説明

塗装木質基材の製造方法

【課題】 耐クラック性能と硬度を両立させた塗装木質基材の製造方法を提供する
【解決手段】 合板木質基材に、光ラジカル反応性塗料組成物を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを有する塗装木質基材の製造方法であって、(1)該合板木質基材の単板厚が0.03mm〜2.0mmであり、(2)該塗料組成物が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する樹脂組成物(A)と、光ラジカル重合開始剤(B)を含有し、塗工時の塗料温度が60〜150℃、塗料粘度が100〜10,000mPa・s、塗布量が10〜200g/mであり、(3)塗工工程が、ナチュラルロールコーターで塗工する工程と、リバースロールコーターで塗工する工程を有する塗装木質基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材に適用可能な光ラジカル反応性塗料組成物を単板厚0.03mm〜2.0mmの合板木質基材に塗装した塗装木質基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホットカーペットや床暖房設備が発達し、フローリングのような木質床材が幅広い温度差にさらされる機会が増えている。近年意匠性の高い木材は入手が困難な上、価格が高い。そのため意匠性の高い木材を薄くスライスしたものを貼り付けた合板が床材に使用されているが、このような合板はその製法上表面単板が熱による収縮に弱く、激しい温度差にさらされると、耐え切れずに基材そのものにクラック(ひび割れ)を生じてしまうことがある。
【0003】
近年、床材の分野においては溶剤をほとんど含有しない紫外線硬化型塗料が多く使用されている。このタイプの塗料は、現行の設備で塗工する際に適正な塗装粘度にするためには、低分子の活性エネルギー線重合性の希釈モノマーを加えたり、有機溶剤等で希釈する必要があるが、希釈モノマーで希釈すると塗膜物性が十分な強度を示さず、溶剤での希釈はシックハウス症候群をなどの観点から実質的に採用できない。
【0004】
このような紫外線硬化型塗料において、木質基材の膨張、収縮を防ぐ、乃至は、膨張、収縮に耐えるだけの柔軟性を持たすべく、柔軟な樹脂成分を含有させることで塗膜を強化することが考慮されているものの、現段階では、塗料のみで、木材の膨張、収縮を完全に防ぐことは極めて困難である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
近年、耐クラック性を改良させる目的で高粘度の湿気硬化塗料を高温で塗装する、いわゆるホットメルト方式の塗装方法で塗装するための塗料組成物や、樹脂組成物は提案されているが、塗料自体が湿気硬化が必要なため連続塗装にむかない等、ライン塗装により有効な塗装方法の提案はなされていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−007753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような従来技術の抱える課題を解決するものであり、耐クラック性能と硬度を両立させた塗装木質基材を得るための光ラジカル反応性塗料を用いた塗装木質基材、特に木製床材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、紫外線硬化型塗料のホットメルト方式での塗装に於いて、ナチュラルリバースコーターを採用することにより、塗料自身の性能を最大限活かして塗装することで、割れない程度の柔軟性と床材に求められる硬度を持った塗膜が低コストで実現できることを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は第一に、合板木質基材に、光ラジカル反応性塗料組成物を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを有する塗装木質基材の製造方法であって、
(1)該合板木質基材の単板厚が0.03mm〜2.0mmであり、(2)該光ラジカル反応性塗料組成物が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する樹脂組成物(A)と、光ラジカル重合開始剤(B)を含有し、かつ反応性希釈剤を実質的に含有しない光ラジカル反応性塗料組成物であり、塗工時の塗料温度が60〜150℃、塗料粘度が100〜10,000mPa・s、塗布量が10〜200g/mであり、(3)塗工工程が、ナチュラルロールコーターで塗工する第一の塗工工程と、リバースロールコーターで塗工する第二の塗工工程とを有することを特徴とする塗装木質基材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、耐クラック性能と硬度を両立させた、木肌感を有する塗装木質基材を得るための製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、光ラジカル反応性塗料組成物を合板の木製製品に塗装した塗装木質基材の製造方法に関する。
【0012】
光ラジカル反応性塗料組成物の塗工方法としてホットメルト方式のナチュラルリバース塗りを採用することにより、適正な塗装温度での塗工が可能となり、耐クラック性の弱い木材の導管部にも塗工し、より良好な耐クラック性を有する木質基材を得ることができる。また、良好な目止め性を得ることが可能となり平滑な塗膜面を得ることができる。さらに、洗浄作業時に溶剤使用が不必要になり、塗装時のガス発生、火傷等の塗装作業性の面での安全性の向上も図れる。
【0013】
以下、本発明の構成を、オリゴマー成分、光ラジカル重合開始剤を有する塗料組成物、塗工方式、紫外線照射条件等について詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いる光ラジカル反応性塗料組成物は、1分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基を1個以上含有する樹脂組成物(A)と、光ラジカル重合開始剤(B)を含有し、かつ反応性希釈剤(C)を実質的に含有しない塗料組成物であり、紫外線により高分子化し得るものである。
【0015】
前記した光ラジカル反応性塗料組成物は、不揮発分中に従来公知の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を任意に用いることができるが、分子量100〜300のいわゆる反応性希釈剤(モノマー)成分を、実質的に含有しないことが好ましい。
【0016】
また、前記した光ラジカル重合開始剤(B)は、紫外線照射によりラジカルを生成する化合物であり、例えば水素引き抜き型重合開始剤、光開裂型などが挙げられる。水素引き抜き型重合開始剤としては、従来公知のベンゾフェノン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0017】
光開裂型のラジカル重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルケトン等が挙げられる。これらの水素引き抜き型、光開裂型重合開始剤のうち1種または2種以上のものを組み合わせて使用することができる。
【0018】
紫外線硬化型重合性オリゴマー成分と光重合開始剤を含有する塗料組成物中の重合開始剤の配合割合は、オリゴマー成分100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。
【0019】
また、これらの重合開始剤に、公知慣用の光増感剤をも併用することができる。併用する場合は、オリゴマー成分100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましい。
【0020】
本発明に用いる光ラジカル反応性塗料組成物には、さらに必要に応じて本発明の目的を逸脱しない範囲内で、各種の機能を付与するため着色剤、体質顔料、滑剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、カップリング剤、有機溶剤及びキレート剤などの添加剤を添加することができる。
【0021】
本発明に用いる光ラジカル反応性塗料組成物は、塗料温度50℃に於ける粘度が10,000mPa・s以上であり、80℃に於ける粘度が100〜100,000mPa・sであることを特徴とするが、50〜150℃における粘度が100〜10,000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは、80℃における粘度が500〜5000mPa・sである。
【0022】
本発明の塗装木質基材の製造方法は、塗工工程に於いて、第一の塗工工程に、ナチュラルロールコーターを用い、第二の塗工工程にリバースロールコーターを用いることを主要な特徴としている。基材上に、第一の塗工工程として、光ラジカル反応性塗料組成物を所定量ナチュラルロールコーター(I)で塗工した後、第二の塗工工程として、リバースロールコーター(II)で、実質、前記塗工塗料の一部を除去することを特徴としている。
【0023】
ナチュラルロールコーター(I)と、リバースロールコーター(II)が連続して配置された、いわゆるナチュラル・リバースロールコーターが好ましく用いられる。
【0024】
上記ナチュラルロールコーター(I)は、一般に、塗工ロールが直径100〜400mmのゴム製、または金属製でありドクターロールが50〜300mm金属製である公知慣用の塗工装置である。塗料タンクには塗料温度を50〜100℃に加温する設備を有することが望ましい。例えば温水加温設備や蒸気加温設備、又はオイル加温設備、電熱線等、如何なる設備を用いても良い。また、タンク内の塗料温度が均一になるように攪拌機を備えていることがより望ましい。
【0025】
上記リバースロールコーター(II)は、一般に、塗工ロールが直径100〜400mm金属製であり、駆動部分は公知慣用の塗工装置である。本発明で用いるリバースロールコーターは芯部に加温設備を有することが望ましく、ロール面において塗料温度が50℃以上に保たれることが望ましい。また、塗料タンクには塗料温度を50〜100℃に加温する設備を有することが望ましい。例えば温水加温設備や蒸気加温設備、又はオイル加温設備、電熱線等、如何なる設備を用いても良い。また、タンク内の塗料温度が均一になるように攪拌機を備えていることがより望ましい。
【0026】
ナチュラルロールコーター(I)での塗布量は、10〜300g/mが好ましく、より好ましくは10〜200g/mである。また、リバースロールコーター(II)での除去量は、1〜200g/mが好ましく、より好ましくは、1〜100g/mである。更に好ましくは10〜50g/mである。
【0027】
本発明の塗装木質基材の製造方法は、第一の塗工工程であるナチュラルロールコーターで塗工した塗布量と、第二の塗工工程であるリバースロールコーターで塗工した塗布量(除去量)の合計の塗布量を、10〜200g/mとすることを特徴としている。好ましくは30〜100g/mである。
【0028】
前記した第一の塗工工程であるナチュラルロールコーター(I)で塗工後、基材上の前記した光ラジカル反応性塗料組成物の温度が40℃以上の状態で、前記第二の塗工工程であるリバースロールコーター(II)で塗工を行うことが好ましい。塗料温度40℃以下では塗料粘度が上がり、塗料を適切な量を除去することが困難になるためである。
【0029】
本発明において、基材上の前記した光ラジカル反応性塗料組成物の温度が40℃以上の状態で、活性エネルギー線を照射することが好ましい。塗料温度40℃以下では塗料粘度が上がり、対クラック性能などの性能を得るための分子の架橋密度を得ることが困難になるためである。
【0030】
本発明に用いる木質基材としては、単板厚0.03mm〜2.0mmの表面単板を有する、ラワン等の南洋材を貼り合わせただけの普通合板が用いられる。このような単板直下に強化紙、MDFなどの高価な材料を用いなくても床材に適用できる耐クラック性、硬度を有する床材を得ることが可能である。
【0031】
本発明の塗装木質基材の製造方法に於いて、光ラジカル反応性塗料組成物の硬化塗膜層は、木質基材に対する下塗り層であるが、木質基材に直接塗工するシーラー層、着色層等を介していても良い。下塗り層とは、主に基材と塗膜を密着させる目的の塗膜層であり、着色、乾燥工程の直後、あるいは直接基材に塗工する層である。着色、乾燥工程の直後は、乾燥工程により基材温度が向上していることから本発明の光ラジカル反応性塗料組成物を塗工する工程として特に好ましい。
【0032】
また、上記の下塗り層としての構成の上に中塗り層、上塗り層があることがより好ましい。光ラジカル反応性塗料組成物により得られる下塗り硬化塗膜の上に、上記の中塗り層、上塗り層を得ることにより、木質製品としてよりよい表面性と艶が得ることが容易になる。
【0033】
基材への着色は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法でかまわない。例えばスポンジリバースコーター、ナチュラルコーターのウェット・オン・ウェット方式で塗工することにより塗工される。また、着色前に事前にシーラー(捨て塗り)処理や、素地研磨処理されていてもかまわない。また着色後は着色剤に使用されている溶剤や水が十分乾燥し得るだけの乾燥工程があることが特に好ましい。また、着色に用いられる塗料としては、従来公知の油性、水性いずれのものを用いても構わないが、VOCの観点から、水性の顔料分散体を用いることが好ましい。
【0034】
下塗層の塗工工程とトップコート層の塗工工程の間には別の工程があっても構わない。例えば溝部を塗装するためにスポンジリバースコーターを用いたり、ナチュラルコーターを用いても構わない。またこれらの工程で用いられる塗料としては、従来公知のものが使用できる。
【0035】
トップコートの塗装も従来公知の方法で構わず、ナチュラルコーターや、フローコーター、スプレー等を用いることができる。これらの工程で用いられる塗料は従来公知のものを用いることができるが、VOC問題や、既存設備を利用できることから活性エネルギー線硬化型の塗料を用いることが好ましい。
【0036】
また、本発明の塗装木質基材の製造方法に於いて、塗装時の基材温度は0〜100℃であることが好ましいが、40〜90℃であることがより好ましい。40℃以下では塗装した光ラジカル反応性塗料組成物の塗装後の表面のレベリング性が得られにくく、木質基材に90℃を超える温度がかかるとケバの発生など木質基材そのものが劣化する恐れがある。
【0037】
本発明の、塗装木質基材の製造方法において、照射工程に使用する活性エネルギー線とは紫外線、電子線、γ線の如き、電離性放射線や電磁波などであるが、一般の照射工程における活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。紫外線を照射する場合、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた公知の紫外線照射装置を使用することができる。
【実施例】
【0038】
(下塗り塗料の調製)
1分子中にアクリロイル基またはメタクリロイル基を1個以上含有する樹脂組成物(A)として、以下のオリゴマーを用いた。
オリゴマー(a):ビスフェノールA型エポキシアクリレートであり、平均分子量は430である。
オリゴマー(b):水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び3官能型ポリプロピレングリコール及びハイドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレートであり、平均分子量は1800である。
上記オリゴマー成分を100℃で加熱、光ラジカル重合開始剤(ダロキュア1173:チバスペシャリティーケミカルズ社製)を添加し、攪拌、混合することにより、表1に記載の各下塗り塗料、塗料(a)、塗料(b)を調製した。
【0039】
実施例、比較例の塗装木質基材を得るために、下記の塗工機を用いた。
(1)ナチュラル・リバースロールコーター
第一の塗工工程に用いるナチュラルロールコーターと第二の塗工工程に用いるリバースロールコーターを備えた2連塗装機である。ナチュラルロールコーター(I)のコーティングロールは、直径220mm、長さ460mmで50度のブチルゴムを15mmの厚さで巻き、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのドクターロールは、直径140mm、長さ460mmのSUS製で硬質クロームメッキを施し、10m/minの速度でナチュラルロールに対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのバックアップロールは直径220mm、長さ360mmのスチール製で、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。
リバースロールコーター(II)のコーティングロールは、直径220mm、長さ460mmのSUS製で硬質クロームメッキを施し、スチール製のブレードを付け25m/minの速度で基材搬送に対し逆回転させる。同リバースロールコーターのバックアップロールは、直径220mm、長さ360mmで、80度のシリコンゴムを15mmの厚さで巻き、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。
【0040】
(2)ナチュラル・ナチュラルロールコーター(A)
同一のナチュラルロールコーターの2連塗装機である。コーティングロールは、直径220mm、長さ460mmで50度のブチルゴムを15mmの厚さで巻き、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのドクターロールは、直径140mm、長さ460mmのSUS製で硬質クロームメッキを施し、4m/minの速度でナチュラルロールコーターに対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのバックアップロールは、直径220mm、長さ360mmのスチール製で、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。
【0041】
(3)ナチュラル・ナチュラルロールコーター(B)
基材搬送入り口側と出口側とで異なる材質のナチュラルロールを有するナチュラルロールコーターの2連塗装機である。基材搬送入り口側のコーティングロールは、直径220mm、長さ460mmで50度のブチルゴムを15mmの厚さで巻き、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのドクターロールは、直径140mm、長さ460mmのSUS製で硬質クロームメッキを施し、8m/minの速度でナチュラルロールコーターに対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのバックアップロールは、直径220mm、長さ360mmのスチール製で、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。基材搬送出口側のコーティングロールは、直径220mm、長さ460mmのSUS製で硬質クロームメッキを施し、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのドクターロールは、直径140mm、長さ460mmで80度のシリコンゴムを10mmの厚さで巻き、1m/minの速度でナチュラルロールに対し順回転させる。同ナチュラルロールコーターのバックアップロールは、直径220mm、長さ360mmで80度のシリコンゴムを15mmの厚さで巻き、50m/minの速度で基材搬送に対し順回転させる。
【0042】
下記表1は、実施例1,2に対しては、第一塗工工程を、前記ナチュラル・リバースロールコーターのナチュラルロールコーターで、第二塗工工程を、前記ナチュラル・リバースロールコーターのリバースロールコーターで塗工したことを意味する。同様に、比較例1,2に対しては、第一塗工工程、第二塗工工程を前記ナチュラル・ナチュラルロールコーター(A)で、比較例3,4に対しては、第一塗工工程、第二塗工工程を前記ナチュラル・ナチュラルロールコーター(B)で塗工したことを意味する。
【0043】
【表1】

【0044】
これらの下塗り塗料(a)、(b)を、各塗装機及び塗装条件にて、生地研磨とシーラー処理をした合板(オーク突き板貼りラワン合板、単板厚0.3mm)上に、基材温60℃、塗料温度80℃に於いて塗布量が80g/m前後になるようにそれぞれ塗工した。それぞれの紫外線照射は、40℃の条件で、100mJ/cmの紫外線照射量で硬化させた。得られた硬化塗膜に対し、#240の耐水研磨紙で研磨を行い、その後、それぞれ下記の上塗り塗料を塗工した。
【0045】
(上塗り塗料の調製)
アクリレートオリゴマー成分、ユニディックV−5508(大日本インキ化学工業:エポキシアクリレート)を50部、2官能アクリレートモノマー、トリメチロールプロパンジアクリレート(東亞合成:アロニックスM−220)を20部、光重合開始剤、イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ)を5部、ベンゾフェノンを1部、艶消し剤、ミネックス#7(白石カルシウム)を15部、サイロイドED−50(グレースジャパン)を3部、ミクロンホワイト5000A(林化成)を15部配合し、攪拌、混合し、上塗り塗料を得た。
【0046】
前記した上塗り塗料を、基材温40℃、塗料温度40℃において、塗布量が10g/mになるように、それぞれ塗工した。それぞれの紫外線照射は、常温で、160mJ/cmの紫外線照射量で硬化させ、実施例、比較例の塗装木質基材を得た。
【0047】
以上により得られた塗装木質基材の硬化塗膜に対し、平滑感を目視にて確認すると同時に、同硬化塗膜に対してJAS寒熱試験と、JIS引っかき硬度試験(鉛筆法)の両試験を行った。JAS寒熱試験は同一基材に対し、複数サイクルを繰り返すことで性能の優劣を評価した。
【0048】
(塗膜平滑感評価)
◎:平滑感が高く鏡面に近い
○:平滑感は有るが僅かにロール塗装に起因する凹凸(ローピング)が認められる
△:ロール塗装に起因する凹凸(ローピング)がやや目立つ
×:ロール塗装に起因する凹凸(ローピング)が著しく、平滑感に欠ける
【0049】
(耐クラック性能評価)
◎:割れ無し
○:1cm以下の割れが数本
△:1cm以上の割れが1〜5本
×:1cm以上の割れ複数
【0050】
引っかき硬度試験は、鉛筆で硬化塗膜を引っかく際に、塗膜に塑性変形(押し傷)が生じない硬度の上限で評価した。例えば、実施例1では、硬度2Hまでは塑性変形が生じず、硬度3Hで塑性変形が生じたことを意味する。評価結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、耐クラック性能と硬度を両立させ、かつ平滑感を有する塗装木質基材を得るための製造方法を提供することができる。この結果、木質基材の使用の自由度が高まり、例えば、国内産の針葉樹等の比較的軟らかく従来床板に不向きであった木材も床板に採用する可能性が示唆される。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板木質基材に、光ラジカル反応性塗料組成物を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを有する塗装木質基材の製造方法であって、
(1)該合板木質基材の単板厚が0.03mm〜2.0mmであり、
(2)該光ラジカル反応性塗料組成物が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有する樹脂組成物(A)と、光ラジカル重合開始剤(B)を含有し、かつ反応性希釈剤を実質的に含有しない光ラジカル反応性塗料組成物であり、塗工時の塗料温度が60〜150℃、塗料粘度が100〜10,000mPa・s、塗布量が10〜200g/mであり、
(3)塗工工程が、ナチュラルロールコーターで塗工する第一の塗工工程と、リバースロールコーターで塗工する第二の塗工工程とを有することを特徴とする塗装木質基材の製造方法。
【請求項2】
前記した第一の塗工工程であるナチュラルロールコーターでの塗布量が10〜300g/mであり、第二の塗工工程であるリバースロールコーターでの塗工が、第一塗工工程で塗工された塗料を、1〜200g/mの範囲で除去する工程である請求項1に記載の塗装木質基材の製造方法。
【請求項3】
前記した第一の塗工工程であるナチュラルロールコーターで塗工後、基材上の光ラジカル反応性塗料組成物の温度が40℃以上の状態で、前記第二の塗工工程であるリバースロールコーターで塗工を行う請求項1又は2に記載の塗装木質基材の製造方法。
【請求項4】
基材上の光ラジカル反応性塗料組成物の温度が40℃以上の状態で、活性エネルギー線を照射する請求項1〜3の何れかに記載の塗装木質基材の製造方法。
【請求項5】
前記したリバースロールコーターに使用するリバースロールの材質が金属であり、芯部に加温設備を有するロールである請求項1〜4の何れかに記載の塗装木質基材の製造方法。




【公開番号】特開2007−253019(P2007−253019A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78616(P2006−78616)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】