説明

基板処理装置

【課題】互いに仕切られ、積層された基板搬送領域にて気流の滞留を防ぐと共に各搬送領域のメンテナンス作業を容易に行うことができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】
積層された第1の基板搬送領域及び第2の基板搬送領域を仕切る仕切り位置に設けられ、内部に気体拡散室を備える仕切り板と、基板搬送領域の幅方向中央部から周縁部に寄った位置にて、前記仕切り板に前記気体拡散室に連通する清浄気体供給口に気体を供給する気体供給路と、前記気体供給路に設けられ、前記清浄気体供給口に供給する気体を清浄化するためのフィルタと、仕切り板の下面に形成され、気体拡散室にて拡散した気体を基板搬送領域に吐出するための多数の吐出口と、を備え、仕切り板は、メンテナンス時に第2の基板搬送領域から第1の基板搬送領域が見通せる開放状態とするために前記仕切り位置から退避できるように装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送領域を備える基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトリソグラフィー工程を行う塗布、現像装置は、レジストを含む塗布膜を形成する複数のブロックと、現像処理を行うブロックとが積層されて構成される場合がある。図21は、このようにブロックが積層された塗布、現像装置の構成の一例を示している。図中101は前記塗布膜の形成モジュール、102は塗布膜形成後の半導体ウエハ(以下、ウエハという)を加熱するモジュールである。103は搬送アームであり、塗布膜形成モジュール101と加熱モジュール102との間でウエハWを搬送する。図中104は、搬送アーム103によるウエハWの搬送領域であり、加熱モジュール102とその下方に設けられるファン装置105により、搬送領域104は排気される。
【0003】
前記搬送アーム103、塗布膜形成モジュール101及び加熱モジュール102などのメンテナンスを行うために、搬送領域104は作業者が立ち入ることができるように構成する必要がある。そのために、各搬送領域104の天井面を構成する仕切り板106は着脱自在に構成される。
【0004】
ところで、各搬送領域104を清浄な雰囲気に保つために、搬送領域104全体に清浄なエアの下降気流を形成することが好ましい。そのために、各搬送領域104の天井面全体にULPAフィルタを設けることが考えられる。しかし、そうすると上記のメンテナンスを行う際にULPAフィルタが邪魔になり、メンテナンスを行うことが困難になってしまうので、図21に示すように搬送領域104の天井面の一部にULPAフィルタ107を設けている。図中には点線の矢印でULPAフィルタ107から供給されたエアの流れを示しており、ULPAフィルタ107の下方に供給されたエアは、ファン装置105及び加熱モジュール102へ向かって流れ、これらファン装置105及び加熱モジュール102の壁面に沿って舞い上がる。このような流れが形成されるため、図中の搬送領域104の中央部ではエアが滞留し、それによって十分な清浄度を保てなくなるおそれがある。
【0005】
特許文献1では基板移送ユニットをフレームに脱着可能にし、メンテナンスを容易にする処理装置について記載されているが、上記のようにエアが滞留する問題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−117824(段落0046など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、互いに仕切られ、積層された基板搬送領域にて気体の滞留を防ぐと共に各基板搬送領域のメンテナンス作業を行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理装置は、基板を処理する処理部に基板を搬送するための基板搬送領域を備えた基板処理装置において、
各々横方向に伸び、互いに上下に積層された第1の基板搬送領域及び第2の基板搬送領域と、
前記第1の基板搬送領域及び第2の基板搬送領域を互いに仕切るための仕切り位置に設けられ、内部に気体拡散室を形成する空洞の仕切り板と、
前記基板搬送領域の幅方向中央部から周縁部に寄った位置にて、前記仕切り板に前記気体拡散室に連通するように形成された清浄気体供給口と、
前記清浄気体供給口に気体を供給する気体供給路と、
前記気体供給路に設けられ、前記清浄気体供給口に供給する気体を清浄化するためのフィルタと、
前記仕切り板の下面に形成され、拡散室にて拡散した気体を基板搬送領域に吐出する多数の吐出口と、を備え、
前記仕切り板は、メンテナンス時に第2の基板搬送領域から第1の基板搬送領域が見通せる開放状態とするために前記仕切り位置から退避できるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
上記の基板処理装置の具体的な態様としては例えば下記の通りである。
(a)前記気体拡散室には、当該気体拡散室を第1の領域と、当該第1の領域よりも前記清浄気体供給口から横方向に離れた第2の領域とに区画する区画部材が設けられ、
前記区画部材には第1の領域から第2の領域へ前記清浄気体を流通させる多数の気体流通口が設けられる。
(b)前記気体拡散室には、清浄気体供給口から離れたガスを清浄気体供給口に向けて戻るようにガイドするガイド部材が設けられている。
(c)前記ガイド部材は平面視コ字型に形成され、当該コ字型が清浄気体供給口と反対方向に開口する。
(d)前記仕切り板は、水平軸回りに回転自在である。
(e)基板搬送領域には、基板を搬送するための基板搬送機構と、前記基板搬送機構を基板搬送領域に沿ってガイドする搬送ガイドと、が設けられ、前記搬送ガイドは基板搬送領域の長さ方向に沿って設けられている。
(f)基板搬送領域の幅方向の両側には基板に処理を行うモジュールが設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐出口が設けられた仕切り板に気体拡散室が設けられ、この仕切り板がメンテナンス時に仕切り位置から退避することで、積層される基板搬送領域を互いに見通すことができる。従って、基板搬送領域における気体の滞留を抑え、且つ各基板搬送領域に進入してメンテナンスを行うことが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用された塗布、現像装置の平面図である。
【図2】前記塗布、現像装置の斜視図である。
【図3】前記塗布、現像装置の縦断側面図である。
【図4】前記塗布、現像装置の縦断正面図である。
【図5】前記塗布、現像装置に設けられる水平ダクト及び仕切り板の表面側斜視図である。
【図6】前記水平ダクト及び仕切り板の裏面側斜視図である。
【図7】前記水平ダクト及び仕切り板の縦断側面図である。
【図8】前記仕切り板に設けられる拡散室の斜視図である。
【図9】前記拡散室の平面図である。
【図10】前記拡散室に設けられる区画板の平面図である。
【図11】前記水平ダクト及び仕切り板に設けられる固定部材及び接続具の斜視図である。
【図12】固定部材が互いに係合する様子を示した説明図である。
【図13】前記仕切り板を傾けた状態を示す斜視図である。
【図14】各単位ブロックの仕切り板を傾けた状態を示す概略平面図である。
【図15】仕切り板を取り外す手順を示す工程図である。
【図16】仕切り板を取り外す手順を示す工程図である。
【図17】仕切り板を取り外す手順を示す工程図である。
【図18】ガイド部材が設けられた拡散室の斜視図である。
【図19】拡散室に設けられるガイド部材の他の構成を示した平面図である。
【図20】拡散室に設けられるガイド部材の他の構成を示した平面図である。
【図21】従来の塗布、現像装置の構成を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の基板処理装置の一実施形態である塗布、現像装置1について図1〜図3を参照しながらその構成の概要及び半導体ウエハ(以下ウエハと記載する)Wの搬送経路を説明する。図1は塗布、現像装置に例えば液浸露光を行う露光装置が接続されたシステムの平面図であり、図2は同システムの斜視図である。また図3は塗布、現像装置1の縦断面図である。この塗布、現像装置1は、キャリアブロックS1と、処理ブロックS2と、インターフェイスブロックS3と、を直線状に接続して構成されている。インターフェイスブロックS3には、さらに露光装置S4が接続されている。
【0013】
キャリアブロックS1は、例えば同一のロットの基板であるウエハWを複数枚含むキャリアCを塗布、現像装置1に搬入出する役割を有し、キャリアCの載置台11と、開閉部12と、開閉部12を介してキャリアCからウエハWを搬送するための搬送機構である受け渡しアーム13とを備えている。
【0014】
処理ブロックS2は、ウエハWに液処理を行う第1〜第6の単位ブロックB1〜B6が下から順に積層されて構成されており、各単位ブロックBは、下層側から2つずつ、同様に構成されている。つまり、単位ブロックB1、B2が同じ構成であり、単位ブロックB3、B4が同じ構成であり、単位ブロックB3、B4が同じ構成である。
【0015】
図4に示す処理ブロックS2の縦断側面図も参照しながら、各単位ブロックのうち、代表して第2の単位ブロックB2について説明する。キャリアブロックS1側からインターフェイスブロックS3側へ向かって伸びるウエハWの搬送領域R1が形成されており、この搬送領域R1の幅方向の両側には液処理ユニット201と、複数のモジュールが積層されてなる棚ユニットU1〜U6とが夫々配置されている。
【0016】
液処理ユニット201には、反射防止膜形成モジュールBCTと、レジスト膜形成モジュールCOTとが設けられている。反射防止膜形成モジュールBCTはスピンコーティングにより反射防止膜形成用の薬液を塗布するために、ウエハWの裏面を吸着して鉛直軸回りに回転させるスピンチャック202と、薬液供給ノズル203とを備えている。図中204はウエハWを囲み、薬液の飛散を抑えるカップである。205はフィルタであり、下方のカップ204内へ清浄なエアを供給する。レジスト膜形成モジュールCOTは、前記薬液がレジストである他は反射防止膜形成モジュールBCTと同様の構成である。
【0017】
前記搬送領域R1には、ウエハWの搬送機構である搬送アームA1が設けられている。
この搬送アームA1は、単位ブロックB1の全てのモジュール間でウエハWの受け渡しを行うことができる。図4中301は搬送ガイド部材であり、棚ユニットU1〜U6の下部に、搬送領域R1の長さ方向に沿って設けられている。図中302はガイドに沿って移動するフレーム、303はフレームに沿って昇降する昇降基体、304は昇降基体上を回動する回動基体、305は回動基体上を進退するウエハ支持部である。
【0018】
棚ユニットU1〜U5における上側には加熱モジュール401が積層されて設けられる。図中402はウエハWを加熱する熱板、403は熱板404と搬送アームA1との間でウエハWを受け渡すと共にウエハWを冷却するプレート、404は整流板、405、406は搬送領域R1及び加熱モジュール401内を排気する排気部である。棚ユニットU6における上側にはウエハWの周縁部を露光する周縁露光モジュールWEE1、WEE2が設けられている。棚ユニットU1〜U6の下部には搬送領域R1を排気するファン装置407が設けられている。
【0019】
単位ブロックB3〜B6は、液処理ユニット201でウエハWに供給する薬液が異なること及び周縁露光モジュールの代わりに加熱モジュールが設けられることを除き、単位ブロックB1、B2と同様に構成される。単位ブロックB3、B4は、反射防止膜形成モジュールBCT及びレジスト塗布モジュールCOTの代わりに液浸露光用の保護膜形成モジュールTCT及びウエハWの裏面を洗浄する裏面洗浄モジュールBSTを備える。単位ブロックB5、B6は、反射防止膜形成モジュールBCT及びレジスト膜形成モジュールCOTの代わりにウエハWに現像液を供給して現像を行う現像モジュールDEV1、DEV2を備える。
【0020】
保護膜形成モジュールTCTは液浸露光時にウエハWの表面を保護する保護膜形成用の薬液を、現像モジュールは現像液を夫々ウエハWに供給する。また、裏面洗浄モジュールBSTは、ウエハWの裏面側から当該裏面洗浄用の薬液を供給し、ブラシを用いて当該裏面を洗浄する。なお、各単位ブロックB1〜B6の搬送アームはA1〜A6として各図に示している。
【0021】
搬送領域R1のキャリアブロックS1側には、単位ブロックB1〜B6に跨った棚ユニットU7が設けられている。棚ユニットU7は、互いに積層された受け渡しモジュールCPL、疎水化処理モジュールADH及びバッファモジュールBUが設けられている。説明中、CPLと記載した受け渡しモジュールは、載置したウエハWを冷却する冷却ステージを備えている。バッファモジュールは、複数枚のウエハWを格納できるように構成されている。疎水化処理モジュールADHは、ウエハW表面を疎水化させる。棚ユニットU7の近傍には、昇降自在、棚ユニットU7に対して進退自在な受け渡しアーム14が設けられ、棚ユニットU7の各モジュール間でウエハWを搬送する。
【0022】
処理ブロックS2について更に詳しく説明する。処理ブロックS2は、筐体31を備え、筐体31内に上記の各モジュール及びユニットが収納されており、筐体31内は単位ブロックBごとに仕切られている。筐体31上にはファンフィルタユニット32が設けられており、このファンフィルタユニット32には上下に伸び、単位ブロックB1〜B6に跨るように形成された垂直ダクト33が接続されている。垂直ダクト33は、各搬送領域R1の長さ方向に沿って設けられる水平ダクト34に接続されている。各水平ダクト34は、各搬送領域R1の液処理ユニット201側の縁部上に設けられている。
【0023】
図5、図6を参照しながら、第1の単位ブロックB1の搬送領域R1上に設けられた水平ダクト34及びその周囲の各部の構成について説明する。水平ダクト34は下側が開放された角型の管壁部35を備えており、その内部にはエア供給路36が、水平方向に形成されている。そして、エア供給路36の下方にはULPAフィルタであるフィルタ37が設けられている。前記ファンフィルタユニット32から送風されたエアが、垂直ダクト33を介して水平ダクト34に流入し、このフィルタ37を通過して清浄化され、水平ダクト34の下方に供給される。
【0024】
前記水平ダクト34には、仕切り板41が設けられている。この仕切り板41は、搬送領域R1の長さ方向に沿って4枚配列され、第1の単位ブロックB1の天井面を形成する。仕切り板41の厚さは例えば14mmである。この仕切り板41の構成について、その縦断側面図である図7も参照しながら説明する。仕切り板41の表面の基端側(水平ダクト34側)には水平ダクト34に重なる位置に清浄気体供給口42が形成されている。この清浄気体供給口42の周囲はシール部材43により囲まれている。シール部材43は水平ダクト34の管壁部35に密着し、管壁部35と仕切り板41との間からのエアの漏れを防ぐ。
【0025】
また、清浄気体供給口42の外縁には接触センサ38Aが設けられている。これは管壁部35の下端に設けられる接触センサ38と対をなし、仕切り板41が水平であれば接触センサ38、38Aが互いに接触する。例えば不図示のモニタに接触センサ38、38Aが互いに接触しているか否かが表示され、メンテナンス後の仕切り板41の設置ミスを防ぐことができる。
【0026】
仕切り板41の内部には前記清浄気体供給口42に連通するエアの気体拡散室44が形成されており、この気体拡散室44は仕切り板41の基端側から先端側に向かうように設けられている。そして、この気体拡散室44の下方には吐出口45が仕切り板41の厚さ方向に穿孔されて設けられている。当該吐出口45は仕切り板41の下面に多数、分散して形成されている。
【0027】
図8は気体拡散室44を示した斜視図であり、この図8に示すように気体拡散室の44には区画板501が設けられている。区画板501は、水平ダクト34が伸びる方向に沿って形成され、気体拡散室44を横方向に隣接する2つの領域に区画している。この2つの領域について、水平ダクト34に近い側を基端側領域502、水平ダクト34から離れた側を先端側領域503とする。平面で見て、先端側領域503の面積に比べて基端側領域502の面積は大きく、この例では先端側領域503の面積を1とすると、基端側領域502の面積は約2.78である。また、気体拡散室44には仕切り部材504が設けられている。この仕切り部材504は、各領域502、503を水平ダクト34が伸びる方向に等分して仕切るように基端側領域502から先端側領域503へ向かって形成されている。
【0028】
図9は気体拡散室44の平面図であり、上記の吐出口45は領域502、503において、区画板501及び仕切り部材504に並行するようにマトリクス状に配置されている。この例では各領域502、403において区画板501の形成方向に隣接する吐出口45の間隔L1、仕切り部材504の形成方向に隣接する吐出口45の間隔L2は、夫々5mmである。また、1つの気体拡散室44の基端側領域502には夫々7800個の吐出口45が設けられ、1つの気体拡散室44の先端側領域503には2880個の吐出口45が設けられている。
【0029】
前記区画板501には、その形成方向に沿って基端側領域502と先端側領域503とを連通させる多数のエア流通口505が、当該区画板501の厚さ方向に穿孔されている。図10は、厚さ方向に見た区画板501を示している。エア流通口505は区画板501の形成方向に沿って2列に設けられている。各列のエア流通口505は互いにずれて配置されており、従ってエア流通口505は区画板501の形成方向に千鳥状に配列されている。1つのエア流通口505から見て、同じ列に隣接するエア流通口505に向かう方向と、異なる列に隣接するエア流通口505に向かう方向とのなす角θは60°であり、同じ列にて隣接するエア流通口505間の距離L3、異なる列間で隣接するエア流通口505間の距離L4は各々3.5mmである。エア流通口505の口径は2mmであり、1つの気体拡散室44の区画板501には約435個のエア流通口505が設けられている。
【0030】
図8に戻って説明すると、水平ダクト34のフィルタ37を通過し、パーティクルが除去されて清浄化されたエアは、清浄気体供給口42から気体拡散室44に流れ込み、前記基端側領域502に供給される。そして、気体拡散室44には連続してエアが供給されるので、この気体拡散室44内のエアは清浄気体供給口42から離れ、圧力が比較的低くなっている先端側領域503に向かって押し流されるように広がるが、区画板501により当該先端側領域503に流れ込む量が制限され、基端側領域502と先端側領域503とでその面積あたりに供給されるエアの流量、圧力が各々均一化される。それによって、エアは気体拡散室44全体から均一性高い流量、流速、風向きで吐出口45を介して下方側に吐出され、搬送領域R1全体に均一性高い下降気流が形成される。また、基端側領域502から先端側領域503に向かうときにエアは、仕切り部材504によって水平ダクト34が伸びる方向に拡散することが抑えられるので、前記方向に見たときの圧力損失の均一性が高くなる。それによっても、前記下降気流の均一性が高くなる。
【0031】
図5に戻って説明を続ける。仕切り板41において気体拡散室44よりも先端側には先端部48が設けられる。この先端部48は、各層の棚ユニットU1〜U6に設けられる支持部材49に支持されている。支持部材49は側面視L字型に形成され、搬送領域R1の長さ方向に伸びている。この支持部材49に仕切り板41の先端部48が支持され、仕切り板41が水平に保たれる。また、搬送領域R1の長さ方向の左右両端には、4枚の仕切り板41を挟むように板40が設けられている。板40は、支持部材49及び水平ダクト34に対して水平に取り付けられており、これら支持部材49及び水平ダクト34に対して着脱自在に構成されている。
【0032】
前記水平ダクト34の管壁部35における搬送領域R1側の側面には突部50が設けられ、この突部50には接続具51が設けられている。また、仕切り板41の表面には接続具51と対になる接続具52が設けられている。図11はこれら接続具51、52を示している。接続具51は水平な筒部51aを備え、接続具52は水平な棒52aを備えている。筒部51aに棒52aが差し込まれることで、接続具51、52は蝶番53を構成する。この蝶番53により仕切り板41は、水平軸回りに回転自在に構成されている。また、当該蝶番53が接続具51、52に分解可能に構成されることで、仕切り板41は水平ダクト34に対して着脱自在に構成されている。
【0033】
水平ダクト34において接続具51の上側には仕切り41板の先端側に向かって伸び出た2つの爪部54aが設けられている。各爪部54aは、突起54bを備えている。また、仕切り板41の表面において接続具52の先端側には仕切り板41の厚さ方向に突出する爪部55aが設けられている。爪部55aの側面には凹部55bが設けられている。
【0034】
仕切り板41が水平な状態から、作業者が仕切り板41の先端が上に向かうように当該仕切り板41の先端を持って水平軸回りに回転させる。すると、水平ダクト34の爪部54a、54a間に仕切り板41の爪部55aが進入し、その弾性により爪部54a、54aが互いに外側に広がる。さらに仕切り板41を回転させると、図12に示すように爪部54aの突起54bが爪部55aの凹部55bに係合する。そして、爪部54aは、その復元力により爪部54aを挟み込むと共に押圧して爪部54bを固定する。この結果として、仕切り板41は先端が上に向かった状態で固定される。図13は、仕切り板41の一枚をこのように傾けて固定した様子を示している。このように傾いた仕切り板41の先端を下側に向けて回転させることで、前記爪部54aと爪部55aとの係合が外れ、仕切り板41を水平に戻すことができる。
【0035】
単位ブロックB5の搬送領域R1上に設けられる水平ダクト34と当該水平ダクト34に設けられる仕切り板41とについて説明してきたが、他の各単位ブロックB1〜B4、B6上に設けられる水平ダクト34及び当該水平ダクト34に設けられる仕切り板41も同様に構成されており、各搬送領域R1の天井面を形成している。ただし、第3の単位ブロックB3にエアを供給する仕切り板41は、作業者の足場になるために当該水平ダクト34に水平状態に固定されており、上記のように回転しないようになっている。そして、上記のように上下に6段に設けられる仕切り板41により、単位ブロックB1〜B6の各搬送領域R1が互いに仕切られ、また単位ブロックB6の搬送領域R1と処理ブロックS2をなす筐体31の外部空間とが仕切られる。
【0036】
図1〜図3に戻って、インターフェイスブロックS3について説明する。インターフェイスブロックS3は、後述のメンテナンスを行うために処理ブロックS2に対して移動できるようになっている。インターフェイスブロックS3は棚ユニットU8、U9、U10を備え、棚ユニットU8は、受け渡しモジュールTRS、受け渡しモジュールCPL、バッファモジュールBUが互いに積層されて構成されている。棚ユニットU9は、露光前にウエハWの裏面を洗浄する裏面洗浄モジュールBSTが積層されて構成されている。棚ユニットU10は、露光後にウエハWの表面を洗浄する露光後洗浄モジュールPIRが積層されて構成されている。各モジュール間及びモジュールと露光装置S4との間を搬送するインターフェイスアーム3A〜3Cが設けられている。
【0037】
この塗布、現像装置1及び露光装置S4からなるシステムのウエハWの搬送経路について説明する。例えばウエハWは単位ブロックB1→B3→B5を通過する経路1と、単位ブロックB2→B4→B6とを通過する経路2とによって搬送され、各経路で同様の処理を受ける。ウエハWは、キャリアC→受け渡しアーム13→バッファモジュールBU11→受け渡しアーム30→疎水化処理モジュールADH→搬送アームA1→反射防止膜形成モジュールBCT→搬送アームA1→加熱モジュール→搬送アームA1→レジスト塗布モジュールCOT→搬送アームA1→加熱モジュールHP→周縁露光モジュールWEE→搬送アームA1→受け渡しモジュールCPL11の順で搬送され、ウエハWの表面に反射防止膜、レジスト膜の順に下層側から塗布膜が積層される。
【0038】
その後、ウエハWは、受け渡しアーム30→受け渡しモジュールCPL12→搬送アームA3→保護膜形成モジュールTCT→搬送アームA3→加熱モジュールHP→搬送アームA3→裏面洗浄モジュールBST→搬送アームA3→受け渡しモジュールTRS1の順に搬送される。これによってレジスト膜の上層に保護膜が形成されると共にウエハWがインターフェイスブロックS3へと搬入される。
【0039】
前記ウエハWは、第1のインターフェイスアーム3A→バッファモジュールBU→第2のインターフェイスアーム3B→受け渡しモジュールCPL→第3のインターフェイスアーム3C→露光装置S4の順で搬送され、液浸露光処理を受ける。露光済みのウエハWは、第3のインターフェイスアーム3C→受け渡しモジュールTRS→第2のインターフェイスアーム3B→露光後洗浄モジュールPIR→バッファモジュール群3→第2のインターフェイスアーム3B→受け渡しモジュールTRS2の順に搬送される。その後、搬送アームA5→加熱モジュールHP→現像モジュールDEV→搬送アームA5→加熱モジュールHP→搬送アームA5→受け渡しモジュールCPL13→受け渡しアーム30→受け渡しモジュールCPL14→受け渡しアーム30→キャリアCの順に搬送される。第2の経路で搬送されるウエハWは、通過する単位ブロックが異なる他は、この第1の経路と同様に搬送されて、同様に処理を受ける。
【0040】
このようにウエハWが搬送されて各モジュールで処理される間、ファンフィルタユニット32から、各仕切り板41にエアが供給される。そして、既述のように仕切り板41からエアが供給され、各単位ブロックB1〜B6の搬送領域R1に下降気流が形成される。
図4では、点線の矢印により処理ブロックS2に形成される気流を示している。搬送領域R1に供給されたエアは、棚ユニットU1〜U6の加熱モジュール401の排気部405、406及びファン装置407により排気される。
【0041】
処理ブロックS2のメンテナンスを行う際には、各単位ブロックB1〜B6の搬送アームA1〜A6を搬送領域R1の任意の場所、例えばキャリアブロックS1側に位置させて、ファンフィルタユニット32の動作を停止させる。そして、インターフェイスブロックS3を移動させて、処理ブロックS2とインターフェイスブロックS3との間に作業員が立ち入るためのスペースを形成する。
【0042】
然る後、搬送アームA4〜A6に干渉しない位置にある単位ブロックB4〜B6の仕切り板41及び単位ブロックB4〜B6の仕切り板41を、各単位ブロックを仕切る水平位置から既述のように回転させる。これによって単位ブロックB4〜B6の搬送領域R1が互いに連通し、見通せる開放状態になる。同様に搬送アームA2〜A3に干渉しない位置にある単位ブロックB2〜B3の仕切り板41を回転させることにより、単位ブロックB1〜B3の搬送領域R1が互いに連通し、見通せる開放状態になる。図14は、このように各搬送領域R1を連通させた状態を示している。そして、作業員がこのように互いに連通した搬送領域R1に立ち入り、当該搬送領域R1の搬送アームA、棚ユニットU1〜U5を構成する加熱モジュールや液処理ユニット201を構成する各モジュールのメンテナンスを行う。単位ブロックB4〜B6のメンテナンスを行う場合には、単位ブロックB3、B4間の仕切り板41を足場にして作業を行う。また、このように単位ブロックB4〜B6のメンテナンスを行う場合、作業員は装置1の天井から単位ブロックB4〜B6に進入してもよい。
【0043】
このようにメンテナンスを行う場合、既述のように仕切り板41を水平ダクト34から取り外して作業を行ってもよい。その場合は、上記のようにインターフェイスブロックS3を移動させた後、図15、図16に示すようにインターフェイスブロックS3側の板40を取り外す。そして、図17に示すようにインターフェイスブロックS3側の仕切り板41から順にインターフェイスブロックS3側に当該仕切り板41をスライドさせ、蝶番53の筒部51aから棒52aを外す。これによって仕切り板41を水平ダクト34から取り外す。なお、仕切り板41を、水平ダクト34に取り付ける際には、仕切り板41の前記棒52aを、筒部51aに差し込むことで、キャリアブロックS1側の仕切り板41から順に水平ダクト34に取り付ける。
【0044】
この塗布、現像装置1では、各単位ブロックBに局所的に設けられた水平ダクト34のフィルタ37から各単位ブロックBの搬送領域R1の天井を構成する仕切り板41にエアを供給し、この仕切り板41の気体拡散室44で拡散したエアを吐出することにより搬送領域R1全体に下降気流を形成することができる。これによって、搬送領域R1でエアが滞留することが抑えられ、搬送領域R1の雰囲気の清浄度の低下を防ぐことができる。また、仕切り板41は、水平ダクト34に対して着脱可能及び回転可能に構成されることで、作業者が容易に搬送領域R1に立ち入り作業することができる。また、前記気体拡散室44にはガイド部材46が設けられ、このガイド部材46によりフィルタ37から供給されたエアは気体拡散室44を均一性高く広がり、それによって搬送領域R1全体に均一性高くエアが供給される。この点からも搬送領域R1の雰囲気の清浄度の低下を防ぐことができる。
【0045】
ところで、気体拡散室44の厚さを大きく形成すれば、気体拡散室44内でのガスの流動性が高くなるので、区画板501や後述のガイド部材46を設けなくても搬送領域R1全体に均一性高く下降気流を形成することができる。しかし、そのように気体拡散室44の厚さを厚くすると、塗布、現像装置1が大型化してしまう。このように区画板501またはガイド部材46を設けることで、気体拡散室44の大型化を防ぎ、塗布、現像装置1の大型化を防ぐことができる。なお、発明者は、シミュレーションによりガイド部材46を設けた場合と、設けない場合とで搬送領域R1に形成される風速及び風向きを調べており、ガイド部材46を設けることで搬送領域R1の風速及び風向きの均一性が高くなることを確認している。
【0046】
また、仕切り板41は水平ダクト34から取り外し自在、且つ水平軸回りに回転自在に構成されるので、作業の内容及び作業を行うモジュールの場所に応じて、作業者は仕切り板41を取り外すか、回転させるかを選択することができる。そして、仕切り板41を回転させる場合には搬送領域R1を連通させることが容易であるため、メンテナンス作業を効率よく行うことができる。また、上記の例では各搬送アームAを構成する搬送ガイド部材301が搬送領域R1の縁部に長さ方向に沿って設けられているため、この搬送ガイド部材301によりメンテナンス作業が妨げられることが防がれる。
【0047】
ところで、上記の仕切り板41においては、先端部48の重さにより、水平ダクト34からの風圧で当該先端部48が浮き上がることを防いでいる。しかし、より確実にこのような浮き上がりを防ぐために、仕切り板41を水平ダクト34に固定する固定機構を設けてもよい。固定機構としては、具体的には例えば、仕切り板41の後端側及び水平ダクト34に夫々磁石を設け、磁力により仕切り板41と水平ダクト34とを結合させる機構がある。また、仕切り板41の先端側と、支持部材49の表面とに夫々磁石を設けて固定機構としてもよい。その他にも、例えばサムスクリューネジを用いて仕切り板41と水平ダクト34とを固定してもよいし、支持部材49と仕切り板41とを固定してもよい。
【0048】
図18は気体拡散室44の他の構成例を示しており、この図18に示すように気体拡散室の44にはガイド部材46が設けられている。ガイド部材46は平面視コ字型に形成されており、コ字型の開口部47は仕切り板41の先端側に向かうように形成されている。図18中には点線の矢印で気体拡散室44内のエアの流れを示している。フィルタ37を通過して、パーティクルが除去されて清浄化されたエアは、清浄気体供給口42から気体拡散室44に流れ込み、気体拡散室44を仕切り板41の先端側に向かって流れ、ガイド部材46に衝突してガイド部材46の外周に沿ってさらに先端側へと向かう。このようなエアの流れにより、ガイド部材46の開口部47はガイド部材46の外周より圧力が低くなるため、ガイド部材46の先端へ流れたエアは当該開口部47へ向けて流れる。つまり、エアは仕切り板41の基端側へ戻るように流れる。このようにしてエアが気体拡散室44全体に広がり、当該エアは吐出口45から下方へと吐出される。それによって、区画板501を設けた場合と同様に搬送領域R1全体に均一性高く下降気流を形成することができる。
【0049】
気体拡散室44に設けるガイド部材としては上記のガイド部材46に限られない。図19にはガイド部材71、72を示している。ガイド部材71、72は仕切り板41の内側に伸び、折り曲げられて仕切り板41の先端側に向かってさらに伸びている。図19中に点線の矢印で示すようにガイド部材71、72間に供給されたエアは、気体拡散室44を先端側に向かった後、仕切り板41の基端側に戻って気体拡散室44の壁面と各ガイド部材71、72との間に流れ込む。また、図20に示すように渦巻き状のガイド部材73を設けて、先端側に向かったエアが基端側に戻るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
R1 搬送領域
W ウエハ
1 塗布、現像装置
31 筐体
32 ファン装置
34 水平ダクト
37 フィルタ
41 仕切り板
42 清浄気体供給口
44 気体拡散室
45 吐出口
46 ガイド部材
53 蝶番
501 区画板
505 エア流通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理部に基板を搬送するための基板搬送領域を備えた基板処理装置において、
各々横方向に伸び、互いに上下に積層された第1の基板搬送領域及び第2の基板搬送領域と、
前記第1の基板搬送領域及び第2の基板搬送領域を互いに仕切るための仕切り位置に設けられ、内部に気体拡散室を形成する空洞の仕切り板と、
前記基板搬送領域の幅方向中央部から周縁部に寄った位置にて、前記仕切り板に前記気体拡散室に連通するように形成された清浄気体供給口と、
前記清浄気体供給口に気体を供給する気体供給路と、
前記気体供給路に設けられ、前記清浄気体供給口に供給する気体を清浄化するためのフィルタと、
前記仕切り板の下面に形成され、拡散室にて拡散した気体を基板搬送領域に吐出する多数の吐出口と、を備え、
前記仕切り板は、メンテナンス時に第2の基板搬送領域から第1の基板搬送領域が見通せる開放状態とするために前記仕切り位置から退避できるように構成されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記気体拡散室には、当該気体拡散室を第1の領域と、当該第1の領域よりも前記清浄気体供給口から横方向に離れた第2の領域とに区画する区画部材が設けられ、
前記区画部材には第1の領域から第2の領域へ前記清浄気体を流通させる多数の気体流通口が設けられることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記気体拡散室には、清浄気体供給口から離れたガスを清浄気体供給口に向けて戻るようにガイドするガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は平面視コ字型に形成され、当該コ字型が清浄気体供給口と反対方向に開口することを特徴とする請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記仕切り板は、水平軸回りに回転自在であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板搬送領域には、基板を搬送するための基板搬送機構と、前記基板搬送機構を基板搬送領域に沿ってガイドする搬送ガイドと、が設けられ、
前記搬送ガイドは基板搬送領域の縁部に長さ方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板搬送領域の幅方向の両側には基板に処理を行うモジュールが設けられることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−156488(P2012−156488A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247679(P2011−247679)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】