説明

基板処理装置

【課題】状況に応じて減圧手法を使い分けることにより、基板に対してプロセス的に悪影響が及ぶことを防止することができる。
【解決手段】制御部77は、第1の処理では、排気機構71を操作して、真空ポンプ69により高速排気させ、第2の処理では、排気機構71を操作して、真空ポンプ69により低速排気させる。第1の処理では基板Wが処理槽1内の処理液に浸漬された状態であるので、短時間で減圧されても基板Wはプロセス的な悪影響を受け難い。一方、第2の処理では、基板Wが処理液から引き上げられ、チャンバ27内に露出した状態であるので、基板Wは急速な減圧によるプロセス的な悪影響を受ける恐れがある。そこで、第2の処理では、低速排気によって徐々に減圧することにより、急速な減圧を抑制して基板
Wに対してプロセス的に悪影響が及ぶことを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)等の基板に対して、処理液により洗浄、エッチング等の処理を行った後、基板を乾燥させる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、処理液を貯留する処理槽と、処理槽を囲うチャンバと、基板を支持して処理位置と乾燥位置とにわたって昇降自在のリフタと、チャンバに連通接続された排気管と、排気管に配設された開閉弁と、排気管に配設され、チャンバ内の気体を排出する真空ポンプと、各部を統括制御する制御部とを備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
上記のように構成された基板処理装置では、処理槽に処理液を貯留した状態でリフタを処理位置に位置させて、基板に対して処理液による処理(例えば、純水洗浄)を行う。そして、開閉弁を開放して真空ポンプを作動させ、チャンバ内を減圧するとともに、溶剤の蒸気、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)の蒸気をチャンバ内に供給する。所定の減圧度に達したら、開閉弁を閉止するとともに真空ポンプを停止させ、チャンバ内を溶剤雰囲気にする。そして、リフタを乾燥位置に上昇させ溶剤蒸気を基板に付着させ、基板に付着している液滴を溶剤で置換させる。その後、基板に付着した溶剤を液滴とともに蒸発させるために、真空ポンプを再始動させるとともに、開閉弁を開放させてチャンバ内をさらに減圧させる。
【特許文献1】特開2007−12859号公報
【特許文献2】特開2007−12860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、真空ポンプを再始動する際には、既にチャンバ内が減圧されている関係上、真空ポンプがその減圧度より低い減圧度で排気できる状態となってから開閉弁を開放させる必要がある。したがって、開閉弁を開放した際には、チャンバ内が急激に減圧されることになり、減圧手段がある側にパーティクルが集中し、チャンバ内で露出された状態の基板にパーティクルが付着して、プロセス的に悪影響が生じることがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、状況に応じて減圧手法を使い分けることにより、基板に対してプロセス的に悪影響が及ぶことを防止することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、処理液により処理された基板を溶剤蒸気により乾燥させる基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽の周囲を囲うチャンバと、基板を支持し、前記処理槽内の処理位置と前記処理槽の上方にあたる乾燥位置とにわたって昇降可能な基板支持機構と、前記チャンバに連通接続された排気管と、前記排気管を介して前記チャンバ内の気体を排気する排気手段と、前記排気管に配設され、排気流量を調整可能な排気機構と、前記基板支持機構を処理位置に移動させた状態における第1の処理では、前記排気機構を操作して高速排気させ、前記基板支持機構を処理位置から乾燥位置に移動させた状態における第2の処理では、前記排気機構を操作して低速排気させる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、基板支持機構を処理位置に移動させた状態における第1の処理では、排気機構を操作して、排気手段により高速排気させ、基板支持機構を乾燥位置に移動させた状態における第2の処理では、排気機構を操作して、排気手段により低速排気させる。第1の処理では基板が処理槽内の処理液に浸漬された状態であるので、短時間で減圧されても基板はプロセス的な悪影響を受け難い。一方、第2の処理では、基板が処理液から引き上げられ、チャンバ内に露出した状態であるので、基板は急速な減圧によるプロセス的な悪影響を受ける恐れがある。そこで、第2の処理では、低速排気によって徐々に減圧することにより、急速な減圧を抑制して基板に対してプロセス的に悪影響が及ぶことを防止することができる。
【0008】
また、本発明において、前記排気機構は、複数の制御弁が並設され、前記制御手段は、前記第1の処理において全ての制御弁を開放し、前記第2の処理において各制御弁を順次に開放することが好ましい(請求項2)。複数の制御弁を全て開放すると高速排気が可能となり、各制御弁を順次に開放すると低速排気が可能となる。複数個の制御弁を同時に開放するか、順次に開放してゆくかの簡易な制御で高速排気と低速排気の減圧手法を使い分けることができる。
【0009】
また、本発明において、前記複数の制御弁は、エアの供給及び排出によって開度を調節可能なエア駆動弁であり、前記制御手段は、前記第2の処理において各制御弁を順次に開放するにあたり、各々の制御弁の開度を徐々に大きくすることが好ましい(請求項3)。各エア制御弁を閉止から開放へ単純に切り替えるのではなく、開度を徐々に大きくしてゆくことにより、階段状に減圧度が低下するのではなく、各階段が傾斜した状態で滑らかに減圧することができる。したがって、圧力変動による悪影響をより抑制できる。
【0010】
また、本発明において、前記排気機構は、エアの供給及び排出によって開度を調節可能な一つのエア駆動弁を備え、前記制御手段は、第1の処理時には前記エア駆動弁の開度を最大とし、第2の処理時には前記エア駆動弁の開度を徐々に大きくしてゆくことが好ましい(請求項4)。一つのエア駆動弁の開度を徐々に大きくすることにより、圧力変動を滑らかにすることができるので、圧力変動による悪影響をより抑制することができる。
【0011】
また、本発明において、前記チャンバ内に溶剤蒸気を供給する溶剤蒸気供給手段と、前記チャンバ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備え、前記第1の処理は、処理液で基板に処理を行った後、前記溶剤蒸気供給手段から溶剤蒸気を前記チャンバ内に供給するまでの処理であり、前記第2の処理は、前記第1の処理の後、前記不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させつつ、基板に凝縮した溶剤蒸気を蒸発させる処理であることが好ましい(請求項5)。溶剤蒸気供給手段から溶剤蒸気をチャンバ内に供給する第1の処理までは、基板が処理液に浸漬された処理位置にあるので高速排気でもよく、その後に不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させつつ溶剤蒸気を蒸発させる第2の処理は、基板がチャンバ内に露出した状態であるので低速排気にする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る基板処理装置によれば、制御手段は、基板支持機構を処理槽内の処理位置に移動させた状態における第1の処理では、排気機構を操作して、排気手段により高速排気させ、基板支持機構を乾燥位置に移動させた状態における第2の処理では、排気機構を操作して、排気手段により低速排気させる。第1の処理では基板が処理槽内の処理液に浸漬された状態であるので、短時間で減圧されても基板はプロセス的な悪影響を受け難い。一方、第2の処理では、基板が処理液から引き上げられ、チャンバ内に露出した状態であるので、低速排気によって徐々に減圧することにより、急速な減圧によるチャンバ内でのパーティクルの集中が抑制される結果、基板へのパーティクルの付着が抑制されて基板に対してプロセス的に悪影響が及ぶことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【0014】
本実施例に係る基板処理装置は、処理液を貯留する処理槽1を備えている。この処理槽1は、処理液を貯留し、起立姿勢とされた複数枚の基板Wを収容可能に構成されている。処理槽1の底部には、複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理液を供給するための二本の噴出管7が配設されている。各噴出管7には、供給管9の一端側が接続され、供給管9の他端側は、処理液供給源15に連通接続されており、その流量が制御弁からなる処理液弁17で制御される。処理液供給源15は、フッ化水素酸や、硫酸・過酸化水素水の混合液などの薬液や、純水などを処理液として供給管9に供給する。
【0015】
処理槽1は、その周囲がチャンバ27で囲われている。チャンバ27は、上部に開閉自在の上部カバー29を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ31は、チャンバ27の上方にあたる「待機位置」と、処理槽1の内部にあたる「処理位置」と、処理槽1の上方であってチャンバ27の内部にあたる「乾燥位置」とにわたって移動可能に構成されている。
【0016】
なお、リフタ31が本発明における基板支持機構に相当する。
【0017】
上部カバー29の下方であってチャンバ27の上部内壁には、一対の溶剤ノズル33と、一対の不活性ガスノズル34とが配設されている。溶剤ノズル33には、供給管35の一端側が連通接続されている。その他端側は、蒸気発生タンク37に連通接続されている。この供給管35には、その上流側から順に、溶剤蒸気の流量を調整するための制御弁からなる蒸気弁38と、溶剤蒸気を加熱するためのインラインヒータ40とが配設されている。なお、供給管35は、従来装置の供給管よりも大径(9.52mm程度)で構成され、供給管35の中における溶剤蒸気の流路抵抗を小さくして溶剤ノズル33への溶剤蒸気の供給が円滑に行われる。供給管35が溶剤蒸気を加熱するインラインヒータ40を備えていることにより、発生された溶剤蒸気が供給管35で凝縮することを軽減でき、溶剤濃度が低下することを防止できる。
【0018】
蒸気発生タンク37は、蒸気発生空間である内部空間を所定温度に温調したり、加熱して溶剤の蒸気を発生させたりする。蒸気発生タンク37の内部空間には、溶剤を供給するための溶剤供給源43が連通接続されている。この例では、溶剤としてイソプロピルアルコール(IPA)が利用されている。なお、溶剤としては、IPAの他に、例えば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)がある。
【0019】
不活性ガスノズル34には、供給管45の一端側が連通接続されている。供給管45の他端側は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源47に連通接続されている。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(N)が挙げられる。不活性ガスの供給量は、供給管45に設けられた不活性ガス弁49によって調整される。不活性ガス弁49の下流側には、インラインヒータ50が取り付けられている。このインラインヒータ50は、不活性ガス供給源47からの不活性ガスを所定温度に加熱する。
【0020】
処理槽1の底部には、排出口57が配設されている。この排出口57には、QDR弁59が取り付けられている。このQDR弁59から処理槽1内の処理液を排出すると、処理液がチャンバ27内の底部に一旦排出される。チャンバ27の底部には、排出管63が取り付けられ、ここには排液弁65が取り付けられている。
【0021】
チャンバ27の一部位には、排気管67が配設されている。排気管67の端部には、本発明における排気手段に相当する真空ポンプ69が取り付けられている。排気管67には、後述する排気機構71が取り付けられている。また、チャンバ27には、減圧状態を解消するための制御弁からなる呼吸弁73が取り付けられているとともに、内部の圧力を検出するための圧力計75が配設されている。
【0022】
上述した処理液弁17、上部カバー29、リフタ31、蒸気発生タンク37、蒸気弁38、インラインヒータ40、不活性ガス弁49、インラインヒータ50、QDR弁59、排液弁65、真空ポンプ69、排気機構71などの動作は、本発明における制御手段に相当する制御部77によって統括的に制御される。制御部77は、各部を制御するとともに、以下に詳述するように、処理に応じて排気機構71の操作を行う。
【0023】
排気機構71は、3個のエア駆動弁79を並設されている。各エア駆動弁79は、同一の構成であるので、以下の説明においては、一つのエア駆動弁79を例にとって説明する。なお、エア駆動弁79が本発明における制御弁に相当する。
【0024】
エア駆動弁79は、処理液の入口と出口とを有する流路81が形成された弁箱83を備えている。流路27の中央部付近には、弁座85は、その部分に当接または離間して流路81を流通する処理液の流れを直接的に制御する弁体87の外形にほぼ一致するように形成されている。弁体87には、弁棒89の一端が連結されている。また、弁箱83には、弁棒89を弁座85側に進退可能に保持する保持部91が備えられている。この保持部91にはシリンダ93が形成されているとともに、ここには弁棒89の他端に連動連結されたピストン95が摺動自在に備えられている。ピストン95は、通常状態では弁体87が弁座85に対して当接するように、圧縮コイルバネ97により付勢されている。
【0025】
また、保持部91は、ピストン95を挟む位置に第1の貫通孔99と第2の貫通孔101を備えている。第1の貫通孔99は、電磁弁103によってエア供給源からエアの供給が制御される。また、第2の貫通孔101は、大気に開放されている。この電磁弁103は、制御部77によって制御される。例えば、電磁弁103を作動させると、シリンダ93内おいてピストン95がエアの供給量に応じて第2の貫通孔101側に移動され、その移動量に応じて弁体87が弁座85から離間する。その一方、電磁弁103の動作を停止させると、ピストン95が圧縮コイルバネ97の付勢方向に戻り、弁体87が弁座85に当接する。したがって、電磁弁103の作動量を調整することにより、エア駆動弁79を流通する気体の流量をゼロから最大または最大からゼロに一気に調整したり、ゼロから最大または最大からゼロに直線的に調整したりすることができる。
【0026】
制御部77は、上述した構成の排気機構71を、次のように処理に応じて操作する。ここで、図3及び図4を参照する。なお、図3は、高速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示した模式図であり、図4は、低速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示した模式図である。
【0027】
まず、第1の処理時には、真空ポンプ69を最大能力で作動させた状態で、全てのエア駆動弁79を同時に開放させる高速排気である。具体的には、図3に示すように、t1時点で全エア駆動弁79の電磁弁103を開放させ、その状態を維持させる。すると、チャンバ27の圧力が大気圧から第1目標圧に向かって急激に下がってゆく。
【0028】
次いで、第2の処理時には、真空ポンプ69を最大能力で作動させた状態で、全てのエア駆動弁79について所定間隔をおいて順に一つずつ開放させてゆく低速排気である。すると、チャンバ27の圧力が第1目標圧から第2目標圧に向かって階段状に次第に低下してゆく。
【0029】
但し、第1の処理時における、大気圧から第1目標圧にまで低下する時間T1は、第1目標圧から第2目標圧にまで低下する時間T2よりも短い。例えば、時間T1は1分程度である一方、時間T2は3分程度である。
【0030】
上記の第1の処理は、例えば、リフタ31が処理位置にあって基板Wが処理槽1内の処理液に浸漬されて処理が行われ、その後、イソプロピルアルコールの蒸気が溶剤ノズル33からチャンバ27内に供給されるまである。この状態では、処理液中に基板Wが浸漬されているので、減圧が急激に行われても、基板Wに対してプロセス的に悪影響が及び難い。上記の第2の処理は、例えば、第1の処理の後、リフタ31が乾燥位置に移動されて基板Wでのイソプロピルアルコールの置換が行われ、不活性ガスノズル34から不活性ガスが供給されて基板Wに凝縮したイソプロピルアルコールが蒸発される処理である。第2の処理では、基板Wが処理液から露出した状態であるので、急激な減圧を行うことにより、基板Wにプロセス的に悪影響が及ぶ恐れがあるからである。
【0031】
次に、図5を参照して、上述した基板処理装置の動作について説明する。なお、図5は、基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS1〜S3
上部カバー29を開放した状態で、基板Wを支持したリフタ31を待機位置から乾燥位置へと下降させ、上部カバー29を閉止させる。そして、処理液弁17を開放させて、薬液を含む処理液を処理槽1に供給する。次いで、リフタ31を処理位置にまで下降させて、基板Wを処理液に浸漬させる。これを所定時間だけ維持させた後、処理液供給源15から純水だけを処理液として処理槽1に供給させる。なお、処理槽から溢れた処理液は、チャンバ27の底部に貯留され、排出管63を通してチャンバ27外へ排出される。この水洗処理を所定時間だけ行って基板Wに対して洗浄を行わせる。
【0033】
ステップS4
水洗処理が終わった後、処理液弁17を閉止して処理液としての純水の供給を停止させるとともに、QDR弁59を開放して、処理槽1内の純水を急速排水させる。その後、不活性ガス弁49を開放させて、不活性ガスノズル43から不活性ガスをチャンバ27内に供給させ、チャンバ27内の酸素をパージする。
【0034】
ステップS5,S6
チャンバ27内の酸素濃度が低減された後、不活性ガス弁49及び排液弁65を閉止するとともに、真空ポンプ69を作動させる。そして、最大排気が可能となった状態において、図3に示すように排気機構71を作動させてチャンバ27内の圧力を大気圧から第1目標圧に向けて減圧を開始させる。第1目標圧に達したか否かは、圧力計75によって確認する。このとき、排気機構71は、上述した高速排気となるように制御部77によって操作されている。高速排気を行うことにより、迅速に減圧環境を作り出すことができ、スループットを向上させることができる。
【0035】
ステップS7,S8
排気機構71を停止させてチャンバ27を第1目標圧で減圧状態とし、リフタ31を乾燥位置にまで上昇させる。さらに、インラインヒータ40を加熱状態とするとともに、蒸気弁38を開放して、所定流量でイソプロピルアルコール蒸気を溶剤ノズル33からチャンバ27内に供給させる。これにより、チャンバ27内がイソプロピルアルコールの蒸気雰囲気とされ、基板Wに付着している純水がイソプロピルアルコールによって置換される。
【0036】
ステップS9,S10
真空ポンプ69を作動させ、最大排気が可能となった状態において、図4に示すように排気機構71を作動させてチャンバ27内の圧力を第1目標圧から第2目標圧に向けて減圧を開始させる。このとき、排気機構71は、上述した低速排気となるように制御部77によって操作されている。このとき、不活性ガス弁49を調節して、インラインヒータ50を介して加熱した不活性ガスを所定流量で不活性ガスノズル34から供給する。
【0037】
ステップS11,S12
不活性ガス弁49及び真空ポンプ69を停止させるとともに、呼吸弁73を開放してチャンバ27内を大気圧に戻す。そして、上部カバー29を開放するとともに、リフタ31を待機位置に上昇させる。
【0038】
上述したように、制御部77は、リフタ31を処理位置に移動させた状態における第1の処理では、排気機構71を操作して、真空ポンプ69により高速排気させ、リフタ31を乾燥位置に移動させた状態における第2の処理では、排気機構71を操作して、真空ポンプ69により低速排気させる。第1の処理では基板Wが処理槽1内の処理液に浸漬された状態であるので、短時間で減圧されても基板Wはプロセス的な悪影響を受け難い。一方、第2の処理では、基板Wが処理液から引き上げられ、チャンバ27内に露出した状態であるので、基板Wは急速な減圧によるプロセス的な悪影響を受ける恐れがある。そこで、第2の処理では、低速排気によって徐々に減圧することにより、急速な減圧を抑制して基板
Wに対してプロセス的に悪影響が及ぶことを防止することができる。
【0039】
また、上述したように、二種類の減圧手法を使い分け、急速に減圧が必要なときは高速排気を行うので、スループットを向上させることがない。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0041】
(1)上述した実施例では、全てのエア駆動弁79について所定間隔をおいて順に一つずつ開放させてゆく低速排気を行ったが、低速排気では図6に示すようにしてもよい。なお、図6は、変形例に係り、低速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示す模式図である。
すなわち、各エア駆動弁79の開度を全閉から瞬時に全開にするのではなく、全閉から徐々に開度を大きくして全開とする。このようにすることにより、圧力変化を緩やかにすることができ、露出した状態の基板Wに及ぶ悪影響をより小さくすることができる。
【0042】
(2)上述した実施例では、排気機構71を3個のエア駆動弁79で構成しているが、二つのエア駆動弁79であってもよい。また、各エア駆動弁79の開度を全閉から全開に操作する場合には、上述したエア駆動弁79に代えて、全閉と全開だけの状態をとりうる電磁式の開閉弁を採用してもよい。
【0043】
(3)上述した実施例では、排気機構71を3個のエア駆動弁79で構成しているが、図7に示すように一つのエア駆動弁79で構成してもよい。なお、図7は、排気機構の変形例を示す縦断面図である。
すなわち、上述した図2におけるエア駆動弁79単体で排気機構71とする。但し、その最大流量は、上述した3個のエア駆動弁79で構成した場合と同程度となるように、流路81における流路断面積が大きなものであることが好ましい。さらに、制御部69は、高速排気の際には図8に示すように、全閉から全開となるようにエア駆動弁79を操作し、低速排気の際には図9に示すように、全閉から徐々に全開となるようにエア駆動弁79を操作する。なお、減圧にかける時間T1と時間T2との関係は、上述した実施例と同様である。
【0044】
(4)上述した実施例では、処理槽1を単槽構成としているが、内槽と、内槽から溢れた処理液を回収する外槽を備えた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】排気機構を示す縦断面図である。
【図3】高速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示した模式図である。
【図4】低速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示した模式図である。
【図5】基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】変形例に係り、低速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示す模式図である。
【図7】排気機構の変形例を示す縦断面図である。
【図8】高速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示した模式図である。
【図9】低速排気時における排気機構の開度調節及び圧力変化を示した模式図である。
【符号の説明】
【0046】
W … 基板
1 … 処理槽
27 … チャンバ
31 … リフタ
33 … 溶剤ノズル
34 … 不活性ガスノズル
37 … 蒸気発生タンク
38 … 蒸気弁
40 … インラインヒータ
67 … 排気管
69 … 真空ポンプ
71 … 排気機構
77 … 制御部
79 … エア駆動弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液により処理された基板を溶剤蒸気により乾燥させる基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽の周囲を囲うチャンバと、
基板を支持し、前記処理槽内の処理位置と前記処理槽の上方にあたる乾燥位置とにわたって昇降可能な基板支持機構と、
前記チャンバに連通接続された排気管と、
前記排気管を介して前記チャンバ内の気体を排気する排気手段と、
前記排気管に配設され、排気流量を調整可能な排気機構と、
前記基板支持機構を処理位置に移動させた状態における第1の処理では、前記排気機構を操作して高速排気させ、前記基板支持機構を処理位置から乾燥位置に移動させた状態における第2の処理では、前記排気機構を操作して低速排気させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記排気機構は、複数の制御弁が並設され、
前記制御手段は、前記第1の処理において全ての制御弁を開放し、前記第2の処理において各制御弁を順次に開放することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記複数の制御弁は、エアの供給及び排出によって開度を調節可能なエア駆動弁であり、
前記制御手段は、前記第2の処理において各制御弁を順次に開放するにあたり、各々の制御弁の開度を徐々に大きくすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記排気機構は、エアの供給及び排出によって開度を調節可能な一つのエア駆動弁を備え、
前記制御手段は、第1の処理時には前記エア駆動弁の開度を最大とし、第2の処理時には前記エア駆動弁の開度を徐々に大きくすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記チャンバ内に溶剤蒸気を供給する溶剤蒸気供給手段と、
前記チャンバ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備え、
前記第1の処理は、処理液で基板に処理を行った後、前記溶剤蒸気供給手段から溶剤蒸気を前記チャンバ内に供給するまでの処理であり、
前記第2の処理は、前記第1の処理の後、前記不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させつつ、基板に凝縮した溶剤蒸気を蒸発させる処理であることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−4695(P2009−4695A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166346(P2007−166346)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】