説明

塗布装置

【課題】 反りが大きい基板に対して塗布液を塗布する場合においても、精度よく塗布液を塗布することが可能な塗布装置を提供する。
【解決手段】 基板は、基板搬送機構14によりステージ12上に搬送されて、その保持面30に吸着保持される。そして、ステージ12の保持面30上に吸着保持された基板の表面に、スリットノズル41における塗布液吐出用スリットを近接させた状態で、このスリットノズル41を基板に対して移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する。スリットノズルに41より基板に塗布液を塗布している間、複数の吸着盤71により基板の裏面の複数の位置を吸着保持した状態でステージ12の保持面30に押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機EL表示装置用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、太陽電池用パネル基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板に対して塗布液を塗布するための塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような塗布装置においては、基板をステージ上に載置するとともに、スリットノズルにおける塗布液吐出用スリットをステージ上に載置された基板の表面と近接させた状態で、このスリットノズルを基板の表面に沿って移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する構成が採用されている。
【0003】
また、基板をステージ上に吸着保持するために、基板を吸着パッドにより吸着した状態でこの吸着パッドをステージ方向に移動させ、吸着パッドにより基板全面をステージに押し付けた状態でこの基板をステージ上に吸着保持し、しかる後、吸着パッドによる押し付け力を解除するようにした基板固定方法も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−179399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板として、比較的厚く反りが大きい太陽電池用パネル基板を使用する場合においては、基板をステージ上に完全に吸着保持できない場合がある。すなわち、特許文献1に記載されたように、一旦、基板をステージ上に吸着保持させたとしても、基板の厚みが大きく反りも激しいことから、基板の一部の領域とステージとの間に隙間ができる場合がある。このような現象が生じた場合には、基板とスリットノズルとの距離を一定とすることができず、塗布液の塗布精度が悪化する。また、基板の反りが大きい場合には、基板とスリットノズルとが衝突する危険もある。なお、このような現象は、その厚みが1.7mm以上の太陽電池用パネル基板において、特に生じやすい現象である。
【0006】
このような問題に対応するため、スプレー塗布方式や、真空蒸着法、あるいは、化学気相成長法等により基板の表面に成膜を行うことも可能ではあるが、成膜材料の使用効率が悪く、また、製造コストも高くなる。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、例えば、太陽電池用パネル基板のように反りが大きい基板に対して塗布液を塗布する場合においても、精度よく塗布液を塗布することが可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、スリットノズルにおける塗布液吐出用スリットを、ステージ上に載置された基板の表面と近接させた状態で、当該基板に対して水平方向に相対的に移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する塗布装置において、前記スリットノズルにより前記基板に塗布液を塗布している間、前記基板の裏面の複数の位置を吸着保持した状態で、前記基板を前記ステージの表面に押し付け、前記基板を前記ステージに対して平坦に保持する複数の吸着部材を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吸着部材は、弾性材からなる皿状の吸着部と減圧手段に連通する基部とを備え、前記ステージに形成された孔部内において、吸着部の先端が前記ステージの表面より突出した状態で、その基部が前記ステージに固定された吸着盤より構成され、前記吸着部の先端と前記基板の裏面とが当接した状態で、前記吸着部と前記基板とにより形成される空間内を排気することにより、前記吸吸着部が弾性変形する作用を利用して、前記基板の裏面を前記ステージの表面に押し付ける。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記ステージ上に載置された基板の外周部を前記ステージの表面に押し付ける外周部押さえ部材をさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記基板は、太陽電池用パネル基板である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記基板の厚みは、1.7mm以上である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、複数の吸着部材により、塗布液が塗布されている間、基板をステージの表面に押し付けることから、反りが大きい基板であっても、塗布動作中においても基板の反りを積極的に矯正することにより、基板に精度よく塗布液を塗布することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、吸着盤をステージに対して昇降させるための特別な機構を設けることなく、基板の裏面をステージの表面に押し付けることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、反りの生じやすい基板の外周部を、ステージの表面に押し付けることが可能となる。
【0016】
請求項4および請求項5に記載の発明によれば、比較的厚く、反りが大きい太陽電池用パネル基板に対して正確に塗布液を塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【図2】スリットノズル41による塗布液の供給動作を模式的に示す説明図である。
【図3】スリットノズル41を一部破断して示す正面図である。
【図4】ローラ81の昇降機構を示す概要図である。
【図5】吸着盤71の断面図である。
【図6】ステージ12に形成された孔部33内に配設される吸着盤71を示す説明図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係る塗布装置の側面図である。
【図9】保持面30の斜視図である。
【図10】ステージ3に形成された孔部33内に配設される吸着盤71を示す説明図である。
【図11】この発明に係る塗布装置のさらに別の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【0019】
この塗布装置は、太陽電池用パネル基板(以下、単に「基板」という)に対して塗布液を塗布するためのものであり、主として、本体11上に配設されたステージ12と、このステージ12の保持面30に対して水平方向に往復移動するスリットノズル41とを備える。また、ステージ12に対して基板を搬入する基板搬送機構14と、ステージ12から基板を搬出する基板搬送機構15とを備えてもよい。なお、この塗布装置により塗布液が塗布される基板は、一般的に、1.7mm以上の厚みを有し、大きな反りが生じているものが多い。また、塗布液としては、例えば、ナノメタルインクやレジスト液を採用することができる。
【0020】
このため、この塗布装置においては、基板は、基板搬送機構14によりステージ12上に搬送されて、その保持面30に吸着保持される。そして、ステージ12の保持面30上に吸着保持された基板の表面に、スリットノズル41における塗布液吐出用スリットを近接させた状態で、このスリットノズル41を基板に対して水平方向に移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する。しかる後、塗布液が塗布された基板を、基板搬送機構15によりステージ12上から搬出する。
【0021】
上記基板搬送機構14は、ステージ12の一方側に配設されている。基板搬送機構14は、一対の側板97の両端部に軸支され、図示しないモータの駆動により回転する一対の駆動軸96を備える。この駆動軸96は、各々、3個のプーリを備え、これらのプーリ間には、3本のベルト95が巻回されている。これら3本のベルト95は、一対の駆動軸96の回転に伴って、互いに同期して回動し、ベルト95の上部に載置された基板をステージ12上に水平に搬入する。なお、一対の側板97は、これらの側板97をスライド可能に支持する支持部98に沿って、各ベルト95等がステージ12に近接し、ベルト95上に載置された基板をステージ12に受け渡し可能とする受渡位置と、ステージ12から離隔して後述する移動子50bの移動を可能とする離間位置との間を往復移動可能となっている。
【0022】
同様に、上記基板搬送機構15は、ステージ12の他方側に配設されている。基板搬送機構15は、一対の側板93の両端部に軸支され、図示しないモータの駆動により回転する一対の駆動軸92を備える。この駆動軸92は、各々、3個のプーリを備え、これらのプーリ間には、3本のベルト91が巻回されている。これら3本のベルト91は、一対の駆動軸92の回転に伴って、互いに同期して回動し、ベルト91の上部に載置された基板をステージ12から水平に搬出する。なお、一対の側板93は、これらの側板93をスライド可能に支持する支持部94に沿って、各ベルト91等がステージ12に近接し、ステージ12に載置された基板をベルト91に受け渡し可能とする受渡位置と、ステージ12から離隔して後述する移動子50bの移動を可能とする離間位置との間を往復移動可能となっている。
【0023】
したがって、基板搬送機構14と、基板搬送機構15は、ステージ12に対して基板をステージ12に受け渡し可能とする受渡位置と、ステージ12から離隔して後述する移動子50bの移動を可能とする離間位置との間を往復移動可能となっているため、基板を搬送する際には、ステージ12に近接することで基板をステージ12に確実に搬送することができる。また、後述するスリットノズル41が塗布液の塗布を行う際には、ステージ12から離間することで、スリットノズル41との干渉を防ぎ、安定した塗布液の塗布を行うことができる。
【0024】
なお、ステージ12に対して基板の搬送を行う基板搬送機構14、15はこのような形態に限られるものではなく、他の手段によってステージ12へ基板を搬送してもよい。例えば、インデクサロボットを用いて、ステージ12へ基板を搬送してもよい。
【0025】
上記スリットノズル41は、ステージ12を跨ぐように設けられた架橋構造を有するノズル支持部40により支持されている。すなわち、スリットノズル41は、ノズル支持部40の下面に付設されている。一方、ステージ12の両側部分には、それぞれ固定子(ステータ)50aと移動子50bを備える一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50が配設されている。そして、ノズル支持部40の両端は、一対の移動子50bに固定されている。なお、この移動子50b内には、ノズル支持部40の両端と連結された図示しない左右一対の昇降機構が配設されている。このため、スリットノズル41は、リニアモータ50の作用によりステージ12の表面に沿って往復移動するとともに、図示しない昇降機構の作用によりステージ12に対して昇降する構成となっている。なお、このスリットノズル41の往復移動方向は、基板搬送機構14、15による基板の搬送方向と直交する方向となっている。
【0026】
図2はスリットノズル41による塗布液の供給動作を模式的に示す説明図であり、図3はスリットノズル41を一部破断して示す正面図である。
【0027】
このスリットノズル41は、その長手方向(図2における紙面に垂直な方向であり図3における左右方向)に延びるスリット状の吐出用スリット44を有する。この吐出用スリット44の長手方向の長さは、基板Sにおける矩形状の素子形成部分の短辺の長さ以上の長さである。塗布液供給配管46により供給された塗布液45は、図2に示すように、基板Sの表面に近接配置されたスリット状の吐出用スリット44を介して、基板Sの表面に供給される。そして、基板Sの表面に塗布膜が形成される。
【0028】
再度図1を参照する。上記ステージ12の表面には、基板Sを吸着保持するための吸着溝72が形成されている。そして、ステージ12の表面には、基板搬送部材としての複数のローラ81が、2列状をなして配設されている。これらのローラ81は、その一部がステージ12の保持面30の表面より上方に配置される搬送位置と、その全部がステージ12の保持面30の表面より下方に配置される退避位置との間を互いに同期して昇降可能となっている。また、ステージ12の表面には、吸着部材としての多数の吸着盤71が、ステージ12における保持面30の表面にその一部を突出させた状態で配設されている。なお、ローラ81は2列以上の列をなして配設されていてもよい。
【0029】
図4は、ローラ81の昇降機構を示す概要図である。
【0030】
列をなす複数のローラ81は、支持部材82により回転可能に支持されている。そして、支持部材82は、一対のエアシリンダ83の駆動により昇降する。このため、複数のローラ81は、一対のエアシリンダ83の駆動により、図4に示すように、その一部が、図4において仮想線で示すステージ12の保持面30の表面より上方に配置される搬送位置と、その全部がステージ12の保持面30の表面より下方に配置される退避位置との間を互いに同期して昇降する。
【0031】
図5は、吸着盤71の断面図である。また、図6は、ステージ12に形成された凹形状の孔部33内に配設される吸着盤71を示す説明図である。なお、図5(a)および図6(a)は、吸着盤71に応力や吸着力が作用していない状態を示しており、図5(b)および図6(b)は、吸着盤71により基板Sを吸着保持した状態を示している。
【0032】
この吸着盤71は、図5に示すように、弾性材料からなり、応力や吸着力によって弾性変形可能な皿状の吸着部71aと、減圧手段に連通する連通孔71cが形成された基部71bとから構成される。弾性材としては、シリコンゴムやフッ素ゴム等の樹脂剤を採用することができる。この吸着盤71は、図6に示すように、ステージ12に形成された孔部33内において、吸着部71aの先端がステージ12の保持面30より突出した状態で配設されている。そして、吸着盤71の基部71bには、ネジ部74が付設されており、このネジ部74は、ステージ12の下面に配設された支持板34に固定されている。そして、吸着部71aの先端のステージ12の保持面30からの突出量は、ネジ35により調整可能となっている。なお、ネジ部74は、中空構造を有し、図4に示す連通孔71cは、図6に示す配管73を介してファンや真空ポンプ等の減圧手段と連通されている。
【0033】
この吸着盤71により基板Sを吸着保持する場合に、吸着盤71が図5(a)および図6(a)に示す状態から、図5(b)および図6(b)に示す弾性変形した状態に遷移する。その際、吸着盤71の基部71bが固定されていた場合は、吸着盤71の吸着部71aと基板Sとの当接面の位置が基部71b側に移動し、これに伴って、そこに吸着保持する基板Sを基部71b側に移動させるという作用を生ずる。
【0034】
すなわち、吸着盤71における吸着部71aの先端と基板Sの裏面とが当接した状態で、減圧手段の作用により連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を排気することで、図5(b)および図6(b)に示すように、弾性材からなる吸着部71aが、空間内の気体を排気することで生じた応力によって弾性変形する。つまり、吸着部71aの開口部側の開口面積が広がり、深さのある皿状から平坦な皿状になる。言い換えると、吸着部71aと基板Sとが当接する当接面の面積が大きくなる。これにより、吸着部71aの基板Sに対する吸着力が大きくなり、確実に基板Sを吸着することができる。
【0035】
このときには、吸着盤71の基部71bが支持板34に固定されていることから、吸着部71aが弾性変形するときに、そこに吸着保持された基板Sも支持板34側に引き込まれる。このため、吸着盤71における吸着部71aの高さ位置を、吸着部71aの先端が前記ステージ12の保持面30より突出する状態とすることにより、基板Sの吸着保持時に、基板Sが反っていた場合でも吸着部71aは基板Sを吸着することができ、吸着部71aが弾性変形する作用を利用して、基板Sの裏面をステージ12の保持面30に押し付けることが可能となる。したがって、基板Sの反りが比較的大きい場合であっても確実に吸着部71aは基板Sを吸着することができ、そして、吸着部71aが弾性変形することで基板Sをステージ12に対して平坦に保持することができる。なお、本発明において、基板Sをステージ12に対して押し付けるとは、基板Sがステージ12側からの引きつけられる力によって、基板Sをステージ12に対して押し付けるものも含まれる。
【0036】
次に、上述した塗布装置により基板Sに塗布液を塗布する塗布動作について説明する。
【0037】
基板Sに対して塗布を開始するときには、図4に示すエアシリンダ83の作用により、複数のローラ81を、基板Sを搬送するための搬送位置に配置する。つまり、各ローラ81の上端は、基板搬送機構14における3本のベルト95の上端と同一高さ位置に配置される。この時、基板搬送機構14もステージ12に近接した位置である受渡位置に移動する。
【0038】
この状態において、3本のベルト95を一対の駆動軸96の回転に伴って互いに同期して回動させる。また、各ローラ81を、ベルト95の回動と同期して回転させる。そして、これらのベルト95およびローラ81の作用により、基板Sを基板搬送機構14からステージ12における保持面30上に搬送する。
【0039】
基板Sがステージ12の上部まで移動すれば、ベルト95およびローラ81を停止させる。そして、各ローラ81を、エアシリンダ83の作用により、図4に示すように、ローラ81の上端部がステージ12の保持面30より上方に配置された基板Sの搬送位置から、ローラ81の上端部がステージ12の保持面30より下方に配置される退避位置に移動させる。言い換えると、ローラ81の全体がステージ12の保持面30より下方に配置される。これにより、基板Sは、吸着盤71における吸着部71aの先端付近と当接する。
【0040】
また、基板Sをステージ12の上部まで移動させた後には、基板搬送機構14における一対の側板97を移動させ、各ベルト95をステージ12に近接する受渡位置から、ステージ12から離隔して移動子50bの移動を可能とする離間位置に移動させる。なお、基板搬送機構15も、ステージ12から離隔して移動子50bの移動を可能とする離間位置に配置しておく。
【0041】
また、ステージ12上で塗布処理が行われた基板と、新たに塗布処理を行う基板を同時に搬入および搬出する場合は、基板搬送機構14と基板搬送機構15をステージ12に近接した位置である受渡位置に移動し、ステージ12から基板搬送機構15へ基板を搬出するとともに、基板搬送機構14からステージ12に基板を搬入するように動作させればよい。そして、塗布処理が行われる際には、基板搬送機構14および基板搬送機構15をステージ12から離隔した離間位置に配置すればよい。
【0042】
そして、減圧手段の作用により連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を排気する。これにより、図5(b)および図6(b)に示すように、吸着部71aが弾性変形し、基板Sの裏面がステージ12の保持面30に押し付けられる。また、これと並行して、吸着溝72からも排気を行い、基板Sの裏面側を大気圧に対して負圧とすることにより、基板Sを保持面30に吸着保持する。このため、基板Sとして、比較的厚く反りが大きい太陽電池用パネル基板を使用する場合においても、この基板Sをステージ12の保持面30に押し付けて、基板Sの反りを矯正することが可能となる。
【0043】
この状態において、スリットノズル41における吐出用スリット44をステージ12の保持面30に吸着保持された基板Sの表面と近接させた状態で、スリットノズル41をリニアモータ50の駆動により基板Sの表面に沿って移動させる。そして、図2に示すように、塗布液供給配管46により供給された塗布液45を、基板Sの表面に供給する。これにより、基板Sの表面に塗布液45の薄膜が形成される。
【0044】
このときにも、吸着盤71による基板Sの吸着保持は継続しており、基板Sの裏面は、吸着盤71の作用により、ステージ12の保持面30に押し付けられている。このため、基板Sとして、その厚みが1.7mm以上で、比較的大きな反りを有する太陽電池用パネル基板を使用する場合においても、塗布動作を継続中に、この基板Sをステージ12の保持面30に常時押し付けて、基板Sの反りを矯正しておくことが可能となる。このため、基板Sとスリットノズル41との距離を一定とすることができ、塗布液45の塗布精度を向上させることが可能となるとともに、基板Sの反りが大きい場合にも、基板Sとスリットノズル41とが衝突する危険を回避することが可能となる。
【0045】
基板Sへの塗布液の塗布が完了すれば、連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を大気解放する。これにより、吸着盤71は、図5(a)および図6(a)に示す状態に復帰する。また、複数のローラ81の上端部がステージ12の保持面30の表面より上方に配置される搬送位置まで上昇させる。さらに、基板搬送機構15を各ベルト91がステージ12に近接する受渡位置に移動させる。そして、3本のベルト91を一対の駆動軸92の回転に伴って互いに同期して回動させる。また、各ローラ81を、ベルト91の回動と同期して回転させる。そして、これらのベルト91およびローラ81の作用により、基板Sをステージ12上から基板搬送機構15に向けて搬出する。
【0046】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図7は、この発明の第2実施形態に係る塗布装置の斜視図であり、図8は、その側面図である。さらに、図9は、ステージ3における保持面30の斜視図である。なお、図7においては、吸着盤71および吸着溝72や、後述するプリディスペンス機構2およびノズル洗浄装置6等の図示を省略している。また、図8においては、後述するキャリッジ4等の図示を省略している。
【0047】
この第2実施形態に係る塗布装置は、ステージ3を備える。このステージ3は、直方体形状を有する石製であり、その上面は水平面とされており、基板Sの保持面30となっている。この保持面30には、上述した実施形態と同様、凹形状の孔部が形成されており、この孔部内には、図5(a)および図6(a)と同様の吸着盤71が配設されている。また、図9に示すように、保持面30には、所定の長さを有する孔部33bが形成されており、この孔部33b内にも吸着盤71が配設されている。この孔部33b内に配設された吸着盤71は、基板Sのサイズに合わせてその位置を調整し得る構成となっている。
【0048】
また、保持面30には、図示を省略した複数のリフトピンが、適宜の間隔をおいて設けられている。このリフトピンは、基板Sの搬入、搬出時に、基板Sをその下方より支持して、ステージ3における保持面30の表面より上方に上昇させる。
【0049】
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡されたキャリッジ4が設けられている。このキャリッジ4は、スリットノズル41を支持するためのノズル支持部40と、このノズル支持部40の両端を支持する左右一対の昇降機構43とを備える。また、ステージ3の両端部には、略水平方向に平行に伸びる一対の走行レール31が配設される。これらの走行レール31は、キャリッジ4の両端部をガイドすることにより、キャリッジ4を、図7に示すX方向に往復移動させる。
【0050】
ステージ3およびキャリッジ4の両側部分には、ステージ3の両側の縁側に沿って、それぞれ固定子50aと移動子50bを備える一対のリニアモータ50が配設されている。また、ステージ3およびキャリッジ4の両側部分には、それぞれスケール部と検出子とを備えた一対のリニアエンコーダ52が固設される。リニアエンコーダ52は、キャリッジ4の位置を検出する。
【0051】
また、図8に示すように、ステージ3における保持面30の側方には、ノズル洗浄装置6が配設されている。このノズル洗浄装置6は、洗浄ブロック61と待機ポッド62とを備える。この塗布装置においては、塗布動作を実行する前あるいは実行した後に、スリットノズル41をこのノズル洗浄装置6で洗浄するようにしている。
【0052】
また、図8に示すように、ステージ3における保持面30の側方には、プリディスペンス機構2が配設されている。このプリディスペンス機構2は、貯留槽21内に貯留された洗浄液中にその一部を浸漬したプリディスペンスローラ22と、ドクターブレード23とを備える。プリディスペンスローラ22とドクターブレード23とは、Y方向に対して、スリットノズル41と同等以上の長さを有する。また、プリディスペンスローラ22は、図示しないモータの駆動により回転する。この塗布装置においては、処理動作を実行する前に、プリディスペンスローラ22の上方に移動したスリットノズル41から少量の塗布液を吐出することにより、ノズル洗浄装置6による洗浄時に洗浄液を含有した塗布液を、スリットノズル41内から除去する工程を実行するようにしている。
【0053】
この第2実施形態に係る塗布装置により塗布動作を実行するときには、上述した第1実施形態と同様、減圧手段の作用により連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を排気する。これにより、図5(b)および図6(b)に示す場合と同様、吸着部71aが弾性変形し、基板Sの裏面がステージ3の保持面30に押し付けられる。また、これと並行して、吸着溝72からも排気を行い、基板Sの裏面側を大気圧に対して負圧とすることにより、基板Sを保持面30に吸着保持する。このため、基板Sとして、比較的厚く反りが大きい太陽電池用パネル基板を使用する場合においても、この基板Sをステージ3の保持面30に押し付けて、基板Sの反りを矯正することが可能となる。
【0054】
この状態において、スリットノズル41における吐出用スリット44をステージ3の保持面30に吸着保持された基板Sの表面と近接させた状態で、スリットノズル41をリニアモータ50の駆動により基板Sの表面に沿って移動させる。そして、図2に示すように、塗布液供給配管46により供給された塗布液45を、基板Sの表面に供給する。これにより、基板Sの表面に塗布液45の薄膜が形成される。
【0055】
このときにも、吸着盤71による基板Sの吸着保持は継続しており、基板Sの裏面は、吸着盤71の作用により、ステージ3の保持面30に押し付けられている。このため、基板Sとして、その厚みが1.7mm以上で、比較的大きな反りを有する太陽電池用パネル基板を使用する場合においても、塗布動作を継続中に、この基板Sをステージ3の保持面30に常時押し付けて、基板Sの反りを矯正しておくことが可能となる。このため、基板Sとスリットノズル41との距離を一定とすることができ、塗布液45の塗布精度を向上させることが可能となるとともに、基板Sの反りが大きい場合にも、基板Sとスリットノズルとが衝突する危険を回避することが可能となる。
【0056】
図10は、ステージ3に形成された孔部33内に配設される吸着盤71の他の実施形態を示す説明図である。なお、図10(a)は、吸着盤71に応力や吸着力が作用していない状態を示しており、図10(b)は、吸着盤71により基板Sを吸着保持した状態を示している。
【0057】
この実施形態に係る吸着盤71は、図5および図6に示す吸着盤71と同様の構成を有する。そして、この実施形態に係る吸着盤71の基部71bは、エアシリンダ36のシリンダロッド37と連結されており、エアシリンダ36の駆動により、ステージ3の保持面30に対して昇降可能となっている。なお、吸着盤71には、図4に示す連通孔71cが形成されており、この連通孔71cは、図示しない配管を介してファンや真空ポンプ等の減圧手段と連通されている。
【0058】
上述した実施形態においては、基板Sの吸着保持時に、吸着部71aが弾性変形する作用を利用して、基板Sの裏面をステージ3の保持面30に押し付けている。これに対して、この実施形態においては、エアシリンダ36の駆動により吸着盤71を昇降駆動し、吸着盤71に吸着保持した基板Sを積極的にステージ3の保持面30に押し付けるようにしている。
【0059】
なお、このように吸着盤71をステージ3の保持面30に対して昇降可能な構成とした場合においては、基板Sの搬入、搬出時に、基板Sをその下方より支持してステージ3における保持面30の表面より上方に上昇させるためのリフトピンを省略することが可能となる。
【0060】
図11は、この発明に係る塗布装置のさらに別の実施形態を示す説明図である。
【0061】
この実施形態においては、上述した第1、第2実施形態におけるステージ12、3の保持面30に吸着保持された基板Sの外周部を保持面30に押し付ける外周部押さえ部材85をさらに備えた構成を有する。この外周部押さえ部材85は、エアシリンダ86により昇降可能となっている。この実施形態においては、特に反りの影響を受けやすい基板Sの外周部付近を、外周部押さえ部材85の作用により保持面30に押し付けることで、基板Sの全域にわたって反りを矯正しておくことが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
2 プリディスペンス機構
3 ステージ
6 ノズル洗浄装置
11 本体
12 ステージ
14 基板搬送機構
15 基板搬送機構
30 保持面
33 孔部
34 支持板
35 ネジ
36 エアシリンダ
40 ノズル支持部
41 スリットノズル
44 吐出用スリット
45 塗布液
50 リニアモータ
50a 固定子
50b 移動子
71 吸着盤
71a 吸着部
71b 基部
71c 連通孔
72 吸着溝
81 ローラ
82 支持部材
83 エアシリンダ
84 ベルト
85 外周部押さえ部材
86 エアシリンダ
91 ベルト
92 駆動軸
93 側板
95 ベルト
96 駆動軸
97 側板
S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットノズルにおける塗布液吐出用スリットを、ステージ上に載置された基板の表面と近接させた状態で、当該基板に対して水平方向に相対的に移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する塗布装置において、
前記スリットノズルにより前記基板に塗布液を塗布している間、前記基板の裏面の複数の位置を吸着保持した状態で、前記基板を前記ステージの表面に押し付け、前記基板を前記ステージに対して平坦に保持する複数の吸着部材を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記吸着部材は、弾性材からなる皿状の吸着部と減圧手段に連通する基部とを備え、前記ステージに形成された孔部内において、吸着部の先端が前記ステージの表面より突出した状態で、その基部が前記ステージに固定された吸着盤より構成され、
前記吸着部の先端と前記基板の裏面とが当接した状態で、前記吸着部と前記基板とにより形成される空間内を排気することにより、前記吸着部が弾性変形する作用を利用して、前記基板の裏面を前記ステージの表面に押し付ける塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗布装置において、
前記ステージ上に載置された基板の外周部を前記ステージの表面に押し付ける外周部押さえ部材をさらに備える塗布装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布装置において、
前記基板は、太陽電池用パネル基板である塗布装置。
【請求項5】
請求項4に記載の塗布装置において、
前記基板の厚みは、1.7mm以上である塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−69969(P2013−69969A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208737(P2011−208737)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】