説明

外壁構造、外壁パネルおよび外壁の施工方法

【課題】地震等の外力が加わっても、表面仕上げ材であるタイル材が損傷し難く、良好な外観意匠性を長期間にわたって維持できるようにする。
【解決手段】建築物の屋外に面する外壁の構造であって、外壁の屋外側に配置され板状をなす外壁下地材50と、外壁下地材50の外面に格子状に配置され接着されてなる桟材52と、桟材52を介して外壁下地材50の外面を覆い、桟材52に接着されてなるタイル材10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁構造、外壁パネルおよび外壁の施工方法に関し、詳しくは、住宅等の建築物において、屋外側に面する外壁の構造と、このような外壁を構築するのに使用される外壁パネルと、このような外壁を施工する方法とを対象にしている。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物の外壁をタイル貼りによって仕上げる技術は、外観意匠性に優れた仕上がりが得られるとして、広く採用されている。
従来のタイル仕上げは、建築物のモルタル壁やセメント板などの下地ボードを施工したあと、この平坦な下地面に、モルタルを団子状に配置し、その上にタイル片を貼り付けることが行われている。タイル片同士の継目に生じる目地隙間には、モルタルなどからなる目地剤やゴムなどからなる目地材を埋め込んで、目地の防水性、水密性を確保する。
特許文献1には、セメント硬化物などからなり概略矩形板状をなすタイル材の側辺に、合いじゃくり継手を設けて、前後左右の面方向にタイル材を連結した状態で施工する技術が示されている。合いじゃくり継手を構成するタイル材の側辺に設けられた貫通孔にネジ釘を挿入し、ネジ釘を外壁下地材にねじ込んで、タイル材を外壁下地材に固定している。この技術では、外壁の上下で隣接して配置されたタイル材同士が、合いじゃくり継手の部分で表と裏とで重ね合わされて、継目における防水性や水密性を果たす。合いじゃくり継手の構造を工夫することで、水密性を向上させている。
【0003】
本件特許出願人の一部が先に特許出願した特願2003−405759号には、タイル材の側辺に設けられたネジ釘取付用の貫通孔の裏面側に、取付孔を囲む凹部を設けておき、この凹部にコーキング剤を充填しておくことで、取付孔の部分における水密性を向上させる技術が提案されている。
下地板にタイルを貼り付けただけでは、外壁の断熱性が不足することがある。そこで、下地板とタイルとの間に、グラスウールや発泡ポリスチレンボードなどによる断熱材層を設ける技術が提案されている。
特許文献2には、矩形板状のタイルの裏面全体に発泡スチロールなどの断熱材を貼り付けておく技術が示されている。断熱材は、タイルの周縁からわずかに突出させておき、隣接して配置されるタイル同士の隙間までを断熱材で確実に塞げるようにしている。
【特許文献1】特開2003−268946号公報
【特許文献2】特開2003−301585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるタイル仕上げの外壁構造では、外壁の構造強度や剛性は、外壁の内部構造を構成するコンクリート躯体や鋼材骨組、耐力板材などが負担し、仕上げ材であるタイル材は、外壁の構造強度には実質的に関与していなかった。外壁に構造部材とタイル材とは強固に一体接合されていなかった。
そのため、地震等の外力によって外壁の構造部材が変形したり歪みを生じたりすると、タイル材は構造部材の変形に追随することができない。建築物は、自重や構造部材の経年変化などの影響で、経時的に変形することも知られている。このような構造部材の経時的な変形にも、タイル材は追随することができない。タイル材が剥がれたり、割れたり、タイル材同士の目地隙間を埋めるモルタルにヒビが入ったりする。外壁の表面外観が損なわれてしまう。タイル材や目地部材の隙間から雨水などが侵入するようになる。
【0005】
特許文献1のように、タイル材をネジ釘で外壁下地材に固定する形態では、かなり接合強度は高くなるが、それでも、ネジ釘による点位置での固定でしかないので、外壁下地材との一体性は十分ではない。
本発明の課題は、タイル仕上げを行う外壁構造における前記問題点を解消し、地震等の外力が加わっても、表面仕上げ材であるタイル材が損傷し難く、良好な外観意匠性を長期間にわたって維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる外壁構造は、建築物の屋外に面する外壁の構造であって、前記外壁の屋外側に配置され板状をなす外壁下地材と、前記外壁下地材の外面に格子状に配置され接着されてなる桟材と、前記桟材を介して前記外壁下地材の外面を覆い、前記桟材に接着されてなるタイル材とを備える。
〔建築物の外壁面〕
本発明が適用される建築物は、一般の住宅や集合住宅、オフィスビル、工場、その他の通常の各種建築物である。
建築物の外壁面は、側壁のほか、軒下の天井面や柱状構造の外周面など、建築物の外面に露出する構造部分の表面を含む。
【0007】
〔外壁下地材〕
壁の屋外側に配置され板状をなす。タイル材を固定するための下地になる。
外壁下地材としては、合板、窯業系外壁下地材料など、通常の外壁施工に使用される下地材と同様の板状材料が使用される。外壁下地材は、コンクリート躯体や鉄骨構造、柱、梁などの構造部材に対して強固に一体接合される。外壁下地材を構造部材に接合する手段は、十分に狭い間隔で釘やネジ釘を打ち付けたり、接着剤で強力に接着したり、ネジ釘と接着を併用したりすることができる。
〔桟材〕
外壁下地材の外面に格子状に配置され接着される。
【0008】
通常の建築構造において、表面に建材を貼り付けるために使用されている桟材と同様の材料や構造、施工方法が適用できる。
桟材の材料は、一般的には木材が使用される。合成木材や合成樹脂材、金属材を使用することも可能である。桟材の形状は、外壁下地材およびタイル材への接着面積が十分に確保でき、取り扱い易い形状が好ましい。通常は、断面正方形あるいは長方形をなす。台形状や円の両端を削ぎ落とした形状なども採用できる。
桟材の寸法は、外壁下地材およびタイル材と寸法や配置構造、要求性能などの条件に合せて設定される。通常、幅1〜10cm、厚さ3〜30mmの範囲に設定できる。
【0009】
桟材の配置は、一般的には、垂直方向と水平方向とに縦横に直線的に延びて互いに交差する格子状をなす。桟材が斜め方向に延びていたり、曲線状の桟材を組み合わせたりすることもできる。
桟材の格子間隔は、表面に配置されるタイル材の寸法形状に対応して設定される。通常、直線格子状に配置された桟材のピッチ間隔を、15〜900cmの範囲に設定できる。
桟材の格子空間は、外壁の断熱性を高める機能や、タイル材から放出される水分を一時的に収容する空間としても機能する。
〔外壁用タイル材〕
桟材を介して外壁下地材の外面を覆い、桟材に接着される。
【0010】
基本的には、通常の外壁タイル仕上げ用のタイル材と同様の材料や製造方法、構造および寸法形状が採用できる。
タイル材には、陶磁器材料などを成形して焼成した焼成タイルと、セメント系材料を成形して水和硬化させたりした非焼成タイルとがある。何れも使用できる。
セメント系材料からなるタイルで、比較的に面積の大きなものは、サイディング材と呼ばれることもある。セメント系材料として、漆喰や石膏も使用できる。セメントに繊維材料を混合して、強度などを向上させたものもある。タイル材料に、調湿機能を有する珪質頁岩などの調湿材を配合しておくことができる。タイル材料として通気性材料などの各種機能を有する材料も使用できる。
【0011】
セメント系材料として、比重が1.3以上の繊維配合セメント硬化物が使用できる。繊維配合セメント硬化物は、硬化材料に、セメントや骨材などに加えて、ガラス繊維や合成樹脂繊維などの繊維を混入しており、硬化物として耐久性に優れたものとなる。セメント硬化物の比重が大きいほど、吸水し難く、凍害に強くなる。
タイル材の表面に、ガラス質の釉薬をかけて焼成硬化させたものや、塗料や樹脂材料を塗工して焼付などで硬化させたものなど、タイル材の本体部分と表面の化粧層とからなるものも使用できる。表面化粧層として、防水性のある材料を使用することができる。表面化粧層として、通気性を有するものや透湿性を有するものも使用できる。
【0012】
タイル材の全体形状は、基本的には、通常の外壁タイルと同様の形状が採用できる。具体的には、全体が概略矩形板状をなす。正方形および長方形の何れでもよい。六角形などの多角形でもよい。外周辺の一部に凹凸を設けたり、一部を曲線状にしたりすることも可能である。全体の寸法としては、1辺が15〜900cmで、厚みが5〜25mmの範囲に設定することができる。
タイル材の表面に、凹凸模様や浮彫り図案などを形成しておけば、外観意匠性が高まる。タイル材の裏面に、通気空間を設けたり、排水空間を設けたりすることもできる。タイル材の裏面のうち、裏側凸部の存在する側辺を除く個所を凹ませておけば、内設断熱材の収容空間を広く取れ、前記した通気空間や排水空間として利用できるとともに、製造材料の節約、重量軽減などを図ることができる。
【0013】
本発明では、タイル材が外壁の構造強度の一部を負担することになるので、機械的強度に優れたものが好ましい。具体的には、平面引張強度1〜4N/cmのタイル材が好ましい。
〔接着剤〕
外壁下地材に桟材を接着し、桟材にタイル材を接着する機能を果たす。
基本的には通常の建築分野で使用されている接着剤が使用できる。目的とする機能を達成するのに必要なヤング率や強度を備えていることが望ましい。具体的には、変成シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などが挙げられる。
【0014】
外装下地材に桟材を接着する接着剤と、桟材にタイル材と接着する接着剤とは、同じ接着剤を兼用することもできるし、それぞれの要求性能に合わせて異なる種類や特性の接着剤を使用することもできる。
強力な接合を果たすために、剪断接着強度1N/cm以上であるものが好ましい。剪断接着強度2N/cm以上がより好ましい。経時的に強度が低下し難い、長期耐久性を有するものが望ましい。
接着剤の塗工手段や塗工条件は、通常の接着剤と同様の技術範囲内で、使用する接着剤にとって適切な技術を適用すればよい。
【0015】
接着剤の厚みは、十分な接合強度を発現させるためには、厚過ぎても薄過ぎても不適当であり、適切な厚み範囲がある。通常、塗工厚みを0.5〜3mmに設定する。
〔合いじゃくり構造を有するタイル材〕
タイル材は、タイル材同士を連結できるようにしておくことができる。このような連結構造を有しているタイル材は、タイル材同士の間の目地構造を無くすこともできる。
具体的には、タイル材の側辺に、タイル材同士を前後左右の面方向に連結するための継手構造を備えておくことができる。タイル材の対向する側辺に、互いに連結可能な一対の連結構造を設ける。連結構造として、合いじゃくり構造が採用される。
【0016】
合いじゃくり構造は、建築技術において、柱材や板材の連結構造として知られている。連結する部材の側辺同士に、厚み方向の途中までの切り欠きを表裏で逆に加工して、表側凸部と裏側凸部とを配置する。連結する部材の表側凸部と裏側凸部とを重ね合わせて連結する。
矩形状のタイル材の場合、隣接する2側辺に表側凸部が配置されると、残りの隣接する2側辺には裏側凸部が配置されることになる。表側凸部と裏側凸部とが、互いに対向する側辺に配置される。
合いじゃくり構造の細部形状や寸法などは、通常の合いじゃくり構造の場合と同様に、種々の変更が可能である。
【0017】
通常の合いじゃくり構造では、対向する側辺の表側凸部と裏側凸部とは、完全な対称形状で寸法も同じに設定されることが多いが、表側凸部と裏側凸部との寸法を違えることもできる。
表側凸部および裏側凸部の突出長さは、7〜50mm程度の範囲に設定できる。重ね合わせ距離を十分に確保することで、防水機能や連結強度を高めることができる。
裏側凸部の突出長L2を表側凸部の突出長L1よりも長くしておくと、敷設施工されたタイル材の表面に目地隙間を構成することができる。その結果、外観意匠性が高まるとともに、隣接タイル材間の不陸や傾き、ズレなどが目立ち難くなる。裏側凸部の突出長L2と表側凸部の突出長L1との差L2−L1=7〜50mmに設定することができる。
【0018】
表側凸部と裏側凸部との厚みは、同じに設定しておくことができるが、違っていても構わない。但し、表側凸部および裏側凸部の何れもが十分な機械的強度を維持できる程度の厚みに設定しておく。具体的には、4〜20mmの厚みに設定できる。
このような合いじゃくり構造を有するタイル材の場合、桟材に対するタイル材の接着は、タイル材の表側凸部を除いた全面を接着面として利用できる。格子状に配置された桟材にタイル材を接着するので、タイル材の外周辺のうち、表側凸部を有する辺を除いた辺で、裏側凸部の裏面を接着剤で桟材に接着することができる。
前記した特許文献1には、裏側凸部の端面を傾斜面にし、裏側凸部の傾斜端面が当接する相手側のタイル材の側辺も、裏側凸部の傾斜端面に対応する傾斜面にしておく技術が示されている。このような傾斜端面を採用することで、タイル材を連結配置したときに、当接面における接合性や防水機能を高めることができる。表側凸部の端面を傾斜面にすることもできる。
【0019】
〔内設断熱材〕
タイル材の裏面側で表側凸部および裏側凸部よりも内側に、内設断熱材を配置しておくことができる。内設断熱材の個所では、タイル材を桟材に接着しない。
内設断熱材の材料は、通常の建築用の断熱材料が使用できる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂の発泡体が挙げられる。グラスウールなどの繊維状断熱材も使用できる。複数の材料を組み合わせた複合断熱材も使用できる。
内設断熱材は、タイル材の裏面側のうち、表側凸部および裏側凸部よりも内側の全面に設けることもできるし、一部に設けることもできる。タイル材を桟材に接着するための接着面には内設断熱材が存在しないようにしておく。
【0020】
内設断熱材の側端面とそれに対面する裏側凸部の内側端面との間、および、タイル材の施工時に内設断熱材の側端面と対面する別のタイル材における裏側凸部の内側端面との間に、3〜30mmの隙間Gを有することができる。これによって、施工状態で、内設断熱材の周囲に、タイル材の裏面が確実に露出する部分ができる。この露出部分が、タイル材からの水分放出作用を向上させる。
内設断熱材をタイル材の裏面に断続的に設けたり、内設断熱材の一部に貫通部分を設けたりすることで、タイル材の裏面側が露出する部分を構成することもできる。
内設断熱材の厚さは、断熱性を向上するには厚いほうがよい。タイル材の全厚みによる制約もあるが、通常、7〜30mmの範囲に設定できる。内設断熱材の場所によって厚みが違う個所があっても構わない。後述する通気空間を設ける場合は、その分だけ、内設断熱材の厚みを薄くしておくことができる。
【0021】
〔通気空間〕
タイル材の対向する側辺の間を、裏面側において面方向に貫通する通気空間を設けておくことができる。タイル材の裏面側に浸入したり、タイル材から放出された水分を通気とともに排除したりする機能を有する。当然、通気空間では、タイル材を桟材に接着しないでおく。
通気空間は、タイル材の施工状態で、上下および左右の一方向あるいは両方向で貫通するように配置される。
タイル材の側辺のうち、裏側凸部が存在する個所では、裏側凸部の裏面側に凹溝や切り欠きを設けることで通気空間を構成できる。表側凸部が存在する個所では、もともと裏面側が解放されているので、特別な構造を設けなくても通気空間を構成できる。内設断熱材が存在する個所では、内設断熱材の裏面側に通気空間を配置することができる。内設断熱材に面方向に貫通する凹溝や孔、切り欠きなどを設けることもできる。通気空間は、タイル材の1方向に1本だけを設けてもよいし、1方向に複数本の通気空間を設けることもできる。
【0022】
通気空間の大きさは、目的とする機能が発揮できれば良い。通常は、比較的に狭いものでも充分である。例えば、内設断熱材の裏面側に通気空間を配置する場合、内設断熱材の厚みが薄くなって断熱性が低下しない程度に、通気空間の厚みを設定する。具体的には、通気空間の厚みを2〜10mmに設定できる。通気空間の幅、タイル材の幅によっても異なるが、通常、2〜20mmの範囲に設定できる。
〔外壁パネル〕
本発明の外壁構造を、予め製造されて建築物に嵌め込むようにして施工される外壁パネルに適用することができる。
【0023】
外壁パネルは、外壁を構成する構造部材から内装部材、外装部材、壁内部の断熱構造などを含めて、外壁を構成する材料層や部材の一部または全てを、工場などで予め一体的に組み立て接合して構成される。建築物の外壁を構成する場所に配置され、土台や柱、梁などにボルト締結などで固定されることで、外壁を構成する。柱や梁を使用せず、外壁パネル同士を接合することだけで、外壁の構造強度を発揮させることもできる。
外壁パネルを構成する基本の部材として、外壁パネルの外周形状に対応する鋼枠がある。鋼枠の両面に外装部材および内装部材が取り付けられる。そのうち、外装部材として、外壁パネルの施工時に屋外側に面する鋼枠の表面に配置され板状をなす外壁下地材と、外壁下地材の外面に格子状に配置され接着されてなる桟材と、桟材を介して外壁下地材の外面を覆い、桟材に接着されてなるタイル材とを備えておくことができる。外壁パネルの施工時に屋内側に面する鋼枠の表面には、内装材が設けられる。鋼枠の内部には断熱材層が設けられる。
【0024】
内装材および断熱材層は、通常の外壁パネルと同様の材料あるいは構造が適用される。
〔外壁の施工方法〕
外壁構造を構築するための施工方法として、以下の方法が採用できる。
外壁の屋外側に板状をなす外壁下地材を施工する工程(a)と、外壁下地材の外面に桟材を格子状に配置し接着する工程(b)と、桟材を介して外壁下地材の外面を覆ってタイル材を配置し、タイル材の裏面を桟材に接着する工程(c)とを含む。
基本的には、通常のタイル材による外壁の仕上げ工程と同様の手順および機器類を用いて施工できる。
【0025】
外壁下地材の施工は、通常の建築施工と同様である。
桟材の施工は、外壁下地材の表面に格子状に接着剤を塗工するか、格子状に配置する桟材の裏面に接着剤を塗工するか、両方に接着剤を塗工するかの何れかで、外壁下地材と桟材とを接着すればよい。
桟材の表面にタイル材を配置し接着するときは、タイル材の裏面のうち十分な面積が桟材の表面に当接するようにして、タイル材を配置する。通常は、タイル材の外周辺を桟材に当接させて接着する。タイル材の外周辺のうち、異なる複数の外周辺で接着すれば、タイル材を面方向に確実に接着できる。
【0026】
前記した合いじゃくり連結構造を有するタイル材の場合、裏側凸部が上辺側に配置される姿勢で、外壁面に当接して配置する。下辺側には表側凸部が配置されることになる。裏側凸部の裏面を桟材に当接させて接着する。このようにして一つのタイル材が施工されたあと、次に施工するタイル材は、先に固定されたタイル材の上方側に配置する。次のタイル材は、その下辺側に向けた表側凸部を、先のタイル材の裏側凸部に重ね合わせるように配置する。勿論、タイル材の裏側凸部が上辺側に配置される姿勢になる。後で施工するタイル材の表側凸部の裏面を、先に施工された裏側凸部の表面に接着することができる。このような作業工程を繰り返すことで、外壁面の下から上へとタイル材が施工される。なお、外壁面の水平方向においても、先に施工されたタイル材の裏側凸部に、次に施工されるタイル材の表側凸部を重ね合わせるようにして施工していく。タイル材が、面方向の全体に合いじゃくり継手によって連結された状態で、桟材に接着されることになる。
【0027】
〔外壁構造〕
本発明のタイル材を用い、前記した施工方法を採用することで、建築物の外壁構造が構築できる。
外壁面にタイル材が並べて施工された外壁構造では、タイル材と桟材と外壁下地材とが互いに強固に接着されて、一体化された剛体構造を構成することになる。外壁構造に加わる外力に対して、外壁下地材、桟材およびタイル材の全体が一体的に抵抗力を示す。外力によって変形するときも、外壁下地材、桟材およびタイル材が一体的に変形する。
タイル材として、前記した合いじゃくり継手構造を備えている場合は、以下の機能も果たす。
【0028】
外壁面を落下する雨水などは、外壁面の上下方向に連結されたタイル材同士における表側凸部と裏側凸部との当接個所の隙間までは浸入できても、その奥では、裏側凸部が垂直に立ち上がっているので、それ以上には浸入し難い。外壁面の左右方向に連結されたタイル同士でも、表側凸部と裏側凸部とによる連結構造で、水の浸入が良好に阻止される。但し、タイル材と雨水などが接触する個所では、タイル材に水が吸収されることがある。
タイル材は、裏側凸部の裏面が桟材に接着されているので、この接着個所を超えて水が浸入することが阻止される。隣接するタイル材同士を接着していれば、タイル材同士の隙間から内部に水が浸入することも遮断される。
【0029】
タイル材の裏面側に内設断熱材を設けていれば、外壁の断熱性を高める。しかも、内設断熱材を、裏側凸部と表側凸部からなる合いじゃくり継手の内側に配置しておけば、タイル材の裏面には、内設断熱材で覆われず、タイル材自体が露出する個所を設けることができる。このタイル材の裏面側への露出個所からタイル材の裏面側に、タイル材に吸収された水分が放出されることによって、タイル材が水を吸収したままになり難い。
外壁構造のうち、タイル材が取り付けられる外壁下地材などよりも屋内側の構造については、特に限定されず、通常の建築物における外壁構造が採用できる。例えば、外装下地層の屋内側には、断熱材層や内装材層を備えることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる外壁構造は、仕上げ面を構成するタイル材が、外壁下地材に対して格子状に配置された桟材を介して取り付けられるとともに、外壁下地材に対する桟材の取り付け、桟材に対するタイル材の取り付けの何れをも、接着によって互いの固定が果たされている。
その結果、外壁の本来の骨組構造や躯体構造に加えて、外壁下地材、桟材およびタイル材を含めた外壁の全体構造が、一体となって耐力を負担することになり、外壁の構造強度が向上する。構造強度を負担させるための構造部材の厚みや太さを低減することができる。
【0031】
しかも、外壁が変形するときには、タイル材を含めた外壁構造の全体が一体的に変形することになる。これによって、外壁の内部構造とタイル材とが別個に変形することによって生じる歪みで、タイル材あるいはタイル材の隙間を埋める目地材が割れたりヒビが入ったりすることが防止できる。ネジ釘による固定のように、経時的に緩みが生じたり、金具の腐食によって固定が弱くなったりする問題も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1〜7に示す実施形態は、住宅の外壁をタイル材で仕上げている。
図1、2に示すように、全体の平面外形が概略矩形状をなすセメント板からなるタイル材10を、外壁面に並べて仕上げている。
〔外壁用タイル材〕
図3〜5に詳細構造を示す外壁用タイル材10は、セメント系材料の成形硬化物からなり、全体が概略矩形板状をなしている。
図3に示すように、外壁用タイル材10は、矩形板状をなす表面板部20と、L字形の枠状をなす裏面枠部30とで構成されている。表面板部20と裏面枠部30の厚みは同じに設定されている。
【0033】
表面板部20の表面には、レンガ壁状の凹凸模様が形成されているとともに、塗装による表面化粧層28が設けられていて、外観意匠性を向上させている。表面化粧層28は、透水性がないので、タイル材10の表面から吸水したり、タイル材10を厚み方向に水分が通過したりすることが防止できる。表面化粧層28は、表面板部20の側端面や裏面枠部30の上面などには設けられていない。
<合いじゃくり継手>
表面板部20の直交する2側辺は、裏面枠部30の外側に張り出していて、表側凸部22,24となっている。図3に示すように、長辺側の表側凸部24は、短辺側の裏側凸部32の端部よりも長さL1だけ突出している。短辺側の表側凸部22も、長辺側の裏側凸部34の端部よりも同じ長さL1だけ突出している。
【0034】
表面板部20の残りの2側辺は、裏面枠部30の直交する外側辺よりも内側に凹んでいる。表面板部20よりも外側に張り出した裏面枠部30の外側辺が裏側凸部32、34となっている。図3に示すように、長辺側の裏側凸部34は、表面板部20の長辺よりも長さL2だけ突出している。短辺側の裏側凸部32も、表面板部20の短辺よりも長さL2だけ突出している。
このような、互いに対向する側辺に配置された表側凸部22、24と裏側凸部32、34とによるタイル材10の連結構造が、「合いじゃくり」と呼ばれる継手構造である。
前記した突出長さL1とL2とは、L1≧L2の関係に設定されている。L1とL2の差が、タイル材10を施工したときに、隣接するタイル材10,10同士の目地間隔を決める。
【0035】
<通気空間>
図4、5に示すように、裏側凸部32、34には、長さ方向の途中で、裏側凸部32、34の底面を断続的に切り欠いて、裏側凸部32、34を横断する矩形凹溝からなる通気空間39が配置されている。通気空間39は、長辺側の裏側凸部34には2本、短辺側の裏側凸部32には1本が設けられている。
その結果、タイル材10の底面側で、面方向の縦横何れの方向にも通気可能になっている。
<内設断熱材>
図4、5に示すように、表面板部20の裏側で、L形をなす裏面枠部30の内側に、矩形板状をなす内設断熱材90が配置されている。内設断熱材90は、発泡ポリスチレンボードからなり、タイル材10に接着されている。
【0036】
裏面枠部10を構成する各裏側凸部32、34の内側端面と、それと対面する内設断熱材90の側端面との間には、隙間Gがあいている。また、裏側凸部32、34の先端面と、それと平行で隣接する内設断熱材90の側端面との間にも、同様の隙間Gがあいている。タイル材10の裏側で、内設断熱材90の周囲に、表面板部20の背面が露出する部分が周溝状に存在することになる。
図4に示すように、内設断熱材90の厚みは、裏面枠部30の高さよりも小さく、内設断熱材90の下面が、通気空間39の上端面と、略同じ位置に配置されている。内設断熱材90が通気空間39の通気を阻害しないようになっている。
【0037】
<外壁用タイル材の具体例>
タイル材質:繊維配合セメント硬化板(ビニロン繊維配合、比重1.9)。
全体:外形330mm×480mm、厚み12mm。
表面板部20:外形300mm×450mm。
裏面枠部30:幅45mmのL字形。
表側凸部突出長L1=25mm、裏側凸部突出長L2=25mm。
通気空間39:幅20mm、高さ5mm、長辺側2個所、短辺側1個所。
内設断熱材90:発泡ポリスチレン製、400mm×280mm、厚み10mm。
【0038】
内設断熱材90と裏側凸部32、34との隙間G=5mm。
表面化粧層28:樹脂モルタル下地仕上げ+アクリルエマルジョン仕上げ、
合計膜厚0.11mm。
〔外壁用タイル材の施工〕
図1、2に示すように、外壁用タイル材10は、住宅などの建築物の壁面を構成する外壁下地材50の表面に並べて施工される。
<外壁下地材と桟材>
図1に示すように、外壁下地材50は、合板などで構成されている。図2に示すように、外壁下地材50の表面には、縦横に一定間隔で配置され格子状をなす桟材52がとり付けられている。
【0039】
図1に示すように、桟材52は、接着剤層58を介して外壁下地材50に接着固定されている。桟材52の格子間隔は、タイル材10の寸法に合わせて設定されている。桟材52の表面に、タイル材10を並べて取り付ける。桟材52の幅は、タイル材10の裏側枠部30の幅と同じ程度に設定されている。桟材52の厚さは、タイル材10と外壁下地材50との間に一定の間隔を設けることができ、桟材52の構造強度も十分に持たせられる程度に設定されている。
桟材52の具体例として、幅20mm、厚さ9mmの木材が使用できる。
<タイル材の配置>
図6に詳しく示すように、タイル材10は、横長の矩形状で、上辺側に裏側凸部34が配置され、下辺側に表側凸部24が配置される姿勢で並べて配置される。その結果、図6の左辺側には裏側凸部32、右辺側には表側凸部22が配置される。隣接する上下および左右のタイル材10同士は、常に、表側凸部22、24と裏側凸部32、34とが表裏で対面する形になる。
【0040】
図1に示すように、垂直方向に設置された外壁下地材50および桟材52に対して、下側に配置されたタイル材10の裏側凸部34の表面側に、上側に配置されるタイル材10の表側凸部24が載る形で、互いに連結される。上側のタイル材10の下辺に配置された表側凸部24の下端面と、下側のタイル材10における表面板部20の上端面との間には、少し隙間があいている。これは、前記したタイル材10の上下辺における突出長さL1とL2との差によって生じ、目地隙間26が構成される。また、下側のタイル材10の裏側凸部34は、桟材52の表面に当接している。
このような連結構造が「合いじゃくり」と呼ばれる。
【0041】
この合いじゃくり継手構造は、水密性に優れた継手構造である。例えば、タイル材10の表面に雨水などが降り注いで、表面板部20に沿って水が流れ、表側凸部24の下端から表面板部20と表面板部20との隙間に水が浸入したときに、表面板部20の裏側では、下方側のタイル材10に有する裏側凸部34が立ち上がっているので、裏側凸部34を超えて内部まで水が浸入することは困難である。雨の勢いが強かったり、壁面にホースで散水したりしても、裏側凸部34による堰を超えるほどの強さで水が浸入することは難しい。但し、合いじゃくり継手構造でも、裏側凸部34の表面まで水が浸入する可能性はある。
【0042】
<タイル材の固定>
図1に示すように、タイル材10の裏側凸部34が、接着剤層58を介して桟材52に固定されている。
1枚のタイル材10が外壁下地材50に固定されれば、その上方あるいは左方に、次の新たなタイル材10が配置され、前記同様にして、外壁下地材50に固定される。このような作業を順次繰り返すことで、外壁全体にタイル材10を施工することができる。
図1、図6に示すように、前後左右に施工されたタイル材10は、互いの間に目地隙間が構成される。表面板部20の表面に形成されたレンガ模様と前記目地隙間とによって、壁面全体がレンガ壁に類似した意匠性の高い外観を呈する。壁面の外観上からは、内設断熱材90の存在は全く判らない。
【0043】
なお、タイル材10および桟材52の取付固定を、接着剤層58による接着固定に加えて、ねじ釘による固定をも行って、より強固な固定を果たすこともできる。例えば、タイル材10の裏面凸部34の表面から裏面凸部34を貫通して桟材52に、ねじ釘を取り付けることができる。ねじ釘として、裏面凸部34の表面に突出しない皿頭ねじ釘などを使用すれば、タイル材10同士の連結にも支障はない。
〔内設断熱材の機能〕
図7に示すように、施工されたタイル材10の裏面側に配置された内設断熱材90は、その上端面は、裏側凸部34との間に隙間Gがあいている。内設断熱材90の下端面は、下側のタイル材10における裏側凸部34の上端面との間に隙間Gをあけた状態で対面している。
【0044】
内設断熱材90の左右の側端面でも、内設断熱材90が取り付けられたタイル材10の裏側凸部34、および、隣接する別のタイル材10の裏側凸部34との間に隙間Gがあいている。内設断熱材90の全周に、裏側凸部32、34で囲まれた状態で、周溝状の隙間Gを有している。この隙間Gの部分では、表面板部20の背面が露出した状態になっている。
図1に示すように、屋外からの強い日射や寒気によって、タイル材10が強く加熱あるいは冷却されたとしても、タイル材10の裏側に配置された内設断熱材90が、壁の内部側への伝熱を遮断し、壁の内部が過剰に加熱されたり冷却されたりし難くなる。
【0045】
内設断熱材90は、タイル材10の裏面側に配置されているので、屋外環境に露出することはない。タイル材10の取扱いや施工作業時に、内設断熱材90が傷付いたり欠けたりする心配も解消される。
しかも、内設断熱材90の周囲には、隙間Gに対応して、表面板部20の背面が露出している個所が存在する。タイル材10が雨水や湿気を吸っても、表面板部20の背面の露出個所から裏側の空間に水分が蒸発されてタイル材10から取り除かれる。タイル材10の材料が吸水したまま高含水状態になることが防止できる。その結果、寒冷地における凍害問題が解消できる。
【0046】
内設断熱材90の周囲の空間は、通気空間39と連通しているので、タイル材10から放出された水分は、通気空間39へと送られる。
〔通気空間の機能〕
図1に示すように、通気空間39は、内設断熱材90の背面に露出した状態で、タイル材10を貫通する空間を構成している。
図7に詳しく示すように、外壁面にタイル材10が縦横に敷設された状態でも、各タイル材10の通気空間39が、外壁面の上下方向および水平方向の何れにも連通した状態である。
【0047】
外壁面に雨や散水がかかったりして、タイル材10同士の隙間からタイル材10の裏面側まで、水分が浸入してくることがある。タイル材10が水分を吸収し、吸収された水分がタイル材10の裏面側から内部空間に水分が放出されることも起こる。タイル材10の裏面側に密閉された空間があり、その空間が温まったり冷えたりすることで、結露を発生することがある。
このような場合でも、通気空間39によって、タイル材10の裏面側を空気が自由に流通する状態であれば、タイル材10の裏面側に侵入した水分を、通気によって運び去ることができる。タイル材10に吸収された水分も、タイル材10と接触して流通する空気が運び去る。タイル材10が吸水したままになり難いので、凍害の発生が防止できる。通気があれば結露も発生し難い。結露が発生しても、直ぐに通気とともに運び去ることができる。桟材52や外壁下地材50が、木材などのように、吸湿し易く、吸湿によって劣化したり腐食したりし易い材料であっても、吸湿や腐食の問題が低減できる。
【0048】
特に、断熱性向上のために設けた内設断熱材90に、雨水などの水分が吸収されたり、内部で結露が発生したりしたとしても、通気空間39に隣接する内設断熱材90の表面を通気が接触しながら通過するので、内設断熱材90から水分や湿気を奪い取って、運び去ることができる。内設断熱材90が劣化したり、内部でカビが発生したりすることが防止できる。
屋外側からの強い加熱や冷却がタイル材10の裏面側まで伝達されたとしても、通気空間39を通じて流通する空気が、熱を奪い去ったり熱を供給したりすることになり、外壁下地材50から内側への伝熱を効率的に遮断することができる。
【0049】
なお、外壁面の上部および下部では、通気空間39は、屋外空間や床下空間に連通させている。上部では、屋根裏空間を介して軒下から屋外空間に連通させておく。その結果、通気空間39を含むタイル材10と外壁下地材50との間の通気空間には、屋外から雨水などが浸入することはない。
〔外壁パネル〕
図8に示す実施形態は、前記実施形態の外壁構造を、外壁パネルに適用した場合である。基本的な構成は前記実施形態と共通する。以下では、外壁パネルに特有の構造を主に説明する。
【0050】
外壁パネルPは、C形鋼などを矩形の枠状に組み立てて溶接した鋼枠60を基本構造にして、鋼枠60の片面には、外壁下地材50、桟材52およびタイル材10からなる外装部材が取り付けられている。反対面には、合板や石膏ボード、繊維ボード、壁紙などの複数の材料層を積層してなる内装部材56が取り付けられている。鋼枠60の内側空間には、ガラスウールなどからなる断熱材層54が設けられている。図示を省略したが、鋼枠60の外周端辺には、外壁パネルPを建築物の土台にボルト締結によって連結したり、外壁パネルP同士を連結したりするための連結構造が設けられる。
外装部材となる外壁下地材50から桟材52、タイル材10に至る構造は、前記した実施形態と共通するので詳しい説明を省略する。外壁下地材50と桟材52、桟材52とタイル材10は何れも、接着剤層58によって接着固定されている。
【0051】
このような構造を有する外壁パネルPは、予め、工場などで製造される。製造された外壁パネルPを、建築物の施工現場に搬入し、所定の位置に配置して連結固定するだけで、基本的な外壁構造が完成する。必要に応じて、外壁パネルP同士の連結部分を幕板で塞いだり、仕上げ処理を行ったりすればよい。例えば、図8に示す外壁パネルPの場合、タイル材10は、外壁パネルPの外周端までは配置されていない。そこで、建築物に外壁パネルPを施工したあと、外壁パネルP同士の連結個所や外壁パネルPと土台との境界部分などに、タイル材10を追加して施工したり、幕板で覆ったりすることになる。
この実施形態では、外壁パネルPの構造強度を負担する鋼枠60の全面を覆って、外壁下地材50、桟材52およびタイル材10が一体的に固定されていることになるので、面方向の強度あるいは耐力が大幅に向上する。施工後の耐力向上だけでなく、外壁パネルPを輸送保管したりしているときに、外壁パネルPに加わる外力に対しても、強い耐力を発揮する。輸送中や施工作業中に、強い振動や衝撃が加わっても、タイル材10がずれたり外れたりする損傷したりする心配がない。
【0052】
〔板状タイル〕
図9に示す実施形態は、前記実施形態のような合いじゃくり継手構造を有しない単純な板状のタイル材を用いる。
外壁下地材50の表面に接着剤層58を介して桟材52が接着固定され、桟材52の表面に接着剤層58を介してタイル材10が接着固定されている。
タイル材10は、矩形の板状をなすセメント板などからなる。タイル材10の裏面外周の全体が、格子状に配置された桟材52の表面に接着剤層58で固定されることになる。タイル材10の裏面中央で桟材52の内側には、矩形で板状をなす内設断熱材90が取り付けられている。内設断熱材90は、発泡ポリスチレン樹脂ボードなどからなり、タイル材10に接着されている。内設断熱材90の外周は桟材52との間に隙間をあけている。内設断熱材90の裏面は、外壁下地材50との間に隙間をあけている。
【0053】
タイル材10の側端面同士の間には目地隙間が設けられ、目地材80が施工されている。
この実施形態では、タイル材10の全周を桟材52に接着固定しているので、タイル材10と桟材52との一体性が高い。但し、合いじゃくり継手による連結ではなく、目地材80を施工するので、目地施工の手間はかかる。
【実施例】
【0054】
本発明の具体的実施例とその性能を評価した結果を示す。
〔使用材料〕
タイル材:450×300×10mmの矩形厚板状をなす繊維強化セメント板。
桟材:20×30mmの角木材。
外壁下地材:900×2400×16mmの矩形板をなす繊維強化セメント板。
接着剤:ウレタン系接着剤。
〔試験体〕
全体外形が、幅3600mm×高さ2500mmの4P外壁パネルを作製した。基本的な構造は、図8と共通する。
【0055】
C−60×50厚さ2.3mmのC形鋼材を組み立て溶接して鋼枠を構成している。
鋼枠の室内側面には、900×2400×12mmの矩形をなすパーティクルボードをビス止めした。ビスの口径は5mm、ピッチは300mmであった。
鋼枠の屋外側面には、前記外壁下地材をビス止めした。口径4mmのビスをピッチ300mmでねじ込んだ。
外壁下地材の表面に、縦横の格子状に桟材を接着またはビス止めした。タテ桟は450mmピッチ、ヨコ桟は300mmピッチで配置した。接着剤の厚みは1mmに設定し、ビス止めは口径4mmのビスをピッチ225mmでねじ込んだ。
【0056】
桟材の表面に、縦横に隙間なくタイルを、接着またはビス止めした。接着剤の厚みは1mmに設定し、ビス止めは口径4mmのビスをピッチ約300mmでねじ込んだ。
試験体として、タイル材および桟材の取付形態が異なるものを複数種類作製し、それぞれの性能を比較評価した。
比較例1:桟材およびタイル材を取り付けない状態の外壁パネルを用意した。
比較例2:外壁下地材に対する桟材の取り付け、および、桟材に対するタイル材の取り付けの何れをも、ビス止めで行った。
比較例3:外壁下地材に対する桟材の取り付けはビス止めを採用し、桟材に対するタイル材の取り付けは接着を採用した。
【0057】
実施例1:外壁下地材に対する桟材の取り付け、および、桟材に対するタイル材の取り付けの何れをも、接着で行った。
〔試験方法〕
通常の外壁パネルに対する面内剪断試験を行い、最大荷重を測定した。使用装置および試験条件は、常法にしたがった。具体的には、外壁パネルの下辺側を固定した状態で、上辺側に外壁パネルの面に沿って水平方向の荷重を加え、剪断破壊が生じるまでの最大荷重を測定した。
〔試験結果〕
表1に試験結果を示す。表中、強度比率(%)は、比較例1に対する比較例2、3および実施例1の最大荷重の比率を示している。
【0058】
【表1】

【0059】
〔評価〕
(1) 桟材およびタイル材の取り付けの何れにも接着を採用した実施例1では、両方にビス止めを採用した比較例2、および、タイル材の取り付けだけに接着を採用した比較例3に比べても、格段に外壁パネルの剪断強度が向上している。
(2) 比較例2と比較例1とを対比すると、比較例2のビス止めでは、桟材およびタイル材を取り付けない比較例1に対して、全く強度の向上が認められない。外壁パネルの強度にタイル材は全く寄与していないことが判る。
(3) 実施例1では、桟材およびタイル材の両方が、外壁パネルに加わる荷重を負担することによって、外壁パネル全体の大幅な強度向上を達成できることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば、住宅の屋外に面した外壁構造に適用できる。地震などの外力に対して高い耐力を示し、外壁の表面を仕上げるタイル材やその隙間を埋める目地材が損傷し難く、長期間にわたって優れた外観意匠性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態を表す外壁構造の断面図
【図2】タイル材の施工途中における平面図
【図3】タイル材の平面図
【図4】タイル材の一部断面側面図
【図5】タイル材の裏面図
【図6】タイル材同士の連結状態を表す平面図
【図7】タイル材同士の連結状態を表す裏面図
【図8】別の実施形態を表す外壁パネルの断面図
【図9】別の実施形態を表す外壁構造の断面図
【符号の説明】
【0062】
10 外壁用タイル材
20 表面板部
22、24 表側凸部
26 目地隙間
28 表面化粧層
30 裏面枠部
32、34 裏側凸部
39 通気空間
50 外壁下地材
52 桟材
58 接着剤層
90 内設断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋外に面する外壁の構造であって、
前記外壁の屋外側に配置され板状をなす外壁下地材と、
前記外壁下地材の外面に格子状に配置され接着されてなる桟材と、
前記桟材を介して前記外壁下地材の外面を覆い、前記桟材に接着されてなるタイル材と
を備える外壁構造。
【請求項2】
前記外壁下地材に桟材を接着し、前記桟材にタイル材を接着する接着剤が、
変成シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤からなる群から選ばれる接着剤であり、
厚み0.5〜3mmであり、
剪断接着強度1N/cm以上である
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記タイル材が、最大辺長15〜900cm、厚さ5〜25mmの概略板状をなし、平面引張強度1〜4N/cmであり、
前記桟材が、幅1〜10cm、厚さ3〜30mmの角材からなる
請求項1または2に記載の外壁構造。
【請求項4】
前記タイル材が、全体が概略矩形板状をなし、対向する側辺に配置されタイル材同士を面方向に連結する合いじゃくり継手となる表側凸部および裏側凸部と、前記表側凸部および裏側凸部よりも内側でタイル材の裏面側に配置された内設断熱材とを有し、
前記タイル材の裏側凸部の裏面が前記桟材に接着されてなる
請求項1〜3の何れかに記載の外壁構造。
【請求項5】
建築物の屋外に面する外壁構造を構築する外壁パネルであって、
前記外壁パネルの外周形状に対応する鋼枠と、
前記外壁パネルの施工時に屋外側に面する前記鋼枠の表面に配置され板状をなす外壁下地材と、
前記外壁下地材の外面に格子状に配置され接着されてなる桟材と、
前記桟材を介して前記外壁下地材の外面を覆い、前記桟材に接着されてなるタイル材と
前記前記外壁パネルの施工時に屋内側に面する前記鋼枠の表面に配置される内装材と、
前記鋼枠の内部に配置される断熱材層と
を備える外壁パネル。
【請求項6】
建築物の屋外に面する外壁の施工方法であって、
前記外壁の屋外側に板状をなす外壁下地材を施工する工程(a)と、
前記外壁下地材の外面に桟材を格子状に配置し接着する工程(b)と、
前記桟材を介して前記外壁下地材の外面を覆ってタイル材を配置し、タイル材の裏面を桟材に接着する工程(c)と
を含む外壁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−217918(P2007−217918A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38117(P2006−38117)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(000237053)富士スレート株式会社 (10)
【Fターム(参考)】