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塩化カルシウム環境における耐食性が強化されたクロム合金コーティング
説明

塩化カルシウム環境における耐食性が強化されたクロム合金コーティング

本発明は、(1)水溶性三価クロム塩;(2)三価クロムイオン用の少なくとも1つの錯化剤;(3)pHを2.8〜4.2にするのに十分な水素イオン源;(4)pH緩衝化合物;及び(5)硫黄含有有機化合物を含むクロム電解めっき溶液を含むクロム電解めっき溶液からなる。前記クロム電解めっき溶液は、装飾物品に接着性金属コーティングを施す方法で使用可能であり、前記コーティングは、塩化カルシウム含有環境における耐食性が強化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、接着性金属クロム系コーティング、好ましくは、装飾用クロムコーティングで物品を被覆する方法に関する。本発明のクロム系コーティングは、特に、塩化カルシウムを含有する環境において、従来のクロム析出物よりも物品の耐食性を高める。
【背景技術】
【0002】
クロムは、工業用コーティングにおいて長い間存在感を示してきた。クロムが工学的用途及び装飾的用途を含む多数の用途にとって好適であるのは、クロムの化学的及び機械的性質によるものである。工学的用途は、一般的に、クロム層が比較的厚い(例えば、10μm超)用途として定義されるが、一方、装飾的用途では、通常、約0.2μm〜1.0μmの薄層が用いられる。装飾的用途では、クロム析出物は、典型的には、僅かに青みがかった色合いの鏡面メタリック仕上げを呈する。
【0003】
本発明は、1つの実施形態において、装飾用コーティングの適用分野を主に対象とする。クロムがこれら装飾的用途にとって好適であるのは、魅力的な色合い及び薄いコーティングでさえもかなりの耐引っ掻き性をもたらす高い硬度を含むクロムの性質によるものである。
【0004】
実質的なクロム層を析出させる最もコスト効率の高い方法は、電着であり、これは、従来より、六価クロム化合物を含有する電解質からクロムを析出させるために用いられている。このような電解めっき浴は、効率が悪く、したがって、厚いクロムコーティングの作製は、コスト効率が低い。したがって、エレメントに耐性を付与し、且つ基材を腐食から保護するために、ある典型的な実施では、先ず、厚いニッケルコーティング(通常、10μm〜50μm)を塗布し、次いで、このニッケルコーティング上に非常に薄いクロム層を塗布する。前記ニッケルコーティングは、単層からなってもよく、或いは、基材材料を最大限腐食から保護し、且つコーティングの装飾的外観を維持するために、2層、3層、又は更には4層の個別の層の組み合わせからなってもよい。物品の基材材料によっては、ニッケル下塗り層の前に、他の前処理及び金属コーティング層を塗布してもよく、例えば、ABS又は他の非導電性材料から製造される部品、或いは亜鉛ダイカスト材料から製造される部品の場合等である。このような処理は、一般的に、当業者に周知である。
【0005】
これらの種類の装飾用コーティングの典型的な商業用途としては、売り場備品、衛生器具(蛇口、水栓、及びシャワー設備等)、及び自動車装備品(バンパー、ドアの取っ手、グリル、及び他の装飾的装備品)が挙げられるが、これらは一例であり、限定するものではない。
【0006】
従来、前述のニッケル/クロム析出物の耐食性は、国際的に認められている規格であるASTM B368に従って適用される、CASS試験として知られている方法によって測定されている。これは、温度49℃の密閉されたチャンバ内で、電解めっきされた物品を腐食性霧スプレー(塩化ナトリウム水溶液、塩化銅、及び酢酸を含む)に曝露することからなる。所定の曝露時間後、前記物品の外観を調べ、ASTM B537に従って腐食保護の程度を評価する。
【0007】
必要とされる腐食保護の程度は、電解めっきされた物品(例えば、自動車外装品又は内装品)が遭遇する可能性のある環境に依存する。推奨される析出物の典型的な厚さ及び種類は、ASTM規格B456及びB604に要約されている。典型的に、自動車メーカーは、CASS試験による曝露に24時間耐え得る内装品の部品を必要としており、一方、外装部品は、典型的に、72時間以内の曝露時間に対する保護を必要としている。
【0008】
塩化物は、腐食性の高いイオンであり、且つ冬の間、氷及び雪の融解を促進するため、及び道路を非常に安全に通行できるようにするために、道路に塩化ナトリウムを撒くことが一般的に行われているので、これら腐食試験には塩化物系環境が用いられる。したがって、自動車の外装部品は、塩化物イオンに曝露されることが非常に多い可能性がある。
【0009】
カナダ北部及びロシア等の寒さの厳しい環境では、雪を融解させるのに塩化ナトリウムでは不十分であるので、他の塩が用いられている。これら他の塩の典型例は、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムである。
【0010】
ここ数年の間に、塩化カルシウムの使用がクロムコーティングに特定の問題を引き起こすことが自動車業界で明らかになってきた。塩化カルシウムが用いられる環境では、自動車の外側において、塩が汚れ及び泥と共に乾燥する場合があることが見出されている。これがクロムコーティング上で起こった場合、特定の種類の腐食促進が生じ、クロム析出物が事実上除去されて、ニッケル析出物が露出した状態で残される。これは、複合コーティング全体の腐食保護効果を低下させ、更に、これら車の汚れを洗浄したとき、クロム析出物が黒点、まだら模様、及び黄色の斑点を呈するので、外観の魅力が損なわれる。
【0011】
したがって、自動車メーカーは、塩化カルシウムを含有する環境に対するクロムコーティングの耐性が改善されることを望んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、装飾物品上に耐食性薄層を生成することができるクロム電解めっき用電解質を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、装飾物品上のクロム合金コーティングを提供して、特に、塩化カルシウムを含有する環境において、強化された耐食性をもたらすことである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、本発明に従って装飾物品上にクロム−硫黄合金コーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施形態では、本発明は、一般的に、
a. 水溶性三価クロム塩;
b. 少なくとも1つの三価クロムイオン用錯化剤;
c. pHを2.8〜4.2にするのに十分な濃度の水素イオン源;
d. pH緩衝化合物;及び
e. 硫黄含有有機化合物
を含む改良されたクロム電解めっき浴に関する。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、一般的に、物品上に耐食性クロム合金コーティングを提供して、前記物品上における耐食性を高める方法であって、
(a)前記物品を好適に洗浄及び前処理する工程と;
(b)必要に応じて、パラジウム、スズ、銅、ニッケル、又は他の金属若しくは合金のうちの1以上を用いる電解又は無電解手段によって、前記物品にコーティングを施す工程と;
(c)本明細書に記載されるクロム−硫黄合金を含む析出物で前記物品にコーティングを施して、前記物品上に魅力的且つ耐食性仕上げをもたらす工程と;
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明をより完全に理解するために、添付図面に関して以下の記載を参照する。
【図1】図1は、クロムの電位−pH図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、一般的に、物品上に耐食性クロム合金コーティングを提供して、特に塩化カルシウム環境における耐食性を高める、改良された電解めっき浴及び方法に関する。好ましい実施形態では、前記クロム合金コーティングは、クロム−硫黄合金コーティングである。
【0019】
前記方法は、一般的に、以下の工程を含む;
(a)前記物品を好適に洗浄及び前処理する工程と;
(b)必要に応じて、パラジウム、スズ、銅、ニッケル、又は他の金属のうちの1以上を用いる電解又は無電解手段によって前記物品にコーティングを施す工程と;
(c)本明細書に記載されるクロム−硫黄合金を含む析出物で前記物品にコーティングを施して、前記物品上に魅力的且つ耐食性仕上げをもたらす工程。
【0020】
本発明の発明者らは、本発明に従って調製されるクロム−硫黄コーティングが、六価クロム電解めっき浴から得られる従来のクロムコーティングに比べて、塩化カルシウム環境における腐食保護効果を強化することを見出した。
【0021】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、塩化カルシウムの吸湿性によって乾燥した汚れ中に水分が保持されると考える。前記水分が大気ガス(主にCOであるが、SO及びNOも含む)を前記汚れに溶解させ、これは、以下の反応スキーム等式1及び等式2による塩酸の生成に起因して酸性環境を生じさせる;
CaCl+2CO+2HO→Ca(HCO+2HCl 等式1
CaCl+CO+HO→CaCO+2HCl 等式2
【0022】
クロムの電位−pH図である図1から分かるように、中性pH環境下では、クロムは、酸化クロム(iii)Crの安定状態を有するが、pH約4.8未満の弱酸性環境下では、クロムは、等式3に従ってCr(OH)2+の形態でコーティングから溶け出し、約3.6未満では、等式4に従ってCr3+として溶け出す;
2Cr+4H+1.5O→2Cr(OH)2++HO 等式3
2Cr+6H→2Cr3++3H 等式4
【0023】
自動車メーカーは、塩化カルシウムを含有する環境に対するクロムコーティングの耐性を高めることを望んでおり、この腐食性環境を人工的に再現するための新規試験法を考案している。現在、標準試験(例えば、CASS試験等に適用されるASTM規格)は存在しないので、各自動車メーカーが、独自の試験を考案している。これら試験法は、詳細は異なっているが、全て同一の原則に基づいており、典型的には、以下の工程を含む;
(a)少量の塩化カルシウム溶液をカオリンと混合して、ペーストを形成する工程と;
(b)所定量の前記ペーストを試験物品の領域に塗布する工程と;
(c)所定温度、及び任意で所定湿度の環境下に所定の時間前記ペーストを放置する工程と;
(d)水で洗浄することにより前記ペーストを除去し、乾燥させ、次いで、析出物の外観について評価する工程と;
(e)必要に応じて、工程(a)〜(d)を繰り返す工程。
【0024】
この種の試験を本発明の析出物に適用したとき、驚くべきことに、六価クロム電解めっき浴から得られる従来のクロムコーティングに比べて、耐食性が著しく高いことが見出された。
【0025】
本発明のクロム析出物は、典型的には、クロム−硫黄合金であり、好ましくは硫化物の形態で共析出した硫黄を一部含有している。これも理論に縛られるものではないが、本発明らは、この共析出した硫黄、好ましくは硫化物が析出物に組み込まれることにより、塩化カルシウム環境下における析出物の攻撃耐性が高まると考える。典型的には、本発明のクロム析出物は、約0.5重量%〜約25重量%の硫黄を含有する。好ましくは、本発明のクロム析出物は、約2.0重量%〜約20重量%の硫黄を含む。前記析出物中の硫黄濃度は、クロム電解めっき浴中の硫黄含有化合物濃度を調整することにより調整できる。クロム電解めっき浴中の硫黄含有化合物濃度は、0.001g/L〜10g/Lが好ましく、0.01g/L〜2.5g/Lが最も好ましい。
【0026】
典型的には、クロム電解めっき用電解質は、以下の成分を含む;
(a)水溶性三価クロム塩;
(b)溶液の導電性を高めるための更なる不活性水溶性塩;
(c)三価クロムイオン用錯化剤;
(d)pHを約2.8〜4.2にするための水素イオン;
(e)pH緩衝化合物;及び
(f)硫黄含有有機化合物、好ましくは、二価形態の硫黄を含有する硫黄含有有機化合物。
【0027】
本発明に係る電解質の組成物において使用可能な化合物の典型例を以下に記載するが、本発明は、記載される例のみを含有する電解質から得られる析出物に限定されるものではない。クロム電解めっき用電解質についての様々な先行技術は、一般的に、英国特許第1488381号、米国特許第4,157,945号、同第4,374,007号、同第4,448,648号、同第4,448,649号、同第4,432,843号、同第4,472,250号、及び同第4,502,927号に記載されており、各特許の発明主題は、その全文を参照することにより本明細書に援用される。
【0028】
水溶性三価クロム塩は、典型的には、硫酸クロム、塩化クロム、メタンスルホン酸クロム、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される。他の類似の水溶性三価クロム塩も本発明の実施において使用可能である。クロム電解めっき用電解質中の水溶性三価クロム塩濃度は、約15g/L〜約125g/Lが好ましく、約25g/L〜約80g/Lが最も好ましい。めっき浴中のクロムイオン濃度は、5g/L〜20g/Lが好ましい。
【0029】
更なる不活性水溶性塩は、典型的には、例えば、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムの塩化物又は硫酸塩等を含む、1以上の水溶性塩化物又は硫酸塩である。好ましい実施形態では、前記更なる不活性水溶性塩は、クロム電解めっき用電解質中の総濃度が約100g/L〜約300g/Lである硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、及び硫酸アンモニウムのうちの1以上を含む。
【0030】
水素イオン源は、硫酸、酢酸、塩酸、リン酸又は他のリン酸含有酸性種、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択されることが好ましい。クロムめっき浴中の水素イオン濃度は、pHを約2.8〜4.2にするのに十分でなければならない。
【0031】
pH緩衝化合物は、電解質のpHを所望の水準に維持するために用いられ、典型的には、ホウ酸、ホウ酸塩、酢酸、酢酸塩、リン酸、リン酸塩、グリシン、グリシン塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される。電解質溶液中の前記pH緩衝化合物濃度は、電解質の所望のpHに依存し、典型的には、約50g/L〜約100g/Lである。上述の通り、めっき浴のpHは、約2.8〜4.2でなければならない。
【0032】
本発明の析出物中に含有される共析出する硫黄源、好ましくは硫化物は、電解質製剤中の硫黄含有有機化合物である。前記硫黄含有有機化合物は、好ましくは、チオシアン酸ナトリウム、他のチオシアン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、他の可溶性ジアルキルチオカルバミン酸塩、チオ尿素、例えばアリルチオ尿素等のチオ尿素の誘導体、メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム、他の可溶性メルカプトアルカンスルホン酸塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される。上述の通り、前記硫黄含有有機化合物は、本発明のクロム析出物が、硫化物の形態の共析出した硫黄を含有するクロム−硫黄合金であるように、二価形態の硫黄を含有することが好ましい。前記硫黄含有有機化合物は、典型的には、クロム析出物中の硫黄濃度を約0.5重量%〜約25重量%にすることができる濃度で、クロム電解めっき用電解質中に存在する。典型的には、めっき浴中の硫黄含有有機化合物濃度が高くなるにつれて、めっき析出物中の硫黄濃度も高くなる。電解めっき用電解質中の硫黄含有有機化合物濃度は、0.001g/L〜10g/Lが好ましく、0.01g/L〜2.5g/Lが最も好ましい。
【0033】
三価クロムイオン用錯化剤は、典型的には、ジカルボン酸及びその好適な塩、並びにアミノカルボン酸及びその好適な塩から選択される。これらジカルボン酸及びアミノカルボン酸の例としては、一例であり、限定するものではないが、リンゴ酸、アスパラギン酸、マレイン酸、コハク酸、及びグリシンのうちの1以上が挙げられる。クロムめっき浴中の1以上の錯化剤濃度は、約5g/L〜約40g/Lが好ましく、約10g/L〜約25g/Lがより好ましい。
【0034】
更に、本発明に従って析出物を生成させるために必須ではないが、任意で他の有機化合物を添加して、析出物の審美的外観を改善し、且つ電解質の表面張力を低下させてもよい。典型的には、これら化合物としては、一例であり、限定するものではないが、サッカリン、アリルスルホン酸ナトリウム、2−ブチン−1,4−ジオール、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、及びこのような化合物の他の水溶性塩が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下の非限定的な実施例により本発明の有用性を実証する。
【0036】
各実施例では、電解式厚さ測定法によってクロムコーティングの厚さを測定する。
【0037】
X線光電子分光法(XPS)によって実施例1、4、及び6の析出物における硫黄の酸化状態を測定する。
【0038】
オージェ電子分光法(AES)を用いて、実施例1〜5及び比較例6の析出物の組成を決定した。引用した組成図は、組成分析に対する表面酸化の影響を避けるためにバルク膜から取った。
【0039】
塩化カルシウム環境に対する析出物の耐食性は、以下の通り測定する;
(a)40℃の塩化カルシウム飽和溶液5mLをカオリン3gと混合して、ペーストを形成した、
(b)調製したペースト80mg〜100mgを試験パネルに塗布し、直径15mmの円形試験領域に広げた、
(c)前記試験パネルを60℃のオーブンに48時間入れた、
(d)48時間後、前記パネルを取り出し、乾燥したペーストを洗い流し、腐食について析出物の外観を評価した。
【0040】
この試験は、大規模自動車メーカーによって用いられる典型的な塩化カルシウム試験を表す。
【0041】
各試験パネルは、3つの異なる試験領域において試験し、前記ペーストは、各試験毎に新たに調製した。前記試験パネルは、試験前にめっきした後14日間静置させた。
【0042】
実施例1
三価クロム電解めっき溶液を以下の通り調製した。
【表1】

【0043】
無水サッカリンナトリウム、チオ尿素、及びジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムを添加する前に、1mL/Lの35%過酸化水素及び1g/Lの活性炭で処理し、濾過し、pHを3.3〜3.5に調整することにより溶液を精製した。ASTM B456に従って3層のニッケル(半光沢、光沢、及び微多孔性ニッケル)をスチールパネルに電解めっきし、電流密度10A/dmの電流を12分間流すことにより、実施例2の溶液で約0.3μmのクロムコーティングを施した。電解質の温度は、60℃であり、混合金属酸化物(IrO/Ta)アノードを用いた。
【0044】
実施例2
三価クロム電解めっき溶液を以下の通り調製した。
【表2】

【0045】
無水サッカリンナトリウム、チオ尿素、及びジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムを添加する前に、1mL/Lの35%過酸化水素及び1g/Lの活性炭で処理し、濾過し、pHを3.3〜3.5に調整することにより溶液を精製した。ASTM B456に従って3層のニッケル(半光沢、光沢、及び微多孔性ニッケル)をスチールパネルに電解めっきし、電流密度10A/dmの電流を12分間流すことにより、実施例3の溶液で約0.3μmのクロムコーティングを施した。電解質の温度は、60℃であり、混合金属酸化物(IrO/Ta)アノードを用いた。
【0046】
実施例3
三価クロム電解めっき溶液を以下の通り調製した。
【表3】

【0047】
無水サッカリンナトリウム、チオ尿素、及びジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムを添加する前に、1mL/Lの35%過酸化水素及び1g/Lの活性炭で処理し、濾過し、pHを3.3〜3.5に調整することにより溶液を精製した。ASTM B456に従って3層のニッケル(半光沢、光沢、及び微多孔性ニッケル)をスチールパネルに電解めっきし、電流密度10A/dmの電流を10分間流すことにより、実施例4の溶液で約0.3μmのクロムコーティングを施した。電解質の温度は、60℃であり、混合金属酸化物(IrO/Ta)アノードを用いた。
【0048】
実施例4
三価クロム電解めっき溶液を以下の通り調製した。
【表4】

【0049】
無水サッカリンナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、及びジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムを添加する前に、1mL/Lの35%過酸化水素及び1g/Lの活性炭で処理し、濾過し、pHを3.3〜3.5に調整することにより溶液を精製した。ASTM B456に従って3層のニッケル(半光沢、光沢、及び微多孔性ニッケル)をスチールパネルに電解めっきし、電流密度10A/dmの電流を5分間流すことにより、実施例5の溶液で約0.3μmのクロムコーティングを施した。電解質の温度は、60℃であり、混合金属酸化物(IrO/Ta)アノードを用いた。
【0050】
実施例5
三価クロム電解めっき溶液を以下の通り調製した。
【表5】

【0051】
無水サッカリンナトリウム、チオ尿素、チオシアン酸ナトリウム、及びジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムを添加する前に、1mL/Lの35%過酸化水素及び1g/Lの活性炭で処理し、濾過し、pHを3.3〜3.5に調整することにより溶液を精製した。ASTM B456に従って3層のニッケル(半光沢、光沢、及び微多孔性ニッケル)をスチールパネルに電解めっきし、電流密度10A/dmの電流を12分間流すことにより、実施例6の溶液で約0.3μmのクロムコーティングを施した。電解質の温度は、60℃であり、混合金属酸化物(IrO/Ta)アノードを用いた。
【0052】
比較例6
クロム電解めっき溶液を以下の通り調製した。
【表6】

【0053】
この溶液は、六価クロムを含有する典型的な装飾用クロム電解めっき溶液を表す。
【0054】
ASTM B456に従って3層のニッケル(半光沢、光沢、及び微多孔性ニッケル)をスチールパネルに電解めっきし、電流密度10A/dmの電流を4分間流すことにより、上記溶液で約0.3μmのクロムコーティングを施した。
【0055】
実施例の結果を表7〜10に要約する。
【表7】

【表8】

【表9】

【0056】
表8及び9は、本発明の析出物中に硫黄が存在すること、及びそれが一般的に硫黄(ii)の形態であること、及び六価クロム浴から得られる先行技術の析出物には硫黄が存在しないことを立証する。
【0057】
前記試験パネルを、30cmの距離から室内の蛍光灯下で目視により評価し、以下の通りランク付けした;
1=腐食がみられない
2=僅かな変色がみられる
3=中程度の変色がみられる
4=重度の変色がみられ、且つクロムコーティングが一部剥げている
5=クロムコーティングが完全に剥げている
【表10】

【0058】
実施例から得られた結果は、明らかに、本発明の析出物によりもたらされる改善を示す。
【0059】
最後に、本発明は、その好ましい実施形態に関して特に示され、記載されているが、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく形態及び詳細を変更してもよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 水溶性三価クロム塩;
b. 少なくとも1つの三価クロムイオン用錯化剤;
c. pH緩衝化合物;及び
d. 硫黄含有有機化合物
を含み、
pHが、約2.8〜4.2であることを特徴とするクロム電解めっき溶液。
【請求項2】
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される水溶性三価塩化物又は水溶性三価硫酸塩を含む請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項3】
水溶性三価クロム塩が、硫酸クロム、塩化クロム、メタンスルホン酸クロム、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項4】
硫黄含有有機化合物が二価硫黄を含む請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項5】
pH緩衝化合物が、ホウ酸、ホウ酸塩、酢酸、酢酸塩、リン酸、リン酸塩、グリシン、グリシン塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項6】
硫黄含有有機化合物が、二価硫黄を含む請求項2に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項7】
硫黄含有有機化合物が、チオシアン酸ナトリウム、他のチオシアン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジアルキルチオカルバミン酸塩、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム、可溶性メルカプトアルカンスルホン酸塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項6に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項8】
三価クロムイオン用錯化剤が、リンゴ酸、アスパラギン酸、マレイン酸、コハク酸、グリシン、これらのうちのいずれかの可溶性塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項9】
サッカリン、アリルスルホン酸ナトリウム、2−ブチン−1,4−ジオール、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、これらのうちのいずれかの他の水溶性塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される更なる有機化合物を含む請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項10】
電解めっき溶液中の硫黄含有有機化合物濃度が、電解めっき溶液によって生成されるクロム析出物が0.5重量%〜25重量%の硫黄を含むような濃度である請求項1に記載のクロム電解めっき溶液。
【請求項11】
物品に耐食性クロム合金コーティングを施す方法であって、
a)任意で、電解又は無電解手段によって装飾物品に1層以上の金属又は金属合金コーティングを施す工程であって、前記金属又は金属合金が、パラジウム、スズ、銅、又はニッケルを含む工程と;その後
b)前記物品をクロム電解めっき溶液と接触させる工程であって、前記クロム電解めっき溶液が、
i)水溶性三価クロム塩;
ii)少なくとも1つの三価クロムイオン用錯化剤;
iii)pH緩衝化合物;及び
iv)硫黄含有有機化合物
を含み;
前記クロム電解めっき溶液のpHが、約2.8〜4.2であり、且つ前記クロム電解めっき溶液が、0.5重量%〜25重量%の硫黄を含むクロム析出物を前記物品上に生成させることを特徴とする方法。
【請求項12】
クロム電解めっき溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される水溶性塩化物又は水溶性硫酸塩を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クロム電解めっき溶液の水溶性三価クロム塩が、硫酸クロム、塩化クロム、メタンスルホン酸クロム、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
クロム析出物が、2重量%〜20重量%の硫黄を含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
クロム電解めっき溶液のpH緩衝化合物が、ホウ酸、ホウ酸塩、酢酸、酢酸塩、リン酸、リン酸塩、グリシン、グリシン塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項16】
クロム電解めっき溶液の硫黄含有有機化合物が、二価硫黄を含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
クロム電解めっき溶液の硫黄含有有機化合物が、チオシアン酸ナトリウム、他のチオシアン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、他のジアルキルチオカルバミン酸塩、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム、他の可溶性メルカプトアルカンスルホン酸塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項18】
クロム電解めっき溶液の三価クロムイオン用錯化剤が、リンゴ酸、アスパラギン酸、マレイン酸、コハク酸、グリシン、これらのうちのいずれかの可溶性塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項11に記載の方法。
【請求項19】
クロム電解めっき溶液が、サッカリン、アリルスルホン酸ナトリウム、2−ブチン−1,4−ジオール、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、これらのうちのいずれかの他の水溶性塩、及びこれらのうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される更なる有機化合物を含む請求項11に記載の方法。
【請求項20】
硫黄含有有機化合物が、二価硫黄を含む請求項14に記載の方法。
【請求項21】
金属コーティングされた装飾物品上における耐食性クロム合金コーティングの厚さが、約0.2μm〜約1.0μmである請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−521495(P2012−521495A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501983(P2012−501983)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048819
【国際公開番号】WO2010/110812
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(502304286)マクダーミッド アキューメン インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】