説明

基板製造方法および配線基板の製造方法

【課題】ガラス基板上に存在する複数の貫通孔に金属を充填する場合に、工程煩雑化等に
よる生産性低下を招くことなく、各貫通孔の孔内への金属充填度合いのバラツキ発生を回
避する。
【解決手段】ガラス基板2の一面側に第1メッキ層4aを形成して貫通孔3の開口部を閉
塞する第1の工程と、電解メッキによりガラス基板2の他面側から第2メッキ層4bを堆
積する第2の工程とを備える基板製造方法において、ガラス基板2上にはイオン集中領域
9aとイオン分散領域9bとが混在して配されており、第2の工程では、イオン集中領域
9aおよびイオン分散領域9bの双方に対して、電解メッキとして正の極性のフォワード
電流と負の極性のリバース電流を交互に与えるパルスメッキを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を用いた基板製造方法および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等の電子部品が実装される配線基板に対しては、高い接続信頼性を確保しつつ電子部品等の高密度実装を可能にすることが求められている。これに応えるべく、配線基板については、樹脂基板ではなく、平滑性、硬質性、絶縁性、耐熱性等に優れたガラス基板をコア基板として用い、そのガラス基板の表裏面に連通する貫通孔の孔内に金属を充填することで、基板表裏面に形成された各電気配線を確実に導通させることを可能とし、これにより微細化や高密度化等に対応し得るようにすることが、本願発明者らによって提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなガラス基板からなる配線基板は、以下に述べる手順で製造される。具体的には、例えば特許文献1に開示されているように、ガラス基板に貫通孔を形成する工程を行った後、メッキ法によって貫通孔内に金属を充填する工程を行う。そして、金属を充填する工程では、その初期段階において、ガラス基板の表裏面における貫通孔の開口部のいずれか一方を金属で閉塞し、その後、閉塞によって形成された孔内の底部に他方の開口部の側から金属を堆積して当該他方の開口部に向けて成長させることで貫通孔内に金属を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/027605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した配線基板において、コア基板となるガラス基板の平面上には、複数の貫通孔が不均一なピッチで形成されることがある。その場合、ガラス基板の平面上には、貫通孔が疎に分布する領域と密に分布する領域とが混在することになる。
【0006】
しかしながら、ガラス基板の平面上にて貫通孔の分布密度が異なる領域が混在していると、上述したように貫通孔内に金属を充填する工程を含む配線基板の製造手順では、各貫通孔の孔内への金属の充填度合いにバラツキが生じてしまう可能性がある。以下、その理由について説明する。
【0007】
孔内への金属の充填は、電解メッキ法を用いて行えば、スパッタや蒸着等の他の成膜手法に比べて、コスト面での優位性が高い。ただし、電解メッキ法により孔内への金属充填を行うと、充填する金属の基になる金属イオンは、付着し易い箇所に集中する。そのため、ガラス基板の平面上において金属イオンが集中し易い領域と集中し難い領域が混在している場合、各領域に対して同一条件により金属充填を行うと、集中し易い領域における金属充填が促進されることになる。
【0008】
ここで、例えばガラス基板の平面上にて貫通孔の分布密度が異なる領域が混在している場合について考えると、貫通孔が疎に分布する領域のほうが、密に分布する領域に比べて、金属イオンが孔内に集中し易くなる。単位面積当たりの孔数が少ない領域のほうが、孔内に金属イオンが集中し易いからである。したがって、貫通孔が疎に分布する領域では、金属イオンが集中し易いことから、密に分布する領域に比べて、孔内への金属充填が速く進むことになり、その結果として領域毎の金属充填度合いにバラツキが生じてしまうのである。
【0009】
このような領域毎の金属充填度合いのバラツキは、充填後における基板表面からの金属突出量の不揃いを招く要因となり、その後に行う基板表面の不要層除去処理の効率低下等に繋がり得るため、その発生を極力回避すべきである。その一方で、領域毎の金属充填度合いのバラツキ発生回避のために、例えば各領域で処理条件を相違させるといったことは、工程煩雑化等による生産性低下に繋がり得るため、好ましくない。
【0010】
そこで、本発明は、基板平面上に存在する複数の貫通孔に対して金属を充填する場合に、工程煩雑化等による生産性低下を招くことなく、各貫通孔の孔内への金属充填度合いのバラツキ発生を回避することができる基板製造方法および配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で開示する発明は、ガラス基板の表裏面に連通する複数の貫通孔のそれぞれの孔内に金属材が充填されている基板を製造する基板製造方法である。
本基板製造方法は、ガラス基板の一面側に第1金属材の層を形成して当該一面側における前記貫通孔の開口部を閉塞する第1の工程と、前記第1金属材の層を用いて行う電解メッキにより前記ガラス基板の他面側から前記貫通孔の孔内に第2金属材を充填する第2の工程と、を含んでいる。
本基板製造方法に適用される前記ガラス基板は、前記第2金属材の基になる金属イオンが孔内に集中し易い態様で前記貫通孔が形成されているイオン集中領域と、前記金属イオンが孔内に集中し難い態様で前記貫通孔が形成されているイオン分散領域とが、当該ガラス基板の平面上に混在して配されている基板である。
本基板製造方法の特徴は、前記第2の工程では、前記イオン集中領域および前記イオン分散領域の双方に対して、前記電解メッキとして正の極性のフォワード電流と負の極性のリバース電流を交互に与えるパルスメッキを行うこと、である。
【0012】
ここで言う「イオン集中領域」とは、第2の工程の電解メッキの過程で、メッキ浴の電解液に含まれる金属イオン濃度の変動が少ない領域を言う。具体的には、ガラス基板に形成された貫通孔の形成個数が少ない領域で金属イオンの消費が少ない領域、貫通孔の径が大径であるので金属イオンの侵入が比較的容易な孔、などが挙げられる。
また、「イオン分散領域」とは、第2の工程の電解メッキの過程で、メッキ浴中の電解液に含まれる金属イオン濃度が低下しやすい領域を言う。具体的には、ガラス基板に形成された貫通孔の形成個数が多い領域で金属イオンの消費が多い領域、貫通孔の径が小径であったり複雑な形状であるために金属イオンが侵入し難い孔、などが挙げられる。
【0013】
ガラス基板を陰極、メッキ金属を陽極として電解メッキを行う場合、ガラス基板に電析した量の金属が陽極から溶出するため、メッキ浴中の電解液濃度の変動は小さい。しかしながら、ガラス基板の貫通孔内に金属を充填する場合、ガラス基板の貫通孔の形状や密度などによってメッキ浴中の金属イオン濃度に分布が生じる。金属イオン濃度が濃い領域と薄い領域では、電析に係る電流密度に差異が生じ、メッキ成長の度合いにバラツキが生じやすい。本基板製造方法によれば、前述のパルスメッキを実施することにより、メッキ浴中の金属イオン濃度の分布が生じにくくなり、貫通孔の充填状態が均等化される。
【0014】
本基板製造方法は、前記第1金属材と前記第2金属材とが同一金属材であると好ましい。
第1金属材と第2金属材が同一である場合、それぞれの金属の電気的特性の相違から生じる電気的界面が発現しなくなる。
【0015】
本基板製造方法は、前記第1金属材および前記第2金属材は、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ロジウムのいずれか1種から構成される金属または2種以上から構成される合金であると好ましい。
【0016】
本基板製造方法は、前記電解メッキを定電流で行うことが好ましい。ここでいう「定電流」とは、メッキ成長に係る電極反応を進める電流を、電流値の管理を持って行うことを示しており、単一の電流値で行うことのみを示さない。具体的には、パルスメッキ制御において、特定の正電流値と特定の負電流値を設定し、それら正電流値、負電流値の値を時間軸に対して設定して制御する方法も、ここでいう「定電流」に含まれる。
電解メッキによって成長する金属の量は、電気量に比例する。電流制御で電解メッキを実施することで、メッキ成長具合を把握することができるので好ましい。
【0017】
本明細書では、配線基板の製造方法も開示する。本配線基板の製造方法は、前述までの基板製造方法により、貫通孔に金属を充填してなるガラス基板を製造した後、前記ガラス基板の第1面および第2面のうち少なくとも一方に配線パターンを形成することを特徴とする配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板平面上に存在する複数の貫通孔に対して金属を充填する場合に、工程煩雑化等による生産性低下を招くことなく、各貫通孔の孔内への金属充填度合いのバラツキ発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る配線基板の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る配線基板を構成するガラス基板上における貫通孔の配置例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その1)である。
【図4】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その2)である。
【図5】貫通孔の断面形状を示す拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るパルス反転メッキ法を説明するタイムチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その3)である。
【図8】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その4)である。
【図9】本発明の実施の形態に係る配線基板の製造方法を説明する工程図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載する実施形態の特徴について最初に列記する。
(特徴1)ガラス基板は感光性ガラスで構成されている。感光性ガラス基板は貫通孔を高精度に形成することができるので、ガラス配線基板、特に、両面ガラス配線基板に適している。
(特徴2)感光性ガラス基板は、イオンマイグレーションを抑制する前処理を行ったものを用意する。
感光性ガラス基板には、リチウムイオンやカリウムイオンといったアルカリ金属イオンが含まれている。紫外線照射や熱処理を行うことにより、アルカリ金属イオンが基板中に固定される。アルカリ金属イオンの移動が抑制されるので、イオンマイグレーションも抑制される。
(特徴3)メッキ下地層は二層構造であり、ガラス基板上に最初に形成される層はクロム層である。ガラス表面にクロム膜は密着性よく製膜される。密着性に優れた層を介することにより、ガラスと充填金属の接合状態を向上させることができる。
(特徴4)充填工程(第2の工程)のメッキ電流密度は、開口閉塞工程(第1の工程)よりも低い。
充填工程におけるメッキ成長は、金属をより緻密に充填するために遅い速度で成長させることが好ましい。
(特徴5)ガラス基板の貫通孔は、第1開口に向けて裾広がり形状(フレア状)である。メッキ下地層を真空蒸着法やスパッタ法で形成する場合、ガラス基板は、蒸発源やターゲットに第1面側を向けて製膜する。貫通孔が第1開口に向けて裾広がりの形状であれば、貫通孔の裾広がりな領域に位置する側壁部が蒸発源やターゲットに向くため、側壁部に確実にメッキ下地層を形成することができる。
【0021】
以下、図面に基づき本発明に係る基板製造方法および配線基板の製造方法について説明する。
本実施形態では、以下の順序で説明を行う。
1.配線基板の概略構成
2.配線基板の製造方法の手順
2−1.貫通孔形成工程
2−2.ガラス基板改質工程
2−3.壁面粗化工程
2−4.貫通孔充填工程
(1)準備工程(メッキ下地層形成)
(2)第1の工程(開口部閉塞)
(3)第2の工程(孔内金属充填)
(4)第3の工程(不要層除去)
2−5.配線パターン形成工程
3.本実施形態の効果
4.変形例等
【0022】
<1.配線基板の概略構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る配線基板の構成例を示す断面図であり、図2は、その配線基板を構成するガラス基板上における貫通孔の配置例を示す平面図である。
【0023】
図1に示すように、配線基板1は、そのコア基板としてガラス基板2を用いて構成されている。ガラス基板2には、複数(図1では1つのみ表示)の貫通孔3が設けられている。貫通孔3には、金属4が充填されている。ガラス基板2の表裏面には、それぞれ、密着層5を介して、配線経路に応じたパターン形状の配線パターン6が形成されている。このことから、配線基板1は、両面配線基板を構成している。なお、以下の説明では、図1において、ガラス基板2の下面を第1面とし、ガラス基板2の上面を第2面とする。つまり、ガラス基板2の第1面と第2面は、互いに表裏の関係になっている。
【0024】
ガラス基板2は、感光性ガラス基板を用いて構成されている。ガラス基板2に用いられる感光性ガラス基板は、その平滑性、硬質性、絶縁性、加工性等の面で、配線基板1のコア基板として優れている。このような性質は、感光性ガラスのほかに、ソーダライムガラス等の化学強化ガラス、無アルカリガラス、アルミノシリケートガラス等でも同様であり、これらのガラスも配線基板1のコア基板に用いることが可能である。
【0025】
貫通孔3は、図2に示すように、平面視円形に形成されている。また、貫通孔3は、ガラス基板2上に複数設けられているが、全てが均等ピッチで配されているのではなく、ガラス基板2上にて疎に分布する領域9aと密に分布する領域9bとが存在している。つまり、ガラス基板2の平面上には、貫通孔3の分布密度が異なる領域9a,9bが混在している。ここでいう分布の疎密は、各領域9a,9b間での相対的なものであり、分布密度の値そのものが制限されるものではない。
なお、各領域9a,9bにおける貫通孔3の配置については、特に制限はない。このため、いずれの領域9a,9bにおいても、貫通孔3は、例えば、所望する配線パターン6のパターン形状に合わせてランダムに配置してもよいし、予め決められた間隔でマトリクス状に配置してもよいし、マトリクス状以外の配列で配置してもよい。
【0026】
また図1において、金属4は、上述したようにガラス基板2の両面(第1面、第2面)に形成された配線パターン6同士を電気的に接続するものである。このため、金属4は、電気抵抗の低い金属材料(導電材料)であることが好ましい。また、本実施形態においては、貫通孔3を金属4で埋め込む手法として電解メッキを利用する。このため、金属4は、電解メッキに適した金属材料であることが望ましい。具体的には、金属4は、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ロジウムのいずれか一種から構成される金属または二種以上から構成される合金である。本実施形態においては、金属4を銅で構成しているものとする。
【0027】
密着層5は、ガラス基板2に対する配線パターン6の密着力を強化する層である。密着層5は、配線パターン6と同一のパターン形状をなしている。本実施形態においては、配線パターン6を金属4と同様に銅で構成している。この銅をガラス基板2上に直接積層すると十分な密着力が得られない。このため、ガラス基板2と配線パターン6との間に密着層5を介在させている。密着層5は、クロム層と銅層の2層構造でもよいし、それらの層間にクロム銅層を介在させた3層構造でもよいし、4層以上の多層構造でもよい。本実施形態においては、一例として、密着層5を3層構造にしている。具体的には、密着層5の構造を、ガラス基板2上にクロム層5a、クロム銅層5bおよび銅層5cを順に積層した3層構造にしている。
【0028】
配線パターン6は、密着層5の上に積層した状態で形成されている。より具体的には、配線パターン6は、密着層5の最上層となる銅層5cの上に形成されている。ガラス基板2の第1面に形成された配線パターン6の一部と、ガラス基板2の第2面に形成された配線パターン6の一部とは、貫通孔3に充填された金属4を介して電気的に接続(導通)されている。
【0029】
<2.配線基板の製造方法の手順>
次に、配線基板の製造方法について説明する。
配線基板の一連の製造工程のなかには、貫通孔形成工程、ガラス基板改質工程、壁面粗化工程、貫通孔充填工程、および、配線パターン形成工程が含まれる。このうち、配線パターン形成工程を除く一連の工程は、本実施形態の基板製造方法に含まれる工程となる。
【0030】
(2−1.貫通孔形成工程)
貫通孔形成工程は、ガラス基板2に貫通孔3を形成する工程である。貫通孔形成工程は、表裏の関係にある第1面および第2面を有する板状のガラス基材に、第1面側を第1開口部とし、かつ、第2面側を第2開口部とする貫通孔を形成してなるガラス基板を用意する工程に相当する。このため、貫通孔3付きのガラス基板2を入手する手法としては、貫通孔形成工程を行う以外にも、例えば、他のメーカーから貫通孔3付きのガラス基板2を購入してもよい。貫通孔3の形成方法としては、例えば、レーザー加工法やフォトリソグラフィ法を用いることができる。本実施形態においては、貫通孔3を高精度に形成するうえで、レーザー加工法よりも有利なフォトリソグラフィ法を用いることにする。フォトリソグラフィ法は露光および現像の各処理を経て行われる。このため、貫通孔3の形成対象となるガラス基材には、感光性の物質をガラス中に分散させた感光性ガラスを用いることにする。
【0031】
その場合、ガラス基板2は、感光性を示すものであれば特に制限はない。ガラス基板2には、感光性成分として金(Au)、銀(Ag)、亜酸化銅(CuO)または酸化セリウム(CeO)のうち少なくとも1種を含んでいることが好ましく、2種以上含んでいることがより好ましい。このようなガラス基板2としては、例えば質量%で、SiO:55%〜85%,酸化アルミニウム(Al):2%〜20%,酸化リチウム(LiO):5%〜15%,SiO+Al+LiO>85%を基本成分とし、Au:0.001%〜0.05%,Ag:0.001%〜0.5%,CuO:0.001%〜1%を感光性金属成分とし、更にCeO:0.001%〜0.2%を光増感剤として含有するものを用いることができる。
【0032】
以下、フォトリソグラフィ法によってガラス基板2に貫通孔3を形成する場合の具体的な手順について説明する。まず、ガラス基板2の貫通孔3を形成する部分(以下「貫通孔形成部分」という。)を露光する。この露光処理では、マスク開口を有するフォトマスク(図示せず)を用いる。フォトマスクは、例えば、透明な薄いガラス基板に所望のパターン形状で遮光膜(クロム膜等)を形成し、この遮光膜で露光光(本形態例では紫外線)の通過を遮断するものである。上記露光処理では、このフォトマスクをガラス基板2の第1面または第2面に密着させて配置する。次に、フォトマスクを介してガラス基板2に紫外線を照射する。そうすると、ガラス基板2の貫通孔形成部分に対応してフォトマスクに形成されたマスク開口を通してガラス基板2に紫外線が照射される。
【0033】
次に、ガラス基板2を熱処理する。熱処理は、感光性ガラス基板の転移点と屈伏点との間の温度で行うことが好ましい。転移点を下回る温度では熱処理効果が十分に得られず、屈伏点を上回る温度では感光性ガラス基板の収縮が起こって露光寸法精度が低下するおそれがあるためである。熱処理時間としては30分〜5時間程度とすることが好ましい。
【0034】
このような紫外線照射と熱処理を行うことにより、紫外線が照射された貫通孔形成部分が結晶化される。その結果、図3(A)に示すように、ガラス基板2の貫通孔形成部分に露光結晶化部3aが形成される。
【0035】
その後、上述のように露光結晶化部3aが形成されたガラス基板2を現像する。現像処理は、適度な濃度の希フッ化水素酸等のエッチング液を、現像液としてガラス基板2にスプレー等することにより行う。この現像処理により、露光結晶化部3aが選択的に溶解除去される。その結果、図3(B)に示すように、ガラス基板2に貫通孔3が形成される。この貫通孔3は、ガラス基板2の下面(第1面)と上面(第2面)にそれぞれ開口した状態となる。以降の説明では、ガラス基板2の下面側に開口する貫通孔3の開口部(第1開口部)を下開口部とし、ガラス基板2の上面側に開口する貫通孔3の開口部(第2開口部)を上開口部とする。
【0036】
上記のフォトリソグラフィ法を用いた貫通孔3の形成方法によれば、ガラス基板2にアスペクト比10程度の貫通孔3を所望の数だけ同時に形成することができる。例えば、厚さ0.3mm〜1.5mm程度のガラス基板2を用いた場合には、孔径(直径)が30μm〜150μm程度の貫通孔3を所望の位置に複数同時に形成することができる。これにより、配線パターンの微細化、貫通孔形成工程の効率化を図ることが可能になる。さらに、配線の高密度化のために、ランド幅を極めて小さくする、あるいはランド幅をゼロとしたランドレス構造とする場合には、貫通孔3間のスペースを十分広く確保することができる。そのため、貫通孔3間にも配線を形成することが可能になり、配線パターンの設計自由度の拡大や配線密度の向上を図ることも可能になる。また、複数の貫通孔3を狭ピッチで形成することによって配線密度の向上を図ることも可能になる。
【0037】
また、上記のフォトリソグラフィ法を用いた貫通孔3の形成方法によれば、フォトマスクに形成されたマスク開口のパターン次第で、ガラス基板2の平面上での分布密度が異なる複数の貫通孔3を、所望の位置に同時に形成することができる。つまり、所望する配線パターン6のパターン形状に応じて、貫通孔3の分布密度が異なる領域9a,9bをガラス基板2の平面上に混在させることが、容易に実現可能である。
【0038】
(2−2.ガラス基板改質工程)
貫通孔形成工程でガラス基板2に貫通孔3を形成した後は、ガラス基板改質工程を行う。
【0039】
通常、感光性のガラス基板2には、リチウムイオン(Li)、カリウムイオン(K)等のアルカリ金属イオンが含まれている。これらのアルカリ金属イオンが配線基板1の配線金属に漏洩し、これに水が吸着すると、電圧が印加されている回路間において配線金属がイオン化し、これが再度電荷を受けて還元され析出するイオンマイグレーションが発生する。このイオンマイグレーションにより、最悪の場合には、析出した金属によって一方の回路から他方の回路に向かう配線が形成され、回路間が短絡してしまうおそれがある。このような短絡不良は、配線間隔が小さい場合に顕著となる。このため、微細な配線を高密度に形成するためにはイオンマイグレーションを抑止する必要がある。
【0040】
ガラス基板改質工程では、貫通孔3が形成されたガラス基板2全体に、例えば紫外線を約700mJ/cmで照射し、その後、約850℃の温度で約2時間の熱処理を行うことにより、ガラス基板2を結晶化する。このように感光性のガラス基板2全体を結晶化することにより、結晶化前にくらべて、ガラス基板2に含まれるアルカリ金属イオンが移動しにくくなる。このため、イオンマイグレーションを効果的に抑止することができる。
【0041】
(2−3.壁面粗化工程)
ガラス基板改質工程でガラス基板2を結晶化した後は、壁面粗化工程を行う。
【0042】
壁面粗化工程は、少なくともガラス基板2に形成されている貫通孔3の側壁に対して、その表面の粗化を行う工程である。表面の粗化とは、当該表面を粗い面状態に変化させること、より具体的にはSEM(電子顕微鏡)観察で識別できる差異が生じる程度以上の面粗さの変化を伴う面処理を行うことをいう。なお、壁面粗化工程では、少なくとも貫通孔3の壁面面に対して粗化を行えばよいことから、当該側壁面の他にガラス基板2の表裏面や側端面等を粗化対象面として含んでいてもよい。
【0043】
表面の粗化は、以下のような手法で行う。本実施形態においては、貫通孔3が形成され、かつ、結晶化された後のガラス基板2に対して、酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)と硫酸アンモニウム((NHSO)とが所定比率で混合されてなるエッチング液によるエッチングを行う。このようなエッチング処理を行うと、ガラス基板2を構成する各種結晶のうち、上記のエッチング液に溶け易いもの(例えば石英ガラス)が優先して選択的に溶解除去される。その結果、エッチング処理された表面(貫通孔3の側壁面を含む)には、微細なエッチング痕が多数形成されることになる。このエッチング痕の形成によって、ガラス基板2の表面が粗化される。
【0044】
このようにして粗化された表面については、粗化をしない場合に比べると、後述する第2の工程における充填段階で貫通孔3の孔内に充填される金属材料の濡れ性が向上する。また、金属材料の充填後は、粗化によって形成されたエッチング痕の底部まで金属材料が入り込むことでアンカー効果が発揮されるので、粗化をしない場合に比べると、粗化された表面に対する金属材料の密着強度が向上する。
【0045】
なお、壁面粗化工程での粗化は、必ずしも上述したエッチング処理で行う必要はなく、例えば機械的な研削処理を利用するような他の手法で行うものであってもよい。
【0046】
(2−4.貫通孔充填工程)
壁面粗化工程で少なくとも貫通孔3の側壁面を粗化した後は、貫通孔充填工程を行う。貫通孔充填工程では、(1)準備工程(メッキ下地層形成)、(2)第1の工程(開口部閉塞)、(3)第2の工程(孔内金属充填)、および、(4)第3の工程(不要層除去)を順に行う。
【0047】
(1)準備工程(メッキ下地層形成)
準備工程は、電解メッキによって貫通孔3の孔内に金属材料を充填するのに先立ち、ガラス基板2の下面側に金属のメッキ下地層7を形成する工程である。この工程では、ガラス基板2の上面側にメッキ下地層7を形成せず、ガラス基板2の下面側だけにメッキ下地層7を形成する。また、準備工程では、図4(A)に示すように、ガラス基板2の下面とあわせて、貫通孔3の下開口部(第1開口部)の縁から貫通孔3の側壁面の一部にかけてもメッキ下地層7を形成しておく。これにより、ガラス基板2の下面側に位置する貫通孔3の側壁面部分はメッキ下地層7で覆われるのに対して、ガラス基板2の上面側に位置する貫通孔3の側壁面部分はメッキ下地層7で覆われることなく露出した状態となる。ちなみに、ここで記述する「貫通孔3の側壁面の一部」とは、貫通孔3の深さ方向の一部を占める側壁面部分であって、かつ、貫通孔3の下開口部の縁から貫通孔3の奥側(上開口部)に向かって連続する側壁面部分をいう。
【0048】
貫通孔3の深さ方向において、メッキ下地層7を形成する範囲は、ガラス基板2の除去予定領域8よりも貫通孔3の奥側に入り込んだ位置まで確保することが望ましい。ガラス基板2の除去予定領域8とは、後述する第3の工程でガラス基板2の表層部を機械加工により除去する際に、ガラス基板2の除去を予定している領域をいう。図4(A)においては、2本の二点鎖線で示す位置までガラス基板2の表層部を機械加工で除去する予定になっている。このため、ガラス基板2の機械加工(平坦化加工)を終えた段階では、2本の二点鎖線よりも内側の基板部分2aが、最終的にガラス基板2として残る部分になる。
【0049】
ガラス基板2の除去予定領域8は、ガラス基板2の両面にそれぞれ設定されている。このうち、ガラス基板2の下面側に設定された除去予定領域8に関しては、機械加工によってガラス基板2の表層部を除去した後でも貫通孔3の下開口部がメッキ下地層7および第1メッキ層4a(後述)によって閉塞された状態となるように、メッキ下地層7を形成しておく。具体的には、除去予定領域8の境界位置(二点鎖線で示す位置)よりも貫通孔3の奥側までメッキ下地層7を形成しておく。
【0050】
メッキ下地層7は、ガラス基板2との密着性が良好なスパッタリングによって形成することが望ましい。具体的には、ガラス基板2の下面側に、例えば厚さが約0.05μmのクロム層7aと厚さが約1.5μmの銅層7bを、スパッタリングにより順に積層することにより、2層構造のメッキ下地層7を形成する。その際、スパッタリングによってターゲットからはじき飛ばされた金属原子(以下、「スパッタ原子」とも記す)の一部が、貫通孔3の下開口部から貫通孔3内に進入し、貫通孔3の側壁面に付着する。このため、スパッタ原子を貫通孔3の側壁面に効率良く付着させるには、上記貫通孔形成工程において、貫通孔3の下開口部側の断面形状が裾広がり状(フレア状)となるように、ガラス基板2に貫通孔3を形成しておくことが望ましい。
【0051】
具体的には、上記貫通孔形成工程において、露光結晶化部3aをエッチング液で溶解する場合に、エッチング液の濃度を適宜調整することにより、貫通孔3の深さ方向でガラス基板2の下開口部の縁に近い部分が遠い部分よりも多く溶けるようにする。これにより、貫通孔3の孔径が、深さ方向の中心部から上下の開口部に向かって徐々に大きくなるように、貫通孔3が形成されることになる。このように貫通孔3を形成しておけば、上記のクロム層7aおよび銅層7bのスパッタリングに際して、図5に示すように、貫通孔3の下開口部側の側壁面が貫通孔3の中心軸(一点鎖線)に対してフレア状に傾いた状態で配置される。このため、スパッタリングによって貫通孔3の下開口部から貫通孔3内に進入したスパッタ原子が、貫通孔3の側壁面に付着しやすくなる。貫通孔3の深さ方向におけるメッキ下地層7の形成範囲については、例えば、貫通孔3の深さ寸法(ガラス基板2の厚み寸法)の少なくとも1/20以上、より好ましくは1/10以上、さらに好ましくは1/5〜1/2程度の範囲とし、この範囲で貫通孔3の側壁面をメッキ下地層7で被覆すればよい。
【0052】
(2)第1の工程(開口部閉塞)
準備工程に次いで行う第1の工程は、ガラス基板2の下面側に電解メッキによって第1金属材の層である第1メッキ層4aを形成することにより、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aによって閉塞する工程である。この工程では、図4(B)に示すように、ガラス基板2の下面でメッキ下地層7の表面から第1メッキ層4aを成長させるとともに、貫通孔3の内部でもメッキ下地層7の表面から第1メッキ層4aを成長させることにより、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aによって閉塞する。本実施形態においては、銅の電解メッキによって第1メッキ層4aを形成する。つまり、本実施形態では、第1メッキ層4aを構成する第1金属材として銅を用いる。
【0053】
第1の工程の電解メッキでは、例えば、メッキ液である硫酸銅水溶液の入ったメッキ浴中に、銅板を陽極とし、ガラス基板2のメッキ下地層7を陰極として、それぞれ配置する。その際、メッキ下地層7が形成されているガラス基板2の下面側(第1面側)から電解メッキを行うために、ガラス基板2の下面側を陽極(銅板)に対向させる。この状態で陽極と陰極に直流電源を接続して所定の電圧を印加することにより、メッキ下地層7の表面に銅を析出させる。第1メッキ層4aの形成は、貫通孔3の孔径にも依存するが、通常よりも比較的高い電流密度の条件下(例えば、1A/dm〜5A/dm程度)で行うようにする。また、この電流密度は、メッキ液濃度にも依存するため、その値を適切に設定するようにする。一般的には、メッキ液濃度が高い場合には、低い場合にくらべて、より高い電流密度に設定することができる。このような電流密度条件下で電解メッキを行うことにより、貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aによって閉塞することができる。このとき、電解メッキによってメッキ下地層7の上に積層される第1メッキ層4aの一部は、貫通孔3の側壁面を這い上がるようにしてメッキ下地層7よりも貫通孔3の奥側まで成長する。また、貫通孔3内における第1メッキ層4aの表面は、貫通孔3の中心部分で断面略U字形または断面略V字状に凹んだ形状になる。つまり、下開口部の閉塞によって、貫通孔3の孔内には、第1メッキ層4aによる断面凹状(具体的には断面略U字状または断面略V字状)の底部が形成されることになる。
【0054】
(3)第2の工程(孔内金属充填)
第1の工程に次いで行う第2の工程は、ガラス基板2の上面側からの電解メッキによって貫通孔3内に第2金属材からなる第2メッキ層4bを堆積することにより、貫通孔3を第2金属材で充填する工程である。ここで記述する「ガラス基板2の上面側からの電解メッキ」とは、ガラス基板2の上面および下面のうち、ガラス基板2の上面側にこれに対向するように陽極を配置するとともに、第1メッキ層4aを陰極として用いて行う電解メッキをいう。また、「貫通孔3を金属で充填する」とは、第1の工程において貫通孔3の下開口部を第1メッキ層4aで閉塞した場合に、貫通孔3内で第1メッキ層4aにより埋め込まれていない部分(未充填部分)を第2金属材で満たすことをいう。
【0055】
以下、第2の工程で行う孔内金属充填について、(i)概要、(ii)電解メッキ制御、(iii)領域間の関係に項分けして、順に説明する。
【0056】
(i)概要
第2の工程では、図4(C),(D)に示すように、貫通孔3の内部で第1メッキ層4aの表面から貫通孔3の上開口部に向かって第2メッキ層4bを成長させることにより、貫通孔3を第2金属材で充填する。本実施形態においては、上述した第1メッキ層4aと同様に、銅の電解メッキによって貫通孔3内に第2メッキ層4bを形成する。つまり、本実施形態では、第2メッキ層4bを構成する第2金属材として、第1メッキ層4aを構成する第1金属材と同一金属材である銅を用いる。この場合、貫通孔3の内部には、第1メッキ層4aおよび第2メッキ層4bを構成する銅と共に、メッキ下地層7(クロム層7a、銅層7b)を構成するクロムおよび銅が存在し、これらの金属によって貫通孔3が埋め込まれることになる。
【0057】
第2の工程の電解メッキでは、例えば、メッキ液である硫酸銅水溶液の入ったメッキ浴中に、銅板を陽極とし、ガラス基板2の第1メッキ層4aを陰極として、それぞれ配置する。その際、第1メッキ層4aが形成されていないガラス基板2の上面側(第2面側)から電解メッキを行うために、ガラス基板2の上面側を陽極(銅板)に対向させる。この状態で陽極と陰極に直流電源を接続して電流を印加することにより、第1メッキ層4aの表面に銅を析出させる。これにより、先に貫通孔3内に形成されているメッキ下地層7および第1メッキ層4aと、第1メッキ層4aの上に積層される第2メッキ層4bとによって、貫通孔3を埋め込む。
【0058】
このような電解メッキを行うことにより、メッキ浴中の銅イオンが貫通孔3の上開口部から貫通孔3内に進出して第1メッキ層4aの表面に析出する。このため、貫通孔3内においては、先に形成した第1メッキ層4aの表面から上開口部に向かって第2メッキ層4bが成長することにより、貫通孔3が徐々に埋め込まれていく。そして、第2メッキ層4bの表面が貫通孔3の上開口部に達すると、貫通孔3が完全に埋め込まれた状態となる。ここでは、第2メッキ層4bの成長による貫通孔3の充填を確実なものとするために、図4(D)に示すように、第2メッキ層4bの表面がガラス基板2の上面側に突出するまで電解メッキを行うものとする。
【0059】
ところで、第2の工程の電解メッキは、いわゆるパルス反転メッキ法を用いて行う。パルス反転メッキ法では、正の極性のフォワード電流と負の極性のリバース電流を交互に与えるパルスメッキを行う。このような技法を用いて電解メッキを行えば、リバース電流の印加時にメッキ層の厚い部分から金属材を電解液に再び戻すことになるので、金属材の付き易い部分のメッキ層を厚くし過ぎることなく、金属材の付き難い部分にもメッキ層を形成することができる。
【0060】
(ii)電解メッキ制御
ここで、第2の工程で行う電解メッキの制御について詳しく説明する。
【0061】
(パルス制御)
第2の工程では、上述したように、電解メッキとしてパルス反転メッキ法によるパルスメッキ、すなわち正の極性のフォワード電流と負の極性のリバース電流を交互に与えるパルスメッキを行う。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態に係るパルス反転メッキ法を説明するタイムチャートである。図例では、電解メッキの際に陽極と陰極の間に印加する電流値Iを縦軸にとり、経過時間tを横軸にとり、パルス反転メッキ法での印加電流の時間変移を表している。より具体的には、正の極性のフォワード電流と、負の極性のリバース電流とについて、時間経過に対する変移を表している。
【0063】
ここでいう電流値は、陽極と陰極の間に正と負の一定電流値を流すことによって規定される。ただし、後述するように、必ずしも一定電流値である必要はなく、一定電圧値を印加することによって規定されるものであっても良い。本実施形態においては、正の極性のフォワード電流値をFwとし、負の極性のリバース電流値Revとし、これらによって規定される場合を例に挙げて、以下の説明を行う。
【0064】
パルス反転メッキ法によるパルスメッキでは、図6に示すように、正の極性のフォワード電流値Fwによるパルスと、負の極性のリバース電流値Revによるパルスとを、それぞれ交互に流す。
フォワード電流値Fwとリバース電流値Revとの絶対値の比Fw/Revは、例えば1/1〜1/5の範囲内、好ましくは1/2〜1/3程度に設定される。
フォワード電流値Fwによるパルスの印加時間T1と、リバース電流値Revによるパルスの印加時間T2との比T1/T2は、例えば5/1〜30/1の範囲内、好ましくは20/1程度に設定される。なお、1パルスの時間T1は、例えば0.1sec〜5secに設定される。1回の印加時間T1が短いとパルスの切り替えが頻繁に行われることになる一方で、1回の印加時間T1があまり長いとメッキ層の膜質が低下するおそれがあるため、上記の範囲内に1パルスの時間T1を設定することが好ましい。
【0065】
このようなパルス制御によれば、1パルスあたりの正の極性の電気量(すなわち、1パルスあたりのフォワード電流値Fwの時間積分値)のほうが、1パルスあたりの負の極性の電気量(すなわち、1パルスあたりのリバース電流値Revの時間積分値)よりも大きくなる。したがって、正と負の各極性の電流を交互に与えるパルスメッキを行った場合であっても、第2メッキ層4bの成長が確保されることになる。
【0066】
なお、正の極性のフォワード電気量を印加する際には、比較的低い電流密度の条件下(例えば、0.2A/dm〜0.8A/dm程度)で行うようにする。
また、正の極性のフォワード電気量を印加する際の印加電圧は、水素過電圧以下に設定することが肝要である。貫通孔3が高アスペクト比である場合には、発生した水素ガス泡を除去することが非常に困難だからである。
【0067】
このようなパルスメッキにおいて、フォワード電流の印加時には、陰極である第1メッキ層4aの表面に銅が析出する。
一方、リバース電流の印加時には、一旦析出した銅が電解液に溶け込むことになる。このとき、反対の電極に最も近い4bに示される凹状頂部近傍から集中的に離脱するが、そうでない箇所からは脱離し難い。
したがって、フォワード電流とリバース電流を交互に印加するパルスメッキを行えば、特定箇所への銅の析出を抑制しつつ、析出し難かった箇所に対しても銅を析出させ得るようになる。つまり、銅析出度合いの箇所別バラツキを抑制することが実現可能となる。
【0068】
つまり、本実施形態においては、第2の工程でパルス反転メッキ法によるパルスメッキを行うので、貫通孔3の孔内底部が断面凹状であっても、銅イオンの付着度合いの箇所別バラツキを抑制することが実現可能となる。具体的には、貫通孔3の孔内底部の最上部近傍への銅イオンの集中的な付着が抑制され、凹状窪み部分にも第2メッキ層4bを構成する銅が堆積される。換言すると、凹状窪みが銅によって埋まる前に、断面凹状の頂部近傍に付着した銅同士が繋がってしまうことがない。そのため、本実施形態においては、凹状窪みに起因するボイドが発生してしまうことなく、貫通孔3の孔内を第2メッキ層4bによって埋めることが可能となる。
【0069】
(定電流制御)
上述したパルス反転メッキ法によるパルス制御を伴う電解メッキは、定電流法と定電圧法のいずれによっても行うことができる。一定電流値を用いて電解メッキを行う。一方、定電圧法は、一定電圧値を用いて電解メッキを行う。
【0070】
定電圧法による電解メッキ(以下、単に「定電圧電解」という)であれば、電圧が一定であるため、液の状態等により流れる電流量が一定ではなくなる。このために析出速度を時間で管理することが困難となる。また、積算電流による管理が可能ではあるが、電流密度が変化することにより、析出したメッキ層の物性に問題が生じる場合がある。
【0071】
これに対して、定電流法による電解メッキ(以下、単に「定電流メッキ」という)であれば、電流値を一定に制御することが可能であるために、メッキの析出量を時間で管理することが可能になる。したがって、メッキ層の析出の多くの時間を要してしまったり、不均一なメッキ層が形成されてしまうことはない。
【0072】
第2の工程で行う電解メッキ(すなわち、パルス反転メッキ法によるパルスメッキ)は、定電流電解によるものであってもよいし、定電圧電解によるものであってもよいし、これら両方を併用したものであってもよい。ただし、本実施形態においては、上述した理由(すなわち、電解メッキ処理の迅速さや、形成するメッキ層の均一さ等)を考慮して、定電流電解によって行うものとする。
【0073】
(iii)領域間の関係
電解メッキによる金属充填の対象となる貫通孔3は、ガラス基板2上に複数設けられている。そして、ガラス基板2上には、貫通孔3が疎に分布する領域9aと貫通孔3が密に分布する領域9bとが混在している(例えば図2を参照)。
【0074】
このように、ガラス基板2上にて貫通孔3の分布密度が異なる領域9a,9bが混在している場合であっても、孔内金属充填のために行う電解メッキは、単数枚または複数枚のガラス基板2を一つの単位として、当該単位毎に行われる。つまり、一つのガラス基板2上における各領域9a,9bに対して、電解メッキによる孔内金属充填が同時に行われることになる。そのため、ガラス基板2上にて貫通孔3の分布密度が異なる領域9a,9bが混在している場合は、貫通孔3が疎に分布する領域9aのほうが、密に分布する領域9bに比べて、電解メッキの際に銅イオンが孔内に集中し易くなる。単位面積当たりの孔数が少ない領域のほうが、孔内に銅イオンが集中し易いからである。
【0075】
このことは、以下の関係が成り立つことを意味する。すなわち、ガラス基板2上に貫通孔3が疎に分布する態様で当該貫通孔3が形成されている領域9aは、第2メッキ層4bを構成する第2金属材の基になる銅イオンが孔内に集中し易い態様で貫通孔3が形成されている領域(以下、単に「イオン集中領域」という)に相当する。また、ガラス基板2上に貫通孔3が密に分布する態様で当該貫通孔3が形成されている領域9bは、第2メッキ層4bを構成する第2金属材の基になる銅イオンが孔内に集中し難い態様で貫通孔3が形成されている領域(以下、単に「イオン分散領域」という)に相当する。なお、イオン集中領域9aの「銅イオンが孔内に集中し易い態様」とイオン分散領域9bの「銅イオンが孔内に集中し難い態様」は、各領域9a,9b間の対比において相対的に銅イオンが集中し易いか否かを意味している。
【0076】
しかるに、本実施形態においては、第2の工程における孔内金属充填のための電解メッキとして、各領域9a,9bの双方に対してパルス反転メッキ法によるパルスメッキを行う。したがって、ガラス基板2上にイオン集中領域9aとイオン分散領域9bが混在している場合であっても、各領域9a,9bのそれぞれの貫通孔3の孔内への銅の充填度合いが均等化されることになる。
【0077】
より具体的には、ガラス基板2上にイオン集中領域9aとイオン分散領域9bが混在していると、イオン集中領域9aにおける貫通孔3の孔内に銅イオンが集中し易いことから、図7(A)に示すように、イオン分散領域9bに比べてイオン集中領域9aのほうが第2メッキ層4bの成長が速くなり得る。ところが、その場合であっても、パルス反転メッキ法を用いたパルスメッキを行えば、ガラス基板2上における特定の貫通孔の孔内への金属イオンの集中的な付着が生じることがない。つまり、イオン集中領域9aとイオン分散領域9bが混在していても、イオン集中領域9aにおける貫通孔3の孔内へのイオン集中が抑制される。したがって、貫通孔3が完全に埋め込まれた状態となるまで第2メッキ層4bを成長させた時点では、図7(B)に示すように、イオン集中領域9aとイオン分散領域9bとにおける銅の孔内充填度合いが均等化されることになる。
【0078】
このように、本実施形態においては、パルス反転メッキ法によるパルスメッキを行うことで銅の孔内充填度合いを均等化させるので、領域9a,9b毎の銅の孔内充填度合いのバラツキ発生を回避することができる。このことは、各領域9a,9b間のみならず、同一領域における各貫通孔3の間についても、同様のことが言える。つまり、パルス反転メッキ法によるパルスメッキを行えば、ガラス基板2上の複数の貫通孔3のそれぞれについて、銅の孔内充填度合いのバラツキ発生を回避できる。
しかも、上述のバラツキ発生回避は、第2の工程にてパルス反転メッキ法によるパルスメッキを行うのみで実現が可能である。つまり、例えば各領域9a,9bで処理条件を相違させるといった煩雑な処理を要することなく、各貫通孔3の孔内への銅の充填度合いを自動的に制御することが可能である。
【0079】
(4)第3の工程(不要層除去)
第2の工程に次いで行う第3の工程は、貫通孔3の孔内への金属充填をした後のガラス基板2から不要な層を除去するとともに、除去後における露出面の平坦化を行う工程である。すなわち、第3の工程は、不要な層を除去する基板面露出工程と、ガラス基板2の露出面の平坦化を行う基板平坦化工程とを含む。
【0080】
(基板面露出工程)
基板面露出工程は、ガラス基板2の下面から第1メッキ層4aおよびメッキ下地層7を取り除いてガラス基板2の下面を露出させる工程である。この工程では、図4(D)と図8(A)を対比すると分かるように、ガラス基板2の下面を覆っていた第1メッキ層4aおよびメッキ下地層7を除去するとともに、ガラス基板2の上面側に突出していた第2メッキ層4bをへこませる。
【0081】
基板面露出工程では、除去の対象となる膜の構成材料に適した薬液を用いて、エッチング処理を行う。本実施形態においては、薬液を変えて2回のエッチング処理を行う。まず、1回目のエッチング処理では、例えば、塩化第二鉄を主成分とする薬液を用いて、第1メッキ層4aを構成している銅や、メッキ下地層7の銅層7bを構成している銅をエッチングにより除去(溶解)する。また、1回目のエッチング処理では、第2メッキ層4bを構成している銅をエッチングにより除去する。次に、2回目のエッチング処理では、例えば、フェリシアン化カリウムを主成分とする薬液を用いて、メッキ下地層7のクロム層7aを構成しているクロムをエッチングにより除去する。
【0082】
ちなみに、1回目のエッチング処理では、ガラス基板2の下面側にクロム膜7bが露出するまで銅をエッチングにより除去するが、貫通孔3内においては、エッチングによる第1メッキ層4aの後退面F1が、ガラス基板2の除去予定領域8(図4(A)を参照)内にとどまるようにエッチング時間等を調整する。また、ガラス基板2の上面側においては、第2メッキ層4bの表面がガラス基板2の上面から突出しないように、1回目のエッチング処理によって第2メッキ層4bの表面を貫通孔3内まで後退させる。この場合も、エッチングによる第2メッキ層4bの後退面F2が、ガラス基板2の除去予定領域8(図4(A)を参照)内にとどまるようにエッチング時間等を調整する。
【0083】
(基板平坦化工程)
基板平坦化工程は、ガラス基板2の上面および下面のうち少なくとも下面を機械加工によって平坦化する工程である。本実施形態においては、ガラス基板2の両面(上面および下面)を機械加工によって平坦化する。具体的には、ガラス基板2の上面および下面を両面ラップ加工によって平坦化し、その後、必要に応じてガラス基板2の両面を仕上げ研磨する。このような機械加工により、ガラス基板2の上面側および下面側の各表層部が、それぞれ除去予定領域8の境界位置(図4(A)の二点鎖線で示す位置)にあわせて除去される。その結果、図8(B)に示すように、ガラス基板2の両面が平坦化されるとともに、貫通孔3に充填された金属4の両端面が、それぞれガラス基板2の上面および下面と面一な状態に仕上げられる。また、ガラス基板2の貫通孔3の下開口部は、メッキ下地層7および第1メッキ層4aによって閉塞された状態となる。この場合、貫通孔3の内部には、メッキ下地層7を構成する銅およびクロムと、メッキ層4a,4bを構成する銅とが残存した状態になる。そして、これらの金属が貫通孔3に充填された状態となる。これにより、図1に示すように、貫通孔3に金属4を充填した構造のガラス基板2が得られる。
【0084】
なお、基板平坦化工程に先立って基板面露出工程を行い、ガラス基板2の下面から第1メッキ層4aおよびメッキ下地層7を取り除いてガラス基板2の下面を露出させておけば、基板平坦化工程を行う際には、ガラス基板2の上面および下面のいずれも、ガラスという同一(共通)の材料をもって露出した面になる。このため、基板平坦化工程においては、機械加工によるガラス基板2の平坦化処理を両面ラップ加工で行うことができる。これにより、ガラス基板2を両面同時に平坦化処理することが可能となる。したがって、ガラス基板2を片面ずつ平坦化処理する場合にくらべて、基板製造コストを安く抑えることができる。ちなみに、ガラス基板2の上面と下面が互いに異なる材料をもって露出している場合は、両面ラップ加工の適用が困難になるため、ガラス基板2を片面ずつ平坦化処理する必要がある。
【0085】
(2−5.配線パターン形成工程)
準備工程、第1の工程、第2の工程および第3の工程を含む貫通孔充填工程を行って、貫通孔3に金属4を充填した構造のガラス基板2を得た後は、配線パターン形成工程を行う。配線パターン形成工程は、ガラス基板2の上面および下面のうち少なくとも一方に配線パターン6を形成する工程である。配線パターン形成工程には、密着層形成工程、配線層形成工程およびパターニング工程が含まれる。以下、各工程について説明する。
【0086】
(密着層形成工程)
密着層形成工程では、図9(A)に示すように、ガラス基板2の各面に対して、スパッタリング法によって密着層5を形成する。本実施形態では、クロム層5a、クロム銅層5bおよび銅層5cを順に積層した3層構造で密着層5を形成する。密着層5を構成する各金属層は、後述するエッチングによって配線パターン6を形成するときに生じるサイドエッチング量を考慮すると、極力薄く形成することが望ましい。ただし、密着層5の各金属層の厚さが薄すぎると、配線層のパターニングのために行われる処理によって密着層5が除去されるおそれがある。したがって、例えば、上述のように密着層5を3層構造で形成する場合は、クロム層5aの厚さを0.04μm〜0.1μm程度、クロム銅層5bの厚さを0.04μm〜0.1μm程度、銅層5cの厚さを0.5μm〜1.5μm程度とすることが望ましい。これにより、密着層5の厚さは、合計で2μm以下に抑えられる。
【0087】
(配線層形成工程)
配線層形成工程では、図9(B)に示すように、ガラス基板2の各面に対して、先に形成した密着層5を覆う状態で配線層6aを形成する。配線層6aの形成は、電解メッキによって行う。この配線層6aについては、上述した密着層5と同様に、サイドエッチング量を考慮して極力薄く形成することが望ましい。しかし、配線層6aが薄すぎると、使用環境によってガラス基板2の温度変化が繰り返された場合に、配線層6aの熱膨張係数とガラス基板2の熱膨張係数との差によって、配線パターンに金属疲労が生じるおそれがある。このため、金属疲労に対する配線パターンの接続の信頼性を確保するために、配線層6aは適度な厚みにしておく必要がある。具体的には、配線層6aの厚みを1μm〜20μm程度とすることが望ましく、さらには4μm〜7μm程度とすることがより好ましい。配線層6aの厚さが1μmを下回る場合には、上記金属疲労によって配線の断線が生じる危険性が高くなる。また、配線層6aの厚さが20μmを上回る場合には、配線パターンの微細化の要求に応えることが難しくなる。
【0088】
(パターニング工程)
パターニング工程では、図9(C)に示すように、ガラス基板2の各面上において、密着層5および配線層6aをフォトリソグラフィ法とエッチングによってパターニングすることにより、配線パターン6を形成する。具体的には、ガラス基板2の配線層6aを図示しないレジスト層で覆った後、このレジスト層を露光・現像することにより、レジストパターンを形成する。これにより、ガラス基板2の配線層6aの一部(配線パターンとして残す部分)がレジストパターンで覆われた状態となる。次に、レジストパターンをマスクとして、配線層6aおよび密着層5の露出部分をエッチングによって除去する。これにより、レジストパターンと同じパターン形状をもつ配線パターン6が得られる。ここで用いるレジストは、液状レジストでもドライフィルムレジストでも電着レジストでもよい。また、レジストタイプとしては、ポジ型およびネガ型のいずれであってもかまわない。一般的には、ネガ型レジストにくらべてポジ型レジストのほうが、解像性が高い。このため、微細な配線パターンを形成するうえでは、ポジ型レジストのほうが適している。
【0089】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態で説明した基板製造方法および配線基板の製造方法によれば、以下のような効果が得られる。
【0090】
(第1の効果)
本実施形態によれば、ガラス基板2上にイオン集中領域9aとイオン分散領域9bとが混在していても、第2の工程で各領域9a,9bの双方に対してパルス反転メッキ法によるパルスメッキを行う。したがって、貫通孔3の孔内への銅の充填にあたり、ガラス基板2上の特定の貫通孔3の孔内への銅イオンの集中が抑制される。つまり、特定の貫通孔3の孔内への銅イオンの集中的な付着が生じることがなく、ガラス基板2上の複数の貫通孔3のそれぞれに対する銅の孔内充填度合いが均等化される。その結果として、本実施形態においては、ガラス基板2上の各領域9a,9bにおける銅の充填度合いのバラツキ発生を回避することができる。
しかも、本実施形態においては、第2の工程にてパルス反転メッキ法によるパルスメッキを行うのみで、特定貫通孔へのイオン集中を抑制することができる。つまり、例えば各領域9a,9bで処理条件を相違させるといった煩雑な処理を要することなく、各貫通孔3の孔内への銅の充填度合いを自動的に制御することが可能である。
以上のように、本実施形態によれば、ガラス基板2上に存在する複数の貫通孔3に対して銅を充填する場合に、工程煩雑化等による生産性低下を招くことなく、各貫通孔3の孔内への銅の充填度合いのバラツキ発生を回避することができる。
【0091】
(第2の効果)
本実施形態によれば、ガラス基板2上に貫通孔3の分布密度が異なる領域9a,9bが混在している場合、すなわち貫通孔3が疎に分布するイオン集中領域9aと貫通孔3が密に分布するイオン分散領域9bとが混在している場合であっても、各貫通孔3に対する銅の孔内充填度合いが均等化される。このことは、ガラス基板2上に設ける複数の貫通孔3について、これらの全てを均等ピッチで配する必要はなく、様々な態様の配置に柔軟に対応し得ることを意味する。したがって、本実施形態においては、配線基板1における貫通孔3の配置パターンについての汎用性を十分に確保することができ、当該配線基板1を構成する上で非常に好適である。
なお、本実施形態では、各領域9a,9bで貫通孔3の分布密度が異なる場合を例に挙げたが、後述する「4.変形例等」で説明するように、本発明がこれに限定されることはない。
【0092】
(第3の効果)
本実施形態によれば、貫通孔3の孔内に形成される第1メッキ層4aと第2メッキ層4bは、同一金属材である銅によって形成されている。したがって、第1メッキ層4aと第2メッキ層4bとが同一の導電特性を有することになり、両者の間に電気的な界面が形成されてしまうことがない。これにより、例えば第1メッキ層4aと第2メッキ層4bとが互いに異なる金属材で形成されている場合に比べると、特に高周波導電特性が改善されることになる。
【0093】
(第4の効果)
本実施形態によれば、貫通孔3の孔内に充填する金属材として、導電性に優れた銅を用いている。したがって、ガラス基板2の表裏面の導通が確実に確保される。
ただし、第1メッキ層4aを構成する第1金属材および第2メッキ層4bを構成する第2金属材は、電解メッキに対応する導電性金属であれば、銅以外の金属材であってもよい。具体的には、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ロジウムのいずれか1種から構成される金属または2種以上から構成される合金等の金属材を用いることが可能である。
【0094】
(第5の効果)
本実施形態によれば、第2の工程の電解メッキを定電流で行う。したがって、メッキ層の成長に多くの時間を要してしまったり、不均一なメッキ層が形成されてしまうことがない。
【0095】
(第6の効果)
本実施形態によれば、上述した一連の工程からなる基板製造方法を利用して配線基板の製造方法が構成されている。したがって、その製造方法によって得られる配線基板は、貫通孔3の孔内にボイドが存在せず、銅の孔内充填度合いも均等化されるので、信頼性に優れたものとなる。さらに、第1メッキ層4a、第2メッキ層4bおよび配線層6aをいずれも銅の電解メッキにより行うことにより、配線基板1のすべての配線経路を銅(低抵抗材料)で構成することができる。
【0096】
(第7の効果)
本実施形態によれば、第2の工程に先立って壁面粗化工程を行う。そして、壁面粗化工程では、少なくとも貫通孔3の側壁に対して、その表面の粗化を行う。したがって、第2の工程で貫通孔3の孔内に銅を充填するのにあたり、粗化をしない場合に比べて孔内の側壁の濡れ性が向上するので、銅を孔内底部に均一に堆積させる上で非常に好適である。さらには、側壁を粗化することで、粗化をしない場合に比べて、当該側壁に対するアンカー効果の発揮により第2メッキ層4bの密着強度が向上することにもなる。
【0097】
<4.変形例等>
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0098】
例えば、本実施形態では、イオン集中領域9aとイオン分散領域9bとで貫通孔3の分布密度が異なる場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、イオン集中領域9aは大径の貫通孔3が形成されている領域であり、イオン分散領域9bは小径の貫通孔3が形成されている領域であってもよい。ここでいう径の大小は、各領域9a,9b間での相対的なものであり、径の値そのものが制限されるものではない。このような各領域9a,9bが混在していると、大径の貫通孔3が形成されているイオン集中領域9aのほうが、小径の貫通孔3が形成されているイオン分散領域9bに比べて、電解メッキの際に銅イオンが孔内に集中し易くなる。小径より大径のほうが孔内に銅イオンが入り込み易いからである。ところが、各領域9a,9bの双方に対してパルス反転メッキ法によるパルスメッキを行えば、大径の孔内へのイオン集中が抑制されるため、大小それぞれの貫通孔3の孔内への銅の充填度合いが均等化されることになる。したがって、上述の「第2の効果」で説明した場合と同様に、ガラス基板2上に設ける複数の貫通孔3について、これらの全てを同一径で設ける必要はなく、様々な径に柔軟に対応し得るようになるので、配線基板1における貫通孔3の形成径についての汎用性を十分に確保することができ、当該配線基板1を構成する上で非常に好適である。
このことは、イオン集中領域9aとイオン分散領域9bとが他の態様による場合についても同様である。すなわち、貫通孔3の分布の疎密または貫通孔3の径の大小以外の態様であっても、ガラス基板2上にイオン集中領域9aとイオン分散領域9bとが混在している場合であれば、本発明を適用することが可能である。
【0099】
また、例えば、本実施形態においては、配線基板の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線基板以外の用途で利用される基板製造方法として実施することも可能である。
【0100】
また、本実施形態においては、ガラス基板2として、感光性を有するガラス基板を用いたが、感光性を有していない他のガラス基板を用いてもよい。その場合は、貫通孔を形成する工程において、フォトリソグラフィ法以外の方法、例えば、レーザー加工法によってガラス基板2に貫通孔3を形成することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…配線基板
2…ガラス基板
3…貫通孔
4…金属
4a…第1メッキ層
4b…第2メッキ層
5…密着層
6…配線パターン
6a…配線層
7…メッキ下地層
9a…イオン集中領域
9b…イオン分散領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の表裏面に連通する複数の貫通孔のそれぞれの孔内に金属材が充填されている基板を製造する基板製造方法であって、
前記ガラス基板の一面側に第1金属材の層を形成して当該一面側における前記貫通孔の開口部を閉塞する第1の工程と、
前記第1金属材の層を用いて行う電解メッキにより前記ガラス基板の他面側から前記貫通孔の孔内に第2金属材を充填する第2の工程とを備え、
前記ガラス基板は、前記第2金属材の基になる金属イオンが孔内に集中し易い態様で前記貫通孔が形成されているイオン集中領域と、前記金属イオンが孔内に集中し難い態様で前記貫通孔が形成されているイオン分散領域とが、当該ガラス基板の平面上に混在して配されており、
前記第2の工程では、前記イオン集中領域および前記イオン分散領域の双方に対して、前記電解メッキとして正の極性のフォワード電流と負の極性のリバース電流を交互に与えるパルスメッキを行う
ことを特徴とする基板製造方法。
【請求項2】
前記イオン集中領域は、前記ガラス基板の平面上に前記貫通孔が疎に分布する態様で当該貫通孔が形成されており、
前記イオン分散領域は、前記ガラス基板の平面上に前記貫通孔が密に分布する態様で当該貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の基板製造方法。
【請求項3】
前記イオン集中領域には、大径の前記貫通孔が形成されており、
前記イオン分散領域には、小径の前記貫通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の基板製造方法。
【請求項4】
前記第1金属材と前記第2金属材とが同一金属材である
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の基板製造方法。
【請求項5】
前記第1金属材および前記第2金属材は、銅、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、クロム、アルミニウム、ロジウムのいずれか1種から構成される金属または2種以上から構成される合金である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板製造方法。
【請求項6】
前記電解メッキを定電流で行う
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基板製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基板製造方法により、ガラス基板の貫通孔の孔内に金属材が充填されてなる基板を製造した後、当該ガラス基板における一面側と他面側との少なくとも一方に配線を形成する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−77809(P2013−77809A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178895(P2012−178895)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】