説明

多孔質包装材及び使い捨てカイロ

【課題】スプレー塗布性及びヒートシール加工性に優れた多孔質包装材及びそれを用いた使い捨てカイロを提供する。
【解決手段】本発明の多孔質包装材は、ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を繊維化して形成した多孔性接着剤層を介して、多孔質フィルムと不織布とが接着された多孔質包装材であって、前記ポリアミド系接着剤の融点が130〜160℃であり、且つ前記ポリアミド系接着剤の190℃、荷重2.16kgにおける溶融粘度が100Pa・s以下であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質包装材に関する。より詳細には、スプレー塗布(スプレー塗工)性に優れた接着剤を用いており、さらに高温、高圧下のヒートシール加工の際でも接着剤の裏抜け(不織布側より加工時に接着剤が染み出してロールに付着すること)を防止しうる、加工性及び生産性に優れた多孔質包装材に関する。さらに、該多孔質包装材を用いた使い捨てカイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てカイロの発熱体や、除湿剤、消臭剤などを封入する袋体を構成する部材(袋体構成部材)には、多孔質包装材が広く用いられている。例えば、通気性の観点から、多孔質フィルムと不織布とを、接着剤をスプレー塗布することにより繊維化して形成した接着剤層で接着して製造された多孔質包装材が知られている。さらに、多孔質フィルムと不織布との接着性、保存安定性、耐熱性等の観点から、ホットメルト型のポリアミド系共重合体を成分とする接着剤(以下、「ポリアミド系接着剤」と称する場合がある)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、カイロなどの生産性を向上させる目的で、生産速度がより高速となってきている。そのため、多孔質包装材をヒートシールする際に、短時間でのシール加工が要求され、加工条件がより高温、高圧となってきている。このようにヒートシール加工条件が、高温化・高圧化するのに伴い、上記の従来のポリアミド系接着剤では、接着剤が加工ロールに付着する問題が生ずるようになってきた。特に、特許文献1のように、接着剤の流動性を向上させスプレー塗布性を改善すること目的として、190℃の溶融粘度を低下させたポリアミド系共重合体を成分とする接着剤においては、接着剤の融点やヒートシール加工温度付近の溶融粘度も低くなる傾向があり、上記の問題がより顕著におこる。
【0004】
さらに、コスト削減のため、不織布の低目付化(例えば、20〜35g/m2程度、さらには25〜30g/m2程度)が要求されてきている。不織布の低目付化により、シール加工時に熱が不織布に伝わりやすくなり、また、不織布厚みが薄くなり、接着剤が染み出しやすくなるため、上記の問題が生じやすくなってきている。
【0005】
すなわち、ポリアミド系接着剤のスプレー塗布性(生産性)と、ヒートシール加工性を両立した多孔質包装材は未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−328224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、ヒートシール加工性及び生産性(接着剤のスプレー塗布性)に優れた多孔質包装材及びそれを用いた使い捨てカイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の融点と溶融粘度を有する、ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を、繊維化して形成した多孔性接着剤層を介して、多孔質フィルムと不織布とを接着することにより、生産性(スプレー塗布性)及びヒートシール加工性に優れた多孔質包装材が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を繊維化して形成した多孔性接着剤層を介して、多孔質フィルムと不織布とが接着された多孔質包装材であって、前記ポリアミド系接着剤の融点が130〜160℃であり、且つ前記ポリアミド系接着剤の190℃、荷重2.16kgにおける溶融粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする多孔質包装材を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前記の多孔質包装材を含む使い捨てカイロを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多孔質包装材は、特定の溶融粘度を有する、ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を用いているため、接着剤層形成時のスプレー塗布性が良好で生産性に優れる。なおかつ、融点を特定の範囲に制御したポリアミド系接着剤を用いているため、高温高圧下でヒートシール加工を行っても、接着剤が不織布を通過して加工ロールに付着することを防止でき、ヒートシール加工性にも優れている。このため、例えば、高速生産されるカイロの構成部材などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の多孔質包装材の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の使い捨てカイロの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多孔質包装材は、ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を繊維化して形成した多孔性接着剤層を介して、多孔質フィルムと不織布とが接着された多孔質包装材である。
【0014】
[多孔性接着剤層]
(ポリアミド系接着剤)
本発明における多孔性接着剤層は、多孔質フィルムと不織布との接着性、保存安定性、耐熱性の観点から、ポリアミド系接着剤により形成される。ポリアミド系接着剤は、溶融塗工されるホットメルト型の接着剤である。
【0015】
上記ポリアミド系接着剤は、ポリアミド系共重合体を必須成分として含む。ポリアミド系接着剤は、ポリアミド系共重合体のみからなるものであってもよいし、必要に応じて、軟化剤や老化防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。ポリアミド系接着剤中のポリアミド系共重合体の含有量は、特に限定されないが、80〜100重量%が好ましく、より好ましくは90〜100重量%である。
【0016】
上記ポリアミド系接着剤は、後述の190℃、荷重2.16kgにおけるにおける溶融粘度が100Pa・s以下であり、融点が130〜160℃である。
【0017】
上記のポリアミド系共重合体としては、例えば、アミン類と脂肪族二塩基酸とラクタムとを重縮合して得られるポリアミド系共重合体が好ましい。上記アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルアミン、p,p'−メチレンジアミン、アルカノールアミンなどが挙げられる。中でも、1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。上記脂肪族二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などの飽和脂肪酸;クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸などの不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸などが例示される。中でも、アジピン酸、セバシン酸、又は両者の併用(アジピン酸及び/又はセバシン酸)が好ましい。上記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ラウリルラクタムなどが例示される。中でも、ε−カプロラクタムが好ましい。
【0018】
上記のポリアミド系共重合体としては、さらに具体的には、例えば、以下の式で表されるポリアミド系共重合体が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
上記式中、xは正の整数、yは正の整数を表す。また、mは2〜10の整数、nは2〜10の整数を表す。なお、1分子中に異なるmが含まれていてもよく、1分子中に異なるnが含まれていてもよい。また、ポリアミド系共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0021】
本発明におけるポリアミド系共重合体としては、特に、以下の、1,6−ヘキサメチレンジアミンに由来する構成単位(「1,6−ヘキサメチレンジアミンユニット(HMDA)」と称する場合がある)、ε−カプロラクタムに由来する構成単位(「カプロラクタムユニット(CL)」と称する場合がある)、アジピン酸に由来する構成単位(「アジピン酸ユニット(AA)」と称する場合がある)、セバシン酸に由来する構成単位(「セバシン酸ユニット(SA)」と称する場合がある)を構成単位とするポリアミド系共重合体が好ましく挙げられる。上記ポリアミド系共重合体における、それぞれの構成単位の組成比(モル比)は、特に限定されないが、例えば、1,6−ヘキサメチレンジアミンユニットとカプロラクタムユニットの組成比[HMDA:CL](モル比)は、1:1/10〜1:10が好ましく、より好ましくは1:1/5〜1:5、さらに好ましくは、1:1〜1:3である。また、アジピン酸ユニットとセバシン酸ユニットの組成比[AA:SA](モル比)は、1:1/10〜1:10が好ましく、より好ましくは1:1/5〜1:5、さらに好ましくは、1:1/3〜1:3である。「1,6−ヘキサメチレンジアミンユニットのモル数」と「アジピン酸ユニットとセバシン酸ユニットの合計モル数」はほぼ等しく、前者と後者の組成比[HMDA:(AA+SA)](モル比)は、1:1/10〜1:10が好ましく、より好ましくは1:1/5〜1:5、さらに好ましくは、1:1/2〜1:2である。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
上記ポリアミド系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5000〜50000が好ましく、より好ましくは、8000〜20000である。重量平均分子量が5000未満であると、溶融粘度が下がり繊維状に塗工はできるが機械的物性(引張強度、耐久性)が低下するため、剥離力がでない場合がある。また、重量平均分子量が50000を超えると、溶融粘度が上がり過ぎるため、スプレー塗工できない場合がある。なお、本発明における重量平均分子量は、[GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィ法)]に基づいて測定される。
【0027】
上記ポリアミド系共重合体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記ポリアミド系接着剤の190℃、荷重2.16kgにおける溶融粘度(以下、「溶融粘度(190℃、2.16kg)」と称する場合がある)は、100Pa・s以下であり、より好ましくは10〜50Pa・sである。上記溶融粘度(190℃、2.16kg)が100Pa・sを超えると、190℃付近の溶融温度では、粘度が高くスプレー塗布性が低下する。また、このため、溶融温度をより高温化すると、ポリアミド系共重合体の分解や、不織布、多孔質フィルムの熱変形などの問題が生じる。また、10Pa・s未満で低すぎる場合には、ポリアミド系接着剤がうまく繊維化されなくなり、接着性に影響を及ぼす場合がある。
【0029】
上記溶融粘度(190℃、2.16kg)は、ISO1133に準拠して、「Melt Indexer MI−3 and MP−D」(ゴットフェルト(Gottfert)製)を用いて、設定温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定することができる。
【0030】
上記ポリアミド系接着剤の130℃における溶融粘度(以下、「溶融粘度(130℃)」と称する場合がある)は、1000Pa・s以上が好ましく、より好ましくは104〜109Pa・s、さらに好ましくは、105〜108Pa・sである。上記溶融粘度(130℃)が1000Pa・s未満であると、高温でヒートシールする際に、接着剤層が溶融又は変形して、不織布を通過し加工ロールへ接着剤が付着する場合がある。
【0031】
上記ポリアミド系接着剤の100℃における溶融粘度(以下、「溶融粘度(100℃)」と称する場合がある)は、1000000Pa・s以上が好ましく、より好ましくは106〜109Pa・s、さらに好ましくは106〜108Pa・sである。上記溶融粘度が1000000Pa・s未満であると、高温でヒートシールする際に、接着剤層が溶融又は変形して、不織布を通過し加工ロールへ接着剤が付着する場合がある。
【0032】
なお、上記溶融粘度(130℃)及び溶融粘度(100℃)は、ポリアミド系接着剤をフィルム化して固体粘弾性測定を行い、複素粘度として算出する。上記固体粘弾性測定は測定周波数(ω)=1Hzで測定し、複素粘度(η*)は、複素弾性率(E*)を用いて以下の式より算出できる。
η* = G*/ω = E*/3ω
* : ずり変形における複素弾性率
ω : 測定周波数
【0033】
上記ポリアミド系接着剤の融点は、130〜160℃であり、より好ましくは、135〜155℃である。上記融点が130℃未満の場合には、ヒートシール時に接着剤が加工ロールに付着しやすくなり、ヒートシール加工性が低下する。160℃を超えると、不織布と多孔質フィルムを貼り合わせる時のカーテンスプレー塗布(塗工)ができない。なお、ポリアミド系接着剤の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができ、より詳細には後述の方法に基づき測定される。
【0034】
(多孔性接着剤層)
本発明における多孔性接着剤層は、上記ポリアミド系接着剤を、スプレー方式(スプレー塗布)により繊維化して形成する。より詳細には、上記ポリアミド系接着剤を、カーテンスプレー方式により、加熱溶融下において熱風を介し吹き付けて繊維化して塗布する方法にて形成される。スプレー方式にて塗布することにより、通気性を維持することができる。
【0035】
上記のカーテンスプレー方式における加熱温度(加熱溶融温度)は、特に限定されないが、180℃以上が好ましく、より好ましくは190〜220℃、さらに好ましくは195〜210℃である。加熱温度が180℃未満では、ポリアミド系接着剤の粘度が高く、ポンプ詰まりが生じる場合や塗工状態が悪くなる場合がある。また、220℃を超えて高すぎると、カーテンスプレーダイスが熱による影響で歪み、故障の原因となる場合がある。さらに、ポリアミド系接着剤が劣化し、多孔質フィルムと不織布の貼り合わせ強度が弱くなる場合がある。
【0036】
上記のカーテンスプレー方式におけるエアー流量(熱風の流量)は、特に限定されないが、200〜700L/分が好ましく、より好ましくは300〜600L/分である。また、エアー温度(熱風の温度)は、特に限定されないが、180〜280℃が好ましく、より好ましくは200〜260℃である。
【0037】
上記の多孔性接着剤層の平均繊維径は、15〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。平均繊維径が15μm未満であると、不織布と多孔質フィルムの貼り合わせ強度が低下する場合がある。また、スプレー塗布時に周囲に飛び散り生産の障害となる場合がある。平均繊維径が500μmを超えると、多孔質フィルムに接着剤の温度が伝わり、ダメージを与える場合がある。上記の平均繊維径は、スプレー塗布時のエアー流量(熱風の流量)、カーテンスプレーダイスの高さ、スプレー温度(スプレーダイス温度)等によって制御することができる。
【0038】
ポリアミド系接着剤の塗布量は、接着性、カーテンスプレーの加工性等の観点から、2〜10g/m2が好ましく、より好ましくは3〜5g/m2である。塗布量が2g/m2未満であると、スプレー塗布(塗工)にムラが大きくなり、接着性が低下する場合があり、10g/m2を超える場合は、スプレー塗布により製造できない場合や、スプレー塗布できたとしても、通気性が得られず、熱が蓄積して多孔質フィルムに伝わり悪影響を及ぼす場合がある。
【0039】
[多孔質フィルム]
本発明の多孔質包装材における多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などから構成されるフィルム状の多孔質基材であれば、特に限定されない。上記の中でも、価格、柔軟性の観点やヒートシール性の観点から、ポリオレフィン系樹脂から構成される多孔質フィルムを好適に用いることができる。
【0040】
上記ポリオレフィン系樹脂は、少なくともオレフィン成分(エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンなど)をモノマー成分とする樹脂であれば特に制限されない。
【0041】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)等のエチレン系樹脂の他、プロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体など)や、ポリブテン系樹脂(ポリブテン−1など)、ポリ−4−メチルペンテン−1などが挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−不飽和カルボン酸共重合体;アイオノマー;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン−ビニルアルコール共重合体なども用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂が好適であり、中でも、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0042】
上記低密度ポリエチレンの密度は、0.90〜0.93g/cm3が好ましく、より好ましくは0.91〜0.92g/cm3である。また、低密度ポリエチレンの重量平均分子量は30万未満であり、特に限定されないが、3万〜20万が好ましく、より好ましくは5万〜6万である。また、低密度ポリエチレンの190℃におけるMFRは、特に限定されないが、1.0〜5.0(g/10分)が好ましく、より好ましくは、2.0〜4.0(g/10分)である。なお、本発明における密度とは、JIS K 7112に準拠して得られた密度をいうものとする。
【0043】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数が4〜8のα−オレフィンモノマーとを重合して得られる、短鎖分岐(分岐の長さは炭素数1〜6が好ましい)を有する直鎖状ポリエチレンである。上記直鎖状低密度ポリエチレンに用いられるα−オレフィンモノマーとしては、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1が好ましい。上記直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、全構成モノマーの繰り返し単位に対するエチレンモノマーの繰り返し単位の含有量(含有率)は90モル%以上が好ましい。上記直鎖状低密度ポリエチレンとしては、中でも、より低温におけるヒートシール性向上の観点から、メタロセン系触媒を用いて調製された、いわゆる、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン系LLDPE)が特に好ましい。
【0044】
上記直鎖状低密度ポリエチレンの密度は0.90〜0.93g/cm3が好ましく、より好ましくは0.91〜0.92g/cm3である。直鎖状低密度ポリエチレンの重量平均分子量は30万未満であり、特に限定されないが、3万〜20万が好ましく、より好ましくは5万〜10万、さらに好ましくは5万〜6万である。また、直鎖状低密度ポリエチレンの190℃におけるMFRは、特に限定されないが、1.0〜5.0(g/10分)が好ましく、より好ましくは、2.0〜4.0(g/10分)である。
【0045】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンモノマーの共重合体である。α−オレフィンとしては、エチレン以外のα−オレフィンであれば特に制限されないが、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の炭素数4〜8のα−オレフィンが挙げられる。中でも、ブテン−1を用いた、エチレン−α−オレフィン共重合エラストマーが好ましい。上記エチレン−α−オレフィン共重合体において、全構成モノマーの繰り返し単位に対するエチレンモノマーの繰り返し単位の含有量は60〜95モル%が好ましく、より好ましくは80〜90モル%である。上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、多孔質フィルムのヒートシール性をさらに向上させる役割を担う。
【0046】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、0.90g/cm3未満であり、好ましくは0.86〜0.89g/cm3、より好ましくは0.87〜0.89g/cm3である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、30万未満であり、5万〜20万が好ましく、より好ましくは8万〜15万である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の190℃におけるMFRは、特に限定されないが、1.0〜5.0(g/10分)が好ましく、より好ましくは2.0〜4.0(g/10分)である。
【0047】
本発明における多孔質フィルムは、多孔質フィルムと不織布の接着性を特に向上させる観点からは、上記ポリオレフィン系樹脂の中でも、重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンを含むことが好ましい。重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンを含有する多孔質フィルムは、重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンを含有しない多孔質フィルムと比較して、多孔質フィルムと不織布との層間剥離力が向上する(例えば、該層間剥離力が1.3〜3.5倍に上昇する)傾向がある。
【0048】
上記の重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンは、エチレンを主たるモノマー成分とする重合体であればよく、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと炭素数が3〜8のα−オレフィンモノマーの共重合体であってもよい。中でも好ましくは、エチレン−プロピレン共重合体である。上記ポリエチレンにおいて、全構成モノマーの繰り返し単位に対するエチレンモノマーの繰り返し単位の含有量は90〜100モル%が好ましい。
【0049】
上記の重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンの重量平均分子量は、30万〜250万が好ましく、より好ましくは40万〜200万、さらに好ましくは50万〜150万である。上記重量平均分子量が30万未満のポリエチレンでは、多孔質フィルムと不織布との層間剥離力を向上させる効果が得られない場合がある。重量平均分子量が250万を超えると、押出不良や欠点(フィッシュアイ)の発生が問題となる場合がある。
【0050】
上記の重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンの密度は、延伸性の観点から、0.92〜0.96g/cm3が好ましく、より好ましくは0.93〜0.955g/cm3である。
【0051】
多孔質フィルム中における上記重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンの含有量は、多孔質フィルムを構成する全ポリマー成分(100重量%)に対して、1重量%以上が好ましく、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。上記含有量が1重量%未満では、多孔質フィルムと不織布との層間剥離力を向上させる効果が得られない場合がある。また、上記含有量が40重量%を超えると、押出不良や欠点(フィッシュアイ)の発生が問題となる場合がある。
【0052】
本発明における多孔質フィルムは、特に限定されないが、無機充填剤を含有することが好ましい。該無機充填剤は、延伸により充填剤の周囲にボイド(孔)を発生させることによって、フィルムを多孔質化させる役割を担う。かかる無機充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、石粉、ゼオライト、アルミナ、アルミニウム粉末、鉄粉の他、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸の金属塩;硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の硫酸の金属塩;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;酸化マグネシウム−酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム−酸化亜鉛の水和物等の金属水和物(水和金属化合物)などが挙げられる。無機充填剤の形状は特に限定されず、平板形状、粒状などのものを用いることができるが、延伸によるボイド(孔)形成の観点からは、粒状(粒子状)が好ましい。即ち、無機充填剤としては、炭酸カルシウムからなる無機粒子(無機微粒子)が好ましい。
【0053】
上記無機充填剤(無機微粒子)の粒径(平均粒径)としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0μmである。無機充填剤の粒径が、0.1μm未満であるとボイド形成性が低下する場合があり、10.0μmを超えると成膜破れ、外観不良の原因となる場合がある。
【0054】
上記無機充填剤(無機微粒子)の含有量は、特に限定されないが、例えば、多孔質フィルムを構成する全ポリマー成分(100重量部)に対して、50〜150重量部であることが好ましく、より好ましくは80〜120重量部である。無機充填剤の含有量が、50重量部未満であるとボイド形成性が低下する場合があり、150重量部を超えると、製膜破れ、外観不良の原因となる場合がある。
【0055】
本発明における多孔質フィルムには、着色剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤などの各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
【0056】
本発明における多孔質フィルムは、溶融成膜法(Tダイ法、インフレーション法)によって製造することができる。中でもTダイ法が好ましい。例えば、上記のポリオレフィン系樹脂、無機充填剤、及び、必要に応じて、各種添加剤を、2軸混練押出にて混合分散し、一旦ペレット状にした後、1軸押出機にて溶融押出して未延伸フィルムを作製し、該未延伸フィルムを、1軸又は2軸に延伸することにより多孔質化して製造する。多孔質フィルムを積層フィルムとする場合には、共押出法を好ましく用いることができる。
【0057】
上記多孔質フィルムの製造において、押出温度は、170〜270℃が好ましく、より好ましくは180〜260℃、さらに好ましくは230〜250℃である。また、未延伸フィルム作製時の引き取り速度は、5〜25m/分が好ましく、引き取りロール温度(冷却温度)は5〜40℃が好ましく、より好ましくは20〜30℃である。
【0058】
上記未延伸フィルムを1軸又は2軸(逐次2軸、同時2軸)に延伸する方法としては、ロール延伸方式やテンター延伸方式など公知慣用の延伸方式を用いることができる。延伸温度は、50〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜90℃である。多孔質化と安定製膜の観点から、延伸倍率(単軸方向)は、2〜5倍が好ましく、より好ましくは3〜4倍である。2軸延伸の場合の面積延伸倍率は2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜7倍である。
【0059】
上記多孔質フィルムの厚みは、特に制限されず、例えば、30〜150μmが好ましく、より好ましくは50〜120μmである。
【0060】
なお、前述のとおり、多孔質フィルムと不織布の接着性を特に向上させる観点からは、本発明における多孔質フィルムは、上記の重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンを少なくとも原料として用いて製造されることが好ましい。例えば、上記の重量平均分子量が30万以上であるポリエチレン、重量平均分子量が30万未満のポリエチレン(特に、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい)及び無機充填剤を少なくとも用いて、未延伸フィルムを作製し、該未延伸フィルムを、1軸又は2軸に延伸することにより多孔質化して、多孔質フィルムを製造する。上記の場合、多孔質フィルムの製造に用いるポリマー原料(100重量%)中の、重量平均分子量が30万以上であるポリエチレンの含有量は、1重量%以上が好ましく、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0061】
[不織布]
本発明の多孔質包装材における不織布としては、特に制限されず、例えば、ポリアミド系不織布(ナイロン製不織布など)、ポリエステル系不織布(ポリエチレンテレフタレート(PET)製不織布、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製不織布など)、ポリオレフィン系不織布、レーヨン製不織布など公知慣用の不織布(天然繊維による不織布、合成繊維による不織布など)を使用することができる。上記の中でも、ポリアミド系接着剤による接着性等の観点から、ポリアミド系不織布が好ましく、より好ましくはナイロン製不織布(ナイロン系不織布)である。
【0062】
また、上記不織布の製造方式も特に制限されず、例えば、スパンボンド方式により製造された不織布(スパンボンド不織布)であってもよいし、スパンレース方式により製造された不織布(スパンレース不織布)であってもよい。中でも、接着性の観点から、スパンボンド不織布が好ましい。なお、不織布は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0063】
上記不織布において、繊維径、繊維長、目付などは特に制限されない。目付量は、20〜100g/m2程度が好ましく、より好ましくは20〜80g/m2程度である。コスト削減の観点からは、目付量は、20〜35g/m2が好ましく、より好ましくは25〜30g/m2である。特に、目付量が20〜35g/m2の不織布を使用した場合に、本発明の効果(不織布を通過して接着剤がロールに付着することを防止)が顕著となる。不織布は、1種の繊維のみから構成されていてもよいし、複数種の繊維が組合せられて構成されていてもよい。
【0064】
[多孔質包装材]
本発明の多孔質包装材は、上記多孔性接着剤層(ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を繊維化して形成した多孔性接着剤層)を介して、上記多孔質フィルムと上記不織布とが接着された多孔質包装材である。図1に、本発明の多孔質包装材の一例(概略断面図)を示す。本発明の多孔質包装材1は、多孔質フィルム11と不織布13とが、多孔性接着剤層12を介して貼り合わされてなる。
【0065】
上記多孔質包装材において、多孔質フィルムと不織布とは、多孔性接着剤層を介して接着する方法により積層される。本発明においては、多孔性接着剤層を形成する接着剤として、ホットメルト型のポリアミド系接着剤を用いているため、溶剤を用いなくても熱により溶融させることで塗工することができ、不織布に対しても直接塗布して接着剤層を形成することができる利点を有する。さらに、上記多孔質包装材をヒートシールすることにより袋体を構成する場合は、ヒートシール部ではヒートシール加工によって、不織布と多孔質フィルムとが更に強力に接着するという利点を有する。
【0066】
多孔質フィルムと不織布とを積層する方法としては、具体的には、ポリアミド系接着剤をスプレー塗布により不織布上に塗布した後、多孔質フィルムを貼り合わせる方法が挙げられる。上記構造を有することにより、通気性に優れるという効果を発揮する。
【0067】
本発明の多孔質包装材において、多孔質フィルムと不織布との剥離力(引張速度300mm/分、T型剥離試験)は、0.4〜3.0N/25mm(もしくは、T型剥離試験で不織布が破壊すること)が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0N/25mmである。(なお、上記剥離力が3.0N/25mmを超える場合には、T型剥離試験時に不織布が破壊することが多い。)上記剥離力(層間剥離力とも称する)が0.4N/25mm未満では、製造時、加工時や流通過程で多孔質フィルムと不織布の層間剥離が生じる場合がある。
【0068】
[袋体]
本発明の多孔質包装材は、包装材であれば特に限定されないが、袋状の構造を有する包装材(袋体)として好ましく用いられる。すなわち、袋体を構成する部材(袋体構成部材)の少なくとも一部として、本発明の多孔質包装材を用いることができる。また、高温及び/又は高圧のヒートシール時にも加工性が良好であるため、ヒートシール加工が施される包装材(ヒートシール用包装材)として好ましく用いられる。即ち、本発明の多孔質包装材は、ヒートシール加工により袋体に製造される包装材(ヒートシール用袋体構成部材用の包装材)として、特に好ましく用いられる。さらに、通気性、発熱体に対する酸素供給性等の観点から、通気性を有する袋体を構成する部材として好ましく用いられる。本発明の多孔質包装材は、特に限定されないが、使い捨てカイロ、除湿剤、消臭剤、芳香剤、脱酸素剤などの構成部材として好ましく用いられ、中でも、使い捨てカイロの構成部材として特に好ましく用いられる。
【0069】
多孔質包装材を袋体に加工する方法としては、特に限定されず、接着剤により貼り合わせて袋体を構成する方法、ヒートシールにより袋体を構成する方法などが挙げられる。中でも、コストや加工性等の観点から、ヒートシールにより袋体を構成する方法が好適に用いられる。上記袋体には、少なくとも一部として本発明の多孔質包装材が用いられていればよく、本発明の多孔質包装材とその他の包装材をヒートシールすることにより袋体を構成することができる。
【0070】
本発明の多孔質包装材を用いて袋体を形成する際の、ヒートシールする方法及び装置は特に限定されないが、ヒートシーラーによる圧着が好ましい。その際のヒートシール温度は、90〜250℃が好ましく、より好ましくは130〜200℃である。ヒートシール圧力は0.5〜30kg/cm2が好ましく、より好ましくは2.0〜10kg/cm2である。また、ヒートシール時間は、0.02〜1.0秒が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5秒である。
【0071】
本発明の多孔質包装材を用いて形成された袋体のヒートシール部分のヒートシール強度(引張速度300mm/分の条件におけるT型剥離試験で測定)は、例えば、袋体を使い捨てカイロとして用いる場合には、5.0N/25mm以上が好ましく、より好ましくは8.0N/25mm以上である。ヒートシール強度が5.0N/25mm未満の場合には、使用する際に、ヒートシール部で多孔質フィルムと不織布層が剥離するトラブルが生じる場合がある。
【0072】
使い捨てカイロの製造等におけるヒートシール加工においては、生産性向上の観点から、短時間でのヒートシール加工が要求されるため、強いヒートシール条件(ヒートシール温度:高温、ヒートシール圧力:高圧)が求められる。このようにヒートシール条件が高温及び/又は高圧になると、ホットメルト型の接着剤を用いて不織布と多孔質フィルムを貼り合わせてなる多孔質包装材を加工する際には、接着剤層が変形して、接着剤が不織布を通過して加工ロール(ヒートシールロールなど)に付着するという問題(裏抜け)が生じやすくなる。ホットメルト型の接着剤としては、スプレー塗布性を向上させるためには、低い溶融粘度(例えば、190℃における溶融粘度)の接着剤を用いることが有効である。しかし、かかる接着剤は、一般的には接着剤の融点も低い傾向にあるため、高温や高圧のヒートシール時には、接着剤層がより変形しやすく、上記裏抜けの問題がより顕著に生じる。一方、ヒートシール条件が弱い場合(ヒートシール温度:低温、ヒートシール圧力:低圧)には、ヒートシール強度が低下しやすく、短時間でのヒートシールが困難となり、いずれの場合にも製品の品質、生産性の点において問題となる。
【0073】
これに対して、本発明の多孔質包装材においては、接着剤層を構成する接着剤として、190℃における溶融粘度を低く保ちながら、融点の比較的高い特定のポリアミド系接着剤を用いているため、多孔質包装材製造時のスプレー塗布性と、比較的強いヒートシール条件であっても、加工ロールへの接着剤の付着が生じにくい特性を両立させることが可能となった。従って、本発明の多孔質包装材を用いれば、ヒートシール加工条件を強く設定でき、短時間でのヒートシールが可能となり、生産性、コストの観点で有利である。
【0074】
袋体に封入する内容物としては、例えば、発熱体(使い捨てカイロ用の発熱体)、除湿剤、消臭剤、芳香剤、脱酸素剤などが挙げられる。本発明においては、上記の中でも、発熱体を封入して用いることができる。
【0075】
[使い捨てカイロ]
本発明の多孔質包装材を構成部材の少なくとも一部(好ましくは袋体構成部材)として用いることにより、本発明の使い捨てカイロを形成することができる。具体的には、本発明の多孔質包装材と本発明の多孔質包装材とをヒートシールして袋体とし、又は、本発明の多孔質包装材と本発明の多孔質包装材以外の包装材(「その他の包装材」と称する場合がある)とをヒートシールして袋体とし、袋体の内部に発熱体を封入することにより、本発明の使い捨てカイロを形成することができる。図2は、本発明の多孔質包装材とその他の包装材を用いた使い捨てカイロの一例を示す概略断面図である。図2に記載の本発明の使い捨てカイロは、本発明の多孔質包装材1とその他の包装材2(基材21及び粘着剤層22からなる)を、端部(ヒートシール部4)をヒートシールすることにより袋体を形成し、内部に発熱体3を封入してなる。上記のように、一方の面に粘着剤層が設けられ、身体、衣類等の被着体に貼り付ける用途の使い捨てカイロにおいては、本発明の多孔質包装材は、発熱体への酸素供給性の観点から、被着体に接する側と反対側の部材(いわゆる表材)として少なくとも用いられることが好ましい。
【0076】
上記その他の包装材としては、特に限定されず、公知慣用の通気性、非通気性の包装材を用いることができる。その他の包装材としては、市販品も好適に用いることができ、日東ライフテック(株)製「ニトタック」(ヒートシール性を有するポリオレフィン基材とSIS系粘着剤層の積層体であるカイロ用粘着シート)などが入手可能である。
【0077】
上記その他の包装材における基材は、例えば、ヒートシール層、繊維層(例えば、不織布層など)、フィルム層などから構成されていることが好ましい。より具体的には、基材としては、ヒートシール層(ヒートシール性のフィルム層を含む)と繊維層との積層体、ヒートシール層とヒートシール性のないフィルム層との積層体などが挙げられる。
【0078】
上記不織布層に用いる不織布としては、上述のものを用いることができる。
【0079】
上記ヒートシール層は、ヒートシール性を有する層であり、上記多孔質フィルムにおいて例示された樹脂が好適に用いられる。なお、ヒートシール層は単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。
【0080】
上記フィルム層は、従来使用されているフィルム層を利用することができる。フィルム層を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。中でも、価格、柔軟性の観点から、ポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、多孔質フィルムにおいて例示した樹脂と同様の樹脂等を用いることが可能である。上記フィルム層は単層フィルムであっても、2層以上の積層フィルムであってもよい。また、無配向フィルムであってもよいし、1軸または2軸方向に延伸配向したフィルムであってもよいが、好ましくは無配向フィルムである。
【0081】
上記基材の厚みは、特に制限されず、例えば、10〜500μm程度、好ましくは12〜200μm程度、さらに好ましくは15〜100μm程度である。なお、基材には、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理などの各種処理が施されていてもよい。
【0082】
上記その他の包装材における粘着剤層は、使用時には袋体を被着体に貼付する役割を担う。粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤(アクリルウレタン系粘着剤)、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を用いることができる。また、上記粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記の中でも、ゴム系、ウレタン(アクリルウレタン)系粘着剤が特に好ましい。
【0083】
上記ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴムや各種の合成ゴムをベースポリマーとしたゴム系粘着剤が挙げられる。合成ゴムをベースポリマーとしたゴム系粘着剤としては、例えば、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴムなどのスチレン系ゴム(スチレン系エラストマーともいう)、ポリイソプレンゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体などが挙げられる。中でも、スチレン系エラストマーの粘着剤が好ましく、さらに好ましくは、SIS、SBSである。これらの1種又は2種以上の混合物を適宜選択して用いることができる。
【0084】
上記ウレタン系粘着剤としては、公知慣用のウレタン系粘着剤を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、特許第3860880号公報や特開2006−288690号公報で例示されているウレタン系粘着剤等を好適に用いることができる。中でも、イソシアネート/ポリエステルポリオールから構成されるアクリルウレタン系粘着剤が好ましい。また、肌に直接貼付する場合の肌への刺激を低減する観点から、上記アクリルウレタン系粘着剤は、気泡を有する発泡タイプの粘着剤であることが好ましい。このような発泡タイプの粘着剤は、例えば、粘着剤中に公知慣用の発泡剤を添加するなどの方法により作製することができる。
【0085】
また、上記の粘着剤としては、いずれの特性を有してる粘着剤であってもよく、例えば、加熱により架橋等が生じて硬化する熱硬化性を有している粘着剤(熱硬化性粘着剤)や、活性エネルギー線の照射により架橋等が生じて硬化する活性エネルギー線硬化性を有している粘着剤(活性エネルギー線硬化性粘着剤)などが挙げられる。中でも、無溶剤であり、不織布や多孔質の基材などにも含浸しすぎない観点から、活性エネルギー線硬化性粘着剤が好適である。なお、熱硬化性粘着剤には、熱硬化性を発揮するための架橋剤や重合開始剤などが適宜用いられている。また、活性エネルギー線硬化性粘着剤には、活性エネルギー線硬化性を発揮するための架橋剤や光重合開始剤などが適宜用いられている。
【0086】
上記粘着剤層は、使用までの間、公知乃至慣用の剥離フィルム(セパレータ)により保護されていてもよい。
【0087】
本発明の使い捨てカイロは、外袋に収納されてカイロ製品として販売される。上記外袋を構成する基材(外袋用基材)としては、特に制限されず、例えば、プラスチック系基材、繊維系基材(各種繊維による不織布系基材や織布系基材など)、金属系基材(各種金属成分による金属箔系基材など)を用いることができる。このような基材としては、プラスチック系基材を好適に用いることができる。プラスチック系基材としては、例えば、ポリオレフィン系基材(ポリプロピレン系基材、ポリエチレン系基材など)、ポリエステル系基材(ポリエチレンテレフタレート基材など)、スチレン系基材(ポリスチレン系基材の他、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体系基材等のスチレン系共重合体基材など)、アミド樹脂系基材、アクリル樹脂系基材などが挙げられる。なお、外袋用基材は単層であってもよく、積層体であってもよい。外袋の厚さは、特に制限されず、例えば、30〜300μmが好ましい。
【0088】
また、上記外袋は、酸素ガスや、水蒸気などのガス成分の透過を阻止する特性(ガスバリア性)を有する層(ガスバリア性層)を有していることが好ましい。ガスバリア性層としては、特に制限されないが、例えば、酸素バリア性樹脂層(例えば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアミド系樹脂からなる)、水蒸気バリア性樹脂層(例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる)、酸素バリア性や水蒸気バリア性無機化合物層(例えば、アルミニウム等の金属単体、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の金属酸化物などの金属系化合物などからなる)などが挙げられる。ガスバリア性層は単層であってもよく(外袋用基材そのものであってもよい)、積層体であってもよい。
【実施例】
【0089】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0090】
実施例1
直鎖状低密度ポリエチレン(重量平均分子量(Mw):8万)100重量部、エチレン・ブテン・ジエン三元共重合体(EBT)(Mw:14万)40重量部をポリマー成分とし、平均粒径1.1μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)140重量部、酸化防止剤1重量部を、180℃で溶融混練し、混合材料を得た。
上記混合材料を用い、Tダイ法で溶融押出を行い、1軸ロール延伸方式により、延伸温度100℃、延伸倍率4.0倍で長手(MD)方向に延伸して、厚み70μmのポリエチレン系多孔質フィルムを得た。
ホットメルト型のポリアミド系接着剤としては、下記構造式のポリアミド系共重合体(エムスケミー・ジャパン(株)製、融点152℃、溶融粘度(190℃/2.16kg)25Pa・s)を用いた。上記ポリアミド系共重合体は、HMDA、AA、SA及びCLを構成単位とするポリアミド系共重合体であり、組成比(HMDA:AA:SA:CL)は2:1:1:4(モル比)である。また、上記ポリアミド系共重合体の重量平均分子量(Mw)は11300(GPC法により測定)である。
【0091】
【化6】

【0092】
(上記式中、aは整数を表す。)
【0093】
上記ポリアミド系接着剤のペレットを、アプリケータタンクに投入し、190℃で溶融して、ナイロン系不織布(旭化成せんい社製、商品名「エルタスNO3030」、目付量30g/m2)の片面上に、カーテンスプレー方式で塗布し、坪量5g/m2の繊維状の多孔性接着剤層(平均繊維径:26μm)を形成した。なお、カーテンスプレー塗布は、エアー温度:230℃、エアー流量:550L/分で行った。
次いで、上記接着剤層上に、上記ポリエチレン系多孔質フィルムをラミネートして、多孔質包装材を得た。
なお、ポリエチレン系多孔質フィルムの製造と、多孔性接着剤層の形成及びラミネートは、同じ製造ラインでインラインで行った。
【0094】
実施例2
ポリアミド系接着剤を、ポリアミド系共重合体(エムスケミー・ジャパン(株)製、融点135℃、溶融粘度(190℃/2.16kg)32Pa・s)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質包装材を作製した。多孔性接着剤層の平均繊維径は25μmであった。なお、上記ポリアミド系共重合体は、HMDA、AA、SA及びCLを構成単位とするポリアミド系共重合体である。また、上記ポリアミド系共重合体の重量平均分子量(Mw)は8000(GPC法により測定)である。
【0095】
比較例1
ポリアミド系接着剤を、熱可塑性共重合ポリアミド樹脂(ダイセル・エボニック(株)(旧ダイセル・デグサ)製、商品名「VESTAMELT 722GETR」、融点105℃、溶融粘度(190℃/2.16kg)22Pa・s)に変更した以外は、実施例1と同様にして、多孔質包装材を作製した。多孔性接着剤層の平均繊維径は24μmであった。
【0096】
比較例2
ポリアミド系接着剤を、エムスケミー・ジャパン(株)製、商品名「Griltex D1556A」(融点135℃、溶融粘度(190℃/2.16kg)220Pa・s)に変更し、カーテンスプレー方式で、不織布上に塗布を試みたが、カーテンダイス温度210℃では接着剤を十分に溶融できず、繊維状に塗布できなかった。
【0097】
実施例3
直鎖状低密度ポリエチレン(Mw:6万)100重量部、エチレン−ブテン共重合体(Mw:11万)20重量部及びポリエチレン(Mw:40万)20重量部をポリマー成分とし、平均粒径1.1μmの炭酸カルシウム(無機微粒子)150重量部、酸化防止剤1重量部を、180℃で溶融混練し、混合材料を得た。
上記混合材料を用い、Tダイ法で溶融押出を行い、1軸ロール延伸方式により、延伸温度100℃、延伸倍率4.0倍で長手(MD)方向に延伸して、厚み70μmのポリエチレン系多孔質フィルムを得た。
上記のポリエチレン系多孔質フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、多孔質包装材を得た。
【0098】
実施例4
実施例3と同じポリエチレン系多孔質フィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして、多孔質包装材を得た。
【0099】
比較例3
実施例3と同じポリエチレン系多孔質フィルムを用いた以外は、比較例1と同様にして、多孔質包装材を得た。
【0100】
[評価方法]
以下に、本願で用いられる測定方法および効果の評価方法について例示する。また、上記実施例、比較例で得られた多孔質包装材について、以下の方法で評価を行った。
【0101】
(1)ポリアミド系接着剤の融点(DSC)
ポリアミド系接着剤を測定サンプルとし、装置として、DSC Q20(TA Instruments製)を用い、ISO11357に準じて、DSC測定を行った。温度条件は、室温より20K/分で250℃まで昇温し、5K/分で室温まで降温する条件で行った。
なお、上記のポリアミド系接着剤の融点は、接着剤中のポリアミド系共重合体の融点を表す。
【0102】
(2)ポリアミド系接着剤の溶融粘度(190℃/2.16kg)
ISO1133に準拠して、「Melt Indexer MI−3 and MP−D」(ゴットフェルト(Gottfert)製)を用いて、設定温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定を行った。
【0103】
(3)ヒートシール加工におけるポリアミド系接着剤の裏抜けの有無
実施例及び比較例で得られた多孔質包装材を、幅50mm×長さ150mmの大きさに切り出して、測定用サンプルとした。
また、鏡面仕上げのステンレス板(幅50mm×長さ150mm×厚み5mm)を使用した。
上記の測定用サンプルとステンレス板とを、多孔質包装材の不織布側の表面がステンレス板に接するように重ね合わせ、ヒートシール装置(テスター産業株式会社製、装置名「HEAT SEAL TESTER」)を用い、圧力4.0kgf/cm2で60秒間の条件で加圧(ヒートシール)した。なお、ヒートシール温度は、80、90、100、110、120、130、140、150℃で、それぞれヒートシールを行った。
加圧(ヒートシール)後、直ちにステンレス板から測定用サンプル(多孔質包装材)を引き剥がし、測定用サンプルの裏抜け状態を確認した。ヒートシール後の測定用サンプルの不織布側の表面のシールバーが当たった範囲(幅40mm×長さ150mm)全面を、目視にて観察し、以下の基準で判断した。
裏抜けなし(○) : 不織布側の表面への接着剤の染み出し(裏抜け)は観察されなかった。
僅かに裏抜けがある(△) : 不織布側の表面に接着剤が染み出している(裏抜けしている)部分の面積の割合が10%未満であった。
裏抜けが顕著である(×) : 裏抜けしている部分の面積の割合が10%以上であった。
なお、ヒートシール加工用の多孔質包装材として、○は優れており、△は使用可能なレベル、×は使用不可能なレベルである。
【0104】
(4)層間剥離力(T型剥離)
多孔質包装材から、幅25mm×長さ200mmの短冊状の測定用サンプルを作製した。
引張試験機を用いて、JIS K 6854に準拠して、T型剥離試験を行い、多孔質フィルムと不織布の引き剥がし強度(N/25mm)を測定し、「層間剥離力」とした。
(測定条件)
測定装置 : インストロン型万能引張試験機
温湿度 : 23±2℃、50±5%RH
剥離角度 : T型
試験回数 : 5回
引張速度 : 300mm/分
【0105】
(5)多孔性接着剤層の平均繊維径
実施例及び比較例で得られた多孔質包装材から、工業用アルコールを使用して、多孔質フィルムと不織布を剥離した。実施例及び比較例で得られた多孔質包装材の端の不織布面に工業用アルコールを適量つけ、多孔質フィルムと不織布を剥離した。工業用アルコールのついていない部分まで剥離した。
次いで、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE VHX DIGITAL MICROSCOPE)を用いて、倍率150倍で、上記で剥離した多孔質フィルム表面上の多孔性接着剤層を観察した。多孔性接着剤層の繊維状の接着剤の繊維軸と垂直方向の長さを繊維径とし、測定視野(測定視野のサイズ:100mm×100mm)内で、ランダムに10箇所で繊維径を測定し、平均値を「平均繊維径」とした。
【0106】
実施例1、2及び比較例1で得られた多孔質包装材について、「(3)ヒートシール加工におけるポリアミド系接着剤の裏抜けの有無」の評価結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
上記の結果から、本発明の多孔質包装材(実施例1及び2)は、高温のヒートシール温度領域まで、ポリアミド系接着剤の裏抜けがなく、ヒートシール加工性に優れていることがわかった。また、前述の通り、生産性(スプレー塗布性)にも優れていることがわかった。一方、融点の低いポリアミド系接着剤を用いた場合(比較例1)は、実施例と比較して低いヒートシール温度で裏抜けが生じ、ヒートシール加工性が劣ることがわかった。さらに、溶融粘度(190℃/2.16kg)が高いポリアミド系接着剤を用いた場合(比較例2)は、スプレー塗工性が劣ることがわかった。
【0109】
実施例及び比較例で得られた多孔質包装材について、「(4)層間剥離力」の評価結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表2の結果から、多孔質フィルムとして、重量平均分子量が30万以上のポリエチレンを含有する多孔質フィルムを用いた場合(実施例3及び4)には、多孔質フィルムと不織布の層間剥離力が大幅に向上することがわかった。
【符号の説明】
【0112】
1 本発明の多孔質包装材
11 多孔質フィルム
12 多孔性接着剤層
13 不織布
2 その他の包装材
21 基材
22 粘着剤層
3 発熱体
4 ヒートシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系共重合体を含むホットメルト型のポリアミド系接着剤を繊維化して形成した多孔性接着剤層を介して、多孔質フィルムと不織布とが接着された多孔質包装材であって、前記ポリアミド系接着剤の融点が130〜160℃であり、且つ前記ポリアミド系接着剤の190℃、荷重2.16kgにおける溶融粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする多孔質包装材。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔質包装材を含む使い捨てカイロ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−51242(P2011−51242A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202347(P2009−202347)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(501327662)日東ライフテック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】