説明

塗膜乾燥装置および乾燥方法

【課題】樹脂フィルムの生産工程において、樹脂フィルムに塗布された塗膜を乾燥させる際、塗膜が塗布されていない樹脂フィルム端部の過加熱を防止することが可能な、塗膜乾燥装置を提供すること。
【解決手段】樹脂フィルムの片面側または両面側から熱風を介して前記樹脂フィルムを加熱する第一の加熱機構と、前記樹脂フィルムの搬送経路方向であって前記第一の加熱機構の上流側または下流側に隣接して設けられ、前記熱風を回収し排出する熱風排出機構と、前記熱風排出機構の回収する熱風の進入口に、赤外線により前記樹脂フィルムを加熱する第二の加熱機構を有し、前記樹脂フィルムの幅方向両端部において、前記加熱機構2と樹脂フィルムとの間に、空孔を有する遮蔽板および遮蔽カーテンを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜乾燥装置および乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブに塗布された塗膜を効率よく乾燥し、かつその際、異物欠点の原因となる、塗膜からの蒸発物質等の析出を防止する乾燥装置として、ウェブの搬送方向に熱風ノズルと熱風排出機構を交互に配置し、熱風排出機構の入口に赤外線ヒーターを設置した乾燥装置が開示されている(特許文献1)。これは、赤外線ヒーターの輻射熱によってウェブおよび塗膜の温度を素早く上昇させるとともに、熱風ノズルから熱風をウェブに吹き付け、ウェブ表面近傍の蒸発層を剥離させて熱風排出機構によって外部へ排気するもので、ウェブを素早く加熱し、かつ塗膜付近の蒸気濃度を低く保つことで、塗膜を素早く乾燥させることができる。また、赤外線ヒーターを熱風排気機構の進入口に設けることで、熱風排気機構の進入口周辺が加熱され、異物欠点の原因となる塗膜の蒸発物質やウェブの昇華物が析出しないようにしている。
【0003】
本装置を、樹脂フィルムの生産装置に適用した場合について説明する。図3は、逐次2軸延伸フィルムの生産装置に乾燥装置を適用した概略図であり、押出機31、口金32、冷却ドラム33、縦延伸機34、塗布装置35、乾燥装置36、横延伸機37、巻取り装置38からなる。まず、押出機31によりポリマーを押し出し、口金32、冷却ドラム33を経て、ポリマーをシート状に形成する。その後、縦延伸機34により搬送方向に延伸し、塗布装置35により樹脂フィルムの片面または両面に塗膜を塗布する。乾燥装置36で塗膜を乾燥した後、横延伸機37によって樹脂フィルムは幅方向に延伸され、巻取り装置38によって連続的に巻き取られる。横延伸機37での延伸方法は、樹脂フィルムの幅方向両端部を把持して幅方向に延伸させるものである。このように、樹脂フィルムはその製造工程において一定方向に延伸することで、分子を変形方向に並ばせ、強度を増加させている。ただし、延伸後の樹脂フィルム両端部は、把持跡がつくため製品とはならない。よって、横延伸機出口で把持跡の付いた樹脂フィルム両端部を切断、回収し、溶融してポリマーとして再利用することで生産性をあげている。この時、回収した樹脂フィルム両端部に不純物である塗膜が混ざらないように、塗布装置35では、樹脂フィルムの両端部は未塗布部とし、塗液を塗布しない。ここで、発明者らが検討した結果、乾燥装置36で塗膜を乾燥させる際、樹脂フィルム両端の未塗布部は、塗布部のように蒸発潜熱で熱が消費されないため高温になり、後の横延伸機37での延伸時に高温の未塗布部のみが選択的に延伸されて、未塗布部を基点にフィルムが破れたり、製品となる塗布部が必要量延伸されずに、製品フィルムの強度が不足するといった問題が発生することがわかった。特に塗膜厚みが厚い程、乾燥が完了するまでに与えなければならない熱量は大きくなるため、未塗布部はより過加熱状態となる。また、乾燥速度をあげるために、赤外線ヒーターを多数配置した場合も、未塗布部はより過加熱状態となる。
【0004】
従って、未塗布部の過加熱を防止する必要があり、対策として、樹脂フィルムの両端部において、赤外線ヒーターおよび熱風ノズルと、樹脂フィルムとの間に遮蔽板を設置する方法が挙げられる。
【0005】
特に、熱風ノズルよりも赤外線ヒーターによる輻射熱が樹脂フィルムの主な加熱源であるため、赤外線を遮蔽することが重要となる。しかし、発明者らの知見によると、赤外線ヒーターと樹脂フィルムの間に設置した遮蔽板は、常時赤外線にさらされるため、非常に高温になる。従って、遮蔽板が焦げ付き、炭化粉が未乾燥の塗膜に落下して異物欠点となったり、遮蔽板が熱変形して樹脂フィルムや赤外線ヒーターと接触し、フィルムに傷が入って、後の延伸工程で破れの原因となったり、赤外線ヒーターが破損するといった問題があった。
【0006】
遮蔽板で赤外線を遮蔽する方法は、樹脂フィルムの製造とは異なる分野において従来から用いられており、例えば特許文献2には、アクリル樹脂製浴槽の製造時に遮蔽板を用いる技術が記載されている。これは、アクリル樹脂製の板と赤外線ヒーターとの間に遮蔽板を置いてアクリル樹脂を部分的に加熱し、その後浴槽型に熱成型するものであり、遮蔽板としてアルミパチングプレートを用い、その開口率により遮蔽効果を調整している。この特許文献2では、実施例に記載されているように赤外線ヒーターの表面温度は400℃と低いが、本発明の場合、連続で搬送される樹脂フィルムが乾燥装置を通過する時間内で塗膜を乾燥させる必要があるため、樹脂フィルムを素早く昇温するために、赤外線ヒーターの表面温度は2000℃程度となり、かつ遮蔽板が長時間にわたって常時赤外線ヒーターにさらされるため、遮蔽板が非常に高温となって、焦げ付きや熱変形が発生しやすい。 一方、熱変形を防止するために遮蔽板に冷却水を流す手段が考えられる。しかし発明者らが検討した結果、冷却水を流すことで熱変形は抑えることが出来るが、冷却配管部に樹脂フィルムの昇華物や塗膜の揮発成分が析出し、未乾燥の塗膜上に落ちて異物欠点が発生するといった問題が生じた。冷却水を用いた冷却では、冷却水の供給口は遮蔽板温度が低いが、排出口に近づくほど高温となるため、遮蔽板全体を冷やすには、低温の冷却水を遮蔽板内に供給する必要がある。樹脂フィルムからの昇華物や塗液からの揮発物は、析出面の温度が低い程析出し易く、温度が低い供給口やその上流側の配管に昇華物や揮発成分が析出し、異物欠点の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−101595号公報
【特許文献2】特開平9−174677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、上記のような問題の発生を防止し、樹脂フィルムの製造工程において、塗布された塗膜を乾燥装置で乾燥させる際、塗膜が塗布されていない樹脂フィルム端部、及び遮蔽板の過加熱を防止することが可能な塗膜乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、片面または両面に塗液を塗布された搬送中の樹脂フィルムの片面側または両面側から熱風を送風して前記樹脂フィルムを加熱する第一の加熱機構と、前記樹脂フィルムの搬送経路方向であって前記第一の加熱機構の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接して設けられ、前記熱風を回収し排出する熱風排出機構と、少なくとも1つの前記熱風排出機構の回収する熱風の進入口に、輻射熱により前記樹脂フィルムを加熱する第二の加熱機構とを有する塗膜乾燥装置であって、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に、前記熱風の進入口を覆う、開口率が5〜65%である多孔状の遮蔽板を有することを特徴とする、塗膜乾燥装置を提供する。
【0010】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記遮蔽板がパンチング板であることを特徴とする、塗膜乾燥装置が提供される。
【0011】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記遮蔽板が金網であることを特徴とする、塗膜乾燥装置が提供される。
【0012】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記第二の加熱機構からの赤外線が前記未塗布部へ照射されることを抑制する遮蔽カーテンを有することを特徴とする、塗膜乾燥装置が提供される。
【0013】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記遮蔽カーテンが、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に設置されていることを特徴とする、塗膜乾燥装置が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、搬送される樹脂フィルムの片面または両面に塗液を塗布する塗液塗布手段と、該塗液塗布手段の前記樹脂フィルムの搬送経路方向下流側に配置された前記塗膜乾燥装置と、さらに下流側に、前記樹脂フィルムを幅方向に延伸させるフィルム幅方向延伸手段とを有することを特徴とするフィルム製造装置が提供される。
【0015】
また、本発明の好ましい形態によれば、片面または両面に塗液を塗布された搬送中の樹脂フィルムの、片面側または両面側から第一の加熱機構によって熱風を送風して前記樹脂フィルムを加熱し、前記樹脂フィルムの搬送経路方向であって、前記第一の加熱機構の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接して設けられた熱風排出機構によって前記熱風を回収し、少なくとも1つの前記熱風排出機構の回収する熱風の進入口に設けた第二の加熱機構の輻射熱で前記樹脂フィルムを加熱する塗膜乾燥方法であって、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に、開口率が5〜65%である多孔状の遮蔽板を設け、前記熱風排出機構の端部の熱風進入口を覆うことを特徴とする、塗膜乾燥方法が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記遮蔽板として、パンチング板を用いることを特徴とする、塗膜乾燥方法が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記遮蔽板として、金網を用いることを特徴とする、塗膜乾燥方法が提供される。
【0017】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記第二の加熱機構からの赤外線が前記未塗布部へ照射されることを抑制する遮蔽カーテンを用いることを特徴とする、塗膜乾燥方法が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記遮蔽カーテンを、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に設けることを特徴とする、塗膜乾燥方法が提供される。
【0019】
また、本発明の好ましい形態によれば、搬送される樹脂フィルムの片面または両面に塗液を塗布した後、上記の塗膜乾燥方法により前記塗液を加熱または乾燥し、その後前記樹脂フィルムを幅方向に延伸させることを特徴とする樹脂フィルムの製造方法が提供される。
【0020】
本発明において、「熱風排出機構の前記樹脂フィルム幅方向における端部」とは、樹脂フィルムの搬送方向と直交する方向における、熱風排出機構の端部をさす。
【0021】
本発明において、「熱風の進入口を覆い」とは、熱風排出機構において、熱風が進入する開口部を覆うことをさし、本発明では遮蔽板に穴が設けられているため、遮蔽板で進入口を覆った場合、穴を通じて熱風が回収される。
【0022】
本発明において、「開口率」とは、熱風が進入する開口部を覆った部分の遮蔽板の面積(Aとする)に対する、遮蔽板に設けられた穴の総面積(Bとする)の率をいう。すなわち、開口率とA,Bの間には、開口率(%)=B/A×100という式が成り立つ。なお、熱風が進入する開口部を覆った部分の遮蔽板は、例えば図2を用いて説明すると、遮蔽板7にハッチングで示した部分のことである。
【0023】
本発明において、「多孔状」とは、遮蔽板に2つ以上の貫通穴が開いている状態をさし、その穴の断面形状は真円に限らず、楕円、多角形でも良い。
【0024】
本発明において、「遮蔽カーテン」とは、フィルムがバタついて接触しても、構造的、もしくは材料自体の柔軟性によって変形し、また元の形状に戻る性質を持ったものをさす。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る塗膜乾燥装置によれば、連続生産される樹脂フィルムの生産工程において、樹脂フィルムに塗布された塗膜を乾燥させる際、塗膜が塗布されていない樹脂フィルム端部の過加熱を防止することができる。さらに、乾燥装置の熱風排出機構を利用して遮蔽板を冷却するため、冷却水などの機構を用いた場合に生じる樹脂フィルムの昇華物や塗膜の揮発物の析出を発生させることなく、遮蔽板の焦げ付きによる異物欠点や、熱変形によるフィルム傷、破れなどの問題を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態である、樹脂フィルムの乾燥装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の乾燥装置の、樹脂フィルム側から見た平面図である。
【図3】本発明の一実施形態である樹脂フィルムの製造工程を示す概略図である。
【図4】図1の乾燥装置の、樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。
【図5】図1の乾燥装置の、樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態である、樹脂フィルムの乾燥装置を示す概略断面図である。
【図7】図6の乾燥装置の、樹脂フィルム側から見た平面図である。
【図8】図6の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。
【図9】図6の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。
【図10】図6の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の形態に限られるものではない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態である樹脂フィルムの塗膜乾燥装置の概略断面図、図2は図1の塗膜乾燥装置を樹脂フィルム側から見た平面図である。
【0029】
まず、図1を用いて、本発明の塗膜乾燥装置の構成を説明する。5は樹脂フィルムであり、フィルム幅方向の中央部分には前工程で塗布された塗膜13が未乾燥状態で形成されている。1は第一の加熱機構であり、本発明の最良の形態としてステンレス製のノズルを使用する。ノズルの形態としては、スリットノズルやホールノズル、ストライプノズル等が挙げられる。2は第二の加熱機構であり、本発明の最良の形態の例として、ヒーターと反射板が一体構造となっている赤外線ヒーターを用いる。この第二の加熱機構2には、樹脂フィルム5や塗膜13の吸収波長、ヒーターの最大出力、寿命等を考慮し最適なヒーターを用いれば良く、赤外線ヒーターに限られるものではない。3は熱風排出機構であり、蒸発物質を含んだ熱風12を主に回収するためのものである。
【0030】
また、7は遮蔽板であり、第二の加熱機構2の端部に設置されており、フィルム両端部の未塗布部に加熱機構2からの赤外線が照射するのを抑制している。
【0031】
次に塗膜乾燥装置の構成部品の位置関係と熱風の流れについて説明する。図1に示すように、樹脂フィルム5の搬送方向に対して、垂直に複数配置された各第一の加熱機構1の間に、熱風排出機構3がそれぞれ第一の加熱機構1に平行に設けられており、熱風排出機構3の熱風の進入口に第二の加熱機構2が熱風排出機構3と平行に設けられている。また、第一の加熱機構と第二の加熱機構および熱風排出機構3が交互に配置される。熱風11は第一の加熱機構1から樹脂フィルム5に向かって垂直または一定角度を持って吹き出し、樹脂フィルム5の表面近傍の蒸発層を剥離させる。樹脂フィルム5の表面近傍にあった蒸気を含んだ熱風12は、熱風排出機構3を通り排気下流で集合させ塗膜乾燥装置外へ排出または循環される。
【0032】
遮蔽板7は加熱機構2の赤外線によって表面が加熱される。また、熱風排出機構3により、遮蔽板に設けられた穴9から、蒸気を含んだ熱風12を吸引することで、加熱機構2の赤外線によって加熱された遮蔽板の温度が低下し、熱変形や焦げ付きを防止することができる。
【0033】
遮蔽板7としては、板に穴を開けたパンチング板や、板を引き伸ばして穴を設けたエキスパンドメタル、焼結金属等の多孔質状のもの、金属や合金の線材を網状に編んだ金網等が挙げられるが、通気性や製作コストの観点から、パンチング板が好ましく、金網がより好ましい。また、金網の場合、線材同士がそれぞれ溶接や半田付け等で拘束されていないことが好ましい。遮蔽板7が第二の加熱機構2の赤外線で加熱される際、第二の加熱機構に近い部分ほど多くの赤外線を受けるため、遮蔽板表面に温度分布が発生し、熱変形の原因となるが、線材同士を拘束しないことにより、線材1本1本が長手方向に熱膨張し、遮蔽板が熱変形で反ることを抑制できる。
【0034】
遮蔽板の開口率は、大きすぎると赤外線を遮蔽する効果が小さくなり、小さすぎると排気機構による冷却効果が小さくなるため、5%〜65%が好ましい。
【0035】
また、穴の大きさは、その断面積が0.03mm〜50mmが好ましい。穴の大きさがこの範囲内にあると、穴を通過する熱風量を適切に保つことができ、遮蔽板を適切に冷却することができる。また、未塗布部の各位置で、受ける赤外線を均一にすることができる。
【0036】
遮蔽板の材質としては、アルミニウム、ステンレス、銀、銅等の金属や、セラミック、ガラス等のいずれでも良いが、熱伝導率と耐熱温度が大きく、熱膨張係数が小さいものが好ましい。こうすることで、排気機構による冷却効果が高まり、焦げ付きや熱変形もより発生しにくくなる。
【0037】
板厚は0.05mm〜2.0mmが好ましい。板厚がこの範囲にあると、表裏の温度差が小さくなり、遮蔽板の反りを小さくできる。また、自重による撓みも小さくなり、樹脂フィルムや第二の加熱機構と接触する可能性が低くなる。金網の線材の太さについても同様である。また、穴は遮蔽板の全面に均一に設けても良いし、第二の加熱機構の直下などの特に高温になる部分に多く設けても良い。
【0038】
遮蔽板の設置位置について、図4および図5を用いて説明する。図4、5は、図1の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。遮蔽板は、熱風排出機構の樹脂フィルム幅方向における端部かつ、第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に設に設置すると良く、例えば、図4のように未塗布部の真上に設置すると良い。ただし、赤外線は第二の加熱機構から放射状に発せられ、図4のハッチングおよび矢印で示すように、未塗布部の樹脂フィルムは赤外線を受けるため、さらに未塗布部への赤外線を減らしたい場合は、遮蔽板と樹脂フィルムの距離を小さくするか、図5に示すように遮蔽板で第二の加熱機構のより広範囲を遮蔽すると良い。
【0039】
ただし、遮蔽板と樹脂フィルムの距離は5〜30mmが好ましい。遮蔽板と樹脂フィルムの距離がこの範囲にあると、樹脂フィルムが搬送方向に対して垂直方向に揺れても、樹脂フィルムが遮蔽板に接触する可能性が低くなる。また、図5に示したように第二の加熱機構の遮蔽範囲を大きくすると、未塗布部へ照射される赤外線を少なくすることが出来るが、塗布端付近の塗布部へ照射される赤外線も減少し、その部分の乾燥速度が落ちる原因となる。よって、未塗布部の許容温度や目的の乾燥速度、樹脂フィルムの揺れ量等を考慮して、熱風排出機構の樹脂フィルム幅方向における端部かつ、第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に設置すると良い。ここで端部とは、遮蔽板と樹脂フィルムとの距離にもよるが、図5に示したL1の範囲が好ましい。このL1は、樹脂フィルム幅方向において、塗布端から50mm内側に入った所から、第二の加熱機構の端部までの範囲をさす。
【0040】
ここで、本発明の別の本実施形態について、図6〜図8を用いて説明する。図6は、本発明の別の実施形態である樹脂フィルムの塗膜乾燥装置の概略断面図、図7は図6の塗膜乾燥装置を樹脂フィルム側から見た平面図、図8は図6の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。本塗膜乾燥装置は、図1及び図2で示された塗膜乾燥装置において、遮蔽板7の先端から樹脂フィルム5に向かって垂らした遮蔽カーテン14を有するものであり、遮蔽板7と遮蔽カーテンで、フィルム両端部の未塗布部に第二の加熱機構2からの赤外線が照射することを抑制している。特に、遮蔽板を用いた場合、図4を用いて説明したように、遮蔽板の下を斜めに通過した赤外線が未塗布部へ照射されるが、遮蔽カーテンを用いることで、これも抑制することができる。
【0041】
遮蔽板7および遮蔽カーテン14は加熱機構2の赤外線によって表面が加熱されるが、熱風排出機構3により、遮蔽板に設けられた穴9から、蒸気を含んだ熱風12を吸引することで、遮蔽板の温度が低下し、また、熱風12が遮蔽カーテンの表面を流れたり、隙間を通過することで、遮蔽カーテンの温度が下がる。これにより、熱変形や焦げ付きを防止することができる。遮蔽板のみでも未塗布部への赤外線照射を抑制することが可能であるが、遮蔽カーテンを用いることで未塗布部分への赤外線照射をさらに抑制することが出来る。
【0042】
遮蔽カーテン14は、樹脂フィルムが搬送方向に対して垂直方向に揺れて接触しても、変形し、また元の形状に戻る性質を有するため、樹脂フィルムが破れたり、遮蔽カーテンが損傷することがない。このような性質は、素材自体の柔軟性によるものでも良いし、関節構造によるものでもよい。関節構造としては、例えば鎖や、腕時計の金属ベルトのように小片をピン等で連結させたものが挙げられる。また、素材自体の柔軟性により本性質を発揮させる場合、材料は一定以上変位すると弾性領域から塑性領域へ遷移してしまうため、樹脂フィルムの変位量によって、適切な材料を選択すると良い。
【0043】
遮蔽カーテンの材質としては、金、アルミニウム、ステンレス、銀、銅等の金属や、セラミック、ガラス、炭素繊維等の耐熱繊維、または耐熱性の繊維からなる織物のいずれでも良いが、熱伝導率と耐熱温度が大きく、熱膨張係数が小さいものが好ましい。こうすることで、排気機構による冷却効果が高まり、焦げ付きや熱変形もより発生しにくくなる。さらに、赤外線の反射率が高い材質であることがより好ましい。これについて、図9、10を用いて説明する。図9、10は図6の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。図9にハッチングで示すように、遮蔽板を設置すると塗布端付近の塗布部に照射される赤外線も少なくなるため、温度が上がらず乾燥しにくくなる。しかし、遮蔽カーテンに反射性の材料を用いることで、図10に示すように塗布端部に赤外線を反射し、遮蔽板によって遮られた赤外線量を補うことができる。反射率が高い材料としては、金やアルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0044】
遮蔽カーテンの設置位置について、図を用いて説明する。図8は、図6の第二の加熱機構を樹脂フィルムの搬送方向側から見た概略断面図である。遮蔽カーテンは、遮蔽板とフィルムの間を通過する赤外線の少なくとも一部を遮蔽するように設置すれば良いが、図8に示したように、遮蔽板とフィルムの間のできるだけ多くの部分に設置することが好ましい。また、図7のように第二の加熱機構の開口部において、遮蔽カーテンは開口部のフィルム搬送方向の幅全てに渡って設置しても良いし、その一部に設置しても良い。また、遮蔽カーテンは図8のように遮蔽板に接続してもよいし、別の支持部材を設けて設置しても良い。また、未塗布部のうち、塗布端部に近い部分ほど、受ける赤外線量が多く高温になるため、遮蔽カーテンは塗布端近傍の未塗布部への赤外線を遮るように設置するのが好ましく、図8のように、遮蔽板と樹脂フィルムの間へ遮蔽カーテンを設置する場合、塗布端の直上、もしくは少し内側の位置に設置すると良い。塗布端部は通常、塗布厚みが安定しないことが多いため、製品にせずにカットして捨てる場合が多いが、塗布端部も製品化する場合、フィルムが垂直方向に変動した際に遮蔽カーテンで塗布端部の塗膜を乱して問題になることがある。また、遮蔽カーテンの設置位置を内側にしすぎると、塗布端付近の塗布部へ照射される赤外線が減り、その部分の乾燥速度が下がる原因になる。従って、未塗布部の許容温度や目的の乾燥速度、採取する製品幅に応じ、遮蔽カーテンは、熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部、かつ第二の加熱機構と樹脂フィルムとの間に設に設置すると良い。ここで、端部とは図10にL2で示す範囲が好ましい。このL2は、樹脂フィルム幅方向において、塗布端から50mm内側に入った所から、樹脂フィルム端部までの範囲をさす。
【0045】
また、樹脂フィルムに塗布される塗膜の幅は製品毎に異なるため、それぞれの製品に合わせて遮蔽範囲を調整できるよう、遮蔽板および遮蔽カーテンは樹脂フィルムの幅方向に位置を調整できることが好ましい。
【0046】
また、遮蔽板および遮蔽カーテンは第二の加熱機構の端部に設ける上に、第一の加熱機構の端部に設けても良い。このようにすることで、未塗布部の温度をより低くでき、過加熱を防止することができる。
【0047】
熱風11は本発明の最良の形態の例として空気を使用するが、水蒸気または防爆設備内で使用する場合などは不活ガス等を使用しても良い。
【0048】
第一の加熱機構1から吹き出される熱風11の風速は、好ましくは5〜50m/秒、より好ましくは15〜40m/秒である。風速がこの範囲にあると、樹脂フィルム5の表面に存在する蒸発層の除去を十分に行うことができ、樹脂フィルム5の表面近傍の飽和蒸気圧を低く抑えられるため、より高い乾燥効率を維持できる。また、風圧による樹脂フィルム5の垂直方向の揺れを小さく抑えることができるため、樹脂フィルムが塗膜乾燥装置の第一の加熱機構1や熱風排出機構3、遮蔽板7に接触してフィルム破れや装置が変形する可能性が低くなる。さらに、風紋と呼ばれる問題もより発生しにくくなる。風紋は特にホールノズルの場合発生しやすく、ホール直下の熱風が吹き付けられる部分の塗液の膜厚は薄く、ホール直下でない部分の塗液の膜厚は厚くなり、塗液の厚みムラが発生し品質悪化の原因となる。
【0049】
第一の加熱機構1からの熱風11の温度は、樹脂フィルム5や塗液にもよるが、好ましくは30〜150℃、より好ましくは60〜120℃である。熱風温度が範囲にあると、乾燥効率がより高くなり、また、遮蔽板7や遮蔽カーテン14をより効率よく冷却することができる。また、塗膜全体を均一に乾燥できるため、塗膜表面のみ乾燥して薄い皮膜が形成され、塗液内部の未乾燥部が揮発する際に塗布面を荒らしてしまう可能性が低くなる。
【0050】
第一の加熱機構1の先端と樹脂フィルム5との距離は、好ましくは5〜100mm、より好ましくは10〜50mmである。また、第一の加熱機構1から吹き出される熱風11の吹き出し角度は、樹脂フィルム5の搬送方向の垂直位置に対して好ましくは±45°、より好ましくは±0°である。これら第一の加熱機構1の先端と樹脂フィルム5との距離、および熱風11の噴射角度は、熱風11から樹脂フィルム5への熱伝達率に大きく影響する。第一の加熱機構1の先端と樹脂フィルム5との距離が上記範囲にあると、樹脂フィルム5が搬送方向に対して垂直方向上下に揺れても、第一の加熱機構1の先端や、第一の加熱機構に取り付けた遮蔽板に樹脂フィルム5が接触する可能性がより低くなる。また、熱風の噴出し角度が上記範囲にあると、高い熱伝達率を実現できる。さらに、防爆設備などで塗膜乾燥装置の外部に溶媒を漏れ出さないようにしたい場合は、熱風11の吹き出し角度を上記範囲で調整すると良い。
【0051】
第二の加熱機構2の最大エネルギー波長は、被加熱物が持つ固有の吸収波長と一致するのが最も効率がよいが、赤外線ヒーターの性能特性上最大エネルギー波長には幅があることや、吸収波長の異なる複数の品種を加熱する場合があることから、一般的に第二の加熱機構2の最大エネルギー波長は0.8〜5μmが好ましく、樹脂フィルム5に関しては2〜4μmがより好ましい。第二の加熱機構2の発熱体の温度は高い方が乾燥速度が速くなるため、500〜2000℃が好ましく、1600〜2000℃がより好ましい。また、第二の加熱機構2と樹脂フィルム5との距離は、5〜100mmが好ましく、10〜50mmがより好ましい。赤外線ヒーター2と樹脂フィルム5の距離がこの範囲にあると、樹脂フィルム5が搬送方向に対して垂直方向上下に揺れても、赤外線ヒーターに接触して発火したり、遮蔽板に接触してフィルムが破れる可能性がより低くなる。
【0052】
熱風排出機構3の吸い込み流量は、好ましくは第一の加熱機構1からの熱風11の合計流量と同じか、より好ましくは第一の加熱機構1からの熱風11の合計流量の100〜120%がより好ましい。この範囲にすると、塗膜乾燥装置内で発生した蒸発物質を含んだ熱風が、塗膜乾燥装置の外に、より流出しにくくなり、両面乾燥も含む複数の塗膜乾燥装置を同時に使用しても、それぞれの塗膜乾燥装置内で発生する蒸発物質が、他の塗膜乾燥装置に混入する可能性がより低くなる。また、有害な蒸発物質が発生する場合でも、安全に操業することが可能である。また、塗膜乾燥装置外部の塵を吸込むことによる異物欠点の発生や、熱風の循環率が低くなることによる熱効率悪化、ひいてはランニングコストの増加といったことが発生しにくくなる。また、遮蔽板や遮蔽カーテンを適切に冷却することができ、過加熱状態となって熱変形もしくは焦げついて異物欠点が発生したり、若しくは蒸発物質を含んだ熱風12が塗膜乾燥装置の外に流出し、蒸発物質が塗膜乾燥装置外側に析出してフィルム上に落下することで、異物欠点が発生したりする可能性が低くなる。
【0053】
本発明における樹脂フィルム5としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、アセテート、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。また、この樹脂フィルムは、単層のフィルムであっても良いし、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部を構成する樹脂が、化学的に異種の樹脂であっても同種の樹脂であっても良い。また、樹脂フィルム5の厚みは特に限定されないが、機械的強度やハンドリング性などの点から、厚みは10〜500μmが好ましく、20〜300μmがより好ましい。
【0054】
樹脂フィルム5を搬送する際の、単位幅あたりにかかる張力は、3000〜10000N/mが好ましい。張力がこの範囲であると、樹脂フィルム5の蛇行や搬送方向に対して垂直方向上下の揺れなどが発生しにくく、ロールとの摩擦や塗膜乾燥装置との接触による樹脂フィルム5表面へのキズ発生の可能性が低くなる。また、加熱時しても樹脂フィルム5が変形しにくくなるため、ロールと樹脂フィルム5との間に局所的に接圧の高い部分が発生してキズが発生する可能性が低くなる。
【0055】
樹脂フィルム5の表面に塗布する塗液は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、膜厚は1〜15μmが好ましい。また、塗膜は樹脂フィルム5の片面だけに塗布しても良いし、両面に塗布しても良い。
【0056】
塗布装置塗布方法としては、ロッドコート法、グラビアコート法、リバースロールコート法などが挙げられる。これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。これら塗布方法は塗布ムラの少ない均一な塗布面を得るためには好適である。本発明においては、塗布量の調整が容易に可能なロッドコートを用いるのがより好ましい。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
次に、実施例に基づいて上記実施形態を具体的に説明するが、上記実施形態は必ずしも以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
極限粘度(固有粘度ともいう)0.62dl/g(1996年 JIS K7367の規格に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)のポリエチレンテレフタレート(以下PETと省略する)のチップを、180℃で十分に真空乾燥した後、図3の押出機31に供給して285℃で溶融し、T字型口金32よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度23℃の鏡面キャストドラム33に巻き付けて冷却固化して未延伸フィルムとした。続いて縦延伸機34において、この未延伸フィルムを80℃に加熱したロール群で加熱し、さらに赤外線ヒータにて加熱しながら長手方向に3.2倍延伸し、50℃に調整した冷却ロールで冷却し、一軸延伸の樹脂フィルムとした。樹脂フィルムの幅は1000mm、厚みは350μmであった。続いて塗布装置35で、速度30m/分で走行するこの樹脂フィルムの上面に塗液を塗布した。塗布幅は800mmとし、樹脂フィルム両端部に100mmずつの未塗布部を設けた。塗布装置としてはロッドコート方を用い、ロッドとしては、直径が12.7mm、長さが1400mmのステンレス製の丸棒材に、線形が0.1mmのワイヤーを巻いたもの(加納商事株式会社製)を用いた。続いて塗膜乾燥装置36として、図1に記載の塗膜乾燥装置を用い、樹脂フィルム上面から塗膜及び樹脂フィルムを加熱、乾燥させた後、横延伸機37において、塗液が塗布された樹脂フィルムを90℃のオーブン内に導いて加熱し、引き続き100℃のオーブン内で樹脂フィルムを幅方向に3.5倍延伸し、さらに220℃のオーブン内で幅方向に5%弛緩処理しつつ樹脂フィルムの熱固定を行い、片面に塗液による膜を形成した二軸延伸フィルムを得た。縦延伸機34と横延伸機37の間の張力は、樹脂フィルムの走行方向にかかる単位幅当たりの張力が8000N/mとなるようにダンサーロールで制御した。
【0059】
塗液はポリエステル共重合体のエマルジョン(含有成分:テレフタル酸90モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸10モル%、エチレングリコール96モル%、ネオペンチルグリコール3モル%、ジエチレングリコール1モル%)100重量部に対し、メラミン系架橋剤(イミノ基型メチル化メラミンをイソプロピルアルコール10重量%と水90重量%の混合溶媒で希釈した液)を5重量部、平均粒径が0.1μmのコロイダルシリカ粒子を1重量部添加した混合液とした。この塗液の粘度は、温度25℃において、2mPa・sであった。また、塗膜の塗布厚みは、塗布装置35の出口にて、水分計(RX−200、倉敷紡績株式会社製)で測定したところ、6.0μmであった。また、塗布装置35の出口で樹脂フィルムの温度をサーモグラフィー(TVS−500EX、NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製)で測定したところ、塗布部は25〜26℃、未塗布部は30〜31℃であった。
【0060】
塗膜乾燥装置36は、第一の加熱機構1を7ユニット、熱風排出機構3を6ユニット、樹脂フィルムの搬送方向に交互に配置した(図1は第一の加熱機構1が4ユニット、熱風排出機構3が3ユニットの図)。材質はステンレス(SUS304)を用い、第一の加熱機構1および熱風排出機構3の大きさは、樹脂フィルムの搬送方向の長さが100mm、幅方向の長さが1700mmとし、樹脂フィルムとの間隙が30mmとなるよう設置した。第二の加熱機構としては、樹脂フィルムの搬送方向の長さが23mm、幅方向の長さが1440mm、鉛直方向の長さが11mmの短波長赤外線ヒーター(ZKC12000/1300G、ヘレウス株式会社製)を14本用い、樹脂フィルムと短波長赤外線ヒーターの表面との距離が40mmとなるように、熱風排出機構の熱風進入口に2本ずつ設置した。全ての熱風排出機構3および第一の加熱機構1の長手方向の両端部450mmには、厚さ0.5mmのステンレス板(SUS304)を折り曲げて製作したガイド8で遮蔽板を取り付けた(熱風排出機構3に取付けた遮蔽板はず図1に図示しない)。遮蔽板は、図5に示すように、樹脂フィルムの幅方向において、塗布端から50mm内側に入ったところから、熱風排出機構の端部までを覆うように設置した。熱風排出機構に設置した遮蔽板としては、直径が0.5mmのステンレス製(SUS304)の線材で編んだ金網を用いた。金網の線材同士は拘束せず、メッシュ数は38、開口率は6.3%とした。第一の加熱機構1に設けた遮蔽板としては、穴を有しないステンレス製(SUS304)の板を用いた。第一の加熱機構の熱風吹出し部は、直径3mmの穴を千鳥状に均一な分布で開けた開口率3.5%のパンチングメタルとし、その穴から100℃に加熱した空気を風速21m/sで吹出した。また、短波長赤外線ヒーターの出力は1本あたり7.5Kwとした。これにより、赤外線ヒーターの表面温度はおよそ2100℃となる(ヘレウス株式会社カタログ値)。熱風回収機構3からの吸込み流量は、第一の加熱機構1から吹出す熱風の合計流量と同じにした。
【0061】
未塗布部の過加熱有無の評価方法は、塗膜乾燥装置の出口にて未塗布部分の温度をサーモグラフィー(TVS−500EX、NEC Avio赤外線テクノロジー株式会社製)で測定し、最も高い部分の温度が、許容温度である70℃以下であるかを確認した。この許容温度は、実験を繰り返すことでわり出したものである。また、遮蔽板の熱変形量の測定は、樹脂フィルムの下側からレーザー変位計(LK−500、株式会社キーエンス製)で、初期状態からの変位量を測定することで行った。また、焦げ付きに関しては、使用後の遮蔽板を目視確認することで行った。
【0062】
本装置で塗膜の乾燥を行った結果、未塗布部の温度は43℃で許容範囲内であった。また、遮蔽板の焦げ付きは発生せず、熱変形量についても1.0mmと小さかったため、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムと接触すること無く、安定した生産が可能であった。
[実施例2]
熱風排出機構に設置した遮蔽板のメッシュ数を10、開口率を64.5%とした以外は実施例1と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、未塗布部の温度は69℃と許容範囲内であった。また、遮蔽板の焦げ付きは発生せず、熱変形量についても0.4mmと小さかったため、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムと接触すること無く、安定した生産が可能であった。
[実施例3]
熱風排出機構に設置した遮蔽板として、厚さ0.5mmのステンレス製(SUS304)の板に直径3mmの穴を千鳥状に均一な分布で空けて開口率8.4%としたパンチング板を用いた以外は実施例1と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、未塗布部の温度は45℃と許容範囲内であった。また、遮蔽板の焦げ付きは発生しなかった。熱変形量は3.0mmと実施例1に比べて若干大きかったが、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムに接触することなく、安定した生産が可能であった。
[実施例4]
熱風排出機構に設置した遮蔽板の開口率を64.0%とした以外は実施例3と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、未塗布部の温度は69℃と許容範囲内であった。また、遮蔽板の焦げ付きは発生しなかった。熱変形量は1.5mmであり、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムに接触することなく、安定した生産が可能であった。
[比較例1]
熱風排出機構に遮蔽板を設置しないこと以外は、実施例1と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、未塗布部の温度は85℃と許容温度を超えてしまったため、製品の出荷を断念した。
[比較例2]
熱風排出機構に設置した遮蔽板のメッシュ数を40、開口率を4.5%とした以外は実施例1と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、未塗布部の温度は41℃と許容範囲内であった。熱変形量は2.5mmであり、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムと接触すること無く、安定した生産が可能であったが、遮蔽板の焦げ付きが見られたため、生産を断念した。
[比較例3]
熱風排出機構に設置した遮蔽板のメッシュ数を9、開口率を67.7%とした以外は実施例1と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、遮蔽板の焦げ付きは無く、熱変形量も0.2mmと小さく、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムと接触すること無く、安定した生産が可能であったが、未塗布部の温度は72℃と許容温度を超えてしまったため、製品の出荷を断念した。
[比較例4]
熱風排出機構に設置した遮蔽板の開口率を4.9%とした以外は実施例3と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、未塗布部の温度は44℃と許容範囲内であったが、遮蔽板に焦げ付きが発生した。さらに、遮蔽板の熱変形量は6.0mmとなり、搬送される樹脂フィルムと接触する危険があったため生産を断念した。
[実施例5]
図8のように、遮蔽板の先端から樹脂フィルムに向かって遮蔽カーテンを設置した以外は、実施例2と同じにして塗膜の乾燥を行った。なお、遮蔽カーテンとしてはステンレス製の鎖を用いた。鎖を構成する楕円状の輪の外径は、長径5mm、短径3mm、太さφ1mmであった。この鎖を、図6および図7のように、第二の加熱機構に設けられた遮蔽板の先端部分に、フィルムの搬送方向に3mmピッチで設置した。また、バタついていない状態のフィルムと鎖の下端との距離は4mmであった。ただし、この距離の測定はフィルムが搬送している状態では困難なため、生産装置が停止し、かつフィルムが無い状態で、フィルムの搬送経路上に糸を張り、糸と鎖の下端との距離を測定することで代用した。その結果、未塗布部の温度は実施例2が69℃であったのに対し、15℃下がって54℃となり、フィルムの許容温度である70℃に対してより余裕をもって安定した生産が可能となった。このことは、未塗布部の温度をより低く抑えるには遮蔽カーテンの設置が好ましいことを示している。また、実施例2と同様、遮蔽板の焦げ付きは発生せず、熱変形量についても0.4mmと小さかったため、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムと接触すること無く、安定した生産が可能であった。
[比較例5]
熱風排出機構に設置した遮蔽板の開口率を69.8%とした以外は実施例3と同じにして塗膜の乾燥を行ったところ、遮蔽板の焦げ付きは無く、熱変形量は1.5mmで、短波長赤外線ヒーターや樹脂フィルムと接触すること無く、安定した生産が可能であったが、未塗布部の温度が72℃と許容温度を超えてしまったため、製品の出荷を断念した。
[まとめ]
上記の実施例および比較例の結果を表1にまとめて示す。実施例1〜4は、遮蔽板として、パンチング板や金網を用い、開口率はクレームで規定したとおりとすることで、遮蔽板の焦げ付きや熱変形を抑えつつ、未塗布部の過加熱を防止することができた。また、実施例2の方が、実施例4より熱変形量が小さいことから、パンチング板より金網の方がより好ましいといえる。
【0063】
比較例1は遮蔽板を用いない場合の結果であり、未塗布部の温度が許容温度を超えたため、遮蔽板の適用が重要であるといえる。
比較例2〜5は、遮蔽板としてパンチング板や金網を用いた結果であるが、遮蔽板の焦げ付きや熱変形を抑えつつ、未塗布部の過加熱を防止するという目的を達成できなかった。従って、遮蔽板の開口率はクレームで規定したとおりにすることが重要であるといえる。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、塗膜の乾燥に限らず、樹脂フィルムの加熱などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0066】
1 第一の加熱機構
2 第二の加熱機構
3 熱風排出機構
5 樹脂フィルム
7 遮蔽板
8 ガイド
9 穴
11 熱風
12 蒸発物質を含んだ熱風
13 塗膜
14 遮蔽カーテン
31 押出機
32 口金
33 冷却ドラム
34 縦延伸機
35 塗布装置
36 乾燥装置
37 横延伸装置
38 巻取り装置
L1 端部の範囲
L2 端部の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面または両面に塗液を塗布された搬送中の樹脂フィルムの片面側または両面側から熱風を送風して前記樹脂フィルムを加熱する第一の加熱機構と、前記樹脂フィルムの搬送経路方向であって前記第一の加熱機構の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接して設けられ、前記熱風を回収し排出する熱風排出機構と、少なくとも1つの前記熱風排出機構の回収する熱風の進入口に、赤外線により前記樹脂フィルムを加熱する第二の加熱機構とを有する塗膜乾燥装置であって、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に、前記熱風の進入口を覆う、開口率が5〜65%である多孔状の遮蔽板を有することを特徴とする、塗膜乾燥装置。
【請求項2】
前記遮蔽板がパンチング板であることを特徴とする、請求項1に記載の塗膜乾燥装置。
【請求項3】
前記遮蔽板が金網であることを特徴とする、請求項1に記載の塗膜乾燥装置。
【請求項4】
前記第二の加熱機構からの赤外線が前記未塗布部へ照射されることを抑制する遮蔽カーテンを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜乾燥装置。
【請求項5】
前記遮蔽カーテンが、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に設置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜乾燥装置。
【請求項6】
搬送される樹脂フィルムの片面または両面に塗液を塗布する塗液塗布手段と、該塗液塗布手段の前記樹脂フィルムの搬送経路方向下流側に配置された請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜乾燥装置と、さらに下流側に、前記樹脂フィルムを幅方向に延伸させるフィルム幅方向延伸手段とを有することを特徴とするフィルム製造装置。
【請求項7】
片面または両面に塗液を塗布された搬送中の樹脂フィルムの、片面側または両面側から第一の加熱機構によって熱風を送風して前記樹脂フィルムを加熱し、前記樹脂フィルムの搬送経路方向であって、前記第一の加熱機構の上流側および下流側の少なくとも一方に隣接して設けられた熱風排出機構によって前記熱風を回収し、少なくとも1つの前記熱風排出機構の回収する熱風の進入口に設けた第二の加熱機構の赤外線で前記樹脂フィルムを加熱する塗膜乾燥方法であって、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に、開口率が5〜65%である多孔状の遮蔽板を設け、前記熱風排出機構の端部の熱風進入口を覆うことを特徴とする、塗膜乾燥方法。
【請求項8】
前記遮蔽板として、パンチング板を用いることを特徴とする、請求項5に記載の塗膜乾燥方法。
【請求項9】
前記遮蔽板として、金網を用いることを特徴とする、請求項5に記載の塗膜乾燥方法。
【請求項10】
前記第二の加熱機構からの赤外線が前記未塗布部へ照射されることを抑制する遮蔽カーテンを用いることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の塗膜乾燥方法。
【請求項11】
前記遮蔽カーテンを、少なくとも1つの前記熱風排出機構の前記樹脂フィルムの幅方向における端部かつ、前記第二の加熱機構と前記樹脂フィルムとの間に設けることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載の塗膜乾燥方法。
【請求項12】
搬送される樹脂フィルムの片面または両面に塗液を塗布した後、請求項5〜8のいずれかに記載の塗膜乾燥方法により前記塗液を加熱または乾燥し、その後前記樹脂フィルムを幅方向に延伸させることを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−198012(P2012−198012A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53049(P2012−53049)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】