説明

多層発泡高分子体及び関連方法

本明細書に開示される本発明は、内部が成層したセル構造を有する発泡熱可塑性材料体及び製造品、及びその製造方法に関する。ある実施形態において、本発明は、非積層化多層熱可塑性材料シートを備える多層発泡高分子製造品を目的とし、前記多層熱可塑性材料シートは第1及び第2の分離した外層を有し、該第1及び第2の分離した外層は複数の分離した内側発泡層を間に挟んでおり、前記2つの外層及び複数の分離した内側発泡層は互いに一体となっている。熱可塑性材料は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PLA(ポリ乳酸)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、及びそれらの混合物等の半結晶性高分子とすることができる。二つの外層は平坦な外表面を有する非発泡のスキン層であることができ、また分離した内側発泡層はマイクロセルであることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年1月17日出願の米国仮特許出願番号第60/885,374号及び2007年1月24日出願の米国仮特許出願番号第60/886,506号の利益を主張するものであって、その両方は全体を参照することにより全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に発泡プラスチック材料に関し、より詳細には、多層構造を有するマイクロセルの発泡熱可塑性材料体及び製造品、またその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロセルの発泡プラスチックとは、特に発泡していてマイクロ孔又はセル(気泡とも呼ばれる)を作る高分子を言う。共通の定義として、発泡体は直径およそ10ミクロンの平均的なセルの大きさを有し、通常、直径約0.1から約100ミクロンである。相対的に、従来の発泡プラスチックは通常、約100から500ミクロンの範囲の平均セル直径を有している。マイクロセルの発泡プラスチックのセルは非常に小さいため、一目見ただけではこれらの特殊な発泡体は一般に固体のプラスチックの外観を有する感じがする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロセルの発泡プラスチックは様々な用途に利用可能であり、例えば、絶縁体、梱包材料、構築物及びろ過器等に用いられる(非特許文献1)。マイクロセルの発泡プラスチックは様々な固有の特性を有する。特に、マイクロセルの発泡プラスチックは優れた機械的特性と共に、材料費及び重量の削減を同時にもたらす。これは、従来の発泡体に優るマイクロセルの発泡体の長所の一つである。従来の発泡体において、重量の削減は通常、機械的特性を損失することで達成される。さらに従来の発泡体の製造技術において、オゾンを損なうクロロフルオロカーボン(CFC)又はハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、及び可燃性の炭化水素は、起泡剤として通常用いられる。一方で、マイクロセルの発泡体製造技術は、例えば二酸化炭素及び窒素等の環境に優しい起泡剤を利用するというさらなる利点を有する。
【0005】
マイクロセルの発泡プラスチックを製造する過程は、細胞の核生成を引き起こす熱力学的不安定性に基づき発展してきた(非特許文献2)。まず、高分子は高圧下で、揮発性の起泡剤で飽和させる。次に、急速に圧力が低下することにより高分子中の起泡剤の溶解度は減少し、高分子は過飽和となる。装置は高分子マトリクスを軟化させるために熱せられ、多数の細胞が核を成す。起泡剤は多数の小さな細胞の外側及びその中へと拡散する。少し違う言い方をすれば、マイクロセルの発泡プラスチックは、高分子をガス又は超臨界液体で飽和することにより製造可能であり、また通常は急速な圧力の低下である熱力学的不安定性を利用することにより、1立方センチメートルあたり数十億の細胞を高分子マトリクス内で生成する(例:泡密度は1立方センチメートルあたり10個以上の細胞)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な特許及び特許出願が、マイクロセルの発泡プラスチックの様々な態様及びその製造の過程を開示している。この点に関する例は以下に続く。
【0007】
特許文献1は、マイクロセルの発泡プラスチック及び関連方法を開示する。この特許においてはバッチ操作が開示され、加圧下でプラスチックシート又はその他の物品は、不活性ガスが注入されている。圧力は周囲にまで低減され、プラスチックシート又は物品は軟化点まで熱せられて気泡核形成及び発泡を開始する。また所望のある程度の発泡が達成されると、プラスチックシート又は物品は急冷され発泡を終了させる。その結果できた物質は、均一に分布した全ておよそ同じサイズの細胞を有するマイクロセルの発泡プラスチックである。
【0008】
特許文献2は、プラスチック材料の繊維がインレットガスを注入され、またガスが制御された方法で繊維の外へ拡散する過程を開示する。繊維は押出機の外側位置で再加熱され発泡を誘発する。発泡過程の温度及び持続時間は、均一に拡散された細胞を作り出すため制御されている。その過程はマイクロセル発泡プラスチックシートの継続的な生産をもたらすよう設計されている。
【0009】
特許文献3は、超臨界液体を発泡剤として用いることによるマイクロセルの発泡プラスチックの形成を開示する。バッチ操作において、プラスチックの物品は圧力で超臨界液体に一定時間浸され、そして急速に周囲条件に戻され、溶解性変化及び核形成を引き起こす。連続的な過程において、高分子シートは押し出され、圧力で超臨界液体の容器内で順送りローラとなることが可能である。そして高分子シートは周囲条件に急速にさらされる。他の連続的な過程において、超臨界液体で飽和された溶融高分子の流れが確立される。高分子の流れは急速に熱せられ、その結果生じた熱力学的不安定性(溶解性変化)は核形成サイトを作る(装置は圧力下で維持され著しい細胞成長を防止する)。そして、ポリマの流れは、圧力が減少され細胞の成長が可能である成形用キャビティ内に射出される。
【0010】
特許文献4は、マイクロセル発泡体品の半連続的な製造を開示する。好適な実施形態において、ロール状にした高分子シートには、高分子層の間に挿入されたガスチャネリング手段がもたらされる。ロール状のシートは、高分子内の所望のガス濃度を達成するのに十分な一定時間、非反応ガスに高圧下でさらされる。そして飽和した高分子シートはガスチャネリング手段から分離され、気泡核形成及び気泡成長は高分子シートを熱することにより開始される。発泡後、気泡核形成及び気泡成長は、発泡した高分子シートを冷却することにより終息する。
【0011】
マイクロセルの発泡熱可塑性材料体及び製造品の発展に関して多くの進歩がなされてきたが、当該技術分野においては、新しい異なるタイプの発泡プラスチック材料がなお必要とされている。本発明はこれらの必要性を満たすと共にさらなる関連した利点をもたらす。
【0012】
【非特許文献1】D. Klempner and K.C. Fritsch eds., Handbook of Polymeric Foams and Foam Technology」 Hanser Publishers, Munich (1991)
【非特許文献2】J.E. Martini, SM Thesis, Department of Mech. Eng., MIT, Cambridge, Mass (1981)
【特許文献1】米国特許第4,473,665号(Martini-Vvedensky他、1984年9月25日発行)
【特許文献2】米国特許第4,761,256号(Hardenbrook他、1998年3月1日発行)
【特許文献3】米国特許第5,158,986号(Cha他、1992年10月27日発行)
【特許文献4】米国特許第5,684,055号(Kumar他、1997年11月4日発行)
【0013】
つまり、本発明は内部積層細胞構造を有する発泡熱可塑性材料体及び製造品、またその製造方法に関する。ある実施形態において、本発明は非積層化多層熱可塑性材料シートを備える多層発泡高分子製造品を目的とし、前記多層熱可塑性材料シートは第1及び第2の分離した外層を有し、該第1及び第2の分離した外層は複数の分離した内側発泡層を間に挟んでおり、前記2つの外層及び複数の分離した内側発泡層は互いに一体となっている。前記熱可塑性材料が半結晶性高分子であることが可能であり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PLA(ポリ乳酸)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、及びそれらの混合物であることが可能である。この実施形態において、前記2つの外層が平坦な外表面を有する非発泡スキン層であり、また、前記分離した内側発泡層がマイクロセルであることが可能である。
【0014】
他の実施形態において、本発明は固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから多層発泡高分子体(例えばカップ又はトレー等)を製造する方法を目的とし、前記熱可塑性材料シートは第1のバルク結晶性レベルを有しており、前記方法は、可逆的に可塑化された熱可塑性材料シートをもたらすために、可塑化ガスの有効量を前記熱可塑性材料シートに吸収する段階と、前記可塑化された熱可塑性材料シートから可塑化ガスの少なくともいくらかを脱着する段階と、発泡した熱可塑性材料シートをもたらすために、前記可塑化された熱可塑性材料シートを熱する段階と、及び前記多層発泡高分子体をもたらすために、前記発泡した熱可塑性材料シートを形成又は熱形成する段階を備え、前記可塑化された熱可塑性材料シートは前記可塑化ガスが注入されていると共に前記第1のバルク結晶性レベルより大きい第2のバルク結晶性レベルを有しており、前記発泡した熱可塑性材料シートは前記第2のバルク結晶性レベルより大きい又は等しい第3のバルク結晶性レベルを有しており、前記多層発泡高分子体は前記第3のバルク結晶性レベルより大きい又は等しい第4のバルク結晶性レベルを有している。
【0015】
さらに他の実施形態において、本発明は成形された多層発泡高分子製造品(例えばカップ又はトレー等)を固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから製造する方法を目的とし、前記熱可塑性材料シートは第1のバルク結晶性レベルを有する。この実施形態において前記方法は少なくとも以下の段階を有する。すなわち、可塑化ガスを前記熱可塑性材料シート内に吸収する段階と、前記可塑化された熱可塑性材料シートから可塑化ガスの少なくともいくらかを脱着する段階と、発泡を開始するために前記可塑化された熱可塑性材料シートを加熱すると共に機械的に伸長する段階と、及び前記成形された多層発泡高分子製造品をもたらすために、前記成形された熱可塑性材料シートを熱成形機内で熱成形する段階を備え、前記吸収段階は、可逆的な可塑化された熱可塑性材料シートをもたらすのに十分な第1の選択された圧力、温度、及び所定時間において起こり、前記可塑化された熱可塑性材料シートは前記可塑化ガスが注入されていると共に前記第1のバルク結晶性レベルよりも大きい第2のバルク結晶性レベルを有し、前記加熱及び機械的伸長段階は、発泡熱可塑性材料シートをもたらすのに十分な熱源から選択された量の熱エネルギを移動させることにより起こり、前記発泡熱可塑性材料シートは前記第2のバルク結晶性レベルより大きい又は等しい第3のバルク結晶性レベルを有し、前記多層発泡高分子製造品は前記第1、第2、及び第3の結晶性レベルより大きい第4の結晶性レベルを有する。方法はさらに、熱成形機内においても、前記成形された多層発泡高分子製造品を熱処理する前記段階をさらに備え、これにより成形された多層発泡高分子製造品のバルク結晶性を、第5のバルク結晶性レベルにまで増加させ、前記第5のバルク結晶性レベルは前記第1、第2、第3、第4のバルク結晶性レベルよりも大きい。
【0016】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することにより、さらに明らかとなる。しかし、様々な変化、変更、及び代用は本発明に開示される実施形態に対して、本質的な精神及び範囲から逸脱することなくなされることができることが理解されている。さらに、本明細書に引用される様々な引用文献の全ては、その全体を全ての目的のために参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態によるRPET(直径3.8cmx0.107cm)の熱成形された円形の切り取り試片の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真であって、多層発泡構造を示している。
【図2】本発明の実施形態によるRPET(23cmx23cmx0.107cm)の正方形の切り取り試片の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である(熱成形されたカップの基部から採取されている)。平均相対密度は約14%で、多層発泡構造を示している。
【図3】本発明の実施形態による多層発泡高分子体を固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから製造する方法を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による成形した多層発泡高分子体を固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから製造する方法を示すブロック図である。
【図5A】処理前の熱可塑性材料シートの部分断面図であって、初期の及びゼロに近い均一な可塑化ガス濃度特性、初期の及び均一なバルク結晶性特性、及び閾値ガス濃度特性を示す。この閾値ガス濃度特性は、熱可塑性材料シート内の結晶性の変化を引き起こすため満たされる又は上回らなければならない。
【図5B】吸収段階後の図5Aの熱可塑性材料シートの部分断面図であって、初期の及びゼロに近い均一な可塑化ガス濃度特性よりも略大きい第2の可塑化ガス濃度特性と、熱可塑性材料シートの外側部分で達成された第2の結晶性レベルを示す。
【図5C】脱着段階後の図5Bの熱可塑性シートの部分断面図であって、第3の可塑化ガスを示す。可塑化ガスは可塑性材料シートの外側部分から脱着している。
【図5D】加熱段階後の図5Cの熱可塑性シートの部分断面図であって、熱可塑性材料シート全域の不均一な温度特性を示す。
【図5E】本発明の実施形態に従って、多層発泡構造を示すRPET(10cmx15cmx0.107cm)の熱成形された長方形の切取り試片の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真であって、新規構造の形成を理論的に説明するため可塑化ガス濃度特性、結晶性特性、及び温度特性が追加されている。
【図6】処理前にグリッド線で印をつけられていた高分子の正方形の切片から作られた、成形された熱成形高分子のカップの写真である。最終的な熱成形高分子のカップ上の線は、工程の間に伸長が起こった領域を示す。
【図7】本発明の実施形態に従って、多層発泡構造を示すRPET(直径3.8cmxx0.107cm)の熱成形された円形の切り取り試片の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施形態に従って、多層発泡構造を示すRPET(10cmx15cmx0.107cm)の熱成形された長方形の切り取り試片の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施形態に従って、多層発泡構造を示すRPET(10cmx15cmx0.107cm)の熱成形された長方形の切り取り試片の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施形態によるRPET(23cmx23cmx0.107cm)の正方形の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である(熱成形されたカップの中間壁部から採取されている)。平均相対密度は約14%で、多層発泡構造を示している。
【図11】本発明の実施形態によるRPET(23cmx23cmx0.107cm)の正方形の部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真であって(熱成形されたカップの上部から採取されている)、多層発泡構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図において、同様の参照番号が図面の様々な図にわたり同様の特性を指定するのに用いられる。さらに、部分断面図は試料の切り取り試片を「刻み目をつけて記録」し、そして試料の切り取り試片は意図してつけた分割線に沿って分割することにより得られ、記号Aで示される人為構造が表されている。人為構造(A)は別々の層ではなく、むしろ、分割線の深さに対応する断面図の非平面部分を有した結果のものである。
【0019】
本発明は、多層発泡高分子体及び製造品、またそれを製造する関連方法を目的とする。本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、多層発泡高分子体および製造品は、PET(ポリエチレンテレフタラート)の熱可塑性材料の固体のモノリシック構造シートの変形に即して説明される。しかしながら、その他の半結晶性高分子を考慮に入れ、以下に示す半結晶性高分子は本発明の範囲内に含まれるものとする。その他の半結晶性高分子とは例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、及びPLA(ポリ乳酸)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、またその様々なポリマ混合物が考慮に入れられる。さらに、当業者に理解される通り、PETはRPET(リサイクルポリエチレンテレフタラート)及びCPET(結晶化ポリエチレンテレフタラート)の両方を含む。
【0020】
このように、また前述の図1を参照することにより、ある実施形態の発明は、製造品(10)の多層発泡高分子体を目的とする。この製造品(10)は、主にPETといった半結晶性高分子の固体のモノリシック構造のシートから形成される。図示の通り、製造品(10)の多層発泡高分子体は、多層熱可塑性材料シート(S)を備える。多層熱可塑性材料シート(S)は、第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)を有する。外層(1)、(1´)は複数の分離した内側発泡層(I)を間に挟んでいる。この実施形態において、第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)は互いに略同一である。第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)及び複数の分離した内側発泡層(I)も互いに一体となっており、これは共に積層されたものではないということを意味する。さらに図示される通り、外層(1)、(1´)は夫々、平坦な外表面を有する非発泡のスキン層であり、複数の分離した内側発泡層(I)の夫々はマイクロセルである。
【0021】
本実施形態における、複数の分離した内側発泡層(I)は、2つの略同一の第2の内側発泡層(2)、(2´)を備える。第2の内側発泡層(2)、(2´)は、第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)夫々にすぐ隣接して配されている。第2の内側発泡層(2)、(2´)は夫々、図示の通り第1の複数のクローズドセルを備える。この第1の複数のクローズドセルの平均セル直径は、約5から約10ミクロンの範囲である。複数の分離した内側発泡層(I)はさらに第3の内側発泡層(3)を備える。この第3の内側発泡層(3)は、第2の内側発泡層(2)、(2´)にすぐ隣接すると共にその間に挟まれている。第3の内側発泡層(3)は、図示される第2の複数のクローズドセルを備える。第2の複数のクローズドセルの平均セル直径は、約30から約50ミクロンの範囲である。最後に、外層(1)、(1´)及び複数の分離した内側発泡層(I)は、通常中心軸(C)の周囲に対象的に配されている。(注:図1の部分断面図は円形の切り取り試片をその直径に沿って「刻み目をつけて記録」し、その後意図して付けた分割線に沿って分割することにより得られたので、人為構造(A)が示されている。人為構造(A)は別々の層ではなく、むしろ分割線の深さに対応する断面図の非平面部分を有する結果のものである。)
【0022】
図2を参照する。他の実施形態における本発明は、製造品(20)の多層発泡高分子体を目的とする。製造品(20)は、主にPETといった半結晶性高分子の固体のモノリシック構造シートから製造される。図示の通り、製造品(20)の多層発泡高分子体は、熱可塑性材料シート(S)を備える。熱可塑性材料シート(S)は、第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)を有する。外層(1)、(1´)は複数の分離した内側発泡層(I)を間に挟んでいる。この実施形態において、第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)は互いに略同一である。第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)及び複数の分離した内側発泡層(I)も互いに一体となっており、これは共に積層されたものではないということを意味する。さらに図示される通り、外層(1)、(1´)は夫々、平坦な外表面を有する非発泡の表面層であり、複数の分離した内側発泡層(I)はマイクロセルである。
【0023】
本実施形態における、複数の分離した内側発泡層(I)は、2つの略同一の第2の内側発泡層(2)、(2´)を備え、この第2の内側発泡層(2)、(2´)は、第1及び第2の分離した外層(1)、(1´)夫々にすぐ隣接して配されている。また同様に、複数の分離した内側発泡層(I)は、2つの略同一の第3の内側発泡層(3)、(3´)を備え、この第3の内側発泡層(3)、(3´)は第2の内側発泡層(2)、(2´)夫々にすぐ隣接して配されている。第2の内側発泡層(2)、(2´)は夫々、図示の通り第1の複数のクローズドセルを備える。この第1の複数のクローズドセルの平均セル直径は、約5から約10ミクロンの範囲である。同様に、第3の内側発泡層(3)、(3´)は夫々、図示の通り第2の複数のクローズドセルを備える。この第2の複数のクローズドセルの平均セル直径は、約30から約50ミクロンの範囲である。複数の分離した内側発泡層(I)はさらに第4の内側発泡層(4)を備える。この第4の内側発泡層(4)は、第3の内側発泡層(3)、(3´)にすぐ隣接すると共にその間に挟まれている。第4の内側発泡層(4)は、図示される第3の複数のクローズドセルを備える。第3の複数のクローズドセルの平均セル直径は、約20から約40ミクロンの範囲である。最後に、外層(1)、(1´)及び複数の分離した内側発泡層(I)は、通常中心軸(C)の周囲に対象的に配されている。(注:図2の部分断面図は正方形の切り取り試片をその中間部に沿って「刻み目をつけて記録」し、そして意図して付けた分割線に沿って分割することにより、人為構造(A)が示されている。人為構造(A)は別々の層ではなく、分割線の深さに対応する断面図の非平面部分を有した結果のものである。)
【0024】
他の実施形態において、本発明はまた、上述されたような多層発泡高分子体を固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから製造する方法を目的とする。熱可塑性材料シートは半結晶性高分子であることが好ましいので、通常1から9%の範囲の第1のバルク結晶性レベルを有する。本実施形態の方法は、熱可塑性材料シートのバルク結晶性レベルを連続的又は段階的な方法で引き起こし、これにより、固体のシートを多層発泡高分子体に変形させることが可能になる。より詳細には、図3を参照すると、本実施形態の方法は、初期の吸収(30)の段階を備え、これにより効果的な量の可塑化ガス(例えばCO又はN等)が熱可塑性材料シートに吸収される。吸収(30)の段階は通常、熱可塑性材料シートを圧力容器に配置し、そして容器を第1の選択された圧力、温度になるまで圧力をかけることにより達成される。これは、(1)可逆的に可塑化された熱可塑性材料シートをもたらし、また(2)熱可塑性材料シートの少なくとも外側部分全域に結晶性変化を引き起こすのに十分な一定の時間行われる。第1の選択された圧力は通常、約0.345MPaから約9.65MPa(或いはより好適には、約5.2MPaから約7.1MPa)の範囲である。第1の選択された温度は通常、約マイナス20°Fから約150°Fの範囲である。選択された圧力及び温度に依存し、選択された一定時間は通常、約数時間から100時間をはるかに上回る範囲である。
【0025】
吸収(30)の段階の結果として、可塑化した熱可塑性材料シートは、通常約0.5重量%以上の量の可塑化ガスが注入されていると共に、第1のバルク結晶性レベル以上の第2のバルク結晶性レベルに達する。言い換えると、吸収(30)の段階は熱可塑性材料シートのバルク結晶性を増加させる。これは、この段階において熱可塑性材料シートの結晶化を誘引するのに必要な最小のガス濃度が満たされる或いは上回るためである。結晶性のこの増加は通常、シートの厚さ全域で均一ではない。これは、シート全域の閾値ガス濃度(すなわち、結晶性変化を誘引するのに必要な最小のガス濃度)が、好ましくは達成されない(つまり均衡状態に達していないことを意味する)からである。むしろ、結晶性は表面又はその付近(ガス濃度が閾値ガス濃度に到達及び/又は上回る場所)において最大になると共に、中間部(ガス濃度が閾値ガス濃度以下である場所)において最小になる。
【0026】
吸収(30)の段階の後、さらに図示される通り、方法はさらに脱着(32)の段階を備える。この脱着(32)の段階により、熱可塑性シート内に注入された可塑化ガスの一部は可塑化された熱可塑性材料シートの外及び空気中へ拡散する。したがって、脱着(32)の段階は通常、可塑化されたた熱可塑性材料シートを減少した圧力にさらすことにより起こる。減少された圧力とは例えば、大気圧又はさらに低いものである。可塑化された熱可塑性材料シートをさらに処理するために、熱可塑性材料シート内の可塑化ガス濃度は、約0.01重量%以上のレベルに維持されることが好ましいということがわかっている。さらに、脱着(32)の段階は通常、約マイナス40°Fから約150°Fの範囲の第2の選択された温度で起こる。
【0027】
脱着(32)の段階の後、さらに図示される通り、方法はさらに加熱(34)の段階を備える。この加熱(34)の段階により、可塑化された熱可塑性材料シートは熱されて、発泡(すなわち気泡形成)を開始する。この段階で、熱可塑性シート内に注入された可塑化ガスは、複数のクローズドセル(すなわち気泡)と合体する。熱源は例えば、加熱したシリコン油浴又は赤外線ヒータとすることが可能である。加熱(34)の段階は、第3のバルク結晶性レベルを有する発泡した熱可塑性材料シートを生じる。第3のバルク結晶性レベルは第2のバルク結晶性レベル(吸収(30)の段階の結果として得られたもの)より大きい或いは等しい。加熱(34)の段階はまた、新規の多層構造(例えば図1参照)の特徴を有する発泡した熱可塑性材料シートを生じる。この多層構造において、第1及び第2の分離した外層は、複数の分離した内側発泡層を間に挟んでいる。過熱(34)の段階の後、発泡した熱可塑性材料シートは完全に発泡可能で、或いは部分的にのみ発泡可能である。
【0028】
最後に、加熱(34)の段階の後又は同時に、方法はさらに成形又は熱成形(36)の段階を有する。この段階(36)において、発泡した熱可塑性シートは、熱成形機内で冷間成形或いは熱成形され、多層発泡高分子体を生じる。成形/熱成形(36)の段階は、部分的又は完全に発泡した熱成形材料シートを、例えばカップ又はトレー等の所望の形状に機械的変形させることを含む。成形/熱成形(36)の段階の結果として、発泡した熱可塑性材料シートは第4のバルク結晶レベルを得る。この第4のバルク結晶レベルは、第3のバルク結晶レベル(加熱(34)の段階の結果として得られたもの)より大きい又は等しい。
【0029】
さらに他の実施形態において図4を参照すると、本発明は成形した多層発泡高分子製造品(例えばカップ又はトレー等)を、固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから製造する方法を目的とし、熱可塑性材料シートは第1のバルク結晶性レベルを有する。本実施形態において、方法は少なくとも以下の段階を備える。すなわち、(1)熱可塑性材料シートに可塑化ガスを吸収(40)する段階と、(2)可塑化された熱可塑性材料シートから可塑化ガスの少なくともいくらかを脱着(42)する段階と、(3)発泡を開始するため可塑化された熱可塑性材料シートを加熱すると共に機械的に伸長(44)させる段階と、及び(4)熱成形機内で発泡した熱可塑性材料シートを熱成形(46)し、成形した多層発泡高分子の製造品(例えば図2参照)を生じる段階を備える。(1)において、吸収(40)の段階は、可逆的に可塑化された熱可塑性材料シートを生じさせるのに十分な第1の選択された圧力、温度及び一定時間で起こる。また、可塑化された熱可塑性材料シートは可塑化ガスが注入されていると共に、第1のバルク結晶性レベルより大きい第2のバルク結晶性レベルを有している。(3)において、加熱及び機械的伸長(44)の段階は、発泡した熱可塑性材料シートを生じるのに十分な熱源から選択された量の熱エネルギを移動させることにより起こる。発泡した熱可塑性材料シートは、第1及び第2のバルク結晶性レベルより大きい第3のバルク結晶性レベルを有する。(4)において、多層発泡ポリマ製造品は第1、第2及び第3のバルク結晶性レベルより大きい或いは等しい第4の結晶性レベルを有する。熱成形機内においても、方法はさらに成形された多層発泡高分子製造品の熱処理(48)をする段階を備え、これにより成形された多層発泡高分子製造品のバルク結晶性を、第5のバルク結晶性レベルにまで増加させる。第5のバルク結晶性レベルは、第1、第2、第3及び第4のバルク結晶性レベルよりも大きい。変更可能な実施形態において、熱成形段階は、成形段階(例えば、当業者に理解されるような熱を加えずにロール成形又は機械的曲げを行うこと)と置き換えられることが可能である。
【0030】
いかなる科学的理論に必然的に規定されず、上記の各実施形態に関連する分離した層の形成は、(1)結晶性の勾配、(2)可塑化ガス濃度勾配、及び(3)温度勾配の組み合わせの結果であり、この3つ全ては処理の間、熱可塑性材料シートの厚み全域に形成される。したがって、図5Aから5E(熱可塑性材料シート全域の結晶性、ガス濃度及び温度特性の仮説を示す)を参照すると、分離した層の形成は以下の方法により合理化される。まず、図5Aに示される通り、初期の及びゼロに近い均一な可塑化ガス濃度特性(52)を有する熱可塑性材料シート(50)及び初期の均一なバルク結晶特性(54)(例:9%の結晶性)がもたらされる(また、熱可塑性材料シート(50)内に結晶性の変化を引き起こすのに必要な閾値ガス濃度特性(56)も説明される)。次に、図5Bに示される通り、熱可塑性材料シート(50)は圧力下で一定時間(t)(すなわち吸収の段階)可塑化ガスにさらされ、これにより、初期の及びゼロに近い均一の可塑化ガス濃度特性(52)(中心軸で生じる最小ガス濃度)よりも略大きい第2の可塑化ガス濃度特性(52´)を形成する。結果として、第2の可塑化ガス濃度特性(52´)は、閾値ガス濃度特性(56)以上のレベルに熱可塑性材料シート(50)の外側部分で到達する。熱可塑性材料シート(50)の外側部分において、初期の結晶性レベル(54)は第2の結晶性レベル(54´)にまで激しく増加する。3番目に、図5Cに示す通り、熱可塑性材料シート(50)は一定時間(t)周囲条件に戻され、これにより可塑化ガスのいくらかが熱可塑性材料シート(50)の外側部分から脱着(すなわち脱着段階)すると共に、第3の可塑化ガス濃度特性(52´´)を形成することが可能となる。4番目に、熱可塑性材料シート(50)は一定時間(t)熱せられ、これにより熱可塑性材料シート(50)全域で発泡が開始されると共に不均一な温度特性(58)(中心軸において最小温度)を形成する。最後に、熱可塑性材料シート(50)は成形/熱成形され、これによりさらにバルク結晶性レベル(図示せず)が増加する。熱可塑性材料シート(50)の分離した層の形成(例えば図5E参照)は、これらの結晶性、ガス濃度、及び温度特性の間の相互作用の結果である。
【0031】
他の態様において、本発明はまた、断面全域に傾斜を有する(すなわち勾配の)物理的特性(例えば強度及び剛性等)を有する多層発泡プラスチック構造を目的とする。この点において、多層発泡プラスチック構造は、構造の剛性、座屈抵抗、及び所定量のプラスチックに対する強度を最適化するよう作られることが可能であることわかっている。このような多層構造の複数の層は以下を含む。すなわち、(1)各表面における固形物のスキン、(2)各スキン層にすぐ隣接する高密度クローズドセル層、(3)多層構造の中心に向かって進むより低密度の又は一定密度の発泡層(クローズドセル又はオープンセルのいずれかで、セルの平均的な大きさが変化しているか又は一定であるかのいずれか)を含む。内核における密度は通常、(曲げ荷重下での断面の)中立軸において誘引される最大せん断応力を扱うのに必要な密度と同じぐらいの大きさである必要がある。表面スキン層に隣接する最大密度の発泡体を有するセル層を作ることにより、断面の慣性モーメントは、(同じ平均密度の均一な発泡の核と共に)発泡するにつれて増加可能である。この増加したモーメントは、より大きい曲げ強度、より大きい曲げ荷重、及び任意の平均密度の座屈に対する増加した抵抗をもたらす。さらに、有効な材料剛性(曲げ弾性率)は増加する密度と共に増加する。
【0032】

【0033】

【0034】
従来の発泡体以上に増加する剛性に関する他の要点は、クローズドセルは通常発泡密度が減少するにつれて、その曲げ弾性率をオープンセルの発泡と同じくらい急速に失わないことである。これは、細胞内に閉じ込められたガスに起因すると考えられている。したがって、剛性は通常密度の減少と共に、一般的なオープンセル発泡と同じくらい急速に減少はしない。また、曲げ荷重又は座屈荷重にさらされている薄いスキンを有する発泡体において、最大効率に関して、スキン下の発泡は好ましくはスキンの整列を維持するのに十分な強さであるべきであって、スキンを核から分離させない、或いは内側に曲がらないようにする。これにより、発泡の核が圧縮される。このような強度の必要条件を満たす最小層密度もまたスキンの厚さと共に変化する。
【0035】
通常の間に挟まれる発泡体の他の利点について、以下の事を挙げることができる。すなわち、挟まれた発泡体において、最外層はいかなる材料(例:シートメタル或いは固体の高弾性率高分子)であることが可能であり、それらの材料は、通常の単一密度の高分子発泡体シートに結合、融合或いは機械的に締結される。この場合、発泡体及び最外層間の結合強度は限定因子であることが可能である。物質利用効率は、より低密度の発泡体の利用に影響するが、固体のスキンを有するさらに高密度の発泡体又は同等の発泡体が、より高い結合強度のために必要とされる。したがって、2つのスキンの間に細胞の核を有する多層発泡体を利用する利点は、密度及び強度は中心線に向かって徐々に減少していく一方で、噛み合い線において高くあることが可能である。
【0036】
サンドイッチ構造の核としての固体の一体化したスキンを有するモノリシック構造の発泡体を用いることにより、以下の利点が結果として生じる。その利点とは、(1)薄い接着剤コーティングの使用が可能な非常に増大した平面領域(多くの接着剤は薄層にコーティングされるとより強力になる)、(2)発泡体の核の外層が固体でなく、その代わりに小さなクローズドセル(100ミクロン以下)である場合、接着剤の使用量が減少するので、従来の大きさの細胞に比べてかなりの節約が可能となる(より多くの接着剤を用いて表面上のオープンセル或いはより大きな表面の凸凹を埋める他の手段はさらに接着剤を必要とするので、重量及び費用がかさむ)、(3)発泡体の核の外層が非発泡固体高分子である場合の、高分子の固体スキンを発泡体に融着させるための非常に増大した表面領域(結合は溶剤型であることができ、或いは熱又は他の手段により誘引された摩擦によって融合される。実際、多くの融着は低密度発泡体に対し実用的でない)、(4)スティッチボンド等の機械的結合した固体スキンに関し、高密度又はさらに一体化した固定のためのスキンを有しており、一方で、より小さい材料の総重量でより大きな接着強度を作り出す傾向にある低密度のモノリシック構造の内層を有している(各固定要素のせん断強度は通常、中密度の発泡体の固定要素よりも固体の状態において何倍も大きい)。熱成形された発泡体の場合、二重シート又は三重シートの熱成形の技術は理解される。一般的に、上部及び底部のスキンは部分的に発泡体の核に融合されており、これは熱形成の熱及び圧力のためである。
【0037】
勾配を有する発泡構造体の利点は、原材料から作られた固体状発泡高分子体のために実現され、この原材料はロール状、シート状、熱成形された固体の物体状(例:スピーカコーン)及び圧縮成形された固体形状である。固体状の飽和した高分子体上の発泡過程は様々な方法で行われる。この方法とは、熱した液体浴内での発泡、熱風炉内での発泡、赤外線加熱炉内での発泡、圧縮成形設備内での発泡、或いは熱成形金型内での発泡を含む。上記の利点を得るために、処理される高分子体の厚さは他の規模よりも略より小さいことが好ましい。ロッド形状の物体の場合、直径は処理される高分子体の長さよりも略より小さいことが好ましい。
【0038】
本発明を説明及び制限しないことを目的として、以下の実施例は本発明に従った多層発泡高分子体及び製造品の製造に関連する、例示的な製造工程及び実際の実験結果をより詳細に開示する。
【0039】
<実施例1>
直径3.8cmの高分子の円形の切片を0.107cmの厚さのリサイクルPET(RPET)から打ち抜いた。RPETはLaVergne(The La Vergneグループ(カナダ))から入手したものである。次に、高分子はペーパタオルに包まれ、5.0MPaで72時間、二酸化炭素を吸収させる目的で圧力容器内(〜21°C)に配置された。吸収後、ポリマは冷凍室(〜0°C)へ移され、24時間二酸化炭素を脱着された。そして高分子は取り除かれると共に室温(〜20°C)にて1時間配置され、さらに脱着された。そして高分子はシリコン浴内で30秒間熱せられ(〜100°C)、発泡が開始された。図1は、上記の手順を用いて製造された、熱成形された円形高分子の切片の中心部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0040】
<実施例2>
直径3.8cmの高分子の円形の切片を0.107cmの厚さのリサイクルPET(RPET)から打ち抜いた。RPETはLaVergne(The La Vergneグループ(カナダ))から入手したものである。次に、高分子はペーパタオルに包まれ、5.0MPaで36時間、二酸化炭素を吸収させる目的で圧力容器内(〜21°C)に配置された。吸収後、高分子は冷凍室(〜0°C)へ移され、24時間二酸化炭素を脱着された。そして高分子は取り除かれると共に室温(〜20°C)にて1時間配置され、さらに脱着された。そして高分子はシリコン浴内で30秒間熱せられ(〜100°C)、発泡が開始された。図7は、上記の手順を用いて製造された、熱成形された円形高分子の切片の中心部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0041】
<実施例3>
10cmx15cmの高分子の長方形の切片を0.107cmの厚さのリサイクルPET(RPET)から打ち抜いた。RPETはLaVergne(The La Vergneグループ(カナダ))から入手したものである。次に、高分子はペーパタオルに包まれ、5.0MPaで49時間、二酸化炭素を吸収させる目的で圧力容器内(〜21°C)に配置された。吸収後、高分子は冷凍室(〜0°C)へ移され、24時間二酸化炭素を脱着された。そして高分子は取り除かれると共に室温(〜20°C)にて1時間配置され、さらに脱着された。そして高分子は熱成形機のクランプ装置に詰められ、高分子は赤外線加熱を用いて8秒間熱せられると共に同時に引き伸ばされ、発泡が開始された。図8は、上記の手順を用いて製造された、熱成形された長方形高分子の切片の中心部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0042】
<実施例4>
10cmx15cmの高分子の長方形の切片を0.107cmの厚さのリサイクルPET(RPET)から打ち抜いた。RPETはLaVergne(The La Vergneグループ(カナダ))から入手したものである。次に、高分子はペーパタオルに包まれ、5.0MPaで49時間、二酸化炭素を吸収させる目的で圧力容器内(〜21°C)に配置された。吸収後、高分子は冷凍室(〜0°C)へ移され、24時間二酸化炭素を脱着された。そして高分子は取り除かれると共に室温(〜20°C)にて1時間配置され、さらに脱着された。そして高分子は熱成形機のクランプ装置に詰められ、高分子は赤外線加熱を用いて16秒間熱せられると共に同時に引き伸ばされ、発泡が開始された。図9は、上記の手順を用いて製造された、熱成形された長方形高分子の切片の中心部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0043】
<実施例5>
23cmx23cmの高分子の正方形の切片を0.107cmの厚さのリサイクルPET(RPET)から打ち抜いた。RPETはLaVergne(The La Vergneグループ(カナダ))(P3000 RPET 0.042″ロール在庫)から入手したものである。次に、高分子はペーパタオルに包まれ、5.0MPaで49時間、二酸化炭素を吸収させる目的で圧力容器内(〜21°C)に配置された。吸収後、高分子は冷凍室(〜0°C)へ移され、24時間二酸化炭素を脱着された。そして高分子は取り除かれると共に室温(〜20°C)にて1時間配置され、さらに脱着された。そして高分子は熱成形機のクランプ装置に詰められ、高分子は赤外線加熱を用いて12秒間熱せられると共に同時に引き伸ばされ、発泡が開始された。そして、高分子は凸状のアルミニウムの栓(〜32°C)を用いてカップ型に熱成形され、高分子を雌型(〜155°C)に引き込む補助とした。空気圧を用い、高分子は最終的なカップ形状に押し込まれた。図2は、上記の手順を用いて製造された、熱成形されたカップの基部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。図10は、上記の手順を用いて製造された、熱成形されたカップの中間部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。図11は、上記の手順を用いて製造された、熱成形されたカップの上部からの部分断面図を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0044】

【0045】

【0046】
本発明は本明細書に図示及び記載された実施形態と関連して説明がなされているが、本発明はその精神又は本質的特徴から逸脱することなくその他の特定の方法又はその他の特定の形で具現化することができる。したがって、説明された実施形態はあらゆる点において実例としてみなされ、制限を加えるものではない。本発明の範囲はしたがって、先行する記述よりも添付の請求項によって示され、請求項と等しい意味及び範囲内の全ての変更はその範囲内に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非積層化多層熱可塑性材料シートを備える多層発泡高分子製造品であって、前記多層熱可塑性材料シートは第1及び第2の分離した外層を有し、該第1及び第2の分離した外層は複数の分離した内側発泡層を間に挟んでおり、
前記2つの外層及び複数の分離した内側発泡層は互いに一体となっていることを特徴とする多層発泡高分子製造品。
【請求項2】
前記熱可塑性材料が半結晶性高分子であることを特徴とする請求項1記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項3】
前記半結晶性高分子が、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PLA(ポリ乳酸)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項2記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項4】
前記半結晶性高分子がPET(ポリエチレンテレフタラート)であることを特徴とする請求項2記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項5】
前記2つの外層が平坦な外表面を有する非発泡スキン層であることを特徴とする請求項4記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項6】
前記複数の分離した内側発泡層の夫々がマイクロセルであることを特徴とする請求項1記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項7】
前記複数の分離した内側発泡層が2つの略同一の第2の内側発泡層を備え、該第2の内側発泡層は前記2つの外側スキン層にすぐ隣接して配されることを特徴とする請求項1記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項8】
前記第2内側発泡層の夫々が第1の複数のクローズドセルを有し、
前記第1の複数のクローズドセルは約5から約10ミクロンの範囲の平均セル直径を有することを特徴とする請求項7記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項9】
前記複数の分離した内側発泡層が第3の内側発泡層を備え、該第3の内側発泡層は前記第2の内側発泡層にすぐ隣接して配されると共にその間に挟まれることを特徴とする請求項7記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項10】
前記複数の分離した内側発泡層が2つの略同一の第3の内側発泡層を備え、該第3の内側発泡層は前記第2の内側発泡層にすぐ隣接して配されていることを特徴とする請求項7記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項11】
前記第3の内側発泡層の夫々が第2の複数のクローズドセルを備え、
前記第2の複数のクローズドセルは約30から約50ミクロンの範囲の平均セル直径を有することを特徴とする請求項10記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項12】
前記複数の分離した内側発泡層が中央の第4の内側発泡層を備え、該第4の内側発泡層は前記第3の内側発泡層にすぐ隣接して配されると共にその間に挟まれていることを特徴とする請求項10記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項13】
前記第4の内側発泡層が第3の複数のクローズドセルを備え、
前記第3の複数のクローズドセルは約20から約40ミクロンの範囲の平均セル直径を有することを特徴とする請求項12記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項14】
前記熱可塑性材料シートが非平面状であることを特徴とする請求項1記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項15】
前記多層熱可塑性材料シートの密度及び剛性がシート全域で勾配を有し、これにより前記複数の分離した内側発泡層の最外層は、前記複数の分離した内側発泡層の最大密度及び剛性を有することを特徴とする請求項1記載の多層発泡高分子製造品。
【請求項16】
固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから多層発泡高分子体を製造する方法であって、前記熱可塑性材料シートは第1のバルク結晶性レベルを有しており、前記方法は、
可逆的に可塑化された熱可塑性材料シートをもたらすために、可塑化ガスの有効量を前記熱可塑性材料シートに吸収する段階と、
前記可塑化された熱可塑性材料シートから可塑化ガスの少なくともいくらかを脱着する段階と、
発泡した熱可塑性材料シートをもたらすために、前記可塑化された熱可塑性材料シートを熱する段階と、及び
前記多層発泡高分子体をもたらすために、前記発泡した熱可塑性材料シートを形成又は熱形成する段階を備え、
前記可塑化された熱可塑性材料シートは前記可塑化ガスが注入されていると共に前記第1のバルク結晶性レベルより大きい第2のバルク結晶性レベルを有しており、
前記発泡した熱可塑性材料シートは前記第2のバルク結晶性レベルより大きい又は等しい第3のバルク結晶性レベルを有しており、
前記多層発泡高分子体は前記第3のバルク結晶性レベルより大きい又は等しい第4のバルク結晶性レベルを有していることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記熱可塑性材料は半結晶性高分子であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記半結晶性高分子がPET(ポリエチレンテレフタラート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PLA(ポリ乳酸)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記半結晶性高分子がPET(ポリエチレンテレフタラート)であることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記可塑化ガスが二酸化炭素(CO)であることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記第1のバルク結晶性が約1から約9%の範囲であることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記第4のバルク結晶性が少なくとも17%であることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記多層発泡高分子体がカップ又はトレーの形状であることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
成形された多層発泡高分子製造品を固体のモノリシック構造の熱可塑性材料シートから製造する方法であって、前記熱可塑性材料シートは第1のバルク結晶性レベルを有し、前記方法は少なくとも以下の
可塑化ガスを前記熱可塑性材料シート内に吸収する段階と、
前記可塑化された熱可塑性材料シートから可塑化ガスの少なくともいくらかを脱着する段階と、
発泡を開始するために、前記可塑化された熱可塑性材料シートを加熱すると共に機械的に伸長する段階と、及び
前記成形された多層発泡高分子製造品をもたらすために、前記成形された熱可塑性材料シートを熱成形機内で熱成形する段階を備え、
前記吸収段階は、可逆的な可塑化された熱可塑性材料シートをもたらすのに十分な第1の選択された圧力、温度、及び所定時間において起こり、前記可塑化された熱可塑性材料シートは前記可塑化ガスが注入されていると共に前記第1のバルク結晶性レベルよりも大きい第2のバルク結晶性レベルを有し、
前記加熱及び機械的伸長段階は、発泡熱可塑性材料シートをもたらすのに十分な熱源から選択された量の熱エネルギを移動させることにより起こり、前記発泡熱可塑性材料シートは前記第2のバルク結晶性レベルより大きい又は等しい第3のバルク結晶性レベルを有し、
前記多層発泡高分子製造品は前記第1、第2、及び第3の結晶性レベルより大きい第4の結晶性レベルを有することを特徴とする方法。
【請求項25】
熱成形機内においても、前記成形された多層発泡高分子製造品を熱処理する前記段階をさらに備え、これにより成形された多層発泡高分子製造品のバルク結晶性を、第5のバルク結晶性レベルにまで増加させ、
前記第5のバルク結晶性レベルは前記第1、第2、第3、第4のバルク結晶性レベルよりも大きいことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記熱可塑性材料は半結晶性高分子であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記半結晶性高分子がPET(ポリエチレンテレフタラート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PLA(ポリ乳酸)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記可塑化ガスが二酸化炭素(CO)であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記第1の選択された圧力が約0.345MPaから約9.65MPaの範囲であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記第1の選択された温度が約マイナス40°Fから約150°Fの範囲であることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記可塑化された熱可塑性材料シートが吸収段階後、約0.5重量%以上の可塑化ガス濃度を有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記可塑化された熱可塑性材料シートが脱着段階後、約0.01重量%以上の可塑化ガス濃度を有することを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項33】
前記脱着段階が、約マイナス40°Fから約150°Fの範囲の第2の選択された温度で生じることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項34】
前記熱源が赤外線放射ヒータであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項35】
前記多層発泡高分子製造品がカップ又はトレーの形状であることを特徴とする請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−516501(P2010−516501A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546515(P2009−546515)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/051360
【国際公開番号】WO2008/089358
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509201160)マイクログリーン ポリマーズ インク. (1)
【出願人】(509201285)ユニバーシティ オブ ワシントン (1)
【Fターム(参考)】