説明

基板搬送装置

【課題】セラミックス等の脆性部材で構成された基板保持部材を備えた基板搬送装置において、破損した場合に破片の飛散を抑えること。
【解決手段】多関節アームの最上段の基板保持部材2の基体としてセラミックスからなるフォーク状の板状体を用いる。この板状体の周縁に沿って板状体の中に埋設した状態で延性部材である金属線5を配置する。また板状体の裏面側に延性部材である樹脂フィルムを貼着するようにしてもよい。このような構成では、基板保持部材が構造物に衝突し破損した場合にも、金属線によって破片を繋ぎ止めることで、破片の飛散防止あるいは抑制をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持して搬送する保持部材を備えた基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやLCD基板の製造プロセスにおいては、基板処理装置内に基板に対して処理を行うモジュールを複数個設け、これらモジュールに基板搬送装置により基板を順次搬送して所定の処理を行うことが実施されている。前記基板搬送装置は、例えば基板の周縁を保持する保持部材が搬送基体に沿って進退自在に設けられると共に、前記搬送基体が鉛直軸周りに回転自在、昇降自在に構成されている。
【0003】
前記基板処理装置においては、基板搬送装置に対し各モジュールにおけるウエハの受け渡し位置を予め教えるティーチング作業が行われる。また初めての運転を行うとき以外にも、一定期間運転させた後、アームを取り外してアームを洗浄、メンテナンスを行う必要性があるが、その都度アームの取り付け誤差が発生するので位置調整の必要性が生じ、ティーチング作業を行う必要が生じる。このティーチング作業は、オペレータによるマニュアルの設定作業であるため操作ミスを起こす場合や受け渡し位置が適切でない場合がある。基板処理装置内はフットプリントを抑えるため密集した構造となっているなどの事情から基板保持部材がモジュールやパネル等の構造物に衝突してしまう場合がある。
【0004】
一方モジュールの搬送口が狭い、基板キャリア内の基板間隔が狭い、モジュール内のスペースの高さ寸法が小さいなどの理由から保持部材は薄い板状体として形成され、また大きな強度を確保するためにセラミック材を用いることが多い。しかし基板保持部材は、例えばセラミックスのような脆性材料が使用されている場合、衝突が起こると、破損し、割れたセラミックスの破片が周囲に飛び散る。
そのため一旦装置を止め、飛散した破片を回収する必要があるが基板処理装置内は入り組んだ構造になっていることなどから、破片の回収は困難であり、装置復旧に長い時間を要した。
【0005】
ここで特許文献1には搬送アームに折損事故が起こった場合において基板の搬送を確実に停止させる手段について記載されている。この文献1ではセラミックス製の板状体にあらかじめ折れやすい部位を設けることにより特定の折れ方をさせることで破損の検出を容易にしている。しかし本発明の課題である破損した破片の飛散の抑制、および破片の回収、装置復旧の迅速化に関しては解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−310242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、基板搬送装置に設けられた、基板保持部材が破損した場合に飛散を抑制し、破片回収の簡易化をして装置復旧までの時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は基板を保持した板状の基板保持部材が進退自在に設けられた基板搬送装置において、
前記基板保持部材は脆性材料からなる板状体と、この板状体の表面に沿って伸びるように、または広がるように設けられた延性材料からなる飛散抑制部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
「板状体の表面に沿って伸びるように、または広がるように」とは、飛散保持部材が板状体の上面または下面に固着されている場合、飛散保持部材の一部または全部が板状体の中に埋設されている場合のいずれも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、板状の脆性材料を用いた基板保持部材を備えた基板搬送装置において基板保持部材に延性材料を組み込んでいるため、基板保持部材が破損した場合に、破片の飛散が抑えられ、破片の回収が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る基板搬送装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る基板保持部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の搬送アームを示す縦断側面図である。
【図4】本発明の搬送アームを示す平面図である。
【図5】本発明に係る基板処理装置の一例を示す平面図である。
【図6】基板保持部材が破損したときの様子を示す説明図である。
【図7】折れ溝をつけた板状体を示す平面図及び側面図である。
【図8】飛散抑制部材を用いた接地手段を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態を示す分解斜視図及び側面図である。
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の基板搬送装置の第1の実施の形態について説明する。図1に示すように基板搬送装置1は下段アーム部11、中段アーム部12、上段アーム部13の順に、不図示の回転軸を介して接続されたスカラ型の多関節アームとして構成されている。またケース体内14に設けられた図示しない進退用モータ及び旋回用モータにより下段アーム部11内の回転軸または下段アーム部11の本体を回転することにより多関節アーム全体が旋回あるいは進退するようになっている。上段アーム部13は先端側に連続する基板保持部材2を備えている。
【0013】
基板保持部材2は、図2に示すように進退方向を前後方向とすると、例えば上段アーム部13との接続位置を基部23とすると、当該基部23から先端部の左右両端へ向けて夫々前方に分岐して伸びる2本のフォーク部21、22形成された板状体20を備えている。この板状体20は脆性材料、例えばアルミナ、石英、窒化アルミニウム等のセラミックスを材質とし、厚さが2mm程度に設定されている。
【0014】
左右のフォーク21、22の先端部には基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)ウエハWの前方側の周縁をガイドして規制するための段部を有するガイド部材31が例えば金属材からなるネジ41により固定されており、また基部23にはウエハWの後方側の周縁をガイドして規制するためのガイド部材32がネジ41により固定されている。
【0015】
図3、図4のように板状体20には飛散抑制部材である金属線5が設けられている。飛散抑制部材は基板保持部材2(板状体20)が物体に衝突して破損したときに破片の飛散を防止あるいは抑制するためのものであって、金属などの延性材料が用いられる。この側では飛散抑制部材は線状部材である金属線5として構成され、板状体20の板面に沿って設けられている。金属線5は板状体20の中に埋設された状態で、左側のフォーク21の先端部から当該フォーク21の左縁に沿って基部の23の左縁まで引き回され、更に基部23の後方側(基端側)の周縁、基部23右縁および右側のフォーク22の右縁を介して当該フォーク22の先端部まで引き回されている。このように金属線5を板状体20の中に埋設する構成は、セラミック粉の成形体の中に予め金属線5を埋めておき、当該成形体を焼成することにより得られる。即ち線状体は板状体20の周縁に沿って引き回されたということができる。飛散抑制部材の材質である延性材料としては、金属をはじめ、アラミド繊維等の化学繊維などを用いることができる。
【0016】
上述の基板搬送装置の適用例を図5に示す。図5は塗布、現像装置であり、B1はウエハWを収納したキャリアCが搬入されるキャリアブロック、B2は基板にレジスト膜の塗布処理を行い、露光後の基板を現像する処理ブロック、B3は処理ブロックB2と図示しない露光機との間で基板の受け渡しを行うインターフェイスブロック、Uはウエハ受け渡しステージSが複数段積層された受け渡し部である。上述実施の形態の基板搬送装置1はB1に設置されたキャリアCと受け渡し部UのステージSとの間で基板の受け渡しを行う装置として適用されている。
【0017】
次に上述実施の形態の作用について説明する。基板搬送装置1は、キャリアCからウエハWを取り出して受け渡し部Uに含まれる払い出し用のステージSに受け渡し、また現像後のウエハWを受け渡し部Uに含まれる戻り用のステージSから受け取ってキャリアCに受け渡す動作を行う。このような搬送動作は、受け渡し位置と搬送経路とが予め決められていて、基板搬送装置1の例えば駆動系のパルスエンコーダにより管理されている。このため装置の立ち上げ時やメンテナンス後の運転再開時などにおいて、予めオペレータが基板搬送装置1を手動で操作して、コンピュータに停止位置や搬送経路を覚えさせるティーチングが行われる。
【0018】
ここでティーチング時にオペレータの誤操作などにより、基板保持部材2の例えばフォーク部21、22が構造物に衝突するおそれがあるが、板状体20はセラミックスにより作られていて既述のように板厚が小さいため、特にフォーク部21、22は幅が狭いこともあって、衝突時の衝撃により板状体20が破断する場合がある。しかし板状体20には、その周囲に沿って金属線51が設けられているため、図6に示すように板状体20の破片が金属線21により繋ぎ止められ、破片の飛散が防止あるいは抑えられる。
【0019】
上述実施の形態によれば、セラミックス製の基板保持部材2を備えた基板搬送装置1において基板保持部材2に金属線5を組み込んでいるため、基板保持部材2が破損した場合に、破片の飛散が防止、あるいは抑制され、破片の回収が容易になる。従って基板保持部材2の交換により装置を速やかに復旧をさせることができ生産効率の低下を抑制できる。
【0020】
[第2の実施の形態]
また本発明では、基板保持部材2が構造物に衝突したときに、板状体20の破損個所を形成するために予め折れ溝を6作っておいてもよい。図7は二本のフォーク部21、22および基部23に各々左右方向に伸びるように断面形状がV字状の折れ溝6を形成した構成例を示している。このような構成例によれば基板保持部材2が構造物に衝突したときに曲げ応力が、折れ溝6に集中して当該部位に沿って折れ易くなることにより板状体20が複雑に折れることを防ぎ、小片状に飛散することをより確実に抑えることができる。この場合には、折れ溝6は少なくとも、基部23より折れやすい部位であるフォーク部21、22に設けるのが好ましい。また折れ溝6を形成した場合には、折れ溝6に沿って折れた場合の各破片を繋ぎ止めることができる範囲に延性材料を組み込む必要がある。
【0021】
[第3の実施の形態]
また飛散抑制部材として導電性の素材を用いることにより、ウエハの帯電を防止する帯電除去機構を構成するようにしてもよい。図8はこのような例を示し、飛散抑制部材として導電性部材、例えば銅線などの金属線を用い、金属線の一端をフォーク部21,22の先端側のネジ孔の底部に露出させ、導電性材料、例えば金属材からなるネジ41を締めたときにネジ41の下端が金属線5を押圧して両者を圧接させるようにしている。前方側のガイド部材31の材質としては、導電体例えばカーボン材が用いられ、ネジ41は金属材からなるため、ウエハWが当該ガイド部材31の上に置かれたときには、ウエハWは当該ガイド部材31及びネジ41を介して金属線5に電気的に接続されることになる。
【0022】
また金属線5の他端側についても、同様に後方側のガイド部材32を止めるネジ41のネジ孔の底部に露出し、ウエハWは当該ガイド部材32及びネジ41を介して金属線5に電気的に接続されることになる。そして金属線5の他端側は板状体20の基端側まで引き回され、当該基端側の下面に露出する電極パッド7aに接続されている。上段アーム部13における、板状体20を載せる支持面には当該支持面と面一となるように電極パッド7bが露出しており、上段アーム部13と板状体20とをネジ41で止めたときに両方の電極パッド7a、7b同士が互いに圧接される。電極パッド7bは上段アーム部13、中段アーム部12、下段アーム部11を介して電気的に接地される。従ってウエハWを基板保持部材2で保持したときにウエハWが接地されることになる。
【0023】
[その他の実施の形態]
本発明では、線状の飛散保持部材、例えば金属線5を1本だけ引き回すことに限らず、複数本を並べて引き回してもよいし、あるいは格子状に配置してもよい。
また飛散保持部材は線状部材に限らず面状部材を用いてもよい。図9は延性部材からなる、例えばポリイミドからなるフィルム51を板状体20の例えば下面全体に貼着した構成例を分解斜視図及び側面図として示している。フィルム51は板状体20の上面に貼着してもよい。更にまたフィルム51として絶縁材料を用いた場合、フィルム51にプリント配線を施しておき、このプリント配線を用いてウエハWを接地するようにして、帯電除去機構を構成するようにしてもよい。この場合、例えば板状体の下面側にネジ41と接触しかつ露出する電極パッド7aを設けておき、この電極パッド7aとフィルム上のプリント配線とを接触させると共に、当該プリント配線と既述の支持部上の電極パッド7bとを接触させるようにしてもよい。
【0024】
そして本発明は既述の折れ溝と帯電除去機構とを組み合わせた構成としてもよい。
また基板保持部材2の板状体20では、フォーク形状のものに限られるものではなく、馬蹄形状であってもよいし、例えば舌片状のような分岐のない形状に関しても適用できる。
【符号の説明】
【0025】
W ウエハ
1 基板搬送装置
2 基板保持部材
20 板状体
21、22 フォーク部
23 基部
29 破損した基体の破片
31、32 ガイド部材
41 ネジ
5 金属線
51 フィルム
6 折れ溝
7a、7b 電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持した板状の基板保持部材が進退自在に設けられた基板搬送装置において、
前記基板保持部材は脆性材料からなる板状体と、この板状体の表面に沿って伸びるように、または広がるように設けられた延性材料からなる飛散抑制部材と、を備えたことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記飛散抑制部材は線状部材または面状部材であることを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記基板保持部材には、他の部位よりも強度を小さくして衝撃が加わったときに破損個所を形成するための溝部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記飛散抑制部材は接地された導電性材料で構成されたことを特徴とする、請求項1、2ないし3のいずれか一項に記載の基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21179(P2013−21179A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154034(P2011−154034)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】