説明

報知装置

【課題】スマートキーシステムにおける通信不良をユーザに報知する報知装置を提供する。
【解決手段】車両2とキー3の間で、LF送信部40、LF受信部30、RF送信部31、RF受信部41を用いて、マルチチャネル(複数周波数)のキー認証を実行する。認証が所定回数連続して失敗したら、表示部80による文字表示、光出力部81による発光、音出力部82によるブザーや音声などによって、ユーザに通信不良であることを報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスマートキーシステム(スマートエントリーシステム、スマートスタートシステム)が普及している。現状のスマートキーシステムにおいては、例えばユーザがドアハンドル接触やエンジンスタートスイッチの押下といった操作を行うと、リクエスト信号(ポーリング信号)が送信され、スマートキーから返信されたIDとマスターIDとで照合がとれた時点でドア開錠やエンジン始動が実行される。
【0003】
例えば下記特許文献1には、スマートキーシステムにおいて、乗員に運転継続の意思があるか否かを判定する手段を装備して、携帯機が車両から離間し、携帯機の不所持者に運転継続の意思がある場合には内燃機関の再始動を許可し、車両の盗難をより確実に防止するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−153190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートキーシステムにおいては、車両とスマートキーとの間の無線通信において電波障害などの通信不良によりキーの認証(照合)が成功しない場合がある。そのためにマルチチャネル(複数の周波数帯域)で認証処理を行う手法がある。その例が図5に示されている。
【0006】
図5(a)の例では、車両側から、1つの周波数(LF1)でLF(Low Frequency)信号を送信して、これがスマートキーまで到達し、スマートキーからRF(Radio Frequency)信号(周波数RF1)が返信されている。RF信号に含まれるスマートキーのIDが正規のIDであると認証されれば、ドアの開錠やエンジン始動が許可される。この例では通信不良がなく、1つ目の周波数で認証が成功しており、2つ目の周波数でのLF信号送信は不要となる。
【0007】
図5(b)の例では、車両側から1つ目の周波数(LF1)でLF信号を送信したが、その返信のRF信号(周波数RF1)は通信不良によりノイズが混入しており、認証が失敗した。そこで別のチャネルでの認証をトライする。すなわち車両は別の周波数(LF2)でLF信号を送信し、スマートキーも別の周波数(RF2)でRF信号を返信する。図5(b)の場合、2度目のRF信号(周波数RF2)にはノイズが混入しておらず認証が成功した。
【0008】
図5のマルチチャネルの認証処理では、2回目の認証トライで成功したが、通信不良の度合いによっては、何回トライしても認証が成功しない場合もある。その場合、ユーザは何故認証がうまくいかないのか事態が把握できず、不満を持つ可能性がある。あるいはシステムの不具合であると誤認する可能性もある。通信不良であるとの情報がユーザに伝達されれば、事態を把握できない不満や失敗原因の誤認などが回避できることに加えて、周辺に電波を発するものがあることにユーザが気づいて、それを除去する可能性もある。したがって通信不良の場合はその旨をユーザに報知するシステムが望ましいが、従来技術においては、そうした提案はない。
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、スマートキーシステムにおける通信不良をユーザに報知する報知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明に係る報知装置は、車両に装備されて、所定の複数の周波数のうちの1つの周波数で識別信号の返信を要求する指令信号を無線で送信する送信手段と、前記車両に備えられた受信手段が受信した無線信号が、前記指令信号を受信した前記車両の正規の携帯機により返信された識別信号である認証成功であるか否かを判定する認証手段と、前記認証手段が認証成功と判定しない場合に、所定の複数の周波数のうちの前記1つの周波数とは異なる周波数での識別信号の返信を要求する指令信号を送信するように前記送信手段に指令する指令手段と、前記認証手段による判定が所定回数連続して認証成功でない場合に、通信不良であると判定する判定手段と、その判定手段が通信不良であると判定したら通信不良であることを報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
これにより本発明に係る報知装置では、携帯機から車両に向けて1つの周波数で識別信号を送信したが認証が成功しなかった場合に別の周波数で識別信号を再送信して認証をトライするマルチチャネルのシステムにおいて、所定回数連続して認証失敗となったらユーザに向けて通信不良であることを報知する。したがって、従来のように何故認証がうまくいかないのかわからないままユーザが何度もトライして不満を感じたり例えばキーなどシステムの故障であるなどと誤認することなく、ユーザが事態を把握できるとともに、周辺に電波を発する原因があればユーザの側でそれを除去するといったかたちで対処することも可能となる。よってユーザの不満や誤認を回避し、適切な対応も促せるスマートキーシステムが構築できる。
【0012】
また前記送信手段による指令信号の送信は前記車両のドアが施錠された状態で前記車両の外部に向けた送信であり、前記報知手段による報知は、前記車両の外部に向けた報知であるとしてもよい。
【0013】
この発明によれば、車両のドアが施錠された状態で車外に向けて指令信号を送信する、いわゆるスマートエントリシステムにおいて、マルチチャネルで認証を行い、所定回数連続して認証失敗となったらユーザに向けて通信不良であることを報知する。したがって、ユーザが通信不良であるとの事態を把握できるとともに、周辺に電波を発する原因があればユーザの側でそれを除去するといったかたちで対処することも可能となるスマートエントリシステムが構築できる。
【0014】
また前記送信手段による指令信号の送信は前記車両の駆動部が駆動されていない状態で前記車両の内部に向けた送信であり、前記報知手段による報知は、前記車両の内部に向けた報知であるとしてもよい。
【0015】
この発明によれば、車両の駆動部が駆動されていない状態で車室内に向けて指令信号を送信する、いわゆるスマートスタートシステムにおいて、マルチチャネルで認証を行い、所定回数連続して認証失敗となったらユーザに向けて通信不良であることを報知する。したがって、ユーザが通信不良であるとの事態を把握できるとともに、周辺に電波を発する原因があればユーザの側でそれを除去するといったかたちで対処することも可能となるスマートスタートシステムが構築できる。
【0016】
また前記車両の故障情報を記憶する記憶部と、前記判定手段が通信不良であると判定したら通信不良であることを前記記憶部に記憶する記憶制御手段と、を備えたとしてもよい。
【0017】
この発明によれば、車両の故障情報を記憶する記憶部に、通信不良で携帯機の認証が失敗したことを記録するので、例えば多数の車両からそうした記録を集積すれば、通信不良の原因やシステム側の問題の有無等の分析に利用できる可能性が開かれる。したがって通信不良による携帯機の認証失敗の記録を、後の分析のために蓄積するシステムが構築できる。
【0018】
また前記判定手段において用いられる前記所定回数を変更する変更手段を備えたとしてもよい。
【0019】
この発明によれば、マルチチャネルのスマートキーシステムにおいて所定回数連続して認証失敗ならば通信不良をユーザに報知するシステムにおいて、所定回数を変更可能とする。したがって、できるだけユーザへ報知する方がよいとの観点から所定回数を少なくしたり、頻繁な報知を回避するとの観点から所定回数を多くしたり等、要望や状況などに応じて適切に所定回数を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の報知システムの一実施例における構成図。
【図2】実施例1におけるスマートエントリーシステムの場合の処理手順を示すフローチャート。
【図3】実施例1におけるスマートスタートシステムの場合の処理手順を示すフローチャート。
【図4】実施例2における処理手順を示すフローチャート。
【図5】マルチチャンネルのスマートキーシステムにおける、車両からキーへ送信されるLF信号と、キーから返信されるRF信号との例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る車両の報知システム1(システム)の装置構成の概略図である。図1に示されたシステム1は、車両2に備えられたスマート制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)4、及びユーザが携帯可能なスマートキー3(キー、電子キー、携帯機)を備える。車両2は自動車であれば何ら限定されず、例えばガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車や、電気自動車、ハイブリッド車でもよい。
【0022】
スマートECU4(照合ECU)はLF送信部40、RF受信部41を備える。LF送信部40は車室外LF送信部としても、車室内LF送信部としてもよい。車室外LF送信部の場合、例えば車両2のドアハンドルの部位に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によって車両2の車室外にリクエスト信号(あるいはポーリング信号)を送信する。
【0023】
車室内LF送信部の場合は、車室内に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によって車両2の車室内にリクエスト信号(あるいはポーリング信号)を送信する。RF受信部41は、例えば車室内に装備されて、車外、車室内から送信されたRF信号を受信する。
【0024】
LF送信部40は周波数切替部42を備える。周波数切替部42は、LF送信部40から送信されるリクエスト信号の周波数をLF帯域内で予め指定された複数(例えば2つ、後述の例ではLF1、LF2)の周波数のうちで切り替える。またRF受信部41はRSSI検出部43を備える。RSSI検出部43は、RF受信部41で受信したRF信号のRSSI(Received Signal Sterngth Indicator、電波強度、電界強度)を検出する。
【0025】
スマートECU4は通常のコンピュータの構造を有するとし、各種演算や情報処理を司るCPU、CPUの作業領域としての一時記憶部であるRAM、各種情報を記憶するための不揮発性のメモリ44を備える。メモリ44には、後述するマスターID45が記憶されているとする。
【0026】
車両2はさらにドア5、エンジンスタートスイッチ6、ダイアグECU7を備える。車両2のドア5には、ロック機構50、タッチセンサ51が装備されている。ロック機構50により、ドアが施錠あるいは開錠される。タッチセンサ51は、車両2のドアハンドルに装備されて、ユーザがドアハンドルを握ったことを検出するセンサである。
【0027】
なおドア5は車両2に装備された複数のドア(運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席右側、左側ドアなど)を指すとし、その個々のドアにロック機構50、タッチセンサ51が装備されているとすればよい。
【0028】
エンジンスタートスイッチ6は、スマートスタートシステムにおけるエンジン始動のためのスイッチであり、ユーザが押下し、車室内照合が成功するとエンジンが始動するスイッチである。エンジンスタートスイッチ6は、例えば車室内の運転席近傍に備えられる。
【0029】
ダイアグECU7は、車両2の各部における故障の自己診断(ダイアグノーシス、ダイアグと略記)機能を司るECUである。ダイアグECU7は、書き換え可能なメモリ70を備えて、メモリ70内に車両各部の故障に関係する情報(ダイアグ情報)が記憶される。本実施例では、スマートキー3の認証の所定回数連続失敗を故障の可能性がある情報としてメモリ7に記憶する。
【0030】
ダイアグECU7は無線通信機能を有する通信部71を備える。通信部71によって、車両2のダイアグ情報を既存の通信網10(例えば携帯電話網など)を介してセンター9へ送信する。センター9はこのようにして複数の車両からダイアグ情報を取得し、データベース90に蓄積する。
【0031】
車両2は本発明の主要部である報知部として、表示部80、光出力部81、音出力部82を備える。これらの報知部によって、通信不良(電波障害など)によってスマートキー3の認証が失敗したとの情報をユーザに対して報知する。
【0032】
表示部80は上記情報を文字表示によって報知する。表示部80は、車室内のユーザに向けて表示する場合は、車室内に装備された各種の表示部(例えば液晶表示部)とすればよい。また車室外のユーザに向けて表示する場合は、例えば車両2のダッシュボードにプロジェクタを装備して、フロントガラスに向けて文字情報を投影する形態とすればよい。
【0033】
光出力部81は、上記の情報を光出力(発光)によって報知する。光出力部81は、車室内のユーザに向けて報知する場合は、車室内に装備したランプなどとすればよい。また車室外のユーザに向けて報知する場合は、例えばハザードランプとして、その点滅によって報知すればよい。
【0034】
音出力部82は、上記の情報を音(音声)出力によって報知する。音出力部82は、車室内のユーザに向けて報知する場合は、車室内に装備されたチャイムやスピーカとして、チャイムやブザーによる音や、スピーカからの上記情報を知らせる声などとすればよい。また車室外のユーザに向けて報知する場合は、例えば車両2の警笛などとすればよい。
【0035】
さらに車両2はGPS部83、入力部84を備える。GPS部83は、公知の技術を用いて、GPS衛星からの信号を受信して車両2の位置(緯度、経度)を算出し、車両の速度や操舵角などの情報や、記憶した地図情報とのマッチングにより位置を補正する。本実施例において、GPS部83によって算出された車両2の位置情報は、認証失敗の情報とともにセンター9に送られる。
【0036】
入力部84は、例えば車室内に備えられて、各種ボタンなどによって乗員(や工場やディーラの作業員)からの入力を受け付ける。本実施例では、何回連続して認証に失敗したら上記報知部によって報知するかの設定入力を受け付ける。以上の各部は車内通信(例えばCAN通信)により接続されて情報の受け渡しが可能となっている。
【0037】
次に、キー3は、ユーザが携帯可能でスマートキーシステムに関わる電子キーである。キー3は、LF受信部30、RF送信部31、制御部32、メモリ33を備える。メモリ33には、当該キー3に固有の識別信号34(IDコード、ID)が記憶されている。RF送信部31は周波数切替部35を備える。
【0038】
LF受信部30は、LF送信部40から送信されたリクエスト信号(ポーリング信号)を受信する。RF送信部31は、LF受信部30でのリクエスト信号(ポーリング信号)の受信を受けて、当該キー3固有のIDコード34をRF信号として送信する。制御部32は、通常のコンピュータと同様の構造を有するとし、各種情報処理のためのCPUや、CPUの作業領域としての一時記憶部のRAMなどを備えるとする。
【0039】
制御部32によってLF受信部30、RF送信部31、メモリ33などキー3の各装備が制御される。周波数切替部35は、RF送信部31から送信されるRF信号の周波数を予め指定された複数(例えば2つ、後述の例ではRF1、RF2)の周波数のうちで切り替える。
【0040】
さらにキー3は報知部36を備える。報知部36はキーを所持するユーザに対して通信不良を報知する目的で装備される。報知部36は、例えば文字やアイコンを表示する表示部や、発光によって報知する光出力部(例えばLED)、音により報知する音出力部(例えばブザー、チャイム)などとすればよい。なお実施例1においては報知部36は装備しなくてもよい。
【0041】
本システムは、車両のドアの開錠方法として、いわゆるスマートエントリーシステムを備える。この方法では、ユーザによるドアハンドルを握るドア開錠のための操作をタッチセンサ51が検出すると、車室外LF送信部40からキー3へ向けて識別信号(ID34)の返信を指令するLF波によるリクエスト信号が送信される。
【0042】
キー3はリクエスト信号を受信するとID34を含むRF波の信号をRF送信部31から返信する。スマートECU4は、RF受信部41で受信した信号とマスターID44とを照合して、照合成功ならば、車両のドア5を開錠する、あるいは開錠許可状態とする。
【0043】
また本システムは、車両2の駆動部(エンジン、モータ)の始動のためのシステムとしてスマートスタートシステムを備える。この方法では、ユーザによるエンジンスタートスイッチ6を押下する操作が検出されると、LF送信部40から車室内へ向けて識別信号(ID34)の返信を指令するLF波によるリクエスト信号が送信される。
【0044】
キー3はリクエスト信号を受信するとID34を含むRF波の信号をRF送信部31から返信する。スマートECU4は、RF受信部41で受信した信号とマスターID44とを照合して、照合成功ならば、車両2の駆動部(エンジン、モータ)の始動する。なおスマートエントリシステム、スマートスタートシステムにおいては、常時ポーリング信号を発信する形態でもよい。
【0045】
以上の構成のもとで実施例1において、システム1は、車両2のスマートエントリシステムあるいはスマートスタートシステムにおける認証失敗時の報知処理を実行する。スマートエントリシステムの場合の処理手順が図2に示されている。図2(及び後述の図3)の処理手順は予めプログラム化して例えばメモリ44に記憶しておき、スマートECU4が呼び出して自動的に実行するとすればよい。図2における左側の処理はスマートECU4側の処理、右側の処理は、車両2の所有者が携帯するキー3側の処理である。
【0046】
図2の処理では、まずS10でスマートECU4は、ユーザによるドアハンドルへの接触をタッチセンサ51が検出したか否かを判定する。タッチセンサ51が接触を検出した場合(S10:YES)はS20に進み、接触を検出していない場合(S10:NO)はS10を繰り返して待ち状態となる。S20に進んだらスマートECU4は、LF信号(リクエスト信号)をLF送信部40から送信する。
【0047】
本実施例においては、スマートエントリにおける認証処理はマルチチャンネル(複数周波数)で行う。図2では2つの周波数の場合が示されている。すなわちLF送信部40から送信するLF信号の周波数として、予めLF1とLF2とを設定しておく。同様にRF送信部31から送信するRF信号の周波数として、予めRF1とRF2とを設定しておく。
【0048】
そして一方の周波数で認証がうまくいかない場合は、その周波数では通信不良(電波障害)があると判断して、もう一方の周波数で再トライする。S20で送信するLF信号の周波数は周波数切替部42によって例えばLF1と設定される。ここでLF1は例えば前回の認証が成功した際の周波数とすればよい。
【0049】
キー3は、S20で送信されたLF信号(周波数LF1)をS200でLF受信部30により受信する。これによりスマートECU4側からID送信を求めるリクエスト信号を受信したので、キー3はS210で、キー3固有のID34を含むRF信号(識別信号)をRF送信部31から送信する。ここでRF信号の周波数は周波数切替部35によって例えばRF1と設定する。
【0050】
続いてS30でスマートECU4は、RF信号(周波数RF1)を受信したか否かを判定する。RF信号の受信の判定は具体的には、RSSI検出部43によって検出された電波強度が電波受信を示すレベルを超えたら受信したと判定すればよい。RF信号を受信した場合(S30:YES)はS40に進み、RF信号を受信していない場合(S30:NO)はS50に進む。
【0051】
S50に進んだらスマートECU4は、S20でのLF信号送信から所定時間が経過したか否かを判定する。ここで所定時間とは、RF信号の受信のために設定された待ち時間である。既に所定時間を経過した場合(S50:YES)はS60に進み、まだ所定時間を経過していない場合(S50:NO)はS30に戻ってRF信号受信を待つ。
【0052】
S40に進んだら認証(照合)処理を行う。具体的には、受信したRF信号中のID34がマスターID45と一致したら認証成功、一致しなかったら認証失敗と判定する。認証が成功の場合、RF信号の送信元は車両2の正規のキー3であり、S10で車両2のドア5に接触したのは車両2の正規の所有者だと判断する。認証成功の場合(S40:YES)はS110に進み、認証失敗の場合(S40:NO)はS60に進む。
【0053】
S110に進んだら車両2のドア5のロック機構50を開錠する。S60に進んだら、周波数LF1、RF1による認証処理が成功しなかった(RF信号未受信も含む)ので、もう1つの周波数LF2、RF2による認証に移行する。
【0054】
すなわちS60に進んだらスマートECU4は、もう1つの周波数LF2でLF信号(リクエスト信号)をLF送信部40から送信する。キー3は、S60で送信されたLF信号(周波数LF2)をS220でLF受信部30により受信する。これによりスマートECU4側からID送信を求めるリクエスト信号を再び受信したので、キー3はS230で、キー3固有のID34を含むRF信号(識別信号)をRF送信部31から送信する。ここでRF信号の周波数は、周波数切替部35によってもう1つの周波数RF2と設定される。
【0055】
続いてS70でスマートECU4は、S30と同様に、RF信号(周波数RF2)を受信したか否かを判定する。RF信号を受信した場合(S70:YES)はS80に進み、RF信号を受信していない場合(S70:NO)はS90に進む。
【0056】
S90に進んだらスマートECU4は、S60でのLF信号送信から所定時間(待ち時間)が経過したか否かを判定する。既に所定時間を経過した場合(S90:YES)は、S100に進む。まだ所定時間を経過していない場合(S90:NO)はS70に戻ってRF信号受信を待つ。
【0057】
S80に進んだら、S40と同様に認証(照合)処理を行う。そして認証成功の場合(S80:YES)はS110に進み、認証失敗の場合(S80:NO)はS100に進む。上述のとおりS110に進んだら車両2のドア5を開錠する。一方S100に進んだ場合は2回連続認証に成功できなかった場合である。したがってS100では、通信不良(電波障害)であることをユーザに対して報知する処理を実行する。
【0058】
S100では、表示部80、光出力部81、音出力部82のうち少なくとも1つを用いて報知処理を実行する。このうち表示部80は、通信不良によりキーの認証が成功しないとの情報を車外に向けて文字表示によって報知する。具体的には、例えば車両2のダッシュボードに装備したプロジェクタによりフロントガラスに向けて「通信不良でキーが認証できません」などの文字情報を投影する。
【0059】
また光出力部81は、例えばハザードランプの点滅によって、通信不良によりキーの認証が成功しないことを車外に向けて報知する。音出力部82は、例えば車両2の警笛により、通信不良によりキーの認証が成功しないことを車外に向けて報知する。
【0060】
以上の報知処理によってユーザはドアが開錠されない理由が認識できる。(ユーザはマニュアルなどによって所定の報知が通信不良を示すことを認識しているとする。)よってユーザは事態が把握できるとともに、近くに電波を発するようなものがある場合にはそれを除去するなどの対策を講じることもできる。したがって従来のように、理由がわからないまま何度もトライすることによるユーザの不満などが回避できる。
【0061】
続いてS120でスマートECU4は、認証処理が成功しなかったとの情報を、車内通信を用いてダイアグECU7に送信する。ダイアグECU7は、受け取った同情報をメモリ70に記憶する。そしてダイアグECU7は、同情報(を含む車両2のダイアグ情報)を通信部71を用いてセンター9に無線で送信する。
【0062】
送信の際、キー認証が(連続回数)失敗した場所や日時なども一緒に送信する。キー認証が失敗した場所の情報はGPS部83から取得すればよい。キー認証が失敗した日時の情報は、例えばスマートECU4などに計時機能を持たせて、それにより取得すればよい。
【0063】
センター9には複数の(通常多数の)車両からダイアグ情報が送信されてデータベース90に蓄積されるが、本実施例に関してセンター9は、スマートキーシステムにおける通信不良やシステム不良に関した情報の蓄積を行う(さらに分析を行ってもよい)。その蓄積(分析)の具体例は例えば以下のとおりである。
【0064】
多数の車両からのキー認証失敗の情報を総合することにより、キー認証失敗の場所が地域的に(例えば都市部に)限定される場合は、地域的な通信不良によるキー認証失敗であり、本システムの不具合ではないと判定する。逆にキー認証失敗の場所が地域的に限定されない場合は本システムの不具合の可能性があると判定する。またキー認証失敗の日時が例えば特定の温度条件に限定される場合は、温度条件などによって不具合が発生する可能性があると判定する。以上が図2の処理手順である。
【0065】
なお図2の処理では、所定の待ち時間が経過した場合(S50:YES、S90:YES)も通信不良(例えばLF信号が通信不良でキーまで届かなかったのでRF信号の返信がなかった)とみなしたが、S50:YESおよびS90:YESの場合は、通信不良ではなくユーザのキー不所持やキー3の電池切れなどと判断してS100に進まず図2の処理を終了してもよい。
【0066】
次に図3を説明する。図2がスマートエントリー(スマートキーを用いたドア開錠)における通信不良の報知処理手順であったのに対して、図3はスマートスタート(スマートキーを用いたエンジン始動)における通信不良の報知処理手順である。図3の各処理のうちで図2と同じ符号の部分は、図2と同じ処理を行う。以下で図2と異なる部分を説明する。
【0067】
図3の処理では、図2のS10がS15に置き換えられる。S15でスマートECU4は、エンジンスタートスイッチ6に対するユーザによるオン操作が行われたか否かを判定する。エンジンスタートスイッチ6に対するオン操作が行われた場合(S15:YES)はS20へ進み、エンジンスタートスイッチ61に対するオン操作が行われていない場合(S15:NO)はS10を繰り返してオン操作を待つ。図3では、図2のS110がS115に置き換えられる。S115でスマートECU4は、エンジン(モータ)始動を指令する。
【0068】
図3におけるS20とS60でのLF信号送信は車室内における送信とすればよい。また図3におけるS100での報知処理は、車室内のユーザに向けた報知処理とすればよい。具体的には、表示部80は車室内に装備された各種の表示部(例えば液晶表示部)として、「通信不良でキーが認証できません」などの文字情報を表示する。
【0069】
光出力部81は、上記の情報を光出力(発光)によって報知する。光出力部81は車室内に装備したランプとして、発光によって通信不良によりキーの認証が成功しないことを車室内に向けて報知する。音出力部82は車室内に装備されたスピーカとして、チャイムやブザーなどの音や、通信不良によりキーの認証が成功しないことを示す音声などによって、車室内に向けて報知する。以上が実施例1である。
【0070】
なお図2、図3の処理は、ユーザによる車両ドアへの接触やエンジンスタートスイッチ押下を基点とした処理手順となっているが、本発明はこれらに限定せず、常時ポーリング信号を繰り返し送信する形態でもよい。この場合、S10、S15は削除されて、図2の処理は車両ドアが施錠されている状態で繰り返し実行すればよい。また図3の処理はドア開錠後、イグニッションオフ状態で繰り返し実行すればよい。
【0071】
次に実施例2を説明する。実施例2においては、通信不良の報知処理をキー3側で行う。実施例2においては、キー3に報知部36を装備する。それ以外は実施例1の装備構成と同じでよい。実施例2における処理手順は図4に示されている。図4の各処理のうちで図2と同じ符号の部分は、図2と同じ処理を行う。以下で図2と異なる部分を説明する。
【0072】
図4の処理では、図2におけるS100の処理がS105に置き換えられる。S105でスマートECU4は、通信不良であることをキー側で報知するように指令する信号(報知指令信号)をLF送信部40から送信する。この処理はLF信号がキーまで伝達される状況を想定している。したがって例えば所定の待ち時間が経過した場合(S50:YES、S90:YES)はS105の処理は行わないとしてもよい。
【0073】
S105で送信された報知指令信号を、キー3はS240で受信する。そしてキー3はS250で報知処理を実行する。具体的には、表示部による通信不良を報せる文字表示や、発光による報知、音出力(ブザー、チャイム、音声など)による報知などとすればよい。
【0074】
なお図4の処理は図2のS100を削除し、S105、S240、S250の処理を付加した処理手順であるが、図3のS100を削除し、S105、S240、S250の処理を付加してもよい。この場合スマートスタートシステムにおいて通信不良の報知処理をキー側で実行する。以上が実施例2である。なお実施例2においては、車両側に報知機能を持たせなくともよい。逆に車両側とキー側の両方で報知してもよい。
【0075】
キー3は、スマートフォンなどの携帯情報端末にスマートキーの機能を実現するソフトウェアを搭載した実施形態としてもよい。この場合、キー3での報知処理は、携帯情報端末の有する液晶ディスプレイやスピーカーなどを用いた報知処理とすればよい。
【0076】
以上の実施例は、特許請求の範囲に記載された趣旨の範囲内で適宜変更してよい。上記実施例ではLF信号やRF信号の周波数が2つの場合が示されたが、本発明はこれに限定せず、周波数の数は3つ、4つなど任意に設定すればよい。
【0077】
また上記実施例では2回連続して認証失敗した場合にユーザに対する報知処理を行っているが、2回に限定せず、3回、4回など任意に設定すればよい。さらに何回連続して認証失敗したら報知するかを入力部84によって、ユーザや工場やディーラーの作業員が設定変更できるとしてもよい。この場合、できるだけユーザへ報知する方がよいとの観点から所定回数を少なくしたり、頻繁な報知を回避するとの観点から所定回数を多くしたり等、要望や状況などに応じて適切に所定回数を設定することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 報知システム(報知装置)
2 車両
3 スマートキー(携帯機)
4 スマートECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備されて、所定の複数の周波数のうちの1つの周波数で識別信号の返信を要求する指令信号を無線で送信する送信手段と、
前記車両に備えられた受信手段が受信した無線信号が、前記指令信号を受信した前記車両の正規の携帯機により返信された識別信号である認証成功であるか否かを判定する認証手段と、
前記認証手段が認証成功と判定しない場合に、所定の複数の周波数のうちの前記1つの周波数とは異なる周波数での識別信号の返信を要求する指令信号を送信するように前記送信手段に指令する指令手段と、
前記認証手段による判定が所定回数連続して認証成功でない場合に、通信不良であると判定する判定手段と、
その判定手段が通信不良であると判定したら通信不良であることを報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする報知装置。
【請求項2】
前記送信手段による指令信号の送信は前記車両のドアが施錠された状態で前記車両の外部に向けた送信であり、
前記報知手段による報知は、前記車両の外部に向けた報知である請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記送信手段による指令信号の送信は前記車両の駆動部が駆動されていない状態で前記車両の内部に向けた送信であり、
前記報知手段による報知は、前記車両の内部に向けた報知である請求項1に記載の報知装置。
【請求項4】
前記車両の故障情報を記憶する記憶部と、
前記判定手段が通信不良であると判定したら通信不良であることを前記記憶部に記憶する記憶制御手段と、
を備えた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の報知装置。
【請求項5】
前記判定手段において用いられる前記所定回数を変更する変更手段を備えた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−171458(P2012−171458A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34668(P2011−34668)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】