説明

基板処理方法

【課題】フォトレジストパターンを溶解し所望のレジストパターンを形成するリフロー処理において、生産効率が向上し、コストを低減することのできる基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板G上に形成されたフォトレジストパターン206を溶解し、新たなフォトレジストパターン206を形成する基板処理方法であって、下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターン206に対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップと、前記フォトレジストパターン206を溶剤雰囲気に曝して溶解し、所定エリアTgをマスクするステップとを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィ工程により形成されエッチングマスクとして使用されたレジストパターンを溶解し、新たなレジストパターンを形成するリフロー処理において、レジストをフローする工程の前に実施する基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLCD(液晶ディスプレイ)製造工程におけるアモルファスSiTFT(アモルファスシリコン薄膜トランジスタ)の形成においては、複数回のエッチング処理が必要とされる。このため従来は、複数回のフォトリソグラフィ工程、即ち露光・現像処理を行い、フォトレジストパターンを形成している。
しかしながら、このTFT形成工程にあっては、エッチングで得たいパターン毎に塗布現像装置と露光装置とが必要となり、装置コストが嵩むという課題があった。
【0003】
このような課題に対し、一度エッチングマスクとして使用したレジストパターンを溶解し変形することにより、新たなレジストパターンを形成するリフロー処理が注目されている。このリフロー処理によれば、二度目のレジストパターン形成において、塗布現像装置及び露光装置を用いた処理を必要とせず、装置コストを低減し、製造効率を向上することができる。このリフロー処理を用いたTFT形成工程について図を用いて説明する。
【0004】
アモルファスSiTFTを形成する場合、図5(a)に示すように、ガラス基板200に形成されたゲート電極201上に、絶縁層202、a−Si層(ノンドープアモルファスSi層)203aとn+a−Si層(リンドープアモルファスSi層)203bからなるSi層203、ドレイン・ソース電極を形成するためのメタル層205が順に積層される。
【0005】
そして、メタル層205をエッチングするため、フォトリソグラフィ工程により、メタル層205上にフォトレジストが成膜され、露光、現像処理によりレジストパターン206が形成される。但し、このレジストパターン206は、光の透過率に差が設けられたハーフトーンマスクを用いるハーフ露光処理により、異なる膜厚(厚膜部と薄膜部)を有するものとなされる。尚、ハーフ露光技術については、特許文献1に開示されている。
【0006】
レジストパターン206は、メタル層205をエッチングするためのマスクとして使用され、エッチング後は図5(b)に示すようにメタル層205の非マスク部分がエッチングされる。
【0007】
メタルエッチングによりレジスト層206の表面には、ウェットエッチング液の影響によりレジストが変質した変質層207が形成される。そこで、リフロー処理の前処理として、この変質層207を除去する処理を行う。
【0008】
この前処理においては、例えばアルカリ溶液がウェットエッチング液として変質層207に滴下され、これにより図5(c)に示すように変質層207が除去される。
次いで再現像処理により、図5(d)に示すように次のレジストパターン形成においてマスクが不要な薄膜部のレジスト206を除去し、マスクしたいターゲットTg周辺のレジスト(厚膜部)のみを残す処理が行われる。
【0009】
次いで図5(d)に示すようにレジスト206が残された状態から、レジスト206に溶剤雰囲気を曝すことによりレジスト206の溶解、拡散処理(リフロー処理)が行われ、図5(e)に示すようにターゲットTg上にレジスト層が形成される。
尚、このレジスト層形成後は、図6(a)に示すようにメタル層205をマスクとしてSi層203のエッチングを行い、図6(b)に示すようにレジスト層206を除去する。そして、図6(c)に示すように、チャネル領域におけるn+a−Si層203bのエッチングが行われ、TFTが形成される。
【0010】
尚、本願発明者らは、前記リフロー処理の前処理として、さらにフォトレジストに対して所定波長(例えば波長172nm)のUV光を所定時間、露光し、レジスト表面の高分子を分解することによって、レジスト表面に対する有機溶剤の接触角を低下させる方法を開示している(特許文献2参照)。
このUV光の露光処理により、レジスト表面からの有機溶剤の吸収率が向上し、より速くレジスト全体に有機溶剤を浸透させることが可能となる。
【特許文献1】特開2005−108904号公報
【特許文献2】特開2007−235026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで従来は、前記のようにリフロー処理の前処理としてウェットエッチング液(アルカリ溶液)が変質層207に滴下され、変質層207が除去されることによって、リフロー処理でのレジストへの溶剤雰囲気の浸透が促進するようになされていた。
【0012】
しかしながら、従来の方法にあっては、変質層除去のためのアルカリ溶液等のウェットエッチング液の使用はコストが嵩み、また、リフロー処理に時間を要するという課題があった。
また、リフロー処理の時間を短縮するには、特許文献2に開示の方法のように、例えば波長172nmのUV光を露光する方法があるが、従来同様に露光処理前にアルカリ溶液等のウェットエッチング液により変質層を除去する必要があり、コストが嵩むという課題は残っていた。
【0013】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、フォトレジストパターンを溶解し所望のレジストパターンを形成するリフロー処理において、生産効率が向上し、コストを低減することのできる基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明にかかる基板処理方法は、基板上に形成されたフォトレジストパターンを溶解し、新たなフォトレジストパターンを形成する基板処理方法であって、下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターンに対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップと、前記フォトレジストパターンを溶剤雰囲気に曝して溶解し、所定エリアをマスクするステップとを実行することが望ましい。
尚、下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターンに対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップにおいて、露光量は、少なくとも232.9(mJ/cm2)となされることが望ましい。
【0015】
このようにフォトレジストを溶解するリフロー処理の前に、フォトレジストに300〜400nmのいずれかの波長の光線を、少なくとも232.9(mJ/cm2)の露光量で露光することにより、変質層の高分子構造が分解され低分子化される。即ち、低分子化することによって、レジストは親溶剤性に改質される。
また、この露光処理により、変質層表面にOH基が形成され、有機溶剤がレジスト内部へ、より浸透し易い状態となされる。
これにより、変質層を除去せずともレジストへの有機溶剤の吸収率が向上し、リフロー(溶解)処理において有機溶剤をレジスト全体に効果的に浸透させることができる。
その結果、安定した溶解を行うことができると共に、従来のように変質層を除去する工程を必要としないために、掛かるコストを低減し、生産効率を向上することができる。
【0016】
また、前記下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターンに対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップにおいて、前記光線としてブラックライトを用いることが好ましい。
即ち、ブラックライトであれば、低コストの装置構成で300〜400nmの波長の光線を照射することができ、人体にも無害である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フォトレジストパターンを溶解し所望のレジストパターンを形成するリフロー処理において、生産効率が向上し、コストを低減することのできる基板処理方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る基板処理方法につき、実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明に係る基板処理方法を実施するリフローパターン形成装置のレイアウトを示す平面ブロック図である。
【0019】
図1に示すリフローパターン形成装置1は、例えばTFT形成のため、塗布現像処理装置(COT/DEV)50及び露光装置(Exp)51においてレジストパターン形成し、エッチング装置(Etching)52によりエッチング処理が施された基板Gに対し、レジストパターンのリフロー処理を行い、レジストパターンを再形成するための装置である。
【0020】
このリフローパターン形成装置1は、複数の基板Gをカセット単位で外部(エッチング装置)から搬入出したり、カセットに対して基板Gを搬入出したりするカセットステーション(C/S)2を備える。
また、カセットステーション2に隣接して基板処理部3が設けられ、この基板処理部3においては、図中矢印A,Bに示す基板処理方向に沿って複数の基板処理ユニットが並べて配置され、2列の基板処理ラインを形成している。
尚、各ユニット間での基板Gの搬送は、例えばコロ搬送機構からなる平流し搬送路に沿って行われる。
【0021】
矢印Aで示す基板処理ラインには、処理方向に沿って先ず、フォトレジスト及びその表面部に生じた変質層にブラックライトを照射し、親溶剤性に改質させるための処理を行うBL露光ユニット(BL)5が配置される。尚、このBL露光ユニット(BL)5による処理は、本発明の特徴に係る部分であるため、詳細に後述する。
基板処理ラインAに沿って、BL露光ユニット(BL)5の隣には、基板Gを例えばHMDS(ヘキサメチルジンラザン)雰囲気内で加熱処理することにより疎水化する疎水化処理ユニット(AD)6、及び加熱された基板Gを所定温度に冷却するためのクールユニット(Col)7が配置される。
【0022】
さらに、クールユニット(Col)7に隣接して、フォトレジストを溶解するリフローユニット(RF)8が配置される。
このリフローユニット(RF)8においては、チャンバ内に載置された基板Gに対し、濃度が50〜100%に調整された溶剤雰囲気が供給され、フォトレジストが溶剤雰囲気に曝されることによってフォトレジストパターンがフローし、パターン形成がなされる。
【0023】
尚、図1においては、例えば4台のリフローユニット(RF)8が2列の基板処理ラインにわたり(各ラインに2台)配置され、2列の基板処理ライン間には各リフローユニット(RF)8に対し基板Gの搬入出を行う基板搬送部4が配置されている。
基板搬送部4は基板Gを保持可能なアーム装置4aを有すると共に、基板処理方向に移動可能に設けられ、アーム装置4aによって、適宜空きがあるリフローユニット(RF)8に基板Gを搬入するようになされている。
【0024】
また、2列の基板処理ラインの間には、リフローユニット(RF)8に隣接し、基板搬送部4がアクセス可能な位置にバッファユニット(Buf)9が配置され、基板Gをリフローユニット(RF)8にすぐに搬送出来ない場合等に、基板Gを一時的に保持可能となされている。
また図中、矢印Bで示す基板処理方向に沿って、複数のホットプレート及びクールプレートからなる熱処理装置(HP/COL)10、基板Gを一時的に保持するためのバッファユニット(Buf)11が配置されている。
【0025】
続いて、フォトレジスト及びその表面部に生じた変質層を親溶剤性に改質させるための処理(リフロー処理の前処理)を行うBL露光ユニット(BL)5の構成について説明する。
【0026】
図2は、BL露光ユニット(BL)5の構成を模式的に示した概略断面図である。
図2に示すように、BL露光ユニット(BL)5においては、平流し搬送路15上にチャンバユニット16が設けられ、このチャンバユニット16内で基板Gの被処理面に対するブラックライトの照射が行われる。
尚、平流し搬送路15は例えばコロ搬送機構により構成することができ、この平流し搬送路15の駆動は、コロ回転を制御するためのモータ等からなる搬送駆動手段19によりなされる。
【0027】
チャンバユニット16内の天井部には、基板Gの被処理面(フォトレジストパターン)に向けて300〜400nmのいずれかの波長のブラックライトを照射するランプユニット17が設けられている。
このランプユニット17は、所定のワット密度(例えば0.00776W/cm2)のブラックライトランプ18を並列に複数有し、基板Gの被処理面に対し均一に露光可能な構成となされている。各ブラックライトランプ18は、点灯制御手段20により電力供給の制御がなされる。
【0028】
また、BL露光ユニット(BL)5は、制御プログラムや、そのプログラムが実行されるコンピュータ等からなる制御部30を備え、この制御部30により前記搬送駆動手段19、前記点灯制御手段20のそれぞれに対する駆動制御がなされる。
【0029】
また、チャンバユニット16の基板搬入口16a付近には、基板Gが搬入口16aにあるか否かを検出するための搬入センサ21が設けられ、基板搬出口16b付近には、基板Gが搬出口16bにあるか否かを検出するための搬出センサ22が設けられている。
これら搬入センサ21および搬出センサ22は制御部30に接続され、各センサの検出結果に基づき、制御部30が搬送駆動手段19、点灯制御手段20の駆動開始終了を制御するようになされている。
【0030】
このように構成されたBL露光ユニット(BL)5においては、平流し搬送路15により水平方向に搬送される基板Gが、チャンバユニット16の中に搬入口16aから所定速度で搬入される。そして、搬入センサ21により基板G搬入が検出されると、それに同期して点灯制御手段20が駆動開始するようになされている。
【0031】
また、搬入センサ21の検出結果に基づき、基板G全体がチャンバユニット16内に搬入されたと判断されるとBL露光ユニット(BL)5における搬送制御手段19の駆動が一時停止される。
そして、全てのブラックライトランプ18に駆動電流が供給され、これによりランプユニット17から基板Gの被処理面(フォトレジストパターン)に対し均一に300〜400nmのいずれかの波長のブラックライト(光線)が照射されるようになされている。
【0032】
また、所定時間(例えば30sec)、基板Gの被処理面がブラックライトに露光されると、制御部30の制御により、再び搬送制御手段19が駆動開始するようになされ、これにより基板Gがチャンバユニット16から搬出開始される。
そして、搬出センサ16bの検出結果に基づき、基板Gがチャンバユニット16から搬出されたと制御部30により判断されると、次の基板Gがチャンバユニット16に搬入開始されるようになされている。
【0033】
続いて、本発明に係る基板処理方法を実施するリフローパターン形成装置1の処理工程について図3のフロー及び図4の基板状態図に従い説明する。尚、以下の説明においては、既に説明した図1、図2の装置構成を適宜用いて説明する。
【0034】
先ず、エッチング装置52より搬送された基板Gが収容されたカセットステーション2から、1枚の基板Gが平流し搬送路に沿ってBL露光ユニット(BL)5に搬入される。
尚、BL露光ユニット(BL)5に搬入される基板Gにあっては、図4(a)に示すように、メタル層205(下地膜)上に形成されたフォトレジストパターン206は、塗布現像処理装置50及び露光装置51においてハーフ露光処理が施されている。ハーフ露光処理とは、リフロー処理で必要なフォトレジストを厚膜に形成し、不要なフォトレジストを薄膜に形成する処理である。
【0035】
BL露光ユニット(BL)5に搬入された基板Gは、図4(b)に示すように、ランプユニット17により、その被処理面(フォトレジストパターン)に所定時間(例えば30sec)、300〜400nmのいずれかの波長のブラックライト(光線)が均一に照射される(図3のステップS1)。
【0036】
この露光処理により、基板Gの被処理面におけるレジスト表面の変質層207において、その含有物質である高分子のカルボン酸の分子構造が分解され低分子化される。
即ち、カルボン酸が低分子化することによって、レジスト206に有機溶剤が浸透し易い状態に改質される。
さらには、この露光処理により、変質層207の表面にOH基が形成され、溶剤のレジスト206への浸透が促進するようになされる。
【0037】
尚、このような変質層207の改質効果を得るためには、被処理面に対する露光量は、少なくとも232.9(mJ/cm2)が好ましく、BL露光ユニット(BL)5においては、その条件を満たす露光量となるよう、ランプユニット17のワット密度、処理時間が最適化されている。
【0038】
BL露光ユニット(BL)5での露光処理を終えると、基板Gは疎水化処理ユニット(AD)6に搬送される。疎水化処理ユニット(AD)6において、基板Gは例えば蒸気化したHMDS(ヘキサメチルジンラザン)雰囲気の中で所定時間(例えば120sec)、所定温度(例えば110℃)に加熱処理され、基板Gとフォトレジストとの密着性向上のための疎水化処理がなされる(図3のステップS2)。この疎水化処理により、後段のリフロー処理(レジスト溶解)の進行が適度に抑えられ、線幅の広がりが適度なものとなされる。
【0039】
疎水化処理ユニット6における疎水化処理がなされると、高温状態の基板Gはクールユニット(Col)7に搬送され、所定の温度に冷却される(図3のステップS3)。
所定の温度に冷却された基板Gは、続いて、クールユニット(Col)7に隣接するリフローユニット(RF)8或いはバッファユニット(Buf)9に搬送される。基板Gがバッファユニット(Buf)9に搬送された場合には、基板搬送部4により適宜空きがあるリフローユニット(RF)8に搬送される。
【0040】
リフローユニット(RF)8においては、基板Gは所定の温度(例えば21.5℃)に温調され、所定濃度に調整された溶剤雰囲気として、例えばシンナーガスがチャンバ内に導入されて雰囲気置換され、処理レシピに規定された所定時間(例えば240sec)、レジスト206、変質層207がシンナーガスに曝される。
【0041】
ここで、変質層207は、BL露光ユニット(BL)5での露光処理によって改質され、有機溶剤がレジスト層206に浸透しやすい状態となされている。
即ち、レジスト層206において、有機溶剤であるシンナーの吸収率が向上しており、レジスト層206全体に速くシンナーが浸透する。
このため、溶解(フロー)が進行し、ターゲットTg(所定エリア)をマスクするレジストパターンが形成される(図3のステップS4)。
【0042】
リフローユニット(RF)8での処理が終わると、基板Gは基板搬送部4により一度バッファユニット(Buf)9に搬送され、さらに平流し搬送路により熱処理装置(HP/Col)10に搬送され、加熱によるレジストパターンの定着処理が行われる(図3のステップS5)。そして、冷却後、再び基板搬送部4によりカセットステーション2のカセットに戻され、その後、エッチング装置52に搬送される。
【0043】
このように本発明の基板処理方法に係る実施の形態によれば、フォトレジスト206を溶解するリフロー処理の前に、レジストの変質層207に300〜400nmのいずれかの波長のブラックライト(光線)を所定の露光量(少なくとも232.9(mJ/cm2))で露光する処理を行い、レジスト層206に対し有機溶剤が容易に浸透するよう変質層207が改質される。即ち変質層207を除去せずともレジスト層206への有機溶剤の吸収率が向上し、リフロー処理において有機溶剤がレジスト全体に浸透する。
その結果、安定した溶解を行うことができると共に、従来のように変質層を除去する工程を必要としないために、掛かるコストを低減し、生産効率を向上することができる。
【0044】
尚、前記実施の形態では、BL露光ユニット(BL)5での処理後に疎水化処理ユニット(AD)6での疎水化処理を行う形態を示したが、この疎水化処理は、BL露光ユニット(BL)5での処理前に実施してもよい。
或いは、疎水化処理はパターン線幅を適度に抑えるために実施するものであるため、本発明に係る基板処理方法においては、リフロー処理前の疎水化処理は必ずしも実施しなくてよい。
【0045】
また、前記実施の形態においては、図2に示すようにBL露光ユニット(BL)5は、平流しにより基板Gを搬入し、基板Gをチャンバ内に収容した後、移動停止状態の基板Gに対して露光処理を行うようにしたが、その形態に限らず、平流しされる状態の基板Gに対して露光処理を行うようにしてもよい。
或いは、平流しによる基板Gの搬入出の構成に限らず、搬送ロボットにより基板Gをチャンバ内に搬入、載置し、そのチャンバ内でブラックライトの照射(露光処理)を行うようにしてもよい。
【0046】
また、前記実施の形態においては、波長300〜400nmの光源として、ブラックライトを用いるものとしたが、本発明にあっては、波長300〜400nmの光源として、i線(波長365nmのUV光)を用いてもよい。
【実施例】
【0047】
続いて、本発明に係る基板処理方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記した本発明の基板処理方法に係る実施の形態について、その効果を検証した。
【0048】
(実施例1)
実施例1では、前記実施の形態と同様に、リフロー処理の前処理として、基板の被処理面に対し所定の露光量のブラックライトを照射(露光)し、その後、疎水化処理を行った。そして、リフロー処理後において、ターゲットとなる部位に対するレジストのフロー状態を検証した。
【0049】
実験条件として、ブラックライトを照射するブラックライト管は、出力40W、ワット密度0.00776(W/cm2)のものを2本用い、このブラックライト管と基板(50mm角)の被処理面とのギャップを8mmに固定した。
また、露光時間として5、10、15、20、30、60、90(sec)の各条件を設け、各条件について、ターゲット(チャネル部(Ch部)、配線部)におけるレジストのフロー状態を観察した。
また、各露光時間の条件について、2回(施行1、施行2)ずつ実験を行い検証した。
【0050】
尚、疎水化処理は基板を110℃に加熱し、120秒間、HMDS(ヘキサメチルジンラザン)雰囲気に曝すことにより実施した。
また、リフロー処理は、基板を載置するステージの温度を21.5℃とし、チャンバ内のシンナー濃度が90%となるようシンナーガスを導入し、240secの間、レジストをフローさせた。
【0051】
この実験の結果を表1に示す。尚、表1に記載する結果として、リフロー処理の結果、フロー(溶解)が完全になされた場合を○、不完全な場合を×とする。
また、露光量は、露光量(mJ/cm2)=ワット密度(W/cm2)×処理時間(sec)×1000の計算式に基づき算出した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示すように、2回の施行において、チャネル部(ch部)、配線部共に、露光時間が30sec以上の場合、即ち、露光量が少なくとも232.9(mJ/cm2)の場合に、リフロー工程におけるフロー処理は完全に実行された。
また、この結果により、露光量が少なくとも232.9(mJ/cm2)になると、レジストが十分に親溶剤性となる効果が現れることを確認した。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で用いた装置構成において、ブラックライトの露光時間を0秒として、その後、実施例1と同じ条件で基板に疎水化処理(AD)、リフロー処理を続けて行った。そして、リフロー(RF)処理後において、ターゲットとなる部位に対するレジストのフロー状態を検証した。
尚、この比較例1に係る実験は2回(施行1、施行2)行った。
【0055】
この実験の結果を表2に示す。尚、表2に記載する結果として、リフロー処理の結果、フロー(溶解)が完全になされた場合を○、不完全な場合を×とする。
【0056】
【表2】

【0057】
表2に示すように、2回の施行において、チャネル部(ch部)、配線部共に、リフロー工程におけるフロー処理は完全になされなかった。
【0058】
以上の実施例の結果から、本発明の基板処理方法によれば、前記実施の形態に示した効果を得ることができると確認した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、複数回に亘りフォトレジストパターンを形成する工程に適用することができ、電子デバイス製造業界等において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明に係る基板処理方法を実施するリフローパターン形成装置のレイアウトを示す平面ブロック図である。
【図2】図2は、図1のリフローパターン形成装置が具備するBL露光ユニットの概略構成を示す断面図である。
【図3】図3は、リフローパターン形成装置による基板処理工程を示すフローである。
【図4】図4は、本発明に係る基板処理方法による処理工程を説明するための基板断面図である。
【図5】図5は、TFT形成におけるリフロー処理工程を説明するための基板断面図である。
【図6】図6は、図5の工程後、TFT形成の処理工程を説明するための基板断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 リフローパターン形成装置
2 カセットステーション
3 基板処理部
4 基板搬送部
5 BL露光ユニット
6 疎水化処理ユニット
7 クールユニット
8 リフローユニット
9 バッファユニット
10 熱処理装置
11 バッファユニット
206 フォトレジストパターン、レジスト層
207 変質層
G 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたフォトレジストパターンを溶解し、新たなフォトレジストパターンを形成する基板処理方法であって、
下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターンに対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップと、
前記フォトレジストパターンを溶剤雰囲気に曝して溶解し、所定エリアをマスクするステップとを実行することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターンに対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップにおいて、
露光量は、少なくとも232.9(mJ/cm2)となされることを特徴とする請求項1に記載された基板処理方法。
【請求項3】
前記下地膜のエッチングマスクとして使用された前記フォトレジストパターンに対し、300〜400nmのいずれかの波長の光線を露光するステップにおいて、
前記光線としてブラックライトを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−218340(P2009−218340A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59409(P2008−59409)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】