説明

多層基板およびその製造方法

【課題】多層基板のフレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができるようにする。
【解決手段】多層基板102は、積層された複数の絶縁層2を含むリジッド部51と、リジッド部51に含まれる上記複数の絶縁層2の一部である第1群8の絶縁層2が延在することによってリジッド部51から側方に延在するフレキシブル部52とを備える。フレキシブル部52は、リジッド部51に比べて柔軟である。フレキシブル部52は、内部に空隙9を有する。フレキシブル部52は、使用時に折り曲げられることによって内側となる表面である第1表面21と外側となる表面である第2表面22とを有する。空隙9は、空隙9が中心面23より第1表面21側において占める体積が、空隙9が中心面23より第2表面22側において占める体積より大きくなるように、配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導体パターンが適宜配置された複数の絶縁層が積層されることによって形成された多層基板の一例が特開平8−330683号公報(特許文献1)に記載されている。この文献に示されたプリント配線基板は、第1の基板、第2の基板と称する硬く平面性を保つ部分と、第1,第2の基板間を接続し、自由に曲げることができる部分とを備える。
【0003】
硬く平面性を保つ部分を「リジッド部」と呼び、自由に曲げることができる部分を「フレキシブル部」と呼ぶものとする。
【0004】
リジッド部とフレキシブル部との両方を備える多層基板を、複数の絶縁層の積層によって作製するためには、積層する絶縁層の数をリジッド部では多く設定し、フレキシブル部では少なく設定するということが行なわれる。このような多層基板の一例を図20に示す。多層基板901は、リジッド部51とフレキシブル部52との両方を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−330683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図20に示した多層基板901では、フレキシブル部52は絶縁層2の2層分の厚みとなっていた。これに対して絶縁層の1層当たりの厚みが十分に薄い場合、たとえば図21に示す多層基板902のように、フレキシブル部52においても、多くの数の絶縁層が積層される。
【0007】
一方、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなると、フレキシブル部の柔軟性が失われていく。
【0008】
そこで、本発明は、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができるような多層基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に基づく多層基板は、積層された複数の絶縁層を含むリジッド部と、上記リジッド部に含まれる上記複数の絶縁層の一部である第1群の絶縁層が延在することによって上記リジッド部から側方に延在するフレキシブル部とを備え、上記フレキシブル部は、内部に空隙を有し、上記フレキシブル部は、使用時に折り曲げられることによって内側となる表面である第1表面と外側となる表面である第2表面とを有し、上記空隙は、上記空隙が上記フレキシブル部の厚み方向の中心面より上記第1表面側において占める体積が、上記空隙が上記フレキシブル部の厚み方向の中心面より上記第2表面側において占める体積より大きくなるように、配置されている。この構成を採用することにより、フレキシブル部の内部に空隙を有するので、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。また、曲げられたときに圧縮状態となる側に空隙が多く配置されていることとなるので、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。
【0010】
上記発明において好ましくは、上記空隙は複数の空隙要素の集合である。この構成を採用することにより、曲げの際に空隙が機能を発揮する部位を広い範囲に分散させることができるので、より円滑で均一な曲げが得られる。
【0011】
上記発明において好ましくは、上記複数の空隙要素は、上記フレキシブル部の厚み方向の中心面より上記第1表面側に配置された空隙要素の数が上記フレキシブル部の厚み方向の中心面より上記第2表面側に配置された空隙要素の数より多くなるように配置されている。この構成を採用することにより、中心面より第1表面側と第2表面側とで空隙の体積に差を設けることが容易となる。
【0012】
上記発明において好ましくは、上記空隙は、上記フレキシブル部の内部において厚み方向の中心面より上記第1表面側にのみ配置されている。この構成を採用することにより、空隙の全てが曲げたときに圧縮が生じる側に配置されているので、効率良く柔軟性を発揮させることができる。
【0013】
上記発明において好ましくは、上記空隙は厚み方向に関して2以上の絶縁層にまたがるように設けられている。この構成を採用することにより、平面的には狭い面積を占有するのみでありながら大きな体積の空隙または空隙要素を確保することができる。
【0014】
上記発明において好ましくは、上記空隙は、上底と下底とを有し、上記上底および上記下底のうち少なくとも一方の外縁の少なくとも一部が、上記外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている。この構成を採用することにより、覆われている部分に関しては、曲げの際にその外縁を基点に絶縁層に亀裂が生じることを防止することができる。
【0015】
上記発明において好ましくは、上記空隙は、上底と下底とを有し、上記上底および上記下底のうち少なくとも一方の外縁の全周が上記外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている。この構成を採用することにより、当該底においては、曲げの際にその外縁を基点に絶縁層に亀裂が生じることをより確実に防止することができる。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に基づく多層基板の製造方法は、上述のいずれかの多層基板を製造するための方法であって、上記リジッド部となるべき領域であるリジッド部予定領域と上記フレキシブル部となるべき領域であるフレキシブル部予定領域とを有する第1群の絶縁体シートを含む複数の絶縁体シートを用意する工程と、上記第1群の絶縁体シートのうち少なくとも一部の上記フレキシブル部領域に上記空隙の少なくとも一部となるべき孔を形成する工程と、上記複数の絶縁体シートを積層する工程と、積層された上記複数の絶縁体シートを圧着する工程とを含む。この方法を採用することにより、フレキシブル部の内部に空隙を有する多層基板を得ることができる。このようにして製造される多層基板は、フレキシブル部の内部に空隙を有することにより、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における多層基板の断面図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における多層基板の変形例の断面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態2における多層基板の断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態2における多層基板の変形例の断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態3における多層基板の断面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態4における多層基板の断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態5における多層基板の断面図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態5における多層基板の部分拡大図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態5における多層基板の第1の変形例の断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態5における多層基板の第2の変形例の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態5における多層基板の第3の変形例の断面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法のフローチャートである。
【図13】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第1の工程の説明図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第2の工程の説明図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第3の工程の説明図である。
【図16】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第4の工程の説明図である。
【図17】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第5の工程の説明図である。
【図18】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第6の工程の説明図である。
【図19】本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法の第7の工程の説明図である。
【図20】従来技術に基づく多層基板の第1の例の断面図である。
【図21】従来技術に基づく多層基板の第2の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
(構成)
図1を参照して、本発明に基づく実施の形態1における多層基板について説明する。本実施の形態における多層基板101は、積層された複数の絶縁層を含むリジッド部51と、リジッド部51に含まれる前記複数の絶縁層の一部である第1群8の絶縁層2が延在することによってリジッド部51から側方に延在するフレキシブル部52とを備える。フレキシブル部52は、リジッド部51に比べて柔軟である。これは、リジッド部51に比べてフレキシブル部52の方が絶縁層の層数が少ないからである。多層基板101はフレキシブル部52の内部に空隙9を有する。
【0019】
(作用・効果)
本実施の形態における多層基板101は、フレキシブル部52の内部に空隙9を有するので、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。
【0020】
図1に示した例では、1層分の厚みを有する空隙9が配置された構成となっているが、空隙9の大きさはこれに限らない。たとえば図2に示す多層基板101eのように、空隙9は複数層にまたがる大きさであってもよい。図1、図2に示した例では、空隙9は、フレキシブル部52の厚み方向の中央に配置されているが、厚み方向のいずれかの側に偏って配置されていてもよい。図1、図2に示した例では、空隙9は、長手方向の中央に位置しているが、長手方向のいずれかの側に偏って配置されていてもよい。
【0021】
絶縁層2の材料は、たとえば熱可塑性樹脂であってよいが、他の種類の樹脂であってもよく、絶縁性の材料であれば樹脂以外であってもよい。以下の実施の形態においても同様である。
【0022】
本実施の形態では、空隙9は単一のものとして説明したが、空隙9は、複数の空隙要素の集合であることが好ましい。すなわち、空隙9は複数の空隙要素に分割されていることが好ましい。これについては、実施の形態2以降で詳しく説明する。
【0023】
(実施の形態2)
(構成)
図3を参照して、本発明に基づく実施の形態2における多層基板について説明する。本実施の形態における多層基板102は、使用時には矢印81a,81bの向きに曲げられるものとする。以下の実施の形態においても多層基板は同様の向きに曲げられるものとする。
【0024】
多層基板102は、使用時に折り曲げられることによって内側となる表面である第1表面21と外側となる表面である第2表面22とを有する。空隙9は、空隙9がフレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第1表面21側において占める体積が、空隙9がフレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第2表面22側において占める体積より大きくなるように、配置されている。
【0025】
(作用・効果)
本実施の形態における多層基板102は、使用時に曲げられることにより、フレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第1表面21側は圧縮状態となり、フレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第2表面22側は引張状態となる。これに対して、本実施の形態では、空隙9がフレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第1表面21側において占める体積が、空隙9がフレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第2表面22側において占める体積より大きくなっているので、曲げられたときに圧縮状態となる側に空隙9が多く配置されていることとなる。その結果、多層基板102は曲げやすくなる。したがって、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。
【0026】
なお、本実施の形態で示したように、空隙9は複数の空隙要素の集合であることが好ましい。このようになっていれば、曲げの際に空隙が機能を発揮する部位を広い範囲に分散させることができるので、より円滑で均一な曲げが得られるので、好ましい。図3に示した例では、空隙9は2つの空隙要素31,32からなるものとしたが、より多くの空隙要素からなる構成であってもよい。
【0027】
(変形例)
図3に示した多層基板102では、各空隙要素は厚み方向に複数層に相当する厚みを有する空間であったが、図4に示す多層基板103のように、各空隙要素は、1層分の厚みを有するのみであってもよい。
【0028】
なお、図3に示した多層基板102のように、空隙9が厚み方向に関して2以上の絶縁層にまたがるように設けられていることは好ましい。このようにすれば、平面的には狭い面積を占有するのみでありながら大きな体積の空隙または空隙要素を確保することができるからである。
【0029】
(実施の形態3)
(構成)
図5を参照して、本発明に基づく実施の形態3における多層基板104について説明する。実施の形態2で図3に示した多層基板102では、各空隙要素は中心面23にまたがるように配置されていたが、本実施の形態では、図5に示す多層基板104のように、各空隙要素が中心面23に接しない位置に配置されている。多層基板104においては、空隙9は5つの空隙要素からなる。これらの5つの空隙要素はそれぞれ同じ体積のものであってもよい。フレキシブル部52の厚み方向の中心面より第1表面21側に3つ、フレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第2表面22側に2つの空隙要素が配置されている。空隙9を構成する空隙要素の体積の合計を比較すると、空隙9がフレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第1表面21側において占める体積が、空隙9がフレキシブル部52の厚み方向の中心面23より第2表面22側において占める体積より大きくなっている。
【0030】
本実施の形態では、空隙9は複数の空隙要素によって構成されている。本実施の形態のように、複数の空隙要素は、フレキシブル部52の厚み方向の中心面23より前記第1表面側に配置された空隙要素の数が前記フレキシブル部の厚み方向の中心面より前記第2表面側に配置された空隙要素の数より多くなるように配置されていることが好ましい。
【0031】
(作用・効果)
本実施の形態では、空隙要素の数に差をつけることによって、中心面23より第1表面21側と第2表面22側とで空隙9の体積に明確に差をつける形となっている。したがって、空隙9の体積に差を設けることが容易となる。本実施の形態では、空隙要素の1個当たりの大きさおよび形状を同一にすることも可能となるので、作製が容易となる。
【0032】
(実施の形態4)
(構成)
図6を参照して、本発明に基づく実施の形態4における多層基板105について説明する。多層基板105においては、空隙9は、フレキシブル部52の内部において厚み方向の中心面23より第1表面21側にのみ配置されている。
【0033】
(作用・効果)
本実施の形態では、たとえ空隙9の総体積が少ない場合であっても、空隙9の全てが厚み方向の中心面23より第1表面21側、すなわち曲げたときに圧縮が生じる側に配置されているので、効率良く柔軟性を発揮させることができる。その結果、フレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。
【0034】
(実施の形態5)
(構成)
図7を参照して、本発明に基づく実施の形態5における多層基板106について説明する。多層基板106においては、空隙9は、上底と下底とを有し、前記上底および前記下底のうち少なくとも一方の外縁の少なくとも一部が、前記外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている。図7の空隙要素31の近傍を拡大したところを図8に示す。空隙9に対して導体パターン24,25が露出している。
【0035】
図8に示すように、上底の外縁の少なくとも一部であるZ1部は導体パターン24によって覆われている。さらに上底の外縁の他の一部であるZ2部も導体パターン24によって覆われている。下底の外縁の少なくとも一部であるZ3部は導体パターン25によって覆われている。さらに下底の外縁の他の一部であるZ4部も導体パターン25によって覆われている。
【0036】
(作用・効果)
本実施の形態では、空隙の上底および下底のうち少なくとも一方の外縁の少なくとも一部が、外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われているので、その覆われている部分に関しては、曲げの際にその外縁を基点に絶縁層に亀裂が生じることを防止することができる。
【0037】
図8では、Z1〜Z4部のいずれもが外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている例を示した。このようにZ1〜Z4部のいずれも覆われている構成であればいずれの角においても亀裂の発生を防止できるので好ましいが、Z1〜Z4部のうち一部のみが外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている構成であっても当該角における亀裂発生を防止する効果は得られる。ここでは、説明の便宜上、断面図で見える四隅を抽出してZ1〜Z4部としたが、上底および下底の「外縁」とは、これらの四隅だけでなく紙面奥側および手前側を含めた外縁の全周を意味する。
【0038】
本実施の形態で示した多層基板106においては、空隙9は、上底と下底とを有し、前記上底および前記下底のうち少なくとも一方の外縁の全周が前記外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている。このように全周にわたって外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われていれば、当該底においては、曲げの際にその外縁を基点に絶縁層に亀裂が生じることをより確実に防止することができるので好ましい。また、外縁を覆う導体パターンは、その他の導体パターンと電気的に接続されていてもよく、その他の導体パターンと電気的に接続されていない、いわゆるダミー導体パターンであってもよい。
【0039】
(変形例)
本実施の形態の変形例としては、図9〜図11に示すようなものが考えられる。これらの構成においてもそれぞれ曲げの際に空隙の底の外縁を基点とした亀裂発生を防止する効果が期待できる。
【0040】
(実施の形態6)
(製造方法)
図12〜図19を参照して、本発明に基づく実施の形態6における多層基板の製造方法について説明する。本実施の形態における多層基板の製造方法のフローチャートを図12に示す。
【0041】
この製造方法は、上述の各実施の形態における多層基板を製造するための方法である。この製造方法は、リジッド部51となるべき領域であるリジッド部予定領域とフレキシブル部52となるべき領域であるフレキシブル部予定領域とを有する第1群の絶縁体シートを含む複数の絶縁体シートを用意する工程S1と、前記第1群の絶縁体シートのうち少なくとも一部の前記フレキシブル部領域に前記空隙の少なくとも一部となるべき孔を形成する工程S2と、前記複数の絶縁体シートを積層する工程S3と、積層された前記複数の絶縁体シートを圧着する工程S4とを含む。以下に詳しく説明する。
【0042】
まず、工程S1として図13に示すような導体箔付き樹脂シート12を用意する。導体箔付き樹脂シート12は、絶縁層2の片面に導体箔17が付着した構造のシートである。導体箔付き樹脂シート12は工程S1における絶縁体シートに相当する。工程S1では、複数の絶縁体シートを用意する。これらの複数の絶縁体シートのうちの一部は、第1群の絶縁体シートとしてのちにフレキシブル部を構成する絶縁体シートである。工程S1で用意される複数の絶縁体シートは、1枚の導体箔付き樹脂シート12からそれぞれ切り出して形成されるものであってもよく、複数の導体箔付き樹脂シート12から形成されるものであってもよい。
【0043】
導体箔付き樹脂シート12に含まれる絶縁層2は樹脂層であってよい。樹脂層は、たとえば熱可塑性樹脂であるLCP(液晶ポリマー)からなるものである。絶縁層2となる樹脂層の材料としては、LCPの他に、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PPS(ポニフェニレンスルファイド)、PI(ポリイミド)などであってもよい。導体箔17は、たとえばCuからなる厚さ18μmの箔である。なお、導体箔17の材料はCu以外にAg、Al、SUS、Ni、Auであってもよく、これらの金属のうちから選択された2以上の異なる金属の合金であってもよい。本実施の形態では、導体箔17は厚さ18μmとしたが、導体箔17の厚みは3〜40μm程度であってよい。導体箔17は、回路形成が可能な厚みであればよい。
【0044】
図14に示すように、導体箔付き樹脂シート12の絶縁層2側の表面に炭酸ガスレーザ光を照射することによって絶縁層2を貫通するようにビア孔11を形成する。ビア孔11は、絶縁層2を貫通しているが導体箔17は貫通していない。その後、ビア孔11のスミア(図示せず)を除去する。ここではビア孔11を形成するために炭酸ガスレーザ光を用いたが、他の種類のレーザ光を用いてもよい。また、ビア孔11を形成するためにレーザ光照射以外の方法を採用してもよい。
【0045】
次に、図15に示すように、導体箔付き樹脂シート12の導体箔17の表面に、スクリーン印刷などの方法で、所望の回路パターンに対応するレジストパターン13を印刷する。
【0046】
次に、レジストパターン13をマスクとしてエッチングを行ない、図16に示すように、導体箔17のうちレジストパターン13で被覆されていない部分を除去する。導体箔17のうち、このエッチングの後に残った部分を「導体パターン7」と称する。その後、図17に示すように、レジストパターン13を除去する。こうして樹脂層2の一方の表面に所望の導体パターン7が得られる。
【0047】
次に、図18に示すように、ビア孔11に、スクリーン印刷などにより導電性ペーストを充填する。スクリーン印刷は、図17における下側の面から行なわれる。図17および図18では説明の便宜上、ビア孔11が下方を向いた姿勢で表示しているが、実際には適宜姿勢を変えてスクリーン印刷を行なってよい。充填する導電性ペーストは上述したように銀を主成分とするものであってもよいが、その代わりにたとえば銅を主成分とするものであってもよい。この導電性ペーストは、のちに積層した樹脂層を熱圧着する際の温度(以下「熱圧着温度」という。)で、導体パターン7の材料である金属との間で合金層を形成するような金属粉を適量含むものであることが好ましい。この導電性ペーストは導電性を発揮するための主成分として銅すなわちCuを含むので、この導電性ペーストは主成分の他にAg,Cu,Niのうち少なくとも1種類と、Sn,Bi,Znのうち少なくとも1種類とを含むことが好ましい。こうしてビア導体6が形成される。
【0048】
次に工程S2として、図19に示すように、絶縁層2に対してパンチ加工を行なう。このパンチ加工では、第1群に属する絶縁体シートとしての絶縁層2のうち少なくとも一部のフレキシブル部領域に空隙9の少なくとも一部となるべき孔14を形成する。図19に示した例では、孔14は貫通孔であるが、貫通孔とは限らない。孔は、貫通しない孔であってもよい。
【0049】
第1群に属する絶縁体シートとして絶縁層2の中には、孔14が形成されるものと形成されないものとがあってよい。絶縁層2においてそれぞれ設計に従い、孔14を形成すべき絶縁層2のみに孔14が形成される。
【0050】
ここでは、孔をあける方法としてパンチ加工を挙げたが、孔をパンチ加工以外の方法によって形成してもよい。孔の底を導体パターンが覆うようにするには、孔をレーザ加工であけることが好適である。
【0051】
図12では工程S1を行なった後に工程S2を行なうものとして示したが、順序はこれに限らない。工程S2を含むここまでの処理を先に行なって、工程S1はその後で行なうこととしてもよい。積層体のサイズに絶縁体シートを切り出してから各種処理を行なうより、大判の導体箔付きシートのまま各種処理を行なった方が扱いやすい場合もありうるからである。
【0052】
さらに工程S3,S4として、積層および圧着をすることによって、たとえば図7に示した多層基板106が得られる。上述の実施の形態で例示した他の多層基板についても、工程S2における孔の配置を変更することによって作製可能である。多層基板の下面に配置された導体パターン7は外部電極18となる。圧着は、仮圧着と本圧着の2回に分けて行なってもよい。
【0053】
(作用・効果)
本実施の形態では、工程S2として、少なくとも一部のフレキシブル部領域に空隙9の少なくとも一部となるべき孔14を形成しているので、工程S3,S4を経て最終的には、フレキシブル部52の内部に空隙9を有する多層基板を得ることができる。このようにして製造される多層基板は、フレキシブル部の内部に空隙を有することとなるので、たとえフレキシブル部の絶縁層の層数が多くなっても、フレキシブル部の柔軟性を維持することができる。
【0054】
これまで各実施の形態では、多層基板を示す際に断面図のみで示してきたが、平面的に見たとき、空隙の配置は、長手方向に1列であってもよく、複数列であってもよい。空隙は、長手方向にジグザグに配置されたものであってもよい。
【0055】
これまでの各実施の形態では、多層基板は、フレキシブル部の長手方向の両端にそれぞれリジッド部がある構造、すなわち、1つのフレキシブル部と2つのリジッド部とを組み合わせた構造を前提として説明してきたが、多層基板はこのような構造に限らない。たとえばフレキシブル部の一端のみにリジッド部がある構造であってもよい。
【0056】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0057】
2 絶縁層、6 ビア導体、7 導体パターン、8 第1群、9 空隙、12 導体箔付き樹脂シート、13 レジストパターン、14 孔、17 (パターニングする前の)導体箔、21 第1表面、22 第2表面、23 (フレキシブル部の厚み方向の)中心面、24,25 (空隙に露出する)導体パターン、31,32 空隙要素、51 リジッド部、52 フレキシブル部、81a,81b 矢印、101,101e,102,103,104,105,106 多層基板、901,902 (従来の)多層基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の絶縁層を含むリジッド部と、
前記リジッド部に含まれる前記複数の絶縁層の一部である第1群の絶縁層が延在することによって前記リジッド部から側方に延在するフレキシブル部とを備え、
前記フレキシブル部は、内部に空隙を有し、
前記フレキシブル部は、使用時に折り曲げられることによって内側となる表面である第1表面と外側となる表面である第2表面とを有し、前記空隙は、前記空隙が前記フレキシブル部の厚み方向の中心面より前記第1表面側において占める体積が、前記空隙が前記フレキシブル部の厚み方向の中心面より前記第2表面側において占める体積より大きくなるように、配置されている、多層基板。
【請求項2】
前記空隙は複数の空隙要素の集合である、請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記複数の空隙要素は、前記フレキシブル部の厚み方向の中心面より前記第1表面側に配置された空隙要素の数が前記フレキシブル部の厚み方向の中心面より前記第2表面側に配置された空隙要素の数より多くなるように配置されている、請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記空隙は、前記フレキシブル部の内部において厚み方向の中心面より前記第1表面側にのみ配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の多層基板。
【請求項5】
前記空隙は厚み方向に関して2以上の絶縁層にまたがるように設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の多層基板。
【請求項6】
前記空隙は、上底と下底とを有し、前記上底および前記下底のうち少なくとも一方の外縁の少なくとも一部が、前記外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている、請求項1から5のいずれかに記載の多層基板。
【請求項7】
前記空隙は、上底と下底とを有し、前記上底および前記下底のうち少なくとも一方の外縁の全周が前記外縁の内外にまたがる導体パターンによって覆われている、請求項1から5のいずれかに記載の多層基板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の多層基板を製造するための方法であって、
前記リジッド部となるべき領域であるリジッド部予定領域と前記フレキシブル部となるべき領域であるフレキシブル部予定領域とを有する第1群の絶縁体シートを含む複数の絶縁体シートを用意する工程と、
前記第1群の絶縁体シートのうち少なくとも一部の前記フレキシブル部領域に前記空隙の少なくとも一部となるべき孔を形成する工程と、
前記複数の絶縁体シートを積層する工程と、
積層された前記複数の絶縁体シートを圧着する工程とを含む、多層基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−209383(P2012−209383A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73087(P2011−73087)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】