塗工装置及びシートモールディングコンパウンドの製造方法
【課題】 高い粘度の流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置において、ホッパー部での流動性材料の滞留を防止して、被塗工面幅方向両端部の塗工を確実に行うことができる塗工装置を提供する。
【解決手段】 粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置1であって、前記流動性材料を貯留するホッパー部2と、ホッパー部2から供給された前記流動性材料を圧送するギアポンプ3と、前記流動性材料を前記被塗工面に向けて吐出するスロット部4とを有し、ホッパー部2は、前記被塗工面の幅方向に沿って延びるように形成され、ホッパー部2の少なくとも前記幅方向両端部には、前記流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段12が備えられていることを特徴とする。
【解決手段】 粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置1であって、前記流動性材料を貯留するホッパー部2と、ホッパー部2から供給された前記流動性材料を圧送するギアポンプ3と、前記流動性材料を前記被塗工面に向けて吐出するスロット部4とを有し、ホッパー部2は、前記被塗工面の幅方向に沿って延びるように形成され、ホッパー部2の少なくとも前記幅方向両端部には、前記流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段12が備えられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する際に使用される塗工装置に関する。さらには、前記塗工装置を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、長尺のシート材表面に樹脂材料などの流動性材料を塗工する装置として、ロールコータ、ダイコータ、バーコータ、コンマコータ、ナイフコータ等が提供されている(例えば、特許文献1参照)。特に、粘度の高い流動性材料を塗工する場合には、コンマコータやナイフコータ等の接触式塗工装置が使用されることが多い。
【0003】
ここで、粘度の高い流動性材料としては、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂などの各種樹脂材料が挙げられる。
これらの樹脂材料を利用したものとして、前記樹脂材料に充填材、硬化剤、増粘剤、着色剤などを添加し、この樹脂材料の上に細かく切断されたガラス繊維を加えてシート状に成形したシートモールディングコンパウンドが広く提供されている。
【0004】
シートモールディングコンパウンドは、次のようにして製造される。まず、熱可塑性樹脂で構成された長尺のシート材であるキャリアフィルムの表面に不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂材料を塗工し、この上に細かく切断したガラス繊維を堆積させる。他のキャリアフィルムの表面に熱硬化性樹脂材料を塗工しておき、この他のキャリアフィルムを、熱硬化性樹脂材料を塗工した面とガラス繊維を堆積させた面とが接するように積層して多層シート材を成形する。この多層シート材を含浸装置に供給してガラス繊維を十分に熱硬化性樹脂に含浸せしめた後に加温養生することによって、シートモールディングコンパウンドが得られる。
【0005】
このようにして製造されたシートモールディングコンパウンドは、プレス加工等によって熱圧縮成形され、例えば、浴槽やキッチンカウンターなどの製品に加工される。このシートモールディングコンパウンドは成形品を効率よく大量生産するのに適しており、住宅設備のみでなく、自動車のバンパーなどの部品やその他工業製品として幅広く使用されている。
【0006】
近年、このシートモールディングコンパウンドに対して、成形品のさらなる強度増加や成形品表面の意匠性の向上などが要求されてきており、ガラス繊維片を複数積層させた高機能シートモールディングコンパウンドが開発されている。このような高機能シートモールディングコンパウンドでは、キャリアフィルム等を使用することなく中間樹脂層を非接触式塗工装置によって塗工する必要がある(特許文献2参照)。
【0007】
非接触式塗工装置としては、シート材に対して流動性材料を上方から膜状に供給して塗工するカーテンコータ、スリットコータ等がある。このような非接触式塗工装置において、高粘度の樹脂材料を一様の厚みで塗工する場合には、ギアポンプ式塗工装置が適している(特許文献3参照)。
ギアポンプは、ケーシングとこのケーシング内に収容された一組のギアとを有しており、ギアの回転数に応じて樹脂材料が一定量圧送されるものである。
【0008】
ギアポンプ式塗工装置は、樹脂材料を貯留するホッパー部と、ギアポンプ部からシート材に対して樹脂材料を吐出するスロット部とを有している。
ギアポンプ部は、複数のギアポンプユニットがシート材幅方向に向けて縦列に接続されている。
このギアポンプ部の上方にはホッパー部が配置されており、このホッパー部は、シート材幅方向に延びるように形成されている。ホッパー部の下部は、テーパー状に絞られてギアポンプ部のケーシング上端に接続されており、ホッパー部の上部が外部に開口されており、流動性材料を適宜供給できるように構成されている。
【0009】
また、スロット部は、シート材幅方向に延びるように形成されており、ギアポンプ部下面の吐出口に接続されている。
ホッパー部内に貯留された樹脂材料は自重によってケーシング内に供給され、ギアポンプによって圧送されてスロット部を介してシート材表面に塗工される。
【0010】
このような塗工装置においてシート材への塗工幅を小さくする場合には、スロット部の両端部にシャッター部材を嵌め込んで、スロット部両端部からの樹脂材料の吐出を防止する。
【特許文献1】特開2002−18339号公報
【特許文献2】特開2004−168566号公報
【特許文献3】特公平06−13102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、粘度の高い樹脂材料をホッパー部に貯留した場合には、樹脂材料がホッパー部内壁面に付着してしまい、流動が阻害されることがある。特に、前述のようにスロット部両端部にシャッター部材を嵌め込んだ場合には、スロット部両端部からの樹脂材料の吐出が阻害されるため、ギアポンプ部両端部において樹脂材料が滞留してしまう。すると、このギアケース上部に接続されたホッパー部両端部においても樹脂材料が滞留してしまうことになる。
【0012】
シートモールディングコンパウンドを構成する樹脂材料は、前述したように不飽和ポリエステル樹脂に炭酸カルシウムと溶剤とを添加したものであり、その粘度は10000〜20000mPa・sと非常に大きいものである。この樹脂材料がホッパー部内に滞留している場合には、含有水分によってさらに粘度が増す増粘現象や炭酸カルシウムのゲル化が生じる。このため、ホッパー部両端部で滞留した樹脂がホッパー部の側壁面や底面に固着してしまい、ケーシング内に自重落下できなくなってしまう。
【0013】
このようにホッパー部両端部からの樹脂材料の供給が抑制されると、スロット部両端部、つまりシャッター部材近傍において樹脂材料が十分に吐出されなくなり、いわゆる膜切れ現象が生じ、所定の塗工幅での塗工ができなくなってしまう。
また、樹脂材料の一部が増粘及びゲル化した場合には、シート材に塗工した際に部分的に特性が異なる部分が生じてしまい、シートモールディングコンパウンドの品質低下を招いてしまう。
さらに、ケーシング内への樹脂材料の供給が不足すると、ケーシング内での機械的接触により発生した摩擦熱により、樹脂材料のゲル化がさらに進行してしまうといった問題があった。
【0014】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、高い粘度の流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置において、ホッパー部での流動性材料の滞留を防止して、被塗工面幅方向両端部の塗工を確実に行うことができる塗工装置を提供することを目的とする。
また、本発明の塗工装置を用いることにより、中間樹脂層を確実に塗工した高品質なシートモールディングコンパウンドを製造できるシートモールディングコンパウンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による塗工装置は、粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置であって、前記流動性材料を貯留するホッパー部と、該ホッパー部から供給された前記流動性材料を圧送するギアポンプと、前記流動性材料を前記被塗工面に向けて吐出するスロット部とを有し、前記ホッパー部は、前記被塗工面の幅方向に沿って延びるように形成され、前記ホッパー部の少なくとも前記幅方向両端部には、前記流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段が備えられていることを特徴としている。
なお、本発明における高粘度の流動性材料とは、粘度が5000mPa・s以上の流動性材料のことである。
また、本発明における滞留防止手段としては、例えば、ホッパー部内をスクリュー攪拌するものや、ホッパー部内に板状部材を挿入して揺動するものなどが挙げられる。
【0016】
また、本発明によるシートモールディングコンパウンドの製造方法は、樹脂材料を塗工したシート材上にガラス繊維片を添加した後に、上述した塗工装置により樹脂材料を塗工して中間樹脂層を形成し、該中間樹脂層の上にガラス繊維片を堆積させた後に、樹脂材料を塗工した他のシート材を積層させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る塗工装置では、被塗工面幅方向に延びるホッパー部の少なくとも両端部に流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段を備えているので、ホッパー部両端部に流動性材料が滞留することが防止される。例えば、流動性材料として炭化カルシウムを含有する不飽和ポリエステル等を貯留している場合に、ホッパー部両端部での増粘やゲル化を防止できる。また、高粘度の流動性材料がホッパー部の側壁及び底面に固着することを防止でき、スロット部両端部からの流動性材料の吐出が阻害されることがない。
したがって、高粘度の流動性材料を被塗工面に対して塗工する場合でも、塗工幅の両端部への流動性材料を十分に供給でき、膜切れ等の不具合を生じることがない。
【0018】
また、本発明に係るシートモールディングコンパウンドの製造方法では、増粘やゲル化を生じやすい樹脂材料を中間樹脂層として均一に塗工することができるとともに、ゲル化などの中間樹脂層の変質を防止できるので、高品質なシートモールディングコンパウンドを製造することができる。
また、シャッター部材を使用して塗工幅を狭めた場合の滞留防止のみならず、塗工装置の全幅で塗工する場合においても、ホッパー部内壁面に樹脂材料が付着して滞留することを防止できるので効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態である塗工装置は、前記滞留防止手段が、前記ホッパー部の幅方向に揺動するアジテータとされている。この構成の塗工装置では、アジテータを揺動することによってホッパー部両端部の流動性材料が幅方向中央部の流動性材料と置換されることになり、流動性材料の滞留を確実に防止することができる。
【0020】
また、このアジテータを、前記ホッパー部の前記幅方向に直交する断面に沿う形状とすることにより、ホッパー部両端部の側壁面及び底面近傍に存在している流動性材料をアジテータで揺動させて流動性材料の滞留を防止できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例による塗工装置及びこの塗工装置を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。図1及び図2に、本発明の実施例である塗工装置を示す。
この塗工装置1は、シート材幅方向に延びる断面矩形のホッパー部と、このホッパー部2の下方に接続されたギアポンプ部3と、ギアポンプ部3の下方に配置されてシート材幅方向に延びるスロット部4とを有する。
【0022】
ギアポンプ部3は、3つのギアポンプユニット5がシート材幅方向に向けて縦列に連結されて構成されている。各ギアポンプユニット5は、ケーシング6とこのケーシング6内に収容された一組のギア7a、7bとを有しており、一方のギア7aが駆動軸8に固定され、他方のギア7bが従動軸9に固定されている。駆動軸8には駆動モータ10が接続されており、駆動軸8に固定された一方のギア7aと回転させて他方のギア7bと噛み込ませて、従動軸9に固定された他方のギア7bを回転させる構成とされている。
3つのギアポンプユニット5に配置された駆動軸8及び従動軸9の両端部は滑り軸受11によって支持されており、隣接するギアポンプユニット5の駆動軸8及び従動軸9と連結されている。
【0023】
ホッパー部2は、ギアポンプ部3側に向かうにしたがいテーパ状に狭くなるように形成されている。ホッパー部2の幅方向両端部には、滞留防止手段12としてアジテータ13が配置されている。このアジテータ13は、ホッパー部2の幅方向に直交する断面と相補的な形状をなしており、図2に示すように、下側が漸次狭くなるような多角形平板状に形成されている。本実施例では、アジテータ13は、図3に示すように、多角形面の内側に開口部14が設けられた枠体とされている。このアジテータ13の周縁部は、図4に示すように、厚さ中央部に向けて傾斜した傾斜面が形成されている。なお、本実施例では、アジテータ13は鉄材で構成され、表面に硬質クロームメッキが施されている。
【0024】
ホッパー部2両端部の外側には、アジテータ13を幅方向に揺動させるための駆動手段としてエアシリンダ16が配置されている。このエアシリンダ16のロッド17がアジテータ13の上端部に接続されている。
また、ホッパー部2の内壁面とアジテータ13との空隙は、5mmから25mm、さらに好ましくは10mmから15mmの範囲内に設定されており、アジテータ13の動作をスムーズに行うことができるとともに、樹脂材料の滞留を防止できる構成とされている。
また、スロット部4の両端部には、塗工幅を調整するためのシャッター部材18が嵌め込められている。
【0025】
ホッパー部2に貯留された樹脂材料19は、自重によってギアポンプ部3内に供給される。ギアポンプ部3内では、一組のギア7a、7bが回転することにより、一定容量の樹脂材料19がスロット部4に圧送される。そして、スロット部4から樹脂材料19が吐出され、シート材に樹脂材料19が塗工される。
【0026】
本実施例である塗工装置1によれば、アジテータ13を揺動することによってホッパー部2両端部にある樹脂材料19が滞留することを防止できるので、ホッパー部2内での増粘やゲル化を防止することができる。よって、シート材に対して均一に樹脂材料19を塗工することができる。
また、アジテータ13がホッパー部2の幅方向に対して垂直な断面に沿った形状とされているので、ホッパー部2の側壁面及び底面近傍にある樹脂材料19の滞留を防止することができ、樹脂材料19が固着することを防止できる。
【0027】
さらに、本実施例では、アジテータ13が枠体とされるとともに、柱部15分に傾斜面が形成されているので、高粘度の樹脂材料19中を揺動させる際の抵抗が小さくなり、アジテータ13を小さな動力で揺動させることができる
【0028】
次に、この塗工装置1を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法について説明する。図6に、シートモールディングコンパウンド製造ライン20の概略を示す。
巻き出し装置21aより引き出されたシート状の下部キャリアフィルム22aの上にナイフコータ23aを使用して樹脂材料24aを塗工する。塗工された樹脂材料24aの上に、ガラス繊維片供給手段25aを用いてガラス繊維26aの切断片27aを堆積させる。
【0029】
ガラス繊維片供給手段25aは、ガラスロービング装置28aと、ガラス繊維26aを細断する切断装置29aと、切断装置29aへガラス繊維26aを供給するフィードロール30aとで構成されている。切断装置29a内に供給されたガラス繊維26aは切断ロールによって圧接されることにより細かく分断され、ガラス繊維片27aが塗工された樹脂材料24aの上に均一に分散及び堆積される。
【0030】
ガラス繊維片27aが堆積された上に樹脂材料19を塗工する。ここで、本実施例である塗工装置1を使用する。
ホッパー部2に樹脂材料19が貯留され、ギアポンプ部3によってスロット部4を介して樹脂材料19を塗工する。この際、アジテータ13による揺動により、ホッパー部2両端部での樹脂材料19の滞留が防止され、樹脂材料19の増粘及びゲル化が防止される。よって、シートモールディングコンパウンドの中間樹脂層として樹脂材料19を均一に塗工することができる。
【0031】
次に、この塗工装置1の下流側に設けられたガラス繊維片供給手段25bを用いて、樹脂材料19の上にさらにガラス繊維片27bを分散・堆積させる。
また、巻き出し装置21bより取り出した上部キャリアフィルム22bの上にナイフコータ23bを使用して樹脂材料24bを塗工して第2樹脂層を形成する。そして、ガラス繊維片27bが堆積されたシート材の上に上部キャリアフィルム22bを重ね合わせる。
【0032】
このようにして得られた多層シート材は、脱泡ロール及び含浸ロールを有する含浸装置31でガラス繊維片27a、27bを各樹脂層に十分に含浸させることにより、図7に示すような多層のシートモールディングコンパウンド40が製造される。
このように製造されたシートモールディングコンパウンド40はロール状に巻き取られるか、あるいは折り畳まれた状態で、次の工程へと搬送され、熱間プレス等によって成形される。
【0033】
ここで、中間樹脂層を構成する樹脂材料19や、ガラス繊維の材質、大きさ、分布等を変更することにより、表面層と中間層とで性能の異なるシートモールディングコンパウンドを製造することも可能である。
この方法によれば、中間樹脂層を均一に形成することができ、高品質のシートモールディングコンパウンドを製造することができる。
【0034】
以上、本発明の実施例による塗工装置及びシートモールディングコンパウンドの製造方法について説明したが、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば、本実施例では、アジテータ13として、図3及び図4に示すような枠体状のものとして説明したが、これに限定されることはなく、開口部のない平板状のものでもよいし、あるいは、図8に示すような断面円形の孔が複数設けられたものや、図9及び図10に示すように輪郭部分のみが存在するものであってもよい。アジテータ13の形状は、ホッパー部2内に貯留される流動性材料の粘度等を考慮して適宜選択することが好ましい。
【0036】
また、ホッパー部2内に貯留される流動性材料を樹脂材料19として説明したが、これに限定されることは無く、他の流動性材料であってもよい。
さらに、アジテータ13を鉄材で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、ポリアセタール、ポリ4フッ化エチレン等の樹脂で構成されたものであってもよい。このような材料で構成することにより、流動性材料がアジテータ13表面に固着することが防止されるので好ましい。
【0037】
以下に、本実施例である塗工装置を用いて比較実験を行った結果について説明する。
ホッパー部2内に貯留された樹脂材料19として、不飽和ポリエステル樹脂である大日本インキ化学工業株式会社製のポリライトMPS−520に炭酸カルシウムを添加したものを使用した。この樹脂材料19の粘度は15000mPa・sである。
この樹脂材料19をホッパー部2内に30kg投入し、ホッパー部2内の液面レベルを一定に保つように、樹脂材料19を適宜投入した。
【0038】
ホッパー部2の大きさは、幅が1500mm、高さが180mmであり、上部の奥行きを230mm,下部の奥行きを50mmとした。
ホッパー部2内に配置されるアジテータ13は、ホッパー部2の幅方向に垂直な断面と相補的な形状をなしており、ホッパー部2の側壁面との隙間が、上部で片側20mm,下部で片側10mmとなるように設定されている。アジテータ13の板厚は12mmで、両側から板厚中央に向けて45°の傾斜面が配置され、板厚中央部分に4mmの平面部が形成されている。また、アジテータ13は鉄材にて構成されており、表面に硬質クロームメッキ処理が施されている。
アジテータ13の揺動条件は、ストロークを100mmとし、揺動回数は毎分10回とした。
【0039】
ギアポンプ部3のギア回転数は50rpmとし、スロット幅は1.5mmとした。シート材の材質はポリエチレンとし、厚み30μm、幅1150mmのものを用いた。そして、塗工幅は1000mmとし、4kg/m2の量の樹脂材料を塗工した。ここで、シート材の走行速度は20m/minであり、ギアポンプ部3からは、80kg/minの樹脂材料19が吐出されることになる。
【0040】
この条件下において5時間連続でシート材に塗工を行ったが、塗工幅は安定しており、シート材両端部近傍でのゲル化や変質は認められなかった。ホッパー部2内を確認した結果、側壁面や内面に固着層は認められなかった。
【0041】
比較例として、上記と同じ条件でアジテータを備えていない塗工装置を用いてシート材への塗工を行った。
その結果、塗工開始から20分後には、スロット部4両端部からの樹脂材料の吐出が一様でなくなり脈動し、約25分後には、図11に示すように、ホッパー部2、ギアポンプ部3及びスロット部4両端部で樹脂材料が固着してしまって塗工幅が狭くなりシート材両端部の樹脂にゲル化及び変質が認められた。
【0042】
この比較試験の結果、本実施例である塗工装置1を用いることにより、不飽和ポリエステルに炭化カルシウムを加えた樹脂材料を長時間安定して塗工することができるとともに、樹脂材料の増粘やゲル化を防止できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る塗工装置の斜視図である。
【図2】図1の塗工装置の断面図である。
【図3】図1の塗工装置に備えられたアジテータの正面図である。
【図4】図3におけるX−X断面図である。
【図5】図1の塗工装置での塗工状態を示す説明図である。
【図6】シートモールディングコンパウンドの製造ラインの概略図である。
【図7】シートモールディングコンパウンドの断面図である。
【図8】他のアジテータの正面図である。
【図9】他のアジテータの正面図である。
【図10】図9におけるY−Y断面図である。
【図11】比較例である塗工装置を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 塗工装置
2 ホッパー部
3 ギアポンプ部(ギアポンプ)
4 スロット部
12 滞留防止手段
13 アジテータ
19 樹脂材料
22a 下部キャリアフィルム(シート材)
22b 上部キャリアフィルム(他のシート材)
24a、24b 樹脂材料
27a、27b ガラス繊維片
【技術分野】
【0001】
この発明は、粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する際に使用される塗工装置に関する。さらには、前記塗工装置を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、長尺のシート材表面に樹脂材料などの流動性材料を塗工する装置として、ロールコータ、ダイコータ、バーコータ、コンマコータ、ナイフコータ等が提供されている(例えば、特許文献1参照)。特に、粘度の高い流動性材料を塗工する場合には、コンマコータやナイフコータ等の接触式塗工装置が使用されることが多い。
【0003】
ここで、粘度の高い流動性材料としては、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂などの各種樹脂材料が挙げられる。
これらの樹脂材料を利用したものとして、前記樹脂材料に充填材、硬化剤、増粘剤、着色剤などを添加し、この樹脂材料の上に細かく切断されたガラス繊維を加えてシート状に成形したシートモールディングコンパウンドが広く提供されている。
【0004】
シートモールディングコンパウンドは、次のようにして製造される。まず、熱可塑性樹脂で構成された長尺のシート材であるキャリアフィルムの表面に不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂材料を塗工し、この上に細かく切断したガラス繊維を堆積させる。他のキャリアフィルムの表面に熱硬化性樹脂材料を塗工しておき、この他のキャリアフィルムを、熱硬化性樹脂材料を塗工した面とガラス繊維を堆積させた面とが接するように積層して多層シート材を成形する。この多層シート材を含浸装置に供給してガラス繊維を十分に熱硬化性樹脂に含浸せしめた後に加温養生することによって、シートモールディングコンパウンドが得られる。
【0005】
このようにして製造されたシートモールディングコンパウンドは、プレス加工等によって熱圧縮成形され、例えば、浴槽やキッチンカウンターなどの製品に加工される。このシートモールディングコンパウンドは成形品を効率よく大量生産するのに適しており、住宅設備のみでなく、自動車のバンパーなどの部品やその他工業製品として幅広く使用されている。
【0006】
近年、このシートモールディングコンパウンドに対して、成形品のさらなる強度増加や成形品表面の意匠性の向上などが要求されてきており、ガラス繊維片を複数積層させた高機能シートモールディングコンパウンドが開発されている。このような高機能シートモールディングコンパウンドでは、キャリアフィルム等を使用することなく中間樹脂層を非接触式塗工装置によって塗工する必要がある(特許文献2参照)。
【0007】
非接触式塗工装置としては、シート材に対して流動性材料を上方から膜状に供給して塗工するカーテンコータ、スリットコータ等がある。このような非接触式塗工装置において、高粘度の樹脂材料を一様の厚みで塗工する場合には、ギアポンプ式塗工装置が適している(特許文献3参照)。
ギアポンプは、ケーシングとこのケーシング内に収容された一組のギアとを有しており、ギアの回転数に応じて樹脂材料が一定量圧送されるものである。
【0008】
ギアポンプ式塗工装置は、樹脂材料を貯留するホッパー部と、ギアポンプ部からシート材に対して樹脂材料を吐出するスロット部とを有している。
ギアポンプ部は、複数のギアポンプユニットがシート材幅方向に向けて縦列に接続されている。
このギアポンプ部の上方にはホッパー部が配置されており、このホッパー部は、シート材幅方向に延びるように形成されている。ホッパー部の下部は、テーパー状に絞られてギアポンプ部のケーシング上端に接続されており、ホッパー部の上部が外部に開口されており、流動性材料を適宜供給できるように構成されている。
【0009】
また、スロット部は、シート材幅方向に延びるように形成されており、ギアポンプ部下面の吐出口に接続されている。
ホッパー部内に貯留された樹脂材料は自重によってケーシング内に供給され、ギアポンプによって圧送されてスロット部を介してシート材表面に塗工される。
【0010】
このような塗工装置においてシート材への塗工幅を小さくする場合には、スロット部の両端部にシャッター部材を嵌め込んで、スロット部両端部からの樹脂材料の吐出を防止する。
【特許文献1】特開2002−18339号公報
【特許文献2】特開2004−168566号公報
【特許文献3】特公平06−13102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、粘度の高い樹脂材料をホッパー部に貯留した場合には、樹脂材料がホッパー部内壁面に付着してしまい、流動が阻害されることがある。特に、前述のようにスロット部両端部にシャッター部材を嵌め込んだ場合には、スロット部両端部からの樹脂材料の吐出が阻害されるため、ギアポンプ部両端部において樹脂材料が滞留してしまう。すると、このギアケース上部に接続されたホッパー部両端部においても樹脂材料が滞留してしまうことになる。
【0012】
シートモールディングコンパウンドを構成する樹脂材料は、前述したように不飽和ポリエステル樹脂に炭酸カルシウムと溶剤とを添加したものであり、その粘度は10000〜20000mPa・sと非常に大きいものである。この樹脂材料がホッパー部内に滞留している場合には、含有水分によってさらに粘度が増す増粘現象や炭酸カルシウムのゲル化が生じる。このため、ホッパー部両端部で滞留した樹脂がホッパー部の側壁面や底面に固着してしまい、ケーシング内に自重落下できなくなってしまう。
【0013】
このようにホッパー部両端部からの樹脂材料の供給が抑制されると、スロット部両端部、つまりシャッター部材近傍において樹脂材料が十分に吐出されなくなり、いわゆる膜切れ現象が生じ、所定の塗工幅での塗工ができなくなってしまう。
また、樹脂材料の一部が増粘及びゲル化した場合には、シート材に塗工した際に部分的に特性が異なる部分が生じてしまい、シートモールディングコンパウンドの品質低下を招いてしまう。
さらに、ケーシング内への樹脂材料の供給が不足すると、ケーシング内での機械的接触により発生した摩擦熱により、樹脂材料のゲル化がさらに進行してしまうといった問題があった。
【0014】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、高い粘度の流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置において、ホッパー部での流動性材料の滞留を防止して、被塗工面幅方向両端部の塗工を確実に行うことができる塗工装置を提供することを目的とする。
また、本発明の塗工装置を用いることにより、中間樹脂層を確実に塗工した高品質なシートモールディングコンパウンドを製造できるシートモールディングコンパウンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による塗工装置は、粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置であって、前記流動性材料を貯留するホッパー部と、該ホッパー部から供給された前記流動性材料を圧送するギアポンプと、前記流動性材料を前記被塗工面に向けて吐出するスロット部とを有し、前記ホッパー部は、前記被塗工面の幅方向に沿って延びるように形成され、前記ホッパー部の少なくとも前記幅方向両端部には、前記流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段が備えられていることを特徴としている。
なお、本発明における高粘度の流動性材料とは、粘度が5000mPa・s以上の流動性材料のことである。
また、本発明における滞留防止手段としては、例えば、ホッパー部内をスクリュー攪拌するものや、ホッパー部内に板状部材を挿入して揺動するものなどが挙げられる。
【0016】
また、本発明によるシートモールディングコンパウンドの製造方法は、樹脂材料を塗工したシート材上にガラス繊維片を添加した後に、上述した塗工装置により樹脂材料を塗工して中間樹脂層を形成し、該中間樹脂層の上にガラス繊維片を堆積させた後に、樹脂材料を塗工した他のシート材を積層させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る塗工装置では、被塗工面幅方向に延びるホッパー部の少なくとも両端部に流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段を備えているので、ホッパー部両端部に流動性材料が滞留することが防止される。例えば、流動性材料として炭化カルシウムを含有する不飽和ポリエステル等を貯留している場合に、ホッパー部両端部での増粘やゲル化を防止できる。また、高粘度の流動性材料がホッパー部の側壁及び底面に固着することを防止でき、スロット部両端部からの流動性材料の吐出が阻害されることがない。
したがって、高粘度の流動性材料を被塗工面に対して塗工する場合でも、塗工幅の両端部への流動性材料を十分に供給でき、膜切れ等の不具合を生じることがない。
【0018】
また、本発明に係るシートモールディングコンパウンドの製造方法では、増粘やゲル化を生じやすい樹脂材料を中間樹脂層として均一に塗工することができるとともに、ゲル化などの中間樹脂層の変質を防止できるので、高品質なシートモールディングコンパウンドを製造することができる。
また、シャッター部材を使用して塗工幅を狭めた場合の滞留防止のみならず、塗工装置の全幅で塗工する場合においても、ホッパー部内壁面に樹脂材料が付着して滞留することを防止できるので効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態である塗工装置は、前記滞留防止手段が、前記ホッパー部の幅方向に揺動するアジテータとされている。この構成の塗工装置では、アジテータを揺動することによってホッパー部両端部の流動性材料が幅方向中央部の流動性材料と置換されることになり、流動性材料の滞留を確実に防止することができる。
【0020】
また、このアジテータを、前記ホッパー部の前記幅方向に直交する断面に沿う形状とすることにより、ホッパー部両端部の側壁面及び底面近傍に存在している流動性材料をアジテータで揺動させて流動性材料の滞留を防止できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例による塗工装置及びこの塗工装置を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。図1及び図2に、本発明の実施例である塗工装置を示す。
この塗工装置1は、シート材幅方向に延びる断面矩形のホッパー部と、このホッパー部2の下方に接続されたギアポンプ部3と、ギアポンプ部3の下方に配置されてシート材幅方向に延びるスロット部4とを有する。
【0022】
ギアポンプ部3は、3つのギアポンプユニット5がシート材幅方向に向けて縦列に連結されて構成されている。各ギアポンプユニット5は、ケーシング6とこのケーシング6内に収容された一組のギア7a、7bとを有しており、一方のギア7aが駆動軸8に固定され、他方のギア7bが従動軸9に固定されている。駆動軸8には駆動モータ10が接続されており、駆動軸8に固定された一方のギア7aと回転させて他方のギア7bと噛み込ませて、従動軸9に固定された他方のギア7bを回転させる構成とされている。
3つのギアポンプユニット5に配置された駆動軸8及び従動軸9の両端部は滑り軸受11によって支持されており、隣接するギアポンプユニット5の駆動軸8及び従動軸9と連結されている。
【0023】
ホッパー部2は、ギアポンプ部3側に向かうにしたがいテーパ状に狭くなるように形成されている。ホッパー部2の幅方向両端部には、滞留防止手段12としてアジテータ13が配置されている。このアジテータ13は、ホッパー部2の幅方向に直交する断面と相補的な形状をなしており、図2に示すように、下側が漸次狭くなるような多角形平板状に形成されている。本実施例では、アジテータ13は、図3に示すように、多角形面の内側に開口部14が設けられた枠体とされている。このアジテータ13の周縁部は、図4に示すように、厚さ中央部に向けて傾斜した傾斜面が形成されている。なお、本実施例では、アジテータ13は鉄材で構成され、表面に硬質クロームメッキが施されている。
【0024】
ホッパー部2両端部の外側には、アジテータ13を幅方向に揺動させるための駆動手段としてエアシリンダ16が配置されている。このエアシリンダ16のロッド17がアジテータ13の上端部に接続されている。
また、ホッパー部2の内壁面とアジテータ13との空隙は、5mmから25mm、さらに好ましくは10mmから15mmの範囲内に設定されており、アジテータ13の動作をスムーズに行うことができるとともに、樹脂材料の滞留を防止できる構成とされている。
また、スロット部4の両端部には、塗工幅を調整するためのシャッター部材18が嵌め込められている。
【0025】
ホッパー部2に貯留された樹脂材料19は、自重によってギアポンプ部3内に供給される。ギアポンプ部3内では、一組のギア7a、7bが回転することにより、一定容量の樹脂材料19がスロット部4に圧送される。そして、スロット部4から樹脂材料19が吐出され、シート材に樹脂材料19が塗工される。
【0026】
本実施例である塗工装置1によれば、アジテータ13を揺動することによってホッパー部2両端部にある樹脂材料19が滞留することを防止できるので、ホッパー部2内での増粘やゲル化を防止することができる。よって、シート材に対して均一に樹脂材料19を塗工することができる。
また、アジテータ13がホッパー部2の幅方向に対して垂直な断面に沿った形状とされているので、ホッパー部2の側壁面及び底面近傍にある樹脂材料19の滞留を防止することができ、樹脂材料19が固着することを防止できる。
【0027】
さらに、本実施例では、アジテータ13が枠体とされるとともに、柱部15分に傾斜面が形成されているので、高粘度の樹脂材料19中を揺動させる際の抵抗が小さくなり、アジテータ13を小さな動力で揺動させることができる
【0028】
次に、この塗工装置1を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法について説明する。図6に、シートモールディングコンパウンド製造ライン20の概略を示す。
巻き出し装置21aより引き出されたシート状の下部キャリアフィルム22aの上にナイフコータ23aを使用して樹脂材料24aを塗工する。塗工された樹脂材料24aの上に、ガラス繊維片供給手段25aを用いてガラス繊維26aの切断片27aを堆積させる。
【0029】
ガラス繊維片供給手段25aは、ガラスロービング装置28aと、ガラス繊維26aを細断する切断装置29aと、切断装置29aへガラス繊維26aを供給するフィードロール30aとで構成されている。切断装置29a内に供給されたガラス繊維26aは切断ロールによって圧接されることにより細かく分断され、ガラス繊維片27aが塗工された樹脂材料24aの上に均一に分散及び堆積される。
【0030】
ガラス繊維片27aが堆積された上に樹脂材料19を塗工する。ここで、本実施例である塗工装置1を使用する。
ホッパー部2に樹脂材料19が貯留され、ギアポンプ部3によってスロット部4を介して樹脂材料19を塗工する。この際、アジテータ13による揺動により、ホッパー部2両端部での樹脂材料19の滞留が防止され、樹脂材料19の増粘及びゲル化が防止される。よって、シートモールディングコンパウンドの中間樹脂層として樹脂材料19を均一に塗工することができる。
【0031】
次に、この塗工装置1の下流側に設けられたガラス繊維片供給手段25bを用いて、樹脂材料19の上にさらにガラス繊維片27bを分散・堆積させる。
また、巻き出し装置21bより取り出した上部キャリアフィルム22bの上にナイフコータ23bを使用して樹脂材料24bを塗工して第2樹脂層を形成する。そして、ガラス繊維片27bが堆積されたシート材の上に上部キャリアフィルム22bを重ね合わせる。
【0032】
このようにして得られた多層シート材は、脱泡ロール及び含浸ロールを有する含浸装置31でガラス繊維片27a、27bを各樹脂層に十分に含浸させることにより、図7に示すような多層のシートモールディングコンパウンド40が製造される。
このように製造されたシートモールディングコンパウンド40はロール状に巻き取られるか、あるいは折り畳まれた状態で、次の工程へと搬送され、熱間プレス等によって成形される。
【0033】
ここで、中間樹脂層を構成する樹脂材料19や、ガラス繊維の材質、大きさ、分布等を変更することにより、表面層と中間層とで性能の異なるシートモールディングコンパウンドを製造することも可能である。
この方法によれば、中間樹脂層を均一に形成することができ、高品質のシートモールディングコンパウンドを製造することができる。
【0034】
以上、本発明の実施例による塗工装置及びシートモールディングコンパウンドの製造方法について説明したが、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば、本実施例では、アジテータ13として、図3及び図4に示すような枠体状のものとして説明したが、これに限定されることはなく、開口部のない平板状のものでもよいし、あるいは、図8に示すような断面円形の孔が複数設けられたものや、図9及び図10に示すように輪郭部分のみが存在するものであってもよい。アジテータ13の形状は、ホッパー部2内に貯留される流動性材料の粘度等を考慮して適宜選択することが好ましい。
【0036】
また、ホッパー部2内に貯留される流動性材料を樹脂材料19として説明したが、これに限定されることは無く、他の流動性材料であってもよい。
さらに、アジテータ13を鉄材で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、ポリアセタール、ポリ4フッ化エチレン等の樹脂で構成されたものであってもよい。このような材料で構成することにより、流動性材料がアジテータ13表面に固着することが防止されるので好ましい。
【0037】
以下に、本実施例である塗工装置を用いて比較実験を行った結果について説明する。
ホッパー部2内に貯留された樹脂材料19として、不飽和ポリエステル樹脂である大日本インキ化学工業株式会社製のポリライトMPS−520に炭酸カルシウムを添加したものを使用した。この樹脂材料19の粘度は15000mPa・sである。
この樹脂材料19をホッパー部2内に30kg投入し、ホッパー部2内の液面レベルを一定に保つように、樹脂材料19を適宜投入した。
【0038】
ホッパー部2の大きさは、幅が1500mm、高さが180mmであり、上部の奥行きを230mm,下部の奥行きを50mmとした。
ホッパー部2内に配置されるアジテータ13は、ホッパー部2の幅方向に垂直な断面と相補的な形状をなしており、ホッパー部2の側壁面との隙間が、上部で片側20mm,下部で片側10mmとなるように設定されている。アジテータ13の板厚は12mmで、両側から板厚中央に向けて45°の傾斜面が配置され、板厚中央部分に4mmの平面部が形成されている。また、アジテータ13は鉄材にて構成されており、表面に硬質クロームメッキ処理が施されている。
アジテータ13の揺動条件は、ストロークを100mmとし、揺動回数は毎分10回とした。
【0039】
ギアポンプ部3のギア回転数は50rpmとし、スロット幅は1.5mmとした。シート材の材質はポリエチレンとし、厚み30μm、幅1150mmのものを用いた。そして、塗工幅は1000mmとし、4kg/m2の量の樹脂材料を塗工した。ここで、シート材の走行速度は20m/minであり、ギアポンプ部3からは、80kg/minの樹脂材料19が吐出されることになる。
【0040】
この条件下において5時間連続でシート材に塗工を行ったが、塗工幅は安定しており、シート材両端部近傍でのゲル化や変質は認められなかった。ホッパー部2内を確認した結果、側壁面や内面に固着層は認められなかった。
【0041】
比較例として、上記と同じ条件でアジテータを備えていない塗工装置を用いてシート材への塗工を行った。
その結果、塗工開始から20分後には、スロット部4両端部からの樹脂材料の吐出が一様でなくなり脈動し、約25分後には、図11に示すように、ホッパー部2、ギアポンプ部3及びスロット部4両端部で樹脂材料が固着してしまって塗工幅が狭くなりシート材両端部の樹脂にゲル化及び変質が認められた。
【0042】
この比較試験の結果、本実施例である塗工装置1を用いることにより、不飽和ポリエステルに炭化カルシウムを加えた樹脂材料を長時間安定して塗工することができるとともに、樹脂材料の増粘やゲル化を防止できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る塗工装置の斜視図である。
【図2】図1の塗工装置の断面図である。
【図3】図1の塗工装置に備えられたアジテータの正面図である。
【図4】図3におけるX−X断面図である。
【図5】図1の塗工装置での塗工状態を示す説明図である。
【図6】シートモールディングコンパウンドの製造ラインの概略図である。
【図7】シートモールディングコンパウンドの断面図である。
【図8】他のアジテータの正面図である。
【図9】他のアジテータの正面図である。
【図10】図9におけるY−Y断面図である。
【図11】比較例である塗工装置を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 塗工装置
2 ホッパー部
3 ギアポンプ部(ギアポンプ)
4 スロット部
12 滞留防止手段
13 アジテータ
19 樹脂材料
22a 下部キャリアフィルム(シート材)
22b 上部キャリアフィルム(他のシート材)
24a、24b 樹脂材料
27a、27b ガラス繊維片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置であって、
前記流動性材料を貯留するホッパー部と、該ホッパー部から供給された前記流動性材料を圧送するギアポンプと、前記流動性材料を前記被塗工面に向けて吐出するスロット部とを有し、
前記ホッパー部は、前記被塗工面の幅方向に沿って延びるように形成され、前記ホッパー部の少なくとも前記幅方向両端部には、前記流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段が備えられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記滞留防止手段が、前記幅方向に揺動するアジテータである請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記アジテータが、前記ホッパー部の前記幅方向に直交する断面に沿った形状をなしている請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
樹脂材料を塗工したシート材上にガラス繊維片を添加した後に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗工装置により樹脂材料を塗工して中間樹脂層を形成し、該中間樹脂層の上にガラス繊維片を堆積させた後に、樹脂材料を塗工した他のシート材を積層させることを特徴とするシートモールディングコンパウンドの製造方法。
【請求項1】
粘度の高い流動性材料を被塗工面に塗工する塗工装置であって、
前記流動性材料を貯留するホッパー部と、該ホッパー部から供給された前記流動性材料を圧送するギアポンプと、前記流動性材料を前記被塗工面に向けて吐出するスロット部とを有し、
前記ホッパー部は、前記被塗工面の幅方向に沿って延びるように形成され、前記ホッパー部の少なくとも前記幅方向両端部には、前記流動性材料の滞留を防止するための滞留防止手段が備えられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記滞留防止手段が、前記幅方向に揺動するアジテータである請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記アジテータが、前記ホッパー部の前記幅方向に直交する断面に沿った形状をなしている請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
樹脂材料を塗工したシート材上にガラス繊維片を添加した後に、請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗工装置により樹脂材料を塗工して中間樹脂層を形成し、該中間樹脂層の上にガラス繊維片を堆積させた後に、樹脂材料を塗工した他のシート材を積層させることを特徴とするシートモールディングコンパウンドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−61700(P2007−61700A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249014(P2005−249014)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(599132580)ディックテクノ株式会社 (20)
【出願人】(596005920)新ディック化工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(599132580)ディックテクノ株式会社 (20)
【出願人】(596005920)新ディック化工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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