説明

外壁構造

【課題】セラミックス製の意匠材が建物の角部をなす2つの壁面にわたって設置された外壁構造において、該意匠材が破損し難い外壁構造を提供する。
【解決手段】意匠材10の長手方向における中央部は弧状の湾曲部12となっている。該湾曲部12の両端に連なる一端部11及び他端部13は、長手方向に直線状に延在している。該意匠材10の中空部14に芯材20が配置されている。この芯材20は、意匠材10の第1側面に対面する長板部21と、該長板部21の上端から水平方向に延在する耳片部22とからなる。ボルト6がボルト挿通孔23、スペーサ8及びレール5のボルト挿通孔に挿通され、ナット7によって締結されている。このようにして、意匠材10及び芯材20が建物1に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セラミックス製の意匠材が建物の角部をなす2つの壁面にわたって配置された外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の角部にタイルやルーバー等のセラミックス製意匠材を施工する場合、該角部をなす2つの壁面のそれぞれに平板状の意匠材を配置し、これら平板の端部同士を該角部において突き合わせることが行われている。しかしながら、このように平板状の意匠材を突き合わせる場合、該突き合わせ部分に隙間が生じることになり、美観に劣る。また、該隙間から雨水等が浸入し、意匠材を壁面に固定している接着剤が劣化する。
【0003】
上記の問題を解消するものとして、特開2004−238940号には、2つの壁面のそれぞれに取付金具を固定し、該取付金具に対して、L字形の役物建材を固定することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−238940号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2004−238940号の外壁構造は、建物が地震等によって変位した場合、L字形の役物建材の直角部分に剪断応力が集中し、該役物建材が破損し易いという問題がある。
【0005】
本発明は、セラミックス製の意匠材が建物の角部をなす2つの壁面にわたって設置された外壁構造において、該意匠材が破損し難い外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の外壁構造は、セラミックス製の意匠材が建物の角部をなす2つの壁面にわたって設置された外壁構造において、該意匠材は一方の壁面から他方の壁面にわたって延在する湾曲部を有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の外壁構造は、請求項1において、前記湾曲部を有する意匠材は一方の壁面側の端部から他方の壁面側の端部にわたって延在する中空部を有し、該中空部に芯材が配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の外壁構造は、請求項2において、該芯材は可撓性を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の外壁構造は、請求項2又は3において、該一方の壁面及び他方の壁面に取付部材が固定されており、該取付部材に該芯材の両側が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の外壁構造は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記意匠材(第1の意匠材)に隣接して第2の意匠材が設置されており、該第2の意匠材は、中空部を有すると共に該中空部に芯材が配置されており、該第1の意匠材の芯材と第2の意匠材の芯材とが連結されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明(請求項1)の外壁構造は、一方の壁面から他方の壁面にわたって延在する湾曲部を有する意匠材が建物の角部に設置されており、該意匠材はL字形の意匠材のような角部を有しない。このため、建物が地震等によって変位したときに該湾曲部の一部に剪断応力が集中することがなく、これにより、該意匠材が破損することが防止される。また、建物の角部に対応する箇所を2つの意匠材の突き合せによって形成する必要がないため、突き合せ部分の位置合わせを行う等の手間が省け、施工性に優れる。
【0012】
本発明において、該意匠材が中空部を有し、該中空部に芯材が配置されている場合、意匠材の強度が向上する。
【0013】
本発明において、該芯材が可撓性を有する場合、意匠材の中空部に芯材を容易に挿入することができる。
【0014】
本発明において、一方の壁面及び他方の壁面に取付部材が固定され、該取付部材に芯材の両側が取り付けられていてもよい。また、該湾曲部を有する意匠材(第1の意匠材)の芯材と第2の意匠材の芯材とが連結されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。第1図は実施の形態に係る外壁構造の水平断面図、第2図は第1図の意匠材10の斜視図、第3図は第1図の芯材20の斜視図、第4図は第1図の外壁構造の正面図である。
【0016】
第1図の通り、建物1の第1の壁面2及び第2の壁面3のぞれぞれに、T字形のレール5が上下方向に延設されている。なお、符号4は建物1の角部である。
【0017】
この建物1が鉄骨式建物である場合、このレール5は鉄骨に取り付けられている。建物1が鉄筋コンクリート建物である場合、このレール5はコンクリート壁に取り付けられている。この建物1が木造軸組みの建物である場合、このレール5は柱に取り付けられている。
【0018】
以下に説明する通り、これらレール5に対して、セラミックス製の意匠材10が取り付けられている。
【0019】
第2図の通り、この意匠材10は、第1側面10a、上面10b、第2側面10c及び下面10dよりなり、長手方向に中空部14が延在する四角筒形を有している。この意匠材10の長手方向における中央部は、第1側面10aを内径側とし、第2側面10cを外径側とする弧状の湾曲部12となっている(第1図)。本実施の形態では、この湾曲部12は、中心角約90°の範囲にわたって延在する四分円弧状になっている。
【0020】
該湾曲部10aの両端に連なる一端部11及び他端部13は、長手方向に直線状に延在している。該一端部11及び他端部13の第1側面10aに、後述するスペーサ8を挿通するためのスペーサ挿通孔15が設けられている。
【0021】
この意匠材10を製造するには、例えば、成形ダイスの押出口のうち一方の側辺からの押出速度が他方の側辺からの押出速度よりも小さくなるようにして押出成形を行い、該一方の側辺側に湾曲した成形体を製造する。次いで、該成形体の長手方向の両端部近傍を直線状に整える。その後、該成形体を焼成することにより、湾曲部12を有する意匠材10が製造される。
【0022】
該意匠材10の中空部14に芯材20が配置されている。この芯材20は、意匠材10の第1側面に対面する長板部21と、該長板部21の上端から水平方向に延在する耳片部22(22A)と、該長板部21の下端から水平方向に延在する耳片部22(22B)とからなる。該長板部21の両端近傍であって前記ボルト挿通孔23と対応する位置に、厚み方向に貫通するボルト挿通孔23が設けられている。
【0023】
この芯材20の材質としては、樹脂、ゴム等の可撓性を有するものが好ましい。
【0024】
この芯材20の長板部21、耳片部22A及び耳片部22Bのそれぞれが、意匠材10の第1側面10a、上面10b及び下面部10dと対面するようにして、この芯材20が意匠材10の中空部14内に配置されている。この意匠材10のスペーサ挿通孔15内にスペーサ8が配置されている。該スペーサ8の外径はスペーサ挿通孔15の孔径よりも小さく、かつボルト挿通孔23の孔径よりも大きくなっている。ボルト6がボルト挿通孔23、スペーサ8及びレール5のボルト挿通孔(図示略)に挿通され、ナット7によって締結されている。このようにして、意匠材10及び芯材20が建物1に固定されている。
【0025】
この意匠材10の両端に、四角筒形であり、その中空部14に芯材20Aを備えた意匠材10Aが配置され、レール5に固定されている。これら芯材20A及び意匠材10Aは直線状であることの他は上記芯材20及び意匠材10と同様であり、上記芯材20及び意匠材10と同様、ボルト6、ナット7及びスペーサ8を介してレール5に固定されている。
【0026】
この意匠材10は中央部が湾曲しているため、建物1の角部4で直角に屈曲するL字形の意匠材と比べて重心が建物1の内側に位置することになる。このため、意匠材10はL字形意匠材と比べて、中央部が自重によって垂れ難いものとなる。
【0027】
この芯材20が可撓性を有する場合、該芯材20を意匠材10内に容易に配置することができる。また、この芯材20が可撓性を有する場合、曲がり部を有する芯材20を製造してもよく、直線状の芯材20を製造し、意匠材10内に配置する時に曲げるようにしてもよい。
【0028】
本実施の形態において、芯材20と意匠材10とが接着剤によって固定されていてもよい。
【0029】
上記実施の形態では、第3図に示す芯材20を用いたが、芯材の形状はこれに限定されるものではない。例えば、第5図の通り、第3図の芯材20において下側の長側辺に連なる耳片部22(22B)を省略した芯材20Bであってもよい。また、第6図の通り、耳片部22が該長板部21の長手方向に間隔をあけて3個以上(第6図では7個)設けられた芯材20Cであってもよい。さらに、第3図の芯材20は、耳片部22が略弧状の長板部21の外径方向を指向し、該長板部21が意匠材10の内径面10aと対面する形状となっているが、第7図の芯材20Dのように、耳片部22が略弧状の長板部21の内径方向を指向し、該長板部21が意匠材10の外径面10cと対面する形状としてもよい。
【0030】
また、レールが意匠材の側部にあるような場合は、第8図のような芯材を用いてもよい。第8図の芯材20Eは、その長手方向の両端に、先端側が閉止された四角筒形の耳片部22Cが連なっている。該耳片部22Cの一側面が該長板部21に連なっている。該耳片部の先端側の閉止面に雌ねじ孔22Dが設けられている。第9図は第8図の芯材20Eを用いた意匠材を建物の外壁に設置した状態を示す水平断面図である。該芯材20Eの耳片部22Cの閉止面をレール材5Aに当接し、六角ボルト6Aにワッシャ7を通し、さらに該六角ボルト6Aをレール5Aの挿通孔(図示略)を通して該雌ねじ孔22Dにねじ込むことにより、該芯材20Eがレール材5Aに固定される。
【0031】
上記の実施の形態では第1の意匠材自体が壁面に固定されているが、第2の意匠材が壁面に固定され、この第2の意匠材に第1の意匠材が固定されていてもよい。第1の意匠材の芯材に第2の意匠材の芯材を固定した場合、芯材同士を繋ぐため、意匠材の継ぎ目にずれが生じ難い。
【0032】
本実施の形態では意匠材10はレール5に固定されているが、これと共に又はこれに代えて、芯材20と芯材20Aとが連結されていてもよい。
【0033】
また、第1図では意匠材の中心角は90°になっているが、これに限られるものではない。建物の隣接する壁面同士のなす角度や意匠性を考慮して、90°以上かつ180°未満であることが好ましい。
【0034】
第10図〜第16図は異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した図面である。
【0035】
第10図の意匠材10Bは五角形の断面形状を有している。
【0036】
第11図の意匠材10Cは一方の面が外方に凸に湾曲し、他方の面が平面状となっている中空の略三日月形の断面形状を有している。図中、符号16は該一方の面と他方の面を連結する仕切壁状部である。符号17は開口を示す。
【0037】
第12図の意匠材10Dは平行四辺形の中空の断面形状を有している。この平行四辺形の1対の面同士が仕切壁状部16,16によって連結されている。
【0038】
第13図の意匠材10Eは、中空の略二等辺三角形の中空断面形状を有している。1対の斜辺同士が仕切壁状部16,16によって連結されている。
【0039】
第14図の意匠材10Fは、中空の長方形の断面形状を有している。1対の長辺同士が仕切壁状部16,16によって連結されている。
【0040】
第15図の意匠材10Gも、中空の長方形の断面形状を有している。この意匠材10Gには、1個の仕切壁状部16が設けられている。
【0041】
第16図の意匠材10Hは略六角形の中空断面形状を有している。該意匠材の内面には、破損しても破片が落下しないようにゴムシートを接着してもよい。また、意匠性を向上させるために、一部の面に2条の凹部19が設けられている。
【0042】
なお、上記の意匠材の中空部の内面にゴムシートを設けてもよい。特に、中空部の内面のうち壁面に施工した際に底面部となる部分に、長手方向に沿ってゴムシートを設けてもよい。該底面部にゴムシートを設けることにより、雨水等がセラミック部に溜まって凍結し、中空部側面に圧力が生じた場合でも、意匠材が割れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態に係る外壁構造の水平断面図である。
【図2】第1図の意匠材10の斜視図である。
【図3】第1図の芯材20の斜視図である。
【図4】第1図の外壁構造の正面図である。
【図5】異なる芯材20Bの斜視図である。
【図6】異なる芯材20Cの斜視図である。
【図7】異なる芯材20Dの斜視図である。
【図8】異なる芯材20Eの斜視図である。
【図9】第8図の芯材20Eを用いて意匠材を建物の外壁に設置した状態を示す水平断面図である。
【図10】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【図11】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【図12】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【図13】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【図14】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【図15】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【図16】異なる意匠材を長手方向と垂直な断面で切断した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 建物
2 第1の壁面
3 第2の壁面
4 角部
5 レール
8 スペーサ
10、10A 意匠材
11 一端部
12 湾曲部
13 他端部
20、20A 芯材
21、21A 長板部
22、22A 耳片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス製の意匠材が建物の角部をなす2つの壁面にわたって設置された外壁構造において、
該意匠材は一方の壁面から他方の壁面にわたって延在する湾曲部を有することを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
請求項1において、前記湾曲部を有する意匠材は一方の壁面側の端部から他方の壁面側の端部にわたって延在する中空部を有し、該中空部に芯材が配置されていることを特徴とする外壁構造。
【請求項3】
請求項2において、該芯材は可撓性を有することを特徴とする外壁構造。
【請求項4】
請求項2又は3において、該一方の壁面及び他方の壁面に取付部材が固定されており、該取付部材に該芯材の両側が取り付けられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記意匠材(第1の意匠材)に隣接して第2の意匠材が設置されており、
該第2の意匠材は、中空部を有すると共に該中空部に芯材が配置されており、
該第1の意匠材の芯材と第2の意匠材の芯材とが連結されていることを特徴とする外壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−308934(P2007−308934A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137928(P2006−137928)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】