説明

多成分単一体のスパッタリングターゲット及びその製造方法、これを利用した多成分合金系ナノ構造薄膜の製造方法

【課題】
本発明は多成分単一体のスパッタリングターゲット及びその製造方法、これを利用した多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法に関するものである。
【解決手段】
本発明による多成分単一体のスパッタリングターゲットは、窒素と反応して窒化物形成が可能な窒化物形成金元素及び前記窒化物形成金元素に対する高溶度がないか低く、窒素と反応しないか反応性が低い非窒化物形成金元素の非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金系を含むもので、前記窒化物形成金元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Y、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含んで構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多成分単一体のスパッタリングターゲット及びその製造方法と、これを利用した多成分合金系ナノ構造薄膜の製造方法に関するものであり、より詳しくは、窒素に対する反応性が他の二種類の金属元素、すなわち窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を含む単一体ターゲット母物質を利用し、選択反応性スパッタリングを通じてハード薄膜の高硬度特性は勿論、高弾性(低い弾性系数)、低摩擦(低い摩擦系数)などの多様な要求特性を充足できる薄膜形成が可能な多成分単一体のスパッタリングターゲット及びその製造方法と、これを利用した多成分合金系ナノ構造薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新しいナノ構造コーティング材の開発に関する科学的/商業的な関心が高まっている。特に、プラズマを利用したPVDまたはCVD工程によって得られるコーティング材の組成または構成相の組合せにおいて主な構成成分間に極めて低い相互不溶性(mutual immiscibility)を有するコーティングシステムを適用して得られるナノセラミックス‐非晶質セラミックスまたはナノセラミックス‐ナノ金属系のナノ複合相構造混合物(nano composite phase mixtures)に基盤を置いたナノ構造コーティング材に関心が寄せられている。
【0003】
これらのコーティング材として、(ナノサイズセラミックス結晶)‐(非晶質セラミックス相)の組合せを有するセラミックス系ナノ構造コーティング材が研究されており、その結果これらのセラミックス系ナノ構造薄膜はc‐BN、ダイヤモンドに匹敵する程で70GPa以上の非常に高い硬度であり、弾性系数も高い硬度に伴い高い値を示している。このような特性はセラミックスだけが有する共有結合またはイオン結合の本質的な結合様式による。このような二つの高い物性(硬度、弾性系数)は、理論的に切削工具材料(cutting tool materials)を使用するのに、非常に好適である。
【0004】
しかし、切削工具を除く他の適用分野、例えば、トライボシステム、外装コーティングなどでは低炭素鋼、アルミニウム、マグネシウム系合金などのような低強度、低硬度及び低弾性系数の特徴を有する基板(substrate)を使用するが、これらの素材上にこのようなセラミックス系耐磨耗コーティング材を適用するのは、コーティングの耐久性という点で現実的に問題があり、これにより優れた硬度を有しているにもかかわらず、適用分野及び範囲を拡大することができない。
【0005】
このような問題点は、セラミックス系ナノ薄膜が有する高い弾性系数によるものである。すなわち、硬度が高ければ弾性系数が高くなり、弾性系数が高ければコーティング材が破断されるまでの弾性変形量が短くなる。ところが、低硬度/低弾性系数の特徴を有する材料を基板として使用する場合、局所的な外部変形圧力が加えられると、10?以下のハード薄膜がこの外力を遮断するのは、卵殻の効果(egg shell effect)により現実的に難しくなり、基板は局所的な弾性的/塑性的な変形を避けられなくなる。この時、ハード薄膜が基板の局所的な弾性的/塑性的変形をある程度蓄積して薄膜自ら変形できなくなれば基板/コーティング材間の界面弾性特性(interfacial elastic properties)の不一致により薄膜は破壊される。したがって低硬度/低弾性系数基板にコーティングされるハード薄膜に求められる物性は、硬度を高めることも重要であるが、何よりも低い弾性系数を有するよう弾性特性を改善する必要があり、これを通じて薄膜の弾性変形量(elastic strain)を増加させることが、コーティングの耐久性を向上させる方法となりうる。
【0006】
薄膜物性のうち、硬度の場合においては、工具分野を除いて一般的なトライボシステムでは表面強度も2000Hv(20GPa)以上の硬度を要する場合は非常に稀である。コーティング材料として使われる酸化物または窒化物界のセラミックス薄膜の硬度は1500〜3000Hvで、炭化物またはほう化物系は、これより高い2000〜3000Hvの硬度を有する。これらのセラミックス系コーティング材は、たいてい酸素、窒素、炭化ガスなどの反応性ガスに反応し高温セラミックス化合物を形成する遷移金属(Ti、Zr、Mo、Cr、W、V、Alなど)をスパッタリングターゲット材として使用し、前記反応性ガスとアルゴンガスの混合ガスプラズマを利用した反応性PVD工程によって容易に製造できる。
【0007】
前記セラミックス系ハード薄膜は、低硬度、低弾性系数の素材を基板とする一般的なトライボシステム分野で使用する上で、その硬度においては劣らないが、その弾性系数においては、これよりもはるかに低い基板(substrate)の弾性系数値(例:アルミニウム合金70GPa、マグネシウム合金45GPa、鋼(steel)200GPa)に比べると高すぎる。ほとんどの高融点セラミックス(refractory ceramics)の弾性系数は400〜700GPaである。そのためセラミックス系ハード薄膜及びナノ構造薄膜は、低弾性系数の素材を基板として使用する場合、このような弾性特性の不一致によりその耐久性に問題がある。これにより、コーティングの耐久性の尺度として硬度よりは硬度と弾性系数の比(H/E)を使用するようになり、この値は破断されるまでのコーティング材の弾性変形量能力(elastic strain to failure capability)を示し、コーティング材の弾性回復能力(resilience)及び耐久性を意味する。
【0008】
このような問題点を改善するために、多くの研究がなされてきた。これらの研究のうち代表的な研究として、金属を基板とするナノ構造薄膜が挙げられる。一般的に金属基板の薄膜はCrメッキ(electroplating)などの場合からわかるように、金属基板との機械的物性の差、特に弾性特性の差が少ないため、薄膜の耐久性がセラミックス系薄膜に比べて優れている。すなわち、セラミックスが有していない長い弾性変形量(long elastic strain‐to‐failure)、さらには塑性変形を緩衝できる能力がセラミックスに比べて卓越しているためである。
【0009】
しかし、その硬度においてはセラミックス系に比べ、硬度が低すぎるために硬度の改善が必要であり、金属基板薄膜の硬度不足を改善する方法の一環としてA.LeylandとA.Matthewは、金属コーティング基板元素と相互不溶性を有する第2の元素を導入したコーティングシステムを使用することで、コーティング材のナノ構造化が可能であることを示している。このような薄膜組織をナノ構造化するということは、ホールペッチ効果(Hall Petch effect)による金属性コーティング材の硬度と耐久性を同時に向上させることができる効果をもたらす。
【0010】
このような金属薄膜のナノ構造化技術では、その独特な薄膜組成方法と気相蒸着法が有する急冷効果を利用する。すなわち、これらの薄膜を成す主要(main)元素間の固有の相互不溶性を有するようにコーティング組成システムを調整し、プラズマPVD蒸着時に薄膜内の高いquenching速度条件を利用するようになれば、置換型または侵入型の合金添加元素が薄膜基板金属に過飽和固溶できるようになる。この過飽和固溶体は短範囲相分離(short range phase separation)によるナノ結晶または非晶質相として形成されることで金属基板薄膜にナノ構造化を成し得る。
【0011】
具体的にこのようなコーティングシステムは、窒素が固溶されたCr‐NとMo‐Nを例として挙げることができる。クロム内の窒素の固溶量は1650〜1700℃から4.3at.%で、1000℃以下では至極小さい。PVD Cr‐Nコーティングを行う時、反応性ガスである窒素分圧の調節を通じてコーティング材内の窒素含有量がβ‐CrN化合物の化学量論的な含有量より少なく含有されるように制御すれば、クロム内の侵入型元素である窒素の濃度が低い場合、薄膜の構成相は過飽和の固溶体(α‐Cr)相になるか、これより高い場合、過飽和α‐Cr相とβ‐CrN相の2個の相に短範囲相分離が発生して、これらの生成相間の成長競争を通じて薄膜の構造はcolumnar構造からfeatureless構造として現われることで、窒素元素ドーピングによるナノ構造のCr‐N薄膜を得られる。これは既存の古典的なCrN薄膜と比べて微細構造の差による優れた機械的/化学的特性を示す。このfeatureless構造薄膜の硬度は、窒素の含有が不十分で過飽和されたα‐Cr相薄膜の硬度(12GPa以下)より高い最大15GPaの硬度値を示し、これは金属性基板膜内に増加した窒素過飽和固溶度によるナノ構造が促進されることで、硬度が上昇するものと言われている。またこのようなfeaturelessナノ構造薄膜は窒素が化学量論的な量だけ含有されたcolumnarβ‐CrN相薄膜(20〜25GPa)より、やや低い硬度水準を示すが、ボール衝撃(ball impact)試験結果の薄膜の耐久性は、意図する通り単一セラミックスβ‐CrN相薄膜より優れていることが示された。
【0012】
機械的な特性以外にもう一つのナノ構造化による重要な利得として、このようなナノ構造化になった窒素ドーピングCrN膜は欠陥が少ない緻密な構造として腐食チャンネルになりうる貫通欠陥(through‐coating permeable defect)が存在せず緻密であるために、腐食試験の結果、化学的耐久性が増加する利点を有していることが示された。一般的にこのように微細構造がナノ構造化になるか、非晶質構造化になる材料またはコーティング材が腐食チャンネルに作用される欠陥が極めて少ないか、無いものであり、緻密なために局所的に急速な腐食電波の原因になる腐食チャンネルを遮断でき、表面に均一であり予測可能な犠牲腐食遮断(uniform and predictable sacrificial corrosion protection)が可能であると言われている。
【0013】
以後このようなナノ構造コーティングシステムの設計において、これよりやや実現可能で安定したナノ構造薄膜製造方法とコーティングシステムの設計基準がA.LeylandとA.Matthewによって提案された。それは窒素に反応し窒化物が形成可能な遷移金属元素を基板元素にして、これらの窒化物形成可能元素(nitride forming metal element)に溶解されないか、極めて低い溶解度を有するようになり、また窒素と全く反応しないか、その性向が少ないいわゆる非窒化物形成(Non‐nitride forming element)元素を窒素元素とともに第3の合金元素として添加することを通じてさらに進歩したナノ構造薄膜を実現することができる体系的なコーティングシステム設計方案が提案された。
【0014】
これによれば窒化物形成可能元素(nitride forming metal element)の対象になる元素は、Group4A‐6A元素(Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W)と3B/4B(Al、Si)族に11個の元素があり、非窒化物形成(Non‐nitride forming element)元素は、Mg、Ca、Sc、Ni、Cu、Y、Ag、In、Sn、La、Au、Pbなど12個の元素がある。窒化物形成可能元素は、Al元素を除きその融点がすべて1000℃以上の高融点元素であり、その相対添加元素である非窒化物形成(non‐nitride forming element)元素はSc、Y、Au、NiとCu元素を除きすべて1000℃以下の低融点特性を示している。
【0015】
このような窒化物形成基板元素と非窒化物形成添加元素間のコーティングシステムはさまざまな組合せがあり得るが、ナノ構造薄膜を作るためには相互溶解されていないか、溶解度が極めて少ないコーティングシステムの組合せとして選択されなければならない。このような低い溶解度を有するためには基板元素と添加元素間の原子半径の差が14%以上で大きな差が開くか、選好格子構造(preferred crystallographic structure)が互いに相異する元素間の組合せを選択しなければならない。その例としてCr‐N‐Cu、Cr‐N‐Ag、Mo‐N‐Cu、Mo‐N‐Ag、Zr‐N‐Cuシステムが考えられた。
【0016】
薄膜内に置換型合金元素を添加することは、薄膜のナノ構造化側面で侵入型合金元素である窒素に依存するよりも非常に効率的な方法になるだけでなく、窒素と反応しない軟質の非窒化物形成元素の添加を通じて高いH/E指数を有し、薄膜の耐久性を進める効果がある。また、このような薄膜の耐久性を進める効果以外にも、軟質金属を添加するによって低摩擦機能を有するハード薄膜の製造が可能になった。
【0017】
Mo‐N‐Cuの場合、摩擦環境で低融点のMo‐Cu‐O低融点酸化物の生成によって高硬度/高耐久以外でも低摩擦の特性を有する薄膜として知られている。このような低融点/低摩擦酸化物を生成するメカニズムは摩擦化学反応を通じて得られた各酸化物の固有のイオン性ポテンシャル(ionic potential)値の差が大きい二つの特定の酸化物が出合えば、この2元複合酸化混合物は低融点特性を示し、これにより薄膜の摩擦の表面にはナノスケールの低摩擦film(tribo‐film)を形成し、薄膜は低摩擦の特性を発現することとなる。このような特性を有すると言われる低融点ダブル酸化物(double oxides)システムには、MoO3‐CuO以外にも多様な2元酸化物システム(binary oxide system)があると言われている。このように窒化物の形成が可能な基板元素にそれらと低い溶解度を有する置換型元素の添加に併せて、摩擦時の化学反応によって低融点binary酸化物を形成させる元素を添加することで、薄膜のナノ構造化を成し遂げ薄膜の機能を多機能化するのに非常に効率的な方法となる。
【0018】
しかし、現実的にこのような置換型元素を添加するためには、別個の第2の成分ターゲットソースが必要で、薄膜内の化学的組成比を再現性があるように制御するためには2個の成分ターゲット(dual target)に対する各々独立的で精密な電力制御が必要になるという煩わしさがある。また、二つの種類の元素間に融点差が大きく、相互溶解しようとしない特性のため、これらを均一な組成を有する単一合金ターゲットとして製造することは難しい。もし単一合金ターゲットの製造時に、凝固中に相分離現象による成分的なマクロまたはミクロ偏析が発生すれば、原子結合エネルギーが異なる各平衡構成相間の局所的なスパッタリングイールド(sputtering yield)の差を誘発し、薄膜の厚さによる元素濃度の分布が均一ではなくなり、膜構造の再現性及び均一性を保障できなくなる原因になる。
【0019】
よって、今後さらに進歩したナノ構造金属性ハード薄膜を具現するためには、窒素元素を除く少なくとも2以上の元素で構成された相互不溶性コーティングシステムが求められる。また、ハード薄膜に新しい機能、例えば低摩擦機能を具現するためには摩擦化学反応(tribo‐chemical reaction)を通じて低摩擦酸化物(low friction oxide)を形成できる成分の元素(Mo、V、Co、Ag、Cu、Ni)を薄膜内に付加的に添加しなければならず、これは今以上に複雑な多元の成分系コーティングシステムに進歩しなければならないことを意味する。従って、多機能のナノ構造ハード薄膜の再現性のある具現化のためには現実的に実行可能な多成分ナノ構造薄膜母物質組成及びその製造方法に関する新しい接近方法が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は上述したような問題点を解決するためのものであり、窒化物形成金属と非窒化物形成金属からなる不溶性合金系の化学的均一性及び膜構造の再現性を確保し、多様な要求特性のための多成分ナノ構造薄膜を効率的に形成することができ、複雑な多元成分系コーティングシステムを単一ターゲット制御を通じて具現化した多成分単一体のスパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することが目的である。
【0021】
さらに、本発明は前記ターゲットを利用した選択反応性スパッタリング(selective reactive sputtering)を通じて高硬度特性は勿論、高弾性、低摩擦などの多様な要求特性に合致するハード薄膜を形成できる多成分合金系ナノ構造薄膜の製造方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するための本発明の多成分単一体のスパッタリングターゲットは、窒素と反応して窒化物形成が可能な窒化物形成金属元素及び前記窒化物形成金属元素に対する高溶度がないか、あるいは低く、窒素と反応しない反応性が低い非窒化物形成金属元素からなり、非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金系(glass forming alloy system)を含むことで、前記窒化物形成金属元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Y、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金属元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含んで構成されてもよい。
【0023】
前記本発明のスパッタリングターゲットで、前記窒化物形成金属元素は40at%を超過して80at%以下の原子比率で含まれることが望ましい。さらに、前記窒化物形成金属元素は60at%以上80at%以下の原子比率で含まれるのが望ましい。
【0024】
前記スパッタリングターゲットは、摩擦化学反応を通じて低摩擦酸化物を形成できるMo、V、Co、Ag、Cu、Ni、Ti、Wから選択された少なくとも一つの低融点酸化物形成が可能な金属元素を含んで構成されてもよい。
【0025】
前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素は相互間の原子半径の差が14%以上であるか、結晶構造が相異するものとして選択されることが望ましいが、これは必須ではない。
【0026】
本発明のスパッタリングターゲット製造方法は、窒素と反応して窒化物形成が可能な窒化物形成金属元素及び前記窒化物形成金属元素に対する高溶度がないか、あるいは低く、窒素と反応しないか、反応性が低い非窒化物形成金属元素を非晶質または部分結晶化した非晶質形成合金系で形成することで、前記窒化物形成金属元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Y、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金属元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含む。
【0027】
前記スパッタリングターゲット製造方法で、前記スパッタリングターゲットは窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を含む合金をアトマイジングして、アトマイジング粉末を過冷液体温度区間で加熱及び加圧焼結してバルク化する方式で製造してもよい。
【0028】
さらに、前記スパッタリングターゲットは前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を溶融及び急速凝固させる直接鋳造方法を通じてバルク化して製造してもよく、前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を高周波コールドクルーシブル(induction‐coldcrucible)を利用した比較的低い冷却速度の急速凝固を通じて結晶化して微細結晶を有する鋳造組織にし、バルク化する方式で製造してもよい。
【0029】
並びに、本発明の多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法は、窒素と反応して窒化物を形成する窒化物形成金属元素及び窒素と反応しない非窒化物形成金属元素を非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金系のターゲットとし、前記ターゲットを窒素及び不活性気体を含む混合気体雰囲気で選択反応性スパッタリングを施し、基板の表面に薄膜を形成することで、前記窒化物形成金属元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Y、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金属元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含む。
【0030】
前記本発明のナノ構造薄膜製造方法において、前記反応性スパッタリングのための混合気体は酸素及び酸化物気体、炭素及び炭化物気体のうち少なくとも一つの反応性気体をさらに含んでもよい。
【0031】
場合により、前記基板と反応性スパッタリングによる薄膜間に非反応性スパッタリングによる非晶質のバッファー層を形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0032】
上述する本発明において、相互不溶性の窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を利用して多様な特性を有する多成分合金系であり単一体からなるスパッタリングターゲットを製造可能にすることで、反応性スパッタリング過程でターゲット内の個別成分間スパッタリングイールドの差により薄膜組成内部でターゲット成分元素濃度が不均一になることを防止し、ナノ結晶相を薄膜内に合成及び分布させるための窒素元素の分布を均一にし、安定した均一のナノ構造薄膜を製造してもよい。
【0033】
また、本発明では、複雑な多元成分系コーティングシステムを単一ターゲット制御を通じて具現化し硬度だけでなく弾性、摩擦特性など多様な要求特性に合致する多目的のナノ構造薄膜を経済的で実効性の高い方法で製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるスパッタリングターゲットの母物質で製造した100?以下の粉末の形状と粉末焼結体の微細組織
【図2】本発明によるスパッタリングターゲットの母物質で製造した100?以下の粉末の形状と粉末焼結体の微細組織
【図3】実施例組成3に対し、スパッタリング後にイオンエッチングされたエリアのターゲット表面のSEM写真など
【図4】実施例組成3に対し、スパッタリング後にイオンエッチングされたエリアのターゲット表面の後方散乱電子(BSE)写真など
【図5】実施例組成2に対してアトマイズされた粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析器で分析した結果など
【図6】実施例組成3に対してアトマイズされた粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析器で分析した結果など
【図7】実施例組成5に対してアトマイズされた粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析器で分析した結果など
【図8】実施例組成12に対してアトマイズされた粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析器で分析した結果など
【図9】実施例組成14に対してアトマイズされた粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析器で分析した結果など
【図10】実施例組成15に対してアトマイズされた粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析器で分析した結果など
【図11】実施例組成の反応性スパッタリング膜表面(top surface)の後方散乱電子(BSE)写真
【図12】実施例組成の反応性スパッタリング膜表面(top surface)の後方散乱電子(BSE)写真
【図13】シリコーン基板上に成膜されたコーティング部の破断面FE‐SEM写真
【図14】コーティング部のTEM低倍率の写真など
【図15】コーティング部のTEM高倍率の写真など
【図16】図示された非晶質層エリアと質下層エリアのTEM SADパターン写真
【図17】図示された非晶質層エリアと質下層エリアのTEM SADパターン写真
【図18】実施例組成による反応性スパッタリング層の硬度を図示したグラフなど
【図19】実施例組成による反応性スパッタリング層の弾性係数を図示したグラフなど
【図20】非反応性スパッタリング薄膜の高分解能TEM写真など
【図21】直流プラズマ電源のパワー源によって得られた反応性スパッタリング薄膜の高分解能TEM写真など
【図22】直流プラズマ電源のパワー源によって得られた反応性スパッタリング薄膜の高分解能TEM写真など
【図23】TEM写真上のコーティング層表面のTEM SADパターン分析結果
【図24】TEM写真上のコーティング層表面のTEM SADパターン分析結果
【図25】TEM写真上のコーティング層表面のTEM SADパターン分析結果
【図26】TEM写真上のコーティング層表面のTEM SADパターン分析結果
【図27】実施例組成3の蒸着条件によるXRD分析とナノインデンテーション測定結果
【図28】実施例組成3の蒸着条件によるXRD分析とナノインデンテーション測定結果
【図29】蒸着時間を4時間として成膜した厚膜の破断面をFE‐SEMで撮影した写真
【図30】GDOES(glow discharge optical emission spectroscopy)を利用して厚膜の表面(top surface)から基板部まで、窒素元素を含んだ各ターゲット成分元素の厚さ別濃度(depth profile)の測定結果
【発明を実施するための形態】
【0035】
上述した本発明の目的、特徴及び長所は添付の図面に係る次の実施例でさらに明らかになるであろう。
【0036】
以下の特定の構造ないし機能的な説明は、単に本発明の概念による実施例を説明するための目的として例示されたものであり、本発明の概念による実施例は、多様な形態で実施が可能であり、本明細書または出願において説明された実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0037】
本発明の概念による実施例は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定の実施例は図面に例示し、本明細書または出願において詳細に説明する。しかし、これは本発明の概念による実施例を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解されなければならない。
【0038】
第1及び/または第2などの用語は、多様な構成要素を説明するために使われるが、前記構成要素は前記用語に限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的であり、例えば本発明の概念による権利範囲から逸脱しない上で、 第1構成要素は、第2構成要素と名づけることができ、同じく、第2構成要素は、第1構成要素としても名づけることができる。
【0039】
一構成要素が他の構成要素に「繋がれて」いる、「接続されて」いると言及している場合、その他の構成要素に直接繋がれている、または接続されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在し得ると理解されなければならない。一方、一構成要素が他の構成要素に「直接繋がれて」いる、または「直接接続されて」いると言及している場合、中間に他の構成要素は存在しないと理解されなければならない。構成要素との関係を説明するための他の表現、すなわち「〜間に」と「まさに〜間に」または「〜に接する」と「〜に直接接する」などの表現も同様に解釈されなければならない。
【0040】
本明細書で使用する用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図はない。単数の表現は、文脈上明白に別の意味がない限り複数としての表現も含む。本明細書で「含む」または「有する」などの用語は示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないと理解されなければならない。
【0041】
特に定義されない限り、技術的、科学的な用語を含み、ここで使われるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解される意味と同一である。一般的に使われる辞書に定義されるものと同じ用語は関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味があるものとして解釈されなければならならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的で過度に形式的な意味として解釈されない。
【0042】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を説明することで、本発明を詳しく説明する。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。
【0043】
本発明のスパッタリングターゲットは、窒化物形成金属(活性金属)と非窒化物形成金属(軟質金属)を含む非晶質構造または部分結晶化された構造を有する多成分の単一合金ターゲット(single alloyed target)で、例えば、摩擦環境で使われる駆動素材部品または工具部品の表面に高硬度特性だけでなく、低摩擦の機能を有する保護薄膜(protective hard coatings)をスパッタリング工程によって成膜するための用途を含めて多機能のナノ構造薄膜製造に使用してもよい。
【0044】
本発明において、多成分スパッタリングターゲット合金組成は1mm以上の非晶質形成能力(GFA:glass forming ability)を有するバルク非晶質合金系(bulk amorphous alloy system)を基盤として構成してもよい。前記バルク非晶質合金は、学術的に1mm以上の厚さを非晶質鋳造することができる合金のことを言う。
【0045】
前記スパッタリングターゲットは、多成分元素で構成される多成分ターゲット合金母物質をバルク非晶質合金が有している非晶質形成能力を利用し、ガス噴霧粉末製造工程などのような急速凝固製造方法をはじめとする多様な方法を通じて非晶質構造を有する合金粉末を製造し、バルク非晶質合金が有する過冷液体温度区間での粘性流動特性を利用して非晶質合金粉末を緻密化成形する方法で製造してもよい。
【0046】
前記スパッタリングターゲットを利用すれば、減圧のアルゴンと窒素の混合ガス雰囲気下で選択反応性スパッタリングを通じて成膜する過程において、ターゲットに含有した相互不溶性の関係を有する活性金属と軟質金属のうち、活性金属は窒素と反応し硬化窒素化合物として成膜に加わり、軟質金属はそれ自体が成膜に加わることで2以上の窒化物相と軟質金属相がナノサイズで複合化された多成分多機能性ナノ複合薄膜を成すようになる。([Active metal(AM)]N[Soft metal(SM)])。
【0047】
前記の通り本発明のスパッタリングターゲットは、成分元素の偏析がなく、化学組成的均質性(chemical homogeneity)を極大化することで成分間のスパッタリングイールドの差がなく均一のナノ構造薄膜を形成できる。また、本発明はターゲット物質の化学的複雑性(chemical complexibility)を多様化でき、高い構造的複雑性(structural complexity)と緻密な原子充填率を有する高密度ナノ構造薄膜を具現する方法を提供できる。また、本発明は選択反応性スパッタリング工程を通じて単一ターゲットで活性金属窒化物(AMeN)と軟質金属(SMe)が混合した低摩擦高硬度特性を有するナノ複合コーティング薄膜を提供することができ、今後の体系的な低摩擦高硬度ナノ薄膜設計及び成膜技術開発に適用することができる新しいコーティング方法を提供できる。
【0048】
下記の表1は本発明によるスパッタリングターゲット母物質として非晶質形成合金組成物によるスパッタリング及び反応性スパッタリング薄膜の物理的特性を示したもので、本発明のスパッタリングターゲットに対する実施例1から16とこれに対する比較例1から3が示されている。以下の説明において各実施例は表1に記載したものを指す。
【表1】

[実験]
【0049】
本発明の実施例においてターゲット母物質として使用した合金は、Zr、Al、Ti、Nb、Cr、Mo、Feなどの窒化物形成元素が原子%の比率で40%を超過して80%以下の範囲まで含まれ、1mm以上の非晶質形成能を有する組成比で構成された合金を使用した。これら合金の成分構成は窒化物形成元素(活性金属)と非窒化物形成元素(軟質金属)から成る。
【0050】
前記合金の組成比で計量した多成分の原料材料混合体を真空アーク溶解装置によって合金化溶解して合金インゴット(ingot)形態にした。この合金インゴットは、アルゴンガス噴霧法(gas atomization)により高周波加熱装置を通じて再溶解された後、アルゴン不活性雰囲気で同一のガスで噴霧して非晶質粉末にした。
【0051】
生成された非晶質粉末は150メッシュスクリーン装置を利用して100μm以下の粉末に分類された。この100μm以下の粉末を内径3インチグラパイトモールドに合金組成別に理論比重を考慮して焼結体が6mmになる重さを装入し、パルス通電加圧焼結器を利用して合金組成別にそれぞれ他の非晶質の過冷液体温度区間で加圧による粉末緻密化過程(densification)を通じてバルク型の直径76.2mm、厚さ6mm原版型スパッタリングターゲットとして生成された。パルス通電焼結時、粉体と成形モールドに加えられる焼結圧力は40〜70MPaとした。
【0052】
図1及び図2は生成された100μm以下の粉末の形状と粉末焼結体の微細組織を示す。粉末焼結体は球形非晶質粉末が変形して相対密度が99%以上で緻密な微細構造を有し、粉末間の境界面である粉末粒子の境界が存在する組織として非晶質粉末を過冷液体温度区間で塑性変形させて緻密化させた典型的な非晶質粉末成形組織を示す。
【0053】
Cu Kα X線回折分析機で分析した結果、100μm以下の粉末は全て非晶質としてあらわれ、これは実験に使われた合金が1mm以上の高い非晶質形成能を有しているからである。焼結体の場合粉末と同一の非晶質であることもあるが、合金組成のうち、あるものは粉末焼結中に部分結晶化された。これは粉末焼結過程で焼結温度サイクルが非晶質合金の過冷液体温度区間の温度を越えたり、その温度区間で維持時間を守ることができなかった場合に発生する。このような通電加圧焼結方法は短時間の加熱と冷却サイクルの制御が伝統的なホットプレス(hot press furnace)に比べて容易で短時間の熱サイクルが求められる非晶質合金の焼結方法で度々使用されていた。
【0054】
しかし、一般的に粉末通電抵抗加熱により昇温時に到達する成形モールド内部の粉体温度は、非晶質金属のような導電性粉末の場合、モールド内粉体の中心で電流が集中する傾向があり、その粉体中心で温度が最大になって粉体外径方向に温度が低く分布する。現実的に通電加圧時、焼結温度の制御に使われる温度センサー(Kタイプ熱電対、本研究)は粉体に直接接触することが困難であり、低い温度エリアであるモールドの外壁厚さの中心に位置することで、モールドの温度のみを測定し粉体の温度を間接的に予測するしかない。したがって正確な焼結温度及び時間の制御が難しいことがこのような部分結晶化における原因となりうる。必要な場合、各合金の過冷液体温度区間によって正確で効率的な温度測定方法で改善し、温度サイクルを最適化することで粉末の非晶質構造をそのまま維持したバルク型の粉末性形体を製造することが可能になる。
【0055】
このような非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金粉末(glass forming alloy powder)焼結体がスパッタリングターゲット母物質で使用されるようになり、直流マグネトロンプラズマ電源を利用した平凡な非反応性スパッタリング(normal、non‐reactive sputtering)と反応性スパッタリング(reactive sputtering)工程を通じて薄膜を得た。非反応性スパッタリングの場合、蒸着条件はターゲットと基板表面との距離は70mmで、チャンバー圧力は5mTorr、アルゴンガス流量速度は36sccmであり、反応性スパッタリングの場合ターゲットと基板表面との距離は50mmで、同一圧力でアルゴンガス流量速度は30sccm、反応性窒素ガスは6sccmでアルゴン/窒素ガス流量速度比を5:1の比率とした。直流電力は300Wで固定し、基板は別の加熱装置によって加熱しなかった。得られた薄膜の評価のために薄膜の硬度及び弾性係数はナノインデンテイション方法で測定され、薄膜の構造及び結晶性の確認はX線回折分析機、FE‐SEM、HR‐TEMによって行われた。
【0056】
図3及び図4は実施例組成3をスパッタリング後にイオンエッチングされたエリアのターゲット表面のSEM及び後方散乱電子(BSE)写真である。2次電子(secondary electron)のイメージではターゲットの表面は非常に平坦な形でスパッタリングが均一に起きたことを意味する。一方、同一エリアの後方散乱電子写真は内部の粒子境界面が示されており、これは図1及び図2の焼結体組織写真と同一の構造を示すということが分かる。よって、この焼結体の場合において、非晶質相以外にスパッタリング過程で新しい相が出現せず、粒子境界面と粒子内の間のスパッタリング 深さ(sputtering depth)の差がなく、ターゲット表面の全般にわたり均一のスパッタリングイールドが起きたということを反証する。
[非反応性スパッタリング実験]
【0057】
図3から図10は実施例組成2、3、5、12、14、15の合金をアトマイズした粉末、焼結したスパッタリングターゲットと非反応性スパッタリング及び反応性スパッタリング工程によって蒸着した薄膜の結晶性をX線回折分析機で分析した結果を示す。下の表2に実施例組成による反応性スパッタリング薄膜のdiffuse bragg angleを示した。
【表2】

Reference
‐Wavelength:Cu‐Ka(ave.)1.54184
‐ZrN:Natl.Bur.Stand. (U.S.)Monogr.25,21、136(1984)
‐TiN:Calculated from ICSD using POWD‐12++、(1997)
Schoenberg.N.,Acta Chem. Scand.,8,213(1954)
【0058】
非晶質合金粉末はすべて非晶質である。アルゴン不活性ガスのみを利用した非反応性スパッタリング薄膜も全て非晶質として現われた。また広くなったブラッグピーク(diffuse bragg peak)の位置(2θ値)が母物質である当該非晶質粉末の位置と類似する。すなわち非晶質粉末のブラッグピークの位置は、合金の組成により少しずつ異なりその合金物質にあたる非反応性スパッタリング薄膜の非晶質薄膜のdiffuseブラッグピークの位置は当該母物質粉末のそれと同一の様相である。これは母物質である非晶質合金の組成と構造が非反応性スパッタリング過程を通じて薄膜内でほとんど コングルーエント転写 (congruent transfer)されたことを意味する。
【0059】
A.L.Thomannの研究によると、結晶化したZr52TiAl11Cu21Ni13非晶質形成合金(glass‐forming alloy)ターゲット母物質を使用しRFマグネトロン非反応性スパッタリングによって蒸着した薄膜は、母物質の組成と酷似するだけでなく、合金が有する本質的な特性(nature)すなわち非晶質を形成しようとする能力に起因し、薄膜は非晶質で形成されることが可能であるという結果を示している。本実施例での結果も上述の先行研究と類似の結果を示していると言える。しかし、非晶質薄膜で形成されるという結果が、必ずしもターゲット母物質の特性である非晶質を形成しようとする能力が高いからというだけでは考え難い。一般的にスパッタリングによる薄膜合成時、10C/sec以上の非常に速い冷却速度が具現されると言われている。また1mm以上の非晶質形成能を有する非晶質合金は10C/sec以上の冷却速度なら非平衡相である非晶質相を形成するのに十分な形成条件となる。したがってこのような非晶質形成合金の臨界冷却速度をはるかにしのぐスパッタリング蒸着工程の速い冷却速度条件(condition)は、非晶質形成能力、すなわち平衡相よりは非平衡性になろうとする性質を有する合金をターゲット母物質として使う場合、シナジー効果によってさらに容易に非晶質薄膜として形成できると考えられる。結局これは非晶質形成能力を有する合金をターゲット母物質で使用し、スパッタリングによって非晶質薄膜を合成することにおいてターゲットの組織及び構成相が必ずしも非晶質である必要がないということを意味する。
[反応性スパッタリング実験]
【0060】
図3から図10に図示されたアルゴン+窒素混合ガスによる反応性スパッタリング薄膜のX線回折分析(Cu Kα)結果から、非反応性スパッタリング薄膜及び非晶質粉末の場合と対比しこの反応性スパッタリング膜は分析可能な(resolvable)結晶ピークを有しており明らかな結晶性を示している。結晶ピークの2θ位置を分析した結果から、これらの結晶ピークは4種組成すべてが同一のZrNあるいはTiN結晶を有していることが分かり、測定された主ピーク(peak)の情報をScherrer equationに適用することで、この結晶の大きさは30nm未満のナノ結晶質であることが分かる。従って非反応性スパッタリング薄膜とは違い反応性スパッタリング薄膜はナノ結晶性を示す。このようなXRD結果は結晶化の原因がターゲット母物質の構成成分間の反応によって金属間化合物(intermetallic compound)の生成に起因した一般的な非晶質結晶化挙動とはその連関性がないという事実を示している。すなわち具体的な結晶化の原因は母物質合金の主元素であるジルコニウム(Zr,)、チタン(Ti)などの窒化物形成元素と反応性ガス元素である窒素元素との窒化反応(nitriding)によってのみ起因するものと判断できる。さらには従来の古典的なZrNに比べてナノサイズで制限された結晶が薄膜内に存在しているということが非常に重要な結果と言える。
【0061】
図11及び図12に実施例組成の反応性スパッタリング薄膜の表面をFE‐SEMを利用して観察した後方散乱電子写真で示した。成膜した窒化物薄膜の表面でミクロ単位の偏析などは観察されず、全面にかけて均一のコーティング層を形成していることが分かる。
[コーティング部破断面SEM観察及び透過電子顕微鏡分析]
【0062】
図13はシリコーン基板の上に成膜されたコーティング部の破断面FE‐SEM写真である。成膜の順序は、基板の上に非反応性スパッタリング工程(ターゲット/基板間の距離:7cm、power:250W、蒸着時間10分)によって非晶質薄膜が形成され、続いて窒素ガス投入による反応性スパッタリング(ターゲット/基板間距離:5cm、power:300W、蒸着時間:20分)により窒化薄膜層の成膜工程が行われた。この時使われた非晶質合金組成は実施例5(Zr63Al7.5MoNiCu12.5Ag)であった。中問層(intermediate layer)として非反応性スパッタリングによる蒸着した非晶質薄膜層を中心に上部の窒化層さらには下部のシリコーン基板層間の二つの種類の層間界面をよく観察すると、割れ目やボイドなしに平坦で連続的な界面を形成していることが分かる。
【0063】
一方、反応性スパッタリング層と非反応性スパッタリング層の破断様相は克明な対比を成す。すなわち非晶質薄膜層は母物質バルク非晶質の固有の破壊モードである 剪断バンド (shear band)の電波によるVein like patternまたはstriation like pattern破壊様相と同一の様相を示す一方、反応性スパッタリング層は硬度が高い脆性破壊様相を示す。これにより二つの層間の構造や機械的特性は非常に別の違いを有しているということが分かる。
【0064】
高分解能透過電子分析のために蒸着試料を製作した。蒸着条件は非反応性及び反応性蒸着時間を1/2に減らしハイブリッド薄膜層の合計の厚さをSEM破断面観察試験片の大きさの半分に減らし、それ以外の他の蒸着条件は同様に行った。試料は機械的研磨とイオンミーリングの過程を経てTEM用試験片で製作された。
【0065】
図14及び図15はコーティング部のTEM低倍率と高倍率の写真である。低倍率写真での各界面は破断面SEM写真で観察されたように割れ目やボイドがなく、連続的で平坦な界面である。ここで非晶質層は全般的に対比濃度(contrast)の差を示さず、均一な濃度を示す反面、反応性スパッタリング層は薄膜の成長方向に不連続的に延びたまだら模様の相が存在することが対比濃度の差を通じて分かる。このような対比濃度の濃い相は高倍率写真から、格子柄の形成をするに伴い5〜20nmの大きさを有するナノ結晶であることを示すようになる。
【0066】
非反応性及び反応性などの各エリアで選択されたエリアで施された電子回折パターン(selected area electron diffraction pattern)を調査した結果は、この両エリアの結晶性に関する判定をより明確なものにする(図16及び図17参照)。すなわち、非反応性スパッタリングエリアは、拡張した(diffuseまたはbroad)ハロ(halo)電子回折パターンを示し、反応性エリアは微かな点が現われることからナノサイズの結晶性を示している。また高配率TEM写真から非反応性スパッタリング層内は全般的に非晶質構造による規則的ではない原子配列様相を確認することができ、このような原子配列は反応性スパッタリング層内に一部エリアまで連続的に拡張される様相を示している。これはSEM破断面写真または低倍率TEM写真などの巨視的な観察を通じて知り得なかった結果である。また、スパッタリング層内のナノ結晶は非晶質基板に囲まれ、各結晶は不連続的に断絶した(isolated)形態としてナノサイズで存在するほとんどの非晶質相が浸出する構造(fully percolated structure)を示している。
【0067】
従って、非反応性及び反応性スパッタリング薄膜のX線回折分析、これに併せてこれらの薄膜で構成されたハイブリッドコーティング部のFE‐SEM観察及び高分解能TEM分析を通じて同一の多成分の非晶質形成合金ターゲット母物質を使って、スパッタリング工程上の反応性窒素ガス投入の如何によって生成される薄膜の構造を非晶質金属素材でナノ窒化物象が混入された非晶質基板複合素材で制御することができ、これを通じて相異する物理的特性を有する二つの薄膜のハイブリッド化を具現することができるという事実が本実験を通じて証明された。
【0068】
特に、薄膜の硬度において、表1の実施例で示したように非反応性スパッタリング工程によって作られた非晶質薄膜は10GPa以下の低い硬度を示す一方で、反応性窒素ガスへの混入による反応性スパッタリング薄膜の場合、窒化物形成元素の分率の増加、すなわちそれによる軟質金属分率の減少によって15〜27GPaの高く多様な硬度を示す。これは比較例で示した純元素ターゲットを使ったTiN、ZrNの硬度値に近接する結果として、その原因はスパッタリング蒸着過程で母物質内の窒素反応物形性元素とこれらと相互反応性(inter‐reactivity)を有する窒素ガス元素が反応し非晶質基板内にナノ硬質相が形成され微細組職がナノ構造に形成されることを通じて、結晶粒微細化によるHall Petch効果に起因すると判断できる。
【0069】
一方弾性係数において、非晶質薄膜と比べて反応性スパッタリングの薄膜は硬度上昇及びナノ窒素化合物の混入により200GPa以上の高い弾性係数特性を示すが、比較例で提示したTiN(435GPa)とZrN(328GPa)と比べると低い弾性係数(164〜268GPa)の傾向を示している(図18及び図19参照)。このような比較例で提示したTi、Zrなどの純元素ターゲットを使った場合と比べて、これらの窒化物形成元素に不溶性関系を有する非窒化物生成元素である軟質金属の分率がターゲット内に20〜60%まで含有された多成分ターゲット母物質を使うことで、ハード薄膜内に低弾性係数を有する非晶質金属相と硬質のセラミックス窒化物相をナノ複合化することで高いH/E指数(0.1)特性を表すこととなる。
[直流パワー量による反応性スパッタリング薄膜特性に与える影響の調査]
【0070】
図20から図22は非反応性スパッタリング薄膜と直流プラズマ電源のパワー量によって得られた、反応性スパッタリング薄膜の高分解能TEM写真である。非反応性スパッタリングの場合ターゲットの表面と基板表面間の距離は70mmで、パワーは250W、反応性スパッタリングの場合、距離は50mm、8:1のアルゴン/窒素混合ガス比でパワーが250Wと350Wの条件下で蒸着した。使用された組成は表1の実施例組成のうち3(Zr62.5Al10MoCu22.5)の組成の合金を使用した。
【0071】
非反応性の場合、不規則な原子配列を有する非晶質組織を示す一方で、反応性スパッタリングの場合原子配列が規則的なエリアが観察される。また原子が規則的に配列されたナノ結晶エリアの大きさとその分散状態は直流電源のパワーが350Wで増加する場合、結晶相がさらに微細になり結晶相の分率がさらに増加することもわかる。すなわち250Wの場合、非晶質エリアと結晶質エリアが確実に区分され二つの相の大きさも類似する。しかし350Wの場合、非晶質エリアは250Wの場合より急激に減少して、結晶質エリアが大部分を占める。
【0072】
このような結果はパワーが増加するにつれ、蒸着温度が上昇し、これは窒化反応をさらに促進させる条件になるという事実から説明できる。ここで注目すべき点は、このようなパワー増加による結晶化が促進される環境がさらに加速化されるにもかかわらず、結晶の成長はこれ以上進行されないだけでなく、むしろさらに小さな結晶が出現するという事実である。これは巨視的に非晶質エリアの分率が小さくなりそれによる結晶質エリアが増える現象と関連している。
【0073】
しかしこのような結晶化エリアの増加現象は、成分元素の中長範囲拡散によって結晶の成長を通じて進行されるのではなく、5nm未満の短範囲拡散によって非晶質エリアの分率が小くなり、その分結晶化エリアの分率が増加することを示す。このような非晶質エリアで結晶化を主導するZrとNの原子が長範囲で拡散移動が難しくなる現象は、ナノ結晶の間に位置した粒界相(inter phase)エリアである非晶質基板相が有する原子配列上の独特な特徴、すなわち互いに原子半径の大きさが異なり、その差が12%以上で非常に大きい多成分の原子が無秩序に充填(random atomic packing)されることによって現われる多成分原子の非常に高い層充填効率(packing efficiency、density)に起因すると思われる。また10−8C/sec水準の速い冷却速度を有するスパッタリング過程を通じて反応性気体相元素で、薄膜構成元素のうち一番小さな原子の大きさを有する元素である窒素原子は、高い原子充填効率を有する非晶質基板相に容易に過飽化凝縮されるようになり、窒素添加元素が追加された非晶質基板相はより一層小さなfree volume値を有するようになる。これは原子充填率がさらに高くなるようになる結果を招き、窒化反応のための窒素原子の中長範囲拡散移動はさらに難しくなる。
【0074】
図23から図26、図20から図22では、観察された薄膜のSADパターン分析結果を示している。非反応性スパッタリング場合は非晶質構造が有する典型的なdiffuseハロパターンが示され、反応性スパッタリングの場合は明らかなリングパターンになるにつれ窒化反応による結晶化が発生したことが分かる。また直流電源のパワーが350Wで増加するにつれZrNリングパターンが明確に観察されることが確認された。
【0075】
図27及び図28に示した直流パワーによるXRD回折パターンの分析結果から、反応性スパッタリングの場合、直流パワーが増加するにつれZrN相の結晶質ピークが増加することが確認され、これは図23から図26のTEM SADパターンの分析結果と一致する傾向にある。また反応性スパッタリングの場合、非反応性スパッタリング非晶質薄膜に比べて硬度と弾性系数が大きく増加した。(非晶質膜:H=7GPa、E=119,250W 質化膜:H=20.6GPa、E=252.7、350W質化膜:H=26.3GPa、E=267.7,)またH/E値は非晶質膜が0.06である一方、反応性スパッタリング膜は0.1の水準を示している。
【0076】
以上のスパッタリング蒸着条件による蒸着膜の構造と結晶化挙動を調査した結果をまとめると、窒素ガス反応性スパッタリングによってナノサイズのZrN結晶が非晶質基板相に混入され、ナノ窒化物結晶相と非晶質が混在したナノ構造複合体薄膜を得る。また反応性スパッタリングシプラズマ電源のパワーが250Wから350Wと高くなるにつれ、これらナノサイズの窒化物結晶相の分率がさらに増加するようになり、これらを通じて0.1の高いH/E値を有し薄膜の硬度は非晶質膜の硬度に3〜4倍高くなるという結果を得た。
[厚膜成膜及びGDOES分析による成分元素のdepth profile検証]
【0077】
本発明では実施例組成3(Zr62.5Al10MoCu22.5)の多成分ターゲット母物質を利用して反応性スパッタリング工程を通じて10μm以上の厚さで厚膜を成長させた。厚膜の下地層は同一のターゲットを利用して非反応性スパッタリングを通じて非晶質薄膜にした。図29は蒸着時間を4時間として成膜した厚膜の破断面をFE‐SEMで撮影した写真である。厚膜の表面硬度は薄膜の硬度(22GPa)より少し低い20GPaを示した。GDOES(glow discharge optical emission spectroscopy)を利用して厚膜の表面(top surface)から基板部まで窒素元素を含んだ各ターゲット成分元素の厚さ別濃度(depth profile)を測定し、その結果を図30に示した。
【0078】
厚膜の表面部は約3μmの深さまで窒素元素の濃度が高く、ターゲット元素の濃度が低くなった。その後深さが深くなるにつれ、先に成膜した層の構成元素は比較的安定して均一の各構成元素の濃度分布を示している。窒素化合物形成元素であるZr、Alは深さが深くなるにつれ非常に少ない量ではあるがその濃度が連続的に高くなる濃度勾配を見せる傾向があり、窒素元素の濃度はそれと反比例して低くなる傾向を見せる。これは10以上の厚さを有する厚膜(thick film)を成膜する過程でイオン衝突に長時間露出されたことによって、蒸着温度が増加することに起因するものであり、10μm以下の厚さの薄い薄膜形成時に現われる現象ではない。
【0079】
しかし、各元素の増加したり減少した量は最大3at%の水準で非常に微々たる量であり、全般的に各元素は膜の厚さによって平坦で安定した濃度(steady state concentration)プロファイルが現れた。この均質濃度区域に平均窒素の濃度は約32at%の水準を見せる。深さが15μmくらいに到逹すると、窒素元素の濃度は急激に低下し、他の成分の濃度はその反対に急激に増加する不連続的な濃度プロファイルが現われることにより、この位置から下地層として非晶質中間層が始まり、反応性スパッタリング層が終わる地点であることが分かる。またこの中間層内には窒素元素が窒化層に比べて非常に低い濃度を示しているが7〜8at%の水準で無視できる程度の窒素濃度ではない。すなわちこのエリアが非反応性スパッタリングによって成膜された中間バッファ層にもかかわらず、ある程度の窒素を含んでいるというのは、やはり蒸着時間が厚膜の厚さに成長させるために4時間という長時間内で成膜がイオン衝突過程に露出することとなり、このため温度が上昇したことにより、窒素元素が非窒化層内に拡散した可能性が非常に高い。
【0080】
一般的に実際の現場でこのような厚膜を形成させる必要性は非常に少ない。本実験はこのような厚膜成長過程を通じて得られた膜に成分元素の濃度勾配を調査することを通じて間接的に薄膜内の濃度勾配の安全性及び再現性を評価しようと実行された。このような厚膜の厚さでの成膜とこの膜に対するGDOES分析結果から非晶質形成合金を母物質で利用して非常に安定的な濃度を有するハード薄膜の成膜が可能だという結論を得られる。
【0081】
下表3に元素材粉末、焼結されたスパッタリングターゲット、非反応性薄膜及び反応性薄膜層の定量的組成比を調査するためにEPMAによって偏析した結果を示した。元素材粉末及びターゲットは初期設計した合金組成と1at%未満の誤差範囲を示し、非反応性スパッタリング膜の場合粉末/ターゲット組成とほぼ酷似する組成を示した。また反応性スパッタリング膜の場合においては、窒素が38at%水準で含まれていて、それによってターゲット成分元素の原子分率が低くなるようになる。窒素元素を検出せずに4個のターゲット成分元のみを検出した結果をカッコ内に表記した。ターゲット成分間の原子比はターゲット元素材の成分と僅差を示していることが分かる。したがってEPMAとGDOES結果から多成分非晶質形成合金系の単一ターゲットを利用して反応性スパッタリング膜の組成は多成分ターゲット合金組成とほぼ類似する均一の濃度分布を示していることが分かる。
【表3】

反応性スパッタリング厚膜の窒素元素を除いた元素材成分の成分濃度比
【0082】
以上で説明した本発明は前述した実施例及び添付された図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内でさまざまな置き換え、変形及び変更が可能であることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明白である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
前記のような本発明のスパッタリングターゲットは成分元素の偏析がなく、化学組成的均質性(chemical homogeneity)を極大化することで成分間のスパッタリングイールドの差がなく、均一のナノ構造薄膜を形成することができる。また、本発明はターゲット物質の化学的複雑性(chemical
complexibility)を多様化し、高い構造的複雑性(structural complexity)と緻密な原子充填率を有する高密度ナノ構造薄膜を具現する方法を提供する。また、本発明は選択反応性スパッタリング工程を通じて単一ターゲットで活性金属窒化物(AMeN)と軟質金属(SMe)が混合した低摩擦高硬度特性を有するナノ複合コーティング薄膜を提供することができ、今後の体系的な低摩擦高硬度ナノ薄膜設計及び成膜技術開発に適用できる新しいコーティング方法を提供できる。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物形成金属元素及び前記窒化物形成金属元素に対する高溶度がないか低く、窒素と反応しないか反応性が低い非窒化物形成金属元素の非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金系を含み、前記窒化物形成金属元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Y、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金属元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含むことを特徴とする多成分単一体のスパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記窒化物形成金属元素を40at%超過及び80at%以下の原子比率で含むことを特徴とした請求項1に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記窒化物形成金属元素を60at%以上及び80at%以下の原子比率で含むことを特徴とした請求項2に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
摩擦化学反応を通じて低摩擦酸化物を形成することができるMo、V、Co、Ag、Cu、Ni、Ti、Wから選択された少なくとも一つの低融点酸化物形成が可能な金属元素を含むことを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素は相互間の原子半径の差が14%以上か結晶構造が相異なっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
窒化物形成金属元素及び前記窒化物形成金属元素に対する高溶度がないか低く、窒素と反応しないか反応性が低い非窒化物形成金属元素を、非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金系で形成し、前記窒化物形成金属元素はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Y、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金属元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含むことを特徴とする多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項7】
前記窒化物形成金属元素を40at%超過及び80at%以下の原子比率に含有させることを特徴とした請求項6に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項8】
前記窒化物形成金属元素を60at%以上及び80at%以下の原子比率に含有させることを特徴とした請求項7に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項9】
摩擦化学反応を通じて低摩擦酸化物の形成が可能なMo、V、Co、Ag、Cu、Niから選択された少なくとも一つの酸化物形成金属元素を含有させることを特徴とした請求項6から8のいずれか一項に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項10】
前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を含む合金をアトマイジングして、アトマイジング粉末を過冷液体温度区間で加熱及び加圧焼結してバルク化することを特徴とした請求項6から8のいずれか一項に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項11】
前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を溶融及び急速凝固させる直接鋳造方法を通じてバルク化することを特徴とした請求項6から8のいずれか一項に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項12】
前記窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素を高周波コールドクルシブル(induction‐coldcrucible)を利用した急速凝固を通じて結晶化して微細結晶を有する鋳造組職にするバルク化することを特徴とした請求項6から8のいずれか一項に記載の多成分単一体のスパッタリングターゲット製造方法。
【請求項13】
窒化物形成金属元素及び窒素と反応しない非窒化物形成金属元素を非晶質または部分結晶化された非晶質形成合金系のターゲットとし、前記ターゲットを窒素及び不活性気体を含む混合気体雰囲気で選択反応性スパッタリングして基板の表面に薄膜を形成し、前記窒化物形成金属元素がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Y、Mo、W、Al、Siから選択された少なくとも一つの元素を含み、前記非窒化物形成金属元素はMg、Ca、Sc、Ni、Cu、Ag、In、Sn、La、Au、Pbから選択された少なくとも一つの元素を含むことを特徴とする多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法。
【請求項14】
前記ターゲットに窒化物形成金属元素が40at%超過及び80at%以下の原子比率に含有するようにすることを特徴とした請求項13に記載の多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法。
【請求項15】
前記ターゲットに窒化物形成金属元素が60at%以上及び80at%以下の原子比率に含有させることを特徴とした請求項14に記載の多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法。
【請求項16】
前記反応性スパッタリングのための混合気体は酸素及び酸化物気体、炭素及び炭化物気体のうち少なくとも一つの反応性気体をさらに含むことを特徴とした請求項13から15のいずれか一項に記載の多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法。
【請求項17】
前記ターゲットに摩擦化学反応を通じて低摩擦酸化物の形成が可能なMo、V、Co、Ag、Cu、Niから選択された少なくとも一つの酸化物形成金属元素が含有させることを特徴とした請求項13から15のいずれか一項に記載の多成分合金系ナノ構造薄膜製造法。
【請求項18】
前記ターゲットは窒化物形成金属元素と非窒化物形成金属元素をアトマイジングして、アトマイジング粉末を過冷液体温度区間で加熱及び加圧焼結してバルク化することを特徴とした請求項13から15のいずれか一項に記載の多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法。
【請求項19】
前記基板と反応性スパッタリングによる薄膜の間に非反応性スパッタリングによる非晶質のバッファー層を形成することを特徴とした請求項13から15のいずれか一項に記載の多成分合金系ナノ構造薄膜製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2013−511621(P2013−511621A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539818(P2012−539818)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008217
【国際公開番号】WO2011/062450
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(595025084)韓国生産技術研究院 (11)
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF INDUSTRIAL TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】35−3, Hongcheon−ri, Ipjang−myeon, Cheonan−si, Chungnam 330−825(KR)
【Fターム(参考)】