説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】炉口部近傍に於ける基板温度の面内均一性を図ることで基板の処理枚数を増大させ、基板の処理効率を向上させる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚の基板13を保持する基板保持具5と、該基板保持具が搬入される処理炉1と、該処理炉に設けられ基板を加熱する加熱部2と、前記処理炉内に処理ガスを供給するガス供給部8,11と、前記処理炉内を排気する排気部12と、前記加熱部と前記ガス供給部と前記排気部とを制御する制御部とを具備し、前記基板保持具の下部にはダミー基板13bが保持されると共に、前記基板保持具の下端にボートキャップ6が設けられ、少なくともダミー基板と前記ボートキャップとの間に伝熱板34が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ、ガラス基板等の基板に薄膜の生成、不純物の拡散、アニール処理、エッチング等の処理を行い、半導体装置を製造する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置としては、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置、或は基板を所定枚数一度に処理するバッチ式の基板処理装置があり、更にバッチ式の基板処理装置として、縦型処理炉を具備する縦型基板処理装置がある。
【0003】
先ず、図8に於いて、従来の基板処理装置に於ける処理炉について説明する。
【0004】
処理炉1は筒状のヒータ2を有し、該ヒータ2の内側には、均熱管3と反応管4とが同心多重に設けられており、該反応管4にボート5が搬入される様になっている。該ボート5はボートキャップ6を介してシールキャップ7に載置され、該シールキャップ7は図示しないボートエレベータによって昇降可能に設けられている。
【0005】
前記反応管4の上端にはガス導入管8が挿通され、前記反応管4の下端には排気口9が設けられている。前記ガス導入管8の下端はガス供給管11と接続され、前記排気口9はガス排気管12と接続されている。
【0006】
前記ボート5は前記反応管4より引出した状態で、所定枚数のウェーハ13を前記ボート5に装填し、前記ボートエレベータにより前記ボート5を上昇させ、前記反応管4内に搬入する。前記ヒータ2で前記反応管4内を所定の温度に加熱し、前記ガス供給管11、前記ガス導入管8により反応性ガスを前記反応管4内に導入し、ウェーハ13表面に薄膜を生成し、反応後のガスは前記排気口9、前記ガス排気管12を経て排気される。
【0007】
前記ボート5に保持されたウェーハ13は前記ヒータ2によって熱処理される。ウェーハ13は前記ヒータ2の熱放射によって加熱されるが、ウェーハ13の中心部へは前記ヒータ2の熱放射が殆ど届かず、ウェーハ13の中心部は主に周辺部からの熱伝導によって加熱される為、ウェーハ13の中心部は温度上昇速度が遅くなる。
【0008】
又、構造上前記ボート5上方及び下方には熱源が存在しない為、該ボート5上方のTOP領域と該ボート5下方のBOTTOM領域では、前記ヒータ2の加熱による温度安定時に熱逃げにより温度が低下し、面内温度分布が悪化する。
【0009】
尚、TOP領域はヒータ断熱材(図示せず)で密閉されているが、BOTTOM領域に於いてはウェーハ13の出入れの為のOリング等のシール部(図示せず)を水冷する必要がある為、特に熱逃げにより温度が低下し易く、面内温度分布が悪化する。TOP領域とBOTTOM領域のウェーハ13の面内温度分布は、図9に示される様に、ウェーハ13の中心部の温度が十分に上昇せず、外周部の温度より低くなる傾向がある。
【0010】
この為、通常はTOP領域とBOTTOM領域にダミーウェーハ13bを装填し、温度特性の良好な中間部分にプロダクトウェーハ13aを保持して処理が行われる。
【0011】
ウェーハ13の処理に於いては、前記ボート5に保持されるプロダクトウェーハ13aは多ければ多い程よく、少しでも多くのプロダクトウェーハ13aを前記ボート5に保持することで生産性が向上する。
【0012】
然し乍ら、プロダクトウェーハ13aの装填枚数を増加させる為、ウェーハ13間のピッチを狭くした場合には、反応性ガスの拡散性やウェーハ搬送ロボットの動作範囲等による制約がある。又、ボート5の全長を長くする場合には基板処理装置自体の装置高さに制約がある。又、BOTTOM領域の下側に別途ヒータ2を設ける場合には、構造が複雑となり、又高コストとなり、又メンテナンスが困難であり、又前記ボート5の回転軸に対する対応が困難となり、更に該ボート5の交換ができないという問題があった。
【0013】
又、前記シールキャップ7の断熱性を向上させた場合には、ウェーハ13の積層方向の温度分布は向上するが、ウェーハ13の面内温度分布は改善されない。又、従来装填されていたダミーウェーハ13bの更に下方にダミーウェー13bを装填する場合には、ウェーハ搬送ロボットの動作範囲の制約により限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−71939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は斯かる実情に鑑み、炉口部近傍に於ける基板温度の面内均一性を図ることで基板の処理枚数を増大させ、基板の生産性を向上させる基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、複数枚の基板を保持する基板保持具と、該基板保持具が搬入される処理炉と、該処理炉に設けられ基板を加熱する加熱部と、前記処理炉内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理炉内を排気する排気部と、前記加熱部と前記ガス供給部と前記排気部とを制御する制御部とを具備し、前記基板保持具の下部にはダミー基板が保持されると共に、前記基板保持具の下端にボートキャップが設けられ、少なくともダミー基板と前記ボートキャップとの間に伝熱板が設けられた基板処理装置に係るものである。
【0017】
更に又本発明は、第1の搬送機構が下部に保持されたダミー基板と下端に設けられたボートキャップとの間に伝熱板が設けられた基板保持具に複数枚の基板を移載する工程と、第2の搬送機構が前記基板保持具を処理室に搬入する工程と、ガス供給部が前記処理室に処理ガスを供給する工程と、加熱部が基板を加熱する工程と、前記第2の搬送機構が前記処理室から前記基板保持具を搬出する工程と、前記第1の搬送機構が前記基板保持具から基板を取出す工程とを有する半導体装置の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数枚の基板を保持する基板保持具と、該基板保持具が搬入される処理炉と、該処理炉に設けられ基板を加熱する加熱部と、前記処理炉内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理炉内を排気する排気部と、前記加熱部と前記ガス供給部と前記排気部とを制御する制御部とを具備し、前記基板保持具の下部にはダミー基板が保持されると共に、前記基板保持具の下端にボートキャップが設けられ、少なくともダミー基板と前記ボートキャップとの間に伝熱板が設けられたので、前記基板保持具下部に保持された基板からの熱逃げを防止し、前記基板保持具下部に保持された基板の面内温度均一性を向上させることで、温度特性が良好な領域を拡大させることができ、1バッチ当りの基板の処理枚数を増加させることで生産性の向上を図ることができる。
【0019】
更に又本発明によれば、第1の搬送機構が下部に保持されたダミー基板と下端に設けられたボートキャップとの間に伝熱板が設けられた基板保持具に複数枚の基板を移載する工程と、第2の搬送機構が前記基板保持具を処理室に搬入する工程と、ガス供給部が前記処理室に処理ガスを供給する工程と、加熱部が基板を加熱する工程と、前記第2の搬送機構が前記処理室から前記基板保持具を搬出する工程と、前記第1の搬送機構が前記基板保持具から基板を取出す工程とを有するので、基板を加熱する工程では前記基板保持具下部に保持された基板からの熱逃げを防止し、前記基板保持具下部に保持された基板の面内温度均一性を向上させることで、温度特性が良好な領域を拡大させることができ、基板の生産性を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る基板処理装置の斜視図である。
【図2】該基板処理装置に用いられる処理炉を示す立断面図である。
【図3】炭化シリコン、石英、シリコンの熱伝導率等を比較する表である。
【図4】(A)は波長毎の黒体の単色射出能の強さを温度別に示したグラフであり、(B)は炭化シリコン、石英、シリコンの波長毎の熱放射率を比較したグラフである。
【図5】前記処理炉の要部拡大立断面図であり、(A)は該処理炉の下部を示し、(B)はボートの下部を示している。
【図6】本発明の実施例に係る伝熱板の第1の変形例であり、(A)は該伝熱板の側面図を示し、(B)は該伝熱板の平面図を示している。
【図7】本発明の実施例に係る伝熱板の第2の変形例であり、(A)は該伝熱板の側面図を示し、(B)は該伝熱板の平面図を示している。
【図8】従来の処理炉を示す立断面図である。
【図9】従来の処理炉の要部拡大立断面図であり、(A)は該処理炉の下部を示し、(B)はボートの下部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0022】
先ず、図1に於いて、本発明に係る基板処理装置の一例について説明する。尚、図1中、図8中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
基板処理装置15は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筐体16を有する。前記基板処理装置15には、例えばSi(シリコン)又はSiC(炭化シリコン)等で構成された基板としてのウェーハ13(図2参照)を収納する基板収容器として、フープ(以下、ポッドと称す)17が使用される。前記筐体16の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、該ポッドステージ18にはポッド17が搬送される。ポッド17には、例えば25枚のウェーハ13が収納され、蓋が閉じられた状態で前記ポッドステージ18にセットされる。
【0024】
前記筐体16内の正面であって、前記ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置19が配置されている。又、該ポッド搬送装置19の近傍にはポッド収納棚21、ポッドオープナ22及び基板枚数検知器23が配置されている。前記ポッド収納棚21は前記ポッドオープナ22の上方に配置され、ポッド17を複数個載置した状態で保持する様に構成され、前記基板枚数検知器23は、前記ポッドオープナ22に隣接して配置される。前記ポッド搬送装置19は前記ポッドステージ18と前記ポッド収納棚21と前記ポッドオープナ22との間でポッド17を搬送し、前記ポッドオープナ22はポッド17の蓋を開けるものであり、前記基板枚数検知器23は蓋を開けられたポッド17内のウェーハ13の枚数を検知する様になっている。
【0025】
前記筐体16内には、第1の搬送機構としての基板移載機24、基板保持具としてのボート5が配置されている。前記基板移載機24は、アーム(ツイーザ)20を有し、図示しない駆動手段により昇降可能且つ回転可能な構造となっている。前記アーム20は、例えば5枚のウェーハ13を取出すことができ、前記アーム20を動かすことにより、前記ポッドオープナ22の位置に置かれたポッド17及び前記ボート5間にてウェーハ13を搬送する。
【0026】
前記ボート5は、例えばSiO2 (石英)やSiC等の耐熱性材料で構成されており、複数枚のウェーハ13を水平姿勢で、且つ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に積上げ、保持する様に構成されている。尚、前記ボート5の下端には、例えばSiO2 やSiC等の耐熱性材料で構成された断熱部材としてのボートキャップ6(図2参照)が設けられており、ヒータ2(図2参照)からの熱が後述する処理炉1の下方側に伝わり難くなる様に構成されている。
【0027】
前記筐体16内の背面側上部には前記処理炉1が配置され、該処理炉1内に複数枚のウェーハ13が保持された前記ボート5が搬入され、熱処理が行われる。
【0028】
次に、図2に於いて、前記基板処理装置15の前記処理炉1について説明する。尚、図2中、図8中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
該処理炉1は加熱部として、発熱体25と該発熱体25の周囲を覆う断熱体26により構成された前記ヒータ2を有し、該ヒータ2は円筒形状をしており、支持部材としてのヒータベース27に垂直に設置されている。
【0030】
前記ヒータ2の内側には均熱管3が同心に配設され、該均熱管3の内側には反応管4が配設される。前記均熱管3は、例えばSiO2 又はSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し、下端が開口した円筒形状となっている。又、前記反応管4は、例えばSiO2 又はSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し、下端が開口した円筒形状となっている。
【0031】
該反応管4の下端開口部は炉口部を形成し、前記反応管4の内側に処理室28が画成される。又、該処理室28には前記ボート5が収納可能であり、該ボート5にはウェーハ13が水平姿勢で多段に保持される様になっており、前記ボート5の下端には前記ボートキャップ6が設けられている。
【0032】
前記反応管4の上端には、ガス導入管8が挿通され、該ガス導入管8は下端でガス供給管11と接続され、該ガス供給管11は図示しないガス供給源に接続されており、前記ガス導入管8、前記ガス供給管11とでガス供給部が構成される。又、前記反応管4の下端には排気口9が設けられ、該排気口9に前記処理室28の雰囲気を排気するガス排気管12が接続され、該ガス排気管12は図示しない真空排気装置に接続されており、前記ガス排気管12と前記真空排気装置とで排気部が構成される。
【0033】
前記反応管4の下端部には、炉口蓋体としてのシールキャップ7が設けられている。該シールキャップ7は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。該シールキャップ7の上面には、前記反応管4の下端と当接するOリング等のシール部材29が設けられる。
【0034】
前記シールキャップ7の下側には、前記ボート5を回転させる回転機構31が設けられている。該回転機構31の回転軸32は前記シールキャップ7を貫通しており、前記回転軸32は前記ボートキャップ6を介して前記ボート5を支持し、前記ボートキャップ6を介して前記ボート5及びウェーハ13を一体に回転させる様に構成されている。
【0035】
又、前記反応管4の下方には、第2の搬送機構としてのボートエレベータ(図示せず)が設けられ、前記シールキャップ7は前記ボートエレベータにより垂直方向に昇降される様に構成され、該ボートエレベータは前記ボート5を前記処理室28に対して搬入、搬出可能となっている。
【0036】
前記ボート5には、所定ピッチでウェーハ13を保持する為の保持部であるスロット(図示せず)が形成され、該スロットを介して前記ボート5にウェーハ13が保持される様になっている。前記スロットの高さ方向中央部には所定枚数のプロダクトウェーハ13aが保持され、前記スロットの高さ方向上部のTOP領域、及び下部のBOTTOM領域には、それぞれ所定枚数のダミーウェーハ13b,13bが保持されている。
【0037】
又、前記ボート5には、最上段のスロットの上方と、最下段のスロットの下方にそれぞれ伝熱板ホルダ33,33が形成され、該伝熱板ホルダ33,33にはそれぞれ円板状の伝熱板34,34が保持される様になっている。
【0038】
該伝熱板34は、シリコン原子を含有していることが望ましい。該伝熱板34がシリコン原子を含有することによって、ウェーハ(基板)13やウェーハ13上に生成する薄膜に悪影響を与えることを防止することができる。又、ボート(基板保持具)5と同様の材料になり、高温に加熱されたとしても膨張率が遜色無い値となるので、伝熱板34・ボート5・ウェーハ13が擦れることにより発生するパーティクルの低減や、伝熱板34・ボート5・ウェーハ13の著しい膨張差による各部の損傷を防ぐことができる。これにより、クリーニングや部品交換等のメンテナンス時間を低減し、スループットの低下を防ぐことができる。
【0039】
該伝熱板34は、ウェーハ13よりも熱伝導率が大きく、熱放射率が高い材質であることが望ましく、又効果的に熱を伝える為、前記伝熱板34は所定の厚み、例えば3mm程度の厚みを有することが望ましい。
【0040】
以下、図3、図4(A)(B)に於いて、該伝熱板34の好適な材質について検討する。
【0041】
図3は、SiC(炭化シリコン)、SiO2 (石英)、Si(シリコン)の3つの材質について、熱伝導率等を比較した表である。尚、図3に示される熱伝導率は、各材質の代表値を示している。
【0042】
図3に示される様に、SiO2 の熱伝導率はSiの熱伝導率の1/10以下であり、SiCの熱伝導率はSiの熱伝導率の3倍以上となっている。従って、熱伝導率に於いてはSiCが特に優れていると言える。又、SiCは3つの材質の中で最も比熱が小さいので、加熱速度に関しても優れていると言える。
【0043】
又、図4(A)は波長毎の黒体の単色射出能の強さを温度別に示したグラフであり、図4(B)はSiC、SiO2 、Siの3つの材質について、波長毎の熱放射率を比較したグラフである。尚、図4(B)に示される熱放射率は、各材質の代表値を示している。
【0044】
前記発熱体25が放射するエネルギは灰色体が放射するエネルギと考えることができる。灰色体のエネルギ波長分布は黒体と相似形となるので、黒体の単色射出能について考察する。
【0045】
例として、800Kに於ける放射エネルギを考える。温度当りの放射エネルギは、プランクの法則により求まる曲線により囲まれた部分の面積を求めることで得ることができ(ステファン・ボルツマンの法則)、図4(A)中、800Kに於ける放射エネルギは、波長が2μm〜5μm付近の波長領域で比較的多くなっているのが分る。
【0046】
800Kの場合の2μm〜5μm付近の波長領域に於ける各材質の熱放射率を比較すると、SiO2 は5μm付近の波長領域に於いては高い熱放射率を有しているが、2μm付近の波長領域の熱放射率は極めて低い値となっている。又、Siは2μm〜5μm付近の波長領域に於いて熱放射率が低くなる傾向があるのに対し、SiCは2μm〜5μm付近の波長領域に於いて熱放射率が比較的高い値となっている。従って、熱放射率は、2μm〜5μm付近の波長領域に於いて、SiCが他の2つの材質に対して優れていると言える。
【0047】
以上の結果により、SiCは他の2つの材質と比較して、熱伝導率、熱放射率共に優れているので、前記伝熱板34はSiC製とするのが望ましい。
【0048】
次に、上記構成に係る前記処理炉1を用い、半導体デバイスの製造工程の1工程として、CVD法によりウェーハ13上に薄膜を形成する方法について説明する。尚、以下の説明に於いて、前記基板処理装置15を構成する前記ガス供給部、前記排気部、前記加熱部等の各部の動作は、図示しない制御部により制御される。
【0049】
ウェーハ13はポッド17に所要枚数(例えば25枚)収納された状態で搬入され、前記ポッド搬送装置19により前記ポッド収納棚21等所要部位に格納され、前記基板移載機24によりポッド17内のウェーハ13が前記ボート5に移載される。
【0050】
所定枚数のウェーハ13が前記ボート5に保持されると、所定枚数のウェーハ13を保持した前記ボート5は、ボートエレベータ(図示せず)によって持上げられて前記処理室28に搬入される。この状態では、前記シールキャップ7は前記シール部材29を介して前記炉口部を気密に閉塞した状態となる。
【0051】
前記処理室28が所望の圧力(真空圧)となる様に、前記ガス排気管12を介して真空排気装置(図示せず)によって真空排気され、又前記処理室28が300〜1000℃、例えば600℃となる様に前記ヒータ2によって加熱される。
【0052】
図5(A)(B)は、例として、BOTTOM領域に前記伝熱板34を設けた場合を示しており、前記ヒータ2により加熱が開始されると、前記発熱体25より前記処理室28の軸心方向に向って熱が放射される。
【0053】
前記発熱体25より放射された熱により、前記ボート5に保持されたウェーハ13及び前記伝熱板34の外周部が加熱され、ウェーハ13及び前記伝熱板34の外周部より中心部に向って熱が伝導する。
【0054】
この時、前記伝熱板34はSiC製であり、この熱伝導率はウェーハ13よりも高いので、前記伝熱板34は短時間で中心部迄加熱される。更に、該伝熱板34は熱放射率が高くなっているので、加熱された該伝熱板34の上面及び下面より、ウェーハ13の積層方向に対して熱が放射される。
【0055】
尚、図示はしないが、TOP領域に設けられた伝熱板34に於いても、短時間で中心部迄加熱され、該伝熱板34の上面及び下面よりウェーハ13の積層方向に対して熱が放射される。
【0056】
続いて、前記回転機構31により、前記ボート5が回転されることで、ウェーハ13が回転される。
【0057】
次いで、処理ガス供給源(図示せず)から処理ガスが供給され、処理ガスは前記ガス供給管11、前記ガス導入管8を流通して前記処理室28に導入される。導入された処理ガスは、前記処理室28を降下し、前記ガス排気管12から排気される。処理ガスは前記処理室28を通過する際にウェーハ13の表面と接触し、熱CVD反応によってウェーハ13の表面上に堆積され、薄膜が生成される。
【0058】
予め設定された処理時間が経過すると、不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスが供給され、前記処理室28が不活性ガスに置換されると共に、該処理室28の圧力が常圧に復帰される。
【0059】
その後、ボートエレベータ(図示せず)により前記シールキャップ7が降下され、前記炉口部が開口されると共に、処理済ウェーハ13が前記ボート5に保持された状態で前記処理室28より引出される。降下された前記ボート5より前記基板移載機24により、処理済ウェーハ13が払出され、ポッド17に移載される。
【0060】
処理済ウェーハ13を収納したポッド17は、前記ポッド搬送装置19を経て前記基板処理装置15外部に搬送される。
【0061】
上記した基板処理工程に於いて、前記ボート5のTOP領域とBOTTOM領域に前記伝熱板ホルダ33,33を形成し、該伝熱板ホルダ33,33に前記伝熱板34,34を設けることで、加熱時には該伝熱板34,34よりウェーハ13の積層方向に対して熱が放射されるので、TOP領域とBOTTOM領域のウェーハ13に対しては、外周部からの熱伝導に加えて前記伝熱板34,34からの熱放射によっても熱が伝達されることとなり、TOP領域とBOTTOM領域のウェーハ13の加熱速度を上昇させることができる。
【0062】
更に、TOP領域とBOTTOM領域に前記伝熱板34,34を設けることで、TOP領域とBOTTOM領域に於ける熱逃げの影響を軽減することができるので、前記処理室28の温度安定時に於けるTOP領域とBOTTOM領域のウェーハ13中心部の温度低下を防止することができる。TOP領域とBOTTOM領域に於けるウェーハ温度の面内均一性を向上させることで、TOP領域とBOTTOM領域の温度特性を改善し、ウェーハ13の積層方向に於ける温度特性の良好な領域を拡大することができる。
【0063】
従って、温度特性が良好な領域を拡大させることができるので、プロダクトウェーハ13aの保持枚数を増加させると共に、ダミーウェーハ13bの保持枚数を減少させることができる。プロダクトウェーハ13aの保持枚数を増加させることで、1バッチ当りのウェーハ処理枚数が増加し、生産性の向上を図ることができると共に、ウェーハ13の1枚当りの消費エネルギを削減することができる。
【0064】
又、TOP領域とBOTTOM領域に於けるウェーハ13の加熱速度が上昇することで、温度リカバリ時間を短縮することができるので、基板処理に於けるレシピ時間の短縮を図ることができ、ウェーハ13の処理効率を向上させることができる。
【0065】
又、本実施例に於ける前記伝熱板34は、Si原子を含有しているので、基板処理時にウェーハ13や、ウェーハ13に生成される薄膜に与える影響を抑制することができる。
【0066】
更に、本実施例は、前記伝熱板34を設けるだけでよいので、ウェーハ13の積層ピッチを変更せず、ウェーハ13の均熱区間を保ったままで、TOP領域とBOTTOM領域に於ける温度特性を改善することができる。
【0067】
尚、本実施例では、前記ボート5のTOP領域とBOTTOM領域の両方に前記伝熱板34を設けているが、該伝熱板34は熱逃げの影響が特に大きいBOTTOM領域にのみ設ける様にしてもよい。
【0068】
又、本実施例では、所定の厚みを有する前記伝熱板34を1枚のみ設けているが、SiC製の薄板を複数設ける場合でも前記伝熱板34と同様の効果を得ることができる。
【0069】
図6(A)(B)は、BOTTOM領域に於ける該伝熱板34の第1の変形例を示している。
【0070】
図6(A)(B)に示される伝熱板35は、円板部36下面の中心部に、該円板部36と同心な円筒状の凸部37が形成された形状となっている。
【0071】
該凸部37が形成されたことで、前記発熱体25から伝達される熱の受熱面積が増加し、又前記円板部36の中心部にあることで、前記伝熱板35の中心部により多くの熱を供給できる。更に、前記凸部37を円筒状としたことで、受熱面積に対する体積が小さくなるので、前記伝熱板35の加熱速度をより向上させることができ、BOTTOM領域に於けるウェーハ13の温度上昇をより早めることができる。
【0072】
又、図7(A)(B)は前記伝熱板34の第2の変形例を示しており、図7(A)(B)に示される伝熱板38は、前記円板部36下面の中心部に、該円板部36と同心な棒状の凸部39が形成された形状となっている。
【0073】
前記伝熱板38も前記伝熱板35と同様、前記凸部39が前記円板部36の中心部に形成されたことで、前記発熱体25から伝達される熱の受熱面積が増加し、前記伝熱板38の中心部により多くの熱を供給できるので、前記伝熱板38の加熱速度をより向上させることができ、TOP領域とBOTTOM領域に於けるウェーハ13の温度上昇をより早めることができる。
【0074】
尚、図6(A)(B)及び図7(A)(B)に示される変形例では、前記円板部36下面の中心部に、それぞれ円筒状の凸部37及び棒状の凸部39が形成されているが、前記発熱体25からの熱放射を受けられる様、前記円板部36下面の中心部に凸部が形成されていればよい。従って、凸部の形状は例えば三角柱状、四角柱状、円錐状等であってもよく、或は板を放射状に組合わせて凸部を形成してもよい。
【0075】
又、凸部の表面積を増加させ、前記発熱体25からの熱放射を受ける面積を増加させることで、より伝熱板の加熱速度を向上させることができる。
【0076】
又、上記ではBOTTOM領域に於ける伝熱板下面の中心に凸部を形成しているが、TOP領域で熱逃げの影響が大きい場合には、TOP領域の伝熱板に凸部を形成してもよい。この場合には、伝熱板上面の中心に凸部を設けることで、同様の効果を得ることができる。
【0077】
尚、上述の実施例では、CVD法による成膜例を示したが、プラズマを用いる処理であっても、原子層堆積による成膜、酸素ガスや水蒸気を用いた酸化処理、酸素原子を含有するガスと水素ガスを含有するガスとを用いた選択酸化処理等を行う処理装置についても本発明を適用することができる。
【0078】
又、上述の実施例では、300〜1000℃、例えば600℃に加熱することを記載したが、これ以外の温度で処理を行う装置に本発明を適用することで、基板保持具の炉口部近傍の基板温度の面内均一性を向上させつつ、基板保持具の縦方向の温度均一性を向上させることができる。基板の面内温度と基板保持具の縦方向の温度の均一性を向上させることで、基板の処理枚数を増加させ、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0079】
(付記)
又、本発明は以下の実施の態様を含む。
【0080】
(付記1)複数枚の基板を保持する基板保持具と、該基板保持具が搬入される処理炉と、該処理炉に設けられ基板を加熱する加熱部と、前記処理炉内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理炉内を排気する排気部と、前記加熱部と前記ガス供給部と前記排気部とを制御する制御部とを具備し、前記基板保持具の下部にはダミー基板が保持されると共に、前記基板保持具の下端にボートキャップが設けられ、少なくともダミー基板と前記ボートキャップとの間に伝熱板が設けられたことを特徴とする基板処理装置。
【0081】
(付記2)複数枚の基板を保持する基板保持具と、該基板保持具が搬入される処理炉と、該処理炉に設けられ基板を加熱する加熱部と、前記処理炉内に処理ガスを供給するガス供給部と、前記処理炉内を排気する排気部と、前記加熱部と前記ガス供給部と前記排気部とを制御する制御部とを具備し、少なくとも前記基板保持具に保持される最上段の基板よりも上方か、前記基板保持具に保持される最下段の基板よりも下方のいずれか一方に伝熱板が設けられたことを特徴とする基板処理装置。
【0082】
(付記3)前記伝熱板はシリコン原子を含有する付記1又は付記2の基板処理装置。
【0083】
(付記4)前記伝熱板はシリコン原子と炭素原子を含有する付記1又は付記2の基板処理装置。
【0084】
(付記5)前記伝熱板の反基板側面に凸部を形成する付記1〜付記4のうちいずれかの基板処理装置。
【0085】
(付記6)前記伝熱板は円板部と凸部とからなり、該凸部は前記円板部と同心である付記5の基板処理装置。
【0086】
(付記7)前記凸部の前記円板部と前記凸部との境目の形状は円形である付記6の基板処理装置。
【0087】
(付記8)基板を処理する処理室に搬入される基板保持具であって、複数の基板を積層し、保持する保持部と、少なくとも最下端の該保持部よりも下方に設けられた伝熱板とを有することを特徴とする基板保持具。
【0088】
(付記9)基板を処理する処理室に搬入される基板保持具であって、少なくとも最上段の基板よりも上方か、最下段の基板よりも下方のいずれか一方に伝熱板が設けられたことを特徴とする基板保持具。
【0089】
(付記10)前記伝熱板の反基板側面に凸部を形成する付記8又は付記9の基板保持具。
【0090】
(付記11)前記伝熱板は、円板部と凸部とからなり、該凸部は前記円板部と同心である付記10の基板保持具。
【0091】
(付記12)前記凸部の前記円板部と前記凸部との境目の形状は円形である付記11の基板保持具。
【0092】
(付記13)円板部と凸部とからなり、該凸部は前記円板部と同心であることを特徴とする伝熱板。
【0093】
(付記14)前記凸部の前記円板部と前記凸部との境目の形状は円形である付記13の伝熱板。
【符号の説明】
【0094】
1 処理炉
2 ヒータ
3 均熱管
4 反応管
5 ボート
6 ボートキャップ
13 ウェーハ
15 基板処理装置
28 処理室
34 伝熱板
35 伝熱板
37 凸部
38 伝熱板
39 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を保持する基板保持具と、
該基板保持具が搬入される処理炉と、
該処理炉に設けられ基板を加熱する加熱部と、
前記処理炉内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理炉内を排気する排気部と、
前記加熱部と前記ガス供給部と前記排気部とを制御する制御部とを具備し、
前記基板保持具の下部にはダミー基板が保持されると共に、
前記基板保持具の下端にボートキャップが設けられ、少なくともダミー基板と前記ボートキャップとの間に伝熱板が設けられたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記伝熱板はシリコン原子を含有する請求項1の基板処理装置。
【請求項3】
第1の搬送機構が下部に保持されたダミー基板と下端に設けられたボートキャップとの間に伝熱板が設けられた基板保持具に複数枚の基板を移載する工程と、
第2の搬送機構が前記基板保持具を処理室に搬入する工程と、
ガス供給部が前記処理室に処理ガスを供給する工程と、
加熱部が基板を加熱する工程と、
前記第2の搬送機構が前記処理室から前記基板保持具を搬出する工程と、
前記第1の搬送機構が前記基板保持具から基板を取出す工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−80771(P2013−80771A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219126(P2011−219126)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】