説明

多層セラミック基板及びその製造方法

【課題】多層セラミック基板において、最外郭の絶縁シートに形成されたビアコンタクトが外部に突出するのを抑制する。
【解決手段】本発明の多層セラミック基板100は、第1のビアコンタクト124を有する第1の絶縁シート120と、第1のビアコンタクト124と上下に整列されて接合された第2のビアコンタクト134を有する第2の絶縁シート130とを含み、第1のビアコンタクト124と第2のビアコンタクト134とは、焼成時に互いに異なる収縮率を有する導電性ペーストによって形成されている。第2のビアコンタクト134は、第1のビアコンタクト124に比べて収縮率が高く、焼成後、第1のビアコンタクト124は、第2のビアコンタクト134の内部に拡がった形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層セラミック基板に関し、より詳細には、多層セラミック基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なプローブカードの製造方法として、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co-fired Ceramic:LTCC)工程技術または高温同時焼成セラミック(High Temperature Co-fired Ceramic:HTCC)工程技術が広く使われている。このような低温及び高温同時焼成セラミック工程技術では、まず、複数の絶縁シートを準備し、準備した絶縁シートを上下に積層させる。この時、各々の絶縁シートにはビアコンタクト(via contact)及び該ビアコンタクトに電気的に接続されている回路配線が設けられている。その後、積層された各絶縁シートを加圧及び焼成(sintering)して1つの多層セラミック基板を製造する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、各絶縁シートを加圧及び焼成する過程において、該各絶縁シートのうち最外郭に配置された絶縁シートに形成されたビアコンタクトは、外部に向かう方向の圧力を受けることになる。例えば、各絶縁シートの積層された多層型基板構造体を上下から加圧する場合、その最外郭に配置された絶縁シートのビアコンタクトは、相対的に絶縁シートを加圧する方向と反対方向の圧力を受けることになる。そのため、最外郭に配置された絶縁シートに形成されたビアコンタクトが外部に突出するといった現象が発生する。最外郭のビアコンタクトが突出すると、該ビアコンタクトに接続される回路配線の接合信頼性が落ちて、半導体素子の電気的特性が低下することがある。また、多層セラミック基板をパッケージングする時、パッケージ部品間の結合力が低下し、製品の信頼性が低下する恐れがある。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、信頼性を向上させた多層セラミック基板を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、多層セラミック基板の製造時、最外郭の絶縁シートに形成されたビアコンタクトが外部に突出するような現象を防止できる多層セラミック基板を提供することにある。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、信頼性を向上させた多層セラミック基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、多層セラミック基板の製造時、最外郭の絶縁シートに形成されたビアコンタクトが外部に突出するといった現象を防止する多層セラミック基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の好適な実施態様による多層セラミック基板は、第1のビアコンタクトを有する第1の絶縁シートと、第1の絶縁シートに接合され、第1のビアコンタクトと上下に整列されて接合された第2のビアコンタクトを有する第2の絶縁シートとを含み、第1のビアコンタクトは、第2のビアコンタクトの内部に拡がった形状を有することができる。
【0009】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートは、互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、第2の絶縁シートは、第1の絶縁シートを介して多層型基板構造体の最外郭に配置されるようにすることができる。
【0010】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートは、互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、第1の絶縁シートは多層型基板構造体の最外郭に配置され、第2の絶縁シートは、最外郭から2番目に配置されるようにすることができる。
【0011】
本発明の付加的な実施態様によれば、第2のビアコンタクトは、第1のビアコンタクトに比べて高い空隙率を有することができる。
【0012】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1のビアコンタクトは、第2のビアコンタクトに比べて無収縮物質をより多く含むことができる。
【0013】
本発明の付加的な実施態様によれば、無収縮物質は、アルミナ(alumina)、ジルコニア(zirconia)及びガラス(glass)のうちの少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の他の好適な実施態様による多層セラミック基板は、第1のビアコンタクトを有する第1の絶縁シートと、第1のビアコンタクトと上下に整列されて接合された第2のビアコンタクトを有する第2の絶縁シートとを含み、第1のビアコンタクトと第2のビアコンタクトとは、互いに異なる収縮率を有する導電性ペーストによって形成されたものとすることができる。
【0015】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1のビアコンタクトと第2のビアコンタクトとは互いに上下に接合されて接合面を形成し、該接合面は、第2のビアコンタクトの内部に向かって拡がった形状を有することができる。
【0016】
本発明の付加的な実施態様によれば、第2の絶縁シートは、第1の絶縁シートの前面及び背面のうちの少なくともいずれか一方に接合されるようにすることができる。
【0017】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートは互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、第2の絶縁シートは、第1の絶縁シートを介して多層型基板構造体の最外郭に配置されるようにすることができる。
【0018】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートは互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、第1の絶縁シートは、多層型基板構造体の最外郭に配置され、第2の絶縁シートは、最外郭から2番目に配置されるようにすることができる。
【0019】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1のビアコンタクトは第1の導電性ペーストによって形成され、第2のビアコンタクトは第1の導電性ペーストに比べて焼成時に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成され、第1の導電性ペーストは、第2の導電性ペーストに比べて高いボイド含量を有するようにすることができる。
【0020】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1のビアコンタクトは第1の導電性ペーストによって形成され、第2のビアコンタクトは第1の導電性ペーストに比べて焼成時に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成され、第1の導電性ペーストは、第2の導電性ペーストに比べて、熱を受けると収縮するか焼けて無くなる収縮物質をより多く含むようにすることができる。
【0021】
本発明の付加的な実施態様によれば、収縮物質は、ポリマ一系列の物質を含むことができる。
【0022】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1のビアコンタクトは第1の導電性ペーストによって形成され、第2のビアコンタクトは第1の導電性ペーストに比べて焼成時に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成され、第2の導電性ペーストは、第1の導電性ペーストに比べて焼成時に第2の導電性ペーストの導電性粒子の収縮を妨害する無収縮物質をより多く含むようにすることができる。
【0023】
本発明の付加的な実施態様によれば、無収縮物質は、アルミナ(alumina)、ジルコニア(zirconia)及びガラス(glass)のうちの少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明のさらに他の好適な実施態様による多層セラミック基板の製造方法は、第1の導電性ペーストによって形成された第1のビアコンタクトを有する第1の絶縁シートを準備するステップと、第1の導電性ペーストに比べて焼成時の収縮率が異なる第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクトを有する第2の絶縁シートを準備するステップと、第1のビアコンタクトと第2のビアコンタクトとが上下に整列されるように、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを配置するステップと、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを焼成するステップとを含むことができる。
【0025】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを配置するステップは、第1の絶縁シートの前面及び背面のうちの少なくともいずれか一方に第2の絶縁シートを接合するステップを備えることができる。
【0026】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを配置させるステップは、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを積層させて多層基板構造体を構成し、この際、第2の絶縁シートを多層基板構造体の最外郭に位置するように、第1の絶縁シートに接触させるステップを備えることができる。
【0027】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを配置するステップは、第1の絶縁シート及び第2の絶縁シートを積層させて多層基板構造体を構成し、第1の絶縁シートを多層基板構造体の最外郭に位置するように、第2の絶縁シートに接触させるステップを備えることができる。
【0028】
本発明の付加的な実施態様によれば、第2の絶縁シートを準備するステップは、第2のベースシートに第2のビアホールを形成するステップと、第2のビアホールに第1の導電性ペーストに比べて高いボイド含量を有する第2の導電性ペーストを埋め込むステップとを備えることができる。
【0029】
本発明の付加的な実施形態様態によれば、第2の絶縁シートを準備するステップは、第2のベースシートに第2のビアホールを形成するステップと、第2のビアホールに、第1の導電性ペーストに比べて、熱を受けると収縮するか焼けて無くなる収縮物質をより多く含む第2の導電性ペーストを埋め込むステップとを備えることができる。
【0030】
本発明の付加的な実施態様によれば、第1の絶縁シートを準備するステップは、第1のベースシートに第1のビアホールを形成するステップと、第1のビアホールに加圧及び焼成時に第1の導電性ペーストの導電性粒子の収縮を妨害する無収縮物質を、第2の導電性ペーストに比べてより多く含む第1の導電性ペーストを埋め込むステップとを備えることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明による多層セラミック基板は、焼成時の収縮率が互いに異なる導電性ペーストによって形成されたビアコンタクトを有する絶縁シートからなる多層型基板構造体を有する。この多層型基板構造体は、加圧及び焼成される過程で、高い収縮率を有する導電性ペーストによって形成されたビアコンタクトにより、最外郭の絶縁シートに設けられたビアコンタクトの突出現象を防止することができる。これにより、本発明によれば、ビアコンタクトの接合信頼性を向上させ、製品の信頼性を向上させることができる。
【0032】
また、本発明による多層セラミック基板の製造方法は、互いに異なる収縮率を有する導電性ペーストによって形成されたビアコンタクトを有する絶縁シートを準備するステップと、絶縁シートを積層させて多層型基板構造体を形成するステップと、多層型基板構造体を加圧及び焼成するステップとを含むことができる。多層型基板構造体を加圧及び焼成する過程において、相対的に高い収縮率を有する導電性ペーストによって形成されたビアコンタクトにより、最外郭の絶縁シートに設けられたビアコンタクトの突出現象を防止することができる。従って、本発明の多層セラミック基板の製造方法によれば、ビアコンタクトの接合信頼性を向上させ、製品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による多層セラミック基板を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造方法を示す手順図である。
【図3a】本発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造過程を説明するための図である。
【図3b】本発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造過程を説明するための図である。
【図3c】本発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造過程を説明するための図である。
【図3d】本発明の一実施形態による多層セラミック基板の製造過程を説明するための図である。
【図4】本発明の多層セラミック基板の一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等を含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値及び範囲についても同様である。また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものには同一の符号を付しており、その繰り返しの説明は可能な限り省略している。
【0035】
本明細書で用いる用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数のものとして示すものは、特別に言及しない限り複数としてもよい。明細書で用いる「含む」という用語は、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子が、1つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことを理解されたい。
【0036】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態による多層セラミック基板及びその製造方法について説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施形態による多層セラミック基板を示す図面である。同図のように、本発明の実施形態による多層セラミック基板100は、ビルドアップ方式で製造された多層型基板であってよい。一例として、多層セラミック基板100は、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Ca-fired Ceramic:LTCC)基板構造体であってよい。他の例では、多層セラミック基板100は高温同時焼成セラミック(High Temperature Co-fired Ceramic:HTCC)基板構造体であってよい。
【0038】
多層セラミック基板100は、複数の絶縁シートが積層された多層型積層構造体110を有する。例えば、絶縁シートは第1の絶縁シート120及び第2の絶縁シート130を含む。多層型基板構造体110は、第1及び第2の絶縁シート120,130を、少なくとも1つずつ選択的に上下に配置した構造を有することができる。
【0039】
第1の絶縁シート120は、第1のビアホール122aを有する第1のベースシート122と、第1のビアホール122a内に形成された第1のビアコンタクト124とを含んでいる。第1のベースシート122は、ポリイミド(polyimide)のようなセラミック材質から構成することができる。第1のビアコンタクト124は、第1の導電性ペーストを第1のビアホール122aに埋め込んで形成されたものであってよい。第2の絶縁シート130は、第2のビアホール132aを有する第2のベースシート132と、第2のビアホール132a内に形成された第2のビアコンタクト134とを含んでいる。第2のベースシート132は、ポリイミドのようなセラミック材質から構成することができる。第2のビアコンタクト134は、第1の導電性ペーストに比べて焼成(sintering)時に異なる収縮率を有する第2の導電性ペーストを第2のビアホール132aに埋め込んで形成されたものであってよい。これに加えて、第1及び第2の絶縁シート120,130は、その表面に形成され、第1及び第2のビアコンタクト124,134に接続された回路配線(図示せず)をさらに含むことができる。
【0040】
第1の絶縁シート120及び第2の絶縁シート130は、第1のビアコンタクト124及び第2のビアコンタクト134が上下で向き合うように配置されるように構成することができる。例えば、第1の絶縁シート120及び第2の絶縁シート130は、所定の単位個数だけ積層され、この時、第1のビアコンタクト124及び第2のビアコンタクト134は、上下に整列される。これにより、多層セラミック基板100は、第1のビアコンタクト124及び第2のビアコンタクト134が上下に配置されて接合された構造を有することになる。
【0041】
前述のように、第1及び第2のビアコンタクト124,134が上下に接合されることによって、それらの間には接合面126が形成される。この接合面126は、第2のビアコンタクト134に向けて突出した形状を有することができる。一例として、接合面126は第1のビアコンタクト124から第2のビアコンタクト134に向けて凸に突出した形状を有する。第1のビアコンタクト124は、第2のビアコンタクト134に比べて相対的に多層型基板構造体110の内部に配置されているので、接合面126は多層型基板構造体110の外部に向かう方向に突出した形状を有している。このような形状の接合面126は、第1のビアコンタクト124の一部が第2のビアコンタクト134の内部に向かって拡がることによって形成されたものであってよい。
【0042】
一方、第2のビアコンタクト134は、第1のビアコンタクト124に比べて高い収縮性を有する導電性ペーストを用いて形成されたものとすることができる。例えば、第2の導電性ペーストは、熱を受けると、第1の導電性ペーストに比べてその体積が減少可能な特性を有している。一例として、第2の導電性ペーストは、第1の導電性ペーストに比べて内部のボイド(void)含量が多い。ボイドは、第2の導電性ペースト内の空き部分を意味している。つまり、第2の導電性ペーストは多孔性構造を有する。このような第2の導電性ペーストは、熱を受けると該ボイドの部分が焼結されて一部または全部がなくなることによって、該ボイドの空間分だけその体積が減少することになる。そのため、第2の導電性ペーストが第1の導電性ペーストに比べてより多くのボイド含量を有するように調節することによって、焼成時に第1の導電性ペーストに比べて高い収縮率を有するようにすることができる。これにより、第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクト134は、第1のビアコンタクト124に比べて高い空隙率を有することになる。
【0043】
他の例として、第2の導電性ペーストは、第1の導電性ペーストに比べて、熱を受けると、その体積が収縮する収縮物質をより多く含むことができる。例えば、第2の導電性ペーストは第1の導電性ペーストに比べて、熱を受けると、その体積が減少するか焼けて無くなる物質をより多く含むことができる。このような収縮物質としてはポリマ一系列の物質が挙げられる。従って、第2の導電性ペース卜が、第1の導電性ペーストに比べてより多くの収縮物質を有するように調節することによって、第2の導電性ペーストが焼成時に第1の導電性ペーストに比べて高い収縮率を有するようにすることができる。
【0044】
さらに他の例として、第1の導電性ペーストは、第2の導電性ペーストに比べて収縮性の低い物質をより多く含むことができる。例えば、第1の導電性ペーストは、第2の導電性ペーストに比べて金属粒子間に移動を制限する無収縮物質をより多く有することができる。この無収縮物質としては、アルミナ(alumina)、ジルコニア(zirconia)、ガラス(glass)、その他に多様なセラミック(ceramic)物質などが挙げられる。この他にも、無収縮物質としては多様な種類の金属物質が挙げられる。例えば、無収縮物質としては、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(pd)及び白金(pt)のうちの少なくともいずれか1つが挙げられる。前述のような第1の導電性ペーストは、熱を受けると、無収縮物質により第1の導電性ペーストの導電性粒子間の移動が制限されるので、第1の導電性ペーストの収縮が制限される。そのため、第1の導電性ペーストは、焼成時に第2の導電性ペーストに比べて小さめの収縮をすることによって、相対的に第2の導電性ペーストに比べて低い収縮率を有することになる。これにより、第1の導電性ペーストによって形成された第1のビアコンタクト124は、第2のビアコンタクト134に比べて無収縮物質の含量が多いことになる。
【0045】
続いて、本発明の実施形態による多層セラミック基板の製造方法について詳細に説明する。ここで、先に詳述した多層セラミック基板について重複する内容は省略するか簡略に説明する。
【0046】
図2は、本発明の実施形態による多層セラミック基板の製造方法を示す順序図である。図3a〜dは、本発明の実施形態による多層セラミック基板の製造過程を説明するための図面である。
【0047】
図2及び図3aを参照すると、相対的に低い収縮率を有する第1の導電性ペーストによって形成された第1のビアコンタクト124を有する第1の絶縁シート120を形成する(S110)。例えば、第1の絶縁シート120を形成するこのステップは、セラミック材質の第1のベースシート122を準備するステップと、第1のベースシート122に第1のビアホール122aを形成するステップと、第1のビアホール122aに相対的に低い収縮率を有する第1の導電性ペーストを埋め込むステップとを含むことができる。これにより、第1の絶縁シート120には、相対的に低い収縮率を有する第1の導電性ペーストによって形成された第1のビアコンタクト124を形成することができる。
【0048】
図2及び図3bを参照すると、相対的に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクト134を有する第2の絶縁シート130を形成する(S120)。例えば、第2の絶縁シート130を形成するステップは、セラミック材質の第2のベースシート132を準備するステップと、第2のベースシート132に第2のビアホール132aを形成するステップと、第2のビアホール132aに相対的に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストを埋め込むステップとを含むことができる。これにより、第2の絶縁シート130には、相対的に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクト134を形成することができる。
【0049】
図2及び図3cを参照すると、第1のビアコンタクト124及び第2のビアコンタクト134が上下に整列されるように、第1及び第2の絶縁シート120,130を配置する(S130)。例えば、第1のビアコンタクト124及び第2のビアコンタクト134が上下で向き合うように、第1及び第2の絶縁シート120,130を積層させる。このようにして、所定の単位個数分の第1及び第2の絶縁シート120,130を上下に積層させて多層型基板構造体110を構成することができる。これに加えて、第2の絶縁シート130が、第1の絶縁シート120を介して多層型基板構造体110の最外郭に配置されるように構成することができる。その結果、多層型基板構造体110は、所定の単位個数分の第1の絶縁シート120の各々が、全て、2つの第2の絶縁シート130の間に介在するようにして、第1及び第2のビアコンタクト124,134が上下に積層された構造を有する。
【0050】
図2及び図3dを参照すると、多層型基板構造体110を加圧及び焼成して多層セラミック基板100を形成する(S140)。多層型基板構造体110を加圧するステップは、多層型基板構造体110に上下方向の圧力を与え、第1及び第2の絶縁シート120,130を圧着させて行うことができる。多層型基板構造体110を焼成するステップでは、第1及び第2のビアコンタクト124,134の融点以上の温度で多層型基板構造体110を焼成し、第1及び第2の絶縁シート120,130を接合する。前述の多層型基板構造体110を加圧するステップと多層型基板構造体110を焼成するステップとは、同時に行うことができる。
【0051】
一方、第1及び第2の絶縁シート120,130を上下に加圧し焼成する過程において、第2の絶縁シート130に形成された第2のビアコンタクト134は、外部空間に向かう方向の圧力を受けることになる。特に、第1のビアコンタクト124と第2のビアコンタクト134とが上下に積層される構造を有する場合、第1及び第2の絶縁シート120,130が圧着されれば、第1のビアコンタクト124の一部が第2のビアコンタクト134内に拡がるようになって、第2のビアコンタクト134を外部空間に押し出そうとする。この時、第2のビアコンタクト134は加圧及び焼成時に相対的に高い収縮率を有するように構成されているので、第1のビアコンタクト124の拡がった部分を収容することができる。従って、多層型基板構造体110を加圧及び焼成させる過程において、第1のビアコンタクト124の一部が第2のビアコンタクト134の内部に拡がり、これに対して第2のビアコンタクト134は収縮し、第1のビアコンタクト124の拡がった部分を収容することによって、第2のビアコンタクト134の外部への突出を防止することができる。これにより、第1及び第2のビアコンタクト124,134間の接合面126は、第2のビアコンタクト134に向けて凸な形状を有することができる。ここで、第2のビアコンタクト134の収縮程度は、第1のビアコンタクト124の拡がる程度を勘案して調節できる。従って、第1のビアコンタクト124の拡がる程度を考慮し、第2のビアコンタクト134の収縮率を調節するために第2の導電性ペーストのボイド含量及び収縮物質の含量を調節するか、または第1の導電性ペーストの無収縮物質の含量を調節することができる。
【0052】
前述のように、本発明の実施形態による多層セラミック基板100は、焼成時の収縮率が異なる導電性ペーストを用いて形成された第1及び第2の絶縁シート120,130から成る多層型基板構造体110を有する。この多層型基板構造体110は、加圧及び焼成される過程で相対的に高い収縮率を有する導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクト134により、最外郭の絶縁シートに設けられたビアコンタクトの突出現象を防止することができる。これにより、本発明による多層セラミック基板100は、ビアコンタクトの接合信頼性を向上させ、製品の信頼性を向上させることができる。
【0053】
また、本発明による多層セラミック基板の製造方法は、互いに異なる収縮率を有する導電性ペーストを用いて形成された第1及び第2の絶縁シート120,130を準備するステップと、これらの第1及び第2の絶縁シート120,130を積層して多層型基板構造体110を形成するステップと、多層型基板構造体110を加圧及び焼成するステップとを含む。多層型基板構造体110を加圧及び焼成する過程において、相対的に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクト134により、最外郭の絶縁シートに設けられたビアコンタクトの突出現象が防止することができる。これにより、本発明による多層セラミック基板の製造方法によれば、ビアコンタクトの接合信頼性を向上させ、製品の信頼性を向上させることができる多層セラミック基板100を製造することができる。
【0054】
以下、本発明の実施形態による多層セラミック基板の一変形例を詳細に説明する。ここで、先に説明した多層セラミック基板100に対して重複する内容は省略するか簡略に説明する。また、後述の一変形例による多層セラミック基板の製造過程は、先に詳述した多層セラミック基板100の製造過程から当業者が十分に導き出すことができるので、これについての詳細な説明は省略する。
【0055】
図4は、本発明の実施形態による多層セラミック基板の一変形例を示す図面である。図4を参照すると、本発明の一変形例による多層セラミック基板102は、第1の絶縁シート120及び該第2の絶縁シート130が積層された多層型基板構造体112を含む。これらの第1及び第2の絶縁シート120,130は、先に図1を参照して説明した第1及び第2の絶縁シート120,130とほぼ同一の構成を有するものであり、したがって、これらについての詳細な説明は省略する。
【0056】
一方、多層型基板構造体112は、第1のビアコンタクト124及び第2のビアコンタクト134が上下に積層されるように配置された第1及び第2の絶縁シート120,130を備えている。ここで、第1の絶縁シート120は多層型基板構造体112の最外郭に配置され、第2の絶縁シート130は多層型基板構造体112の最外郭から2番目に配置されている。これにより、第1のビアコンタクト124は最外郭に配置され、第2のビアコンタクト134は第1のビアコンタクト124に比べて多層型基板構造体110の内部に配置され、第1のビアコンタクト124に接合されるようになっている。これにより、第1のビアコンタクト124と第2のビアコンタクト134との間には接合面127が形成される。この接合面127は、第2のビアコンタクト134に向けて突出した形状を有することができる。一例として、接合面127は、第2のビアコンタクト134に向けて凸に突出した形状を有することができる。第1のビアコンタクト124は、第2のビアコンタクト134に比べて多層型基板構造体110の外郭に配置されるので、接合面127は多層型基板構造体110の内部に向かう方向に突出した形状を有することになる。このような形状の接合面127は、第1のビアコンタクト124の一部が第2のビアコンタクト134の内部領域に拡がることによって形成されたものとすることができる。
【0057】
このような多層セラミック基板102は、先に図1を参照して説明した多層セラミック基板100に比べて、第1の絶縁シート120が多層型基板構造体112の最外郭に配置され、第2の絶縁シート130が最外郭から2番目に配置された構造を有することになる。このような構造の多層セラミック基板102は、相対的に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクト134により、多層型基板構造体112の加圧及び焼成時、第1のビアコンタクト124の拡がった部分を第2のビアコンタクト134が収容することによって、多層型基板構造体112の最外郭に配置された第1のビアコンタクト124の突出現象を防止することができる。これにより、本発明による多層セラミック基板102は、ビアコンタクトの接合信頼性を向上させ、製品の信頼性を向上させることができる。
【0058】
ここで開示した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
100 多層セラミック基板
110 多層型基板構造体
120 第1の絶縁シート
122 第1のベースシート
124 第1のビアコンタクト
126 接合面
130 第2の絶縁シート
132 第2のベースシート
134 第2のビアコンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のビアコンタクトを有する第1の絶縁シートと、
前記第1の絶縁シートに接合され、前記第1のビアコンタクトと上下に整列されて接合された第2のビアコンタクトを有する第2の絶縁シートとを含み、
前記第1のビアコンタクトは、前記第2のビアコンタクトの内部に拡がった形状を有する多層セラミック基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートは、互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、
前記第2の絶縁シートは、前記第1の絶縁シートを介して前記多層型基板構造体の最外郭に配置されている詰求項1に記載の多層セラミック基板。
【請求項3】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートは、互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、
前記第1の絶縁シートは、前記多層型基板構造体の最外郭に配置され、
前記第2の絶縁シートは、最外郭から2番目に配置されている請求項1に記載の多層セラミック基板。
【請求項4】
前記第2のビアコンタクトは、前記第1のビアコンタクトに比べて高い空隙率を有する請求項1に記載の多層セラミック基板。
【請求項5】
前記第1のビアコンタクトは、前記第2のビアコンタクトに比べて無収縮物質をより多く含む請求項1に記載の多層セラミック基板。
【請求項6】
前記無収縮物質は、アルミナ(alumina)、ジルコニア(zirconia)及びガラス(glass)のうちの少なくともいずれか1つを含む請求項5に記載の多層セラミック基板。
【請求項7】
第1のビアコンタクトを有する第1の絶縁シートと、
前記第1の絶縁シートに接合され、前記第1のビアコンタクトと上下に整列されて接合された第2のビアコンタクトを有する第2の絶縁シートとを含み、
前記第1のビアコンタクトと前記第2のビアコンタクトとは、互いに異なる収縮率を有する導電性ペーストによって形成されている多層セラミック基板。
【請求項8】
前記第1のビアコンタクトと前記第2のビアコンタクトとは、互いに上下に接合されて接合面を形成し、
前記接合面は、前記第2のビアコンタクトの内部に向かって突出した形状を有する請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項9】
前記第2の絶縁シートは、前記第1の絶縁シートの前面及び背面のうちの少なくともいずれか1つに接合されている請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項10】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートは、互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、
前記第2の絶縁シートは、前記第1の絶縁シートを介して前記多層型基板構造体の最外郭に配置されている請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項11】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートは、互いに積層されて多層型基板構造体を構成し、
前記第1の絶縁シートは、前記多層型基板構造体の最外郭に配置され、
前記第2の絶縁シートは、最外郭から2番目に配置されている請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項12】
前記第1のビアコンタクトは、第1の導電性ペーストによって形成され、
前記第2のビアコンタクトは、前記第1の導電性ペーストに比べて焼成時に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成され、
前記第1の導電性ペーストは、前記第2の導電性ペーストに比べて高いボイド含量を有する請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項13】
前記第1のビアコンタクトは、第1の導電性ペーストによって形成され、
前記第2のビアコンタクトは、前記第1の導電性ペーストに比べて焼成時に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成され、
前記第1の導電性ペーストは、前記第2の導電性ペーストに比べて、熱を受けると収縮するか焼けて無くなる収縮物質をより多く含む請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項14】
前記収縮物質は、ポリマ一系列の物質を含む請求項13に記載の多層セラミック基板。
【請求項15】
前記第1のビアコンタクトは、第1の導電性ベース卜によって形成され、
前記第2のビアコンタクトは、前記第1の導電性ペーストに比べて焼成時に高い収縮率を有する第2の導電性ペーストによって形成され、
前記第2の導電性ペーストは、前記第1の導電性ペーストに比べて焼成時に前記第2の導電性ペーストの導電性粒子の収縮を妨害する無収縮物質をより多く含む請求項7に記載の多層セラミック基板。
【請求項16】
前記無収縮物質は、アルミナ(alumina)、ジルコニア(zirconia)及びガラス(glass)のうちの少なくともいずれか1つを含む請求項15に記載の多層セラミック基板。
【請求項17】
第1の導電性ペーストによって形成された第1のビアコンタクトを有する第1の絶縁シートを準備するステップと、
前記第1の導電性ペーストに比べて焼成時の収縮率が異なる第2の導電性ペーストによって形成された第2のビアコンタクトを有する第2の絶縁シートを準備するステップと、
前記第1のビアコンタクトと前記第2のビアコンタクトとが上下に整列されるように、前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを配置するステップと、
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを焼成するステップと、
を含む多層セラミック基板の製造方法。
【請求項18】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを配置する前記ステップは、
前記第1の絶縁シートの前面及び背面のうちの少なくともいずれか一方に前記第2の絶縁シートを接合するステップを備える請求項17に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項19】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを配置する前記ステップは、
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを積層させて多層基板構造体を構成し、この際、前記第2の絶縁シートを前記多層基板構造体の最外郭に位置するように、前記第1の絶縁シートに接触させるステップ、
を備える請求項17に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項20】
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを配置する前記ステップは、
前記第1の絶縁シート及び前記第2の絶縁シートを積層させて多層基板構造体を構成し、この際、前記第1の絶縁シートを前記多層基板構造体の最外郭に位置するように、前記第2の絶縁シートに接触させるステップ、
を備える請求項17に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項21】
前記第2の絶縁シートを準備するステップは、
第2のベースシートに第2のビアホールを形成するステップと、
前記第2のビアホールに、前記第1の導電性ペーストに比べて高いボイド含量を有する前記第2の導電性ペーストを埋め込むステップと、
を備える請求項17に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項22】
前記第2の絶縁シートを準備するステップは、
第2のベースシートに第2のビアホールを形成するステップと、
前記第2のビアホールに、前記第1の導電性ペーストに比べて、熱を受けると収縮するか焼けて無くなる収縮物質をより多く含む前記第2の導電性ペーストを埋め込むステップと、
を備える請求項17に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項23】
前記第1の絶縁シートを準備するステップは、
第1のベースシートに第1のビアホールを形成するステップと、
前記第1のビアホールに、焼成時に前記第1の導電性ペーストの導電性粒子の収縮を妨害する無収縮物質を前記第2の導電性ペーストに比べてより多く含む前記第1の導電性ペーストを埋め込むステップと、
を備える請求項17に記載の多層セラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−77487(P2011−77487A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270756(P2009−270756)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】