説明

多価不飽和脂肪酸含有組成物

【課題】
多価不飽和脂肪酸又はこれを多量に含む魚油を加工食品に添加するため、様々な製剤化が行われているが、安定性、特に熱に対する安定性が低いため広く一般の飲食品に利用することは困難であった。本発明は、水中における分散性、加工・保存安定性、生体利用率、飲食品に添加した際の魚臭抑制、以上が優れている多価不飽和脂肪酸含有組成物及びこれを添加してなる飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記(1)又は(2)のいずれか一方と、(3)及び(4)を含有することにより上記課題を解決する。
(1)多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体
(2)多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体を含有する油脂
(3)ポリグリセリン中のトリグリセリン含量が60%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多価不飽和脂肪酸を含有した組成物、及びこれを添加してなる飲食品に関する。この組成物は水に容易に分散し、かつ高い加工・保存安定性を示す。また、生理活性成分が持つ独特の不快臭や異味をマスキングすることにより、飲食品中に添加した際にも風味良好な状態を維持するとともに、生体への吸収性にも優れたものである。
【背景技術】
【0002】
多価不飽和脂肪酸、なかでもドコサヘキサエン酸(DHA)やイコサペンタエン酸(EPA)は、種々の生理活性作用を有する。その期待できる効果として、血中中性脂質の低下作用、血圧コントロール作用、免疫機能活性化、アレルギー症状の改善、認知症の予防、抗炎症作用、学習機能向上等が挙げられる。しかしながら、多価不飽和脂肪酸は生体内でほとんど生合成できないため、必須脂肪酸として体外から取り入れる必要がある。
【0003】
多価不飽和脂肪酸は、植物油にも少量含まれるものの、もっとも多く含有するものは魚油であり、主にマグロ、ブリ、サバ、ウナギ、イワシ、サンマ、ニシン等の魚類に多く含まれていることが知られている。それらを摂取することが望ましいが、近年食生活の変化により若年層での魚離れが進んでいる。脂質の摂取は、飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸をバランスよく摂ることが健康維持のうえで重要となる。しかし、近年の脂質摂取状況は、40〜49歳を境として、それより高齢者側では肉類よりも魚介類からの摂取が多いのに対し、若齢者側では肉類からの摂取が上回っている(例えば非特許文献1参照)。肉類由来の油脂は飽和脂肪酸が中心であるため、若年層の油脂摂取状況ではそのバランスが崩れ、結果として生活習慣病の要因の1つともなっている。
【0004】
このような食生活の傾向から、多価不飽和脂肪酸の必要性は認識されつつあり、多種に亘る加工食品に魚油を添加する試みがある。しかし、魚油は極めて酸化されやすく、風味の劣化及び不快な臭気・味を呈することがあり、そのまま加工食品に添加することは困難である点が、問題として挙げられる。
【0005】
このような問題を解決するために、魚油を加工食品に添加できるよう、様々な製剤化の検討が成されている。例えば、DHAやEPAを含む油脂と乳化剤、酸化防止剤、親水性媒体から成る製剤(例えば特許文献1参照)、界面活性剤と油溶性多価アルコール及びDHAを含有する油相成分から成る乳化組成物(例えば特許文献2参照)、DHA含有油脂、SAIB、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び含水率50%以下の多価アルコール類から成る乳化組成物(例えば特許文献3参照)、水中に抗酸化剤を含有する多価不飽和脂肪酸を含む油成分を分散相とするO/W型乳化製剤(例えば特許文献4参照)等の技術が公開されている。
【0006】
これらの技術により、魚油を水中に分散させて加工食品に添加することは可能となったが、加熱殺菌を伴う食品の場合、加熱による油脂の分離及び魚臭の発生といったような、安定性の面で課題が多々残されていた。
【0007】
上記課題を解決し、加熱・加工耐性を有すことで食品中において安定であり、かつ経口的に摂取されたものが効率的に体内に吸収されることが望ましい。
【0008】
【非特許文献1】厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2005年版)(第50頁〜第68頁)
【特許文献1】特許第3487881(第1頁〜第6頁)
【特許文献2】特開平6−63386(第1頁〜第5頁)
【特許文献3】特開平7−115901(第1頁〜第5頁)
【特許文献4】特開平6−298642(第1頁〜第9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水中における分散性、加工・保存安定性、生体利用率、飲食品に添加した際の魚臭抑制、以上が優れている多価不飽和脂肪酸含有組成物及びこれを添加してなる飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記(1)又は(2)のいずれか一方と、(3)及び(4)を含有する多価不飽和脂肪酸含有組成物が、水に容易に分散し、かつ保存や加熱に対する安定性に優れており飲食品に添加した際に異味・異臭がなく、優れた生体利用率を有することを見出した。
(1)多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体、
(2)多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体を含有する油脂
(3)ポリグリセリン中のトリグリセリン含量が60%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水中における分散性、加工・保存安定性、生体利用率、飲食品に添加した際の魚臭抑制、以上が優れている多価不飽和脂肪酸含有組成物及びこれを添加して成る飲食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0013】
本発明における多価不飽和脂肪酸とは、分子内に二重結合を2個以上有する脂肪酸又はこれを構成成分とする化合物の総称であり、特定の脂肪酸に限定するものではない。一般的に多価不飽和脂肪酸は二重結合の位置によりn−3系とn−6系に大別される。n−3系脂肪酸としては、α−リノレン酸、イコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、n−6系の脂肪酸としてはリノール酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸といった脂肪酸が例示でき、特に限定するものではないが、n−3系多価不飽和脂肪酸が好ましく、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(EPA)が生理活性効果が高いことからより好ましい。
【0014】
この脂肪酸はその誘導体の形でも利用できる。例えば、脂肪酸塩やグリセリン、エタノールとのエステル、リン脂質の構成成分であってもよい。飲食品に対しては簡便に使用できることから、特にグリセリンエステルであるトリグリセリドが推奨される。
【0015】
天然由来の植物油、魚油、植物プランクトンの抽出油には、多価不飽和脂肪酸がトリグリセリドとして含まれており、そのまま本発明の目的に使用できる。抽出油は目的に応じて適宜選択すればよいが、生理的効果を期待するならば多価不飽和脂肪酸の含量が高い方が望ましいことから魚油及び植物プランクトンからの抽出油が好適に利用できる。多価不飽和脂肪酸含量が20%〜90%のものが市販されており、いずれも利用可能である。この場合、天然由来の抽出油に他の原料由来の油脂や合成油を加えて多価不飽和脂肪酸含量を調節してもよい。
【0016】
本発明における該ポリグリセリン脂肪酸エステルは特に限定されるものではなく、脂肪酸とポリグリセリンがエステル結合したものを指す。ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸は天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離して又は分離せずに精製して得られるカルボン酸を官能基として含む物質であれば特に限定するものではない。又は石油等を原料にして化学的に合成して得られる脂肪酸であってもよい。また、これら脂肪酸を水素添加等して還元したものや、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸や、不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよく、1種又は2種以上を組み合わせてもよい。本発明に使用される脂肪酸の具体例としては、炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸、すなわちカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オクチル酸の他、分子中に水酸基を有するリシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びこれらの縮合物等が挙げられる。脂肪酸鎖長については特に限定されるものではないが、乳化安定性の観点から好ましくは炭素数12〜22、より好ましくは14〜18の脂肪酸が推奨される。
一方、ポリグリセリン中のトリグリセリンについては、グリセリンの3量体の純度が重要となる。通常、ポリグリセリンの縮合度は分子中の水酸基の数を反映する水酸基価を測定することにより求められる。すなわち水酸基価1830のグリセリンを原料として脱水縮合を行い、グリセリン4量体に相当する水酸基価1072近辺のものがテトラグリセリン、水酸基価888近辺のものがデカグリセリンと呼称される。したがって化学種としてみると、テトラグリセリン、デカグリセリンと呼ばれるポリグリセリン中にもグリセリン1量体から10量体以上まで、様々な縮合度のポリグリセリンが存在しており、名前の示すグリセリン4量体や10量体は事実上20%以下程度しか含まれていない。本発明の該ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するトリグリセリンについてはこのような水酸基価に基づいた複数のグリセリン縮合物からなるグリセリン3量体含量が低いトリグリセリンでは目的を達成できず、グリセリン3量体の含量が高いものが要求される。具体的にはグリセリン3量体の含量が60%以上、より好ましくは80%であることが望ましい。含量の測定についてはガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフといった各種クロマトグラフ的手法が活用でき、特に限定するものではない。簡便にはポリグリセリン脂肪酸エステルをトリメチルシリル化誘導体とし、ガスクロマトグラフに付すことにより分析できる。具体的に例示すると、ポリグリセリン脂肪酸エステルのトリメチルシリル化誘導体を、メチルシリコン等低極性液相を化学結合させたフューズドシリカキャピラリー管を用いて60〜320℃まで10℃/分の昇温分析を行うことにより、測定することができる。なお、ガスクロマトグラム上のピークの同定は、例えばガスクロマトグラフィーを質量分析装置に導入し、該当ピークの分子量を求めることにより実施することができる。さらに確実な方法としては、高分解能マススペクトルを使用することにより該当ピークの組成式を求め、理論値と比較することにより同定することができる。
この脂肪酸とトリグリセリンを60%以上含有するポリグリセリンとは通常の方法でエステル化される。たとえば脂肪酸とポリグリセリンをアルカリ又は酸触媒の存在化加熱することにより得られる。ポリグリセリンに含まれるトリグリセリンの場合では、1分子中の5つの水酸基に無差別にエステル化が進行するため、反応終了後には未反応のトリグリセリン、モノエステル、ジエステルからペンタエステルまでの化学種の混合物となる。本発明の目的のためには、トリグリセリンモノエステル含量が高いことが望まれ、具体的にはトリグリセリンモノエステル含量60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であることが望ましい。
このような純度のトリグリセリンモノエステルを調製する方法は問わない。たとえばトリグリセリンとアセトンを反応させてジイソプロピリデントリグリセリンとし、残った水酸基と脂肪酸をエステル化した後、アセトン残基を外せばモノエステル含量の高いトリグリセリンエステルが得られる。簡便にはトリグリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させた後、蒸留やクロマトといった手法によりモノエステル含量を高めることができる。なお、この場合の蒸留については、蒸留中の化合物の分解を抑制するため、分子蒸留を行うことが望ましい。
【0017】
本発明におけるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは特に限定されるものではないが、脂肪酸の炭素数が12〜18からなることがより好ましく、脂肪酸の炭素数が16〜18からなることがさらに好ましい。構成成分であるソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンと脂肪酸をエステル化したもので、ソルビットを脱水して得られるソルビタン又はソルビットそのものと脂肪酸とを縮合させて調製される。反応の状況によりソルビット、ソルビタン、ソルバイド及びこれらのエステルが混在する混合物となり、これらの存在割合は反応条件やメーカーにより異なる。本発明に使用するに当たっては特に組成を限定するものではなく、市販のもので好適に利用できる。
【0018】
本発明の多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物の総称であり、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、及びこれらの水溶液が例示でき、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも製剤の調製のしやすさ、安定性からプロピレングリコール、グリセリンが好適に使用できる。
【0019】
本発明におけるHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルは特に限定されるものではないが、乳化安定性の観点からHLB12以上がより好ましく、HLB13以上がさらに好ましく、HLB14以上が最も好ましい。
【0020】
本発明におけるHLB6以下のショ糖脂肪酸エステルは特に限定されるものではないが、乳化安定性の観点からHLB5以下が好ましく、HLB3以下がより好ましい。本発明におけるHLB6以下のショ糖脂肪酸エステルは特に限定されるものではないが、脂肪酸の炭素数が4〜12からなることが好ましく、脂肪酸の炭素数が4〜10からなることがより好ましく、脂肪酸の炭素数が4〜6からなることがさらに好ましく、炭素数4の脂肪酸からなることが最も好ましい。これは通常、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)と呼称される。
【0021】
本発明におけるレシチンとは、グリセリン骨格に脂肪酸残基とリン酸基、それに結合した塩基性化合物や糖からなる化合物の総称であり、一般的にはダイズ、ナタネを起源とするものや鶏卵を起源とするものが利用できる。その種類については特に限定するものではなく、油脂状のクルードレシチンやこれを脱脂した粉末状の高純度レシチン、溶剤やクロマト技術等を用いて特定の成分の比率を高めた分別レシチン、またこれらのレシチンを酵素処理した酵素分解レシチンや酵素改質レシチンといったものが挙げられる。レシチンの選択には目的に応じて適宜利用すればよいが、取り扱いやすさ、水に分散させたときの安定性から、クルードレシチン、酵素分解レシチンが好適に併用される。
【0022】
以上に挙げた各種素材が本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物の構成成分となるが、その配合割合は目的に応じて適宜調整をすればよく特に定めるものではないが、推奨される配合割合を以下に示す。
多価不飽和脂肪酸及び/又は多価不飽和脂肪酸誘導体及び/又はこれらを含有する油脂が10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。多価不飽和脂肪酸及び/又は多価不飽和脂肪酸誘導体及び/又はこれらを含有する油脂の含量が多すぎると組成物の安定性が低下し、加工食品への適用が困難になる。逆に少なすぎると必要な多価不飽和脂肪酸を摂取するために食品に添加しなければならない製剤の添加量が多くなり、加工食品の物性、例えば食感等が悪化する。
乳化剤が11〜40重量%、好ましくは15〜25重量%である。乳化剤の添加量は、多価不飽和脂肪酸及び/又は多価不飽和脂肪酸誘導体及び/又はこれらを含有する油脂の配合割合に左右されるが、過少であると製剤の不安定化につながり、逆に過量であっても製剤の不安定化につながるうえに、風味が悪化する。
乳化剤の中でもHLBが6以下のショ糖脂肪酸エステルが製剤中に1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。また、乳化剤のうち該ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの比率が50:50〜90:10、好ましくは75:25〜85:15である。さらに、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステル及びレシチンの総量がトリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの総量に対して、10〜50%、好ましくは20〜45%、より好ましくは30〜40%である。
多価アルコールが20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。多価アルコールについては、過量であると多価不飽和脂肪酸及び/又は多価不飽和脂肪酸誘導体及び/又はこれらを含有する油脂の配合割合が低下し、逆に過少であると組成物の安定性が悪化するほか、粘度が上昇するため取り扱いが困難となる。
【0023】
これら多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体、多価アルコール、トリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、HLB10以上のショ糖脂肪酸エステル、HLB6以下のショ糖脂肪酸エステル、レシチンからなる製剤は十分本発明の目的を達成しうるものであるが、ここにポリフェノールやビタミンEを添加することで、さらに製剤の保存安定性や風味を向上させることができ好ましい。ポリフェノールとは光合成を行う植物のほとんどに含有されているものであり、特に限定するものではなく、フラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、アントシアニン、フラバノール等のフラボノイド類、その他の非フラボノイド類、及びこれらの誘導体、重合体等が挙げられる。天然・合成のいずれも使用できるが、天然の植物抽出物が好ましい。
【0024】
ポリフェノールの具体例としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、タンニン酸、ガロタンニン、エラジタンニン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、エラグ酸、ロズマリン酸、ルチン、クエルセチン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゴシペチン、アントシアニン、ロイコアントシアニン、プロアントシアニジン、エノシアニン、及びこれらの誘導体、重合体、立体異性体から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0025】
植物の具体例として、茶等のツバキ科植物、ブドウ等のブドウ科植物、コーヒー等のアカネ科植物、カカオ等のアオギリ科植物、ソバ等のタデ科植物、グーズベリー、クロフサスグリ、アカスグリ等のユキノシタ科植物、ブルーベリー、ホワートルベリー、ブラックハクルベリー、クランベリー、コケモモ等のツツジ科植物、赤米、ムラサキトウモロコシ等のイネ科植物、マルベリー等のクワ科植物、エルダーベリー、クロミノウグイスカグラ等のスイカズラ科植物、プラム、ヨーロッパブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、エゾイチゴ、セイヨウキイチゴ、オオナワシロイチゴ、オランダイチゴ、クロミキイチゴ、モレロチェリー、ソメイヨシノ、セイヨウミザクラ、甜茶、リンゴ等のバラ科植物、エンジュ、小豆、大豆、タマリンド、ミモザ、ペグアセンヤク等のマメ科植物、紫ヤマイモ等のヤマイモ科植物、カキ等のカキ科植物、ヨモギ、春菊等のキク科植物、バナナ等のバショウ科植物、ヤマカワラムラサキイモ等のヒルガオ科植物、ローゼル等のアオイ科植物、赤シソ等のシソ科植物、赤キャベツ等のアブラナ科植物等が挙げられ、これらの植物に応じて果実、果皮、花、葉、茎、樹皮、根、塊根、種子、種皮等の部位が任意に選ばれる。
【0026】
中でも、ポリフェノールの生理機能の点より、ツバキ科植物である茶より抽出して得られるポリフェノールが好ましく、中でも緑茶より抽出して得られるポリフェノールが更に好ましい。
【0027】
茶より得られるポリフェノールとしては、(+)−カテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピガロカテキンガレート、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートB、テアフラビンジガレート等があり、これらから選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
また、抽出物中のポリフェノールの純度についても特に限定するものではなく、好ましくは40%以上であり、より好ましくは、60%以上である。
【0029】
なお、市販されているものとして、サンフェノン(太陽化学株式会社製)、テアフラン(株式会社伊藤園製)、サンウーロン(サントリー株式会社製)、ポリフェノン(三井農林株式会社製)等のポリフェノール含有素材も使用できる。
【0030】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物に添加するポリフェノール量は、特に規定するものではない。ただし、少なすぎると抗酸化効果が劣り、多すぎるとその特有の苦味から添加された食品の風味を損なう恐れがあるため、0.01〜1.0%が好ましく、0.1〜0.5%がより好ましい。
【0031】
これらに加え、他の有用素材を併用して製剤の安定性や付加価値を向上させたり、粘度を調整して取り扱いを容易にすることも可能である。そのような成分を例示するならば、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、サポニン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルといった乳化剤、カンゾウ抽出物、サッカリンナトリウム、アスパルテームといった甘味料、クチナシ色素、黄色4号といった着色料、ソルビン酸、ヒノキチオールといった保存料、アルギン酸、メチルセルロースといった増粘剤、エリソルビン酸、アスコルビン酸、トコフェロールといった酸化防止剤、クエン酸、フィチン酸といった酸味料、イノシン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムといった調味料、柑橘系フレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバーといった香料、ビタミンA、D、E、C、B群、パントテン酸といったビタミン類、L−リジン塩、L−トレオニン、L−トリプトファンといったアミノ酸類、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムといったミネラル類、油脂、タンパク質、デキストリン、水、エタノールといった食品素材が挙げられる。
【0032】
本発明の組成物の調製方法は、特に定めるものではない。例えば多価アルコールに乳化剤を混合しておき、攪拌しながら徐々に油性物質すなわち本発明では多価不飽和脂肪酸及び/又は多価不飽和脂肪酸誘導体及び/又はこれらを含有する油脂を添加して調製することができる。この場合、多価アルコール又は含水多価アルコールと乳化剤からD相を形成させ、ここへ油性物質を添加してもよい。さらには油性物質に乳化剤を添加しておき、攪拌しながら徐々に多価アルコールを添加して転相させてもよい。
【0033】
この組成物の調製に使用できる機器類としては、通常の攪拌装置や乳化装置が利用できる。例えばプロペラ型、アンカー型、パドル型の攪拌機、より強力なせん断力を付与できるローター・ステーター型乳化機、磨砕機能を備えたミル型乳化機、高圧化でキャビテーションを発生させる高圧ノズル型乳化機、高圧下で液同士を衝突させ、衝撃力、乱流によるせん断力及びキャビテーションにより乳化させる高圧衝突型乳化機、超音波でキャビテーションを発生させる超音波乳化機、細孔を通して均一乳化を行う膜乳化機、エレメント内で液の分散集合を繰り返して均一混合するスタティックミキサーといったものが例示できる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの機器の使用法については限定するものではないが、一般的にホモミキサーと称されるローター・ステーター型乳化機が簡便に利用できるため好適である。さらには、これに必要に応じてホモジナイザーと称される高圧ノズル型乳化機を併用すると、より安定な組成物が調製できるため、より好ましい。
【0034】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を生体にとって有効に利用させるためには、製剤を水に分散させた時の乳化粒子径がポイントとなる。また粒子径のコントロールにより、水に分散させたときに透明から白色のクラウディ状態まで変化させることができ、特に飲料においては製品を設計する上での重要な要素となる。この粒子径は先述した構成する成分の配合割合と乳化装置の選定によりコントロールすることができる。本発明の組成物を水に分散させたときの粒子径は特に限定するものではなく、食品に添加したときの目的に応じて調整すればよい。優れた生体利用率を有し、熱安定性を向上させるという観点から見れば、粒子径がより小さい方が望ましい反面、粒子のトータルの表面積が増加することにより不飽和脂肪酸が酸化されやすくなるため、小さすぎるものは望ましくない。よって、乳化安定性及び風味の双方の観点より平均粒子径が0.01μm〜1μm、好ましくは0.05μm〜0.5μm、より好ましくは0.2μm〜0.4μmの範囲にあるものが最も好ましい。
【0035】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物は飲食品、医薬部外品、医薬品、飼料、ペットフード等に幅広く利用できるが、特に人が手軽に摂取できる飲食品が好ましい。
【0036】
本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含有する飲食品とは、前述の設計に基づいて調製された製剤を含有する食品を指し、特に限定するものではない。例えば、即席麺、カップ麺、レトルト・調理食品、調理缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰、フリーズドライ食品といった即席食品、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料水、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料といった嗜好飲料類、パン、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、から揚げ粉・パン粉、ギョーザ・春巻の皮といった小麦粉食品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子といった菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料、魚醤、ニョクマムといった基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素、たれ類、ドレッシング、麺つゆ、スパイスといった複合調味料、バター、マーガリン、マヨネーズといった油脂食品、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム、調製粉乳、クリームといった乳・乳製品、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品といった冷凍食品、水産缶詰・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮といった水産加工品、畜産缶詰・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ、畜産珍味類といった畜産加工品、農産缶詰、果実缶詰、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆、農産乾物類、シリアルといった農産加工品、ベビーフード、離乳食、ふりかけ、お茶漬けのり、サプリメント等を例示できる。
【0037】
食品への添加量は特に定めるものではなく、目的に応じて適宜調整すればよい。敢えて例示するならば、食品100gもしくは食品1食あたり、多価不飽和脂肪酸として0.1mg〜1000mg、好ましくは0.5mg〜500mg、より好ましくは1mg〜50mgといった添加量が挙げられる。
こういった加工食品に対して本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を添加する場合、組成物中に配合されたポリフェノールとは別にポリフェノール類を添加すると、保存中の多価不飽和脂肪酸の酸化劣化を抑制し、製品価値を高めることができる。特に多価不飽和脂肪酸の起源が魚油である場合、酸化に伴う魚臭の発生を顕著に抑制することができる。この場合の添加量は特に限定するものではなく、食品の設計に合せて適宜調整すればよいが、飲食品100gに対して1〜100mg、好ましくは5〜50mgの添加が推奨される。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を上げて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
グリセリン200gにトリグリセリンモノオレエート(太陽化学株式会社:サンソフトA−171C、炭素数18・HLB10.0、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量60%、トリグリセリンモノオレイン酸エステル含量40%)40g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王株式会社:レオドールTW−S120V;炭素数18・HLB14.9)10gを加え、加温融解した。充分に混合されたことを確認したうえで品温を50℃まで冷却した後、ホモミキサーを用い3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社:DHA含量22%品)150gを徐々に添加した。精製魚油を全て投入した後、ホモミキサーで8000rpm、5分間攪拌し、次いで水50gを添加し本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0040】
実施例2
実施例1のトリグリセリンモノオレエートをトリグリセリンモノステアレート(太陽化学株式会社:サンソフトA−181C;炭素数18・HLB10.0、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量60%、トリグリセリンモノステアリン酸エステル含量40%)に変更した以外は全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0041】
実施例3
グリセリン200gにトリグリセリンモノステアレート(太陽化学株式会社:サンソフトA−181C;炭素数18・HLB10.0、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量60%、トリグリセリンモノステアリン酸エステル含量40%)40g及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社:レオドールTW−O120V;炭素数18・HLB15.0)10gを加え、さらに酵素分解レシチン(Degussa Texturant Systems社:Emultop HL50 IP)2gを加え、加温融解した。充分に混合されたことを確認したうえで品温を50℃まで冷却した後、ホモミキサーを用い3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社:DHA含量22%品)150gとレシチン(太陽化学株式会社:サンレシチンL−6)2gの混合物を徐々に添加した。全て投入した後、ホモミキサーで8000rpm、5分間攪拌し、次いで水50gを添加し本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0042】
実施例4
実施例3のトリグリセリンモノステアレートをトリグリセリンモノパルミテート(理研ビタミン株式会社:ポエムTRP−100;炭素数16・HLB12.7、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量90%、トリグリセリンモノパルミチン酸エステル含量80%)に変更した以外は全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0043】
実施例5
グリセリン200gにトリグリセリンモノパルミテート(太陽化学株式会社:サンソフトA−161C;炭素数16・HLB11.0、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量60%、トリグリセリンモノパルミチン酸エステル含量30%)40g及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(花王株式会社:レオドールTW−O120V;炭素数18・HLB15.0)10gを加え、さらにショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社:DKエステルSS・HLB20)5gを加え、加温融解した。充分に混合されたことを確認したうえで品温を50℃まで冷却した後、ホモミキサーを用い3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社:DHA含量22%品)150gとショ糖酢酸イソ酪酸エステル(イーストマンケミカルジャパン株式会社:SAIB・HLB1)40gの混合物を徐々に添加した。精製魚油を全て投入した後、ホモミキサーで8000rpm、5分間攪拌し、次いで水50gを添加し本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0044】
実施例6
グリセリン200gにトリグリセリンモノオレエート(太陽化学株式会社:サンソフトA−171C;炭素数18・HLB10.0、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量60%、トリグリセリンモノオレイン酸エステル含量40%)40g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王株式会社:レオドールTW−S120V;炭素数18・HLB14.9)10gを加え、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社:DKエステルSS・HLB20)10g及び酵素分解レシチン(Degussa Texturant Systems社:Emultop HL50 IP)2gを加え、加温融解した。充分に混合されたことを確認したうえで品温を50℃まで冷却した後、ホモミキサーを用い3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社:DHA含量22%品)150gとレシチン(太陽化学株式会社:サンレシチンL−6)2gとショ糖酢酸イソ酪酸エステル(イーストマンケミカルジャパン株式会社:SAIB・HLB1)40gとソルビタンモノステアレート(花王株式会社:エマゾールS−10V;炭素数18・HLB4.7)2gの混合物を徐々に添加した。全て投入した後、ホモミキサーで8000rpm、5分間攪拌し、次いで水50gを添加し本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0045】
実施例7
実施例5のトリグリセリンモノパルミテートをトリグリセリンモノミリステート(理研ビタミン株式会社:ポエムTRL−100;炭素数14・HLB13.5、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量80%、トリグリセリンモノミリスチン酸エステル含量70%)に変更した以外は全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0046】
実施例8
実施例6のトリグリセリンモノオレエートをトリグリセリンモノオレエート(理研ビタミン株式会社:ポエムTRO−100;炭素数18・HLB11.8、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量95%、トリグリセリンモノオレイン酸エステル含量85%)に変更した以外は全く同じ条件で調製し、多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0047】
比較例1
グリセリン200gにデカグリセリンモノオレエート(太陽化学株式会社:サンソフトQ−17S;炭素数18・HLB12.0、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量40%、トリグリセリンモノオレイン酸エステル含量20%)40g及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王株式会社:レオドールTW−S120V;炭素数18・HLB14.9)10gを加え、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社:DKエステルSS・HLB20)10g及び酵素分解レシチン(Degussa Texturant Systems社:Emultop HL50 IP)2gを加え、加温融解した。充分に混合されたことを確認したうえで品温を50℃まで冷却した後、ホモミキサーを用い3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社:DHA含量22%品)150gとレシチン(太陽化学株式会社:サンレシチンL−6)2gとショ糖酢酸イソ酪酸エステル(イーストマンケミカルジャパン株式会社:SAIB・HLB1)40gとソルビタンモノステアレート(花王株式会社:エマゾールS−10V;炭素数18・HLB4.7)2gの混合物を徐々に添加した。全て投入した後、ホモミキサーで8000rpm、5分間攪拌し、次いで水50gを添加し本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0048】
比較例2
グリセリン200gにトリグリセリンモノオレエート(理研ビタミン株式会社:ポエムTRO−100;炭素数18・HLB11.8、ポリグリセリン中のトリグリセリン含量95%、トリグリセリンモノオレイン酸エステル含量85%)40gを加え、ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社:DKエステルSS・HLB20)10g及び酵素分解レシチン(Degussa Texturant Systems社:Emultop HL50 IP)2gを加え、加温融解した。充分に混合されたことを確認したうえで品温を50℃まで冷却した後、ホモミキサーを用い3000rpmで攪拌しつつ、別途澄明に融解した精製魚油(マルハ株式会社:DHA含量22%品)150gとレシチン(太陽化学株式会社:サンレシチンL−6)2gとショ糖酢酸イソ酪酸エステル(イーストマンケミカルジャパン株式会社:SAIB・HLB1)40gとソルビタンモノステアレート(花王株式会社:エマゾールS−10V;炭素数18・HLB4.7)2gの混合物を徐々に添加した。全て投入した後、ホモミキサーで8000rpm、5分間攪拌し、次いで水50gを添加し本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を得た。
【0049】
試験例1
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた多価不飽和脂肪酸含有組成物0.1gに水を加えて100gとし、よく攪拌して均一な分散液を得た。各分散液の粒度分布を粒度分布計(ベックマンコールター社、LS−230)にて測定した。また、分散液を湯浴中にて15分間加熱し放冷後、液面の分離状態及び風味の評価を行った。酸糖液を用いて同等の試験を行い液面の分離状態及び風味の評価を行った。
【0050】
ここで用いた酸糖液は、クエン酸(結晶)0.16%、クエン酸ナトリウム0.06%、果糖ブドウ糖液糖8%を水に溶解させ、pHを3.4に調整した一般的な酸性飲料のベースである。
【0051】
評価方法
10名のパネラーによる官能評価を行い、0〜3の評価点の平均点を得点とする。
評価点
0:魚臭をまったく感じない
1:わずかに魚臭を感じる
2:魚臭を感じる
3:著しい魚臭を感じる
【0052】
結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
試験例1の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物は比較例より優れた安定性を有していることが確認できた。
【0055】
試験例2
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた多価不飽和脂肪酸含有組成物0.2gにpH3〜7調整液(クエン酸・クエン酸ナトリウムにて調整)を加えて200gとし、よく攪拌して均一な分散液を得た。また、コントロールとしてイオン交換水を用いて同様に分散液を調製した。分散液を93℃まで加熱殺菌し、粒径の変化及び液面の油分分離状態を確認した。
【0056】
粒径の結果を表2、液面の状態を表3に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
実施例9
実施例8で調製した製剤1.28gに市販オレンジジュース(キリンビバレッジ株式会社:トロピカーナ 100%ジュース オレンジ)を加えて200gとし、93℃まで加熱殺菌後、瓶に充填し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含むオレンジジュースを得た。
【0060】
比較例3
比較例2で調製した製剤1.28gに市販オレンジジュース(キリンビバレッジ株式会社:トロピカーナ 100%ジュース オレンジ)を加えて200gとし、93℃まで加熱殺菌後、瓶に充填し、多価不飽和脂肪酸含有組成物を含むオレンジジュースを得た。
【0061】
試験例3
実施例9、比較例3で調製した飲料を37℃で2週間保存し、油滴の分離状態及び風味の確認を行った。
【0062】
評価方法
10名のパネラーによる官能評価を行い、0〜3の評価点の平均点を得点とする。
評価点
0:魚臭をまったく感じない
1:わずかに魚臭を感じる
2:魚臭を感じる
3:著しい魚臭を感じる
【0063】
結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
試験例3の結果より、本発明品は飲料に添加した際にも優れた安定性を有し、風味の劣化もなく良好な状態を維持することが確認できた。
【0066】
実施例10
実施例8で調製した製剤1.28gに牛乳(明治乳業株式会社:おいしい牛乳)を加えて200gとし、瓶に充填後レトルト殺菌機を用いて121℃で20分間のレトルト殺菌を行い、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む牛乳を得た。
【0067】
比較例4
比較例2で調製した製剤1.28gに牛乳(明治乳業株式会社:おいしい牛乳)を加えて200gとし、瓶に充填後レトルト殺菌機を用いて121℃で20分間のレトルト殺菌を行い、多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む牛乳を得た。
【0068】
試験例4
実施例10、比較例4で調製した飲料を37℃で2週間保存し、油滴の分離状態及び風味の確認を行った。
【0069】
評価方法
10名のパネラーによる官能評価を行い、0〜3の評価点の平均点を得点とする。
評価点
0:魚臭をまったく感じない
1:わずかに魚臭を感じる
2:魚臭を感じる
3:著しい魚臭を感じる
【0070】
結果を表5に示す。
【0071】
【表5】

【0072】
試験例4の結果より、本発明品は飲料に添加した際にも優れた安定性を有し、風味の劣化もなく良好な状態を維持することが確認できた。
【0073】
実施例11
実施例8で調製した製剤1.2gとグアーガム(太陽化学株式会社:ネオソフトG)0.3gを10gの水に分散・溶解させ、100%ストロベリーピューレ(太陽化学株式会社:ストロベリーピューレCP)を加えて100gとし、これをヨーグルト添加用のストロベリープレパレーションとした。湯浴中にて80℃で15分間加熱殺菌した後冷却し、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含むストロベリープレパレーションを得た。
【0074】
比較例5
比較例2で調製した製剤1.2gとグアーガム(太陽化学株式会社:ネオソフトG)0.3gを10gの水に分散・溶解させ、100%ストロベリーピューレ(太陽化学株式会社:ストロベリーピューレCP)を加えて100gとし、これをヨーグルト添加用のストロベリープレパレーションとした。湯浴中にて80℃で15分間加熱殺菌した後冷却し、多価不飽和脂肪酸含有組成物を含むストロベリープレパレーションを得た。
【0075】
試験例5
実施例11、比較例5で調製したストロベリープレパレーションを37℃で1〜4週間保存し、市販のヨーグルトを200g加えてよく混ぜたものについて、風味及び油の分離状態の確認を行った。
【0076】
評価方法
10名のパネラーによる官能評価を行い、0〜3の評価点の平均点を得点とする。
評価点
0:魚臭をまったく感じない
1:わずかに魚臭を感じる
2:魚臭を感じる
3:著しい魚臭を感じる
【0077】
結果を表6に示す。
【0078】
【表6】

【0079】
試験例5の結果より、本発明はヨーグルトプレパレ−ションに添加した場合の保存安定性にも優れていることが確認できた。
【0080】
実施例12
実施例8で調製した製剤1.28gに市販流動食(明治乳業株式会社:メイバランス)を加えて100gとした。これを瓶に充填後レトルト殺菌機を用いて121℃で20分間のレトルト殺菌を行い、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む流動食を得た。
【0081】
比較例6
比較例2で調製した製剤1.28gに市販流動食(明治乳業株式会社:メイバランス)を加えて100gとした。これを瓶に充填後レトルト殺菌機を用いて121℃で20分間のレトルト殺菌を行い、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む流動食を得た。
【0082】
試験例6
実施例12、比較例6で調製した本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む流動食を37℃で3ヶ月保存し、風味及び油の分離状態の確認を行った。
【0083】
評価方法
10名のパネラーによる官能評価を行い、0〜3の評価点の平均点を得点とする。
評価点
0:魚臭をまったく感じない
1:わずかに魚臭を感じる
2:魚臭を感じる
3:著しい魚臭を感じる
【0084】
結果を表7に示す。
【0085】
【表7】

【0086】
試験例6の結果より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む流動食は状態・風味のいずれの観点からみても安定性にも優れていることが確認できた。
【0087】
試験例7
男性12名をA〜Dの4つの群に分け、それぞれに200mlのミルクシェークを飲食させた。ミルクシェークにDHAとして1000mgを投与するため、A群には実施例8で得られた多価不飽和脂肪酸含有組成物15.9g、B群には比較例2で得られた多価不飽和脂肪酸含有組成物15.9g、C群には精製魚油(マルハ株式会社 DHA含量22%)4.5gを、またコントロールとしてD群には水5mlを強制的に経口投与した。投与後、数時間おきに72時間まで、それぞれから血液を採取し、血中に含まれる脂質中のDHA含量(%)を測定した。また各群の72時間内のAUC(血漿薬物濃度曲線下面積)を求めた。
【0088】
結果を表8に示す。
【0089】
【表8】

【0090】
消化吸収による血中への移行率はA群の方が優れており、また吸収傾向についても緩やかに吸収され、長期的に吸収が持続していることが分かった。
【0091】
以上より、本発明の多価不飽和脂肪酸含有組成物は、経口摂取した際の吸収性に優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、様々な飲食品に応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)又は(2)のいずれか一方と、(3)及び(4)を含有する多価不飽和脂肪酸含有組成物。
(1)多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体
(2)多価不飽和脂肪酸及び/又はその誘導体を含有する油脂
(3)ポリグリセリン中のトリグリセリン含量が60%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルが、成分としてトリグリセリンモノ脂肪酸エステルを60%以上含有する請求項1記載の多価不飽和脂肪酸含有組成物
【請求項3】
多価アルコール、HLBが10以上のショ糖脂肪酸エステル、及びHLBが6以下のショ糖脂肪酸エステルを含有する請求項1〜2いずれか記載の多価不飽和脂肪酸含有組成物。
【請求項4】
レシチンを含有する請求項1〜3いずれか記載の多価不飽和脂肪酸含有組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の多価不飽和脂肪酸含有組成物を含む飲食品。

【公開番号】特開2008−178341(P2008−178341A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14098(P2007−14098)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】