説明

塗布装置

【課題】タンク等の液体貯留部から吐出部までの間で滞留した気泡を確実に検出できるようにする。
【解決手段】塗布装置100が、液体が貯留された液体貯留部108と、液体を吐出するノズルヘッド106と、液体貯留部108からノズルヘッド106まで継手131〜135を介して配管された供給管107a,107b,107cと、継手131〜135又はその近傍に設けられた光センサ部141〜145と、を備える。光センサ部141が、継手131内又はその近傍の供給管107a内に向けて投光する投光器141aと、継手131内又はその近傍の供給管107a内からの光を受光する受光器141bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EL(Electro Luminescence)パネルに用いられるEL素子の製造プロセスでは、塗布装置のノズルから液体状のEL材料液を基板に向けて連続的に吐出しつつ、ノズルと基板を相対的に移動させて、基板上に所定の形状のキャリア輸送層を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
EL材料液はタンクに貯留されており、タンクからノズルを有するノズルヘッドにかけて供給管が配管されており、ポンプ等によってタンク内のEL材料液がノズルヘッドに供給される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、EL材料液等の液体の塗布が連続して行われる過程で、ポンプ等によって送液された液体中の気泡が供給管の中途部もしくはノズルヘッドで滞留してしまうことがある。供給管の中途部もしくはノズルヘッドに気泡が滞留して、気泡の大きさや量が許容値を超えてしまうと、ノズルから液体が吐出されなくことがある。そのため、気泡の滞留によりノズルから液体が吐出されなくなる前に、供給管の中途部で滞留した気泡を検出する必要がある。ところが、供給管のどこで気泡が滞留するか定かではない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、タンク等の液体貯留部からノズルヘッド等の吐出部までの間で滞留した気泡を確実に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明によれば、塗布装置が、液体が貯留された液体貯留部と、前記液体を吐出する吐出部と、前記液体貯留部から前記吐出部まで継手を介して配管された供給管と、前記継手又はその近傍に設けられ、前記継手内又はその近傍の前記供給管内の気泡の状態を検出する気泡検出部と、を備えることとした。
【0007】
好ましくは、前記塗布装置が、前記液体貯留部内の液体を前記供給管に送り出す供給器と、塗布対象物に対して前記吐出部を相対的に移動させる移動部と、気体を吸引する減圧装置と、前記塗布対象物の近傍に設けられた待機位置と、前記供給器、前記移動部、前記減圧装置及び前記気泡検出部を制御する制御部と、を更に備え、前記制御部は、前記供給器を作動させて前記吐出部から前記液体を吐出させつつ、前記移動部を制御して前記塗布対象物に対して前記吐出部を移動させている間に、前記気泡検出部によって許容値を超えた気泡が存在することが検出された場合に、前記吐出部を前記待機位置まで移動させ、前記減圧装置を前記継手に接続して該減圧装置を作動させることとした。
好ましくは、前記塗布装置が、前記継手に設けられ、前記制御部により制御され、前記供給管を前記減圧装置に連通させた連通状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した遮断状態とに選択的に切り替えられる切替部を更に備え、前記制御部は、前記吐出部から前記液体を吐出させつつ前記移動部を制御して前記塗布対象物に対して前記吐出部を移動させている間、前記切替部を前記遮断状態に切り替え、
前記気泡検出部によって前記許容値を超えた気泡が存在することが検出されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させたときに、前記切替部を前記連通状態に切り替え、前記減圧装置を作動させることとした。
好ましくは、前記塗布装置が、前記待機位置に配置され、前記減圧装置に接続され、前記吐出部に対して吸引処理を行う脱泡部を有し、前記制御部は、前記気泡検出部によって前記許容値を超えた気泡が存在することが検出されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させたときに、前記吐出部を前記脱泡部に接続させるとともに前記減圧装置を作動させて、前記吸引処理を行うこととした。
好ましくは、前記気泡検出部は、前記継手内又はその近傍の前記供給管内に向けて投光する投光器と、前記投光器から出射されて前記継手内又はその近傍の前記供給管内からの光を受光する受光器と、を有してなることとした。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明によれば、塗布装置が、液体が貯留された液体貯留部と、前記液体を吐出する吐出部と、前記液体貯留部から前記吐出部まで継手を介して配管された供給管と、前記継手又はその近傍に設けられた光センサ部と、を備え、前記光センサ部が、前記継手内又はその近傍の前記供給管内に向けて光を出射する投光器と、前記投光器から出射されて前記継手内又はその近傍の前記供給管内からの光を受光する受光器と、を有することとした。
【0009】
好ましくは、前記光センサ部は、前記受光器によって検出された受光強度を所定の許容値と比較するコンパレータを更に備えることとした。
更に好ましくは、前記塗布装置が、前記液体貯留部内の液体を前記供給管に送り出す供給器と、気体を吸引する減圧装置と、前記継手に設けられ、前記供給管を前記減圧装置に連通させた連通状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した遮断状態とに選択的に切り替えられる切替部と、前記供給器、前記減圧装置及び前記切替部を制御する制御部と、を更に備え、前記制御部は、前記供給管及び前記吐出部内に前記液体を充填する際に、前記切替部を前記連通状態に切り替えるとともに前記供給器及び前記減圧装置を作動させ、前記供給器及び前記減圧装置が作動している際に、前記受光器によって検出された受光強度が前記所定の許容値以下であると前記コンパレータにより判定された場合に、前記切替部を前記遮断状態に切り替えることとした。
更に好ましくは、前記塗布装置が、前記液体貯留部内の液体を前記供給管に送り出す供給器と、塗布対象物に対して前記吐出部を相対的に移動させる移動部と、気体を吸引する減圧装置と、前記塗布対象物の近傍に設けられた待機位置と、前記供給器、前記移動部、前記減圧装置及び前記光センサ部を制御する制御部と、を更に備え、前記制御部は、前記供給器を作動させて前記吐出部から前記液体を吐出させつつ、前記移動部を制御して前記塗布対象物に対して前記吐出部を移動させている間に、前記受光器によって検出された受光強度が前記所定の許容値を越えていることが前記コンパレータにより判定された場合に、前記吐出部を前記待機位置まで移動させ、前記減圧装置を前継手に接続して該減圧装置を作動させることとした。
更に好ましくは、前記塗布装置が、前記継手に設けられ、前記制御部により制御され、前記供給管を前記減圧装置に連通させた連通状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した遮断状態とに選択的に切り替えられる切替部を更に備え、前記制御部は、前記受光強度が前記所定の許容値を越えていることが前記コンパレータにより判定されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させときに、前記切替部を前記連通状態に切り替え、前記減圧装置を作動させることとした。
更に好ましくは、前記塗布装置が、前記待機位置に配置され、前記減圧装置に接続され、前記吐出部に対して吸引処理を行う脱泡部を有し、前記制御部は、前記受光強度が前記所定の許容値を越えていることが前記コンパレータにより判定されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させたときに、前記吐出部を前記脱泡部に接続させるとともに前記減圧装置を作動させて、前記吸引処理を行うこととした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体貯留部から吐出部までの間において気泡が滞留しやすい継手に気泡検出部・光センサ部が設けられているから、その気泡検出部・光センサ部によって気泡を確実に検出することができるとともに、気泡の定量化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】塗布装置を概略的に示す図面である。
【図2】ノズルヘッド及びその継手等の縦断面図である。
【図3】ノズルヘッド及びその継手並びに脱泡部等の縦断面図である。
【図4】ノズルヘッド及びその継手等の縦断面図である。
【図5】ノズルヘッド及びその継手等の縦断面図である。
【図6】時間と受光強度の関係の一例を示すグラフである。
【図7】ノズルヘッド及びその継手等の縦断面図である。
【図8】ノズルヘッド及びその継手等の縦断面図である。
【図9】ELパネルの画素の配置構成を示す平面図である。
【図10】ELパネルの概略構成を示す平面図である。
【図11】ELパネルの1画素に相当する回路を示した回路図である。
【図12】ELパネルの1画素を示した平面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿った面の矢視断面図である。
【図14】ELパネルのバンク間に露出する画素電極を示す断面図である。
【図15】塗布装置のノズルヘッドの移動に伴う液体の塗布パターンを示す説明図である。
【図16】ELパネルを表示部に用いた携帯電話機の正面図である。
【図17】ELパネルを表示部に用いたデジタルカメラの斜視図である。
【図18】ELパネルを表示部に用いたデジタルカメラの斜視図である。
【図19】ELパネルを表示部に用いたパーソナルコンピュータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
〔1〕塗布装置の構成
図1は、塗布装置100を示した図面である。この塗布装置100は、発光パネルである有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの有機層(例えば、正孔注入層、発光層、電子注入層)、有機トランジスタの有機層、液晶ディスプレイのカラーフィルタの有機発色層(例えば、有機材料を含むRGBの発色層、有機材料を含むブラックマトリックス)、各種電子デバイスの有機導電層(例えば、有機材料を含む導電性配線)その他の機能層を形成するために用いられるものである。なお、塗布装置100によって形成される上記各層は有機材料で構成されるものに限らず、無機材料(例えば酸化チタンや銀など)の微粒子を溶媒に分散あるいは溶解させたものであってもよい。
【0014】
ワークテーブル101は、移動装置102上に搭載されており、移動装置102に対して水平面に沿って一直線状にスライド可能に設けられている。このワークテーブル101上には、塗布対象物たる基板121が載置される。ワークテーブル101の移動方向を副走査方向という。
【0015】
移動装置102は、ワークテーブル101及びそれに載置された基板121を一直線状に移動させるものである。例えば、移動装置102は、ワークテーブル101を案内するレールと、レールに沿ってワークテーブル101を駆動する駆動機構とを有する。この移動装置102は、制御部119によって制御される。制御部119が移動装置102を間欠的に駆動し、移動装置102がワークテーブル101及び基板121を間欠的に移動させる。つまり、移動装置102は、制御部119の制御によって、ワークテーブル101及び基板121の移動及びその移動の停止を繰り返すように動作する。
【0016】
ワークテーブル101の上方には、案内部としてのレール103が設けられている。このレール103は、上から見て、ワークテーブル101の移動方向に対して直交するよう設けられている。レール103は、機枠104に取り付けられて、機枠104に支持されている。
【0017】
レール103には、ノズル移動機構としてのキャリッジ105が搭載されている。このキャリッジ105は、レール103に沿って案内される。キャリッジ105は、レール103に沿って移動可能に設けられている。以下、キャリッジ105の移動方向を主走査方向という。
また、キャリッジ105には、モータ等の駆動源が内蔵されており、キャリッジ105はその駆動源によってレール103に沿って移動する。キャリッジ105は、制御部119によって制御される。制御部119が移動装置102の間欠的な停止に合わせてキャリッジ105を駆動し、キャリッジ105が移動装置102の停止中に主走査方向に移動する。
【0018】
キャリッジ105にはノズルヘッド(吐出部)106が搭載されている。このノズルヘッド106は、その先端が下に向くようにしてキャリッジ105に搭載されている。図2は、ノズルヘッド106の断面図である。図2に示すように、このノズルヘッド106においては、本体部161が略円筒状に設けられている。本体部161の上端にパイプ状の継手131が設けられ、継手131の中空が本体部161の中空163に通じている。本体部161の下端に底面165が設けられ、底面165の中央に開口166が形成されている。本体部161の中空163内の下部にノズルプレート167が配設され、開口166がノズルプレート167によって閉塞されている。ノズルプレート167の中央には、微小なノズル孔168が形成されている。ノズル孔168の径は、10〜20μmである。このノズル孔168から液体120が吐出される。本体部161の中空163内にフィルタ164が配設されている。本体部161の中空163が、フィルタ164によって継手131側の領域とノズル孔168側の領域とに仕切られている。
【0019】
図1に示すように、供給管107aがノズルヘッド106からマスフローコントローラ109にかけて配管されており、供給管107aの一端が継手131によってノズルヘッド106に接続され、供給管107aの他端が継手132によってマスフローコントローラ109のアウトレットに接続されている。また、供給管107bがマスフローコントローラ109から三方継手134にかけて配管されており、供給管107bの一端が継手133によってマスフローコントローラ109のインレットに接続され、供給管107bの他端が三方継手134のニップル134aに接続されている。供給管107cが三方継手134から液体タンク108にかけて配管されており、供給管107cの一端が三方継手134のニップル134bに接続され、供給管107cの他端が継手135によって液体タンク108に接続されている。
【0020】
供給管107a,107b,107cとしては、液体タンク108内に貯留された液体120に対して耐性のある材料からなるチューブを用いる。具体的には、供給管107a,107b,107cは、シリコーン樹脂からなるチューブである。また、供給管107a,107b,107cは可撓性を有する。供給管107a,107b,107cの内直径は1〜7mmである。供給管107a,107b,107cの内径は、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。例えば、供給管107aの内直径が供給管107b,107cの内直径よりも小さく、具体的には、供給管107aの内直径が1mmであり、供給管107b,107cの内直径が7mmである。
【0021】
液体貯留部としての液体タンク108内には、液体120が貯留されている。液体120は、例えば、有機材料からなるものである。液体120は、塗布装置100の用途に応じて適宜選択される。
【0022】
液体タンク108には、供給器116が設けられている。この供給器116は、液体タンク108内の液体120を供給管107cに送り出すものであり、より好ましくは、送り出す液体120の圧力を一定に保った状態で液体120を供給管107cに圧送するものである。供給器116はポンプであり、具体的には、ピストン式圧送ポンプ又はガス式圧送ポンプである。ピストン式圧送ポンプとは、シリンジ状の液体タンク108内に可動式ピストンが収容され、可動式ピストンがモータ、エアシリンダ又はソレノイド等の駆動源によって押し込まれることで、液体タンク108内の液体120を供給管107cに押し出すものである。ガス式圧送ポンプとは、密閉された液体タンク108内にガス(主に不活性ガス(例えば、窒素ガス))を送り込んで液体タンク108内を加圧して、液体タンク108内の液体120を供給管107cに押し出すものである。勿論、ピストン式圧送ポンプ、ガス式圧送ポンプ以外の種類のポンプを供給器116に用いてもよい。
【0023】
この供給器116は、制御部119によって制御される。制御部119がキャリッジ105の移動に合わせて供給器116を駆動し、供給器116がキャリッジ105の移動中に供給動作をする。
【0024】
マスフローコントローラ109は、供給管107a,107bを流れる液体120の流量を計測したり、供給管107a,107bを流れる液体120の流量を制御したりする。マスフローコントローラ109によって計測された流量は、制御部119に出力される。
また、制御部119は、マスフローコントローラ109による流量を設定する(以下、設定された流量を設定流量という。)。マスフローコントローラ109が、供給管107b,107cを流れる液体120の流量をその設定流量に維持するよう定流量制御をする。
【0025】
継手131,132,133,134,135は、液体120に対して耐性のある材料からなる。継手131,132,133,134,135は分岐している。一方、排気管114は六方に分かれている。継手131の分岐したニップル131aが、バルブ110aを介して排気管114の第一端末に接続されている。継手132の分岐したニップル132aがバルブ110bを介して排気管114の第二端末に接続されている。継手133の分岐したニップル133aがバルブ110cを介して排気管114の第三端末に接続されている。継手134のニップル134cがバルブ110dを介して排気管114の第四端末に接続されている。継手135の分岐したニップル135aが排気管114の第五端末に接続されている。排気管114の第六端末が捕捉器112のインレットに接続されている。捕捉器112のアウトレットが排気管115の一端に接続され、排気管115の他端がバキュームポンプ(減圧装置)113に接続されている。
【0026】
バキュームポンプ113は例えば真空ポンプ又は減圧ポンプであり、排気管115、捕捉器112及び排気管114を介して継手131〜135及び供給管107a,107b,107c内の気体を吸引して、継手131〜135及び供給管107a,107b,107c内の減圧を行うものである。
【0027】
捕捉器112は、例えば冷却トラップであり、バキュームポンプ113によって吸引される気体中に含まれる水分や溶媒成分を捕捉するものである。例えば、バキュームポンプ113の吸引によって、液体タンク108や供給管107a,107b,107c内の液体120の揮発成分が気化した状態で捕捉器112に流れ込むと、その揮発成分が捕捉器112によって冷却される。そのため、その揮発成分が液化して、捕捉器112に捕捉される。
【0028】
ワークテーブル101の近傍であって、レール103の下方であるノズルヘッド106の待機位置に、脱泡部としての密閉キャップ150が配設されている。
図3に示すように、密閉キャップ150にはドレイン管151の一端が取り付けられている。密閉キャップ150でノズルヘッド106の下端を塞ぐことによって、ノズルヘッド106のノズル孔168がドレイン管151に通じる。そのドレイン管151の他端が冷却トラップ153に接続されている。
冷却トラップ153は、外容器154と、外容器154内の冷媒155と、外容器154の内側に収容されて冷媒155に浸けられた密閉容器156等を備える。ドレイン管151が密閉容器156の上面を貫通している。また、吸引管152が密閉容器156の上面を貫通している。密閉容器156内において、吸引管152の端部がドレイン管151の端部よりも高い位置にある。吸引管152はバキュームポンプ113に接続されている。
そして、ノズルヘッド106が基板121に液体120を塗布しない待機状態にあるときや、ノズルヘッド106や供給管107a〜107c内に滞留する気泡を除去する際に、ノズルヘッド106が密閉キャップ150と連結するように、キャリッジ105によってノズルヘッド106が密閉キャップ150に移動される。
この密閉キャップ150とノズルヘッド106の下端が密着した状態でバキュームポンプ113が作動して吸引を行うことにより、液体タンク108内の液体120をノズルヘッド106側に引き寄せたり、ノズルヘッド106から垂れ流される液体120を冷却トラップ153で受けたりすることができる。また、バキュームポンプ113が吸引を行うことにより、ノズルヘッド106内に滞留する気泡を吸い出して除去することができる。
なお、捕捉器112が冷却トラップである場合には、捕捉器112が冷却トラップ112と同様に設けられている。
【0029】
図2に示すように、継手131の分岐したニップル131aには、切替部としてのバルブ110aが設けられている。バルブ110aは、排気管114と継手131の連通・遮断をするものである。バルブ110aが開いた状態では、排気管114が継手131に連通した状態となり、供給管107a,107b,107cが継手131、排気管114,115及び捕捉器112を介してバキュームポンプ113に連通した状態になる。バルブ110aが閉じた状態では、継手131が排気管114,115、捕捉器112及びバキュームポンプ113から遮断された状態となる。
【0030】
バルブ110aは、電磁弁である。バルブ110aの開閉制御が制御部119によって行われる。ここで、バルブ110aは弁体111a及び駆動源111bを有する。弁体111aが継手131のニップル131a内に配設されている。駆動源111bによって弁体111aがニップル131aの中空を閉塞したり、開放したりする。
【0031】
図1に示すように、バルブ110bが、継手132の分岐したニップル132aに設けられている。バルブ110cが、継手133の分岐したニップル133aに設けられている。バルブ110dが、継手134のニップル134cに設けられている。バルブ110eが、継手135の分岐したニップル135aに設けられている。バルブ110b〜110eは、バルブ110aの場合と同様に設けられている。
【0032】
継手131〜135には、気泡検出部としての光センサ部141〜145がそれぞれ設けられている。光センサ部141〜145は、それぞれの継手131〜135内からの光の強度を検出し、検出した光の強度に基づいて継手131〜135内の光透過率を検出する。これにより、光センサ部141〜145は、液体120を検出したり、それぞれの継手131〜135内の液体120に存する気泡を検出したり、気泡のサイズや量を定量化したりする。
【0033】
図2に示すように、光センサ部141は、投光器141a及び受光器141bを有する。投光器141aは、継手131内の液体120に向けて光を出射する。受光器141bは、投光器141aから出射されて液体120を透過した光を受光する。
【0034】
投光器141aには、例えば、白熱灯、蛍光灯、ハロゲンランプ、タングステンランプ、半導体レーザ、LED又は有機ELを用いることができる。また、投光器141aから発した光を光ファイバーや光導波路等により導光して継手131内に入射させるようにしてもよい。また、投光器141aから発した光を常時継手131内に入射させる必要はなく、シャッタ等により間欠的に入射させるようにしてもよい。また、投光器141aが出力する光の波長は、液体120の吸収域に応じて選択することが好ましいが、汎用性のある白色光であってもよい。
【0035】
受光器141bには、例えば、光電子増倍管、フォトダイオード又は光トランジスタを用いることができる。また、継手131内を通過した光を光ファイバーや光導波路等により導光して受光器141bに入射させるようにしてもよい。また、投光器141aの照度が変動することがあるため、投光器141a自体の照度変化をモニタして、受光器141bは、投光器141aの照度変化を加味して透過光の強度を検知することが望ましい。
【0036】
投光器141aによって投光された光が継手131を透過すべく、継手131が光透過性を有する材料からなる。例えば、継手131は、ガラスからなる。継手131にUVカットフィルタを設け、UV光による液体120の劣化を防ぐことが望ましい。
【0037】
継手131全体が光透過性を有するのではなく、継手131の一部分が光透過性を有していてもよい。例えば、図4に示すように、相対する2つの透明窓131b,131cが継手131に設けられていてもよい。投光器141aが透明窓131bに相対向し、受光器141bが透明窓131cに相対向している。投光器141aから投光された光は、透明窓131b、継手131内の液体120及び透明窓131cを通過して、受光器141bに入射する。透明窓131b,131cにUVカットフィルムが設けられ、UV光による液体120の劣化を防ぐことが望ましい。
【0038】
なお、投光器141a及び受光器141bは継手131の外に設けられているとしたが、継手131内に設けられていてもよい。また、透明窓131b,131cが継手131に設けられる代わりに、相対する2つの挿入口が継手131の壁面に設けられ、一方の挿入口に投光器141aが嵌め込まれ、他方の挿入口に受光器141bが嵌め込まれていてもよい。また、透明窓が継手131の全周にわたって設けられていてもよい。
【0039】
投光器141aが継手131内に向けて投光するのではなく、図5に示すように、投光器141aが継手131近傍において供給管107a内に向けて投光するものとしてもよい。この場合、供給管107aが光透過性を有する。供給管107a全体が光透過性を有するのではなく、投光器141aによって投光される部分が光透過性を有していてもよい。
【0040】
なお、図2〜図5では、光センサ部141が透過型センサを有して構成されるものとしたが、反射型センサを有して構成されるものであってもよい。つまり、受光器141bが、投光器141aから投光されて透明窓131b,131cを透過した光を受光するのではなく、継手131内の液体120で反射した反射光を受光するものとしてもよい。
【0041】
受光器141bは、受光した光の強度を検出する。即ち、受光器141bは、受光した光の強度を電気信号に光電変換し、受光した光の強度を表す受光強度信号を制御部119に出力する。受光器141bによって検出された受光強度は、継手131内の液体120の光透過率も表すとともに、継手131内の液体120の反射率も表す。つまり、継手131内の液体120の光透過率が増加するにつれて、受光器141bによって検出される受光強度も高くなるから、受光強度と光透過率は相関関係を持つ。一方、継手131内の液体120の反射率が増加するにつれて、受光器141bによって検出される受光強度も低くなるから、受光強度と反射率は相関関係を持つ。これにより、受光強度のみならず、継手131内の液体120の光透過率や反射率も受光器141bによって定量化される。なお、光センサ部141が反射型のセンサである場合、継手131内の液体120の光透過率が増加するにつれて、受光器141bによって検出される受光強度が低くなり、継手131内の液体120の反射率が増加するにつれて、受光器141bによって検出される受光強度が高くなる。
【0042】
受光器141bによって検出された受光強度は、継手131内の液体120に含まれる気泡の状態を定量化したものである。つまり、継手131中の液体120に気泡が存在しなければ、受光器141bによって検出される受光強度はほぼ一定(例えば、40%;初期値)である(図6のグラフの線c参照)。
これに対し、図7に示すように、液体120内に細かい気泡が発生すれば、光が液体120と気泡の界面で乱反射する。そのため、液体120内に発生する細かい気泡が増えるにつれて、受光器141bによって検出される受光強度(光透過率)が低下する。これによって液体120内の気泡の数を定量化することができる。例えば、図6に示すグラフの線aのように、液体120内の気泡の数が時間の経過とともに増えると、受光強度が時間の経過とともに低下する。
また、図8に示すように、液体120内に発生した気泡同士が結合する等して大きな気泡が発生すれば、光が気泡の空洞部分を通過する。そのため、気泡サイズが大きくなるにつれて、受光器141bによって検出される受光強度(光透過率)が増加する。これによって液体120内の気泡のサイズを定量化することができる。例えば、図6に示すグラフの線bのように、液体120内の気泡のサイズが時間の経過とともに大きくなれば、受光強度が時間の経過とともに増加する。
また、継手131内に液体120が存する場合と、継手131内に液体120が無い場合とでは、受光器141bによって検出された受光強度(光透過率)が異なる。これによって、継手131内に液体120が存することを検出することができる。
【0043】
光センサ部142〜145は、光センサ部141と同様に設けられている。つまり、光センサ部142〜145は、投光器及び受光器を有する。また、制御部119は、光センサ部141の受光強度信号に並列して、光センサ部142〜145の受光強度信号が入力される。
【0044】
以上のように、継手131〜135内やその近傍の液体120の光透過率が光センサ部141〜145の受光器によって検知される。継手131〜135内やその近傍で発生する気泡のサイズ及び数をその検知した透過率から定量化することができる。特に、継手131〜135では気泡が滞留しやすいから、そのような気泡のサイズや量の検出を容易に行うことができる。
【0045】
制御部119は、第1コンパレータとしての機能を有し、受光器141bから入力された受光強度信号のレベルに基づく光透過率を図6に示す所定の第1許容値と比較する。第1許容値は、継手131内に存する液体120に発生した気泡のサイズが所定サイズ以上である否かを仕切る閾値である。例えば、第1許容値は、60%である。
【0046】
制御部119は、比較の結果、受光器141bから入力された受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上であると判断したら、継手131内に存する液体120に発生した気泡のサイズが所定サイズ以上であると判定する。一方、制御部119は、比較の結果、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値未満であると判断したら、継手131内に存する液体120に発生した気泡のサイズが所定サイズ未満であると判定する。ここでの所定サイズとは、液体120の流れを阻害しない程度のものである。継手131内の液体120に含まれる気泡のサイズが所定サイズよりも更に大きなサイズ(図6に示す第1閾値)を超えると、液体120の流れが阻害される。図6に示す第1閾値は、例えば80%である。受光器141bから入力した受光強度信号のレベルが第1許容値以上であることは、光センサ部141によって継手131又はその近傍の供給管107a内の気泡が検出されたことを意味する。
【0047】
受光器141bから出力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上となった場合に、制御部119はキャリッジ105によってノズルヘッド106を待機位置の密閉キャップ150に移動させる。特に、制御部119は、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づき、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値(例えば、60%)を超えてから第1閾値(例えば、80%)になるまでの間に、ノズルヘッド106を待機位置に移動させる。具体的には、制御部119は、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1閾値(80%)となるタイミングTまでの時間を予測する。そして、制御部119は、そのタイミングTまでにキャリッジ105及びノズルヘッド106を待機位置に移動させる。
【0048】
制御部119は、第2コンパレータとしての機能を有し、受光器141bから入力した受光強度信号に基づく光透過率のレベルを図6に示す所定の第2許容値と比較する。第2許容値は、継手131内に存する液体120に発生した気泡の数が所定数未満である否かを仕切る閾値である。この第2許容値は、第1許容値よりも低い。例えば、第2許容値は、30%である。
【0049】
制御部119は、比較の結果、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値よりも高いと判断したら、継手131内に存する液体120に発生した気泡の数が所定数未満であると判定する。一方、制御部119は、比較の結果、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値以下であると判断したら、継手131内に存する液体120に発生した気泡の数が所定数以上であると判定する。ここでの所定数とは、液体120の流れを阻害しない程度のものである。継手131内の液体120に含まれる気泡の数が所定数よりも更に多い、図6に示す第2閾値を超えると、液体120の流れが阻害される。受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値以下であることは、光センサ部141によって継手131又はその近傍の供給管107a内の気泡が検出されたことを意味する。
【0050】
そして、受光器141bから出力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値以下となった場合に、制御部119がキャリッジ105によってノズルヘッド106を待機位置の密閉キャップ150に移動させる。特に、制御部119は、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づき、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値未満となってから第2閾値(例えば、20%)になるまでの間に、ノズルヘッド106を待機位置に移動させる。具体的には、制御部119は、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルが第2閾値(20%)となるタイミングTまでの時間を予測する。そして、制御部119は、そのタイミングTまでにキャリッジ105及びノズルヘッド106を待機位置に移動させる。
【0051】
また、制御部119は、第3コンパレータとしての機能を有し、受光器141bから入力された受光強度信号のレベルに基づく光透過率を所定の第3許容値と比較する。第3許容値は、継手131内に液体120が存するか否かを仕切る閾値である。従って、制御部119は、比較の結果、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下であると判断したら、継手131内に液体120が存すると判定する。一方、制御部119は、比較の結果、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値を超えると判断したら、継手131内に液体120が存しないと判定する。従って、受光器141bから入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下であることは、光センサ部141によって継手131又はその近傍の供給管107a内の液体120が検出されたことを意味する。
【0052】
制御部119の第1、第2、第3コンパレータとしての機能は、論理回路により実現してもよいし、プログラムの実行によって実現してもよい。
制御部119は、光センサ部141の受光強度信号のレベルに基づく光透過率の第1許容値、第2許容値、第3許容値との比較に並行して、光センサ部142〜145の受光強度信号のレベルに基づく光透過率を第1許容値、第2許容値、第3許容値と比較する。
なお、第1、第2、第3コンパレータが制御部119に内蔵されるのではなく、各光センサ部141〜145(特に、受光器の後段)に設けられていてもよい。その場合には、これら第1、第2、第3コンパレータの出力が制御部119に接続され、第1、第2、第3コンパレータによる比較結果を表す信号が制御部119に入力される。
【0053】
なお、図1では、キャリッジ105に搭載されているノズルヘッド106の数が1つであったが、複数のノズルヘッド106がキャリッジ105に搭載されていてもよい。この場合、これらのノズルヘッド106は、副走査方向に沿って配列された状態でキャリッジ105に搭載されている。また、キャリッジ105に複数のノズルヘッド106が搭載されている場合、供給管107a〜107c、継手131〜135、液体タンク108、マスフローコントローラ109、バルブ110a〜110e、光センサ部141〜145、捕捉器112、バキュームポンプ113及び排気管114,115は、それぞれのノズルヘッド106に対して設けられている。
【0054】
また、キャリッジ105が主走査方向に移動するものとしたが、主走査方向及び副走査方向に移動するものとしてもよい。また、ノズルヘッド106がその中心線を中心に回転するものとしてもよい。また、ワークテーブル101が移動装置102によって副走査方向に移動するものとしたが、移動装置102によって主走査方向及び副走査方向に移動するものとしてもよい。また、ワークテーブル101が移動装置102によってその中心回りに回転するものとしてもよい。つまり、移動装置102及びキャリッジ105の両方又は片方からなる移動部によって、ノズルヘッド106がワークテーブル101に対して相対的に移動させるものとすればよい。
【0055】
また、バルブ110a〜110eが開閉バルブであったが、三方弁であってもよい。バルブ110a〜110eが三方弁である場合、そのバルブ110a〜110eは、液体タンク108の出口側をバキュームポンプ113側に連通させた状態と、液体タンク108の出口側をノズルヘッド106側に連通させた状態に選択的に切り替わるように構成されている。
【0056】
また、気泡検出部として投光器と受光器とを備えて構成される光センサ部141〜145を用いる構成を例に挙げて説明したが、他の種類のセンサで継手131〜135内の液体120を検出したり、それぞれの継手131〜135内の液体120に存する気泡を検出したり、それぞれの継手131〜135内の液体120に存する気泡のサイズや量を定量化したりしてもよい。例えば、継手131〜135又はその近傍内の物理量として磁気を検出する磁気センサ、継手131〜135又はその近傍内の物理量として圧力を検出する圧力センサ、継手131〜135又はその近傍内の物理量として温度を検出する温度センサを用いてもよい。
【0057】
〔2〕塗布装置の動作及び塗布方法
以下、塗布装置100の動作及びこの塗布装置100を用いた塗布方法等について説明する。
【0058】
〔2−1〕塗布装置の初期動作、塗布装置のセッティング工程及び液体の充填工程
まず、液体タンク108内に液体120を充填する。液体タンク108が取り替え式の場合には、液体120が充填された液体タンク108を継手135により供給管107cに組み付け、液体タンク108に供給器116を組み付ける。なお、この時点では、供給管107a,107b,107cは空の状態であり、液体120が供給管107a,107b,107c内に充填されていない。
【0059】
次に、制御部119がキャリッジ105を所定の待機位置に移動させる。キャリッジ105が待機位置に移動すると、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150によって塞がれる。
【0060】
次に、制御部119がバルブ110a,110b,110c,110d,110eを制御し、バルブ110a,110b,110c,110d,110eが開く。また、制御部119は、光センサ部141〜145の受光器から入力された受光強度信号のレベルに基づく光透過率を第3許容値と比較する。以後、制御部119はその比較処理を継続する。
次に、制御部119がバキュームポンプ113及び供給器116を作動させる。バキュームポンプ113が作動することで、排気管114、排気管115、ドレイン管151、吸引管152及び供給管107a,107b,107c内の減圧がバキューム113によって行われ、排気管114、排気管115、ドレイン管151、吸引管152及び供給管107a,107b,107c内が負圧になる。
【0061】
また、供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120が供給管107c,107b,107aに送り出される。これにより、供給管107c,107b,107a内には、液体120が液体タンク108側から次第に充填されていく。この際、供給管107c,107b,107a内の減圧がバキュームポンプ113によって行われているので、液体120がはやく充填されていく。また、供給管107c,107b,107a内が減圧されているから、供給管107c,107b,107a内に充填された液体120に気泡が発生することを防止することができる。更に、供給管107c,107b,107a内に充填された液体120内に発生した気泡をバキュームポンプ113側に吸引することができ、気泡の除去をすることができる。なお、液体120の一部が吸引によって排気管114側に流れてしまっても、その液体120が捕捉器112で捕捉されるから、バキュームポンプ113に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0062】
液体タンク108から送り出された液体120の液面がまず継手135に至る。そうすると、光センサ部145の受光器によって液体120が検出される。つまり、光センサ部145の受光器から制御部119に出力される受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下になる。光センサ部145の受光器から制御部119に出力される受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下になると、制御部119がバルブ110eを制御し、バルブ110eが閉じる。これにより、バルブ110eを介した供給管107c,107b、107a内の減圧が停止される。
【0063】
その後も、供給器116及びバキュームポンプ113の動作が継続する。そして、供給管107c内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面が継手134にまで至ると、光センサ部144の受光器から出力される受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下になる。これによって制御部119がバルブ110dを制御し、バルブ110dが閉じる。バルブ110dが閉じると、バルブ110dを介した供給管107b、107a内の減圧が停止される。
【0064】
その後、供給管107b内における液体120のノズルヘッド106寄りの液面が継手133にまで至ると、光センサ部143の受光器から出力される受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下になり、制御部119がバルブ110cを制御し、バルブ110cが閉じる。これにより、バルブ110cを介した供給管107a内の減圧が停止される。
【0065】
その後、液体120の液面が継手132にまで至ると、光センサ部142の受光器から出力される受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第3許容値以下になり、制御部119がバルブ110bを制御し、バルブ110bが閉じる。これにより、バルブ110bを介した供給管107a内の減圧が停止される。
【0066】
その後、液体120の液面が継手131にまで至ると、光センサ部141の受光器141bから出力される受光強度信号のレベルが第3許容値以下になり、制御部119がバルブ110aを制御し、バルブ110aが閉じる。これにより、バルブ110aを介したノズルヘッド106内の減圧が停止される。
その後も、供給器116の作動が継続する。そして、液体120がノズルヘッド106の中空163内に充填されると、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。ノズルヘッド106のノズル孔168から吐出される液体120は、冷却トラップ153に捕捉される。
【0067】
以上に説明したように、バキュームポンプ113によって減圧しつつ、液体タンク108内の液体120を供給器116によって供給管107c,107b,107aに送り出しているから、供給管107c,107b,107aやノズルヘッド106内に液体120を充填するのに要する時間を短縮化することができる。
また、液体120の充填時に供給管107c,107b,107a内が減圧されているから、供給管107c,107b,107a内に充填されていく液体120に気泡が発生することを防止することができる。
また、供給管107c,107b,107a内に充填された液体120内に気泡が発生しても、その気泡はバキュームポンプ113側に吸引されるから、気泡の除去をすることができる。
【0068】
〔2−2〕塗布装置の塗布動作及び塗布工程
以上のようにセッティングされた塗布装置100の塗布動作及びその塗布動作に基づく有機層のパターニング方法について説明する。
まず、基板121をワークテーブル101の上に載置する。また、制御部119が、マスフローコントローラ109の設定流量を設定し、ノズルヘッド106から吐出する液体120の量を調整する。
【0069】
次に、制御部119が、供給器116及びキャリッジ105を作動させる。なお、供給器116は、上述のセッティング工程から引き続き作動することになる。
【0070】
キャリッジ105及びノズルヘッド106が移動すると、ノズルヘッド106が密閉キャップ150から外れる。そして、ノズルヘッド106が基板121の上に移動する。その後、キャリッジ105及びノズルヘッド106が引き続き主走査方向に移動する。その際、供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120がノズルヘッド106へと送り出され、供給管107c,107b,107aを流れる液体120の流量がマスフローコントローラ109によって一定の設定流量に制御される。そのため、キャリッジ105の移動中において、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、吐出された液体120が基板121上に線状に塗布され、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、制御部119がキャリッジ105を停止する。
次に、制御部119が移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、副走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。その後、移動装置102が停止する。
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させて、キャリッジ105とともにノズルヘッド106が主走査方向を逆方向に移動する。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、制御部119がキャリッジ105を停止する。
次に、制御部119が移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0071】
以後、制御部119は、マスフローコントローラ109の定流量制御及び供給器116の動作を継続しつつ、キャリッジ105と移動装置102の間欠的な作動制御を繰り返す。それにより、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されながらキャリッジ105が移動範囲の端から端まで移動することが繰り返されるとともに、キャリッジ105が端に移動した際に移動装置102によってワークテーブル101及び基板121が所定距離だけ副走査方向に移動される。その結果、ノズルヘッド106から吐出された液体120によって、葛折り状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0072】
ここで、制御部119が上記制御を行っている際に、光センサ部141〜145の受光器の受光強度信号が制御部119に出力されている。制御部119は、光センサ部141〜145の受光器から入力された受光強度信号のレベルに基づく光透過率を第1許容値及び第2許容値と比較する。そして、制御部119は、比較の結果、光センサ部141〜145の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値を超え、第1許容値未満であると判断したら、上記制御を継続する。一方、制御部119は、比較の結果、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下であると判断したら、以下のような処理を行う。
【0073】
すなわち、ノズルヘッド106から液体120が吐出され、キャリッジ105が主走査方向に移動している時に、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下になると、制御部119がキャリッジ105の移動及び供給器116の作動を継続させる。そのため、引き続き、液体120が連続的に吐出され、有機層パターンが形成される。
【0074】
そして、キャリッジ105が移動範囲の端にまで移動したら、制御部119がキャリッジ105を待機位置まで移動させる。キャリッジ105が待機位置まで移動すると、制御部119がキャリッジ105を停止する。キャリッジ105が待機位置まで移動すると、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150によって塞がれる。そして、制御部119がバキュームポンプ113を作動させる。これにより、継手131〜135の何れかで発生した気泡の除去をすることができる。すなわち、供給器116の動作が継続しつつ、ノズルヘッド106内の液体120が冷却トラップ153に吸引されることによって、継手131〜135の何れかで発生した気泡が液体120とともにノズルヘッド106から吐出される。これにより、脱泡処理が行われる。吐出された液体120は冷却トラップ153に捕捉され、吐出された液体120に含まれる気泡はバキュームポンプ113に吸引される。
【0075】
また、キャリッジ105が待機位置まで移動して停止した後、制御部119がバルブ110a〜110eの何れかを開く。具体的には、光センサ部141の受光器141bの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下となった場合には、制御部119がバルブ110aを開く。同様に、光センサ部142の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下となった場合には、バルブ110bが、光センサ部143の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下となった場合には、バルブ110cが、光センサ部144の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下となった場合には、バルブ110dが、光センサ部145の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下となった場合には、バルブ110eが、制御部119によって開かれる。これにより、継手131〜135やその近傍で滞留した気泡が液体120とともにバルブ110a〜110eを介してバキュームポンプ113に吸引される。これにより、脱泡処理が行われる。また、気泡とともに吸引された液体120は捕捉器112に捕捉される。
【0076】
脱泡処理の後、有機層パターンの形成が再開する。具体的には、制御部119がバルブ110a〜110eのうち開いたものを閉じる。次に、制御部119が供給器116の作動を継続しつつ移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。これにより、ノズルヘッド106の位置が、中断される前の有機層パターンの最後に形成された行の次の行の端の上に位置する。そして、制御部119がマスフローコントローラ109の設定流量を設定するとともに、キャリッジ105を作動させる。キャリッジ105が作動すると、キャリッジ105が主走査方向に移動する。これにより、液体120が再びノズルヘッド106から連続的に吐出され、有機層パターンの形成が再開される。
【0077】
以上に説明したように、継手131〜135に光センサ部141〜145がそれぞれ設けられているので、気泡が滞留しやすい継手131〜135で気泡を検出したり、気泡のサイズや量を定量化したりすることができる。そして、継手131〜135で気泡が滞留しても、供給管107a,107b,107c内の液体120の流れが気泡によって阻害される前に、脱泡処理が行われるから、ノズルヘッド106から液体120の吐出が不意に止まることを防止することができる。
【0078】
なお、上記の説明では、ノズルヘッド106における脱泡処理と継手131〜135における脱泡処理の両方を行っているが、片方のみを行ってもよい。
【0079】
〔3〕塗布装置を用いて製造される有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル(ELパネル)の構成
図1に示された塗布装置100を用いて製造されるELパネル1について、図9〜図13を用いて説明する。
【0080】
図9は、発光パネルであるELパネル1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図である。図10は、ELパネル1の概略構成を示す平面図である。図11は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル1の1画素に相当する回路を示した回路図である。図12は、ELパネル1の1画素Pに相当する平面図であり、図13は、図12のXIII−XIII線に沿った面の矢視断面図である。
【0081】
図9、図10に示すように、ELパネル1には、R(赤),G(緑),B(青)にそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このELパネル1には、複数の走査線2及び複数の信号線3が設けられている。これら走査線2は、行方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。これら信号線3が、列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。走査線2と信号線3が、平面視して走査線2と略直交している。また、ELパネル1には、複数の電圧供給線4が設けられている。電圧供給線4は、平面視して、走査線2に対して平行に設けられている。電圧供給線4は、隣り合う走査線2の間において走査線2に沿って設けられている。画素Pは、一組の走査線2及び電圧供給線4並びに隣り合う二本の信号線3によって囲われる範囲に相当する。画素Pがマトリクス状に配列されている。ここでは、R(赤)を発光する複数の画素Pが信号線3に沿って配列されている。G(緑)に発光する複数の画素Pも信号線3に沿って配列されている。B(青)に発光する複数の画素Pも信号線3に沿って配列されている。走査線2に沿う方向の複数の画素Pの列は、R(赤)に発光する画素P、G(緑)に発光する画素P、B(青)を発光する画素Pの順の配列となっている。
【0082】
また、ELパネル1には、隔壁であるバンク13が設けられている。バンク13は、信号線3に沿う方向に延在している。このバンク13によって挟まれた範囲に所定のキャリア輸送層(後述する正孔注入層8b、発光層8c)が設けられ、その範囲が画素Pの発光領域となる。つまり、このバンク13が、R(赤),G(緑),B(青)の各色毎に画素Pを仕切っている。なお、キャリア輸送層とは、電圧が印加されることによって正孔又は電子を輸送する層である。
【0083】
図10、図11に示すように、このELパネル1の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、EL素子8とが設けられている。
【0084】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続されている。スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続されている。スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及びEL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素PのEL素子8のカソードは、基準電位である一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0085】
また、このELパネル1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続されている。各電圧供給線4が、一定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続されている。各信号線3が、データドライバに接続されている。これらドライバによってELパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、一定電圧源又はドライバによって所定の電力が供給される。
【0086】
次に、ELパネル1と、その画素Pの回路構造について、図12、図13を用いて説明する。図12に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列されている。キャパシタ7が、スイッチトランジスタ5の近傍に配置されている。EL素子8が、駆動トランジスタ6の近傍に配置されている。また、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及びEL素子8が、走査線2と電圧供給線4の間に配置されている。
【0087】
駆動トランジスタ6は、図13に示すように、ゲート電極6a、半導体膜6b、チャネル保護膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
また、スイッチトランジスタ5は、以下に詳述する駆動トランジスタ6と同様の薄膜トランジスタであって、ゲート電極5a、半導体膜、チャネル保護膜、不純物半導体膜、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものであるので、その詳細については省略する。
図12、図13に示すように、ゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11が基板10上の一面に成膜されている。その層間絶縁膜11の上には、層間絶縁膜12が成膜されている。信号線3は、層間絶縁膜11と基板10との間に形成されている。走査線2及び電圧供給線4は、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。
【0088】
ゲート電極6aは、基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。このゲート電極6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート電極6aの上には、絶縁性の層間絶縁膜11が成膜されている。ゲート電極6aが、その層間絶縁膜11によって被覆されている。
層間絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この層間絶縁膜11上であってゲート電極6aに対応する位置には、真性な半導体膜6bが形成されている。半導体膜6bは、層間絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。
半導体膜6bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなる。この半導体膜6bにチャネルが形成される。また、半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gは、それぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜されている。チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが、層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nm窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0089】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されている。図13に示すように、キャパシタ7の一方の電極7aが基板10と層間絶縁膜11との間に形成されている。キャパシタ7の他方の電極7bが、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。電極7aと電極7bが誘電体である層間絶縁膜11を挟んで相対している。これにより、キャパシタ7が構成されている。
【0090】
信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aは、基板10に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h・ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h・ソース電極6iは、層間絶縁膜11に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0091】
また、層間絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域に、コンタクトホール11aが形成されている。ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域に、コンタクトホール11bが形成されている。ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域に、コンタクトホール11cが形成されている。コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート電極5aと走査線2が電気的に導通する。コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通する。コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともに、スイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート電極6aが電気的に導通する。コンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
駆動トランジスタ6のゲート電極6aが、キャパシタ7の電極7aに一体に連なっている。駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが、電圧供給線4に一体に連なっている。駆動トランジスタ6のソース電極6iが、キャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0092】
画素電極8aは、層間絶縁膜11を介して基板10上に設けられている。画素電極8aは、画素Pごとに独立して形成されている。この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。画素電極8aは一部、駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iが接続している。
そして、図12、図13に示すように、層間絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び層間絶縁膜11を覆うように形成されている。
層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されている。この層間絶縁膜12は、平面視して格子状に形成されている。
【0093】
バンク13は、図12、図13に示すように、信号線3に沿う方向に延在しているとともに、互いに平行に設けられている。そのため、これらバンク13は、縞状を成している。また、バンク13は、層間絶縁膜12を介してスイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6を覆う位置に形成されている。バンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に位置している。また、隣り合うバンク13の間には、画素電極8aの中央側が露出している。また、隣り合うバンク13の間にある複数の画素電極8aは、バンク13に沿って配列されている。
そして、バンク13は、正孔注入層8bや発光層8cを湿式法により形成するに際して、正孔注入層8bや発光層8cとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が隣接する画素Pに滲み出ないようにする隔壁として機能する。
【0094】
EL素子8は、図12、図13に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された化合物膜である発光層8cと、発光層8cの上に形成された第二電極としての対向電極8dとを備えている。対向電極8dは全画素Pに共通した単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
【0095】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなるキャリア輸送層である。正孔注入層8bは、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入する層である。
発光層8cは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する材料を含む。発光層8cは、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなるキャリア輸送層である。発光層8cは、対向電極8dから供給される電子と、正孔注入層8bから注入される正孔との再結合に伴い発光する層である。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8cの発光材料が異なる。画素PのR(赤),G(緑),B(青)のパターンは、縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンである。
【0096】
対向電極8dは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されている。対向電極8dは、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
この対向電極8dは、全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8cなどの化合物膜とともにバンク13を被覆している。
【0097】
また、正孔注入層8b及び発光層8cは、隣り合うバンク13の間においてバンク13に沿う方向に帯状に設けられているとともに、バンク13に沿う方向に連続して設けられている。そのため、正孔注入層8b及び発光層8cは、バンク13に沿う方向には、画素Pごとに区切られていない。つまり、正孔注入層8b及び発光層8cは、隣り合うバンク13の間において配列された複数の画素電極8aに共通して設けられている。一方、正孔注入層8b及び発光層8cは、バンク13に直交する方向には、バンク13によって区切られている。
そして、層間絶縁膜12の開口部12a内におけるバンク13の側壁13a間において、キャリア輸送層としての正孔注入層8b及び発光層8cが、画素電極8a上に積層されている(図13参照)。つまり、画素電極8aと対向電極8dの間に電圧が印加されたら、正孔注入層8b及び発光層8cは画素電極8aに重なる部分においてキャリア輸送層として機能し、その部分において発光層8cにおいて発光する。
具体的には、層間絶縁膜12の上に設けられたバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に形成されている。
そして、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた画素電極8a上に、正孔注入層8bとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第1のキャリア輸送層である正孔注入層8bとなる。
さらに、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた正孔注入層8b上に、発光層8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第2のキャリア輸送層である発光層8cとなる。
なお、この発光層8cとバンク13を被覆するように対向電極8dが設けられている(図13参照)。
【0098】
そして、このELパネル1においては、画素電極8a、基板10及び層間絶縁膜11が透明であり、発光層8cから発した光が画素電極8a、層間絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となってもよい。この場合、対向電極8dを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8cから発した光が対向電極8dを透過して出射するようにする。
【0099】
このELパネル1は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加される。そうすると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなる。そのため、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の輝度を維持するようになっている。
【0100】
〔4〕塗布装置を用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法
次に、ELパネル1の製造方法について説明する。
【0101】
〔4−1〕塗布装置を使用する前の工程
図9に示されたELパネル1をダイシングにより複数個取り出せるようなサイズの基板10を準備する。
基板10上にゲートメタル層をスパッタリングで堆積させる。そして、そのゲートメタル層をフォトリソグラフィー及びエッチング等によりパターニングする。これによって、そのゲートメタル層から信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aを形成する。
次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11を堆積する。ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子(例えば、走査線2の端部)上において開口するコンタクトホール(図示せず)を層間絶縁膜11に形成する。
次いで、半導体膜6b(5b)となるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜6d(5d)となる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積する。その後、その絶縁層をフォトリソグラフィー及びエッチング等によってパターニングする。これにより、その絶縁膜からチャネル保護膜6d(5d)を形成する。
その後、不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)となる不純物層を堆積した後、フォトリソグラフィー及びエッチング等によって不純物層及び半導体層を連続してパターニングする。これにより、その不純物層から不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)を形成するとともに、その半導体層から半導体膜6b(5b)を形成する。
そして、フォトリソグラフィー及びエッチングによってコンタクトホール11a〜11cを形成する。次いで、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。この工程は省略されてもよい。
スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース・ドレインメタル層を堆積し、そのソース・ドレインメタル層をパターニングする。これにより、そのソース・ドレインメタル層から走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。こうしてスイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6が形成される。その後、ITO膜を堆積した後、そのITO膜をパターニングすることによって、そのITO膜から画素電極8aを形成する。
【0102】
そして、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うように、気相成長法により絶縁膜を成膜する。その後、その絶縁膜をフォトリソグラフィー及びエッチングでパターニングする。これにより、その絶縁膜に複数の開口部12aを形成して、層間絶縁膜12を形成する。開口部12aの形成位置は各画素電極8aの中央部上とし、各開口部12a内において、画素電極8aの中央部を露出される。また、これら開口部12aとともに、図示しない走査線2の外部接続端子、ELパネル1の一辺に位置するデータドライバに接続するための各信号線3の外部接続端子(例えば、信号線3の端部)及び電圧供給線4の外部接続端子(例えば、電圧供給線4の端部)上において開口する複数のコンタクトホールを形成する。
【0103】
次いで、ポリイミド等の感光性樹脂を堆積後にその感光性樹脂を露光して、互いに平行な縞状のバンク13を形成する。この際、バンク13の側壁13aが画素電極8a上に位置するように、バンク13を形成する。なお、このバンク13は、上記外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を露出している。
【0104】
以上の工程により、図14に示すように、各画素電極8aは層間絶縁膜12のそれぞれの開口部12a内において露出する。また、縞状のバンク13間の凹部内において複数の画素電極8aが露出しているとともに、これら画素電極8aがバンク13に沿って配列される。
【0105】
〔4−2〕塗布工程
上記〔2−1〕で説明したように、塗布装置100を4台分セッティングする。この際、1台目の塗布装置100の液体タンク108内の液体120には、正孔注入層8bの材料を用いる。2台目の塗布装置100の液体タンク108内の液体120には、赤の発光層8cの材料を用いる。3台目の塗布装置100の液体タンク108内の液体120には、緑の発光層8cの材料を用いる。4台目の塗布装置100の液体タンク108内の液体120には、青の発光層8cの材料を用いる。
【0106】
次に、上述の〔4−1〕の工程により得られた基板10を1台目の塗布装置100のワークテーブル101上に載置する。この際、バンク13を主走査方向に沿わせるようにして、基板10をワークテーブル101上に載置する。ここで、図15に示すように、この基板10は、1枚のELパネル1に対応する単位領域R3がマトリクス状に配列されたものとなっている。そして、この基板10は、図15に示すように、横方向(主走査方向)に一列に配列されたパネル領域R1と、パネル領域R1間のマージン領域R2とが、交互に複数並ぶ形態をとっている。
【0107】
次に、制御部119がマスフローコントローラ109の設定流量を設定する。これにより、供給管107c,107b,107aを流れる液体120の流量がマスフローコントローラ109によって一定の設定流量に制御される。供給器116の作動はセッティング工程から継続されており、ノズルヘッド106のノズル孔168から吐出される液体120が冷却トラップ153に捕捉される。
【0108】
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させて、キャリッジ105が待機位置から基板10の上へ移動する。これにより、ノズルヘッド106が密閉キャップ150から外れる。そして、キャリッジ105が基板10の上を主走査方向に移動する。その際、供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120がノズルヘッド106へと送り出され、供給管107c、107b、107aを流れる液体120の流量がマスフローコントローラ109によって一定の設定流量に制御される。そのため、キャリッジ105の移動中において、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。吐出された液体120が、隣り合うバンク13の間に塗布される。これにより、帯状の正孔注入層8bがその隣り合うバンク13の間に形成され、その隣り合うバンク13の間に配列された画素電極8aが正孔注入層8bによって覆われる。キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、キャリッジ105が制御部119によって停止される。そして、制御部119が移動装置102を制御し、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって副走査方向に1画素分だけ移動され、その後、移動装置102が制御部119によって停止される。
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させる。これにより、キャリッジ105が逆方向に移動するとともに、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。これにより、吐出された液体120からなる帯状の正孔注入層8bが形成される。
そして、キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、キャリッジ105が制御部119によって停止される。そして、制御部119が移動装置102を制御し、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって副走査方向に1画素分だけ移動され、その後、移動装置102が制御部119によって停止される。
【0109】
以後、以上の動作が繰り返されることによって、図15に示すように、吐出された液体120からなる帯状の正孔注入層8bが葛折り状に形成される。
【0110】
以上の動作が行われている際、制御部119は、移動中のノズルヘッド106の現在位置を把握している。これは、基板10のサイズ、キャリッジ105と移動装置102の移動範囲および移動速度に基づいて、制御部119が所定の演算処理を行うことによって、基板10に対するノズルヘッド106の現在位置を特定することが可能になっている。
また、制御部119は、その現在位置から所定時間後にノズルヘッド106が位置する箇所を同様の演算処理を行うことによって予測することが可能になっている。
【0111】
基板10に対する液体120の塗布が行われて、正孔注入層18bが形成されている時に、光センサ部141〜145の受光器の受光強度信号が制御部119に出力されている。
制御部119は、光センサ部141〜145の受光器から入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率を第1許容値、第1閾値、第2許容値及び第2閾値と比較する。
そして、比較の結果、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値を超え、第1許容値未満である場合には、制御部119が上記した液体120の塗布に関する制御を継続する。
一方、制御部119は、比較の結果、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下であると判断したら、以下のような処理を行う。
【0112】
制御部119は、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上であると判断した場合、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルが第1閾値となるタイミングを予測する。受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1閾値となる予測タイミングは、図6に示すように、受光強度信号のレベルに基づく光透過率が初期値(例えば、40%)から第1許容値(例えば、60%)に達するまでの時間に基づく演算処理によって、第1閾値(例えば、80%)に達するまでの時間(T)として求めることができる。
同様に、制御部119は、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2許容値以下であると判断した場合、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2閾値となるタイミングを予測する。受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第2閾値となる予測タイミングは、図6に示すように、受光強度信号のレベルに基づく光透過率が初期値(例えば、40%)から第2許容値(例えば、30%)に達するまでの時間に基づく演算処理によって、第2閾値(例えば、20%)に達するまでの時間(T)として求めることができる。
【0113】
そして、制御部119は、受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1閾値又は第2閾値となる予測タイミングにおけるノズルヘッド106の位置を予測して特定する。以下、その予測した位置を予測位置という。
さらに、制御部119は、基板10に対するノズルヘッド106の予測位置がパネル領域R1内であるか、マージン領域R2内であるかを判断する。
【0114】
基板10に対するノズルヘッド106の予測位置がマージン領域R2内にあると制御部119が判断した場合、ノズルヘッド106が予測タイミングにおいてマージン領域R2内に位置した時に、制御部119がキャリッジ105及びノズルヘッド106を待機位置まで移動させる。キャリッジ105が待機位置まで移動すると、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150によって塞がれる。そして、制御部119がバキュームポンプ113を作動させる。供給器116の動作が継続しつつ、ノズルヘッド106内の液体120が冷却トラップ153に吸引されることによって、継手131〜135の何れかで滞留した気泡が液体120とともに冷却トラップ153に吸引される。これにより、脱泡処理が行われる。
ここで、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1閾値又は第2閾値となるタイミングは、継手131〜135の何れかで滞留した気泡によってノズルヘッド106から液体120が吐出不能となるタイミングである。そのようなタイミングにおけるノズルヘッド106の位置がマージン領域R2内であれば、そのマージン領域R2で液体120が途切れてしまってもよい。従って、そのようなタイミングを予測し、予測タイミングになった時にマージン領域R2内にあるノズルヘッド106が待機位置に移動されて、脱泡処理が行われることによって、ノズルヘッド106から液体120が再び連続的に吐出可能となる。それゆえ、次のパネル領域R1に対して液体120の塗布を好適に再開することができる。
【0115】
一方、基板10に対するノズルヘッド106の予測位置がパネル領域R1内にあると制御部119が判断した場合、ノズルヘッド106が予測タイミングよりも前にマージン領域R2内に位置した時に、制御部119がキャリッジ105及びノズルヘッド106をまで移動させる。キャリッジ105が待機位置まで移動すると、ノズルヘッド106の下端が密閉キャップ150によって塞がれる。そして、制御部119がバキュームポンプ113を作動させる。供給器116の動作が継続しつつ、ノズルヘッド106内の液体120が冷却トラップ153に吸引されることによって、継手131〜135の何れかで滞留した気泡が液体120とともに冷却トラップ153に吸引される。これにより、脱泡処理が行われる。
ここで、光センサ部141〜145の受光器の何れかの受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1閾値又は第2閾値となるタイミングは、継手131〜135の何れかで滞留した気泡によってノズルヘッド106から液体120が吐出不能となるタイミングである。そのようなタイミングにおけるノズルヘッド106の位置がパネル領域R1内であると、そのパネル領域R1で液体120が途切れてしまっては、ELパネルの生産性が低下してしまう。そこで、そのようなタイミングを予測し、その予測タイミングの前(パネル領域R1で液体120が途切れてしまう前)にマージン領域R2内にあるノズルヘッド106が待機位置に移動されて、脱泡処理が行われることによって、ノズルヘッド106から液体120が再び連続的に吐出可能となる。それゆえ、次のパネル領域R1に対して液体120の塗布を好適に再開することができる。
【0116】
また、キャリッジ105が待機位置まで移動して停止した後、制御部119がバルブ110a〜110eを開く。これにより、継手131〜135やその近傍で滞留した気泡が液体120とともにバルブ110a〜110eを介してバキュームポンプ113に吸引される。これにより、脱泡処理が行われる。
【0117】
ノズルヘッド106が待機位置に移動した後、脱泡処理が行われている際、光センサ部141〜145の受光器の受光強度信号が制御部119に出力されている。そして、制御部119は、光センサ部141〜145の受光器から入力した受光強度信号のレベルに基づく光透過率が初期値(例えば、40%)になったら、バキュームポンプ113を停止する。これにより、脱泡処理が終了する。
【0118】
その後、制御部119は、キャリッジ105等を作動させて、脱泡処理のために塗布を中断した時の位置にキャリッジ105及びノズルヘッド106を移動させる。そして、制御部119がキャリッジ105と移動装置102の制御、および供給器116とマスフローコントローラ109の制御を繰り返すことにより、ノズルヘッド106から吐出される液体120を基板10に塗布する動作を再開する。
【0119】
以上のようにして、全ての画素電極8aが正孔注入層8bによって覆われ、正孔注入層8bが乾燥したら、基板10を2台目の塗布装置100のワークテーブル101上に移載する。そして、2台目の塗布装置100が同様に動作することによって、帯状の赤の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。
【0120】
次に、基板10を3台目の塗布装置100のワークテーブル101上に移載する。そして、3台目の塗布装置100が同様に動作することによって、帯状の緑の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。
【0121】
次に、基板10を4台目の塗布装置100のワークテーブル101上に移載する。そして、4台目の塗布装置100が同様に動作することによって、帯状の青の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板10が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。
【0122】
以上のようにして、全ての正孔注入層8b上に発光層8cが形成される。
【0123】
この塗布装置100を用いれば、光センサ部141〜145の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1許容値以上又は第2許容値以下となった後、ノズルヘッド106から液体120が吐出不能となるまでの間に、ノズルヘッド106が待機位置に移動され、その待機位置において脱泡処理が行われる。そのため、継手131〜135に気泡が溜まり過ぎたことにより、液体120の塗布が中断してしまうトラブルを低減することができる。
【0124】
特に、制御部119は、光センサ部141〜145の受光器の受光強度信号のレベルに基づく光透過率が第1閾値又は第2閾値となるタイミングを予測するとともに、その予測タイミングにおけるノズルヘッド106の位置を予測する。制御部119は、その予測位置がパネル領域R1とマージン領域R2のどちらの内側にあるかを判定する。そして、その予測位置がマージン領域R2内にあると判定された場合には、その予測タイミングになった時にノズルヘッド106が待機位置まで移動される。一方、その予測位置がパネル領域R1内にあると判定された場合には、その予測タイミングになる前にノズルヘッド106がマージン領域R2内に位置した時にノズルヘッド106が待機位置まで移動される。こうして、待機位置まで移動されたら、脱泡処理が行われる。そのため、基板121のパネル領域R1で液体120の塗布を中断することなく、基板121のパネル領域R1で液体120が途切れてしまうことがない。
従って、この塗布装置100は、基板121に対する液体120の塗布を良好に行うことができる。
【0125】
〔4−3〕塗布装置を使用した後の工程
全ての正孔注入層8b上に発光層8cを形成した後、対向電極8dを成膜し、対向電極8dによって発光層8c及びバンク13を被覆する。その後、ダイシングによりELパネル1を切り取る。
以上により、ELパネル1が完成する。
【0126】
〔5〕ELパネルの用途
塗布装置100を使用して製造されたELパネル1は、各種電子機器の表示パネルとして用いられる。
例えば、図16に示す携帯電話機200の表示パネル1aにELパネル1を適用することができる。また、図17、図18に示すデジタルカメラ300の表示パネル1bにELパネル1を適用することができる。また、図19に示すパーソナルコンピュータ400の表示パネル1cにELパネル1を適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
100 塗布装置
102 移動装置(移動部)
105 キャリッジ(移動部)
106 ノズルヘッド(吐出部)
107a,107b,107c 供給管
108 液体タンク(液体貯留部)
110a,110b,110c,110d,110e バルブ
113 バキュームポンプ(減圧装置)
116 供給器
119 制御部(コンパレータ)
131,132,133,134,135 継手
141,142,143,144,145 光センサ部(気泡検出部)
141a 投光器
141b 受光器
150 密閉キャップ(脱泡部)
151 ドレイン管
152 吸引管
153 冷却トラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留された液体貯留部と、
前記液体を吐出する吐出部と、
前記液体貯留部から前記吐出部まで継手を介して配管された供給管と、
前記継手又はその近傍に設けられ、前記継手内又はその近傍の前記供給管内の気泡の状態を検出する気泡検出部と、を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記液体貯留部内の液体を前記供給管に送り出す供給器と、
塗布対象物に対して前記吐出部を相対的に移動させる移動部と、
気体を吸引する減圧装置と、
前記塗布対象物の近傍に設けられた待機位置と、
前記供給器、前記移動部、前記減圧装置及び前記気泡検出部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記供給器を作動させて前記吐出部から前記液体を吐出させつつ、前記移動部を制御して前記塗布対象物に対して前記吐出部を移動させている間に、前記気泡検出部によって許容値を超えた気泡が存在することが検出された場合に、前記吐出部を前記待機位置まで移動させ、前記減圧装置を前記継手に接続して該減圧装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記継手に設けられ、前記制御部により制御され、前記供給管を前記減圧装置に連通させた連通状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した遮断状態とに選択的に切り替えられる切替部を更に備え、
前記制御部は、前記吐出部から前記液体を吐出させつつ前記移動部を制御して前記塗布対象物に対して前記吐出部を移動させている間、前記切替部を前記遮断状態に切り替え、
前記気泡検出部によって前記許容値を超えた気泡が存在することが検出されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させたときに、前記切替部を前記連通状態に切り替え、前記減圧装置を作動させることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記待機位置に配置され、前記減圧装置に接続され、前記吐出部に対して吸引処理を行う脱泡部を有し、
前記制御部は、前記気泡検出部によって前記許容値を超えた気泡が存在することが検出されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させたときに、前記吐出部を前記脱泡部に接続させるとともに前記減圧装置を作動させて、前記吸引処理を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記気泡検出部は、前記継手内又はその近傍の前記供給管内に向けて投光する投光器と、前記投光器から出射されて前記継手内又はその近傍の前記供給管内からの光を受光する受光器と、を有してなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の塗布装置。
【請求項6】
液体が貯留された液体貯留部と、
前記液体を吐出する吐出部と、
前記液体貯留部から前記吐出部まで継手を介して配管された供給管と、
前記継手又はその近傍に設けられた光センサ部と、を備え、
前記光センサ部が、前記継手内又はその近傍の前記供給管内に向けて光を出射する投光器と、前記投光器から出射されて前記継手内又はその近傍の前記供給管内からの光を受光する受光器と、を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
前記光センサ部は、前記受光器によって検出された受光強度を所定の許容値と比較するコンパレータを更に備えることを特徴とする請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記液体貯留部内の液体を前記供給管に送り出す供給器と、
気体を吸引する減圧装置と、
前記継手に設けられ、前記供給管を前記減圧装置に連通させた連通状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した遮断状態とに選択的に切り替えられる切替部と、
前記供給器、前記減圧装置及び前記切替部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記供給管及び前記吐出部内に前記液体を充填する際に、前記切替部を前記連通状態に切り替えるとともに前記供給器及び前記減圧装置を作動させ、前記供給器及び前記減圧装置が作動している際に、前記受光器によって検出された受光強度が前記所定の許容値以下であると前記コンパレータにより判定された場合に、前記切替部を前記遮断状態に切り替えることを特徴とする請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記液体貯留部内の液体を前記供給管に送り出す供給器と、
塗布対象物に対して前記吐出部を相対的に移動させる移動部と、
気体を吸引する減圧装置と、
前記塗布対象物の近傍に設けられた待機位置と、
前記供給器、前記移動部、前記減圧装置及び前記光センサ部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記供給器を作動させて前記吐出部から前記液体を吐出させつつ、前記移動部を制御して前記塗布対象物に対して前記吐出部を移動させている間に、前記受光器によって検出された受光強度が前記所定の許容値を越えていることが前記コンパレータにより判定された場合に、前記吐出部を前記待機位置まで移動させ、前記減圧装置を前継手に接続して該減圧装置を作動させることを特徴とする請求項7に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記継手に設けられ、前記制御部により制御され、前記供給管を前記減圧装置に連通させた連通状態と、前記供給管を前記減圧装置から遮断した遮断状態とに選択的に切り替えられる切替部を更に備え、
前記制御部は、前記受光強度が前記所定の許容値を越えていることが前記コンパレータにより判定されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させときに、前記切替部を前記連通状態に切り替え、前記減圧装置を作動させることを特徴とする請求項9に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記待機位置に配置され、前記減圧装置に接続され、前記吐出部に対して吸引処理を行う脱泡部を有し、
前記制御部は、前記受光強度が前記所定の許容値を越えていることが前記コンパレータにより判定されて前記吐出部を前記待機位置まで移動させたときに、前記吐出部を前記脱泡部に接続させるとともに前記減圧装置を作動させて、前記吸引処理を行うことを特徴とする請求項9又は10に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−34754(P2011−34754A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178895(P2009−178895)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】