説明

塗装作業性及び付着性に優れたポリマーセメントモルタル

【課題】コンクリート構造物に対する、剥落防止材、表面被覆材、不陸調整材などとして利用することができる、塗装作業性及び付着性に優れた2材型ポリマーセメントモルタルに関するものである。
【解決手段】成分として、(1)セメント、骨材、及びエポキシ当量が120〜300g/eqである疎水性液状エポキシ樹脂をドライブレンドしてなる乳化剤を含有しない粉体セメント組成物と、(2)水溶性アミン樹脂硬化剤と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に対する剥落防止材、表面被覆材、不陸調整材などとして利用することができる、塗装作業性及び付着性に優れた2材型ポリマーセメントモルタルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の保護や美装などの被覆材として、セメントを結合材とする材料が一般的に使用されている。なかでもポリマー(樹脂)を添加したポリマーセメントモルタルは、物性や作業性等の改善などのため広く用いられている。
コンクリート構造物の下地処理や不陸調整に使用されるポリマーセメントモルタルでは、アクリル樹脂や、SBR樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が一般に利用されている。
アクリル樹脂やSBR樹脂を使用するポリマーセメントモルタルでは、それを施工した場所に、溶剤系上塗塗料を直接塗布すると、上塗塗料に使用される溶剤により、ポリマーセメントモルタルが軟化され、ポリマーセメントモルタル本来の物性が得られない問題があった。
【0003】
一方、エポキシ樹脂エマルジョンや乳化剤を用いて水分散タイプにした親水性のエポキシ樹脂を配合したポリマーセメントモルタル(例えば、特許文献1参照)では、その硬化物の耐水性が一般に不良であり、長期耐久性に劣るといった問題が生じていた。
更に、親水性のエポキシ樹脂を使用するポリマーセメントモルタルを施工する場合、原料であるセメントと、エポキシ樹脂と、硬化剤であるアミン樹脂とを、現場で調合しなければならず、煩雑であり、また、その調合ミスにより、ポリマーセメントモルタルとしての本来の物性を示さないなど問題があった。
ポリマーセメントモルタルの作業性を改善するために、特に、ポリマーセメントモルタルをコテやヘラを使用して作業しやすいようにするため、必要以上に水を添加すると、今度は、得られた硬化物の物性が十分に発現されず、長期耐久性が劣るといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平3−69538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、上塗塗料の組成によって影響されず、しかも、作業性に優れ、かつ耐久性に優れた2材型ポリマーセメントモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、使用するエポキシ樹脂として、疎水性のエポキシ樹脂を使用し、その硬化剤として、水溶性アミン樹脂硬化剤を使用することにより、従来使用されていた耐水性を低下させる原因でもある乳化剤の使用を回避できるため、上記課題を効果的に達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、(1)セメント、骨材、及びエポキシ当量が120〜300g/eqである疎水性液状エポキシ樹脂をドライブレンドしてなる乳化剤を含有しない粉体セメント組成物と、
(2)水溶性アミン樹脂硬化剤と、
からなる2材型ポリマーセメントモルタルに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明で使用されるセメントは、これまで、ポリマーセメントモルタルに採用されている各種のセメントを特に限定されることなく任意に使用することができる。
このようなセメントとしては、例えば、水硬性セメントが好適に挙げることができる。このような水硬性セメントとしては、例えば、ポルトランドセメントや、アルミナセメント、白色セメント、石灰混合セメント、高炉セメント、コロイドセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、スラグセメント等が挙げられる。これらのセメントは、単独で使用してもよく、これらのセメントを2種以上組合せて使用してもよい。例えば、ポルトランドセメントとアルミナセメントとの組合せが好適に挙げられる。
セメントは、粉体で使用される。その比表面積は、JIS R 5201の比表面積試験で測定した場合に、例えば、3000〜6000cm2/gであることが適当である。
セメントは、2材型ポリマーセメントモルタルの量に対して、一般に、10〜60質量%、好ましくは、20〜50質量%で配合することが好適である。
なお、アルミナセメントは急硬性であるので、アルミナセメントは、ポルトランドセメントなどの他の水硬性セメントと併用することが適切であり、その場合、例えば、ポルトランドセメント100質量部に対して、通常、5〜30質量部、好ましくは、10〜20質量部で配合することが適当である。
【0008】
本発明で使用される骨材としては、これまで、ポリマーセメントモルタルに採用されている各種の骨材を特に限定されることなく任意に使用することができる。このような骨材としては、珪砂や、川砂、石材破砕物、磁器破砕物、ガラス破砕物、ガラスビーズ、軽量骨材等が好適に挙げられる。骨材は、単独で使用してもよく、更には、2種以上の混合物として使用してもよい。
骨材の大きさは、JIS A1102で規定される篩い残留分量で表した場合に、0.3mm(格子径)篩い上残留分が30質量%以下でかつ0.15mm(格子径)篩上残留分が70質量%以下であり、0.3mm(格子径)篩い上残留分で0%でかつ0.15mm篩い上残留分が30質量%以下であることが好適である。
骨材は、2材型ポリマーセメントモルタルの量に基づいて、一般に、10〜80質量%、好ましくは、30〜50質量%であることが適切である。
【0009】
本発明で使用されるエポキシ樹脂は、疎水性であり、かつ液状のものである。
疎水性とは、水に対して溶解しない又は親水性を有さないことを意味する。例えば、疎水性は、水に対する溶解性として、3%以下、特に、1%以下の溶解性を示すものを言う。
エポキシ樹脂は、常温(20〜25℃)で液状のエポキシ樹脂である。常温において液状であるエポキシ樹脂を使用するのは、粉体中に(固形エポキシ樹脂と比べて)比較的均一に分散させることが容易であり、後述する水溶性アミン樹脂硬化剤との反応性も良好となる。
本発明で使用される疎水性液状エポキシ樹脂は、エポキシ当量120〜300g/eq、好ましくは、150〜210g/eqであることが適当である。エポキシ当量が、120g/eq未満であると、物理的強度が低下するため、好ましくない。一方、エポキシ当量が、300g/eqを越えるような過大な値となると、一般に5℃程度の低温で液状を維持出来なくなるため樹脂が結晶化、析出することとなり、好ましくない。
【0010】
このような疎水性液状エポキシ樹脂としては、以下で説明する水溶性アミン樹脂硬化剤と常温で反応して、硬化するものであれば、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂は、分子中にグリシジル基を1個以上、好ましくは1.2個以上含有するものが好適である。
本発明で使用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルモノグリシジルエステル、アルキルジグリシジルエーテル、アルキルジグリシジルエステル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、アルキルモノグリシジルエーテル等におけるアルキル基は、例えば、炭素数3〜15のアルキル基が好適である。このようなアルキル基としては、例えば、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基が好適に挙げられる。
このようなエポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、それらの混合物として使用してもよい。この場合、全体としてのエポキシ樹脂の混合物のエポキシ当量が、上記の範囲に入っていればよい。
【0011】
本発明で使用される粉体セメント組成物は、セメントと、骨材と、疎水性液状エポキシ樹脂とをドライブレンドして得られる。
ここで、「ドライブレンド」とは、粉体の吸油量以下で液状エポキシ樹脂を混合することを意味する。CPVC(臨界顔料体積濃度:critical pigment volume concentration)を超えて粉体原料(セメント及び骨材)を使用した状況であり、疎水性液状エポキシ樹脂が粉体中に取り込まれ、元々液状であるエポキシ樹脂が混合された後にその流動性を失い、外観上、粉体状又は湿潤した粉体状として確認出来る状態にて混合される方法を指す。
CPVCを考慮すると、疎水性液状エポキシ樹脂は、セメント及び骨材の量に対して、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは、1〜15質量%で配合することが好適である。
【0012】
疎水性液状エポキシ樹脂を使用しても、得られるセメント組成物は、粉体として存在できるのは、CPVCを超えているためである。
【0013】
本発明の粉体セメント組成物には、必要に応じて、無機粉末や、保水剤、流動化剤、凝結調整剤などを配合することができる。
無機粉末は、ポリマーセメントモルタルの施工時のダレの防止や、コテ仕上げ性を向上させるため配合される。
このような無機粉末としては、例えば、高炉スラグ粉末や、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、分級フライアッシュ、シリカフューム、炭酸カルシウム粉末、石粉、珪藻土、カオリン、ベントナイト、セピオライト等が好適に挙げられる。これらの無機粉末は、単独で使用してもよく、それらの混合物として使用してもよい。
無機粉末は、2材型ポリマーセメントモルタルの量に基づいて、例えば、2〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、2〜7質量%である。
【0014】
流動化剤は、水量を増加することなく、ポリマーセメントモルタルの流動性を向上し、施工性を良好にするために配合される。
このような流動化剤としては、例えば、高性能減水剤や、高性能AE減水剤、減水剤等が使用できる。特に流動化剤としては、一般に市販されているナフタレンスルホン酸塩系や、メラミンスルホン酸塩系、ポリカルボン酸塩系、リグニンスルホン酸塩系等の流動化剤が好適に挙げられる。
流動化剤は、2材型ポリマーセメントモルタルの量に基づいて、例えば、0.01〜1質量%、好ましくは、0.05〜0.3質量%で配合することが好適である。
【0015】
保水剤は、ポリマーセメントモルタルの保水性を向上し、モルタル中の水分の下地コンクリートへの吸水や、モルタルからの水分の蒸発を防止して、施工性を良好にし、施工直後のモルタルの膨れや、ひび割れ、ドライアウトによる下地コンクリート、又は上塗塗材との付着の低下を防止するために配合される。
このような保水剤としては、例えば、メチルセルロースや、メチルエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、アルギン酸塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、変性ポリサッカライド等が好適に挙げられる。
保水剤は、2材型ポリマーセメントモルタルの量に基づいて、例えば、0.001〜0.3質量%、好ましくは、0.003〜0.1質量%で配合することが好適である。
【0016】
凝結調整剤は、アルミナセメントを混合する場合に、ポリマーセメントモルタルの可使時間を制御する目的で配合するものである。
このような凝結調整剤としては、例えば、クエン酸や、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸や、これらのアルカリ金属塩等であるオキシカルボン酸類が好適に挙げられる。
凝結調整剤は、2材型ポリマーセメントモルタルの量に基づいて、例えば、0.001〜0.3質量%、好ましくは、0.005〜0.1質量%で配合することが好適である。
本発明で使用される粉体セメント組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、骨材に疎水性液状エポキシ樹脂を混合し、次いでセメント、必要に応じて、無機粉末等を混合する練混ぜ順序が、大きな塊の発生が少なくなるので好ましい。
【0017】
更に、本発明の2材型ポリマーセメントモルタルには、消泡剤を配合することができる。
消泡剤は、ポリマーセメントモルタルの練混ぜ時の連行空気量を減少し、モルタル硬化体の圧縮や、曲げ、付着強度等を高めるために配合される。
このような消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤や、シリコンオイル系、鉱物油系消泡剤が好適に挙げられる。
消泡剤は、2材型ポリマーセメントモルタルの量に基づいて、例えば、0.01〜1.0質量%、好ましくは、0.04〜0.2質量%で配合することが好適である。
【0018】
本発明で使用される水溶性アミン樹脂硬化剤は、水溶性で、かつポリマーセメントモルタル調合時に疎水性液状エポキシ樹脂を取り込む。即ち、粉体セメント組成物に、水及び水溶性アミン樹脂硬化剤を混合すると、得られるポリマーセメント組成物は、CPVC以下となり、流動性を示すようになる。その際、疎水性エポキシ樹脂は、水とはなじまないため分離し、疎水性物質同士が集まろうとする。水溶性アミン樹脂硬化剤がこの時に混在すると、疎水性エポキシ樹脂を取り巻き、粒子を形成(エマルション化)する。
水溶性アミン樹脂硬化剤は、樹脂成分が多く、希釈水が少ない状況(加熱残分で60%以上)において常温で透明な性状を示す。水溶性アミン樹脂硬化剤は、例えば、特開平6−298910号公報に示される水溶性アミン樹脂硬化剤が好適に挙げられる。
【0019】
水溶性アミン樹脂硬化剤としては、例えば、具体的な商品名として現在上市されているフジキュアーFXH−927(富士化成工業(株)製)や、フジキュアーFXI−919(富士化成工業(株)製)、アデカハードナーEH−4163X(旭電化(株)製)、ベッコポックスEH613W/80WA(サーフェース・スペシャリティジャパン社製)、ベッコポックスEH623W/80WA(サーフェース・スペシャリティージャパン社製)等が好適に挙げられる。
水溶性アミン樹脂は、単独で使用してもよく、それらの混合物として使用してもよい。
水溶性アミン樹脂は、疎水性液状エポキシ樹脂のエポキシ当量に対し、当量比で、例えば、0.50〜1.50、好ましくは、0.85〜1.30で使用することが好適である。
本発明の2材型ポリマーセメントモルタルには、必要に応じて、繊維や、顔料等を併用することができる。
【0020】
本発明の2材型ポリマーセメントモルタルが適用される被塗物は、例えば、コンクリート土木構造物(例えば、RC(Reinforced Concrete):鉄筋コンクリートや、PC(Prestressed Concrete):プレストレスト・コンクリート)で作製された道路又は鉄道等の橋梁における脚部や、桁部、梁部、床板、高欄部、アバット、資材等を保管することを目的としたタンク、上水槽、下水槽、側溝、擁壁、コンクリート建築構造物(ビル、家屋)、無機建材で作製されたパネル類(RC、PC、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete:高温高圧多湿養生軽量コンクリート)、石膏ボード、スレート、GRC(Glass fiber Reinforced Cement:ガラス繊維補強セメント)、珪酸カルシウム、モルタル)を例示することができる。また、本発明の2材型ポリマーセメントモルタルは、これらの補修、補強等に幅広く用いることが出来る。
【0021】
本発明の2材型ポリマーセメントモルタルは、従来のコテや、ヘラのみを用いる方法よりも作業効率が高いローラーにて被塗物に塗装することができる。
使用されるローラーは、中毛ローラーや、砂骨ローラー、マスチックローラー等、一般に市販されているものを好適に利用出来る。コテや、ヘラは市販されている金属製のものが作業性や、仕上がり外観が良好であり好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準で示す。
【0023】
製造例1(粉体セメント組成物Aの製造)
5Lの混合機に、珪砂7号(0.3mm篩い上残留分0質量%、0.15mm篩い上残留分10質量%)37.53部を投入し、室温にて10分間攪拌した。次にエピコート828(ジャパン・エポキシレジン社製、疎水性液状エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq)を2部、カージュラE10P(ジャパン・エポキシレジン社製、疎水性液状エポキシ樹脂、エポキシ当量245g/eq)を2部順次滴下、投入し、投入完了後、10分間攪拌を行った。その後、市販普通ポルトランドセメントを30部、市販アルミナセメントを4部、市販フライアッシュを2部、市販高炉スラグ微粉末を2部、市販セピオライト粉末を0.3部、市販ポリサッカライドを0.01部、最後に粉体状の市販メラミンスルホン酸塩系高性能減水剤0.15部と酒石酸(凝結調整剤)0.01部を投入した後、更に10分間攪拌を行い粉体セメント組成物Aを調製した。
【0024】
製造例2(水溶性アミン樹脂硬化剤Bの製造)
1Lの高速攪拌機に水道水15.4部を仕込み、消泡剤(アデカネートB−940、鉱物油系)0.1部を投入した。これにフジキュアーFXI−919(富士化成工業(株)製)4.5部を徐々に投入し、投入完了後20分間攪拌し、硬化剤Bを調製した。
【0025】
実施例1〜3及び比較例1〜3
以下の表1に、実施例1〜3及び比較例1〜3の配合部数を示す。各配合において製造例1を参考に実施例1の粉体セメント組成物Aと同様、実施例2、3及び比較例1〜3の粉体セメント組成物Aを調製した。この中で比較例1の粉体セメント組成物Aに示す乳化剤(日本乳化剤(株)製)0.5部のみは、それと組み合わせるエポキシ樹脂エピコート807(ジャパン・エポキシレジン社製)3.3部、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル1部と共に事前混合し、混合物を滴下に用いた。また、製造例2を参考に実施例1の硬化剤Bと同様、実施例2、3及び比較例1〜3の硬化剤Bを調製した。なお、表1の数値は質量部を示す。



【0026】
表1















【0027】
表1(続き)

注)
1.普通ポルトランドセメント (比表面積3300cm2/g)
2.アルミナセメント (比表面積3000cm2/g)
3.フライアッシュ (比表面積3500cm2/g)
4.高炉スラグ微粉末 (比表面積8000cm2/g)
5.セピオライト粉末 (比表面積250m2/g)
6.アデカレジンEP−4400 エポキシ当量250g/eq
(疎水性で、常温で液状) 水への溶解性 0 g
【0028】
7.エピコート828 エポキシ当量190g/eq
(疎水性で、常温で液状) 水への溶解性 0 g
8.エピコート807 エポキシ当量168g/eq
(疎水性で、常温で液状) 水への溶解性 0 g
9.カージュラE10P エポキシ当量245g/eq
(疎水性で、常温で液状) 水への溶解性 0 g
10.1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル エポキシ当量155g/eq
(疎水性で、常温で液状) 水への溶解性 0 g
11.エピコート1001 エポキシ当量475g/eq
(疎水性で、常温で固形) 水への溶解性 0 g
12.フジキュアーFXH−927 水溶性
13.フジキュアーFXI−919 水溶性
14.トーマイドTHX−674B 水溶性
※上記エポキシ当量は各メーカーカタログに記載の範囲内で特性値算出に用いた代表値を記載。
【0029】
供試体の作製及び養生方法
【0030】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた粉体セメント組成物と、硬化剤とを、表1に示す所定量で混合し、ハンドミキサーにて全体が均一になるよう2分間混合し、得られた2材型ポリマーセメントモルタルを、以下で示すコンクリート平板の供試体に、ローラーにてコテを使用して塗布し、所定の養生の後、各試験に供した。
試験片作製時の素地調整は全てディスクサンダー(#20研磨ディスク)を用い、表層の脆弱層、異物を取り除いた状態とした。
【0031】
試験及び評価方法
各試験方法及び評価方法は、以下のように行った。
塗面外観(標準)
寸法60×300×300mmのコンクリート平板(W/C(水/セメント比)=60%)を用い、施工温度23℃、湿度50%RH、無風状態の試験室において、レジガードEPプライマー(大日本塗料(株)製)を塗布量100g/m2となるように塗布し、2時間後、塗膜厚1mmとなるよう、実施例及び比較例で得られた2材型ポリマーセメントモルタルを塗布した。養生は、本試験室内にて7日間行い、試験に供した。試験は目視にて行い、以下の基準により判定を行った。
【0032】
評価基準
○:塗膜に異常がない
×:塗膜に割れ、剥がれの異常がある
【0033】
塗面外観(強風)
寸法60×300×300mmのコンクリート平板(W/C=60%)を用い、施工温度23℃、湿度50%RHの試験室において風速4m/秒の横風を供試体に当てながらレジガードEPプライマー(大日本塗料(株)製)を塗布量100g/m2となるように塗布し、2時間後、塗膜厚1mmとなるよう実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタルを塗布した。横風はポリマーセメントモルタルの表面が十分乾燥するまで合計6時間継続した。養生は本試験室内にて7日間行い、試験に供した。試験は目視にて行い、以下の基準により判定を行った。
【0034】
評価基準
○:塗膜に異常がない
×:塗膜に割れ、剥がれの異常がある
【0035】
付着性(水系上塗塗布)
寸法60×300×300mmのコンクリート平板(W/C=50、60、80%)を用い、施工温度5℃、又は23℃、湿度50%RHの試験室において無風状態でレジガードEPプライマー(大日本塗料(株)製)を塗布量100g/m2となるように塗布し、2時間後、塗膜厚1mmとなるように実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタルを塗布した。翌日、水系エポキシ樹脂塗料、レジガードMH中塗(大日本塗料(株)製)を塗布量200g/m2となるように塗布した。養生は本試験室内各温度環境にて7日間行い、試験に供した。試験は建研式付着力試験機を用いて行い、以下の基準により判定を行った。
評価基準
○:1.5N/mm2以上
×:1.5N/mm2未満
【0036】
付着性(溶剤系上塗塗布)
寸法60×300×300mmのコンクリート平板(W/C=50、60、80%)を用い、施工温度5℃又は23℃、湿度50%RHの試験室において無風状態でレジガードEPプライマー(大日本塗料(株)製)を塗布量100g/m2となるように塗布し、2時間後、塗膜厚1mmとなるよう実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタル材料を塗布した。翌日、溶剤型エポキシ樹脂塗料、レジガード#200EH中塗(大日本塗料(株)製)を塗布量350g/m2となるように塗布した。養生は本試験室内各温度環境にて7日間行い、試験に供した。試験は建研式付着力試験機を用いて行い、以下の基準により判定を行った。
評価基準
○:1.5N/mm2以上
×:1.5N/mm2未満
【0037】
耐水性
寸法20×70×70mmのモルタル平板(W/C=60%)を用い、施工温度23℃、湿度50%RHの試験室において無風状態でレジガードEPプライマー(大日本塗料(株)製)を塗布量100g/m2となるように塗布し、2時間後、塗膜厚1mmとなるよう実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタルを塗布した。翌日、レジガード#200EH中塗(大日本塗料(株)製)を塗布量350g/m2となるように塗布した。養生は本試験室内にて7日間行い、試験に供した。試験は23℃環境下で30日間水道水に全浸漬し、30日後の塗膜外観を以下の基準により判定した。
評価基準
○:異常がない
×:膨れを生じている
【0038】
剥落防止性能
寸法60×400×600mmの上ぶた式U形側溝(ふた)の1種呼び名300を用い、試験室温度23℃、湿度50%RHにおいて無風状態の条件以外はJHS424:2004に定める剥落防止の押抜試験方法に定める供試体作製方法に基づき供試体を作製した。
上ぶた式U形側溝(ふた)の1種呼び名300に、レジガードEPプライマー(大日本塗料(株)製)を塗布量100g/m2となるように塗布し、2時間後、塗膜厚0.5mm厚となるよう実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタルを塗布し、塗布直後にビニロン3軸メッシュシートTSS−1810−Y(ユニチカ(株)製)を貼付し、更に0.5mm厚となるよう実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタルを塗り重ねた。翌日、レジガード#200EH中塗(大日本塗料(株)製)を塗布量350g/m2となるように塗布した。養生は本試験室内にて7日間行い、試験に供した。試験はJHS424:2004を準拠して行い、以下の基準により判定した。
評価基準
○:押抜荷重1.5kN以上
×:押抜荷重1.5kN未満
【0039】
上塗発泡性
上記剥落防止性能試験で作製した剥落防止性能試験前の供試体を用い、その上塗塗膜状態を目視にて以下の基準により判定した。
評価基準
○:上塗塗面に発泡を認めない
×:上塗塗面に発泡を認める
プライマーレス性
寸法20×70×70mmのモルタル平板(W/C=60、80%)を用い、施工温度5℃の試験室において無風状態で塗膜厚1mmとなるよう各ポリマーセメントモルタル材料を直接塗布した。翌日、レジガード#200EH中塗(大日本塗料(株)製)を塗布量350g/m2となるように塗布した。養生は本試験室内にて7日間行い、試験に供した。試験は温度23℃、湿度50%RHの試験室で建研式付着力試験を行い、以下の基準により判定した。
評価基準
○:プライマー無しで付着力1.5N/mm2以上
×:プライマー無しで付着力1.5N/mm2未満
【0040】
厚塗り性
寸法60×300×300mmのコンクリート平板(W/C=80%)を用い、施工温度5℃の試験室において風速4m/秒の横風を供試体に当てながら、塗膜厚5mmとなるよう実施例及び比較例で得られたポリマーセメントモルタル材料を塗布した。養生は本試験室内にて7日間行い、試験に供した。試験は目視にて行い、以下の基準により判定を行った。
評価基準
○:5mmの厚みで塗布して割れ、剥がれを生じない
×:5mmの厚みで塗布して割れ、剥がれを生じる
【0041】
現場混合性
寸法100×900×1800mmの鉄筋コンクリート平板(W/C=60%)に施工する必要量のポリマーセメントモルタルを調合する際の状態を、以下の基準により判定した。
評価基準
○:計量、調合が2種以下の材料であり、現場混合が容易である
×:計量、調合が3種以上の材料であり、現場混合が煩雑である
【0042】
現場作業性
寸法100×900×1800mmの鉄筋コンクリート平板(W/C=60%)に施工する必要量のポリマーセメントモルタルを調合し、供試体片面に施工する時間と作業の容易さを以下の基準により判定した。
評価基準
○:ローラーとコテで作業が可能であり、作業時間が5分未満である
×:コテ、ヘラのみで作業が可能であり、作業時間が5分以上である
【0043】
以下に、評価結果を表2に示す。















【0044】
表2

【0045】
表2より、比較例1において、更に乳化剤を用いた場合には、水/セメント比の高い悪素地への付着性及び耐水性が不良であった。また、比較例2の疎水性エポキシ樹脂のエポキシ当量が、300g/eqよりも高い場合は、水/セメント比の高い悪素地での塗装や、プライマーを省略する場合には、問題があり、比較例3のように、エポキシ樹脂を固形で使用する場合には、付着性を始めとする諸物性が不良となり、問題が生じることが確認された。
一方、実施例1〜3は、何れもこれらの問題を生じることなく、良好な性能とそのバランスを有している。
【0046】
本発明により、様々な環境における、様々な基材に対し、安定した付着性を示し、厚付けや強風による塗膜の割れを生じることなく、また、モルタルが2材型であることによる現場での混合性及び作業性が良好であり、そのため、作業時間の短縮も可能である。
また、本発明の2材型ポリマーセメントモルタルを使用することにより、被塗物の表面に、予めプライマーを塗装しなくても、剥落防止用の接着材としての性能を有するなど多用途に用いることが出来、更に、上塗塗料が、水系であっても、溶剤系でも安定して、塗装することができるため、非常に幅広く、様々な用途に利用出来、工程短縮をも実現することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)セメント、骨材、及びエポキシ当量が120〜300g/eqである疎水性液状エポキシ樹脂をドライブレンドしてなる乳化剤を含有しない粉体セメント組成物と、
(2)水溶性アミン樹脂硬化剤と、
からなることを特徴とする2材型ポリマーセメントモルタル。
【請求項2】
前記粉体セメント組成物が、更に、無機粉末、保水剤、流動化剤及び凝結調整剤からなる群から選択される添加剤を含有する、請求項1に記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項3】
前記無機粉末が、2材型ポリマーセメントモルタルの2〜10質量%で配合されている、請求項2に記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項4】
前記保水剤が、2材型ポリマーセメントモルタルの0.001〜0.3質量%で配合されている、請求項2又は3に記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項5】
前記流動化剤が、2材型ポリマーセメントモルタルの0.01〜1質量%で配合されている、請求項2〜4のいずれかに記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項6】
前記骨材の篩い(格子径)残留分量が、0.3mm篩い上残留分で30質量%以下であり、且つ、0.15mm篩い上残留分で70質量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項7】
前記セメントが、ポルトランドセメントとアルミナセメントを含有し、ポルトランドセメント100質量部に対してアルミナセメントの含有量が、5〜30質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項8】
更に、消泡剤が配合されている、請求項1〜7のいずれかに記載のポリマーセメントモルタル。
【請求項9】
前記疎水性液状エポキシ樹脂と、前記水溶性アミン樹脂との量の和が、2材型ポリマーセメントモルタルの3〜15質量%であり、前記水溶性アミン樹脂の活性水素当量/前記疎水性液状エポキシ樹脂のエポキシ当量の比が、0.50〜1.50である、請求項2〜8のいずれかに記載のポリマーセメントモルタル。

【公開番号】特開2008−63189(P2008−63189A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242967(P2006−242967)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】