説明

壁用部材および壁用部材の製造方法

【課題】出隅部分に使用することによって見栄えが良く、防水性能が高く、移動防止のための追加工事の必要が無い壁用部材および製造方法を提供すること。
【解決手段】壁用部材10は、表面形状が長方形の板状であり、上側面に合いじゃくり用の凸部13を備え、下側面に合いじゃくり用の凹部を備えた壁用部材において、表面と少なくとも一方の端面の境界11が曲面状あるいは多面状に成形され、かつ表面と同様に塗装さており、更に、当該端面と接する裏面の端面近傍に、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材の端面の凸部23と嵌合する溝12が設けられている。従来のシーリング剤の劣化に伴う防水性能の低下が発生せず、かつ従来のシーリング構造よりも継ぎ目が目立たないので見栄えが良い。また、壁用部材10を別途固定しなくても出隅方向に移動することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁用部材および壁用部材の製造方法に関するものであり、特に、サイディング構造の壁の出隅部分に使用できる壁用部材および壁用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物の外壁の壁用部材として周知のサイディングパネルが使用されている。サイディングパネルは、主としてセメント質原料やガラス繊維などの繊維質原料を練って型に詰めて成型し、硬化させた板状部材である。そして、壁の出隅部分には、長尺のサイディングパネルから切り出した2枚のパネルをL字型に接着したコーナー用の部材が使用されていた。しかし、従来のL字状部材においては、製造に手間がかかり高価になってしまうという問題点があった。また、保管、運搬中に破損し易いので慎重に取り扱う必要があるという問題点もあった。
【0003】
そこで、本発明者は、出隅部分に使用でき、製造や運搬、保管が容易な壁用部材およびこの壁用部材を使用した外壁を発明し、出願した。下記の特許文献1には、この壁用部材およびこの壁用部材を使用した外壁が開示されている。壁用部材は、長方形の板状であり、対向する2つの側面にも表面と同じ意匠が施されている。壁用部材は従来のサイディングパネルと同様の製造方法によって製造でき、平板状であるので運搬や保管も容易で破損し難い。また、外壁は角の部分につなぎ目が無いので見栄えが良く、施工も簡単である。
更に、本発明者は既存の壁用部材から前記した出隅用壁用部材を製造する方法を発明し、出願した。下記特許文献2にはこの出隅用壁用部材を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−169746号公報
【特許文献2】特開2009−057807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の壁用部材においては、見栄え良くかつ容易に施工できるが、壁用部材の継ぎ目の部分には従来と同様のシーリング構造を採用しており、シーリング剤の劣化に伴う防水性能の低下や見栄えが悪い等の問題点があった。また、従来の出隅用壁用部材は一方の壁面に上下から金具で掛止しただけでは出隅方向にストッパーとなるものが無いために、強い力をかけると出隅方向に移動してしまうという問題点があり、出隅用壁用部材が水平方向に移動しないように別途固定する必要があるという問題点もあった。更に、従来の壁用部材においては出隅部分において上部の合いじゃくり用の凸部に大きな隙間があり、防水性能が低いという問題点もあった。
本発明は、上記した課題を解決し、出隅部分に使用することによって見栄えが良く、防水性能が高く、移動防止のための追加工事の必要が無い壁用部材および壁用部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁用部材は、表面形状が長方形の板状であり、上側面に合いじゃくり用の凸部を備え、下側面に合いじゃくり用の凹部を備えた壁用部材において、表面と少なくとも一方の端面の境界が曲面状あるいは多面状に成形され、かつ表面と同様に塗装さており、かつ、前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材あるいはジョイナーの端面の凸部と嵌合する溝が設けられていることを主要な特徴とする。
また、本発明の壁用部材は、表面形状が長方形の板状であり、上側面に合いじゃくり用の凸部を備え、下側面に合いじゃくり用の凹部を備えた壁用部材において、表面と少なくとも一方の端面の境界が曲面状あるいは多面状に成形され、かつ表面と同様に塗装さており、かつ、前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材の端面の凹部と嵌合する突起が設けられていることを主要な特徴とする。
【0007】
また、前記した壁用部材において、前記溝あるいは突起の断面が、一辺が当該壁用部材の厚さの半分の長さの正方形である点にも特徴がある。また、前記した壁用部材において、前記壁用部材の表面に成形された目地溝と対応した溝が前記境界および前記端面にも成形されている点にも特徴がある。
【0008】
本発明の壁用部材の製造方法は、既存の壁用部材の水平方向の端面の少なくとも一方の近傍において合いじゃくり用の凹部をなくす端部加工工程、既存の壁用部材の前記端部加工した端面を曲面状あるいは多面状に成形する切削工程、前記切削工程において切削した面を表面と同様の意匠となるように塗装する塗装工程、前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材あるいはジョイナーの端面の凸部あるいは溝と嵌合する溝あるいは突起を設ける工程を含むことを主要な特徴とする。
【0009】
また、本発明の壁用部材の製造方法は、水平方向の端面が曲面状あるいは多面状に成形される型を使用して壁用部材を成形する成形工程、前記壁用部材の表面および端面を塗装する塗装工程、前記壁用部材の水平方向の端面の少なくとも一方の近傍において合いじゃくり用の凹部をなくす端部加工工程、前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材あるいはジョイナーの端面の凸部あるいは溝と嵌合する溝あるいは突起を設ける工程を含むことを主要な特徴とする。
また、前記した壁用部材の製造方法において、前記端部加工工程において、合いじゃくり用の凹部を成形する前の壁用部材を用い、切削によって水平方向の端面近傍以外の部分にのみ合いじゃくり用の凹部を成形する点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の壁用部材および壁用部材の製造方法は上記のような特徴によって、以下のような効果を奏する。
(1)本発明の壁用部材は直角に接する他面の壁用部材との接合部分に従来のようなシーリング構造ではなく、溝と突起の嵌合構造を採用したので、シーリング剤の劣化に伴う防水性能の低下が発生せず、かつ従来のシーリング構造よりも継ぎ目が目立たないので見栄えが良い。
(2)本発明の壁用部材は直角に接する他面の壁用部材との接合部分に溝と突起の嵌合構造を採用したので、この溝あるいは突起がストッパーの機能を果たし、出隅用の壁用部材を別途固定しなくても、出隅方向に移動することがない。
(3)本発明の壁用部材は従来の壁用部材の出隅部分において生じていた上部の合いじゃくり用の凸部の大きな隙間がなく、出隅部分においても上部の合いじゃくり用の凸部が存在するので防水性能がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の壁用部材を壁面に配置した構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の壁用部材の構成を示す平面図、正面図、側面図および断面図である。
【図3】本発明の壁用部材の元となる既存のサイディングパネルの構成を示す平面図および側面図である。
【図4】本発明の製造方法の端部加工工程における壁用部材の構成を示す平面図および端面図である。
【図5】本発明の製造方法の裏面切削工程における壁用部材の構成を示す平面図および端面図である。
【図6】本発明の壁用部材の現場加工構成を示す平面図である。
【図7】本発明の壁用部材の製造方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の壁用部材の端部の他の実施例の形状を示す平面図である。
【図9】実施例4の壁用部材を壁面に配置した構成を示す断面図である。
【図10】実施例4の壁用部材と共に用いるジョイナーの構成例1を示す断面図である。
【図11】実施例4の壁用部材と共に用いるジョイナーの構成例2を示す断面図である。
【図12】実施例4の壁用部材と共に用いるジョイナーの構成例3を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施例について説明する。なお、実施例においては、長尺の壁用部材の長手方向が水平になるように外壁に配置する例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の壁用部材10を壁面に配置した構成を示す斜視図である。また、図2は、本発明の壁用部材10の構成を示す平面図、正面図、側面図および断面図である。なお、図1下部は出隅に配置される2枚の壁用部材10、20を嵌合させる前の状態を示している。また、図2(a)は壁用部材10のA−A断面、図2(e)はB−B断面を示している。
本発明の出隅用の壁用部材10は、表面形状が長方形の板状であり、長尺の壁用部材10の長辺が水平になるように配置した場合に、上側面(上面)に合いじゃくり用の凸部13を備え、下側面(下面)に合いじゃくり用の凹部17(24)を備えている。
【0014】
また、表面と少なくとも一方の端面の境界11が曲面状(円筒形の側面形状)あるいは多面状に切削されている。曲面の形状は、境界11の水平断面が半径が壁用部材10の厚さの0.5〜1倍程度の円弧状となるような形状であってもよい。また、境界面や端面が表面とほぼ同様の意匠となるように、表面に成形された装飾のための溝16が境界11や端面にも回り込んで切削成形されている。また、境界11や端面は表面と同一色に塗装されている。更に、表面の微細な凹凸形状を境界11や端面にも加工してもよい(以下、このような端部加工をR加工とも記す)。
【0015】
R加工された端面と接する裏面の端面近傍には、端面と平行して、当該壁用部材10の裏面に直角に接する他の壁用部材20の端面の凸部23と嵌合する溝12が設けられている。なお、既存の壁用部材20の端面の凸部23は現場にてルーター加工により成形する。
溝12の深さは、他の壁用部材20の端面の凸部23の長さよりわずかに深くするが、上側面に設けられた合いじゃくり用の凸部13の厚さおよび下側面に設けられた合いじゃくり用の凹部17と同じ深さでもよい。溝12の幅は、他の壁用部材20の端面の凸部23の厚さよりわずかに広くする。溝12の断面は、例えば一辺が当該壁用部材10の厚さの約半分の長さの正方形であってもよい。
【0016】
本発明の出隅用の壁用部材10は金具14を使用して壁面15に固定される。上下に組み合わされた本発明の壁用部材10は上下の接合部のみならず、左右の端部においても完全に合いじゃくり構造が維持され、防水性が向上する。また、組み合わせた壁用部材間の隙間から下地は見えず、見栄えが良い。
更に、他方の壁面には端面に勘合用の凸部23を設けた既存の壁用部材20が使用され、本発明の壁用部材10の端部裏面に設けた溝12と既存の壁用部材51の端面の凸部23とが嵌合している。従って、この溝12と凸部23がストッパーの機能を果たし、壁用部材10を別途固定しなくても壁用部材10が左右に移動することがない。なお、既存の壁用部材20も本発明の壁用部材10がストッパーとなるので移動することはない。
【0017】
壁用部材10と他の壁用部材20との継ぎ目は従来の幅の広いシーリング構造と比べて非常に細く、目立たないので見栄えが良くなる。また従来のシーリング構造はシーリング剤の劣化によって防水性能が低下するという問題点があったが、図1に示す本発明の壁用部材10を用いた壁構造においては、端面と隣接する裏面部分、あるいは溝12の内面のいずれかの面において公知の発泡性テープ等によって防水加工を施せば、防水性能が高く、かつ長期間維持できるという効果がある。
【0018】
次に、本発明の壁用部材の製造方法について説明する。図7は、本発明の壁用部材の製造方法を示すフローチャートである。なお、S10〜S13は既存の壁用部材の製造工程を示している。S10においては、主としてセメント質原料やガラス繊維などの繊維質原料を練って型に詰めて成型(プレス加工)し、硬化させることによって長い板状の壁用部材が製造される。できた壁用部材は、合いじゃくり用凸部32は成形されているが、裏面は全体が平面であり、合いじゃくり用の凹部31は成形されていない。
【0019】
S11においては、壁用部材の表面を塗装する。塗装は例えば含浸シーラーを全表面に塗布する工程、防水シーラーを全表面に塗布する工程、リシン塗装によって1色あるいは複数色を塗り分けるエナメル塗装工程、横目地溝(16)内のみを塗装する工程、全体に細かい砂などの粒子を含む塗料を吹き付けるスパッタ塗装工程を含んでいてもよい。
【0020】
S12においては、長い板状の壁用部材を所定の長さに切断する。S13においては、ルーター等の工作機械を使用して下側面裏側の合いじゃくり用の凹部31の切削および上側面の凸部31の裏面側の角の面取り切削が行われる。以上の工程によって既存の壁用部材30が完成する。
【0021】
図3は、本発明の壁用部材の元となる既存の壁用部材30の構成を示す平面図および側面図である。既存の壁用部材(サイディングパネル)30は表面に例えばタイルおよび目地溝の意匠が施されている。切断された両側の端面は平面であり、下側面には合いじゃくり用の凹部31が設けられ、上側面にはやはり合いじゃくり用の凸部32が設けられている。
【0022】
実施例1においてはS13からS15へ移行し、完成した既存の壁用部材から本発明の出隅用の壁用部材を製造する。S15においては、下側面の凹部の端にスペーサ33を接着剤によって接着する。スペーサ33は壁用部材10と同じ材質であり、長さは例えば壁用部材10の厚さよりも少し短い程度である。また、スペーサ33の断面は合いじゃくり用の凹部13の断面とほぼ同じ形状である。
【0023】
なお、本発明の壁用部材の製造方法としては、既存の壁用部材からではなく、S12の工程の後の中間製品である、合いじゃくり用の凹部を成形する前の壁用部材を用いる方法もある。この場合にはS12からS14に進み、S14において端面近傍以外の側面にのみ合いじゃくり用の凹部を切削によって成形する。このようにすれば、スペーサを接着して凹部を埋める必要が無く、工程が単純になると共に接着による継ぎ目が無くなり、見栄えがより良くなる。なお、凹部を成形しない範囲は壁用部材10の厚さよりも少し短い程度とする。
【0024】
図4は、本発明の製造方法の端部加工工程(S14あるいはS15終了時)における壁用部材の構成を示す平面図および端面図である。端部においては合いじゃくり用の凹部31がスペーサ33によって埋められいるか、あるいは切削せずに残されている。
【0025】
S16においては、上側面の合いじゃくり用凸部32の端部に水平に切り込み36を入れ、端面と接する裏面の端面近傍には、端面と平行して、他の壁用部材20の端面の凸部23と嵌合する溝35(12)が切削によって成形される。切り込み36を入れてから溝35を切削することにより、端部の合いじゃくり用凸部も切り離される。なおS16はS17の後、あるいはS19の後に行ってもよい。
【0026】
S17においては、表面と端面の境界34を曲面状あるいは多面状に切削する。また、図示されていないが、壁用部材10の表面に意匠として成形された目地溝と対応した溝(16)も境界面および端面に成形する。
【0027】
図5は、本発明の製造方法の裏面切削工程(S17終了時)における壁用部材の構成を示す平面図および端面図である。上側面の凸部32は溝35より端部側が切除されている。また、境界34および連続する端部は下部まで均一の形状であり、溝35と下側面の凹部31はL字状に連続している。
【0028】
S18においては、表面と同様の意匠となるように切削部分34および端部を塗装する。また、S19においては、切削部分の溝(16)の内側を塗装する。塗装の工程は既存の壁用部材の工程と同様に、例えば含浸シーラーを切削面全体に塗布する工程、防水シーラーを切削面全体に塗布する工程、リシン塗装によって溝を除く切削面に1色あるいは複数色を塗り分けるエナメル塗装工程、横目地溝(16)内のみを塗装する工程、切削面全体に細かい砂などの粒子を含む塗料を吹き付けるスパッタ塗装工程を含んでいてもよい。
【0029】
溝を除く切削面を塗装する場合には、溝部分をマスク板によってマスクしておき、スプレーガンによって塗料を吹き付ける。溝部分の切削面はスプレーガンを近づけて溝内のみに塗料を吹き付ける。なお、フローチャートでは、塗装工程がS11とS18、19の2カ所あるが、出隅用の壁用部材を製造する場合には、S11の工程をとばし、あるいはとばさなくても、S18、19の工程で表面および端面双方の塗装を行うようにしてもよい。こうすれば経年変化による壁用部材の色むらが発生しない。
【0030】
図6は、本発明の壁用部材の現場加工構成を示す平面図である。住宅の壁として本発明の壁用部材を使用する場合には、一端(あるいは両端)がR加工された本発明の壁用部材40と既存の壁用部材45、47の双方を使用し、例えば現場において壁に合わせて壁用部材を切断し(a)、既存の壁用部材20およびR加工されていない本発明の壁用部材10の端面に横方向の合いじゃくり用の凸部43、48および凹部46を成形する(b)。
【0031】
なお、工場出荷時に壁用部材に予め横方向の合いじゃくり用の凸部43、48および凹部46を成形しておいてもよい。このようにすれば現場における加工量が減少する。加工後に、水平方向に接合する2つの壁用部材の当接する面の内の1つ以上のいずれかの面に防水用の発泡性テープあるいはその他の防水材を貼るか塗り、溝42と凸部48とを勘合させて(c)、金具によって壁面に固定する。
【実施例2】
【0032】
図8は、本発明の壁用部材の端部の他の実施例の形状を示す平面図である。図8(a)は、本発明の壁用部材50において他の壁用部材57と嵌合するための溝52の深さや幅を実施例1よりも小さくしたものである。溝の深さや幅は壁用部材の厚さ未満の範囲で任意に設定できるが、深過ぎると端部の強度が低下してしまう。また、浅すぎるとストッパー機能や防水機能が低下してしまう。従って、溝の深さや幅は壁用部材の厚さの1/2〜1/4程度が好ましい。
【0033】
図8(b)は、本発明の壁用部材60において他の壁用部材67と嵌合するための溝62の断面形状を三角形としたものである。溝の断面形状は正方形、長方形、三角形の他、台形、半円形、扇形(四分の一円形)など、加工のし易さや端部の強度等を考慮して任意に設定可能である。
【0034】
図8(c)は、本発明の壁用部材70において他の壁用部材77と嵌合するために溝の代わりに帯状突起72を設けたものである。帯状突起72は壁用部材70と同様の材質であり、スペーサ33と同様に接着剤によって壁用部材70の裏面に接着する。帯状突起72の断面形状は正方形、長方形、三角形の他、台形、半円形、扇形(四分の一円形)など任意に設定可能である。溝の代わりに帯状突起72を設けることによって加工前よりも端部の強度が増すという効果がある。但し、輸送時には帯状突起72があるために壁用部材70を積み重ねるためにはスペーサー等が必要となる。
【0035】
図8(d)は(c)の変形例であり、本発明の壁用部材70において予め工場において帯状突起74を接着する位置に帯状突起74と嵌合する浅い溝79を切削しておく。帯状突起74は工場あるいは現地において溝79に接着剤によって接着する。溝79があるので、帯状突起74の位置決めが容易となり、接着強度も増す。また、帯状突起74を現地において接着するようにすれば、輸送時には帯状突起74がないので、輸送が容易となる。
【実施例3】
【0036】
実施例1、2においては既存の壁用部材から本発明の壁用部材を製造する方法を開示したが、最初から型で一端あるいは両端がR加工された壁用部材を製造してもよい。この場合には、図7のS10において、予め一端あるいは両端がR加工された形状を有する型を使用して壁用部材を成形する。S12においては表面および端部の双方を塗装する。表面および端部の双方を同時に塗装するので色むら等が発生しない。このようにすれば、S17〜S19は不要となり、製造工程がより簡単になる。また、実施例3の壁用部材から既存の壁用部材を得るためには端部のR加工部分を切断すればよい。
【実施例4】
【0037】
図9は、実施例4の壁用部材を壁面に配置した構成を示す断面図である。壁50の出隅部分には予め金属製の片ハット型ジョイナー53が木ねじ58によって固着される。このジョイナー53は例えば長さ3m程度の長尺であり、壁用部材の隙間から侵入した雨水を下方へ流す機能を有している。ジョイナー53の断面は片方にコ字状の凸部57が設けられ、他方の辺56は壁への雨水の浸入を防止するために折り返されている。
【0038】
本発明の実施例4の壁用部材51は端部裏側の凹部(溝)52がジョイナー53のコ字状の凸部57と勘合するように壁50に装着され、図1に示すような金具によって固着される。本発明の実施例4の壁用部材51をジョイナー53のコ字状の凸部57と勘合させることによって壁用部材51が水平(横)方向に移動しなくなる。
【0039】
他方の面の壁用部材52の端部54は平面であり、現場等において図1に示されているような凸部23を形成する必要はない。従って、実施例4においては実施例1よりも現場での施工が容易になる。なお、壁用部材52の端部54や壁用部材51の端部裏側の凹部(溝)52内面等に防水シーラーを塗布することにより、防水性能が向上する。
【0040】
図10は、実施例4の壁用部材と共に用いるジョイナーの構成例1を示す断面図である。図10(a)は図9に示したジョイナー53である。(b)は凸部61の形成面を変更し、端部断面がJ字状になるようにした例である。(c)は、凸部62を更に簡略化して端部断面がL字状のリブとした例である。(d)は、凸部として金属製のジョイナーに断面が正方形あるいは長方形の部材63を接着剤などで固着した例である。
【0041】
図11は、実施例4の壁用部材と共に用いるジョイナーの構成例2を示す断面図である。図11(a)はジョイナー70の端部を凸部ではなく、単なる折り返し71とした例であり、この場合には壁用部材71の凹部(溝)73も折り返しに合わせて幅を狭くする。図11(b)はジョイナー70の端部76を折り返し、その先に更に直角にリブを設けた例である。この場合には壁用部材77の凹部(溝)78も折り返しおよびリブに合わせた形状とする。(b)の方が防水性能が向上する。
【0042】
図12は、実施例4の壁用部材と共に用いるジョイナーの構成例3を示す断面図である。壁50の出隅部分には予め金属製の片ハット型ジョイナー80が木ねじ87によって固着される。このジョイナー80は例えば長さ3m程度の長尺であり、壁用部材の隙間から侵入した雨水を下方へ流す機能を有している。ジョイナー80の断面は片方の端部にコ字状の凸部82が設けられ、その先に更に折り返し部が設けられている。ジョイナー80の断面の他方の端部には壁への雨水の浸入を防止するための折り返し部81が設けられている。
【0043】
壁用部材83は端部裏側の凹部(溝)84がジョイナー80の折り返し部と勘合するように壁50に装着され、図1に示すような金具によって壁に固着される。壁用部材83をジョイナー80の折り返し部と勘合させることによって壁用部材83が水平方向に移動しなくなる。
【0044】
他方の面の壁用部材85の端部は平面であり、現場等において図1に示されているような凸部23を形成する必要はない。従って、実施例4においては実施例1よりも現場での施工が容易になる。他方の面の壁用部材85の端部はジョイナー80のコ字状の凸部82と当接しているので、壁用部材85も水平方向に移動することはない。そして、壁用部材83の裏面、ジョイナー80のコ字状の凸部82、他方の面の壁用部材85の端部によって囲まれた溝の部分にはコーキング剤86が充填される。
【符号の説明】
【0045】
10…本発明の壁用部材
11…境界
12…溝
13、21…合いじゃくり用凸部
14、22…金具
15…壁面
20…既存の壁用部材
23…凸部
24…合いじゃくり用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面形状が長方形の板状であり、上側面に合いじゃくり用の凸部を備え、下側面に合いじゃくり用の凹部を備えた壁用部材において、
表面と少なくとも一方の端面の境界が曲面状あるいは多面状に成形され、かつ表面と同様に塗装さており、
かつ、前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材あるいはジョイナーの端面の凸部と嵌合する溝が設けられていることを特徴とする壁用部材。
【請求項2】
表面形状が長方形の板状であり、上側面に合いじゃくり用の凸部を備え、下側面に合いじゃくり用の凹部を備えた壁用部材において、
表面と少なくとも一方の端面の境界が曲面状あるいは多面状に成形され、かつ表面と同様に塗装さており、
かつ、前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材の端面の凹部と嵌合する突起が設けられていることを特徴とする壁用部材。
【請求項3】
前記溝あるいは突起の断面が、一辺が当該壁用部材の厚さの半分の長さの正方形であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の壁用部材。
【請求項4】
前記壁用部材の表面に成形された目地溝と対応した溝が前記境界および前記端面にも成形されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の壁用部材。
【請求項5】
既存の壁用部材の水平方向の端面の少なくとも一方の近傍において合いじゃくり用の凹部をなくす端部加工工程、
既存の壁用部材の前記端部加工した端面を曲面状あるいは多面状に成形する切削工程、
前記切削工程において切削した面を表面と同様の意匠となるように塗装する塗装工程、
前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材あるいはジョイナーの端面の凸部あるいは溝と嵌合する溝あるいは突起を設ける工程
を含むことを特徴とする壁用部材の製造方法。
【請求項6】
水平方向の端面が曲面状あるいは多面状に成形される型を使用して壁用部材を成形する成形工程、
前記壁用部材の表面および端面を塗装する塗装工程、
前記壁用部材の水平方向の端面の少なくとも一方の近傍において合いじゃくり用の凹部をなくす端部加工工程、
前記境界が曲面状あるいは多面状に成形された端面と接する裏面の端面近傍に、前記端面と平行して、当該壁用部材の裏面に直角に接する他の壁用部材あるいはジョイナーの端面の凸部あるいは溝と嵌合する溝あるいは突起を設ける工程
を含むことを特徴とする壁用部材の製造方法。
【請求項7】
前記端部加工工程において、合いじゃくり用の凹部を成形する前の壁用部材を用い、切削によって水平方向の端面近傍以外の部分にのみ合いじゃくり用の凹部を成形することを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の壁用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−52532(P2011−52532A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181738(P2010−181738)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【分割の表示】特願2009−234173(P2009−234173)の分割
【原出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(502384989)日本ウォール建設株式会社 (5)
【Fターム(参考)】