説明

基板製造方法および配線基板の製造方法

【課題】従来方法に比べて、電解メッキにより貫通孔に金属を充填し終えるまでの所要時間を短縮する。
【解決手段】貫通孔3が形成されたガラス基板2の下面側にメッキ下地層7を形成する工程Aと、ガラス基板2の上面側に電解メッキにより第1メッキ層4aを形成し貫通孔3の下開口部を閉塞する工程Bと、ガラス基板2の上面側からの電解メッキにより貫通孔3内に金属の第2メッキ層4bを堆積させて貫通孔3を金属で充填する工程Cとを含む。工程Aでは、貫通孔3の下開口部の縁から貫通孔3の側壁面の一部にかけてメッキ下地層7を形成しておく。工程Bでは、貫通孔3の内部でメッキ下地層7の表面から第1メッキ層4aを成長させ貫通孔3の下開口部を閉塞する。工程Cでは、貫通孔3の内部で第1メッキ層4aの表面から貫通孔3の上開口部に向かって第2メッキ層4bを成長させ貫通孔3をメッキ金属で充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材を用いた基板製造方法および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等の電子部品が実装される配線基板に対して、高い接続信頼性を確保しつつ電子部品等の高密度実装を可能にすることが求められている。これに応えるべく、配線基板については、樹脂基板ではなく、平滑性、硬質性、絶縁性、耐熱性等に優れたガラス基板をコア基板として用い、そのガラス基板に形成した貫通孔に金属を充填することにより、両面配線基板として利用可能な基板の製造方法が、本願発明者らによって提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ガラス基板に貫通孔を形成する工程と、メッキ法(電解メッキ)によって貫通孔に金属を充填する工程と、を有する基板製造方法が提案されている。このうち、貫通孔に金属を充填する工程では、その初期段階において、ガラス基板の表裏面における貫通孔の開口部のいずれか一方を金属で閉塞し、その後、当該閉塞した一方の開口部から他方の開口部に向けて金属を堆積して貫通孔内に金属を充填している。具体的には、基板製造方法の一連の工程のなかで、図7(A)〜(D)に示す工程を採用している。
【0004】
図7(A)に示す工程では、貫通孔51が設けられたガラス基板52の下面側に、スパッタリングによってクロム層53a、クロム銅層53bおよび銅層53cを順に積層することにより、3層構造のメッキ下地層53を形成している。次に、図7(B)に示す工程では、ガラス基板52の下面側に電解メッキによってメッキ層54を形成することにより、貫通孔51の一方(下方)の開口部をメッキ層54によって閉塞している。その後、図7(C),(D)に示す工程では、ガラス基板52の上面側からの電解メッキによってメッキ層54を成長させることにより、貫通孔51をメッキ層54によって埋め込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/027605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の基板製造方法においては、以下のような問題があった。すなわち、貫通孔51の一方の開口部を金属(メッキ層54)で閉塞した後に、メッキ層54の成長によって貫通孔51を埋め込む場合に、貫通孔51の一方の開口部から他方の開口部までのほぼ全領域、つまり貫通孔51の全深さ寸法(ガラス基板52の厚み寸法T)にわたって金属をメッキ成長させる必要がある。このため、電解メッキによって貫通孔51に金属を充填し終えるまでに時間がかかるという問題があった。特に近年においては、配線の微細化に伴って貫通孔51の孔径が小さくなり、電解メッキで生成した金属イオンが貫通孔51に進入しづらくなっている。このため、電解メッキによって貫通孔51に金属を充填し終えるまでに長い時間を要している。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、従来方法を採用する場合にくらべて、電解メッキによって貫通孔に金属を充填し終えるまでの所要時間を短縮することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する発明は、基板製造方法である。本基板製造方法は、表裏の関係にある第1面および第2面を有する板状のガラス基材に、前記第1面側を第1開口部とし、かつ前記第2面側を第2開口部とする貫通孔が形成されているガラス基板を用意する第1工程と、前記ガラス基板の第1面側に金属のメッキ下地層を形成する第2工程と、前記ガラス基板の第1面側に電解メッキによって金属の第1メッキ層を形成することにより、前記貫通孔の第1開口部を前記第1メッキ層によって閉塞する第3工程と、前記ガラス基板の第2面側からの電解メッキによって前記貫通孔内に金属の第2メッキ層を堆積することにより、前記貫通孔を金属で充填する第4工程と、を含んでいる。
本基板製造方法の特徴は、前記第2工程で、前記貫通孔の第1開口部の縁から当該貫通孔の側壁面の一部にかけて前記メッキ下地層を形成し、前記第3工程で、前記貫通孔の内部で前記メッキ下地層の表面から前記第1メッキ層を成長させることにより、前記貫通孔の第1開口部を前記第1メッキ層によって閉塞し、前記第4工程で、前記貫通孔の内部の前記第1メッキ層の表面から前記貫通孔の第2開口部に向かって前記第2メッキ層を成長させることにより、前記貫通孔を金属で充填することである。
本基板製造方法によれば、第1メッキ層が、貫通孔側壁部に形成されたメッキ下地層からも成長する。側壁部から第1メッキ層が成長すれば、第1開口部は肉厚な金属層で閉塞されることになる。第2開口部から孔をみると有底孔になるが、第1開口部が厚みを持った金属で閉塞されているため底は浅くなる。電解液中の金属イオンが金属層に向けて入りやすくなり、金属のメッキ成長に係る金属イオン濃度の低下が抑制される。その結果、金属のメッキ成長速度は保たれ、貫通孔の金属充填は効率よく進行する。
【0009】
本基板製造方法は、前記第4工程の後に、前記ガラス基板の第1面および第2面のうち少なくとも第1面を機械加工によって平坦化する第5工程を有している構成にも好ましく適用することができる。
この場合、前記第2工程では、前記第5工程で前記ガラス基板の第1面側の表層部を前記機械加工により除去した後でも前記貫通孔の第1開口部が前記メッキ下地層および前記第1メッキ層によって閉塞された状態となるように、前記第5工程で前記機械加工により除去を予定している前記ガラス基板の除去予定領域よりも貫通孔の奥側に入り込んだ位置まで前記メッキ下地層を形成しておくことが好ましい。
【0010】
本基板製造方法が第5工程を含む場合、前記第4工程の後で、かつ前記第5工程の前に、前記ガラス基板の第1面から前記第1メッキ層および前記メッキ下地層を取り除いて当該ガラス基板の第1面を露出させる工程を有すると好ましい。
機械加工を行う際、ガラス基板の表裏が同一の素材で構成されている方が好ましい。同一の素材が露出していることで、表裏両面の機械加工効率を向上させることができる。
【0011】
本基板製造方法は、前記第1工程で、前記貫通孔の第1開口部側の断面形状が裾広がり状(フレア状)の前記貫通孔が形成されているガラス基板を用意すると好ましい。
本構成によれば、第1開口部の断面がメッキ下地層を形成する基板の第1面側に向けて広がる形状となるため、メッキ下地層を形成する際に貫通孔側壁の一部にメッキ下地層を形成しやすくなる。
【0012】
本基板製造方法は、前記第2工程で前記ガラス基板の第1面側にスパッタリングによって前記メッキ下地層を形成することが好ましい。
スパッタリング法を用いると、金属層はガラス基板上に密着性よく形成される。密着性に優れるメッキ下地層が媒介することで、ガラス基板とメッキ層は強固に接合する。
【0013】
本明細書では、配線基板の製造方法も開示する。本配線基板の製造方法は、前述までの基板製造方法により、貫通孔に金属を充填してなるガラス基板を製造した後、前記ガラス基板の第1面および第2面のうち少なくとも一方に配線パターンを形成することを特徴とする配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来方法を採用する場合にくらべて、電解メッキによって貫通孔に金属を充填し終えるまでの所要時間を短縮することができる。このため、ガラス基板の貫通孔に金属を充填してなる基板の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る配線基板の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その1)である。
【図3】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その2)である。
【図4】貫通孔の断面形状を示す拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その3)である。
【図6】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その4)である。
【図7】従来の基板製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載する実施形態の特徴について最初に列記する。
(特徴1)ガラス基板は感光性ガラスで構成されている。感光性ガラスは貫通孔を高精度に形成することができるので、ガラス配線基板、特に、両面ガラス配線基板に適している。
(特徴2)感光性ガラス基板は、イオンマイグレーションを抑制する前処理を行ったものを用意する。
感光性ガラス基板には、リチウムイオンやカリウムイオンといったアルカリ金属イオンが含まれている。紫外線照射や熱処理を行うことにより、アルカリ金属イオンが基板中に固定される。アルカリ金属イオンの移動が抑制されるので、イオンマイグレーションも抑制される。
(特徴3)メッキ下地層は二重構造であり、ガラス基板上に最初に形成される層はクロム層である。ガラス表面にクロム膜は密着性よく成膜される。密着性に優れた層を介することにより、ガラスと充填金属の接合状態を向上させることができる。
(特徴4)貫通孔充填工程のメッキ電流密度は、貫通孔閉塞工程よりも低い。
(特徴5)第1メッキ層を構成する金属と、第2メッキ層を構成する金属と、が同一であることが好ましい。同一とすることで、それぞれの金属の電気的特性の相違から生じる電気的界面が発現しなくなる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.配線基板の概略構成
2.配線基板の製造方法の手順
2−1.貫通孔形成工程
2−2.メッキ下地層形成工程
2−3.貫通孔閉塞工程
2−4.貫通孔充填工程
2−5.基板面露出工程
2−6.基板平坦化工程
2−7.配線パターン形成工程
3.本実施形態の効果
4.変形例等
【0018】
<1.配線基板の概略構成>
図1は本発明の実施の形態に係る配線基板の構成例を示す断面図である。図示した配線基板1は、ガラス基板2を用いて構成されている。ガラス基板2は、配線基板1のコア基板として使用されている。ガラス基板2には複数(図1では1つのみ表示)の貫通孔3が設けられている。貫通孔3には金属4が充填されている。ガラス基板2の第1面および第2面には、それぞれ密着層5を介して配線パターン6が形成されている。このことから、配線基板1は両面配線基板を構成している。ガラス基板2の第1面と第2面は、互いに表裏の関係になっている。図1においては、ガラス基板2の下面を第1面とし、ガラス基板2の上面を第2面としている。配線パターン6は、配線経路に応じたパターン形状に形成されている。
【0019】
ガラス基板2は、感光性ガラス基板を用いて構成されている。ガラス基板2に用いられる感光性ガラス基板は、その平滑性、硬質性、絶縁性、加工性等の面で、配線基板1のコア基板として優れている。このような性質は、感光性ガラスのほかに、ソーダライムガラス等の化学強化ガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス等でも同様であり、これらのガラスも配線基板1のコア基板に用いることが可能である。
【0020】
貫通孔3は、平面視円形に形成されている。本発明を実施するにあたって、貫通孔3の配置に特に制限はない。このため、貫通孔3については、たとえば、所望する配線パターン6のパターン形状にあわせてランダムに配置してもよいし、あらかじめ決められた間隔でマトリクス状に配置してもよいし、マトリクス状以外の配列で配置してもよい。
【0021】
金属4は、上述したようにガラス基板2の両面(第1面、第2面)に形成された配線パターン6同士を電気的に接続するものである。このため、金属4は、電気抵抗の低い金属材料(導電材料)であることが好ましい。また、本発明の実施の形態においては、貫通孔3を金属4で埋め込む手法として電解メッキを利用する。このため、金属4は、電解メッキに適した金属材料であることが望ましい。具体的には、金属4は、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ロジウムのいずれか一種または2種以上から構成される。本実施の形態においては、金属4を銅で構成することとする。
【0022】
密着層5は、ガラス基板2に対する配線パターン6の密着力を強化する層である。密着層5は、配線パターン6と同一のパターン形状をなしている。本実施の形態においては、配線パターン6を金属4と同様に銅で構成している。この銅をガラス基板2上に直接積層すると十分な密着力が得られない。このため、ガラス基板2と配線パターン6との間に密着層5を介在させている。密着層5は、クロム層と銅層の2層構造でもよいし、それらの層間にクロム銅層を介在させた3層構造でもよいし、4層以上の多層構造でもよい。本実施の形態においては、一例として、密着層5を3層構造にしている。具体的には、密着層5の構造を、ガラス基板2上にクロム層5a、クロム銅層5bおよび銅層5cを順に積層した3層構造にしている。
【0023】
配線パターン6は、密着層5の上に積層した状態で形成されている。より具体的には、配線パターン6は、密着層5の最上層となる銅層5cの上に形成されている。ガラス基板2の第1面に形成された配線パターン6の一部と、ガラス基板2の第2面に形成された配線パターン6の一部とは、貫通孔3に充填された金属4を介して電気的に接続(導通)されている。
【0024】
<2.配線基板の製造方法の手順>
次に、本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明する。
配線基板の一連の製造工程のなかには、貫通孔形成工程、メッキ下地層形成工程、貫通孔閉塞工程、貫通孔充填工程、基板面露出工程、基板平坦化工程、配線パターン形成工程が含まれる。このうち、配線パターン形成工程を除く一連の工程は、本発明の実施の形態に係る基板製造方法に含まれる工程となる。
【0025】
(2−1.貫通孔形成工程)
貫通孔形成工程は、ガラス基板2に貫通孔3を形成する工程である。貫通孔形成工程は、表裏の関係にある第1面および第2面を有する板状のガラス基材に、第1面側を第1開口部とし、かつ第2面側を第2開口部とする貫通孔を形成してなるガラス基板を用意する工程に相当する。このため、貫通孔3付きのガラス基板2を入手する手法としては、貫通孔形成工程を行う以外にも、たとえば、他のメーカーから貫通孔3付きのガラス基板2を購入してもよい。貫通孔3の形成方法としては、たとえば、レーザー加工法やフォトリソグラフィ法を用いることができる。本実施の形態においては、貫通孔3を高精度に形成するうえで、レーザー加工法よりも有利なフォトリソグラフィ法を用いることにする。フォトリソグラフィ法は露光および現像の各処理を経て行われる。このため、貫通孔3の形成対象となるガラス基材には、感光性の物質をガラス中に分散させた感光性ガラスを用いることにする。
【0026】
その場合、ガラス基板2は、感光性を示すものであれば特に制限はない。ガラス基板2には、感光性成分として金(Au)、銀(Ag)、亜酸化銅(CuO)または酸化セリウム(CeO)のうち少なくとも1種を含んでいることが好ましく、2種以上含んでいることがより好ましい。このようなガラス基板2としては、たとえば質量%で、SiO:55%〜85%,酸化アルミニウム(Al):2%〜20%,酸化リチウム(LiO):5%〜15%,SiO+Al+LiO>85%を基本成分とし、Au:0.001%〜0.05%,Ag:0.001%〜0.5%,CuO:0.001%〜1%を感光性金属成分とし、更にCeO:0.001%〜0.2%を光増感剤として含有するものを用いることができる。
【0027】
以下、フォトリソグラフィ法によってガラス基板2に貫通孔3を形成する場合の具体的な手順について説明する。まず、ガラス基板2の貫通孔3を形成する部分(以下「貫通孔形成部分」という。)を露光する。この露光処理では、マスク開口を有するフォトマスク(図示せず)を用いる。フォトマスクは、たとえば、透明な薄いガラス基板に所望のパターン形状で遮光膜(クロム膜等)を形成し、この遮光膜で露光光(本形態例では紫外線)の通過を遮断するものである。上記露光処理では、このフォトマスクをガラス基板2の第1面または第2面に密着させて配置する。次に、フォトマスクを介してガラス基板2に紫外線を照射する。そうすると、ガラス基板2の貫通孔形成部分に対応してフォトマスクに形成されたマスク開口を通してガラス基板2に紫外線が照射される。
【0028】
次に、ガラス基板2を熱処理する。熱処理は、感光性ガラス基板の転移点と屈伏点との間の温度で行うことが好ましい。転移点を下回る温度では熱処理効果が十分に得られず、屈伏点を上回る温度では感光性ガラス基板の収縮が起こって露光寸法精度が低下する恐れがあるためである。熱処理時間としては30分〜5時間程度とすることが好ましい。
【0029】
このような紫外線照射と熱処理を行うことにより、紫外線が照射された貫通孔形成部分が結晶化される。その結果、図2(A)に示すように、ガラス基板2の貫通孔形成部分に露光結晶化部3aが形成される。
【0030】
その後、上述のように露光結晶化部3aが形成されたガラス基板2を現像する。現像処理は、適度な濃度の希フッ化水素酸等のエッチング液を、現像液としてガラス基板2にスプレー等することにより行う。この現像処理により、露光結晶化部3aが選択的に溶解除去される。その結果、図2(B)に示すように、ガラス基板2に貫通孔3が形成される。
この貫通孔3は、ガラス基板2の下面(第1面)と上面(第2面)にそれぞれ開口した状態となる。以降の説明では、ガラス基板2の下面側に開口する貫通孔3の開口部(第1開口部)を下開口部とし、ガラス基板2の上面側に開口する貫通孔3の開口部(第2開口部)を上開口部とする。
【0031】
上記のフォトリソグラフィ法を用いた貫通孔3の形成方法によれば、ガラス基板2にアスペクト比10程度の貫通孔3を所望の数だけ同時に形成することができる。たとえば、厚さ0.3mm〜1.5mm程度のガラス基板2を用いた場合には、孔径(直径)が30μm〜150μm程度の貫通孔3を所望の位置に複数同時に形成することができる。これにより、配線パターンの微細化、貫通孔形成工程の効率化を図ることが可能になる。さらに、配線の高密度化のために、ランド幅を極めて小さくする、あるいはランド幅をゼロとしたランドレス構造とする場合には、貫通孔3間のスペースを十分広く確保することができる。そのため、貫通孔3間にも配線を形成することが可能になり、配線パターンの設計自由度の拡大や配線密度の向上を図ることも可能になる。また、複数の貫通孔3を狭ピッチで形成することによって配線密度の向上を図ることも可能になる。
【0032】
上述のように感光性のガラス基板2を用いて貫通孔3を形成した後は、必要に応じて、ガラス基板改質工程を行ってもよい。以下、ガラス基板改質工程について説明する。
【0033】
通常、感光性のガラス基板2には、リチウムイオン(Li),カリウムイオン(K)等のアルカリ金属イオンが含まれている。これらのアルカリ金属イオンが配線基板1の配線金属に漏洩し、これに水が吸着すると、電圧が印加されている回路間において配線金属がイオン化し、これが再度電荷を受けて還元され析出するイオンマイグレーションが発生する。このイオンマイグレーションにより、最悪の場合には、析出した金属によって一方の回路から他方の回路に向かう配線が形成され、回路間が短絡してしまうおそれがある。このような短絡不良は、配線間隔が小さい場合に顕著となる。このため、微細な配線を高密度に形成するためにはイオンマイグレーションを抑止する必要がある。
【0034】
ガラス基板改質工程では、貫通孔3が形成されたガラス基板2全体に、たとえば紫外線を約700mJ/cmで照射し、その後、約850℃の温度で約2時間の熱処理を行うことにより、ガラス基板2を結晶化する。このように感光性のガラス基板2全体を結晶化することにより、結晶化前にくらべて、ガラス基板2に含まれるアルカリ金属イオンが移動しにくくなる。このため、イオンマイグレーションを効果的に抑止することができる。
【0035】
(2−2.メッキ下地層形成工程)
メッキ下地層形成工程は、ガラス基板2の下面側に金属のメッキ下地層7を形成する工程である。この工程では、ガラス基板2の上面側にメッキ下地層7を形成せず、ガラス基板2の下面側だけにメッキ下地層7を形成する。また、メッキ下地層形成工程では、図3(A)に示すように、ガラス基板2の下面とあわせて、貫通孔3の下開口部(第1開口部)の縁から貫通孔3の側壁面の一部にかけてもメッキ下地層7を形成しておく。これにより、ガラス基板2の下面側に位置する貫通孔3の側壁面部分はメッキ下地層7で覆われるのに対して、ガラス基板2の上面側に位置する貫通孔3の側壁面部分はメッキ下地層7で覆われることなく露出した状態となる。ちなみに、ここで記述する「貫通孔3の側壁面の一部」とは、貫通孔3の深さ方向の一部を占める側壁面部分であって、かつ、貫通孔3の下開口部の縁から貫通孔3の奥側(上開口部)に向かって連続する側壁面部分をいう。
【0036】
貫通孔3の深さ方向において、メッキ下地層7を形成する範囲は、ガラス基板2の除去予定領域8よりも貫通孔3の奥側に入り込んだ位置まで確保することが望ましい。ガラス基板2の除去予定領域8とは、後述する基板平坦化工程でガラス基板2の表層部を機械加工により除去する際に、ガラス基板2の除去を予定している領域をいう。図3(A)においては、2本の二点鎖線で示す位置までガラス基板2の表層部を機械加工で除去する予定になっている。このため、ガラス基板2の機械加工(平坦化加工)を終えた段階では、2本の二点鎖線よりも内側の基板部分2aが、最終的にガラス基板2として残る部分になる。
【0037】
ガラス基板2の除去予定領域8は、ガラス基板2の両面にそれぞれ設定されている。このうち、ガラス基板2の下面側に設定された除去予定領域8に関しては、機械加工によってガラス基板2の表層部を除去した後でも貫通孔3の下開口部がメッキ下地層7および第1メッキ層4a(後述)によって閉塞された状態となるように、メッキ下地層7を形成しておく。具体的には、除去予定領域8の境界位置(二点鎖線で示す位置)よりも貫通孔3の奥側までメッキ下地層7を形成しておく。
【0038】
メッキ下地層7は、ガラス基板2との密着性が良好なスパッタリングによって形成することが望ましい。具体的には、ガラス基板2の下面側に、たとえば厚さが約0.05μmのクロム層7aと厚さが約1.5μmの銅層7bを、スパッタリングにより順に積層することにより、2層構造のメッキ下地層7を形成する。その際、スパッタリングによってターゲットからはじき飛ばされた金属原子(以下、「スパッタ原子」とも記す)の一部が、貫通孔3の下開口部から貫通孔3内に進入し、貫通孔3の側壁面に付着する。このため、スパッタ原子を貫通孔3の側壁面に効率良く付着させるには、上記貫通孔形成工程において、貫通孔3の下開口部側の断面形状が裾広がり状(フレア状)となるように、ガラス基板2に貫通孔3を形成しておくことが望ましい。
【0039】
具体的には、上記貫通孔形成工程において、露光結晶化部3aをエッチング液で溶解する場合に、エッチング液の濃度を適宜調整することにより、貫通孔3の深さ方向でガラス基板2の下開口部の縁に近い部分が遠い部分よりも多く溶けるようにする。これにより、貫通孔3の孔径が、深さ方向の中心部から上下の開口部に向かって徐々に大きくなるように、貫通孔3が形成されることになる。このように貫通孔3を形成しておけば、上記のクロム層7aおよび銅層7bのスパッタリングに際して、図4に示すように、貫通孔3の下開口部側の側壁面が貫通孔3の中心軸(一点鎖線)に対してフレア状に傾いた状態で配置される。このため、スパッタリングによって貫通孔3の下開口部から貫通孔3内に進入したスパッタ原子が、貫通孔3の側壁面に付着しやすくなる。貫通孔3の深さ方向におけるメッキ下地層7の形成範囲については、たとえば、貫通孔3の深さ寸法(ガラス基板2の厚み寸法)の少なくとも1/20以上、より好ましくは1/10以上、さらに好ましくは1/5〜1/2程度の範囲とし、この範囲で貫通孔3の側壁面をメッキ下地層7で被覆すればよい。
【0040】
(2−3.貫通孔閉塞工程)
貫通孔閉塞工程は、ガラス基板2の下面側に電解メッキによって金属の第1メッキ層4aを形成することにより、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aによって閉塞する工程である。この工程では、図3(B)に示すように、ガラス基板2の下面でメッキ下地層7の表面から第1メッキ層4aを成長させるとともに、貫通孔3の内部でもメッキ下地層7の表面から第1メッキ層4aを成長させることにより、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aによって閉塞する。本実施の形態においては、銅の電解メッキによって第1メッキ層4aを形成する。
【0041】
貫通孔閉塞工程の電解メッキでは、たとえば、メッキ液である硫酸銅水溶液の入ったメッキ浴中に、銅板を陽極とし、ガラス基板2のメッキ下地層7を陰極として、それぞれ配置する。その際、メッキ下地層7が形成されているガラス基板2の下面側(第1面側)から電解メッキを行うために、ガラス基板2の下面側を陽極(銅板)に対向させる。この状態で陽極と陰極に直流電源を接続して所定の電圧を印加することにより、メッキ下地層7の表面に銅を析出させる。第1メッキ層4aの形成は、貫通孔3の孔径にも依存するが、通常よりも比較的高い電流密度の条件下(たとえば、1A/dm〜5A/dm程度)で行うようにする。また、この電流密度は、メッキ浴のpHや銅イオン濃度にも依存するため、その値を適切に設定するようにする。一般的には、メッキ液濃度が高い場合には、低い場合にくらべて、より高い電流密度に設定することができる。このような電流密度条件下で電解メッキを行うことにより、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aによって閉塞することができる。このとき、電解メッキによってメッキ下地層7の上に積層される第1メッキ層4aの一部は、貫通孔3の側壁面を這い上がるようにしてメッキ下地層7よりも貫通孔3の奥側まで成長する。また、貫通孔3内における第1メッキ層4aの表面は、貫通孔3の中心部分で断面略U字形にへこんだ形状になる。
【0042】
(2−4.貫通孔充填工程)
貫通孔充填工程は、ガラス基板2の上面側からの電解メッキによって貫通孔3内に金属の第2メッキ層4bを堆積することにより、貫通孔3を金属で充填する工程である。ここで記述する「ガラス基板2の上面側からの電解メッキ」とは、ガラス基板2の上面および下面のうち、ガラス基板2の上面側にこれに対向するように陽極を配置して行う電解メッキをいう。また、「貫通孔3を金属で充填する」とは、先述した貫通孔閉塞工程において貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aで閉塞した場合に、貫通孔3内で第1メッキ層4aにより埋め込まれていない部分(未充填部分)を金属で満たすことをいう。
【0043】
貫通孔充填工程では、図3(C)に示すように、貫通孔3の内部で第1メッキ層4aの表面から貫通孔3の上開口部に向かって第2メッキ層4bを成長させることにより、貫通孔3を金属で充填する。本実施の形態においては、上述した第1メッキ層4aと同様に、銅の電解メッキによって貫通孔3内に第2メッキ層4bを形成する。この場合、貫通孔3の内部には、第1メッキ層4aおよび第2メッキ層4bを構成する銅と共に、メッキ下地層7(クロム層7a、銅層7b)を構成するクロムおよび銅が存在し、これらの金属によって貫通孔3が埋め込まれることになる。
【0044】
貫通孔充填工程の電解メッキでは、たとえば、メッキ液である硫酸銅水溶液の入ったメッキ浴中に、銅板を陽極とし、ガラス基板2の第1メッキ層4aを陰極として、それぞれ配置する。その際、第1メッキ層4aが形成されていないガラス基板2の上面側(第2面側)から電解メッキを行うために、ガラス基板2の上面側を陽極(銅板)に対向させる。この状態で陽極と陰極に直流電源を接続して所定の電圧を印加することにより、第1メッキ層4aの表面に銅を析出させる。これにより、先に貫通孔3内に形成されているメッキ下地層7および第1メッキ層4aと、第1メッキ層4aの上に積層される第2メッキ層4bとによって、貫通孔3を埋め込む。この電解メッキは、比較的低い電流密度の条件下(たとえば、0.2A/dm〜0.8A/dm程度)で行うようにする。本工程においては、上記貫通孔閉塞工程の電解メッキで適用した電流密度よりも低い条件下(たとえば、0.5A/dm)で行うようにする。また、この電解メッキの際には、いわゆるパルスメッキ法を用いることもできる。パルスメッキ法は、貫通孔3内におけるメッキ金属の堆積速度のバラツキを抑える点で有効である。また、印加電圧は、水素過電圧以下に設定することが肝要である。貫通孔3が高アスペクト比である場合には、発生した水素ガス泡を除去することが非常に困難だからである。
【0045】
このような条件で電解メッキを行うことにより、メッキ浴中の銅イオンが貫通孔3の上開口部から貫通孔3内に進出して第1メッキ層4aの表面に析出する。このため、貫通孔3内においては、先に形成した第1メッキ層4aの表面から上開口部に向かって第2メッキ層4bが成長することにより、貫通孔3が徐々に埋め込まれていく。そして、第2メッキ層4bの表面が貫通孔3の上開口部に達すると、貫通孔3が完全に埋め込まれた状態となる。ここでは、第2メッキ層4bの成長による貫通孔3の充填を確実なものとするために、図5(A)に示すように、第2メッキ層4bの表面がガラス基板2の上面側に突出するまで電解メッキを行うものとする。
【0046】
(2−5.基板面露出工程)
基板面露出工程は、ガラス基板2の下面から第1メッキ層4aおよびメッキ下地層7を取り除いてガラス基板2の下面を露出させる工程である。この工程では、図5(A)と図5(B)を対比すると分かるように、ガラス基板2の下面を覆っていた第1メッキ層4aおよびメッキ下地層7を除去するとともに、ガラス基板2の上面側に突出していた第2メッキ層4bをへこませる。
【0047】
基板面露出工程では、除去の対象となる膜の構成材料に適した薬液を用いて、エッチング処理を行う。本実施の形態においては、薬液を変えて2回のエッチング処理を行う。まず、1回目のエッチング処理では、たとえば、塩化第二鉄を主成分とする薬液を用いて、第1メッキ層4aを構成している銅や、メッキ下地層7の銅層7bを構成している銅をエッチングにより除去(溶解)する。また、1回目のエッチング処理では、第2メッキ層4bを構成している銅をエッチングにより除去する。次に、2回目のエッチング処理では、たとえば、フェリシアン化カリウムを主成分とする薬液を用いて、メッキ下地層7のクロム層7aを構成しているクロムをエッチングにより除去する。
【0048】
ちなみに、1回目のエッチング処理では、ガラス基板2の下面側にクロム膜7bが露出するまで銅をエッチングにより除去するが、貫通孔3内においては、エッチングによる第1メッキ層4aの後退面F1が、ガラス基板2の除去予定領域8(図3(A)を参照)内にとどまるようにエッチング時間等を調整する。また、ガラス基板2の上面側においては、第2メッキ層4bの表面がガラス基板2の上面から突出しないように、1回目のエッチング処理によって第2メッキ層4bの表面を貫通孔3内まで後退させる。この場合も、エッチングによる第2メッキ層4bの後退面F2が、ガラス基板2の除去予定領域8(図3(A)を参照)内にとどまるようにエッチング時間等を調整する。
【0049】
(2−6.基板平坦化工程)
基板平坦化工程は、ガラス基板2の上面および下面のうち少なくとも下面を機械加工によって平坦化する工程である。本実施の形態においては、ガラス基板2の両面(上面および下面)を機械加工によって平坦化する。具体的には、ガラス基板2の上面および下面を両面ラップ加工によって平坦化し、その後、必要に応じてガラス基板2の両面を仕上げ研磨する。このような機械加工により、ガラス基板2の上面側および下面側の各表層部が、それぞれ除去予定領域8の境界位置(図3(A)の二点鎖線で示す位置)にあわせて除去される。その結果、図5(C)に示すように、ガラス基板2の両面が平坦化されるとともに、貫通孔3に充填された金属4の両端面が、それぞれガラス基板2の上面および下面と面一な状態に仕上げられる。また、ガラス基板2の貫通孔3の下開口部は、メッキ下地層7および第1メッキ層4aによって閉塞された状態となる。この場合、貫通孔3の内部には、メッキ下地層7を構成する銅およびクロムと、メッキ層4a,4bを構成する銅とが残存した状態になる。そして、これらの金属が貫通孔3に充填された状態となる。これにより、上記図1に示すように、貫通孔3に金属4を充填した構造のガラス基板2が得られる。
【0050】
(2−7.配線パターン形成工程)
配線パターン形成工程は、ガラス基板2の上面および下面のうち少なくとも一方に配線パターン6を形成する工程である。配線パターン形成工程には、密着層形成工程、配線層形成工程およびパターニング工程が含まれる。以下、各工程について説明する。
【0051】
(密着層形成工程)
密着層形成工程では、図6(A)に示すように、ガラス基板2の各面に対して、スパッタリング法によって密着層5を形成する。本実施の形態では、クロム層5a、クロム銅層5bおよび銅層5cを順に積層した3層構造で密着層5を形成する。密着層5を構成する各金属層は、後述するエッチングによって配線パターン6を形成するときに生じるサイドエッチング量を考慮すると、極力薄く形成することが望ましい。ただし、密着層5の各金属層の厚さが薄すぎると、配線層のパターニングのために行われる処理によって密着層5が除去されるおそれがある。したがって、たとえば、上述のように密着層5を3層構造で形成する場合は、クロム層5aの厚さを0.04μm〜0.1μm程度、クロム銅層5bの厚さを0.04μm〜0.1μm程度、銅層5cの厚さを0.5μm〜1.5μm程度とすることが望ましい。これにより、密着層5の厚さは、合計で2μm以下に抑えられる。
【0052】
(配線層形成工程)
配線層形成工程では、図6(B)に示すように、ガラス基板2の各面に対して、先に形成した密着層5を覆う状態で配線層6aを形成する。配線層6aの形成は、電解メッキによって行う。この配線層6aについては、上述した密着層5と同様に、サイドエッチング量を考慮して極力薄く形成することが望ましい。しかし、配線層6aが薄すぎると、使用環境によってガラス基板2の温度変化が繰り返された場合に、配線層6aの熱膨張係数とガラス基板2の熱膨張係数との差によって、配線パターンに金属疲労が生じるおそれがある。このため、金属疲労に対する配線パターンの接続の信頼性を確保するために、配線層6aは適度な厚みにしておく必要がある。具体的には、配線層6aの厚みを1μm〜20μm程度とすることが望ましく、さらには4μm〜7μm程度とすることがより好ましい。配線層6aの厚さが1μmを下回る場合には、上記金属疲労によって配線の断線が生じる危険性が高くなる。また、配線層6aの厚さが20μmを上回る場合には、配線パターンの微細化の要求に応えることが難しくなる。
【0053】
(パターニング工程)
パターニング工程では、図6(C)に示すように、ガラス基板2の各面上において、密着層5および配線層6aをフォトリソグラフィ法とエッチングによってパターニングすることにより、配線パターン6を形成する。具体的には、ガラス基板2の配線層6aを図示しないレジスト層で覆った後、このレジスト層を露光・現像することにより、レジストパターンを形成する。これにより、ガラス基板2の配線層6aの一部(配線パターンとして残す部分)がレジストパターンで覆われた状態となる。次に、レジストパターンをマスクとして、配線層6aおよび密着層5の露出部分をエッチングによって除去する。これにより、レジストパターンと同じパターン形状をもつ配線パターン6が得られる。ここで用いるレジストは、液状レジストでもドライフィルムレジストでも電着レジストでもよい。また、レジストタイプとしては、ポジ型およびネガ型のいずれであってもかまわない。一般的には、ネガ型レジストにくらべてポジ型レジストのほうが、解像性が高い。このため、微細な配線パターンを形成するうえでは、ポジ型レジストのほうが適している。
【0054】
<3.本実施形態の効果>
本発明の実施の形態に係る基板製造方法および配線基板の製造方法によれば、以下のような効果が得られる。
【0055】
(第1の効果)
ガラス基板2の下面側にメッキ下地層7を形成するにあたって、メッキ下地層7を貫通孔3の下開口部の縁から貫通孔3の側壁面の一部にかけて形成している。このため、その後、ガラス基板2の下面側に電解メッキによって第1メッキ層4aを形成する場合に、第1メッキ層4aが貫通孔3の内部でメッキ下地層7の表面から成長することになる。これにより、貫通孔3の下開口部よりも貫通孔3の奥側に入り込んだ位置から第1メッキ層4aが成長を開始し、この成長過程で第1メッキ層4aが貫通孔3の下開口部を閉塞するようになる。そうすると、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aで閉塞した段階では、すでに貫通孔3の一部が第1メッキ層4aによって埋め込まれた状態となる。したがって、その後、ガラス基板2の上面側からの電解メッキによって貫通孔3内に第2メッキ層4bを形成する場合に、第2メッキ層4bの成長によって埋め込むべき貫通孔3の深さ寸法が、貫通孔3の全深さ寸法よりも小さくなる。このため、従来のように貫通孔の全深さ寸法にわたってメッキ層を成長させる場合にくらべて、貫通孔に金属を充填し終えるまでの所要時間を短縮することができる。
【0056】
(第2の効果)
メッキ下地層形成工程においては、ガラス基板2の除去予定領域8よりも貫通孔3の奥側に入り込んだ位置までメッキ下地層7を形成している。このため、基板平坦化工程において、ガラス基板2の下面側の表層部を機械加工により除去した後でも貫通孔3の下開口部がメッキ下地層7および第1メッキ層4aによって閉塞された状態となる。かかる状態のもとでは、メッキ下地層7によってもたらされる密着力強化作用により、第1メッキ層4aがメッキ下地層7を介して貫通孔3の側壁面に強固に密着した状態となる。このため、基板平坦化工程後に貫通孔3内にメッキ下地層7が残存しない製造条件を適用した場合にくらべて、貫通孔3とこれを埋め込む金属4の密着性が高くなる。したがって、金属4を充填した貫通孔3部分における気密性(ガスバリア性等)を向上させることができる。
【0057】
(第3の効果)
貫通孔形成工程においては、貫通孔3の下開口部側の断面形状が裾広がり状(フレア状)となるように、ガラス基板2に貫通孔3を形成している。このため、その後、ガラス基板2の下面側にスパッタリングによってメッキ下地層7を形成する場合に、貫通孔3の下開口部の縁から貫通孔3の側壁面にかけてスパッタ原子を効率良く広範囲に付着させることができる。
【0058】
(第4の効果)
基板平坦化工程を行うのに先立って、ガラス基板2の下面から第1メッキ層4aおよびメッキ下地層7を取り除いてガラス基板2の下面を露出させている。これにより、ガラス基板2の上面および下面のいずれも、ガラスという同一(共通)の材料をもって露出した面になる。このため、その後の基板平坦化工程においては、機械加工によるガラス基板2の平坦化処理を両面ラップ加工で行うことができる。これにより、ガラス基板2を両面同時に平坦化処理することが可能となる。したがって、ガラス基板2を片面ずつ平坦化処理する場合にくらべて、基板製造コストを安く抑えることができる。ちなみに、ガラス基板2の上面と下面が互いに異なる材料をもって露出している場合は、両面ラップ加工の適用が困難になるため、ガラス基板2を片面ずつ平坦化処理する必要がある。
【0059】
(第5の効果)
配線基板の製造方法として、上記基板製造方法に属する一連の工程(貫通孔形成工程、メッキ下地層形成工程、貫通孔閉塞工程、貫通孔充填工程、基板面露出工程、基板平坦化工程)に、配線パターン形成工程を組み合わせている。このため、上述した貫通孔3の充填所要時間の短縮によって、ガラス基板2をコア基板に用いた配線基板1を効率良く製造することができる。また、両面配線基板を構成するにあたって、安価なメッキで配線基板1の表裏面のメタライズを図ることができる。さらに、第1メッキ層4a、第2メッキ層4bおよび配線層6aをいずれも銅の電解メッキにより行うことにより、配線基板1のすべての配線経路を銅(低抵抗材料)で構成することができる。
【0060】
<4.変形例等>
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0061】
たとえば、上記実施の形態においては、配線基板の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線基板以外の用途で利用される基板製造方法として実施することも可能である。
【0062】
また、上記実施の形態においては、ガラス基板2として、感光性を有するガラス基板を用いたが、感光性を有していない他のガラス基板を用いてもよい。その場合は、貫通孔形成工程において、フォトリソグラフィ法以外の方法、たとえば、レーザー加工法によってガラス基板2に貫通孔3を形成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…配線基板
2…ガラス基板
3…貫通孔
4…金属
4a…第1メッキ層
4b…第2メッキ層
5…密着層
6…配線パターン
6a…配線層
7…メッキ下地層
8…除去予定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の関係にある第1面および第2面を有する板状のガラス基材に、前記第1面側を第1開口部とし、かつ前記第2面側を第2開口部とする貫通孔が形成されているガラス基板を用意する第1工程と、
前記ガラス基板の第1面側に金属のメッキ下地層を形成する第2工程と、
前記ガラス基板の第1面側に電解メッキによって金属の第1メッキ層を形成することにより、前記貫通孔の第1開口部を前記第1メッキ層によって閉塞する第3工程と、
前記ガラス基板の第2面側からの電解メッキによって前記貫通孔内に金属の第2メッキ層を堆積することにより、前記貫通孔を金属で充填する第4工程と、を含み、
前記第2工程においては、前記貫通孔の第1開口部の縁から当該貫通孔の側壁面の一部にかけて前記メッキ下地層を形成し、
前記第3工程においては、前記貫通孔の内部で前記メッキ下地層の表面から前記第1メッキ層を成長させることにより、前記貫通孔の第1開口部を前記第1メッキ層によって閉塞し、
前記第4工程においては、前記貫通孔の内部で前記第1メッキ層の表面から前記貫通孔の第2開口部に向かって前記第2メッキ層を成長させることにより、前記貫通孔を金属で充填する
ことを特徴とする基板製造方法。
【請求項2】
前記第4工程の後に、前記ガラス基板の第1面および第2面のうち少なくとも第1面を機械加工によって平坦化する第5工程を有し、
前記第2工程においては、前記第5工程で前記ガラス基板の第1面側の表層部を前記機械加工により除去した後でも前記貫通孔の第1開口部が前記メッキ下地層および前記第1メッキ層によって閉塞された状態となるように、前記第5工程で前記機械加工により除去を予定している前記ガラス基板の除去予定領域よりも貫通孔の奥側に入り込んだ位置まで前記メッキ下地層を形成しておく
ことを特徴とする請求項1に記載の基板製造方法。
【請求項3】
前記第4工程の後で、かつ前記第5工程の前に、前記ガラス基板の第1面から前記第1メッキ層および前記メッキ下地層を取り除いて当該ガラス基板の第1面を露出させる工程を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の基板製造方法。
【請求項4】
前記第1工程において、前記貫通孔の第1開口部側の断面形状が裾広がり状の前記貫通孔が形成されているガラス基板を用意する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板製造方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記ガラス基板の第1面側にスパッタリングによって前記メッキ下地層を形成する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の基板製造方法により、前記ガラス基板の貫通孔に金属を充填してなる基板を製造した後、前記ガラス基板の第1面および第2面のうち少なくとも一方に配線パターンを形成する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−77807(P2013−77807A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178893(P2012−178893)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】