説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】ステージへの基板の固定に時間を要する場合であっても、塗布装置全体のサイクルタイムが長期化するのを抑えることができる塗布装置及び塗布方法を提供する。
【解決手段】ステージの表面に基板を載置する基板載置工程と、ステージの表面に載置された基板上に初期膜を形成する初期膜形成工程と、塗布ユニットから塗布液を吐出させつつ、基板上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、を有する塗布装置の塗布方法において、基板載置工程は、基板をステージの表面に吸着する吸着工程を有しており、この吸着工程は、塗布開始位置を含む基板の初期膜形成領域を吸着する初期吸着工程と、初期膜形成領域を除く基板の塗布膜形成領域を吸着する本吸着工程とを含み、初期吸着工程が完了した後、本吸着工程が完了する前に、初期膜形成工程が開始される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布装置及び塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、レジスト液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。
【0003】
この塗布装置は、基板が載置されるステージと、レジスト液が吐出される塗布ユニットを有しており、塗布ユニットからレジスト液を吐出させながら塗布ユニットを移動させることにより、基板上に均一厚さのレジスト液膜が形成されるようになっている。
【0004】
具体的には、下記特許文献1に記載されているように、ステージ上に基板が供給されると、ステージ上の吸着穴に負圧を発生させることにより基板がステージ上に吸着保持される。このとき、空気層が基板とステージとの間に気泡として介在することを回避するために、基板を載置する際には、基板の中央部分を撓ませた状態でその基板中央部分からステージに載置される。そして、ステージ上に基板が載置され吸着された後、塗布ユニットが移動することによりレジスト液が吐出されて基板上に塗布膜が形成される。
【0005】
【特許文献1】特開2006−281091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された塗布装置では、基板全体がステージ上に吸着されて固定された後に塗布ユニットが移動するため、塗布装置のサイクルタイムが長くなるという問題がある。すなわち、基板が大型化すること等により、基板を位置決めする微調整が困難になるため、大型の基板全体をステージ上に精度よく載置して固定するには時間がかかり、塗布装置全体としてのサイクルタイムが長期化する傾向があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、塗布装置におけるステージへの基板の固定に時間を要する場合であっても、塗布装置全体のサイクルタイムが長期化するのを抑えることができる塗布装置及び塗布方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージの表面に載置された基板に対して相対的に移動しつつ塗布液を吐出することにより、基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、を備える塗布装置において、前記ステージには、基板を吸着保持する基板吸着手段が設けられており、前記基板吸着手段は、塗布開始時における初期膜が形成される基板の初期膜形成領域を吸着する初期吸着部と、この初期膜形成領域を除く塗布膜形成領域を吸着する本吸着部とを有していることを特徴としている。
【0009】
上記塗布装置によれば、基板を吸着する前記基板吸着手段は、初期吸着部と本吸着部とを有しているため、初期吸着部で基板の一部が吸着された後、塗布ユニットを移動させて初期吸着部に対応する基板部分に対して塗布を開始することができる。すなわち、基板の吸着が開始された後、すぐに前記初期吸着部に対応する基板部分に塗布ユニットを移動させることができるため、従来のように基板全体を吸着固定した後に塗布動作を開始させる場合に比べて、塗布装置全体としてのサイクルタイムを短縮させることができる。
【0010】
また、前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部には、それぞれステージの表面に開口して形成される吸引孔が形成されており、前記基板吸着手段は、前記吸引孔に吸引力を発生させる吸引手段と、この吸引手段からの吸引力を前記初期吸着部及び本吸着部に対して選択的に発生させる切替手段とを備えている構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、切替手段を操作することにより前記初期吸着部のみに吸引力を発生させて、初期吸着部に基板の一部を吸着させた後、本吸着部にも吸引力を発生させて基板全体を吸着固定することができる。したがって、初期吸着部と本吸着部の双方別々に吸引手段を設ける必要がない。
【0012】
また、前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部には、それぞれステージの表面に開口して形成される吸引孔が形成されており、前記基板吸着手段には、前記初期吸着部の吸引口に吸引力を発生させる吸引手段と、前記本吸着部の吸引口に吸引力を発生させる吸引手段とが初期吸着部及び本吸着部に対してそれぞれ独立して設けられている構成とすることもできる。
【0013】
この構成によれば、前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部に対して、好適なタイミングでそれぞれに対して独立して吸引力を発生させることができる。
【0014】
また、前記初期吸着部及び本吸着部には、基板を前記ステージの表面に吸着させる吸着溝が形成されており、この吸着溝は、前記吸引孔に連通するとともにステージの表面に開口して形成されており、この初期吸着部の吸着溝と本吸着部の吸着溝とは、互いに連結されるのを防止する間仕切部によってそれぞれ独立して形成されている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、吸引孔に吸引力を発生させると、この吸引孔に連通する吸着溝にも吸引力が発生するため、吸着溝と対面する基板部分全体が吸着溝側に吸引される。そして、基板とステージの間に気泡が介在する場合であっても吸着溝によって気泡が吸引されることにより、基板とステージとの間に気泡が残留するという問題を回避することができる。また、初期吸着部の吸着溝と本吸着部の吸着溝とが、それぞれ独立して形成されていることにより、初期吸着部に吸引力を発生させた場合に、本吸着部に吸着されるべき基板部分に対して吸引力が作用することを防止することができる。
【0016】
また、前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部には、基板を保持するピン部材が備えられており、このピン部材は、それぞれステージ内に収容されるとともにステージの表面から突出可能に設けられ、前記初期吸着部のピン部材は、前記本吸着部のピン部材よりも先にステージ内に収容される構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、基板をステージに載置する際に、最初に基板の一部を初期吸着部に載置することができる。これにより、本吸着部における基板の吸着よりも初期吸着部における基板の吸着を先に開始させることができる。また、基板が初期吸着部から載置され、次いで本吸着部が載置されることにより、基板と初期吸着部との間に存在する空気層が本吸着部側に逃がされる。これにより、空気層が基板とステージ(初期吸着部)との間に気泡として存在するのを抑えることができる。
【0018】
また、前記本吸着部のピン部材は、前記初期吸着部側から順次ステージ内に収容される構成とすることもできる。
【0019】
この構成によれば、本吸着部に載置される基板部分が初期吸着部側から本吸着部側に向かって一方向に順次載置されるため、基板とステージとの間に存在する空気層が未載置側に順次逃がされる。これにより、空気層が基板とステージとの間に気泡として存在するのを抑えることができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために本発明の塗布方法は、ステージの表面に基板を載置する基板載置工程と、前記ステージに載置された基板上に、塗布液を吐出する塗布ユニットを停止させた状態で初期膜を形成する初期膜形成工程と、前記初期膜を形成した後、塗布ユニットから塗布液を吐出させつつ、この塗布ユニットを基板に対して相対的に移動させることにより、基板上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、を有する塗布装置の塗布方法において、前記基板載置工程は、基板をステージの表面に吸着する吸着工程を有しており、この吸着工程は、前記初期膜が形成される基板の初期膜形成領域を吸着する初期吸着工程と、この初期膜形成領域を除く基板の塗布膜形成領域を吸着する本吸着工程とを含み、前記初期吸着工程が完了した後、前記本吸着工程が完了する前に、前記初期膜形成工程が開始されることを特徴としている。
【0021】
この構成によれば、前記初期吸着工程が完了した後、前記本吸着工程が完了する前に、塗布ユニットによる塗布膜形成工程が開始されるため、従来のように前記基板載置工程が完了した後に塗布膜形成工程が開始される塗布方法に比べて塗布装置全体におけるサイクルタイムを短縮させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の塗布装置及び塗布方法によれば、塗布装置におけるステージへの基板の固定に時間を要する場合であっても、塗布装置全体のサイクルタイムが長期化するのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す上面図であり、図2は、
その側面図であり、図3は、塗布装置に基板の一部が載置される状態を示す図である。
【0025】
図1〜図3に示すように、塗布装置は、基板10上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基台2と、基板10を載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向(図1において左右方向)に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。
【0026】
なお、以下の説明では、塗布ユニット30が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0027】
前記基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板10をその表面に載置して保持するものである。そして、このステージ21には、基板吸着手段40が設けられており、この基板吸着手段40により、基板10をステージ21の表面に吸着して保持させることができるようになっている。具体的には、このステージ21には、その表面に開口する複数の吸引孔41a、42a(図4参照)が形成されており、これらの吸引孔41a、42aと真空ポンプ81(真空ポンプ81a、81b)とが配管84を介して接続されている。そして、ステージ21の表面に基板10が載置された状態で真空ポンプ81を作動させることにより、吸引孔41a、42aに吸引力が発生し基板10がステージ21の表面側に吸引されて吸着保持されるようになっている。本実施形態では、図3に示すように、後述する初期吸着部41は真空ポンプ81aと連結されており、後述する本吸着部42は真空ポンプ81bと連結されており、初期吸着部41及び本吸着部42に対して、それぞれ独立して真空ポンプ81(真空ポンプ81a、81b)が設けられている。
【0028】
また、前記基板吸着手段40は、図4に示すように、初期吸着部41と本吸着部42とによって構成されている。ここで、図4はステージ21を示す図であり、図4(a)はステージ21の全体斜視図、図4(b)はその表面部分の拡大図である。この初期吸着部41は、塗布ユニット30による塗布開始時に基板10上に初期膜が形成されるが、その初期膜が形成される基板10の表面部分(図3に示す初期膜形成領域11)をステージ21上に吸着するものである。なお、塗布ユニット30により形成される初期膜は線状形状であるため、初期膜形成領域11は、初期膜が形成される線状形状でもよいが、当該線状形状を含む所定の領域であってもよい。すなわち、塗布ムラを生じることなく初期膜が安定して形成できる程度の領域を有するものであってもよく、本実施形態では当該線状形状を含む一定の領域である場合を示している。
【0029】
この初期吸着部41には、図4(b)に示すように、吸引孔41aと吸着溝41bとが形成されており、真空ポンプ81aを作動させることにより、吸引孔41a及び吸着溝41bに吸引力を発生させることができるようになっている。具体的には、吸着溝41bは吸引孔41aを連通するようにステージ21の表面に格子状に形成されている。そして、初期吸着部41に基板10(初期膜形成領域11)が載置されると、この基板10により吸引孔41aと吸着溝41bとを覆われた状態となる。この状態で真空ポンプ81aを作動させることにより、吸引孔41a及び吸着溝41bに吸引力が作用し、基板10の初期膜形成領域11が初期吸着部41に吸着されるようになっている。そして、基板10の初期膜形成領域11とステージ21の初期吸着部41との間に気泡が存在する場合であっても、初期吸着部41の全面に亘って形成された吸着溝41bに気泡が吸引されることにより、基板10の初期膜形成領域11とステージ21の初期吸着部41との間に気泡が残留するのを回避することができる。これにより、気泡の介在を回避するために基板10の中央部分から載置する必要がなく、基板10の端部である初期膜形成領域11から載置することができるようになっている。
【0030】
また、前記本吸着部42は、初期膜が形成される部分を除く基板10の表面(図3に示す塗布膜形成領域12)をステージ21上に吸着するものである。この本吸着部42は、上述の初期吸着部41と同様の構成を有しており、吸引孔42aとこの吸引孔42aを連通するように格子状に形成された吸着溝42bとが形成されている。そして、真空ポンプ81bを作動させることにより、基板10の塗布膜形成領域12が本吸着部42に吸着されるようになっている。また、基板10の塗布膜形成領域12とステージ21の本吸着部42との間に気泡が存在する場合であっても、気泡が吸着溝42bに吸引されることにより、基板10の塗布膜形成領域12とステージ21の本吸着部42との間に気泡が残留するのを回避することができるようになっている。
【0031】
また、図4(b)に示すように、この初期吸着部41の吸着溝41bと本吸着部42の吸着溝42bとの間には間仕切部43が形成されており、吸着溝41bと吸着溝42bとは、互いに連通接続されておらず、それぞれ独立に形成されている。これにより、初期吸着部41側(又は本吸着部42側)の真空ポンプ81a(真空ポンプ81b)を作動させた場合であっても、本吸着部42(又は初期吸着部41側)の吸着溝41b、42bに吸引力が発生しないようになっている。
【0032】
また、ステージ21には、基板10を昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の表面、すなわち、初期吸着部41及び本吸着部42には複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン51(本発明のピン部材)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピン51を突出させた状態で基板10が搬入されるとリフトピン51の先端部分が基板10に当接して基板10を保持することができ、リフトピン51を下降させてピン孔に収容させることにより基板10をステージ21の表面(初期吸着部41及び本吸着部42)に載置することができる(図3参照)。
【0033】
また、ステージ21の表面に基板10を載置した状態でリフトピン51を上昇させることにより、リフトピン51の先端部分が基板10に当接し、複数のリフトピン51の先端部分で基板10を所定の高さ位置に保持できるようになっている。これにより、基板10との接触部分を極力抑えて保持することができ、基板10を損傷させることなくスムーズに交換できるようになっている。
【0034】
ここで、基板10を載置する場合には、初期吸着部41におけるリフトピン51は、本吸着部42におけるリフトピン51よりも早いタイミングでピン孔に収容されるようになっており、リフトピン51に保持された基板10は、初期吸着部41から先に載置され、次いで本吸着部42に載置されるようになっている。これにより、基板10と初期吸着部41との間に存在する空気層が本吸着部42側に逃がされることにより、空気層が基板10と初期吸着部41との間に気泡として介在するのを抑えることができるようになっている。
【0035】
また、本吸着部42におけるリフトピン51についても、初期吸着部41側から初期吸着部41と離れる側に向かって順次ピン孔に収容されるようになっている(図3参照)。これにより、基板10の塗布膜形成領域12は、初期吸着部41側から未載置側(図3において右側)に向かって一方向に順次載置される。そのため、基板10とステージ21との間に存在する空気層が順次未載置側に逃がされることにより、空気層が基板10とステージ21との間に気泡として存在するのを抑えることができる。
【0036】
そして、ステージ21には、基板10の位置決め機構(不図示)が設けられており、初期吸着部41に載置された基板10を位置決めできるように構成されている。すなわち、リフトピン51に保持された基板10は、その基板10の一部(初期膜形成領域11)が初期吸着部41に載置されると、その一部が位置決め機構により位置決めされる。そして、基板10の初期膜形成領域11が初期吸着部41で位置決めされた状態で、真空ポンプ81aを作動させて当該初期膜形成領域11を初期吸着部41に吸着して保持させる。その後、真空ポンプ81bをさせることにより、本吸着部42に基板10を吸着して保持させる。これにより、基板10全体がステージ21に精度よく吸着保持されるようになっている。
【0037】
また、塗布ユニット30は、基板10上に塗布液を塗布するものである。この塗布ユニット30は、図5に示すように、基台2と連結される脚部31とY軸方向に延びる口金部34とを有しており、基台2上をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設置されており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータ33が取り付けられており、このリニアモータ33を駆動制御することにより、塗布ユニット30がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0038】
具体的には、この塗布ユニット30は、初期状態においては、ステージ21から外れる位置、すなわち退避位置(図9の位置A)に停止している。そして、塗布動作が開始される場合には、初期膜が形成される初期膜形成位置(図9の位置C)まで移動し、その位置で停止できるようになっている。
【0039】
塗布ユニット30の脚部31には、塗布液を塗布する口金部34が取り付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35と口金部34とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータ36(図6参照)により駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータ36を駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、口金部34が、ステージ21に保持された基板10に対して接離可能に支持されている。
【0040】
口金部34は、塗布液を塗布して基板10上に塗布膜を形成するものである。この口金部34は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の走行方向とほぼ直交するように設けられている。この口金部34には、長手方向に延びるスリットノズル34aが形成されており、口金部34に供給された塗布液がスリットノズル34aから長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル34aの長手方向に亘って基板10上に一定厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0041】
また、脚部31には、高さ位置検出センサ32(図2参照)が取り付けられている。この高さ位置検出センサ32は、Z軸方向における基板10の高さ位置を測定するものである。具体的には、Z方向下向きにレーザ光を出力し、基板10によって反射されたレーザ光を受光することにより、基板10までのZ方向距離を測定することができるようになっている。そして、この基板10までの測定距離と、口金部34のスリットノズル34aの高さ位置との関係から、基板10の高さ位置を算出することができる。これにより基板10と口金部34のスリットノズル34aとの距離を一定にして塗布動作を行うことができるようになっている。
【0042】
また、脚部31には、基板10が保持される高さ位置に異物検知センサ39が取り付けられている。この異物検知センサ39は、基板10上に異物が存在するか否かを検出するためのものである。具体的には、異物センサは、Y軸方向一方側の脚部31にレーザ光を発光する発光部と、そのY軸方向他方側の脚部31に前記発光部からのレーザ光を受光する受光部とで構成されており、基板10の表面よりも僅かに高い位置に取り付けられている。そして、基板10上に異物が存在すると受光部で受光するレーザ光が遮光されることにより異物を検出できるようになっている。これにより、スリットノズル34aと基板10との間に異物が噛み込むことにより、スリットノズル34a又は基板10が損傷を受けるのを防止することができる。
【0043】
次に、上記塗布装置の制御系の構成について図6に示すブロック図を用いて説明する。
【0044】
図6は、この実装装置に設けられた制御装置90の制御系を示すブロック図である。図6に示すように、この塗布装置は、上述した各種ユニットの駆動を制御する制御装置90が設けられている。この制御装置90は、制御本体部91、駆動制御部92、入出力装置制御部93、外部装置制御部94とを有している。
【0045】
制御本体部91は、論理演算を実行する周知のCPU、そのCPUを制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROM、装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM、種々のプログラムやOS、さらに生産プログラム等の各種データを記憶するHDD等を備えている。そして、制御本体部91は、主制御部91a、演算判定部91b、記憶部91cを有している。
【0046】
主制御部91aは、予め記憶されたプログラムに従って一連の塗布動作を実行すべく、駆動制御部92を介して各ユニットのサーボモータ36、リニアモータ33等の駆動装置を駆動制御するものである。
【0047】
演算判定部91bは、各センサ等の計測結果から演算及び判定を行うものである。本実施形態では、高さ位置検出センサ32により測定された高さ位置データに基づいて、基板10表面から口金部34のスリットノズル34aまでの高さ位置を演算する。そして、この演算結果と後述の記憶部91cに記憶された高さ位置データとを比較し、口金部34のスリットノズル34aの高さ位置が所定の高さ位置となるように主制御部91aを介して制御する。
【0048】
また、異物検知センサ39からの計測結果から基板10上に異物が存在するか否かを判定する。すなわち、塗布ユニット30を移動させながら異物検知センサ39からの出力信号により異物が存在するか否かを判断する。具体的には、発光部からの光が異物に当たると受光部での信号に変化が生じることにより、基板10上に異物が存在していると判断する。そして、この場合には、塗布ユニット30の移動を開始させることなく、塗布動作を中止させ、それと同時に異常が発生したことをタッチパネル82上に表示することによりオペレータに警告する。
【0049】
記憶部91cは、各種データが格納されているとともに、演算結果等を一時的に格納するためのものである。具体的には、塗布動作を行う際における基板10表面から口金部34のスリットノズル34aの高さ位置データが記憶されている。
【0050】
駆動制御部92は、主制御部91aからの制御信号に基づいて、リニアモータ33、サーボモータ36等を駆動制御するものである。具体的には、リニアモータ33及びサーボモータ36を制御することにより、塗布ユニット30の移動、及び、口金部34の昇降動作等が駆動制御されるようになっている。
【0051】
入出力装置制御部93は、異物検知センサ39、キーボード83、タッチパネル82等の各入出力装置を制御するものである。具体的には、基板10上に異物が存在することにより受光部での信号に変化が生じると、入出力装置制御部93は、異物検知センサ39からの信号に応じた信号を制御本体部91に出力する。そして、制御本体部91で異物が存在すると判断した場合には、入出力装置制御部93を介してオペレータに警告を促す警告表示がタッチパネル82上に行われるようになっている。また、キーボード83及びタッチパネル82から塗布動作の条件設定等が行えるようになっている。
【0052】
外部装置制御部94は、主制御部91aからの制御信号に基づいて、外部装置の駆動制御を行うものである。本実施形態では、真空ポンプ81(81a、81b)と接続されており、この真空ポンプ81を駆動させることにより、初期吸着部41及び本吸着部42において基板10の吸着保持等が行えるようになっている。
【0053】
次に、この塗布装置における動作について、図7,8に示すフローチャート及び図9に示す塗布ユニット30の位置関係を示す概略図を参照しながら説明する。なお、図9では、退避位置(位置A)に位置する塗布ユニット30を実線で示しており、高さ位置測定開始位置(位置B)及び、初期膜形成位置(位置C)に位置する塗布ユニット30を二点鎖線で示している。
【0054】
まず、ステップS1において、基板10の搬入が行われる。具体的には、ステージ21の表面から複数のリフトピン51が突出した状態で待機されており、図示しないロボットハンドにより、リフトピン51の先端部分に基板10が載置される。
【0055】
次に、ステップS2〜S3において、ステージ21上に基板10が載置される(基板載置工程)。具体的には、ステップS2において、基板10がリフトピン51に保持された状態から、初期吸着部41のリフトピン51が本吸着部42のリフトピン51よりも若干早いタイミングで(載置された基板10が落下しない程度で)収容されることにより、基板10の初期膜形成領域11がステージ21の初期吸着部41に載置される(図3参照)。これにより、基板10と初期吸着部41との間に存在する空気層が本吸着部42側に逃がされるため、空気層が基板10と初期吸着部41との間に気泡として介在するのを効果的に抑えられる。そして、初期膜形成領域11が初期吸着部41に載置されると、位置決め機構が作動することにより、初期膜形成領域11が精度よく位置決めされる。その後、真空ポンプ81aを作動させることにより初期吸着部41における吸引孔41a及び吸着溝41bに吸引力が発生することにより、基板10と初期吸着部41との間に介在する気泡が吸引孔41a及び吸着溝41bに吸引されると共に、基板10の初期膜形成領域11が初期吸着部41に吸着保持される(初期吸着工程)。この基板10の端部である初期膜形成領域11が精度よく位置決めされた状態で固定されることにより、基板10全体における位置決めが精度よく行われる。
【0056】
次に、ステップS3において、基板10全面の吸着が行われる(本吸着工程)とともに、これと並行するようにS4において、塗布動作が行われる。すなわち、ステップS2において、基板10の初期膜形成領域11がステージ21の初期吸着部41に吸着されているため、まだ吸着されていない本吸着部42に対応する基板10の表面(塗布膜形成領域12)をステージ21の本吸着部42に吸着する。具体的には、本吸着部42のリフトピン51のうち初期吸着部41側に位置するものから順次ステージ21内に収容されることにより、基板10の塗布膜形成領域12が初期吸着部41側から順次本吸着部42に載置される。これにより、基板10とステージ21との間に存在する空気層が順次未載置側に逃がされるため、空気層が基板10とステージ21との間に気泡として存在するのを効果的に抑えられる。そして、上述のように基板10の初期膜形成領域11が精度よく位置決めされているため、この状態から真空ポンプ81bを作動させることにより基板10の塗布膜形成領域12を本吸着部42に吸着させて基板10全体をステージ21に吸着固定する。このとき、基板10と本吸着部42との間に介在する気泡は吸引孔42a及び吸着溝42bに吸引される。
【0057】
そして、これと並行して図8のフローチャートに基づいて、基板10の初期膜形成領域11の吸着が完了するのとほぼ同時に塗布動作が開始される。
【0058】
まず、ステップS41において塗布ユニット30の移動が行われる。すなわち、初期吸着部41に対応する基板10の表面の吸着が完了するのとほぼ同時に、塗布ユニット30の移動が開始される。具体的には、塗布ユニット30を退避位置(位置A)から基板10上に初期膜を形成する位置(初期膜形成位置、図9における位置C)に移動させる。
【0059】
その移動の途中で、ステップS42において、基板10の高さ位置の測定が開始される。具体的には、図9に示すように、塗布ユニット30が高さ位置測定開始位置(位置B)に達すると基板10の高さ位置の測定が開始される。すなわち、高さ位置検出センサ32の直下に基板10の初期膜形成領域11が位置した際に、基板10の高さ位置の測定が開始される。そして、塗布ユニット30の移動に伴って基板10の高さを連続的に測定し、この測定値に応じて口金部34のスリットノズル34aと基板10の表面との距離が一定となるように口金部34の高さ位置が調節される。
【0060】
また、これと並行して、ステップS43において、異物検知センサ39により異物検知が開始される。すなわち、高さ位置測定が開始された後、基板10上に異物が存在していないか否かが検知される。そして、基板10上に異物が検知される場合には塗布ユニット30の移動が停止され、異物が検知されない場合には、初期膜形成位置まで移動させる。このようにして、塗布ユニット30は、初期吸着部41上を高さ位置検出及び異物検知を行いながら走行する。
【0061】
次に、ステップS44において、初期膜が形成される。具体的には、塗布ユニット30が初期膜形成位置(位置C)に到達すると、その位置で塗布ユニット30が停止する。そして、塗布ユニット30を初期膜形成位置に停止させた状態で所定微少量の塗布液を吐出させることにより、スリットノズル34aから吐出された塗布液によってスリットノズル34aと基板10とが連結された状態となる。すなわち、スリットノズル34aと基板10との間に塗布液による初期膜が形成される。このようにして、スリットノズル34aの長手方向に亘って初期膜が形成されることにより、初期膜形成工程が終了する。
【0062】
次に、ステップS45において、本塗布が開始される(塗布膜形成工程)。すなわち、初期膜形成位置から塗布ユニット30をさらに走行させつつ、塗布液を吐出することにより、本吸着部42に対応する基板10の表面に塗布膜を形成する。なお、この本塗布動作が開始される頃には、ステップS3における基板10の全面吸着は完了している。
【0063】
次に、ステップS5において、基板10の取出しが行われる。すなわち、S45における本塗布により、基板10表面に塗布膜の形成が完了した後、初期吸着部41及び本吸着部42のリフトピン51を上昇させることにより、リフトピン51の先端部分で基板10を保持する。そして、図示しないロボットハンドに基板10の受け渡しが行われ、ステージ21の表面から基板10が排出される。
【0064】
このような塗布装置及び塗布方法によれば、基板を吸着する前記基板吸着手段40は、初期吸着部41と本吸着部42とを有しているため、初期吸着部41で基板10の一部が吸着された後、塗布ユニット30を移動させて初期吸着部41に対応する基板10の表面に対して塗布を開始することができる。すなわち、基板の吸着が開始された後、すぐに前記初期吸着部41に対応する基板10の表面に塗布ユニット30を移動させることができるため、従来のように基板10全体を吸着固定した後に塗布動作を開始させる場合に比べて、塗布装置全体としてのサイクルタイムを短縮させることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、初期吸着部41の吸引孔41aに吸引力を発生させる真空ポンプ81aと、本吸着部42の吸引孔42aに吸引力を発生させる真空ポンプ81bとを別々に設ける例について説明したが、図10に示すように、初期吸着部41及び本吸着部42の吸引孔41a、42aを一つの真空ポンプ81で吸引力を発生させるものであってもよい。具体的には、真空ポンプ81と初期吸着部41及び本吸着部42の吸引孔41a、42aとを連結する配管84に切替弁44を取り付けておき、この切替弁44を制御装置によって自動的に切替可能とすることにより、初期吸着部41の吸引孔41aと本吸着部42の吸引孔42aとに吸引力を選択的に発生させる構成としてもよい。このように真空ポンプ81を共通にすることにより、より安価な塗布装置とすることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、初期吸着部41のリフトピン51が本吸着部42のリフトピン51よりも若干早いタイミングで収容される例について説明したが、すべてのリフトピン51が同じタイミングで収容されるものであってもよい。これにより、リフトピン51の先端部分に保持された基板10が、早いタイミングで収容される初期吸着部41のリフトピン51側から落下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を示す上面図である。
【図2】上記塗布装置の側面図である。
【図3】上記塗布装置に基板の一部が載置される状態を示す図である。
【図4】上記塗布装置のステージを示す図であり、(a)はステージの全体を示す図であり、(b)はその表面部分の拡大図である。
【図5】上記塗布装置における塗布ユニットの脚部の詳細を示す図である。
【図6】上記塗布装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】上記塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】上記塗布装置の塗布動作を示すフローチャートである。
【図9】上記塗布装置の動作における塗布ユニットの位置関係を示す図である。
【図10】他の実施形態に係る塗布装置の真空ポンプと配管系統を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
10 基板
11 初期膜形成領域
12 塗布膜形成領域
21 ステージ
30 塗布ユニット
34 口金部
40 基板吸着手段
41 初期吸着部
42 本吸着部
90 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
前記ステージの表面に載置された基板に対して相対的に移動しつつ塗布液を吐出することにより、基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、
を備える塗布装置において、
前記ステージには、基板を吸着保持する基板吸着手段が設けられており、
前記基板吸着手段は、塗布開始時における初期膜が形成される基板の初期膜形成領域を吸着する初期吸着部と、この初期膜形成領域を除く塗布膜形成領域を吸着する本吸着部とを有していることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部には、それぞれステージの表面に開口して形成される吸引孔が形成されており、前記基板吸着手段は、前記吸引孔に吸引力を発生させる吸引手段と、この吸引手段からの吸引力を前記初期吸着部及び本吸着部に対して選択的に発生させる切替手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部には、それぞれステージの表面に開口して形成される吸引孔が形成されており、前記基板吸着手段には、前記初期吸着部の吸引口に吸引力を発生させる吸引手段と、前記本吸着部の吸引口に吸引力を発生させる吸引手段とが初期吸着部及び本吸着部に対してそれぞれ独立して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記初期吸着部及び本吸着部には、基板を前記ステージの表面に吸着させる吸着溝が形成されており、この吸着溝は、前記吸引孔に連通するとともにステージの表面に開口して形成されており、この初期吸着部の吸着溝と本吸着部の吸着溝とは、互いに連結されるのを防止する間仕切部によってそれぞれ独立して形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記基板吸着手段の初期吸着部及び本吸着部には、基板を保持するピン部材が備えられており、このピン部材は、それぞれステージ内に収容されるとともにステージの表面から突出可能に設けられ、前記初期吸着部のピン部材は、前記本吸着部のピン部材よりも先にステージ内に収容されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記本吸着部のピン部材は、前記初期吸着部側から順次ステージ内に収容されることを特徴とする請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
ステージの表面に基板を載置する基板載置工程と、
前記ステージに載置された基板上に、塗布液を吐出する塗布ユニットを停止させた状態で初期膜を形成する初期膜形成工程と、
前記初期膜を形成した後、塗布ユニットから塗布液を吐出させつつ、この塗布ユニットを基板に対して相対的に移動させることにより、基板上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
を有する塗布装置の塗布方法において、
前記基板載置工程は、基板をステージの表面に吸着する吸着工程を有しており、
この吸着工程は、前記初期膜が形成される基板の初期膜形成領域を吸着する初期吸着工程と、この初期膜形成領域を除く基板の塗布膜形成領域を吸着する本吸着工程とを含み、
前記初期吸着工程が完了した後、前記本吸着工程が完了する前に、前記初期膜形成工程が開始されることを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−112985(P2009−112985A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291111(P2007−291111)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】