説明

塗布システム、及び塗布方法

【課題】 ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができる塗布システム、及び塗布方法を提供する。
【解決手段】
連続走行するウエブ12に塗布液14を供給し塗膜を形成する塗布システム10は、過剰の塗布液を送液しその後塗布量を計量する塗布方式の塗布装置16と、塗布装置16の下流に配置され、ウエブ12の幅方向端部の塗膜の厚塗り部をレベリングするレベリング部材18と、レベリング部材18の下流に配置され、ウエブ12の幅方向端部の塗膜の一部を除去する吸引ノズル20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布システム、及び塗布方法に係り、特に、連続走行する長尺可撓性支持体に塗布液を塗布する塗布システム、及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
写真感光材料、磁気記録媒体、光学補償フィルム、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の光学フィルムは、連続走行する長尺可撓性の支持体(以下、「ウエブ」という)上に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布工程を経て製造される。塗布工程では、グラビア塗布、バー塗布、スライド塗布、エクストルージョン塗布、カーテン塗布等の塗布方式が採用される。
【0003】
上述の塗布工程において、塗布方式の如何に拘わらず、塗布液の表面張力の作用により、ウエブの幅方向両縁部に塗膜の厚塗り部が発生する。この厚塗り部は、後の乾燥工程での乾燥の不均一を生ずる原因となるので、乾燥工程前に厚塗り部を除去することが望まれている。ウエブの幅方向両縁の厚塗り部を除去する方法として、特許文献1は、厚塗り部を吸引ノズルで吸引する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−299410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、厚塗り部について、塗布方式の違いによりその形状が異なっている。例えば、スライド塗布、エクストルージョン塗布等に代表される塗布方式では、予め所定の塗布量になるよう計量された塗布液がウエブに供給される。このような塗布方式では、ウエブの幅方向両縁に均一な厚さの厚塗り部が発生する。均一な厚さの厚塗り部を特許文献1の吸引方式を利用して均一に除去することができる。
【0006】
一方、グラビア塗布、バー塗布等に代表される塗布方式では、ポンプにより過剰の塗布液を送液し、その後塗布量が計量される。このような塗布方式では、ウエブの幅方向両縁に不均一な厚さの厚塗り部が発生する。不均一な厚さの厚塗り部を特許文献1の吸引方式を利用して除去すると、不均一(周期的)な厚さの厚塗り部を均一に除去できず、厚塗り部の一部がウエブの裏面へ回り込む場合がある。上述の裏回りを防止するため吸引量を増やすと、ウエブの幅方向両縁の塗布液を全て吸ってしまう場合がある。いずれの場合も、ウエブの両端部を製品として使用できないので、ウエブの両端部を切断しなければならない。そのためウエブの幅方向全域を有効に製品にできず、ウエブのロスが発生していた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができる塗布システム、及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、連続走行する支持体に塗布液を供給し塗膜を形成する塗布システムは、過剰の塗布液を送液しその後塗布量を計量する塗布方式の塗布装置と、前記塗布装置の下流に配置され、前記支持体の幅方向端部の塗膜の厚塗り部を一定厚さにするレベリング部材と、前記レベリング部材の下流に配置され、前記支持体の幅方向端部の塗膜の一部を除去する吸引装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の塗布システムによれば、レベリング部材により厚塗り部を一定厚さに調整した後、吸引装置により塗膜の一部を除去する。これにより、ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができる。
【0010】
本発明の他の態様によると、前記レベリング部材が、厚さ0.3mm以下の高分子材料の平板であることが好ましい。平板の厚みが厚いと剛性がありすぎて塗布で形成した塗膜をすべて掻き取ってしまい、さらには支持体をキズつけてしまうおそれがある。したがって、平板の厚みは0.3mm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の他の態様によると、前記レベリング部材が、前記レベリング部材が、線径0.3mm以下の刷毛であることが好ましい。刷毛の線径が太いと剛性がありすぎて塗布で形成した塗膜をすべて掻き取ってしまい、さらには支持体をキズつけてしまうおそれがある。したがって、刷毛の線径は0.3mm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の他の態様によると、前記レベリング部材を前記支持体の進行方向と直交する方向に対し所定角度以上傾け、前記レベリング部材の面を前記支持体の進行方向に対し内側を向くよう配置することが好ましい。前記レベリング部材が前記支持体の進行方向と直交する方向に対し5度以上傾けられることが好ましい。
【0013】
レベリング部材の面を支持体の進行方向に対し内側を向くよう配置しているので、レベリング部材で掻き取った厚塗り部の余剰液が支持体の中央側に案内される。つまり、厚塗り部の余剰液が支持体の外側に流れ出さない。余剰液が支持体の裏面に回りこむのを防止できる。余剰液が支持体の裏面に回りこまないので、支持体の裏面を支持するロールが汚染されるのを防止できる。
【0014】
本発明の他の態様によると、前記塗布装置が、グラビア塗布装置、及びバー塗布装置の少なくとも一つであることが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様によると、前記グラビア塗布装置のグラビアロール、又は前記バー塗布装置のバーは、前記グラビアロール又は前記バーの中心軸に直交する方向に対して15度以上60度以下の傾斜した螺旋溝を有することが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様によると、後計量塗布方式の塗布装置により、連続走行する支持体に塗布液を供給し塗膜を形成する工程と、前記塗布装置の下流に配置されたレベリング部材で、前記支持体の幅方向端部の前記塗膜の厚塗り部を一定厚さにするレベリングする工程と、前記レベリング部材の下流に配置された吸引装置により、前記支持体の幅方向端部の塗膜の一部を除去する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布システム、及び塗布方法によれば、ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態の塗布システムを含む全体構成を示す概念図。
【図2】本実施の形態の構成の位置関係を示す概念図。
【図3】吸引ノズルの構造を示す断面図。
【図4】レベリング部材の作用を説明する概略図。
【図5】本実施の形態の塗布システムに使用されるグラビア塗布装置の概念図。
【図6】本実施の形態の塗布システムに使用されるバー塗布装置の概念図。
【図7】バーの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0020】
図1は、塗布システムの概略構成図である。塗布システム10は、ウエブ12に塗布液14を供給し塗膜を形成する塗布装置16と、塗布装置16の下流に配置されたレベリング部材18と、レベリング部材18の下流に配置された吸引ノズル20を備える。吸引ノズル20の対向位置にパスローラ22が配置される。ウエブ12はガイドローラ24により塗布装置16から吸引ノズル20に案内される。
【0021】
吸引ノズル20には吸引管26が接続されている。吸引管26は排気配管28を介して排気タンク30に接続される。排気タンク30には真空ポンプ32が接続される。
【0022】
吸引ノズル20には洗浄液の噴出管34が接続される。噴出管34は洗浄水の供給配管36を介して洗浄水の供給タンク38に接続される。
【0023】
図2は、塗布装置、レベリング部材、及び吸引ノズルの位置関係を示す図である。図2に示すように、ウエブ12の進行方向の上流側に塗布装置16が配置される。ウエブ12が塗布装置16を通過する際に、塗布液がウエブ12に供給され、ウエブ12の幅方向全域に塗膜40が形成される。ウエブ12の幅方向両端部には、厚さがウエブ12の中央部より厚い塗膜40の厚塗り部40Aが同時に形成される。
【0024】
レベリング部材18が、塗布装置16の下流であって厚塗り部40Aが形成される位置に配置される。レベリング部材18は、ウエブ12の進行方向と直交する方向との成す角度(α)が5度以上となるよう傾けられる。これにより、レベリング部材18の面がウエブ12の進行方向に対し内側を向くよう配置される。ここで内側を向くとは、レベリング部材18を上か見たときに、ウエブ12の進行方向を基準として、レベリング部材18の内側端18Aが、レベリング部材18の外側端18Bより下流側に位置する状態を意味する。レベリング部材18の下流位置であって、厚塗り部40Aが形成される位置に吸引ノズル20が配置される。
【0025】
図3は、吸引ノズル20の構造を示した断面図である。吸引ノズル20は二重管構造よりなる。二重管の中心軸に噴出管34が設けられる。噴出管34の先端部には複数の噴出口34Aが設けられる。噴出口34Aは、吸引ノズル20の内壁に対向する位置に設けられる。噴出口34Aから供給される洗浄液が、塗膜40の厚塗り部40Aに直接供給されないようにするためである。厚塗り部40Aの一部は、吸引ノズル20の先端口21から、吸引ノズル20の内壁と噴出管34の外壁の間を通って、吸引管26から排出される。
【0026】
図4は、レベリング部材18より厚塗り部40Aがレベリングされる状態を示す概念図である。塗布装置を通過したウエブ12の幅方向両端部に不均一の厚さの厚塗り部40Aが形成される。厚塗り部40Aがレベリング部材18によりレベリングされ、一定厚さの厚塗り部40Aとなる。レベリング部材18として、厚さ0.3mm以下の高分子材料の平板を使用することが好ましい。平板の厚みが厚いと剛性がありすぎて塗布で形成した塗膜をすべて掻き取ってしまい、さらには支持体をキズつけてしまうおそれがある。したがって、平板の厚みは0.3mm以下であることが好ましい。
【0027】
レベリング部材18の材料としては、少なくとも先端部が可撓性材料であることが必要である。具体的には、ゴム、テフロン(登録商標)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の材質のように溶剤で変性しにくく、且つある程度の湾曲状態に可撓する性質を有するものが好ましい。ゴムを使用した場合には、ウエブ12との接触に対する滑り性、耐磨耗性の向上を図るため、ウレタンコーティング、テフロン(登録商標)コーティング、シリコンコーティング等のコーティングを行うことが好ましい。また、ゴム材料へ、テフロン(登録商標)、モリブデン、オイル等を混練することで、滑り性、耐磨耗性の向上を図ったものを使用することもできる。
【0028】
また、レベリング部材18として、線径0.3mm以下の刷毛を使用することが好ましい。刷毛の線径が太いと剛性がありすぎて塗布で形成した塗膜をすべて掻き取ってしまい、さらには支持体をキズつけてしまうおそれがある。したがって、刷毛の線径は0.3mm以下であることが好ましい。刷毛の材料として、ポリエステル、ナイロン等耐溶剤性の高いもの使用することができる。
【0029】
次に、図1〜図4を参照して、本実施の形態の塗布システム10の動作について説明する。第1に、ウエブ12が送出し機(不図示)により連続的に塗布装置16に搬送される。塗布装置16により塗布液14がウエブ12に供給され、塗膜40が形成される。このときウエブ12の幅方向両端部に厚塗り部40Aが同時に形成される。この厚塗り部40Aは一定の厚さではなく、不均一(周期的)の厚さを有する。
【0030】
ウエブ12はガイドローラ24に案内されレベリング部材18に位置まで搬送される。レベリング部材18により厚塗り部40Aの一部が掻きとられ、厚塗り部40Aは一定の厚さとなる。
【0031】
次いで、ウエブ12は吸引ノズル20まで搬送される。排気タンク30が真空ポンプ32に減圧され、厚塗り部40Aの一部が、吸引ノズル20の先端口21から吸引される。厚塗り部40Aの一部を構成する塗布組成物が、吸引管26、排気配管28を介して排気タンク30に貯えられる。
【0032】
吸引ノズル20は中心軸に洗浄液を噴出する噴出管34を備えている。厚塗り部40Aの一部を吸引するとき、噴出管34の噴出口34Aから洗浄液が噴出される。これにより、吸引ノズル20内が洗浄され、吸引ノズル20内が閉塞するのを防止できる。吸引ノズル20内の洗浄に使用された洗浄液は、厚塗り部40Aの一部と共に吸引管26、排気配管28を介して排気タンク30に貯えられる。
【0033】
本実施の形態の塗布システムによれば、ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができる。
【0034】
本実施の形態の塗布システムを、写真フィルムなどの感光材料の製造、録音テープなどの磁気記録材料の製造、およびカラー鉄板などの塗装金属薄板の製造などにも使用できる。したがって、塗布液を塗布できるウエブとしては、写真感光材料、磁気記録媒体、光学補償フィルム、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の光学フィルム用のウエブ、ウエブの目立てした側の面に感光性または感熱性の製版面を形成した平版印刷原版ウエブ、写真フィルム用基材、印画紙用塗工用バーライタ紙、録音テープ用基材、ビデオテープ用基材、フロッピー(登録商標)ディスク用基材など、金属、プラスチック、または紙などからなり、連続した帯状で、可撓性を有する基材などが挙げられる。
【0035】
また、塗布液としては、ウエブに塗布し、乾燥させて皮膜を形成するのに使用される溶液が挙げられる。具体的には、感光層用塗布液及び感熱層用塗布液のほか、ウエブの表面に中間層を形成して製版層の接着を改善する中間層用塗布液、平版印刷原版ウエブの製版面を酸化から保護する陽極酸化皮膜を形成するのに使用されるポリビニルアルコール水溶液、写真フィルムにおける感光層を形成するのに使用される写真フィルム用感光剤コロイド液、印画紙の感光層を形成するのに使用される印画紙用感光剤コロイド液、録音テープ、ビデオテープ、フロッピーディスクの磁性層を形成するのに使用される磁性層形成液、および金属の塗装に使用される各種塗料などが挙げられる。
【0036】
次に、本実施の形態の塗布システムに使用される塗布装置について説明する。図5はグラビア塗布装置の概略構成図であり、図6はバー塗布装置の概略構成図である。
【0037】
以下、本発明のグラビア塗布装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0038】
グラビア塗布装置は、主として、塗布液が溜まった塗布液貯留槽にロール下部が浸ったグラビアロールと、グラビアロールによって塗布液が塗布されるように、支持体の走行経路を形成するパスローラと、グラビアロールのロール面に先端を接触させて該ロール面に過剰に付着させた塗布液を掻き落とすことにより支持体への塗布量を計量するブレードと、ブレードを保持するブレードホルダーとによって構成される。
【0039】
グラビアロールは、そのロール面に、塗布液貯留槽内の塗布液を付着保持する凸凹の彫刻加工(例えば斜線版)が施されており、グラビアロールが回転することにより塗布液貯留槽内の塗布液をグラビアロールを介して連続走行する支持体に転写塗布する。グラビアロールの直径は30mm〜300mmの範囲のもの使用することが好ましく、50mm以下のものをマイクログラビアロールと言う。また、グラビアロールの幅は200mm〜2000mmのものを好ましく使用することができる。
【0040】
ブレードは、ブレードホルダーを介してブレード支持装置に支持され、ブレード幅はグラビアロール幅と略同等に形成される。ブレードの材質は磨耗の観点から金属製(SK材)を好ましく使用することができる。また、ブレードの接触角度θは、一般的に30度±10度が好適である。ここで、接触角度θとは水平線に対するブレードの上向き角度である。
【0041】
尚、本発明の実施の形態では、グラビア塗布装置として、バックアップローラを使用しないキスリバース方式の例で説明したが、に示すようにバックアップローラを備えた方式のグラビア塗布装置でもよい。また、本発明の実施の形態では、グラビアロールの回転方向と支持体の走行方向が逆向きなリバース方式で説明したが、グラビアロールの回転方向と支持体の走行方向が同じ場合にも本発明を適用できる。
【0042】
図5に示すようにグラビア塗布装置100は、横断面形状が略円弧状の凹部111が形成されたマニホールドブロック113と、凹部111内に連続的に回動可能に配設されたグラビアロール115を有する。凹部111とグラビアロール115との間には隙間が形成され、隙間が液留部119を構成する。液留部119に連通するように給液路117が形成される。ポンプ(不図示)により塗布液14が、外部より給液路117を経て液留部119に過剰に連続的に供給される。液留部119が塗布液14によって満たされると、グラビアロール115の下方外周面が塗布液14中に浸漬される。
【0043】
グラビアロール115は一定の周速で矢印A方向に回転する。ウエブ12矢印B方向に連続走行する。グラビアロール115の上方外周面とウエブ12下方表面とが接触して
塗布液14がグラビアロール115の上方外周面からウエブ12の下方表面に転移される。
【0044】
マニホールドブロック113には、液留部119の上流側にダムブロック125が、下流側にダムブロック127が取り付けられる。ダムブロック125とダムブロック127により液留部119内の液レベルをグラビアロール115の軸芯よりも上方に上昇させている。グラビアロール115の上方外周面の長手方向にわたり、先端部が接触可能なドクターブレード223が下流側に設けられる。ドクターブレード223により、余剰の塗布液がグラビアロール115から掻き落とされる。
【0045】
過剰に供給された塗布液14をグラビアロール115でウエブ12に転移するため、ウエブの端部では厚塗り部の厚さが不均一となりやすい。特に、塗布液をウエブの幅方向に広げるために螺旋溝が形成されたグラビアロール115を使用する場合、螺旋溝を満たす塗布液がグラビアロール115の回転に伴いウエブの端部に移動する。螺旋溝がウエブの端部に来るか、螺旋溝間の平滑部がウエブの端部に来るかで、厚塗り部の厚さが不均一(周期的)となる。このような塗布装置を使用する場合、レベリング部材と吸引ノズルの組み合わせは、ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができるので有効である。
【0046】
以下、バー塗布装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0047】
塗布装置本体は、塗工用バー、塗工用バーを支持するバー支持部材と堰板とで主として構成される塗布液吐出部、及び基台で構成される。尚、支持体はパスローラに巻きかけられている。
【0048】
塗工用バーは、円柱状に形成され、バー支持部材によって回動自在に支持される。そして、走行中の支持体の下面に接触しながら、軸線の周りに回転する。塗工用バーの回転方向は、ウエブの走行方向に対して反対の方向が好ましく、塗工用バーの周速度は支持体の走行速度の1%以内になるように設定される。尚、塗工用バーの回転方向は、走行方向と同方向であってもよい。支持体は、張力を加えた状態で塗工用バーに接触し、所定のラップ角で接触するようになっている。バー支持部材は複数のブロックを組み合わせて形成されており、上面に円弧状の溝が形成されている。この溝に塗工用バーが係合され、回動可能に支持される。
【0049】
図6に示すバー塗布装置200は、バー214を有する塗布ヘッド216を有する。塗布ヘッド216は、略円柱状のバー214と、このバー214を支持する支持部材218とから成り、支持部材218の上部には円弧状の凹部が形成され、この凹部にバー214が支持される。
【0050】
支持部材218に対して、ウエブ12の走行方向の上流側には堰220が設けられ、下流側には堰222が設けられる。支持部材218と堰220の間にはスリット224が形成され、支持部材218と堰222との間にはスリット226が設けられる。これらのスリット224、226には不図示のタンクが接続され、このタンクからスリット224、226に塗布液がポンプにより過剰に送液される。この塗布液14によってバー214の上流側(一次側)と下流側(二次側)に液溜まり(ビード)が形成され、バー214によって計量され、ウエブ12に塗布液が塗布される。
【0051】
螺旋溝232は、一定の間隔をあけて形成されており、螺旋溝232、232同士の間には、外周面がそのまま平滑部234として残されている。
【0052】
堰220の上流側には液貯留部228が設けられ、堰220の下流側には液貯留部230が設けられる。過剰な塗布液は、これらの液貯留部228、230に回収される。
図7は、バー214を示す正面図である。図7に示すようにバー214の外周面には複数の螺旋溝232が形成されている。この螺旋溝232は、螺旋状に連続して形成されており、さらにバー214の中心軸Lに直交する面に対して角度βで傾けて形成される。角度βは、15度以上60度以下が好ましく、20度以上50度以下がより好ましい。角度βを上述の範囲とすることにより、塗布工程におけるスジの発生を抑制することができるからである
上述の構成を有するバー塗布装置は、ポンプにより過剰の塗布液を送液し、後で塗布量を計量する塗布方式であるため、ウエブの幅方向両端部に不均一の厚さの厚塗り部が発生しやすい。
【0053】
このような塗布装置を使用する場合、レベリング部材と吸引ノズルの組み合わせは、ウエブの両端に発生する厚塗り部を確実に除去することができるので有効である。
【0054】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0055】
支持体上に下記の赤外線感光性平版印刷版原版用塗布液をバーコーターで塗布した。
(塗布液)
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体(36/34/30質量%:重量平均分子量50000)
1.9g
・m/pクレゾールノボラック(m/p=6/4、重量平均分子量4500)
0.3g
・赤外線吸収シアニン染料 0.13g
・エチルバイオレット 0.078g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF780、大日本インキ化学工業(株)製メチルエチルケトン30%) 0.2g
・メチルエチルケトン 16.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
・γ−ブチロラクトン 8.0g
表1は、塗布液の粘度、塗布量、レベリング部材の条件、及び評価をまとめたものである。
【0056】
評価について、(1)目視でエッジ部のスジが確認できないこと、(2)グレタグ色濃度計でセンター部分に対してエッジ部の感度差が±5%以下であること、(3)下層が露出していないことの条件をすべて満たした場合○とする。それ以外を×とする。
【0057】
【表1】

吸引条件としては、吸引ノズル12の吸引圧力が10〜70kPaの範囲、洗浄液の流量が100〜500cc/分の範囲が好ましい。
【0058】
また、吸引ノズルの吸引口と厚塗り部分との距離は0.2〜2mmの範囲が好ましい。また、水平方向における吸引口の位置は、ウエブの端部から吸引口の中心位置までの水平方向距離が、ウエブ端部の外側への距離が2mm、ウエブ端部から内側への距離が5mmの範囲内に入るようにすることが好ましい。
【0059】
表1の結果から、この塗布システムによれば、ウエブ端部の厚塗り部を確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…塗布システム、12…ウエブ、14…塗布液、16…塗布装置、18…レベリング部材、20…吸引ノズル、40…塗膜、40A…厚塗り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行する支持体に塗布液を供給し塗膜を形成する塗布システムであって、
過剰の塗布液を送液し、その後塗布量を計量する塗布方式の塗布装置と、
前記塗布装置の下流に配置され、前記支持体の幅方向端部の塗膜の厚塗り部を一定厚さにするレベリング部材と、
前記レベリング部材の下流に配置され、前記支持体の幅方向端部の塗膜の一部を除去する吸引装置と、
を有する塗布システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗布システムであって、前記レベリング部材が、厚さ0.3mm以下の高分子材料の平板である塗布システム。
【請求項3】
請求項1記載の塗布システムであって、前記レベリング部材が、線径0.3mm以下の刷毛である塗布システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか記載の塗布システムにおいて、前記レベリング部材を前記支持体の進行方向と直交する方向に対し所定角度以上傾け、前記レベリング部材の面を前記支持体の進行方向に対し内側を向くよう配置する塗布システム。
【請求項5】
請求項4記載の塗布システムにおいて、前記レベリング部材が前記支持体の進行方向と直交する方向に対し5度以上傾けられる塗布システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか記載の塗布システムであって、前記塗布装置が、グラビア塗布装置、及びバー塗布装置の少なくとも一つである塗布システム。
【請求項7】
請求項6記載の塗布システムであって、前記グラビア塗布装置のグラビアロール、又は前記バー塗布装置のバーは、前記グラビアロール又は前記バーの中心軸に直交する方向に対して15度以上60度以下の傾斜した螺旋溝を有する塗布システム。
【請求項8】
塗布方法であって、
後計量塗布方式の塗布装置により、連続走行する支持体に塗布液を供給し塗膜を形成する工程と、
前記塗布装置の下流に配置されたレベリング部材で、前記支持体の幅方向端部の前記塗膜の厚塗り部を一定厚さにするレベリングする工程と、
前記レベリング部材の下流に配置された吸引装置により、前記支持体の幅方向端部の塗膜の一部を除去する工程と、
を有する塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−177688(P2011−177688A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46806(P2010−46806)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】