塗布剤の塗布方法並びに繊維ウェブ製造の方法および機械
本発明は、流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置(12、13、16)を用いて、125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブ(3)を製造する方法に関する。本方法は、固形分濃度、特にでんぷん固形分の濃度が15%より多い、特に25%より多い、さらに特定して30%より多い液体の塗布剤を塗布するという特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様によれば、流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置を用いて、125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2未満の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体からペースト状までの塗布剤、好ましくはでんぷんを、好ましくは紙または板紙、特に波形板紙の材料ウェブの片面もしくは両面に塗布する方法および装置を説明している。この場合、材料ウェブは最初に片面もしくは両面に塗布され、その後に初めてプレスニップを通過する。この方法は、特にプレスニップの後においても材料ウェブをほぼ完全に支持するエンドレスベルトが、2つの支持ロールの間にわたってガイドされる装置によって実行される。
【0003】
特許文献2は、移動する材料ウェブにペースト状の塗布剤を塗布する方法および装置を開示している。この方法においては、最初に、抄紙機のツインワイヤ帯において、材料ウェブが形成されると共に、液体またはペースト状の塗布剤が塗布装置によって材料ウェブの少なくとも片面に塗布されるが、この場合、プレスセクションのプレス要素の後に、液体またはペースト状の塗布剤を材料ウェブに塗布するさらに別の塗布装置が設けられる。
【0004】
特許文献3は、プレスセクションにおいて、紙または板紙のウェブを処理する方法および装置を開示している。ウェブがフェルトによってサクションロール上に導かれる時に、第1塗布装置が塗布剤をウェブ上にスプレーする。第2の塗布装置が塗布剤を移送ベルトの表面上にスプレーし、その表面から塗布剤がウェブ上に転写される。両塗布装置は第1プレスニップの前に配置される。
【0005】
しかし、特に高速で単位面積当たりの質量が低い場合に、この解決策は欠点を有している。この欠点は、単位面積当たりの質量が低い場合、(着色)でんぷんが紙のウェブを突き抜け、その結果フェルトおよび圧搾水に達することがあり得るという点である。
【0006】
さらに、でんぷんの固形分濃度が今日では一般的な6〜15%という低い濃度である場合は、プレスセクション後に十分な乾分含有量が達成されない。でんぷんとでんぷんが溶解している流体とが塗着される紙のウェブは、引き続く接触乾燥用の装置、例えばシリンダまたはドライヤーカンバス上に付着または固着する傾向がある。これは、特に、非常に多量のでんぷんを塗着しなければならない高い坪量の場合に当てはまる。さらに、接触媒体すなわちベルトまたはロールのコンディショニングが必要である。
【0007】
紙のウェブの坪量が高くしかも高速の場合は、非常に多量のでんぷんを片面に塗布するのでなければ、でんぷんが繊維ウェブを完全に浸透することは不可能である。フォーマー領域および/またはプレスセクションにおける二面塗布は、塗布の少なくとも幾分かが脱水操作によって再度洗い落とされるので、効率的でない。プレスセクションが二重フェルト方式の場合には、これが両面に生起する。1つのフェルトと1つの移送ベルトとを使用する場合は、これが片面に生起する。
【0008】
総括すると、塗布剤の塗布において、塗布の量、特に塗布し得るでんぷんの量が制限される、従ってそれによって達成し得る強度の増加も制限されるという問題が存在する。繊維ウェブ製造機械の循環水において塗布剤濃度が増加すると、製造過程に著しい減損がもたらされる。これは、例えば、スライム形成、堆積発生、COD負荷(COD値は排水の有機性負荷に対する総括的なパラメータである)および悪臭障害によって惹起される。
【0009】
高速でしかも坪量が低い場合は、塗布ユニットの領域またはその下流側において、多数の断裂が発生する。これは、顕著な再湿潤化とそれによる紙強度の低下とによって生じるものである。さらに、大幅な乾燥エネルギーのコストが最終ドライヤセクションに必要となる。
【特許文献1】独国特許出願公開第100 33 213 A1号明細書
【特許文献2】国際公開第99/22067号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/55423号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、繊維ウェブの製造方法を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、冒頭に述べた種類の方法において、この目的は、使用塗布剤を、固形分濃度、特にでんぷん固形分の濃度が15%より多い、特に25%より多い、さらに特定して30%より多い液体とすることによって達成される。
【0012】
上記の方法を、繊維ウェブがフェルトおよび移送ベルトによって前方に搬送される繊維ウェブ製造機械のプレスセクションに用いると、この目的は、少なくとも1つのフェルトまたは1つの移送ベルトを、特有の循環系によって供給および排出される液体でコンディショニングすることによっても達成される。
【0013】
(着色)でんぷんを高濃度に含む水は、白濁水に供給するのではなく、適切な位置においてでんぷん調製工程に再供給する。この方法によって、でんぷんの損失が最小化される。乾燥は無接触で行われる。後続の接触乾燥ユニットへの堆積形成を避けるために、紙または板紙のウェブの表面のみを乾燥することが好ましい。このため、例えば熱風乾燥が用いられる。
【0014】
従って、白濁水の循環系におけるでんぷんの濃縮が避けられる。その結果、微生物の増殖、スライム形成および抄紙機の装入収支における変化をも避けることができる。これらは、紙シートの形成、保持、脱水に負の影響を及ぼし、断裂数の増大および所要薬品量の増大という結果を招来する可能性があるものである。
【0015】
本発明によれば、圧搾水は、低負荷水および高負荷水に分離される。低負荷水は、先行技術に従って使用することができる。すなわち、例えば、白濁水の循環系に供給することができる。
【0016】
一方、でんぷん負荷水は、好ましくは、この水に含まれるでんぷんが紙の強度を増大する作用をもたらすように用いられるか、あるいは、上記の問題点を可能な限り避け得るような水の循環系の箇所において使用される。
【0017】
白濁水は、保持とプロセスの安定性を実現するために、例えば、オンラインのゼータ電位測定器によって監視することができる。
【0018】
でんぷん負荷された圧搾水の量は、でんぷんを、プレスセクションの最終端部、好ましくは最終ニップの前においてのみ塗布することによって低減することができる。でんぷん負荷水は、でんぷん調製に使用でき得る。でんぷん含有水の溢流水は白濁水の循環系に供給することができる。
【0019】
でんぷん含有水のでんぷん濃度は、その水を循環系に再供給する前に低減することができる。例えば、でんぷんは、例えばアミラーゼによって、温度上昇と組み合わせて酵素分解することができる。続いて、アミラーゼを、110℃を超える温度、好ましくは120℃を超える温度で再分解することができる。でんぷんは、また、限外ろ過またはナノろ過、あるいは逆浸透法によって分離除去することもできる。
【0020】
圧搾水の可能な用途は、でんぷんの調製、原料の調製、機械の導入部装置、ヘッドボックス、および排出部にある。
【0021】
スライムの形成が少ないこと、および断裂数が僅かであることの結果として、繊維ウェブの走行性が改善される。本発明によって、汚染度が軽減され、抄紙機における化学薬品の効率が向上する。でんぷん含有圧搾水は、強度増大するために適切に使用される。
【0022】
本発明によって、プロセスの構成要素と水との汚染が避けられること、並びに、塗布剤溶液特にでんぷん溶液による液体塗布量が低減する結果として繊維ウェブの初期湿状態強度の低下が少ないことから、プロセスの安定性が最適化され、これによって、塗布剤の塗布効率が最適化される。
【0023】
本発明による方法の有利な発展形態が、従属請求項3〜10、明細書および図面から明らかになる。
【0024】
特に、液体を、塗布剤特にでんぷん含有液体製造のための調製工程に還流する方法が有利であると判明している。
【0025】
塗布剤の塗布量が、巻取機のリールに巻き取られる完成紙または完成板紙の単位面積当たり質量の2〜8%であると有利である。
【0026】
良好な浸透には、でんぷん溶液の粘度が低いことが必要である。この粘度は、でんぷんの温度およびでんぷんの種類によって定まる。従って、別の有利な方法は、塗布剤の温度を、装置から出た後に、塗布剤が塗布される移送ベルトまたはフェルトまたはロールを直接的または間接的に加熱することによって高めることにある。この方法で、搬送媒体の温度、すなわちロールまたはベルトの温度をでんぷん溶液の温度に一致させることができる。
【0027】
塗布剤は、プレスセクションのプレスニップの直前、特に最終プレスニップの直前で、繊維ウェブに直接的または間接的に塗布するのが有利である。塗布剤、特にでんぷんを最終プレスニップの前で導入すると、でんぷん負荷された圧搾水の量を大幅に減少させることができる。
【0028】
塗布の良好な品質は、使用する塗布剤が、天然または未加熱処理のでんぷん、あるいは、分解されたでんぷん、特に酸化分解または酵素分解されたでんぷん、あるいは、カチオン性のでんぷんである場合に実現することができる。
【0029】
塗布剤、特にでんぷんの濃度は、15%を超えるように選定することができる。
【0030】
特に高速においては、塗布剤を、機械的プレス操作の後で、繊維ウェブの両面に塗布する方法が有利である。この場合、この繊維ウェブは80g/m2を超える坪量を有する。
【0031】
この場合、塗布剤の最初の塗布をプレスセクションのプレスニップにおいて実行し、繊維ウェブの反対面に対する2回目の塗布を乾燥セクションにおいて実行すると、特に有利である。
【0032】
坪量が80g/m2以上、特に100g/m2を超える場合、さらに特定して125g/m2を超える場合は、本発明は、でんぷんの両面への塗布を、時間をずらして実行する方式を提案する。この場合、2回目の塗布は、ウェブの乾燥度が、45%、特に50%を超えてから初めて実行する。すなわち機械的なプレス操作の後に行う。この結果、塗布されたでんぷんはもはや洗い落とされることはない。
【0033】
本発明によれば、最初の塗布を行う位置は、ウェブの脱水が、塗布の方向と反対の方向ではなく、塗布の方向に行われるように、例えば乾燥セクションの始点、または一般的に機械的なプレス操作の後に配置される。このことは、例えば、ウェブの片面に塗布が行われる一方、その反対側の面においては、水が、その塗布点においてまたはその直後に、例えばプレスニップにおいて、ウェブから押し出されるかあるいは吸い出されることを意味している。
【0034】
この配置は、特に、高速、例えば800m/minを超える、あるいは1000m/minを超える高速で、しかも坪量が高い場合に有利である。
【0035】
この第1態様によれば、本発明は、また、特に上記の方法の1つを実行するための機械にも関する。
【0036】
本発明によれば、この機械は、プレスセクションが、フェルトまたは移送ベルトを導く複数のガイドロールを備えていること、および、フェルトをコンディショニングする少なくとも1つの装置が第1の外側ガイドロールの前に配置されることを特徴とする。この方式で、より良好な走行性が実現される。
【0037】
有利な発展形態が従属請求項12〜15から明らかになる。
【0038】
フェルトをコンディショニングする別の装置が、フェルトまたは移送ベルトの循環方向に、第1ガイドロールに続くガイドロールに対向して設置されると有利である。
【0039】
この場合、ロールの外周表面を清浄化するドクターを、プレスセクションのロールに対向して、特に第1ガイドロールおよび/またはさらに別のガイドロールに対向して設置する方策を有利に想定することができる。
【0040】
同様に、ロールの外周表面に、特に調整水、または化学的助剤特に界面活性剤をスプレーする装置、あるいは、外周表面を清浄化するブラシを、少なくとも1つのロールに配置すると有利である。
【0041】
同様に、装置および/またはブラシによって排除された塗布剤を集める装置、および、それを塗布剤調製システムに戻す装置が設けられると有利であることが分かる。本発明によれば、でんぷんの突き抜けが防止され、水の吸収が少ない結果として、繊維ウェブの強度の低下の低減が実現される。浸透が良好であるために、塗布剤が高い効率を有する。繊維ウェブの走行性が改善される。塗布剤は、直接、すなわち移送ベルトなしでも塗布することができる。
【0042】
本発明は、第2の態様によれば、紙、板紙または他の繊維ウェブ製造用の機械であって、第1および第2のプレスロールと連携して2つのプレスニップを形成する中心ロールを備えたプレスセクションと、そのプレスセクションに配置される、塗布剤塗布用特にでんぷんもしくはサイズ剤塗布用の少なくとも1つの装置とを有する機械にも関する。この場合、繊維ウェブはベルトと共にプレスニップを通して導くことができる。
【0043】
特許文献1による方法および装置においては、1つの実施例によれば、でんぷんが塗布ロールに塗布される。この解決策の欠点は、塗布ユニットの前で閉じられたウェブのガイドが行われないという点である。自由な引き込みの結果として、また、プレスセクションにおける繊維ウェブの強度がまだ低いために、製造工程における断裂発生の頻度が、特に、例えば125g/m2未満の小さい単位面積当たり質量の場合に増大する。さらに、塗布装置の後に配置される接触乾燥用のユニット上に、塗布された材料が堆積する危険性がある。
【0044】
特許文献3では、2つの実施形態(図1および図2)において、プレスロールと共に2つのプレスニップを形成する中心ロールを備えたプレスセクションが説明されている。
【0045】
特許文献2に開示される方法と関連する装置とについては、既に前記に言及した。
【0046】
先行技術から知られるプレスセクションにおいては、紙のウェブの強度が低いために移送ベルトによる支持が必要である。プレスニップにおける脱水は移送ベルトから離れる方向に生起するので、でんぷんは移送ベルトの面に塗布される。これによって、でんぷんが、液体媒体の移動により繊維ウェブの中心の方向に移動することが確実になる。でんぷんを移送ベルトと反対側の面に付与することは実際的でない。そうでなければ、塗布剤が、繊維ウェブと接触することになる最近傍のフェルトの中に押し込まれるからである。
【0047】
でんぷんが塗布された紙のウェブの面は移送ベルトの上に載っているので、この面は、非接触型のドライヤを使用しても乾燥することはできない。その結果、プレスセクションに続く乾燥セクションの第1乾燥シリンダ上に厄介な堆積が生成することが予期される。
【0048】
プレス操作後においても、プレスセクション通過後に、過度に低い乾燥度がよく出現する。この結果、高価な乾燥用熱エネルギーの必要性が増大し、乾燥セクションを長くしなければならない。低い初期湿潤状態強度によって生じる繊維ウェブの走行性に関する問題も予期される。
【0049】
本発明の目的は、第2の態様によれば、液体の塗布剤特にでんぷんもしくはサイズ剤を塗布する可能性を有するプレスセクションを備え、同時に小型の構造を有する機械を提供することにある。
【0050】
本発明のこの第2の態様によれば、この目的は、紙、板紙または他の繊維ウェブ製造用の機械であって、繊維ウェブを通過させることができる少なくとも1つのプレスニップを備えたプレスセクションと、そのプレスセクションにおいて、繊維ウェブの片面に液体の塗布剤を塗布し得る少なくとも1つの塗布装置とを有する機械によって実現される。この場合、塗布剤は、プレスニップの直前および/またはプレスニップにおいて、塗布装置によって繊維ウェブに塗布することができる。
【0051】
本発明のこの第2の態様によれば、塗布剤塗布後の繊維ウェブの特有の乾燥法も可能になる。このプレスセクション通過後の繊維ウェブの乾燥度は先行技術による場合よりも高い。繊維ウェブの高い乾燥度の結果として、熱的な乾燥エネルギーを低減することができる。その結果、乾燥セクションの長さがより短くなり、既存の抄紙機の生産性能が向上する。さらに、この方式においては、後続のでんぷん塗布ユニットを省略することができる。あるいは、より少量のでんぷんを塗布することで十分である。これによって、塗布ユニット後の乾燥度の低下が小さくなり、繊維ウェブの走行性が改善される。
【0052】
繊維ウェブのプレス操作と塗布剤の塗布とを1箇所にまとめた結果として、先行技術に比べて、プレスセクションにおける機械の設計の小型化が実現され、これによって高い操作上の信頼性が確保される。
【0053】
本発明の有利な発展形態が、従属請求項17〜49、明細書および図面に含まれる。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、プレスセクションを、プレスニップにおいて、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面の反対側に位置する繊維ウェブの面においてのみ繊維ウェブを脱水し得るように構成することが想定される。
【0055】
その結果、塗布の方向または塗布剤が繊維ウェブの中に浸透する方向は、繊維ウェブから脱水する方向に合致する。
【0056】
この方法によって、繊維ウェブに塗布された液体塗布剤の繊維ウェブの中への浸透が、顕著に改善される。これは、塗布面と反対側の面において繊維ウェブを脱水する結果として、導入された塗布剤が繊維ウェブから追い出されなくて済むからである。この導入された塗布剤の追い出しは、繊維ウェブを塗布面において脱水する場合には生じ得る現象である。むしろこれとは逆に、塗布剤の浸透が「吸引効果」によって強化され、その結果、塗布剤が、脱水中に繊維ウェブの中に吸引される。
【0057】
本発明の上記の実施形態を実行する1つの実際的な形態においては、繊維ウェブを、その繊維ウェブを脱水することができる面の側でプレスフェルトに接触させて、プレスニップを通して導く方策が採られる。この場合、プレスフェルトは、脱水中に、繊維ウェブから水を導出する機能を果たす。さらに、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面は、プレスニップにおいて、繊維ウェブから水を吸い取るには不適な表面と接触している。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態によれば、プレスセクションが、繊維ウェブの搬送方向にプレスニップに続くように配置される1つのプレスニップを備え、かつ、プレスセクションにおいて、別の液体塗布剤を、第1の塗布面と反対側に位置する繊維ウェブの面に塗布し得る別の塗布装置を設ける方式が想定される。従って、液体塗布剤を、繊維ウェブの両面に相前後して塗布することが可能であるが、それぞれの場合に、少なくとも、塗布剤の塗布がその直前に実行されるプレスニップまたはそれが実行されるプレスニップにおける脱水は、塗布の方向または塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向が繊維ウェブからの脱水方向に合致するように行われなければならない。
【0059】
さらに、プレスセクションが、繊維ウェブの搬送方向にプレスニップの後に別の複数のプレスニップを備え、かつ、そのプレスセクションを、この別の複数のプレスニップの少なくともいくつか、好ましくはすべてにおいて、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面と反対側に位置する繊維ウェブの面においてのみ繊維ウェブを脱水し得るように構成する方式を想定することができる。この方式で、塗布された塗布剤の繊維ウェブの中へのさらなる浸透が、塗布のプレスニップに続くプレスニップによってさらに支持される。
【0060】
この実際的な実施形態に類似する方式として、前記の実施形態の1つの実際的な形態において、繊維ウェブを、その繊維ウェブの脱水可能面でプレスフェルトと接触させて別のプレスニップの1つを通して導くことを可能にする方式が採られる。
【0061】
脱水性能と、液体の塗布剤の繊維ウェブの中への浸透とを増進するために、本発明の別の好ましい実施形態は、プレスニップをロールおよび対向ロールによって形成することを想定している。この場合、対向ロールは、負圧吸引可能であると共に、繊維ウェブの脱水可能面と接触させることができる。
【0062】
繊維ウェブへの液体塗布剤の塗布法としては種々の可能な方法が考えられる。本発明の好ましい実施形態によれば、塗布装置が、塗布剤を繊維ウェブ上に直接スプレーし得るスプレー装置を含むことが想定されている。この実施形態においては、塗布剤は、一般的にプレスニップの前で繊維ウェブに塗布される。しかし、塗布剤を、プレスニップにおいて繊維ウェブに塗布することも可能であろう。
【0063】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、塗布装置が、対向ロールと共にプレスニップを形成するロールを備えており、そのプレスニップにおいて塗布剤がそのロールから繊維ウェブに転写される方式が想定されている。この実施形態においては、塗布剤は、その繊維ウェブがプレスニップを通過する時に、プレスニップにおいてロールによって繊維ウェブに塗布される。
【0064】
塗布剤をロールに塗布し得る方法として種々の可能な方法が考えられる。本発明のさらに別の実施形態によれば、塗布装置が、塗布剤をロール上に転写またはスプレーし得るスプレー装置を含む。
【0065】
本発明の代替的な実施形態によれば、塗布装置が機能ベルトを備えており、その機能ベルトによって塗布剤をロールに転写することができる。
【0066】
本発明のさらに別の好ましい実施形態においては、塗布装置がプレスニップを通過する機能ベルトを備えており、それによって塗布剤を繊維ウェブに転写する方式が想定されている。この場合は、繊維ウェブは、塗布剤が塗布されている機能ベルトとプレスニップにおいて初めて接触し、その結果、塗布剤が機能ベルトから繊維ウェブに転写される。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態によれば、繊維ウェブを、機能ベルトと接触させながら、搬送方向においてプレスニップに後続する別のプレスニップを通して導くことができる。これは、例えば、塗布剤が、プレスニップにおいて機能ベルトから繊維ウェブに転写され、その繊維ウェブは、続いて、その機能ベルトと接触した状態で後続のプレスニップを通過するということを意味している。
【0068】
プレスセクションが2つの対向ロールと接触するロールを有することは好ましい。この場合は、このロールが、1つの対向ロールとプレスニップを形成し、もう1つの対向ロールと後続のプレスニップを形成する。このような形態は、例えば、商標「デュオセントリ・ニプコフレックス(DuoCentri Nipcoflex)プレス」の名称で知られるプレスの構成部分である。
【0069】
さらに、機能ベルトがロールの回りを包み込むと都合がよい。これは、特に、塗布剤を塗布するプレスニップに続くプレスニップがプレスセクションの最終のプレスニップである場合に有利である。この場合には、例えば、機能ベルトが、プレスセクションと乾燥セクションとの間の移送ベルトとして機能することが可能になる。
【0070】
特に、機能ベルトがプレスセクションと乾燥セクションとの間の移送ベルトとして機能する場合には、機能ベルトが、空気透過性および/または放射に対して透過性であるが液体浸透性ではないものであると都合がよい。この場合は、プレスセクションと乾燥セクションとの間に乾燥装置を設けることが可能になり、その結果、繊維ウェブを、例えば空気および/または放射によって、両面で、すなわち機能ベルトに載っている面および自由側の面で乾燥することができる。
【0071】
プレスセクションにおける塗布剤塗布後の乾燥度で、繊維ウェブがプレスセクションに入る前の乾燥度をさらに高めるために、本発明の特に好ましい実施形態においては、結果的に、繊維ウェブの搬送方向において、好ましくは非接触型乾燥用の乾燥装置を、プレスセクションの最終プレスニップと乾燥セクションの第1乾燥シリンダとの間に設ける方式を想定している。
【0072】
さらに、試験によれば、プレスセクションの領域における温度、特にプレスニップの領域における温度を、40℃より高く、好ましくは50℃より高く、80℃までにすると、プレスセクションにおける塗布剤塗布後の乾燥度をさらに高め得ることが判明している。
【0073】
より高められた温度においてプレス操作する上記の可能性の1つの実際的な実施形態は、繊維ウェブを載せてプレスニップを通過することができるプレスフェルトを適切に予熱する方式である。
【0074】
さらに、次の場合のようなプレス形態において、乾燥度をさらに高めることができる。
【0075】
プレスセクションがロールのプレスニップのみを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が300kN/m以上、好ましくは350kN/m以上である場合。
【0076】
プレスセクションが1つのシュープレスニップを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が700kN/m以上、好ましくは1000kN/m以上である場合。
【0077】
プレスセクションが2つのシュープレスニップを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が1700kN/m以上、好ましくは2000kN/m以上である場合。
【0078】
プレスセクションが3つのシュープレスニップを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が2600kN/m以上、好ましくは3000kN/m以上、特に好ましくは4000kN/mである場合。
【0079】
同様に、プレスセクションにおいて乾燥度を高めるためには、繊維ウェブを、予熱されたプレスフェルトに載せて別のプレスニップの少なくとも1つを通して導くことができると有利である。
【0080】
さらに、乾燥度を高めるためには、塗布剤を繊維ウェブに転写する機能ベルトであって、場合によってはさらに、繊維ウェブをプレスニップおよび可能であればさらに別のプレスニップを通して導く機能ベルトを予熱することができれば有利である。
【0081】
同様に、プレスセクションにおいて繊維ウェブの乾燥度を高めるためには、繊維ウェブを、塗布剤塗布の時点で予熱すると都合がよい。
【0082】
繊維ウェブ、および/またはプレスフェルトの1つ、および/または機能ベルトを予熱する可能な方法としては、スチーム、放射、熱風による予熱法がある。
【0083】
塗布剤がでんぷんを含有する液体塗布剤である場合は、その液体塗布剤のでんぷん濃度が少なくとも12%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%であれば、繊維ウェブの乾燥度および安定性に関して特に良好な結果が得られる。
【0084】
本発明は、さらに、繊維ウェブの製造方法に関する。この方法においては、繊維ウェブを、プレスニップを通して導き、液体塗布剤を、繊維ウェブの片面に対して、プレスニップの直前および/またはプレスニップにおいて繊維ウェブに塗布する。
【0085】
さらに、この方法の好ましい実施形態においては、繊維ウェブの脱水を、プレスニップにおいて、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面と反対側に位置する面でのみ行う方式が想定されている。
【0086】
特に、本発明の2つの態様の任意の所望の組み合わせも利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
次に、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。この場合、本発明の第1態様を特に図1〜図7を用いて説明し、本発明の第2態様を特に図8〜図15を用いて説明するものとする。但し、既に述べたように、本発明のこの2つの態様は所望に応じて任意に組み合わせることができる。
【0088】
プレスセクション1(図1)はタンデム・ニプコフレックス(Tandem Nipcoflex)プレスによって形成される。繊維ウェブ3は、ピックアップロール4によって、ツインワイヤフォーマー2のワイヤからフェルト5の上に吸い取られ、そのフェルト5によって、第2フェルト6と共に第1プレスニップ7を通して導かれる。繊維ウェブ3は、それぞれ吸引帯を備えた別のロール8、9によって、最初にフェルト10に移され、続いて、そのフェルト10と別のフェルト11との間に移される。
【0089】
繊維ウェブ3が2つのフェルト10、11間の領域に入る前に、塗布剤、特にでんぷん含有液体を塗布する装置12によって繊維ウェブ3にスプレーが行われる。
【0090】
塗布剤は、繊維ウェブ3に間接的にも塗布される。このため、塗布剤が、装置13において、乾燥および/または加熱装置14によって既に予熱されたフェルト11に塗布される。フェルト11は、続いて、両面に設置された加熱装置15を通して導かれる。
【0091】
フェルト11の走行方向において加熱装置15の後の位置で、かつフェルト11が繊維ウェブ3と一緒になって導かれる前の位置に、別の塗布装置16が配置される。その結果、装置13、16によってフェルト11に塗布される層が繊維ウェブ3に転写され、その繊維ウェブ3が続いて第2プレスニップ17を通して導かれる。
【0092】
制御器、緊張装置、および装置18、19、20のようなフェルトコンディショニング用の装置を、2つのフェルト10、11およびまたフェルト5、6にも配置することができる。装置18、19、20によって塗布される清浄化剤はドクターによって除去することができる。清浄化剤は、また、それぞれ装置18、19、20のすぐ近くに配置することができるロールの外殻から間接的にドクター除去することも可能である。
【0093】
繊維ウェブ3は、別のサクションロール21、22によって移送ベルト23に移載され、その移送ベルト23によって、乾燥シリンダ25および反転ロール26を有する単列の乾燥セクション24を通過して前方に導かれる。移送ベルト23に寄せて、フォイルボックスもしくは吸引装置27が設けられる。プレスセクション1から乾燥セクション24への移行は領域28において行われる。
【0094】
領域28においては、繊維ウェブ2がサンドイッチされて導かれる(図2b)か、あるいは、フェルト10がプレスニップ17の直後に上方に離れるように導かれて(図2a)、繊維ウェブ3はその片面だけがフェルト11の上に載っている状態になる。プレスニップ17とロール22との間には、乾燥装置29を配置することが望ましい(図2a)。同様に、2つのロール21、22の間に乾燥装置30を設けることが望ましい(図2b)。
【0095】
もう1つのプレスセクション31(図3)は、デュオセントリ・ニプコフレックス(DuoCentri Nipcoflex)プレスによって形成される。プレスセクション31においては、繊維ウェブ32もまた、ピックアップロール4によって、ツインワイヤフォーマー2のワイヤからフェルト5の上に吸い取られ、そのフェルト5によって、サクションプレスロール34までは別のフェルト33と共に導かれ、さらに第1プレスニップ35を通して導かれる。この第1プレスニップ35は、サクションプレスロール34および中心ロール36によって形成される。
【0096】
中心ロール36に対向して、シュープレスロール38が設置され、中心ロール36と共に第2プレスニップ37を形成する。フェルト39がシュープレスロール38の周りに導かれる。繊維ウェブ32は、サンドイッチ状態で2つのプレスニップ35、37を通して導かれる。その際、繊維ウェブ32は移送ベルト40を介して中心ロール36の上に載っている。
【0097】
移送ベルト40に寄せて、塗布剤塗布用の塗布装置41が設置される。移送ベルト40の温度を制御するために、移送ベルトの両面に配置することができる加熱および乾燥装置42、43、44が設けられる。塗布装置41から塗布剤が移送ベルト40を介して繊維ウェブ32に供給されるが、この塗布装置41に加えて、プレスサクションロール34の反対側に別の塗布装置45が設けられる。この装置は、塗布剤を、繊維ウェブ32に直接塗布する。
【0098】
繊維ウェブ32は、2つのプレスニップ35、37を通過して、乾燥装置44によって再加熱された後、サクションロール46によって、フェルトまたは移送ベルト47に移載され、その移送ベルト47と一緒に、単列の乾燥セクション48を通して導かれる。
【0099】
すべてのフェルト5、33、39および移送ベルト40には、清浄化装置、緊張装置およびコンディショニング装置を、その両面に設けることができる。これを、例として、フェルト39のコンディショニング装置49、50によって示している。各フェルト5、33、39および各移送ベルト40に対して、必要であれば、複数のこのような装置を配置することが可能であることは言うまでもない。清浄化剤を除去する装置、特にドクター除去する装置、および清浄化剤の排出装置も当然設けられる。
【0100】
図3に示す実施形態の代替方式として、図4の変形態においては、繊維ウェブ32が、片面においてのみフェルトを当てがわれて中心ロール36の周りに導かれ、サクションロール46によって、中心ロール36から、乾燥セクション48に属する移送ベルト47に移載される。この実施形態によれば、単一の塗布装置として塗布装置45だけが存在している。しかし、この場合、複数の塗布装置を配置することも可能である。
【0101】
サクションロール46の後に、図3に示す実施形態の場合と同様に、繊維ウェブ32に寄せてフォイルボックスまたは吸引装置51を設置することができる。
【0102】
プレスロール56とシュープレスロール57との間に1つのプレスニップ52を有するプレスセクション(図5)においては、第1の塗布点において、塗布装置58から塗布剤をプレスロール56上にスプレーすることによって、塗布剤が、繊維ウェブ32に対して間接的に塗布される。塗布剤はプレスニップ52の範囲内で繊維ウェブ32に達する一方、水は、反対側の面で繊維ウェブ32から押し出され、繊維ウェブ32と一緒にプレスニップ52を通して導かれるフェルト59に吸い取られる。
【0103】
フェルト59には、特に反転ロールの反対側に、緊張装置60と、特にフェルト59の角度位置を調節するための制御器61と、少なくとも1つのコンディショニング装置62とが配置される。水分は、吸引パイプ63および/または他の吸引装置によってフェルト59から再除去される。
【0104】
プレスニップ52通過後、繊維ウェブ32は、繊維ウェブ32の上面側の塗布剤の塗布を乾燥するために乾燥または加熱装置64を通過して導かれる。
【0105】
繊維ウェブ32は、続いて、サクションロール65によってフェルト59から移送ベルト66上に吸引移載される。繊維ウェブ32は、移送ベルト66によって、乾燥シリンダ67と、単列の乾燥セクション69のサクションロールとして形成される反転ロール68との上に導かれる。1つの反転ロール68に、1つの塗布装置70が、抄紙機内部における第2の塗布剤塗布装置として配置される。塗布装置70は、塗布材料を転写ロール72の平滑な外周表面に塗布する塗布ユニット71を含む。この転写ロール72から、塗布剤が、プレスニップ52において塗布剤が最初に塗布された面と反対側の繊維ウェブ32の面に達する。転写ロール72に対向して塗布ユニットの反対側に、清浄化装置73が設置され、この清浄化装置73が、転写ロール72と反転ロール68との間のニップにおいて繊維ウェブ32に移し取られなかった転写ロール72の表面上の塗布剤を除去清浄化する。清浄化装置73によってスプレー除去された塗布剤、洗い流された塗布剤、および/または拭き取られもしくはドクター除去された塗布剤は、排出路74を経由して排出される。
【0106】
前後に配置された2つの塗布点を有する繊維ウェブ32へのこの塗布形式は、特に800m/minを超える速度に適している。
【0107】
本発明によれば、プレスセクションにおいて生じる水が、この水がでんぷんを含んでいるか否かに従って分離される。繊維ウェブ75(図6)が、プレスセクションの2つのプレスロール間のプレスニップ76を通して導かれる場合は、そこで発生する圧搾水は吸引装置77、78および配管ライン79を経由して排出される。
【0108】
同様に、でんぷん汚染された圧搾水およびコンディショニングから生じる水は、吸引管80、81によって吸引され、配管ライン82経由で排出される。配管ライン79、82の圧搾水は、汚染度に応じて、合流させることができるか、あるいはさらに分離して処理することができる。
【0109】
抄紙機83(図7)において、排出されるべき排水はワイヤセクション84およびプレスセクション85において発生する。ユニット86において浄化処理される圧搾水は、ワイヤセクション84のヘッドボックスに、例えば希釈水として再供給される。処理ユニット86の前後で、圧搾水または圧搾水の一部を、でんぷん調製用装置87に再供給することができるので、圧搾水中に既に含まれるでんぷんを製造工程に再供給することが可能になる。
【0110】
同様に、処理された圧搾水の一部は、ユニット86から、原料調製装置88または抄紙機83の上流側に配置される導入部装置89に、そこでの希釈水として使用するために還流される。圧搾水の量が蓄積したために、あるいはそれが好ましくない老廃物質を過度に多く含むために必要でなくなる圧搾水の一部は、除去ユニット90によって製造工程から取り出して、廃水として処理しなければならない。
【0111】
ワイヤセクション102から入来する繊維ウェブ101(図8)はプレスセクション103を通して導かれる。このプレスセクション103において、繊維ウェブ101は、ロール170および対向ロールによって形成されるプレスニップ169を通過した後、それぞれロール106および対向ロール107と、ロール106および対向ロール108とによって形成される2つのプレスニップ104、105を通して導かれる。対向ロール107には、繊維ウェブ101をベルトまたはフェルト109から吸引離脱させると共に、特に繊維ウェブ101の脱水を補助するために、吸引帯が付加的に設けられる。
【0112】
繊維ウェブ101がプレスロール107の回りを包み込んでいるので、塗布剤は、プレスロール107の外殻の領域において、装置110によって繊維ウェブ101の片面151に塗布される。塗布剤はでんぷんあるいはサイズ剤である。繊維ウェブ101を加熱するため、スチームをスプレーすることも好ましい。塗布剤はプレスニップ104の直前で塗布される。繊維ウェブ101は、続いて、塗布剤をそれに強固に結合させるために、第1プレスニップ104を通して導かれ、一方繊維ウェブ101からの水分はプレスフェルト111によって排除される。この場合、繊維ウェブ101は、プレスニップ104において、繊維ウェブ101に塗布剤を塗布する面151と反対側に位置する繊維ウェブ101の面152においてのみ脱水される。従って、脱水は、繊維ウェブ101からの水分の脱水方向が塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになるように行われる。プレスニップ104に続くプレスニップ105においては、水分はプレスフェルト112によって排除される。この場合、繊維ウェブの脱水は、同様に、繊維ウェブ101が、繊維ウェブ101に塗布剤を塗布する面151と反対側に位置する繊維ウェブ101の面152においてのみ脱水されるように行われる。これは、プレスニップ105における繊維ウェブ101からの水分の脱水方向も、塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じであることを意味している。
【0113】
同様に、代替的な実施形態(図9)においても、第1プレスニップ104の前で、繊維ウェブ101に塗布が行われる。この場合、塗布装置113は、スプレー装置146および機能ベルト114を含んでいる。スプレー装置146は、塗布剤、特にでんぷんもしくはサイズ剤を機能ベルト114に移す。機能ベルト114は、この塗布剤を、繊維ウェブ101が対向ロール107の外殻の回りを包み込む時に、機能ベルト114および対向ロール107によって形成されるニップ115において繊維ウェブ101に転写する。
【0114】
機能ベルト114には、加熱用、特に非接触型加熱用の加熱装置116を配置することができる。同様に、機能ベルト114には、コンディショニング装置も装備することができる。図8および図9の両者に表現される構成においては、塗布剤の塗布が、サクションロールとして形成される対向ロール107に対向して実行される。
【0115】
本発明の別の実施形態(図10)においては、塗布装置147がスプレー装置117およびロール106を備えている。スプレー装置117は、塗布剤を、対向ロール107とプレスニップ104を形成するロール106の外周表面に塗布する。ロール106は、プレスニップ104において、塗布剤を繊維ウェブ101の面151上に転写する。
【0116】
本発明のさらに別の実施形態(図11)においては、機能ベルト114を用いる図9の実施形態の場合と同様に、ロール106への塗布が、塗布装置148のスプレー装置118によって間接的に行われる。このスプレー装置118が塗布剤を機能ベルト119に塗布し、この塗布剤がニップ120においてロール106に移され、さらにそれが、プレスニップ104において繊維ウェブ101の面151上に転写される。
【0117】
図9〜図11に示すすべての実施形態において、第1プレスニップ104および第2プレスニップ105における脱水は、繊維ウェブ101からの水分の脱水方向が塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになるように行われる。
【0118】
場合によって、図8〜図11に示すプレス配置において、対向ロール108をシュープレスロールとして構成することができる。
【0119】
さらに別の実施形態(図12)においては、ワイヤセクション121から入来する繊維ウェブ122が、下部フェルト123によって、ロール125を有するプレスセクション124に移送される。ロール125は、対向ロール128、129と共に2つのプレスニップ126、127を形成する。2つの対向ロールの内、対向ロール128は同時にサクションロールとして形成される。
【0120】
プレスセクション124は塗布装置149を備えており、それによって、塗布剤が、プレスニップ126において繊維ウェブ122の面151に転写される。このために、プレスニップ126の前で、塗布剤、例えばでんぷんが、空気透過性であるが液体浸透性ではない機能ベルト131にスプレー装置130によって塗布される。機能ベルト131は、繊維ウェブおよびプレスフェルト153と共にプレスニップ126を通過する。プレスニップ126においては、塗布剤が繊維ウェブ122の面151に転写され、同時に、プレスフェルト153の補助によって、面151と反対側の面152から脱水される。その結果、繊維ウェブ122からの脱水方向は、塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになる。機能ベルト131はロール125の回りを包み込んでいる。
【0121】
繊維ウェブ122は、プレスニップ126を通過した後、プレスニップ127を通過する。ここでも、脱水は、繊維ウェブ122からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになるように行われる。繊維ウェブ122は、プレスニップ127も機能ベルト131と接触した状態で通過する。プレスニップ127がプレスセクション124の最終プレスニップである。
【0122】
機能ベルト131は、さらに、プレスセクション124と乾燥セクション136との間の移送ベルトとしても機能する。
【0123】
機能ベルト131は、プレスセクション124を通過した後、機能ベルト131によって搬送される繊維ウェブ122と共に、乾燥装置132、133によって、両面から、あるいは少なくとも片面、特に上面から加熱かつ乾燥される。上部乾燥装置132は熱風を生成し、下部乾燥装置133は、例えば放射型のドライヤである。さらに、ドライヤーカンバスの後続領域において、繊維ウェブ122に対して別の乾燥装置134を配置することができる。ベルト131が空気不透過性である場合には、乾燥装置132、134は共に放射型ドライヤである。しかし、空気透過型のベルト131を用いる方が、ベルトを通して乾燥を実施し得るという点で有利である。
【0124】
機能ベルト131を空気不透過性とする場合には、乾燥装置134上における繊維ウェブ122の存在を検知する光学的または熱的センサーを有する自動断裂検出器を設けることが望ましい。これによって、ウェブが断裂した場合には、乾燥装置134のスイッチを切るかまたは乾燥装置134の向きを変えてその作動を停止させることができ、その結果、乾燥装置134がドライヤーカンバスを加熱せず、それを損傷しない。
【0125】
機能ベルト131に寄せてコンディショニング装置135が設置される。清浄化剤は例えばスプレーによって塗布され、引き続いて拭き取られる。
【0126】
機能ベルト131は、装置130によって塗布された塗布剤を、機能ベルト131が繊維ウェブ122と共にロール125の回りを包み込む時に、プレスニップ126において繊維ウェブ122に移し渡す。
【0127】
繊維ウェブ122は、プレスセクション124を通過した後、乾燥シリンダ137と、サクションロールとして形成される反転ロール138と、さらに負圧領域139とを有する単列の乾燥セクション136に導かれる。乾燥シリンダ137の外周面には塗布剤が塗布されたばかりの繊維ウェブ122の面が載っているので、この負圧領域139においては、繊維ウェブ122の乾燥シリンダ137からの確実な離脱を可能にするために、5kPaを超える負圧を使用することが望ましい。
【0128】
さらに別の例示的実施形態(図13)においては、ワイヤセクション121の上部ワイヤから入来する繊維ウェブ122が、ロール125と、対向ロール128、129とによって形成される2つのプレスニップ126、127を通して導かれる。この場合、この配置は、図12の実施形態に対して逆転されたデュオセントリ・ニプコフレックスプレスを表している。
【0129】
空気不透過性のベルト140がロール125の回りを包み込んでいる。プレスセクション124は、機能ベルト140およびスプレー装置141を含む塗布装置150を有する。スプレー装置は塗布剤を機能ベルト140にスプレーする。機能ベルト140は、プレスニップ126を通過し、そのプレスニップ126において、塗布された塗布剤を繊維ウェブ122の面151に移し渡す。繊維ウェブ122は、続いて、前方の空気透過性のベルト142の方に導かれる。ベルト142に寄せて乾燥装置143、144が設置される。この乾燥装置143、144は、例えば放射熱または熱風によって両面に対して無接触で作用する。無接触乾燥用の乾燥装置145を、ベルト140に寄せて設けることもできる。
【0130】
図13に表現される実施形態においても、2つのプレスニップ126および127における脱水は、繊維ウェブ122からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブ122の中への浸透方向と同じになるように行われる。
【0131】
図13の実施形態は、図12に示す構成例に比べて、ベルト142を、繊維ウェブ122がベルト142上に全く導かれず従って加熱装置143、144がベルト142を加熱する場合に損傷を受けずあるいは破壊されない材料から構成し得るという利点を有する。
【0132】
図14は本発明のさらに別の実施形態を示す。この実施形態は、繊維ウェブの搬送方向に相前後して配置される2つのシュープレスユニット157、158を備えるプレスセクション155を含んでいる。
【0133】
繊維ウェブ156は、上部プレスフェルト162と下部プレスフェルト163との間にサンドイッチされてシュープレスユニット157を通して導かれる。
【0134】
その後、繊維ウェブ156は、上部プレスフェルト161に移載され、この上部プレスフェルト161と機能ベルト159との間にサンドイッチされて、シュープレスロール166および対向ロール167によって形成されるプレスニップ168を通して導かれる。この場合、繊維ウェブは面152においてのみ脱水される。
【0135】
機能ベルト159の側では、繊維ウェブ156の搬送方向にプレスニップ168の前で、液体の塗布剤が、塗布装置164によって繊維ウェブ156の面151に塗布ざれる。塗布装置164はスプレー装置165および機能ベルト159を有する。この実施例においては、塗布剤は、機能ベルト159の上に塗布され、ローラ171の部分を起点として繊維ウェブ156に転写され、続いてプレスニップ168において繊維ウェブ156の中に移し込まれる。
【0136】
機能ベルト159は液体不浸透性であるので、繊維ウェブ156は、プレスニップ168において、繊維ウェブ156からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブ156の中への浸透方向と同じになるように脱水される。
【0137】
繊維ウェブ156は、プレスニップ168を通過した後、機能ベルト159上において前方に搬送され、ロール172において乾燥セクション160に移される。
【0138】
図15は、繊維ウェブの搬送方向に互いに前後に配置された3つのシュープレスユニット175、176および177を有するプレスセクションの実施形態を示す。
【0139】
シュープレスユニット175通過後、シュープレスユニット176によって形成されるプレスニップ177を通過する前に、液体の塗布剤が、機能ベルト179によって繊維ウェブ156の面151に塗布される。繊維ウェブ156は、上部プレスフェルト178と液体不浸透性の機能ベルト179との間にサンドイッチされてプレスニップ177を通して導かれる。この場合、繊維ウェブ156は面152においてのみ脱水される。
【0140】
繊維ウェブ156は、シュープレスユニット176を通過した後、シュープレスユニット177の上部プレスフェルト181上において、さらに上部プレスフェルト181と液体不浸透性ベルト182との間にサンドイッチされて、シュープレスユニット177によって形成されるプレスニップ180を通して導かれる。この場合、繊維ウェブ156は面152においてのみ脱水される。
【0141】
この場合、繊維ウェブ156は、プレスニップ180および177において、繊維ウェブ156からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブ156の中への浸透方向と同じになるように脱水される。
【0142】
例として、一方で図1〜図7を用いて、他方で図8〜図15を用いて詳しく説明した本発明の2つの態様は、所望に応じて任意に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】異なるプレスシリンダ対によって形成される2つのプレスニップを備え、かつ、流体の塗布剤を塗布する少なくとも1つの装置を有するプレスセクションを示す。
【図2a】図1によるプレスセクションの第2プレスニップの後の領域の変形態を示す。
【図2b】図1によるプレスセクションの第2プレスニップの後の領域の別の変形態を示す。
【図3】1つの中心ロールと、流体の塗布剤を塗布する2つの装置とを有するプレスセクションを示す。
【図4】流体の塗布剤を塗布する単一の装置を有する図3のプレスセクションを示す。
【図5】それぞれに塗布装置が配置されるプレスセクションおよび単列乾燥セクションを示す。
【図6】でんぷんで汚染された圧搾水を導出する吸引装置を有するプレスセクションの概略的表現を示す。
【図7】でんぷんで汚染された圧搾水の使用および調製に関する概略線図を示す。
【図8】2つのプレスニップを形成する1つの中心ロールを備えたプレスセクションであって、繊維ウェブへの塗布が、そのウェブが第1プレスロール上を導かれる時にプレスニップの前で行われるプレスセクションを示す。
【図9】塗布がベルトに対して行われる図8のプレスセクションであって、このベルトが、ウェブが第1プレスロール上を導かれる時にウェブ上に塗布を転写するプレスセクションを示す。
【図10】塗布が中心ロールの円周表面上に行われる図8のプレスセクションを示す。
【図11】塗布がベルトに対して行われ、このベルトが中心ロール上に塗布を転写する図8のプレスセクションを示す。
【図12】乾燥セクションの一部と連携して2つのプレスニップを形成する1つの中心ロールを備えたプレスセクションであって、塗布が、その中心ロールの周りを包み込むベルトに対して行われるプレスセクションを示す。
【図13】乾燥セクションの一部と連携したプレスセクションであって、同様に塗布が中心ロールの周りを包み込むベルトに対して行われるプレスセクションを示す。
【図14】前後に配置された2つのシュー型プレスを備えたプレスセクションを示す。
【図15】前後に配置された3つのシュー型プレスを備えたプレスセクションを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様によれば、流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置を用いて、125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2未満の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体からペースト状までの塗布剤、好ましくはでんぷんを、好ましくは紙または板紙、特に波形板紙の材料ウェブの片面もしくは両面に塗布する方法および装置を説明している。この場合、材料ウェブは最初に片面もしくは両面に塗布され、その後に初めてプレスニップを通過する。この方法は、特にプレスニップの後においても材料ウェブをほぼ完全に支持するエンドレスベルトが、2つの支持ロールの間にわたってガイドされる装置によって実行される。
【0003】
特許文献2は、移動する材料ウェブにペースト状の塗布剤を塗布する方法および装置を開示している。この方法においては、最初に、抄紙機のツインワイヤ帯において、材料ウェブが形成されると共に、液体またはペースト状の塗布剤が塗布装置によって材料ウェブの少なくとも片面に塗布されるが、この場合、プレスセクションのプレス要素の後に、液体またはペースト状の塗布剤を材料ウェブに塗布するさらに別の塗布装置が設けられる。
【0004】
特許文献3は、プレスセクションにおいて、紙または板紙のウェブを処理する方法および装置を開示している。ウェブがフェルトによってサクションロール上に導かれる時に、第1塗布装置が塗布剤をウェブ上にスプレーする。第2の塗布装置が塗布剤を移送ベルトの表面上にスプレーし、その表面から塗布剤がウェブ上に転写される。両塗布装置は第1プレスニップの前に配置される。
【0005】
しかし、特に高速で単位面積当たりの質量が低い場合に、この解決策は欠点を有している。この欠点は、単位面積当たりの質量が低い場合、(着色)でんぷんが紙のウェブを突き抜け、その結果フェルトおよび圧搾水に達することがあり得るという点である。
【0006】
さらに、でんぷんの固形分濃度が今日では一般的な6〜15%という低い濃度である場合は、プレスセクション後に十分な乾分含有量が達成されない。でんぷんとでんぷんが溶解している流体とが塗着される紙のウェブは、引き続く接触乾燥用の装置、例えばシリンダまたはドライヤーカンバス上に付着または固着する傾向がある。これは、特に、非常に多量のでんぷんを塗着しなければならない高い坪量の場合に当てはまる。さらに、接触媒体すなわちベルトまたはロールのコンディショニングが必要である。
【0007】
紙のウェブの坪量が高くしかも高速の場合は、非常に多量のでんぷんを片面に塗布するのでなければ、でんぷんが繊維ウェブを完全に浸透することは不可能である。フォーマー領域および/またはプレスセクションにおける二面塗布は、塗布の少なくとも幾分かが脱水操作によって再度洗い落とされるので、効率的でない。プレスセクションが二重フェルト方式の場合には、これが両面に生起する。1つのフェルトと1つの移送ベルトとを使用する場合は、これが片面に生起する。
【0008】
総括すると、塗布剤の塗布において、塗布の量、特に塗布し得るでんぷんの量が制限される、従ってそれによって達成し得る強度の増加も制限されるという問題が存在する。繊維ウェブ製造機械の循環水において塗布剤濃度が増加すると、製造過程に著しい減損がもたらされる。これは、例えば、スライム形成、堆積発生、COD負荷(COD値は排水の有機性負荷に対する総括的なパラメータである)および悪臭障害によって惹起される。
【0009】
高速でしかも坪量が低い場合は、塗布ユニットの領域またはその下流側において、多数の断裂が発生する。これは、顕著な再湿潤化とそれによる紙強度の低下とによって生じるものである。さらに、大幅な乾燥エネルギーのコストが最終ドライヤセクションに必要となる。
【特許文献1】独国特許出願公開第100 33 213 A1号明細書
【特許文献2】国際公開第99/22067号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/55423号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、繊維ウェブの製造方法を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、冒頭に述べた種類の方法において、この目的は、使用塗布剤を、固形分濃度、特にでんぷん固形分の濃度が15%より多い、特に25%より多い、さらに特定して30%より多い液体とすることによって達成される。
【0012】
上記の方法を、繊維ウェブがフェルトおよび移送ベルトによって前方に搬送される繊維ウェブ製造機械のプレスセクションに用いると、この目的は、少なくとも1つのフェルトまたは1つの移送ベルトを、特有の循環系によって供給および排出される液体でコンディショニングすることによっても達成される。
【0013】
(着色)でんぷんを高濃度に含む水は、白濁水に供給するのではなく、適切な位置においてでんぷん調製工程に再供給する。この方法によって、でんぷんの損失が最小化される。乾燥は無接触で行われる。後続の接触乾燥ユニットへの堆積形成を避けるために、紙または板紙のウェブの表面のみを乾燥することが好ましい。このため、例えば熱風乾燥が用いられる。
【0014】
従って、白濁水の循環系におけるでんぷんの濃縮が避けられる。その結果、微生物の増殖、スライム形成および抄紙機の装入収支における変化をも避けることができる。これらは、紙シートの形成、保持、脱水に負の影響を及ぼし、断裂数の増大および所要薬品量の増大という結果を招来する可能性があるものである。
【0015】
本発明によれば、圧搾水は、低負荷水および高負荷水に分離される。低負荷水は、先行技術に従って使用することができる。すなわち、例えば、白濁水の循環系に供給することができる。
【0016】
一方、でんぷん負荷水は、好ましくは、この水に含まれるでんぷんが紙の強度を増大する作用をもたらすように用いられるか、あるいは、上記の問題点を可能な限り避け得るような水の循環系の箇所において使用される。
【0017】
白濁水は、保持とプロセスの安定性を実現するために、例えば、オンラインのゼータ電位測定器によって監視することができる。
【0018】
でんぷん負荷された圧搾水の量は、でんぷんを、プレスセクションの最終端部、好ましくは最終ニップの前においてのみ塗布することによって低減することができる。でんぷん負荷水は、でんぷん調製に使用でき得る。でんぷん含有水の溢流水は白濁水の循環系に供給することができる。
【0019】
でんぷん含有水のでんぷん濃度は、その水を循環系に再供給する前に低減することができる。例えば、でんぷんは、例えばアミラーゼによって、温度上昇と組み合わせて酵素分解することができる。続いて、アミラーゼを、110℃を超える温度、好ましくは120℃を超える温度で再分解することができる。でんぷんは、また、限外ろ過またはナノろ過、あるいは逆浸透法によって分離除去することもできる。
【0020】
圧搾水の可能な用途は、でんぷんの調製、原料の調製、機械の導入部装置、ヘッドボックス、および排出部にある。
【0021】
スライムの形成が少ないこと、および断裂数が僅かであることの結果として、繊維ウェブの走行性が改善される。本発明によって、汚染度が軽減され、抄紙機における化学薬品の効率が向上する。でんぷん含有圧搾水は、強度増大するために適切に使用される。
【0022】
本発明によって、プロセスの構成要素と水との汚染が避けられること、並びに、塗布剤溶液特にでんぷん溶液による液体塗布量が低減する結果として繊維ウェブの初期湿状態強度の低下が少ないことから、プロセスの安定性が最適化され、これによって、塗布剤の塗布効率が最適化される。
【0023】
本発明による方法の有利な発展形態が、従属請求項3〜10、明細書および図面から明らかになる。
【0024】
特に、液体を、塗布剤特にでんぷん含有液体製造のための調製工程に還流する方法が有利であると判明している。
【0025】
塗布剤の塗布量が、巻取機のリールに巻き取られる完成紙または完成板紙の単位面積当たり質量の2〜8%であると有利である。
【0026】
良好な浸透には、でんぷん溶液の粘度が低いことが必要である。この粘度は、でんぷんの温度およびでんぷんの種類によって定まる。従って、別の有利な方法は、塗布剤の温度を、装置から出た後に、塗布剤が塗布される移送ベルトまたはフェルトまたはロールを直接的または間接的に加熱することによって高めることにある。この方法で、搬送媒体の温度、すなわちロールまたはベルトの温度をでんぷん溶液の温度に一致させることができる。
【0027】
塗布剤は、プレスセクションのプレスニップの直前、特に最終プレスニップの直前で、繊維ウェブに直接的または間接的に塗布するのが有利である。塗布剤、特にでんぷんを最終プレスニップの前で導入すると、でんぷん負荷された圧搾水の量を大幅に減少させることができる。
【0028】
塗布の良好な品質は、使用する塗布剤が、天然または未加熱処理のでんぷん、あるいは、分解されたでんぷん、特に酸化分解または酵素分解されたでんぷん、あるいは、カチオン性のでんぷんである場合に実現することができる。
【0029】
塗布剤、特にでんぷんの濃度は、15%を超えるように選定することができる。
【0030】
特に高速においては、塗布剤を、機械的プレス操作の後で、繊維ウェブの両面に塗布する方法が有利である。この場合、この繊維ウェブは80g/m2を超える坪量を有する。
【0031】
この場合、塗布剤の最初の塗布をプレスセクションのプレスニップにおいて実行し、繊維ウェブの反対面に対する2回目の塗布を乾燥セクションにおいて実行すると、特に有利である。
【0032】
坪量が80g/m2以上、特に100g/m2を超える場合、さらに特定して125g/m2を超える場合は、本発明は、でんぷんの両面への塗布を、時間をずらして実行する方式を提案する。この場合、2回目の塗布は、ウェブの乾燥度が、45%、特に50%を超えてから初めて実行する。すなわち機械的なプレス操作の後に行う。この結果、塗布されたでんぷんはもはや洗い落とされることはない。
【0033】
本発明によれば、最初の塗布を行う位置は、ウェブの脱水が、塗布の方向と反対の方向ではなく、塗布の方向に行われるように、例えば乾燥セクションの始点、または一般的に機械的なプレス操作の後に配置される。このことは、例えば、ウェブの片面に塗布が行われる一方、その反対側の面においては、水が、その塗布点においてまたはその直後に、例えばプレスニップにおいて、ウェブから押し出されるかあるいは吸い出されることを意味している。
【0034】
この配置は、特に、高速、例えば800m/minを超える、あるいは1000m/minを超える高速で、しかも坪量が高い場合に有利である。
【0035】
この第1態様によれば、本発明は、また、特に上記の方法の1つを実行するための機械にも関する。
【0036】
本発明によれば、この機械は、プレスセクションが、フェルトまたは移送ベルトを導く複数のガイドロールを備えていること、および、フェルトをコンディショニングする少なくとも1つの装置が第1の外側ガイドロールの前に配置されることを特徴とする。この方式で、より良好な走行性が実現される。
【0037】
有利な発展形態が従属請求項12〜15から明らかになる。
【0038】
フェルトをコンディショニングする別の装置が、フェルトまたは移送ベルトの循環方向に、第1ガイドロールに続くガイドロールに対向して設置されると有利である。
【0039】
この場合、ロールの外周表面を清浄化するドクターを、プレスセクションのロールに対向して、特に第1ガイドロールおよび/またはさらに別のガイドロールに対向して設置する方策を有利に想定することができる。
【0040】
同様に、ロールの外周表面に、特に調整水、または化学的助剤特に界面活性剤をスプレーする装置、あるいは、外周表面を清浄化するブラシを、少なくとも1つのロールに配置すると有利である。
【0041】
同様に、装置および/またはブラシによって排除された塗布剤を集める装置、および、それを塗布剤調製システムに戻す装置が設けられると有利であることが分かる。本発明によれば、でんぷんの突き抜けが防止され、水の吸収が少ない結果として、繊維ウェブの強度の低下の低減が実現される。浸透が良好であるために、塗布剤が高い効率を有する。繊維ウェブの走行性が改善される。塗布剤は、直接、すなわち移送ベルトなしでも塗布することができる。
【0042】
本発明は、第2の態様によれば、紙、板紙または他の繊維ウェブ製造用の機械であって、第1および第2のプレスロールと連携して2つのプレスニップを形成する中心ロールを備えたプレスセクションと、そのプレスセクションに配置される、塗布剤塗布用特にでんぷんもしくはサイズ剤塗布用の少なくとも1つの装置とを有する機械にも関する。この場合、繊維ウェブはベルトと共にプレスニップを通して導くことができる。
【0043】
特許文献1による方法および装置においては、1つの実施例によれば、でんぷんが塗布ロールに塗布される。この解決策の欠点は、塗布ユニットの前で閉じられたウェブのガイドが行われないという点である。自由な引き込みの結果として、また、プレスセクションにおける繊維ウェブの強度がまだ低いために、製造工程における断裂発生の頻度が、特に、例えば125g/m2未満の小さい単位面積当たり質量の場合に増大する。さらに、塗布装置の後に配置される接触乾燥用のユニット上に、塗布された材料が堆積する危険性がある。
【0044】
特許文献3では、2つの実施形態(図1および図2)において、プレスロールと共に2つのプレスニップを形成する中心ロールを備えたプレスセクションが説明されている。
【0045】
特許文献2に開示される方法と関連する装置とについては、既に前記に言及した。
【0046】
先行技術から知られるプレスセクションにおいては、紙のウェブの強度が低いために移送ベルトによる支持が必要である。プレスニップにおける脱水は移送ベルトから離れる方向に生起するので、でんぷんは移送ベルトの面に塗布される。これによって、でんぷんが、液体媒体の移動により繊維ウェブの中心の方向に移動することが確実になる。でんぷんを移送ベルトと反対側の面に付与することは実際的でない。そうでなければ、塗布剤が、繊維ウェブと接触することになる最近傍のフェルトの中に押し込まれるからである。
【0047】
でんぷんが塗布された紙のウェブの面は移送ベルトの上に載っているので、この面は、非接触型のドライヤを使用しても乾燥することはできない。その結果、プレスセクションに続く乾燥セクションの第1乾燥シリンダ上に厄介な堆積が生成することが予期される。
【0048】
プレス操作後においても、プレスセクション通過後に、過度に低い乾燥度がよく出現する。この結果、高価な乾燥用熱エネルギーの必要性が増大し、乾燥セクションを長くしなければならない。低い初期湿潤状態強度によって生じる繊維ウェブの走行性に関する問題も予期される。
【0049】
本発明の目的は、第2の態様によれば、液体の塗布剤特にでんぷんもしくはサイズ剤を塗布する可能性を有するプレスセクションを備え、同時に小型の構造を有する機械を提供することにある。
【0050】
本発明のこの第2の態様によれば、この目的は、紙、板紙または他の繊維ウェブ製造用の機械であって、繊維ウェブを通過させることができる少なくとも1つのプレスニップを備えたプレスセクションと、そのプレスセクションにおいて、繊維ウェブの片面に液体の塗布剤を塗布し得る少なくとも1つの塗布装置とを有する機械によって実現される。この場合、塗布剤は、プレスニップの直前および/またはプレスニップにおいて、塗布装置によって繊維ウェブに塗布することができる。
【0051】
本発明のこの第2の態様によれば、塗布剤塗布後の繊維ウェブの特有の乾燥法も可能になる。このプレスセクション通過後の繊維ウェブの乾燥度は先行技術による場合よりも高い。繊維ウェブの高い乾燥度の結果として、熱的な乾燥エネルギーを低減することができる。その結果、乾燥セクションの長さがより短くなり、既存の抄紙機の生産性能が向上する。さらに、この方式においては、後続のでんぷん塗布ユニットを省略することができる。あるいは、より少量のでんぷんを塗布することで十分である。これによって、塗布ユニット後の乾燥度の低下が小さくなり、繊維ウェブの走行性が改善される。
【0052】
繊維ウェブのプレス操作と塗布剤の塗布とを1箇所にまとめた結果として、先行技術に比べて、プレスセクションにおける機械の設計の小型化が実現され、これによって高い操作上の信頼性が確保される。
【0053】
本発明の有利な発展形態が、従属請求項17〜49、明細書および図面に含まれる。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、プレスセクションを、プレスニップにおいて、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面の反対側に位置する繊維ウェブの面においてのみ繊維ウェブを脱水し得るように構成することが想定される。
【0055】
その結果、塗布の方向または塗布剤が繊維ウェブの中に浸透する方向は、繊維ウェブから脱水する方向に合致する。
【0056】
この方法によって、繊維ウェブに塗布された液体塗布剤の繊維ウェブの中への浸透が、顕著に改善される。これは、塗布面と反対側の面において繊維ウェブを脱水する結果として、導入された塗布剤が繊維ウェブから追い出されなくて済むからである。この導入された塗布剤の追い出しは、繊維ウェブを塗布面において脱水する場合には生じ得る現象である。むしろこれとは逆に、塗布剤の浸透が「吸引効果」によって強化され、その結果、塗布剤が、脱水中に繊維ウェブの中に吸引される。
【0057】
本発明の上記の実施形態を実行する1つの実際的な形態においては、繊維ウェブを、その繊維ウェブを脱水することができる面の側でプレスフェルトに接触させて、プレスニップを通して導く方策が採られる。この場合、プレスフェルトは、脱水中に、繊維ウェブから水を導出する機能を果たす。さらに、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面は、プレスニップにおいて、繊維ウェブから水を吸い取るには不適な表面と接触している。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態によれば、プレスセクションが、繊維ウェブの搬送方向にプレスニップに続くように配置される1つのプレスニップを備え、かつ、プレスセクションにおいて、別の液体塗布剤を、第1の塗布面と反対側に位置する繊維ウェブの面に塗布し得る別の塗布装置を設ける方式が想定される。従って、液体塗布剤を、繊維ウェブの両面に相前後して塗布することが可能であるが、それぞれの場合に、少なくとも、塗布剤の塗布がその直前に実行されるプレスニップまたはそれが実行されるプレスニップにおける脱水は、塗布の方向または塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向が繊維ウェブからの脱水方向に合致するように行われなければならない。
【0059】
さらに、プレスセクションが、繊維ウェブの搬送方向にプレスニップの後に別の複数のプレスニップを備え、かつ、そのプレスセクションを、この別の複数のプレスニップの少なくともいくつか、好ましくはすべてにおいて、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面と反対側に位置する繊維ウェブの面においてのみ繊維ウェブを脱水し得るように構成する方式を想定することができる。この方式で、塗布された塗布剤の繊維ウェブの中へのさらなる浸透が、塗布のプレスニップに続くプレスニップによってさらに支持される。
【0060】
この実際的な実施形態に類似する方式として、前記の実施形態の1つの実際的な形態において、繊維ウェブを、その繊維ウェブの脱水可能面でプレスフェルトと接触させて別のプレスニップの1つを通して導くことを可能にする方式が採られる。
【0061】
脱水性能と、液体の塗布剤の繊維ウェブの中への浸透とを増進するために、本発明の別の好ましい実施形態は、プレスニップをロールおよび対向ロールによって形成することを想定している。この場合、対向ロールは、負圧吸引可能であると共に、繊維ウェブの脱水可能面と接触させることができる。
【0062】
繊維ウェブへの液体塗布剤の塗布法としては種々の可能な方法が考えられる。本発明の好ましい実施形態によれば、塗布装置が、塗布剤を繊維ウェブ上に直接スプレーし得るスプレー装置を含むことが想定されている。この実施形態においては、塗布剤は、一般的にプレスニップの前で繊維ウェブに塗布される。しかし、塗布剤を、プレスニップにおいて繊維ウェブに塗布することも可能であろう。
【0063】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、塗布装置が、対向ロールと共にプレスニップを形成するロールを備えており、そのプレスニップにおいて塗布剤がそのロールから繊維ウェブに転写される方式が想定されている。この実施形態においては、塗布剤は、その繊維ウェブがプレスニップを通過する時に、プレスニップにおいてロールによって繊維ウェブに塗布される。
【0064】
塗布剤をロールに塗布し得る方法として種々の可能な方法が考えられる。本発明のさらに別の実施形態によれば、塗布装置が、塗布剤をロール上に転写またはスプレーし得るスプレー装置を含む。
【0065】
本発明の代替的な実施形態によれば、塗布装置が機能ベルトを備えており、その機能ベルトによって塗布剤をロールに転写することができる。
【0066】
本発明のさらに別の好ましい実施形態においては、塗布装置がプレスニップを通過する機能ベルトを備えており、それによって塗布剤を繊維ウェブに転写する方式が想定されている。この場合は、繊維ウェブは、塗布剤が塗布されている機能ベルトとプレスニップにおいて初めて接触し、その結果、塗布剤が機能ベルトから繊維ウェブに転写される。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態によれば、繊維ウェブを、機能ベルトと接触させながら、搬送方向においてプレスニップに後続する別のプレスニップを通して導くことができる。これは、例えば、塗布剤が、プレスニップにおいて機能ベルトから繊維ウェブに転写され、その繊維ウェブは、続いて、その機能ベルトと接触した状態で後続のプレスニップを通過するということを意味している。
【0068】
プレスセクションが2つの対向ロールと接触するロールを有することは好ましい。この場合は、このロールが、1つの対向ロールとプレスニップを形成し、もう1つの対向ロールと後続のプレスニップを形成する。このような形態は、例えば、商標「デュオセントリ・ニプコフレックス(DuoCentri Nipcoflex)プレス」の名称で知られるプレスの構成部分である。
【0069】
さらに、機能ベルトがロールの回りを包み込むと都合がよい。これは、特に、塗布剤を塗布するプレスニップに続くプレスニップがプレスセクションの最終のプレスニップである場合に有利である。この場合には、例えば、機能ベルトが、プレスセクションと乾燥セクションとの間の移送ベルトとして機能することが可能になる。
【0070】
特に、機能ベルトがプレスセクションと乾燥セクションとの間の移送ベルトとして機能する場合には、機能ベルトが、空気透過性および/または放射に対して透過性であるが液体浸透性ではないものであると都合がよい。この場合は、プレスセクションと乾燥セクションとの間に乾燥装置を設けることが可能になり、その結果、繊維ウェブを、例えば空気および/または放射によって、両面で、すなわち機能ベルトに載っている面および自由側の面で乾燥することができる。
【0071】
プレスセクションにおける塗布剤塗布後の乾燥度で、繊維ウェブがプレスセクションに入る前の乾燥度をさらに高めるために、本発明の特に好ましい実施形態においては、結果的に、繊維ウェブの搬送方向において、好ましくは非接触型乾燥用の乾燥装置を、プレスセクションの最終プレスニップと乾燥セクションの第1乾燥シリンダとの間に設ける方式を想定している。
【0072】
さらに、試験によれば、プレスセクションの領域における温度、特にプレスニップの領域における温度を、40℃より高く、好ましくは50℃より高く、80℃までにすると、プレスセクションにおける塗布剤塗布後の乾燥度をさらに高め得ることが判明している。
【0073】
より高められた温度においてプレス操作する上記の可能性の1つの実際的な実施形態は、繊維ウェブを載せてプレスニップを通過することができるプレスフェルトを適切に予熱する方式である。
【0074】
さらに、次の場合のようなプレス形態において、乾燥度をさらに高めることができる。
【0075】
プレスセクションがロールのプレスニップのみを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が300kN/m以上、好ましくは350kN/m以上である場合。
【0076】
プレスセクションが1つのシュープレスニップを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が700kN/m以上、好ましくは1000kN/m以上である場合。
【0077】
プレスセクションが2つのシュープレスニップを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が1700kN/m以上、好ましくは2000kN/m以上である場合。
【0078】
プレスセクションが3つのシュープレスニップを含み、プレスセクションを通過する間に繊維ウェブに作用する線力の合計が2600kN/m以上、好ましくは3000kN/m以上、特に好ましくは4000kN/mである場合。
【0079】
同様に、プレスセクションにおいて乾燥度を高めるためには、繊維ウェブを、予熱されたプレスフェルトに載せて別のプレスニップの少なくとも1つを通して導くことができると有利である。
【0080】
さらに、乾燥度を高めるためには、塗布剤を繊維ウェブに転写する機能ベルトであって、場合によってはさらに、繊維ウェブをプレスニップおよび可能であればさらに別のプレスニップを通して導く機能ベルトを予熱することができれば有利である。
【0081】
同様に、プレスセクションにおいて繊維ウェブの乾燥度を高めるためには、繊維ウェブを、塗布剤塗布の時点で予熱すると都合がよい。
【0082】
繊維ウェブ、および/またはプレスフェルトの1つ、および/または機能ベルトを予熱する可能な方法としては、スチーム、放射、熱風による予熱法がある。
【0083】
塗布剤がでんぷんを含有する液体塗布剤である場合は、その液体塗布剤のでんぷん濃度が少なくとも12%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%であれば、繊維ウェブの乾燥度および安定性に関して特に良好な結果が得られる。
【0084】
本発明は、さらに、繊維ウェブの製造方法に関する。この方法においては、繊維ウェブを、プレスニップを通して導き、液体塗布剤を、繊維ウェブの片面に対して、プレスニップの直前および/またはプレスニップにおいて繊維ウェブに塗布する。
【0085】
さらに、この方法の好ましい実施形態においては、繊維ウェブの脱水を、プレスニップにおいて、繊維ウェブに塗布剤を塗布する面と反対側に位置する面でのみ行う方式が想定されている。
【0086】
特に、本発明の2つの態様の任意の所望の組み合わせも利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
次に、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。この場合、本発明の第1態様を特に図1〜図7を用いて説明し、本発明の第2態様を特に図8〜図15を用いて説明するものとする。但し、既に述べたように、本発明のこの2つの態様は所望に応じて任意に組み合わせることができる。
【0088】
プレスセクション1(図1)はタンデム・ニプコフレックス(Tandem Nipcoflex)プレスによって形成される。繊維ウェブ3は、ピックアップロール4によって、ツインワイヤフォーマー2のワイヤからフェルト5の上に吸い取られ、そのフェルト5によって、第2フェルト6と共に第1プレスニップ7を通して導かれる。繊維ウェブ3は、それぞれ吸引帯を備えた別のロール8、9によって、最初にフェルト10に移され、続いて、そのフェルト10と別のフェルト11との間に移される。
【0089】
繊維ウェブ3が2つのフェルト10、11間の領域に入る前に、塗布剤、特にでんぷん含有液体を塗布する装置12によって繊維ウェブ3にスプレーが行われる。
【0090】
塗布剤は、繊維ウェブ3に間接的にも塗布される。このため、塗布剤が、装置13において、乾燥および/または加熱装置14によって既に予熱されたフェルト11に塗布される。フェルト11は、続いて、両面に設置された加熱装置15を通して導かれる。
【0091】
フェルト11の走行方向において加熱装置15の後の位置で、かつフェルト11が繊維ウェブ3と一緒になって導かれる前の位置に、別の塗布装置16が配置される。その結果、装置13、16によってフェルト11に塗布される層が繊維ウェブ3に転写され、その繊維ウェブ3が続いて第2プレスニップ17を通して導かれる。
【0092】
制御器、緊張装置、および装置18、19、20のようなフェルトコンディショニング用の装置を、2つのフェルト10、11およびまたフェルト5、6にも配置することができる。装置18、19、20によって塗布される清浄化剤はドクターによって除去することができる。清浄化剤は、また、それぞれ装置18、19、20のすぐ近くに配置することができるロールの外殻から間接的にドクター除去することも可能である。
【0093】
繊維ウェブ3は、別のサクションロール21、22によって移送ベルト23に移載され、その移送ベルト23によって、乾燥シリンダ25および反転ロール26を有する単列の乾燥セクション24を通過して前方に導かれる。移送ベルト23に寄せて、フォイルボックスもしくは吸引装置27が設けられる。プレスセクション1から乾燥セクション24への移行は領域28において行われる。
【0094】
領域28においては、繊維ウェブ2がサンドイッチされて導かれる(図2b)か、あるいは、フェルト10がプレスニップ17の直後に上方に離れるように導かれて(図2a)、繊維ウェブ3はその片面だけがフェルト11の上に載っている状態になる。プレスニップ17とロール22との間には、乾燥装置29を配置することが望ましい(図2a)。同様に、2つのロール21、22の間に乾燥装置30を設けることが望ましい(図2b)。
【0095】
もう1つのプレスセクション31(図3)は、デュオセントリ・ニプコフレックス(DuoCentri Nipcoflex)プレスによって形成される。プレスセクション31においては、繊維ウェブ32もまた、ピックアップロール4によって、ツインワイヤフォーマー2のワイヤからフェルト5の上に吸い取られ、そのフェルト5によって、サクションプレスロール34までは別のフェルト33と共に導かれ、さらに第1プレスニップ35を通して導かれる。この第1プレスニップ35は、サクションプレスロール34および中心ロール36によって形成される。
【0096】
中心ロール36に対向して、シュープレスロール38が設置され、中心ロール36と共に第2プレスニップ37を形成する。フェルト39がシュープレスロール38の周りに導かれる。繊維ウェブ32は、サンドイッチ状態で2つのプレスニップ35、37を通して導かれる。その際、繊維ウェブ32は移送ベルト40を介して中心ロール36の上に載っている。
【0097】
移送ベルト40に寄せて、塗布剤塗布用の塗布装置41が設置される。移送ベルト40の温度を制御するために、移送ベルトの両面に配置することができる加熱および乾燥装置42、43、44が設けられる。塗布装置41から塗布剤が移送ベルト40を介して繊維ウェブ32に供給されるが、この塗布装置41に加えて、プレスサクションロール34の反対側に別の塗布装置45が設けられる。この装置は、塗布剤を、繊維ウェブ32に直接塗布する。
【0098】
繊維ウェブ32は、2つのプレスニップ35、37を通過して、乾燥装置44によって再加熱された後、サクションロール46によって、フェルトまたは移送ベルト47に移載され、その移送ベルト47と一緒に、単列の乾燥セクション48を通して導かれる。
【0099】
すべてのフェルト5、33、39および移送ベルト40には、清浄化装置、緊張装置およびコンディショニング装置を、その両面に設けることができる。これを、例として、フェルト39のコンディショニング装置49、50によって示している。各フェルト5、33、39および各移送ベルト40に対して、必要であれば、複数のこのような装置を配置することが可能であることは言うまでもない。清浄化剤を除去する装置、特にドクター除去する装置、および清浄化剤の排出装置も当然設けられる。
【0100】
図3に示す実施形態の代替方式として、図4の変形態においては、繊維ウェブ32が、片面においてのみフェルトを当てがわれて中心ロール36の周りに導かれ、サクションロール46によって、中心ロール36から、乾燥セクション48に属する移送ベルト47に移載される。この実施形態によれば、単一の塗布装置として塗布装置45だけが存在している。しかし、この場合、複数の塗布装置を配置することも可能である。
【0101】
サクションロール46の後に、図3に示す実施形態の場合と同様に、繊維ウェブ32に寄せてフォイルボックスまたは吸引装置51を設置することができる。
【0102】
プレスロール56とシュープレスロール57との間に1つのプレスニップ52を有するプレスセクション(図5)においては、第1の塗布点において、塗布装置58から塗布剤をプレスロール56上にスプレーすることによって、塗布剤が、繊維ウェブ32に対して間接的に塗布される。塗布剤はプレスニップ52の範囲内で繊維ウェブ32に達する一方、水は、反対側の面で繊維ウェブ32から押し出され、繊維ウェブ32と一緒にプレスニップ52を通して導かれるフェルト59に吸い取られる。
【0103】
フェルト59には、特に反転ロールの反対側に、緊張装置60と、特にフェルト59の角度位置を調節するための制御器61と、少なくとも1つのコンディショニング装置62とが配置される。水分は、吸引パイプ63および/または他の吸引装置によってフェルト59から再除去される。
【0104】
プレスニップ52通過後、繊維ウェブ32は、繊維ウェブ32の上面側の塗布剤の塗布を乾燥するために乾燥または加熱装置64を通過して導かれる。
【0105】
繊維ウェブ32は、続いて、サクションロール65によってフェルト59から移送ベルト66上に吸引移載される。繊維ウェブ32は、移送ベルト66によって、乾燥シリンダ67と、単列の乾燥セクション69のサクションロールとして形成される反転ロール68との上に導かれる。1つの反転ロール68に、1つの塗布装置70が、抄紙機内部における第2の塗布剤塗布装置として配置される。塗布装置70は、塗布材料を転写ロール72の平滑な外周表面に塗布する塗布ユニット71を含む。この転写ロール72から、塗布剤が、プレスニップ52において塗布剤が最初に塗布された面と反対側の繊維ウェブ32の面に達する。転写ロール72に対向して塗布ユニットの反対側に、清浄化装置73が設置され、この清浄化装置73が、転写ロール72と反転ロール68との間のニップにおいて繊維ウェブ32に移し取られなかった転写ロール72の表面上の塗布剤を除去清浄化する。清浄化装置73によってスプレー除去された塗布剤、洗い流された塗布剤、および/または拭き取られもしくはドクター除去された塗布剤は、排出路74を経由して排出される。
【0106】
前後に配置された2つの塗布点を有する繊維ウェブ32へのこの塗布形式は、特に800m/minを超える速度に適している。
【0107】
本発明によれば、プレスセクションにおいて生じる水が、この水がでんぷんを含んでいるか否かに従って分離される。繊維ウェブ75(図6)が、プレスセクションの2つのプレスロール間のプレスニップ76を通して導かれる場合は、そこで発生する圧搾水は吸引装置77、78および配管ライン79を経由して排出される。
【0108】
同様に、でんぷん汚染された圧搾水およびコンディショニングから生じる水は、吸引管80、81によって吸引され、配管ライン82経由で排出される。配管ライン79、82の圧搾水は、汚染度に応じて、合流させることができるか、あるいはさらに分離して処理することができる。
【0109】
抄紙機83(図7)において、排出されるべき排水はワイヤセクション84およびプレスセクション85において発生する。ユニット86において浄化処理される圧搾水は、ワイヤセクション84のヘッドボックスに、例えば希釈水として再供給される。処理ユニット86の前後で、圧搾水または圧搾水の一部を、でんぷん調製用装置87に再供給することができるので、圧搾水中に既に含まれるでんぷんを製造工程に再供給することが可能になる。
【0110】
同様に、処理された圧搾水の一部は、ユニット86から、原料調製装置88または抄紙機83の上流側に配置される導入部装置89に、そこでの希釈水として使用するために還流される。圧搾水の量が蓄積したために、あるいはそれが好ましくない老廃物質を過度に多く含むために必要でなくなる圧搾水の一部は、除去ユニット90によって製造工程から取り出して、廃水として処理しなければならない。
【0111】
ワイヤセクション102から入来する繊維ウェブ101(図8)はプレスセクション103を通して導かれる。このプレスセクション103において、繊維ウェブ101は、ロール170および対向ロールによって形成されるプレスニップ169を通過した後、それぞれロール106および対向ロール107と、ロール106および対向ロール108とによって形成される2つのプレスニップ104、105を通して導かれる。対向ロール107には、繊維ウェブ101をベルトまたはフェルト109から吸引離脱させると共に、特に繊維ウェブ101の脱水を補助するために、吸引帯が付加的に設けられる。
【0112】
繊維ウェブ101がプレスロール107の回りを包み込んでいるので、塗布剤は、プレスロール107の外殻の領域において、装置110によって繊維ウェブ101の片面151に塗布される。塗布剤はでんぷんあるいはサイズ剤である。繊維ウェブ101を加熱するため、スチームをスプレーすることも好ましい。塗布剤はプレスニップ104の直前で塗布される。繊維ウェブ101は、続いて、塗布剤をそれに強固に結合させるために、第1プレスニップ104を通して導かれ、一方繊維ウェブ101からの水分はプレスフェルト111によって排除される。この場合、繊維ウェブ101は、プレスニップ104において、繊維ウェブ101に塗布剤を塗布する面151と反対側に位置する繊維ウェブ101の面152においてのみ脱水される。従って、脱水は、繊維ウェブ101からの水分の脱水方向が塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになるように行われる。プレスニップ104に続くプレスニップ105においては、水分はプレスフェルト112によって排除される。この場合、繊維ウェブの脱水は、同様に、繊維ウェブ101が、繊維ウェブ101に塗布剤を塗布する面151と反対側に位置する繊維ウェブ101の面152においてのみ脱水されるように行われる。これは、プレスニップ105における繊維ウェブ101からの水分の脱水方向も、塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じであることを意味している。
【0113】
同様に、代替的な実施形態(図9)においても、第1プレスニップ104の前で、繊維ウェブ101に塗布が行われる。この場合、塗布装置113は、スプレー装置146および機能ベルト114を含んでいる。スプレー装置146は、塗布剤、特にでんぷんもしくはサイズ剤を機能ベルト114に移す。機能ベルト114は、この塗布剤を、繊維ウェブ101が対向ロール107の外殻の回りを包み込む時に、機能ベルト114および対向ロール107によって形成されるニップ115において繊維ウェブ101に転写する。
【0114】
機能ベルト114には、加熱用、特に非接触型加熱用の加熱装置116を配置することができる。同様に、機能ベルト114には、コンディショニング装置も装備することができる。図8および図9の両者に表現される構成においては、塗布剤の塗布が、サクションロールとして形成される対向ロール107に対向して実行される。
【0115】
本発明の別の実施形態(図10)においては、塗布装置147がスプレー装置117およびロール106を備えている。スプレー装置117は、塗布剤を、対向ロール107とプレスニップ104を形成するロール106の外周表面に塗布する。ロール106は、プレスニップ104において、塗布剤を繊維ウェブ101の面151上に転写する。
【0116】
本発明のさらに別の実施形態(図11)においては、機能ベルト114を用いる図9の実施形態の場合と同様に、ロール106への塗布が、塗布装置148のスプレー装置118によって間接的に行われる。このスプレー装置118が塗布剤を機能ベルト119に塗布し、この塗布剤がニップ120においてロール106に移され、さらにそれが、プレスニップ104において繊維ウェブ101の面151上に転写される。
【0117】
図9〜図11に示すすべての実施形態において、第1プレスニップ104および第2プレスニップ105における脱水は、繊維ウェブ101からの水分の脱水方向が塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになるように行われる。
【0118】
場合によって、図8〜図11に示すプレス配置において、対向ロール108をシュープレスロールとして構成することができる。
【0119】
さらに別の実施形態(図12)においては、ワイヤセクション121から入来する繊維ウェブ122が、下部フェルト123によって、ロール125を有するプレスセクション124に移送される。ロール125は、対向ロール128、129と共に2つのプレスニップ126、127を形成する。2つの対向ロールの内、対向ロール128は同時にサクションロールとして形成される。
【0120】
プレスセクション124は塗布装置149を備えており、それによって、塗布剤が、プレスニップ126において繊維ウェブ122の面151に転写される。このために、プレスニップ126の前で、塗布剤、例えばでんぷんが、空気透過性であるが液体浸透性ではない機能ベルト131にスプレー装置130によって塗布される。機能ベルト131は、繊維ウェブおよびプレスフェルト153と共にプレスニップ126を通過する。プレスニップ126においては、塗布剤が繊維ウェブ122の面151に転写され、同時に、プレスフェルト153の補助によって、面151と反対側の面152から脱水される。その結果、繊維ウェブ122からの脱水方向は、塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになる。機能ベルト131はロール125の回りを包み込んでいる。
【0121】
繊維ウェブ122は、プレスニップ126を通過した後、プレスニップ127を通過する。ここでも、脱水は、繊維ウェブ122からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブの中への浸透方向と同じになるように行われる。繊維ウェブ122は、プレスニップ127も機能ベルト131と接触した状態で通過する。プレスニップ127がプレスセクション124の最終プレスニップである。
【0122】
機能ベルト131は、さらに、プレスセクション124と乾燥セクション136との間の移送ベルトとしても機能する。
【0123】
機能ベルト131は、プレスセクション124を通過した後、機能ベルト131によって搬送される繊維ウェブ122と共に、乾燥装置132、133によって、両面から、あるいは少なくとも片面、特に上面から加熱かつ乾燥される。上部乾燥装置132は熱風を生成し、下部乾燥装置133は、例えば放射型のドライヤである。さらに、ドライヤーカンバスの後続領域において、繊維ウェブ122に対して別の乾燥装置134を配置することができる。ベルト131が空気不透過性である場合には、乾燥装置132、134は共に放射型ドライヤである。しかし、空気透過型のベルト131を用いる方が、ベルトを通して乾燥を実施し得るという点で有利である。
【0124】
機能ベルト131を空気不透過性とする場合には、乾燥装置134上における繊維ウェブ122の存在を検知する光学的または熱的センサーを有する自動断裂検出器を設けることが望ましい。これによって、ウェブが断裂した場合には、乾燥装置134のスイッチを切るかまたは乾燥装置134の向きを変えてその作動を停止させることができ、その結果、乾燥装置134がドライヤーカンバスを加熱せず、それを損傷しない。
【0125】
機能ベルト131に寄せてコンディショニング装置135が設置される。清浄化剤は例えばスプレーによって塗布され、引き続いて拭き取られる。
【0126】
機能ベルト131は、装置130によって塗布された塗布剤を、機能ベルト131が繊維ウェブ122と共にロール125の回りを包み込む時に、プレスニップ126において繊維ウェブ122に移し渡す。
【0127】
繊維ウェブ122は、プレスセクション124を通過した後、乾燥シリンダ137と、サクションロールとして形成される反転ロール138と、さらに負圧領域139とを有する単列の乾燥セクション136に導かれる。乾燥シリンダ137の外周面には塗布剤が塗布されたばかりの繊維ウェブ122の面が載っているので、この負圧領域139においては、繊維ウェブ122の乾燥シリンダ137からの確実な離脱を可能にするために、5kPaを超える負圧を使用することが望ましい。
【0128】
さらに別の例示的実施形態(図13)においては、ワイヤセクション121の上部ワイヤから入来する繊維ウェブ122が、ロール125と、対向ロール128、129とによって形成される2つのプレスニップ126、127を通して導かれる。この場合、この配置は、図12の実施形態に対して逆転されたデュオセントリ・ニプコフレックスプレスを表している。
【0129】
空気不透過性のベルト140がロール125の回りを包み込んでいる。プレスセクション124は、機能ベルト140およびスプレー装置141を含む塗布装置150を有する。スプレー装置は塗布剤を機能ベルト140にスプレーする。機能ベルト140は、プレスニップ126を通過し、そのプレスニップ126において、塗布された塗布剤を繊維ウェブ122の面151に移し渡す。繊維ウェブ122は、続いて、前方の空気透過性のベルト142の方に導かれる。ベルト142に寄せて乾燥装置143、144が設置される。この乾燥装置143、144は、例えば放射熱または熱風によって両面に対して無接触で作用する。無接触乾燥用の乾燥装置145を、ベルト140に寄せて設けることもできる。
【0130】
図13に表現される実施形態においても、2つのプレスニップ126および127における脱水は、繊維ウェブ122からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブ122の中への浸透方向と同じになるように行われる。
【0131】
図13の実施形態は、図12に示す構成例に比べて、ベルト142を、繊維ウェブ122がベルト142上に全く導かれず従って加熱装置143、144がベルト142を加熱する場合に損傷を受けずあるいは破壊されない材料から構成し得るという利点を有する。
【0132】
図14は本発明のさらに別の実施形態を示す。この実施形態は、繊維ウェブの搬送方向に相前後して配置される2つのシュープレスユニット157、158を備えるプレスセクション155を含んでいる。
【0133】
繊維ウェブ156は、上部プレスフェルト162と下部プレスフェルト163との間にサンドイッチされてシュープレスユニット157を通して導かれる。
【0134】
その後、繊維ウェブ156は、上部プレスフェルト161に移載され、この上部プレスフェルト161と機能ベルト159との間にサンドイッチされて、シュープレスロール166および対向ロール167によって形成されるプレスニップ168を通して導かれる。この場合、繊維ウェブは面152においてのみ脱水される。
【0135】
機能ベルト159の側では、繊維ウェブ156の搬送方向にプレスニップ168の前で、液体の塗布剤が、塗布装置164によって繊維ウェブ156の面151に塗布ざれる。塗布装置164はスプレー装置165および機能ベルト159を有する。この実施例においては、塗布剤は、機能ベルト159の上に塗布され、ローラ171の部分を起点として繊維ウェブ156に転写され、続いてプレスニップ168において繊維ウェブ156の中に移し込まれる。
【0136】
機能ベルト159は液体不浸透性であるので、繊維ウェブ156は、プレスニップ168において、繊維ウェブ156からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブ156の中への浸透方向と同じになるように脱水される。
【0137】
繊維ウェブ156は、プレスニップ168を通過した後、機能ベルト159上において前方に搬送され、ロール172において乾燥セクション160に移される。
【0138】
図15は、繊維ウェブの搬送方向に互いに前後に配置された3つのシュープレスユニット175、176および177を有するプレスセクションの実施形態を示す。
【0139】
シュープレスユニット175通過後、シュープレスユニット176によって形成されるプレスニップ177を通過する前に、液体の塗布剤が、機能ベルト179によって繊維ウェブ156の面151に塗布される。繊維ウェブ156は、上部プレスフェルト178と液体不浸透性の機能ベルト179との間にサンドイッチされてプレスニップ177を通して導かれる。この場合、繊維ウェブ156は面152においてのみ脱水される。
【0140】
繊維ウェブ156は、シュープレスユニット176を通過した後、シュープレスユニット177の上部プレスフェルト181上において、さらに上部プレスフェルト181と液体不浸透性ベルト182との間にサンドイッチされて、シュープレスユニット177によって形成されるプレスニップ180を通して導かれる。この場合、繊維ウェブ156は面152においてのみ脱水される。
【0141】
この場合、繊維ウェブ156は、プレスニップ180および177において、繊維ウェブ156からの脱水方向が塗布剤の繊維ウェブ156の中への浸透方向と同じになるように脱水される。
【0142】
例として、一方で図1〜図7を用いて、他方で図8〜図15を用いて詳しく説明した本発明の2つの態様は、所望に応じて任意に組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】異なるプレスシリンダ対によって形成される2つのプレスニップを備え、かつ、流体の塗布剤を塗布する少なくとも1つの装置を有するプレスセクションを示す。
【図2a】図1によるプレスセクションの第2プレスニップの後の領域の変形態を示す。
【図2b】図1によるプレスセクションの第2プレスニップの後の領域の別の変形態を示す。
【図3】1つの中心ロールと、流体の塗布剤を塗布する2つの装置とを有するプレスセクションを示す。
【図4】流体の塗布剤を塗布する単一の装置を有する図3のプレスセクションを示す。
【図5】それぞれに塗布装置が配置されるプレスセクションおよび単列乾燥セクションを示す。
【図6】でんぷんで汚染された圧搾水を導出する吸引装置を有するプレスセクションの概略的表現を示す。
【図7】でんぷんで汚染された圧搾水の使用および調製に関する概略線図を示す。
【図8】2つのプレスニップを形成する1つの中心ロールを備えたプレスセクションであって、繊維ウェブへの塗布が、そのウェブが第1プレスロール上を導かれる時にプレスニップの前で行われるプレスセクションを示す。
【図9】塗布がベルトに対して行われる図8のプレスセクションであって、このベルトが、ウェブが第1プレスロール上を導かれる時にウェブ上に塗布を転写するプレスセクションを示す。
【図10】塗布が中心ロールの円周表面上に行われる図8のプレスセクションを示す。
【図11】塗布がベルトに対して行われ、このベルトが中心ロール上に塗布を転写する図8のプレスセクションを示す。
【図12】乾燥セクションの一部と連携して2つのプレスニップを形成する1つの中心ロールを備えたプレスセクションであって、塗布が、その中心ロールの周りを包み込むベルトに対して行われるプレスセクションを示す。
【図13】乾燥セクションの一部と連携したプレスセクションであって、同様に塗布が中心ロールの周りを包み込むベルトに対して行われるプレスセクションを示す。
【図14】前後に配置された2つのシュー型プレスを備えたプレスセクションを示す。
【図15】前後に配置された3つのシュー型プレスを備えたプレスセクションを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置(12、13、16;45)を用いて、125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2未満の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブ(3、32、75)を製造する方法において、
使用塗布剤を、固形分濃度、特にでんぷん固形分の濃度が15%より多い、特に25%より多い、さらに特定して30%より多い液体とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2未満の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブ(3、32、75)を製造する、特に請求項1に記載の方法であり、流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置(12、13、16;45)を、該繊維ウェブ(3、32、75)を製造する機械のプレスセクションにおいて使用し、該繊維ウェブ(3、32、75)をフェルト(5、6、10、11;33、39;59)および移送ベルト(47、66)によって前方に搬送する方法において、
該フェルト(5、6、10、11;33、39;59)の少なくとも1つまたは該移送ベルト(47、66)の1つを、特有の循環系によって供給および排出される液体によってコンディショニングすることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記液体を、前記塗布剤特にでんぷん含有液体を製造するための調製工程に還流することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塗布剤の塗布量が、巻取機のリールに巻き取られる完成紙または完成板紙の単位面積当たり質量の2〜8%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記塗布剤の温度を、該塗布剤が直接的または間接的に塗布される移送ベルト(11)またはフェルトまたはロールを加熱することによって、前記装置離脱後に高めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記塗布剤を、前記プレスセクション(1)におけるプレスニップの直前、特に最終プレスニップ(17;52)の前で、前記繊維ウェブ(3、32、75)に直接的または間接的に塗布することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記使用塗布剤が、天然または未加熱処理のでんぷん、あるいは、分解されたでんぷん、特に酸化分解または酵素分解されたでんぷん、あるいは、カチオン性のでんぷんであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記塗布剤、特にでんぷんの濃度が15%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記塗布剤を、前記機械的プレス操作の後で前記繊維ウェブ(32)の両面に塗布し、その場合、該繊維ウェブ(32)は80g/m2を超える坪量を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記塗布剤の最初の塗布を前記プレスセクションのプレスニップ(52)において実行すること、および、前記繊維ウェブ(32)の反対側の面に対する2回目の塗布を乾燥セクション(69)において実行することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
特に請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するための機械において、
前記プレスセクション(1、31)が前記フェルトまたは前記移送ベルトを導く複数のガイドロールを備えること、および、フェルトをコンディショニングするための少なくとも1つの装置(18)が第1の外側のガイドロールの前に配置されることを特徴とする機械。
【請求項12】
フェルトをコンディショニングするための別の装置(49、50)が、前記フェルトまたは前記移送ベルトの循環方向において前記第1のガイドロールに続くガイドロールに対向して設置されることを特徴とする請求項11に記載の機械。
【請求項13】
前記ロールの外周表面を清浄化するドクターが、前記プレスセクション(1、31)のロールに対向して、特に前記第1のガイドロールおよび/または別のガイドロールに対向して設置されることを特徴とする請求項11または12に記載の機械。
【請求項14】
特にコンディショニングされた水、または化学助剤特に界面活性剤を前記ロール(72)の外周表面にスプレーする装置(73)、あるいは、該外周表面を清浄化するブラシが、前記ロールの少なくとも1つに配置されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の機械。
【請求項15】
前記装置および/または前記ブラシによって排除された前記塗布剤を集める装置、および、それを前記塗布剤調製システムに戻す装置が設けられることを特徴とする請求項14に記載の機械。
【請求項16】
特に請求項11〜15のいずれか1項に記載の、紙、板紙、または他の繊維ウェブ(101、122、156)を製造する機械であって、該繊維ウェブ(101、122、156)を通過させることができる少なくとも1つのプレスニップ(104、126、168、177)を備えたプレスセクション(103、124、155、173)と、該プレスセクション(103、124、155、173)において該繊維ウェブ(101、122、156)の片面(151)に液体の塗布剤を塗布し得る少なくとも1つの塗布装置(110、113、147、148;149、150、164、183)とを含む機械において、
該塗布剤を、該プレスニップ(104、126、168、177)の直前および/または該プレスニップ(104、126、168、177)において、該塗布装置(110、113、147、148;149、150、164、183)によって該繊維ウェブ(101、122、156)に塗布することが可能であることを特徴とする機械。
【請求項17】
前記プレスセクション(103、124、155、173)が、前記繊維ウェブ(101、122、156)を、前記プレスニップ(104、126、168、177)において、前記繊維ウェブ(101、122、156)に前記塗布剤を塗布する面(151)の反対側に位置する前記繊維ウェブ(101、122、156)の面(152)においてのみ脱水し得るように構成されることを特徴とする請求項16に記載の機械。
【請求項18】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を、該繊維ウェブを脱水し得る面(152)においてプレスフェルト(111、153、161、178)と接触させて前記プレスニップ(104、126、168、177)を通して導くことができることを特徴とする請求項17に記載の機械。
【請求項19】
前記プレスセクションが、前記繊維ウェブの搬送方向に、前記プレスニップに続くように配置される1つのプレスニップを備えること、および、該プレスセクションにおいて、別の液体塗布剤を、前記第1の塗布面と反対側に位置する前記繊維ウェブの面に塗布し得る別の塗布装置が設けられることを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の機械。
【請求項20】
前記プレスセクション(103、124、155、173)が、前記繊維ウェブ(101、122、156)の搬送方向に、前記プレスニップ(104、126、168、177)の後に別のプレスニップ(105、127、180)を有し、かつ、前記プレスセクション(103、124、155、173)が、該繊維ウェブ(101、122、156)を、該別のプレスニップ(105、127、180)の少なくともいくつか、好ましくはすべてにおいて、該繊維ウェブ(101、122、156)に前記塗布剤を塗布する面(151)の反対側に位置する該繊維ウェブ(101、122、156)の面(152)においてのみ脱水し得るように構成されることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の機械。
【請求項21】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を、該繊維ウェブを脱水し得る面(152)においてプレスフェルト(112、154、181)と接触させて前記別のプレスニップ(105、127、180)の1つを通して導くことができることを特徴とする請求項20に記載の機械。
【請求項22】
前記プレスニップ(104、126)がロール(106、125)および対向ロール(107、128)から形成され、該対向ロール(107、128)は、負圧吸引可能であると共に、前記繊維ウェブ(101、122、156)の脱水可能面(152)と接触させることができることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の機械。
【請求項23】
前記プレスニップ(168、177)がロール(166、184)および対向ロール(167、185)から形成され、該ロール(166、184)がシューロールであることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の機械。
【請求項24】
前記塗布装置(110、113、164、183)が、前記塗布剤を前記繊維ウェブ(101、156)上に直接転写し得るスプレー装置(110、165、174)および/または機能ベルト(114、159、179)を含むことを特徴とする請求項16〜23のいずれか1項に記載の機械。
【請求項25】
前記塗布装置(147、148)が、前記対向ロール(107)と共に前記プレスニップ(104)を形成するロール(106)を含み、該プレスニップ(104)において、前記塗布剤が該ロール(106)から前記繊維ウェブ(101)に転写されることを特徴とする請求項16〜24のいずれか1項に記載の機械。
【請求項26】
前記塗布装置(147)がスプレー装置(117)を含み、該スプレー装置(117)によって前記塗布剤を前記ロール(106)に転写することができることを特徴とする請求項25に記載の機械。
【請求項27】
前記塗布装置(148)が機能ベルト(119)を含み、該機能ベルト(119)によって前記塗布剤を前記ロール(106)に転写することができることを特徴とする請求項25に記載の機械。
【請求項28】
前記塗布装置(149、150、164、183)が機能ベルト(131、140、159、179)を含み、前記繊維ウェブ(122、156)を、該機能ベルト(131、140、159、179)と接触させて前記プレスニップ(126、168、177)を通して導くことが可能であることを特徴とする請求項16〜23のいずれか1項に記載の機械。
【請求項29】
前記塗布剤が、前記繊維ウェブ(122)に、前記繊維ウェブ(122)が前記プレスニップ(126)を通過する時に転写されることを特徴とする請求項28に記載の機械。
【請求項30】
前記塗布剤が、前記繊維ウェブ(122)に、前記繊維ウェブ(122)が前記プレスニップ(168、177)を通過する前に転写されることを特徴とする請求項28に記載の機械。
【請求項31】
前記繊維ウェブ(122)を、前記機能ベルト(131、140)と接触させながら、搬送方向において前記プレスニップ(126)に続くプレスニップ(127)を通して導くことができることを特徴とする請求項28に記載の機械。
【請求項32】
前記プレスセクション(103、124)が、2つの対向ロール(107、108、128、129)と接触するロール(106、125)を有し、該ロール(106、125)が、1つの対向ロール(107、128)と前記プレスニップ(104、126)を形成し、もう一方の対向ロール(108、129)と前記後続のプレスニップ(105、127)を形成することを特徴とする請求項16〜31のいずれか1項に記載の機械。
【請求項33】
前記機能ベルト(131、140)が前記ロール(125)の回りを包み込むことを特徴とする請求項32に記載の機械。
【請求項34】
前記機能ベルト(114、119、131、140)が液体不浸透性であることを特徴とする請求項16〜33のいずれか1項に記載の機械。
【請求項35】
前記機能ベルト(131)が空気透過性および/または放射に対して透過性であることを特徴とする請求項34に記載の機械。
【請求項36】
前記後続のプレスニップ(105、127、180)が、前記プレスセクション(103、124、173)の最終のプレスニップであることを特徴とする請求項16〜35のいずれか1項に記載の機械。
【請求項37】
前記機能ベルト(131、140、159)が、少なくとも部分的に、前記プレスセクション(124、155)と乾燥セクション(136、160)との間の移送ベルトとして機能することを特徴とする請求項16〜36のいずれか1項に記載の機械。
【請求項38】
前記繊維ウェブ(122)の搬送方向に、好ましくは非接触型乾燥用の乾燥装置(132、133、143、144)が、前記プレスセクション(124)の最終プレスニップ(127)と前記乾燥セクション(136)の最初の乾燥シリンダ(137)との間に設けられることを特徴とする請求項16〜37のいずれか1項に記載の機械。
【請求項39】
前記プレスセクション(103、124、155、173)の領域における温度、特に前記プレスニップ(104、126、168、177)の領域における温度が、40℃より高く、好ましくは50℃より高く、80℃までであることを特徴とする請求項16〜38のいずれか1項に記載の機械。
【請求項40】
前記プレスセクション(103、124)がロールのプレスニップのみを含むこと、および、該プレスセクション(103、124)を通過する間に前記繊維ウェブ(101、122)に作用する線力の合計が300kN/m以上、好ましくは350kN/m以上であることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項41】
前記プレスセクション(103、124)が1つのシュープレスニップを含むこと、および、該プレスセクション(103、124)を通過する間に前記繊維ウェブ(101、122)に作用する線力の合計が700kN/m以上、好ましくは1000kN/m以上であることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項42】
前記プレスセクション(155)が2つのシュープレスニップを含むこと、および、該プレスセクション(155)を通過する間に前記繊維ウェブ(156)に作用する線力の合計が1700kN/m以上、好ましくは2000kN/m以上であることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項43】
前記プレスセクション(173)が3つのシュープレスニップを含むこと、および、該プレスセクション(173)を通過する間に前記繊維ウェブ(156)に作用する線力の合計が2600kN/m以上、好ましくは3000kN/m以上、特に好ましくは4000kN/mであることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項44】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を載せて前記プレスニップ(104、126、168、177)を通過することができる前記プレスフェルト(111、153、161、178)が予熱されることを特徴とする請求項16〜43のいずれか1項に記載の機械。
【請求項45】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を、予熱されたプレスフェルト(112、154、181)に載せて、前記別のプレスニップ(105、127、180)の少なくとも1つを通して導くことができることを特徴とする請求項16〜44のいずれか1項に記載の機械。
【請求項46】
前記機能ベルト(114、119、131、140、159、179)を予熱することができることを特徴とする請求項16〜45のいずれか1項に記載の機械。
【請求項47】
前記繊維ウェブ(101、122、156)が、前記塗布剤を塗布する時点で予熱されることを特徴とする請求項16〜46のいずれか1項に記載の機械。
【請求項48】
前記繊維ウェブ(101、122、156)、および/または前記プレスフェルト(111、112、153、154)の1つ、および/または前記機能ベルト(114、119、131、140)を、スチーム、放射、熱風によって予熱することができることを特徴とする請求項45〜47のいずれか1項に記載の機械。
【請求項49】
前記繊維ウェブ(101、122、156)に塗布し得る液体の塗布剤のでんぷん濃度が、少なくとも12%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%であることを特徴とする請求項16〜48のいずれか1項に記載の機械。
【請求項1】
流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置(12、13、16;45)を用いて、125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2未満の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブ(3、32、75)を製造する方法において、
使用塗布剤を、固形分濃度、特にでんぷん固形分の濃度が15%より多い、特に25%より多い、さらに特定して30%より多い液体とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
125g/m2未満、特に100g/m2未満、さらに特定して80g/m2未満の単位面積当たり質量を有する紙、板紙、薄葉紙または他の繊維ウェブ(3、32、75)を製造する、特に請求項1に記載の方法であり、流体の塗布剤、特にでんぷんを塗布する装置(12、13、16;45)を、該繊維ウェブ(3、32、75)を製造する機械のプレスセクションにおいて使用し、該繊維ウェブ(3、32、75)をフェルト(5、6、10、11;33、39;59)および移送ベルト(47、66)によって前方に搬送する方法において、
該フェルト(5、6、10、11;33、39;59)の少なくとも1つまたは該移送ベルト(47、66)の1つを、特有の循環系によって供給および排出される液体によってコンディショニングすることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記液体を、前記塗布剤特にでんぷん含有液体を製造するための調製工程に還流することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塗布剤の塗布量が、巻取機のリールに巻き取られる完成紙または完成板紙の単位面積当たり質量の2〜8%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記塗布剤の温度を、該塗布剤が直接的または間接的に塗布される移送ベルト(11)またはフェルトまたはロールを加熱することによって、前記装置離脱後に高めることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記塗布剤を、前記プレスセクション(1)におけるプレスニップの直前、特に最終プレスニップ(17;52)の前で、前記繊維ウェブ(3、32、75)に直接的または間接的に塗布することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記使用塗布剤が、天然または未加熱処理のでんぷん、あるいは、分解されたでんぷん、特に酸化分解または酵素分解されたでんぷん、あるいは、カチオン性のでんぷんであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記塗布剤、特にでんぷんの濃度が15%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記塗布剤を、前記機械的プレス操作の後で前記繊維ウェブ(32)の両面に塗布し、その場合、該繊維ウェブ(32)は80g/m2を超える坪量を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記塗布剤の最初の塗布を前記プレスセクションのプレスニップ(52)において実行すること、および、前記繊維ウェブ(32)の反対側の面に対する2回目の塗布を乾燥セクション(69)において実行することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
特に請求項3〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するための機械において、
前記プレスセクション(1、31)が前記フェルトまたは前記移送ベルトを導く複数のガイドロールを備えること、および、フェルトをコンディショニングするための少なくとも1つの装置(18)が第1の外側のガイドロールの前に配置されることを特徴とする機械。
【請求項12】
フェルトをコンディショニングするための別の装置(49、50)が、前記フェルトまたは前記移送ベルトの循環方向において前記第1のガイドロールに続くガイドロールに対向して設置されることを特徴とする請求項11に記載の機械。
【請求項13】
前記ロールの外周表面を清浄化するドクターが、前記プレスセクション(1、31)のロールに対向して、特に前記第1のガイドロールおよび/または別のガイドロールに対向して設置されることを特徴とする請求項11または12に記載の機械。
【請求項14】
特にコンディショニングされた水、または化学助剤特に界面活性剤を前記ロール(72)の外周表面にスプレーする装置(73)、あるいは、該外周表面を清浄化するブラシが、前記ロールの少なくとも1つに配置されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の機械。
【請求項15】
前記装置および/または前記ブラシによって排除された前記塗布剤を集める装置、および、それを前記塗布剤調製システムに戻す装置が設けられることを特徴とする請求項14に記載の機械。
【請求項16】
特に請求項11〜15のいずれか1項に記載の、紙、板紙、または他の繊維ウェブ(101、122、156)を製造する機械であって、該繊維ウェブ(101、122、156)を通過させることができる少なくとも1つのプレスニップ(104、126、168、177)を備えたプレスセクション(103、124、155、173)と、該プレスセクション(103、124、155、173)において該繊維ウェブ(101、122、156)の片面(151)に液体の塗布剤を塗布し得る少なくとも1つの塗布装置(110、113、147、148;149、150、164、183)とを含む機械において、
該塗布剤を、該プレスニップ(104、126、168、177)の直前および/または該プレスニップ(104、126、168、177)において、該塗布装置(110、113、147、148;149、150、164、183)によって該繊維ウェブ(101、122、156)に塗布することが可能であることを特徴とする機械。
【請求項17】
前記プレスセクション(103、124、155、173)が、前記繊維ウェブ(101、122、156)を、前記プレスニップ(104、126、168、177)において、前記繊維ウェブ(101、122、156)に前記塗布剤を塗布する面(151)の反対側に位置する前記繊維ウェブ(101、122、156)の面(152)においてのみ脱水し得るように構成されることを特徴とする請求項16に記載の機械。
【請求項18】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を、該繊維ウェブを脱水し得る面(152)においてプレスフェルト(111、153、161、178)と接触させて前記プレスニップ(104、126、168、177)を通して導くことができることを特徴とする請求項17に記載の機械。
【請求項19】
前記プレスセクションが、前記繊維ウェブの搬送方向に、前記プレスニップに続くように配置される1つのプレスニップを備えること、および、該プレスセクションにおいて、別の液体塗布剤を、前記第1の塗布面と反対側に位置する前記繊維ウェブの面に塗布し得る別の塗布装置が設けられることを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の機械。
【請求項20】
前記プレスセクション(103、124、155、173)が、前記繊維ウェブ(101、122、156)の搬送方向に、前記プレスニップ(104、126、168、177)の後に別のプレスニップ(105、127、180)を有し、かつ、前記プレスセクション(103、124、155、173)が、該繊維ウェブ(101、122、156)を、該別のプレスニップ(105、127、180)の少なくともいくつか、好ましくはすべてにおいて、該繊維ウェブ(101、122、156)に前記塗布剤を塗布する面(151)の反対側に位置する該繊維ウェブ(101、122、156)の面(152)においてのみ脱水し得るように構成されることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の機械。
【請求項21】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を、該繊維ウェブを脱水し得る面(152)においてプレスフェルト(112、154、181)と接触させて前記別のプレスニップ(105、127、180)の1つを通して導くことができることを特徴とする請求項20に記載の機械。
【請求項22】
前記プレスニップ(104、126)がロール(106、125)および対向ロール(107、128)から形成され、該対向ロール(107、128)は、負圧吸引可能であると共に、前記繊維ウェブ(101、122、156)の脱水可能面(152)と接触させることができることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の機械。
【請求項23】
前記プレスニップ(168、177)がロール(166、184)および対向ロール(167、185)から形成され、該ロール(166、184)がシューロールであることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の機械。
【請求項24】
前記塗布装置(110、113、164、183)が、前記塗布剤を前記繊維ウェブ(101、156)上に直接転写し得るスプレー装置(110、165、174)および/または機能ベルト(114、159、179)を含むことを特徴とする請求項16〜23のいずれか1項に記載の機械。
【請求項25】
前記塗布装置(147、148)が、前記対向ロール(107)と共に前記プレスニップ(104)を形成するロール(106)を含み、該プレスニップ(104)において、前記塗布剤が該ロール(106)から前記繊維ウェブ(101)に転写されることを特徴とする請求項16〜24のいずれか1項に記載の機械。
【請求項26】
前記塗布装置(147)がスプレー装置(117)を含み、該スプレー装置(117)によって前記塗布剤を前記ロール(106)に転写することができることを特徴とする請求項25に記載の機械。
【請求項27】
前記塗布装置(148)が機能ベルト(119)を含み、該機能ベルト(119)によって前記塗布剤を前記ロール(106)に転写することができることを特徴とする請求項25に記載の機械。
【請求項28】
前記塗布装置(149、150、164、183)が機能ベルト(131、140、159、179)を含み、前記繊維ウェブ(122、156)を、該機能ベルト(131、140、159、179)と接触させて前記プレスニップ(126、168、177)を通して導くことが可能であることを特徴とする請求項16〜23のいずれか1項に記載の機械。
【請求項29】
前記塗布剤が、前記繊維ウェブ(122)に、前記繊維ウェブ(122)が前記プレスニップ(126)を通過する時に転写されることを特徴とする請求項28に記載の機械。
【請求項30】
前記塗布剤が、前記繊維ウェブ(122)に、前記繊維ウェブ(122)が前記プレスニップ(168、177)を通過する前に転写されることを特徴とする請求項28に記載の機械。
【請求項31】
前記繊維ウェブ(122)を、前記機能ベルト(131、140)と接触させながら、搬送方向において前記プレスニップ(126)に続くプレスニップ(127)を通して導くことができることを特徴とする請求項28に記載の機械。
【請求項32】
前記プレスセクション(103、124)が、2つの対向ロール(107、108、128、129)と接触するロール(106、125)を有し、該ロール(106、125)が、1つの対向ロール(107、128)と前記プレスニップ(104、126)を形成し、もう一方の対向ロール(108、129)と前記後続のプレスニップ(105、127)を形成することを特徴とする請求項16〜31のいずれか1項に記載の機械。
【請求項33】
前記機能ベルト(131、140)が前記ロール(125)の回りを包み込むことを特徴とする請求項32に記載の機械。
【請求項34】
前記機能ベルト(114、119、131、140)が液体不浸透性であることを特徴とする請求項16〜33のいずれか1項に記載の機械。
【請求項35】
前記機能ベルト(131)が空気透過性および/または放射に対して透過性であることを特徴とする請求項34に記載の機械。
【請求項36】
前記後続のプレスニップ(105、127、180)が、前記プレスセクション(103、124、173)の最終のプレスニップであることを特徴とする請求項16〜35のいずれか1項に記載の機械。
【請求項37】
前記機能ベルト(131、140、159)が、少なくとも部分的に、前記プレスセクション(124、155)と乾燥セクション(136、160)との間の移送ベルトとして機能することを特徴とする請求項16〜36のいずれか1項に記載の機械。
【請求項38】
前記繊維ウェブ(122)の搬送方向に、好ましくは非接触型乾燥用の乾燥装置(132、133、143、144)が、前記プレスセクション(124)の最終プレスニップ(127)と前記乾燥セクション(136)の最初の乾燥シリンダ(137)との間に設けられることを特徴とする請求項16〜37のいずれか1項に記載の機械。
【請求項39】
前記プレスセクション(103、124、155、173)の領域における温度、特に前記プレスニップ(104、126、168、177)の領域における温度が、40℃より高く、好ましくは50℃より高く、80℃までであることを特徴とする請求項16〜38のいずれか1項に記載の機械。
【請求項40】
前記プレスセクション(103、124)がロールのプレスニップのみを含むこと、および、該プレスセクション(103、124)を通過する間に前記繊維ウェブ(101、122)に作用する線力の合計が300kN/m以上、好ましくは350kN/m以上であることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項41】
前記プレスセクション(103、124)が1つのシュープレスニップを含むこと、および、該プレスセクション(103、124)を通過する間に前記繊維ウェブ(101、122)に作用する線力の合計が700kN/m以上、好ましくは1000kN/m以上であることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項42】
前記プレスセクション(155)が2つのシュープレスニップを含むこと、および、該プレスセクション(155)を通過する間に前記繊維ウェブ(156)に作用する線力の合計が1700kN/m以上、好ましくは2000kN/m以上であることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項43】
前記プレスセクション(173)が3つのシュープレスニップを含むこと、および、該プレスセクション(173)を通過する間に前記繊維ウェブ(156)に作用する線力の合計が2600kN/m以上、好ましくは3000kN/m以上、特に好ましくは4000kN/mであることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の機械。
【請求項44】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を載せて前記プレスニップ(104、126、168、177)を通過することができる前記プレスフェルト(111、153、161、178)が予熱されることを特徴とする請求項16〜43のいずれか1項に記載の機械。
【請求項45】
前記繊維ウェブ(101、122、156)を、予熱されたプレスフェルト(112、154、181)に載せて、前記別のプレスニップ(105、127、180)の少なくとも1つを通して導くことができることを特徴とする請求項16〜44のいずれか1項に記載の機械。
【請求項46】
前記機能ベルト(114、119、131、140、159、179)を予熱することができることを特徴とする請求項16〜45のいずれか1項に記載の機械。
【請求項47】
前記繊維ウェブ(101、122、156)が、前記塗布剤を塗布する時点で予熱されることを特徴とする請求項16〜46のいずれか1項に記載の機械。
【請求項48】
前記繊維ウェブ(101、122、156)、および/または前記プレスフェルト(111、112、153、154)の1つ、および/または前記機能ベルト(114、119、131、140)を、スチーム、放射、熱風によって予熱することができることを特徴とする請求項45〜47のいずれか1項に記載の機械。
【請求項49】
前記繊維ウェブ(101、122、156)に塗布し得る液体の塗布剤のでんぷん濃度が、少なくとも12%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%であることを特徴とする請求項16〜48のいずれか1項に記載の機械。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−506048(P2008−506048A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520823(P2007−520823)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053302
【国際公開番号】WO2006/005738
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053302
【国際公開番号】WO2006/005738
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】
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