塗布装置、塗布方法及び電子写真感光体
【課題】円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布液を充填するための塗布槽と、前記塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部と、前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、を有し、前記筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布装置である。
【解決手段】塗布液を充填するための塗布槽と、前記塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部と、前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、を有し、前記筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、塗布方法及び電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真感光体の感光層を構成する光導電性材料としては、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛などの無機化合物およびポリビニルカルバゾールに代表される有機化合物が提案されており、また、感光層を電荷発生層と電荷輸送層とに分離した積層型電子写真感光体においては、電荷発生材料および電荷輸送材料として、種々の有機化合物が提案されて、有機感光体として実用化されている。従来、このような有機感光体の製造方法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布法等の各種塗布方法が知られているが、特に円筒状基材表面に均一性の高い感光層を形成する方法としては、浸漬塗布法が広く採用されている。
【0003】
浸漬塗布法では、円筒状基材を塗布槽に溜められた塗布液に浸漬し、次に適度な速度で引き上げて湿潤膜を基材表面に形成し、湿潤膜が乾燥固化することによって感光層が形成される。このような浸漬塗布するための装置として、例えば特許文献1に記載されているように、円筒状基材を塗布する塗布槽と、この塗布槽から溢出した塗布液を回収する塗布液受け(オーバーフローパン)と、塗布液の温度、濃度などを一定に調整する塗布液保持槽と、循環ポンプや配管などの塗布液循環装置と、円筒状基材を塗布槽に浸漬して引き上げる把持部材とを備える装置が広く採用されている。
【0004】
前述のような浸漬塗布法は工業的に広く普及しているが、電子写真装置の高性能化、例えば高信頼性、高画質化、低コスト化等に伴い、電子写真感光体に対する要求品質及びコストが厳しくなっている。具体的には、材料に関しては、高品質要求に答えるために、使用する塗布液の系が複雑、多様化し、且つ高価になっている。また、塗膜厚に関しては0.1ミクロンから40ミクロンまで、要求範囲が大きく拡大してきている。
【0005】
浸漬塗布法の問題点は浸漬直後の塗膜が重力により、下に垂れることにある(ダレ)。特に塗布液の溶剤の沸点が高いものほど乾燥せずに下に垂れてしまう。その結果、塗膜の膜厚が基材の上下で不均一になる。特に膜厚を厚くするほど溶剤が揮発しにくいため、膜厚のムラやダレが大きくなる。基材の上下方向の塗膜均一性を得るために、塗布液の溶剤としては、通常、蒸発速度の速い溶剤(沸点が低い溶剤)が用いられる。蒸発速度の速い溶剤を用いることにより、塗布液の固化を短時間で行うことができるが、次のような理由により、そのような溶剤を用いても膜厚ムラやダレが発生する場合がある。すなわち、特に蒸発し易い溶剤を用いると塗布液からの溶剤蒸気量が多くなり、浸漬塗布槽の塗布液面、オーバーフローパン内、筒状部表面および塗布直後の基材表面からの溶剤の蒸発により、浸漬塗布槽上部の溶剤蒸気濃度が高濃度になり、塗布槽から引き上げた円筒状基材面の塗布液の乾燥時間が増し、膜厚ムラやダレが大きくなる。
【0006】
このような膜厚ムラやダレの防止策として、浸漬塗布槽上部の溶剤蒸気濃度を低減すべく、特許文献2に記載されているように、円筒状基体が浸漬塗布槽中に浸漬している間に、塗布液受け皿近傍に外部よりエアーを送り込み、塗布液受け皿近傍より溶剤蒸気を同伴したエアーを排出し、浸漬塗布槽から円筒状基体を引き上げた時の円筒状基体周辺の溶剤蒸気濃度を事前に低減し、指触乾燥速度を促進させることで膜厚ムラやダレを防いでいる。
【0007】
また、特許文献3には、塗布液受け皿近傍に溶剤蒸気排出口を具備し、ON/OFF機構を付与した強制排気装置に連結し、浸漬塗布槽から円筒状基体を引き上げた時の円筒状基体周辺の溶剤蒸気濃度を制御するものが記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、循環塗布液を回収する塗布液受け皿の戻り配管に浸漬塗布槽の塗布液面より低い位置に溶剤蒸気排出口を設け、溶剤蒸気濃度をコントロールする方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献5には、浸漬塗布槽の上端部に、少なくとも1つ以上の切り欠き部又はせき部を有する電子写真感光体製造用浸漬塗布装置が記載されている。
【0010】
また、特許文献6には、浸漬塗布装置において、塗布槽の形状と浸漬基体の関係を、塗布槽の円筒部の長さを基体の長さの1.1倍以上とし、かつ塗布槽の内周と基体の外表面との間隔を15mm以上とする構成とした電子写真用感光体の塗布装置が記載されている。
【0011】
また、特許文献7には、浸漬塗布において、乾燥を行う少なくとも初期に導電性支持体側から加熱させる電子写真感光体の製造方法が記載されている。
【0012】
このような電子写真感光体の製造に限らず、浸漬塗布法については様々な検討が行われている。
【0013】
【特許文献1】特開平11−72932号公報
【特許文献2】特開昭59−127049号公報
【特許文献3】特開平3−151号公報
【特許文献4】特開平8−220786号公報
【特許文献5】特開2002−323778号公報
【特許文献6】特開平8−314163号公報
【特許文献7】特開平10−239868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置及び塗布方法である。
【0015】
また、本発明は、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を含む電子写真感光体である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、塗布液を充填するための塗布槽と、前記塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部と、前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、を有し、前記筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布装置である。
【0017】
また、前記塗布装置において、前記溶剤蒸発抑制部材が、前記開口部に接続され、前記筒状部の外周部を所定の間隔を持って覆う溶剤蒸発抑制筒状部を有することが好ましい。
【0018】
また、前記塗布装置において、前記溶剤蒸発抑制筒状部の上面側の開口部は、前記筒状部の上面よりも高い位置にあることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、塗布液を充填した塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布工程を含み、前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材により、前記筒状部の液面からの溶剤の蒸発を抑制しながら前記塗布を行う塗布方法である。
【0020】
さらに、本発明は、前記塗布装置を使用して製造された電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1によると、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供することができる。
【0022】
本発明の請求項2によると、円筒状基材表面により均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供することができる。
【0023】
本発明の請求項3によると、円筒状基材表面により均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項4によると、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布方法を提供することができる。
【0025】
本発明の請求項5によると、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を含む電子写真感光体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略構成図である。塗布装置1は、塗布槽10と、塗布液保持槽12と、オーバーフローパン(塗布液受け)14と、循環ポンプ16と、複数の筒状部(ポット)18と、蓋20と、溶剤の蒸発を抑制するための溶剤蒸発抑制部材22とを備える。蓋20はフード24を備え、溶剤蒸発抑制部材22は溶剤蒸発抑制筒状部26を備える。塗布槽10と塗布液保持槽12とはフィルタ28を介して塗布液供給配管30により接続されている。また、オーバーフローパン14と塗布液保持槽12とは戻り配管32により接続されている。
【0028】
塗布槽10に対して円筒状基材38が、図示しない公知の手段によって上下方向に移動可能に配置されている。各々の筒状部18に円筒状基材38を浸漬させ、引き上げることで複数本まとめて同時に塗布液を塗布することができる。
【0029】
塗布液保持槽12内で、塗布液が必要量保持され、図1には示していない公知の調整手段により、塗布液の温度、濃度などが十分に調整されている状態から、循環ポンプ16によって塗布液保持槽12内の塗布液がフィルタ28を通して塗布槽10に供給される。塗布槽10に供給された液は塗布槽10の上部に設けられた各筒状部18内を上昇し、溢流(オーバーフロー)する。塗布槽10の上部には、溢流する塗布液を受けるためのオーバーフローパン14が設けられており、溢流した塗布液はオーバーフローパン14から塗布液保持槽12に通じる戻り配管32を通って塗布液保持槽12に戻されることで塗布液は通常、図1に示す塗布装置1内を循環している。
【0030】
図1において、オーバーフローパン14の上部には蓋20があり、その蓋20の上部に風による塗膜の乾燥ムラを防止するためのフード24が設置されている。オーバーフローパン14内部のオーバーフローパン14底面上方にはオーバーフローパン14底面とほぼ並行になるように板状等の溶剤蒸発抑制部材22が設けられており、その溶剤蒸発抑制部材22は各筒状部18の位置に合わせて開口部34を有する。その開口部34には各筒状部18の高さに合わせて、溶剤の蒸発を抑制するための溶剤蒸発抑制筒状部26が各筒状部18の外周部を所定の間隔をもって覆うようにして溶剤蒸発抑制部材22の上方に向かって設けられている。図2は、複数の筒状部18と、溶剤蒸発抑制筒状部26を備える溶剤蒸発抑制部材22とを示す概略斜視図である。この溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間を塗布液が流れることにより、アスピレータの原理で溶剤蒸気がその隙間から吸引され、塗布液面近傍の溶剤蒸気濃度が強制的に低減させられる。吸引された溶剤蒸気は戻り配管32を通り、塗布液保持槽12を経由し、塗布液保持槽12に設けられた溶剤蒸気排出口36から外部へ放出される。放出された溶剤蒸気は図に示さない溶剤トラップ手段によりトラップされ、溶剤が回収される。なお、筒状部18における「筒状」とは円筒状に限らず、三角筒、四角筒、五角筒、六角筒等の多角筒状、楕円筒状等いずれの形状であってもよいが、通常は円筒状である。
【0031】
その溶剤蒸発抑制部材22の周囲とオーバーフローパン14とは溶剤蒸気が漏れるような隙間がほとんどないことが好ましい。
【0032】
図3に筒状部18の上端部付近の拡大図を示す。塗布槽の蓋20と溶剤蒸発抑制筒状部26の上端部との隙間aは、0mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上25mm以下の範囲であることがより好ましい。隙間aが30mmより大きいと各筒状部18の基材下端開口部を塞ぐように張った膜が割れ、隣の基材に塗布液が飛散することで表面欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0033】
溶剤蒸発抑制筒状部26の内面と筒状部18の外面との隙間bは、塗布液の筒状部18の外面に沿った流下を抑制しない範囲であれば特に限定されないが、4mm以上10mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上7mm以下の範囲であることがより好ましい。隙間bを4mm以上10mm以下とすることで、溢流した塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26に付着し、塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26の外周に溢れ出すことがなく、溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間から溶剤蒸気を吸入することが出来るようになる。隙間bが4mm未満であると、溢流した塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26に付着し、塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26の外周に溢れ出てしまう場合がある。隙間bが10mmより大きいと、溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間から溶剤蒸気を吸入する機能が低下してしまい、膜厚ムラやダレが生じやすくなる傾向がある。
【0034】
溶剤蒸発抑制部材22の上面と筒状部18の上端部との距離cは30mm以上250mm以下の範囲であることが好ましく、100mm以上200mm以下の範囲であることがより好ましい。距離cを30mm以上250mm以下の範囲とすることで、好ましい吸引効果を保持することができ、フード24内の溶剤蒸気濃度を好ましい範囲にすることができ膜厚ムラやダレなどの塗膜欠陥のない塗布膜を形成できる。距離cが30mm未満では吸引効果が低いために溶剤蒸気が十分排出されない場合があり、膜厚ムラやダレを生じやすくなる傾向がある。また距離cが250mmより高いと吸引効果が大き過ぎ、フード24内の溶剤蒸気濃度が低すぎて塗膜欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0035】
塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間を通過する平均流速dは0.9m/min以上3.0m/min以下の範囲であることが好ましく、1.0m/min以上2.5m/min以下の範囲であることがより好ましい。平均流速dを0.9m/min以上3.0m/min以下の範囲とすることで、好ましい吸引効果を保持することができ、フード24内の溶剤蒸気濃度を好ましい範囲にすることができ膜厚ムラやダレなどの塗膜欠陥のない塗布膜を形成できる。平均流速dが0.9m/min未満では溶剤蒸気が十分吸引されず、膜厚ムラやダレが生じやすくなる傾向があり、平均流速dが3.0m/minより大きいと溶剤蒸気の吸引効果が大きすぎ、塗膜欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0036】
また、溶剤蒸発抑制筒状部26の上面側の開口部は、筒状部18の上端部よりも高い位置にあることが好ましい。溶剤蒸発抑制筒状部26の上面側の開口部が、筒状部18の上端部よりも低い位置にあると、溶剤蒸発抑制効果が低減する場合がある。溶剤蒸発抑制筒状部26の上面側の開口部と、筒状部18の上端部との距離eは、0mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、10mm以上20mm以下の範囲であることがより好ましい。距離eが0mm未満であると、溶剤蒸発抑制効果が低減する場合があり、30mmを超えると上端部ダレが大きくなる場合がある。
【0037】
工業的に生産するためには、生産性を上げるために1つの塗布装置にて複数本の基材に対してまとめて塗布することが行われている。従来、塗布装置全体の形状や複数の塗布槽と塗布液受け皿の位置関係などの問題で、必ずしも理想的な排気ができなかった。すなわち、戻り配管近傍の溶剤蒸気濃度をある程度低減することは達成できても、複数の塗布槽と塗布液受け皿の位置関係等により、戻り配管から遠い部分の溶剤蒸気濃度の低減はされず、引き上げられた各円筒状基体周辺の溶剤蒸気濃度にバラツキが発生してしまい、各円筒状基体間、および円筒状基体一本内の膜厚ムラやダレの防止には、充分な効果が得られなかった。
【0038】
本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法によれば、塗布液が溢流する複数本の筒状部18が塗布槽10の上部に設けられ、各々の筒状部18に円筒状基材38を浸漬させ、引き上げることで複数本まとめて塗布できる塗布装置において、塗布槽の筒状部18上部に蓋20が設置されたオーバーフローパン14内に溶剤蒸発抑制部材22を設けることで、オーバーフローパン14内、すなわち蓋20と溶剤蒸発抑制部材22との間及びフード24内の溶剤蒸気濃度を強制的に低減させることで膜厚をほぼ均一化することができ、且つ塗布液の希釈溶剤使用量を低減することができる。
【0039】
なお、複数本の基材を同時に塗布できる塗布装置の例について説明したが、1本の基材に対して塗布する塗布装置であっても、もちろんかまわない。しかし、円筒状基材を複数本まとめて塗布する浸漬塗布では、特に塗布槽上部に溶剤蒸気が大量に発生するため、本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法によれば、溶剤蒸気を十分に低減させることができ、膜厚ムラやダレを十分に防止することができる。
【0040】
本発明の実施形態に係る塗布装置及び塗布方法は、電子写真感光体の製造、電子写真用転写ベルトの製造、電子写真用定着ベルトの製造等に用いることができるが、特に膜厚均一性の精度が求められる電子写真感光体の製造に好適に用いることができる。
【0041】
塗布液に用いられる溶剤としては、特に制限はないが、沸点の低い(例えば沸点が110℃以下)蒸発しやすい溶剤を用いるときに本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法を用いると効果を特に発揮する。溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、メタノール、ブタノール等が挙げられる。
【0042】
本実施形態において、例えば図4、図5のように塗布装置2において、溶剤蒸発抑制部材22が各筒状部18の位置に合わせて開口部34を有し、溶剤蒸発抑制筒状部26を備えない構成であっても良い。この場合は図5のように、溶剤蒸発抑制部材22の開口部34は、筒状部18の上端部よりも高い位置にあることが好ましい。溶剤蒸発抑制部材22の開口部34が、筒状部18の上端部よりも低い位置にあると、溶剤蒸発抑制効果が低減する傾向にある。溶剤蒸発抑制部材22の開口部34と、筒状部18の上端部との距離eは、上記と同様の理由で0mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上20mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0043】
上記の通り、生産性を向上するために、複数本の基材にまとめて塗布する方法が広く用いられているが、まとめて塗布する本数を増加することで浸漬塗布に必要な保持液量が増加するとともに、塗布液の蒸発面積も増大する。
【0044】
塗膜の高品質化に関しては、均一性の高い薄膜の形成が要求されるが、塗布液は通常複数の材料組成からなり、組成を均一に制御することが極めて重要となる。特に、浸漬塗布法においては、一般に揮発性の高い有機溶剤を使用することから、固形分の濃度の変動が発生しやすい。しかしながら、生産性向上を行う場合、塗布液の蒸発面積が増大することから、ますます濃度変動が発生しやすくなってしまう。濃度を一定に制御するために、時間あたり追加する希釈溶剤量を増加する必要が生じるが、追加された希釈溶剤の局在化が起こりやすくなり、粘度の制御性の低下、凹みなどの塗膜欠陥及び膜厚ムラの発生を招くことがあった。
【0045】
そこで、塗布液を塗布液保持槽と塗布槽との間を循環させながら塗布槽に供給し、塗布液を浸漬塗布する塗布装置において、希釈溶剤を塗布液に添加するためのスプレーノズルを設けることが好ましい。これにより、溶剤の蒸発量が増大した場合においても、粘度が安定し、且つ溶剤の局在化に起因する塗膜欠陥の発生、膜厚ムラの発生を抑制することができる。
【0046】
図6は本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。図6の塗布装置3には図1の構成に加え、戻り配管32の途中の上部にはスプレーノズル40が設けられ、スプレーノズル40は希釈溶剤保持タンク42と配管を通して接続されている。また、塗布液の粘度を計測するための粘度計測手段である粘度計44が塗布液供給配管30に接続され、粘度計44の指示値を受け取り粘度制御装置46の制御に従ってスプレーノズル40から希釈溶剤を噴射することにより塗布液を適度な濃度に制御することができる。塗布液保持槽12内部には、戻り配管32との接続部位近傍に一時液受けを設けてもよく、これにより、戻り配管32から塗布液保持槽12液面までの落差により生じる泡の巻き込みを防止してもよい。
【0047】
一般に、希釈溶剤と塗布液は比重差があり(塗布液の比重が大きい)、瞬時に均一に混合することは容易ではない。混合が不十分であると、追加した希釈溶剤が塗布液と混ざり合うことなく、濃度の高い領域と低い領域が塗布液供給配管30へ送られて断続的に粘度計44を通過することにより、粘度計44の指示値の変動を引き起こし、塗布液の濃度制御が非常に不安定な状態となり、塗膜の一定膜厚を維持できなくなってしまうことがある。加えて、濃度の不均一な塗布液が塗布槽10に送られて浸漬塗布中の基材に付着して塗膜を形成すると、蒸発速度差や表面張力差などが発生して塗膜欠陥、膜厚ムラの発生を生じてしまうことがある。
【0048】
本実施形態においては、図6に示したように、希釈溶剤をスプレーノズル40により微小液滴の状態で塗布液に追加するので、瞬時に塗布液との混合を行うことができる。スプレーノズル40は公知のものを使用することができるが、泡の発生をほとんど伴わない一流体ノズルが好ましい。噴射により形成される希釈溶剤の液滴径(ザウター粒径)は10μm以上1000μm以下、好ましくは50μm以上500μm以下程度が良い。希釈溶剤の液滴径が10μm未満であると、気体中に溶剤粒子が漂って液面に到達しづらくなり、また1000μmより大きいと混合促進効果が小さくなることがある。
【0049】
スプレーノズル40は、塗布槽10以外であれば、気液界面の存在するところなら設けることが可能であるが、好ましくは戻り配管32の経路内が良い。戻り配管32の経路内にあると、戻り配管32内の液面の流速が大きいためスプレーノズル40から噴射された希釈溶剤が局在化せず、またそのあと塗布液保持槽12における撹拌により混合効果が更に高められる。
【0050】
上記の通り、生産性を向上するために、複数本の基材にまとめて塗布する方法が広く用いられているが、被塗布基材間の距離を小さくすることで、時間及びスペース生産性を向上することが可能となる。
【0051】
また、特に電子写真感光体の場合、均一性の高い薄膜の形成が要求されるが、浸漬塗布方法では塗布液面近傍の溶剤蒸気濃度及びその流れの制御が極めて重要となる。しかしながら、生産性向上を行う場合、塗布装置内の溶剤蒸気濃度の上昇、局在化により塗膜面にダレ、ムラなどが発生し、均一性の高い膜が得られなくなるために、感光体特性の低下を招くことがある。
【0052】
そこで、塗布液を塗布液保持槽と塗布槽との間を循環させながら塗布槽に供給し、被塗布物を浸漬塗布する塗布装置において、塗布槽の上部に設けられ、塗布液が溢流する筒状部と、筒状部の上方に設けられ、筒状部に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、筒状部から溢流した塗布液を保持するための液受け(オーバーフローパン)とを有し、液受けの底面及び溶剤蒸発抑制部材を通り、且つ塗布槽の筒状部液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口を設けることが好ましい。
【0053】
図7は本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。また、図8にオーバーフローパン14の底面の概略上面図を示す。図7の塗布装置4には、図1の構成に加え、オーバーフローパン14の底面及び溶剤蒸発抑制部材22を通り、且つ塗布槽10の筒状部18液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口が設けられている。塗布槽10の各筒状部18から溢流した塗布液の液面から蒸発した溶剤、及び各筒状部18から引き上げられた円筒状基材38上の塗膜表面から蒸発した溶剤の一部が溶剤蒸気吸入口48に吸い込まれて、塗布装置4の系外に排出されることで、溶剤蒸発抑制部材22と蓋20及びフード24に囲まれた領域内の溶剤蒸気を適度な濃度に制御することができる。
【0054】
筒状部18の液面近傍の円筒状基材38上に形成された直後の塗膜は乾燥の極初期段階であり、塗膜近傍の環境、特に溶剤蒸気濃度及び溶剤蒸気の流れに非常に敏感である。この領域の溶剤蒸気濃度が高濃度であると、塗膜からの蒸発が遅れ、塗膜中の塗布液が重力によって重力の作用方向に流れ落ちる量が増大するため、ダレが大きくなってしまう。また、溶剤蒸気の流れが発生すると、塗膜中の塗布液の蒸発ムラを誘発し、膜厚ムラが形成されてしまう。特に塗膜が電子写真感光体の電荷発生層の場合、湿潤膜厚が数μm(3μm〜10μm程度)以下の薄膜である場合が多く、円筒状基材38の円周方向に蒸発溶剤の流れが発生すると、重力によるレベリング作用が小さいために膜厚ムラが残りやすい。
【0055】
本実施形態においては、図7及び図8に示したように、各筒状部18周りに均等且つ筒状部18の液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口48を配置しているため、溶剤蒸気は自重、筒状部18の表面を流れ落ちる塗布液のせん断、あるいは溶剤蒸気吸入口48からの強制吸引によって重力方向に移動し、溶剤蒸気吸入口48に吸い込まれて系外に排出される。これにより、各筒状部18間の溶剤蒸気濃度及び溶剤蒸気流れをほとんど同一の状態に制御できるため、各筒状部18間で膜厚差がほとんど無く、且つダレ、膜厚ムラの小さい塗膜を作製することができる。
【0056】
図9に筒状部18の上端部付近の拡大図を示す。溶剤蒸気が重力方向に流れやすいように、溶剤蒸発抑制部材22から筒状部18液面までの高さ(図9のH)は30mm以上250mm以下であることが好ましく、100mm以上200mm以下であることがより好ましい。筒状部18の液面から溶剤蒸気吸入口48上端までの深さ(図9のD)は、30mm以上250mm以下、好ましくは100mm以上200mm以下低い位置に設けるのが良い。溶剤蒸気吸入口48は、各筒状部18を囲むように設けられていることが好ましい。溶剤蒸気吸入口48の形状は図7のように円筒状等の配管が鉛直上向きに立てられても良く、図10に示したように筒状部18と同心円のスリット形状でも良く、図7及び図10の形状に限定したものではない。なお、図10において溶剤蒸発抑制筒状部26の記載は省略してある。
【0057】
溶剤蒸気吸入口48より吸い込まれた溶剤蒸気に関して、塗布装置4の系外へ排出される際、排出量を精密に制御することが望ましい。円筒状基材38が筒状部18の液面から引き上げられるのに従い、塗膜から蒸発する溶剤蒸気量が筒状部18の液面近傍に蓄積されて溶剤蒸気濃度が上昇し、円筒状基材38の下端に向かうほど塗膜のダレが大きくなりやすい。これを抑制する方法として、円筒状基材38が筒状部18の液面から引き上げられるのに従い、溶剤蒸気の排出量を大きくしていくことが有効である。具体的には、ポンプ、アスピレータ、バルブなどを用いて制御することができる。また、排出された溶剤蒸気を冷却して液化し、再度使用することも好ましい。
【0058】
本実施形態により、例えば複数本の円筒状基材38が、狭い間隔で配置された場合でも、溶剤蒸気の局在化及び気流の発生を抑制することができ、且つ低濃度に制御することにより、ダレ、膜厚ムラの小さい塗膜が作製可能である。
【0059】
次に本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法を用いて作製されるものの一例として、電子写真感光体について説明する。作製される電子写真感光体は、その塗膜構成の種類により、塗膜に電荷発生物質及び電荷輸送物質を含む単層型のものと、塗膜が電荷発生層と電荷輸送層からなる積層型に大別されるが、本実施形態の浸漬塗布装置及び塗布方法は、特に積層型電子写真感光体における電荷輸送層の形成に使用することが好ましい。
【0060】
円筒状基材としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などの導電性金属、その他に、表面に金属を蒸着するか導電粉を分散した塗膜を形成するなどにより、導電化処理されたプラスチックや紙等の筒状のものを用いることができる。基材の表面には、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理等の処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理により基材表面を粗面化することで、レーザビームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0061】
次に、下引層について説明する。下引層は、積層構造を有する感光層の帯電の際に、導電性支持体(円筒状基材)から感光層への電荷の注入を阻止するとともに、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである。また、下引層は、場合によっては導電性支持体の光の反射防止作用等を示すことができる。かかる効果を有し、高画質な画像を維持する観点から、本実施形態に係る電子写真感光体は、下引層を備えていることが好ましい。
【0062】
下引層の材料としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも上層(例えば、電荷発生層)形成用塗布液に含まれる溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。更に、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0063】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0064】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0065】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマ、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0066】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0067】
下引層中には、下引層を厚膜化するために、導電性物質等の金属酸化物を含有させると良い。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。下引層を厚膜化、特に15μm以上の膜厚にすることにより、基材表面上の異物等の隠蔽効果が増し、上層に塗布する電荷発生層等の表面性向上につながる。
【0068】
上記金属酸化物には表面処理を施すことができる。表面処理を施すことで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。これらの化合物は単独あるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない、画質特性に優れるなど性能上優れている。
【0069】
シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物の例としては前述した例と同じ物質が挙げられる。
【0070】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。乾式法により表面処理を施す場合、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で撹拌しながら、シランカップリング剤を直接又は有機溶剤に溶解させて滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって、均一な表面処理が行われる。シランカップリング剤の滴下及び混合物の噴霧は、使用する溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。滴下又は噴霧を溶剤の沸点以上の温度で行うと、均一に撹拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる傾向がある。このようにして表面処理された金属酸化物粒子について、更に100℃以上の温度で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法としては、金属酸化物粒子を溶剤中に撹拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加して、撹拌又は分散した後、溶剤を除去することで均一に処理される。溶剤は蒸留により留去することが好ましい。なお、ろ過による除去方法では未反応のシランカップリング剤が流出しやすく、所望の特性を得るためのシランカップリング剤量をコントロールしにくくなる傾向がある。溶剤除去後には更に100℃以上の温度で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で撹拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等を用いることもできる。
【0071】
下引層中の金属酸化物粒子に対するシランカップリング剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引層中に用いられる金属酸化物粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
【0072】
下引層中には、光散乱性の向上等の目的により、各種の有機もしくは無機粉末を混合することができる。かかる粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料や、テフロン(登録商標)樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。これらの粉末の粒径は、0.01μm以上2μm以下であることが好ましい。粉末は必要に応じて添加される成分であるが、添加する場合の配合量は、下引層に含まれる固形分に対して、質量比で10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
また、下引層の形成に用いられる塗布液(下引層形成用塗布液)には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。下引層形成用塗布液を調製するに際し、前述の導電性物質や光散乱物質等の粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に粉末を添加して分散処理が行うことが好ましい。粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。
【0074】
次に、電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生材料及び結着樹脂を含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、公知の電荷発生材料を特に制限なく使用することができるが、中でも金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましく用いられ、特定の結晶を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等が特に好ましく用いられる。
【0075】
電荷発生層において好ましく用いられる電荷発生材料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、及びニーダー等を用いて機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、及びニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0076】
湿式粉砕処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、又はこれらの数種の混合系、あるいは水とこれら有機溶剤との混合系が挙げられる。これら溶剤の使用量は、顔料結晶1質量部に対して1質量部以上200質量部以下、好ましくは10質量部以上100質量部以下が望ましい。
【0077】
また、湿式粉砕処理における処理温度は、0℃以上溶剤の沸点以下、好ましくは10℃以上60℃以下である。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いてもよい。磨砕助剤は、顔料に対して0.5倍以上20倍以下、好ましくは1倍以上10倍以下(いずれも質量換算値)用いればよい。
【0078】
また、公知の方法で製造される顔料結晶について、アシッドペースティング又はアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕又は湿式粉砕との組み合わせによって結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、この硫酸の濃度は70質量%以上100質量%以下、好ましくは95質量%以上100質量%以下の濃度のものが使用される。この硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、1倍以上100倍以下、好ましくは3倍以上50倍以下(いずれも質量換算値)の範囲に設定される。また、溶解温度は、−20℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上60℃以下の範囲に設定される。結晶を酸から析出させる際の溶剤としては、水、或いは水と有機溶剤の混合溶剤を任意の量で使用できる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0079】
これらの電荷発生材料は、加水分解性基を有する有機金属化合物又はシランカップリング剤等で被覆処理してもよい。かかる被覆処理によって電荷発生材料の分散性や電荷発生層用塗布液の塗布性が向上し、平滑で分散均一性の高い電荷発生層を容易に且つ確実に成膜することができ、その結果、カブリやゴースト等の画質欠陥が防止され、画質維持性を向上させることができる。また、電荷発生層用塗布液の保存性も著しく向上するので、ポットライフの延長の点でも効果的であり、感光体のコストダウンも可能となる。上記加水分解性基を有する有機金属化合物は、下記一般式(I):
Rp−M−Yq (I)
で表される化合物である。なお、式中、Rは有機基を表し、Mはアルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子を表し、Yは加水分解性基を表し、p及びqはそれぞれ1〜4の整数であり、pとqとの和はMの原子価に相当する。
【0080】
一般式(I)中、Rで表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアリールアルキル基、スチリル基等のアリールアルケニル基、フリル基、チエニル基、ピロリジニル基、ピリジル基、イミダゾリル基等の複素環残基等が挙げられる。これらの有機基は1または2種以上の各種の置換基を有していてもよい。
【0081】
また、一般式(I)中、Yで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジロキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジロキシカルボニル基等のエステル基、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0082】
また、一般式(I)中、Mはアルカリ金属以外であれば特に制限されるものではないが、好ましくはチタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子又はケイ素原子である。すなわち、本実施形態に係る電子写真感光体においては、上記の有機基や加水分解性の官能基を置換した有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、さらにはシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0083】
また、上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0084】
また、上記の有機金属化合物及びシランカップリング剤の加水分解生成物も使用することができる。この加水分解生成物としては、上記一般式(I)で示される有機金属化合物のM(アルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子)に結合するY(加水分解性基)やR(有機基)に置換する加水分解性基が加水分解したものが挙げられる。なお、有機金属化合物及びシランカップリング剤が加水分解性基を複数含有する場合は、必ずしも全ての官能基を加水分解する必要はなく、部分的に加水分解された生成物であってもよい。また、これらの有機金属化合物及びシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0085】
上記の加水分解性基を有する有機金属化合物及び/又はシランカップリング剤(以下、単に「有機金属化合物」という)を用いてフタロシアニン顔料を被覆処理する方法としては、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で該フタロシアニン顔料を被覆処理する方法、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散時に有機金属化合物を混合処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散後に有機金属化合物で更に分散処理する方法等が挙げられる。より具体的には、顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法としては、有機金属化合物と結晶が整う前のフタロシアニン顔料とを混合した後加熱する方法、有機金属化合物を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し機械的に乾式粉砕する方法、有機金属化合物の水または有機溶剤中の混合液を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し湿式粉砕処理方法等が挙げられる。また、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法としては、有機金属化合物、水又は水と有機溶剤との混合液、並びにフタロシアニン顔料を混合して加熱する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料に直接噴霧する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料と混合しミリングする方法等がある。また、分散時に混合処理する方法としては、分散溶剤に有機金属化合物、フタロシアニン顔料、結着樹脂を順次添加しながら混合する方法、これらの電荷発生層形成成分を同時に添加し混合する方法等が挙げられる。また、フタロシアニン顔料を結着樹脂中に分散した後に有機金属化合物で更に分散処理する方法としては、例えば溶剤で希釈した有機金属化合物を分散液に添加し撹拌しながら分散する方法が挙げられる。また、かかる分散処理の際、より強固にフタロシアニン顔料に付着させるために、触媒として硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸を添加してもよい。これらの中でも、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法、又はフタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法が好ましい。
【0086】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸との重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0087】
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。塗布液の溶剤としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独で又は2種以上混合して用いることができる。電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行うことが好ましい。また、この分散の際、電荷発生材料を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0088】
次に、電荷輸送層について説明する。電荷輸送層は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成されるものである。電荷輸送層に用いる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質;あるいは上記化合物から水素原子等を除いた残基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマ等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。塗布液の溶剤としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
(電子写真感光体用塗布液の作製)
N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(重量平均分子量40,000)60質量部とをテトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、4フッ化エチレン樹脂粒子10質量部を加え、さらに混合した。このとき、室温を25℃に設定し、混合工程における液温度を25℃に保った。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにて分散し、4フッ化エチレン樹脂粒子分散液を作製した。このとき、サンドクラインダーのベッセルに24度の水を流し、分散液の温度を50度に保持した。こうして電荷輸送層用の塗布液を準備した。
【0093】
<実施例1>
図1に示す塗布装置1を使用した。上記のようにして得られた電荷輸送層用の塗布液を塗布槽10に投入し、温度24℃、粘度550mPa・sに調整した。使用した浸漬塗布装置には、内径Φ60mm、深さ400mmの円筒状の筒状部18を25個(5個×5個)、85mmピッチで設けた。円筒状の筒状部18の上方には、筒状部18に対応する開口部34及び開口部34に接続され、筒状部18の外周部を所定の間隔を持って覆う円筒状の溶剤蒸発抑制筒状部26を有する溶剤蒸発抑制部材22を設置した。また、内径60mm、高さ150mmのフード24を筒状部18の液面から30mmの高さにて各筒状部18上に設けた。塗布液保持槽12からポンプ16にて塗布液を送液し、ポンプ16と塗布槽10の塗布液供給配管30の間にあるフィルタ28を通して塗布液を塗布槽10に送液した。
【0094】
円筒状基材38として外径30mm、長さ340mmのアルミパイプを使用した。図1の浸漬塗布装置にて電荷輸送層用塗布液を用いて、塗布速度150mm/minにて浸漬塗布を行った後、120℃で30分乾燥して膜厚30μmの電荷輸送層を得た。浸漬塗布装置は、表1の条件に設定した。なお、平均流速dは、液が筒状部18の表面を流れ落ちる距離を流れ落ちる時間で割ることで求めた。
【0095】
(評価)
実施例1で作製したドラム表面の膜厚を渦電流膜厚測定装置(自社製)を用いて上端側の塗布開始位置より20mm以上300mm以下の間を10mm間隔、90°毎に測定し、その平均値を平均膜厚A(μm)とした。塗布開始位置より20mmの点における膜厚B(μm)を測定し、A−Bの値を上端部膜厚ダレとした。又、全測定点の膜厚の最大値と最小値の差を膜厚ムラとした。評価基準は以下の通りとした。得られた結果を表1に示す。
[膜厚ムラ]
◎:1.5μm以下
○:1.5μmより大きく、3.0μmより小さい
×:3.0μm以上
[上端部ダレ]
◎:1.0μm以下
○:1.0より大きく、2.5μmより小さい
×:2.5μm以上
[総合評価]
◎:膜厚ムラと上端部ダレが共に◎
○:膜厚ムラが○で、上端部ダレが◎か○
×:膜厚ムラが×で、上端部ダレが○または×
【0096】
<実施例2〜18>
浸漬塗布装置の条件を表1の条件に設定した以外は実施例1と同様の装置を使用した。実施例1と同様にして感光体の作製及び評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0097】
<実施例19>
図4に示す塗布装置2を使用した。円筒状の筒状部18の上方には、筒状部18に対応する開口部34(直径68mm)を有し、溶剤蒸発抑制筒状部を有さない溶剤蒸発抑制部材22を設置した。
【0098】
<実施例20>
図6に示す塗布装置3を使用した。塗布液供給配管30に設けた振動式粘度計(CBC株式会社製、FVM80A−EX)の指示値が一定になるように、オーバーフローパン14と塗布液保持槽12とを結ぶ戻り配管32に設けたスプレーノズル40から希釈溶剤(メチルエチルケトン)を適量噴射することによって追加した。スプレーノズル40は(株)いけうち製の小噴流形一流体ノズル(J010NSW)を一つ、塗布液保持槽12側から200mm塗布槽10側の戻り配管32の天井に設けた。噴射により形成される希釈溶剤の液滴径(ザウター粒径)は160μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、感光体の作製及び評価を実施した。浸漬塗布装置は表1の条件に設定した。評価結果を表1に示す。
【0099】
<実施例21>
図7に示す塗布装置4を使用した。内径20mm、高さ100mmの円筒体形状の溶剤蒸気吸入口48を、筒状部18の液面から溶剤蒸気吸入口48上端まで150mmの深さで、筒状部18を囲むように正方形頂点位置に4個、合計36個をオーバーフローパン14の底面及び溶剤蒸発抑制部材22を通るように配置した。
【0100】
<比較例1>
図11に示すように溶剤蒸発抑制部材を使用せず、戻り配管32上に溶剤蒸気排出口36を設け、以下の表1に記す条件以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0101】
<比較例2および3>
図11に示す浸漬塗布装置を用い、以下の表1に記す条件以外は、比較例1と同様にして感光体を作製し、評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
このように、実施例1〜21の塗布装置及び塗布方法によれば、塗布槽の筒状部上部に蓋が設置されたオーバーフローパン内に溶剤蒸発抑止板を設けることで、蓋と溶剤蒸発抑止板の間及びフード内の溶剤蒸気濃度を強制的に低減することができ、均一性の高い膜厚の電子写真感光体を得ることができた。
【0104】
実施例20では、希釈溶剤を塗布液に添加するためのスプレーノズルを設けたことにより、膜厚ムラがより小さい結果となった。また、実施例21では、塗布槽の筒状部液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口を設けたことにより、膜厚ムラが小さい結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る塗布装置における、複数の筒状部、及び溶剤蒸発抑制筒状部を備える溶剤蒸発抑制部材の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る図1の塗布装置における、筒状部の上端部付近の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る図4の塗布装置における、筒状部の上端部付近の拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の実施形態に係る塗布装置における、オーバーフローパン底面部の一例を示す概略上面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る図7の塗布装置における、筒状部の上端部付近の拡大図である。
【図10】本発明の実施形態に係る塗布装置における、溶剤蒸気吸入口の形状の他の例を示す概略構成図である。
【図11】本発明の比較例で使用した従来の塗布装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0106】
1,2,3,4,5 塗布装置、10 塗布槽、12 塗布液保持槽、14 オーバーフローパン(塗布液受け)、16 循環ポンプ、18 筒状部(ポット)、20 蓋、22 溶剤蒸発抑制部材、24 フード、26 溶剤蒸発抑制筒状部、28 フィルタ、30 塗布液供給配管、32 戻り配管、34 開口部、36 溶剤蒸気排出口、38 円筒状基材、40 スプレーノズル、42 希釈溶剤保持タンク、44 粘度計、46 粘度制御装置、48 溶剤蒸気吸入口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、塗布方法及び電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真感光体の感光層を構成する光導電性材料としては、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛などの無機化合物およびポリビニルカルバゾールに代表される有機化合物が提案されており、また、感光層を電荷発生層と電荷輸送層とに分離した積層型電子写真感光体においては、電荷発生材料および電荷輸送材料として、種々の有機化合物が提案されて、有機感光体として実用化されている。従来、このような有機感光体の製造方法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、ブレード塗布法、ローラー塗布法、カーテン塗布法等の各種塗布方法が知られているが、特に円筒状基材表面に均一性の高い感光層を形成する方法としては、浸漬塗布法が広く採用されている。
【0003】
浸漬塗布法では、円筒状基材を塗布槽に溜められた塗布液に浸漬し、次に適度な速度で引き上げて湿潤膜を基材表面に形成し、湿潤膜が乾燥固化することによって感光層が形成される。このような浸漬塗布するための装置として、例えば特許文献1に記載されているように、円筒状基材を塗布する塗布槽と、この塗布槽から溢出した塗布液を回収する塗布液受け(オーバーフローパン)と、塗布液の温度、濃度などを一定に調整する塗布液保持槽と、循環ポンプや配管などの塗布液循環装置と、円筒状基材を塗布槽に浸漬して引き上げる把持部材とを備える装置が広く採用されている。
【0004】
前述のような浸漬塗布法は工業的に広く普及しているが、電子写真装置の高性能化、例えば高信頼性、高画質化、低コスト化等に伴い、電子写真感光体に対する要求品質及びコストが厳しくなっている。具体的には、材料に関しては、高品質要求に答えるために、使用する塗布液の系が複雑、多様化し、且つ高価になっている。また、塗膜厚に関しては0.1ミクロンから40ミクロンまで、要求範囲が大きく拡大してきている。
【0005】
浸漬塗布法の問題点は浸漬直後の塗膜が重力により、下に垂れることにある(ダレ)。特に塗布液の溶剤の沸点が高いものほど乾燥せずに下に垂れてしまう。その結果、塗膜の膜厚が基材の上下で不均一になる。特に膜厚を厚くするほど溶剤が揮発しにくいため、膜厚のムラやダレが大きくなる。基材の上下方向の塗膜均一性を得るために、塗布液の溶剤としては、通常、蒸発速度の速い溶剤(沸点が低い溶剤)が用いられる。蒸発速度の速い溶剤を用いることにより、塗布液の固化を短時間で行うことができるが、次のような理由により、そのような溶剤を用いても膜厚ムラやダレが発生する場合がある。すなわち、特に蒸発し易い溶剤を用いると塗布液からの溶剤蒸気量が多くなり、浸漬塗布槽の塗布液面、オーバーフローパン内、筒状部表面および塗布直後の基材表面からの溶剤の蒸発により、浸漬塗布槽上部の溶剤蒸気濃度が高濃度になり、塗布槽から引き上げた円筒状基材面の塗布液の乾燥時間が増し、膜厚ムラやダレが大きくなる。
【0006】
このような膜厚ムラやダレの防止策として、浸漬塗布槽上部の溶剤蒸気濃度を低減すべく、特許文献2に記載されているように、円筒状基体が浸漬塗布槽中に浸漬している間に、塗布液受け皿近傍に外部よりエアーを送り込み、塗布液受け皿近傍より溶剤蒸気を同伴したエアーを排出し、浸漬塗布槽から円筒状基体を引き上げた時の円筒状基体周辺の溶剤蒸気濃度を事前に低減し、指触乾燥速度を促進させることで膜厚ムラやダレを防いでいる。
【0007】
また、特許文献3には、塗布液受け皿近傍に溶剤蒸気排出口を具備し、ON/OFF機構を付与した強制排気装置に連結し、浸漬塗布槽から円筒状基体を引き上げた時の円筒状基体周辺の溶剤蒸気濃度を制御するものが記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、循環塗布液を回収する塗布液受け皿の戻り配管に浸漬塗布槽の塗布液面より低い位置に溶剤蒸気排出口を設け、溶剤蒸気濃度をコントロールする方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献5には、浸漬塗布槽の上端部に、少なくとも1つ以上の切り欠き部又はせき部を有する電子写真感光体製造用浸漬塗布装置が記載されている。
【0010】
また、特許文献6には、浸漬塗布装置において、塗布槽の形状と浸漬基体の関係を、塗布槽の円筒部の長さを基体の長さの1.1倍以上とし、かつ塗布槽の内周と基体の外表面との間隔を15mm以上とする構成とした電子写真用感光体の塗布装置が記載されている。
【0011】
また、特許文献7には、浸漬塗布において、乾燥を行う少なくとも初期に導電性支持体側から加熱させる電子写真感光体の製造方法が記載されている。
【0012】
このような電子写真感光体の製造に限らず、浸漬塗布法については様々な検討が行われている。
【0013】
【特許文献1】特開平11−72932号公報
【特許文献2】特開昭59−127049号公報
【特許文献3】特開平3−151号公報
【特許文献4】特開平8−220786号公報
【特許文献5】特開2002−323778号公報
【特許文献6】特開平8−314163号公報
【特許文献7】特開平10−239868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置及び塗布方法である。
【0015】
また、本発明は、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を含む電子写真感光体である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、塗布液を充填するための塗布槽と、前記塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部と、前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、を有し、前記筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布装置である。
【0017】
また、前記塗布装置において、前記溶剤蒸発抑制部材が、前記開口部に接続され、前記筒状部の外周部を所定の間隔を持って覆う溶剤蒸発抑制筒状部を有することが好ましい。
【0018】
また、前記塗布装置において、前記溶剤蒸発抑制筒状部の上面側の開口部は、前記筒状部の上面よりも高い位置にあることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、塗布液を充填した塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布工程を含み、前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材により、前記筒状部の液面からの溶剤の蒸発を抑制しながら前記塗布を行う塗布方法である。
【0020】
さらに、本発明は、前記塗布装置を使用して製造された電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1によると、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供することができる。
【0022】
本発明の請求項2によると、円筒状基材表面により均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供することができる。
【0023】
本発明の請求項3によると、円筒状基材表面により均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布装置を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項4によると、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を形成することができる塗布方法を提供することができる。
【0025】
本発明の請求項5によると、円筒状基材表面に均一性の高い膜厚を有する塗膜を含む電子写真感光体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略構成図である。塗布装置1は、塗布槽10と、塗布液保持槽12と、オーバーフローパン(塗布液受け)14と、循環ポンプ16と、複数の筒状部(ポット)18と、蓋20と、溶剤の蒸発を抑制するための溶剤蒸発抑制部材22とを備える。蓋20はフード24を備え、溶剤蒸発抑制部材22は溶剤蒸発抑制筒状部26を備える。塗布槽10と塗布液保持槽12とはフィルタ28を介して塗布液供給配管30により接続されている。また、オーバーフローパン14と塗布液保持槽12とは戻り配管32により接続されている。
【0028】
塗布槽10に対して円筒状基材38が、図示しない公知の手段によって上下方向に移動可能に配置されている。各々の筒状部18に円筒状基材38を浸漬させ、引き上げることで複数本まとめて同時に塗布液を塗布することができる。
【0029】
塗布液保持槽12内で、塗布液が必要量保持され、図1には示していない公知の調整手段により、塗布液の温度、濃度などが十分に調整されている状態から、循環ポンプ16によって塗布液保持槽12内の塗布液がフィルタ28を通して塗布槽10に供給される。塗布槽10に供給された液は塗布槽10の上部に設けられた各筒状部18内を上昇し、溢流(オーバーフロー)する。塗布槽10の上部には、溢流する塗布液を受けるためのオーバーフローパン14が設けられており、溢流した塗布液はオーバーフローパン14から塗布液保持槽12に通じる戻り配管32を通って塗布液保持槽12に戻されることで塗布液は通常、図1に示す塗布装置1内を循環している。
【0030】
図1において、オーバーフローパン14の上部には蓋20があり、その蓋20の上部に風による塗膜の乾燥ムラを防止するためのフード24が設置されている。オーバーフローパン14内部のオーバーフローパン14底面上方にはオーバーフローパン14底面とほぼ並行になるように板状等の溶剤蒸発抑制部材22が設けられており、その溶剤蒸発抑制部材22は各筒状部18の位置に合わせて開口部34を有する。その開口部34には各筒状部18の高さに合わせて、溶剤の蒸発を抑制するための溶剤蒸発抑制筒状部26が各筒状部18の外周部を所定の間隔をもって覆うようにして溶剤蒸発抑制部材22の上方に向かって設けられている。図2は、複数の筒状部18と、溶剤蒸発抑制筒状部26を備える溶剤蒸発抑制部材22とを示す概略斜視図である。この溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間を塗布液が流れることにより、アスピレータの原理で溶剤蒸気がその隙間から吸引され、塗布液面近傍の溶剤蒸気濃度が強制的に低減させられる。吸引された溶剤蒸気は戻り配管32を通り、塗布液保持槽12を経由し、塗布液保持槽12に設けられた溶剤蒸気排出口36から外部へ放出される。放出された溶剤蒸気は図に示さない溶剤トラップ手段によりトラップされ、溶剤が回収される。なお、筒状部18における「筒状」とは円筒状に限らず、三角筒、四角筒、五角筒、六角筒等の多角筒状、楕円筒状等いずれの形状であってもよいが、通常は円筒状である。
【0031】
その溶剤蒸発抑制部材22の周囲とオーバーフローパン14とは溶剤蒸気が漏れるような隙間がほとんどないことが好ましい。
【0032】
図3に筒状部18の上端部付近の拡大図を示す。塗布槽の蓋20と溶剤蒸発抑制筒状部26の上端部との隙間aは、0mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上25mm以下の範囲であることがより好ましい。隙間aが30mmより大きいと各筒状部18の基材下端開口部を塞ぐように張った膜が割れ、隣の基材に塗布液が飛散することで表面欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0033】
溶剤蒸発抑制筒状部26の内面と筒状部18の外面との隙間bは、塗布液の筒状部18の外面に沿った流下を抑制しない範囲であれば特に限定されないが、4mm以上10mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上7mm以下の範囲であることがより好ましい。隙間bを4mm以上10mm以下とすることで、溢流した塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26に付着し、塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26の外周に溢れ出すことがなく、溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間から溶剤蒸気を吸入することが出来るようになる。隙間bが4mm未満であると、溢流した塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26に付着し、塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26の外周に溢れ出てしまう場合がある。隙間bが10mmより大きいと、溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間から溶剤蒸気を吸入する機能が低下してしまい、膜厚ムラやダレが生じやすくなる傾向がある。
【0034】
溶剤蒸発抑制部材22の上面と筒状部18の上端部との距離cは30mm以上250mm以下の範囲であることが好ましく、100mm以上200mm以下の範囲であることがより好ましい。距離cを30mm以上250mm以下の範囲とすることで、好ましい吸引効果を保持することができ、フード24内の溶剤蒸気濃度を好ましい範囲にすることができ膜厚ムラやダレなどの塗膜欠陥のない塗布膜を形成できる。距離cが30mm未満では吸引効果が低いために溶剤蒸気が十分排出されない場合があり、膜厚ムラやダレを生じやすくなる傾向がある。また距離cが250mmより高いと吸引効果が大き過ぎ、フード24内の溶剤蒸気濃度が低すぎて塗膜欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0035】
塗布液が溶剤蒸発抑制筒状部26と筒状部18との隙間を通過する平均流速dは0.9m/min以上3.0m/min以下の範囲であることが好ましく、1.0m/min以上2.5m/min以下の範囲であることがより好ましい。平均流速dを0.9m/min以上3.0m/min以下の範囲とすることで、好ましい吸引効果を保持することができ、フード24内の溶剤蒸気濃度を好ましい範囲にすることができ膜厚ムラやダレなどの塗膜欠陥のない塗布膜を形成できる。平均流速dが0.9m/min未満では溶剤蒸気が十分吸引されず、膜厚ムラやダレが生じやすくなる傾向があり、平均流速dが3.0m/minより大きいと溶剤蒸気の吸引効果が大きすぎ、塗膜欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0036】
また、溶剤蒸発抑制筒状部26の上面側の開口部は、筒状部18の上端部よりも高い位置にあることが好ましい。溶剤蒸発抑制筒状部26の上面側の開口部が、筒状部18の上端部よりも低い位置にあると、溶剤蒸発抑制効果が低減する場合がある。溶剤蒸発抑制筒状部26の上面側の開口部と、筒状部18の上端部との距離eは、0mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、10mm以上20mm以下の範囲であることがより好ましい。距離eが0mm未満であると、溶剤蒸発抑制効果が低減する場合があり、30mmを超えると上端部ダレが大きくなる場合がある。
【0037】
工業的に生産するためには、生産性を上げるために1つの塗布装置にて複数本の基材に対してまとめて塗布することが行われている。従来、塗布装置全体の形状や複数の塗布槽と塗布液受け皿の位置関係などの問題で、必ずしも理想的な排気ができなかった。すなわち、戻り配管近傍の溶剤蒸気濃度をある程度低減することは達成できても、複数の塗布槽と塗布液受け皿の位置関係等により、戻り配管から遠い部分の溶剤蒸気濃度の低減はされず、引き上げられた各円筒状基体周辺の溶剤蒸気濃度にバラツキが発生してしまい、各円筒状基体間、および円筒状基体一本内の膜厚ムラやダレの防止には、充分な効果が得られなかった。
【0038】
本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法によれば、塗布液が溢流する複数本の筒状部18が塗布槽10の上部に設けられ、各々の筒状部18に円筒状基材38を浸漬させ、引き上げることで複数本まとめて塗布できる塗布装置において、塗布槽の筒状部18上部に蓋20が設置されたオーバーフローパン14内に溶剤蒸発抑制部材22を設けることで、オーバーフローパン14内、すなわち蓋20と溶剤蒸発抑制部材22との間及びフード24内の溶剤蒸気濃度を強制的に低減させることで膜厚をほぼ均一化することができ、且つ塗布液の希釈溶剤使用量を低減することができる。
【0039】
なお、複数本の基材を同時に塗布できる塗布装置の例について説明したが、1本の基材に対して塗布する塗布装置であっても、もちろんかまわない。しかし、円筒状基材を複数本まとめて塗布する浸漬塗布では、特に塗布槽上部に溶剤蒸気が大量に発生するため、本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法によれば、溶剤蒸気を十分に低減させることができ、膜厚ムラやダレを十分に防止することができる。
【0040】
本発明の実施形態に係る塗布装置及び塗布方法は、電子写真感光体の製造、電子写真用転写ベルトの製造、電子写真用定着ベルトの製造等に用いることができるが、特に膜厚均一性の精度が求められる電子写真感光体の製造に好適に用いることができる。
【0041】
塗布液に用いられる溶剤としては、特に制限はないが、沸点の低い(例えば沸点が110℃以下)蒸発しやすい溶剤を用いるときに本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法を用いると効果を特に発揮する。溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、メタノール、ブタノール等が挙げられる。
【0042】
本実施形態において、例えば図4、図5のように塗布装置2において、溶剤蒸発抑制部材22が各筒状部18の位置に合わせて開口部34を有し、溶剤蒸発抑制筒状部26を備えない構成であっても良い。この場合は図5のように、溶剤蒸発抑制部材22の開口部34は、筒状部18の上端部よりも高い位置にあることが好ましい。溶剤蒸発抑制部材22の開口部34が、筒状部18の上端部よりも低い位置にあると、溶剤蒸発抑制効果が低減する傾向にある。溶剤蒸発抑制部材22の開口部34と、筒状部18の上端部との距離eは、上記と同様の理由で0mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上20mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0043】
上記の通り、生産性を向上するために、複数本の基材にまとめて塗布する方法が広く用いられているが、まとめて塗布する本数を増加することで浸漬塗布に必要な保持液量が増加するとともに、塗布液の蒸発面積も増大する。
【0044】
塗膜の高品質化に関しては、均一性の高い薄膜の形成が要求されるが、塗布液は通常複数の材料組成からなり、組成を均一に制御することが極めて重要となる。特に、浸漬塗布法においては、一般に揮発性の高い有機溶剤を使用することから、固形分の濃度の変動が発生しやすい。しかしながら、生産性向上を行う場合、塗布液の蒸発面積が増大することから、ますます濃度変動が発生しやすくなってしまう。濃度を一定に制御するために、時間あたり追加する希釈溶剤量を増加する必要が生じるが、追加された希釈溶剤の局在化が起こりやすくなり、粘度の制御性の低下、凹みなどの塗膜欠陥及び膜厚ムラの発生を招くことがあった。
【0045】
そこで、塗布液を塗布液保持槽と塗布槽との間を循環させながら塗布槽に供給し、塗布液を浸漬塗布する塗布装置において、希釈溶剤を塗布液に添加するためのスプレーノズルを設けることが好ましい。これにより、溶剤の蒸発量が増大した場合においても、粘度が安定し、且つ溶剤の局在化に起因する塗膜欠陥の発生、膜厚ムラの発生を抑制することができる。
【0046】
図6は本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。図6の塗布装置3には図1の構成に加え、戻り配管32の途中の上部にはスプレーノズル40が設けられ、スプレーノズル40は希釈溶剤保持タンク42と配管を通して接続されている。また、塗布液の粘度を計測するための粘度計測手段である粘度計44が塗布液供給配管30に接続され、粘度計44の指示値を受け取り粘度制御装置46の制御に従ってスプレーノズル40から希釈溶剤を噴射することにより塗布液を適度な濃度に制御することができる。塗布液保持槽12内部には、戻り配管32との接続部位近傍に一時液受けを設けてもよく、これにより、戻り配管32から塗布液保持槽12液面までの落差により生じる泡の巻き込みを防止してもよい。
【0047】
一般に、希釈溶剤と塗布液は比重差があり(塗布液の比重が大きい)、瞬時に均一に混合することは容易ではない。混合が不十分であると、追加した希釈溶剤が塗布液と混ざり合うことなく、濃度の高い領域と低い領域が塗布液供給配管30へ送られて断続的に粘度計44を通過することにより、粘度計44の指示値の変動を引き起こし、塗布液の濃度制御が非常に不安定な状態となり、塗膜の一定膜厚を維持できなくなってしまうことがある。加えて、濃度の不均一な塗布液が塗布槽10に送られて浸漬塗布中の基材に付着して塗膜を形成すると、蒸発速度差や表面張力差などが発生して塗膜欠陥、膜厚ムラの発生を生じてしまうことがある。
【0048】
本実施形態においては、図6に示したように、希釈溶剤をスプレーノズル40により微小液滴の状態で塗布液に追加するので、瞬時に塗布液との混合を行うことができる。スプレーノズル40は公知のものを使用することができるが、泡の発生をほとんど伴わない一流体ノズルが好ましい。噴射により形成される希釈溶剤の液滴径(ザウター粒径)は10μm以上1000μm以下、好ましくは50μm以上500μm以下程度が良い。希釈溶剤の液滴径が10μm未満であると、気体中に溶剤粒子が漂って液面に到達しづらくなり、また1000μmより大きいと混合促進効果が小さくなることがある。
【0049】
スプレーノズル40は、塗布槽10以外であれば、気液界面の存在するところなら設けることが可能であるが、好ましくは戻り配管32の経路内が良い。戻り配管32の経路内にあると、戻り配管32内の液面の流速が大きいためスプレーノズル40から噴射された希釈溶剤が局在化せず、またそのあと塗布液保持槽12における撹拌により混合効果が更に高められる。
【0050】
上記の通り、生産性を向上するために、複数本の基材にまとめて塗布する方法が広く用いられているが、被塗布基材間の距離を小さくすることで、時間及びスペース生産性を向上することが可能となる。
【0051】
また、特に電子写真感光体の場合、均一性の高い薄膜の形成が要求されるが、浸漬塗布方法では塗布液面近傍の溶剤蒸気濃度及びその流れの制御が極めて重要となる。しかしながら、生産性向上を行う場合、塗布装置内の溶剤蒸気濃度の上昇、局在化により塗膜面にダレ、ムラなどが発生し、均一性の高い膜が得られなくなるために、感光体特性の低下を招くことがある。
【0052】
そこで、塗布液を塗布液保持槽と塗布槽との間を循環させながら塗布槽に供給し、被塗布物を浸漬塗布する塗布装置において、塗布槽の上部に設けられ、塗布液が溢流する筒状部と、筒状部の上方に設けられ、筒状部に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、筒状部から溢流した塗布液を保持するための液受け(オーバーフローパン)とを有し、液受けの底面及び溶剤蒸発抑制部材を通り、且つ塗布槽の筒状部液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口を設けることが好ましい。
【0053】
図7は本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。また、図8にオーバーフローパン14の底面の概略上面図を示す。図7の塗布装置4には、図1の構成に加え、オーバーフローパン14の底面及び溶剤蒸発抑制部材22を通り、且つ塗布槽10の筒状部18液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口が設けられている。塗布槽10の各筒状部18から溢流した塗布液の液面から蒸発した溶剤、及び各筒状部18から引き上げられた円筒状基材38上の塗膜表面から蒸発した溶剤の一部が溶剤蒸気吸入口48に吸い込まれて、塗布装置4の系外に排出されることで、溶剤蒸発抑制部材22と蓋20及びフード24に囲まれた領域内の溶剤蒸気を適度な濃度に制御することができる。
【0054】
筒状部18の液面近傍の円筒状基材38上に形成された直後の塗膜は乾燥の極初期段階であり、塗膜近傍の環境、特に溶剤蒸気濃度及び溶剤蒸気の流れに非常に敏感である。この領域の溶剤蒸気濃度が高濃度であると、塗膜からの蒸発が遅れ、塗膜中の塗布液が重力によって重力の作用方向に流れ落ちる量が増大するため、ダレが大きくなってしまう。また、溶剤蒸気の流れが発生すると、塗膜中の塗布液の蒸発ムラを誘発し、膜厚ムラが形成されてしまう。特に塗膜が電子写真感光体の電荷発生層の場合、湿潤膜厚が数μm(3μm〜10μm程度)以下の薄膜である場合が多く、円筒状基材38の円周方向に蒸発溶剤の流れが発生すると、重力によるレベリング作用が小さいために膜厚ムラが残りやすい。
【0055】
本実施形態においては、図7及び図8に示したように、各筒状部18周りに均等且つ筒状部18の液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口48を配置しているため、溶剤蒸気は自重、筒状部18の表面を流れ落ちる塗布液のせん断、あるいは溶剤蒸気吸入口48からの強制吸引によって重力方向に移動し、溶剤蒸気吸入口48に吸い込まれて系外に排出される。これにより、各筒状部18間の溶剤蒸気濃度及び溶剤蒸気流れをほとんど同一の状態に制御できるため、各筒状部18間で膜厚差がほとんど無く、且つダレ、膜厚ムラの小さい塗膜を作製することができる。
【0056】
図9に筒状部18の上端部付近の拡大図を示す。溶剤蒸気が重力方向に流れやすいように、溶剤蒸発抑制部材22から筒状部18液面までの高さ(図9のH)は30mm以上250mm以下であることが好ましく、100mm以上200mm以下であることがより好ましい。筒状部18の液面から溶剤蒸気吸入口48上端までの深さ(図9のD)は、30mm以上250mm以下、好ましくは100mm以上200mm以下低い位置に設けるのが良い。溶剤蒸気吸入口48は、各筒状部18を囲むように設けられていることが好ましい。溶剤蒸気吸入口48の形状は図7のように円筒状等の配管が鉛直上向きに立てられても良く、図10に示したように筒状部18と同心円のスリット形状でも良く、図7及び図10の形状に限定したものではない。なお、図10において溶剤蒸発抑制筒状部26の記載は省略してある。
【0057】
溶剤蒸気吸入口48より吸い込まれた溶剤蒸気に関して、塗布装置4の系外へ排出される際、排出量を精密に制御することが望ましい。円筒状基材38が筒状部18の液面から引き上げられるのに従い、塗膜から蒸発する溶剤蒸気量が筒状部18の液面近傍に蓄積されて溶剤蒸気濃度が上昇し、円筒状基材38の下端に向かうほど塗膜のダレが大きくなりやすい。これを抑制する方法として、円筒状基材38が筒状部18の液面から引き上げられるのに従い、溶剤蒸気の排出量を大きくしていくことが有効である。具体的には、ポンプ、アスピレータ、バルブなどを用いて制御することができる。また、排出された溶剤蒸気を冷却して液化し、再度使用することも好ましい。
【0058】
本実施形態により、例えば複数本の円筒状基材38が、狭い間隔で配置された場合でも、溶剤蒸気の局在化及び気流の発生を抑制することができ、且つ低濃度に制御することにより、ダレ、膜厚ムラの小さい塗膜が作製可能である。
【0059】
次に本実施形態に係る塗布装置及び塗布方法を用いて作製されるものの一例として、電子写真感光体について説明する。作製される電子写真感光体は、その塗膜構成の種類により、塗膜に電荷発生物質及び電荷輸送物質を含む単層型のものと、塗膜が電荷発生層と電荷輸送層からなる積層型に大別されるが、本実施形態の浸漬塗布装置及び塗布方法は、特に積層型電子写真感光体における電荷輸送層の形成に使用することが好ましい。
【0060】
円筒状基材としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などの導電性金属、その他に、表面に金属を蒸着するか導電粉を分散した塗膜を形成するなどにより、導電化処理されたプラスチックや紙等の筒状のものを用いることができる。基材の表面には、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理等の処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理により基材表面を粗面化することで、レーザビームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0061】
次に、下引層について説明する。下引層は、積層構造を有する感光層の帯電の際に、導電性支持体(円筒状基材)から感光層への電荷の注入を阻止するとともに、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである。また、下引層は、場合によっては導電性支持体の光の反射防止作用等を示すことができる。かかる効果を有し、高画質な画像を維持する観点から、本実施形態に係る電子写真感光体は、下引層を備えていることが好ましい。
【0062】
下引層の材料としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でも上層(例えば、電荷発生層)形成用塗布液に含まれる溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。更に、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0063】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0064】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0065】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマ、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0066】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0067】
下引層中には、下引層を厚膜化するために、導電性物質等の金属酸化物を含有させると良い。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。下引層を厚膜化、特に15μm以上の膜厚にすることにより、基材表面上の異物等の隠蔽効果が増し、上層に塗布する電荷発生層等の表面性向上につながる。
【0068】
上記金属酸化物には表面処理を施すことができる。表面処理を施すことで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。これらの化合物は単独あるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない、画質特性に優れるなど性能上優れている。
【0069】
シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物の例としては前述した例と同じ物質が挙げられる。
【0070】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。乾式法により表面処理を施す場合、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で撹拌しながら、シランカップリング剤を直接又は有機溶剤に溶解させて滴下し、それらの混合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって、均一な表面処理が行われる。シランカップリング剤の滴下及び混合物の噴霧は、使用する溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。滴下又は噴霧を溶剤の沸点以上の温度で行うと、均一に撹拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる傾向がある。このようにして表面処理された金属酸化物粒子について、更に100℃以上の温度で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法としては、金属酸化物粒子を溶剤中に撹拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加して、撹拌又は分散した後、溶剤を除去することで均一に処理される。溶剤は蒸留により留去することが好ましい。なお、ろ過による除去方法では未反応のシランカップリング剤が流出しやすく、所望の特性を得るためのシランカップリング剤量をコントロールしにくくなる傾向がある。溶剤除去後には更に100℃以上の温度で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては金属酸化物粒子含有水分除去法として表面処理に用いる溶剤中で撹拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等を用いることもできる。
【0071】
下引層中の金属酸化物粒子に対するシランカップリング剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引層中に用いられる金属酸化物粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
【0072】
下引層中には、光散乱性の向上等の目的により、各種の有機もしくは無機粉末を混合することができる。かかる粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料や、テフロン(登録商標)樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。これらの粉末の粒径は、0.01μm以上2μm以下であることが好ましい。粉末は必要に応じて添加される成分であるが、添加する場合の配合量は、下引層に含まれる固形分に対して、質量比で10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
また、下引層の形成に用いられる塗布液(下引層形成用塗布液)には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。下引層形成用塗布液を調製するに際し、前述の導電性物質や光散乱物質等の粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に粉末を添加して分散処理が行うことが好ましい。粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。
【0074】
次に、電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生材料及び結着樹脂を含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、公知の電荷発生材料を特に制限なく使用することができるが、中でも金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましく用いられ、特定の結晶を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等が特に好ましく用いられる。
【0075】
電荷発生層において好ましく用いられる電荷発生材料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、及びニーダー等を用いて機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、及びニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0076】
湿式粉砕処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、又はこれらの数種の混合系、あるいは水とこれら有機溶剤との混合系が挙げられる。これら溶剤の使用量は、顔料結晶1質量部に対して1質量部以上200質量部以下、好ましくは10質量部以上100質量部以下が望ましい。
【0077】
また、湿式粉砕処理における処理温度は、0℃以上溶剤の沸点以下、好ましくは10℃以上60℃以下である。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いてもよい。磨砕助剤は、顔料に対して0.5倍以上20倍以下、好ましくは1倍以上10倍以下(いずれも質量換算値)用いればよい。
【0078】
また、公知の方法で製造される顔料結晶について、アシッドペースティング又はアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕又は湿式粉砕との組み合わせによって結晶制御することもできる。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、この硫酸の濃度は70質量%以上100質量%以下、好ましくは95質量%以上100質量%以下の濃度のものが使用される。この硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、1倍以上100倍以下、好ましくは3倍以上50倍以下(いずれも質量換算値)の範囲に設定される。また、溶解温度は、−20℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上60℃以下の範囲に設定される。結晶を酸から析出させる際の溶剤としては、水、或いは水と有機溶剤の混合溶剤を任意の量で使用できる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0079】
これらの電荷発生材料は、加水分解性基を有する有機金属化合物又はシランカップリング剤等で被覆処理してもよい。かかる被覆処理によって電荷発生材料の分散性や電荷発生層用塗布液の塗布性が向上し、平滑で分散均一性の高い電荷発生層を容易に且つ確実に成膜することができ、その結果、カブリやゴースト等の画質欠陥が防止され、画質維持性を向上させることができる。また、電荷発生層用塗布液の保存性も著しく向上するので、ポットライフの延長の点でも効果的であり、感光体のコストダウンも可能となる。上記加水分解性基を有する有機金属化合物は、下記一般式(I):
Rp−M−Yq (I)
で表される化合物である。なお、式中、Rは有機基を表し、Mはアルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子を表し、Yは加水分解性基を表し、p及びqはそれぞれ1〜4の整数であり、pとqとの和はMの原子価に相当する。
【0080】
一般式(I)中、Rで表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアリールアルキル基、スチリル基等のアリールアルケニル基、フリル基、チエニル基、ピロリジニル基、ピリジル基、イミダゾリル基等の複素環残基等が挙げられる。これらの有機基は1または2種以上の各種の置換基を有していてもよい。
【0081】
また、一般式(I)中、Yで表される加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジロキシ基等のエーテル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、ベンジロキシカルボニル基等のエステル基、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0082】
また、一般式(I)中、Mはアルカリ金属以外であれば特に制限されるものではないが、好ましくはチタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子又はケイ素原子である。すなわち、本実施形態に係る電子写真感光体においては、上記の有機基や加水分解性の官能基を置換した有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、さらにはシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0083】
また、上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0084】
また、上記の有機金属化合物及びシランカップリング剤の加水分解生成物も使用することができる。この加水分解生成物としては、上記一般式(I)で示される有機金属化合物のM(アルカリ金属以外の金属原子又はケイ素原子)に結合するY(加水分解性基)やR(有機基)に置換する加水分解性基が加水分解したものが挙げられる。なお、有機金属化合物及びシランカップリング剤が加水分解性基を複数含有する場合は、必ずしも全ての官能基を加水分解する必要はなく、部分的に加水分解された生成物であってもよい。また、これらの有機金属化合物及びシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0085】
上記の加水分解性基を有する有機金属化合物及び/又はシランカップリング剤(以下、単に「有機金属化合物」という)を用いてフタロシアニン顔料を被覆処理する方法としては、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で該フタロシアニン顔料を被覆処理する方法、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散時に有機金属化合物を混合処理する方法、フタロシアニン顔料の結着樹脂への分散後に有機金属化合物で更に分散処理する方法等が挙げられる。より具体的には、顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法としては、有機金属化合物と結晶が整う前のフタロシアニン顔料とを混合した後加熱する方法、有機金属化合物を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し機械的に乾式粉砕する方法、有機金属化合物の水または有機溶剤中の混合液を結晶が整う前のフタロシアニン顔料に混合し湿式粉砕処理方法等が挙げられる。また、フタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法としては、有機金属化合物、水又は水と有機溶剤との混合液、並びにフタロシアニン顔料を混合して加熱する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料に直接噴霧する方法、有機金属化合物をフタロシアニン顔料と混合しミリングする方法等がある。また、分散時に混合処理する方法としては、分散溶剤に有機金属化合物、フタロシアニン顔料、結着樹脂を順次添加しながら混合する方法、これらの電荷発生層形成成分を同時に添加し混合する方法等が挙げられる。また、フタロシアニン顔料を結着樹脂中に分散した後に有機金属化合物で更に分散処理する方法としては、例えば溶剤で希釈した有機金属化合物を分散液に添加し撹拌しながら分散する方法が挙げられる。また、かかる分散処理の際、より強固にフタロシアニン顔料に付着させるために、触媒として硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸を添加してもよい。これらの中でも、フタロシアニン顔料の結晶を整える過程で予め被覆処理する方法、又はフタロシアニン顔料を結着樹脂に分散する前に被覆処理する方法が好ましい。
【0086】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸との重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。
【0087】
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。塗布液の溶剤としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独で又は2種以上混合して用いることができる。電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行うことが好ましい。また、この分散の際、電荷発生材料を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0088】
次に、電荷輸送層について説明する。電荷輸送層は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成されるものである。電荷輸送層に用いる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質;あるいは上記化合物から水素原子等を除いた残基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマ等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料及び結着樹脂を含む塗布液の塗布により形成される。塗布液の溶剤としては、結着樹脂を溶解することが可能であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
(電子写真感光体用塗布液の作製)
N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(重量平均分子量40,000)60質量部とをテトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、4フッ化エチレン樹脂粒子10質量部を加え、さらに混合した。このとき、室温を25℃に設定し、混合工程における液温度を25℃に保った。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにて分散し、4フッ化エチレン樹脂粒子分散液を作製した。このとき、サンドクラインダーのベッセルに24度の水を流し、分散液の温度を50度に保持した。こうして電荷輸送層用の塗布液を準備した。
【0093】
<実施例1>
図1に示す塗布装置1を使用した。上記のようにして得られた電荷輸送層用の塗布液を塗布槽10に投入し、温度24℃、粘度550mPa・sに調整した。使用した浸漬塗布装置には、内径Φ60mm、深さ400mmの円筒状の筒状部18を25個(5個×5個)、85mmピッチで設けた。円筒状の筒状部18の上方には、筒状部18に対応する開口部34及び開口部34に接続され、筒状部18の外周部を所定の間隔を持って覆う円筒状の溶剤蒸発抑制筒状部26を有する溶剤蒸発抑制部材22を設置した。また、内径60mm、高さ150mmのフード24を筒状部18の液面から30mmの高さにて各筒状部18上に設けた。塗布液保持槽12からポンプ16にて塗布液を送液し、ポンプ16と塗布槽10の塗布液供給配管30の間にあるフィルタ28を通して塗布液を塗布槽10に送液した。
【0094】
円筒状基材38として外径30mm、長さ340mmのアルミパイプを使用した。図1の浸漬塗布装置にて電荷輸送層用塗布液を用いて、塗布速度150mm/minにて浸漬塗布を行った後、120℃で30分乾燥して膜厚30μmの電荷輸送層を得た。浸漬塗布装置は、表1の条件に設定した。なお、平均流速dは、液が筒状部18の表面を流れ落ちる距離を流れ落ちる時間で割ることで求めた。
【0095】
(評価)
実施例1で作製したドラム表面の膜厚を渦電流膜厚測定装置(自社製)を用いて上端側の塗布開始位置より20mm以上300mm以下の間を10mm間隔、90°毎に測定し、その平均値を平均膜厚A(μm)とした。塗布開始位置より20mmの点における膜厚B(μm)を測定し、A−Bの値を上端部膜厚ダレとした。又、全測定点の膜厚の最大値と最小値の差を膜厚ムラとした。評価基準は以下の通りとした。得られた結果を表1に示す。
[膜厚ムラ]
◎:1.5μm以下
○:1.5μmより大きく、3.0μmより小さい
×:3.0μm以上
[上端部ダレ]
◎:1.0μm以下
○:1.0より大きく、2.5μmより小さい
×:2.5μm以上
[総合評価]
◎:膜厚ムラと上端部ダレが共に◎
○:膜厚ムラが○で、上端部ダレが◎か○
×:膜厚ムラが×で、上端部ダレが○または×
【0096】
<実施例2〜18>
浸漬塗布装置の条件を表1の条件に設定した以外は実施例1と同様の装置を使用した。実施例1と同様にして感光体の作製及び評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0097】
<実施例19>
図4に示す塗布装置2を使用した。円筒状の筒状部18の上方には、筒状部18に対応する開口部34(直径68mm)を有し、溶剤蒸発抑制筒状部を有さない溶剤蒸発抑制部材22を設置した。
【0098】
<実施例20>
図6に示す塗布装置3を使用した。塗布液供給配管30に設けた振動式粘度計(CBC株式会社製、FVM80A−EX)の指示値が一定になるように、オーバーフローパン14と塗布液保持槽12とを結ぶ戻り配管32に設けたスプレーノズル40から希釈溶剤(メチルエチルケトン)を適量噴射することによって追加した。スプレーノズル40は(株)いけうち製の小噴流形一流体ノズル(J010NSW)を一つ、塗布液保持槽12側から200mm塗布槽10側の戻り配管32の天井に設けた。噴射により形成される希釈溶剤の液滴径(ザウター粒径)は160μmとした。それ以外は実施例1と同様にして、感光体の作製及び評価を実施した。浸漬塗布装置は表1の条件に設定した。評価結果を表1に示す。
【0099】
<実施例21>
図7に示す塗布装置4を使用した。内径20mm、高さ100mmの円筒体形状の溶剤蒸気吸入口48を、筒状部18の液面から溶剤蒸気吸入口48上端まで150mmの深さで、筒状部18を囲むように正方形頂点位置に4個、合計36個をオーバーフローパン14の底面及び溶剤蒸発抑制部材22を通るように配置した。
【0100】
<比較例1>
図11に示すように溶剤蒸発抑制部材を使用せず、戻り配管32上に溶剤蒸気排出口36を設け、以下の表1に記す条件以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0101】
<比較例2および3>
図11に示す浸漬塗布装置を用い、以下の表1に記す条件以外は、比較例1と同様にして感光体を作製し、評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
このように、実施例1〜21の塗布装置及び塗布方法によれば、塗布槽の筒状部上部に蓋が設置されたオーバーフローパン内に溶剤蒸発抑止板を設けることで、蓋と溶剤蒸発抑止板の間及びフード内の溶剤蒸気濃度を強制的に低減することができ、均一性の高い膜厚の電子写真感光体を得ることができた。
【0104】
実施例20では、希釈溶剤を塗布液に添加するためのスプレーノズルを設けたことにより、膜厚ムラがより小さい結果となった。また、実施例21では、塗布槽の筒状部液面より低い位置に溶剤蒸気吸入口を設けたことにより、膜厚ムラが小さい結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る塗布装置における、複数の筒状部、及び溶剤蒸発抑制筒状部を備える溶剤蒸発抑制部材の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る図1の塗布装置における、筒状部の上端部付近の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る図4の塗布装置における、筒状部の上端部付近の拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係る塗布装置の他の例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の実施形態に係る塗布装置における、オーバーフローパン底面部の一例を示す概略上面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る図7の塗布装置における、筒状部の上端部付近の拡大図である。
【図10】本発明の実施形態に係る塗布装置における、溶剤蒸気吸入口の形状の他の例を示す概略構成図である。
【図11】本発明の比較例で使用した従来の塗布装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0106】
1,2,3,4,5 塗布装置、10 塗布槽、12 塗布液保持槽、14 オーバーフローパン(塗布液受け)、16 循環ポンプ、18 筒状部(ポット)、20 蓋、22 溶剤蒸発抑制部材、24 フード、26 溶剤蒸発抑制筒状部、28 フィルタ、30 塗布液供給配管、32 戻り配管、34 開口部、36 溶剤蒸気排出口、38 円筒状基材、40 スプレーノズル、42 希釈溶剤保持タンク、44 粘度計、46 粘度制御装置、48 溶剤蒸気吸入口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を充填するための塗布槽と、
前記塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部と、
前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、
を有し、
前記筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記溶剤蒸発抑制部材が、前記開口部に接続され、前記筒状部の外周部を所定の間隔を持って覆う溶剤蒸発抑制筒状部を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記溶剤蒸発抑制筒状部の上面側の開口部は、前記筒状部の上面よりも高い位置にあることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
塗布液を充填した塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布工程を含み、
前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材により、前記筒状部の液面からの溶剤の蒸発を抑制しながら前記塗布を行うことを特徴とする塗布方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布装置を使用して製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項1】
塗布液を充填するための塗布槽と、
前記塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部と、
前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材と、
を有し、
前記筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記溶剤蒸発抑制部材が、前記開口部に接続され、前記筒状部の外周部を所定の間隔を持って覆う溶剤蒸発抑制筒状部を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記溶剤蒸発抑制筒状部の上面側の開口部は、前記筒状部の上面よりも高い位置にあることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
塗布液を充填した塗布槽の上部に設けられ、前記塗布液が溢流する筒状部に円筒状基材を浸漬させ、引き上げることにより前記円筒状基材に前記塗布液を塗布する塗布工程を含み、
前記筒状部の上方に設けられ、前記筒状部の位置に対応する開口部を有する溶剤蒸発抑制部材により、前記筒状部の液面からの溶剤の蒸発を抑制しながら前記塗布を行うことを特徴とする塗布方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布装置を使用して製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−289982(P2008−289982A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136825(P2007−136825)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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