壁面構築方法
【課題】 従来、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれると、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、連結できなくなる。
【解決手段】 第1工程により、他端が下段のパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出して、一端が下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aが挿入されて位置させられ、第2工程により、上段または下段のパネル本体1aの前面または背面と前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との所定の間隔19、17があいた間にボルト4cが介在させられて、パネル本体1aが固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体1aを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【解決手段】 第1工程により、他端が下段のパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出して、一端が下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aが挿入されて位置させられ、第2工程により、上段または下段のパネル本体1aの前面または背面と前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との所定の間隔19、17があいた間にボルト4cが介在させられて、パネル本体1aが固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体1aを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル本体を複数段積み上げ、各段のパネル本体の背面を裏込部によって埋めて壁面を構築する壁面構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の壁面構築方法としては、例えば、特許文献1に開示されたコンクリート製型枠を複数段積み上げて、コンクリート製型枠の背面にコンクリートを打設しながら、砂防ダムの壁面やコンクリート擁壁等を構築するものがある。コンクリート製型枠は方形のコンクリート製パネルである。このパネルが積み上げられて壁面が構築される際、同文献の図1に示されるように、下段のパネルに取り付けられた連結金具にあけられたボルト穴が、上段のパネルの背面に設けられた埋込みボルト穴に合わされる。そして、連結金具にあけられたボルト穴にボルトが挿通させられて上段のパネルの背面に設けられた埋込みボルト穴に螺合して締結されることで、上下の各パネルは連結金具を介して連結される。また、同文献の図2に示されるように、パネル側が広幅の4個の連結金具がパネルの背面に設けられる場合には、下段のパネルの連結金具にあけられたボルト穴と上段の連結金具にあけられたボルト穴とが合わされ、各ボルト穴にネジが挿通させられて各連結金具どうしが固定されることで、上下の各パネルが連結される。また、同文献の図7に示されるように、パネルの上下縁にそれぞれ連結穴が設けられる場合には、下段のパネルに設けられた連結穴と上段のパネルに設けられた連結穴とが合わされ、各連結穴にボルトが挿通されることで、上下のパネルが連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3242160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された壁面構築方法では、パネルを積み上げて壁面を構築する際、各ボルト穴や各連結穴どうしが合うように、上段のパネルは下段のパネルに対して位置させなければならない。従って、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれると、各ボルト穴や各連結穴どうしが合わなくなって、上下の各パネルを連結できなくなり、壁面が構築できなくなる。また、各ボルト穴や各連結穴にボルトやネジを挿通して上下のパネルを締結させる作業が必要とされ、また、パネルを自立させるためにパネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされる場合もあって手間がかかり、パネルの積み上げ作業効率は良くなかった。
【0005】
また、上段のパネルを下段のパネルの上に積み上げる際、各パネルの壁面が面一となるように上段のパネルを下段のパネルの真上に設置しずらく、下段のパネル本体の壁面の前面側や背面側にずれて上段のパネル本体が設置された場合、このずれを修正する作業が発生して、パネルの積み上げ作業効率が低下する。
【0006】
また、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、上下のパネルどうしは、ボルトやネジで固く剛結されているので、パネルの背後にある盛土等が変形してパネル背面に荷重が偏ってかかると、パネルどうしを剛結したボルトやネジに大きな荷重が局所的にかかってこれらが破損する場合があり、上記従来の特許文献1に開示された壁面構築方法によって構築される壁面は耐久性に劣った。また、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形すると、ボルトやネジで固く剛結されているパネルはこれらに追従して動くことができず、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして、壁面が弱体化する。
【0007】
また、壁面の敷設延長方向が曲がる曲線施工において、斜めにパネルを積み上げて傾斜した壁面を構築する場合、壁面の下部にあるパネルと壁面の上部にあるパネルとがそれぞれ描く半径は異なる。従って、壁面の上部から下部に向かって広がる隙間がパネル間に発生する。このため、壁面を斜めにして曲線施工する場合には、パネル間の隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネルを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要があり、従来、この間詰めコンクリートの施工や、パネルの加工に多くの手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
端部が下段のパネル本体の前面側および背面側から上方に突出して、上段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と端部との間に所定の間隔をあけて下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させる、または、端部が上段のパネル本体の前面側および背面側から下方に突出して、下段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と端部との間に所定の間隔をあけて上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させる第1工程と、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具を介在させることで、パネル本体を固定させる第2工程と
を1サイクルとしてパネル本体を積み上げ、
パネル本体の背面を裏込部によって所定の高さまで埋める第3工程を任意のサイクル終了後に行なって壁面を構築する壁面構築方法を構成した。
【0009】
この構成によれば、第1工程により、端部が下段のパネル本体の前面側および背面側から上方に突出して、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体が位置させられ、または、端部が上段のパネル本体の前面側および背面側から下方に突出して、上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体が位置させられ、第2工程により、上段または下段のパネル本体の前面または背面と前面連結部材または背面連結部材の端部との所定の間隔があいた間に支持治具が介在させられて、パネル本体が固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体を壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【0010】
このため、パネル本体を積み上げる際、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて積み上げていくことが可能となる。従って、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。
【0011】
また、パネル本体を複数段積み上げる際、上下のパネル本体どうしを前面連結部材および背面連結部材によって単に係合させ、所定の間隔があいたパネル本体と前面連結部材または背面連結部材の端部との間に支持治具を介在させることで、上下のパネル本体どうしが支え合い、パネル本体が自立する。このため、パネルを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体の積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体の形状を薄く、単純な形状に構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。
【0012】
また、上段のパネル本体を下段のパネル本体の上に積み上げる際、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め取り付けられていたり一体成型されている場合、上段のパネル本体は、下段または上段のパネル本体に予め設けられた前面連結部材および背面連結部材に案内されて移動する。このため、この場合、上段のパネル本体は、下段のパネル本体の壁面の前面側や背面側にずれて設置され難くなり、下段のパネル本体の真上に簡単に設置でき、パネルの積み上げ作業効率は向上する。また、前面連結部材および背面連結部材により隣接するパネル本体に係合する構成は、前面連結部材または背面連結部材のどちらか一方のみにより隣接するパネル本体に係合する構成よりも、パネル本体が自立しやすくなる。この結果、作業工程が単純で作業効率が良く、パネル本体が安定して自立する壁面を構築することができる壁面構築方法が提供される。
【0013】
また、パネル本体の前面または背面の少なくとも一方と、隣接するパネル本体に設けられる前面連結部材または背面連結部材の端部との間に所定の間隔があくように構成されているので、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め設けられている場合、前面連結部材と背面連結部材との間の空間にパネル本体を位置させるときに、隙間が確保される。このため、パネル本体は、この前面連結部材と背面連結部材との間の空間をスムーズに移動し、パネル本体の表面に凹凸状に設けられた模様等が引っかかって破損することもなく、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は向上する。
【0014】
また、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、上下のパネル本体はボルト等で剛結される構成ではないため、パネル本体の背後にある盛土等が沈下したり変形すると、パネル本体はその沈下や変形に追従して動くことが可能である。従って、パネル本体どうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構築方法のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面を構築できる壁面構築方法が提供される。
【0015】
また、本発明は、
第1工程で、上段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させ、または、下段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させ、
第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具を介在させ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に少なくとも2つの支持治具を介在させることで、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具が介在させられ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に少なくとも2つの支持治具が介在させられることで、第1工程で、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に位置させられた、または、設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように位置させられた、上段のパネル本体が固定される。
【0017】
このため、例えば、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に1つの支持治具が介在し、下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に2つの支持治具が介在する場合、パネル本体が前傾して積み上げられることでかかるパネル本体の自重により、また、パネル本体の背面に設けられた裏込部等からの側圧により、上段のパネル本体を前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体に背面側からかかっても、前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に介在する1つの支持治具、および背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、1つの支持治具より低い位置に介在する支持治具により、この負荷が受け止められる。また、パネル本体が後傾して積み上げられることでかかるパネル本体の自重により、また、パネル本体の前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体を背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体に前面側からかかっても、前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に介在する1つの支持治具、および背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、1つの支持治具より高い位置に介在する支持治具により、この負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷を支持治具により受け止められるので、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に所定の間隔があいていても、パネル本体が転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体を確実に固定することができる。
【0018】
また、壁面の敷設延長方向が曲がる曲線施工で上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面とならず、上下のパネル本体の前面側または背面側の間で出入りが生じる。また、上下のパネル本体の位置関係を揃えて、パネル本体を積み上げる場合には、このような出入りが生じることなく、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面となる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間にこれらの支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、パネル本体を固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体も固定することができる。従って、パネル本体にかかる負荷の方向に応じて、支持治具の取付位置を調節し、また、パネル本体にかかる負荷の大きさに応じて、介在させる支持治具の数を調整することで、パネル本体にかかる負荷の方向、大きさ等の様々な状況に自在に対応した強固な壁面を構築できる。
【0019】
また、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間に支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、上下のパネル本体を壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて、上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体間には、パネル本体そのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、従来のように、パネル本体間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネルを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネルの加工作業が削減されて、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0020】
また、本発明は、
第1工程で、上段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させ、または、下段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させ、
第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具を介在させ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具と異なる高さに少なくとも1つの支持治具を介在させることで、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具を介在させ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具と異なる高さに少なくとも1つの支持治具を介在させることで、第1工程で、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に位置させられた、または、設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように位置させられた、上段のパネル本体が固定される。
【0022】
このため、例えば、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に1つの支持治具が介在し、下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、前面側の1つの支持治具より高い位置に支持治具が介在する場合、パネル本体が後傾して積み上げられることでかかるパネル本体の自重により、また、パネル本体の前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体を背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体に前面側からかかっても、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に介在する1つの支持治具、および下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、前面側の1つの支持治具より高い位置に介在する支持治具により、この負荷が受け止められる。また、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間、および下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間に支持治具が上記のように介在していて、パネル本体を積み上げて壁面を斜めに構築する際、パネル本体を背面側に傾斜させることで、パネル本体の重量により、パネル本体の傾斜角度に応じた、パネル本体の背面側の裏込部等からの側圧に対抗させることができる。この結果、前面側からの負荷を支持治具により、背面側からの負荷をパネル本体の重量で、受け止められる。また、パネル本体を積み上げて壁面を垂直に構築する際には、垂直に立つパネル本体が有する重量に応じた、パネル本体の前面および背面からの側圧に対抗させることができる。このため、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に所定の間隔があいていても、パネル本体が転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体を確実に固定することができる。
【0023】
また、曲線施工で上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げる場合には、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面とならず、上下のパネル本体の前面側または背面側の間で出入りが生じる。また、上下のパネル本体の位置関係を揃えて、パネル本体を積み上げる場合には、このような出入りが生じることなく、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面となる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体を背面側に傾斜させ、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間にこれらの支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、パネル本体を固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体も固定することができる。
【0024】
また、この構成においても、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間に支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、上下のパネル本体を壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて、上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体間には、パネル本体そのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、この構成によっても、従来のように、パネル本体間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネルを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネルの加工作業が削減されて、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0025】
また、本発明は、第3工程により背面が裏込部によって所定の高さまで埋められたパネル本体どうしを互いに係合する前面連結部材を取り外す第4工程を行うことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、背面が裏込部によって所定の高さまで埋められたパネル本体どうしを互いに係合する前面連結部材が第4工程により取り外され、取り外された前面連結部材が他のパネル本体どうしの連結に用いられることで、壁面の施工に必要とされる連結部材の数が減り、壁面の製作コストが低減される。
【0027】
また、本発明は、第2工程で、所定の間隔があいた前面連結部材または背面連結部材の端部に支持治具の一端を螺合させ、支持治具を回転させて出し入れすることで、支持治具の突出端を上段または下段のパネル本体の前面または背面に当接させて係合させ、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、支持治具を回転させて、前面連結部材または背面連結部材の端部に一端が螺合した支持治具の突出端を出し入れし、上段または下段のパネル本体の前面または背面に当接させて係合させることで、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具が介在させられて、パネル本体が固定される。このため、隣接するパネル本体に係合する前面連結部材または背面連結部材のパネル本体の前面または背面側への支持治具の出し入れを調整することにより、上下のパネル本体を互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0029】
また、本発明は、第2工程で、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具を挿し込むまたは挟み込むことで、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具を挿し込むまたは挟み込むことで、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具が介在させられて、パネル本体が固定される。このため、隣接するパネル本体の前面または背面と前面連結部材または背面連結部材の端部との間に支持治具を挿し込む量を調整することにより、または支持治具の挟み込む厚さを調整することにより、上下のパネル本体を互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0031】
また、本発明は、所定の間隔があいた前面連結部材または背面連結部材の端部に支持治具が突出して設けられ、第1工程により下段のパネル本体に上段のパネル本体が位置させられることで、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具が介在してパネル本体が固定され、第1工程と第2工程とが同時に行われることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させる、または、上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させる第1工程を行うことで、所定の間隔があいた前面連結部材または背面連結部材の端部に支持治具が介在し、パネル本体を固定させる第2工程が同時に行われる。このため、第2工程を別工程として行う必要がない分、パネル本体の積み上げ作業効率は向上する。
【0033】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への取付面とパネル本体の前面または背面との間に調整材を介挿することで、隣接するパネル本体の前面または背面と端部との間に所定の間隔をあけることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への取付面とパネル本体の前面または背面との間に調整材を介挿することで、前面連結部材または背面連結部材の端部と隣接するパネル本体との間にあく所定の間隔が、上下のパネル本体の間に生じる出入りの大きさや模様の突出具合に応じて、調整される。この調整により、前面連結部材または背面連結部材の端部と隣接するパネル本体とのぶつかり合いを回避することができる。
【0035】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への固設部分のパネル本体の厚さが、前面連結部材または背面連結部材の端部と対峙する部分の隣接するパネル本体の厚さより厚いことで、隣接するパネル本体と端部との間に所定の間隔があくことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への固設部分のパネル本体の厚さが、前面連結部材または背面連結部材の端部と対峙する部分の隣接するパネル本体の厚さより厚いことで、隣接するパネル本体と端部との間に所定の間隔があけられる。このため、上下のパネル本体の間に生じる出入りや模様の凹凸による、隣接するパネル本体と前面連結部材または背面連結部材の端部とのぶつかり合いを回避することができる。
【0037】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材が、設けられたもしくは設けられるパネル本体と係合させられる隣接するパネル本体とが所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材が設けられたもしくは設けられるパネル本体と前面連結部材または背面連結部材に係合させられる隣接するパネル本体とが所定形状の面を形成するように、前面連結部材または背面連結部材が曲げられている。このため、隣接するパネル本体で所望の形状の面を形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体を積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、既設構造体の前面にパネル本体を積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状の面を隣接するパネル本体で形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体を積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。
【0039】
また、本発明は、第1工程で、パネル本体が、前面連結部材および背面連結部材を介して係合する隣接するパネル本体と所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする。
【0040】
この構成によれば、前面連結部材および背面連結部材を介して係合する隣接するパネル本体と所定形状の面を形成するように、パネル本体が曲げられている。このため、所望の面を形成するように曲げられているパネル本体を積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、既設構造体の前面にパネル本体を積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状で曲げられているパネル本体を用いて、パネル本体を積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。
【0041】
また、本発明は、第1工程で、パネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材または背面連結部材の、パネル本体との固設箇所よりも端部の反対側に離れた一端に、パネル本体の前面または背面に当接する支点が設けられていることを特徴とする。
【0042】
この構成によれば、パネル本体の背面に充填された裏込部の側圧により、パネル本体を介して前面連結部材の端部側に負荷がかかっても、前面連結部材の一端に設けられた支点が固設箇所を挟む反対側でパネル本体の前面に当接することにより、この負荷がパネル本体の前面に当接する支点でも受けられる。また、パネル本体の前面に加えられる何らかの側圧により、パネル本体を介して背面連結部材の端部側に負荷がかかっても、背面連結部材の一端に設けられた支点が固設箇所を挟む反対側でパネル本体の背面に当接することにより、この負荷がパネル本体の背面に当接する支点でも受けられる。このため、前面連結部材または背面連結部材の端部側にかかる負荷は、前面連結部材または背面連結部材の固設箇所とその一端に設けられた支点とで支えられ、固設箇所のみで前面連結部材または背面連結部材が固定されている場合に比べて、前面連結部材または背面連結部材はぐらつくことなく確実にパネル本体に固定される。
【0043】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材が、パネル本体と別体で形成され、パネル本体に着脱自在または回動自在に取り付けられることを特徴とする。
【0044】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材がパネル本体と別体で形成されるため、前面連結部材または背面連結部材とパネル本体とを別々に安価に製作することができ、前面連結部材または背面連結部材とパネル本体とを一体に製作する場合に比べて壁面の製作コストを大幅に削減できる。また、パネル本体を積み上げる際、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて積み上げると、上下のパネル本体に設けられた各前面連結部材または背面連結部材どうしやこれらとパネル本体に設けられた部材などとがどこかでぶつかる。しかし、前面連結部材または背面連結部材がパネル本体に着脱自在に取り付けられる構成の場合、ぶつかる前面連結部材または背面連結部材の一方を取り外したり、別の位置にずらして取り付けることで、前面連結部材または背面連結部材どうしやこれらとパネル本体に設けられた部材などとのぶつかりを避けることができる。また、前面連結部材または背面連結部材がパネル本体に回動自在に取り付けられる構成の場合、ぶつかる前面連結部材または背面連結部材の一方の端部を、パネル本体との取付箇所を中心にパネル本体の前面または背面上で回動させることにより、前面連結部材または背面連結部材どうしやこれらとパネル本体に設けられた部材などとのぶつかりを避けることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、上記のように、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。また、パネルを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体の積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体の形状を薄く、単純な形状に構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。また、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め設けられている場合、上段のパネル本体は、下段のパネル本体の壁面の前面側や背面側にずれて設置され難くなり、下段のパネル本体の真上に簡単に設置でき、パネルの積み上げ作業効率は向上する。また、作業工程が単純で作業効率が良く、パネル本体が安定して自立する壁面を構築することができる壁面構築方法が提供される。また、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め設けられている場合、パネル本体は、前面連結部材と背面連結部材との間の空間をスムーズに移動し、パネル本体の表面に凹凸状に設けられた模様等が引っかかって破損することもなく、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は向上する。また、パネル本体どうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構築方法のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面を構築できる壁面構築方法が提供される。また、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に所定の間隔があくようにパネル本体を積み上げて、傾斜する壁面を曲線施工する場合、敷設延長方向におけるパネル本体間に、パネル本体そのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しないパネルの積み方ができるため、間詰めコンクリートの施工作業や、パネルの加工作業が削減されて、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)、(b)および(c)は、本発明の第1の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図2】(a)は、図1に示すパネルを本実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第1の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図3】(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図4】(a)は、図3に示すパネルを第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第1の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図5】図1および図3に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図6】(a)、(b)および(c)は、本発明の第2の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図7】(a)は、図6に示すパネルを第2の実施の形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図8】図6に示すパネル本体を複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の斜視図である。
【図9】(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図10】(a)は、図9に示すパネルを第2の実施の形態の第2の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図11】(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第4の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図12】(a)は、図11に示すパネルを第2の実施の形態の第4の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第5の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図13】図11に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図14】(a)および(b)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法に用いられるパネルをイモ積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図、(c)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図、(d)および(e)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法に用いられるパネルをずらし積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図、(f)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図である。
【図15】(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図16】(a)は、図15に示すパネルを第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第7の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図17】図15に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図18】(a)、(b)および(c)は、本発明の第3の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図19】(a)は、図18に示すパネルを第3の実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第3の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図20】図18に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図21】(a)、(b)および(c)は、本発明の第4の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図22】(a)、(b)および(c)は、本発明の第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図23】(a)、(b)および(c)は、第5の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図24】第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造において背面連結部材が回動自在に取り付けられている構成を説明するための、2段目以降に積まれるパネルの背面図である。
【図25】(a)、(b)および(c)は、本発明の第6の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図26】(a)および(b)は、本発明の第7の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれる各パネルの平面図、(c)および(d)は、積まれたパネルの背面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に、本発明による壁面構築方法の第1の実施の形態について説明する。
【0048】
図1(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Aの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。
【0049】
パネル1A、1Bを構成するパネル本体1aは、方形の板状をした所定の厚さ(3cm〜10cm程度)のコンクリートから成る。また、パネル本体1aは、左方の側面の前面側が左側方に突出し、右方の側面の背面側が右側方に突出している。
【0050】
パネル本体1aの前面上方および背面上方には、2個の前面連結部材2aおよび背面連結部材3aが設けられている。これら前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、長方形状の金属製板材の短辺方向が垂直に折り曲げ加工されて形成されており、パネル本体1aの正面から見て互いに所定間隔ずらしてパネル本体1aの前面および背面に配置されている。
【0051】
前面連結部材2aの一端には、穴が設けられている。前面連結部材2aの一端の穴にボルト4aが差し込まれて、このボルト4aがパネル本体1aの前面に埋め込まれたインサートナットに螺合することにより、前面連結部材2aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、端部を構成する他端がパネル本体1aの上辺前面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。
【0052】
背面連結部材3aの一端には1個の穴が設けられ、端部を構成する他端には3個の穴が設けられている。背面連結部材3aの一端の穴にアンカーボルト4bが差し込まれて調整材8aに挿通され、パネル本体1aの背面に埋め込まれているインサートナットにアンカーボルト4bが螺合し、ナット5bで締め付けられることにより、背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。また、背面連結部材3aの他端の3個の穴にはナット5cがそれぞれ溶接され、中央のナット5cにボルト4cが螺合している。
【0053】
同図(a)、(b)、(c)に示すようにパネル1Aのパネル本体1aの背面下方に設けられた控えブロック6aはコンクリート製であり、穴が設けられている。この穴にボルト4dが差し込まれてパネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットにボルト4dが螺合することにより、控えブロック6aはパネル本体1aの背面に固定されている。控えブロック6aは、形鋼や平鋼等の鋼製であってもよく、最下段のパネル本体1aの背面側に延出して設けられる。控えブロック6aは、パネル本体1aと別体に形成されてパネル本体1aを自立させる。
【0054】
同図(d)、(e)、(f)に示すように、パネル1Bのパネル本体1aの背面に埋め込まれている2個のインサートナットに、各アンカーボルト4bが螺合することにより、各アンカーボルト4bはパネル本体1aの背面に突出して固定されている。
【0055】
図2(a)は、図1に示すパネル1A、1Bを本実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0056】
この壁面は、敷設延長方向が真っ直ぐな直線施工で、または、敷設延長方向が曲がる曲線施工における壁面が面一になる後述するイモ積み方式で、パネル本体1aが複数段積み上げられて構築される。
【0057】
壁面の構築に際し、最初に、下準備において、最下段のパネル1Aのパネル本体1aが砕石16上の基礎11上に設置される。この際、パネル本体1aの下端部より高い位置からその背面側に延出して設けられている控えブロック6aの後端には、三角柱状をした枕木12が設置され、パネル1Aの傾斜角度が基礎11の表面に垂直に調節される。また、パネル本体1aの前面下端には、さし筋13がくさび14を介して設置され、最下段のパネル本体1aが前方へせり出し、また、転倒するのが防がれる。なお、控えブロック6aは最下段のパネル本体1aではなく、2段目以降に積まれるパネル1Bのパネル本体1aに設けてもよい。
【0058】
次に、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面に、パネル本体1aの半分程度の高さAまでコンクリート15が打設される。これにより、控えブロック6aと共に最下段のパネル1Aのパネル本体1aが基礎11上に固定される。以上で下準備が終る。
【0059】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Bのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面と、他端が下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面側から上方に突出した背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があくように、一端が下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Bのパネル本体1aが挿入される。ここで、最下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面と最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Bのパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの端部に構成された係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。
【0060】
次に、第2工程において、所定の間隔17があいた背面連結部材3aの他端にボルト4cの一端を螺合させ、ボルト4cを回転させて背面連結部材3aの係合面3a1に対して出し入れすることで、ボルト4cの突出端を上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面に当接させて係合させ、上段のパネル1Bのパネル本体1aを固定させる。このボルト4cは、所定の間隔17があいた上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に介在させる支持治具を構成する。
【0061】
次に、第3工程において、2段に積み上げられたパネル1A、1Bの各パネル本体1aの背面に、2段目のパネル1Bのパネル本体1aの半分程度の高さBまでコンクリート15が打設される。この際、各パネル本体1aの背面に突出した長いアンカーボルト4bはコンクリート15により埋設され、硬化後、各パネル本体1aとコンクリート15との一体化をより向上させるためのアンカーになる。
【0062】
次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが取り外される。その後、2段目のパネル1Bに3段目のパネル1Bが前面連結部材2aおよび背面連結部材3aを用いて同様に積み上げられ、その背後に同様にコンクリート15が高さCまで打設される。以後、上記第1〜第4の各工程のサイクルが繰り返されて、壁面が構築されて行く。
【0063】
なお、上述した第1工程においては、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む前に、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aをボルト4aおよびナット5bで締め付けて予めパネル本体1aに取り付けておき、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む際に、下段のパネル本体1aの上方に端部が突出して取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間の空間に、上段のパネル本体1aが挿入されて位置させられた。しかし、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、ボルト4aおよびナット5bでパネル本体1aに取り付けて設けるのでなく、パネル本体1aの成型時にパネル本体1aと一体に成型して設けるようにしてもよい。また、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む前に、ボルト4aおよびナット5bを緩めておいて、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部を下段のパネル本体1aの上方から突出させない状態にしておき、または、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aを下段のパネル本体1aに全く取り付けない状態にしておき、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時に、または積んだ後に、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部を下段のパネル本体1aの上方から突出させて前面連結部材2aおよび背面連結部材3aをボルト4aおよびナット5bで締め付けてパネル本体1aに取り付け、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。また、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む前に、ボルト4aもしくはナット5bの一方を緩めておいて、前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの一方の端部のみを下段のパネル本体1aの上方から突出させた状態にしておき、または、前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの一方のみを、その一方の端部を上方に突出させて下段のパネル本体1aに取り付けた状態にしておき、または、前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの一方のみを下段のパネル本体1aに一体成型しておき、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時に、または積んだ後に、ボルト4aもしくはナット5bが緩められて上方から突出していなかった、または取り付けられていなかった、または一体成型されていなかった前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの他方を下段のパネル本体1aの上方から突出させてパネル本体1aに取り付け、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。
【0064】
また、上述した各段のパネル本体1aの背面をコンクリート15によって所定の高さまで埋める第3工程を、第1および第2工程によるパネル積み上げサイクルの任意のサイクル終了後に行なって、壁面を構築する構成にしてもよい。また、コンクリート15を打設する第3工程後、直ぐに前面連結部材2aを取り外す第4工程を行わずに、コンクリート15の硬化具合によっては上述した第1〜第3工程を所定回数行い、コンクリート15が十分硬化した任意の工程後に、硬化したコンクリート15の前面のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aを取り外す第4工程を行う構成にしてもよい。
【0065】
以下に説明する各壁面構築方法においても、同様に、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aをパネル本体1aの成型時にパネル本体1aと一体に成型して設けておくようにしてもよい。また、第1工程において、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時にまたは積んだ後に、下段のパネル本体1aに双方もしくは一方が取り付けられる前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部間に、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。また、第1工程において、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時にまたは積んだ後に、上段のパネル本体1aに双方もしくは一方が取り付けられる前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部間に下段のパネル本体1aが挟まるように、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。また、コンクリート15で埋める第3工程を、第1および第2工程によるパネル積み上げサイクルの任意のサイクル終了後に行なう構成にしてもよい。また、前面連結部材2aを取り外す第4工程も、同様に、コンクリート15を打設する第3工程後、直ぐに行わずに、第1〜第3工程を所定回数行った後に行う構成にしてもよい。
【0066】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面側および背面側で、前面連結部材2aの上端およびボルト4cの先端が図2(a)に示す矢印9a1および矢印9a2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、上下のパネル本体1aの接合部に接する前面連結部材2aの背面中央およびボルト4cの先端が矢印9a3および矢印9a2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0067】
図2(b)は、第1の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0068】
第1の実施形態では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第1の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
【0069】
この第1の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル本体1aの背面と、他端が上段のパネル本体1aの背面側から下方に突出した背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があくように、一端が上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル本体1aが下段のパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第1の実施形態と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0070】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、前面連結部材2aの下端およびボルト4cの先端が矢印9b3および矢印9b2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、上下のパネル本体1aの接合部に接する前面連結部材2aの背面中央およびボルト4cの先端が矢印9b1および矢印9b2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際も、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0071】
図3(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Aの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0072】
第1の実施形態では、図1に示すように、上方に突出した背面連結部材3aの他端に3個の穴が設けられ、上方に突出した前面連結部材2aの他端には穴が設けられていない。しかし、図3に示す第2の変形例では、上方に突出した背面連結部材3aの他端に穴が設けられておらず、上方に突出した前面連結部材2aの他端に3個の穴が設けられている。この前面連結部材2aの3個の穴にはナット5cが溶接され、中央のナット5cにボルト4cが螺合している。
【0073】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿され、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aは介挿されていない。しかし、図3に示す第2の変形例では、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aは介挿されておらず、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されている。
【0074】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、パネル本体1aの前面には凹凸で模様が設けられていないが、図3に示す第2の変形例では、パネル本体1aの前面には凹凸で模様が設けられている。
【0075】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、最下段のパネル1Aのパネル本体1a背面下方に控えブロック6aが固定される。しかし、第2の変形例では、図3(a)、(b)、(c)に示すように、最下段のパネル1Aのパネル本体1a背面下方に、V字に曲げられたV字支持部材6bが固定される。V字支持部材6bの一方の折り曲げ片には穴が設けられており、この穴にアンカーボルト4bが差し込まれて、パネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットにアンカーボルト4bが螺合している。この状態で、ナット5bが締め付けられることで、V字支持部材6bはパネル本体1aの背面に固定されている。また、V字支持部材6bの他方の折り曲げ片には穴20が設けられている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
【0076】
図4(a)は、図3に示すパネル1A、1Bを第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図(a)において図2および図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0077】
第1の実施形態では、図2に示すように、パネル本体1aが複数段垂直に積み上げられた。しかし、図4に示す第2の変形例では、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられて、壁面が直線施工、または、壁面が面一になる後述するイモ積み方式で曲線施工される。
【0078】
また、第1の実施形態では、図2(a)に示すように、上段のパネル本体1aの背面と、下段のパネル本体1aの背面側から上方に突出した背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があけられていた。しかし、図4に示す第2の変形例では、上段のパネル本体1aの前面と、下段のパネル本体1aの前面側から上方に突出した前面連結部材2aの端部に構成された係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。
【0079】
壁面の構築に際し、最初に、下準備において、最下段のパネル1Aのパネル本体1aがコンクリートからなる基礎11上に設置される。この際、ボルト4eが垂直に基礎11に埋設されており、このボルト4eの突出した先端がV字支持部材6bの折り曲げ片に設けられた穴20に通されて、ナット5eが締め付けられることで、V字支持部材6bが基礎11に固定されている。
【0080】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Bのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Bのパネル本体1aの前面と、他端が下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面側から上方に突出した前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があくように、一端が下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Bのパネル本体1aが挿入される。ここで、最下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面と最下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Bのパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。
【0081】
次に、第2工程において、所定の間隔19があいた前面連結部材2aの他端にボルト4cの一端を螺合させ、ボルト4cを回転させて前面連結部材2aの係合面2a1に対して出し入れすることで、ボルト4cの突出端を上段のパネル1Bのパネル本体1aの前面に当接させて係合させ、パネル本体1aを固定させる。
【0082】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Bのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0083】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面側および背面側で、ボルト4cの先端および上下のパネル本体1aの接合部に接する背面連結部材3aの前面中央が矢印9c2および矢印9c3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4cの先端および背面連結部材3aの上端が矢印9c2および矢印9c1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際も、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0084】
図4(b)は、第1の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0085】
第1の実施形態の第2の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第3の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
【0086】
第3の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル本体1aの前面と、他端が上段のパネル本体1aの前面側から下方に突出した前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があくように、一端が上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aを挿入して、上段のパネル本体1aを下段のパネル本体1aに載置する。その後、同図(a)に示す第2の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0087】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4cの先端および上下のパネル本体1aの接合部に接する背面連結部材3aの前面中央が矢印9d2および矢印9d1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4cの先端および背面連結部材3aの下端が矢印9d2および矢印9d3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0088】
図5は、図1および図3に示すパネル1A、1Bを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図1〜図4と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0089】
この壁面構造は、図2および図4に示す各壁面を、各パネル本体1aの背面が対向するように対にして構成した一例である。この壁面構造の前面には、上述した図4に示すように、図3に示すパネル1A、1Bが複数段斜めに積み上げられる。また、この壁面構造の背面には、上述した図2に示すように、図1に示すパネル1A、1Bが複数段垂直に積み上げられる。この壁面構造の背後には車道20、上部にはガードレール21が設けられている。この壁面構造を構築する際、前方の基礎地盤22の一部が掘り下げられ、掘り下げられた部分に砕石16および基礎11が敷設され、それらの上にパネル1A、1Bが設置される。
【0090】
このような第1の実施形態および第1〜3の変形例による壁面構築方法によれば、第1工程により、図2(a)および図4(a)に示すように、他端が下段のパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出して、一端が下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aが挿入されて位置させられ、または、図2(b)および図4(b)に示すように、他端が上段のパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出して、一端が上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挟まるように上段のパネル本体1aが位置させられ、第2工程により、上段または下段のパネル本体1aの前面または背面と前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの端部の係合面2a1、3a1との所定の間隔19、17があいた間に支持治具を構成するボルト4cが介在させられて、パネル本体1aが固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体1aを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【0091】
このため、パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1aを端から詰めて積み上げていくことが可能となる。従って、パネル1A、1Bを積み上げる際に上下のパネル1A、1Bの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。
【0092】
また、パネル本体1aを複数段積み上げる際、上下のパネル本体1aどうしを前面連結部材2aおよび背面連結部材3aによって単に係合させ、所定の間隔19、17があいたパネル本体1aと係合面2a1、3a1との間にボルト4cを介在させることで、上下のパネル本体1aどうしが支え合い、パネル本体1aが自立する。このため、パネル1A、1Bを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体1aの形状を薄く、単純な形状に構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。
【0093】
また、上段のパネル本体1aを下段のパネル本体1aの上に積み上げる際、上段のパネル本体1aは、下段または上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aに案内されて移動する。このため、上段のパネル本体1aは、下段のパネル本体1aの壁面の前面側や背面側にずれて設置され難くなり、下段のパネル本体1aの真上に簡単に設置でき、パネル1A、1Bの積み上げ作業効率は向上する。また、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aにより隣接するパネル本体1aに係合する構成は、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aのどちらか一方のみにより隣接するパネル本体1aに係合する構成よりも、パネル本体1aが自立しやすくなる。この結果、作業工程が単純で作業効率が良く、パネル本体1aが安定して自立する壁面を構築することができる壁面構築方法が提供される。
【0094】
また、パネル本体1aの前面または背面の少なくとも一方と、隣接するパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように構成されているので、前面連結部材2aと背面連結部材3aとの間の空間にパネル本体1aを挿入したときに、隙間が確保される。このため、パネル本体1aは、この前面連結部材2aと背面連結部材3aとの間の空間をスムーズに移動し、パネル本体1aの表面に凹凸状に設けられた模様等が引っかかって破損することもなく、パネル本体1aの積み上げ作業の作業効率は向上する。
【0095】
また、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、上下のパネル本体1aはボルト等で剛結される構成ではないため、パネル本体1aの背後にある盛土等が沈下したり変形すると、パネル本体1aはその沈下や変形に追従して動くことが可能である。従って、パネル本体1aどうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構築方法のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面を構築できる壁面構築方法が提供される。
【0096】
また、第1の実施形態および第1〜3の変形例による壁面構築方法によれば、図5に示すように、背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する前面連結部材2aが第4工程により取り外され、取り外された前面連結部材2aが他のパネル本体1aどうしの連結に用いられることで、壁面の施工に必要とされる連結部材の数が減り、壁面の製作コストが低減される。
【0097】
図6(a)、(b)および(c)は、本発明の第2の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0098】
第1の実施形態では、図1に示すように、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿され、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されていない。しかし、図6に示す第2の実施形態では、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの各取付面とパネル本体1aの前面および背面との間に調整材8aがそれぞれ介挿されている。
【0099】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、上方に突出した背面連結部材3aの他端に3個の穴が設けられ、上方に突出した前面連結部材2aの他端には穴が設けられていない。しかし、図6に示す第2の実施形態では、上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの各他端に3個の穴が設けられている。前面連結部材2aの3個の穴にはナット5cが溶接され、上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合している。背面連結部材3aの3個の穴にはナット5cが溶接され、中央のナット5cにボルト4hが螺合している。
【0100】
また、第1の実施形態の第2の変形例では、図3に示すように、最下段のパネル1Aのパネル本体1a背面下方に固定されるV字支持部材6bの各折り曲げ片が成す角度は鋭角になっている。しかし、図6に示す第2の実施形態では、最下段のパネル1Cのパネル本体1a背面下方に固定されるL字支持部材6cの各折り曲げ片が成す角度は直角になっている。
【0101】
また、第1の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、図1に示すように、パネル本体1aの正面から見て互いに所定間隔ずらしてパネル本体1aの前面および背面に配置されている。しかし、図6に示す第2の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、パネル本体1aの正面から見て互いに重なって配置されている。また、第1の実施形態ではパネル本体1aの前面に模様が無かったが、第2の実施形態ではパネル本体1aの前面に凹凸状の模様が設けられている。
【0102】
図7(a)は、図6に示すパネル1C、1Dを第2の実施の形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0103】
壁面の構築に際し、最初に、下準備において、既設構造体である橋脚30aの前面において、最下段のパネル1Cのパネル本体1aがコンクリートからなる基礎11上に設置される。この際、パネル1Cのパネル本体1aがL字支持部材6c並びにさし筋13およびさび14によって基礎11に固定される。また、コンクリートからなる基礎11内に下端が埋設された縦鉄筋31aが、垂直方向に伸びて設けられる。
【0104】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。ここで、最下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面と最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Dのパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。また、最下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面と最下段のパネル1Cのパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。
【0105】
次に、第2工程において、背面連結部材3aの一方の係合面3a1と2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hを介在させ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、2段目のパネル1Dのパネル本体1aを固定させる。この際、ボルト4fの突出端は、パネル本体1aの前面の模様間の目地部分に当接し、ボルト4gの突出端は、パネル本体1aの前面の模様に当接する。これらボルト4h、4fおよび4gは支持治具を構成する。また、パネル本体1aの背面のアンカーボルト4bに横鉄筋31bを係合させて、横鉄筋31bを縦鉄筋31aに固定し、縦鉄筋31aおよび横鉄筋31bからなる鉄筋31を組む。パネル本体1aは、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aによって自立している。また、パネル本体1aの背面のアンカーボルト4bが横鉄筋31bに係合されることで、突出したアンカーボルト4bが単にコンクリート15に埋入されて固定される場合よりも、パネル本体1aはより強固にコンクリート15に固定される。また、規則的に設置されたパネル本体1aの背面のアンカーボルト4bに横鉄筋31bを係合させることにより、鉄筋31の組立精度が向上する。
【0106】
なお、上記の第1工程を行う際、予めボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に介在させるようにしてもよい。また、これとは逆に、上記の第1工程を行う際、予めボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に介在させるようにしてもよい。
【0107】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0108】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9e1および矢印9e2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9e3および矢印9e2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0109】
図7(b)は、第2の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0110】
第2の実施形態では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第1の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第2の実施形態の構成と同一である。
【0111】
この第1の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Cのパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Cのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第2の実施の形態と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0112】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9f3および矢印9f2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9f1および矢印9f2の方向にかかる負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0113】
図8は、図6に示すパネル本体1aを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の斜視図である。なお、同図において図7と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0114】
この壁面構造は、図7に示す壁面構造を橋脚30aの前面に構築した一例である。この壁面構造を構築する際、上記のように、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の硬化後、背面がコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する、下段のパネル本体1aの前面連結部材2aが取り外される。
【0115】
なお、本実施形態における、橋脚30aを囲む壁面構造の形状は、橋脚30aの矩形断面形状に合わせて直方体状であったが、断面円形状の橋脚を囲む場合には、壁面構造の形状は円筒状となる。また、本実施形態では、橋脚30aの周りに壁面構造を構築する構成であったが、例えば、穴など内側に空洞を有する構造物の空洞に面する外壁に、本実施形態の壁面構造を円筒状に構築する構成であってもよい。この場合、パネル本体の前面は構造物の空洞側を向くことになる。ここで、円筒状構造物の大きさが小さい場合には、平板状のパネル本体1aにより形成される壁面の形状は、円筒状ではなく、多角形状となってしまう。このため、円筒状構造物の曲がり方に合わせてパネル本体1aを曲面状に成型して、構成するようにしてもよい。
【0116】
図9(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0117】
この第2の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一端にそれぞれ支点が設けられている。つまり、パネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aの、パネル本体1aとのボルト4aによる固設箇所である取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に、パネル本体1aの前面に当接する支点がボルト4iによって設けられている。ボルト4iは、前面連結部材2aの一端の穴に溶接されたナット5iに螺合している。また、パネル本体1aに取り付けられた背面連結部材3aの、パネル本体1aとのボルト4bによる取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に、パネル本体1aの背面に当接する支点が設けられている。一方、上述した図1に示す第1の実施形態並びに図6に示す第2の実施形態の前面連結部材2aおよび背面連結部材3aには、このような支点は設けられていない。
【0118】
図10(a)は、図9に示すパネル1C、1Dを第2の実施形態の第2の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図9と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0119】
第2の実施形態では、図6に示すように、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aを介挿することで、隣接するパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があけられた。しかし、図9に示す第2の変形例では、背面連結部材3aのパネル本体1aへの取付部分のパネル本体1aの厚さが、背面連結部材3aの係合面3a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。
【0120】
この第2の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。
【0121】
次に、第2工程において、背面連結部材3aの一方の係合面3a1と上段のパネル1Dのパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hを介在させ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1と上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、上段のパネル1Dのパネル本体1aを固定させる。なお、上記の第1工程を行う際、予めボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に介在させるようにしてもよい。また、これとは逆に、上記の第1工程を行う際、予めボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に介在させるようにしてもよい。
【0122】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0123】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9g1および矢印9g2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9g3および矢印9g2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0124】
図10(b)は、第2の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0125】
第2の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第3の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は同図(a)に示す構成と同一である。
【0126】
この第3の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Cのパネル本体1aを挿入して、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Cのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第2の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0127】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9h3および矢印9h2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9h1および矢印9h2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0128】
このような第2の実施形態および第2の変形例による壁面構築方法によれば、図7(a)、図10(a)に示すように、第2工程で、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hが介在させられ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gが介在させられることで、下段のパネル本体1aに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に第1工程で位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0129】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置に介在するボルト4f、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間に介在する1つのボルト4hにより、矢印9e1,9g1および矢印9e2,9g2の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aの前面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより低い位置に介在するボルト4g、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間に介在する1つのボルト4hにより、矢印9e3,9g3および矢印9e2、9g2の方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0130】
また、第2の実施形態の第1、3の変形例による壁面構築方法によれば、図7(b)、図10(b)に示すように、第2工程で、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hが介在させられ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4gおよびボルト4fが介在させられることで、取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挟まるように第1工程で位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0131】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9f3、9h3および矢印9f2,9h2の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9f1、9h1および矢印9f2,9h2の方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0132】
また、第2の実施形態の第2、3の変形例による壁面構築方法によれば、図10(a)および(b)に示すように、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、パネル本体1aを介して前面連結部材2aの他端側に負荷がかかっても、前面連結部材2aの一端に設けられた支点であるボルト4iがボルト4aによる取付箇所を挟む反対側でパネル本体1aの前面に当接することにより、この負荷がパネル本体1aの前面に当接する支点でも受けられる。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、パネル本体1aを介して背面連結部材3aの他端側に負荷がかかっても、背面連結部材3aの一端に設けられた支点がボルト4bによる取付箇所を挟む反対側でパネル本体1aの背面に当接することにより、この負荷がパネル本体1aの背面に当接する支点でも受けられる。このため、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの他端側にかかる負荷は、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの取付箇所とその一端に設けられた支点とで支えられ、取付箇所のみで前面連結部材2aまたは背面連結部材3aが固定されている場合に比べて、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aはぐらつくことなく確実にパネル本体1aに固定される。
【0133】
なお、第2の実施形態および第1〜3の変形例では、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hを介在させ、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4f、4gを介在させた。しかし、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に少なくとも1つのボルトを介在させ、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、いずれか1つの前記ボルトより高い位置および低い位置に少なくとも2つのボルトを介在させる構成にしてもよい。
【0134】
図11(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第4の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0135】
第2の実施形態では、図6に示すように、上方に突出した前面連結部材2aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、上方に突出した背面連結部材3aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合していた。しかし、図11に示す第4の変形例では、前面連結部材2aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合し、背面連結部材3aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合している。
【0136】
図12(a)は、図11に示すパネル1C、1Dを第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図11と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0137】
第2の実施形態では、図7(a)に示すように、パネル本体1aが複数段垂直に積み上げられた。しかし、図12(a)に示す第4の変形例では、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる。
【0138】
壁面を構築する際、第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。
【0139】
次に、第2工程において、前面連結部材2aの一方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hを介在させ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、パネル本体1aを固定させる。なお、上記の第1工程を行う際、予めボルト4fおよびボルト4gを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4hを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に介在させるようにしてもよい。
【0140】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0141】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4gの各先端が矢印9i2および矢印9i3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4fの各先端が矢印9i2および矢印9i1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0142】
図12(b)は、第2の実施の形態の第5の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0143】
第2の実施形態の第4の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第5の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第2の実施形態の第4の変形例の構成と同一である。
【0144】
この第5の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Cのパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Cのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第4の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0145】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4gの各先端が矢印9j2および9j1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4fの各先端が矢印9j2および矢印9j3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0146】
図13は、図11に示すパネル1C、1Dを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図11および図12(a)と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0147】
この壁面構造は、上述した図12(a)に示す第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法によって構築される壁面構造の一例である。
【0148】
このような第2の実施形態の第4の変形例による壁面構築方法によれば、図12(a)に示すように、第2工程で、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hが介在させられ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gが介在させられることで、下段のパネル本体1aに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に第1工程で位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0149】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間に介在する1つのボルト4h、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより低い位置に介在するボルト4gにより、矢印9i2および矢印9i3の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aに前面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間に介在する1つのボルト4h、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置に介在するボルト4fにより、矢印9i2および矢印9i1方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0150】
また、第2の実施形態の第5の変形例による壁面構築方法によれば、図12(b)に示すように、第2工程で、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hが介在させられ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4gおよびボルト4fが介在させられることで、取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挟まるように位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0151】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9j2および矢印9j1の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9j2および矢印9j3の方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0152】
なお、第2の実施形態の第4、5の変形例では、図12(a)、(b)に示すように、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4f、4gを介在させた。しかし、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に少なくとも1つのボルトを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、いずれか1つの前記ボルトより高い位置および低い位置に少なくとも2つのボルトを介在させる構成にしてもよい。
【0153】
また、パネル本体1a、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15、およびコンクリート15の背面にある既設構造体または法面に棒状部材または線状部材が挿入され、挿入された棒状部材または線状部材の周りに充填材が充填されることにより、パネル本体1aから構成される壁面が既設構造体または法面の前面に固定される構成にしてもよい。
【0154】
また、上述した図6〜図13に示す第2の実施形態および第1〜5の変形例の各壁面構築方法により、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aを積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側または背面側の間で出入りが生じることになる。また、曲線施工において斜めにパネル本体1aを積み上げて傾斜した壁面を構築する場合、敷設延長方向におけるパネル本体1a間に隙間が生じる。この出入りおよび隙間について、図14を用いて説明する。
【0155】
図14(a)および(b)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法(図12(a)参照)に用いられるパネル1Dをイモ積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図であり、同図(c)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図である。図14(d)および(e)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法(図12(a)参照)に用いられるパネル1Dをずらし積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図であり、同図(f)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図である。なお、同図において図12(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、図14(a)〜(f)において、図12(a)に示すパネル本体1aに設けられた模様の図示は省略している。また、図14(b)、(c)、(e)および(f)において、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aや背面連結部材3a等の部材の図示は省略している。
【0156】
同図(a)、(b)および(c)に示す壁面構築方法では、下段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目と上段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目とが高さ方向に一直線になるように設置して、パネル本体1aを積み上げるイモ積み方式により、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる。また、同図(d)、(e)および(f)に示す壁面構築方法では、下段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目と上段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目とを考慮しないでランダムに設置して、パネル本体1aを積み上げるずらし積み方式により、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる。
【0157】
曲線施工でパネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる場合、下段のパネル本体1aと上段のパネル本体1aとがそれぞれ描く半径は異なる。このため、イモ積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる場合、同図(b)に示すように、パネル本体1aの下部から上部に向かって広がる隙間41がパネル本体1a間に発生し、この隙間41に間詰コンクリート等を埋めたり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要があり、作業効率がよくない。また、積み上げる各パネル本体の側辺の合わせ目を1段おきに一直線上に揃えるように設置する不図示の千鳥積み方式により、曲線施工でパネル本体が複数段斜めに積み上げられる場合、パネル本体どうしの合わせ目を1段おきに揃えるために、上下のパネル本体1aの位置関係を調整する必要があり、また、イモ積み方式と同様にパネル本体1a間に隙間が発生し、この隙間に間詰コンクリート等を埋めたり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要があり、この場合も作業効率が良くない。一方、ずらし積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる場合、千鳥積み方式のようにパネル本体1aの位置関係を調整してパネル本体を積み上げる労力も必要なく、また、パネル本体1a間の隙間に間詰コンクリート等を埋めたり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要もなく、パネル本体を端から詰め簡単に積むことができ、作業効率が良い。
【0158】
イモ積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段積み上げられる場合、同図(a)、(b)および(c)に示すように、上段および下段のパネル本体1aの位置関係に出入りは生じない。一方、ずらし積み方式等により、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aが複数段積み上げられる場合、同図(d)、(e)および(f)に示すように、下部にあるパネル本体1aと上部にあるパネル本体1aとは上下の位置関係が揃わずに配置され、上下のパネル本体1aの前面および背面が面一にならない。つまり、同図(f)の平面図に示すように、点線で示される上段のパネル本体1aと、その下の段に設けられた実線で示されるパネル本体1aとは、曲線施工のためにずれて配置され、パネル本体1aに出入りが生じる。また、同図(d)の側面図に示すように、パネル本体1aを側面から見た場合にも、上下のパネル本体1aの前面側および背面側の間で出入りが生じることになる。
【0159】
同図(d)、(e)および(f)に示すずらし積み方式の壁面構築方法によれば、壁面の敷設延長方向が曲がる曲線施工で上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずにパネル本体1aを積み上げる場合、上記のように、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側および背面側の間で出入りが生じる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また、生じなくても、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に隙間を設け、この隙間に支持治具を構成するボルト4f、4g、4hを介在させることで、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、パネル本体1aを固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体1aも固定することができる。従って、パネル本体1aにかかる負荷の方向に応じて、ボルト4f、4g、4hの取付位置を調節し、また、パネル本体1aにかかる負荷の大きさに応じて、介在させるボルトの数を調整することで、パネル本体1aにかかる負荷の方向、大きさ等の様々な状況に自在に対応した強固な壁面を構築できる。
【0160】
また、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部との間に隙間を設け、この隙間にボルト4f、4g、4hを介在させることで、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、上下のパネル本体1aを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体1aの位置関係を敷設延長方向において考慮することのない上記のずらし積み方式により、各段毎にパネル本体1aを端から詰めて、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずにパネル本体1aを斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体1a間には、パネル本体1aそのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、従来のように、パネル本体1a間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネル本体1aの加工作業が削減されて、パネル本体1aの積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0161】
また、第2の実施形態およびその第1〜5の変形例による壁面構築方法によれば、ボルト4f、4g、4hを回転させて、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの他端側に一端が螺合したボルト4f、4g、4hの突出端を係合面2a1、3a1に対して出し入れし、上段または下段のパネル本体1aの前面または背面に当接させて係合させることで、所定の間隔19、17があいた上段または下段のパネル本体1aの前面または背面と係合面2a1、3a1との間にボルト4f、4g、4hが介在させられて、パネル本体1aが固定される。このため、隣接するパネル本体1aに係合する前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1側へのボルト4f、4g、4hの出し入れを調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0162】
また、第2の実施形態およびその第1〜5の変形例による壁面構築方法によれば、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aのパネル本体1aへの取付面とパネル本体1aの前面または背面との間に調整材8aを介挿することで、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1と隣接するパネル本体1aとの間にあく所定の間隔19、17が、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りの大きさや模様の突出具合に応じて、調整される。この調整により、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1と隣接するパネル本体1aとのぶつかり合いを回避することができる。
【0163】
また、第2の実施形態の第2の変形例による壁面構築方法によれば、図9および図10に示すように、背面連結部材3aのパネル本体1aへの固設部分である取付部分のパネル本体1aの厚さが、背面連結部材3aの係合面3a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。このため、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りや模様の凹凸による、隣接するパネル本体1aと背面連結部材3aの係合面3a1とのぶつかり合いを回避することができる。なお、前面連結部材2aのパネル本体1aへの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aを介挿することなく、前面連結部材2aのパネル本体1aへの取付部分のパネル本体1aの厚さが、前面連結部材2aの係合面2a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと係合面2a1との間に所定の間隔19をあけることも出来る。この場合、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りや模様の凹凸による、隣接するパネル本体1aと前面連結部材2aの係合面2a1とのぶつかり合いを回避することができる。
【0164】
図15(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図3および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0165】
第2の実施形態では、図6に示すように、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの模様が設けられた前面目地部分との間に1個の調整材8aを介挿することで、隣接するパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられた。しかし、図15に示す第6の変形例では、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの模様がない前面との間に2個の調整材8aを介挿することで、隣接するパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。また、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、パネル本体1aの正面から見て互いに所定間隔ずらしてパネル本体1aの前面および背面に配置されている。
【0166】
図15(a)、(b)および(c)に示すように、パネル1Cは、上方に突出した前面連結部材2aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合し、上方に突出した背面連結部材3aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合する。また、第2の実施形態では、図6に示すように、最下段のパネル1Cのパネル本体1aの背面下方にL字支持部材6cが固定されている。しかし、第6の変形例では、最下段のパネル1Cのパネル本体1aの背面下方に、V字支持部材6bが固定される。
【0167】
一方、同図(d)、(e)および(f)に示すように、パネル1Dは、上方に突出した前面連結部材2aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、上方に突出した背面連結部材3aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合する。
【0168】
なお、パネル1C、1Dにおけるボルト4h並びにボルト4fおよびボルト4gの取付位置は同図に示す位置に限られず、上段に積まれるパネル1Dの傾きに応じてパネル1aの前面側および背面側で逆の位置に取り付けられる。つまり、パネル1Cの前面連結部材2aの上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、パネル1Cの背面連結部材3aの中央のナット5cにボルト4hが螺合する場合がある。また、パネル1Dの前面連結部材2aの中央のナット5cにボルト4hが螺合し、パネル1Dの背面連結部材3aの上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合する場合がある。
【0169】
図16(a)は、図15に示すパネル1C、1Dを第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図7および図15と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0170】
トンネル30cの壁面前面に新たに壁面を構築する際、最初に、下準備において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1a背面下方に、上述した図3と同様のV字支持部材6bが固定され、このV字支持部材6bがパネル1Cのパネル本体1aと共に基礎11に固定される。
【0171】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。
【0172】
次に、第2工程において、前面連結部材2aの一方の係合面2a1と2段目のパネル1Dのパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hを介在させ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、2段目のパネル1Dのパネル本体1aを固定させる。この際、トンネル30cの壁面の曲面形状に合わせて、下段のパネル1Cのパネル本体1aの表面と上段のパネル1Dのパネル本体1aの表面との角度が所定の角度になるように、ボルト4h、4f、4gの突出長さが調整される。また、各パネル本体1aを積み上げる際、横鉄筋31bを縦鉄筋31aに固定して、鉄筋31が組まれる。
【0173】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0174】
上述した工程において、最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる際、パネル本体1aが前傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4gの各先端が矢印9k2および矢印9k3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4fの各先端が矢印9k2および矢印9k1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0175】
また、2段目以降のパネル1Dのパネル本体1aの上により上段のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる際、パネル本体1aが前傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、より上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、より上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9l1および矢印9l2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、より上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、より上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、より上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9l3および矢印9l2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、より上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0176】
図16(b)は、第2の実施の形態の第7の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0177】
第2の実施形態の第6の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第7の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第2の実施形態の第6の変形例の構成と同一である。
【0178】
この第7の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Dのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第6の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0179】
上述した工程において、下段のパネル本体1aの上に上段のパネル本体1aが積まれる際、パネル本体1aが前傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9m3および矢印9m2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9m1および矢印9m2の方向にかかる負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0180】
図17は、図15に示すパネル1C、1Dを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図16(a)と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0181】
このトンネル30cの壁面前面には、図16に示すように構築されるパネル1C、1Dが設けられ、これらのパネル1C、1Dによりトンネル30cの壁面が補修される。トンネル30cの天井部分のパネル1Dのパネル本体1aは、2本のボルト4jにより、パネル本体1aの背面に埋められたコンクリート15を介してトンネル30cに固定されることで、強固にトンネル30cの天井部分に固定され、落下が防止されている。
【0182】
ここで、図16に示すトンネル30cでは、3段目のパネル1Dのパネル本体1aがトンネル30cの壁面形状に合わせてやや前面側に傾いているため、2段目のパネル1Dのパネル本体1aは、前面連結部材2aにボルト4fおよびボルト4g、背面連結部材3aにボルト4hが取り付けられていた。しかし、図17に示すトンネル30cでは、3段目のパネル1Dのパネル本体1aがトンネル30cの壁面形状に合わせてやや背面側に傾いているため、2段目のパネル1Dのパネル本体1aは、前面連結部材2aにボルト4h、背面連結部材3aにボルト4fおよびボルト4gが取り付けられている。
【0183】
なお、図15〜図17に示す第6、第7の変形例では、下段のパネル本体1aの表面と異なる角度で上段のパネル本体1aを積み上げることで、曲面形状のトンネル30cの壁面を補修した。しかし、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aが、その一端に取り付けられるパネル本体1aとその他端に係合させられるパネル本体1aとが所定形状の面を形成するように、曲げられているものを用いて、トンネル30cの壁面を補修する構成にしてもよい。この構成によれば、隣接するパネル本体1aで所望の形状の面を形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体1aを積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、上記のトンネル30cのような既設構造体の前面にパネル本体1aを積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状の面を隣接するパネル本体1aで形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体1aを積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。特に、半径が小さくて曲がりの大きな曲面を有する壁面にこの構成を適用すると、有効である。
【0184】
また、パネル本体1aが、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aを介して係合する隣接するパネル本体1aと所定形状の面を形成するように、曲げられているものを積み上げて、トンネル30cの壁面を補修する構成でもよい。この構成によれば、所望の面を形成するように曲げられているパネル本体を積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、上記のトンネル30cのような既設構造体の前面にパネル本体を積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状で曲げられているパネル本体を用いて、パネル本体を積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。この場合も、特に、半径が小さくて曲がりの大きな曲面を有する壁面にこの構成を適用すると、有効である。
【0185】
図18(a)、(b)および(c)は、本発明の第3の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Eの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Fの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0186】
同図に示すように、パネル本体1bは、上述した実施形態および変形例のパネル本体1aより厚い構造となっている。
【0187】
また、第2の実施形態では、図6に示すように、上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一方の他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、他方の他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合する構成であった。しかし、図18に示す第3の実施形態では、上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一方の他端の下部のナット5cに支持治具を構成するボルト4kが螺合し、他方の他端の上部のナット5cに支持治具を構成するボルト4lが螺合する構成になっている。
【0188】
また、図18に示す第3の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの各一端に設けられた穴にナット5iが溶接され、これらナット5iにボルト4iが螺合している。これらボルト4iにより、パネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた各一端に、パネル本体1aの前面および背面に当接する支点が設けられている。一方、上述した第2の実施形態では、図6に示すようにこのような支点は設けられていない。
【0189】
図19(a)は、図18に示すパネル1E、1Fを第3の実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図7および図18と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0190】
壁面を構築する際、最初に、下準備において、最下段のパネル1Eのパネル本体1bがコンクリートからなる基礎11上に設置される。この際、コンクリートからなる基礎11内に下端が埋設された縦鉄筋31aが壁面方向に伸びて設けられる。
【0191】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Eのパネル本体1bの上に2段目のパネル1Fのパネル本体1bが積まれる。この際、他端が上段のパネル1Fのパネル本体1bの前面および背面と係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように一端が下段のパネル1Eのパネル本体1bに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Fのパネル本体1bが挿入される。
【0192】
次に、第2工程において、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に1つのボルト4kを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、1つのボルト4kと異なる高さに1つのボルト4lを介在させることで、パネル本体1bを固定させる。なお、ボルト4lは、第1工程において、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間に予め介在させるようにしてもよい。この際、パネル本体1bの背面のアンカーボルト4bに横鉄筋31bを係合させて、横鉄筋31bを縦鉄筋31aに固定し、縦鉄筋31aおよび横鉄筋31bからなる鉄筋31を組む。
【0193】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Fのパネル本体1bの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1bどうしを互いに係合する最下段のパネル1Eのパネル本体1bの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0194】
上述した工程において、下段のパネル本体1bの上に上段のパネル本体1bが積まれる際、パネル本体1bが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1bの自重により、また、上段のパネル本体1bを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1bの前面および背面で、ボルト4kおよびボルト4lの各先端が矢印9n2および矢印9n1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1bの背面側への転倒が防止される。
【0195】
図19(b)は、第3の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0196】
第3の実施形態では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1bに取り付けられ、他端がパネル本体1bの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1bに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第1の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1bに取り付けられ、他端がパネル本体1bの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1bに取り付けられている。これ以外の構成は第3の実施形態の構成と同一である。
【0197】
この第1の変形例では、パネル本体1bを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Eのパネル本体1bの前面および背面と、他端が上段のパネル1Fのパネル本体1bの下方前面側および下方背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Fのパネル本体1bに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Eのパネル本体1bが挿入されて、上段のパネル1Fのパネル本体1bが下段のパネル1Eのパネル本体1bに載置される。その後、同図(a)に示す第3の実施の形態と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0198】
上述した工程において、下段のパネル本体1bの上に上段のパネル本体1bが積まれる際、パネル本体1bが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1bの自重により、また、上段のパネル本体1bを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1bの前面および背面で、ボルト4kおよびボルト4lの各先端が矢印9o1および矢印9o2の方向にかかる負荷を受け止めて、上段のパネル本体1bの背面側への転倒が防止される。
【0199】
図20は、図18に示すパネル1E、1Fを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図19と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0200】
この壁面構造は、上述した第3の実施形態の壁面構築方法によって構築される壁面構造を、老朽化したまたは変状をきたした擁壁30dの前面の基礎地盤22に構築した一例である。
【0201】
このような第3の実施形態およびその第1の変形例による壁面構築方法によれば、第2工程で、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に1つのボルト4kを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、1つのボルト4kと異なる高さに1つのボルト4lを介在させることで、第1工程で、図19(a)に示すように、下段のパネル本体1bに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に位置させられた、または、図19(b)に示すように、取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1bが挟まるように位置させられた、上段のパネル本体1bが固定される。
【0202】
このため、パネル本体1bが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1bの自重により、また、パネル本体1bの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1bに前面側からかかっても、下段または上段のパネル本体1bに取り付けられている前面連結部材2aの係合面2a1と上段または下段のパネル本体1bの前面との間に介在する1つのボルト4k、および下段または上段のパネル本体1bに取り付けられている背面連結部材3aの係合面3a1と上段または下段のパネル本体1bの背面との間における、前面側の1つのボルト4kより高いまたは低い位置に介在するボルト4lにより、この負荷が受け止められる。また、パネル本体1bを積み上げて壁面を斜めに構築する際、パネル本体1bを背面側に傾斜させることで、パネル本体1bの重量により、パネル本体1bの傾斜角度に応じた、パネル本体1bの背面側のコンクリート15からなる裏込部等からの側圧に対抗させることができる。この結果、前面側からの負荷をボルト4k、4lにより、背面側からの負荷をパネル本体1bの重量で、受け止められる。また、パネル本体1bを積み上げて壁面を垂直に構築する際には、垂直に立つパネル本体1bが有する重量に応じた、パネル本体1bの前面および背面からの側圧に対抗させることができる。このため、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1bが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1bを確実に固定することができる。
【0203】
また、曲線施工で上下のパネル本体1bの位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げる場合には、下方に積まれるパネル本体1bと上方に積まれるパネル本体1bとは一面とならず、上下のパネル本体1bの前面側および背面側の間で出入りが生じる。また、上下のパネル本体1bの位置関係を揃えて、パネル本体1bを積み上げる場合には、このような出入りが生じることなく、下方に積まれるパネル本体1bと上方に積まれるパネル本体1bとは一面となる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に隙間を設け、この隙間にこれらのボルト4k、4lを介在させることで、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、パネル本体1bを固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体1bも固定することができる。
【0204】
また、この構成においても、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部との間に隙間を設け、この隙間にボルト4k、4lを介在させることで、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、上下のパネル本体1bを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体1bの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1bを端から詰めて、上下のパネル本体1bの位置関係を揃えずにパネル本体1bを斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体1b間には、パネル本体1aそのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、この構成によっても、従来のように、パネル本体1a間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネル本体1aの加工作業が削減されて、パネル本体1bの積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0205】
なお、本実施形態では、第2工程において、図19に示すように、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に1つのボルト4kを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、1つのボルト4kと異なる高さに1つのボルト4lを介在させる構成であった。しかし、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に少なくとも1つのボルトを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、いずれか1つの前記ボルトと異なる高さに少なくとも1つのボルトを介在させる構成にしてもよい。
【0206】
図21(a)、(b)および(c)は、本発明の第4の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Gの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図9と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0207】
上述した実施形態および変形例では、背面連結部材3aの一端がパネル本体1a、1bの背面に取り付けられる構成であったが、パネル本体1a、1bの上辺または下辺に取り付けられる構成にしてもよい。図21に示す第4の実施の形態では、背面連結部材3bの一端が模様の無いパネル本体1cの上辺に取り付けられている。背面連結部材3bは、板状部材がL字形に折り曲げられて形成されている。
【0208】
パネル本体1cの上辺の左右2箇所には切り欠き部52が設けられており、各切り欠き部52にはパネル本体1cの高さ方向にインサートナットが埋め込まれている。各背面連結部材3bの水平折り曲げ片に設けられた穴にボルト4mが差し込まれて、各切り欠き部52に埋め込まれているインサートナットにボルト4mが螺合することにより、各背面連結部材3bは一端がパネル本体1cの上辺に固定されている。背面連結部材3bの他端の垂直折り曲げ片には3個の雌ネジ穴51が設けられ、中央の雌ネジ穴51にはボルト4hが螺合している。また、パネル本体1cの背面にパネル本体1cの厚さ方向に埋め込まれている4個のインサートナットに、各アンカーボルト4bが螺合することにより、各アンカーボルト4bはパネル本体1cの背面に突出して固定されている。
【0209】
このような第4の実施形態による壁面構築方法によれば、第1工程により、他端が下段のパネル本体1cの前面側および背面側から上方に突出して、一端が下段のパネル本体1cに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3bの間に上段のパネル本体1cが挿入されて位置させられ、第2工程により、上段のパネル本体1cの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3bの係合面2a1、3b1との所定の間隔19、17があいた間にボルト4f、4g、4hが介在させられて、パネル本体1cが固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体1cを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【0210】
このため、パネル本体1cを積み上げる際、上下のパネル本体1cの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1cを端から詰めて積み上げていくことが可能となる。従って、パネル1Gを積み上げる際に上下のパネル1Gの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。
【0211】
なお、この第4の実施形態では、背面連結部材3bのみがパネル本体1cの上辺に取り付けられている例を示しているが、前面連結部材2aも同様にパネル本体1cの上辺に取り付けられる構成にしてもよい。さらに、これら前面連結部材2aおよび背面連結部材3bをパネル本体1cの下辺に取り付けて、パネル本体1cの下方に突出する構成にしてもよい。
【0212】
図22(a)、(b)および(c)は、本発明の第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Hの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図6および図18と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0213】
上述した第2の実施形態と異なり、図22に示す第5の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aのナット5c、5iに、ボルト頭が半円球状に形成された支持治具を構成するボルト4nが螺合し、前面連結部材2aは、他端の上部および下部のナット5c並びに一端のナット5iに、ボルト頭を模様が無いパネル本体1aの前面に向けてボルト4nが螺合している。背面連結部材3aは、他端の中央のナット5cおよび一端のボルト5iに、ボルト頭をパネル本体1aの背面に向けてボルト4nが螺合している。前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一端に螺合しているボルト4nのボルト頭は、パネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に設けられた、パネル本体1aの前面および背面に当接する支点を構成している。
【0214】
第2の実施形態のパネル1Dでは、図7(a)に示すように、壁面構造を構築する第1工程において、下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aを挿入して位置させ、第2工程において、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1に対してボルト4f、4gおよびボルト4hを出し入れすることで、所定の間隔19、17があいたパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にボルト4f、4gおよびボルト4hの突出端を介在させて、パネル本体1aを固定させて積み上げた。しかし、図22に示す第5の実施形態のパネル1Hでは、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aにボルト4nのボルト頭が上記のように突出して取付けられているので、第1工程により下段のパネル本体1aに上段のパネル本体1aが位置させられることで、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にボルト4nのボルト頭が介在してパネル本体1aが固定され、第1工程と第2工程とが同時に行われる。
【0215】
図23(a)、(b)および(c)は、第5の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法で構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Hの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0216】
図23に示す第1の変形例の前面連結部材2cおよび背面連結部材3cは、上述した第5の実施形態の前面連結部材2aおよび背面連結部材3aと異なり、板状の形状をしている。また、第5の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aのナット5c、5iにボルト4nが螺合して、所定の間隔19、17にボルト4nが介在する構成であった。しかし、図23に示す第5の実施形態の第1の変形例では、前面連結部材2cおよび背面連結部材3cに支持治具を構成する半円板4oが溶接されることで、所定の間隔19、17に半円板4oが介在する構成になっている。つまり、上方に突出した前面連結部材2cは、他端に2個の半円板4o、一端に1個の半円板4oが溶接されている。上方に突出した背面連結部材3cは、他端および一端にそれぞれ1個の半円板4oが溶接されている。前面連結部材2cおよび背面連結部材3cの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に溶接されている半円板4oは、パネル本体1aの前面および背面に当接する支点を構成している。
【0217】
この第1の変形例では、上述した第5の実施形態と同様に、下段のパネル本体1aの上に上段のパネル本体1aを位置させる第1工程により、前面連結部材2cおよび背面連結部材3cの他端に溶接された半円板4oが、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2c1、3c1との間に介在してパネル本体1aが固定され、第1工程と第2工程とが同時に行われる。
【0218】
このような第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構築方法によれば、上述したように、下段のパネル本体1aに上段のパネル本体1aを位置させる第1工程を行うことで、パネル本体1aを固定させる第2工程が同時に行われる。このため、第2工程を別工程として行う必要がない分、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。このような第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構築方法は、曲線施工において生じるパネル1Hの出入りに合わせてボルト4nの出し入れを調整することができないため、パネル1Hの出入りが生じる曲線施工には不向きであり、パネル1Hの出入りが生じない、上下のパネル本体1aが面一に積まれる直線施工や、間詰めコンクリートが必要となるパネル本体1aを斜めにイモ積み方式で積み上げる曲線施工で用いられる。また、パネル本体1aの前面および背面へのボルト4nのボルト頭や半円板4oの介在に邪魔となる模様がパネル表面に付けられていないパネル1Hの施工などに用いられる。
【0219】
なお、第5の実施形態およびその第1の変形例では、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、2c1および3a1、3c1との双方の間に、ボルト4nのボルト頭や半円板4oが介在する構成であった。しかし、パネル本体1aの前面と前面連結部材2a、2cの係合面2a1、2c1との間、またはパネル本体1aの背面と背面連結部材3a、3cの係合面3a1、3c1との間のどちらか一方に所定の間隔19または17があけられ、この一方の所定の間隔19または17にボルト4nのボルト頭や半円板4oが介在する構成にしてもよい。また、第5の実施形態およびその第1の変形例では、前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3b、3cは、パネル本体1aの上方に突出する構成であったが、パネル本体1aの下方に突出する構成にしてもよい。
【0220】
図24は、第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造において背面連結部材3aが回動自在に取り付けられている構成を説明するための、2段目以降に積まれるパネル1Hの背面図である。なお、同図において図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、同図において、パネル本体1aの前面に取り付けられる前面連結部材2aの図示は省略している。
【0221】
パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を考慮することなくパネル本体1aを積み上げると、上下のパネル本体1aに設けられた不図示の長い背面連結部材3aもしくは前面連結部材2aどうしまたはこれらとパネル本体1aに設けられた部材とがどこかでぶつかる。しかし、背面連結部材3aおよび前面連結部材2aがパネル本体1aにボルト4bおよびナット5b並びにボルト4aによって着脱自在に取り付けられているため、ぶつかる背面連結部材3aまたは前面連結部材2aの一方を取り外したり、別の位置にずらして予めパネル本体1aの背面または前面に設けられたインサートナット等に取り付けることで、背面連結部材3aもしくは前面連結部材2aどうしまたはこれらとパネル本体1aに設けられた部材のぶつかりを避けることができる。また、同図に示すように、背面連結部材3aはパネル本体1aにボルト4bを中心に回動自在に取り付けられている。また、前面連結部材2aは、パネル本体1aにボルト4aを中心に回動自在に取り付けられている。このため、同図に示すように、パネル本体1aに設けられたボルト4bとぶつかる背面連結部材3aの他端を、ボルト4bによるパネル本体1aとの取付箇所を中心にパネル本体1aの背面上で回動させることにより、上段のパネル本体1aのボルト4bと背面連結部材3aのぶつかりを避けることができる。前面連結部材2aについても同様に、ぶつかる前面連結部材2aの他端を、ボルト4aによるパネル本体1aとの取付箇所を中心にパネル本体1aの前面上で回動させることにより、前面連結部材2aのぶつかりを避けることができる。
【0222】
また、上述した実施形態および変形例による壁面構築方法によれば、前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a、3b、3cがパネル本体1a、1b、1cと別体で形成されるため、前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a、3b、3cとパネル本体1a、1b、1cとを別々に安価に製作することができ、これらとパネル本体1aとを一体に製作する場合に比べて壁面の製作コストを大幅に削減できる。
【0223】
図25(a)、(b)および(c)は、本発明の第6の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Iの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0224】
上述した第1〜5の実施形態では、例えば、図7に示すように、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に、ボルト4f、4g、4hを支持治具として介在させる構成であった。しかし、図25に示す第6の実施形態では、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に、くさび4pを支持治具として介在させる構成になっている。
【0225】
パネル本体1aが複数段積み上げられる際、第1工程において、下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aが挿入される。次に、第2工程において、所定の間隔19があいた上段のパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に2個のくさび4p、所定の間隔17があいた上段のパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に1個のくさび4pが、所定の間隔19、17に合わせた挿し込み量で挿し込まれることで、上段のパネル1Iのパネル本体1aが固定される。また、下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端と、パネル本体1aの前面および背面との間にくさび4pが支点として挿し込まれる。その後、上述した第3工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0226】
このような第6の実施形態による壁面構築方法によれば、上記のように、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にくさび4pを挿し込むことで、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にくさび4pが介在させられて、パネル本体1aが固定される。このため、隣接するパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間にくさび4pを挿し込む量を調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0227】
なお、第6の実施形態では、隣接するパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に支持治具としてくさび4pを挿し込んだが、くさび4pに代えて板状部材などを支持治具としてこれらの間に挟み込む構成にしてもよい。この場合、板状部材などの支持治具の挟み込む厚さを調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0228】
また、第6の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3bは、パネル本体1aの上方に突出する構成であったが、パネル本体1aの下方に突出する構成にしてもよい。このような第6の実施形態による壁面構築方法は、曲線施工において生じるパネル1Iの出入りに合わせてくさび4pを挿し込む量を調整することにより、または板状部材などの支持治具の挟み込む厚さを調整することにより、パネル1Iの出入りが生じる曲線施工にも用いることが出来る。また、パネル本体1aの表面に模様が付けられていても、くさび4pを挿し込んだり板状部材などの支持治具を挟み込むことが出来るので、パネル本体1aの表面に模様が付けられているパネルの施工などにも用いられる。
【0229】
図26(a)および(b)は、本発明の第7の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Jおよびパネル1Kの平面図、(c)および(d)は、積まれたパネル1J、1Kの背面図および側面図である。なお、同図において図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0230】
上述した第1〜6の実施形態では、例えば図6に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、その長さがパネル本体1aの高さより短く、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上辺前面側および上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、図26に示す第7の実施形態では、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dは、同図(c)、(d)に示すように、それぞれ、その長さがパネル本体1aの高さより長く、パネル1Jのパネル本体1aの上辺および下辺から端部が上方および下方に突出して、2本のボルト4a並びにアンカーボルト4bおよびナット5bによりパネル1Jの前面および背面に取り付けられている。また、同図(b)に示すように、パネル1Kのパネル本体1aには、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dが取り付けられておらず、パネル本体1aの背面に埋め込まれている4個のインサートナットに各アンカーボルト4bが螺合することにより、4本のアンカーボルト4bがパネル本体1aの背面に突出している。
【0231】
パネル本体1aが積み上げられる際、図示するようにパネル1Jとパネル1Kとが交互に積まれる場合と、パネル1Kが用いられずにパネル1Jのみが積まれる場合とがある。パネル1Jのみが積まれる場合、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dは、上下のパネル1Jで互いにぶつからないように、ずらしてパネル本体1aに取り付けられる。この場合、1枚のパネル1Jは、上方および下方で前面および背面が前面連結部材2dおよび背面連結部材3dによって支持されるため、合計8個の連結部材2dおよび3dによって支持されることになる。このため、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dによって支えられるパネル1Jからの荷重は大きくなり、パネル1Jに大きな荷重がかかる壁面に用いることが出来る。
【0232】
図示するようにパネル1Jとパネル1Kとが交互に積まれる場合、下段のパネル1Jのパネル本体1aの上に上段のパネル1Kのパネル本体1aが積み上げられる際、上段のパネル1Kのパネル本体1aの前面および背面と、下段のパネル1Jのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの各端部の係合面2d1、3d1との間に所定の間隔19、17があくように、下段のパネル1Jのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの間に、上段のパネル1Kのパネル本体1aが挿入される。また、下段のパネル1Kのパネル本体1aの上に上段のパネル1Jのパネル本体1aが積み上げられる際、下段のパネル1Kのパネル本体1aの前面および背面と、上段のパネル1Jのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの各端部の係合面2d1、3d1との間に所定の間隔19、17があくように、上段のパネル1Jのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの間に、下段のパネル1Kのパネル本体1aが挿入される。
【0233】
このような第7の実施形態による壁面構築方法によっても、上述した第1〜6の実施形態と同様な作用・効果が奏され、パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1aを端から詰めて積み上げていくことが可能となる。また、前面側および背面側の両方向からパネル本体1aにかかる負荷を、図6に示す第2の実施形態と同様にボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル1Kのパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの係合面2d1、3d1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。また、上述したように、パネル1Kのパネル本体1aには前面連結部材2dおよび背面連結部材3dが取り付けられていない。このため、パネル本体1aを積み上げる作業時、パネル1Kのパネル本体1aに前面連結部材2dおよび背面連結部材3dを取り付ける必要がない分、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。
【0234】
なお、上述した各実施形態および各変形例では、壁面の背面にコンクリート15で裏込部を形成した場合について説明したが、裏込部は、コンクリート以外によって構成してもよく、例えば、軽量コンクリートや、グラウト材、盛土などで構成してもよい。また、上述した各実施形態および各変形例では、前面連結部材2a、2c、2d、背面連結部材3a〜3dを鉄鋼製の材質で構成した場合について説明したが、鉄鋼製以外の材質で構成してもよい。例えば、樹脂やコンクリートで構成してもよい。また、パネル本体1a〜1cの材質もコンクリートに限定されることはなく、例えば、樹脂等によって構成してもよい。
【0235】
また、上述した第1〜6の各実施形態およびそれらの各変形例では、パネル本体1a〜1cの上側や下側に2個の前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a〜3cを設ける構成であったが、パネル本体1a〜1cの上側や下側に設けられる前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a〜3cの個数は、2個に限らず、1個や3個以上であってもよい。また、上述した第1〜7の各実施形態およびそれらの各変形例に用いられた前面連結部材2a、2c、2dおよび背面連結部材3a〜3dとパネル本体1a〜1cとの組合わせは上述した例に限定されるものではなく、任意の連結部材と任意のパネル本体とを組み合わせて、壁面を構築するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0236】
1A〜1K…パネル
1a〜1c…パネル本体
2a、2c、2d…前面連結部材
2a1、2c1、2d1…係合面
3a〜3d…背面連結部材
3a1、3b1、3c1、3d1…係合面
4a、4b、4d、4e、4i、4j、4m…ボルト
4c、4f〜4h、4k、4l、4n…ボルト(支持治具)
4o…半円板(支持治具)
4p…くさび(支持治具)
8a…調整材
15…コンクリート
17、19…所定の間隔
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル本体を複数段積み上げ、各段のパネル本体の背面を裏込部によって埋めて壁面を構築する壁面構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の壁面構築方法としては、例えば、特許文献1に開示されたコンクリート製型枠を複数段積み上げて、コンクリート製型枠の背面にコンクリートを打設しながら、砂防ダムの壁面やコンクリート擁壁等を構築するものがある。コンクリート製型枠は方形のコンクリート製パネルである。このパネルが積み上げられて壁面が構築される際、同文献の図1に示されるように、下段のパネルに取り付けられた連結金具にあけられたボルト穴が、上段のパネルの背面に設けられた埋込みボルト穴に合わされる。そして、連結金具にあけられたボルト穴にボルトが挿通させられて上段のパネルの背面に設けられた埋込みボルト穴に螺合して締結されることで、上下の各パネルは連結金具を介して連結される。また、同文献の図2に示されるように、パネル側が広幅の4個の連結金具がパネルの背面に設けられる場合には、下段のパネルの連結金具にあけられたボルト穴と上段の連結金具にあけられたボルト穴とが合わされ、各ボルト穴にネジが挿通させられて各連結金具どうしが固定されることで、上下の各パネルが連結される。また、同文献の図7に示されるように、パネルの上下縁にそれぞれ連結穴が設けられる場合には、下段のパネルに設けられた連結穴と上段のパネルに設けられた連結穴とが合わされ、各連結穴にボルトが挿通されることで、上下のパネルが連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3242160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された壁面構築方法では、パネルを積み上げて壁面を構築する際、各ボルト穴や各連結穴どうしが合うように、上段のパネルは下段のパネルに対して位置させなければならない。従って、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれると、各ボルト穴や各連結穴どうしが合わなくなって、上下の各パネルを連結できなくなり、壁面が構築できなくなる。また、各ボルト穴や各連結穴にボルトやネジを挿通して上下のパネルを締結させる作業が必要とされ、また、パネルを自立させるためにパネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされる場合もあって手間がかかり、パネルの積み上げ作業効率は良くなかった。
【0005】
また、上段のパネルを下段のパネルの上に積み上げる際、各パネルの壁面が面一となるように上段のパネルを下段のパネルの真上に設置しずらく、下段のパネル本体の壁面の前面側や背面側にずれて上段のパネル本体が設置された場合、このずれを修正する作業が発生して、パネルの積み上げ作業効率が低下する。
【0006】
また、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、上下のパネルどうしは、ボルトやネジで固く剛結されているので、パネルの背後にある盛土等が変形してパネル背面に荷重が偏ってかかると、パネルどうしを剛結したボルトやネジに大きな荷重が局所的にかかってこれらが破損する場合があり、上記従来の特許文献1に開示された壁面構築方法によって構築される壁面は耐久性に劣った。また、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形すると、ボルトやネジで固く剛結されているパネルはこれらに追従して動くことができず、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして、壁面が弱体化する。
【0007】
また、壁面の敷設延長方向が曲がる曲線施工において、斜めにパネルを積み上げて傾斜した壁面を構築する場合、壁面の下部にあるパネルと壁面の上部にあるパネルとがそれぞれ描く半径は異なる。従って、壁面の上部から下部に向かって広がる隙間がパネル間に発生する。このため、壁面を斜めにして曲線施工する場合には、パネル間の隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネルを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要があり、従来、この間詰めコンクリートの施工や、パネルの加工に多くの手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
端部が下段のパネル本体の前面側および背面側から上方に突出して、上段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と端部との間に所定の間隔をあけて下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させる、または、端部が上段のパネル本体の前面側および背面側から下方に突出して、下段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と端部との間に所定の間隔をあけて上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させる第1工程と、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具を介在させることで、パネル本体を固定させる第2工程と
を1サイクルとしてパネル本体を積み上げ、
パネル本体の背面を裏込部によって所定の高さまで埋める第3工程を任意のサイクル終了後に行なって壁面を構築する壁面構築方法を構成した。
【0009】
この構成によれば、第1工程により、端部が下段のパネル本体の前面側および背面側から上方に突出して、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体が位置させられ、または、端部が上段のパネル本体の前面側および背面側から下方に突出して、上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体が位置させられ、第2工程により、上段または下段のパネル本体の前面または背面と前面連結部材または背面連結部材の端部との所定の間隔があいた間に支持治具が介在させられて、パネル本体が固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体を壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【0010】
このため、パネル本体を積み上げる際、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて積み上げていくことが可能となる。従って、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。
【0011】
また、パネル本体を複数段積み上げる際、上下のパネル本体どうしを前面連結部材および背面連結部材によって単に係合させ、所定の間隔があいたパネル本体と前面連結部材または背面連結部材の端部との間に支持治具を介在させることで、上下のパネル本体どうしが支え合い、パネル本体が自立する。このため、パネルを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体の積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体の形状を薄く、単純な形状に構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。
【0012】
また、上段のパネル本体を下段のパネル本体の上に積み上げる際、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め取り付けられていたり一体成型されている場合、上段のパネル本体は、下段または上段のパネル本体に予め設けられた前面連結部材および背面連結部材に案内されて移動する。このため、この場合、上段のパネル本体は、下段のパネル本体の壁面の前面側や背面側にずれて設置され難くなり、下段のパネル本体の真上に簡単に設置でき、パネルの積み上げ作業効率は向上する。また、前面連結部材および背面連結部材により隣接するパネル本体に係合する構成は、前面連結部材または背面連結部材のどちらか一方のみにより隣接するパネル本体に係合する構成よりも、パネル本体が自立しやすくなる。この結果、作業工程が単純で作業効率が良く、パネル本体が安定して自立する壁面を構築することができる壁面構築方法が提供される。
【0013】
また、パネル本体の前面または背面の少なくとも一方と、隣接するパネル本体に設けられる前面連結部材または背面連結部材の端部との間に所定の間隔があくように構成されているので、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め設けられている場合、前面連結部材と背面連結部材との間の空間にパネル本体を位置させるときに、隙間が確保される。このため、パネル本体は、この前面連結部材と背面連結部材との間の空間をスムーズに移動し、パネル本体の表面に凹凸状に設けられた模様等が引っかかって破損することもなく、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は向上する。
【0014】
また、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、上下のパネル本体はボルト等で剛結される構成ではないため、パネル本体の背後にある盛土等が沈下したり変形すると、パネル本体はその沈下や変形に追従して動くことが可能である。従って、パネル本体どうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構築方法のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面を構築できる壁面構築方法が提供される。
【0015】
また、本発明は、
第1工程で、上段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させ、または、下段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させ、
第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具を介在させ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に少なくとも2つの支持治具を介在させることで、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具が介在させられ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に少なくとも2つの支持治具が介在させられることで、第1工程で、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に位置させられた、または、設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように位置させられた、上段のパネル本体が固定される。
【0017】
このため、例えば、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に1つの支持治具が介在し、下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に2つの支持治具が介在する場合、パネル本体が前傾して積み上げられることでかかるパネル本体の自重により、また、パネル本体の背面に設けられた裏込部等からの側圧により、上段のパネル本体を前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体に背面側からかかっても、前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に介在する1つの支持治具、および背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、1つの支持治具より低い位置に介在する支持治具により、この負荷が受け止められる。また、パネル本体が後傾して積み上げられることでかかるパネル本体の自重により、また、パネル本体の前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体を背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体に前面側からかかっても、前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に介在する1つの支持治具、および背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、1つの支持治具より高い位置に介在する支持治具により、この負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷を支持治具により受け止められるので、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に所定の間隔があいていても、パネル本体が転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体を確実に固定することができる。
【0018】
また、壁面の敷設延長方向が曲がる曲線施工で上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面とならず、上下のパネル本体の前面側または背面側の間で出入りが生じる。また、上下のパネル本体の位置関係を揃えて、パネル本体を積み上げる場合には、このような出入りが生じることなく、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面となる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間にこれらの支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、パネル本体を固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体も固定することができる。従って、パネル本体にかかる負荷の方向に応じて、支持治具の取付位置を調節し、また、パネル本体にかかる負荷の大きさに応じて、介在させる支持治具の数を調整することで、パネル本体にかかる負荷の方向、大きさ等の様々な状況に自在に対応した強固な壁面を構築できる。
【0019】
また、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間に支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、上下のパネル本体を壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて、上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体間には、パネル本体そのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、従来のように、パネル本体間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネルを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネルの加工作業が削減されて、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0020】
また、本発明は、
第1工程で、上段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させ、または、下段のパネル本体の前面および背面と端部との間に所定の間隔をあけて上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させ、
第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具を介在させ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具と異なる高さに少なくとも1つの支持治具を介在させることで、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第2工程で、前面連結部材および背面連結部材の一方の端部とパネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの支持治具を介在させ、前面連結部材および背面連結部材の他方の端部とパネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具と異なる高さに少なくとも1つの支持治具を介在させることで、第1工程で、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に位置させられた、または、設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように位置させられた、上段のパネル本体が固定される。
【0022】
このため、例えば、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に1つの支持治具が介在し、下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、前面側の1つの支持治具より高い位置に支持治具が介在する場合、パネル本体が後傾して積み上げられることでかかるパネル本体の自重により、また、パネル本体の前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体を背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体に前面側からかかっても、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間に介在する1つの支持治具、および下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間における、前面側の1つの支持治具より高い位置に介在する支持治具により、この負荷が受け止められる。また、下段のパネル本体に設けられている前面連結部材の端部と上段のパネル本体の前面との間、および下段のパネル本体に設けられている背面連結部材の端部と上段のパネル本体の背面との間に支持治具が上記のように介在していて、パネル本体を積み上げて壁面を斜めに構築する際、パネル本体を背面側に傾斜させることで、パネル本体の重量により、パネル本体の傾斜角度に応じた、パネル本体の背面側の裏込部等からの側圧に対抗させることができる。この結果、前面側からの負荷を支持治具により、背面側からの負荷をパネル本体の重量で、受け止められる。また、パネル本体を積み上げて壁面を垂直に構築する際には、垂直に立つパネル本体が有する重量に応じた、パネル本体の前面および背面からの側圧に対抗させることができる。このため、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に所定の間隔があいていても、パネル本体が転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体を確実に固定することができる。
【0023】
また、曲線施工で上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げる場合には、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面とならず、上下のパネル本体の前面側または背面側の間で出入りが生じる。また、上下のパネル本体の位置関係を揃えて、パネル本体を積み上げる場合には、このような出入りが生じることなく、下方に積まれるパネル本体と上方に積まれるパネル本体とは一面となる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体を背面側に傾斜させ、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間にこれらの支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、パネル本体を固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体も固定することができる。
【0024】
また、この構成においても、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に隙間を設け、この隙間に支持治具を介在させることで、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部とがぶつかること無く、上下のパネル本体を壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて、上下のパネル本体の位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体間には、パネル本体そのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、この構成によっても、従来のように、パネル本体間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネルを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネルの加工作業が削減されて、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0025】
また、本発明は、第3工程により背面が裏込部によって所定の高さまで埋められたパネル本体どうしを互いに係合する前面連結部材を取り外す第4工程を行うことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、背面が裏込部によって所定の高さまで埋められたパネル本体どうしを互いに係合する前面連結部材が第4工程により取り外され、取り外された前面連結部材が他のパネル本体どうしの連結に用いられることで、壁面の施工に必要とされる連結部材の数が減り、壁面の製作コストが低減される。
【0027】
また、本発明は、第2工程で、所定の間隔があいた前面連結部材または背面連結部材の端部に支持治具の一端を螺合させ、支持治具を回転させて出し入れすることで、支持治具の突出端を上段または下段のパネル本体の前面または背面に当接させて係合させ、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、支持治具を回転させて、前面連結部材または背面連結部材の端部に一端が螺合した支持治具の突出端を出し入れし、上段または下段のパネル本体の前面または背面に当接させて係合させることで、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具が介在させられて、パネル本体が固定される。このため、隣接するパネル本体に係合する前面連結部材または背面連結部材のパネル本体の前面または背面側への支持治具の出し入れを調整することにより、上下のパネル本体を互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0029】
また、本発明は、第2工程で、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具を挿し込むまたは挟み込むことで、パネル本体を固定させることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具を挿し込むまたは挟み込むことで、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具が介在させられて、パネル本体が固定される。このため、隣接するパネル本体の前面または背面と前面連結部材または背面連結部材の端部との間に支持治具を挿し込む量を調整することにより、または支持治具の挟み込む厚さを調整することにより、上下のパネル本体を互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0031】
また、本発明は、所定の間隔があいた前面連結部材または背面連結部材の端部に支持治具が突出して設けられ、第1工程により下段のパネル本体に上段のパネル本体が位置させられることで、所定の間隔があいた上段または下段のパネル本体の前面または背面と端部との間に支持治具が介在してパネル本体が固定され、第1工程と第2工程とが同時に行われることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、下段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段のパネル本体を位置させる、または、上段のパネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段のパネル本体が挟まるように上段のパネル本体を位置させる第1工程を行うことで、所定の間隔があいた前面連結部材または背面連結部材の端部に支持治具が介在し、パネル本体を固定させる第2工程が同時に行われる。このため、第2工程を別工程として行う必要がない分、パネル本体の積み上げ作業効率は向上する。
【0033】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への取付面とパネル本体の前面または背面との間に調整材を介挿することで、隣接するパネル本体の前面または背面と端部との間に所定の間隔をあけることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への取付面とパネル本体の前面または背面との間に調整材を介挿することで、前面連結部材または背面連結部材の端部と隣接するパネル本体との間にあく所定の間隔が、上下のパネル本体の間に生じる出入りの大きさや模様の突出具合に応じて、調整される。この調整により、前面連結部材または背面連結部材の端部と隣接するパネル本体とのぶつかり合いを回避することができる。
【0035】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への固設部分のパネル本体の厚さが、前面連結部材または背面連結部材の端部と対峙する部分の隣接するパネル本体の厚さより厚いことで、隣接するパネル本体と端部との間に所定の間隔があくことを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材のパネル本体への固設部分のパネル本体の厚さが、前面連結部材または背面連結部材の端部と対峙する部分の隣接するパネル本体の厚さより厚いことで、隣接するパネル本体と端部との間に所定の間隔があけられる。このため、上下のパネル本体の間に生じる出入りや模様の凹凸による、隣接するパネル本体と前面連結部材または背面連結部材の端部とのぶつかり合いを回避することができる。
【0037】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材が、設けられたもしくは設けられるパネル本体と係合させられる隣接するパネル本体とが所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材が設けられたもしくは設けられるパネル本体と前面連結部材または背面連結部材に係合させられる隣接するパネル本体とが所定形状の面を形成するように、前面連結部材または背面連結部材が曲げられている。このため、隣接するパネル本体で所望の形状の面を形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体を積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、既設構造体の前面にパネル本体を積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状の面を隣接するパネル本体で形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体を積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。
【0039】
また、本発明は、第1工程で、パネル本体が、前面連結部材および背面連結部材を介して係合する隣接するパネル本体と所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする。
【0040】
この構成によれば、前面連結部材および背面連結部材を介して係合する隣接するパネル本体と所定形状の面を形成するように、パネル本体が曲げられている。このため、所望の面を形成するように曲げられているパネル本体を積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、既設構造体の前面にパネル本体を積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状で曲げられているパネル本体を用いて、パネル本体を積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。
【0041】
また、本発明は、第1工程で、パネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材または背面連結部材の、パネル本体との固設箇所よりも端部の反対側に離れた一端に、パネル本体の前面または背面に当接する支点が設けられていることを特徴とする。
【0042】
この構成によれば、パネル本体の背面に充填された裏込部の側圧により、パネル本体を介して前面連結部材の端部側に負荷がかかっても、前面連結部材の一端に設けられた支点が固設箇所を挟む反対側でパネル本体の前面に当接することにより、この負荷がパネル本体の前面に当接する支点でも受けられる。また、パネル本体の前面に加えられる何らかの側圧により、パネル本体を介して背面連結部材の端部側に負荷がかかっても、背面連結部材の一端に設けられた支点が固設箇所を挟む反対側でパネル本体の背面に当接することにより、この負荷がパネル本体の背面に当接する支点でも受けられる。このため、前面連結部材または背面連結部材の端部側にかかる負荷は、前面連結部材または背面連結部材の固設箇所とその一端に設けられた支点とで支えられ、固設箇所のみで前面連結部材または背面連結部材が固定されている場合に比べて、前面連結部材または背面連結部材はぐらつくことなく確実にパネル本体に固定される。
【0043】
また、本発明は、第1工程で、前面連結部材または背面連結部材が、パネル本体と別体で形成され、パネル本体に着脱自在または回動自在に取り付けられることを特徴とする。
【0044】
この構成によれば、前面連結部材または背面連結部材がパネル本体と別体で形成されるため、前面連結部材または背面連結部材とパネル本体とを別々に安価に製作することができ、前面連結部材または背面連結部材とパネル本体とを一体に製作する場合に比べて壁面の製作コストを大幅に削減できる。また、パネル本体を積み上げる際、上下のパネル本体の位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体を端から詰めて積み上げると、上下のパネル本体に設けられた各前面連結部材または背面連結部材どうしやこれらとパネル本体に設けられた部材などとがどこかでぶつかる。しかし、前面連結部材または背面連結部材がパネル本体に着脱自在に取り付けられる構成の場合、ぶつかる前面連結部材または背面連結部材の一方を取り外したり、別の位置にずらして取り付けることで、前面連結部材または背面連結部材どうしやこれらとパネル本体に設けられた部材などとのぶつかりを避けることができる。また、前面連結部材または背面連結部材がパネル本体に回動自在に取り付けられる構成の場合、ぶつかる前面連結部材または背面連結部材の一方の端部を、パネル本体との取付箇所を中心にパネル本体の前面または背面上で回動させることにより、前面連結部材または背面連結部材どうしやこれらとパネル本体に設けられた部材などとのぶつかりを避けることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、上記のように、パネルを積み上げる際に上下のパネルの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。また、パネルを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体の積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体の形状を薄く、単純な形状に構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。また、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め設けられている場合、上段のパネル本体は、下段のパネル本体の壁面の前面側や背面側にずれて設置され難くなり、下段のパネル本体の真上に簡単に設置でき、パネルの積み上げ作業効率は向上する。また、作業工程が単純で作業効率が良く、パネル本体が安定して自立する壁面を構築することができる壁面構築方法が提供される。また、下段または上段のパネル本体に前面連結部材および背面連結部材が予め設けられている場合、パネル本体は、前面連結部材と背面連結部材との間の空間をスムーズに移動し、パネル本体の表面に凹凸状に設けられた模様等が引っかかって破損することもなく、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は向上する。また、パネル本体どうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構築方法のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面を構築できる壁面構築方法が提供される。また、パネル本体の前面および背面と前面連結部材および背面連結部材の端部との間に所定の間隔があくようにパネル本体を積み上げて、傾斜する壁面を曲線施工する場合、敷設延長方向におけるパネル本体間に、パネル本体そのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しないパネルの積み方ができるため、間詰めコンクリートの施工作業や、パネルの加工作業が削減されて、パネル本体の積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)、(b)および(c)は、本発明の第1の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図2】(a)は、図1に示すパネルを本実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第1の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図3】(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図4】(a)は、図3に示すパネルを第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第1の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図5】図1および図3に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図6】(a)、(b)および(c)は、本発明の第2の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図7】(a)は、図6に示すパネルを第2の実施の形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図8】図6に示すパネル本体を複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の斜視図である。
【図9】(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図10】(a)は、図9に示すパネルを第2の実施の形態の第2の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図11】(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第4の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図12】(a)は、図11に示すパネルを第2の実施の形態の第4の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第5の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図13】図11に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図14】(a)および(b)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法に用いられるパネルをイモ積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図、(c)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図、(d)および(e)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法に用いられるパネルをずらし積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図、(f)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図である。
【図15】(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図16】(a)は、図15に示すパネルを第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第2の実施の形態の第7の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図17】図15に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図18】(a)、(b)および(c)は、本発明の第3の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネルの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図19】(a)は、図18に示すパネルを第3の実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図、(b)は、第3の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。
【図20】図18に示すパネルを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。
【図21】(a)、(b)および(c)は、本発明の第4の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図22】(a)、(b)および(c)は、本発明の第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図23】(a)、(b)および(c)は、第5の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図24】第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造において背面連結部材が回動自在に取り付けられている構成を説明するための、2段目以降に積まれるパネルの背面図である。
【図25】(a)、(b)および(c)は、本発明の第6の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネルの平面図、背面図および側面図である。
【図26】(a)および(b)は、本発明の第7の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれる各パネルの平面図、(c)および(d)は、積まれたパネルの背面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に、本発明による壁面構築方法の第1の実施の形態について説明する。
【0048】
図1(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Aの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。
【0049】
パネル1A、1Bを構成するパネル本体1aは、方形の板状をした所定の厚さ(3cm〜10cm程度)のコンクリートから成る。また、パネル本体1aは、左方の側面の前面側が左側方に突出し、右方の側面の背面側が右側方に突出している。
【0050】
パネル本体1aの前面上方および背面上方には、2個の前面連結部材2aおよび背面連結部材3aが設けられている。これら前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、長方形状の金属製板材の短辺方向が垂直に折り曲げ加工されて形成されており、パネル本体1aの正面から見て互いに所定間隔ずらしてパネル本体1aの前面および背面に配置されている。
【0051】
前面連結部材2aの一端には、穴が設けられている。前面連結部材2aの一端の穴にボルト4aが差し込まれて、このボルト4aがパネル本体1aの前面に埋め込まれたインサートナットに螺合することにより、前面連結部材2aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、端部を構成する他端がパネル本体1aの上辺前面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。
【0052】
背面連結部材3aの一端には1個の穴が設けられ、端部を構成する他端には3個の穴が設けられている。背面連結部材3aの一端の穴にアンカーボルト4bが差し込まれて調整材8aに挿通され、パネル本体1aの背面に埋め込まれているインサートナットにアンカーボルト4bが螺合し、ナット5bで締め付けられることにより、背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。また、背面連結部材3aの他端の3個の穴にはナット5cがそれぞれ溶接され、中央のナット5cにボルト4cが螺合している。
【0053】
同図(a)、(b)、(c)に示すようにパネル1Aのパネル本体1aの背面下方に設けられた控えブロック6aはコンクリート製であり、穴が設けられている。この穴にボルト4dが差し込まれてパネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットにボルト4dが螺合することにより、控えブロック6aはパネル本体1aの背面に固定されている。控えブロック6aは、形鋼や平鋼等の鋼製であってもよく、最下段のパネル本体1aの背面側に延出して設けられる。控えブロック6aは、パネル本体1aと別体に形成されてパネル本体1aを自立させる。
【0054】
同図(d)、(e)、(f)に示すように、パネル1Bのパネル本体1aの背面に埋め込まれている2個のインサートナットに、各アンカーボルト4bが螺合することにより、各アンカーボルト4bはパネル本体1aの背面に突出して固定されている。
【0055】
図2(a)は、図1に示すパネル1A、1Bを本実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0056】
この壁面は、敷設延長方向が真っ直ぐな直線施工で、または、敷設延長方向が曲がる曲線施工における壁面が面一になる後述するイモ積み方式で、パネル本体1aが複数段積み上げられて構築される。
【0057】
壁面の構築に際し、最初に、下準備において、最下段のパネル1Aのパネル本体1aが砕石16上の基礎11上に設置される。この際、パネル本体1aの下端部より高い位置からその背面側に延出して設けられている控えブロック6aの後端には、三角柱状をした枕木12が設置され、パネル1Aの傾斜角度が基礎11の表面に垂直に調節される。また、パネル本体1aの前面下端には、さし筋13がくさび14を介して設置され、最下段のパネル本体1aが前方へせり出し、また、転倒するのが防がれる。なお、控えブロック6aは最下段のパネル本体1aではなく、2段目以降に積まれるパネル1Bのパネル本体1aに設けてもよい。
【0058】
次に、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面に、パネル本体1aの半分程度の高さAまでコンクリート15が打設される。これにより、控えブロック6aと共に最下段のパネル1Aのパネル本体1aが基礎11上に固定される。以上で下準備が終る。
【0059】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Bのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面と、他端が下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面側から上方に突出した背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があくように、一端が下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Bのパネル本体1aが挿入される。ここで、最下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面と最下段のパネル1Aのパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Bのパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの端部に構成された係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。
【0060】
次に、第2工程において、所定の間隔17があいた背面連結部材3aの他端にボルト4cの一端を螺合させ、ボルト4cを回転させて背面連結部材3aの係合面3a1に対して出し入れすることで、ボルト4cの突出端を上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面に当接させて係合させ、上段のパネル1Bのパネル本体1aを固定させる。このボルト4cは、所定の間隔17があいた上段のパネル1Bのパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に介在させる支持治具を構成する。
【0061】
次に、第3工程において、2段に積み上げられたパネル1A、1Bの各パネル本体1aの背面に、2段目のパネル1Bのパネル本体1aの半分程度の高さBまでコンクリート15が打設される。この際、各パネル本体1aの背面に突出した長いアンカーボルト4bはコンクリート15により埋設され、硬化後、各パネル本体1aとコンクリート15との一体化をより向上させるためのアンカーになる。
【0062】
次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが取り外される。その後、2段目のパネル1Bに3段目のパネル1Bが前面連結部材2aおよび背面連結部材3aを用いて同様に積み上げられ、その背後に同様にコンクリート15が高さCまで打設される。以後、上記第1〜第4の各工程のサイクルが繰り返されて、壁面が構築されて行く。
【0063】
なお、上述した第1工程においては、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む前に、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aをボルト4aおよびナット5bで締め付けて予めパネル本体1aに取り付けておき、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む際に、下段のパネル本体1aの上方に端部が突出して取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間の空間に、上段のパネル本体1aが挿入されて位置させられた。しかし、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、ボルト4aおよびナット5bでパネル本体1aに取り付けて設けるのでなく、パネル本体1aの成型時にパネル本体1aと一体に成型して設けるようにしてもよい。また、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む前に、ボルト4aおよびナット5bを緩めておいて、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部を下段のパネル本体1aの上方から突出させない状態にしておき、または、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aを下段のパネル本体1aに全く取り付けない状態にしておき、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時に、または積んだ後に、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部を下段のパネル本体1aの上方から突出させて前面連結部材2aおよび背面連結部材3aをボルト4aおよびナット5bで締め付けてパネル本体1aに取り付け、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。また、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積む前に、ボルト4aもしくはナット5bの一方を緩めておいて、前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの一方の端部のみを下段のパネル本体1aの上方から突出させた状態にしておき、または、前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの一方のみを、その一方の端部を上方に突出させて下段のパネル本体1aに取り付けた状態にしておき、または、前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの一方のみを下段のパネル本体1aに一体成型しておき、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時に、または積んだ後に、ボルト4aもしくはナット5bが緩められて上方から突出していなかった、または取り付けられていなかった、または一体成型されていなかった前面連結部材2aもしくは背面連結部材3aの他方を下段のパネル本体1aの上方から突出させてパネル本体1aに取り付け、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。
【0064】
また、上述した各段のパネル本体1aの背面をコンクリート15によって所定の高さまで埋める第3工程を、第1および第2工程によるパネル積み上げサイクルの任意のサイクル終了後に行なって、壁面を構築する構成にしてもよい。また、コンクリート15を打設する第3工程後、直ぐに前面連結部材2aを取り外す第4工程を行わずに、コンクリート15の硬化具合によっては上述した第1〜第3工程を所定回数行い、コンクリート15が十分硬化した任意の工程後に、硬化したコンクリート15の前面のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aを取り外す第4工程を行う構成にしてもよい。
【0065】
以下に説明する各壁面構築方法においても、同様に、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aをパネル本体1aの成型時にパネル本体1aと一体に成型して設けておくようにしてもよい。また、第1工程において、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時にまたは積んだ後に、下段のパネル本体1aに双方もしくは一方が取り付けられる前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部間に、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。また、第1工程において、下段のパネル本体1aの上方に上段のパネル本体1aを積むのと同時にまたは積んだ後に、上段のパネル本体1aに双方もしくは一方が取り付けられる前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部間に下段のパネル本体1aが挟まるように、上段のパネル本体1aを位置させるようにしてもよい。また、コンクリート15で埋める第3工程を、第1および第2工程によるパネル積み上げサイクルの任意のサイクル終了後に行なう構成にしてもよい。また、前面連結部材2aを取り外す第4工程も、同様に、コンクリート15を打設する第3工程後、直ぐに行わずに、第1〜第3工程を所定回数行った後に行う構成にしてもよい。
【0066】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面側および背面側で、前面連結部材2aの上端およびボルト4cの先端が図2(a)に示す矢印9a1および矢印9a2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、上下のパネル本体1aの接合部に接する前面連結部材2aの背面中央およびボルト4cの先端が矢印9a3および矢印9a2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0067】
図2(b)は、第1の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0068】
第1の実施形態では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第1の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
【0069】
この第1の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル本体1aの背面と、他端が上段のパネル本体1aの背面側から下方に突出した背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があくように、一端が上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル本体1aが下段のパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第1の実施形態と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0070】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、前面連結部材2aの下端およびボルト4cの先端が矢印9b3および矢印9b2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、上下のパネル本体1aの接合部に接する前面連結部材2aの背面中央およびボルト4cの先端が矢印9b1および矢印9b2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際も、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0071】
図3(a)、(b)および(c)は、第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Aの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Bの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0072】
第1の実施形態では、図1に示すように、上方に突出した背面連結部材3aの他端に3個の穴が設けられ、上方に突出した前面連結部材2aの他端には穴が設けられていない。しかし、図3に示す第2の変形例では、上方に突出した背面連結部材3aの他端に穴が設けられておらず、上方に突出した前面連結部材2aの他端に3個の穴が設けられている。この前面連結部材2aの3個の穴にはナット5cが溶接され、中央のナット5cにボルト4cが螺合している。
【0073】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿され、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aは介挿されていない。しかし、図3に示す第2の変形例では、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aは介挿されておらず、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されている。
【0074】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、パネル本体1aの前面には凹凸で模様が設けられていないが、図3に示す第2の変形例では、パネル本体1aの前面には凹凸で模様が設けられている。
【0075】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、最下段のパネル1Aのパネル本体1a背面下方に控えブロック6aが固定される。しかし、第2の変形例では、図3(a)、(b)、(c)に示すように、最下段のパネル1Aのパネル本体1a背面下方に、V字に曲げられたV字支持部材6bが固定される。V字支持部材6bの一方の折り曲げ片には穴が設けられており、この穴にアンカーボルト4bが差し込まれて、パネル本体1aの背面に埋め込まれたインサートナットにアンカーボルト4bが螺合している。この状態で、ナット5bが締め付けられることで、V字支持部材6bはパネル本体1aの背面に固定されている。また、V字支持部材6bの他方の折り曲げ片には穴20が設けられている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
【0076】
図4(a)は、図3に示すパネル1A、1Bを第1の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図(a)において図2および図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0077】
第1の実施形態では、図2に示すように、パネル本体1aが複数段垂直に積み上げられた。しかし、図4に示す第2の変形例では、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられて、壁面が直線施工、または、壁面が面一になる後述するイモ積み方式で曲線施工される。
【0078】
また、第1の実施形態では、図2(a)に示すように、上段のパネル本体1aの背面と、下段のパネル本体1aの背面側から上方に突出した背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があけられていた。しかし、図4に示す第2の変形例では、上段のパネル本体1aの前面と、下段のパネル本体1aの前面側から上方に突出した前面連結部材2aの端部に構成された係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。
【0079】
壁面の構築に際し、最初に、下準備において、最下段のパネル1Aのパネル本体1aがコンクリートからなる基礎11上に設置される。この際、ボルト4eが垂直に基礎11に埋設されており、このボルト4eの突出した先端がV字支持部材6bの折り曲げ片に設けられた穴20に通されて、ナット5eが締め付けられることで、V字支持部材6bが基礎11に固定されている。
【0080】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Aのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Bのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Bのパネル本体1aの前面と、他端が下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面側から上方に突出した前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があくように、一端が下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Bのパネル本体1aが挿入される。ここで、最下段のパネル1Aのパネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面と最下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Bのパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。
【0081】
次に、第2工程において、所定の間隔19があいた前面連結部材2aの他端にボルト4cの一端を螺合させ、ボルト4cを回転させて前面連結部材2aの係合面2a1に対して出し入れすることで、ボルト4cの突出端を上段のパネル1Bのパネル本体1aの前面に当接させて係合させ、パネル本体1aを固定させる。
【0082】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Bのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Aのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0083】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面側および背面側で、ボルト4cの先端および上下のパネル本体1aの接合部に接する背面連結部材3aの前面中央が矢印9c2および矢印9c3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4cの先端および背面連結部材3aの上端が矢印9c2および矢印9c1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際も、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0084】
図4(b)は、第1の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0085】
第1の実施形態の第2の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第3の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第1の実施形態の構成と同一である。
【0086】
第3の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル本体1aの前面と、他端が上段のパネル本体1aの前面側から下方に突出した前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があくように、一端が上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aを挿入して、上段のパネル本体1aを下段のパネル本体1aに載置する。その後、同図(a)に示す第2の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0087】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、パネル本体1aの背面側に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4cの先端および上下のパネル本体1aの接合部に接する背面連結部材3aの前面中央が矢印9d2および矢印9d1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4cの先端および背面連結部材3aの下端が矢印9d2および矢印9d3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。この際、上段のパネル本体1aの前面側または背面側にかかる負荷の大きさに応じて、ボルト4cが螺合するナット5cが3つの中から適宜選択される。
【0088】
図5は、図1および図3に示すパネル1A、1Bを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図1〜図4と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0089】
この壁面構造は、図2および図4に示す各壁面を、各パネル本体1aの背面が対向するように対にして構成した一例である。この壁面構造の前面には、上述した図4に示すように、図3に示すパネル1A、1Bが複数段斜めに積み上げられる。また、この壁面構造の背面には、上述した図2に示すように、図1に示すパネル1A、1Bが複数段垂直に積み上げられる。この壁面構造の背後には車道20、上部にはガードレール21が設けられている。この壁面構造を構築する際、前方の基礎地盤22の一部が掘り下げられ、掘り下げられた部分に砕石16および基礎11が敷設され、それらの上にパネル1A、1Bが設置される。
【0090】
このような第1の実施形態および第1〜3の変形例による壁面構築方法によれば、第1工程により、図2(a)および図4(a)に示すように、他端が下段のパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出して、一端が下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aが挿入されて位置させられ、または、図2(b)および図4(b)に示すように、他端が上段のパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出して、一端が上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挟まるように上段のパネル本体1aが位置させられ、第2工程により、上段または下段のパネル本体1aの前面または背面と前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの端部の係合面2a1、3a1との所定の間隔19、17があいた間に支持治具を構成するボルト4cが介在させられて、パネル本体1aが固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体1aを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【0091】
このため、パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1aを端から詰めて積み上げていくことが可能となる。従って、パネル1A、1Bを積み上げる際に上下のパネル1A、1Bの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。
【0092】
また、パネル本体1aを複数段積み上げる際、上下のパネル本体1aどうしを前面連結部材2aおよび背面連結部材3aによって単に係合させ、所定の間隔19、17があいたパネル本体1aと係合面2a1、3a1との間にボルト4cを介在させることで、上下のパネル本体1aどうしが支え合い、パネル本体1aが自立する。このため、パネル1A、1Bを自立させるために従来行われた、上下のパネルをボルトやネジで締結させる作業や、パネルを支える仮設サポート材などを設ける作業が必要とされないので、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。また、パネル本体1aの形状を薄く、単純な形状に構成できるので、壁面の製作コストを大幅に削減できる。
【0093】
また、上段のパネル本体1aを下段のパネル本体1aの上に積み上げる際、上段のパネル本体1aは、下段または上段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aに案内されて移動する。このため、上段のパネル本体1aは、下段のパネル本体1aの壁面の前面側や背面側にずれて設置され難くなり、下段のパネル本体1aの真上に簡単に設置でき、パネル1A、1Bの積み上げ作業効率は向上する。また、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aにより隣接するパネル本体1aに係合する構成は、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aのどちらか一方のみにより隣接するパネル本体1aに係合する構成よりも、パネル本体1aが自立しやすくなる。この結果、作業工程が単純で作業効率が良く、パネル本体1aが安定して自立する壁面を構築することができる壁面構築方法が提供される。
【0094】
また、パネル本体1aの前面または背面の少なくとも一方と、隣接するパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように構成されているので、前面連結部材2aと背面連結部材3aとの間の空間にパネル本体1aを挿入したときに、隙間が確保される。このため、パネル本体1aは、この前面連結部材2aと背面連結部材3aとの間の空間をスムーズに移動し、パネル本体1aの表面に凹凸状に設けられた模様等が引っかかって破損することもなく、パネル本体1aの積み上げ作業の作業効率は向上する。
【0095】
また、補強土工法等のフレキシブルな構造体の壁面に使用する場合、上下のパネル本体1aはボルト等で剛結される構成ではないため、パネル本体1aの背後にある盛土等が沈下したり変形すると、パネル本体1aはその沈下や変形に追従して動くことが可能である。従って、パネル本体1aどうしをボルト等で剛結させる従来の壁面構築方法のように、パネルの背後にある盛土等が沈下したり変形することでパネル背面に荷重が偏ってかかり、パネルどうしを剛結するボルト等に大きな荷重が局所的にかかって破損したり、また、パネルの背面側に空洞が形成されるなどして壁面が弱体化することもなくなり、フレキシブルで耐久性が増した壁面を構築できる壁面構築方法が提供される。
【0096】
また、第1の実施形態および第1〜3の変形例による壁面構築方法によれば、図5に示すように、背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する前面連結部材2aが第4工程により取り外され、取り外された前面連結部材2aが他のパネル本体1aどうしの連結に用いられることで、壁面の施工に必要とされる連結部材の数が減り、壁面の製作コストが低減される。
【0097】
図6(a)、(b)および(c)は、本発明の第2の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0098】
第1の実施形態では、図1に示すように、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿され、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されていない。しかし、図6に示す第2の実施形態では、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの各取付面とパネル本体1aの前面および背面との間に調整材8aがそれぞれ介挿されている。
【0099】
また、第1の実施形態では、図1に示すように、上方に突出した背面連結部材3aの他端に3個の穴が設けられ、上方に突出した前面連結部材2aの他端には穴が設けられていない。しかし、図6に示す第2の実施形態では、上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの各他端に3個の穴が設けられている。前面連結部材2aの3個の穴にはナット5cが溶接され、上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合している。背面連結部材3aの3個の穴にはナット5cが溶接され、中央のナット5cにボルト4hが螺合している。
【0100】
また、第1の実施形態の第2の変形例では、図3に示すように、最下段のパネル1Aのパネル本体1a背面下方に固定されるV字支持部材6bの各折り曲げ片が成す角度は鋭角になっている。しかし、図6に示す第2の実施形態では、最下段のパネル1Cのパネル本体1a背面下方に固定されるL字支持部材6cの各折り曲げ片が成す角度は直角になっている。
【0101】
また、第1の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、図1に示すように、パネル本体1aの正面から見て互いに所定間隔ずらしてパネル本体1aの前面および背面に配置されている。しかし、図6に示す第2の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、パネル本体1aの正面から見て互いに重なって配置されている。また、第1の実施形態ではパネル本体1aの前面に模様が無かったが、第2の実施形態ではパネル本体1aの前面に凹凸状の模様が設けられている。
【0102】
図7(a)は、図6に示すパネル1C、1Dを第2の実施の形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0103】
壁面の構築に際し、最初に、下準備において、既設構造体である橋脚30aの前面において、最下段のパネル1Cのパネル本体1aがコンクリートからなる基礎11上に設置される。この際、パネル1Cのパネル本体1aがL字支持部材6c並びにさし筋13およびさび14によって基礎11に固定される。また、コンクリートからなる基礎11内に下端が埋設された縦鉄筋31aが、垂直方向に伸びて設けられる。
【0104】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。ここで、最下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面と最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Dのパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。また、最下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面と最下段のパネル1Cのパネル本体1aの背面との間に調整材8aが介挿されていることで、隣接する2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。
【0105】
次に、第2工程において、背面連結部材3aの一方の係合面3a1と2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hを介在させ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、2段目のパネル1Dのパネル本体1aを固定させる。この際、ボルト4fの突出端は、パネル本体1aの前面の模様間の目地部分に当接し、ボルト4gの突出端は、パネル本体1aの前面の模様に当接する。これらボルト4h、4fおよび4gは支持治具を構成する。また、パネル本体1aの背面のアンカーボルト4bに横鉄筋31bを係合させて、横鉄筋31bを縦鉄筋31aに固定し、縦鉄筋31aおよび横鉄筋31bからなる鉄筋31を組む。パネル本体1aは、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aによって自立している。また、パネル本体1aの背面のアンカーボルト4bが横鉄筋31bに係合されることで、突出したアンカーボルト4bが単にコンクリート15に埋入されて固定される場合よりも、パネル本体1aはより強固にコンクリート15に固定される。また、規則的に設置されたパネル本体1aの背面のアンカーボルト4bに横鉄筋31bを係合させることにより、鉄筋31の組立精度が向上する。
【0106】
なお、上記の第1工程を行う際、予めボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に介在させるようにしてもよい。また、これとは逆に、上記の第1工程を行う際、予めボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に介在させるようにしてもよい。
【0107】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0108】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9e1および矢印9e2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9e3および矢印9e2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0109】
図7(b)は、第2の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0110】
第2の実施形態では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第1の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第2の実施形態の構成と同一である。
【0111】
この第1の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Cのパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Cのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第2の実施の形態と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0112】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9f3および矢印9f2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9f1および矢印9f2の方向にかかる負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0113】
図8は、図6に示すパネル本体1aを複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の斜視図である。なお、同図において図7と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0114】
この壁面構造は、図7に示す壁面構造を橋脚30aの前面に構築した一例である。この壁面構造を構築する際、上記のように、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の硬化後、背面がコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する、下段のパネル本体1aの前面連結部材2aが取り外される。
【0115】
なお、本実施形態における、橋脚30aを囲む壁面構造の形状は、橋脚30aの矩形断面形状に合わせて直方体状であったが、断面円形状の橋脚を囲む場合には、壁面構造の形状は円筒状となる。また、本実施形態では、橋脚30aの周りに壁面構造を構築する構成であったが、例えば、穴など内側に空洞を有する構造物の空洞に面する外壁に、本実施形態の壁面構造を円筒状に構築する構成であってもよい。この場合、パネル本体の前面は構造物の空洞側を向くことになる。ここで、円筒状構造物の大きさが小さい場合には、平板状のパネル本体1aにより形成される壁面の形状は、円筒状ではなく、多角形状となってしまう。このため、円筒状構造物の曲がり方に合わせてパネル本体1aを曲面状に成型して、構成するようにしてもよい。
【0116】
図9(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第2の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0117】
この第2の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一端にそれぞれ支点が設けられている。つまり、パネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aの、パネル本体1aとのボルト4aによる固設箇所である取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に、パネル本体1aの前面に当接する支点がボルト4iによって設けられている。ボルト4iは、前面連結部材2aの一端の穴に溶接されたナット5iに螺合している。また、パネル本体1aに取り付けられた背面連結部材3aの、パネル本体1aとのボルト4bによる取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に、パネル本体1aの背面に当接する支点が設けられている。一方、上述した図1に示す第1の実施形態並びに図6に示す第2の実施形態の前面連結部材2aおよび背面連結部材3aには、このような支点は設けられていない。
【0118】
図10(a)は、図9に示すパネル1C、1Dを第2の実施形態の第2の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図9と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0119】
第2の実施形態では、図6に示すように、パネル本体1aに取り付けられる背面連結部材3aの取付面とパネル本体1aの背面との間に調整材8aを介挿することで、隣接するパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に所定の間隔17があけられた。しかし、図9に示す第2の変形例では、背面連結部材3aのパネル本体1aへの取付部分のパネル本体1aの厚さが、背面連結部材3aの係合面3a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。
【0120】
この第2の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。
【0121】
次に、第2工程において、背面連結部材3aの一方の係合面3a1と上段のパネル1Dのパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hを介在させ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1と上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、上段のパネル1Dのパネル本体1aを固定させる。なお、上記の第1工程を行う際、予めボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に介在させるようにしてもよい。また、これとは逆に、上記の第1工程を行う際、予めボルト4fおよびボルト4gを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4hを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に介在させるようにしてもよい。
【0122】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0123】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9g1および矢印9g2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9g3および矢印9g2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0124】
図10(b)は、第2の実施の形態の第3の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0125】
第2の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第3の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は同図(a)に示す構成と同一である。
【0126】
この第3の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Cのパネル本体1aを挿入して、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Cのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第2の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0127】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9h3および矢印9h2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9h1および矢印9h2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0128】
このような第2の実施形態および第2の変形例による壁面構築方法によれば、図7(a)、図10(a)に示すように、第2工程で、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hが介在させられ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gが介在させられることで、下段のパネル本体1aに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に第1工程で位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0129】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置に介在するボルト4f、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間に介在する1つのボルト4hにより、矢印9e1,9g1および矢印9e2,9g2の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aの前面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより低い位置に介在するボルト4g、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間に介在する1つのボルト4hにより、矢印9e3,9g3および矢印9e2、9g2の方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0130】
また、第2の実施形態の第1、3の変形例による壁面構築方法によれば、図7(b)、図10(b)に示すように、第2工程で、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hが介在させられ、前面連結部材2aの他方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4gおよびボルト4fが介在させられることで、取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挟まるように第1工程で位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0131】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9f3、9h3および矢印9f2,9h2の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9f1、9h1および矢印9f2,9h2の方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0132】
また、第2の実施形態の第2、3の変形例による壁面構築方法によれば、図10(a)および(b)に示すように、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、パネル本体1aを介して前面連結部材2aの他端側に負荷がかかっても、前面連結部材2aの一端に設けられた支点であるボルト4iがボルト4aによる取付箇所を挟む反対側でパネル本体1aの前面に当接することにより、この負荷がパネル本体1aの前面に当接する支点でも受けられる。また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、パネル本体1aを介して背面連結部材3aの他端側に負荷がかかっても、背面連結部材3aの一端に設けられた支点がボルト4bによる取付箇所を挟む反対側でパネル本体1aの背面に当接することにより、この負荷がパネル本体1aの背面に当接する支点でも受けられる。このため、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの他端側にかかる負荷は、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの取付箇所とその一端に設けられた支点とで支えられ、取付箇所のみで前面連結部材2aまたは背面連結部材3aが固定されている場合に比べて、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aはぐらつくことなく確実にパネル本体1aに固定される。
【0133】
なお、第2の実施形態および第1〜3の変形例では、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に1つのボルト4hを介在させ、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4f、4gを介在させた。しかし、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に少なくとも1つのボルトを介在させ、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間における、いずれか1つの前記ボルトより高い位置および低い位置に少なくとも2つのボルトを介在させる構成にしてもよい。
【0134】
図11(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第4の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0135】
第2の実施形態では、図6に示すように、上方に突出した前面連結部材2aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、上方に突出した背面連結部材3aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合していた。しかし、図11に示す第4の変形例では、前面連結部材2aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合し、背面連結部材3aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合している。
【0136】
図12(a)は、図11に示すパネル1C、1Dを第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図2および図11と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0137】
第2の実施形態では、図7(a)に示すように、パネル本体1aが複数段垂直に積み上げられた。しかし、図12(a)に示す第4の変形例では、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる。
【0138】
壁面を構築する際、第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。
【0139】
次に、第2工程において、前面連結部材2aの一方の係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hを介在させ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、パネル本体1aを固定させる。なお、上記の第1工程を行う際、予めボルト4fおよびボルト4gを係合面3a1とパネル本体1aの背面との間に突出させておき、第2工程において、ボルト4hを係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に介在させるようにしてもよい。
【0140】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0141】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4gの各先端が矢印9i2および矢印9i3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4fの各先端が矢印9i2および矢印9i1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0142】
図12(b)は、第2の実施の形態の第5の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0143】
第2の実施形態の第4の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第5の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第2の実施形態の第4の変形例の構成と同一である。
【0144】
この第5の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Cのパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Cのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第4の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0145】
パネル本体1aを積み上げる上述した工程において、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4gの各先端が矢印9j2および9j1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4fの各先端が矢印9j2および矢印9j3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0146】
図13は、図11に示すパネル1C、1Dを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図11および図12(a)と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0147】
この壁面構造は、上述した図12(a)に示す第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法によって構築される壁面構造の一例である。
【0148】
このような第2の実施形態の第4の変形例による壁面構築方法によれば、図12(a)に示すように、第2工程で、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hが介在させられ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gが介在させられることで、下段のパネル本体1aに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に第1工程で位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0149】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間に介在する1つのボルト4h、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより低い位置に介在するボルト4gにより、矢印9i2および矢印9i3の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aに前面側からかかっても、前面連結部材2aの係合面2a1と上段のパネル本体1aの前面との間に介在する1つのボルト4h、および背面連結部材3aの係合面3a1と上段のパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置に介在するボルト4fにより、矢印9i2および矢印9i1方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0150】
また、第2の実施形態の第5の変形例による壁面構築方法によれば、図12(b)に示すように、第2工程で、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hが介在させられ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4gおよびボルト4fが介在させられることで、取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1aが挟まるように位置させられた、上段のパネル本体1aが固定される。
【0151】
このため、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15の側圧により、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1aに背面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9j2および矢印9j1の方向にかかる負荷が受け止められる。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、パネル本体1aの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、パネル本体1aに前面側からかかっても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、矢印9j2および矢印9j3の方向にかかる負荷が受け止められる。この結果、前面側および背面側の両方向からかかる負荷をボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。
【0152】
なお、第2の実施形態の第4、5の変形例では、図12(a)、(b)に示すように、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4f、4gを介在させた。しかし、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1aの前面との間に少なくとも1つのボルトを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、いずれか1つの前記ボルトより高い位置および低い位置に少なくとも2つのボルトを介在させる構成にしてもよい。
【0153】
また、パネル本体1a、パネル本体1aの背面に打設されたコンクリート15、およびコンクリート15の背面にある既設構造体または法面に棒状部材または線状部材が挿入され、挿入された棒状部材または線状部材の周りに充填材が充填されることにより、パネル本体1aから構成される壁面が既設構造体または法面の前面に固定される構成にしてもよい。
【0154】
また、上述した図6〜図13に示す第2の実施形態および第1〜5の変形例の各壁面構築方法により、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aを積み上げる場合、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側または背面側の間で出入りが生じることになる。また、曲線施工において斜めにパネル本体1aを積み上げて傾斜した壁面を構築する場合、敷設延長方向におけるパネル本体1a間に隙間が生じる。この出入りおよび隙間について、図14を用いて説明する。
【0155】
図14(a)および(b)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法(図12(a)参照)に用いられるパネル1Dをイモ積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図であり、同図(c)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図である。図14(d)および(e)は、第2の実施形態の第4の変形例の壁面構築方法(図12(a)参照)に用いられるパネル1Dをずらし積み方式で複数段斜めに積み上げて曲線施工した壁面構造の側面図および平面図であり、同図(f)は、この壁面構造を壁面方向上方から見た平面図である。なお、同図において図12(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、図14(a)〜(f)において、図12(a)に示すパネル本体1aに設けられた模様の図示は省略している。また、図14(b)、(c)、(e)および(f)において、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aや背面連結部材3a等の部材の図示は省略している。
【0156】
同図(a)、(b)および(c)に示す壁面構築方法では、下段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目と上段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目とが高さ方向に一直線になるように設置して、パネル本体1aを積み上げるイモ積み方式により、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる。また、同図(d)、(e)および(f)に示す壁面構築方法では、下段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目と上段に並ぶパネル本体1aどうしの側辺の合わせ目とを考慮しないでランダムに設置して、パネル本体1aを積み上げるずらし積み方式により、パネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる。
【0157】
曲線施工でパネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる場合、下段のパネル本体1aと上段のパネル本体1aとがそれぞれ描く半径は異なる。このため、イモ積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる場合、同図(b)に示すように、パネル本体1aの下部から上部に向かって広がる隙間41がパネル本体1a間に発生し、この隙間41に間詰コンクリート等を埋めたり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要があり、作業効率がよくない。また、積み上げる各パネル本体の側辺の合わせ目を1段おきに一直線上に揃えるように設置する不図示の千鳥積み方式により、曲線施工でパネル本体が複数段斜めに積み上げられる場合、パネル本体どうしの合わせ目を1段おきに揃えるために、上下のパネル本体1aの位置関係を調整する必要があり、また、イモ積み方式と同様にパネル本体1a間に隙間が発生し、この隙間に間詰コンクリート等を埋めたり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要があり、この場合も作業効率が良くない。一方、ずらし積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段斜めに積み上げられる場合、千鳥積み方式のようにパネル本体1aの位置関係を調整してパネル本体を積み上げる労力も必要なく、また、パネル本体1a間の隙間に間詰コンクリート等を埋めたり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要もなく、パネル本体を端から詰め簡単に積むことができ、作業効率が良い。
【0158】
イモ積み方式により曲線施工でパネル本体1aが複数段積み上げられる場合、同図(a)、(b)および(c)に示すように、上段および下段のパネル本体1aの位置関係に出入りは生じない。一方、ずらし積み方式等により、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずに行う曲線施工でパネル本体1aが複数段積み上げられる場合、同図(d)、(e)および(f)に示すように、下部にあるパネル本体1aと上部にあるパネル本体1aとは上下の位置関係が揃わずに配置され、上下のパネル本体1aの前面および背面が面一にならない。つまり、同図(f)の平面図に示すように、点線で示される上段のパネル本体1aと、その下の段に設けられた実線で示されるパネル本体1aとは、曲線施工のためにずれて配置され、パネル本体1aに出入りが生じる。また、同図(d)の側面図に示すように、パネル本体1aを側面から見た場合にも、上下のパネル本体1aの前面側および背面側の間で出入りが生じることになる。
【0159】
同図(d)、(e)および(f)に示すずらし積み方式の壁面構築方法によれば、壁面の敷設延長方向が曲がる曲線施工で上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずにパネル本体1aを積み上げる場合、上記のように、下方に積まれるパネル本体1aと上方に積まれるパネル本体1aとは一面とならず、上下のパネル本体1aの前面側および背面側の間で出入りが生じる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また、生じなくても、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に隙間を設け、この隙間に支持治具を構成するボルト4f、4g、4hを介在させることで、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、パネル本体1aを固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体1aも固定することができる。従って、パネル本体1aにかかる負荷の方向に応じて、ボルト4f、4g、4hの取付位置を調節し、また、パネル本体1aにかかる負荷の大きさに応じて、介在させるボルトの数を調整することで、パネル本体1aにかかる負荷の方向、大きさ等の様々な状況に自在に対応した強固な壁面を構築できる。
【0160】
また、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部との間に隙間を設け、この隙間にボルト4f、4g、4hを介在させることで、パネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、上下のパネル本体1aを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体1aの位置関係を敷設延長方向において考慮することのない上記のずらし積み方式により、各段毎にパネル本体1aを端から詰めて、上下のパネル本体1aの位置関係を揃えずにパネル本体1aを斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体1a間には、パネル本体1aそのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、従来のように、パネル本体1a間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネル本体1aの加工作業が削減されて、パネル本体1aの積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0161】
また、第2の実施形態およびその第1〜5の変形例による壁面構築方法によれば、ボルト4f、4g、4hを回転させて、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの他端側に一端が螺合したボルト4f、4g、4hの突出端を係合面2a1、3a1に対して出し入れし、上段または下段のパネル本体1aの前面または背面に当接させて係合させることで、所定の間隔19、17があいた上段または下段のパネル本体1aの前面または背面と係合面2a1、3a1との間にボルト4f、4g、4hが介在させられて、パネル本体1aが固定される。このため、隣接するパネル本体1aに係合する前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1側へのボルト4f、4g、4hの出し入れを調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0162】
また、第2の実施形態およびその第1〜5の変形例による壁面構築方法によれば、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aのパネル本体1aへの取付面とパネル本体1aの前面または背面との間に調整材8aを介挿することで、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1と隣接するパネル本体1aとの間にあく所定の間隔19、17が、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りの大きさや模様の突出具合に応じて、調整される。この調整により、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aの係合面2a1、3a1と隣接するパネル本体1aとのぶつかり合いを回避することができる。
【0163】
また、第2の実施形態の第2の変形例による壁面構築方法によれば、図9および図10に示すように、背面連結部材3aのパネル本体1aへの固設部分である取付部分のパネル本体1aの厚さが、背面連結部材3aの係合面3a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと係合面3a1との間に所定の間隔17があけられる。このため、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りや模様の凹凸による、隣接するパネル本体1aと背面連結部材3aの係合面3a1とのぶつかり合いを回避することができる。なお、前面連結部材2aのパネル本体1aへの取付面とパネル本体1aの前面との間に調整材8aを介挿することなく、前面連結部材2aのパネル本体1aへの取付部分のパネル本体1aの厚さが、前面連結部材2aの係合面2a1と対峙する部分の隣接するパネル本体1aの厚さより厚いことで、隣接するパネル本体1aと係合面2a1との間に所定の間隔19をあけることも出来る。この場合、上下のパネル本体1aの間に生じる出入りや模様の凹凸による、隣接するパネル本体1aと前面連結部材2aの係合面2a1とのぶつかり合いを回避することができる。
【0164】
図15(a)、(b)および(c)は、第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Cの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Dの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図3および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0165】
第2の実施形態では、図6に示すように、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの模様が設けられた前面目地部分との間に1個の調整材8aを介挿することで、隣接するパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられた。しかし、図15に示す第6の変形例では、パネル本体1aに取り付けられる前面連結部材2aの取付面とパネル本体1aの模様がない前面との間に2個の調整材8aを介挿することで、隣接するパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に所定の間隔19があけられる。また、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、パネル本体1aの正面から見て互いに所定間隔ずらしてパネル本体1aの前面および背面に配置されている。
【0166】
図15(a)、(b)および(c)に示すように、パネル1Cは、上方に突出した前面連結部材2aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合し、上方に突出した背面連結部材3aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合する。また、第2の実施形態では、図6に示すように、最下段のパネル1Cのパネル本体1aの背面下方にL字支持部材6cが固定されている。しかし、第6の変形例では、最下段のパネル1Cのパネル本体1aの背面下方に、V字支持部材6bが固定される。
【0167】
一方、同図(d)、(e)および(f)に示すように、パネル1Dは、上方に突出した前面連結部材2aの他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、上方に突出した背面連結部材3aの他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合する。
【0168】
なお、パネル1C、1Dにおけるボルト4h並びにボルト4fおよびボルト4gの取付位置は同図に示す位置に限られず、上段に積まれるパネル1Dの傾きに応じてパネル1aの前面側および背面側で逆の位置に取り付けられる。つまり、パネル1Cの前面連結部材2aの上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、パネル1Cの背面連結部材3aの中央のナット5cにボルト4hが螺合する場合がある。また、パネル1Dの前面連結部材2aの中央のナット5cにボルト4hが螺合し、パネル1Dの背面連結部材3aの上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合する場合がある。
【0169】
図16(a)は、図15に示すパネル1C、1Dを第2の実施の形態の第6の変形例による壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図7および図15と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0170】
トンネル30cの壁面前面に新たに壁面を構築する際、最初に、下準備において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1a背面下方に、上述した図3と同様のV字支持部材6bが固定され、このV字支持部材6bがパネル1Cのパネル本体1aと共に基礎11に固定される。
【0171】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる。この際、上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が下段のパネル1Cのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入される。
【0172】
次に、第2工程において、前面連結部材2aの一方の係合面2a1と2段目のパネル1Dのパネル本体1aの前面との間に1つのボルト4hを介在させ、背面連結部材3aの他方の係合面3a1とパネル本体1aの背面との間における、1つのボルト4hより高い位置および低い位置にボルト4fおよびボルト4gを介在させることで、2段目のパネル1Dのパネル本体1aを固定させる。この際、トンネル30cの壁面の曲面形状に合わせて、下段のパネル1Cのパネル本体1aの表面と上段のパネル1Dのパネル本体1aの表面との角度が所定の角度になるように、ボルト4h、4f、4gの突出長さが調整される。また、各パネル本体1aを積み上げる際、横鉄筋31bを縦鉄筋31aに固定して、鉄筋31が組まれる。
【0173】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Dのパネル本体1aの背面がコンクリート15によって所定の高さまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1aどうしを互いに係合する最下段のパネル1Cのパネル本体1aの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0174】
上述した工程において、最下段のパネル1Cのパネル本体1aの上に2段目のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる際、パネル本体1aが前傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4gの各先端が矢印9k2および矢印9k3の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4hおよびボルト4fの各先端が矢印9k2および矢印9k1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0175】
また、2段目以降のパネル1Dのパネル本体1aの上により上段のパネル1Dのパネル本体1aが積まれる際、パネル本体1aが前傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、より上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、より上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9l1および矢印9l2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、より上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、より上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、より上段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9l3および矢印9l2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、より上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0176】
図16(b)は、第2の実施の形態の第7の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0177】
第2の実施形態の第6の変形例では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第7の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。これ以外の構成は第2の実施形態の第6の変形例の構成と同一である。
【0178】
この第7の変形例では、パネル本体1aを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Dのパネル本体1aの前面および背面と、他端が上段のパネル1Dのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Dのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Dのパネル本体1aが挿入されて、上段のパネル1Dのパネル本体1aが下段のパネル1Dのパネル本体1aに載置される。その後、同図(a)に示す第6の変形例と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0179】
上述した工程において、下段のパネル本体1aの上に上段のパネル本体1aが積まれる際、パネル本体1aが前傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを前面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4fおよびボルト4hの各先端が矢印9m3および矢印9m2の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの前面側への転倒が防止される。また、パネル本体1aが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1aの自重により、また、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1aの前面および背面で、ボルト4gおよびボルト4hの各先端が矢印9m1および矢印9m2の方向にかかる負荷を受け止めて、上段のパネル本体1aの背面側への転倒が防止される。
【0180】
図17は、図15に示すパネル1C、1Dを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図16(a)と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0181】
このトンネル30cの壁面前面には、図16に示すように構築されるパネル1C、1Dが設けられ、これらのパネル1C、1Dによりトンネル30cの壁面が補修される。トンネル30cの天井部分のパネル1Dのパネル本体1aは、2本のボルト4jにより、パネル本体1aの背面に埋められたコンクリート15を介してトンネル30cに固定されることで、強固にトンネル30cの天井部分に固定され、落下が防止されている。
【0182】
ここで、図16に示すトンネル30cでは、3段目のパネル1Dのパネル本体1aがトンネル30cの壁面形状に合わせてやや前面側に傾いているため、2段目のパネル1Dのパネル本体1aは、前面連結部材2aにボルト4fおよびボルト4g、背面連結部材3aにボルト4hが取り付けられていた。しかし、図17に示すトンネル30cでは、3段目のパネル1Dのパネル本体1aがトンネル30cの壁面形状に合わせてやや背面側に傾いているため、2段目のパネル1Dのパネル本体1aは、前面連結部材2aにボルト4h、背面連結部材3aにボルト4fおよびボルト4gが取り付けられている。
【0183】
なお、図15〜図17に示す第6、第7の変形例では、下段のパネル本体1aの表面と異なる角度で上段のパネル本体1aを積み上げることで、曲面形状のトンネル30cの壁面を補修した。しかし、前面連結部材2aまたは背面連結部材3aが、その一端に取り付けられるパネル本体1aとその他端に係合させられるパネル本体1aとが所定形状の面を形成するように、曲げられているものを用いて、トンネル30cの壁面を補修する構成にしてもよい。この構成によれば、隣接するパネル本体1aで所望の形状の面を形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体1aを積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、上記のトンネル30cのような既設構造体の前面にパネル本体1aを積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状の面を隣接するパネル本体1aで形成するように曲げられている前面連結部材または背面連結部材を用いて、パネル本体1aを積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。特に、半径が小さくて曲がりの大きな曲面を有する壁面にこの構成を適用すると、有効である。
【0184】
また、パネル本体1aが、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aを介して係合する隣接するパネル本体1aと所定形状の面を形成するように、曲げられているものを積み上げて、トンネル30cの壁面を補修する構成でもよい。この構成によれば、所望の面を形成するように曲げられているパネル本体を積み上げることで、所望の形状をした壁面を構築することができる。例えば、上記のトンネル30cのような既設構造体の前面にパネル本体を積み上げる際、既設構造体の壁面形状と同じ形状で曲げられているパネル本体を用いて、パネル本体を積み上げることで、既設構造体の壁面形状に合わせた新たな壁面を構築できる。この場合も、特に、半径が小さくて曲がりの大きな曲面を有する壁面にこの構成を適用すると、有効である。
【0185】
図18(a)、(b)および(c)は、本発明の第3の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の最下段に設けられるパネル1Eの平面図、背面図および側面図、(d)、(e)および(f)は、2段目以降に積まれるパネル1Fの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図1および図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0186】
同図に示すように、パネル本体1bは、上述した実施形態および変形例のパネル本体1aより厚い構造となっている。
【0187】
また、第2の実施形態では、図6に示すように、上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一方の他端の上部および下部のナット5cにボルト4fおよびボルト4gが螺合し、他方の他端の中央のナット5cにボルト4hが螺合する構成であった。しかし、図18に示す第3の実施形態では、上方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一方の他端の下部のナット5cに支持治具を構成するボルト4kが螺合し、他方の他端の上部のナット5cに支持治具を構成するボルト4lが螺合する構成になっている。
【0188】
また、図18に示す第3の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの各一端に設けられた穴にナット5iが溶接され、これらナット5iにボルト4iが螺合している。これらボルト4iにより、パネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた各一端に、パネル本体1aの前面および背面に当接する支点が設けられている。一方、上述した第2の実施形態では、図6に示すようにこのような支点は設けられていない。
【0189】
図19(a)は、図18に示すパネル1E、1Fを第3の実施形態の壁面構築方法によって複数段積み上げて構築して行く過程における壁面構造の側面図である。なお、同図において図7および図18と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0190】
壁面を構築する際、最初に、下準備において、最下段のパネル1Eのパネル本体1bがコンクリートからなる基礎11上に設置される。この際、コンクリートからなる基礎11内に下端が埋設された縦鉄筋31aが壁面方向に伸びて設けられる。
【0191】
次に、第1工程において、設置された最下段のパネル1Eのパネル本体1bの上に2段目のパネル1Fのパネル本体1bが積まれる。この際、他端が上段のパネル1Fのパネル本体1bの前面および背面と係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように一端が下段のパネル1Eのパネル本体1bに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に、上段のパネル1Fのパネル本体1bが挿入される。
【0192】
次に、第2工程において、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に1つのボルト4kを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、1つのボルト4kと異なる高さに1つのボルト4lを介在させることで、パネル本体1bを固定させる。なお、ボルト4lは、第1工程において、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間に予め介在させるようにしてもよい。この際、パネル本体1bの背面のアンカーボルト4bに横鉄筋31bを係合させて、横鉄筋31bを縦鉄筋31aに固定し、縦鉄筋31aおよび横鉄筋31bからなる鉄筋31を組む。
【0193】
次に、第3工程において、2段目のパネル1Fのパネル本体1bの背面がコンクリート15によって所定の高さBまで埋められる。次に、第4工程において、上述したコンクリート15の硬化後、第3工程により背面が硬化したコンクリート15によって所定の高さまで埋められたパネル本体1bどうしを互いに係合する最下段のパネル1Eのパネル本体1bの前面に設けられた前面連結部材2aが、取り外される。以後、これらの工程が繰り返されることで、壁面が構築されて行く。
【0194】
上述した工程において、下段のパネル本体1bの上に上段のパネル本体1bが積まれる際、パネル本体1bが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1bの自重により、また、上段のパネル本体1bを背面側に倒す負荷が生じても、上段のパネル本体1bの前面および背面で、ボルト4kおよびボルト4lの各先端が矢印9n2および矢印9n1の方向にかかるこの負荷を受け止めて、上段のパネル本体1bの背面側への転倒が防止される。
【0195】
図19(b)は、第3の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法によって構築される壁面構造の一部側面図である。なお、同図(b)において同図(a)と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0196】
第3の実施形態では、同図(a)に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1bに取り付けられ、他端がパネル本体1bの上方前面側および上方背面側から上方に突出して、パネル本体1bに取り付けられている。しかし、同図(b)に示す第1の変形例では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、一端がパネル本体1bに取り付けられ、他端がパネル本体1bの下方前面側および下方背面側から下方に突出して、パネル本体1bに取り付けられている。これ以外の構成は第3の実施形態の構成と同一である。
【0197】
この第1の変形例では、パネル本体1bを複数段積み上げる際の第1工程において、下段のパネル1Eのパネル本体1bの前面および背面と、他端が上段のパネル1Fのパネル本体1bの下方前面側および下方背面側から下方に突出した前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があくように、一端が上段のパネル1Fのパネル本体1bに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル1Eのパネル本体1bが挿入されて、上段のパネル1Fのパネル本体1bが下段のパネル1Eのパネル本体1bに載置される。その後、同図(a)に示す第3の実施の形態と同様の第2工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0198】
上述した工程において、下段のパネル本体1bの上に上段のパネル本体1bが積まれる際、パネル本体1bが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1bの自重により、また、上段のパネル本体1bを背面側に倒す負荷が生じても、下段のパネル本体1bの前面および背面で、ボルト4kおよびボルト4lの各先端が矢印9o1および矢印9o2の方向にかかる負荷を受け止めて、上段のパネル本体1bの背面側への転倒が防止される。
【0199】
図20は、図18に示すパネル1E、1Fを複数段積み上げて完成した壁面構造の側面図である。なお、同図において図19と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0200】
この壁面構造は、上述した第3の実施形態の壁面構築方法によって構築される壁面構造を、老朽化したまたは変状をきたした擁壁30dの前面の基礎地盤22に構築した一例である。
【0201】
このような第3の実施形態およびその第1の変形例による壁面構築方法によれば、第2工程で、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に1つのボルト4kを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、1つのボルト4kと異なる高さに1つのボルト4lを介在させることで、第1工程で、図19(a)に示すように、下段のパネル本体1bに取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に位置させられた、または、図19(b)に示すように、取り付けられている前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に下段のパネル本体1bが挟まるように位置させられた、上段のパネル本体1bが固定される。
【0202】
このため、パネル本体1bが後傾して積み上げられることでかかるパネル本体1bの自重により、また、パネル本体1bの前面に加えられる何らかの側圧により、上段のパネル本体1aを背面側に倒す負荷が、上段のパネル本体1bに前面側からかかっても、下段または上段のパネル本体1bに取り付けられている前面連結部材2aの係合面2a1と上段または下段のパネル本体1bの前面との間に介在する1つのボルト4k、および下段または上段のパネル本体1bに取り付けられている背面連結部材3aの係合面3a1と上段または下段のパネル本体1bの背面との間における、前面側の1つのボルト4kより高いまたは低い位置に介在するボルト4lにより、この負荷が受け止められる。また、パネル本体1bを積み上げて壁面を斜めに構築する際、パネル本体1bを背面側に傾斜させることで、パネル本体1bの重量により、パネル本体1bの傾斜角度に応じた、パネル本体1bの背面側のコンクリート15からなる裏込部等からの側圧に対抗させることができる。この結果、前面側からの負荷をボルト4k、4lにより、背面側からの負荷をパネル本体1bの重量で、受け止められる。また、パネル本体1bを積み上げて壁面を垂直に構築する際には、垂直に立つパネル本体1bが有する重量に応じた、パネル本体1bの前面および背面からの側圧に対抗させることができる。このため、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1bが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1bを確実に固定することができる。
【0203】
また、曲線施工で上下のパネル本体1bの位置関係を揃えずにパネル本体を斜めに積み上げる場合には、下方に積まれるパネル本体1bと上方に積まれるパネル本体1bとは一面とならず、上下のパネル本体1bの前面側および背面側の間で出入りが生じる。また、上下のパネル本体1bの位置関係を揃えて、パネル本体1bを積み上げる場合には、このような出入りが生じることなく、下方に積まれるパネル本体1bと上方に積まれるパネル本体1bとは一面となる。しかし、この構成によれば、出入りが生じても、また生じなくても、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に隙間を設け、この隙間にこれらのボルト4k、4lを介在させることで、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、パネル本体1bを固定することができる。同様に、表面に凹凸状の模様が設けられたパネル本体1bも固定することができる。
【0204】
また、この構成においても、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの端部との間に隙間を設け、この隙間にボルト4k、4lを介在させることで、パネル本体1bの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1とがぶつかること無く、上下のパネル本体1bを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができるので、傾斜する壁面を曲線施工する場合、上下のパネル本体1bの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1bを端から詰めて、上下のパネル本体1bの位置関係を揃えずにパネル本体1bを斜めに積み上げることができる。従って、敷設延長方向におけるパネル本体1b間には、パネル本体1aそのものの高さ分の曲率半径の差のみの分の僅かな隙間しか発生しない。このため、この構成によっても、従来のように、パネル本体1a間に発生する隙間を埋める間詰めコンクリートを打設したり、パネル本体1aを積む段毎にサイズの異なった台形状に加工したりする必要が無くなり、この間詰めコンクリートの施工作業や、パネル本体1aの加工作業が削減されて、パネル本体1bの積み上げ作業の作業効率は大幅に向上する。
【0205】
なお、本実施形態では、第2工程において、図19に示すように、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に1つのボルト4kを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、1つのボルト4kと異なる高さに1つのボルト4lを介在させる構成であった。しかし、前面連結部材2aの係合面2a1とパネル本体1bの前面との間に少なくとも1つのボルトを介在させ、背面連結部材3aの係合面3a1とパネル本体1bの背面との間における、いずれか1つの前記ボルトと異なる高さに少なくとも1つのボルトを介在させる構成にしてもよい。
【0206】
図21(a)、(b)および(c)は、本発明の第4の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Gの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図9と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0207】
上述した実施形態および変形例では、背面連結部材3aの一端がパネル本体1a、1bの背面に取り付けられる構成であったが、パネル本体1a、1bの上辺または下辺に取り付けられる構成にしてもよい。図21に示す第4の実施の形態では、背面連結部材3bの一端が模様の無いパネル本体1cの上辺に取り付けられている。背面連結部材3bは、板状部材がL字形に折り曲げられて形成されている。
【0208】
パネル本体1cの上辺の左右2箇所には切り欠き部52が設けられており、各切り欠き部52にはパネル本体1cの高さ方向にインサートナットが埋め込まれている。各背面連結部材3bの水平折り曲げ片に設けられた穴にボルト4mが差し込まれて、各切り欠き部52に埋め込まれているインサートナットにボルト4mが螺合することにより、各背面連結部材3bは一端がパネル本体1cの上辺に固定されている。背面連結部材3bの他端の垂直折り曲げ片には3個の雌ネジ穴51が設けられ、中央の雌ネジ穴51にはボルト4hが螺合している。また、パネル本体1cの背面にパネル本体1cの厚さ方向に埋め込まれている4個のインサートナットに、各アンカーボルト4bが螺合することにより、各アンカーボルト4bはパネル本体1cの背面に突出して固定されている。
【0209】
このような第4の実施形態による壁面構築方法によれば、第1工程により、他端が下段のパネル本体1cの前面側および背面側から上方に突出して、一端が下段のパネル本体1cに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3bの間に上段のパネル本体1cが挿入されて位置させられ、第2工程により、上段のパネル本体1cの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3bの係合面2a1、3b1との所定の間隔19、17があいた間にボルト4f、4g、4hが介在させられて、パネル本体1cが固定されて積み上げられることにより、上下のパネル本体1cを壁面の敷設延長方向における所望の位置で支え合わせることができる。
【0210】
このため、パネル本体1cを積み上げる際、上下のパネル本体1cの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1cを端から詰めて積み上げていくことが可能となる。従って、パネル1Gを積み上げる際に上下のパネル1Gの位置関係がずれることで、従来のように、上下の各パネルのボルト穴や連結穴どうしが合わなくなり、上下の各パネルをボルトやネジで連結できなくなって、壁面が構築できなくなることはない。
【0211】
なお、この第4の実施形態では、背面連結部材3bのみがパネル本体1cの上辺に取り付けられている例を示しているが、前面連結部材2aも同様にパネル本体1cの上辺に取り付けられる構成にしてもよい。さらに、これら前面連結部材2aおよび背面連結部材3bをパネル本体1cの下辺に取り付けて、パネル本体1cの下方に突出する構成にしてもよい。
【0212】
図22(a)、(b)および(c)は、本発明の第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Hの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図6および図18と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0213】
上述した第2の実施形態と異なり、図22に示す第5の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aのナット5c、5iに、ボルト頭が半円球状に形成された支持治具を構成するボルト4nが螺合し、前面連結部材2aは、他端の上部および下部のナット5c並びに一端のナット5iに、ボルト頭を模様が無いパネル本体1aの前面に向けてボルト4nが螺合している。背面連結部材3aは、他端の中央のナット5cおよび一端のボルト5iに、ボルト頭をパネル本体1aの背面に向けてボルト4nが螺合している。前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの一端に螺合しているボルト4nのボルト頭は、パネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に設けられた、パネル本体1aの前面および背面に当接する支点を構成している。
【0214】
第2の実施形態のパネル1Dでは、図7(a)に示すように、壁面構造を構築する第1工程において、下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aを挿入して位置させ、第2工程において、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1に対してボルト4f、4gおよびボルト4hを出し入れすることで、所定の間隔19、17があいたパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にボルト4f、4gおよびボルト4hの突出端を介在させて、パネル本体1aを固定させて積み上げた。しかし、図22に示す第5の実施形態のパネル1Hでは、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aにボルト4nのボルト頭が上記のように突出して取付けられているので、第1工程により下段のパネル本体1aに上段のパネル本体1aが位置させられることで、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にボルト4nのボルト頭が介在してパネル本体1aが固定され、第1工程と第2工程とが同時に行われる。
【0215】
図23(a)、(b)および(c)は、第5の実施の形態の第1の変形例による壁面構築方法で構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Hの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0216】
図23に示す第1の変形例の前面連結部材2cおよび背面連結部材3cは、上述した第5の実施形態の前面連結部材2aおよび背面連結部材3aと異なり、板状の形状をしている。また、第5の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aのナット5c、5iにボルト4nが螺合して、所定の間隔19、17にボルト4nが介在する構成であった。しかし、図23に示す第5の実施形態の第1の変形例では、前面連結部材2cおよび背面連結部材3cに支持治具を構成する半円板4oが溶接されることで、所定の間隔19、17に半円板4oが介在する構成になっている。つまり、上方に突出した前面連結部材2cは、他端に2個の半円板4o、一端に1個の半円板4oが溶接されている。上方に突出した背面連結部材3cは、他端および一端にそれぞれ1個の半円板4oが溶接されている。前面連結部材2cおよび背面連結部材3cの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端に溶接されている半円板4oは、パネル本体1aの前面および背面に当接する支点を構成している。
【0217】
この第1の変形例では、上述した第5の実施形態と同様に、下段のパネル本体1aの上に上段のパネル本体1aを位置させる第1工程により、前面連結部材2cおよび背面連結部材3cの他端に溶接された半円板4oが、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2c1、3c1との間に介在してパネル本体1aが固定され、第1工程と第2工程とが同時に行われる。
【0218】
このような第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構築方法によれば、上述したように、下段のパネル本体1aに上段のパネル本体1aを位置させる第1工程を行うことで、パネル本体1aを固定させる第2工程が同時に行われる。このため、第2工程を別工程として行う必要がない分、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。このような第5の実施形態およびその第1の変形例による壁面構築方法は、曲線施工において生じるパネル1Hの出入りに合わせてボルト4nの出し入れを調整することができないため、パネル1Hの出入りが生じる曲線施工には不向きであり、パネル1Hの出入りが生じない、上下のパネル本体1aが面一に積まれる直線施工や、間詰めコンクリートが必要となるパネル本体1aを斜めにイモ積み方式で積み上げる曲線施工で用いられる。また、パネル本体1aの前面および背面へのボルト4nのボルト頭や半円板4oの介在に邪魔となる模様がパネル表面に付けられていないパネル1Hの施工などに用いられる。
【0219】
なお、第5の実施形態およびその第1の変形例では、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、2c1および3a1、3c1との双方の間に、ボルト4nのボルト頭や半円板4oが介在する構成であった。しかし、パネル本体1aの前面と前面連結部材2a、2cの係合面2a1、2c1との間、またはパネル本体1aの背面と背面連結部材3a、3cの係合面3a1、3c1との間のどちらか一方に所定の間隔19または17があけられ、この一方の所定の間隔19または17にボルト4nのボルト頭や半円板4oが介在する構成にしてもよい。また、第5の実施形態およびその第1の変形例では、前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3b、3cは、パネル本体1aの上方に突出する構成であったが、パネル本体1aの下方に突出する構成にしてもよい。
【0220】
図24は、第5の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造において背面連結部材3aが回動自在に取り付けられている構成を説明するための、2段目以降に積まれるパネル1Hの背面図である。なお、同図において図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。また、同図において、パネル本体1aの前面に取り付けられる前面連結部材2aの図示は省略している。
【0221】
パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を考慮することなくパネル本体1aを積み上げると、上下のパネル本体1aに設けられた不図示の長い背面連結部材3aもしくは前面連結部材2aどうしまたはこれらとパネル本体1aに設けられた部材とがどこかでぶつかる。しかし、背面連結部材3aおよび前面連結部材2aがパネル本体1aにボルト4bおよびナット5b並びにボルト4aによって着脱自在に取り付けられているため、ぶつかる背面連結部材3aまたは前面連結部材2aの一方を取り外したり、別の位置にずらして予めパネル本体1aの背面または前面に設けられたインサートナット等に取り付けることで、背面連結部材3aもしくは前面連結部材2aどうしまたはこれらとパネル本体1aに設けられた部材のぶつかりを避けることができる。また、同図に示すように、背面連結部材3aはパネル本体1aにボルト4bを中心に回動自在に取り付けられている。また、前面連結部材2aは、パネル本体1aにボルト4aを中心に回動自在に取り付けられている。このため、同図に示すように、パネル本体1aに設けられたボルト4bとぶつかる背面連結部材3aの他端を、ボルト4bによるパネル本体1aとの取付箇所を中心にパネル本体1aの背面上で回動させることにより、上段のパネル本体1aのボルト4bと背面連結部材3aのぶつかりを避けることができる。前面連結部材2aについても同様に、ぶつかる前面連結部材2aの他端を、ボルト4aによるパネル本体1aとの取付箇所を中心にパネル本体1aの前面上で回動させることにより、前面連結部材2aのぶつかりを避けることができる。
【0222】
また、上述した実施形態および変形例による壁面構築方法によれば、前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a、3b、3cがパネル本体1a、1b、1cと別体で形成されるため、前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a、3b、3cとパネル本体1a、1b、1cとを別々に安価に製作することができ、これらとパネル本体1aとを一体に製作する場合に比べて壁面の製作コストを大幅に削減できる。
【0223】
図25(a)、(b)および(c)は、本発明の第6の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Iの平面図、背面図および側面図である。なお、同図において図22と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0224】
上述した第1〜5の実施形態では、例えば、図7に示すように、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に、ボルト4f、4g、4hを支持治具として介在させる構成であった。しかし、図25に示す第6の実施形態では、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に、くさび4pを支持治具として介在させる構成になっている。
【0225】
パネル本体1aが複数段積み上げられる際、第1工程において、下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの間に上段のパネル本体1aが挿入される。次に、第2工程において、所定の間隔19があいた上段のパネル本体1aの前面と前面連結部材2aの係合面2a1との間に2個のくさび4p、所定の間隔17があいた上段のパネル本体1aの背面と背面連結部材3aの係合面3a1との間に1個のくさび4pが、所定の間隔19、17に合わせた挿し込み量で挿し込まれることで、上段のパネル1Iのパネル本体1aが固定される。また、下段のパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの、パネル本体1aとの取付箇所よりも他端の反対側に離れた一端と、パネル本体1aの前面および背面との間にくさび4pが支点として挿し込まれる。その後、上述した第3工程〜第4工程により、壁面が構築されて行く。
【0226】
このような第6の実施形態による壁面構築方法によれば、上記のように、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にくさび4pを挿し込むことで、所定の間隔19、17があいた上段のパネル本体1aの前面および背面と係合面2a1、3a1との間にくさび4pが介在させられて、パネル本体1aが固定される。このため、隣接するパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間にくさび4pを挿し込む量を調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0227】
なお、第6の実施形態では、隣接するパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2aおよび背面連結部材3aの係合面2a1、3a1との間に支持治具としてくさび4pを挿し込んだが、くさび4pに代えて板状部材などを支持治具としてこれらの間に挟み込む構成にしてもよい。この場合、板状部材などの支持治具の挟み込む厚さを調整することにより、上下のパネル本体1aを互いに容易に支え合わせてぐらつくことなく係合させることができ、作業効率が向上する。
【0228】
また、第6の実施形態では、前面連結部材2aおよび背面連結部材3bは、パネル本体1aの上方に突出する構成であったが、パネル本体1aの下方に突出する構成にしてもよい。このような第6の実施形態による壁面構築方法は、曲線施工において生じるパネル1Iの出入りに合わせてくさび4pを挿し込む量を調整することにより、または板状部材などの支持治具の挟み込む厚さを調整することにより、パネル1Iの出入りが生じる曲線施工にも用いることが出来る。また、パネル本体1aの表面に模様が付けられていても、くさび4pを挿し込んだり板状部材などの支持治具を挟み込むことが出来るので、パネル本体1aの表面に模様が付けられているパネルの施工などにも用いられる。
【0229】
図26(a)および(b)は、本発明の第7の実施の形態による壁面構築方法によって構築される壁面構造の2段目以降に積まれるパネル1Jおよびパネル1Kの平面図、(c)および(d)は、積まれたパネル1J、1Kの背面図および側面図である。なお、同図において図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0230】
上述した第1〜6の実施形態では、例えば図6に示すように、前面連結部材2aおよび背面連結部材3aは、その長さがパネル本体1aの高さより短く、一端がパネル本体1aに取り付けられ、他端がパネル本体1aの上辺前面側および上辺背面側から上方に突出して、パネル本体1aに取り付けられている。しかし、図26に示す第7の実施形態では、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dは、同図(c)、(d)に示すように、それぞれ、その長さがパネル本体1aの高さより長く、パネル1Jのパネル本体1aの上辺および下辺から端部が上方および下方に突出して、2本のボルト4a並びにアンカーボルト4bおよびナット5bによりパネル1Jの前面および背面に取り付けられている。また、同図(b)に示すように、パネル1Kのパネル本体1aには、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dが取り付けられておらず、パネル本体1aの背面に埋め込まれている4個のインサートナットに各アンカーボルト4bが螺合することにより、4本のアンカーボルト4bがパネル本体1aの背面に突出している。
【0231】
パネル本体1aが積み上げられる際、図示するようにパネル1Jとパネル1Kとが交互に積まれる場合と、パネル1Kが用いられずにパネル1Jのみが積まれる場合とがある。パネル1Jのみが積まれる場合、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dは、上下のパネル1Jで互いにぶつからないように、ずらしてパネル本体1aに取り付けられる。この場合、1枚のパネル1Jは、上方および下方で前面および背面が前面連結部材2dおよび背面連結部材3dによって支持されるため、合計8個の連結部材2dおよび3dによって支持されることになる。このため、前面連結部材2dおよび背面連結部材3dによって支えられるパネル1Jからの荷重は大きくなり、パネル1Jに大きな荷重がかかる壁面に用いることが出来る。
【0232】
図示するようにパネル1Jとパネル1Kとが交互に積まれる場合、下段のパネル1Jのパネル本体1aの上に上段のパネル1Kのパネル本体1aが積み上げられる際、上段のパネル1Kのパネル本体1aの前面および背面と、下段のパネル1Jのパネル本体1aの前面側および背面側から上方に突出した前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの各端部の係合面2d1、3d1との間に所定の間隔19、17があくように、下段のパネル1Jのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの間に、上段のパネル1Kのパネル本体1aが挿入される。また、下段のパネル1Kのパネル本体1aの上に上段のパネル1Jのパネル本体1aが積み上げられる際、下段のパネル1Kのパネル本体1aの前面および背面と、上段のパネル1Jのパネル本体1aの前面側および背面側から下方に突出した前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの各端部の係合面2d1、3d1との間に所定の間隔19、17があくように、上段のパネル1Jのパネル本体1aに取り付けられた前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの間に、下段のパネル1Kのパネル本体1aが挿入される。
【0233】
このような第7の実施形態による壁面構築方法によっても、上述した第1〜6の実施形態と同様な作用・効果が奏され、パネル本体1aを積み上げる際、上下のパネル本体1aの位置関係を敷設延長方向において考慮することなく、各段毎にパネル本体1aを端から詰めて積み上げていくことが可能となる。また、前面側および背面側の両方向からパネル本体1aにかかる負荷を、図6に示す第2の実施形態と同様にボルト4f、4g、4hにより受け止められるので、パネル1Kのパネル本体1aの前面および背面と前面連結部材2dおよび背面連結部材3dの係合面2d1、3d1との間に所定の間隔19、17があいていても、パネル本体1aが転倒したりぐらついたりすることなくパネル本体1aを確実に固定することができる。また、上述したように、パネル1Kのパネル本体1aには前面連結部材2dおよび背面連結部材3dが取り付けられていない。このため、パネル本体1aを積み上げる作業時、パネル1Kのパネル本体1aに前面連結部材2dおよび背面連結部材3dを取り付ける必要がない分、パネル本体1aの積み上げ作業効率は向上する。
【0234】
なお、上述した各実施形態および各変形例では、壁面の背面にコンクリート15で裏込部を形成した場合について説明したが、裏込部は、コンクリート以外によって構成してもよく、例えば、軽量コンクリートや、グラウト材、盛土などで構成してもよい。また、上述した各実施形態および各変形例では、前面連結部材2a、2c、2d、背面連結部材3a〜3dを鉄鋼製の材質で構成した場合について説明したが、鉄鋼製以外の材質で構成してもよい。例えば、樹脂やコンクリートで構成してもよい。また、パネル本体1a〜1cの材質もコンクリートに限定されることはなく、例えば、樹脂等によって構成してもよい。
【0235】
また、上述した第1〜6の各実施形態およびそれらの各変形例では、パネル本体1a〜1cの上側や下側に2個の前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a〜3cを設ける構成であったが、パネル本体1a〜1cの上側や下側に設けられる前面連結部材2a、2cおよび背面連結部材3a〜3cの個数は、2個に限らず、1個や3個以上であってもよい。また、上述した第1〜7の各実施形態およびそれらの各変形例に用いられた前面連結部材2a、2c、2dおよび背面連結部材3a〜3dとパネル本体1a〜1cとの組合わせは上述した例に限定されるものではなく、任意の連結部材と任意のパネル本体とを組み合わせて、壁面を構築するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0236】
1A〜1K…パネル
1a〜1c…パネル本体
2a、2c、2d…前面連結部材
2a1、2c1、2d1…係合面
3a〜3d…背面連結部材
3a1、3b1、3c1、3d1…係合面
4a、4b、4d、4e、4i、4j、4m…ボルト
4c、4f〜4h、4k、4l、4n…ボルト(支持治具)
4o…半円板(支持治具)
4p…くさび(支持治具)
8a…調整材
15…コンクリート
17、19…所定の間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部が下段のパネル本体の前面側および背面側から上方に突出して、上段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と前記端部との間に所定の間隔をあけて下段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段の前記パネル本体を位置させる、または、端部が上段のパネル本体の前面側および背面側から下方に突出して、下段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と前記端部との間に所定の間隔をあけて上段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段の前記パネル本体が挟まるように上段の前記パネル本体を位置させる第1工程と、
前記所定の間隔があいた上段または下段の前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に支持治具を介在させることで、前記パネル本体を固定させる第2工程と
を1サイクルとして前記パネル本体を積み上げ、
前記パネル本体の背面を裏込部によって所定の高さまで埋める第3工程を任意の前記サイクル終了後に行なって壁面を構築する壁面構築方法。
【請求項2】
前記第1工程で、上段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて下段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に上段の前記パネル本体を位置させ、または、下段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて上段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に下段の前記パネル本体が挟まるように上段の前記パネル本体を位置させ、
前記第2工程で、前記前面連結部材および前記背面連結部材の一方の前記端部と前記パネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの前記支持治具を介在させ、前記前面連結部材および前記背面連結部材の他方の前記端部と前記パネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に少なくとも2つの前記支持治具を介在させることで、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1に記載の壁面構築方法。
【請求項3】
前記第1工程で、上段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて下段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に上段の前記パネル本体を位置させ、または、下段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて上段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に下段の前記パネル本体が挟まるように上段の前記パネル本体を位置させ、
前記第2工程で、前記前面連結部材および前記背面連結部材の一方の前記端部と前記パネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの前記支持治具を介在させ、前記前面連結部材および前記背面連結部材の他方の前記端部と前記パネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具と異なる高さに少なくとも1つの前記支持治具を介在させることで、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1に記載の壁面構築方法。
【請求項4】
前記第3工程により背面が裏込部によって所定の高さまで埋められた前記パネル本体どうしを互いに係合する前記前面連結部材を取り外す第4工程を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項5】
前記第2工程で、前記所定の間隔があいた前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記端部に前記支持治具の一端を螺合させ、前記支持治具を回転させて出し入れすることで、前記支持治具の突出端を上段または下段の前記パネル本体の前面または背面に当接させて係合させ、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項6】
前記第2工程で、前記所定の間隔があいた上段または下段の前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に前記支持治具を挿し込むまたは挟み込むことで、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項7】
前記所定の間隔があいた前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記端部に前記支持治具が突出して設けられ、前記第1工程により下段の前記パネル本体に上段の前記パネル本体が位置させられることで、前記所定の間隔があいた上段または下段の前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に前記支持治具が介在して前記パネル本体が固定され、前記第1工程と前記第2工程とが同時に行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項8】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記パネル本体への取付面と前記パネル本体の前面または背面との間に調整材を介挿することで、隣接する前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項9】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記パネル本体への固設部分の前記パネル本体の厚さが、前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記端部と対峙する部分の隣接する前記パネル本体の厚さより厚いことで、隣接する前記パネル本体と前記端部との間に前記所定の間隔があくことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項10】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材は、設けられたもしくは設けられる前記パネル本体と係合させられる隣接する前記パネル本体とが所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項11】
前記第1工程で、前記パネル本体は、前記前面連結部材および前記背面連結部材を介して係合する隣接する前記パネル本体と所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項12】
前記第1工程で、前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材または前記背面連結部材の、前記パネル本体との固設箇所よりも前記端部の反対側に離れた一端に、前記パネル本体の前面または背面に当接する支点が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項13】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材は、前記パネル本体と別体で形成され、前記パネル本体に着脱自在または回動自在に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項1】
端部が下段のパネル本体の前面側および背面側から上方に突出して、上段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と前記端部との間に所定の間隔をあけて下段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に上段の前記パネル本体を位置させる、または、端部が上段のパネル本体の前面側および背面側から下方に突出して、下段のパネル本体の前面または背面の少なくとも一方と前記端部との間に所定の間隔をあけて上段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前面連結部材および背面連結部材の間に下段の前記パネル本体が挟まるように上段の前記パネル本体を位置させる第1工程と、
前記所定の間隔があいた上段または下段の前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に支持治具を介在させることで、前記パネル本体を固定させる第2工程と
を1サイクルとして前記パネル本体を積み上げ、
前記パネル本体の背面を裏込部によって所定の高さまで埋める第3工程を任意の前記サイクル終了後に行なって壁面を構築する壁面構築方法。
【請求項2】
前記第1工程で、上段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて下段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に上段の前記パネル本体を位置させ、または、下段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて上段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に下段の前記パネル本体が挟まるように上段の前記パネル本体を位置させ、
前記第2工程で、前記前面連結部材および前記背面連結部材の一方の前記端部と前記パネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの前記支持治具を介在させ、前記前面連結部材および前記背面連結部材の他方の前記端部と前記パネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具より高い位置および低い位置に少なくとも2つの前記支持治具を介在させることで、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1に記載の壁面構築方法。
【請求項3】
前記第1工程で、上段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて下段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に上段の前記パネル本体を位置させ、または、下段の前記パネル本体の前面および背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけて上段の前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材および前記背面連結部材の間に下段の前記パネル本体が挟まるように上段の前記パネル本体を位置させ、
前記第2工程で、前記前面連結部材および前記背面連結部材の一方の前記端部と前記パネル本体の前面または背面との間に少なくとも1つの前記支持治具を介在させ、前記前面連結部材および前記背面連結部材の他方の前記端部と前記パネル本体の背面または前面との間における、いずれか1つの前記支持治具と異なる高さに少なくとも1つの前記支持治具を介在させることで、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1に記載の壁面構築方法。
【請求項4】
前記第3工程により背面が裏込部によって所定の高さまで埋められた前記パネル本体どうしを互いに係合する前記前面連結部材を取り外す第4工程を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項5】
前記第2工程で、前記所定の間隔があいた前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記端部に前記支持治具の一端を螺合させ、前記支持治具を回転させて出し入れすることで、前記支持治具の突出端を上段または下段の前記パネル本体の前面または背面に当接させて係合させ、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項6】
前記第2工程で、前記所定の間隔があいた上段または下段の前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に前記支持治具を挿し込むまたは挟み込むことで、前記パネル本体を固定させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項7】
前記所定の間隔があいた前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記端部に前記支持治具が突出して設けられ、前記第1工程により下段の前記パネル本体に上段の前記パネル本体が位置させられることで、前記所定の間隔があいた上段または下段の前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に前記支持治具が介在して前記パネル本体が固定され、前記第1工程と前記第2工程とが同時に行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項8】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記パネル本体への取付面と前記パネル本体の前面または背面との間に調整材を介挿することで、隣接する前記パネル本体の前面または背面と前記端部との間に前記所定の間隔をあけることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項9】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記パネル本体への固設部分の前記パネル本体の厚さが、前記前面連結部材または前記背面連結部材の前記端部と対峙する部分の隣接する前記パネル本体の厚さより厚いことで、隣接する前記パネル本体と前記端部との間に前記所定の間隔があくことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項10】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材は、設けられたもしくは設けられる前記パネル本体と係合させられる隣接する前記パネル本体とが所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項11】
前記第1工程で、前記パネル本体は、前記前面連結部材および前記背面連結部材を介して係合する隣接する前記パネル本体と所定形状の面を形成するように、曲げられていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項12】
前記第1工程で、前記パネル本体に設けられたもしくは設けられる前記前面連結部材または前記背面連結部材の、前記パネル本体との固設箇所よりも前記端部の反対側に離れた一端に、前記パネル本体の前面または背面に当接する支点が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【請求項13】
前記第1工程で、前記前面連結部材または前記背面連結部材は、前記パネル本体と別体で形成され、前記パネル本体に着脱自在または回動自在に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の壁面構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−233323(P2012−233323A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101330(P2011−101330)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510169446)
【出願人】(510169457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(510169446)
【出願人】(510169457)
【Fターム(参考)】
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