説明

変性エチレン系重合体組成物及びそれを用いた積層体

【課題】 フィッシュアイの発生が低減された変性エチレン系重合体、及び及びそれを用いた積層体を提供する。
【解決手段】 エチレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(A)100重量部あたりフッ素含有重合体(B)0.005〜2重量部、エチレン性不飽和化合物(C)0.05〜10重量部及び抗酸化剤(D)0.001〜2重量部を含有する変性エチレン共重合体組成物及びそれを用いた積層体にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和化合物で変成された変性エチレン系重合体組成物に関し、更に詳しくは、フィッシュアイが少なく、しかも金属あるいは極性樹脂との接着性に優れた変性エチレン系重合体組成物及びそれを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エチレン系重合体やプロピレン系重合体等のオレフィン系重合体は、その優れた成形加工性、機械的特性、水蒸気バリア性、耐薬品性、熱封着性等を生かして各種の包装・容器用資材等として多用されているが、酸素ガスや炭酸ガス等に対するバリヤ性や、保香性等の内容物保護性等が劣り、又、印刷性や塗装性にも劣るという欠点がある。
オレフィン系重合体におけるこれらの欠点を改良する方法として、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂や、アルミニウム等の金属箔等を被着材とした積層体の形態がとられており、その際、オレフィン系重合体がこれらの被着材との接着性に劣ることから、オレフィン系重合体は、不飽和カルボン酸若しくはその無水物等のエチレン性不飽和化合物を付加し変性した変性オレフィン系重合体として用いられている。
【0003】
又、オレフィン系重合体の有する前記特性と他の熱可塑性樹脂の有する特性とを併せ生かすべく、両者を混合して用いることもしばしば行われ、その際、オレフィン系重合体に他の熱可塑性樹脂との相溶性を付与するために、オレフィン系重合体は、例えばマレイン酸無水物等のエチレン性不飽和化合物を付加し変性した変性オレフィン系重合体として用いられている。
【0004】
それら変性オレフィン系重合体の製造方法としては、オレフィン系重合体を溶融状態、溶液状態、或いは水性懸濁状態として、エチレン性不飽和化合物と共に、ラジカル発生剤の存在下にグラフト反応条件に付すことにより製造する方法が知られているが、いずれの方法によって得られる変性オレフィン系重合体も、エチレン性不飽和化合物の付加量が低く、一方、エチレン性不飽和化合物の使用量やラジカル発生剤の使用量を多くすることにより、付加量はある程度上げ得るものの、オレフィン系重合体のゲル化等に起因するフィッシュアイが多量に発生することとなり、更に、フィルター等で濾過することによりフィッシュアイを低減化する方法も知られてはいるが、フィルターが目詰まりする等により生産性を低下させる等の問題を伴うものであった。
【0005】
このフィッシュアイの発生は、例えば、フィルム成形時、特に延伸フィルム成形時にフィルムの破断を引き起こすとか、フィルム、シート、各種容器等の製品としての表面外観を損なうとか、均一な印刷面が得られない等の問題に繋がることとなり、このフィッシュアイの発生の問題は、特に、オレフィン系重合体を溶融状態として、溶剤等を用いずに押出機等で混練する前記溶融混練法において顕著であった。
【0006】
接着力と表面外観等に優れた変性オレフィン系重合体を製造する方法として、前記溶融混練法において、例えば、無水マレイン酸等の官能性モノマー及びラジカル開始剤を含む溶融状態のオレフィン系重合体に抗酸化剤を添加する方法(例えば、特許文献1参照。)、溶融状態のオレフィン系重合体に、溶剤に溶解させた不飽和カルボン酸及びラジカル発生剤の溶液を供給する方法(例えば、特許文献2参照。)、また、外観不良が成形機内部に付着した部分の熱劣化したものの混入によって生じるとの理由から流動性改良助剤を添加する方法(例えば、特許文献3参照)等も提案されているが、本発明者等の検討によると、いずれの方法も、ある程度改良は認められるものの、変性量を上げようとするとフィ
ッシュアイ量も増加し、他方、フィッシュアイ量の少ないものは変性量が低く、結局、充分な変性量と低いフィッシュアイ量を有する変性エチレン系重合体組成物は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−216032号公報
【特許文献2】特開平9−202846号公報
【特許文献3】特開平11−217468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであり、エチレン系重合体を、エチレン性不飽和化合物及びラジカル発生剤の存在下に溶融混練して得られた変性エチレン系重合体組成物であって、フィッシュアイの発生が低減された変性エチレン系重合体組成物、及びそれを用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン系重合体に特定の化合物を、特定量加えて変性することにより、前記目的を達成出来ることを見出し本発明を完成したものである。
即ち、本発明の要旨は、エチレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(A)100重量部あたりフッ素含有重合体(B)0.005〜2重量部、エチレン性不飽和化合物(C)0.05〜10重量部及び抗酸化剤(D)0.001〜2重量部を含有する変性エチレン共重合体組成物に存する。
【0010】
本発明の他の要旨は、エチレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(A)100重量部あたりフッ素含有重合体(B)0.005〜2重量部、エチレン性不飽和化合物(C)0.05〜10重量部、抗酸化剤(D)0.001〜2重量部及びラジカル発生剤(E)0.01〜10重量部とを溶融混練して得られる変性エチレン系重合体組成物に存する。
本発明のその他の要旨は、上記の変性エチレン系重合体組成物からなる層と、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維から選ばれた少なくとも1種類の層を接着した積層体に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィッシュアイが少なく、しかも金属あるいは極性樹脂との接着性に優れた変性エチレン系重合体組成物、及びそれを用いた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらに限定されるものではない。
(I)変性エチレン系重合体組成物
本発明で使用するエチレン系重合体(A)としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸〔尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとする。〕、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高
密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等の直鎖状低・中密度エチレン−α−オレフィン共重合体、及び、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系樹脂、並びに、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、それら共重合体に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンを更に共重合体させた、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のエチレン系ゴム等が挙げられる。
中でも、本発明においては、分岐状低密度エチレン単独重合体、及び直鎖状低密度エチレン−α−オレフィン共重合体等が好ましい。更に、エチレン系重合体は2種類以上混合して使用する事も可能である。
【0013】
本発明のエチレン系重合体(A)は、変性エチレン系重合体組成物としたときの被着材に対する接着性等の面から、密度が0.85〜0.97g/cmであるのが好ましく、更に0.86〜0.965g/cmであるのが好ましい。また、変性エチレン系重合体組成物の成形性等の面から、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが、0.1〜200g/10分であるのが好ましく、更には0.5〜100g/10分であるのが好ましい。
【0014】
本発明で使用するフッ素含有重合体(B)は、分子中にフッ素原子を含む重合体であり、水素原子に対するフッ素原子の割合(モル比)は1:1以上であることが好ましく、さらに好ましくは1:1.5以上である。また、変性エチレン系重合体組成物の製造時に流動することが好ましく、フッ素ゴムもしくは、融点が250℃以下の熱可塑性フッ素樹脂であることが好ましい。融点が250℃を超えると、変性エチレン系重合体組成物の製造のため溶融混練する際、溶融し難くなり、フィッシュアイ低減の効果が発現しない。熱可塑性フッ素樹脂の融点は更に200℃以下が好ましく、特に150℃以下であることがより好ましい。さらに、フッ素含有重合体の臨界表面張力は、28mN/m以下であることが好ましい。更に、25mN/m以下であることがより好ましい。
【0015】
このようなフッ素ゴムもしくは熱可塑性フッ素樹脂としては、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、2−ヒドロペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテル等の単独重合体、又は共重合体、あるいはこれら単量体とエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0016】
フッ素ゴムとしては、具体的に、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、2−ヒドロペンタフルオロプロピレンから選ばれるコモノマーとの共重合体、ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン、1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、2−ヒドロペンタフルオロプロピレンから選ばれるコモノマーとの3元共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体が挙げられる。
中でも、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
【0017】
熱可塑性フッ素樹脂としては、具体的に、テトラフルオロエチレン単独重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン単独重合体、ビニリデンフルオライド単独重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体等が挙げられる。
中でも、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体等が好ましい。
【0018】
フッ素含有重合体(B)の配合量は、エチレン系重合体(A)100重量部当たり0.005〜2重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは、0.01〜0.5重量部である。フッ素含有重合体が0.005重量部未満ではフィッシュアイの低減効果が十分でない。また、2重量部を超えてもフィッシュアイの低減効果はそれ以上は改良されず、経済性にも不利となり、むしろ透明性等が低下する場合がある。
【0019】
フッ素含有重合体(B)には、前記フッ素含有重合体にポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールやポリカプロラクトン等のポリエステル、タルク、炭酸カルシウム、シリカ等の無機充填剤を配合することができる。
また、フッ素含有重合体(B)は、最終的に配合量が規定の量となれば、前記のエチレン系重合体(A)、又は後述の熱可塑性樹脂でマスターバッチを製造して添加することも可能である。
【0020】
本発明で使用するエチレン性不飽和化合物(C)は、エチレン性不飽和結合を有する限り特に限定されるものではない。例えば、エチレン性不飽和化合物(C)として、カルボキシル基、水酸基或いはアミノ基を有する極性エチレン性不飽和化合物、又はカルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物の無水物を用いた場合は、反応器材質である金属との相互作用大きくフィッシュアイが発生しやすい傾向にあるため、本発明の効果が顕著に現れる。
【0021】
カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、又はこれらの無水物が挙げられる。
水酸基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0022】
アミノ基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、一級、二級又は三級アミノ基含有単量体を用いることができ、具体的には、例えば、アクリル酸モノメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸モノメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。
【0023】
また、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられ、これらは2種以上が併用されても良い。これらの中で、不飽和ジカルボン酸又は、その無水物が接着性の面から好ましく、マレイン酸無水物が特に好ましい。
エチレン性不飽和化合物(C)の配合量は、エチレン系重合体(A)100重量部に対して、0.05〜10重量部である。0.1〜5重量部とするのが特に好ましい。配合量が上記未満では、変性量が不足し接着性等が劣る場合があり、上記の値を超えるとフィッシュアイの量が増加する場合がある。
【0024】
本発明で使用する抗酸化剤(D)としては、フェノール系抗酸化剤、リン系抗酸化剤、イオウ系抗酸化剤が挙げられる。中でもフェノール系抗酸化剤、及びフェノール系抗酸化剤とリン系抗酸化剤もしくはイオウ系抗酸化剤との併用が好ましい。
フェノール系抗酸化剤の具体的な例としては、例えば、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール等のビスフェノール系、1,1,3−トリス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス〔β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のトリ以上のポリフェノール系、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のチオビスフェノール系、アルドール−α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系、p−イソプロポキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系のもの等が挙げられ、中で、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系等が好ましい例として挙げられる。
【0025】
リン系抗酸化剤としては、リンに3個のアルコキシ基が結合した亜リン酸エステルが基本骨格であり、少なくとも一つのアルコキシ基の炭素数が3以上のかさ高い基であることが好ましい。例えば、フェニルジイソアルキル(C1〜C10)ホスファイト、ジフェニルイソアルキル(C1〜C10)ホスファイト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0026】
イオウ系抗酸化剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
これらの抗酸化剤(D)の使用量はエチレン系重合体(A)100重量部に対して、0.001〜2重量部、好ましくは、0.005〜1重量部、さらに好ましくは、0.007〜0.8重量部の範囲である。上記配合量が0.001重量部未満では十分なフィッシ
ュアイの低減効果が得られず、2重量部超過では成型品表面に抗酸化剤がブリードアウトする等の不都合が生じる。
【0027】
本発明で使用するラジカル発生剤(E)としては、有機過酸化物が好ましい。具体的には、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(トルイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等が挙げられ、これらは2種以上が併用されてもよい。1分間半減期温度が140℃以下のものが好ましく、例えばこれらの中で、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、又は、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類が特に好ましい。
【0028】
ラジカル発生剤(E)の使用量はエチレン系重合体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは、0.01〜5重量部、さらに好ましくは、0.01〜1重量部の範囲で配合する。上記配合量が0.01重量部未満では十分なグラフト量が得られず、一方10重量部超過ではエチレン系重合体の架橋等の副反応が起こる場合がある。このラジカル発生剤は、有機溶剤等に溶解して加えることもできる。また、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の無機充填剤を配合したものであってもよい。
【0029】
本発明の変性エチレン系重合体組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲内において、必要に応じて他の任意の配合成分を配合することができる。
任意成分としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、成分(B)以外の滑剤、成分(D)以外の抗酸化剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、離形剤、難燃剤、着色剤、分散剤、充填剤、上記必須成分以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、フィラー等を挙げることができ、こららの中から任意の物を単独で又は併用して用いることができる。
【0030】
変性エチレン系重合体組成物の製造は、通常、前記成分(A)〜(D)を、均一に混合した後、溶融混練することによって行われる。混合装置としては、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等が使用され、混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ
、一軸又は二軸押出機等が使用される。混練温度は通常120〜300℃、好ましくは150〜280℃であり、混練時間は通常0.1〜30分、好ましくは0.5〜10分の時間である。
【0031】
また、成分(C)、(E)は途中添加することも可能であるが、成分(B)は途中添加した場合、目的とする効果が得られないことがあり好ましくない。成分(C)に由来するフィッシュアイを低減するためには、成分(C)の添加の前に、あるいは同時に成分(B)を添加することが好ましい。
好ましい製造の方法は、(1)全成分をブレンドした後、混練する、(2)成分(A)、(B)、(D)をブレンドした後、混練しながら、成分(C)、(E)を途中フィードし、混練する、(3)成分(A)、(D)、(B)、(C)、(E)の順でフィードしながら、混練する、などである。
【0032】
本発明の変性エチレン系重合体組成物は、エチレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(A)100重量部あたりフッ素含有重合体(B)0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは、0.01〜0.5重量部、エチレン性不飽和化合物(C)0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、及び抗酸化剤(D)0.001〜2重量部、好ましくは、0.005〜1重量部、特に好ましくは0.007〜0.8重量部含有するものである。また、30μm厚みのフィルムで測定した際に、フィルム中に存在する長径0.2mm以上のフィッシュアイの個数が30個/g以下、好ましくは20個/g以下、特に好ましくは、10個/g以下である。
【0033】
本発明において、フィルム中に存在するフィッシュアイとは、エチレン性不飽和化合物、例えば、カルボキシル基、水酸基或いはアミノ基を有する極性エチレン性不飽和化合物、又はカルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物の無水物を含有するものである。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、又はこれらの無水物を含有するものである。
フィッシュアイの測定方法としては、一定サイズのフィルムを目視で透視観察し数える方法、レーザーカウンターでフィルム成形中にインラインで測定する方法、CCDカメラによりインライン又はオフラインで測定する方法がある。
【0034】
適正な測定が実施されればいずれの方法でも測定値に差はないが、本発明においては、長径0.2mm以上のフィッシュアイ測定は、30μm厚みのフィルムを用いてCCDカメラ映像の解析により行い、単位重量あたりのフィッシュアイ量(個/g)を求めることを基準とする。
後述の実施例においては、30μm厚みで幅20cmのフィルムをマミヤ・オーピー社製フィルム欠陥検査装置GX70LTを用いて、長径0.2mm以上のフィッシュアイを計測した。検査範囲は長さ200mm、幅120mmであり、計測されたフィッシュアイの個数をこの面積でのフィルム重量で除することにより、単位重量当たりのフィッシュアイ量(個/g)を求めた。
【0035】
本発明の変性エチレン系重合体組成物は、そのまま接着性組成物として積層体の製造に用いることもできるし、また、更に上記の任意の配合成分と混練後、積層体の製造に供することも出来る。特に、後述のポリオレフィンと混練した変性ポリエチレン系重合体組成物として使用することが、該組成物の生産性を上げることができ、また組成物の変性量、フィッシュアイ量等の値を安定させるためにも好ましい。
【0036】
本発明で用いられるオレフィン系重合体は、例えばエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンの単独重合体あるいは、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンから選
ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体あるいは、エチレンと酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸〔尚、ここで、「(メタ)アクリルとは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとする。〕、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等である。
【0037】
炭素数3〜20のα−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1-ヘキセン、4−メチル−
1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等を挙げることができる。
オレフィン系重合体としては、エチレン又はプロピレンの単独重合体あるいは、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンから選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体あるいは、エチレンと酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体であることが好ましく、エチレンの単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選ばれる2種以上の共重合体であることがさらに好ましい。
【0038】
変性エチレン系重合体組成物と上記オレフィン系重合体の重量比は1:99〜99:1の範囲が好ましく、更に2:98〜98:2が好ましい。上記範囲よりオレフィン系重合体の割合が多いと、接着性等の効果が得られない。
上記の変性エチレン系重合体組成物の製造方法は、特に制限されず例えば、公知の方法を利用して製造することができる。例えば、変性エチレン系重合体組成物とオレフィン系重合体、及び必要に応じて添加される他の配合成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドする方法、或いは適当な良溶媒に溶解し混合した後、溶媒を除去する方法等を用いることができる。
【0039】
(II)積層体
本発明の積層体は、前記の変性エチレン系重合体組成物からなる層と、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維から選ばれた少なくとも1種類の層とを接着した積層体である。変性エチレン系重合体組成物は、前述のように接着力が改良されるため、接着性組成物層として用いることが可能である。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン6,ナイロン11、ナイロン12,ナイロン6−6、ナイロン6−10,ナイロン6−12などが挙げられる。木材としては、例えばベニヤ、合板、木質繊維板等が挙げられる。繊維としては、例えば、織布、不織布が挙げられる。金属箔としてはアルミニウム、銅、ステンレス等の箔が挙げられる。
【0041】
前記の中でも、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂もしくは金属箔からなる層を有する積層体は、ガスバリヤー性に優れており、食品保存容器、包装体等として好適に用いられる。
本発明の積層体の形態は、フィルム状、板状、管状、箔状、織布状あるいはビン、容器、射出成形品などが挙げられる。中でもフィルム状、板状である場合に本発明のフィッシュアイの軽減された効果が利用しやすく好適である。厚さ2mm以下、好ましくは1mm以下のフィルム状の積層体であることが特に好ましい。
【0042】
積層体の製造方法としては、予め成形されたフィルム、シートに押出ラミネーション法、ドライラミネーション法、サンドラミネーション法等により他の層を積層する方法、あるいは、多層ダイを用いて押出機で溶融された樹脂をダイス先端で接合させ積層体とする
多層インフレーション法、多層Tダイの共押出成形法等の共押出成形や多層ブロー成形法、射出成形法等の通常の成形法が適用される。本発明の変性エチレン系重合体組成物からなる接着性組成物層とエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂もしくは、ポリエステル系樹脂の層からなる積層体の製造方法は共押出成形が適しており、また、金属箔等との積層はラミネーション法で行うのが好ましい。
【0043】
積層体の層構成は、具体的に、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物や金属泊等からなる層(ガスバリヤ−層)/変性エチレン系重合体組成物層、ガスバリヤ−層/変性エチレン系重合体組成物/ポリオレフィン層、ポリオレフィン層/変性エチレン系重合体組成物/ガスバリヤ−層/変性エチレン系重合体組成物/ポリオレフィン層等が挙げられる。
【0044】
本発明の積層体は、変性エチレン系重合体組成物の接着性、フィッシュアイの低減された優れた表面平滑性を有している。また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、金属箔を構成層として用いた積層体は、良好なガスバリヤー性を有しており、ポリオレフィン系樹脂を用いた積層体は良好な加工性、耐水性、耐薬品性、柔軟性等の特性を有している。更にポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、金属箔、木材を用いた積層体は剛性に優れており、紙、木材及び繊維を用いた積層体は機械的強度に優れている。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例で使用した材料、及び評価方法は以下に示す通りである。
<原材料>
成分(A−1):
直鎖状エチレン−1−ブテン共重合体(密度0.920g/cm、メルトフローレート2.0g/10分(190℃、21.18N荷重))
成分(A−2):
直鎖状エチレン−1−ブテン共重合体(密度0.890g/cm、メルトフローレート35g/10分(190℃、21.18N荷重))
成分(B−1):
ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体とポリカプロラクタム混合物(デュポンダウエラストマー社製「バイトンフリーフローZ200」)
成分(B−2):
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(住友スリーエム社製の「ダイナマーFX−5911X」)
成分C:
マレイン酸無水物
成分D:
t−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂社製「パーブチルD」)
成分E:
テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(チバスペシャリティケミカルズ社製「Irganox 1010」)
オレフィン系重合体1(PO−1):
直鎖状エチレン−1−ブテン共重合体(メルトフローレート2.0g/10分(190℃、21.18N荷重)、日本ポリケム社製、「UF240」)
オレフィン系重合体2(PO−2):
エチレン−プロピレン共重合体ゴム(メルトフローレート0.7g/10分(230℃
、21.18N荷重)、ジェイエスアール社製「EP07Y」)
【0046】
<評価方法>
(1)マレイン酸無水物単位付加量
変性エチレン系重合体組成物ペレットを用い、熱プレス法により厚み約100μmのフィルムを作製した。該フィルムから、アセトン溶媒で1時間、ソックスレー法により未反応マレイン酸無水物を抽出し、その後、真空乾燥機で3時間、減圧乾燥した。そのフィルムの赤外線吸収スペクトル(1780cm-1ピーク)によりマレイン酸無水物単位付加量を評価した。
【0047】
(2)フィッシュアイ量 変性エチレン系重合体組成物(I)のペレットから、成形温度200℃、ブロー比1.4の条件で、厚み30μm、幅20cmのフィルムを空冷インフレーション成形した。このフィルムを2枚重ねて、マミヤ・オーピー社製フィルム欠陥検査装置GX70LTを用い、長径0.2mm以上のフィッシュアイを計測した。検査範囲は長さ200mm、幅120mmであり、計測されたフィッシュアイの個数をこの面積でのフィルム重量で除することで、単位重量当たりのフィッシュアイ量(個/g)を求めた。欠陥検査装置の各種条件には、光量レベル:50(フィルム透過光をカメラ出力電圧の1/2となるように光量を調節する)、暗欠陥検出閾値:75、検査速度:3m/minを用いた。
【0048】
(3)メルトフローレート
変性エチレン系重合体組成物のペレットを用い、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
(4)接着強度
積層フィルムから幅15mm、長さ100mmの試験片を切り出し、予めエチレン−ビニルアルコール共重合体外層と変性エチレン系重合体組成物中間層との間を剥離し、その間の接着強度を、テンシロン引張試験機(東洋ボールドウィン(株)製、STM−T−100)にて、JIS K6854に準拠して剥離速度300mm/分でT形剥離することにより測定した。
【0049】
(5)フィルム外観
積層フィルムの外観を目視観察し、以下に示す基準で判定した。
○;フィッシュアイは殆ど透視されない。
△;フィッシュアイが透視される。
×;かなりのフィッシュアイが透視される。
【0050】
<実施例1>
表1に示す配合量(重量部)にて配合した原材料を、スーパーミキサーで1分間混合した後、二軸押出機(径30mm、L/D42)を用いて、混練温度230℃、スクリュウ回転数300rpm、吐出量15kg/時間の条件で溶融混練させこれをダイよりストランド状に押し出し、カッティングすることにより変性エチレン系重合体組成物を得た。製造開始3時間後から、1時間の間の製品を前述の、マレイン酸無水物単位付加量、フィッシュアイ量、メルトフローレートの評価に供した。
【0051】
更に、得られた変性エチレン系重合体組成物20重量%と、PO−1を60重量%、及びPO−2を20重量%配合した混合物を、一軸押出機(径65mm、L/D24、圧縮比3.5)を用いて、210℃で溶融混練し、変性エチレン系重合体組成物を得た。
続いて、該変性エチレン系重合体組成物と、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、「エバールEPF101A」)、及び直鎖状エチレン−1−ヘキセン共重合体(メルトフローレート2.0g/10分(190℃、21.18N荷重)、日本ポリケム
社製「SF8402」)を、多層インフレーション成形機に供給し、成形温度210℃、ブロー比0.7、フロスト高さ300mm、成形速度30m/分の条件で、水冷インフレーション成形することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体外層(厚み24μm)/変性エチレン系重合体組成物中間層(厚み12μm)/直鎖状エチレン−1−ヘキセン共重合体内層(厚み48μm)の3層積層フィルムを成形し、上記の接着強度、フィルム外観の評価を行った。これら評価の結果を表1に示す。
【0052】
<実施例2、比較例1及び2>
表1に記載の配合量を用いたこと以外は実施例1と同様にして変性エチレン系重合体組成物、及び積層体を得て、同様の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
<実施例3>
表1に記載の配合量を用いたこと以外は実施例1と同様にして変性エチレン系重合体組成物を得た。また、積層体の製造の際、変性エチレン系重合体組成物をそのまま用いたこと以外は実施例1と同様にして積層体を得て、同様の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
<結果の評価>
1)比較例1は、フッ素含有重合体(B)が配合されていないため、変性エチレン系重合体組成物のフィッシュアイ量が多く、積層体のフィルム外観が劣っている。
2)比較例2は、抗酸化剤(D)が配合されていないため、変性エチレン系重合体組成物のフィッシュアイ量が多く、積層体のフィルム外観が劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(A)100重量部あたりフッ素含有重合体(B)0.005〜2重量部、エチレン性不飽和化合物(C)0.05〜10重量部及び抗酸化剤(D)0.001〜2重量部を含有する変性エチレン共重合体組成物。
【請求項2】
エチレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(A)100重量部あたりフッ素含有重合体(B)0.005〜2重量部、エチレン性不飽和化合物(C)0.05〜10重量部、抗酸化剤(D)0.001〜2重量部及びラジカル発生剤(E)0.01〜10重量部とを溶融混練して得られる変性エチレン系重合体組成物。
【請求項3】
エチレン系重合体(A)の密度が、0.85〜0.97g/cmの範囲内である請求項1または2に記載の変性エチレン共重合体組成物。
【請求項4】
エチレン性不飽和化合物(C)が、カルボキシル基、水酸基或いはアミノ基を有する極性エチレン性不飽和化合物、又はカルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物の無水物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項5】
エチレン性不飽和化合物(C)が、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性エチレン系重合体組成物とオレフィン系重合体を含有し、当該変性エチレン系重合体組成物とオレフィン系重合体との重量比が1:99〜99:1である重合体組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性エチレン系重合体組成物からなる層と、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維から選ばれた少なくとも1種類の層とが隣接してなる積層体。





【公開番号】特開2011−84744(P2011−84744A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267416(P2010−267416)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2004−194510(P2004−194510)の分割
【原出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】