説明

塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法

本発明は、塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法に係り、特に、塩化ビニル系単量体及び有機化処理された金属酸化物ナノ粒子を含んで前記有機化処理された金属酸化物ナノ粒子を塩化ビニル単量体と複合させるか、または追加的にアクリル系単量体を分散剤で均一分散させて粒子安定性を維持しつつ重合することによって、塩化ビニル系樹脂の脆弱点である熱安定性及び耐候性を顕著に向上させて、建築外装材類などに使用可能にした塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法に係り、さらに詳細には、塩化ビニル系樹脂の脆弱点である熱安定性及び耐候性を顕著に向上させて建築外装材類に使用可能な塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで塩化ビニル系樹脂の脆弱点として知られた熱安定性を向上させた塩化ビニル系樹脂の製造のための色々な方法が提案されてきたが、根本的な特性を改善するには限界があった。
【0003】
重合反応時、脱塩化水素反応で生成される塩化ビニル重合体内のアリルクロリンまたは3次クロリンなどの化学構造的欠陥によって、塩化ビニル系樹脂は、固有の熱安定性が阻害される。これら炭素とクロリンとの結合エネルギーは、正常構造での炭素とクロリンとの結合エネルギーに比べて非常に低い値を有し、外部ラジカル転移によって炭素とクロリンとの結合が解除されつつ、重合活性化点となって、塩化ビニル系樹脂の熱安定性を阻害する環境を誘発する。前記のような塩化ビニル系樹脂は、加工時に加えられる熱や紫外線によって脱塩化水素反応が発生し、これにより樹脂自体の変色が起きるか、または樹脂物性が低下または変化するという問題点がある。
【0004】
このような塩化ビニル系樹脂の問題点を加工過程で改善するために、Ba、Zn、Ca、Pbなどの金属を含有した金属有機化合物を製造された塩化ビニル系樹脂に混合することによって、塩化ビニル樹脂が熱分解する時に生成されるラジカルやイオンの発生を抑制し、樹脂の熱分解速度を調節しようとし、最近、金属系または有機化合物系など、多様な形態の熱安定剤を使用する方法が導入されたが、重金属安定剤を使用する時に引き起こされる環境的な問題点及び高いコストのため、その使用が大きく制限されている実情である。
【0005】
また、塩化ビニル系樹脂は、機械的強度と耐薬品性に優れた樹脂であって、パイプ、ウィンドウフレーム、シート、フィルムなど産業及び生活素材として広く使われている。しかし、硬質用途の塩化ビニル系成形品である場合、熱安定性とそれによる耐候性が脆弱であるという短所を有しているため、コスト対比性能が優秀な樹脂であるのに拘わらず、特殊機能性を有する用途で使用し難いという問題点がある。
【0006】
前記問題点を補完するために、特許文献1は、ポリビニルアルコール系分散剤を塩化ビニル樹脂重合体の脱水粉末に少量投入して混合する方法について開示している。しかし、前記方法は、重合製造方法において、公知の製造方法との差異点がなくて、根本的に樹脂自体の熱安定性及び耐候性を向上させられず、その向上効果も期待し難いという問題点がある。
【0007】
また、耐候性を向上させるために、塩化ビニル樹脂の加工時に二酸化チタンのような金属酸化物を多量投入した加工法が一般化されてきた。
【0008】
しかし、従来の方法は、熱安定性及び耐候性を同時に向上させ難く、これにより、熱安定性及び耐候性を何れも向上させうる塩化ビニル樹脂の製造方法についての研究がさらに必要な実情である。
【特許文献1】特開第2002−332308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、塩化ビニル系樹脂の脆弱点である熱安定性及び耐候性を顕著に向上させて、サイディング材、ウィンドウフレーム、フェンスなどの建築外装材類に使用可能な塩化ビニル樹脂組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するために、本発明は、塩化ビニル樹脂組成物において、a)塩化ビニル系高分子樹脂100重量部と、b)有機化処理された金属酸化物ナノ粒子0.1ないし30重量部と、を含む塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、懸濁重合によって塩化ビニル樹脂を製造する方法において、有機化処理された金属酸化物ナノ粒子を反応初期に投入することを特徴とする塩化ビニル樹脂の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル系高分子樹脂100重量部、及び有機化処理された金属酸化物ナノ粒子0.1ないし30重量部を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に使われる前記塩化ビニル系高分子樹脂は、通常の塩化ビニル樹脂に使われる単量体を使用して製造でき、付加的に酢酸ビニル、アクリレート類、メタクリレート類、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、または不飽和脂肪酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸など)及びこれら脂肪酸の無水物が含まれた塩化ビニル単量体を使用して製造できる。
【0014】
前記有機化された金属酸化物ナノ粒子は、塩化ビニル高分子樹脂100重量部に対して0.1ないし30重量部で含まれることが望ましく、その含量が0.1重量部未満である場合には、塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性が脆弱になり、樹脂粒子が不規則な構造を有する組成物が得られるという問題点があり、30重量部を超える場合には、物性安定性が低下して樹脂粒子の不均一な状態が発生するという問題点がある。
【0015】
前記有機化された金属酸化物ナノ粒子のサイズは、10ないし300nmであることが望ましい。
【0016】
本発明に使われる前記b)の有機化処理された金属酸化物ナノ粒子は、光触媒の一種であって、光反射効果を極大化して白色度、熱安定性及び耐候性を向上させる作用を行う。
【0017】
前記金属酸化物ナノ粒子は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、三酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、または酸化シリカなどを使用でき、特に、二酸化チタンを使用することが望ましい。前記二酸化チタンは、光を受けても変わらないので、半永久的な使用が可能であり、塩素やオゾンより高い酸化力を有していて強力な殺菌力を有し、有機物を二酸化炭素と水とで分解できる能力を有している。それだけでなく、人体に無害でウィンドウフレーム、製紙、ゴム、ペイント、プラスチック、化粧品類などに主に使われる。
【0018】
前記金属酸化物ナノ粒子のうち二酸化チタンは、結晶構造によって3つに区分され、一般的には、主に図1に示したルタイル構造とアナターゼ構造とが使われる。
【0019】
チタン及び酸素原子は、ルタイル結晶体ではるかにぎっしりと配列されているため、ルタイル構造が光に対してさらに安定的であり、特に、紫外線波長帯の光(360〜400nm)をさらに多く吸収して高分子を保護する。また、有機/無機酸、アルカリ、ガスなどに対する安定度においても、ルタイル構造が優秀である。一方、アナターゼ構造の二酸化チタンは、ルタイル構造に比べて相対的にOH基を多く作って、塗料内に存在する樹脂を分解して塗膜が白く浮き立つチョーキング現象を起こして、本発明に適用するには適していない。
【0020】
前記塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル系高分子樹脂100重量部に対してアクリル系単量体0.1ないし10重量部が共重合されてさらに含まれうる。
【0021】
本発明に使われる前記アクリル系単量体は、塩化ビニル系樹脂と共重合される単量体であって、炭素と炭素との間の二重結合が存在してラジカル転移が容易でなければならず、塩化ビニル系樹脂組成物の円滑な加工性のために高分子化されたとき、ガラス転移温度(Tg)が100ないし250℃であることが望ましい。
【0022】
前記アクリル系単量体は、通常のアクリル系単量体を使用できることはもとより、特に、下記化学式1または化学式2で表示される化合物を使用することが望ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
前記化学式1及び化学式2で、Rは水素、炭素数1〜20、望ましくは、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル、炭素数3〜16のアリール、または炭素数5〜8のシクロアルキルである。
【0026】
具体的に、前記アクリル系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、メチル−2−シアノアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル−2−シアノアクリレート、または1−エチルプロピル−2−シアノアクリレートなどを使用できる。
【0027】
前記アクリル系単量体は、塩化ビニル樹脂の固有粒子状を維持して成形品の引張強度、表面強度などの固有物性に影響を及ぼさないレベルでなければならず、望ましくは、塩化ビニル樹脂100重量部に対して0.1ないし10重量部で含まれる。その含量が前記範囲内である場合には、塩化ビニル系樹脂の熱安定性を阻害する初期分解物である塩化水素の連続作用が抑制されて、さらに熱安定性に優れた塩化ビニル系樹脂を製造できるという長所がある。
【0028】
前記のような成分を含む本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、必要に応じて熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、または光安定剤などの添加剤を追加配合して、目的によって樹脂を加工できる。
【0029】
以下では、本発明の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
本発明は、(a)塩化ビニル系単量体100重量部及び有機化処理された金属酸化物ナノ粒子0.1ないし30重量部を混合して重合原料混合物を製造するステップと、(b)前記混合結果物を懸濁重合するステップと、を含む塩化ビニル樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0031】
前記塩化ビニル系単量体は、前述した単量体を使用できる。
【0032】
前記有機化された金属酸化物ナノ粒子は、塩化ビニル単量体100重量部に対して0.1ないし30重量部で含まれることが望ましく、その含量が0.1重量部未満である場合には、重合して得られた塩化ビニル樹脂の熱安定性が脆弱になり、樹脂粒子の不規則な構造の組成物が得られるという問題点があり、30重量部を超える場合には、重合反応時に添加される分散剤の量的な増加が伴われ、これにより重合安定性が低下し、樹脂粒子の不均一な状態が発生するという問題点がある。
【0033】
前記のような金属酸化物ナノ粒子は、有機化処理されたゾル状態または粉末状態で使用することが良い。
【0034】
従来には、一般的に塩化ビニル樹脂の加工時に白色顔料の添加剤として二酸化チタンを使用した。しかし、本発明で使われる前記金属酸化物ナノ粒子は、後述するように、重合反応の開始前に塩化ビニル単量体と共に投入し、このとき、金属酸化物ナノ粒子を直ぐ投入すれば、反応器内での重合反応速度が抑制させられ、重合工程上でスケールの形成を招くことができる。したがって、さらに効果的には、反応を進めるために、有機化処理してゾル状態で使用することが望ましい。
【0035】
したがって、前記塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、前記金属酸化物ナノ粒子を有機化処理するステップをさらに含むことが望ましい。
【0036】
前記とのような成分を利用して金属酸化物ナノ粒子を有機化処理するとき、金属酸化物ナノ粒子と有機化処理のための有機物とは、1:1ないし1:4の割合で配合することが望ましく、前記有機化処理時に金属酸化物ナノ粒子の比率が過度に高くなれば、粘度が上昇し、有機物に金属酸化物ナノ粒子が均一に分散されなくて固体粒子がそのまま存在して、塩化ビニル系単量体の液滴内に浸透できず、水溶液上に残存するという問題点があり、有機物の比率が過度に高くなれば、pH、保護コロイド性など、反応に及ぶ影響が大きくなるという問題点がある。
【0037】
前記金属酸化物ナノ粒子の有機化処理は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースのようなセルロース系分散剤、炭素数6〜18のアルキルまたはアリール系カルボン酸基化合物または炭素数6〜18のアルキルまたはアリール系リン酸基化合物などの有機物を使用して実施できる。
【0038】
特に、前記セルロース系分散剤の場合、0.5〜15重量%の溶液で製造して使用することが望ましく、さらに望ましくは、1〜7重量%の溶液で使用する。前記0.5重量%以下の薄い濃度では、金属酸化物ナノ粒子が十分に分散され難くて効率が低下するという問題点があり、15重量%を超える濃い濃度では、粘度が過度に高くて、反応に投入する場合に処理過程で不便さが引き起こされるだけでなく、金属酸化物ナノ粒子を分散させるために使われる目的以外に、塩化ビニル単量体の液滴に深い影響を及ぼして、粒子が不安定な形態に形成されうるという問題点がある。
【0039】
前記金属酸化物ナノ粒子の有機化処理に使われる化合物は、反応が起きる間にpHに大きい影響を及ぼさずに親水基と親油基ともを有していて、反応媒体である懸濁液または油化液及び塩化ビニル単量体との親和性に優れ、金属酸化物ナノ粒子を均一に分散させることによって、反応媒体で塩化ビニル系単量体との反応参与に容易で、反応後に反応器の内壁及び攪拌器に何れもスケールを形成しないという長所がある。
【0040】
また、本発明は、前記のような成分を利用して、懸濁重合による塩化ビニル樹脂の製造方法において、前記有機化された金属酸化物ナノ粒子を反応初期に投入することを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物の製造方法を提供するところ、前記塩化ビニル単量体及び有機化された金属酸化物ナノ粒子は、何れも極性が存在して反応開始後に有機化された金属酸化物ナノ粒子が塩化ビニル系単量体液滴内に浸透した状態で反応が進められる。また、アクリル系単量体をさらに含んで反応させる場合、前記塩化ビニル系単量体−有機化された金属酸化物ナノ粒子の複合体とアクリル系単量体との共重合反応が進められる。
【0041】
前記本発明によれば、有機化された金属酸化物ナノ粒子を塩化ビニル単量体と複合させて重合することによって、塩化ビニル系樹脂の脆弱点である熱安定性と耐候性とを顕著に向上させてサイディング材、ウィンドウフレーム、フェンスなどの建築外装材類に使用可能であるという利点がある。
【0042】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
40Lの高圧反応器に脱イオン水180重量部、オレイン酸0.5重量部で有機化処理したナノサイズの二酸化チタン1重量部、メチルメタアクリレート単量体0.25重量部、反応開始剤としてt−ブチルパーオキシ−ネオデカノエート(t−butylperoxy−neodecanoate:BND)0.07重量部、及びポリビニルアルコール系分散剤0.3重量部を一括投入した。次いで、前記反応器に真空を加えて攪拌しつつ、塩化ビニル100重量部を投入し、58℃の温度に昇温して重合反応を実施して、反応器の圧力が7kg/cm2に到達するとき、反応器を冷却させて未反応塩化ビニル単量体を回収、除去した後、脱水及び乾燥させて塩化ビニル樹脂を製造した。
【0044】
(実施例2)
前記実施例1で、オレイン酸の代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース分散剤5%水溶液0.03重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して塩化ビニル樹脂を製造した。
【0045】
(実施例3)
40Lの高圧反応器に脱イオン水180重量部、粉末状の二酸化チタン1重量部、メチルメタアクリレート単量体0.25重量部、反応開始剤としてBND 0.07重量部、及びポリビニルアルコール系分散剤0.3重量部を一括投入した。次いで、前記反応器に真空を加えて攪拌しつつ、塩化ビニル100重量部を投入し、58℃の温度に昇温して重合反応を実施して、反応器の圧力が7kg/cm2に到達するとき、反応器を冷却させて未反応塩化ビニル単量体を回収、除去した後、脱水及び乾燥させて塩化ビニル樹脂を製造した。
【0046】
(実施例4)
前記実施例1で、メチルメタアクリレート単量体1重量部を使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して塩化ビニル樹脂を製造した。
【0047】
(実施例5)
40Lの高圧反応器に脱イオン水180重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース分散剤5%水溶液0.03重量部で有機化処理したナノサイズの二酸化チタン4重量部、メチルメタアクリレート単量体0.25重量部、反応開始剤としてBND 0.07重量部、及びポリビニルアルコール系分散剤0.3重量部を一括投入した。次いで、前記反応器に真空を加えて攪拌しつつ、塩化ビニル100重量部を投入し、58℃の温度に昇温して重合反応を実施して、反応器の圧力が7kg/cm2に到達するとき、反応器を冷却させて未反応塩化ビニル単量体を回収、除去した後、脱水及び乾燥させて塩化ビニル樹脂を製造した。
【0048】
(実施例6)
40Lの高圧反応器に脱イオン水180重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース分散剤5%水溶液0.03重量部で有機化処理したナノサイズの二酸化チタン1重量部、メチルメタアクリレート単量体0.25重量部、及び反応開始剤としてBND 0.07重量部を一括投入した。次いで、前記反応器に真空を加えて攪拌しつつ、塩化ビニル100重量部を投入して1時間常温で攪拌して、ここにポリビニルアルコール系分散剤0.3重量部を投入した。次いで、30分間常温で攪拌し、58℃の温度に昇温して重合反応を実施して、反応器の圧力が7kg/cm2に到達するとき、反応器を冷却させて未反応塩化ビニル単量体を回収、除去した後、脱水及び乾燥させて塩化ビニル樹脂を製造した。
【0049】
(実施例7)
40Lの高圧反応器に脱イオン水180重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース分散剤5%水溶液0.03重量部で有機化処理したナノサイズの二酸化チタン1重量部及び反応開始剤としてBND 0.07重量部を一括投入した後、真空を加えて攪拌しつつ、塩化ビニル100重量部を投入し、1時間常温で攪拌した。ここにポリビニルアルコール系分散剤0.3重量部とメチルメタアクリレート単量体0.25重量部とを共に中途投入した。次いで、30分間常温で攪拌し、58℃の温度に昇温して重合反応を実施して、反応器の圧力が7kg/cm2に到達するとき、反応器を冷却させて未反応塩化ビニル単量体を回収、除去した後、脱水及び乾燥させて塩化ビニル樹脂を製造した。
【0050】
(比較例1)
40Lの高圧反応器に脱イオン水180重量部、反応開始剤としてBND 0.07重量部及びけん化度が70〜90モル%であるポリビニルアルコール系分散剤0.3重量部を一括投入した。次いで、前記反応器に真空を加えて攪拌しつつ、塩化ビニル100重量部を投入し、58℃の温度に昇温して重合反応を実施して、反応器の圧力が7kg/cm2に到達するとき、反応器を冷却させて未反応塩化ビニル単量体を回収、除去した後、脱水及び乾燥させて塩化ビニル樹脂を製造した。
【0051】
(比較例2)
前記比較例1で、58℃に昇温させる直前に二酸化チタン1重量部をさらに使用したことを除いては、前記比較例1と同じ方法で実施して塩化ビニル樹脂を製造した。
【0052】
(比較例3)
前記比較例1で得られた塩化ビニル樹脂に二酸化チタン1重量部を加工配合時に追加的に入れたことを除いては、前記比較例1と同じ方法で実施して塩化ビニル樹脂を製造した。
【0053】
前記実施例1ないし7及び比較例1ないし3で製造したそれぞれの塩化ビニル樹脂の物性を下記のような方法で測定した。
【0054】
a)樹脂の熱安定性(樹脂自体の熱分解時間の測定)−熱分解分析機(TGA:ThermoGravimetric Analyzer)の補正作業を実施し、前記実施例1ないし7及び比較例1または2で製造した塩化ビニル樹脂の量をそれぞれ10.0±0.5mgの重量にして、窒素気流下で下記表1のような条件で熱分解時間を測定し、その結果を下記の表2に表した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
b)加工時の熱安定性(HAKKE熱分解時間の測定)−前記実施例1ないし7及び比較例1ないし3で製造した塩化ビニル樹脂それぞれを下記のような配合条件で配合器に入れて3分間混錬した後、HAKKEミキサーに入れて熱分解時間を測定し、その結果を下記の表3に表した。このとき、HAKKEの測定条件は、190℃の温度でスクリューローテーション速度40rpmとした。
【0058】
配合条件:塩化ビニル(共重合)樹脂100重量部、複合安定剤5重量部、衝撃補強剤6重量部、炭酸カルシウム5重量部、及び二酸化チタン4重量部
【0059】
【表3】

【0060】
c)白色度及び耐候性−前記実施例1ないし7及び比較例1ないし3で製造した塩化ビニル樹脂それぞれ100重量部、複合安定剤5重量部、衝撃補強剤6重量部、炭酸カルシウム5重量部、及び二酸化チタン4重量部を配合器に入れて3分間混錬した後、HAKKE圧出器に投入して160、165、170、180、190℃の温度範囲で圧出して、厚さ3mmの板状の試片をそれぞれ2個ずつ製作した。前記試片のうち1個を使用して白色度及び黄色度を測定し、他の1個を使用してUVランプで100時間ずつ露出させた後に耐候性を測定し、その結果を下記の表4に表した。
【0061】
【表4】

【0062】
前記表2ないし4を通じて、本発明によって製造した実施例1ないし7の塩化ビニル樹脂が、比較例1ないし3と比較して、樹脂自体の熱安定性及び加工時の熱安定性に優れるだけでなく、白色度及び耐候性も優秀であるということが確認できた。
【0063】
以上、本発明に記載された具体例についてのみ詳細に説明されたが、当業者ならば、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるということが分かるであろう。また、このような変形及び修正は、特許請求の範囲に属するということは当然なことである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の塩化ビニル樹脂組成物に使われる金属酸化物の一例である二酸化チタンのルタイル構造とアナターゼ構造とを示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)塩化ビニル系高分子樹脂100重量部と、
b)有機化処理された金属酸化物ナノ粒子0.1ないし30重量部と、を含む塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
前記b)の有機化処理された金属酸化物ナノ粒子の金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、三酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び酸化シリカからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
前記b)の有機化処理された金属酸化物ナノ粒子は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースのセルロース系分散剤、炭素数6〜18のアルキルまたはアリール系カルボン酸基化合物、及び炭素数6〜18のアルキルまたはアリール系リン酸基化合物からなる群から選択される1種以上の有機物を使用して有機化されたことを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
前記b)の有機化処理された金属酸化物ナノ粒子の平均粒径は、10ないし300nmであることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項5】
前記塩化ビニル系高分子樹脂100重量部に対して、アクリル系樹脂0.1ないし10重量部が共重合されてさらに含まれることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項6】
ガラス転移温度(Tg)は、100ないし250℃であることを特徴とする請求項5に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項7】
前記塩化ビニル樹脂組成物は、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、及び光安定剤からなる群から選択される1種以上を添加剤としてさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項8】
(a)塩化ビニル系単量体100重量部及び有機化処理された金属酸化物ナノ粒子0.1ないし30重量部を混合して重合原料混合物を製造するステップと、
(b)前記混合結果物を懸濁重合するステップと、を含む塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記有機化処理された金属酸化物ナノ粒子は、ゾル状態または粉末状態で使われることを特徴とする請求項8に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記有機化処理された金属酸化物ナノ粒子を、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースのセルロース系分散剤、炭素数6〜18のアルキルまたはアリール系カルボン酸基化合物、及び炭素数6〜18のアルキルまたはアリール系リン酸基化合物からなる群から選択される1種以上の有機物を使用して有機化して調製する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記セルロース系分散剤は、0.5〜15重量%の溶液として使われることを特徴とする請求項10に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物ナノ粒子の有機化処理時、金属酸化物ナノ粒子と有機物とが1:1ないし1:4の割合で反応することを特徴とする請求項10に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記重合原料混合物は、アクリル系単量体0.1ないし10重量部をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記アクリル系単量体は、下記化学式1または化学式2で表示される化合物であることを特徴とする請求項13に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法:
【化1】

【化2】

前記化学式1及び化学式2で、Rは水素、炭素数1〜20の直鎖または分枝鎖のアルキル、炭素数3〜16のアリール、または炭素数5〜8のシクロアルキルである。
【請求項15】
前記アクリル系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、メチル−2−シアノアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル−2−シアノアクリレート、及び1−エチルプロピル−2−シアノアクリレートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項13に記載の塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−530727(P2007−530727A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504898(P2007−504898)
【出願日】平成17年10月15日(2005.10.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003450
【国際公開番号】WO2006/049392
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】