説明

塗布装置およびノズルガード

【課題】ノズルの保護部材を設けた場合において、塗布不良の発生を効果的に抑制する技術を提供する。
【解決手段】スリットノズル41の前方端面412から離間距離D1分離れた位置に、保護部材60を配置する。保護部材60は、接続部材61を介してスリットノズル41に固定される。保護部材60、接続部材61およびスリットノズル41は、ボルト部材62により一体的に連結可能であり、このボルト部材62を着脱することで、接続部材61が着脱自在となっている。また、離間距離D1は、接続部材61のX方向の長さを変えることにより調整可能であり、離間距離D1の値は、塗布速度に応じて設定される。このように、離間距離D1を設けた分、吐出口411と基板90との間に形成されるレジスト液RGの液面が、離間空間S1を通過する気流により乱されることを効果的に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に処理液を塗布する技術に関し、特に、ノズルの吐出口を保護するノズルガードの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スリットノズルの先端に設けられたスリット状の吐出口と基板の表面とを近接させ、ノズルを基板に対して平行移動させつつ、上記吐出口から処理液を吐出することにより、基板の表面に処理液を塗布する塗布装置が知られている。
【0003】
上記塗布装置においては、吐出口と基板表面との間の間隙が、数10μm〜数100μmの極小間隙となっている。したがって、基板の表面または裏面に異物があると、様々な不具合が生じるおそれがある。例えば、基板表面の異物とスリットノズルの先端とが接触することにより、スリットノズルが損傷することがある。
【0004】
そこで、スリットノズルの移動方向の前方端面にノズルガードを設け、当該ノズルガードにより異物の除去や検出を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。具体的に、特許文献1では、スリットノズルに保護部材(板状部材)を固定し、当該保護部材と異物との干渉により生じる振動を検出して、ノズルの移動を停止させる技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−24571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来のノズルガードについて、図6を参照しつつ具体的に説明する。
【0007】
図6は、従来のレジスト塗布処理時におけるスリットノズル141とノズルガード106とを示す側面図である。なお、図6に示すスリットノズル141は、その下端に、X方向に沿って延びるスリット状の吐出口1410を有しており、当該吐出口1410からレジスト液RGを吐出する。また、ノズルガード106は、本体部である保護部材160を有する。
【0008】
図6に示すように、ステージ103に支持された基板190の表面に、吐出口1410を近接させ、スリットノズル141を(+Y)方向へ移動させるとともに、吐出口1410から処理液(ここでは、レジスト液RG)を吐出させることで塗布処理が行われる。また、保護部材160は、スリットノズル141の前方端面1412側に取り付けられている。
【0009】
従来の構成において、塗布処理時においてスリットノズル141を(+Y)方向へ移動させる場合、保護部材160と基板190との隙間を通って、吐出口1410に向けて雰囲気が流入する。この流入する雰囲気は、主にスリットノズル411の(+X)側および(−X)側の両サイドから排出されるものの、X方向に沿う各部分における雰囲気の流れ(対流)にばらつきが生じる。そのため、吐出口1410と基板190との間で形成されるレジスト液RGの液面に乱れが生じるおそれがあった。すなわち、従来の構成では、均一な塗布処理が困難となっており、塗布ムラなどの塗布不良が発生するおそれがあった。
【0010】
また、保護部材160の下端面の平坦度や取り付け精度によっても、雰囲気の対流が変化するため、上記レジスト液RGの液面の乱れを解消することは困難であった。
【0011】
また、基板製造のタクトタイム短縮のために、塗布処理時におけるスリットノズル141の移動速度(塗布速度)の上昇が求められているが、速度上昇につれて上述の液面の乱れが顕著となることから、容易に塗布速度を上げることができなかった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルの保護部材を設けた場合において、塗布不良の発生を効果的に抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、支持手段により支持された基板の主面に対して処理液を塗布する塗布装置であって、先端に吐出口を有するノズルと、前記ノズルに処理液を供給する供給手段と、前記ノズルを前記基板の主面に対して略平行に相対移動させる移動手段と、前記移動手段により相対移動する前記ノズルの相対移動方向を基準に前記ノズルの前方端と後方端とを規定したとき、前記ノズルの前方端側に設けられるノズルガードとを備え、前記ノズルガードは、前記ノズルの前方端から所定の離間距離をあけて設けられる保護部材と、前記ノズルと前記保護部材とに対して着脱自在であるとともに、前記ノズルと前記保護部材とを、前記所定の離間距離をあけた状態で接続する接続部材とを含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る塗布装置であって、前記所定の離間距離は、前記移動手段による前記基板に対する前記ノズルの相対移動速度に応じて設定されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係る塗布装置であって、前記接続部材は、前記基板と前記接続部材との間の離間空間と、前記接続部材の前記離間空間とは反対側の上部空間とを連通する開口部を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る塗布装置であって、前記保護部材の前記基板と対向する側の先端部分の高さ位置が、前記基板に対する前記吐出口の高さ位置と、前記基板の表面の高さ位置との間となることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る塗布装置であって、前記吐出口は、所定方向に沿って延びるスリット状の吐出口であり、前記保護部材は、前記所定方向に沿って延びることを特徴とする。
【0018】
また、請求項6の発明は、支持手段に支持された基板の主面に対して移動手段により相対的に平行移動するノズルにおいて、前記移動手段により相対移動する前記ノズルの相対移動方向を基準に前記ノズルの前方端と後方端とを規定したとき、前記ノズルの移動方向の前方端側に設けられるノズルガードであって、前記ノズルの前方端から所定の離間距離をあけて設けられる保護部材と、前記ノズルと前記保護部材とに対して着脱自在であるとともに、前記ノズルと前記保護部材とを、前記所定の離間距離をあけた状態で接続する接続部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1ないし6に記載の発明によれば、ノズルの前方端に、着脱自在な接続部材を設けることによって、保護部材とノズルの吐出口とを、所定の離間距離分あけた状態で、保護部材をノズルに固定できる。したがって、処理液の塗布処理の際に、離間距離を設けた分、保護部材と基板との間を通過する雰囲気によりノズルの吐出口に形成される処理液の液面が乱れることを抑制できるため、塗布ムラなどの塗布不良の発生を効果的に抑制できる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、所定の離間距離をノズルの移動速度に応じて設定することにより、処理液の塗布処理時において吐出口に形成される処理液の液面を安定化できる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、離間空間と上部空間とを連通状態とする開口部を設けることにより、ノズルの移動時に、開口部を伝って離間空間に流入する雰囲気により、基板と保護部材との隙間から離間空間に流入する雰囲気の流れを抑制できる。したがって、処理液の塗布処理時における処理液の液面を安定化できる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、基板上の異物が存在する場合や基板が隆起している場合などにおいて、異物や基板に対し、吐出口が干渉する前に保護部材が衝突する。したがって、基板上の異物や基板の隆起などに吐出口が干渉することを防止できるため、吐出口が損傷することを抑制できる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明によれば、保護部材がスリット状の吐出口と同方向に沿って延びることから、ノズルガードによりスリット状の吐出口を保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0025】
<1. 第1の実施の形態>
<1.1. 構成および機能>
図1は、本発明に係る第1の実施の形態における塗布装置100を示す斜視図である。また、図2は、スリットノズル41とノズルガード6とを示す斜視図である。そして、図3は、レジスト塗布処理時におけるスリットノズル41とノズルガード6とを示す側面図である。なお、図1においては、ノズルガード6の図示を省略している。
【0026】
図1,2および3において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。
【0027】
図1に示すように、塗布装置100は、本体2と、制御系7とに大別され、液晶表示装置の画面パネルを製造するための角型ガラス基板を被処理基板(以下、単に「基板90」と称する。)としている。したがって、塗布装置100は、基板90の表面に形成された電極層等を選択的にエッチングするプロセスにおいて、基板90の表面にレジスト液RGを塗布する基板処理装置として構成されている。そのため、本実施の形態では、スリットノズル41からレジスト液RGが吐出される。
【0028】
なお、塗布装置100は、液晶表示装置用のガラス基板だけでなく、一般にフラットパネルディスプレイ用の種々の基板に所定の処理液を塗布する装置として変形利用することもできる。
【0029】
[本体2]
本体2は、基板90を載置して保持するための保持台として機能するとともに、付属する各機構の基台としても機能するステージ3を備える。ステージ3は直方体形状の一体の石製であり、その表面(保持面30)のうち上面および側面は平坦面に加工されている。
【0030】
ステージ3の上面中央部に設けられた矩形の領域である基板保持領域300には多数の真空吸着口、または、保持面30に沿って延びる真空吸着用の溝(図示せず)が分散して形成されており、塗布装置100において基板90を処理する間、基板90を吸着することにより、基板90を所定の水平位置に保持する。
【0031】
保持面30の基板保持領域300を挟んだ両端部には、Y方向に沿って略水平に延びる一対の走行レール31aが固設される。走行レール31aは、架橋構造4の両端部に固設される支持ブロック31bとともに、架橋構造4の移動を案内し(移動方向を所定の方向に規定する)、架橋構造4を基板保持領域300の上方に支持するリニアガイドを構成する。
【0032】
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡された架橋構造4が設けられている。架橋構造4は、カーボンファイバ樹脂を骨材とする断面がU字型(図3参照)のノズル支持部40と、その両端を支持する昇降機構42,43とで主に構成される。
【0033】
ノズル支持部40には、スリットノズル41が取り付けられている。X方向に沿って伸びるスリットノズル41には、スリットノズル41へ処理液(ここではレジスト液RG)を供給する配管やレジスト用ポンプを含むレジスト供給部410が接続されている。スリットノズル41の(−Z)側下端には、X方向に沿って延びるスリット状の吐出口411が設けられており、スリットノズル41が基板90の表面を走査しつつレジスト液RGを当該吐出口411から吐出することにより、基板90の表面の所定の領域(レジスト塗布領域)にレジスト液RGを吐出する。
【0034】
ここで、レジスト塗布領域とは、基板90の表面のうちでレジスト液RGを塗布しようとする領域であって、通常、基板90の全面積から、端縁に沿った所定幅の領域を除いた領域である。
【0035】
昇降機構42,43はスリットノズル41の両側に分かれて、ノズル支持部40によりスリットノズル41と連結されている。昇降機構42,43はそれぞれボールネジおよびサーボモータを有しており、サーボモータが回転駆動力をボールネジに伝達することによって、スリットノズル41を鉛直方向に沿って並進的に昇降させる。
【0036】
また、昇降機構42,43のサーボモータのそれぞれには、ロータリーエンコーダが設けられている。ロータリーエンコーダはボールネジ(もしくは、サーボモータ)の回転角を検出して後述の制御系7に伝達する。制御系7では、ロータリエンコーダによる検出結果に基づいて、スリットノズル41の鉛直方向の位置が算出される。
【0037】
架橋構造4の両端部には、ステージ3の両側の縁側に沿って個別に配置された一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50,51が、それぞれ固設される。
【0038】
リニアモータ50は、固定子(ステータ)50aと移動子50bとを備え、固定子50aと移動子50bとの電磁的相互作用によって架橋構造4をX軸方向に移動させるための駆動力を生成するモータである。また、リニアモータ50による移動量および移動方向は、制御系7からの制御信号により制御可能となっている。なお、リニアモータ51もほぼ同様の機能、構成を有する。
【0039】
リニアエンコーダ52,53は、それぞれスケール部および検出子を備え(図示せず)、スケール部と検出子との相対的な位置関係を検出して、制御系7に伝達する。各検出子は架橋構造4の両端部にそれぞれ固設されており、リニアエンコーダ52,53は架橋構造4の位置検出を行う。
【0040】
[ノズルガード6]
図2に示すように、スリットノズル41の塗布方向(図1中、+Y方向)前方端側の側面(前方端面412)には、ノズルガード6が固設されている。ノズルガード6は、主に、保護部材60と接続部材61とを有する。
【0041】
保護部材60は、X方向に沿って延びる板状部材であり、長手方向の長さは、スリットノズル41のX方向の長さと同程度である。保護部材60は、剛性の高い素材(例えば、ステンレスなど)で形成され、スリットノズル41の(+Y)側に、接続部材61を介して前方端面412から所定の離間距離D1をあけて設けられる(図3参照)。
【0042】
また、図3に示すように、保護部材60は、平坦加工された下端面600を有しており、レジスト塗布時において、下端面600と保持面30とが略平行となるように、スリットノズル41に固定される。
【0043】
なお、下端面600の保持面30に対する垂直方向の高さ位置(垂直位置)は、レジスト塗布時において、スリットノズル41の下端(ここでは、吐出口411)の垂直位置よりも保持面30に近接する位置とされる。また、下端面600の垂直位置は、レジスト塗布時において、保持面30に正常に載置された基板90の主面(吐出口411と対向する基板90の表面)と接触しない程度の位置とされる。
【0044】
接続部材61は、X方向に沿って延びる略直方体の形状を有しており、一方(−Y側)の面がスリットノズル41の前方端面412に、他方(+Y側)の面が保護部材60に連結部材(ボルト部材62)により連結される。本実施の形態では、接続部材61を上述の位置に配置することにより、スリットノズル41と保護部材60との間に離間距離D1が設けられる。したがって、接続部材61は、スペーサーとしての機能を有している。
【0045】
図2および図3に示すように、本実施の形態では、スリットノズル41、保護部材60、および接続部材61は、保護部材60および接続部材61を貫通するボルト部材62により互いに連結される。したがって、接続部材61は、当該ボルト部材62を取り外しすることにより、スリットノズル41および保護部材60に対して着脱自在となっている。このため、予めY方向のサイズが異なる接続部材61を複数種類用意し、オペレータが必要に応じて接続部材61を交換することによって、離間距離D1を適宜変更することができる。
【0046】
なお、離間距離D1の値は、スリットノズル41の塗布方向への移動速度に応じて設定され、詳細には、レジスト塗布処理時におけるスリットノズル41の移動速度(塗布速度)が大きくなるにつれて、当該離間距離D1もより大きい値に設定される。
【0047】
具体的に、塗布速度が、例えば50mm/secの場合には、離間距離D1は3mm以上とされ、100mm/secの場合には、離間距離D1は4mm以上とされ、150mm/secの場合には、離間距離D1は5mm以上とされる。ただし、これらは単に例示するものであって、離間距離D1の値は、これらに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更が可能である。
【0048】
なお、スリットノズル41の塗布方向の後方端側の側面(後方端面413)には、振動検知センサ63が設けられている。振動検知センサ63は、スリットノズル41の加速度を検出する機能を有する。
【0049】
例えば、図3に示すレジスト塗布時において、基板90上に異物が存在し、異物と保護部材60が衝突した場合や、保護部材60の下端面600に異物が挟まったような場合に、スリットノズル41が所定方向に振動する。振動検知センサ63は、この振動を検出し、後述の制御系7に検出信号を出力する。塗布装置100では、この検出信号が出力されると、レジスト液RGの吐出を停止し、昇降機構42,43によりスリットノズル41を上昇させ、リニアモータ50,51によりスリットノズル41を待機位置へ移動させる。
【0050】
また、本実施の形態では、保護部材60は、1の板状部材からなるものとしているが、例えば、複数の部材により構成してもよい。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、保護部材60をスリットノズル41の塗布方向の前方側に配置することによって、基板90上に異物(図示せず)が存在する場合であって、スリットノズル41を塗布方向へ移動させたときに、保護部材60により当該異物を除去できる。したがって、基板90上の異物(図示せず)との干渉(接触)よるスリットノズル41(特に吐出口411)の損傷を効果的に抑制できる。
【0052】
また、基板保持領域300(図1参照)上に異物が載った状態で基板90が載置された場合に、当該異物の位置で基板90に隆起部分が生じる場合がある。このような場合であっても、レジスト塗布時において、隆起部分にスリットノズル41が衝突する前に、保護部材60が衝突するため、スリットノズル41の損傷を効果的に抑制できる。
【0053】
また、保護部材60を、スリットノズル41から離間距離D1分離して配置することにより、スリットノズル41と基板90の表面との間に、離間距離D1分の離間空間S1(接続部材61と基板90との間の空間)を余分に設けることができる。したがって、従来のように保護部材60を直接スリットノズル41に固定した場合と比較して、離間距離D1を設けた分、スリットノズル41を塗布方向へ移動時の下端面600の下方に進入する気流が(図3中、太い矢印で示す)吐出口411に到達するまでに、その勢いを弱めることができるため、吐出口411付近に形成されるレジスト液RGの液面が乱れることを効果的に抑制できる。
【0054】
また、塗布速度に応じて離間距離D1の大きさを設定することで、吐出口411と基板90との間で形成されるレジスト液RGの液面を安定化できるため、塗布ムラなどによる塗布不良の発生を効果的に抑制できる。
【0055】
また、離間距離D1を規定する接続部材61を、ボルト部材62(着脱機構)によりスリットノズル41と保護部材60とに対して着脱自在とすることで、離間距離D1の変更が容易となる。したがって、塗布速度に適した離間距離D1を選択できるため、塗布ムラなどの塗布不良の発生を効果的に抑制できる。
【0056】
[制御系7]
再び図1に戻って、制御系7は、プログラムに従って各種データを処理する演算部70、プログラムや各種データを保存する記憶部71を内部に備える。また、制御系7の前面には、オペレータが塗布装置100に対して必要な指示を入力するための操作部72、および各種データを表示する表示部73を備える。
【0057】
制御系7は、図示しないケーブルにより本体2に付属する各機構と接続されており、操作部72および各種センサ等からの信号に基づいて、昇降機構42,43、リニアモータ50,51などの各構成を制御する。
【0058】
なお、記憶部71としては、データを一時的に記憶するRAM、読み取り専用のROM、および磁気ディスク装置等が該当するが、可搬性の光磁気ディスクやメモリーカード等の記憶媒体、およびそれらの読み取り装置等であってもよい。
【0059】
また、操作部72は、ボタンおよびスイッチ類(キーボードやマウス等を含む。)等であるが、タッチパネルディスプレイのように表示部73の機能を兼ね備えたものであってもよい。表示部73は、液晶ディスプレイや各種ランプ等が該当する。
【0060】
<1.2. 動作の説明>
次に、塗布装置100の動作について説明する。塗布装置100では、オペレータまたは図示しない搬送機構により基板90が搬入されて、レジスト塗布処理が開始される。この処理を開始するための指示は、基板90の搬送が完了した時点で、オペレータが操作部82を操作することにより入力されてもよい。
【0061】
なお、レジスト塗布処理を開始する前に、オペレータは、実際に塗布処理を行う際の塗布速度に応じて、離間距離D1が適切な値となる接続部材61をスリットノズル41と保護部材60との間に連結する。
【0062】
図示しない搬送機構が、基板90をステージ3の上方へ搬入されると、塗布装置100は、基板90を保持面30にて吸着保持する。
【0063】
基板90の吸着保持を完了すると、塗布装置100は、塗布処理時におけるスリットノズル41と基板90との間の距離を制御するために初期校正を行う。なお、この初期校正ついては、特開2006−102684に開示されている技術を適用できる。
【0064】
具体的には、リニアゲージ(図示せず)を用いて、スリットノズル41の先端(吐出口411)を、例えば保持面30の高さ位置に合わせることにより、スリットノズル41についての原点出しを行う。そして制御系7は、塗布処理時におけるスリットノズル41が適当な高さ位置(基板90とスリットノズル41との間に所定のギャップが設けられる位置)となるときの、サーボモータの原点位置からの回転量を算出し、算出結果を記憶部71に格納する。この算出結果に基づいて、塗布処理時におけるスリットノズル41と基板90との間の距離が制御される。なお、この初期校正は基板90をステージ3上に搬入する前、あるいは、吸着保持する前に実行されてもよい。
【0065】
スリットノズル41についての初期校正が終了すると、リニアモータ50,51が架橋構造4をX軸方向に移動させ、スリットノズル41を吐出開始位置に移動させる。ここで、吐出開始位置とは、レジスト塗布領域の(−X)側の辺にスリットノズル41がほぼ沿う位置である。
【0066】
スリットノズル41が吐出開始位置に移動すると、塗布装置100は、塗布処理を実行する。具体的には、まず、リニアモータ50,51の駆動により架橋構造4が(−X)方向に移動するとともに、レジスト用ポンプ(図示せず)によりスリットノズル41にレジスト液RGが送られ、スリットノズル41が塗布領域にレジスト液RGを吐出する。これにより、基板90のレジスト塗布領域にレジスト液RGの層(膜)が形成される。そして、スリットノズル41がレジスト塗布領域の塗布終了端まで移動すると、架橋構造4の移動およびレジスト液RGの供給が停止され、塗布処理が終了する。
【0067】
なお、この塗布処理の間、制御系7は、ロータリーエンコーダの検出結果を常時監視することよって、基板90とスリットノズル41との間のギャップが適切な値となるように昇降機構42,43を制御する。
【0068】
また、スリットノズル41による塗布処理が行われている間、スリットノズル41に固設されたノズルガード6は、スリットノズル41とともに移動する。したがって、例えば基板90上に異物が存在する場合には、保護部材60により除去される。また、塗布装置100は、振動検知センサ63により、保護部材60と異物との衝突時に生じる所定閾値を越える振動を検出することで、レジスト塗布処理の動作を適宜停止する。
【0069】
塗布処理が終了すると、ステージ3は、基板90の吸着を停止し、リフトピンを上昇させて基板90を保持面30から引き上げる。そして図示しない搬送機構がリフトピンに保持された基板90を受け取り、次の処理装置に向けて基板90を搬出する。
【0070】
次に、塗布装置100は、連続して処理すべき他の基板90が存在するか否かを判定し、処理すべき基板90がある場合には、上記説明した処理を繰り返し実行する。一方、処理すべき他の基板90が存在しない場合には、塗布装置100は、各動作を終了する。以上が、レジスト塗布処理時における塗布装置100の動作説明である。
【0071】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、X軸方向に沿って延びる直方体形状の接続部材61を設けることにより、スリットノズル41と保護部材60との間に離間距離D1を設けると説明した。しかし、離間距離D1を設ける機構は、このようなものに限られるものではない。
【0072】
図4は、第2の実施の形態におけるスリットノズル41とノズルガード6aを示す斜視図である。また、図5は、レジスト塗布処理時におけるスリットノズル41とノズルガード6aとを示す側面図である。なお、図5においては、説明の都合上、接続部材61aを破線で示している。また、以下の説明において、第1の実施の形態と同様の構成については、適宜同符号を付し、説明を省略する。
【0073】
図4に示すように、本実施の形態におけるノズルガード6aは、複数(図4では、5個)の離間部材610で構成され、各離間部材610の間に開口部611が形成された接続部材61aを備える。
【0074】
離間部材610は、図5に示すように、スリットノズル41と保護部材60との間において、所定の離間距離D2をあけてスリットノズル41の前方端面412と保護部材60とを接続する部材である。この複数の離間部材610により、保護部材60は、前方端面412に対して(+Y)側の所定位置に配置される。
【0075】
開口部611は、隣り合う2つの離間部材610の対向面と、スリットノズル41の前方端面412と、前方端面412と対向する保護部材60の対向面とで形成される開口である。本実施の形態では、接続部材61aと保持面30に載置された基板90との間に形成される離間空間S2と、接続部材61aの基板90とは反対側(すなわち、離間空間S2とは反対側)の上部空間S3とが、開口部611により連通状態であるため、これらの空間の雰囲気は自由に往来できる。
【0076】
なお、第1の実施の形態と同様に、保護部材60の下端面600の垂直位置は、レジスト塗布処理時において、スリットノズル41の下端(ここでは、吐出口411)の垂直位置よりも下方(基板90側)であり、保持面30に正常に保持された基板90の表面の垂直位置よりも上方(スリットノズル41側)とされる。
【0077】
また、図4および図5に示すように、スリットノズル41、保護部材60および離間部材610は、保護部材60および離間部材610を貫通するボルト部材62により互いに連結される。したがって、第1の実施の形態における接続部材61の場合と同様に、離間部材610は、ボルト部材62を取り外しすることにより、スリットノズル41および保護部材60に対して着脱自在となっている。したがって、予めY方向のサイズが異なる離間部材610を複数種類用意し、オペレータが必要に応じて離間部材610を交換することにより、離間距離D2を適宜変更することができる。
【0078】
本実施の形態では、上述のように、接続部材61aを構成する複数の離間部材610が、開口部611を設けるように所定の間隔をあけて配置される。したがって、スリットノズル41を塗布方向に沿って移動させた場合、図5中、太矢印で示すように、保護部材60の下端面600の下方から(−Y)側へ雰囲気が進入するとともに、スリットノズル41の前方端面412に衝突した雰囲気が開口部611を伝って下方へ進入する(図5中、太い矢印で示す)。すなわち、上部空間S3から離間空間S2へ進入する雰囲気の気流により、下端面600を通過する気流の勢いが弱められる。したがって、吐出口411付近に形成されるレジスト液RGの液面が乱されることを効果的に抑制できるため、塗布不良の発生を効果的に抑制できる。
【0079】
なお、第1の実施の形態における離間距離D1と同様に、離間距離D2の値は、塗布速度(レジスト塗布処理時におけるスリットノズル41の移動速度)に応じて設定される。ただし、本実施の形態では、上述の開口部611を設けているため、離間距離D2は、同じ塗布速度であっても、第1の実施の形態における離間距離D1よりも短くできる。
【0080】
具体的に、塗布速度が、例えば50mm/secの場合には、離間距離D2は1mm以上とされ、100mm/secの場合には、離間距離D2は2mm以上とされ、150mm/secの場合には、離間距離D2は3mm以上とされる。ただし、これらは単に例示するものであり、離間距離D2の値は、これらに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更が可能である。
【0081】
<3. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0082】
例えば、上記実施の形態では、振動検知センサ63をスリットノズル41の後方端面413に固設しているが、設置位置はこれに限定されるものではない。例えば、振動検知センサ63を保護部材60や接続部材61,61aに固設してもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、スリットノズル41、保護部材60、および接続部材61,61aをボルト部材62により互いに連結するとしているが、接続部材61を着脱自在とする着脱機構は、これに限られるものではなく、例えば、接続部材61,61aおよびスリットノズル41と、接続部材61,61aおよび保護部材60とをそれぞれ別個に連結する連結部材(ネジなど)を設けたり、あるいは、接続部材61,61aのスリットノズル41や保護部材60と対向する面に接着剤が塗布された着脱自在な接着面を形成したりすることにより実現されてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、保護部材60とスリットノズル41との間に挟み込む接続部材61,61aのY方向のサイズを調整することにより、離間距離D1,D2を調整するとしているが、離間距離D1,D2の調整機構はこれらに限定されるものではない。例えば、図示を省略するが、保護部材60を貫通する1本以上の接続ネジによりスリットノズル41と保護部材60とを接続し、当該接続ネジを押し引きすることによって、離間距離D1,D2を調整するように構成してもよい。この場合には、当該接続ネジが接続部材となる。
【0085】
また、上記実施の形態では、保護部材60をステンレスなどの剛性の高い素材にて形成すると説明したが、もちろんこれに限定されるものではなく、例えば、保護部材60の長手方向(ここではX方向)の長さや、振動検知センサ63の感度に応じて上記素材を選択してもよい。
【0086】
また、第2の実施の形態では、接続部材61aを複数の離間部材610で構成し、各離間部材610の間に所定間隔をあけて分散配置することで開口部611を設けることにより、離間空間S2と上部空間S3とを連通させている。しかし、連通状態とする態様はこのようなものに限られるものではなく、例えば、第1の実施の形態の接続部材61に上下に貫通する貫通孔を設けることで、接続部材61の上部の空間(上部空間S3に対応)と下部の空間(離間空間S2に対応)とを連通状態としてもよい。
【0087】
また、スリットノズル41と保護部材60とを接続する接続機構を、伸縮可能な構成とすることで、離間距離D1,D2を調整するように構成してもよい。この場合、例えば、スリットノズル41と保護部材60とを、関節を有するアームにより接続して、当該関節部分にてアームを屈曲させることで保護部材60を前後に移動させてもよい。あるいは、スライド機構を有する複数の部材により接続して、複数の部材を互いにスライドさせることにより、保護部材60を前後に移動させてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、支持面30にて保持した基板90に対して、スリットノズル41を水平移動させることにより、レジスト塗布処理を行うとしていた。しかし、塗布方法はこのようなものに限られるものではなく、例えば、ノズル41を定位置に固定するとともに、ステージ3に移動機構を設けて基板90を(−Y)方向へ移動させることで、レジスト塗布処理を実行してもよい。
【0089】
基板90を移動させる場合において、基板90に対するスリットノズル41の相対移動方向は、(+Y)方向(すなわち、基板90の移動方向とは逆向き)となる。したがって、スリットノズル41の(+Y)側が前方端となるため、当該前方端側にノズルガード6,6aを設ければよい。
【0090】
なお、基板90を移動させて塗布処理を行う場合には、スリットノズル41を固定していたとしても、ガード部材60の下端面600と基板90との間で、吐出口411に向かう雰囲気の流れ(気流)が発生する。そこで、この気流が吐出口411のレジスト液RGの液面を乱すことを防止するために、離間距離D1,D2を設けることは有効である。また、この場合の離間距離D1,D2は、基板90の移動速度(換言すれば、基板90に対するスリットノズル41の移動速度(相対移動速度))に応じて設定することが望ましい。
【0091】
さらに、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態における塗布装置を示す斜視図である。
【図2】スリットノズルとノズルガードとを示す斜視図である。
【図3】レジスト塗布処理時におけるスリットノズルとノズルガードとを示す側面図である。
【図4】第2の実施の形態におけるスリットノズルとノズルガードを示す斜視図である。
【図5】レジスト塗布処理時におけるスリットノズルとノズルガードとを示す側面図である。
【図6】従来のレジスト塗布処理時におけるスリットノズルとノズルガードとを示す側面図である。
【符号の説明】
【0093】
100 塗布装置
2 本体
3 ステージ
30 保持面
4 架橋構造
41 スリットノズル
410 レジスト供給部
411 吐出口
412 前方端面
42,43 昇降機構
50,51 リニアモータ
50a 固定子
50b 移動子
52,53 リニアエンコーダ
6,6a ノズルガード
60 保護部材
600 下端面
61,61a 接続部材
610 離間部材
611 開口部
62 ボルト部材
90 基板
D1,D2 離間距離
RG レジスト液
S1,S2 離間空間
S3 上部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持手段により支持された基板の主面に対して処理液を塗布する塗布装置であって、
先端に吐出口を有するノズルと、
前記ノズルに処理液を供給する供給手段と、
前記ノズルを前記基板の主面に対して略平行に相対移動させる移動手段と、
前記移動手段により相対移動する前記ノズルの相対移動方向を基準に前記ノズルの前方端と後方端とを規定したとき、前記ノズルの前方端側に設けられるノズルガードと、
を備え、
前記ノズルガードは、
前記ノズルの前方端から所定の離間距離をあけて設けられる保護部材と、
前記ノズルと前記保護部材とに対して着脱自在であるとともに、前記ノズルと前記保護部材とを、前記所定の離間距離をあけた状態で接続する接続部材と、
を含むことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置であって、
前記所定の離間距離は、前記移動手段による前記基板に対する前記ノズルの相対移動速度に応じて設定されることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗布装置であって、
前記接続部材は、
前記基板と前記接続部材との間の離間空間と、前記接続部材の前記離間空間とは反対側の上部空間とを連通する開口部を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記保護部材の前記基板と対向する側の先端部分の高さ位置が、前記基板に対する前記吐出口の高さ位置と、前記基板の表面の高さ位置との間となることを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の塗布装置であって、
前記吐出口は、所定方向に沿って延びるスリット状の吐出口であり、
前記保護部材は、前記所定方向に沿って延びることを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
支持手段に支持された基板の主面に対して移動手段により相対的に平行移動するノズルにおいて、前記移動手段により相対移動する前記ノズルの相対移動方向を基準に前記ノズルの前方端と後方端とを規定したとき、前記ノズルの移動方向の前方端側に設けられるノズルガードであって、
前記ノズルの前方端から所定の離間距離をあけて設けられる保護部材と、
前記ノズルと前記保護部材とに対して着脱自在であるとともに、前記ノズルと前記保護部材とを、前記所定の離間距離をあけた状態で接続する接続部材と、
を備えることを特徴とするノズルガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46588(P2010−46588A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211808(P2008−211808)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】