説明

塩化マグネシウムに基づく付加物およびそれから得られる触媒成分

式:MgCln(OR)2-nLBp(式中、nは0.1〜1.9であり、pは0.4より大きく、そしてRはC1―C15の炭化水素基である)により定義される互いのモル比で、式:MgCln(OR)2-nの化合物および非プロトン性ルイス塩基(LB)を含むルイス塩基付加物。本発明の付加物は、オレフィン重合用のチーグラー−ナッタ触媒成分の前駆体として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化学構造式の化合物から構成され、少なくとも一つのマグネシウム化合物とルイス塩基を特定量で含有するルイス塩基付加物に関する。本発明の付加物は、オレフィン重合用のチーグラー−ナッタ触媒成分の前駆体として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化マグネシウム上に担持されたチタン化合物を含む最近のZN触媒は、先行技術で公知である。このタイプの触媒は、米国特許第4,298,718号に記述されている。前記の触媒は、マグネシウムのハロゲン化物上に担持された四ハロゲン化チタンから構成されている。該触媒はプロピレンの如きα-オレフィンの重合で高い活性を有しているとはいえ、それらはそれほど立体特異的ではない。立体特異性の改善は、固体触媒成分に電子供与化合物を添加することで達成されている。
【0003】
実質的な改善は、固体成分中に存在する電子供与体に加えて、アルミニウムアルキル共触媒成分または重合反応器のいずれかに添加される電子供与体(外部)を使用することで達成されている。
【0004】
この方法で改変された触媒は、高度に立体特異的ある(得られた重合体は、キシレン中で約94−95%不溶である)とはいえ、いまだ十分な高レベルの活性を示していなかった。
【0005】
活性度と立体特異性との両方での有効な改善が、米国特許第4,226,741号に記述されている技法によって固体触媒成分を調製することで達成されている。触媒活性度と同様に立体特異性における高レベルの性能が、欧州特許第045,977号に記載された触媒を用いて得られている。前記の触媒は、固体触媒成分として、ハロゲン化チタン、好ましくはTiCl4が担持されているハロゲン化マグネシウムと(カルボン酸エステルの特定の組から選択される)電子供与化合物、および共触媒成分として、Al−トリアルキル化合物と少なくとも一つのSi−OR結合(Rは炭化水素基)を含有するシリコン化合物から形成される系から構成される。
それでも尚、研究活動が、前述の触媒の性能を改変および/または改善する目的で行われている。
【0006】
欧州特許EP361,494号とEP728,769号は、内部電子供与化合物として、無水塩化マグネシウムとTiCl4に対して特徴的な、特定の構造および/または特定の反応性によって特徴付けられる1,3−ジエーテルから構成されるオレフィン重合用の極めて活性な固体触媒成分を記載している。前記の触媒成分とAl−アルキル化合物との反応から得られた触媒は、オレフィンの重合で極めて高い活性と立体特異性を示すので、外部電子供与体の使用を避けることができる。
【0007】
触媒活性度は、触媒が、RがC1−C10のアルキル基、好ましくはエチルで、そしてn
が2〜6である、式MgCl2(ROH)nの付加物を含む前駆体から出発して得られる場合、特に高い。このタイプの前駆体がチタン化合物、通常TiCl4と反応される場合、大量の塩酸が発生し、それは中和され、除去されなければならない。更に、そのような担持体の収率は別段に高くないと考えられている。例えば、得られた最終触媒量は一般的に、n値を約3とした出発担持体量の僅か約40重量%の量のMgCl2しか含まない。
該パーセントは、n値が高い程いっそう低くなる。
【0008】
塩化水素を発生させず、且つより高い比率の最終触媒を生じる前駆体は、例えば一般構造式がMgXn(OR)2-nである米国特許4,315,835号で開示されたものである。加えるに、これらの前駆体は、触媒粒子が50μm以下の如き小さい平均直径を有する場合でさえ狭い粒子寸法分布で特徴付けられる最終触媒を製造する事ができる。この種の前駆体に結びつく一つの問題は、しかしながら、触媒成分g当たり重合体量で表現される低い重合活性度である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今回、本出願人は、Ti化合物との反応において、高重合活性を有する触媒成分を高収率で製造し、且つ該反応を通して実質的に塩化水素を発生しない新規な前駆体を発見した。
【0010】
前記の触媒前駆体は、式:MgCln(OR)2-nLB(式中、nは0.1〜1.9であり、pは0.4より大きく、そしてRはC1―C15の炭化水素基である)により定義される互いのモル比で、式:MgCln(OR)2-nの化合物および非プロトン性ルイス塩基(LB)を含むルイス塩基付加物から構成される。好ましくは、pは0.45より大きく、一層好ましくは0.5〜3、特に0.5〜2の範囲である。
本発明の特定の場合では、nは0.4〜1.6、好ましくは0.7〜1.5の範囲である。
【0011】
非プロトン性ルイス塩基は、好ましくはエ−テル、エステル、ケトン、シラン、アミン、ニトリルおよびアミドから選択される。好ましくは、エ−テルまたはエステルから選択される。
【0012】
好ましいエーテルは、C2―C20の脂肪族エーテル、および殊に、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンの如き3−5の炭素原子を有する環状エーテルである。
【0013】
好ましいエステルは、C1―C20の脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、および殊に、エチルアセテート、メチルフォルメート、エチルフォルメート、メチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n‐ブチルセテート、イソブチルアセテートの如き脂肪族モノカルボン酸のC1―C8のアルキルエステルである。
【0014】
好ましいアルコキシシランは、(aとbが0〜2の間の整数、cが1〜4の間の整数で且つ和(a + b + c)が4であり、R1、R2とR3が任意にヘテロ原子を含んでいてもよい1−18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)式R1a2bSi(OR3c のものである。特に好ましくは、aが0または1、cが2または3で、R2が任意にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキルまたはシクロアルキル基で、R3がメチルであるシリコン化合物である。そのような好ましいシリコン化合物の例は、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびt-ブチルトリメトキシシランである。
【0015】
好ましいケトンは、R4基が、独立に、C1―C20の炭化水素基である、式R4COR4のものである。特に好ましくは、少なくとも一つのR4がC1―C10の炭化水素基であるケトンである。
【0016】
好ましいアミンは、R5基が、独立に、C1―C20の炭化水素基である、式NR53のものである。好ましくは、R5がC1―C10の炭化水素基である。具体的な例は、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミンおよびトリ-n-ブチルアミンである。
【0017】
好ましいアミドは、R6が水素またはC1―C20の炭化水素基、およびR7が独立に、C1―C20の炭化水素基である、式R6CONR72のものである。具体的な例は、N、N−ジメチルフォルムアミドおよびN、N−ジメチルアセトアミドである。
【0018】
好ましいニトリルは、R8がR4と同じ意味を有する式R8CNのものである。具体的な例は、アセトニトリルである。好ましくは、R8は、C1―C10の炭化水素基である。具体例は、メチル、エチル、イソプロピルおよびブチルである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の前駆体は、種々の方法によって製造することができる。一つの好ましい方法は、LB化合物の存在中で行なわれる、MgCln(OR)2-n化合物を形成させることから構成される。この方法で得られる担体は、実際、LB化合物を用いてあらかじめ予備形成されたMgCln(OR)2-n種を接触させることによって得られたもの以上の優れた性質を示す。
【0020】
MgCln(OR)2-n化合物は、mが0.1〜1.9であり、Rが炭化水素基である、式ClmMgR2-mの有機金属化合物と適切な−OR源との間の交換反応で製造することができる。該OR源は、例えばROHアルコール、または好ましくは、rが1〜4であり、Rが上で与えられた意味を有する式(RO)rSiR4-r のシリコン化合物であり、シリコンテトラエトキサイドが好ましい。同様に、先行技術で一般的に知られている如く、式ClmMgR2-m の有機金属化合物は、任意に適切な促進剤の存在中、金属MgとRが上で定義された如き塩素化有機物RClとの間の反応によって得ることができる。好ましくは、ClmMgR2-m の形成と、OR源との更なる交換は、一つの単一工程で行われる。この場合、LB化合物がClmMgR2-m種の形成を起こさせる反応の初期から存在することが特に好ましい。上で述べた好ましいエーテルの使用が、この方法を実施するために特に好適である。該反応は、室温で液体である炭化水素の如き不活性媒体中で行われる。通常、OR源との大部分の量の交換が起こると、式MgCln(OR)2-nLBpの化合物は沈殿し、容易に単離できる。
【0021】
他の方法によれば、式MgCln(OR)2-nLBpの化合物は、LB化合物の存在中、R9がHまたはRであるR9Cl化合物によって、Mg(OR)2化合物を塩素化させることで製造することができる。
【0022】
更なる方法によれば、式MgCln(OR)2-nLBpの化合物は、MgCl2とMg(OR)2の混合物をLB化合物の存在下に反応させることで製造することができる。
【0023】
エステルがLB化合物として使用される場合、エチルアセテートが特に好ましい。エーテルがLB化合物として使用される場合、上で述べた好ましいエーテルおよび、特にTHFが、この方法の実施で特に好適である。不活性溶剤が出発化合物を接触させるために使用されるが、これは必須ではない。清澄な反応製造物の溶液が得られるLBの量を使用する利点が発見されている。反応温度は、重要ではないが、いずれの反応物質または製造物の分解を起こさせる温度は避けなければならない。この溶液から、式MgCln(OR)2-nLBpの化合物は、結晶化、非溶剤での沈殿等の如き既知の技法を用いて単離される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
上で述べた如く、これらの前駆体はオレフィン重合用の触媒成分の製造において、固体または溶液中の何れかで、有利に使用される。該触媒成分は、本発明の前駆体を、元素周期律表(新表記)の4〜6族の一つに属する遷移金属の化合物と接触させることにより得られる。遷移金属化合物の中で特に好ましいものは、(nが0とyの間に含まれ、yがチタンの原子価で、Xがハロゲンであり、Rが1−10の炭素原子を有するアルキル基またはCOR基である)式Ti(OR)ny-nのチタン化合物である。それらの間で、特に好ましいものは、四ハロゲン化チタンまたはチタニウムハロゲンアルコレートの如き少なくとも一つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物である。好ましい具体的なチタン化合物は、TiCl3、TiCl4、Ti(OBu)4、Ti(OBu)Cl3、Ti(OBu)2Cl2、Ti(OBu)3Clである。
【0025】
好ましい接触は、該前駆体を冷TiCl4(一般的に0℃)中に懸濁させ、次にそのようにして得られた混合物を80−130℃まで加熱し、0.5−2時間の間この温度で保つことで行われる。その後、過剰のTiCl4が除去され、固体成分が回収される。TiCl4を使用する処理は一回以上行われる。上述の如く、立体性変調性の電子供与化合物もまた、それを立体特異性とするために固体触媒成分に添加することができる。電子供与体の導入は、遷移金属化合物と該付加物との反応で同時になされる。この接触の結果として、電子供与化合物は標準的に触媒成分上に付着したままである。前記の電子供与化合物は、上述したLB化合物と同じか、または異なって、一般的にエステル、エーテル、アミンおよびケトンから選択される。
【0026】
特に、上述した如く、優れた結果が次式(I)
【化1】

(式中、RIとRIIは、同じか異なって、水素または、一つ以上の環状構造を形成する
こともできる直鎖または分枝したC1−C18の炭化水素基で、RIII基は、互いに同一また
は異なって、水素または、C1−C18の炭化水素基で、RIV基は互いに同一または異なっ
て、それらが水素でない以外ではRIIIと同じ意味を有し、各RI〜RIV基は、ハロゲン、
N、O、SおよびSiから選択されるヘテロ原子を含むことができる)の1,3−ジエーテルを用いて得られている。
【0027】
好ましくは、RIVは、1−6の炭素原子のアルキル基で、一層好ましくはメチルで一方
III基は好ましくは水素である。更に、RIがメチル、エチル、プロピルまたはイソプロ
ピルである場合、RIIは、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、te
rt‐ブチル、イソペンチル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、フェニルまたはベンジルで、RIが水素の場合、RIIは、エチル
、ブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルエチル、ジフェニルメチル、p‐クロロフェニル、1−ナフチル、1−デカヒドロナフチルであり、RIとRIIはまた同じであり、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ
ブチル、tert‐ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシル、シクロペンチルである。
【0028】
有利に使用することができるエーテルの具体例は、:2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec‐ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert‐ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p‐クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p‐フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p-tert‐ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−メチルシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p‐クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p‐メチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトオキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ-sec‐ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ-tert‐ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパンを含む。
【0029】
更に、特に好ましくは次式(II)の1,3−ジエーテル
【化2】

[式中、
IV基は、上で説明した同じ意味を有し、RIIIとRV基は互いに同一または異なって、
水素;ハロゲン、好ましくは塩素およびフッ素;直鎖または分枝したC1−C20アルキル基;C3−C20シクロアルキル、C6―C20アリール、C7―C20アルカリールおよびC7―C20アラルキル基から構成される群から選択され、二つ以上のRV基は互いに結合して、飽和または不飽和の[任意に、(ハロゲン、好ましくは塩素とフッ素;直鎖または分枝したC1―C20アルキル基;C3−C20シクロアルキル、C6―C20アリール、C7―C20アルカリールおよびC7―C20アラルキル基から構成される群から選択された)RVI基で置換されていてもよい]縮合環状構造を形成し、前記のRVおよびRVI基は、任意に炭素もしくは水素原子、またはその両方の置換基として一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい]である。
【0030】
好ましくは、式(I)と(II)の1,3−ジエーテルで、すべてのRIII基は水素で、すべてのRIV基はメチルである。更に、特に好ましくは、二つ以上のRV基が互いに結合して一つ以上の縮合環状構造、任意にRVI基で置換されていてもよく、好ましくはベンゼン系、を形成する式(II)の1,3−ジエーテルである。
【0031】
特に好ましくは、式(III)の化合物、
【化3】

(式中、
VI基は、同一または異なって、水素;ハロゲン、好ましくは塩素とフッ素;直鎖また
は分枝したC1―C20アルキル基;炭素もしくは水素原子、または両方の置換基として、任意に、N、O、S、P、Siならびにハロゲン、特に塩素およびフッ素から選択される一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、C3−C20シクロアルキル、C6―C20アリール、C7―C20アルキルアリールおよびC7―C20アラルキル基であり、基RIIIおよびRIV基は、式(II)に関して上で定義された如くである)である。
【0032】
式(II)と(III)に含まれる化合物の具体例は、1,1−ビス(メトキシメチル)−シクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフルオロシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−3,4−ジシクロペンチルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−インデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラフルオロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−3,6−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニル−2−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−シクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)インデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリメチシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリフルオロメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロペンチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−イソプロピルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert‐ブチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert‐ブチル−2−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−ベンツ[e]インデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−2−メチルベンツ[e]インデン、9,9−ビス(メトキシメチル)−フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラメチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5,6,7−ヘキサフルオロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3−ベンゾフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジイソプロピルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジフルオロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−4−tert‐ブチルフルオレンである。
【0033】
これらのジエーテルを用いて得られる触媒成分は、実際、重合活性と立体特異性に関して、チタン化合物と1,3−ジエーテルを米国特許4,315,835号で記述されているもの如き先行技術の前駆体と接触させて得られるもの以上の、改善された特性を有している。
【0034】
好適な電子供与体はまた、モノ‐またはポリカルボン酸のアルキルおよびアリールエステルで、好ましくは例えば、安息香酸、フタール酸、マロン酸、グルタール酸および琥珀酸のエステルである。そのようなエステルの具体例は、ジ‐n‐ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ‐n‐オクチルフタレート、ジエチル2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル2,3−ジシクロヘキシルスクシネート、エチルベンゾエートおよびエチルp‐エトキシベンゾエートである。
【0035】
触媒の製造で使用される電子供与化合物は、一般的に、マグネシウムに対するモル比で、1:2〜1:20の範囲である。
【0036】
本発明による固体触媒成分は、一般的に10と500m2/gの間の、好ましくは20と350m2/gの間の表面積(B.E.T.法による)および、0.1cm3/gより大きく、好ましくは0.2と0.6cm3/gの間の全空隙率(B.E.T.法による)を示す。
【0037】
本発明の触媒成分は、(Rが水素または1−12の炭素原子を有する炭化水素基である)α-オレフィンCH2=CHRの重合用触媒を、有機-Al化合物特にAl‐アルキル化合物と反応または接触することで形成する。アルキル‐Al化合物は、好ましくは例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ‐n‐ブチルアルミニウム、トリ‐n‐ヘキシルアルミニウム、トリ‐n‐オクチルアルミニウムの如きトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。任意に前記のトリアルキルアルミニウム化合物との混合で、AlEt2ClおよびAl2Et3Cl3の如き、ハロゲン化アルミニウム、水素化アルミニウムまたはアルミニウムセスキクロライドを使用することも可能である。
Al/Ti比は、1より大きく、一般的に20と800の間から構成される。
【0038】
例えばプロピレンおよび1−ブテンの如き、α‐オレフィンの立体規則性重合の場合、内部供与体として使用される化合物と同じか異なっている電子供与化合物(外部供与体)は、上で開示された触媒の製造で使用することができる。内部供与体が、ポリカルボン酸のエステル、特にフタレートの場合、外部供与体は、好ましくは、(式中、aとbが0から2の間の整数で、cが1から3の間の整数で且つ和(a + b + c)が4であり、R1、R2とR3が、1−18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)式Ra1b2Si(OR3c を有する、少なくとも一つのSi―OR結合を含むシラン化合物から選択される。特に好ましくは、aが1、bが1、cが2で、R1とR2の少なくとも一つが、3−10の炭素原子を有する分枝したアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、R3がC1−C10アルキル基、特にメチルである、シリコン化合物である。そのような好ましいシリコン化合物の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t-ブチルジメトキシシランおよびジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0039】
更にまた、好ましいシリコン化合物は、aが0で、cが3で、R2が分枝したアルキルまたはシクロアルキル基で、R3がメチルの化合物である。そのような好ましいシリコン化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t‐ブチルトリメトキシシランおよびテキシル(thexyl)トリメトキシシランである。
【0040】
また、前述の構造式を有する1,3−ジエーテルは外部供与体として使用できる。しかしながら、1,3−ジエーテルが内部供与体として使用される場合、触媒の立体特異性が各種の用途で使用される重合体に対して既に十分高いので、外部供与体の使用は避けることができる。
【0041】
既に示した如く、本発明の成分とそれから得られる触媒は、Rが水素或いは1−12の炭素原子を有する炭化水素基である、式CH2=CHRのオレフィンの(共)重合の工程で用途を見出す。
【0042】
本発明の触媒は、先行技術で公知の何れのオレフィン重合工程でも使用することができる。それらは例えば、不活性炭化水素溶剤を希釈剤として使用するスラリー重合或いは反応媒体として液状モノマー(例えば、プロピレン)を使用する塊状重合で使用することができる。更に、それらはまた、一つ以上の流動或いは機械的に攪拌される床反応器中で操作される、気相で行われる重合工程で使用することが出来る。
【0043】
重合は一般的に、20から120℃の間、好ましくは40から80℃の間の温度で行われる。重合が気相で行われる場合、操作圧力は一般的に0.1から10MPaの間、好ましくは1から5MPaの間である。塊状重合では、操作圧力は一般的に1と6MPaの間、好ましくは1.5と4MPaの間である。
【0044】
本発明の触媒は、広い範囲のポリオレフィン製品の製造に極めて有用である。製造することが出来るオレフィン系重合体の具体例は、エチレン単独重合体およびエチレンと3−12の炭素原子を有するα-オレフィンとの共重合体を含む、高密度エチレン重合体(0.940g/ccより高い密度を有する、HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(0.940g/ccより低い密度を有する、LLDPE)と、80%より高いエチレンから誘導される単位体のモル含有量を有する、エチレンと3−12の炭素原子を有する一つ以上のα-オレフィンとの共重合体を含む、超低密度および極超低密度ポリエチレン(0.920g/ccより低い密度、0.880g/ccまでの密度を有する、VLDPEおよびULDPE)、イソタクチックポリプロピレンおよび、85重量%より高いプロピレンから誘導される単位体の含有量を有する、プロピレンとエチレンおよび/または他のα-オレフィンの結晶性共重合体、プロピレンと、1と40重量%の間から構成される1−ブテンから誘導される単位体の含有量を有する、1−ブテンとの共重合体、結晶性ポリプロピレンのマトリックスと、(プロピレンとエチレンおよびまたは他のα-オレフィンとの共重合体から構成される)非晶相から構成される、異相(heterophasic)共重合体である。
【実施例】
【0045】
次の例は、本発明そのものを説明するために与えられ、制限するものではない。
キャラクタリゼーション
X.I.の測定
2.50gの重合体が、135℃で30分間攪拌下に250mlの0‐キシレンに溶解され、次に溶液は25℃に冷却され、30分後、不溶重合体は濾別された。結果として得られた溶液は窒素気流下に蒸発され、残渣は乾燥されそして、溶解重合体のパーセンテージ、次に、差により、キシレン不溶分画(%)を測定するために計量された。
【0046】
粒子サイズ分布(Span)
本発明による粒子サイズ分布は、式
【数1】

(式中、粒子サイズ分布曲線中、P90は全粒子の90%がその値より小さい直径を有する如き直径の値で、P10は全粒子の10%がその値より小さい直径を有する如き直径の値で、且つP50は全粒子の50%がその値より小さい直径を有する如き直径の値である)
で計算される。
【0047】
多分散指数の測定
この特性は、試験下の重合体の分子量分布と厳密に結びついている。特に、それは溶融状態の重合体の耐クリープ性に反比例する。低弾性率値(500Pa)で弾性率分離と呼ばれる前記の抵抗は、RHEOMETRICS社(米国)により販売されているモデルRMS-800平行板レオメーターを使用し、0.1rad/秒から100rad/秒の間で増加する振動周波数で操作して、200℃で測定した。交差弾性率から、次式によりP.I.が誘導できる:
P.I. = 105/Gc
式中、Gcは、G'が貯蔵弾性率でG''が損出弾性率である、G‘=G''での値(Paで表される)として定義される交差弾性率である。
メルト指数:ASTM D‐1238により条件“L" で、190℃で測定。
極限粘度:テトラヒドロナフタレン中135℃で測定。
【0048】
実施例
ジエーテルに基づく触媒の製造の基本手順(手順A)
機械式攪拌器、還流凝縮器と温度計を備え、窒素で浄化された800mlの4頸ガラス反応器中に、300mlのTiCl4が導入され、0℃に冷却された。攪拌の間に、12.0gの前駆体(次の実施例の一つで記述された如く製造された付加物)が添加された。温度が0.5時間で40℃に昇温され、その後、該前駆体中に存在するMgのモル当り0.167モルに相当する量の、9,9‐ビス(メトキシメチル)フルオレンが該懸濁物中に添加された。次に温度が1時間で110℃に昇温され、反応混合物はこの温度で2時間の間攪拌された。攪拌が中断された後、固体製品が15分間沈降され、上澄み液が汲みだされた。
次に300mlの新鮮なTiCl4が、上で記述された如く得られた固体製品に添加され、該混合物は110℃で1時間、攪拌下に反応された。攪拌を停止した後、固体製品は15分間沈降され、上澄み液が汲みだされた。
結果として得られた固体は、50℃で5回、ヘキサンで洗浄され、室温で更に2回洗浄され、最終的に真空下40℃で乾燥され、標記の触媒を与えた。
【0049】
フタレートに基づく触媒の製造の基本手順(手順B)
機械式攪拌器、還流凝縮器と温度計を備え、窒素で浄化された800mlの4頸ガラス反応器中に、300mlのTiCl4が導入され、0℃に冷却された。攪拌の間に、12.0gの前駆体(次の実施例の一つで記述された如く製造された付加物)が添加された。温度が0.5時間で40℃に昇温され、その後、該前駆体中に存在するMgのモル当り0.100モルに相当する量の、ジイソブチルフタレートが該懸濁物中に添加された。次に温度が1時間で120℃に昇温され、反応混合物はこの温度で2時間の間攪拌された。攪拌が中断された後、固体製品が15分間沈降され、上澄み液が汲みだされた。
次に300mlの新鮮なTiCl4が、上で記述された如く得られた固体製品に添加され、該混合物は120℃で1時間、攪拌下に反応された。攪拌を停止した後、固体製品は15分間沈降され、上澄み液が汲みだされた。
固体は、50℃で5回、ヘキサンで洗浄され、室温で更に2回洗浄され、最終的に真空下40℃で乾燥され、標記の触媒を与えた。
【0050】
外部供与体を使用するプロピレンの重合の基本手順(手順I)
70℃で2時間、窒素流で浄化された4Lのオートクレーブに、760mgのAlEt3、63mgのジシクロペンチルジメトキシシランと10.0mgの上で記述された如きに製造された固体触媒を含む75mlの無水ヘキサンが、30℃でプロピレン流中で導入された。オートクレーブが閉じられた。同じ温度で、2.0NLの水素が添加され、次に攪拌下に1.2Kgの液体プロピレンが供給された。温度が5分間で70℃に昇温され、重合がこの温度で2時間の間行われた。その後、非反応プロピレンが除去され、形成した重合体が収集され、70℃で真空下3時間の間乾燥され、次に計量され、残渣Mgの存在量が分析され、それに基づいて触媒の活性度が計算された。
【0051】
外部供与体を使用しないプロピレンの重合の基本手順(手順II)
70℃で2時間、窒素流で浄化された4Lのオートクレーブに、600mgのAlEt3と6.00mgの上で記述された如きに製造された固体触媒を含む75mlの無水ヘキサンが、30℃でプロピレン流中で導入された。オートクレーブが閉じられた。同じ温度で、1.5NLの水素が添加され、次に攪拌下に1.2Kgの液体プロピレンが供給された。温度が5分間で70℃に昇温され、重合がこの温度で2時間の間行われた。その後、非反応プロピレンが除去され、形成した重合体が収集され、70℃で真空下3時間の間乾燥され、次に計量され、残渣Mgの存在量が分析され、それに基づいて触媒の活性度が計算された。
【0052】
実施例 1
前駆体の製造
機械式攪拌器、還流凝縮器、温度計と添加漏斗を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、マグネシウムの小片(6.14g)、テトラエトキシシラン(85.0mL)および無水テトラヒドロフラン(20.4mL)を仕込まれた。このようにして得られた反応混合物は、300r.p.m.で回転中、室温で、0.15mLのヨードメタン中の沃素の溶液(15mLのヨードメタン当り3.0gの沃素)を用いて処理され、次に約80℃まで加熱された。反応混合物の脱色の後、それは70−80℃の範囲で混合物の温度を保って、無水へプタン(31.7mL)中の1−クロロブタン(31.7mL)の溶液で、90分の間で滴下処理された。添加が完了すると、攪拌は120分間75℃で継続された。形成した沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、次に真空中室温で乾燥されて、38.4gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―15.3重量%、Cl―22.2重量%、EtO―27.8重量%、THF−31.2重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、二つの触媒成分(手順AとB)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0053】
実施例 2
前駆体の製造
機械式攪拌器、還流凝縮器、温度計と添加漏斗を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、マグネシウムの小片(5.65g)、テトラエトキシシラン(70.0mL)および無水テトラヒドロフラン(56.0mL)を仕込まれた。このようにして得られた反応混合物は、300r.p.m.で回転中、室温で、0.15mLのヨードメタン中の沃素の溶液(15mLのヨードメタン当り3.0gの沃素)を用いて処理され、次に約80℃まで加熱された。反応混合物の脱色の後、それは70−80℃の範囲で混合物の温度を保って、テトラエトキシシラン(29.2mL)中の1−クロロブタン(29.2mL)の溶液で、110分の間で滴下処理された。添加が完了すると、攪拌は2時間75℃で継続された。形成した沈殿は、濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、次に真空中室温で乾燥されて、白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―13.7重量%、Cl―19.8重量%、THF−42.7重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、二つの触媒成分(手順AとB)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0054】
実施例 3
前駆体の製造
機械式攪拌器、還流凝縮器、温度計と添加漏斗を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中に、マグネシウムの小片(8.00g)とテトラエトキシシラン(111mL)を仕込まれた。このようにして得られた反応混合物は、300r.p.m.で回転中、室温で、0.20mLのヨードメタン中の沃素の溶液(15mLのヨードメタン当り3.0gの沃素)を用いて処理され、次に約70℃まで加熱された。反応混合物の脱色の後、それは70−80℃の範囲で混合物の温度を保って、無水ヘプタン(41.0mL)中の1−クロロブタン(41.0mL)の溶液で、90分の間で滴下処理された。添加が完了すると、攪拌は120分間75℃で継続された。その後、混合物が無水テトラヒドロフラン(26.7mL)を用いて60℃で10分の間で滴下処理され、添加の完了の後、75℃で120分間攪拌された。形成した沈殿は、濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、次に真空中室温で乾燥されて、47.0gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―17.0重量%、Cl―30.8重量%、EtO−24.2重量%、THF−26.9重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、一つの触媒成分(手順B)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0055】
実施例 4
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中に、無水塩化マグネシウム(8.58g)、マグネシウムエトキサイド(10.3g)および無水テトラヒドロフラン(246mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で3時間攪拌された。結果として得られた溶液は、次に0℃に冷却され、この温度で1時間の間結晶化された。形成した結晶が濾別された後、得られた母液は、室温に保たれた無水ヘキサン(1.23L)に窒素下、一括で素早く添加された。付加物の白い沈殿が直ちに形成された。該混合物が追加の15分間攪拌された後、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、次に真空中室温で乾燥されて、20.9gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―12.5重量%、Cl―18.8重量%、EtO−23.7重量%、THF−40.8重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、二つの触媒成分(手順AとB)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0056】
実施例 5a
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、無水塩化マグネシウム(5.10g)、マグネシウムエトキサイド(6.13g)および無水テトラヒドロフラン(250mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で攪拌された。添加の完了の後、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、次に真空中室温で乾燥されて、17.9gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―12.7重量%、Cl―18.9重量%、EtO−24.3重量%、THF−39.9重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、一つの触媒成分(手順A)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0057】
実施例 5b
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、無水塩化マグネシウム(25.6g)、マグネシウムエトキサイド(30.8g)および無水テトラヒドロフラン(720mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で2時間攪拌された。その後、結果として得られた溶液は、室温に冷却され、次にこの温度で90分の間窒素下で無水ヘキサン(720mL)で滴下処理された。添加の完了の後、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、最終的に真空中室温で乾燥されて、96.59gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―12.4重量%、Cl―18.6重量%、THF−40.5重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、一つの触媒成分(手順B)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0058】
実施例 6
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中に、無水塩化マグネシウム(25.5g)、マグネシウムエトキサイド(30.6g)および無水テトラヒドロフラン(720mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で3.5時間攪拌された。その後、結果として得られた溶液は、室温に冷却され、次にこの温度で120分の間窒素下で無水ヘキサン(720mL)で滴下処理された。添加の完了の後、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、最終的に室温で、次に真空(10mmHg)中90℃で乾燥されて、69.0gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―17.3重量%、Cl―24.5重量%、EtO−31.5重量%、THF−25.6重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、一つの触媒成分(手順A)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0059】
比較(Comp.)実施例 7
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中に、無水塩化マグネシウム(25.5g)、マグネシウムエトキサイド(30.6g)および無水テトラヒドロフラン(720mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で3.5時間攪拌された。その後、結果として得られた溶液は、室温に冷却され、次にこの温度で120分の間窒素下に無水ヘキサン(720mL)で滴下処理された。添加の完了の後、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、最終的に室温で、次に真空(1mmHg)中90℃で乾燥されて、60.0gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―19.3重量%、Cl―27.7重量%、EtO―35.3重量%、THF―16.6重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、一つの触媒成分(手順A)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0060】
実施例 8
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中に、無水塩化マグネシウム(12.5g)、マグネシウムエトキサイド(5.00g)および無水テトラヒドロフラン(240mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で3時間攪拌された。その後、結果として得られた溶液は、室温に冷却され、次に室温で窒素下に、無水へキサン(1.20L)に素早く添加された。添加の完了の後、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、最終的に真空中室温で乾燥されて、35.3gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―11.0重量%、Cl―24.8重量%、EtO―9.7重量%、THF―52.2重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、二つの触媒成分(手順AとB)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0061】
実施例 9
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、無水塩化マグネシウム(14.2g)、マグネシウムエトキサイド(5.80g)および無水エチルアセテート(265mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で2時間攪拌された。その後、結果として得られた付加物の熱溶液は、室温に保たれ攪拌されている無水へキサン(1.33L)に窒素下に素早く添加された(存在する少量の不溶解物質を除去するため、作り付け濾過器を有するテフロンチューブが、溶液の移送のために使用された)。添加の完了の後、混合物は室温で30分間攪拌された。次に、得られた沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで十分に洗浄され、最終的に真空中室温で乾燥されて、34.8gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―13.4重量%、Cl―28.7重量%、エチルアセテート−41.3重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、二つの触媒成分(手順AとB)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0062】
実施例 10
前駆体の製造
機械式攪拌器と還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、無水塩化マグネシウム(10.0g)、マグネシウムエトキサイド(6.00g)および無水テトラヒドロフラン(215mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で3時間攪拌された。結果として得られた溶液は次に、室温に冷却され、この温度で一夜結晶化させられた。形成した結晶は、濾過で分離され、無水テトラヒドロフラン、次に無水へキサンで洗浄され、最終的に真空中室温で乾燥されて、25.0gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―10.6重量%、Cl―21.4重量%、EtO−12.9重量%、THF―53.8重量%であった。
そのようにして得られた前駆体は、一つの触媒成分(手順A)を製造するために使用され、次に該手順を用いて重合で使用され、表1で示された結果となった。
【0063】
実施例 11
前駆体の製造
機械式攪拌器、還流凝縮器を備えた反応フラスコが、乾燥窒素雰囲気中で、無水塩化マグネシウム(11.6g)、マグネシウムエトキサイド(14.0g)および無水テトラヒドロフラン(320mL)を仕込まれた。反応混合物は、還流され、還流温度で3時間攪拌された。その後、結果として得られた溶液は、室温に冷却され、この温度で窒素下に、無水テトラエトキシシラン(150mL)とジエチルエーテル(150mL)との混合物で17分間で滴下処理された。形成した沈殿は濾過で分離され、無水ヘキサンで洗浄され、次に真空中室温で乾燥されて、38.5gの白色の結晶性固体として、標記の前駆体を与えた。該付加物の組成は、Mg―11.5重量%、Cl―20.4重量%、EtO−17.0重量%、THF−47.5重量%であった。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:MgCln(OR)2-nLBp
(式中、nは0.1〜1.9であり、pは0.4より大きく、そしてRはC1―C15の炭化水素基である)
により定義される互いのモル比で、式MgCln(OR)2-nの化合物および非プロトン性ルイス塩基(LB)を含むルイス塩基付加物。
【請求項2】
LBがエステルまたはエーテルから選択される、請求項1に記載の付加物。
【請求項3】
エーテルが3−5の炭素原子を有する環状エーテルである、請求項2に記載の付加物。
【請求項4】
エーテルがテトラヒドロフランである、請求項3に記載の付加物。
【請求項5】
pが0.45より大きい、請求項1に記載の付加物。
【請求項6】
nが0.4〜1.6の範囲である、請求項1に記載の付加物。
【請求項7】
非プロトン性ルイス塩基(LB)の存在下に、式:ClmMgR2-m
(式中、mは0〜2であり、RはC1−C15の炭化水素基である)
の有機金属化合物をOR源と接触させることを含む、請求項1に記載の付加物の製造方法。
【請求項8】
OR源がROHアルコールおよびオルトケイ酸エステルから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
ClmMgR2-m の形成、およびOR源とのさらなる交換が、一つの単一工程で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
LB化合物の存在下に、MgCl2とMg(OR)2の混合物を反応させることを含む、請求項1に記載の付加物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の付加物を、元素周期律表(新表記)の4〜6族の一つに属する遷移金属の化合物と接触させることにより得られる触媒成分。
【請求項12】
遷移金属化合物が、式:
Ti(OR)ny-n
(ここで、nは0とyの間に含まれ、yはチタンの原子価であり、Xはハロゲンであり、Rは1−10の炭素原子を有するアルキル基またはCOR基である)
のチタン化合物から選択される、請求項11に記載の触媒成分。
【請求項13】
エステル、エーテル、アミンおよびケトンから選択される電子供与体をさらに含む、請求項11に記載の触媒成分。
【請求項14】
電子供与体が式(III):
【化1】

[式中、
VI基は、同一または異なって、水素;ハロゲン、好ましくは塩素およびフッ素;直鎖
または分枝したC1―C20アルキル基;炭素もしくは水素原子、または両方の置換基として、任意に、N、O、S、P、Siならびにハロゲン、特に塩素およびフッ素から選択される一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、C3−C20シクロアルキル、C6―C20アリール、C7―C20アルキルアリールおよぼC7―C20アラルキル基であり、基RIIIおよびRIV基は、請求項23で定義されたとおりである]
の1,3−ジエーテルから選択される、請求項18に記載の触媒成分。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一つに記載の触媒成分を、一つ以上の有機アルミニウム化合物と接触させて得られる、α-オレフィンCH2=CHR(ここで、Rは水素または1−12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用触媒系。
【請求項16】
外部電子供与化合物をさらに含む、請求項15に記載の触媒系。
【請求項17】
請求項15〜16のいずれか一つに記載の触媒の存在下に行われる、オレフィンの重合方法。

【公表番号】特表2007−530747(P2007−530747A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505409(P2007−505409)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002371
【国際公開番号】WO2005/095472
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】