説明

外表面を加飾した合成樹脂成形品

【課題】 円筒状の胴部等、丸筒状の成形部位の全周に亘って、連続状に十分な突出高さを有する凸状模様を形成することを課題として、丸筒状部位の全周に亘って連続状に彫刻状の模様を付与した合成樹脂製成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】 丸筒状の部位を有する合成樹脂製成形品において、丸筒状部分の外表面の全周に亘って、厚盛状のスクリーン印刷による印刷層により、周方向に沿って連続状の凸状模様を形成して加飾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸筒状部位の外表面を全周に亘って凸状模様で加飾した合成樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料等の容器では、自己の商品に目を向けさせる効果、所謂アイキャッチ効果を発揮せしめるため、あるいは高級感を付与してその商品を差別化するために、容器の外表面を装飾するための様々な方法が試みられ、採用されている。その一つに成形品の外表面に凸状模様を付加する方法があり、彫刻風の模様を形成することにより、効果的に高級感を付与することができる。
【0003】
このように、成形品の表面に凸状模様を形成する方法としては、キャビティ面に凹溝を刻設した金型を使用して射出成形や、ブロー成形する方法があり、容器の成形と同時に凸状模様を形成することができる。
【0004】
一方、後加工で凸状模様を形成する方法としてはスクリーン印刷による方法があり、たとえば特許文献1ではこのスクリーン印刷で容器の外表面にドットや線分で点字状の模様を形成している。
【特許文献1】特開平9−249227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば容器の円筒状の胴部の外表面に凸状模様を形成する場合、金型キャビティに凹溝を形成し、成形と同時に凸状模様を形成する方法では、金型の型抜きの問題があり、凸状模様における突出高さには限界があり、また模様の形成位置にも制約がある。
たとえば割金型を使用するブロー成形において、型開きの際の金型の動作を想定すると、割金型の合わせ目に相当する部分であるパーティングラインの近傍では、凸部の高さは0.1mm以下程度のごく限定されたものとなってしまう。ここで無理に突出高さを高くすると型開きが困難となるし、凸部が押し潰されて外観を損ねてしまう。すなわち、彫りの深さを十分にできないので、彫刻状の外観を十分に現出することができないし、周方向への模様の連続性という点で不満足なものとなってしまう。
【0006】
また、スクリーン印刷による方法では、印刷インクを含浸したスクリーン版をブレード状のスキージで印圧して成形品表面に版面を接触させた状態で、スキージをスクイーズまたは版を横行させて、印刷インクを成形品表面に転写するものであり、印刷直後および最終時に印圧した版面で印刷層を押し潰す恐れがあり、模様を印刷方向に厚肉に連続的に形成することは困難で、厚肉に形成するとしても引用文献1にあるように、その模様はドット状、あるいは線分状に限定されてしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点を解消するものであり、円筒状の胴部等、丸筒状の成形部位の全周に亘って、連続状に十分な突出高さを有する凸状模様を形成することを課題として、丸筒状部位の全周に亘って連続状に彫刻状の模様を付与した合成樹脂製成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
丸筒状の部位を有する合成樹脂製成形品において、
丸筒状部分の外表面の全周に亘って、厚盛状のスクリーン印刷による印刷層により、周方向に沿って連続状の凸状模様を形成して加飾すること、にある。
【0009】
ここで、本願発明者らは、円筒状の胴部等の場合には成形品表面がこのスクリーン版に向けて凸状に湾曲しているので、スクリーン版から成形品表面に向けて印刷インクをスクイーズする位置の前後直近位置では、版面と成形品表面とが離反しているので、比較的厚肉の印刷層を、ドット状の形状に制限されることなく連続的に、押し潰すことなく形成することができること、さらにこの離反に伴って印刷インクに上方に力が作用し、インクの流動による印刷層の平坦化を抑制し、0.1〜0.15mm程度のスクリーン版を使用しても、その印刷層の突出高さを0.3mm以上にも高くすることができ、彫刻様の凸状模様をクリアに形成できることを見出し上記発明を創出するに至った。
【0010】
請求項1記載の上記構成は成形品を成形後、厚盛状のスクリーン印刷で凸状模様を形成するものであり、成形時における金型からの型抜きに係る制約がない。たとえば、ブロー成形品の円筒状の胴部に、パーティングライン上で凸状模様の突出高さを低くする、あるいはパーティングライン位置で模様を断続して欠部とする等の制約なしに、全周に亘って均一に、連続状の凸状模様を、その突出高さを十分高くして形成することができる。
【0011】
なお、本発明において、丸型筒状部位は円筒状のものに限定されものではなく、全周に亘って外に向かって凸に湾曲状であれば、平断面形状が真円形でない筒状体であってもよい。
【0012】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、印刷層の層厚の平均を0.1mm以上とし、最大の層厚を0.2mm以上とすること、にある。
【0013】
請求項2記載の上記構成により、印刷層の層厚の平均を0.1mm以上とし、最大の層厚を0.2mm以上とすること、により凸状模様を明確に認識でき、彫刻状の外観をクリアに付与することができる。
なお、印刷層の層厚は、平均を0.2mm以上とし、最大の層厚を0.3mm以上とすることがより好ましい。
【0014】
請求項3記載の発明の手段は、請求項1または2記載の発明において、凸状模様を唐草状の模様とすること、にある。
【0015】
請求項3記載の上記構成は、具体的に模様の種類を特定したものであるが、唐草模様のように複雑な模様についても、全周に亘って均一に連続状に形成することができる。
【0016】
請求項4記載の発明の手段は、請求項1、2または3記載の発明において、ブロー成形容器であって、筒状丸型の胴部を有し、この全周に亘って加飾すること、にある。
【0017】
請求項4記載の上記構成は、成形品の成形方法、および丸筒状の部位を特定したものであるが、ブロー成形容器であってもパーティングライン上であるか、ないかに係らず、凸状模様を連続状に形成できる。またこの模様によりパーティングラインを目立たないようにすることもできる。
【0018】
請求項5記載の発明の手段は、請求項1、2、3または4記載の発明において、印刷層部分を成形品と同色にすること、にある。
【0019】
請求項5記載の上記構成により、成形品と凸状模様部分が同一材料で一体成形状に形成されているような外観とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、厚盛状のスクリーン印刷により、周方向に沿って連続状の凸状模様を形成するので、成形時における金型からの型抜きに係る制約がなく、全周に亘って均一に、連続状の凸状模様を、その突出高さを高くして形成することができる。
【0021】
請求項2記載の発明にあっては、印刷層の層厚の平均を0.1mm以上とし、最大の層厚を0.2mm以上とすること、により凸状模様を明確に認識でき、彫刻状の外観をクリアに現出させることができる。
【0022】
請求項3記載の発明にあっては、唐草模様のように複雑な模様についても、全周に亘って均一に、連続状に形成することができる。
【0023】
請求項4記載の発明にあっては、ブロー成形容器であってもパーティングライン上であるか、ないかに係らず、凸状模様を連続状に形成でき、パーティングラインを目立たないようにすることもできる。
【0024】
請求項5記載の発明にあっては、成形品と凸状模様部分が同一材料で一体成形状に形成されているような外観とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の外表面を加飾した合成樹脂成形品の一実施例を示す全体斜視図である。
この成形品はブロー成形による容器本体1であり、口筒部2と円筒状の胴部4と底部4を有し、口筒部2には係止周条2aが形成されており、この部分にアンダーカット状にキャップ(図示略)を装着して使用する。
【0026】
そして円筒状の胴部3には、全周に亘り均一に、連続状に唐草(アラベスク)様の凸状模様Mが厚盛状のスクリーン印刷による印刷層7により形成されている。この印刷層7厚さの平均値は0.25mmであり、最大厚さは0.35mmにも達する。このように凸状模様Mにおいて突出高さをこの程度にまで高くすると、彫りの深さ深くして、彫刻状の外観をクリアに現出させることができる。
【0027】
ここで、胴部3にはブロー成形における割金型に起因するパーティングライン5が形成されているが、凸状模様Mはこのパーティングライン5の部分も含めて周方向に均一に、連続状に形成されており、パーティングライン5を目立たないようにする機能も発揮している。
【0028】
なお、ブロー成形の割金型のキャビティにこのような唐草模様を凹溝状に形成し、ブロー成形と同時に同種の凸状模様を形成することは可能ではあるが、割金型での型開き動作を考慮すると、パーティングライン5近傍では、模様を断続して欠部とするか、あるいは突出高さを0.1mm以下程度のごく限定されたものとする必要があり、図1に示されるような周方向に均一に、連続状の凸状模様Mを形成することはできない。
【0029】
図2は図1の容器本体1の胴部3外表面にスクリーン印刷するための、設備配置の一例を示す概略説明図であり、この印刷設備は、円柱状の支持体23と、水平方向にテンションを懸けて配設されるスクリーン版21と、ブレード状のスキージ22を有する。
また、容器本体1は、円筒状の胴部3に支持体23を嵌入し、その中心軸を水平にして保持し、スクリーン版21の版面は胴部3の外表面から6〜8mm程度の隙間Sをおいてセットする(図中の点線で表した水平線参照)。
【0030】
印刷時には、支持体23の中心軸回りの回動に同期してスクリーン版21を移動(図2中では右側方向)させながら、スキージ22でスクリーン版23を印圧し、このスクリーン版21をV字状にし、このV字の先端を胴部3外表面に押し付けるようにし、この状態で印刷インクをスクイーズして印刷層7を厚盛状に胴部3外表面に転写、形成する。
ここで、図1の実施例の場合、スクリーン版21は70メッシュ、0.1〜0.15mm程度の膜厚のものを用いた。
また、印刷インクはスクリーン印刷に通常使用される紫外線硬化型インクの中から適宜の粘度のものを選んで使用することができる。
【0031】
ここで、円筒状の胴部3の外表面に印刷する場合には、この外表面がスクリーン版21に向けて凸状に湾曲しており、さらには図2に示したように版面を外表面から6〜8mm程度の隙間Sをおいてセットしてスクリーン版21をV字状にして印刷することにより、第1にスクリーン版21からスキージ22により胴部3外表面に向けて印刷インクをスクイーズする位置の前後直近位置では、スクリーン版と胴部3外表面とが離反しているので、厚肉の印刷層を連続的に、押し潰すことなく形成することができる。
【0032】
また、スクリーン版21から胴部3外表面に向けて印刷インクをスクイーズした直後に、スクリーン版21と胴部3外表面とが離反し、この離反に伴って印刷インクに上方に力が作用するので、膜厚が0.1〜0.15mm程度のスクリーン版21を使用しても、平坦な成形品外表面に印刷する場合に比較して、印刷層7の膜厚を0.3mm以上にもすることができ、彫刻様の凸状模様Mをクリアに形成できることができる。
【0033】
さらに、このようにスクリーン版21をV字状にすることにより、周方向への印刷が1周分進行し、終端部に達した際に、始端部に形成された凸状模様Mの一部をスキージ22で押し潰すのを避けることができ、始端部と終端部の継ぎ目を目立たないようにすることができ、全周に亘って均一に、見栄えのよい凸状模様Mを連続状に形成することができる。
【0034】
以上、実施例に沿って本発明の外表面を加飾した合成樹脂成形品に係る、実施の形態、およびその作用効果を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。たとえば、後加工で凸状模様を形成するので、成形品はブロー成形品に限定されるものではなく、射出成形品、熱成形品等、丸型筒状部位を有するさまざまな成形方法、および形状の成形品に適用することができる。
また、丸型筒状部位は円筒状のものに限定されものではなく、例えば図2中の支持体23を成形品の平断面形状に同期して周期的に上下動させることにより連続的に周方向にシルク印刷することができ、平断面形状が真円形でない筒状体でもその作用効果が発揮される。
【0035】
また、凸状模様も唐草模様に限定されることなく、さまざまな態様の模様を形成することができる。そして、凸状模様部分を、成形品と同色にして、成形品と凸状模様部分が同一材料で一体成形状に形成されているような外観にすることもでき、さらに金属蒸着をすれば金属材料を彫刻したように見せることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように本発明の凸状模様で加飾した合成樹脂成形品は、全周に亘って均一に、連続状に凸状模様を形成して、彫刻状の外観を現出できるものであり、化粧品料向けの加飾容器等での幅広い使用展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の成形品の一実施例を示す全体斜視図である。
【図2】図1の成形品のスクリーン印刷における設備配置の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ;容器本体(成形品)
2 ;口部
2a;周突条
3 ;胴部
4 ;底部
5 ;パーティングライン
7 ;印刷層
21;スクリーン版
22;スキージ
23;支持体
M ;凸状模様
S ;隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸筒状の部位を有する成形品であって、該丸筒状部分の外表面の全周に亘って、厚盛状のスクリーン印刷による印刷層(7)により、周方向に沿って連続状の凸状模様(M)を形成して加飾したことを特徴とする合成樹脂製成形品。
【請求項2】
印刷層(7)の層厚の平均を0.1mm以上とし、最大の層厚を0.2mm以上とした請求項1記載の合成樹脂製成形品。
【請求項3】
凸状模様(M)を唐草状の模様とした請求項1または2記載の合成樹脂製成形品。
【請求項4】
ブロー成形容器であって、筒状丸型の胴部(3)を有し、該胴部(3)の全周に亘って加飾した請求項1、2または3記載の合成樹脂製成形品。
【請求項5】
印刷層(7)部分を成形品部分と同色にした請求項1、2、3または4記載の合成樹脂製成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−114373(P2008−114373A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296683(P2006−296683)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】