説明

壁体の目地構造及びそれに用いられる金属製屈曲板

【課題】 壁体の目地部分の水密機能を向上して、水が入り込むのを確実に防止する目地構造を提供する。
【解決手段】 両端面に開口する中空孔102を有する矩形の成型板100を縦横に組み付けて壁体を形成する際に設けられる成型板100の離隔端面間の目地部分(105)の構造であり、壁体の外側Tから内側Rに向けて目地空隙Hに挿入配置され少なくとも両外側面板部端面107間隙を水密封鎖する封鎖部12と、封鎖部12に支持されて目地空隙Hの外側表面部分に充填される目地充填体14と、を備えたことを特徴とする壁体の目地構造から構成される。封鎖部12により目地空隙を水分が通過するのを阻止して該水分が壁体の内側Rや成型板100の中空孔内に入り込むのを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端面に開口する中空孔を有する成型板を縦横に組みつけて壁体を形成する際に設けられる成型板間の目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、ビル等の建築物の外壁について、中空孔を有する矩形の成型板を縦横に組み付けて構築されるものが知られている。このような成型板としては、例えば、横長矩形状の中空の成型セメント板等からなり、複数の中空孔が長手方向に沿って設けられて左右両端面側を開口しているものが用いられている。外壁を構築する際には、成型板どうしはある程度隙間を空けて縦横に配置されて縦目地及び横目地が形成されるが、それぞれの目地部分では壁の内側に雨水等が入り込まないようなシール構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−45407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7、図8は、特許文献1記載の外壁の縦目地のシール構造の概略拡大説明図であり、図7、図8に示すように、特許文献1記載の縦目地のシール構造では、左右の成型板100の離隔端面間に壁の内側Rから外側Tに向かって、ゴム等の弾性材等からなるガスケット110、ガラス繊維やロックウール等からなる不燃パッキング112、発泡材等からなるバックアップ材114が順次挿入され、目地の外側表面にシリコン系のシーリング材116が充填されて目地部分を封止する構成である。
【0004】
しかしながら、図7に示すように、従来の縦目地構造では、時の経過に伴ってシーリング材116が劣化して亀裂Cr等が発生すると、矢印Fに示すように、雨水等が該亀裂Crから目地内部に浸入し、バックアップ材や不燃パッキングの隙間等を透水して、成型板の中空孔内に浸入していた。成型板の中空孔内に浸入した水分は該中空孔内に長期間保持されることとなり、成型板の内部から比較的早期に劣化、損傷する原因となっていた。さらに、成型板どうしは、中空孔を介して内部が連通しているので亀裂周辺の成型板に限らず広範囲にわたって移動するおそれもあった。さらに、成型板の中空孔に浸入した水分が外壁の内側Rに入り込む恐れもあった。したがって、縦目地部分の点検、補修等を含むメンテナンスを頻繁にする必要があり、煩雑なものであった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、壁体の目地部分の水密機能を向上して、水が入り込むのを確実に防止する目地構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、両端面に開口する中空孔102を有する矩形の成型板100を縦横に組み付けて壁体(W)を形成する際に設けられる成型板100の離隔端面間の目地部分(105,106)の構造であり、壁体(W)の外側Tから内側Rに向けて目地空隙Hに挿入配置され少なくとも両外側面板部端面107間隙を水密封鎖する封鎖部12と、封鎖部12に支持されて目地空隙Hの外側表面部分に充填される目地充填体14と、を備えたことを特徴とする壁体の目地構造から構成される。封鎖部12は、目地の長手方向長さと同じ長さに一体的に形成されていてもよく、長手方向の途中で連結されるように形成されてもよい。
【0007】
また、封鎖部12は、両外側面板部端面107に密着当接する当接部16と、当接部16に一体連続し外側から内側に透水不能として目地空隙Hを閉鎖する閉鎖本体部18と、を含み、当接部16と両外側面板部端面107との当接状態でそれらを水密接合させる水密接合手段20が設けられたこととしてもよい。
【0008】
また、水密接合手段20は、当接部16と両外側面板部端面107との当接状態でその中間部に充填される接着剤からなることとしてもよい。接着剤としては、例えば、ポリマーセメントモルタル等からなり、封鎖部12と面板部端面107とを長期間水密接合を保持できるものが好適である。
【0009】
また、目地充填体14を両外側面板部端面間隙に充填して目地封止させるように両外側面板部端面間隙よりも挿入深さ側に配置される板、枠体、それらの組み合わせのいずれか1つを含む支持構造26を有することとしてもよい。封鎖部12の閉鎖本体部18が支持構造26の一部を兼ねる構成としてもよい。
【0010】
また、封鎖部12は、当接部16と閉鎖本体部18を形成した1枚の薄板部材を含むこととしてもよい。
【0011】
また、当接部16が両面板部端面107側に対して常時弾性的に付勢当接するように配置されていることとしてもよい。
【0012】
また、薄板部材は挿入深さ方向Zに曲がり部22を有する屈曲板(21)又は湾曲板からなることとしてもよい。薄板部材は、例えば、V字状、U字状等その他任意の形状に屈曲または湾曲されたものでもよい。
【0013】
また、支持構造26は、壁体(W)の内側Rへ向けて封鎖部12を挿入させる際に、所定の挿入深さ位置で該封鎖部12を受止める受止め機構28を有することとしてもよい。
【0014】
また、受止め機構28が壁体(W)の外側Tから目地空隙Hに挿入し、両面板部端面縁にまたがって係止配置される受止め部材30からなることとしてもよい。成型板100を組み付けた後に後付的に受止め機構28を構成でき、施工性がよい。
【0015】
また、目地充填体14は、目地空隙Hに充填されるバックアップ材32と、バックアップ材32の外側表面に充填されて目地空隙Hを封止するシーリング材34と、を含み、封鎖部12は、バックアップ材32を両外側面板部端面107間隙近傍で係止する係止部25を有することとしてもよい。
【0016】
また、封鎖部12は略V字状の金属製屈曲板(21)からなり、V字の上部両端部を当接部16とし、該当接部16が拡開、閉縮するように板ばね状に弾性変形することとしてもよい。
【0017】
また、係止部25は、当接部16から対向内向きに突設し、それらの突設端縁が互いに離隔して形成された係止板部(242)からなることとしてもよい。
【0018】
さらに、本発明は、壁体の目地構造10に用いられる金属製屈曲板(21)から構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の壁体の目地構造によれば、両端面に開口する中空孔を有する矩形の成型板を縦横に組み付けて壁体を形成する際に設けられる成型板の離隔端面間の目地部分の構造であり、壁体の外側から内側に向けて目地空隙に挿入配置され少なくとも両外側面板部端面間隙を水密封鎖する封鎖部と、封鎖部に支持されて目地空隙の外側表面部分に充填される目地充填体と、を備えた構成であるから、封鎖部において水密機能を良好に保持して、目地部分における水密機能を向上できる。その結果、壁体の内側や成型板の中空孔内に水が入り込むのを確実に防止できる。また、水分が成型板内に入り込まないので成型板の早期的な劣化、腐食等を防止できる。さらに、メンテナンス間隔を長期にさせて、実用性が高い目地構造を実現できる。
【0020】
また、封鎖部は、両外側面板部端面に密着当接する当接部と、当接部に一体連続し外側から内側に透水不能として目地空隙を閉鎖する閉鎖本体部と、を含み、当接部と両外側面板部端面との当接状態でそれらを水密接合させる水密接合手段が設けられた構成とすることにより、封鎖部の構造を具体的に構成して、壁体の内側や成型板の中空孔内に水が入り込むのを確実に防止できる。
【0021】
また、水密接合手段は、当接部と両外側面板部端面との当接状態でその中間部に充填される接着剤からなる構成とすることにより、水密接合手段を具体的に実現できる。さらに、施工の際に、簡単かつ単純な工程だけで水密接合作業を行なえる。
【0022】
また、目地充填体を両外側面板部端面間隙に充填して目地封止させるように両外側面板部端面間隙よりも挿入深さ側に配置される板、枠体、それらの組み合わせのいずれか1つを含む支持構造を有する構成とすることにより、目地充填体を確実に所定位置に充填させることができ、目地充填体の目地封止を良好に実効あらしめる。同時に、目地充填材の材料コストの高騰を防止できる。
【0023】
また、封鎖部は、当接部と閉鎖本体部を形成した1枚の薄板部材を含む構成とすることにより、簡単、低コスト構造で封鎖部を製造することができる。
【0024】
また、当接部が両面板部端面側に対して常時弾性的に付勢当接するように配置されている構成とすることにより、封鎖部を挿入配置させた後の、当接部と両面飯給端面との水密接合作業等を含む施工作業がスムーズかつ確実に行える。また、封鎖部が成型板の膨張、収縮やズレ等に追従しながら目地部分の水密性を保持できる。
【0025】
また、薄板部材は挿入深さ方向に曲がり部を有する屈曲板又は湾曲板からなる構成とすることにより、簡単、低コスト構造で封鎖部を製造することができる。また、簡単な構成で封鎖部が支持構造を兼ねる構成とすることができるので、目地構造全体の構成をも簡単、低コストで構成できる。
【0026】
また、支持構造は、壁体の内側へ向けて封鎖部を挿入させる際に、所定の挿入深さ位置で該封鎖部を受止める受止め機構を有する構成とすることにより、封鎖部を挿入操作のみで所定位置に確実に挿入配置できる。さらに、封鎖部の位置調整等の煩雑な作業や挿入のための工具等を必要とせず、施工作業をスムーズに行える。
【0027】
また、受止め機構が壁体の外側から目地空隙に挿入し、両面板部端面縁にまたがって係止配置される受止め部材からなる構成とすることにより、簡単、低コスト構造で受止め機構を製造できる。また、受止め部材の挿入作業を簡便に行って、施工作業全体をスムーズに行なえる。
【0028】
また、目地充填体は、目地空隙に充填されるバックアップ材と、バックアップ材の外側表面に充填されて目地空隙を封止するシーリング材と、を含み、封鎖部は、バックアップ材を両外側面板部端面間隙近傍で係止する係止部を有する構成とすることにより、目地封止を確実にできるとともに、目地充填体の材料コストを維持する。
【0029】
また、封鎖部は略V字状の金属製屈曲板からなり、V字の上部両端部を当接部とし、該当接部が拡開、閉縮するように板ばね状に弾性変形する構成とすることにより、封鎖部を簡単な構成で製造できるとともに、目地空隙への挿入操作がしやすい。さらに、封鎖部の挿入配置後に当接部の水密接合手段による水密接合等を含む施工作業を確実、スムーズに行なえる。
【0030】
また、係止部は、当接部から対向内向きに突設し、それらの突設端縁が互いに離隔して形成された係止板部からなる構成とすることにより、簡単な構成でバックアップ材を確実に係止できる係止部を実現できる。その際、当接部が閉縮する際に係止板どうしが邪魔になることがなく、封鎖部の板ばね状の弾性変形を保持できる。
【0031】
さらに、本発明の壁体の目地構造に用いられる金属製屈曲板によれば、封鎖部を簡単な構成で製造できるとともに、目地部分の施工作業を確実、スムーズに行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の壁体の目地構造の実施の形態について説明する。本発明の壁体の目地構造は、両端面に開口する中空孔を有する矩形の成型板を縦横に組み付けて壁体を形成する際に設けられる成型板の離隔端面間の目地部分の構造であって、壁体の外側から内側に水が入り込むのを良好に防止できる水密機能の優れた目地構造である。
【0033】
図1ないし図6は本発明の壁体の目地構造の実施形態を示している。本実施形態では、図1、図3、図4に示すように、例えば、成型板100を縦横に組み付けて建築物の外壁Wを構築した際に設けられる縦目地105、横目地106のうち、縦目地105部分に適用した形態について説明する。図3、図4に示すように、成型板100は、例えば、内部に中空孔102を有する横長矩形状のセメントを主原料とした成型板からなる。成型板100は、一対の面板部103a、103bと、それらを厚さ方向に連結している複数の連結板104と、を有している。成型板100は、面板部103a、103bと連結板104とで囲まれる略矩形状の複数の中空孔102が横長方向に沿って形成され、該中空孔102は左右両端面で開口している。成型板100が組み付けられて外壁Wを構築する際には、左右に隣接する成型板100の離隔端面間に外壁の外側Tから内側Rに連通する縦長の目地空隙Hが形成される。本実施形態の目地構造10は、この縦目地部分の目地空隙Hを少なくとも水密封鎖する目地構造である。
【0034】
本実施形態に係る目地構造10は、図1、図4に示すように、外壁Wの外側Tから内側Rに向けて目地空隙Hに挿入配置される封鎖部12と、封鎖部12に支持されて目地空隙Hの外側表面部分に充填される目地充填体14と、を備えている。
【0035】
本実施形態において、封鎖部12は、少なくとも成型板100の両外側面板部103aの端面107間隙を水密封鎖する封鎖手段である。本実施形態では、図1に示すように、封鎖部12は、目地空隙Hに曲がり部22側から深く挿入させた金属製のV字屈曲板21からなり、そのV字上端部側を両外側面板部端面107に弾性的に圧接させながら目地空隙を封鎖している。本実施形態では、V字屈曲板21のV字の両上端部は、両外側面板部端面107に密着当接する当接部16を形成している。V字屈曲板21は、該当接部16を両外側面板部103a端面107に当接させた状態で、それらが水密接合されるように該水密接合手段20を介して成型板100と一体的に接合される。さらに、目地空隙Hを閉鎖しているV字屈曲板21の板壁全体部分が、閉鎖本体部18を形成している。この閉鎖本体部18は、両外側面板部端面107に水密接合される両当接部16と一体的に連続する面を有して外側から内側には透水できないようになっている。なお、閉鎖本体部18は、水の通過を遮断する機能を有するために、少なくとも当接部16から一体的に連続形成された連続面を有する構成であればよい。よって、略V字状の構成に限らず、例えば、U字状、W字状、Y字状、コ字状等の屈曲板や湾曲板等、その他任意の連続面構成でもよい。これにより、外壁の外側から両外側面板部端面間隙部分に水分が侵入しても外壁の内側R及び成型板100の中空孔102内へ侵入するのを確実に防止できる。図2にも示すように、本実施形態では、V字屈曲板21は、例えば、0.2〜0.4mm程度の板厚で一方に向けて長い矩形状の亜鉛めっき鋼板等の金属製薄板からなり、その短辺幅方向中間位置をV字鋭角に屈曲されて鉛直方向に長いV字樋状に形成されている。V字屈曲板21は、その長手方向を縦目地部分に沿わせながら、曲がり部22のV字先端を挿入先端側として目地空隙Hに挿入配置される。本実施形態では、V字屈曲板21は、当接部16が外側面板部103aの端面107に当接されるような所定の挿入深さ位置で後述の受止め部材30に受止められる。
【0036】
図3の矢印Xに示すように、V字屈曲板21は、金属製屈曲板からなるので、V字上端側に形成されている当接部16側が拡開、閉縮するように、全体的に板ばね状に弾性変形するようになっている。常時は当接部16が両外側面板部端面107側に対して弾性的に付勢当接するように設けられている。よって、目地空隙に挿入させた後に手を放すと、当接部16が拡開するようにV字屈曲板21が形状復元して当接部16が面板部端面107に密着当接するようになっている。これにより、当接部16と面板部端面107との当接状態を良好に保持できる。また、V字屈曲板21を目地空隙Hに挿入させる際には、例えば手で強制的に当接部16を閉縮させた状態で幅の狭い目地空隙に外側から挿入操作を簡単かつスムーズに行なうこともできる。また、成型板100の温度差による膨張、収縮や、地震等による成型板のズレ等にも追従しながら目地部分の水密を保持できる。なお、本実施形態では、V字屈曲板21のV字挿入長さは、当接部16から挿入深さ方向Zへの長さは任意でよく、例えば、目地空隙の略中間位置まで、或いは中間よりも外側T近くに寄った位置までの長さで形成されていてもよい。また、封鎖部12は、上記のような金属薄板に限らず、例えば、合金や合成樹脂等の不透水性及び耐腐食性のある素材や、少なくとも板表面を防水加工したもの等その他任意のもので構成してもよい。
【0037】
図1、図5に示すように、V字屈曲板21のV字状に対向している板壁部24はそれぞれ中間位置でV字上部側を鈍角状に内向きに屈曲されており、板壁部24には成型板100の端面に略沿うような当接板壁部241が形成されている。本実施形態では、当接板壁部241の対向両外側面の上縁部側が当接部16となっている。本実施形態では、板壁部24は、曲がり部22先端からV字上端側までの幅長さが中空孔102の幅よりも若干大きく設定されて、該中空孔の開口を略閉鎖するように配置されている。また、V字状に対向した板壁部24間には、縦目地の長手方向(鉛直方向)に沿って連通するV字内部空間Sが形成されている。このV字内部空間Sは閉鎖本体部18で止めた水分の排水路となり、縦方向に沿って該水分を下方に誘導し、目地構造の下部側から目地の外部に排水されるようになっている。本実施形態では、板壁部24のV字上端側は、当接面板部241からさらに対向内向きに屈曲されて、係止板壁部242が形成されている。なお、当接板壁部241の両上端部側は若干内向きに屈曲されており、当接部16に接着剤(20)を塗布しやすいようになっている。
【0038】
図1、図5に示すように、封鎖部12には、後述の目地充填材14のバックアップ材34を両外側面板部端面間隙107近傍で係止する係止部25が設けられている。係止部25は、バックアップ材34を挿入方向Z側(目地空隙H内部側)から支持して該目地充填材14を所定位置に充填させて目地封止機能を具体的に実効あらしめる支持手段である。本実施形態では、係止部25は、V字屈曲板21のV字上端部側に形成されている当接部16から対向内向きに突設し、それらの突設端縁が互いに離隔して形成されている係止板壁部242からなる。本実施形態では、係止板壁部242は、V字屈曲板21の板壁部24の上端側を屈曲して形成されている。すなわち、本実施形態では、当接部16、閉鎖本体部18、曲がり部22及び係止部25が一体的に一枚の金属薄板で形成されている。本実施形態では、板壁部24の当接板壁部241に対して鋭角状に内向き屈曲されて、逆ハ字状に対向して形成されている。逆ハ字状に対向している係止板壁部242により、バックアップ材を充填する際に受止めて、所要位置に配置させる。また、係止板壁部242の突設端縁は当接部16の閉縮を邪魔しないように離隔しているので、V字金具21の弾性変形が有効に機能し得る。なお、係止板壁部の屈曲角度は任意でよく、板壁部241から略90度や鈍角の角度に屈曲されて突設されていてもよい。
【0039】
本実施形態では、V字屈曲板21は、目地充填体14を両外側面板部端面107間隙に充填して目地封止させるように配置されている。すなわち、図1、図4に示すように、目地充填体14を両外側面板部端面107間隙に充填して目地封止させるように両外側面板部端面間隙よりも挿入深さ方向Z側に配置される支持構造26を有している。本実施形態では、支持構造26は、封鎖部12の閉鎖本体部18を構成している目地空隙に深く挿入されたV字屈曲板21の板本体部分と、該V字屈曲板21を受け止める受止め機構28と、を含む構成となっている。
【0040】
受止め機構28は、外壁の内側Rへ向けて封鎖部12を挿入させる際に所定の挿入深さ位置、本実施形態では、例えば、V字屈曲板21の当接部16が両外側面板部端面107に当接する位置、に挿入配置されるように受止める。本実施形態では、受止め機構28は、図1、図2、図4に示すように、壁体の外側Tから目地空隙Hに挿入され、内側面板部端面縁にまたがって係止配置される受止め部材30からなる。受止め部材30は、両端部側が中空孔102内に挿入されて連結板104の面上に架設されるとともに、目地空隙Hの長手方向に離隔して配置される複数の金属製杆部材からなる。受止め部材30は、封鎖部12を挿入する前に目地空隙に挿入されて、V字屈曲板21を挿入させる際には、V字曲がり部22を少なくとも離隔した2点の位置で受止めるようになっている。本実施形態では、受止め部材30は、中空孔102内に挿入されて係止させる係着腕部30aと、V字屈曲板21の曲がり部22を受ける部分となる屈曲部30bと、を含む。係着腕部30aは、中空孔102内に挿入されて内側面板部103bと連結板104との隅部位置に係止配置される。屈曲部30bは、杆部材の中間部を挿入深さ方向Zに向けて突状に略V字状に湾曲させて形成されている。屈曲部30bは、内側面板部103bの端面間に挿入配置されて、受止め部材30の位置決めも兼ねている。
【0041】
本実施形態において、水密接合手段20は、当接部16と両外側面板部103a端面107との当接状態でその中間部に充填される接着剤からなる。図1において、少なくとも丸で囲んだ部分Gの当接部16と該端面107との間に充填されて接着して水密接合する。水密接合手段20の接着剤としては硬化して接着固定した際に不透水性を有するものであり、例えば、ポリマーを用いてセメントを混練したポリマーセメントモルタルがある。ポリマーセメントモルタルとしては、金属薄板からなるV字屈曲板21と、セメント製の外側面板部の端面107と、の間を水密性を保持しつつ確実な接着固定を実現できるものが好適に選ばれる。このような接着剤としては、例えば、ポリアクリル酸エチレン系複合高分子エマルジョンと、セメントと無機骨材を含む主材と、を混練したポリマーモルタル(例えば、商品名:マグネライン(登録商標))等を用いると良い。また、上記のようなポリマーセメントモルタルは変形能が大きくて耐久性もよく、V字屈曲板21や成型板100等の温度差による膨張、収縮や地震によるずれ等に追従することができ、該接着部分にひびや亀裂が発生しにくく、水密接合を長期間保持しうる。また、比較的短時間で乾燥して接着することができ施工期間の短縮を図れる。なお、本実施形態では、ポリマーセメントモルタルを塗布する前に、成型板端面の接着部分には、高分子エマルジョンのみが塗布される。成型板の端面には該高分子エマルジョンが乾燥すると透明の膜が形成されて、該端面への水分の含浸を防止する。これにより、水密接合性の向上を期待できる。
【0042】
目地充填体14は、図1に示すように、目地空隙の外側表面部分に充填されて目地封止する。本実施形態では、目地充填体14は、目地空隙Hに充填されるバックアップ材32と、バックアップ材34の外側表面に充填されて目地空隙Hを封止するシーリング材34と、を含む。すなわち、本実施形態の目地構造では、上述の封鎖部12を構成しているV字屈曲板21と、シーリング材34と、により両外側面板部端面107間隙間及びその近傍部分で少なくとも2重の水密構造で設けられている。バックアップ材32は、V字屈曲板21の係止部25を介して両外側面板部端面間隙近傍で係止されながら充填される。バックアップ材32は、シーリング材34が有効に目地空隙を封止するように、シーリング材34が目地空隙Hの挿入深さ方向Zに入り込むのを受け止めながら略一定の厚さに充填させうる。バックアップ材32は、本実施形態では、例えば、目地部分の長手方向に長い丸棒状の発泡ポリエチレンからなり、シーリング材34との当接面で該シーリング材とは接着しないようになっている。バックアップ材34は、クッション性を有しており、当接部の拡開、閉縮動作に追従する。なお、バックアップ材は、丸棒状のものに限らず、例えば、断面矩形状や断面半円形等その他任意の形態でもよい。一方、シーリング材34は、目地空隙Hの最も外側表面部分に充填されて、外側面板部端面107と接着しながら目地部分を水密封鎖する。シーリング材34は、目地部分の水密や気密のために一般的に利用されている種々のシーリング材でよく、例えば、シリコン系ゴム状弾性素材からなり、成型材100の膨張、収縮やズレ等に応じて弾性変形しうる。なお、シーリング材34が充填される前に必要に応じて面板部端面107に、例えば、シーリング材34の接着性を向上させるプライマーを塗布しても良い。
【0043】
なお、図6には、成型板100の上下の連結部分周辺における封鎖部の他の態様を示している。図6において、成型板100を補助的に支持するために、成型板の下辺縁をL字アングル36で支持した態様の場合には、L字アングル36を避けるように、V字屈曲板21の曲がり部22側から壁体外側Tに向けて下り傾斜した斜面部40が形成される。一方、下側のV字屈曲板21の上端側はL字アングル36の下面に当接されている。したがって、上側のV字屈曲板の鋭角状の下端部側と下側のV字屈曲板の上部側が一部重なった状態で配置される。これにより、矢印Fbに示すように、V字屈曲板21のV字内部空間S内を落ちてきた水分が斜面部40で外側T方向に案内されてL字アングルを回避して下方に良好に流れ落ちることができるので、目地部分等に水分が長期間保持されるのを防止できる。
【0044】
本実施形態に係る目地構造を形成する際には、成型板100を縦横に組み付けて形成された外壁Wの縦目地部分、すなわち、左右に隣接する成型板100の離隔端面間の目地部分において、まず、その目地空隙Hに、外壁体の外側Tから受止め部材30を挿入して、成型板間にまたがらせて中空孔102に係止配置させる。受止め部材30の屈曲部30bが成型材の端面間に挟まって位置決めされる。複数個の受止め部材30を互いに離隔させながら挿入配置した後に、封鎖部12となるV字屈曲板21を曲がり部22側から目地空隙Hに挿入させる。この際、V字屈曲板を手で閉縮させながら挿入できるのでスムーズに行なえる。V字屈曲板21を所定の挿入深さ位置まで挿入させるとその曲がり部22が受止め部材30に受止められる。この際、V字屈曲板21の当接部16は外側面板部端面107に当接位置に配置されるとともに、係止板壁部242が外側面板部端面107間隙近傍に配置される。また、挿入操作後に手を離すとV字屈曲板は、弾性的に形状復元し、両外側面板部端面107側に付勢当接する。V字屈曲板の当接部16と外側面板部端面107との中間部分に、水密接合手段20となる接着剤をはけ等で塗布し、その後乾燥させて該当接部16と外側面板部端面107とを水密接合する。そして、バックアップ材32を目地空隙Hに充填して、屈曲板21の係止板壁部242に係止させる。バックアップ材の外側表面(目地空隙の最表面側)に、シーリング材34を充填して、目地空隙が目地封止されて目地構造が構成される。
【0045】
本実施形態に係る目地構造が構築されて、時間が経過すると、シーリング材32が劣化して該シーリング材32に亀裂等が生じた場合等には、雨水等が該亀裂から目地空隙を目地充填体よりも内側方向に向けて入り込む。しかし、該水分は、封鎖部12であるV字屈曲板21の閉鎖本体部18及び水密接合された当接部16により透水不能に遮られて、壁の内側Rや成型板の中空孔102内に入り込むのを確実に防止される。すなわち、シーリング材が劣化等により欠損しても、封鎖部によって水密構造は保持されるので、目地構造の水密機能が向上する。V字屈曲板で止められる水分は、V字内部空間S内に沿って下部側に誘導されて外側に排水される。なお、上記実施形態では、成型板の縦目地部分について適用した形態について説明したが、本発明の目地構造は、横目地部分に適用することもできる。横目地部分に適用する際には、例えば、上記実施形態のものを横に90度回転させた態様で構成することもできる。
【0046】
以上説明した本発明の壁体の目地構造は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の壁体の目地構造は、例えば、外壁、間仕切り壁等の壁体等の縦目地ばかりでなく横目地部分の封止にも適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る壁体の目地構造の断面要部拡大図である。
【図2】図1の壁体の目地構造の一部省略分解斜視説明図である。
【図3】図1の壁体の目地構造が適用される壁体の概略斜視図である。
【図4】図1の壁体の目地構造の一部省略斜視説明図である。
【図5】封鎖部の説明図である。
【図6】成型板の上下連結部周辺の目地構造の封鎖部の一態様を示す縦断面説明図である。
【図7】従来の目地構造の断面要部拡大図である。
【図8】従来の目地構造の一部斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10 目地構造
12 封鎖部
14 目地充填体
16 当接部
18 閉鎖本体部
20 水密接合手段
22 曲がり部
25 係止部
26 支持構造
28 受止め機構
30 受止め部材
32 バックアップ材
34 シーリング材
100 成型板
102 中空孔
103a 外側面板部
W 外壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面に開口する中空孔を有する矩形の成型板を縦横に組み付けて壁体を形成する際に設けられる成型板の離隔端面間の目地部分の構造であり、
壁体の外側から内側に向けて目地空隙に挿入配置され少なくとも両外側面板部端面間隙を水密封鎖する封鎖部と、
封鎖部に支持されて目地空隙の外側表面部分に充填される目地充填体と、を備えたことを特徴とする壁体の目地構造。
【請求項2】
封鎖部は、両外側面板部端面に密着当接する当接部と、
当接部に一体連続し外側から内側に透水不能として目地空隙を閉鎖する閉鎖本体部と、を含み、
当接部と両外側面板部端面との当接状態でそれらを水密接合させる水密接合手段が設けられたことを特徴とする請求項1記載の壁体の目地構造。
【請求項3】
水密接合手段は、当接部と両外側面板部端面との当接状態でその中間部に充填される接着剤からなる請求項2記載の壁体の目地構造。
【請求項4】
目地充填体を両外側面板部端面間隙に充填して目地封止させるように両外側面板部端面間隙よりも挿入深さ側に配置される板、枠体、それらの組み合わせのいずれか1つを含む支持構造を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の壁体の目地構造。
【請求項5】
封鎖部は、当接部と閉鎖本体部を形成した1枚の薄板部材を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の壁体の目地構造。
【請求項6】
当接部が両面板部端面側に対して常時弾性的に付勢当接するように配置されている請求項5記載の壁体の目地構造。
【請求項7】
薄板部材は挿入深さ方向に曲がり部を有する屈曲板又は湾曲板からなる請求項5または6記載の壁体の目地構造。
【請求項8】
支持構造は、壁体の内側へ向けて封鎖部を挿入させる際に、所定の挿入深さ位置で該封鎖部を受止める受止め機構を有する請求項4ないし7のいずれかに記載の壁体の目地構造。
【請求項9】
受止め機構が壁体の外側から目地空隙に挿入し、両面板部端面縁にまたがって係止配置される受止め部材からなる請求項8記載の壁体の目地構造。
【請求項10】
目地充填体は、目地空隙に充填されるバックアップ材と、
バックアップ材の外側表面に充填されて目地空隙を封止するシーリング材と、を含み、
封鎖部は、バックアップ材を両外側面板部端面間隙近傍で係止する係止部を有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の壁体の目地構造。
【請求項11】
封鎖部は略V字状の金属製屈曲板からなり、V字の上部両端部を当接部とし、該当接部が拡開、閉縮するように板ばね状に弾性変形することを特徴とする請求項5ないし10のいずれかに記載の壁体の目地構造。
【請求項12】
係止部は、当接部から対向内向きに突設し、それらの突設端縁が互いに離隔して形成された係止板部からなる請求項11記載の壁体の目地構造。
【請求項13】
請求項11記載の壁体の目地構造に用いられる金属製屈曲板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−16496(P2007−16496A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199575(P2005−199575)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(505260925)
【Fターム(参考)】