説明

基板部品および光部品

【課題】光部品の組立を高精度、且つ簡便に行うことができる、基板部品およびこれを用いた光部品を提供する。
【解決手段】光学素子を保持するための基板部品であって、位置決め用の固定軸に設置可能な溝が前記光学素子を搭載する部分の両側に形成されており、前記溝における底から縁までの深さ寸法が基板部品中央側と基板部品端側で異なることを特徴とする。さらには、前記基板部品には前記光学素子に導かれる光路を通すための貫通孔又は開口部が前記溝の長手方向に沿って貫通して設けられていることを特徴とする。さらには前記溝は、該溝の長手方向に垂直な断面形状が半円形状、半長円形状または角型形状であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズ、シリンドリカルレンズ、MEMSミラー等の光学素子を保持するための基板部品に関するものであり、特にこれらの光学素子間の位置決め・組立を考慮した基板部品および前記光学素子等を備える光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に伴い、近年の通信容量は飛躍的に増大している。今後においてもメトロネットワークで使用されるCWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)システムや家庭まで光ファイバを引き込むFTTH(Fiber To The Home)システムなどに代表される光通信システムが身近な生活圏へと、ますます普及していくものと考えられ、高速大容量通信を必要とするサービスの普及も今後見込まれている。このように光通信ネットワークにおいて、高速・大容量化が進んでいくと、高周波の光電変換処理を要する電気式スイッチでは限界があるとされており、光信号のまま切り替えられる光スイッチの需要が高まると考えられている。特に、光をスイッチ内部の結線及びスイッチ間の結線に用いるフリースペース型光スイッチは、大規模な光スイッチをコンパクトに構成することができるため、大規模ルータを構成するスイッチ部への導入が見込まれる。
【0003】
図14は従来のフリースペース型光スイッチの一例を示す概略図である(特許文献1)。フリースペース型光スイッチは、主に、光コリメータアレイ100と、ねじればね125で支持された複数のマイクロ可動ミラーを有するマイクロ可動ミラーアレイ120と、所定の位置、角度に固定された反射ミラー130とから構成される。光ファイバアレイ101、マイクロレンズアレイ102、マイクロ可動ミラーアレイ120は、それぞれ二次元的に配列された複数の光ファイバ、マイクロレンズ、マイクロ可動ミラーにより構成されている。
【0004】
光コリメータアレイ100を構成する各光ファイバ114aから入射された入射光は、マイクロレンズアレイ102のマイクロレンズ112aによりコリメート光とされ、マイクロ可動ミラーアレイ120のマイクロ可動ミラー122aに到達する。マイクロ可動ミラー122aにより反射された反射光は反射ミラー130に到達し、反射ミラーにより反射された反射光は他のマイクロ可動ミラー122cに到達し、他のマイクロ可動ミラー122cで反射された反射光は、コリメート光を入射したマイクロレンズ112aと異なるマイクロレンズ112cに到達し、集光され光ファイバ114cへ結合される。この場合、マイクロ可動ミラーの傾き角度θを変えることにより光の進行方向を変化させ、光信号を所望の光ファイバへ結合することができる。
【0005】
この従来型の光スイッチで生じる接続損失やクロストークは、光スイッチを構成する光学部品の位置ずれ量、特に、光ファイバコリメータアレイを構成する光ファイバとマイクロレンズアレイとの位置ずれ量からの影響が大きい。このため、従来型の光スイッチでは、高精度に光ファイバが配列された光ファイバアレイと高精度にマイクロレンズが配列されたマイクロレンズアレイを高精度に位置合わせする技術が必要となる。
【0006】
図15は従来の光ファイバコリメータアレイの一例を示す斜視図である(特許文献2)。光ファイバコリメータアレイ201の構成は、複数の光ファイバ205が一定の方向に配置された光ファイバアレイ202と複数のマイクロレンズ209が一定の方向に配置されたマイクロレンズアレイ203と、光ファイバアレイ202とマイクロレンズアレイ203との間に配置され、所定の厚みと中空部208を持つスペーサ204とから構成されている。光ファイバ整列基板206、マイクロレンズアレイ基板210及びスペーサ204を構成する各々の基板の周辺部には円筒形状のガイド孔207a,207b及び207cが設けられており、ガイド孔の孔径にほぼ等しい外径寸法を持つガイドピン211を対向配置された光ファイバアレイ202、スペーサ204及びマイクロレンズアレイ203のガイド孔207a,207b及び207cに挿入することで、光ファイバアレイ202とマイクロレンズアレイ203とを位置合わせすると共に固定を行い、光ファイバコリメータアレイ201を構成する。
【0007】
図16は従来の光素子の組立方法の一例を示す斜視図である(特許文献3)。光コネクタ312に設けた凹溝324に、光素子313に設けた連結体323を嵌合したうえ、望ましくは微調整の後に調芯されて、光軸ずれがない状態で、この嵌合部をYAG溶接により固着して光素子と光コネクタを接続する。凹溝324と連結体323を互いに嵌め合わすことにより、光素子の本体316と光コネクタの本体307は組立てられ所定の位置を保持し、しかも、上述の嵌め合せ部を固着する際に上記各部材の嵌り合いにより、互いの光素子は位置決めされてずれ動かず、光素子と光コネクタの光軸ずれを発生する要因を除去する旨が開示されている。光素子の本体316は光導路基板318が装着されたホルダ317であり、光コネクタの本体307はV溝基板309(光ファイバを保持する為のV溝310を有する)を設けたホルダ308である。
【0008】
【特許文献1】特開2001−117025号公報(対応米国特許6507421号公報)
【特許文献2】特開2004−252244号公報
【特許文献3】特開平5−196836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図14に示した従来の光ファイバコリメータアレイでは、光ファイバアレイを構成する各光ファイバと、マイクロレンズアレイを構成する各マイクロレンズとの光軸間の位置合わせに、数μm以下、若しくはサブミクロンレベルの高い精度が要求されるる。ガイドピンの外径寸法精度を確保するための加工、ガイド孔の寸法、孔位置等の精度を確保するための加工、スペーサの厚みばらつきを無くす為の平行度を確保するための加工など、超精密加工技術が必須となり、それら部品の製造は大量生産に適さず、その製造コストを容易に下げることはできない。
【0010】
更に、光ファイバコリメータアレイを用いて光スイッチ等を組み立てる場合には、光学部品の設計変更や全体寸法の変更等の理由により、光コリメータアレイから出射されるコリメート光の伝搬状態を調整するためにマイクロレンズの曲率半径やレンズ厚みの変更に伴い、スペーサ厚みも適時変更する必要があった。しかしながら、従来の光ファイバコリメータアレイ(図14)では、各構成部品を高精度で形成したガイドピンとガイド孔にて固定(圧入固定)しているため、スペーサの変更は可能ではあるが、精度を損なわずに変更することは非常に困難である。
【0011】
また、ミラーアレイや他の光学部品との組立においても、それぞれの部品が高精度に作成されているならば、光ファイバコリメータアレイと同一のガイドピンを利用し、組立部品にガイド孔を設け、そこにガイドピンを通すことで組立は可能となるが、部品数が多くなるほど、後から組立を行う部品ほど、各々の交差が積算されて行くため、その難易度は高くなるという問題があった。
【0012】
また、図16に示した従来の光素子の組立方法では、凹溝に連結体を嵌め合せることで、光素子と光コネクタの光軸合わせを行い、更に微調整を行うことで光軸ずれがないように調芯されYAGレーザで溶接される。この場合、光素子の光軸基準で凹溝と連結体の溶接を行うため、形成されるフレーム形状は必ずしも安定形状とはならない。これを避けるためには、嵌め合いのみで光素子と光コネクタの光軸が接続され、且つ凹溝と連結体の溶接部分に段差、隙間がなく、溶接に伴う残留歪の発生を防がなければならない。故に、凹溝と連結体、光素子と光コネクタの光軸の精度を極めて高くしなければならない。また、凹溝と連結体を溶接によりフレーム化し、且つ凹溝と連結体と光素子と光コネクタは一体となっているため、フレームの歪が直接光素子の光軸ずれになってしまう。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、光部品の組立を高精度、且つ簡便に行うことができる、基板部品およびこれを用いた光部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の基板部品は、光学素子を保持するための基板部品であって、位置決め用の固定軸に設置可能な溝が前記光学素子を保持する部分の両側に形成されており、前記溝における底から縁までの深さ寸法が基板部品中央側と基板部品端側で異なることを特徴とする。位置決め用の固定軸に設置可能な溝を設けた前記構成は、貫通孔で位置決めする場合に比べて、位置決めの際の微調整の自由度が高く、高精度の位置決めと簡便な組立を可能とする。ここで、設置可能とは、形状的に嵌め合わせ可能であることを意味し、隙間の存在は許容する。好ましくは、接着剤を介して溝の内壁の面に固定軸を固定する。硬化した接着剤が架橋部材または梁のようになって固定軸を支えることが望ましい。
【0015】
また、前記基板部品には前記光学素子に導かれる光路を通すための貫通孔又は開口部が設けられていることが好ましい。該構成によれば光路を基板内に構成し、光路の保護に寄与する。更に、前記溝は、該溝の長手方向に垂直な断面形状が半円形状、半長円形状および角型形状のうちの一種であることが好ましい。該断面形状を持つ溝を用いれば、固定軸に対して基板部品を微調整しやすい。前記溝は、溝の深さ方向に平行な内壁の面を有することがより好ましい。該内壁の面が固定軸と接触するようにしておけば、位置決めの微調整の際に溝の深さ方向の位置ずれが生じにくいため、微調整がしやすい。また、前記断面形状であれば、溝と固定軸との間に固定のための樹脂を充填しやすい。前記固定軸は、該固定軸の長手方向に垂直な断面形状が円形状及び角型形状となるものを用いることができるが、接着し易さを考慮すると円形であることが好ましい。溝の深さ方向は、図2においてhやhの寸法を示す両矢印と平行な向きに相当する。基板部品中央側(溝からみて光学素子を保持する部分の側)でみた溝の底から縁までの深さ寸法はhに相当し、基板部品端側でみた溝の底から縁までの深さ寸法はhに相当する。基板部品端側を削っていくと、h=0のときに溝は段差に成る。溝の長手方向は、固定軸に沿った向きに相当する。なお、基板部品が薄板状であっても、“該溝の長手方向”は薄板状の基板の面に直交する向きにおける溝の寸法を指すものとする。前記貫通孔又は開口部は、“該溝の長手方向”に沿って貫通している。
【0016】
更に、前記基板部品において、前記光学素子が複数保持されており、前記光学素子は、前記基板部品とは別体の配列部材を介して前記基板部品に保持されていることが好ましい。光学素子を複数有する場合、前記構成を採用すれば組立の自由度がさらに増すこととなる。
【0017】
さらに、前記光学素子に導かれる光路を通すための貫通孔が前記溝の長手方向に沿って貫通して設けられた前記基板部品において、前記基板部品とは別体の配列部材を介して複数の前記光学素子が前記基板部品に保持され、前記貫通孔には複数の前記光路が導かれることが好ましい。かかる構成によればアレイ化された光学素子の組立が簡便なものとなる。さらに、上記溝に代えて段差を有する基板部品とすることもできる。
【0018】
本発明の光部品は、位置決め用の固定軸と上記のいずれかに記載の基板部品とを備え、前記溝又は段差が位置決め用の固定軸に設置されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の他の光部品は、固定軸支持部材の間を2本の位置決め用の固定軸で連結したフレームと、光学素子と、前記固定軸に設置可能な溝が前記光学素子を保持する部分の両側に形成されている基板部品とを備え、前記溝に接着剤を介して前記固定軸を設置し、前記溝の内壁面と前記固定軸との間に隙間があることを特徴とする。該構成によれば、固定軸と基板部品との位置決めが容易であり、高精度で、簡便な光部品の組立が可能である。該隙間を利用して固定軸と基板部品との微調整を行うことができる。前記隙間Gは50〜800μm、より好ましくは50〜600μmであることが望ましい。
【0020】
更に、固定軸支持部と2本の位置決め用の固定軸部とを一体に有する一体フレームと、光学素子と、前記一体フレームの固定軸部に設置可能な溝が前記光学素子を保持する部分の両側に形成されている基板部品とを備え、前記溝に接着剤を介して前記固定軸部を設置し、前記溝の内壁面と前記固定軸部との間に隙間があることを特徴とする。前記一体フレームは、ワイヤー放電加工により、板部材又は角部材から切り出した枠状のものであることが好ましい。
該構成の一体フレームは、前記隙間Gが50〜600μmと高精度な加工精度を要求されないためワイヤー放電加工で容易に製作することがでる。一体フレームの外形寸法は縦45mm、横27mm、厚み6mmである。左右の固定軸部分の長さは30mm、幅は3mm、厚み3.5mmであり、固定軸として十分な幅、厚み寸法である。また、固定軸支持部と2本の位置決め用固定軸部とが一体となっていることから、高剛性なフレームを実現することができ、機械的な外力や熱的な外力に対して高い信頼性を期待できる。固定軸と前記固定軸を連結したフレームを高剛性に作製する場合は、焼固め、圧入等の手法が考えられるが、使用する部材の高精度な加工が要求されるため、一体フレームの方が有利である。
【0021】
更に、前記隙間をG、前記溝長さをLとすると、L/80≦G≦L/5の関係(但し、50μm≦Gである)であることが好ましい。ここで、隙間Gとは、固定軸と溝の内壁の面との間に形成される隙間であって、固定軸が溝幅の中心にある場合の固定軸と溝の内壁の面との片側の隙間、すなわち固定軸の両側に形成される隙間の合計の1/2である。前記隙間Gに対して溝の長さLが小さくなりL/80がG未満となると、固定軸に対する基板部品の傾きが大きくなりすぎる場合がある。かかる場合には、例えば接着剤固定を採用する際、接着層の厚さの不均一性によって信頼性が低下する。小さすぎると強度が不足したり光軸ずれを生じたりするので少なくともGは50μm以上とする。一方、前記隙間Gに対して溝の長さLが大きくなりL/5がG超となると、固定軸に対して基板部品を傾けられる角度の幅が減少するので、位置決め自由度が低下する。したがって、位置合わせの自由度と精度を確保しするためには前記範囲とすることが好ましい。特にL/50≦G≦L/10の範囲とすると、接着剤の収縮の影響が特に抑制され、組立てし易くなる。
【0022】
更に、前記基板部品を複数備え、前記基板部品は、それぞれに保持された光学素子同士が対置するように前記位置決め用固定軸に固定されていることを特徴とする。前記基板部品は、固定軸を用いた位置決めが容易であるため、特に光学素子が保持された基板部品同士の位置決めが必要とされる場合に好適に用いることができる。
【0023】
更に、前記溝と前記固定軸との隙間の少なくとも一部には紫外線硬化樹脂が充填されていることを特徴とする。本発明に係る基板部品は固定軸との位置決め及び固定に、貫通孔ではなく溝を用いるので、紫外線を樹脂固定部分に導入しやすく、固定に紫外線硬化樹脂を好適に用いることができる。さらに、前記紫外線硬化樹脂は、溝の両内壁の面と固定軸との間に設けることが好ましい。該構成は、固定軸との位置決めを溝を用いて行う場合に可能となるものである。かかる構成によれば、温度変化に対する樹脂の膨張収縮の影響が溝の深さ方向には働きにくくなるため、位置決めの信頼性、安定性向上に寄与する。なお、前記溝の底と前記固定軸との隙間には樹脂が充填されず離隔していることが望ましい。位置決めを行った後に、前記溝を覆う蓋部材を設けることもできる。前記溝に代えて段差を有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光部品の組立を高精度、且つ簡便に行うことができる基板部品およびこれを用いた光部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施例を図を参照しつつ説明する。なお、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明に係る基板部品を光部品に適用した例を示す。図1に示した光部品の実施形態はMEMS光スイッチアレイであり、MEMS光スイッチアレイ1を構成する各部品を(a)上面図と(b)正面図にて示してある。
【0027】
MEMS光スイッチアレイ1は、主に光ファイバアレイ3とマイクロレンズアレイ4からなるコリメータアレイ、シリンドリカルレンズ6、及びMEMSミラーアレイ8aで構成される。
【0028】
光ファイバアレイ3では、被覆を除去した部分の光ファイバ径よりも0.1〜2μm程大きい孔径を有し、所定のピッチで形成された複数の孔部を備えた光ファイバ位置決め基板3aと、前記光ファイバ位置決め基板3aに形成された複数の孔部と対応する位置に複数の孔部を形成した第1の光ファイバ整列基板3bと、前記第1の光ファイバ整列基板3bに形成された複数の孔部と対応する位置に複数の孔部を形成した第2の光ファイバ整列基板3cとを有する光ファイバアレイ保持基板部品3dに、複数の光ファイバ2が一定方向に配置され、前記光ファイバ整列基板3b、3cに接着固定されている。第1の光ファイバ整列基板3bは複数の光ファイバ2を前記光ファイバ位置決め基板3aの各孔部に通し易くし、第2の光ファイバ整列基板3cは複数の光ファイバ2を前記第1の光ファイバ整列基板3bの各孔部に通し易くしている。前記第1の光ファイバ整列基板3bと前記第2の光ファイバ整列基板3cには、前記光ファイバ位置決め基板3aに形成した孔部と同じまたはそれ以上の孔径を有する孔部を、前記光ファイバ位置決め基板3aの場合と同じピッチで孔部を設けてある。第1の光ファイバ整列基板3bは光ファイバの被覆を除去した部分を支持し、第2の光ファイバ整列基板3cは光ファイバの被覆がある部分を支持する。
【0029】
マイクロレンズアレイ4は、マイクロレンズアレイ基板4bに複数のマイクロレンズ4aを前記光ファイバアレイ3の孔部と同じ所定のピッチで一定方向に配置して構成されている。マイクロレンズアレイ基板4bは、光学素子であるマイクロレンズに導かれる光路を通すための貫通孔が設けられているマイクロレンズアレイ保持基板部品5に、マイクロレンズ4aが形成されている面で接着固定され、マイクロレンズ4aが複数保持されている基板部品を構成する。
【0030】
シリンドリカルレンズ6は曲率面の反対側の平板面にて光路を通すための貫通孔が設けられているシリンドリカルレンズ保持基板部品7に接着固定され、マイクロレンズアレイ4から所定の間隔で配置されている。
【0031】
MEMSミラーアレイ8aはセラミックスベースとコバールから作製されたMEMSミラーパッケージ8内に配置され、窓8bにて封止され、窓8bとは反対側のセラッミクスベース面でMEMSミラーパッケージ保持基板部品9に接着固定され、シリンドリカルレンズ6の平板面から所定の間隔で配置されている。
【0032】
光ファイバアレイ保持基板部品3dには位置決めのための軸となる2本の円柱形状の固定軸(以下シャフトともいう)10の端部が接合されており、前記2本のシャフトのもう一方の端部は、シャフトを使用したフレーム構造の機械的強度を強めるために、シャフト固定部品11に接合されている。図1に示す構成では、シャフト10は光ファイバアレイ保持基板部品3dの支持用孔に挿入して接合されているが、該光ファイバアレイ保持基板部品3dに本発明に係る基板部品の構成を適用してもよい。先にフレームを構成するため捻り剛性が高く、十分な強度を備える。フレーム構造の歪みはほとんどないので、正確に位置決めしながら基板部品を配置し接着で固定することができる。基板部品の光軸合わせはフレーム構造の強度に影響しない。
【0033】
前記マイクロレンズアレイ基板4bが接着固定されたマイクロレンズアレイ保持基板部品5、シリンドリカルレンズ6が接着固定されたシリンドリカルレンズ保持基板部品7、MEMSミラーアレイ8aが配置されているMEMSミラーパッケージ8が接着固定されたMEMSミラーパッケージ保持基板部品9の各基板部品の光学素子を搭載する部分の両側には、前記シャフト10に設置可能な溝12が形成されている。すなわち、各基板部品に本願発明に係る基板部品の構成を適用してある。図1に示すMEMS光スイッチアレイは、基板部品としてマイクロレンズアレイ保持基板部品5、シリンドリカルレンズ保持基板部品7およびMEMSミラーパッケージ保持基板部品9と、一対の位置決め用のシャフト10を備え、各基板部品に形成された溝12が位置決め用のシャフト10の内壁の面に接着して固定されている。すなわち光学素子を保持するための前記基板部品は、光学素子を搭載する部分の両側に設けた溝を用いて基板部品とシャフトとの位置決め、固定を行う。前記シャフトと前記溝の内壁面との間には隙間を設けてあり、該隙間を利用して基板部品の位置調整を行い光部品を構成する。複数の基板であるマイクロレンズアレイ保持基板部品5、シリンドリカルレンズ保持基板部品7およびMEMSミラーパッケージ保持基板部品9は、保持された光学素子同士が対置するように位置決め用のシャフト10に固定される。かかる対置のさせ方は後述する。
【0034】
前記溝12の形状は図1(a)に示した太点線部の断面図を、シリンドリカルレンズ保持基板部品7を一例として、図2(a)、(b)、(c)に示す。断面形状としては、例えば図2(a)の半円形状、図2(b)の半長円形状、図2(c)の角型形状の3形状が適用可能である。角型形状では、角にアールを有していても良い。基板部品とシャフトの固定は、例えば基板部品に形成した溝とシャフトとの隙間の少なくとも一部にUV硬化型樹脂(紫外線硬化樹脂を以下このように表記する)を充填して行う。図2では、図中、黒色塗り潰し部で示した箇所にUV硬化型樹脂の塗布を行う。溝形状はこのUV硬化型樹脂を塗布する箇所の保持基板部品の溝の内壁の面がシャフト10中心よりも高くなるように形成されている(溝深さh>溝深さh)。hの上端はシャフトの中心軸線の一点鎖線よりも上にあり、接着剤の中心と固定軸の中心が1点鎖線上に配置されている。これは、UV硬化型樹脂をシャフト10と溝の側面との接点に塗布することが可能となるため、硬化後のUV硬化型樹脂13の熱変化に対する膨張収縮の影響はY軸方向にはほとんど発生せず、また対称性からX軸方向の影響も相殺されることとなり、これにより、安定性が保たれる。また、図2の(b)および(c)の溝形状では、溝の縁または深さ方向全体に渡って溝の深さ方向に平行な内壁の面を有している。該内壁の面がシャフトと接触するようにしておけば、例えばY軸に垂直な面方向で微調整する場合に、シャフトと基板との相対的位置がY方向にはずれないため、溝の深さ方向の位置ずれが生じにくい。なお、図2とは別の形態を図3(a)、(b)、(c)に示す。図3は、図2の溝において基板部品中央側をさらに削り、溝深さh<溝深さhとしたものである。図2の溝よりも溝深さが浅く深さの差も小さいので、UV硬化型樹脂にUVを照射し易くなりUV硬化型樹脂を十分に硬化させることができた。接着した部位を保護するために蓋を設ける際にも溝を覆い易い。
【0035】
前記シャフト10と前記溝12の内壁の面との間には隙間が設けてあり、シャフト10が溝12の溝幅の中心にある場合のシャフト10と前記溝12の内壁の面との片側の隙間をGとする。隙間Gが大きい場合は各保持基板部品の位置合わせの自由度は十分確保できる。しかし、シャフト10に固定をする際に例えば接着剤を用いたとすると、接着層が厚くなってしまい、温度変化に対する信頼性が確保できない可能性がある。一方、間隔Gが小さい場合は接着剤を用いた固定を行うには接着層が薄くなるため温度変化に対する信頼性が確保しやすい。しかし、位置合わせの自由度が確保できず、シャフト10と各保持基板部品が接触してしまう可能性が高くなる。位置合わせに対する自由度には、各保持基板部品の溝長さが関係する。そこで各保持基板部品の溝長さをLとすると、位置合わせの自由度、および接着剤等の固定における信頼性を確保する観点から、両者の関係は、
L/80 ≦ G ≦ L/5
であることが好ましく、かかる条件を適用して光部品を構成すればよい。なお、LとGは同じ長さ単位である。図1において、溝長さLはA−A’に平行な向きにおける寸法に相当する。
【0036】
本実施例においては上記間隔を有する保持基板部品は3個存在する。ここで、マイクロレンズアレイ保持基板部品5の上記間隔GをGml、シリンドリカルレンズ保持基板部品7の上記間隔をGcy、MEMSミラーパッケージ保持基板部品9の上記間隔をGmとすると、光ファイバアレイ3とマイクロレンズアレイ4の位置合わせで微小な誤差が生じた場合、マイクロレンズアレイ4に隣接して配置されるシリンドリカルレンズの位置合わせの誤差に加算されてしまうため、位置合わせを許容するそれぞれの間隔の関係は、
Gml ≦ Gcy ≦ Gm
となっている。すなわち、光学素子を保持する基板部品を複数備える光部品の場合、前記光学素子が対置するように位置決め用の固定軸に固定して前記基板部品を配列する際、位置合わせ誤差の加算を回避するため、隣接する各基板部品に形成された溝の内壁の面と前記固定軸との隙間は、同じか、基板部品の配列方向にしたがって増加することが好ましい。
【0037】
光ファイバアレイ3を構成する光ファイバ位置決め基板3aの光ファイバ2(被覆を除去した部分)を挿入する孔部は光ファイバアレイ3の整列ピッチを決定するため、その形成ピッチは精度良く形成する必要がある。そのため、シリコン基板を用いて、MEMS技術により形成することが好ましい。孔部などの加工には、フォトリソグラフィによりマスクを作成し、ドライエッチングやウェットエッチングなどにより加工するバルクマイクロマシニングの手法を適用できる。エッチング処理により、形成された位置決めのための孔部は本実施例では24孔(3×8のアレイに配列した孔)である。
【0038】
マイクロレンズアレイ4は、光ファイバアレイ3と同じピッチでマイクロレンズ4aをマイクロレンズ基板4b上にアレイ状に、光ファイバ位置決め基板3aと同様にMEMS技術により構成している。光ファイバアレイ3と同様のピッチでマイクロレンズの配列が実現できれば、マイクロレンズの材料としては、シリコン基板の他に、光学ガラス、石英ガラス、樹脂レンズなどを用いることも可能である。
【0039】
このように、高精度で作製された光ファイバアレイ3とマイクロレンズアレイ4を固定している保持基板部品同士を位置合わせすることにより、コリメータアレイを作製する。位置合わせはマクロレンズアレイ保持基板部品5の溝12とシャフト10の間隔Gmlの範囲内で行う。位置合わせが終了後、溝12とシャフト10の隙間にUV硬化型樹脂を塗布し、UV(紫外線)を照射して硬化させ、シャフト10にマイクロレンズアレイ保持基板部品5を固定することで、光ファイバアレイ3とマイクロレンズアレイ4を備え、シャフト10を固定軸としたコリメータレンズアレイとなる。
【0040】
同様にコリメータレンズアレイ(マイクロレンズ4a)から所定の距離にて、シリンドリカルレンズ保持基板部品7をシャフト10に対して位置合わせをする。位置合わせが終了後、UV硬化型樹脂を塗布し、UVを照射して硬化させ、シリンドリカルレンズ保持基板部品7をシャフト10に固定する。最後に、コリメータレンズアレイから入射された光がシリンドリカルレンズ6で集光される位置にMEMSミラーアレイ8aを配置する。すなわち、MEMSミラーアレイ8aが形成されているMEMSミラーパッケージ8が接着固定されたMEMSミラーパッケージ保持基板部品9をシャフト10に固定することでMEMS光スイッチアレイが構成される。
【0041】
ここで、MEMSミラーユニット25について、その構造の一例を図4(a)、(b)、(c)を用いて説明する。なお、説明するMEMSミラーユニット25は望ましい実施形態の一つであり、MEMSミラーユニット25の構造を限定するものではない。
【0042】
図4(a)はMEMSミラーユニット25の上面図であり、図4(b)は正面図であり、(c)は側面図である。図4(c)に破線で示したMEMSミラーアレイ8a、内壁17は内部構造の透視図に相当する。MEMSミラーユニット25はMEMSミラーパッケージ保持基板部品9、外壁16、窓8b付き蓋15で囲まれた空間にMEMSミラーアレイ8aを保持する。MEMSミラーアレイ8aは電極ピン14を介して外部の電気回路(図示せず)と接続する。MEMSミラーアレイ8aはMEMSミラーパッケージ保持基板部品9に取り付ける。MEMSミラーパッケージ保持基板部品9はMEMSミラーアレイ8aと熱膨張係数が近い、望ましくは一致する材料で形成することで、MEMSミラーパッケージ保持基板部品とMEMSミラーアレイとの熱的な歪みを低減または回避できる。例えば、MEMSミラーアレイがSi(シリコン)を主材料とする場合、MEMSミラーパッケージ保持基板部品9の材料としてSi(シリコン)、コバール、インバー等を適用すればよい。更に、MEMSミラーパッケージ保持基板部品9の材料はMEMSミラーアレイ8aとシャフト10の両者と熱膨張係数が近い、望ましくは一致する材料とする。外壁16はMEMSミラーアレイの封止に適した材料とする。例えば必要箇所に金属めっきを施したセラミック、より具体的にはアルミナなどを用いればよい。MEMSミラーアレイ8aに光が透過できるように蓋15には窓8bを形成する。窓8bには使用する光に対して透明な材料を用い、表裏面には反射防止膜を形成する。
【0043】
図1において、シャフト10は光ファイバアレイ保持基板部品3dとシャフト固定部品11に設けられた貫通孔に挿入し、接着剤にて固定を行っている。これにより強固なフレーム構造を実現している。シャフト10の片側の固定には光ファイバアレイ保持基板部品に限らず、別のシャフト固定部品を用いても良い。
【0044】
次に、図5を用いて、本発明の実施形態である光部品としてMEMS光スイッチアレイを例にとって組立方法について説明する。図5は図1aのA−A’断面方向から見た図として示す。X軸、Y軸及びZ軸の座標軸の定義は図5の右下に示す通りである。
【0045】
まず、図5(a)のように反射ミラー保持基板部品19に接着固定した反射ミラー18の中心部に対して、垂直にレーザー入射光20が入射するように6軸ステージ(X、Y、Z、α、β、θ)にて調整する。反射ミラー18で反射されたレーザー反射光21の戻り位置を記録する。
【0046】
次に、図5(b)に示すようにマイクロレンズアレイを固定したマイクロレンズアレイユニット22を所望の位置に配置し、マイクロレンズアレイ裏面の中心部に対して、垂直にレーザー入射光20を入射させ、マイクロレンズアレイ裏面からのレーザー反射光21の戻り位置が先に記録していたレーザー反射光21の戻り位置と一致するように、6軸ステージ(X、Y、Z、α、β、θ)にて調整する。
【0047】
次に、図5(c)に示すように光ファイバアレイを固定した光ファイバアレイ3を配置し、光ファイバ位置決め基板3aの裏面に垂直にレーザー入射光20を入射させ、光ファイバ位置決め基板3aの裏面からのレーザー反射光21の戻り光の位置が先に記録していたレーザー反射光21の戻り位置と一致するように、6軸ステージ(X、Y、Z、α、β、θ)にて調整する。
【0048】
その後、光ファイバアレイ3の中で紙面一番手前側にある3本の光ファイバのうちの1本、例えば光ファイバ2aから光を入射し、その入射光26が反射ミラー18で反射された反射光27を再度光ファイバ2aで結合させ、その結合パワーが最も大きくなるように、6軸ステージ(X、Y、Z、α、β、θ)にて調整する(特にX、Y、Z)。この時、反射光27のパワー測定を行うために、カプラ、サーキュレータ等を用いて、反射光27を光源側へ戻すことなくセンサで検知している。更に、光ファイバアレイの中で紙面一番奥側にある光ファイバ2a’にて同様に調整を行う(光ファイバ2a’は光ファイバ2aの後ろに隠れるので図面上では見えない。)。紙面手前側、奥側の双方の調整により、光ファイバアレイ3とマイクロレンズアレイユニット22とのZ軸周りの回転軸θ方向のずれ量が分かるので、θ、X、Y、Zステージの調整を行い、手前側の光ファイバ2a、奥側の光ファイバ2a’で双方の反射光27の結合パワーが最大となるようにする。これにより、光ファイバアレイとマイクロレンズアレイの配列を一致させる。位置合わせ終了後、光ファイバアレイ3から延びるシャフトとマイクロレンズアレイユニット22の溝部にUV硬化型樹脂を塗布し、50mW/cmの照射強度にて、トータル照射時間が10分となるようにUVを照射し、樹脂を硬化させ固定する。UVを照射すると光の当たっている部分の温度は上昇する。温度が上昇すると、部材の膨張により、位置合わせした位置からマイクロレンズアレイユニット22がずれてしまう恐れがある。そこで、UVの照射は温度上昇を抑えるために、照射と照射を行わないインターバル時間を設ける間欠照射とした。本実施例では照射時間を5秒、インターバル時間を5秒とし、120サイクルの間欠照射により、トータル照射時間が10分となるようにしている。
【0049】
次に、図5(d)に示すようにシリンドリカルレンズを固定したシリンドリカルレンズユニット24を反射ミラー18とマイクロレンズアレイユニット22の間に配置する。その後、紙面手前側、奥側の双方の光ファイバ2a,2a’から光を入射する。入射光26はシリンドリカルレンズユニット24を透過し、シリンドリカルレンズの焦点方向に入射光26は向かう。反射ミラー18が焦点位置にあり、且つシリンドリカルレンズのレンズ中心が光ファイバアレイの光ファイバ2bの中心軸上にあり、且つマイクロレンズアレイに対して平行に配置されている場合、反射ミラー18で反射された反射光27は再びシリンドリカルレンズを透過して、光ファイバ2cに結合される。紙面手前側、奥側双方の光ファイバ2aから光ファイバ2cへの結合パワーが最大となるように位置合わせを行う。位置合わせ終了後、光ファイバアレイ3から延びるシャフトとシリンドリカルレンズユニット24の溝部にUV硬化型樹脂を塗布し、50mW/cmの照射強度にて、トータル照射時間が10分となるようにUVを間欠照射し、樹脂を硬化させ固定する。
【0050】
次に、図5(e)に示すように反射ミラー18と反射ミラー保持基板部品19を取り除き、その同位置にMEMSミラーを配置したMEMSミラーパッケージを固定したMEMSミラーユニット25を配置する。その後、紙面手前側、奥側の双方の光ファイバ2a,2’から光を入射する。シリンドリカルレンズユニット24の位置合わせと同様に、MEMSミラーの中心位置がシリンドリカルレンズの焦点位置になるようにする。この際、MEMSミラーは一方に傾けておき、MEMSミラーで反射された反射光27が再びシリンドリカルレンズを透過して、光ファイバ2cに結合されるようにする。この状態で紙面手前側、奥側双方の光ファイバ2aから光ファイバ2cへの結合パワーが最大となるように位置合わせを行う。位置合わせ終了後、MEMSミラーの傾きをもう一方に傾け、反射光27が光ファイバ2bへ結合させる。この状態で再度、紙面手前側、奥側双方の光ファイバ2aから光ファイバ2bへの結合パワーが最大となるように位置合わせを行う。光ファイバ2c、光ファイバ2b双方へ最適な結合が行われる状態を確認した後、光ファイバアレイ3から延びるシャフトとMEMSミラーユニット25の溝部にUV硬化型樹脂を塗布し、50mW/cmの照射強度にて、トータル照射時間が10分となるようにUVを間欠照射し、樹脂を硬化させ固定する。
【0051】
このように、本発明の実施形態であるMEMS光スイッチアレイの組立方法では、光ファイバアレイ3、マイクロレンズアレイ4、シリンドリカルレンズ6、MEMSミラーアレイ8aを位置決め用の固定軸(シャフト10)に設置可能な溝が両側に形成されている保持基板部品に搭載することで、それぞれの光学デバイスをアクティブ調芯で位置合わせを行うことが可能となる。シャフト10に溝を固定する構造であるため、その最適位置のままUV照射を実行でき、UV硬化型樹脂を固定に用いることができる。接着剤の収縮による光軸のずれの影響も接着剤を塗布する箇所と固定する軸を対称とすることで回避することが可能である。また、レーザー光を用いて反射ミラー18と光ファイバアレイ3とマイクロレンズアレイ4の平行合わせを行っているため、位置合わせを行う時は、α、βステージはほとんど動かす必要がない。これにより調芯作業が簡易化されている。
【0052】
一般的に、光ファイバ出射端面とマイクロレンズアレイ主面とのZ軸方向の距離は、MEMS光スイッチ等を構成する光学系に応じて、最適距離は異なる。従来の光ファイバコリメータアレイでは、各構成部品間を接着して固定していたため、臨機応変に距離を変えることはできなかったが、本発明に係る光コリメータアレイでは、位置合わせにより最適距離、最適位置になることを確認してから、位置決め用の固定軸に接着固定するため、マイクロレンズの曲率半径が少し異なるマイクロレンズアレイや基板厚みの異なるマイクロレンズアレイなどを使用する光学系に応じて、光ファイバ出射端面とマイクロレンズアレイ主面とのZ軸方向の距離を適宜変更することが可能となる。このことは更に、コリメータレンズアレイの前面に配置することになる、シリンドリカルレンズ、MEMSミラーアレイなどの光学デバイスについても、各デバイス間距離が使用する光学系に応じて最適になるように適宜変更することが可能であることを意味する。
【0053】
図1の構成において、図2(c)の溝形状を有する基板部品を用いて光スイッチを作製した。さらに溝の内壁面と固定軸間の最近接距離であるGの寸法と固着方式を変えて複数の光スイッチを作製したので、その結果を表1に示す。L=4mmとして、50μm≦G≦800μmの範囲が好ましいことがわかった。
【0054】
【表1】

【0055】
接着剤を介して固定軸に溝を設置した光スイッチについて、更にGを大きくしたところ、G=600μmまでは各々の評価項目で問題のない光スイッチを得た。G=800μmまでは使用することができたが、G=1mmとすると、固着強度が少し低下したので、上限を800μm程度とするのが好ましい。他方、Gを小さくしていく(表1のe,f)と、十分な隙間がないため各部材の寸法精度と組立ずれにより、光軸ずれが大きすぎて光路を接続することができなかった。また、シャフト固定部品11の代わりに本発明にかかる基板部品を用いて1対の固定軸の一方の側を支持してフレームを構成しようとしたところ(表1のg,h)、光軸ずれが大きく、挿入損失が増大し、実用に耐えなかった。また、固定軸と溝の間にレーザーを照射することで固定軸に溝を設置しようと試みたところ、G=10μm(表1のi)では、1枚目の基板部品の固着後のフレーム歪みで2枚目の基板部品の溝に固定軸が入り難くなった。対置した基板間の光軸は合ったが光スイッチ全体としては小さなずれが加算され光軸ずれを生じた。G=20〜30μm(表1のj,k)では、溶接による歪みによって光軸ずれと挿入損失増大が発生し、実用に耐えない。G=100μm(表1のl)では、隙間が空きすぎているため、レーザーを照射しても固定軸と溝が接合されず、溶接不良となった。
【実施例2】
【0056】
図6は、本発明に係るMEMS光スイッチアレイの実施形態の他の一例を示す上面図(a)と正面図(b)である。なお、本実施例のMEMS光スイッチアレイの基本的な構成は、図1に示した実施例1のMEMS光スイッチアレイとほぼ同等であるため、同等の構成要素の説明は省略し、各光学デバイスの寸法や特徴的な部分の説明を行う。説明にて使用する各座標軸の定義は図中右側上下に示した通りとする。
【0057】
図6に示すように、本実施例のMEMS光スイッチアレイ31を構成する主な光学デバイスは、光ファイバアレイ33、マイクロレンズアレイ34、シリンドリカルレンズ36、MEMSミラーアレイ38aである。
【0058】
光ファイバアレイ33は、X軸方向に1mmピッチで8本の光ファイバ32を配列し、Y軸方向に0.5mmピッチで3本の光ファイバ32を配列することで構成されている。光ファイバ2の整列ピッチの精度が±0.5μm以内となるように、光ファイバ位置決め基板33aを構成するシリコン基板には、光ファイバ32を挿入する貫通孔をバルクマイクロマシニング手法にて、設けている。該貫通孔は円形断面を有し、その直径は光ファイバ32の径よりも0.1〜2μm程度大きいものとしてある。光ファイバ位置決め基板33aの表面を基準とした場合の、光ファイバ32の端面のZ軸方向の位置決め精度は、±10μm以内となるように挿入されている。光ファイバ32の固定は、光ファイバ位置決め基板33aの孔と光ファイバ32との隙間に接着剤を充填するのではなく、光ファイバ整列基板33b、33cと接着固定されている。本実施例では光ファイバ整列基板33bは光ファイバ整列基板33aと同じ構成の基板とし、光ファイバ整列基板33cはY軸方向に整列されている3本の光ファイバの順序が入れ替わることなく、且つ重なることなく、一つの孔で通すことができる。例えば長円の長孔形断面の貫通孔がX軸方向に1mmピッチで8つ形成されている。
【0059】
マイクロレンズアレイ34は、4又は6インチのシリコン基板上にレジストを塗布し、所定のレンズピッチ、レンズ径となるように作製したマスクを用いて露光し、除去することでシリコン基板上に円柱状のレンズパターンのアレイを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行うことにより、レジストにて形成されたパターン形状は表面張力により半球面となる。半球面上のレンズアレイパターンが形成された基板をドライエッチングすることにより、レンズパターンをシリコン基板へ転写し、シリコンマイクロレンズアレイを作製する。
【0060】
作製したマイクロレンズアレイの曲率半径は2.8mm、3mm、3.2mmの3種類とし、それぞれレンズ径は450μm、シリコン基板厚(レンズ長)は0.529mmである。シリコンの屈折率をn、空気の屈折率をn、曲率半径をRco、レンズ長をtcoとすると球面レンズの焦点距離fcoは[数1]で表わされる。
【0061】
【数1】

【0062】
この焦点位置付近が光ファイバ32の先端を配置すべき目安となる。実際には、マイクロレンズアレイ基板34bの裏面から光ファイバ32の先端までの距離BFを求める必要があり、[数2]で表わされる。
【0063】
【数2】

【0064】
よって、検討する3種類の曲率半径にて製作を行う為には、BFは0.98mm、1.06mm、1.30mm付近が目安となる。本発明では、光ファイバ32とマイクロレンズアレイ基板34bの間隔の制御にスペーサ部材などを用いていない。マイクロレンズアレイ保持基板部品35には、光学素子であるマイクロレンズに導かれる光路を通すための貫通孔が溝の長手方向に沿って貫通して設けられている。マイクロレンズアレイ保持基板部品35に形成した光路を通すための貫通孔にアレイ化されているマイクロレンズ34aが全て収まる様に、マイクロレンズアレイ基板34bをマイクロレンズアレイ保持基板部品35に接着固定する。すなわち、マイクロレンズはマイクロレンズアレイ保持基板部品35とは別体の配列部材であるマイクロレンズアレイ基板34bを介してマイクロレンズアレイ保持基板部品35に保持されている。図6の場合、マイクロレンズアレイ保持基板部品35に形成した光路を通すための一つの貫通孔に複数の光路が導かれる構成となっている。そしてこのマイクロレンズアレイ保持基板部品35の両側に設けられた溝を位置決め用の固定軸に嵌合させ、溝と固定軸との隙間(クリアランス)内で位置決めを行う。よって、光ファイバ32とマイクロレンズアレイ基板34bとの間隔の制御は自由に行うことが可能な為、曲率半径の異なるマイクロレンズアレイ34であっても、組立が可能である。
【0065】
使用したシリンドリカルレンズ36は、レンズ長11.6mm、レンズ高さ6mm、レンズ厚さ3mmで曲率半径は3.58mmで材質はBK7である。シリンドリカルレンズ36の一般的な仕様として焦点距離は±2%の公差を要求される。本実施例で用いているシリンドリカルレンズ36の焦点距離は7.31mmであり、公差±2%となるとクリアランスは±0.303mmとなる。マイクロレンズアレイ34と同様にシリンドリカルレンズ保持基板部品37にシリンドリカルレンズ36を接着固定させ、シリンドリカルレンズ保持基板部品37の両側に設けられた溝と位置決め用の固定軸を嵌合させて位置決めを行う本発明では、問題とならない。また、マイクロレンズアレイ34とのZ軸方向の距離の調整も自由に行うことができる。本実施例では、この距離を10mmとしている。
【0066】
MEMSミラーアレイ38aについても同様に、MEMSミラーパッケージ保持基板部品39の両側に設けられた溝と位置決め用の固定軸を嵌合させて位置決めを行う。MEMSミラーアレイ38aをMEMSミラーパッケージ38内に実装する時に生じる位置ずれ、MEMSミラーパッケージ38をMEMSミラーパッケージ保持基板部品に接着固定する時に生じる位置ずれの双方において、機械加工精度で可能な程度であれば十分に位置決めが可能である。MEMSミラーアレイ38aのミラーの大きさはY軸方向で2mm、X軸方向で0.35mmであるのに対して、ミラーに入射する入射光のビーム径は幅の大きいX軸方向で約0.24mmとミラー幅の方が十分に大きい。MEMSミラーパッケージ保持基板部品39の両側に設けられた溝の側面と位置決め用の固定軸との隙間(クリアランス)は±0.1mmであり、十分に調整できる範囲である。
【0067】
本実施例で使用している各保持基板部品は、シリコンやBK7と熱膨張係数の差が小さいコバール材を使用している。また、熱膨張係数はコバールよりも小さくなるが、インバー材も使用することができる。
【0068】
このようにして組立てられたMEMS光スイッチアレイ31は、光ファイバアレイ保持基板部品33d、シャフト40、シャフト固定部品41で構成される強固なフレーム構造であり、且つ対称構造、同一材質であるため、外力や熱衝撃などに対して、優れた安定性を示している。
【0069】
次に、本発明に係るMEMS光スイッチアレイをパッケージ内に実装する方法について、図7(a)の上面図、図7(b)の断面図および図7(c)の拡大図を用いて説明する。(b)は(a)のA−A’断面に相当する。なお、これまでの図で使用している符号については図示を省略する。
【0070】
パッケージへのMEMS光スイッチアレイ31の固定は、パッケージ49内に設けられている固定ピン50を光ファイバアレイ保持基板部品とシャフト固定部品に設けられている貫通孔に通すことで行われる。貫通孔は固定ピン50より大きな径を有している。固定ピン50と貫通孔の隙間にはパッケージに外力、例えば衝撃、振動が働いた場合にMEMS光スイッチアレイ31に直接それらの影響が及ばないように、ダンパー(弾性材)51が配置されている。固定ピン50はパッケージ49の下部基板と一体形成しても良いし、差し込む穴を上下パッケージ基板に設け、固定ピン50を挿入することで形成することもできる。挿入する場合、挿入部には予め接着剤を塗布しておき、固定ピン50の固定をより強固にしている。また、固定ピン50は挿入される部分の外径が小さくなっている。
【0071】
ダンパー(弾性材)51は図7(b)のB領域拡大図である図7(c)にハッチングされた部分に配置されており、パッケージ49に±X、Y、Z方向の衝撃・振動が加わったとしても、直接MEMS光スイッチアレイ31に伝わることなく、ダンパー(弾性材)51を介して伝わることになる。これにより、MEMS光スイッチアレイ31をパッケージ49内に実装したモジュールにおいて衝撃、振動に対する信頼性を向上することができる。
【実施例3】
【0072】
図8は、本発明に係るMEMS光スイッチアレイを構成する一体フレームを作製する工程を説明する一例を示す。なお、ワイヤー放電加工する部分を点線にて示した。(a)(b)はフレームを構成する材料のブロックをワイヤー放電加工にて、フレームの外形寸法に切り出している状況を説明する上面図と側面図である。ワイヤー放電加工による寸法公差は±30μm程度が通常加工で実現可能であり、この一体フレームの外形寸法には十分許容できる精度である。また、所望の寸法且つ公差である材料のブロックが入手できれば、ワイヤー放電加工により切り出しをする必要はない。(c)(d)は得られた所望の外形寸法のブロックの内側に貫通穴を開ける状況を説明する上面図と側面図である。この工程で重要となるのは固定軸(シャフト)となる両側の2つの固定軸部10bの形成である。このシャフト部分(固定軸部)が歪んでいたり、軸幅が大きくずれたりすると保持基板部品が搭載できなくなるが、ワイヤー放電加工による寸法公差であれば、保持基板部品が搭載できなくなるということはない。貫通孔内の4隅は直角加工である必要はなく、各保持基板部品が搭載される範囲内が平行に加工されていれば良いため、C0.5若しくはC1.0での加工処理で十分である。(e)はシャフト部の形成が完了した一体フレームブロックの上面図である。(f)は(e)の側面図であり、矢印線で示したラインで切断し、所望の厚みで切り離しを行うことで、一度に複数の一体フレームを製作することができる。(g)は切り出された一体フレームの側面図であり、この状態であれば、厚み方向での平行出しの追加工が必要であっても、研削、ラップ等の追加工は容易に行うことができる。(h)(i)は固定軸部の厚みを調整し、ファイバアレイ用の3枚のシリコン基板を搭載できるように段差、貫通孔を設け、更に、保持基板部品に搭載された光学デバイスを光軸中心付近に嵌合できるように加工した一体フレームの完成品の上面図と側面図である。
【0073】
図9は、本発明に係るMEMS光スイッチアレイの実施形態の他の一例を示す上面図(a)と正面図(b)である。また、図9(a)に示した太点線部A−A´の断面図を、シリンドリカルレンズ保持基板部品37を一例として図9(c)に示した。なお、本実施例のMEMS光スイッチアレイを構成するファイバアレイ、レンズアレイ、シリンドリカルレンズ、MEMSミラー等の各光学デバイスの設計値は、図6に示した実施例2のMEMS光スイッチアレイと同等であるため、同等の構成要素の説明は省略し、得られたデータや特徴的な部分の説明を行う。説明にて使用する各座標軸の定義は図中右側上下に示した通りとする。
【0074】
図9(a)(b)と図6を比較して、フレームのシャフトの形状が円柱形状か角柱形状か更には一体型か組立型かの違いはあるが、それ以外はほぼ同一である。シャフトと保持基板部品との嵌合部の断面図である図9(c)は形状は大きく異なっているが、シャフトと保持基板部品の溝の内壁との間にUV硬化型樹脂を塗布し、UV照射を行って硬化させることでシャフト又は固定軸部と保持基板部品の固定を行う工程は同一である。UV硬化型樹脂を塗布する箇所の保持基板部品の溝の内壁の面が各光学デバイスの光軸中心(一点鎖線)よりも高くなるように形成されているが、固定軸部の形状が角柱であるため、固定軸部と保持基板部品の溝の内壁とは平行であり重なり合っている空間にUV硬化型樹脂を塗布すれば、硬化後のUV硬化型樹脂の熱変化に対する膨張収縮の影響はY軸方向にはほとんど発生せず、また対称性からX軸方向の影響も相殺されることとなり、これにより、安定性が保たれる。
【0075】
安定性が本当に十分であるかの確認を行うために、図9に示したMEMS型光スイッチアレイの熱サイクル試験を行い、挿入損失の変動を測定した。熱サイクルは−40℃〜85℃まで1℃/1分で昇温・降温を繰り返し、且つ、−40℃、85℃で15分間保持するという条件である。これはTelcordia規格GR−1221−COREに準拠した条件である。光ファイバ32aから光を入射し、32bから出射するポートをポートA、32cから出射するポートをポートBとして、熱サイクル投入前の挿入損失を基準として、熱サイクル後の挿入損失を測定し、その挿入損失変動(Δnsertion Loss)をグラフにした結果を図10に示す。この信頼性試験をパスする条件は500サイクル以上で挿入損失変動0.2dB以下となっており、グラフより500サイクル以上でクリアしており、本構成のMEMS型光スイッチアレイが熱的な変動に対して高い信頼性を有していることが明らかとなった。
【実施例4】
【0076】
図11は本発明に係るMEMS光スイッチアレイを構成する基板部品の実施形態の他の例を示す正面図であり、固定軸は網掛けして図示している。図11(a)は本発明の各基板部品の基本となる形状を示したもので、説明は既に記述してあるため省略する。図11(b)は光学素子の光路を通すための貫通孔の上辺を開放し、開口部としたものである。この構造では固定軸と基板部品とを固定するためにUV硬化型樹脂を充填する箇所は図11(a)と全く同様に固定軸と基板部品の溝を構成する外側の側壁との間、若しくは、開口部を構成する側壁と固定軸との間で行うことが可能である。光学素子を搭載する部分が開口となるため、開口部側壁、底面の部材の厚みは1mm程度、又はそれ以上確保し、強度不足を生じないようにした。図11(c)は光学素子の光路を通すための貫通孔は存在するが、基板部品と固定軸とを固定するための溝を構成する基板部品の最外壁を除いた構造である。基板部品の両端には段差を有する。この構成では、固定軸と基板部品とを固定するためにUV硬化型樹脂を充填する箇所は貫通孔を構成する側壁面と固定軸との間のみとなる。図11(d)は図11(c)の構成から光学素子の光路を通すための貫通孔の上辺を開放し、開口部としたものである。この構造では固定軸と基板部品との固定は図11(c)と同様に行う。また、図11(b)と同様に光学素子を搭載する部分が開口となるため、開口部側壁、底面の部材の厚みは1mm程度、又はそれ以上確保し、強度不足を生じないようにした。
【実施例5】
【0077】
図12は、本発明に係る基板部品を光部品に適用した他の例を示す。図12に示した光部品の実施形態は光パワーモニタアレイ61であり、光パワーモニタアレイ61を構成する各部品を(a)上面図と(b)正面図にて示している。なお、本光パワーモニタアレイを構成する各光学部品は図6で説明したMEMS型光スイッチアレイで使用した部品と同一且つ同寸法とした。異なる部分はMEMSミラーアレイがPD(Photo Diode)アレイ62に置き換わり、それを保持する保持部品はシリンドリカルレンズ保持部品と同形状で貫通孔を無くしている。このように保持部品をほぼ同一形状とすることで、部品コストを低く抑えることも可能となる。また、光ファイバアレイは3×8アレイの中でY軸中心に存在する一列をセットしない、2×8アレイとした。使用した光ファイバを挿入固定する基板はMEMS型光スイッチアレイと同一基板とし、光パワーモニタアレイ専用に試作する必要はない。
【0078】
一方の光ファイバ62aから入射された光はレンズアレイのレンズにてコリメート光となり、コリメート光がシリンドリカルレンズの集光位置に配置された、PDアレイ62で受光される。PDアレイの前面にある窓63の一つの面には一部透過型反射膜64、他方の面には反射防止膜が施されている。一部透過型反射膜64に入射した光のほとんどは反射され、シリンドリカルレンズとレンズアレイ中のレンズを透過し、他方の光ファイバ62bに入射される。PDアレイ62で受光される光の量は一部透過型反射膜64の透過率で決定される。例えば、EDFA等による増幅された光のパワーを測定する場合、光のパワーは非常に高いため、透過させる光の量は僅かでも十分にPDで検出することができる。この場合、一部透過型反射膜64の透過率は1〜2%で十分である。一方、幹線光ファイバを長距離伝送され増幅される前の光のパワーはかなり減衰して低くなっている。故に、光のパワーをPDで検出するためには、一部透過型反射膜64の透過率は10%程度と透過率を大きくすれば良い。ただし、透過率を大きくすればその分、伝送されている光のパワーは損失となって減衰されるため、大きい程良いという訳ではない。
【実施例6】
【0079】
図13は、本発明に係る基板部品を光部品に適用した他の例を示す。図13に示した光部品の実施形態は光スキャナ71であり、光スキャナ71を構成する各部品を(a)上面図と(b)正面図にて示している。なお、本光スキャナを構成する各光学部品はミラー保持部材以外、図6で説明したMEMS型光スイッチアレイで使用した部品と同一且つ同寸法でも作製可能であるが、本実施例では簡易的に作製することを目的に、1本の光ファイバと1個のレンズを使用して、コリメータを構成している。ミラー部も2軸駆動するミラー72とそれを配置するためのミラーパッケージ74、ミラーパッケージ74を保持するミラーパッケージ保持部品75から構成され、ミラーパッケージ保持部品75はミラーパッケージ74を固定した時に、(b)に点線で表示しているようにコリメート光73の光軸に対して傾いて固定できるように固定面に傾斜を設けている。
【0080】
光ファイバから入射された光はレンズを透過してコリメート光73となり、光軸から傾いて固定されているミラー72で反射され、Y軸方向へ出射される。ミラー72は2軸駆動ミラーとなっており、出射されたコリメート光73はY軸方向にあるスキャンする対象物全面にミラーの角度を変化させることで、コリメート光73を照射することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの実施形態の一例を示す上面図と正面図である。
【図2】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの各光学素子を固定する為の保持基板部品に設けた溝の形状を示す断面図である。
【図3】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの各光学デバイスを固定する為の保持基板部品に設けた溝の形状を示す断面図である。
【図4】本発明に係るMEMSミラーユニットの構造の一例を示す上面図、正面図及び側面図である。
【図5】本発明に係るMEMS光スイッチアレイ組立方法を説明する為の断面図である。
【図6】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの実施形態の他の一例を示す上面図と正面図である。
【図7】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの実装形態の一例を示す上面図と断面図及びB領域拡大図である。
【図8】本発明に係るMEMS光スイッチアレイを構成する一体フレームの製作方法の一例を示す上面図と側面図である。
【図9】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの実施形態の他の一例を示す上面図と正面図である。
【図10】本発明に係るMEMS光スイッチアレイの熱サイクル試験の結果を示したグラフである。
【図11】本発明に係る光学素子を搭載する保持部材の実施形態の他の例を示す正面図である。
【図12】本発明に係るフレーム構造、保持部材を使用した光パワーモニタアレイの実施形態の一例を示す上面図と正面図である。
【図13】本発明に係るフレーム構造、保持部材を使用した光スキャナーの実施形態の一例を示す上面図と正面図である。
【図14】従来のフリースペース型光スイッチの一例を示す概略図である。
【図15】従来の光ファイバコリメータアレイの一例を示す斜視図である。
【図16】従来の光学素子の組立方法の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1:MEMS光スイッチアレイ 2:光ファイバ 2a:光ファイバ
2b:光ファイバ 2c:光ファイバ 3:光ファイバアレイ
3a:光ファイバ位置決め基板 3b、3c:光ファイバ整列基板
3d:光ファイバアレイ保持基板部品 4:マイクロレンズアレイ
4a:マイクロレンズ 4b:マイクロレンズアレイ基板
5:マイクロレンズアレイ保持基板部品 6:シリンドリカルレンズ
7:シリンドリカルレンズ保持部品 8:MEMSミラーパッケージ
8a:MEMSミラーアレイ 8b:窓 9:MEMSミラーパッケージ保持基板部品
10:シャフト 10b,10b’:固定軸部 11:シャフト固定部品 12:溝
12a,12b,12c,12d,12e,12f:溝
13:UV硬化型樹脂
14:電極ピン(リードフレーム) 15:蓋(リッド)16:外壁 17:内壁
18:反射ミラー 19:反射ミラー保持基板部品 20:レーザー入射光
21:レーザー反射光 22:マイクロレンズアレイユニット
24:シリンドリカルレンズユニット
25:MEMSミラーユニット 26:入射光 27:反射光
31:MEMS光スイッチアレイ 32:光ファイバ 33:光ファイバアレイ
33a:光ファイバ位置決め基板 33b、33c:光ファイバ整列基板
33d:光ファイバアレイ保持基板部品 34:マイクロレンズアレイ
34a:マイクロレンズ 34b:マイクロレンズアレイ基板
35:マイクロレンズアレイ保持基板部品 36:シリンドリカルレンズ
37:シリンドリカルレンズ保持部品 38:MEMSミラーパッケージ
38a:MEMSミラーアレイ 38b:窓
39:MEMSミラーパッケージ保持基板部品
40:シャフト 41:シャフト固定部品 48:位置決めピン
49:パッケージ 50:固定ピン 51:ダンパー(弾性材)
61:光パワーモニタアレイ 62:PDアレイ 62a:光ファイバ
62b:光ファイバ 63:窓 64:一部透過型反射膜
71:光スキャナ 72:ミラー 73:コリメート光 74:ミラーパッケージ
75:ミラーパッケージ保持部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持するための基板部品であって、位置決め用の固定軸に設置可能な溝が前記光学素子を保持する部分の両側に形成されており、前記溝における底から縁までの深さ寸法が基板部品中央側と基板部品端側で異なることを特徴とする基板部品。
【請求項2】
前記基板部品には前記光学素子に導かれる光路を通すための貫通孔又は開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板部品。
【請求項3】
前記溝は、該溝の長手方向に垂直な断面形状が半円形状、半長円形状および角型形状のうちの一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板部品。
【請求項4】
前記光学素子が複数保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板部品。
【請求項5】
前記光学素子は、前記基板部品とは別体の配列部材を介して前記基板部品に保持されていることを特徴とする請求項4に記載の基板部品。
【請求項6】
前記基板部品とは別体の配列部材を介して複数の前記光学素子が前記基板部品に保持され、前記貫通孔には複数の前記光路が導かれることを特徴とする請求項2に記載の基板部品。
【請求項7】
前記溝に代えて段差を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板部品。
【請求項8】
位置決め用の固定軸と請求項1〜7のいずれかに記載の基板部品とを備え、前記溝又は段差が位置決め用の固定軸に設置されていることを特徴とする光部品。
【請求項9】
固定軸支持部材の間を2本の位置決め用の固定軸で連結したフレームと、光学素子と、前記固定軸に設置可能な溝が前記光学素子を保持する部分の両側に形成されている基板部品とを備え、
前記溝に接着剤を介して前記固定軸を設置し、前記溝の内壁面と前記固定軸との間に隙間があることを特徴とする光部品。
【請求項10】
固定軸支持部と2本の位置決め用の固定軸部とを一体に有する一体フレームと、光学素子と、前記一体フレームの固定軸部に設置可能な溝が前記光学素子を保持する部分の両側に形成されている基板部品とを備え、
前記溝に接着剤を介して前記固定軸部を設置し、前記溝の内壁面と前記固定軸部との間に隙間があることを特徴とする光部品。
【請求項11】
前記隙間をG、前記溝の長さをLとすると、L/80≦G≦L/5の関係(但し、50μm≦Gである)であることを特徴とする請求項9または10に記載の光部品。
【請求項12】
前記基板部品を複数備え、前記基板部品は、それぞれに保持された光学素子同士が対置するように前記位置決め用の固定軸に固定されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の光部品。
【請求項13】
前記溝と前記固定軸との隙間の少なくとも一部には紫外線硬化樹脂が充填されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の光部品。
【請求項14】
位置決めを行った後に、前記溝を覆う蓋部材を設けることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の光部品。
【請求項15】
前記溝に代えて段差を有することを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の光部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−276158(P2008−276158A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219773(P2007−219773)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】