説明

多層配線基板、電子装置、及び多層配線基板の製造方法

【課題】
折り曲げた構造を容易に製造できる配線基板、電子装置、及び配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
多層配線基板は、複数の絶縁体と、前記絶縁体と交互に積層される導電体と、を有する多層配線基板であって、前記多層配線基板の表面から前記多層配線基板の厚さ方向に形成される複数の穴であって、少なくとも前記絶縁体のうち一の絶縁体を残して形成される穴を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板、電子装置、及び多層配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ベースとして硬質シートを用い、ベースとベース表面に接合された導体箔とを有する薄板状の印刷回路用材料があった。この印刷回路用材料のベースには、曲げ加工を容易にさせる曲げ加工用溝が形成される。
【0003】
曲げ加工用溝が形成されたベースの周囲を打ち抜いて曲げ加工用溝でベースを分断した後に、分断されたベースに裏打ちシート及び銅箔を貼り付け、曲げ加工用溝が内側又は外側に位置するように印刷回路用材料を折り曲げていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−099789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の印刷回路用材料は、硬質シートに曲げ加工用溝を形成した後に硬質シートの周囲を打ち抜いて曲げ加工用溝で硬質シートを分断し、分断した硬質シートに裏打ちシート及び銅箔を貼り付けている。
【0006】
このため、従来の印刷回路用材料のような基板は、折り曲げた構造を製造するために必要な工程数が多く、折り曲げた構造の基板を容易に製造できないという問題があった。
【0007】
そこで、折り曲げた構造を容易に製造できる多層配線基板、電子装置、及び多層配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態多層配線基板は、複数の絶縁体と、前記絶縁体と交互に積層される導電体と、を有する多層配線基板であって、前記多層配線基板の表面から前記多層配線基板の厚さ方向に形成される複数の穴であって、少なくとも前記絶縁体のうち一の絶縁体を残して形成される穴を含む。
【発明の効果】
【0009】
折り曲げた構造を容易に製造できる多層配線基板、電子装置、及び多層配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】比較例の配線基板を電子装置の筐体内に配設した状態を示す断面図である。
【図2】リジッドフレキシブル基板を示す図である。
【図3】実施の形態1の多層配線基板100を含む携帯電話端末機500を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1の多層配線基板100の断面構造を示す斜視図である。
【図5】実施の形態1の多層配線基板100を折り曲げた状態を示す断面図である。
【図6】実施の形態1の多層配線基板100に穴部41A〜41B及び51A〜55Aを形成する工程を示す斜視図である。
【図7】実施の形態1の多層配線基板100の折り曲げ工程を示す図である。
【図8】実施の形態2の多層配線基板200の断面構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の多層配線基板、電子装置、及び多層配線基板の製造方法を適用した実施の形態について説明する。
【0012】
実施の形態の多層配線基板、電子装置、及び多層配線基板の製造方法について説明する前に、まず、図1乃至図2を用いて、比較例の配線基板の問題点について説明する。
【0013】
携帯電話端末機、デジタルカメラ、又はデジタルビデオカメラのような電子装置では、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)、メモリ、及びその他の周辺装置等の電子部品を配線基板に実装している。
【0014】
配線基板としては、例えば、ガラス繊維にエポキシ系の樹脂を染み込ませて熱硬化処理を施したFR(Flame Retardant type)4基板、又は、熱硬化性のあるポリイミドに熱硬化処理を施した配線基板がある。
【0015】
ところで、例えば、携帯電話端末機、デジタルカメラ、又はデジタルビデオカメラのような電子装置は小型であるため、配線基板を収容する筐体の内部のスペースが限られている。
【0016】
しかしながら、上述のような配線基板は、基板全体に熱硬化処理を施しており、全体的に剛性が高いリジッド型の配線基板であるため、折り曲げる必要のある用途には不向きである。
【0017】
このため、小型の電子装置では、筐体の内部のスペースを有効利用するために、リジッド型ではなく容易に折り曲げることのできる配線基板を用いて、CPU等の電子部品を実装している。
【0018】
この容易に折り曲げることのできる配線基板としては、例えば、フレキシブル基板、又は、リジッドフレキシブル基板がある。
【0019】
フレキシブル基板はポリイミド製の可撓性のあるフィルムで形成されているため、どの部分でも折り曲げることが可能であり、比較的自由に折り曲げることができる。
【0020】
また、リジッドフレキシブル基板は、一部分にフレキシブル基板を用いて折り曲げ可能にし、その他の部分にリジッド型の基板を用いたものである。
【0021】
図1は、比較例の配線基板を電子装置の筐体内に配設した状態を示す断面図である。図1に示す電子装置1は、一例として、携帯電話端末機である。
【0022】
電子装置1の筐体2の内部には、筐体2の内部の段差2Aに沿って折り曲げられたフレキシブル基板3が配設されている。
【0023】
フレキシブル基板3の表面(図1中における上面)には、導電体3Aがパターニングされている。導電体3Aは、例えば、フレキシブル基板3の表面に形成した銅箔をエッチング処理等によってパターニングすることによって形成される。図1には、理解しやすさの観点から、フレキシブル基板3の表面の全体に導電体3Aを示すが、実際には、フレキシブル基板3に実装される電子部品の端子等の位置に合わせてパターニングされている。
【0024】
フレキシブル基板3には、電子部品として、RF(Radio Frequency)通信部4A、AD(Analog/Digital)コンバータ4B、ベースバンド処理部4C、CPU4D、I/F(Inter Face)4E、及びメモリ4Fが実装されている。各電子部品(4A〜4F)は、導電体3Aによって電気的に接続されている。
【0025】
ポリイミド製の可撓性のあるフィルムで形成されるフレキシブル基板3は、筐体2の内部の段差2Aに沿って折り曲げることが可能であるため、小型の電子装置1の筐体2の内部のスペースを有効利用することができる。
【0026】
フレキシブル基板3は、基板全体に可撓性があるため、スペース的な制約が多く、折り曲げる部位の多い用途に特に適している。
【0027】
次に、図2を用いて、リジッドフレキシブル基板について説明する。
【0028】
図2は、リジッドフレキシブル基板を示す図である。
【0029】
リジッドフレキシブル基板5は、フレキシブル基板部6、導電体7A、7B、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2、及び導電体9A1、9A2、9B1、9B2を含む。
【0030】
フレキシブル基板部6は、例えば、ポリイミド製の可撓性のあるフィルムで形成されており、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2が存在しない折り曲げ部5A、5Bにおいて折り曲げることができる。
【0031】
導電体7A、7Bは、それぞれ、フレキシブル基板6の表面(図2中の上面)及び裏面(図2中の下面)に形成されている。導電体7A、7Bは、例えば、フレキシブル基板6の表面及び裏面に形成した銅箔をエッチング処理等によってパターニングすることによって形成される。図2には、理解しやすさの観点から、フレキシブル基板6の表面及び裏面の全体に導電体7A、7Bを示すが、実際には、フレキシブル基板6に実装される電子部品の端子等の位置に合わせてパターニングされている。
【0032】
リジッド基板部8A1、8A2は、リジッドフレキシブル基板5の折り曲げ部5Aを隔てて導電体7Aの上面に形成されている。また、リジッド基板部8B1、8B2は、リジッドフレキシブル基板5の折り曲げ部5Bを隔てて導電体7Bの下面に形成されている。
【0033】
リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2は、例えば、ガラス繊維にエポキシ系の樹脂を染み込ませて熱硬化処理を施したFR(Flame Retardant type)4基板である。
【0034】
導電体9A1、9A2は、それぞれ、リジッド基板部8A1、8A2の上面に形成されている。また、導電体9B1、9B2は、それぞれ、リジッド基板部8B1,8B2の下面に形成されている。
【0035】
導電体9A1、9A2、9B1、9B2は、それぞれ、例えば、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2の上面又は下面に形成した銅箔をエッチング処理等によってパターニングすることによって形成される。図2には、理解しやすさの観点から、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2の上面又は下面の全体に導電体9A1、9A2、9B1、9B2を示すが、実際には、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2に実装される電子部品の端子等の位置に合わせてパターニングされている。
【0036】
このようなリジッドフレキシブル基板5は、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2が存在する部分では折り曲げることはできないが、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2の存在しない折り曲げ部5A、5Bにおいて折り曲げることが可能である。
【0037】
例えば、折り曲げ部5Aを谷折りにするとともに折り曲げ部5Bを山折りにして折り曲げれば、リジッドフレキシブル基板5をU字型に折り曲げることができる。これとは逆に、折り曲げ部5Aを山折りにするとともに折り曲げ部5Bを谷折りにして折り曲げれば、リジッドフレキシブル基板5を逆U字型に折り曲げることができる。
【0038】
また、図2の左側に示すリジッド基板部8A1、8B1と、右側に示すリジッド部8A2、8B2との間で段差を吸収するように、折り曲げ部5A、5Bを折り曲げることも可能である。すなわち、図1に示すフレキシブル基板3のような形状にリジッドフレキシブル基板5を折り曲げることも可能である。
【0039】
このように、リジッドフレキシブル基板5は、折り曲げ部5A、5Bで自由に折り曲げることができるので、例えば、小型の電子装置1の筐体2(図1参照)のように、段差2Aがある場合においても、スペースを有効利用することができる。
【0040】
また、ポリイミド製のフレキシブル基板3は、金型等を用いてビア等の孔開けを行うが、リジッドフレキシブル基板5のリジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2は硬質であるため、レーザ加工又はドリル加工等によるビア等のための孔開け加工が可能である。
【0041】
このため、リジッドフレキシブル基板5は、フレキシブル基板3よりも微細な加工が可能であり、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2における実装密度を向上させること(高密度化)が可能である。
【0042】
また、リジッドフレキシブル基板5は、リジッド基板部8A1、8A2、8B1、8B2の上面又は下面に導電体9A1、9A2、9B1、9B2を形成できるため、フレキシブル基板3よりも多層化を図ることができるという利点がある。
【0043】
このように、リジッドフレキシブル基板5は、フレキシブル基板3(図1参照)に比べると折り曲げることのできる部分に制約があるものの、フレキシブル基板3よりも高密度化及び多層化を実現できるという利点がある。
【0044】
以上のような比較例のフレキシブル基板3(図1参照)とリジッドフレキシブル基板5(図2参照)は、折り曲げることによって限られたスペースを有効利用できるため、小型の電子装置1に多く用いられている。
【0045】
しかしながら、フレキシブル基板3及びリジッドフレキシブル基板5は、全体がリジッドな材料で形成された配線基板に比べると、同一の配線パターンを得る場合において、約1.5倍から2倍程度高価である。このような製造コストの違いは、主に材料費の違いによるものである。
【0046】
このような製造コストの違いは、最終製品としての電子装置1のコストの違いとしても現れていた。
【0047】
以上のように、比較例のフレキシブル基板3及びリジッドフレキシブル基板5は、リジッド型の配線基板に比べて、製造コストが高かった。それにも拘わらず、電子装置1の小型化に伴う筐体2内のスペースが益々限られて行くことから、フレキシブル基板3及びリジッドフレキシブル基板5は、電子装置1に多く用いられていた。
【0048】
リジッド型の配線基板を容易に折り曲げることができれば、低コスト化を図ることができるため、比較例のフレキシブル基板3及びリジッドフレキシブル基板5の代替として有望であるが、そのような配線基板は実現されていないという問題があった。
【0049】
従って、以下では、上述のような問題を解決した実施の形態1及び2の配線基板、電子装置、及び配線基板の製造方法について説明する。
【0050】
<実施の形態1>
図3は、実施の形態1の多層配線基板100を含む携帯電話端末機500を示す斜視図である。図3(A)は、折りたたみ式の携帯電話端末機500の筐体501A、501Bを開いた状態を示す。図3(B)は、理解しやすさの観点から、携帯電話端末機500の内部について透視図として示す。また、図3(C)は、図3(B)のA−A断面における筐体501B及び多層配線基板100を示す。ここで、携帯電話端末機500は電子装置の一例である。
【0051】
図3(A)に示すように、携帯電話端末機500の筐体501A及び501Bには、それぞれ、表示部502及び操作部503が設けられている。また、図3(B)に示すように、筐体501Bの内部には多層配線基板100が収納されている。
【0052】
筐体501A及び501Bは、樹脂製又は金属製の筐体であり、それぞれ、表示部502及び操作部503を配設するための開口部を有する。表示部502は、例えば、文字、数字、画像等を表示できる液晶パネルであればよい。また、操作部503は、テンキーに加え、携帯電話端末機500の機能を選択するための種々の選択キーを含む。なお、携帯電話端末機500は、近接通信装置(赤外線通信装置、電子マネー用の通信装置等)又はカメラ等の付属装置を含んでもよい。
【0053】
また、図3(B)に示す多層配線基板100には、RF(Radio Frequency)通信部511、AD(Analog/Digital)コンバータ512、ベースバンド処理部513、CPU514、I/F(Inter Face)515、及びメモリ516が実装されている。各電子部品(511〜516)は、多層配線基板100の導電体によって電気的に接続されている。また、筐体501Bには、アンテナ517が設けられている。アンテナ517は、RF通信部511に接続されている。
【0054】
アンテナ517で受信された通話用の信号は、RF通信部511でフィルタ処理等が行われた後に、ADコンバータ512でデジタル信号に変換される。ADコンバータ512から出力されるデジタル信号は、ベースバンド処理部513でベースバンド処理が行われた後に、CPU514を介して、図示しないスピーカから音声として出力される。また、CPU514は、音声を表す信号を処理する際に、IF515を介してメモリ516にアクセスし、必要なプログラム等を読み出し、実行する。
【0055】
図3(B)、(C)に示すように、多層配線基板100は、2カ所の折り曲げ部101、102で折り曲げられている。折り曲げ部101、102は、図3(C)に示すように、筐体501B内の段差501Cに沿って折り曲げられている。これは、段差501Cを含む筐体501B内のスペースを有効利用するためである。なお、多層配線基板100の具体的な構成については、図4及び図5を用いて後述する。
【0056】
なお、図3には、電子装置の一例として携帯電話端末機500を示したが、電子装置は、携帯電話端末機500に限定されず、例えば、デジタルカメラ又はデジタルビデオカメラ等の小型の電子装置であってもよい。
【0057】
図4は、実施の形態1の多層配線基板100の断面構造を示す斜視図である。図4(A)は多層配線基板100を表面100A側から示す斜視図であり、図4(B)は多層配線基板100を裏面100B側から示す斜視図である。
【0058】
図4(A)、(B)に示す多層配線基板100の断面構造は、折り曲げ部101、102(図3(B)、(C)参照)で折り曲げる前の状態における多層配線基板100の断面の一部を拡大して示したものである。
【0059】
ここでは、図4(A)、(B)に示すように、三次元座標であるXYZ座標を定義する。XYZ座標は、多層配線基板100の各構成要素の位置を表すための座標である。
【0060】
図3(B)のA−A断面の方向は、図4(A)、(B)におけるX軸方向に対応する。X軸方向は、多層配線基板100の長手方向に対応し、Y軸方向は、多層配線基板100の短手方向に対応し、Z軸方向は、多層配線基板100の厚さ方向に対応する。
【0061】
実施の形態1の多層配線基板100は、5層の絶縁体11、12、13、14、15と、6層の導電体21、22、23、24、25、26、及び、ビア31、32、33、34を含む。また、多層配線基板100は、さらに、穴部41A、42A、43A、44A、45A、41B、42B、43B、44B、45B、51A、52A、53A、54A、55A、51B、52B、53B、54B、55Bを含む。
【0062】
多層配線基板100は、例えば、FR4(Flame Retardant Type 4)又はFR5(Flame Retardant Type 5)等のガラス布基材とエポキシ樹脂で形成されるリジッド型のプリント基板(PCB:Printed Circuit Board)である。
【0063】
なお、多層配線基板100は、FR4又はFR5に限られるものではなく、FR規格の他のグレードのものであってもよく、あるいは、他の規格のものであってもよい。
【0064】
絶縁体11、12、13、14、15(以下、絶縁体11〜15と記す)は、2つのグループに分けることができる。例えば、絶縁体11、13、15は、繊維に熱硬化性樹脂を含浸させることによって形成される層である。すなわち、絶縁体11、13、15は、例えば、ガラス布基材にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグである。また、絶縁体12、14は、繊維層で実現されるコアである。ただし、プリプレグもコアも、放熱性や強度が維持可能なものであればよく、ガラス布基材にエポキシ樹脂を含浸させたものでも、エポキシ樹脂にフィラーを混ぜたものでも、繊維を含まないエポキシ樹脂で形成されたものであってもよい。
【0065】
導電体21、22、23、24、25、26(以下、導電体21〜26と記す)は、例えば、銅箔である。但し、銅箔の上にメッキが施される導電体もある。導電体21〜26は、例えば、配線層、電源層、又はグランド層等として用いられる。
【0066】
上述の例では、絶縁体11、13、15をプリプレグ、絶縁体12、14をコアとするグループ分けを説明したが、グループ分けはこれに限られるものではない。例えば、絶縁体13をコアとし、絶縁体11、12、14、15をプリプレグとするグループ分けでも構わない。更には、絶縁体11、12、13、14、15の全てがプリプレグであってもよい。
【0067】
絶縁体11〜15と導電体21〜26は、コアである絶縁体12と絶縁体14の両面に、それぞれ、導電体22、23と導電体24、25を形成した状態で熱硬化処理が施されることによって固着される。
【0068】
ビア31、32、33、34(以下、ビア31〜34と記す)は、貫通孔31A、32A、33A、34A(以下貫通孔31A〜34Aと記す)の内壁に沿って筒状に形成されている。ビア31〜34は、Z軸方向に延在しており、すべての導電体21〜26に接続されている。
【0069】
ビア31〜34は、例えば、熱硬化処理で接着された絶縁体11〜15と導電体21〜26に貫通孔31A〜34Aを形成し、貫通孔31A〜34Aの内壁に無電解メッキ層を形成し、その上に電解メッキ層を形成することによって形成される。
【0070】
ビア31〜34を構築する無電解メッキ層と電解メッキ層は、例えば、銅メッキで形成することができる。ただし、ビア31〜34は銅メッキに限定されず、他の材料(例えば、ニッケル、錫、亜鉛等)のメッキであってもよい。
【0071】
ここで、図4には、多層配線基板100に含まれるすべてのビア31〜34がすべての導電体21〜26に接続される形態を示す。しかしながら、ビア31〜34は、導電体21〜26のうちのいずれかと接続されていればよい。導電体21〜26は、ビア31〜34と接続されない場合は、ビア(31〜34のうちのいずれか)を避けるように、平面視における形状がパターニングされる。
【0072】
穴部41A、42A、43A、44A、45A(以下、穴部41A〜45Aと記す)は、図4(A)に示すように、Y軸方向に配列されており、表面100AからZ軸マイナス方向に形成されている。
【0073】
穴部41A〜45Aは、それぞれ、表面100Aから導電体21、絶縁体11、導電体22、及び絶縁体12を貫通し、導電体23の表面(図4(A)中の上面)にまで達している。
【0074】
穴部41B、42B、43B、44B、45B(以下、穴部41B〜45Bと記す)は、図4(B)に示すように、Y軸方向に配列されており、裏面100BからZ軸プラス方向に形成されている。
【0075】
穴部41B〜45Bは、それぞれ、裏面100Bから導電体26、絶縁体15、導電体25、及び絶縁体14を貫通し、導電体24の表面(図4(B)中の上面)にまで達している。
【0076】
穴部41B〜45Bが形成されるXY平面内における位置は、それぞれ、穴部41A〜45AのXY平面内における位置と等しい。
【0077】
穴部51A、52A、53A、54A、55A(以下、穴部51A〜55Aと記す)は、図4(A)に示すように、Y軸方向に配列されており、表面100AからZ軸マイナス方向に形成されている。
【0078】
穴部51A〜55Aは、それぞれ、表面100Aから導電体21、絶縁体11、導電体22、及び絶縁体12を貫通し、導電体23の表面(図4(A)中の上面)にまで達している。
【0079】
穴部51B、52B、53B、54B、55B(以下、穴部51B〜55Bと記す)は、図4(B)に示すように、Y軸方向に配列されており、裏面100BからZ軸プラス方向に形成されている。
【0080】
穴部51B〜55Bは、それぞれ、裏面100Bから導電体26、絶縁体15、導電体25、及び絶縁体14を貫通し、導電体24の表面(図4(B)中の上面)にまで達している。
【0081】
穴部51B〜55Bが形成されるXY平面内における位置は、それぞれ、穴部51A〜55AのXY平面内における位置と等しい。
【0082】
このように、穴部41A〜45A及び41B〜45Bは、多層配線基板100の厚さ方向(Z軸方向)において、導電体23、絶縁体13、及び導電体24を残して形成されている。
【0083】
同様に、穴部51A〜55A及び51B〜55Bは、多層配線基板100の厚さ方向(Z軸方向)において、導電体23、絶縁体13、及び導電体24を残して形成されている。
【0084】
穴部41A〜45A及び41B〜45Bは、それぞれ、導電体23、絶縁体13、及び導電体24を残して多層配線基板100の表面100A及び裏面100Bから形成される穴の一例である。
【0085】
また、穴部51A〜55A及び51B〜55Bは、それぞれ、導電体23、絶縁体13、及び導電体24を残して多層配線基板100の表面100A及び裏面100Bから形成される穴の一例である。
【0086】
穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bは、絶縁体11〜15、導電体21〜26、及びビア31〜34を含む多層配線基板100が完成した後に、後述するレーザ加工によって形成される。このため、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成する箇所を多層配線基板100の完成後に選択することができる。
【0087】
ここで、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bのそれぞれの直径は、例えば、50μm〜400μmに設定される。
【0088】
穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bの隣同士の間のY軸方向における距離Y1は、例えば、1mmに設定される。
【0089】
穴部41A〜45Aの中心と、穴部51A〜55Aの中心とのX軸方向の距離X1は、それぞれ、5mmに設定される。なお、穴部41B〜45Bの中心と、穴部51B〜55Bの中心とのX軸方向の距離もX1であり、それぞれ、5mmに設定される。
【0090】
また、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bのそれぞれの深さZ1は、例えば、0.1mmに設定される。深さZ1は、多層配線基板100の表面100A又は裏面100Bからの深さである。
【0091】
このような多層配線基板100において、穴部41A〜45Aが形成された部分を山折りにするとともに、穴部41B〜45Bが形成された部分を谷折りにするように、穴部41A〜45A及び41B〜45Bの両側に多層配線基板100を折り曲げるための応力をかける。
【0092】
この結果、穴部41A〜45Aに沿って導電体21、絶縁体11、導電体22、及び絶縁体12が断絶又は引き延ばされるとともに、穴部41B〜45Bに沿って導電体26、絶縁体15、導電体25、及び絶縁体14が圧縮される。
【0093】
これにより、多層配線基板100は、穴部41A〜45Aが形成された部分で山折りになるとともに、穴部41B〜45Bが形成された部分で谷折りになるように変形し、導電体23、絶縁体13、及び導電体24が折り曲げられる。
【0094】
また、穴部51A〜55Aが形成された部分を谷折りにするとともに、穴部51B〜55Bが形成された部分を山折りにするように、穴部51A〜55A及び51B〜55Bの両側に応力をかける。
【0095】
この結果、穴部51A〜55Aに沿って導電体21、絶縁体11、導電体22、及び絶縁体12が圧縮されるとともに、穴部51B〜55Bに沿って導電体26、絶縁体15、導電体25、及び絶縁体14が断絶又は引き延ばされる。
【0096】
これにより、多層配線基板100は、穴部51A〜55Aの部分で谷折りになるとともに、穴部51B〜55Bの部分で山折りになるように変形し、導電体23、絶縁体13、及び導電体24が折り曲げられる。
【0097】
以上のように多層配線基板100を折り曲げた状態を図5に示す。
【0098】
図5は、実施の形態1の多層配線基板100を折り曲げた状態を示す断面図である。図5に示す断面は、図4(A)に示す穴部41A、41B、51A、51B、及びビア31〜34を含む断面である。
【0099】
図5に示すように、多層配線基板100は、穴部41A及び穴部51Bが形成された部分で山折りとなり、穴部41B及び51Aが形成された部分で谷折りとなるように折り曲げられている。
【0100】
すなわち、図5に示す断面においては、穴部41A及び41Bを含む破線で示す部分が折り曲げ部101(図3(B)、(C)参照)になり、穴部51A及び51Bを含む破線で示す部分が折り曲げ部102(図3(B)、(C)参照)になる。
【0101】
図5には、穴部41A、41B、51A、及び51Bを含む断面を示すが、多層配線基板100は、穴部41A〜45A及び51B〜55Bに沿って山折りにされるとともに、穴部41B〜45B及び51A〜55Aに沿って谷折りにされるように折り曲げられることになる。
【0102】
すなわち、折り曲げ部101は、Y軸に沿って、穴部41A〜45A及び41B〜45Bを含む部分に形成される。同様に、折り曲げ部102は、Y軸に沿って、穴部51A〜55A及び51B〜55Bを含む部分に形成される。
【0103】
このように多層配線基板100を折り曲げ部101、102で折り曲げることにより、多層配線基板100の裏面100B側には、図5に示すように、多層配線基板100の左側部分と右側部分との間に高さdの段差を形成することができる。
【0104】
多層配線基板100の段差の高さdは、絶縁体11〜15の厚さ、導電体21〜26の厚さ、穴部41A〜45A及び41B〜45Bと穴部51A〜55A及び51B〜55Bとの間の距離X1、及び各穴部の直径及び深さZ1等によって決まる。
【0105】
ここで、図5に示すように、多層配線基板100のうち穴部41A〜45A及び41B〜45Bよりも左側の部分と、穴部51A〜55A及び51B〜55Bよりも右側の部分とがX軸に平行になるように、多層配線基板100を折り曲げた場合に、図5に示すように角度θを定義する。
【0106】
角度θは、多層配線基板100のうち穴部51A〜55A及び51B〜55Bよりも右側の部分と、穴部41A〜45A及び41B〜45Bと穴部51A〜55A及び51B〜55Bとの間の部分とがなす角度である。なお、図5には図示しないが、多層配線基板100のうち穴部41A〜45A及び41B〜45Bよりも左側の部分と、穴部41A〜45A及び41B〜45Bと穴部51A〜55A及び51B〜55Bとの間の部分とがなす角度もθである。
【0107】
このような角度θを用いると、多層配線基板100の段差の高さdは、d=X1×tanθに略等しい高さとして求めることができる。例えば、X1が2mmで、30度折り曲げられる場合(θ=30度)、段差の高さdは1mmとなる。
【0108】
角度θは、絶縁体13の厚さ及びヤング率、導電体23、24の厚さ及びヤング率等によって異なるため、絶縁体13及び導電体23、24の厚さ及びヤング率等に応じて、長さX1を設定するようにすればよい。
【0109】
従って、多層配線基板100の段差の高さdが筐体501Bの段差501C(図3(C)参照)に合うように配線基板を設計すれば、段差501Cのある筐体501Bの内部において、効率よく多層配線基板100を配設することができる。
【0110】
なお、図4及び図5には、多層配線基板100の全体ではなく一部の断面を示すため、実際の多層配線基板100には、より多くの穴部が形成されることになる。
【0111】
次に、図6及び図7を用いて、実施の形態1の多層配線基板100の製造方法について説明する。
【0112】
図6(A)〜(C)は、実施の形態1の多層配線基板100に穴部41A〜41B及び51A〜55Aを形成する工程を示す斜視図である。
【0113】
まず、図6(A)に示すように、多層配線基板100の表面100Aに穴部41A〜45A及び51A〜55Aを形成する位置を決定する。穴部41A〜45A及び51A〜55Aは、レーザ加工で形成するため、穴部41A〜45A及び51A〜55Aの中心位置、直径、深さをXYZ座標系で決定する。
【0114】
レーザは、例えば、炭酸ガスレーザ又はYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザを用いればよい。
【0115】
なお、多層配線基板100の裏面100B(図6(C)参照)に形成する穴部41B〜45A及び51A〜55Aの中心位置、直径、深さについてもXYZ座標系で決定しておく。
【0116】
次に、図6(B)に示すように、レーザ300を走査しながら多層配線基板100に照射して、穴部41A〜45Aを順次形成する。穴部41A〜45Aを形成した後に、レーザ300を走査しながら多層配線基板100に照射して、穴部51A〜55Aを形成する。
【0117】
ここで、レーザ300の走査は、例えば、ガルバノミラーを含むレーザスキャナ装置で行えばよい。レーザ発振器から発振されるレーザ300をレーザスキャナ装置で走査するとともに、fθレンズでレーザ300を所望の直径に集光し、穴部41A〜45A及び51A〜55Aを形成する中心位置にレーザ300を順次照射する。このようにして、穴部41A〜45A、51A〜55Aを形成すればよい。
【0118】
多層配線基板100の表面100A側に穴部41A〜45A及び51A〜55Aを形成した後に、図6(C)に示すように多層配線基板100を裏返して、レーザ300を照射することによって穴部51B〜55Bを形成し、さらに穴部41B〜45Bを形成する。
【0119】
穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成した状態では、各穴部の内部で導電体23又は24が露出している。導電体23、24が銅箔である場合は、多層配線基板100を防錆処理用の有機酸溶液に含浸させることにより、各穴部内の導電体23、24の表面に、例えば、0.2μm〜0.3μm程度の有機被膜を形成すればよい。
【0120】
以上により、多層配線基板100に穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成する工程が終了する。穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bは、ミシン目のように形成される。
【0121】
なお、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成するために必要なレーザ300の出力、直径、照射時間、ショット数(照射回数)等は、絶縁体11〜15及び導電体21〜26の材質、厚さ、及び密度等によって異なる。
【0122】
このため、絶縁体11〜15及び導電体21〜26の材質、厚さ、及び密度等に応じて、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成するために必要なレーザの出力、直径、照射時間、ショット数等のデータを予め取得しておけばよい。穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bの形成は、予め取得したレーザの出力、直径、照射時間、ショット数等のデータを用いて行えばよい。
【0123】
また、絶縁体11、12、14、15を貫通させるために必要なレーザ300の出力は、導電体21、22、25、26を貫通するために必要なレーザ300の出力よりも小さい。
【0124】
このため、絶縁体11、12、14、15に穴部を形成する加工を行う際に、レーザ300が導電体21〜26に達すると、レーザ300は導電体21〜26で反射され、穴部の加工が導電体21〜26の各々に達したことを検出できる。
【0125】
従って、導電体21、22、25、26に達した場合は、レーザ300の出力を増大させて導電体21、22、25、26を貫通するように加工を行えばよく、導電体23、24に到達した場合には、加工を終了させればよい。
【0126】
このようにレーザ300の出力を調整しながら加工を行うことにより、導電体23、絶縁体13、及び導電体24を残して、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成することができる。
【0127】
また、レーザ300による加工は、例えば、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bの直径が50μm〜400μm程度になるように設定して高速で行うことができる。このため、微細な穴部を短時間で形成することができる。
【0128】
なお、ここでは、レーザ300を用いて穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを加工する形態について説明したが、ドリルを用いて穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成してもよい。
【0129】
ドリル加工を行う場合は、例えば、ビア31〜34用の貫通孔31A〜34Aを形成するためのドリルを利用すればよい。穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bの直径は、ドリルの直径によって決まる。穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bの深さは、ドリルのZ軸方向における送り量によって制御すればよい。
【0130】
レーザ300又はドリルを用いて穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを加工することにより、比較例のフレキシブル基板3(図1参照)では実現できない高密度化を達成することができる。
【0131】
次に、図7を用いて、多層配線基板100を折り曲げる折り曲げ工程について説明する。
【0132】
図7は、実施の形態1の多層配線基板100の折り曲げ工程を示す図である。図7(A)、(B)、(C)は実施の形態1の多層配線基板100の折り曲げ工程を段階的に示す側面図であり、図7(D)は図7(A)に示す工程で用いる治具のうちの一つを示す正面図である。
【0133】
ここでは、実施の形態1の多層配線基板100にRF通信部511、ADコンバータ512、ベースバンド処理部513、CPU514、I/F515、及びメモリ516を実装した後に、折り曲げ工程を行う形態について説明する。
【0134】
図7(A)〜(C)に示すように、実施の形態1の多層配線基板100の折り曲げ工程では、治具401、402、403を用いる。
【0135】
治具401は、台座となる治具であり、例えば、直方体の金属プレートを用いることができる。治具401は、折り曲げ工程によって多層配線基板100に生じる段差dよりも厚い厚さを有していればよく、例えば、銅又は鉄の金属プレート、または硬質樹脂成型品を用いることができる。治具401は、金属プレートの表面に樹脂がコーティングされていてもよい。樹脂あるいは金属への樹脂コーティングは配線基板へのダメージを低減することを目的としている。治具401は、折り曲げ部101を折り曲げる際に用いられる。
【0136】
治具402は、昇降式の押圧機構に取り付けられており、図7(A)において治具401の右側面401Aから所定距離だけ離れた位置において昇降可能である。
【0137】
治具403は、治具401を上面側からくり抜いた凹部403Bを有するコの字型の台座である。治具403は、折り曲げ部102を折り曲げる際に用いられる。
【0138】
ここで、折り曲げ部101には、穴部41A〜45A及び41B〜45Bが形成されており、折り曲げ部102には、穴部51A〜55A及び51B〜55Bが形成されている。折り曲げ部101、102は、それぞれ、穴部41A〜45A及び41B〜45B、穴部51A〜55A及び51B〜55Bにより、多層配線基板100の剛性が低くなっている部分である。
【0139】
まず、図7(A)に示すように、多層配線基板100の折り曲げ部101が治具401の右側面401Aと治具402の間に位置するように位置合わせを行い、多層配線基板100の折り曲げ部101よりも左側の部分を治具401に載置する。このとき、治具402は、折り曲げ加工を行う前には多層配線基板100の上方に位置している。
【0140】
次に、図7(B)に示すように、押圧機構によって治具402を下降させて、多層配線基板100の表面100Aに当接した状態で下方に押圧することにより、多層配線基板100の折り曲げ部101にせん断応力を発生させる。これにより、多層配線基板100は、図7(B)に示すように、折り曲げ部101よりも右側が下方に折れ曲がる。
【0141】
最後に、多層配線基板100の上下を反転させ、多層配線基板100の折り曲げ部102よりも左側の部分を治具403に載置する。このとき、RF通信部511とADコンバータ512の破損を防ぐために、RF通信部511とADコンバータ512が凹部403内に収容されるように、治具403に多層配線基板100を載置すればよい。
【0142】
治具403は、治具402に対して、図7(A)、(B)に示す治具401と同じ位置に設置されており、治具402は、治具403の右側面403Bから所定距離だけ離れた位置に置いて昇降可能である。
【0143】
多層配線基板100の折り曲げ部102が治具403の右側面403Bと治具402の間に位置するように位置合わせを行い、押圧機構で治具402を下降させる。多層配線基板100の裏面100Bに治具402を当接させた状態で、治具402をさらに下方に押圧することにより、多層配線基板100の折り曲げ部102にせん断応力を発生させる。
【0144】
これにより、図7(C)に示すように、多層配線基板100の折り曲げ部102は折り曲げられ、高さdの段差を形成することができる。
【0145】
ここで、図7(D)に示すように、治具402の底部402Aは、幅方向における中央部が下側に凸になるように丸められていてもよい。このように底部402Aを丸めておけば、多層配線基板100を折り曲げる際に、多層配線基板100の幅方向における中央部から両端にかけて徐々にせん断応力を発生させることはでき、多層配線基板100を効率的に折り曲げることができる。
【0146】
以上のように、実施の形態1によれば、多層配線基板100を完成させた後に、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成することにより、折り曲げ工程を行うことができ、多層配線基板100の折り曲げ構造を容易に製造できる。
【0147】
なお、多層配線基板100を折り曲げた後に、RF通信部511、ADコンバータ512、ベースバンド処理部513、CPU514、I/F515、及びメモリ516を配線100に実装することができる場合は、折り曲げた後に実装してもよい。
【0148】
以上、実施の形態1によれば、多層配線基板100が完成した後に、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを形成することにより、絶縁体11、12、13、14、15を含むリジッド型の多層配線基板100において、折り曲げ構造を容易に製造できる。
【0149】
従来のリジッド型の配線基板は、剛性が高く(例えば、約30GPa)、容易には折り曲げることができないので、例えば、高さが0.1mm程度の段差があるだけでも、電子装置に用いることはできない。
【0150】
これに対して、実施の形態1の多層配線基板100は、段差の高さに応じて折り曲げることができるため、段差501C(図3参照)を含む筐体501B内のスペースを有効利用することができる。
【0151】
多層配線基板100は、レーザ加工又はドリル加工等で容易に形成できる穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、及び51B〜55Bを折り曲げ部101、102として折り曲げるため、従来の配線基板に比べて折り曲げるために必要な工程数が大幅に少ない。
【0152】
このため、実施の形態1によれば、折り曲げた構造を容易に製造できる多層配線基板100を提供することができる。
【0153】
また、多層配線基板100は、プリプレグである絶縁体11、13、15と、コアである絶縁体12、14を含むリジッド型の基板であるため、比較例のフレキシブル基板3及びリジッドフレキシブル基板5に比べて、製造コストを大幅に低減することができる。
【0154】
また、多層配線基板100は、リジッド型の基板であるため、高密度化も図ることができる。
【0155】
また、リジッド型の多層配線基板100を折り曲げることにより、電子装置1の小型化と低コスト化を実現できる。
【0156】
なお、以上では、穴部41A〜45Aと穴部41B〜45BのXY平面内における位置がそれぞれ等しい形態について説明したが、穴部41A〜45Aと穴部41B〜45BのXY平面内における位置は異なっていてもよい。例えば、穴部41A〜45Aと穴部41B〜45Bとは、それぞれ、Y軸方向において、重ならないように互い違いに位置するように形成されていてもよい。
【0157】
同様に、穴部51A〜55Aと穴部51B〜55BのXY平面内における位置は、XY平面内における位置は異なっていてもよい。例えば、穴部51A〜55Aと穴部51B〜55Bとは、それぞれ、Y軸方向において、重ならないように互い違いに位置するように形成されていてもよい。
【0158】
また、以上では、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bがそれぞれ間隔Y1を隔てて形成される形態について説明した。しかしながら、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bは、それぞれ、間隔Y1を隔てずにY軸方向に連続するように形成されてもよい。
【0159】
また、表面100A側の穴部41A〜45A、51A〜55A、又は、裏面100B側の穴部41B〜45B、51B〜55Bのいずれか一方だけが形成されてもよい。
【0160】
また、以上では、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bが導電体23、絶縁体13、及び導電体24を残して、深さがZ1になるように形成される形態について説明した。しかしながら、穴部は、少なくともいずれか1層の導電体(プリプレグ又はコア)と、少なくともいずれか1層の絶縁体とを残して形成されるのであれば、任意の組み合わせで形成することができる。従って、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bの深さZ1は、少なくともいずれか1層の導電体(プリプレグ又はコア)と、少なくともいずれか1層の絶縁体とを残して形成されるのであれば、任意の値に設定可能である。すなわち、表面100A側から形成される穴部41A〜45A、51A〜55Aと、裏面100B側から形成される41B〜45B、51B〜55Bとの深さは異なっていてもよい。
【0161】
また、この場合に、穴部41A〜45A及び41B〜45Bと、穴部51A〜55A及び51B〜55Bとが残す絶縁体及び導電体が異なっていてもよい。
【0162】
また、穴部41A〜45A及び41B〜45Bと、穴部51A〜55A及び51B〜55Bとによって残される絶縁体(11〜15のいずれか)の厚さは、例えば、比較例のフレキシブル基板3(図1参照)と同等の厚さに設定すればよい。このような厚さに設定することにより、絶縁体(11〜15のいずれか)を折り曲げることができる。複数の絶縁体(11〜15のいずれか)を残す場合は、複数の絶縁体(11〜15のいずれか)の合計の厚さが比較例のフレキシブル基板3(図1参照)と同等の厚さになるように設定すればよい。
【0163】
また、以上では、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55BがそれぞれY軸に沿って同一直線上に配列されるように形成される形態について説明した。しかしながら、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bは、それぞれ、Y軸に対して曲線的に配列されるように形成されてもよい。例えば、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bは、それぞれ、弧を描くように配列されてもよいし、S字状に配列されてもよい。
【0164】
また、以上では、X軸方向において、2列の穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bが形成される形態について説明したが、穴部は、3列以上形成されてもよいし、1列であってもよい。穴部の列数は、多層配線基板100を折り曲げる回数に応じて決定すればよい。なお、1列の形態については、実施の形態2として後述する。
【0165】
また、以上では、穴部41A〜45A、41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bが平面視で円形の形態について説明したが、穴部は平面視で長く形成される長穴であってもよい。例えば、レーザ加工で穴部を形成するときに、レーザを穴部41Aのある位置から穴部42Aのある位置まで照射することにより、穴部41Aから穴部42Aまでを繋げて一体にした長穴を形成してもよい。このような長穴は、例えば、穴部42A〜45Aについても任意の組み合わせで繋げることによって形成してもよい。また、穴部41B〜45B、51A〜55A、51B〜55Bについても、同様である。
【0166】
<実施の形態2>
実施の形態2の多層配線基板200は、折り曲げ部が1つである点が実施の形態1の多層配線基板100と異なる。すなわち、実施の形態2の多層配線基板200には、穴部41A〜45A及び41B〜45Bが形成される点は実施の形態1の多層配線基板100と同様であるが、穴部51A〜55A及び51B〜55Bが形成されない点において実施の形態1の多層配線基板100と異なる。
【0167】
以下では、実施の形態1の多層配線基板100と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0168】
図8は、実施の形態2の多層配線基板200の断面構造を示す斜視図である。
【0169】
図8(A)、(B)に示す多層配線基板200の断面構造は、折り曲げる前の状態における多層配線基板200の断面の一部を拡大して示したものである。
【0170】
実施の形態2の多層配線基板200は、5層の絶縁体11〜15と、6層の導電体21〜26、及び、ビア31〜34を含む。また、多層配線基板200は、さらに、穴部41A〜45A、41B〜45Bを含む。
【0171】
穴部41A〜45A、41B〜45Bは、折り曲げ部201に含まれる。実施の形態2の多層配線基板200は、折り曲げ部201で折り曲げることができる。
【0172】
このため、例えば、折り曲げない状態では小型の電子装置1(図3参照)の筐体2内に収納できないが、折り曲げ部201で折り曲げることによって筐体2内に収容できるような場合に、筐体2内のスペースを有効利用できる。
【0173】
以上、実施の形態2によれば、多層配線基板200が完成した後に、穴部41A〜45A、41B〜45Bを形成することにより、プリプレグである絶縁体11、13、15と、コアである絶縁体12、14を含むリジッド型の多層配線基板200において、折り曲げ構造を容易に製造できる。
【0174】
多層配線基板200は、レーザ加工又はドリル加工等で容易に形成できる穴部41A〜45A、41B〜45Bを折り曲げ部201として折り曲げるため、従来の配線基板に比べて折り曲げるために必要な工程数が大幅に少ない。
【0175】
このため、実施の形態2によれば、折り曲げた構造を容易に製造できる多層配線基板200を提供することができる。
【0176】
また、多層配線基板200は、プリプレグである絶縁体11、13、15と、コアである絶縁体12、14を含むリジッド型の基板であるため、比較例のフレキシブル基板3及びリジッドフレキシブル基板5に比べて、製造コストを大幅に低減することができる。
【0177】
また、多層配線基板200は、リジッド型の基板であるため、高密度化も図ることができる。
【0178】
以上、本発明の例示的な実施の形態の配線基板、電子装置、及び配線基板の製造方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0179】
11、12、13、14、15 絶縁体
21、22、23、24、25、26 導電体
31、32、33、34 ビア
31A、32A、33A、34A 貫通孔
41A、42A、43A、44A、45A、41B、42B、43B、44B、45B、51A、52A、53A、54A、55A、51B、52B、53B、54B、55B 穴部
100 配線基板
100A 表面
100B 裏面
101、102 折り曲げ部
200 配線基板
201 折り曲げ部
300 レーザ
500 携帯電話端末機
501A、501B 筐体
502 表示部
503 操作部
511 RF通信部
512 ADコンバータ
513 ベースバンド処理部
514 CPU
515 I/F
516 メモリ
517 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体と、
前記絶縁体と交互に積層される導電体と、
を有する多層配線基板であって、
前記多層配線基板の表面から前記多層配線基板の厚さ方向に形成される複数の穴であって、少なくとも前記絶縁体のうち一の絶縁体を残して形成される穴を含む多層配線基板。
【請求項2】
前記穴は、前記多層配線基板の表面及び他方の表面から前記多層配線基板の厚さ方向に形成されており、前記表面から形成される穴と、前記他方の表面から形成される穴とは、平面視において互い違いに配列される、請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多層配線基板と、
前記多層配線基板に搭載される電子部品と
を含む、電子装置。
【請求項4】
複数の絶縁体と、前記絶縁体と交互に積層される導電体とを含む多層配線基板の前記多層配線基板の表面から、前記多層配線基板の厚さ方向に形成され、少なくとも前記絶縁体のうち一の絶縁体を残して穴を形成する工程を含む、多層配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記穴において、前記多層配線基板を折り曲げる工程をさらに含む、請求項5記載の多層配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84729(P2013−84729A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223047(P2011−223047)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】