング剤の反応性を向上させることができる。これにより、選択比を向上させることができる。
【0140】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第6実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1〜第6実施形態では、基板処理装置が、枚葉式の基板処理装置である場合について説明したが、第1〜第6実施形態に係る基板処理装置は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の基板処理装置であってもよい。具体的には、第1〜第6実施形態に係る基板処理装置は、複数枚の基板Wが浸漬される処理液を貯留する処理槽と、処理槽にシリル化剤を供給するシリル化剤供給機構と、処理槽にエッチング剤を供給するエッチング剤供給機構とを含むバッチ式の基板処理装置であってもよい。
【0141】
また、前述の第1および第2実施形態では、エッチング剤としてエッチング液を基板に供給しているが、エッチング剤として、エッチング成分を有するベーパを基板に供給してもよい。たとえば、エッチング剤ノズル39からエッチング成分を有するベーパ(たとえば、フッ酸のベーパ)が基板に供給されてもよい。
また、前述の第2実施形態では、全ての処理ユニット207が、シリル化・エッチングユニット207aである場合について説明したが、シリル化・エッチングユニット207aとは異なるユニットが、複数の処理ユニット207に含まれていてもよい。
【0142】
また、前述の第1および第2実施形態では、シリル化工程およびエッチング工程はそれぞれ1回ずつ行われているが、シリル化工程およびエッチング工程が行われた基板Wに対して、再びシリル化工程およびエッチング工程が行われてもよい。シリル化剤の供給によって酸化膜のエッチングは抑制されるが、エッチング工程が長時間行われると、酸化膜のエッチングを抑制する効果が時間の経過と共に低下し、選択比が低下するおそれがある。そのため、長時間のエッチング工程が行われる場合は、エッチング工程の間に再度シリル化工程を行うことにより、エッチング工程において高い選択比を維持することができる。
【0143】
また、前述の第4〜第6実施形態では、フッ酸のベーパによって基板をエッチングする場合について説明したが、フッ酸以外のエッチング剤によって基板をエッチングしてもよい。さらに、基板に供給されるエッチング剤は、ベーパであってもよいし、液体であってもよい。
また、前述の第4実施形態では、シリル化ユニット、エッチングユニット、および洗浄ユニットがそれぞれ独立している場合について説明したが、シリル化ユニット、エッチングユニット、および洗浄ユニットのうちの2つ以上のユニットが1つに統合されていてもよい。具体的には、第2実施形態のように、シリル化ユニットとエッチングユニットとが統合されていてもよい。また、シリル化ユニット、エッチングユニット、および洗浄ユニットが統合されていてもよい。
【0144】
同様に、前述の第5実施形態では、シリル化ユニット、エッチングユニット、洗浄ユニット、冷却ユニットがそれぞれ独立している場合について説明したが、これらのユニットのうちの2つ以上が1つに統合されていてもよい。第6実施形態についても同様に、シリル化ユニット、エッチングユニット、洗浄ユニット、冷却ユニット、および紫外線照射ユニットのうちの2つ以上が1つに統合されていてもよい。具体的には、第2実施形態のように、シリル化ユニットとエッチングユニットとが統合されていてもよい。また、紫外線照射ユニットに設けられた基板保持台に冷却装置が埋設されており、冷却ユニットと紫外線照射ユニットとが統合されていてもよい。
【0145】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0146】
1 基板処理装置
4 制御装置(制御手段)
7a シリル化ユニット
7b エッチングユニット
14 基板保持台(基板保持手段)
28 シリル化剤導入管(シリル化剤供給手段)
38 スピンチャック(基板保持手段)
39 エッチング剤ノズル(エッチング剤供給手段)
201 基板処理装置
207a シリル化・エッチングユニット
258 シリル化剤導入管(シリル化剤供給手段)
401 基板処理装置
414 基板保持台(基板保持手段)
458 シリル化剤導入管(シリル化剤供給手段)
475 ベーパ発生容器(エッチング剤供給手段)
478 ホットプレート(基板保持手段)
501 基板処理装置
601 基板処理装置
P1 保持位置(シリル化位置)
P2 保持位置(シリル化位置、エッチング位置)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化剤を基板に供給するシリル化工程と、
前記シリル化工程が行われた後に、エッチング剤を前記基板に供給するエッチング工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記シリル化工程と前記エッチング工程とを含む一連のサイクルを複数回行う繰り返し工程を含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記サイクルは、前記エッチング工程が行われた後に、リンス液を前記基板に供給するリンス工程をさらに含む、請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記サイクルは、前記エッチング工程が行われた後に、紫外線を前記基板に照射する紫外線照射工程をさらに含む、請求項2または3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記シリル化工程が行われる前に、紫外線を前記基板に照射するシリル化前紫外線照射工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記シリル化工程が行われた後に、紫外線を前記基板に照射するシリル化後紫外線照射工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチング剤は、フッ酸とエチレングリコールとを含む混合液である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記シリル化剤は、非水溶性であり、
前記エッチング剤は、水を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記エッチング剤は、エッチング成分を有するベーパである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
シリル化位置およびエッチング位置で基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に前記シリル化位置で保持された基板にシリル化剤を供給するシリル化剤供給手段と、
前記基板保持手段に前記エッチング位置で保持された基板にエッチング剤を供給するエッチング剤供給手段と、
前記シリル化剤供給手段を制御することにより、前記基板保持手段に前記シリル化位置で保持された基板にシリル化剤を供給させるシリル化工程と、前記エッチング剤供給手段を制御することにより、前記シリル化工程が行われた後に、前記基板保持手段に前記エッチング位置で保持された前記基板にエッチング剤を供給させるエッチング工程とを実行する制御手段とを含む、基板処理装置。
【請求項11】
前記シリル化位置およびエッチング位置が、同じ位置である、請求項10記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−164949(P2012−164949A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63722(P2011−63722)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】