説明

基板測定装置

【課題】基板を平坦化しつつ支持するとともに測定部を基板に容易に近接させて高精度な測定を実現する。
【解決手段】基板測定装置では、第1多孔質部材211から基板9の上面91上の対象領域911の周囲に向けて第1流体が噴出され、基板9を挟んで第1多孔質部材211と対向する第2多孔質部材221から基板9の下面92に向けて第2流体が噴出される。これにより、第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間において基板9を平坦化しつつ支持することができる。また、測定部移動機構4により測定電極31を第1多孔質部材211に対して上下方向に相対的に移動することにより、第1流体の制御のみでは近接させることが困難な所望の位置(測定電極31と基板9の上面91との間の距離が0.3μmとなる位置)まで測定電極31を基板9に容易かつ迅速に近接させることができ、これにより、高精度なC−V特性の測定を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の対象領域における所定の特性を測定する基板測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子や平面表示装置等の製造において、半導体基板や平面表示装置用のガラス基板等の各種基板に対して様々な測定が行われており、例えば、特許文献1および特許文献2では、試料台上に載置された半導体基板上に測定用電極をギャップを隔てて保持した状態で行われる非接触式のC−V測定(容量−電圧測定)により半導体基板のC−V特性(容量−電圧特性)を測定する装置が開示されている。このような装置では、測定精度を向上するために、測定用電極が半導体基板に極近接した状態(例えば、測定用電極と半導体基板との間の距離が1μm以下となる状態)にて保持される。
【0003】
また、特許文献3では、ステージ状の背面電極上に載置された半導体基板上に電極であるセンサチップをギャップを隔てて保持し、センサチップの下方の測定点に光を照射しつつ測定を行うことにより、半導体基板のドーピングプロファイルや表面光電圧を測定する装置が開示されている。特許文献3の装置では、エアベアリングに空気が供給されることにより、センサチップを保持するエアベアリングアセンブリが半導体基板の上方約2mmの位置から半導体基板に向けて押し下げられ、センサチップの周囲に設けられたオリフィスから半導体基板に向けて流れる空気によりエアベアリングアセンブリと半導体基板との間に形成された空気フィルムにより支持されて半導体基板の上方約20μmの位置に浮遊する。その後、オリフィスからの空気の流出を停止することによりエアベアリングアセンブリは更に下降するが、オリフィスよりも外側にてセンサチップの周囲に設けられた多孔性リングから半導体基板に向けて流れる空気により維持される空気フィルムにより、エアベアリングアセンブリは半導体基板の上方約2μmの位置に浮遊し、この状態で上記測定が行われる。
【0004】
一方、特許文献4では、回転テーブル上に載置された光ディスクの原盤上に微小な間隙を介して対向する電子ビーム照射ヘッドから原盤に対して電子ビームを照射することにより原盤に対する情報の記録を行う装置が開示されている。特許文献4の装置は、多孔性の金属により形成されたリング状の通気体から原盤の上面に向けて圧縮気体を噴出することにより原盤に対して非接触で浮上する浮上パッドを備え、電子ビーム照射ヘッドは浮上パッドに搭載されている。これにより、原盤の厚さムラや回転ぶれ等の影響を緩和し、電子ビーム照射ヘッドと原盤との間の隙間を維持することが図られている。特許文献4の装置では、浮上パッドの通気体の内側にリング状の吸引溝が設けられており、吸引溝から空気を吸引することにより、浮上パッドを原盤の上方約5μmの位置に位置させている。
【特許文献1】特開平4−132236号公報
【特許文献2】特許第2709351号公報
【特許文献3】特表2001−505369号公報
【特許文献4】特開2003−316017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成膜やアニール等の様々な処理が行われた基板は通常、僅かな反りや傾き等を有しており、完全には平坦な形状とはなっていない。このため、特許文献1および特許文献2のように、測定用電極と基板との間の距離がいずれの位置であっても一定であるものとして測定を行う装置では測定精度の向上に限界がある。
【0006】
これに対し、特許文献4の装置では、電子ビーム照射ヘッドを原盤上にて浮上させることによりビーム照射ヘッドと原盤との距離が一定に保たれるが、ビーム照射ヘッドを原盤にさらに近接させようとすると、浮上パッドからの圧縮気体の噴出または空気の吸引を制御して浮上パッド全体を下方に移動する必要があり、ビーム照射ヘッドの高精度な位置制御が困難である。
【0007】
特許文献3の装置でも同様に、センサチップと半導体基板との間の距離を調整する際には、エアベアリングアセンブリに対する空気の供給量を調整してエアベアリングアセンブリ全体を昇降させる必要があり、センサチップの位置制御が複雑化してしまう。また、特許文献3の装置では、センサチップの位置決めの際に、エアベアリングに供給する空気量を制御することによりエアベアリングアセンブリを半導体基板の上方約20μmの位置まで下降させた後、空気の供給量を再度制御してエアベアリングアセンブリを半導体基板にさらに近接させるため、センサチップの位置決めを迅速に行うことが困難である。さらには、特許文献3の装置では、センサチップと半導体基板との間の距離が2μmとされるが、センサチップと半導体基板との間の空気フィルムによる抵抗によりセンサチップの下降が阻まれるため、空気の供給量の制御のみでは、センサチップと半導体基板とを接触させることなくこれ以上近接させることは困難であり、測定精度の向上に限界がある。
【0008】
一方、特許文献1ないし特許文献4の装置では、基板の上方に設けられた電極やビーム照射ヘッドは基板に非接触とされるが、基板の下面は試料台等とほぼ全面に亘って接触するため、下面にパーティクルが付着したり傷が付いてしまうおそれがある。また、基板の大型化に伴って試料台も大型化する必要があるが、大型の試料台では、基板が載置される上面を精度良く形成することが困難であり、試料台の製造に要するコストが増大してしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板を平坦化しつつ支持するとともに測定部を基板に容易に近接させて高精度な測定を実現することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、基板の対象領域における所定の特性を測定する基板測定装置であって、基板の一方の主面上の対象領域の周囲に向けて、第1多孔質部材から第1流体を噴出する第1流体噴出部と、前記第1流体噴出部に対向して配置され、前記基板の他方の主面に向けて第2多孔質部材から第2流体を噴出することにより、前記第1多孔質部材と前記第2多孔質部材との間にて前記基板を非接触にて支持する第2流体噴出部と、前記基板の外縁部に当接して前記基板の前記一方の主面に平行な方向への移動を制限する移動制限部と、前記基板の前記一方の主面に沿って前記第1流体噴出部を前記基板に対して相対的に移動することにより前記対象領域を変更する対象領域変更機構と、前記第1流体噴出部に取り付けられて前記基板の前記対象領域に対向する測定部と、前記測定部が前記対象領域の所定の特性を測定する際に、前記測定部を前記基板の前記一方の主面に向かう方向に前記第1流体噴出部に対して相対的に移動して前記一方の主面に非接触にて近接させる測定部移動機構とを備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板測定装置であって、前記測定部移動機構により、前記測定部の先端と前記基板の前記一方の主面との間の距離が5μm未満となるまで、前記測定部が前記一方の主面に近接する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板測定装置であって、前記第2流体噴出部が、前記基板の前記他方の主面の一部に向けて前記第2流体を噴出し、前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の基板測定装置であって、前記第1多孔質部材と前記第2多孔質部材とが同形状であり、かつ、前記基板に垂直な方向において重なっている。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の基板測定装置であって、前記第1流体および前記第2流体が気体であり、前記基板が半導体基板であり、前記第2多孔質部材が導電性または半導電性を有する材料により形成されており、前記基板測定装置が、前記測定部の前記対象領域に対向する測定電極に電圧を印加する電圧印加部と、前記測定電極と前記第2多孔質部材との間の合成容量を取得する容量測定部と、前記測定電極に印加される印加電圧を変更しつつ前記容量測定部からの出力に基づいて前記対象領域における印加電圧と合成容量との関係を求める演算部と、前記第2流体噴出部の前記第2多孔質部材に対する前記第2流体の供給、および、前記第2多孔質部材を介する流体の吸引を切り替える切替機構とをさらに備え、前記関係が取得される際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材を介する吸引が行われることにより前記基板の前記他方の主面が前記第2多孔質部材に吸着されて電気的に接続され、前記対象領域変更機構により前記第2流体噴出部が前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材からの前記第2流体の噴出が行われる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の基板測定装置であって、前記基板が前記一方の主面に絶縁膜が形成された半導体基板であり、前記測定部が、前記基板の前記対象領域に光を入射させる光源部と、前記光源部からの光の前記対象領域からの反射光を受光する受光部と、前記受光部からの出力に基づいて前記対象領域における前記絶縁膜の厚さを求める膜厚演算部とを備える。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項3または4に記載の基板測定装置であって、前記第1流体および前記第2流体が気体であり、前記基板が前記他方の主面に絶縁膜が形成された半導体基板であり、前記基板測定装置が、前記測定部の前記対象領域に対向する測定電極に電位を付与する電位付与部と、前記第2流体噴出部に取り付けられた補助電極と、前記補助電極を前記基板の前記他方の主面に向かう方向に前記第2流体噴出部に対して相対的に移動する補助電極移動機構と、前記測定電極を前記対象領域に向かう振動方向に振動させる振動部と、前記測定電極を振動させた際の前記測定電極の電極電位と前記測定電極または前記補助電極からの変位電流とに基づいて前記対象領域の表面電位を求める演算部とをさらに備え、前記表面電位が求められる際に、前記補助電極移動機構により前記補助電極が移動して前記補助電極の先端が前記基板の前記他方の主面において前記基板の基板本体に接触することにより前記基板本体に電気的に接続され、前記対象領域変更機構により前記第2流体噴出部が前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する際に、前記補助電極移動機構により前記補助電極が前記他方の主面から離間される。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項3または4に記載の基板測定装置であって、前記第1流体および前記第2流体が気体であり、前記基板が半導体基板であり、前記第2多孔質部材が導電性または半導電性を有する材料により形成されており、前記基板測定装置が、前記測定部の前記対象領域に対向する測定電極に電位を付与する電位付与部と、前記測定電極を前記対象領域に向かう振動方向に振動させる振動部と、前記測定電極を振動させた際の前記測定電極の電極電位と前記測定電極または前記第2多孔質部材からの変位電流とに基づいて前記対象領域の表面電位を求める演算部と、前記第2流体噴出部の前記第2多孔質部材に対する前記第2流体の供給、および、前記第2多孔質部材を介する流体の吸引を切り替える切替機構とをさらに備え、前記表面電位が求められる際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材を介する吸引が行われることにより前記基板の前記他方の主面が前記第2多孔質部材に吸着されて電気的に接続され、前記対象領域変更機構により前記第2流体噴出部が前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材からの前記第2流体の噴出が行われる。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板測定装置であって、前記測定部からの出力を演算処理する演算部をさらに備え、前記第1流体および前記第2流体が気体であり、前記基板が半導体基板であり、前記測定部からの出力に基づいて前記演算部により前記対象領域における前記基板の電気特性が取得される。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の基板測定装置であって、前記第1多孔質部材が、前記対象領域の周囲を囲む環状である。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の基板測定装置であって、前記第1多孔質部材が、円環状である。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項10または11に記載の基板測定装置であって、前記第1流体噴出部が、前記第1多孔質部材の前記基板とは反対側において前記第1多孔質部材の内側の空間を閉塞する閉塞部を備える。
【0022】
請求項13に記載の発明は、請求項10ないし12のいずれかに記載の基板測定装置であって、前記測定部と前記対象領域との間の空間が、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とされる。
【0023】
請求項14に記載の発明は、請求項1ないし13のいずれかに記載の基板測定装置であって、前記基板の前記外縁部近傍において前記基板を補助的に支持する補助支持部をさらに備える。
【0024】
請求項15に記載の発明は、請求項1ないし14のいずれかに記載の基板測定装置であって、前記測定部移動機構が、前記第1流体噴出部に固定された案内部と前記測定部に設けられた移動部との間の間隙に向けて支持用流体を噴出することにより、前記案内部と前記移動部とを非接触状態としつつ前記測定部を案内する直動案内機構を備える。
【0025】
請求項16に記載の発明は、請求項1ないし15のいずれかに記載の基板測定装置であって、前記測定部移動機構が、前記測定部の移動方向に伸縮することにより前記測定部を移動する圧電素子を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、基板を平坦化しつつ支持するとともに測定部を基板に容易に近接させて高精度な測定を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板測定装置1の構成を示す平面図である。また、図2は、基板測定装置1を図1中のA−Aの位置にて切断した縦断面図である。基板測定装置1は、表面に絶縁膜が形成された円板状の半導体基板9(以下、「基板9」という。)のC−V特性(すなわち、容量−電圧特性)を測定する装置である。
【0028】
図1および図2に示すように、基板測定装置1は、基板9を支持する基板支持機構2、および、基板支持機構2の後述する第1流体噴出部21に取り付けられて基板9に対向する測定部3を備える。以下の説明では、図2に示す基板9の一方の主面91(図2中の上側の主面であり、以下、「上面91」という。)上において、測定部3と対向してC−V特性の測定対象となる領域を、「対象領域911」という。
【0029】
図2に示すように、基板支持機構2は、基板9の上方に配置される第1流体噴出部21、および、基板9の下方において基板9を挟んで第1流体噴出部21に対向して配置される第2流体噴出部22を備え、第1流体噴出部21は、図1に示すように、平面視において円形である。以下の説明では、図2に示す基板9の第2流体噴出部22側の主面92(すなわち、上面91とは反対側の他方の主面)を、「下面92」という。
【0030】
第1流体噴出部21は、基板9の上面91上の対象領域911の周囲を囲む円環状であるとともに対象領域911の周囲(すなわち、上面91の一部)に向けて流体を噴出する第1多孔質部材211を備える。第1多孔質部材211の内周縁および外周縁の中心は一致している。
【0031】
また、第1流体噴出部21は、第1多孔質部材211の上側において第1多孔質部材211を支持する第1支持ブロック212をさらに備え、第1支持ブロック212は、第1多孔質部材211の内側の空間(すなわち、第1多孔質部材211の内周縁よりも内側の空間)を第1多孔質部材211の基板9とは反対側において閉塞する閉塞部となっている。
【0032】
第2流体噴出部22は、第1流体噴出部21の第1多孔質部材211と対向するとともに基板9の下面92の一部に向けて流体を噴出する第2多孔質部材221を備える。第2多孔質部材221は、平面視において第1多孔質部材211と同形状(すなわち、内周縁および外周縁の中心が一致する円環状)であり、かつ、基板9に垂直な方向において第1多孔質部材211と重なる。
【0033】
また、第2流体噴出部22は、第2多孔質部材221の下側において第2多孔質部材221を支持する第2支持ブロック222をさらに備え、第2支持ブロック222は、第2多孔質部材221の内側の空間(すなわち、第2多孔質部材221の内周縁よりも内側の空間)を第2多孔質部材221の基板9とは反対側において閉塞する閉塞部となっている。平面視において、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221の面積は、基板9の面積に比べて小さい。
【0034】
第1多孔質部材211は多孔質セラミック等により形成され、第2多孔質部材221は、導電性多孔質セラミックや多孔質ステンレス材料等の導電性を有する多孔質材料により形成される。第1多孔質部材211および第2多孔質部材221のそれぞれの空孔率は、好ましくは、1%以上10%以下(より好ましくは、3%以上5%以下)とされる。また、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221の内径は、好ましくは、10mm以上50mm以下とされ、両多孔質部材の外径は、好ましくは、50mm以上100mm以下とされる。ただし、両多孔質部材の外径と内径との差は、10mm以上とされる。
【0035】
第1多孔質部材211の内部には、略円環状の流路(図示省略)が形成されており、当該流路は、第1支持ブロック212の内部に形成された第1供給流路214を介して図示省略の第1流体供給装置に接続されている。第1流体噴出部21では、第1流体供給装置から第1供給流路214を介して第1多孔質部材211の流路に流体(以下の説明では、「第1流体」という。)が供給されることにより、第1多孔質部材211の下面全体から基板9の上面91に向けて第1流体が均一に噴出する。また、第1供給流路214は、後述するエアベアリング42の多孔質部材により形成された案内部421(図4参照)にも接続されている。
【0036】
第2多孔質部材221の内部には、第1多孔質部材211と同様に略円環状の流路(図示省略)が形成されており、当該流路は、第2支持ブロック222の内部に形成された第2供給流路224、および、第2流体噴出部22の外部に設けられた切替機構225を介して図示省略の第2流体供給装置および真空ポンプに接続されている。第2流体噴出部22では、切替機構225により第2供給流路224と第2流体供給装置が接続されることにより、第2多孔質部材221の流路に対する流体(以下の説明では、「第2流体」という。)の供給が行われ、第2多孔質部材221の上面全体から基板9の下面92に向けて第2流体が均一に噴出する。また、切替機構225により第2供給流路224と真空ポンプが接続されることにより、第2多孔質部材221を介する第2多孔質部材221の周囲の流体の吸引が行われる。このように、基板測定装置1では、切替機構225により、第2多孔質部材221に対する第2流体の供給、および、第2多孔質部材221を介する流体の吸引が切り替えられる。
【0037】
基板支持機構2では、第1流体噴出部21の第1多孔質部材211、および、第2流体噴出部22の第2多孔質部材221から基板9に向けて第1流体および第2流体を噴出することにより、基板9が第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間にて非接触にて支持される。本実施の形態では、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221から噴出される第1流体および第2流体は気体(例えば、窒素(N)ガス)であり、第1多孔質部材211と基板9の上面91との間の距離(すなわち、基板9に垂直な方向に関する距離)は、5μm以上30μm以下とされる。また、第2多孔質部材221と基板9の下面92との間の距離も、5μm以上30μm以下とされる。なお、第1流体および第2流体は同一の流体でもよく、種類が異なる流体でもよい。
【0038】
ところで、基板9は、成膜やアニール等の様々な処理が行われることにより、僅かな反りや傾きを有しており、完全には平坦な形状とはなっていない。基板支持機構2では、基板9の第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間の部位が、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221から噴出される第1流体および第2流体により、上下両側から(すなわち、上面91および下面92から)押圧されて平坦化される。
【0039】
基板支持機構2は、図1および図2に示すように、基板9の周囲に配置される円環状のガイド部23を備え、ガイド部23は、基板9の外縁部93において、基板9の外周面に全周に亘って当接または対向し、基板9の上面91および下面92に平行な方向への移動を制限する円環状の移動制限部231を備える。ガイド部23は、また、図2に示すように、基板9の外縁部93近傍において、複数の支持ピン233を基板9の下面92に当接させることにより、基板9を補助的に支持する補助支持部232を備える。本実施の形態では、3つ以上の支持ピン233が等角度ピッチにて配列されている。
【0040】
基板支持機構2は、また、図1に示すように、基板9の中心を通るとともに基板9に垂直な中心軸を中心として、基板9をガイド部23と共に回転する基板回転機構24を備える。基板回転機構24は、第1モータ241、第1モータ241の回転軸に取り付けられたプーリ242、並びに、プーリ242の外周面およびガイド部23の外周面に当接する環状のベルト243を備える。基板回転機構24では、第1モータ241によりプーリ242が図1中の時計回りに回転することにより、ベルト243を介してガイド部23が基板9と共に図1中の時計回りに回転される。
【0041】
図3は、基板測定装置1を図1中のB−Bの位置にて切断した縦断面図である。図1および図3に示すように、基板測定装置1の基板支持機構2は、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22を基板9の上面91および下面92に沿って図1中の左右方向に移動する噴出部移動機構25を備える。図1に示すように、噴出部移動機構25は、第2モータ251、第2モータ251に接続されるボールねじ252、ボールねじ252に螺合するナット253、および、ナット253に固定されるとともに第1流体噴出部21を保持する第1アーム254を備え、図3に示すように、ナット253に固定されるとともに第2流体噴出部22を保持する第2アーム255を備える。第1流体噴出部21の第1支持ブロック212および第2流体噴出部22の第2支持ブロック222はそれぞれ、第1アーム254および第2アーム255に固定される。
【0042】
図1に示す噴出部移動機構25では、第2モータ251によりボールねじ252が回転することにより、ナット253がボールねじ252に沿って移動し、これにより、第1アーム254および第1流体噴出部21が、ボールねじ252に平行に設けられたスライダ256に沿って基板9に対して相対的に移動する。また、図3に示す第2アーム255および第2流体噴出部22も、第1流体噴出部21と共に、スライダ256に沿って基板9に対して相対的に移動する。
【0043】
図1に示す基板測定装置1では、基板回転機構24により、基板9が中心軸を中心として回転するとともに、噴出部移動機構25により、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22(図2参照)が基板9の上面91および下面92(図2参照)に沿って移動することにより、第1流体噴出部21に取り付けられた測定部3が基板9に対して相対的に移動する。
【0044】
図2に示すように、測定部3の先端に設けられた測定電極31は、円環状の第1多孔質部材211の内側の空間を介して基板9の上面91に向けられているため、基板9の上面91において測定部3が対向する対象領域911は、平面視における第1多孔質部材211の内側の円形の領域に含まれる。基板測定装置1では、第1流体噴出部21の基板9に対する相対移動により、基板9の上面91において対象領域911が変更される。すなわち、基板支持機構2では、基板回転機構24および噴出部移動機構25が、基板9の上面91に沿って第1流体噴出部21を基板に対して相対的に移動することにより対象領域911を変更する対象領域変更機構となっている。
【0045】
図4は、図2に示す基板測定装置1の測定部3近傍の部位を拡大して示す縦断面図であり、基板測定装置1のC−V測定(すなわち、容量−電圧測定)に係る他の構成も併せて示している。図4では、図示の都合上、第1供給流路214および第2供給流路224の図示を省略している(図6、図7および図9においても同様)。
【0046】
図4に示すように、基板測定装置1は、測定部3を基板9の上面91に垂直な方向に第1流体噴出部21に対して相対的に移動する測定部移動機構4を備え、測定部移動機構4は、基板9の上面91に垂直な上下方向(すなわち、測定部3の移動方向)に伸縮することにより測定部3の測定電極31を移動する圧電素子41、および、測定部3を移動方向に案内する直動案内機構であるエアベアリング42を備える。エアベアリング42は、第1流体噴出部21の第1多孔質部材211の内周面に固定された円筒状の案内部421を備え、案内部421の内側には、測定電極31が先端に固定された円柱状の電極保持部32が、案内部421に対向する移動部として案内部421と非接触にて配置される。
【0047】
基板測定装置1では、上述の第1供給流路214(図2参照)を介して多孔質部材により形成された案内部421へと第1流体が供給され、案内部421と測定部3に設けられた電極保持部32との間の間隙に向けて第1流体が支持用流体として噴出することにより、測定部3の電極保持部32が案内部421と非接触状態にて支持される。そして、圧電素子41が伸縮することにより、測定電極31がエアベアリング42に案内されつつ基板9の上面91に垂直な移動方向に移動する。
【0048】
基板測定装置1は、また、対象領域911に対向する測定電極31に接続されて測定電極31に交流電圧を印加する電圧印加部51、測定電極31および第2多孔質部材221に接続されて測定電極31と第2多孔質部材221との間の合成容量を取得する容量測定部である容量メータ52、電圧印加部51から測定電極31に印加される電圧を変更しつつ容量メータ52からの出力に基づいて対象領域911における印加電圧と合成容量との関係(すなわち、C−V特性)を求める特性演算部53、並びに、測定部移動機構4の圧電素子41による測定電極31の移動を制御する移動制御部54を備える。
【0049】
次に、基板測定装置1による対象領域911のC−V特性の測定について説明する。図5は、C−V特性の測定の流れを示す図である。図4に示す基板測定装置1では、まず、第1流体噴出部21に第1流体(窒素)が供給されて第1多孔質部材211の下面から基板9の上面91に向けて第1流体が噴出される。また、第1流体の噴出と並行して、切替機構225により第2流体供給装置と第2供給流路224(図2参照)とが接続されることにより、第2流体噴出部22に第2流体(窒素)が供給されて第2多孔質部材221の上面から基板9の下面92に向けて第2流体が噴出される。これにより、基板9が第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間で非接触にて保持される(ステップS11)。
【0050】
第1多孔質部材211の下面と基板9との上面91との間の距離、および、第2流体噴出部22の上面と基板9の下面92との間の距離は、上述のように5μm以上30μm以下とされる。また、第1多孔質部材211の内側の空間および第2多孔質部材221の内側の空間が、不活性ガス雰囲気とされる。一方、第1流体噴出部21に供給された第1流体は、エアベアリング42の案内部421の内周面からも噴出し、測定部3の電極保持部32が案内部421に非接触にて支持される。
【0051】
続いて、基板回転機構24および噴出部移動機構25(図2および図3参照)により、第2流体噴出部22が第1流体噴出部21と共に基板9に対して相対的に移動し、基板9の上面91の対象領域911が、第1流体噴出部21に取り付けられた測定部3の測定電極31の下方に位置して測定電極31に対向する(ステップS12)。上述のように、第1多孔質部材211の内側の空間は不活性ガス雰囲気とされるため、測定部3の測定電極31と対象領域911との間の空間も不活性ガス雰囲気とされる。なお、第1流体噴出部21では、第1多孔質部材211の内側の空間が、エアベアリング42の案内部421および測定部3の電極保持部32によりほぼ閉塞されているため、第1支持ブロック212により第1多孔質部材211の内側の空間が閉塞されていない場合であっても、第1多孔質部材211および案内部421から噴出される窒素ガスにより、測定電極31と対象領域911との間の空間は不活性ガス雰囲気とされる。
【0052】
次に、切替機構225により第2供給流路224(図2参照)が真空ポンプに接続されることにより、第2流体噴出部22の第2多孔質部材221を介する吸引が行われ、基板9の下面92が第2多孔質部材221に吸着される(ステップS13)。これにより、基板9の下面92と第2多孔質部材221とが接触し、電気的に接続される。
【0053】
基板9が第2多孔質部材221に吸着されると、測定部3の測定電極31に電圧印加部51から電圧が印加され、この状態で測定電極31の移動方向の位置決めが行われる(ステップS14)。以下、測定電極31の位置決め時に測定電極31に印加される電圧を「位置決め時電圧」と呼び、位置決め時電圧は、電圧が多少変動した場合であっても測定電極31と第2多孔質部材221との間の合成容量の値がほとんど変動しない範囲内の値とされる。
【0054】
測定電極31の位置決めは、以下の手順にて行われる。測定電極31と基板9の上面91との間の距離の目標値が、例えば、0.3μmと設定されているとすると、測定電極31と基板9の上面91との間の距離が0.3μmであって測定電極31に位置決め時電圧が付与された際の測定電極31と第2多孔質部材221との間の合成容量が理論計算により求められて移動制御部54に予め記憶される。そして、測定電極31に位置決め時電圧が印加された状態で移動制御部54により圧電素子41が制御され、測定電極31が電極保持部32と共に基板9の上面91に向かう方向に移動し、基板9の上面91に非接触にて近接する。
【0055】
基板測定装置1では、測定電極31の移動と並行して容量メータ52からの出力である合成容量(以下、「測定合成容量」という。)が移動制御部54へと送られ、移動制御部54に予め記憶されている合成容量の理論値(以下、「目標合成容量」という。)と比較される。そして、測定合成容量が目標合成容量に等しくなるまで測定電極31が基板9の上面91へと近づけられることにより、測定電極31と対象領域911との間の距離が0.3μmとされ、測定電極31の位置決めが終了する。
【0056】
測定電極31の位置決めが終了すると、電圧印加部51により測定電極31に印加される印加電圧が所定の範囲内で漸次増大または漸次減少されるとともに容量メータ52により測定電極31と第2多孔質部材221との間の合成容量が継続的に取得される。容量メータ52からの出力は特性演算部53に送られ、特性演算部53にて対象領域911における印加電圧と合成容量との関係(すなわち、C−V特性)が求められる(ステップS15)。
【0057】
特性演算部53では、ステップS15にて得られたC−V特性に対し、特開平4−132236号公報および特許第2709351号公報に記載の方法にて測定電極31と基板9との間のギャップの静電容量成分を差し引き、また、絶縁膜内の電荷に起因する電圧、および、測定電極31と基板9の基板本体との間の仕事関数の差による影響を補正することにより、測定電極が基板9の上面91に接するタイプの接触式基板測定装置により取得されるC−V特性とほぼ同等のC−V特性が求められる。
【0058】
対象領域911のC−V特性が求められると、圧電素子41の収縮により測定電極31が基板9の上面91から離れる方向に移動する(ステップS16)。続いて、切替機構225により第2流体供給装置と第2供給流路224とが接続されることにより、第2流体噴出部22に第2流体が供給されて第2多孔質部材221の上面から基板9の下面92にむけて第2流体が噴出される。これにより、第2多孔質部材221が基板9から離間し、基板9が第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間で非接触にて保持される(ステップS17)。
【0059】
次の測定点がある場合には、ステップS12に戻り、基板回転機構24および噴出部移動機構25により、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22が基板9に対して相対的に移動して対象領域911が変更される(ステップS18,S12)。そして、上記と同様に、第2多孔質部材221による基板9の吸着、測定電極31の位置決め、および、C−V特性の取得が行われた後(ステップS13〜S15)、測定電極31が基板9から離れる方向に移動し、第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間にて基板9が非接触にて保持される(ステップS16,S17)。このように、基板測定装置1では、複数の測定点に対してC−V特性の取得が順次行われる。
【0060】
以上に説明したように、基板測定装置1の基板支持機構2では、第1流体噴出部21の第1多孔質部材211から、基板9の上面91上の対象領域911の周囲に向けて第1流体が噴出され、基板9を挟んで第1流体噴出部21と対向する第2流体噴出部22の第2多孔質部材221から、基板9の下面92に向けて第2流体が噴出される。これにより、第1流体噴出部21と第2流体噴出部22との間において基板9を平坦化しつつ(すなわち、対象領域911を平坦化しつつ)支持することができる。
【0061】
また、基板9と第1流体噴出部21の第1多孔質部材211との間の距離を、オートフォーカス機構等の他の機構を設けることなく、簡素な構造で一定に維持することができる。その結果、測定部3の測定電極31を基板9に近接した位置(本実施の形態では、測定電極31と基板9の上面91との間の距離が5μm〜30μmとなる位置)に容易かつ迅速に位置させることができるため、フォーカス調整等に要する作業時間を削減することができ、測定の高速化が実現される。
【0062】
ところで、基板測定装置1では、測定電極31と基板9の上面91との間の第1流体(窒素ガス)層の抵抗により、第1流体の噴出量の制御のみでは、第1多孔質部材211と基板9とを接触させることなく第1多孔質部材211をこれ以上基板9の上面に近接させることは困難である。そこで、平面視における面積が第1多孔質部材211に比べて小さいため基板9の上面91との間の窒素ガス層の抵抗が小さい測定電極31を、上述のように測定部移動機構4により第1多孔質部材211に対して相対的に移動することにより、第1多孔質部材211の下面から基板9へ向けて突出させ、さらに基板9に近接した位置(本実施の形態では、測定電極31と基板9の上面91との間の距離が0.3μmとなる位置)まで容易かつ迅速に移動することができる。
【0063】
このように基板測定装置1では、窒素ガス層の抵抗により流体制御のみでは非接触の状態を維持しつつ近接させることが困難な範囲(すなわち、測定部3の先端の測定電極31と基板9の上面91との間の距離が5μm未満となる範囲)まで、測定電極31が基板9の上面91に近接することにより、C−V特性の高精度な測定を実現することができる。したがって、基板測定装置1の構造は、測定部の先端と基板の上面との間の距離が5μm未満となる範囲まで測定部を基板の上面に近接させる必要がある装置に特に適している。
【0064】
基板の下面全体を吸着保持する従来の基板保持装置の場合、当該基板保持装置のステージに接触する基板の下面全体にパーティクルが付着したり傷が付いてしまうおそれがある。これに対し、本実施の形態に係る基板測定装置1の基板支持機構2では、第2多孔質部材221がC−V特性の測定時を除き基板9に対して非接触とされるため、基板9の下面92に対するパーティクルの付着や下面92の損傷を抑制することができる。
【0065】
基板測定装置1では、第1流体噴出部21が基板回転機構24および噴出部移動機構25により基板9の上面91に対して相対移動することにより、C−V特性の測定対象となる対象領域911が変更される。このとき、第1流体噴出部21が基板9に接触することなく迅速に相対移動することにより、対象領域911の変更を迅速に行うことができる。その結果、基板9上の複数の測定点におけるC−V特性の測定を迅速に行うことができる。
【0066】
また、基板測定装置1では、第2流体噴出部22が、第2多孔質部材221から基板9の下面92の一部に向けて第2流体を噴出し、第1流体噴出部21と共に基板9に対して相対移動する構造とされることにより、第2流体噴出部22の第2多孔質部材221を小型化することができる。さらには、C−V特性の測定時にのみ、導電性を有する第2多孔質部材221により基板9を吸着することにより、基板9の下面92側の電極の設置を簡素な構造にて実現することができる。
【0067】
上述の従来の基板保持装置の場合、基板が大型化すると基板を保持するステージも大型化する必要がある。しかしながら、大型ステージの上面を精度良く形成することは困難であり、高精度な大型ステージの製造には多大なコストが必要となる。これに対して、本実施の形態に係る基板測定装置1の基板支持機構2では、第2多孔質部材221を小型化することができるため、比較的大型の基板を支持する場合であっても、従来の基板保持装置のステージに比べて、製造コストを低減しつつ第2多孔質部材221の上面(すなわち、基板9の下面92に対向する面)を高精度に形成することができる。その結果、第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間における基板9の平坦化をより高精度に実現することができる。また、基板9の下面92と第2多孔質部材221との間の所望の接触面積を確保することができる。
【0068】
基板測定装置1では、第2多孔質部材221が、第1多孔質部材211と同形状とされ、中心軸方向において第2多孔質部材221が第1多孔質部材211に重ねて配置される。これにより、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221において、基板9の平坦化に寄与しない部分が省かれ、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221を共に小型化することができる。
【0069】
第1流体噴出部21では、第1多孔質部材211が対象領域911の周囲を囲む環状とされることにより、対象領域911の周囲において基板9に対する押圧力の均一性を向上することができ、第1流体噴出部21と第2流体噴出部22との間において基板9をより平坦化することができる。また、第1多孔質部材211が円環状とされることにより、対象領域911の周囲において基板9に対する押圧力の均一性をより向上することができ、第1流体噴出部21と第2流体噴出部22との間において基板9をさらに平坦化することができる。その結果、基板測定装置1において、基板9のC−V特性の測定をより高精度に行うことができる。
【0070】
また、第1流体噴出部21では、第1多孔質部材211が円環状とされることにより、第1多孔質部材211を容易に形成することもできる。第2流体噴出部22においても同様に、第2多孔質部材221が円環状とされることにより、対象領域911をより平坦化することができるとともに第2多孔質部材221を容易に形成することができる。
【0071】
第1流体噴出部21では、第1多孔質部材211の内側の空間が第1支持ブロック212により閉塞されることにより、C−V特性の測定時に浮遊パーティクル等が対象領域911に付着することが防止されるとともに、対象領域911上の空間を測定に適した雰囲気とすることが容易に実現される。また、上述のように、第1流体が窒素ガスとされて第1多孔質部材211の内側の空間が不活性ガス雰囲気とされることにより、より高精度なC−V特性の測定が可能とされる。
【0072】
基板測定装置1では、第1多孔質部材211と基板9の上面91との間の距離、および、第2多孔質部材221と基板9の下面92との間の距離が5μm以上とされることにより、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22の移動時に、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221が基板9と接触することを確実に防止することができる。また、上記距離が30μm以下とされることにより、基板9の第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間の部位を十分に平坦化することができる。
【0073】
また、基板支持機構2では、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22から噴出される第1流体および第2流体が気体とされることにより、基板支持機構2の構造を簡素化することができる。さらには、基板9を補助的に支持する補助支持部232が設けられることにより、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22のみにより基板9を支持する場合に比べて、基板9をより安定して支持することができる。
【0074】
基板測定装置1の測定部移動機構4では、測定部3の測定電極31を移動方向に案内する直動案内機構としてエアベアリング42が利用されることにより、測定電極31の移動方向への移動を高精度に行うことができる。また、測定電極31の移動時における電極保持部32と案内部421との摩擦が防止され、摩擦により生じるパーティクル等による基板9の汚染が防止される。さらには、測定部移動機構4において圧電素子41により測定電極31を移動することにより、測定電極31の移動方向への移動がより高精度に行われる。
【0075】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板測定装置について説明する。図6は、第2の実施の形態に係る基板測定装置1aの一部を示す縦断面図であり、第1の実施の形態に係る基板測定装置1の図4に対応する。図6に示すように、基板測定装置1aでは、図1ないし図4に示す基板測定装置1の各構成に加えて、測定部3が、エリプソメータを構成する光源部33、受光部34および膜厚演算部35を備える。その他の構成は、図1ないし図4に示す基板測定装置1と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。なお、図6では、図示の都合上、電圧印加部51、容量メータ52、特性演算部53および移動制御部54の図示を省略している。
【0076】
光源部33は、図示省略の半導体レーザ(LD)および電磁シャッタを備え、電磁シャッタが開口している状態では、半導体レーザからの光が、第1流体噴出部21に形成された貫通孔を通過して基板9の対象領域911に斜めに(すなわち、基板9の上面91に対して傾斜して)入射する。光源部33からの光の対象領域911からの反射光は、第1流体噴出部21に形成されたもう1つの貫通孔を介して受光部34へと入射して受光される。
【0077】
受光部34は、図示省略のフォトニック結晶により形成された1/4波長板アレイ(以下、「λ/4板アレイ」という。)および偏光子アレイ、並びに、CCD(Charge Coupled Device)を備える。λ/4板アレイでは、結晶軸が互いに異なる複数の領域がストライプ状に配列されており、偏光子アレイにおいても同様に、結晶軸が互いに異なる複数の領域がストライプ状に配列されている。偏光子アレイは、ストライプ状の複数の領域の配列方向が、λ/4板アレイのストライプ状の複数の領域の配列方向に垂直となるように配置される。
【0078】
基板測定装置1aでは、光源部33および受光部34が支持部材331,341をそれぞれ介して電極保持部32に固定されており、測定部移動機構4の圧電素子41により、測定電極31および電極保持部32と共に基板9の上面91に垂直な上下方向(すなわち、測定電極31の移動方向)に移動する。
【0079】
基板測定装置1aによる対象領域911のC−V特性の測定は、第1の実施の形態とほぼ同様であるが、図5に示すステップS14とステップS16との間において、光源部33、受光部34および膜厚演算部35により対象領域911における絶縁膜の厚さが求められる点が異なる。
【0080】
基板測定装置1aでは、測定部移動機構4により光源部33および受光部34が上下方向に移動されることによりフォーカス調整が行われた後、光源部33の半導体レーザから出射された光が基板9上の対象領域911に入射し、対象領域911にて反射された反射光が、受光部34のλ/4板アレイおよび偏光子アレイを介してCCDに入射する。そして、CCDにより、様々な結晶軸を有するλ/4板と偏光子の組み合わせを透過した光の強度(すなわち、反射光の偏光状態を示すデータ)が取得されて膜厚演算部35に出力され、膜厚演算部35において偏光解析法により当該出力に基づいて対象領域911における絶縁膜の厚さが求められる。膜厚演算部35により求められた絶縁膜の厚さは特性演算部53(図4参照)に送られ、特性演算部53によりC−V特性が求められる際に利用される。
【0081】
第2の実施の形態に係る基板測定装置1aでは、第1の実施の形態と同様に、基板9を平坦化しつつ支持するとともに、第1流体の制御のみでは近接させることが困難な位置まで測定部3の測定電極31を基板9に容易かつ迅速に近接させることができ、これにより、高精度なC−V特性の測定を実現することができる。また、C−V特性の測定の高速化も実現される。
【0082】
基板測定装置1aでは、特に、測定部3に設けられたエリプソメータ(すなわち、光源部33、受光部34および膜厚演算部35)により、対象領域911における絶縁膜の厚さが高精度に求められることにより、C−V特性の測定をより高精度に行うことができる。また、測定電極31を移動する測定部移動機構4をエリプソメータのフォーカス調整に利用することにより、基板測定装置1aの構造が簡素化される。なお、基板測定装置1aでは、エリプソメータに代えて、光干渉法による膜厚測定を行う構成が測定部3に設けられてもよい。
【0083】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る基板測定装置について説明する。図7は、第3の実施の形態に係る基板測定装置1bの一部を示す縦断面図であり、第1の実施の形態に係る基板測定装置1の図4に対応する。基板測定装置1bは、上面91に絶縁膜が形成された基板9の対象領域911の表面電位を、交流法の1つである振動容量法にて測定する装置である。
【0084】
基板測定装置1bでは、図4に示す基板測定装置1の電圧印加部51、容量メータ52および特性演算部53に代えて、図7に示すように、測定部3の測定電極31に電位を付与する電位付与部55、様々な電気的信号を処理する回路やデバイスの集合である処理部57、および、対象領域911の表面電位を求める表面電位演算部56が設けられ、処理部57は測定電極31および導電性を有する第2多孔質部材221に接続される。その他の構成は、図1ないし図4に示す基板測定装置1と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。
【0085】
図8は、基板測定装置1bによる表面電位測定の流れを示す図である。表面電位の測定が行われる際には、第1の実施の形態と同様に、第1流体噴出部21に第1流体が供給されて第1多孔質部材211の下面から基板9の上面91に向けて第1流体が噴出される。また、第1流体の噴出と並行して、切替機構225により第2流体供給装置と第2供給流路224(図2参照)とが接続されることにより、第2流体噴出部22に第2流体が供給されて第2多孔質部材221の上面から基板9の下面92にむけて第2流体が噴出される。これにより、基板9が第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間で非接触にて保持される(ステップS21)。
【0086】
続いて、基板回転機構24および噴出部移動機構25(図2および図3参照)により、第2流体噴出部22が第1流体噴出部21と共に基板9に対して相対的に移動し、基板9の上面91の対象領域911が、第1流体噴出部21に取り付けられた測定部3の測定電極31の下方に位置して測定電極31に対向する(ステップS22)。
【0087】
次に、切替機構225により第2供給流路224が真空ポンプに接続されることにより、第2流体噴出部22の第2多孔質部材221を介する吸引が行われ、基板9の下面92が第2多孔質部材221に吸着される(ステップS23)。これにより、基板9の下面92と第2多孔質部材221とが電気的に接続される。
【0088】
基板9が第2多孔質部材221に吸着されると、測定部移動機構4の圧電素子41により測定電極31が基板9の上面91に向けて移動し、測定電極31が第1多孔質部材211の下面よりも基板9の上面91に近い所望の位置に位置する(ステップS24)。そして、圧電素子41により基板9に向かう上下方向(すなわち、振動方向)における測定電極31の振動が開始されるとともに、第2多孔質部材221から処理部57へと出力される微小な電流(測定電極31の振動により測定電極31と基板9との間の静電容量が変化することに起因して発生する交流電流であり、以下、「変位電流」という。)が所定の値となるように、電位付与部55から測定電極31に付与される電位(以下、「電極電位」という。)が制御され、当該電極電位が表面電位演算部56により取得される。基板測定装置1bでは、圧電素子41が、測定電極31を対象領域911に向かう上下方向に振動する振動部となっている。なお、圧電素子41とは別に測定電極31を上下方向に振動する振動部が設けられてもよい。
【0089】
電極電位の取得が完了すると、変位電流の指定値の変更および電極電位の取得が複数回繰り返され、これにより、測定電極31を振動させた際の変位電流と電極電位との関係(すなわち、複数の組み合わせ)が取得され、当該関係に基づいて表面電位演算部56により基板9の対象領域911における表面電位が求められる(ステップS25)。
【0090】
対象領域911の表面電位が求められると、測定電極31が基板9の上面91から離れる方向に移動する(ステップS26)。続いて、第2多孔質部材221の上面から基板9の下面92にむけて第2流体が噴出されて第2多孔質部材221が基板9から離間し、基板9が第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間で非接触にて保持される(ステップS27)。
【0091】
次の測定点がある場合には、ステップS22に戻り、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22が基板9に対して相対的に移動して対象領域911が変更される(ステップS28,S22)。そして、上記と同様に、第2多孔質部材221による基板9の吸着、測定電極31の移動、および、表面電位の取得が行われた後(ステップS23〜S25)、測定電極31が基板9から離れる方向に移動して基板9が非接触にて保持される(ステップS26,S27)。このように、基板測定装置1bでは、複数の測定点に対して表面電位の取得が順次行われる。
【0092】
第3の実施の形態に係る基板測定装置1bでは、第1の実施の形態と同様に、基板9を平坦化しつつ支持するとともに、第1流体の制御のみでは近接させることが困難な位置まで測定部3の測定電極31を基板9に容易かつ迅速に近接させることができ、これにより、高精度な表面電位の測定を実現することができるとともに表面電位の測定の高速化も実現される。また、表面電位の測定時にのみ、導電性を有する第2多孔質部材221により基板9を吸着することにより、基板9の下面92との導通を簡素な構造にて実現することができる。さらには、第2多孔質部材221が表面電位の測定時を除き基板9に対して非接触とされるため、基板9の下面92に対するパーティクルの付着や下面92の損傷を抑制することができるとともに対象領域911の変更を迅速に行って基板9上の複数の測定点における表面電位の測定を迅速に行うことができる。
【0093】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る基板測定装置について説明する。図9は、第4の実施の形態に係る基板測定装置1cの一部を示す縦断面図であり、第1の実施の形態に係る基板測定装置1の図4に対応する。基板測定装置1cは、上面91および下面92に絶縁膜が形成された基板9の上面91の対象領域911の表面電位を、第3の実施の形態に係る基板測定装置1bと同様の振動容量法にて測定する装置である。
【0094】
基板測定装置1cでは、図7に示す基板測定装置1bの切替機構225が省略され、図9に示す第2流体噴出部22の第2多孔質部材221は第2流体供給装置のみと接続される。また、基板9の下面92に対向する先端が尖った針状の補助電極61、および、補助電極61を基板9の下面92に向かう方向に第2流体噴出部22に対して相対的に移動する補助電極移動機構であるエアシリンダ62が第2流体噴出部22に取り付けられる。その他の構成は、図7に示す基板測定装置1bと同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。
【0095】
基板測定装置1cによる表面電位測定の流れは、図8に示す流れとほぼ同様であるが、ステップS23における第2多孔質部材221による基板9の吸着に代えて、エアシリンダ62により補助電極61が基板9の下面92に向かって移動され、補助電極61の先端が基板9の下面92において絶縁膜を貫いて基板本体に接触することにより基板本体に電気的に接続される。また、ステップS25では、表面電位演算部56により、測定電極31を振動させた際の測定電極31の電極電位と補助電極61からの変位電流との関係に基づいて対象領域911における表面電位が求められる。そして、ステップS27における第2多孔質部材221の基板9からの離間に代えて、エアシリンダ62により補助電極61が移動されて基板9の下面92から離間する。
【0096】
第4の実施の形態に係る基板測定装置1cでは、第1の実施の形態と同様に、基板9を平坦化しつつ支持するとともに、第1流体の制御のみでは近接させることが困難な位置まで測定部3の測定電極31を基板9に容易かつ迅速に近接させることができ、これにより、高精度な表面電位の測定を実現することができる。また、表面電位の測定の高速化も実現される。
【0097】
基板測定装置1cでは、特に、基板9の下面92に絶縁膜が形成されている場合であっても、補助電極61により基板9の基板本体との導通を確実に得ることができ、より高精度な表面電位の測定を実現することができる。また、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22の基板9に対する相対移動の際、および、表面電位が求められる際に、基板9が常に第1多孔質部材211と第2多孔質部材221との間に非接触にて保持され、表面電位の測定時における基板9の下面92に対する接触も、針状の補助電極61の先端のみと小さいため、基板9の下面92に対するパーティクルの付着等をより確実に抑制することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0099】
例えば、上記実施の形態に係る基板測定装置では、測定部3が取り付けられた第1流体噴出部21は、必ずしも、基板9の重力方向における上側に配置される必要はなく、第1流体噴出部21が基板9の下側に配置され、第2流体噴出部22が基板9の上側に配置されてもよい。
【0100】
また、基板測定装置では、第1流体噴出部21の第1支持ブロック212に排気装置が接続され、第1多孔質部材211の内側の空間(すなわち、対象領域911上の空間)が減圧雰囲気(真空雰囲気を含む。)とされてもよい。真空雰囲気とされる場合、第1多孔質部材211の内側の空間には、第1多孔質部材211や案内部421等から第1流体が流入するため、当該空間は弱真空雰囲気となる。
【0101】
基板測定装置の測定部移動機構4では、圧電素子41に代えて測定電極31を移動方向に移動する他の機構が設けられてもよく、また、エアベアリング42に代えて他の案内機構が設けられてもよい。また、第4の実施の形態に係る基板測定装置1cでは、補助電極移動機構として、エアシリンダ62に代えて、例えば、モータとカムとを組み合わせた機構のように他の機構が設けられてもよい。
【0102】
基板測定装置の基板支持機構2では、第1流体噴出部21と第2流体噴出部22とは必ずしも接続されている必要はなく、第2流体噴出部22を移動する移動機構が、第1流体噴出部21を移動する移動機構とは独立して設けられ、両移動機構が同期して駆動されてもよい。また、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22に磁石が組み込まれ、移動機構により第1流体噴出部21が移動される際に、第2流体噴出部22が磁力により第1流体噴出部21に追従して移動する構造とされてもよい。
【0103】
また、基板支持機構2では、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22の位置が固定され、基板が水平方向(すなわち、基板9の上面91および下面92に平行な方向)に移動されることにより、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22の基板に対する相対的な移動が実現されてもよい。これにより、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22の相対移動に係る構造を簡素化することができる。一方、上述の基板処理装置のように、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22を移動する構造とすることにより、装置のフットスタンプを小型化することができる。
【0104】
基板支持機構2の補助支持部232は、移動制限部231とは個別に設けられてもよい。また、基板支持機構2から補助支持部232が省略され、第1流体噴出部21および第2流体噴出部22のみにより基板9が支持されてもよい。
【0105】
移動制限部231は、必ずしも基板9の外周面の全周に亘って当接または対向する必要はなく、例えば、基板9の外周面上の互いに離間する3点(あるいは、4点以上)にて当該外周面に当接または対向してもよい。また、移動制限部231は、基板9の外縁部93に当接するのであれば、必ずしも基板9の外周面に当接する必要はなく、例えば、基板9の下面92の外周縁近傍の部位に当接し、基板9の重量による基板9の下面92と移動制限部との摩擦により基板9の移動が制限されてもよい。この場合、基板支持機構2の補助支持部232が移動制限部の役割を兼ねてもよい。
【0106】
第1多孔質部材211および第2多孔質部材221の形状は、内周縁の中心と外周縁の中心とがずれている円環状(すなわち、内側の空間が偏心した円環状)とされてもよい。また、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221は、必ずしも円環状とされる必要はなく、他の外形を有する環状(例えば、矩形枠状)とされてもよく、環状以外の他の形状とされてもよい。例えば、平面視において対象領域911を間に挟むU字型の第1多孔質部材211により、対象領域911の周囲に第1流体が噴出されてもよい。また、第1多孔質部材211は、対象領域911を間に挟んで対向する平行な2つのバー状の多孔質部材とされてもよい。
【0107】
基板支持機構2では、第1多孔質部材211と第2多孔質部材221とは必ずしも同形状とされる必要はなく、例えば、平面視において第2流体噴出部22が第1流体噴出部21よりも大きくされてもよい。また、支持対象となる基板が比較的小さい場合等、第2多孔質部材の上面(すなわち、基板側の面)が高精度に形成できる場合には、第2多孔質部材が基板の下面と同形状とされ、当該第2多孔質部材から基板の下面全体に向けて第2流体が均一に噴出されてもよい。この場合、噴出部移動機構25により、第1流体噴出部21のみが基板に対して相対移動される。
【0108】
第1の実施の形態に係る基板測定装置1では、上面91および下面92に絶縁膜が形成されていない半導体基板(いわゆる、ベアウエハ)に対してC−V特性の測定が行われてもよい。第3および第4の実施の形態に係る基板測定装置においても同様に、上面91に絶縁膜が形成されていない半導体基板に対して表面電位の測定が行われてもよい。
【0109】
第1ないし第3の実施の形態に係る基板測定装置では、第2多孔質部材221は、半導電性を有する多孔質材料により形成されてもよい。第3および第4の実施の形態に係る基板測定装置では、測定電極31から処理部57へと出力される微小な電流を変位電流とし、当該変位電流と測定電極31の電極電位とに基づいて対象領域911における表面電位が求められてもよい。また、第3および第4の実施の形態に係る基板測定装置に、第2の実施の形態に係る基板測定装置1aに設けられたエリプソメータが設けられ、サンプル基板の評価において膜厚変化と表面電位変化との関係を求める場合等に利用されてもよい。
【0110】
上記実施の形態に係る基板測定装置では、必ずしも対象領域911におけるC−V特性や表面電位が測定される必要はなく、対象領域911における基板9の他の様々な電気特性が測定部3からの出力に基づいて演算部により取得されてもよい。この場合であっても、上記実施の形態と同様に、基板9を平坦化しつつ支持するとともに、第1流体の制御のみでは近接させることが困難な位置まで測定部3を基板9に容易かつ迅速に近接させることができ、これにより、高精度な電気特性の測定を実現することができる。また、電気特性の測定の高速化も実現される。さらには、基板測定装置は、対象領域911における電気特性以外の他の所定の特性の測定(例えば、対象領域911の欠陥検査)に利用されてもよい。
【0111】
基板測定装置では、第1多孔質部材211および第2多孔質部材221から噴出される第1流体および第2流体は、必ずしも気体には限定されず、基板9の特性の測定に影響がない場合には、例えば、純水等の比較的低粘度の液体とされてもよい。
【0112】
基板測定装置は、半導体基板以外にも、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置等の平面表示装置用のガラス基板の特性測定に利用されてもよく、また、それ以外の他の基板(例えば、有機半導体の薄膜が形成された(あるいは、形成される予定の)プラスチック基板や太陽電池に利用されるプラスチックフィルム基板)の特性測定に利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板測定装置の平面図である。
【図2】基板測定装置の縦断面図である。
【図3】基板測定装置の縦断面図である。
【図4】測定部近傍の部位を拡大して示す縦断面図である。
【図5】C−V特性の測定の流れを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る基板測定装置の一部を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る基板測定装置の一部を示す縦断面図である。
【図8】表面電位測定の流れを示す図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る基板測定装置の一部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0114】
1,1a〜1c 基板測定装置
3 測定部
4 測定部移動機構
9 基板
21 第1流体噴出部
22 第2流体噴出部
24 基板回転機構
25 噴出部移動機構
31 測定電極
32 電極保持部
33 光源部
34 受光部
35 膜厚演算部
41 圧電素子
42 エアベアリング
51 電圧印加部
52 容量メータ
53 特性演算部
55 電位付与部
56 表面電位演算部
61 補助電極
62 エアシリンダ
91 上面
92 下面
93 外縁部
211 第1多孔質部材
212 第1支持ブロック
221 第2多孔質部材
225 切替機構
231 移動制限部
232 補助支持部
421 案内部
911 対象領域
S11〜S18,S21〜S28 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の対象領域における所定の特性を測定する基板測定装置であって、
基板の一方の主面上の対象領域の周囲に向けて、第1多孔質部材から第1流体を噴出する第1流体噴出部と、
前記第1流体噴出部に対向して配置され、前記基板の他方の主面に向けて第2多孔質部材から第2流体を噴出することにより、前記第1多孔質部材と前記第2多孔質部材との間にて前記基板を非接触にて支持する第2流体噴出部と、
前記基板の外縁部に当接して前記基板の前記一方の主面に平行な方向への移動を制限する移動制限部と、
前記基板の前記一方の主面に沿って前記第1流体噴出部を前記基板に対して相対的に移動することにより前記対象領域を変更する対象領域変更機構と、
前記第1流体噴出部に取り付けられて前記基板の前記対象領域に対向する測定部と、
前記測定部が前記対象領域の所定の特性を測定する際に、前記測定部を前記基板の前記一方の主面に向かう方向に前記第1流体噴出部に対して相対的に移動して前記一方の主面に非接触にて近接させる測定部移動機構と、
を備えることを特徴とする基板測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板測定装置であって、
前記測定部移動機構により、前記測定部の先端と前記基板の前記一方の主面との間の距離が5μm未満となるまで、前記測定部が前記一方の主面に近接することを特徴とする基板測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板測定装置であって、
前記第2流体噴出部が、前記基板の前記他方の主面の一部に向けて前記第2流体を噴出し、前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動することを特徴とする基板測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板測定装置であって、
前記第1多孔質部材と前記第2多孔質部材とが同形状であり、かつ、前記基板に垂直な方向において重なっていることを特徴とする基板測定装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の基板測定装置であって、
前記第1流体および前記第2流体が気体であり、
前記基板が半導体基板であり、
前記第2多孔質部材が導電性または半導電性を有する材料により形成されており、
前記基板測定装置が、
前記測定部の前記対象領域に対向する測定電極に電圧を印加する電圧印加部と、
前記測定電極と前記第2多孔質部材との間の合成容量を取得する容量測定部と、
前記測定電極に印加される印加電圧を変更しつつ前記容量測定部からの出力に基づいて前記対象領域における印加電圧と合成容量との関係を求める演算部と、
前記第2流体噴出部の前記第2多孔質部材に対する前記第2流体の供給、および、前記第2多孔質部材を介する流体の吸引を切り替える切替機構と、
をさらに備え、
前記関係が取得される際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材を介する吸引が行われることにより前記基板の前記他方の主面が前記第2多孔質部材に吸着されて電気的に接続され、
前記対象領域変更機構により前記第2流体噴出部が前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材からの前記第2流体の噴出が行われることを特徴とする基板測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板測定装置であって、
前記基板が前記一方の主面に絶縁膜が形成された半導体基板であり、
前記測定部が、
前記基板の前記対象領域に光を入射させる光源部と、
前記光源部からの光の前記対象領域からの反射光を受光する受光部と、
前記受光部からの出力に基づいて前記対象領域における前記絶縁膜の厚さを求める膜厚演算部と、
を備えることを特徴とする基板測定装置。
【請求項7】
請求項3または4に記載の基板測定装置であって、
前記第1流体および前記第2流体が気体であり、
前記基板が前記他方の主面に絶縁膜が形成された半導体基板であり、
前記基板測定装置が、
前記測定部の前記対象領域に対向する測定電極に電位を付与する電位付与部と、
前記第2流体噴出部に取り付けられた補助電極と、
前記補助電極を前記基板の前記他方の主面に向かう方向に前記第2流体噴出部に対して相対的に移動する補助電極移動機構と、
前記測定電極を前記対象領域に向かう振動方向に振動させる振動部と、
前記測定電極を振動させた際の前記測定電極の電極電位と前記測定電極または前記補助電極からの変位電流とに基づいて前記対象領域の表面電位を求める演算部と、
をさらに備え、
前記表面電位が求められる際に、前記補助電極移動機構により前記補助電極が移動して前記補助電極の先端が前記基板の前記他方の主面において前記基板の基板本体に接触することにより前記基板本体に電気的に接続され、
前記対象領域変更機構により前記第2流体噴出部が前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する際に、前記補助電極移動機構により前記補助電極が前記他方の主面から離間されることを特徴とする基板測定装置。
【請求項8】
請求項3または4に記載の基板測定装置であって、
前記第1流体および前記第2流体が気体であり、
前記基板が半導体基板であり、
前記第2多孔質部材が導電性または半導電性を有する材料により形成されており、
前記基板測定装置が、
前記測定部の前記対象領域に対向する測定電極に電位を付与する電位付与部と、
前記測定電極を前記対象領域に向かう振動方向に振動させる振動部と、
前記測定電極を振動させた際の前記測定電極の電極電位と前記測定電極または前記第2多孔質部材からの変位電流とに基づいて前記対象領域の表面電位を求める演算部と、
前記第2流体噴出部の前記第2多孔質部材に対する前記第2流体の供給、および、前記第2多孔質部材を介する流体の吸引を切り替える切替機構と、
をさらに備え、
前記表面電位が求められる際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材を介する吸引が行われることにより前記基板の前記他方の主面が前記第2多孔質部材に吸着されて電気的に接続され、
前記対象領域変更機構により前記第2流体噴出部が前記第1流体噴出部と共に前記基板に対して相対的に移動する際に、前記切替機構により前記第2多孔質部材からの前記第2流体の噴出が行われることを特徴とする基板測定装置。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれかに記載の基板測定装置であって、
前記測定部からの出力を演算処理する演算部をさらに備え、
前記第1流体および前記第2流体が気体であり、
前記基板が半導体基板であり、
前記測定部からの出力に基づいて前記演算部により前記対象領域における前記基板の電気特性が取得されることを特徴とする基板測定装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の基板測定装置であって、
前記第1多孔質部材が、前記対象領域の周囲を囲む環状であることを特徴とする基板測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板測定装置であって、
前記第1多孔質部材が、円環状であることを特徴とする基板測定装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の基板測定装置であって、
前記第1流体噴出部が、前記第1多孔質部材の前記基板とは反対側において前記第1多孔質部材の内側の空間を閉塞する閉塞部を備えることを特徴とする基板測定装置。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載の基板測定装置であって、
前記測定部と前記対象領域との間の空間が、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とされることを特徴とする基板測定装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の基板測定装置であって、
前記基板の前記外縁部近傍において前記基板を補助的に支持する補助支持部をさらに備えることを特徴とする基板測定装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の基板測定装置であって、
前記測定部移動機構が、前記第1流体噴出部に固定された案内部と前記測定部に設けられた移動部との間の間隙に向けて支持用流体を噴出することにより、前記案内部と前記移動部とを非接触状態としつつ前記測定部を案内する直動案内機構を備えることを特徴とする基板測定装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載の基板測定装置であって、
前記測定部移動機構が、前記測定部の移動方向に伸縮することにより前記測定部を移動する圧電素子を備えることを特徴とする基板測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−16279(P2010−16279A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176701(P2008−176701)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】