説明

変性エポキシ樹脂及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに感光性エレメント

【課題】 感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成する変性エポキシ樹脂を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される構造を含む、変性エポキシ樹脂。


[式中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、Rは水素原子又は不飽和二重結合若しくはカルボキシル基を有する1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。 ただし、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上は不飽和二重結合を有する有機基であり、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上はカルボキル基を有する有機基であり、同一分子中の複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性エポキシ樹脂及びその製造方法、感光性樹脂組成物並びに感光性エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit;以下、「FPC」という。)と呼ばれるフィルム状のプリント配線板が、特にカメラ、磁気ヘッド、携帯電話などの小型機器において用いられている。FPCは、それ自体を折り曲げてもその機能を維持することができるため、上記のような小型機器に収容するプリント配線板として最適である。近年、各種電子機器の更なる小型化及び軽量化の要請が増えており、このような小型機器の配線用にFPCを採用することによって、該小型機器の寸法及び重量減少、製品コストの低減並びに設計の単純化等が実現されてきている。
【0003】
FPCに用いられるソルダーレジストには、通常のプリント配線板に用いられるソルダーレジストと同様に、現像性、高解像度、絶縁性及びはんだ耐熱性等が要求されるが、これらに加えて、FPCを折り曲げた際に破壊されないような可撓性も要求される。
【0004】
現在のところ、FPCに用いられるソルダーレジストとしては、上記各種特性において比較的良好な性能が得られることから、接着剤付きのポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイが最も多く採用されている。しかし、このカバーレイは、型抜きに用いられる金型が非常に高価なものであり、また、カバーレイを積層する際に人手によって位置合わせ及び貼り合わせを行う必要があるために製造コストが大きくなってしまうという問題がある。更には、FPCが電子機器の小型化の要請に応えるべく採用されているにも関わらず、上記カバーレイをソルダーレジストとして用いる場合、微細パターンの形成が困難になってしまうという問題もある。
【0005】
そこで、特定のエポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との付加生成物を無水コハク酸等と反応させることによって得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有する液状のFPC用インキ組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
また、可撓性のあるソルダーレジストを形成することを意図して、ノボラックエポキシ樹脂及びゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂との混合物をエチレン性不飽和カルボン酸と反応させて得られる生成物と、多塩基酸等との反応生成物を含有することを特徴とする液状の感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−207211号公報
【特許文献2】特開平8−134390号公報
【特許文献3】特開平9−5997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されているものを始めとする従来の液状のFPC用インキ組成物又は感光性樹脂組成物は、FPCに要求される可撓性の点で未だ十分に満足できるものではなかった。
【0008】
さらに、特許文献1〜3に記載されているものを始めとした従来の液状のFPC用インキ組成物又は感光性樹脂組成物を用いて基板上に感光性樹脂組成物層を形成すると、露光前のべとつきが大きい、すなわち塗膜性が不十分であり、作業性に劣るという問題があった。従来の感光性樹脂組成物中の変性エポキシ樹脂等の樹脂成分の分子量を上げると、塗膜性の点ではある程度改善されるものの、露光後の現像処理の際に未硬化部分が十分に剥離除去されず、解像度が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成する変性エポキシ樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成する感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表される構造を含む変性エポキシ樹脂である。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、Rは水素原子又は不飽和二重結合若しくはカルボキシル基を有する1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。ただし、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上は不飽和二重結合を有する有機基であり、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上はカルボキル基を有する有機基であり、同一分子中の複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、本発明において、「変性エポキシ樹脂」とは、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)の変性により得ることが可能な樹脂を意味し、その「変性エポキシ樹脂」自体がエポキシ基(グリシジル基)を有しているか否かを問わない。
【0013】
本発明の変性エポキシ樹脂は、エステル基を有する主鎖に対して、不飽和二重結合及びカルボキシル基をそれぞれ有する有機基がペンダント基(側鎖基)として導入された式(1)の構造を含んでいることにより、感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成することが可能となった。
【0014】
不飽和二重結合を有する上記有機基は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により生成した水酸基と、イソシアナト基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基及びエチレンイミノ基からなる群より選ばれる反応性官能基並びに不飽和二重結合を有する不飽和二重結合含有化合物との反応により導入された基であることが好ましい。
【0015】
カルボキシル基を有する上記有機基は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により生成した水酸基と、酸無水物との反応により導入された基であることが好ましい。これにより、アルカリ現像性が更に改善される。
【0016】
また、本発明は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により水酸基を有する重合体を得る第一工程と、該重合体中の水酸基の一部と不飽和二重結合含有化合物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基をペンダント基として有する中間生成物を得る第二工程と、該中間生成物中に残存する水酸基の少なくとも一部と酸無水物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基及びカルボキシル基を有する有機基をペンダント基として有する変性エポキシ樹脂を得る第三工程と、を備える変性エポキシ樹脂の製造方法、並びにこの製造方法によって得られる変性エポキシ樹脂である。
【0017】
このような製造方法によって得られる変性エポキシ樹脂も、エステル基を有する主鎖に対して、不飽和二重結合及びカルボキシル基をそれぞれ有する有機基がペンダント基(側鎖基)として導入された構造を含んでいる。これにより、感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成することが可能となった。
【0018】
上記製造方法において、上記二塩基酸が下記一般式(10)で表されるジカルボン酸であり、水酸基を有する前記重合体が下記一般式(2)で表される構造を含むことが好ましい。これにより、上記効果がより一層顕著に発現する。
【0019】
【化2】

【0020】
式(10)及び(2)中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、同一分子中の複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0021】
上記第一工程においては、9.0以下のpKaを有する三級アミンを重合触媒として用いることが好ましい。これにより、得られる変性エポキシ樹脂がゲル化し難いものとなり、希アルカリ水溶液を用いた現像性が更に改善される。
【0022】
本発明の変性エポキシ樹脂は、重量平均分子量が10000〜70000であることが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、塗膜性及び希アルカリ水溶液による現像性が更に改善される。
【0023】
本発明の変性エポキシ樹脂は、酸価が70〜150mgKOH/gであることが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、希アルカリ水溶液による現像性、硬化後の電気絶縁性、耐薬品性及びめっき耐性等が更に改善される。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記本発明の変性エポキシ樹脂と、(B)1又は2以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含有する。
【0025】
この感光性樹脂組成物によれば、上記本発明の変性エポキシ樹脂を光重合性化合物等と組み合わせて用いたことにより、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成することが可能となった。この感光性樹脂組成物は、特に、フィルム状の基材上に可撓性の樹脂層を形成するためや、フレキシブルプリント配線板における永久マスクの形成のために好適に用いられる。本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成された永久マスクを備えるFPCにおいては、FPCを折り曲げたときの永久マスクの破壊が十分に防止される。
【0026】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に設けられた上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える。
【0027】
この感光性樹脂エレメントによれば、上記本発明の感光性樹脂組成物を用いたことにより、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成することが可能となった。また、この感光性エレメントは、現像性、高解像度、はんだ耐熱性、及び可撓性の全てに優れており、これを用いることにより、高解像、高密度のプリント配線板の効率的な生産が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、感光性樹脂組成物を得るために用いられたときに、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成する変性エポキシ樹脂が提供される。また、本発明の変性エポキシ樹脂は、主鎖中にエステル基を有し、全体として直鎖状の構造を有していることによりゲル化し難いため、希アルカリ水溶液を用いた現像を良好に行うことができる。
【0029】
また、本発明によれば、十分な解像度を維持しながら、塗膜性及び硬化後の可撓性について十分に高いレベルを達成する感光性樹脂組成物が提供される。この感光性樹脂組成物は、FPCのカバーレイのようなフィルム状の基材上に形成される永久マスクとして要求される特性(特に、光感度、解像度、はんだ耐熱性、及び可撓性)を十分満足することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロイル基又はそれに対応するメタクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリロキシ基」はアクリロキシ基又はそれに対応するメタクリロキシ基を意味する。
【0031】
本発明の変性エポキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される構造を含む重合体である。式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示す。変性エポキシ樹脂が、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物及び二塩基酸を原料として用いた後述の製造方法によって得られるものである場合、Rはジグリシジルエーテル型エポキシ化合物に由来する残基に、Rは二塩基酸に由来する残基にそれぞれ相当する2価の有機基である。
【0032】
式(1)において、Rは水素原子又は不飽和二重結合若しくはカルボキシル基を有する1価の有機基を示し、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上は不飽和二重結合を有する有機基であり、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上はカルボキル基を有する有機基である。すなわち、変性エポキシ樹脂は、不飽和二重結合を有する有機基及びカルボキシル基を有する有機基の両方をペンダント基として有する。
【0033】
不飽和二重結合を有する上記有機基は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により生成した水酸基と、イソシアナト基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基及びエチレンイミノ基からなる群より選ばれる反応性官能基並びに不飽和二重結合を有する不飽和二重結合含有化合物との反応により導入された基であることが好ましい。カルボキシル基を有する上記有機基は、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により生成した水酸基と、酸無水物との反応により導入された基であることが好ましい。上記の不飽和二重結合含有化合物及び二塩基酸の詳細については後述する。
【0034】
変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、塗膜性(べとつき難さ)の観点、及び希アルカリ水溶液による現像性の観点から、10000〜70000であることが好ましく、20000〜50000であることがより好ましい。変性エポキシ樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算値として求められる。式(1)におけるnの好適な上限値はR、R、Rの種類等によって適宜変化するが、変性エポキシ樹脂の重量平均分子量が70000となるようなnの値をnの上限値とすることが好ましい。また、変性エポキシ樹脂の重量平均分子量が10000となるようなnの値をnの下限値とすることが好ましい。
【0035】
変性エポキシ樹脂の酸価は、希アルカリ水溶液による現像性の観点、並びに、得られる硬化膜の電気絶縁性、耐薬品性及びめっき耐性等の観点から、70〜150mgKOH/gであることが好ましく、90〜135mgKOH/gであることがより好ましい。
【0036】
変性エポキシ樹脂の酸価は、以下の方法により測定することができる。まず、変性エポキシ樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より下記式:
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
により酸価を算出する。式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfはフェノールフタレインの滴定量(mL)を示し、Wpは変性エポキシ樹脂溶液重量(g)を示し、Iは変性エポキシ樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0037】
以上のような変性エポキシ樹脂は、例えば、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により水酸基を有する重合体を得る第一工程と、該重合体中の水酸基の一部と不飽和二重結合含有化合物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基をペンダント基として有する中間生成物を得る第二工程と、該中間生成物中に残存する水酸基の少なくとも一部と酸無水物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基及びカルボキシル基を有する有機基をペンダント基として有する変性エポキシ樹脂を得る第三工程とを備える製造方法によって、好適に得ることができる。以下に、第一工程、第二工程、第三工程の順に詳細に説明する。
【0038】
(第一工程)
第一工程においては、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により、上記一般式(2)で表される構造を含む、水酸基を有する重合体を生成させる。
【0039】
第一工程においては、グリシジルエーテル基を2個有するエポキシ化合物である、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物を原料として用いる。このジグリシジルエーテル型エポキシ化合物は、例えば、下記一般式(20)で表される。式(20)中のRは、得られる変性エポキシ樹脂において式(1)中のRとなる2価の有機基である。
【0040】
【化3】

【0041】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物は、1以上のフェノキシ基を有することが好ましく、2以上のフェノキシ基を有することがより好ましい。
【0042】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の好適な具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
これらの中でも、耐熱性、耐薬品性に優れ、硬化収縮が比較的小さいことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。すなわち、式(20)において、Rは下記一般式(20a)で表される2価の基であることが好ましい。式(20a)中、mは0以上の整数を示す。
【0044】
【化4】

【0045】
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物として用いることのできる市販品としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルである「エピコート828」、「エピコート1001」及び「エピコート1002」(いずれもジャパンエポキシレジン社製、商品名)、ビスフェノールFジグリシジルエーテルである「エピコート807」(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)、ビスフェノールSジグリシジルエーテルである「EBPS−200」(日本化薬社製、商品名)及び「エピクロンEXA−1514」(大日本インキ化学工業社製、商品名)、ビフェノールジグリシジルエーテルである「YL−6121」(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)、ビキシレノールジグリシジルエーテルである「YX−4000」(ジャパンエポキシレジン社製、商品名)、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルである「ST−2004」及び「ST−2007」(いずれも東都化成社製、商品名)、二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である「ST−5100」及び「ST−5080」(いずれも東都化成社製、商品名)等が挙げられる。
【0046】
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のエポキシ当量は、希アルカリ水溶液による現像性の観点から、160〜3300であることが好ましく、180〜980であることがより好ましい。ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物のエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む化合物のグラム重量)は、JIS K 7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」により測定することができる。
【0047】
第一工程において用いられる二塩基酸としては、上記式(10)で表されるジカルボン酸が好ましい。式(10)中のRは、得られる変性エポキシ樹脂において式(1)中のRとなる2価の有機基である。ジカルボン酸の好適な具体的としては、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの二塩基酸のなかでも、テトラヒドロフタル酸が特に好ましい。すなわち、式(10)中のRは、下記化学式(10a)で表される2価の基であることが好ましい。
【0048】
【化5】

【0049】
第一工程における重合反応は、常法により行うことができる。ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との配合比は、得られる変性エポキシ樹脂の分子量の適正化、希アルカリ水溶液による現像性、貯蔵安定性及び塗膜性の観点から、官能基当量比(カルボキシル基/エポキシ基)で表すと、1.03〜1.30であることが好ましい。
【0050】
上記重合反応においては、重合触媒を用いることが好ましい。重合触媒として好適な触媒としては、例えば、ホスフィン類、アルカリ金属化合物及びアミン類が挙げられる。具体的には、例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムブロマイドなどのアミン類が好適に用いられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
これらの中でも、上記重合反応に用いられる触媒としては、9.0以下のpKaを有する三級アミンが好ましく、7.3以下のpKaを有する三級アミンがより好ましい。このような触媒を用いることにより、式(1)で表される構造を含む変性エポキシ樹脂を、より確実に選択的に合成することができる。また、上述した具体的な触媒のうち、得られる変性エポキシ樹脂中の結合種(エーテル型網目結合及び/又はエステル型網目結合)によるゲル化を防止する観点から、ホスフィン類、アルカリ金属化合物以外のもの、或いは三級アミンであって9.0以下のpKaを有するものを用いると好ましい。
【0052】
重合触媒の種類によっては、カルボキシル基とグリシジル基との反応により生成したエステル結合による鎖状構造の他に、水酸基とグリシジル基との反応により生成するエーテル結合による網目構造や、水酸基とカルボキシル基との反応により生成するエステル結合による網目構造が形成され得る。このような網目構造が多く形成されると、得られる変性エポキシ樹脂がゲル化し易くなる傾向にある。変性エポキシ樹脂がゲル化し易くなると、感光性樹脂組成物層の露光後に、未硬化部分を希アルカリ水溶液等を用いた現像によって除去され難くなる。その結果、解像度が低下し得る。
【0053】
しかし、9.0以下のpKaを有する三級アミンを触媒として用いることにより、上記のような網目構造の形成が抑制されて、反応後の生成物が、一般式(1)で表される構造を多く含み、全体として鎖状構造を有する重合体を主成分とするものとなる。これにより、得られる変性エポキシ樹脂がゲル化し難くなる傾向にあると考えられる。このような変性エポキシ樹脂を用いることにより、形成される感光性樹脂組成物層の未硬化部分は、希アルカリ水溶液等を用いた現像によって、より確実にかつ容易に除去される。
【0054】
触媒の使用量は、重合反応速度の観点、並びに感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の耐熱性及び電食絶縁性等の観点から、ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物及び二塩基酸の合計量100質量部に対して、1〜10質量部であると好ましい。
【0055】
第一工程における反応温度は、重合反応速度の観点及び副反応を防止する観点から、100〜150℃であることが好ましい。
【0056】
(第二工程)
第二工程においては、式(1)中の水酸基と、水酸基と反応する反応性官能基及び不飽和二重結合を有する不飽和二重結合含有化合物との反応により、不飽和二重結合を有するペンダント基が導入された中間生成物を生成させる。不飽和二重結合を導入することにより、感光性樹脂組成物の光感度及びはんだ耐熱性等が向上する。
【0057】
不飽和二重結合含有化合物は、イソシアナト基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基及びエチレンイミノ基からなる群より選ばれる反応性官能基を有することが好ましい。
【0058】
不飽和二重結合含有化合物の具体例としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアナト基を有する化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物、(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基を有する化合物、
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のカルボキシル基を有する化合物、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、4−(1−アジリジニル)ブチル(メタ)アクリレート等のエチレンイミノ基を有する化合物が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、水酸基との反応性の観点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアナト基を有する化合物が好ましい。すなわち、式(1)におけるRのうち1又は2以上が、下記式(1a)で表される1価の有機基であることが好ましい。式(1a)中、R30は水素原子又はメチル基を示す。
【0059】
【化6】

【0060】
不飽和二重結合含有化合物の添加量は、官能基当量比(不飽和二重結合含有化合物中の反応性官能基/第一工程で生成した重合体中の水酸基)で表すと、0.05〜0.5であることが好ましく、0.1〜0.3であることがより好ましい。官能基当量比が0.5以上になると、次の第三工程で酸無水物との反応で必要な側鎖水酸基が減るため、希アルカリ水溶液による現像が困難になる傾向がある。
【0061】
第二工程における反応温度は、反応速度の観点及び副反応を防止する観点から、50〜100℃であることが好ましい。
【0062】
(第三工程)
第三工程においては、第二工程後の中間生成物中に残存する水酸基の少なくとも一部と酸無水物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基及びカルボキシル基を有する有機基をペンダント基として有する変性エポキシ樹脂を生成させる。
【0063】
第三工程において用いられる酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物、及びこれらから誘導される多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。多価カルボン酸無水物としては、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、二塩基性酸無水物を用いると好ましく、ジカルボン酸無水物を用いるとより好ましい。ジカルボン酸無水物を用いた場合、式(1)におけるRのうち1又は2以上が、下記式(1b)で表される1価の有機基となる。式(1b)中、Rはジカルボン酸無水物に由来する2価の有機基を示す。
【0064】
【化7】

【0065】
酸無水物の添加量は、希アルカリ水溶液による現像性の観点、並びに、最終的に得られる硬化膜の耐熱性及び電食絶縁性の観点等から、官能基当量比(酸無水物中の酸無水物基/中間生成物中の水酸基)で表すと、0.6〜1.3であると好ましい。
【0066】
第三工程における反応温度は、反応速度の観点及び副反応を防止する観点から、80〜130℃であることが好ましい。
【0067】
以上の第一、第二及び第三工程の反応は、通常、適当量の溶媒中で行われる。具体的には、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン若しくはメチルシクロヘキサノン等のケトン化合物、トルエン、キシレン若しくはテトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル若しくはトリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル化合物、上記グリコールエーテル化合物の酢酸エステル化合物等のエステル化合物、エチレングリコール若しくはプロピレングリコール等のアルコール化合物、または、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ若しくはソルベントナフサ等の石油系溶剤などが好適に用いられる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記本発明の変性エポキシ樹脂と、(B)1又は2以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含有する。
【0069】
(B)成分としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0071】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)等が挙げられる。2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、「BPE−500」(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)は、「BPE−1300」(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0072】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)等が挙げられる。
【0073】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0074】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH(CH)−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0076】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が拳げられる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0077】
ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0079】
以上挙げた光重合性化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて(B)成分として用いられる。
【0080】
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン;N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物層を備える感光性フィルムの端面からのしみ出しを防止する観点、並びに、はんだ耐熱性及び光感度の観点から、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることがより好ましい。
【0082】
(B)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、10〜70質量部であることが好ましく、35〜55質量部であることがより好ましい。この含有量が10質量部未満では、光感度が低下する傾向があり、70質量部を超えると、露光後の硬化物が脆くなる傾向がある。
【0083】
(C)成分の含有量は、光感度の観点及びはんだ耐熱性の観点から、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。
【0084】
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、メラミン樹脂若しくはイソシアネートのブロック体等の熱硬化成分、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン若しくはロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤若しくはp−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニングリーン若しくはフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム若しくは硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料或いはイメージング剤などを含有させてもよい。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。これらの添加量は、(A)成分と(B)成分との合計量100重量部に対して各々0.01〜20重量部程度とすることが好ましい。また、アクリル系共重合体、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂等の、(A)成分以外のポリマー成分を併用してもよい。
【0085】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液の状態で、感光性エレメントの製造等のために用いられる。
【0086】
以下、本発明の感光性エレメントについて説明する。図1は、本発明による感光性エレメントの一実施形態を示す断面図である。図1に示す感光性エレメント1は、シート状の支持体10と、支持体10上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20の支持体10と反対側の面を被覆している保護フィルム30とで構成されている。
【0087】
感光性樹脂組成物層20は、上述の本発明の感光性樹脂組成物で形成されている。感光性樹脂組成物層20は、例えば、感光性樹脂組成物を上記溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70重量%程度とした溶液を支持体10上に塗布することにより、形成させることができる。感光性樹脂組成物層20の厚みは、用途により異なるが、加熱等により溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。この厚みが10μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると本発明により奏される上述の効果が小さくなりやすく、特に、可撓性及び解像度が低下する傾向にある。
【0088】
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが好適に用いられる。
【0089】
支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体を剥離する際に支持体が破れやすくなる傾向があり、また、100μmを超えると解像度及び可撓性が低下する傾向がある。感光性エレメント1においては、上述したような変性エポキシ樹脂を用いて感光性樹脂組成物層20を形成していることにより、支持体10の厚みが従来のものと比較してより厚い場合、例えば25μm超100μm以下の場合であっても、その可撓性及び解像度を十分に高いレベルに維持することができる。
【0090】
感光性エレメント1は、そのまま保管してもよいし、保護フィルム30を介在させた状態で巻芯にロール状に巻き取って保管してもよい。
【0091】
感光性エレメント1は、回路形成用基板等の基板上にレジストパターンを形成するために好適に用いられる。この場合、レジストパターンは、例えば、感光性エレメント1から保護フィルム30を除去する除去工程と、回路形成用基板上に感光性エレメント1を感光性樹脂組成物層20が回路形成用基板と隣接するように積層する積層工程と、活性光線を感光性樹脂組成物層20の所定部分に照射して、感光性樹脂組成物層20に光硬化部を形成させる露光工程と、光硬化部以外の感光性樹脂組成物層20を除去する現像工程とを備える方法によって、形成される。
【0092】
ここで、上記回路形成用基板は、絶縁層と、絶縁層上に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる)とを備えた基板をいう。
【0093】
積層工程においては、例えば、感光性樹脂組成物層20を、加熱しながら回路形成用基板に圧着する方法により積層する。積層の際の雰囲気は特に制限されないが、密着性及び追従性等の見地から、減圧下で積層することが好ましい。積層される表面は、通常、回路形成用基板の導電体層の面であるが、導電体層以外の面であってもよい。感光性樹脂組成物層20の加熱温度は70〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa以下とすることがより好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光性樹脂組成物層20を上記のように70〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0094】
露光工程においては、感光性樹脂組成物層20の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成せしめる。光硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。この際、支持体10が透明の場合には、支持体10を積層したまま活性光線を照射してもよい。支持体10が不透明の場合には、これを除去した後に感光性樹脂組成物層20に活性光線を照射する。
【0095】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
【0096】
露光後、感光性樹脂組成物層20上に支持体10が存在している場合には支持体10を除去した後、ウエット現像、ドライ現像等で光硬化部以外の感光性樹脂組成物層20を除去することにより現像して、レジストパターンを形成させる(現像工程)。ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。具体的には、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5重量%水溶液)等が好ましい。
【0097】
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、フィルム状の基材上に可撓性の樹脂層を形成するために用いられると好ましく、フィルム状の基材上に形成される永久マスクとして使用されるとより好ましい。例えば、FPCのカバーレイ(永久マスク)として用いる場合は、上記現像工程終了後、FPCのカバーレイとしてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は、その照射量を、例えば0.2〜10J/cm程度の照射量に調整する。レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程加熱することが好ましい。紫外線照射と加熱とをともに施してもよい。この場合、紫外線照射と加熱を同時に行ってもよいし、いずれか一方を行った後、他方を行ってもよい。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
【0098】
このカバーレイは、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、優れた可撓性及び絶縁性等を有するので、FPCの永久マスクとして有効である。
【0099】
このようにしてレジストパターン(カバーレイ)が形成された基板は、その後、LSIなどの部品実装(例えば、はんだ付け)がなされ、そして、カメラ等の電子機器へ装着される。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
(変性エポキシ樹脂の合成)
攪拌機、還流冷却機、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量479g/eq)182.7質量部、シクロヘキサノン64.0質量部及びトルエン30.0質量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、130℃に加熱した状態で攪拌することにより、エポキシ樹脂に含まれる水分の還流脱水を行った。次いで、これにテトラヒドロフタル酸(新日本理化社製)34.9質量部とジメチルパラトルイジン(三星化学社製)3.6質量部を添加し、140℃で4時間保温した後、70℃まで冷却した。70℃保温下、ハイドロキノン0.1質量部と2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)11.8質量部を添加し、同温度で2時間保温した。そして、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製)102.0質量部を添加し、120℃で3時間保温することにより、(A)成分である変性エポキシ樹脂の溶液を得た。その後、該変性エポキシ樹脂の溶液をメチルエチルケトン135.0質量部で希釈した。得られた変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は50000であり、溶液中の固形分は57.0質量%であり、酸価は122mgKOH/gであった。
【0102】
なお、変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は、下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定し、得られたクロマトグラムから標準ポリスチレンの検量線を使用して換算した値とした。
【0103】
GPC条件
ポンプ:日立 L−6000型((株)日立製作所製)
検出器:日立 L−4000型UV((株)日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5 (2本)(日立化成工業(株)製、商品名)
カラムサイズ:8mmφ×300mm
溶離液:DMF/THF=1/1 + リン酸0.06M + 臭化リチウム0.06M
試料濃度:5mg/1mL
注入量:5μL
圧力:35kgf/cm
流量:1.0mL/分
【0104】
(B)成分として用いられるウレタン樹脂(ウレタンオリゴマー)を、以下の方法により調製した。まず、攪拌機、還流冷却機、温度計及び空気導入管を備えたフラスコに空気を導入した後、ポリカーボネートジオール(プラクセルCD205PL、ダイセル化学工業社製、重量平均分子量500、商品名)196.8質量部、ジメチロールブタン酸(三菱化学社製)58.3質量部、ジエチレングリコール(日曹丸善ケミカル社製)37.6質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(三菱化学社製)148.1質量部、p−メトキシフェノール(和光純薬工業社製)0.55質量部、ジブチル錫ラウレート(東京ファインケミカル社製、L101)0.55質量部及びメチルエチルケトン110.2質量部を仕込み、空気気流下で65℃まで攪拌しながら昇温した。
【0105】
次いで、滴下容器にトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(デグサジャパン社製、商品名「VESTANAT TMDI」)305.9質量部を仕込み、反応容器温度を65±3℃に保持した状態で、3時間かけて反応容器に均一に滴下した。滴下終了後、滴下容器をメチルエチルケトン76.5質量部を用いて洗浄し、洗浄液は反応容器にそのまま投入した。更に攪拌しながら2時間保温した後、反応容器温度を75℃まで昇温した。
【0106】
その後、赤外分光光度計を用いてイソシアネート基を示す赤外吸収スペクトルのピークの消失を確認できるまで、攪拌しながら75±3℃で保温を続けた。75℃に昇温後、およそ6〜8時間程度でイソシアネート基に基づく赤外吸収スペクトルのピークは消失した。このピークの消失を確認した後、反応容器温度を60℃まで降温し、メタノール9.3質量部を添加し、60±3℃で30分保温した。そして、メチルエチルケトンを56.4質量部添加し、アクリレート基を有するウレタン樹脂を含有する透明な溶液を得た。溶液中のウレタン樹脂の固形分は75.6%、酸価は22.2mgKOH/g、粘度は1810cPであった。
【0107】
(実施例1及び2、比較例1及び2)
上記で準備した変性エポキシ樹脂及びウレタン樹脂と、下記各成分とを、表1に示す固形分の配合比(質量基準)で混合することにより、感光性樹脂組成物溶液を得た。
比較用樹脂:
・酸変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート(65質量%カルビトールアセテート/ソルベントナフサ溶液、日本化薬社製、商品名「ZAR−1035」)
(B)成分:
・ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名「BPE−10」)
(C)成分:
・2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−369」)
その他:
・ヘキサメチレンジイソシアネートをベースイソシアネートとするイソシアヌレート体のメチルエチルケトンオキシムブロック体(75質量%メチルエチルケトン溶液、住化バイエルウレタン社製、商品名「BL3175」)
・フタロシアニンブルー
・メチルエチルケトン
【0108】
【表1】

【0109】
(評価用積層体の作製)
上記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物溶液を、それぞれ、支持層である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製、商品名「G2−16」)上に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成し、それを熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
【0110】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持層と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、商品名「NF−13」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメントを得た。
【0111】
得られた感光性エレメントを、フレキシブルプリント配線板用基板上に連続式真空ラミネータ(日立化成工業社製、商品名「HLM−V570」)を用いて、ヒートシュー温度100℃、ラミネート速度0.5m/分、気圧4000Pa以下、圧着圧力0.3MPaの条件の下、ポリエチレンフィルムを剥離しつつ積層して、評価用積層体を得た。上記フレキシブルプリント配線板用基板としては、18μm厚の銅箔をポリイミド基材に積層したフレキシブルプリント配線板用基板(ニッカン工業社製、商品名「F30VC1」)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥したものを用いた。
【0112】
[光感度の評価]
上記評価用積層体上に、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させ、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。続いて、常温で一時間静置し、PETフィルムを剥離した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。光感度を評価する数値として、上記エネルギー量を用いた。この数値が低いほど、光感度が高いことを示す。結果を表2に示す。
【0113】
[解像度の評価]
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを評価用積層体上に密着させ、上述した露光機を用いて、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。続いて、常温で一時間静置し、PETフィルムを剥離した後、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。ここで、解像度は、現像処理によって矩形のレジスト形状が得られたライン幅間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。この値が小さいほど、解像度に優れていることを示す。結果を表2に示す。
【0114】
[塗膜性の評価]
上記評価用積層体に対し、露光を行わずに、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、その塗膜表面に指を軽く押し付け、指に対する張り付き程度を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
「A」:指に対する張り付きが認められない、又は、ほとんど認められない。
「B」:指に対する張り付きが認められる。
【0115】
(評価用FPCの作製)
上記と同様にして得た評価用積層体上に、ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、カバーレイの信頼性評価用ネガとして配線パターンを有するフォトツールとを密着させ、上述した露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温で1時間静置した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、光感度評価の場合と同様の現像液及び現像条件でスプレー現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。続いて、オーク製作所社製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、カバーレイを形成した評価用FPCを得た。
【0116】
[はんだ耐熱性の評価]
上記評価用FPCに、ロジン系フラックス(タムラ化研社製、商品名「MH−820V」)を塗布した後、260℃のはんだ浴中に30秒間浸漬してはんだ処理を行った。はんだめっきを施されたFPC上のカバーレイにおけるクラック発生状況並びに基板からのカバーレイの浮き程度及び剥離程度を目視により観察し、はんだ耐熱性を次の基準で評価した。結果を表2に示す。
「A」:カバーレイにおけるクラックの発生が認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないもの。
「B」:カバーレイにおけるクラックの発生、カバーレイの浮き及び剥離のいずれかが認められるもの。
【0117】
[耐折性(可撓性)の評価]
上記評価用FPCを、ハゼ折りにより180°折り曲げ、その際のカバーレイにおけるクラック発生状況を目視により観察し、耐折性を次の基準で評価した。結果を表2に示す。
「A」:カバーレイにクラックが認められないもの。
「B」:カバーレイにクラックが認められるもの。
【0118】
【表2】

【0119】
表2から明らかなように、実施例1及び2の感光性樹脂組成物を用いた積層体は、光感度、解像度及び塗膜性に十分優れていることが分かった。また、これらの積層体を用いて得られたFPCは、はんだ耐熱性及び可撓性に十分優れていることが確認された。これに対して、比較例1、2の場合、感光性樹脂組成物の塗膜性や、FPCの可撓性の点で十分なものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明による感光性エレメントの一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1…感光性エレメント、10…支持体、20…感光性樹脂層、30…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を含む、変性エポキシ樹脂。
【化1】


[式中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、Rは水素原子又は不飽和二重結合若しくはカルボキシル基を有する1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。
ただし、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上は不飽和二重結合を有する有機基であり、同一分子中の複数のRのうち1又は2以上はカルボキル基を有する有機基であり、同一分子中の複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
不飽和二重結合を有する前記有機基が、
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により生成した水酸基と、
イソシアナト基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基及びエチレンイミノ基からなる群より選ばれる反応性官能基並びに不飽和二重結合を有する不飽和二重結合含有化合物との反応により導入された基である、請求項1記載の変性エポキシ樹脂。
【請求項3】
カルボキシル基を有する前記有機基が、
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により生成した水酸基と、
酸無水物との反応により導入された基である、請求項1又は2記載の変性エポキシ樹脂。
【請求項4】
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により水酸基を有する重合体を得る第一工程と、
前記重合体中の水酸基の一部と不飽和二重結合含有化合物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基をペンダント基として有する中間生成物を得る第二工程と、
前記中間生成物中に残存する水酸基の少なくとも一部と酸無水物との反応により、不飽和二重結合を有する前記有機基及びカルボキシル基を有する有機基をペンダント基として有する変性エポキシ樹脂を得る第三工程と、
を備える製造方法によって得られる、変性エポキシ樹脂。
【請求項5】
前記二塩基酸が下記一般式(10)で表されるジカルボン酸であり、水酸基を有する前記重合体が下記一般式(2)で表される構造を含む、請求項4記載の変性エポキシ樹脂。
【化2】


[式(10)及び(2)中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、同一分子中の複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項6】
重量平均分子量が10000〜70000である、請求項1〜5の何れか一項に記載の変性エポキシ樹脂。
【請求項7】
酸価が70〜150mgKOH/gである、請求項1〜6の何れか一項に記載の変性エポキシ樹脂。
【請求項8】
ジグリシジルエーテル型エポキシ化合物と二塩基酸との重合反応により水酸基を有する重合体を得る第一工程と、
前記重合体中の水酸基の一部と不飽和二重結合含有化合物との反応により、不飽和二重結合を有する有機基をペンダント基として有する中間生成物を得る第二工程と、
前記中間生成物中に残存する水酸基の少なくとも一部と酸無水物との反応により、不飽和二重結合を有する前記有機基及びカルボキシル基を有する有機基をペンダント基として有する変性エポキシ樹脂を得る第三工程と、
を備える変性エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記二塩基酸が下記一般式(10)で表されるジカルボン酸であり、前記重合体が下記一般式(2)で表される構造を含む、請求項8記載の変性エポキシ樹脂の製造方法。
【化3】


[式中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、同一分子中の複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項10】
前記第一工程において、9.0以下のpKaを有する三級アミンを重合触媒として用いる、請求項8又は9記載の変性エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項11】
(A)請求項1〜7の何れか一項に記載の変性エポキシ樹脂と、
(B)1又は2以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項12】
フィルム状の基材上に可撓性の樹脂層を形成するために用いられる、請求項11記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
フレキシブルプリント配線板における永久マスクの形成のために用いられる、請求項11記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項11〜13の何れか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。

【図1】
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【公開番号】特開2007−23131(P2007−23131A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205887(P2005−205887)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】