説明

多成分系生物学的輸送系

インスリン、ボツリヌストキシン、抗体断片、及びVEGFを除いて、非タンパク質非核酸系治療薬やタンパク質ベースの治療薬など生物学的に活性な作用物質の経皮送達を含めて、送達に有用な組成物及び方法が提供される。これらの組成物及び方法は、抗真菌物質及び免疫化に適した抗原性物質の局所送達に特に有用である。或いは、組成物は、これらの組成物の送達を標的化するのに有用な成分、並びにイメージング成分と共に調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2000年7月21日に出願された米国仮出願第60/220244号の優先権を主張する、2001年7月20日に出願された米国特許出願第09/910432号の一部継続出願であり、これらの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究及び開発のもとで行われた発明に対する権利に関する記載
該当無し
【背景技術】
【0003】
遺伝子送達系は、大まかに2つのグループ、即ちウイルス系及び非ウイルス系に分類することができる。ウイルス系は、大きな毒性リスクを有し、臨床試験において重い合併症及び死亡をもたらした。非ウイルス系は、ウイルスの手法よりかなり効率が低いが、特異性を高め、毒性を潜在的に低減するように用途を調整できる可能性を提供する。非ウイルス系戦略は、大まかに脂質ベース、又は非脂質ベースに分類することができる。本発明で提示する戦略は、既存の非ウイルス系手法の任意のものに適用することができ、したがって、すべて本明細書で説明される。
【0004】
最も簡易な非ウイルス系は、DNAの直接送達である。DNAの負電荷が原因で、DNAのごくわずかしか、実際には細胞内に入らず、大半は分解される。戦略において核標的配列は無く、事実上、DNAは全く核内に入らない。通常、エレクトロポレーション、超音波、「遺伝子銃」、直接のマイクロインジェクションなど機械的効果によって、又は電荷中和及びリン酸カルシウム、ポリリジン、リポソーム調製物などの作用物質を用いた化学的効果によって、遺伝子/産物送達(DNA、RNA、若しくは、より最近ではタンパク質治療薬)の効率を高めるために、別の因子が使用される。後者の戦略では、電荷中和は、リポソーム調製物単独の同等の化学的/機械的効果よりも数倍大きい非特異的な効率を高めることが示されている。これら及び同様の結果に基づき、DNAの負電荷は、引き続いてリソソーム融合(他の作用物質の添加により逃れられる)を伴う原形質崩壊による場合を除いて輸送を本質的に妨げるため、DNA及びRNAは、細胞取込みの効率を上げるために電荷中和を必要とすると多くの研究者が結論づけた。大半のトランスフェクション剤は、実際には、正味のDNA負電荷の2〜4倍の比率で、過剰の正電荷を使用する。得られる正のハイブリッドは、負に帯電した細胞表面のプロテオグリカンにイオン結合し、その後の取込みを劇的に増進する。一部のトランスフェクション剤は、細胞向性を有しているようであり、これは、細胞型に特異的なパターンで変わる、個々のプロテオグリカンをより効果的に標的とする立体及び荷電パターンが寄与している可能性が最も高い。適切な作用物質(即ち、正確な向性)を用いても、単独又はリポソームと組み合わせた電荷中和は、ウイルス戦略に比べて、依然として極めて非効率的である。したがって、本団体(community)は、複合体が細胞中に、また任意のエンドリソソーム段階を過ぎて効率的に移行するのを促進するいくつかのペプチド及びペプチド断片を同定した。いくつかのこのような輸送因子は、効率的な核移行さえも可能にする。一方法では、輸送因子は、対象となる治療用生成物(小型の薬物、遺伝子、タンパク質など)に直接連結されている。この手法は、その輸送因子に結合した新しい薬物を作製し、精製し、試験することを必要とする。多くの場合、これらのハイブリッドは、実際には新しい薬物に相当し、十分な試験を必要とすると考えられる。このような方法により、かなりのリスク及び費用が追加される。或いは、いくつかの戦略は、薬物/DNA/因子用の担体としてのリポソーム調製物中に非特異的に(さらには表面に特異的に)作用物質を混合することを使用するだけである。直接又はより簡易な様式よりは効率の点で改善されているが、これらの手法は依然として(ウイルスに比べて)非効率的であり、単純なウイルス戦略よりかなり有毒である。この非効率性の一部は、核移行が乏しいことに起因する。結果として、戦略は発展して、治療因子ハイブリッドの一部分として、又はリポソーム混合物の一部分として、上記に詳述した複合体に核移行シグナルを添加するようになった。追加の改善には、DNA/RNA/因子の分解を低減するための努力も含まれた。
【0005】
おそらく、上記に提示した基本的な戦略において最も重要な改善は、治療因子と共に特異的リガンド又は他の標的物質を含んだことである。これらの戦略は、非特異的な毒性を大いに低減し、特に前述の効率物質(efficiency agent)と組み合わせた場合に、効率をかなり改善する可能性を与える。しかし、現在の戦略は、単一の担体への共有結合に依拠しており、したがって、(ある程度の置換スキームにおける立体的考慮が、他のものより単一の因子に有利とならないことを確実にするため、即ち、各効率因子(efficiency factor)及び各イメージング部分(imaging moiety)、並びに各標的(targeting)部分が主鎖上に存在していることを確実にするための)特異的な合成を必要とする。このため、いくつかの特異的構築物は実質的に存在し得ない(例えば、表面抗原に対するシアリルルイスX及びFabフラグメント。立体的な制限が、大半のスキームにおいて1つ又は別のものの効率的な結合を妨げ、その結果として、効率因子を妨害すると考えられるためである。)。概念は有望であるものの、これらの手法は、この問題に対して、費用がかかり、(合成の点で)収率が非常に低く、実証されていない解決法である。
【0006】
明らかなことには違いないが、非ウイルス系の遺伝子及び因子送達の開発の各段階に伴い、諸問題が発生し、これらは、次の段階で、複雑性の程度を増すことによって解決された。各改良は、以前の標準より漸進的なステップに相当した。しかし、複雑性の増大は、患者看護の観点からのリスク、並びに製造の観点からの非効率化及び費用増をもたらす。これらの障害により、他の点では有望なこれらの潜在的な治療法に対する興味は大きく損なわれる結果になった。
【0007】
必要とされているのは、特定の部位への送達を最大化するために標的化又は画像化することができる多様な治療用又は薬用化粧(cosmeceutical)物質の組成物に広く適用可能な、新しい方法及び組成物である。驚くべきことに、本発明は、そのような組成物及び方法を提供する。
【0008】
本発明はさらに、インスリンなどのタンパク質、また、より大型の治療用及び診断用物質、例えば、ボツリヌストキシンなどのタンパク質、或いは、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベル(血糖値)を変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、又は免疫化用の作用物質など他の生物学的に活性な作用物質を含めて、50,000以上の分子量を有するような物質の経皮送達用の調製物にも関する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を使用する場合、特定の抗原に結合するだけ以外に生物活性を有さない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。
【0009】
ボツリヌストキシン(ボツリヌス(botulin)毒素又はボツリヌス神経毒素としても公知である)は、グラム陽性細菌のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)によって産生される神経毒素である。これらは、神経筋接合部を通過するアセチルコリンの総観的(synoptic)伝達又は放出を防止することによって、筋肉の麻痺を生じさせる作用を果たし、同様に他の方法でも作用すると考えられている。それらの作用は、本質的には、普通なら筋肉の痙攣又は収縮を引き起こして麻痺をもたらすはずであり、或いは、腺分泌又は多汗症や座瘡などの過排出を引き起こすはずである、シグナルを遮断する。
【0010】
ボツリヌストキシンは、血清学的に関連しているが異なる、8種の神経毒素に分類されている。これらのうち、7種、即ち、ボツリヌス神経毒素の血清型A、B、C、D、E、F、及びGは、麻痺を引き起こすことができる。これらのそれぞれは、型特異的抗体による中和によって区別される。各型は、天然型、組換作製型、又はタンパク質融合など人工的に作り出された変種でよい。それでもなお、ボツリヌストキシンタンパク質分子の分子量は、これら天然の活性なボツリヌストキシン血清型の7種すべて又はそれらの組換型において、約150kDである。細菌によって放出されるとき、ボツリヌストキシンは、結合した無毒性タンパク質と共に当該の150kDボツリヌストキシンタンパク質分子を含む複合体である。A型ボツリヌストキシン複合体は、900kD、500kD及び300kD型として、クロストリジウム(Clostridia)属細菌によって産生され得る。B型及びC型ボツリヌストキシンは、700kD又は500kDの複合体としてのみ産生されるようである。D型ボツリヌストキシンは、300kD及び500kDの双方の複合体として産生される。E型及びF型ボツリヌストキシンは、約300kDの複合体としてのみ産生される。これらの複合体(即ち分子量が約150kDより大きいもの)は、無毒素のヘマグルチニンタンパク質及び無毒素且つ無毒性の非ヘマグルチニン(nonhemaglutinin)タンパク質を含有すると考えられている。これら2種の無毒性タンパク質(ボツリヌストキシン分子と共に、当該の神経毒素複合体を含む)は、ボツリヌストキシン分子に対する変性に対抗する安定性、及びトキシンが経口摂取された場合の、消化酸からの保護を実現する役割を果たすことができる。さらに、より大型の(分子量が約150kDより大きい)ボツリヌストキシン複合体は、ボツリヌストキシン複合体の筋肉内注射部位から離れた場所に、より遅い速度でボツリヌストキシンを拡散させることができる。
【0011】
様々な血清型のボツリヌストキシンは、作用する動物種、並びに誘発する麻痺の重症度及び持続期間において異なる。例えば、ラットで生じる麻痺の速度で評価すると、A型ボツリヌストキシンは、B型ボツリヌストキシンより500倍強力であることが測定されている。さらに、B型ボツリヌストキシンは、A型に対する霊長類のLD50の約12倍である480U/kgの用量では、霊長類において無毒性であることが確認されている。ボツリヌストキシンの分子サイズ及び分子構造が原因となって、ボツリヌストキシンは、角質層及びその下にある皮膚構造の複数の層を通過することができない。
【0012】
A型ボツリヌストキシンは、人類に知られている最も致死的な天然の生物学的作用物質であると言われている。ボツリヌス菌(C.botulinum)の胞子は土壌中に存在し、また、不適切に滅菌され、密封された食品容器中で増殖することができる。この細菌を経口摂取すると、致死的になることがあるボツリヌス中毒を引き起こし得る。同時に、ボツリヌストキシンの筋肉麻痺効果は、治療効果のためにも使用されている。ボツリヌストキシンの制御投与は、病態、例えば、機能亢進性の骨格筋を特徴とする神経筋障害を治療するために筋肉麻痺を与えるのに使用されている。ボツリヌストキシンで治療されている病態としては、片側顔面痙攣、成人発症型痙性斜頚、裂肛、眼瞼痙攣、脳性麻痺、頚部ジストニア、片頭痛、斜視、顎(temperomandibular)関節障害、並びに様々なタイプの筋痙攣及び痙攣が挙げられる。より最近では、ボツリヌストキシンの筋肉麻痺効果は、しわ、眉間のしわ、及び顔面筋肉の痙攣又は収縮による他の結果の治療など治療的及び美容的な顔への用途に利用されている。
【0013】
ボツリヌス中毒、即ち、全身性のボツリヌストキシン暴露に起因する特徴的な症状群は、古代からヨーロッパで存在していた。1895年に、Emile P. van Ermengemは、ベルギーでボツリヌス中毒が原因で死んだ犠牲動物の死後組織から得た生の塩漬け豚肉から、嫌気性の胞子形成桿菌を初めて単離した。Van Ermengemは、彼がバチルス・ボツリヌス(Bacillus botulinus)と呼んだものによって産生される細胞外毒素によって疾患が引き起こされることを発見した(Van Ermengem, Z Hyyg Infektionskr, 26:1-56; Rev Infect (1897))。この名称は、1922年にクロストリジウム・ボツリヌス(Clostridium botulinum)に変更された。クロストリジウムという名称は、その微生物の嫌気性の性質、また、その形態学的特徴を反映するために使用された(Carruthers and Carruthers, Can J Ophthalmol, 31:389-400 (1996))。1920年代には、食中毒のさらなる集団発生後に、A型ボツリヌストキシンの粗製の型が単離された。サンフランシスコ州カリフォルニア大学のHerman Sommer博士は、神経毒素を精製しようと初めて試みた(Borodic et al., Ophthalmic Plast Recostr Surg, 7:54-60 (1991))。1946年に、Edward J. Schantz博士及び彼の同僚は、結晶型の神経毒素を単離した(Schantz et al., In: Jankovi J, Hallet M (Eds) Therapy with Botulinum Toxin, New York, NY: Marcel Dekker, 41-49 (1994))。1949年までに、Burgen及び彼の共同研究者は、 ボツリヌストキシンが、神経筋接合部を通過するインパルスを遮断することを実証することに成功した(Burgen et al., J Physiol, 109:10-24 (1949))。Allan B. Scottは、1973年に、サルでA型ボツリヌストキシン(BTX−A)を初めて使用した。Scottは、可逆性の眼筋麻痺が3ヶ月持続することを実証した(Lamanna, Science, 130:763-772 (1959))。その後すぐに、BTX−Aは、ヒトの斜視、眼瞼痙攣、及び痙性斜頚の上出来の治療薬であることが報告された(Baron et al., In: Baron EJ, Peterson LR, Finegold SM (Eds), Bailey & Scotts Diagnostic Microbiology, St. Louis, MO: Mosby Year Book, 504-523 (1994); Carruthers and Carruthers, Adv Dermatol, 12:325-348 (1997); Markowitz, In: Strickland GT (Eds) Hunters Tropical Medicine, 7th ed. Philadelphia: W.B. Saunders, 441-444 (1991))。1986年に、Jean及びAlastair Carruthers、即ち、眼科形成外科医及び皮膚科医からなる夫妻のチームは、眉間領域における動作に関連したしわを治療するためのA型ボツリヌストキシン(BTX−A)の美容用途を開発し始めた(Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York:Academic Press, 143-150 (1981))。CarruthersはBTX−Aをしわの治療用に使用し、1992年に彼らはこの手法に関する影響力の大きい論文を発表した。(Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1981))。1994年までに、同チームは、動作に関連した顔面の他のしわを用いた経験を報告した(Scott, Ophthalmol, 87:1044-1049 (1980))。これは、結果として、美容用のBTX−A治療の時代の誕生をもたらした。
【0014】
皮膚は、外部環境の脅威から身体の器官を保護し、身体の温度を維持するためのサーモスタットの役割を果たす。皮膚は、いくつかの異なる層からなり、それぞれは特殊な機能を有する。主要な層には、表皮、真皮、及び下皮が含まれる。表皮は、結合組織からなる、真皮の上に横たわる上皮細胞の層状の層である。表皮と真皮の双方とも、皮下組織、即ち脂肪組織の内層によってさらに支持されている。
【0015】
表皮、即ち皮膚の最上層は、0.1〜1.5ミリメートルの厚さしかない(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。表皮は、ケラチノサイトからなり、分化状態に基づいていくつかの層に分けられる。表皮は、角質層、並びに、顆粒メルピギー(melphigian)及び基底細胞からなる分裂可能な表皮にさらに分類することができる。角質層は吸湿性であり、その屈曲性及び柔軟性を維持するために少なくとも10%重量の水分を必要とする。吸湿性は、ある程度は、ケラチンの保水力に起因し得る。角質層は、その柔軟性及び屈曲性を失うと、粗く且つ脆くなり、乾燥した皮膚を生じる。
【0016】
表皮の真下に横たわる真皮は、1.5〜4ミリメートルの厚さである。これは、皮膚の3種の層のうちで最も厚い。さらに、真皮は、汗腺及び皮脂腺(孔(pore)と呼ばれる皮膚中の開口部、又は面ぽうを通して物質を分泌する)、毛穴、神経終末、並びに血管及びリンパ管を含めて、皮膚構造体の大部分が存在する場所でもある(Inlander, Skin, New York, NY:People's Medical Society, 1-7 (1998))。しかし、真皮の主成分は、コラーゲン及びエラスチンである。
【0017】
皮下組織は、皮膚の最下層である。皮下組織は、体温維持のための絶縁体としての役割と器官保護のための衝撃吸収材としての役割の両方を果たす(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。さらに、皮下組織はまた、エネルギー備蓄のために脂肪を蓄える。皮膚のpHは、一般に5〜6である。この酸性度は、皮脂腺の分泌物に由来する両性のアミノ酸、乳酸、及び脂肪酸の存在に起因する。「酸外套(acid mantle)」という用語は、皮膚の大部分の領域に水溶性物質が存在することに関係する。皮膚の緩衝能は、一部には、皮膚の角質層で蓄積されているこれらの分泌物によるものである。
【0018】
しわは、加齢の証拠となる徴候の1つであり、環境的損傷から蓄積する生化学的、組織学的、及び生理的変化によって引き起こされ得る(Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999))。さらに、顔のしわの特徴的なひだ、溝、及び折り目を引き起こし得る他の2次因子もある(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。これらの2次因子としては、重力の恒常的な引張り、皮膚に対する高頻度且つ恒常的な位置的圧力(即ち、就寝中)、及び顔筋の収縮によって生じる反復性の顔面運動が挙げられる(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。加齢の徴候のうちのいくつかを潜在的に軽減するために、様々な技術が利用されている。これらの技術は、αヒドロキシ酸及びレチノールを含有する顔用保湿剤から、外科的処置及び神経毒素の注射にまで及ぶ。
【0019】
皮膚の主要機能のうちの1つは、水及び正常な恒常性に対して潜在的に有害な物質の輸送に対する障壁を提供することである。丈夫な半透性の皮膚が無ければ、身体は急速に水分を失うはずである。皮膚は、有害物質の身体への進入を防止するのに寄与する。大半の物質は、この障壁を透過することができないが、皮膚の透過性を選択的に高めるためにいくつかの戦略が開発され、いくらか成功を収めている。
【0020】
BTXは、皮膚を効率的に透過することができないため、BTXの治療効果を実現するためには、現在のところ、毒素を皮膚に注射しなければならない。連邦食品医薬品局は、しわ治療のためにそのような処置を承認し、BTX製品は、この治療用に現在市販されている。このような治療では、ボツリヌストキシンは、注意深く管理され監視された注射により投与され、治療部位に毒素の大きな溜まり場(well)を作り出す。しかし、このような治療は不快感を与えることがあり、より一般には、いくらかの痛みを伴うことがある。
【0021】
ボツリヌストキシンの局所適用は、適用が無痛性であること、包含され得る治療表面積がより大きいこと、より高い特異的活性を有する純粋な毒素を調製できること、ボツリヌス治療薬を使用するための訓練が軽減されること、効果を発揮するのに必要な用量がより少ないことによって、より安全でより望ましい治療の代替手段となり、また、治療的な臨床結果に達するために、大量の毒素の溜まり場が必要とされない。
【0022】
他の治療薬の経皮投与も、例えば、患者の不快感が低減される可能性、血流中への治療薬の直接投与、並びに特別に作られた器具及び/又は制御放出製剤と技術の使用を通して監視された送達をする機会があるため、関心の非常に高い領域である。投与の容易さが望まれる1つの物質はインスリンであり、多くの場合、いまだに注射(自己注射を含む)によって投与しなければならない。投与が容易であることは、ボツリヌストキシンなどより大型のタンパク質にとっても有利なはずである。皮膚を容易に通過しないがインスリンより実質的に小さい他の作用物質は、様々な生理化学的諸特性を有し、したがって、この移動を促進する付加的な物質の有無に関わらず、皮膚を通過する速度及び能力が大きく異なる。各物質と移動を促進する物質とのさらなる相互作用は、各々について特有である。
【非特許文献1】Van Ermengem, Z Hyyg Infektionskr, 26:1-56; Rev Infect (1897)
【非特許文献2】Carruthers and Carruthers, Can J Ophthalmol, 31:389-400 (1996)
【非特許文献3】Borodic et al., Ophthalmic Plast Recostr Surg, 7:54-60 (1991)
【非特許文献4】Schantz et al., In: Jankovi J, Hallet M (Eds) Therapy with Botulinum Toxin, New York, NY: Marcel Dekker, 41-49 (1994)
【非特許文献5】Burgen et al., J Physiol, 109:10-24 (1949)
【非特許文献6】Lamanna, Science, 130:763-772 (1959)
【非特許文献7】Baron et al., In: Baron EJ, Peterson LR, Finegold SM (Eds), Bailey & Scotts Diagnostic Microbiology, St. Louis, MO: Mosby Year Book, 504-523 (1994)
【非特許文献8】Carruthers and Carruthers, Adv Dermatol, 12:325-348 (1997)
【非特許文献9】Markowitz, In: Strickland GT (Eds) Hunters Tropical Medicine, 7th ed. Philadelphia: W.B. Saunders, 441-444 (1991)
【非特許文献10】Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York:Academic Press, 143-150 (1981)
【非特許文献11】Scott, Ophthalmol, 87:1044-1049 (1980)
【非特許文献12】Inlander, Skin, New York, NY:People's Medical Society, 1-7 (1998)
【非特許文献13】Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999)
【非特許文献14】Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nded., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
一態様では、本発明は、
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴヌクレオチド、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子(persistence factor)をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質を有する、負に帯電した第3の主鎖、又は負に帯電した1つの生物学的作用物質
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーと
の非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有し、メンバーのうちの少なくとも1つがi)、ii)、iii)又はv)から選択される組成物を提供する。
【0024】
本発明のこの態様では、生物学的作用物質は、治療物質又は薬用化粧物質でよい。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、特定の抗原にただ結合すること以外に生物活性を有していない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。或いは、候補物質を用いて、これらの非共有結合性複合体のインビボでの有効性を測定することもできる。
【0025】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの結合された効率基(efficiency group)を有する、正に帯電した主鎖と、RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴヌクレオチド、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAからなる群から選択される少なくとも1つの核酸メンバーとの非共有結合性複合体を含む組成物を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、被験者の細胞表面に生物学的作用物質を送達するための方法であって、前記被験者に前述の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤組成物又は薬用化粧組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、複数の負に帯電した標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴ核酸、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質又は薬用化粧物質を有する、負に帯電した第3の主鎖、或いは負に帯電した1つの生物学的作用物質又は薬用化粧物質、
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーとを、
製薬上又は薬用化粧品用に許容される担体と組み合わせて、正味の正電荷を有する非共有結合性複合体を形成させることを含み、且つ、前記メンバーのうちの少なくとも1つがi)、ii)、iii)又はv)から選択されることを条件とする方法を提供する。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、薬剤送達組成物又は薬用化粧品送達組成物を調製するためのキットであって、正に帯電した主鎖成分と、上記のi)〜v)の群から選択される少なくとも2つの成分とを、送達組成物を調製するための取扱い説明書と共に含むキットを提供する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない他のタンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質など生物学的に活性な作用物質と、本明細書ですべて説明するような、結合された正に帯電した分枝又は「効率」基を持つ主鎖を有する、正に帯電した担体を含む担体とを含む組成物に関する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、特定の抗原にただ結合すること以外に生物活性を有していない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。生物学的に活性な作用物質は、好ましくは、インスリン、ボツリヌストキシン(BTX)、免疫化用の抗原、又はいくつかの抗真菌薬である。適切な抗真菌薬としては、例えば、アムホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール(econozole)、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、シクロピロクスなどが挙げられる。最も好ましくは、正に帯電した担体は、比較的短鎖又は中鎖の正に帯電したポリペプチド、又は正に帯電した非ペプチジルポリマー、例えばポリアルキレンイミンである。生物学的に活性な作用物質がボツリヌストキシンである場合、本発明はさらに、好ましくは、このような治療を必要とする被験者又は患者の皮膚に、有効量のボツリヌストキシンを含有する組成物を局所的に適用することによって、筋肉麻痺、過分泌若しくは発汗の低減、神経性の疼痛若しくは片頭痛の治療、筋肉痙攣の低減、座瘡の予防若しくは軽減、又は、免疫応答の低減若しくは増進などの生物学的効果を生み出すための方法に関する。本発明はまた、例えば、顔筋に注射する方法の代わりに、顔にボツリヌストキシンを局所適用することによって、美容効果及び/又は化粧効果を生み出すための方法にも関する。生物学的に活性な作用物質がインスリンである場合、本発明は、被験者の皮膚又は上皮に、インスリンを含有する組成物、又はインスリンと正に帯電した主鎖との組合せの有効量を適用することによって、被験者にインスリンを経皮的に送達する方法に関する。通常は、本発明の同じ作用物質と担体との複合体に比べて認め得るほどに、皮膚又は上皮を通過することができず、血中グルコースレベルの低下に対して治療効果を持たないタンパク質は、インスリンとは大きく異なる表面及び生理化学的諸特性を有しており、そのため、通常は、インスリンの経皮送達を可能にする技術が、他の任意のタンパク質に対して好ましい結果を生じるかどうかは不確かになっている。しかし、本明細書で記述するように、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した主鎖を有する本発明の担体は、実に驚くべきことに、例えば、ボツリヌストキシンを含めて、このような他のタンパク質の経皮送達を実現することができる。個々のタンパク質の経皮送達に適した個々の担体は、実施例で説明するもののような試験によって、容易に特定することができる。このようなタンパク質は、例えば、50,000kD超又は20,000kD未満の分子量を有する大型タンパク質でよい。本明細書においては、血中グルコースレベルの文脈における「治療」という単語は、例えば糖尿病患者において、高血糖症の急性の症状又は徴候を軽減するのに十分な血中グルコースレベルの低下を意味する。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。本発明のいくつかの態様では、血中グルコースレベルの治療的変更を実現することができる治療用タンパク質の経皮送達は、詳細には除外される。本明細書において使用されるように、免疫化に適した抗原性物質は、血中グルコースレベルを治療的に変更しないタンパク質ベースの抗原、非タンパク質非核酸系作用物質、又はそれらのハイブリッドでよい。しかし、抗原をコードする核酸は、詳細には、本発明の組成物に適していない。したがって、含まれる作用物質は、それ自体が、免疫化に適した抗原である。適切な抗原としては、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質に対するものが挙げられる。適切な作用物質としては、好ましくは、例えば、ボツリヌス中毒、マラリア、狂犬病、炭そ、結核に関係のある抗原、又は、B型肝炎、ジフテリア、百日咳、破傷風、b型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、不活性化ポリオウイルス、はしか、おたふくかぜ、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど幼児期の免疫化に関係のある抗原が挙げられる。
【0030】
本明細書において説明する、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した担体又は主鎖は、それ自体が新規の化合物であり、本発明の別の態様となる。
【0031】
本発明はまた、正に帯電したポリペプチド、又は長鎖ポリアルキレンイミンなど正に帯電した非ペプチジルポリマーを含み、そのポリペプチド又は非ペプチジルポリマーが、正に帯電した分枝基又は本明細書で定義する「効率」基を有している担体を、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質など生物学的に活性な作用物質と組み合わせることを含む、薬剤組成物又は薬用化粧組成物を調製するための方法も提供する。本発明はまた、担体及び治療物質を含む組成物を調製又は配合するためのキット、並びに、使用可能な調製物を作製するのに必要な追加品目、又はそのような調製物を作製するのに次いで使用することができるプレミックスも提供する。このようなキットは、本発明の組成物又はその成分及び方法を適用するための、アプリケーター又は他の器具からなってよい。本明細書では、「器具」とは、例えば、送達若しくは混合用の器具若しくはアプリケーター、又は本発明の組成物及び方法を形成若しくは適用するための他の調製技術を指してよい。
【0032】
本発明はまた、一実施形態では、正に帯電した好ましくは短鎖から中鎖長のポリペプチドを含む担体、又は正に帯電した分枝若しくは本明細書で定義する「効率」基を有するより長鎖の非ペプチジルポリマー担体、及び言及したばかりの治療物質を含む組成物内に含有される、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質など生物学的に活性な作用物質の経皮送達用の器具も含む。このような器具は、皮膚パッチと同じくらい構造が単純なものでもよく、又は、組成物の投与及び投与の観察をするための手段、また、場合によっては、投与された物質に対する被験者の反応を観察することを含めて、1つ又は複数の態様において被験者の状態を観察するための手段を含む、より複雑な器具でもよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0033】
或いは、この器具は、治療用の生物学的に活性な作用物質、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質のみを含んでもよく、担体を別に皮膚に適用してもよい。したがって、本発明は、皮膚を介して投与するための器具と正に帯電した担体又は主鎖を含む物質の双方を含み、被験者の皮膚又は上皮に適用するのに適したキットも含む。
【0034】
一般に、本発明は、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質など生物学的に活性な作用物質を、それらを必要とする被験者又は患者に投与するための方法であって、本明細書で説明するように、有効量の前記生物学的に活性な作用物質を正に帯電したポリペプチド、又は正に帯電した分枝基を有するポリアルキレンイミンなど非ポリペプチジルポリマーと組み合わせて局所投与することを含む方法も含む。「組み合わせて」とは、2種の成分、即ち、生物学的に活性な作用物質及び正に帯電した担体が、組み合わせた方法で投与されることを意味する。この方法は、それらを1つの組成物中で混合し、次いでそれを被験者に投与するものでもよく、或いは、別々ではあるが、それらが共に作用して、有効量の生物学的に活性な作用物質の必要な送達が実現するような様式でそれらを投与するものでもよい。例えば、正に帯電した担体を含有する組成物を最初に被験者の皮膚に適用し、続いて、生物学的に活性な作用物質を含有する皮膚パッチ又は他の器具を適用してもよい。
【0035】
本発明は、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは、本明細書で定義する免疫化用の作用物質など生物学的に活性な作用物質を、皮膚の上皮細胞以外のもの、例えば、眼上皮細胞又は胃腸管系の細胞を含めて、上皮細胞に適用する方法にも関する。
【0036】
発明の説明
概要
本発明は、イメージング物質、遺伝子、又は他の治療物質を選択的且つ持続的に送達するための成分ベースの系を提供する。組成物の個々の特徴は、臨床用の(bedside)製剤において望ましい成分を指定することによって、選択することができる。さらに、一態様では、イメージング部分及び特異的な標的部分は、正に帯電した主鎖と非共有結合性イオン結合型複合体を形成する、負に帯電した別々の主鎖上で提供される。負に帯電した主鎖上にこれらの成分を配置することによって、本発明は、他の戦略(複雑性及び費用を増大し、立体的制約が原因で首尾良い組合せがまだ報告されていないレベルまで効率を低下させる)で使用される場合のように正に帯電した主鎖上の的確な位置に成分を結合させる必要性を回避する。
【0037】
別の態様では、負に帯電した主鎖を含めることを必要とせずに、正に帯電したいくつかの担体を単独で使用することによって、いくつかの物質を経皮的に送達することができる。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0038】
図1を参照すると、本発明がさらによく理解される。この図では、これらの成分は、(1)結合された正に帯電した基(薄い黒の線に結合した薄い黒の円として示される効率基とも呼ばれる)、例えば、(Gly)n1−(Arg)n2(式中、下付き文字n1は、3〜約5の整数であり、下付き文字n2は、約7〜約17の奇数である)又はTATドメインを有する濃い色の(solid)主鎖、(2)結合されたイメージング部分(薄い色の線に結合した白の三角形)を有する、負に帯電した短い主鎖、(3)結合された標的物質及び/又は治療物質(薄い色の線に結合した白の円)を有する、負に帯電した短い主鎖、(4)オリゴ核酸、RNA、DNA、又はcDNA(薄い色の網がけの線)、並びに、(5)持続因子をコードするDNA(黒い網がけの棒)として示されている。図2では、図1で示したように各基が表されている多成分系(multi-component)組成物の様々な例を例示する。例えば、図2では、正に帯電した主鎖が、イメージング成分、標的成分、オリゴ核酸、及び持続因子を結合している、第1の多成分系組成物が例示されている。
【0039】
診断時/予後の画像化のために設計された第2の多成分系組成物が例示される。この組成物では、正に帯電した主鎖は、イメージング成分と標的成分の双方と複合体を形成している。最後に、遺伝子送達に有用な第3の多成分の系が例示される。この系では、複合体は、正に帯電した主鎖、標的成分、対象となる遺伝子、及び持続因子をコードしているDNAの間で形成されている。本発明は、以下により詳細に説明されるが、治療及び診断プログラムにおいて有用ないくつかの追加の組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
組成物
上記の内容を考慮して、本発明は、一態様では、
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、負に帯電した複数のイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、負に帯電した複数の標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴ核酸、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質を有する、負に帯電した第3の主鎖、又は負に帯電した1つの生物学的作用物質、
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーとの
非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有し、メンバーのうちの少なくとも1つがi)、ii)、iii)又はv)から選択される組成物を提供する。
【0041】
実施形態の1つの群では、組成物は、i)〜v)の群から選択される少なくとも3つのメンバーを含む。実施形態の別の群では、組成物は、i)、ii)、iii)、又はiv)の各群から少なくとも1つのメンバーを含む。実施形態のさらに別の群では、組成物は、i)及びii)の各群から少なくとも1つのメンバーを含む。実施形態の別の群では、組成物は、ii)、iii)、及びiv)の各群から少なくとも1つのメンバーを含む。
【0042】
好ましくは、正に帯電した主鎖は、群b)からのメンバーを合わせた長さの約1〜4倍の長さを有する。或いは、正に帯電した主鎖は、群b)からのメンバーを合わせた電荷の約1〜4倍の電荷比を有する。いくつかの実施形態では、電荷密度は均一であり、長さ及び電荷の比は、ほぼ同じである。サイズ対サイズ(長さ)の比は、成分の分子調査に基づいて決定することができ、又は、成分の質量から決定することができる。
【0043】
「正に帯電した(positively charged)」とは、その担体が、少なくともいくつかの液相条件下で、より好ましくは少なくとも、いくつかの生理学的に適合する条件下で正電荷を有することを意味する。より詳細には、本明細書で使用する「正に帯電した」とは、問題の基が、第4級アミンなど、すべてのpH条件下で帯電している官能基を含むこと、又は、第1級アミンの場合のpH変化など特定の液相条件下で正電荷を獲得することができる官能基を含むことを意味する。より好ましくは、本明細書で使用する「正に帯電した」とは、生理学的に適合する条件の間に、陰イオンと結合する挙動を起こすものを意味する。当業者には明らかであるように、正に帯電した部分を多数有するポリマーが、ホモポリマーである必要はない。当業者には明らかであるように、正に帯電した部分の他の例は従来技術で周知であり、容易に使用することができる。本発明で説明する、それ自体は治療活性を有さない正に帯電した担体は、例えば、本明細書で説明する組成物及び方法において有用である新規な化合物である。したがって、本発明の別の態様では、本発明者らは、本明細書で説明するような結合された正に帯電した分枝基を有する正に帯電した主鎖を含み、それ自体は治療的な生物活性を有していない任意の担体を含む、これらの新規な化合物を詳述する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、特定の抗原にただ結合すること以外に生物活性を有していない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、一態様で、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、核酸ベースの作用物質、ある種の抗真菌薬など非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質など生物学的に活性な作用物質と、正に帯電した主鎖、例えば、正に帯電した分枝又は本明細書で定義する「効率」基を有する、正に帯電したポリペプチド、又はポリアルキレンイミンなど、ヘテロポリマーでもホモポリマーでもよい非ペプチジルポリマーを含む担体とを含む組成物を提供する。タンパク質ベースの治療薬及び非タンパク質非核酸系治療薬はそれぞれ、複合体全体の特徴を変える、異なる生理化学特性を有する。正に帯電した主鎖として後述する物質のうちに、このような正に帯電した担体がある。本発明はまた、本明細書で説明する治療有効量の生物学的に活性な作用物質を投与するための方法であって、被験者(ヒトでも他の哺乳動物でもよい)の皮膚又は上皮に、その生物学的に活性な作用物質と、生物学的に活性な作用物質の被験者への経皮送達を実現するのに有効な量の、分枝基を有する正に帯電した主鎖とを適用することを含む方法も提供する。この方法では、生物学的に活性な作用物質及び正に帯電した担体は、予め混合した組成物として適用してもよく、或いは、別々に皮膚又は上皮に適用してもよい(例えば、作用物質は皮膚パッチ又は他の器具中に存在してよく、担体は、液体、又は皮膚パッチを貼付する前に皮膚に適用される他のタイプの組成物中に含有されてもよい)。本明細書においては、血中グルコースレベルの文脈における「治療」という単語は、例えば糖尿病患者において、高血糖症の急性の症状又は徴候を軽減するのに十分な血中グルコースレベルの低下を意味する。本発明のいくつかの態様では、血中グルコースレベルの治療的変更を実現することができる治療用タンパク質の経皮送達は、詳細には除外される。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語が使用される場合は、特定の抗原にただ結合すること以外に生物活性を有していない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。本明細書において使用されるように、免疫化に適した抗原性物質は、血中グルコースレベルを治療的に変更しないタンパク質ベースの抗原、非タンパク質非核酸系作用物質、又はそれらのハイブリッドでよい。しかし、抗原をコードする核酸は、詳細には、本発明の組成物に適していない。したがって、含まれる作用物質は、それ自体が、免疫化に適した抗原である。適切な抗原としては、例えば、環境物質、病原体、又は生物学的有害物質に対するものが挙げられる。適切な作用物質としては、好ましくは、例えば、ボツリヌス中毒、マラリア、狂犬病、炭そ、結核に関係のある抗原、又は、B型肝炎、ジフテリア、百日咳、破傷風、b型インフルエンザ菌、不活性化ポリオウイルス、はしか、おたふくかぜ、風疹、水痘、肺炎球菌、A型肝炎、及びインフルエンザなど幼児期の免疫化に関係のある抗原が挙げられる。
【0045】
正に帯電した主鎖(positively charged backbone)
正に帯電した主鎖(正に帯電した「担体」とも呼ぶ)は、典型的には、原子の直鎖であり、生理的pHで正電荷を有する基を鎖中に含み、又は、主鎖から伸びた側鎖に結合された、正電荷を有する基を含む。好ましくは、正に帯電した主鎖それ自体は、所定の酵素活性又は生物活性を有していないと考えられる。直鎖状の主鎖は、炭化水素主鎖であり、いくつかの実施形態では、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、及びリンから選択されるヘテロ原子が割り込んでいる。主鎖の原子の大半は、通常は、炭素である。さらに、主鎖は、しばしば、繰り返し単位(例えば、アミノ酸、ポリ(エチレンオキシ)、ポリ(プロピレンアミン)、ポリアルキレンイミンなど)のポリマーである。実施形態の1つの群では、正に帯電した主鎖は、いくつかのアミン窒素原子が、正電荷を有するアンモニウム基(4置換型)として存在するポリプロピレンアミンである。別の実施形態では、正に帯電した主鎖は、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン又はポリプロピレンイミンなど、約10,000〜約2,500,000、好ましくは約100,000〜約1,800,000、最も好ましくは約500,000〜1,400,000の分子量を有する、ヘテロポリマーでもホモポリマーでもよい非ペプチジルポリマーである。実施形態の別の群では、主鎖は、正に帯電した基(例えば、アンモニウム基、ピリジニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、グアニジウム基、アミジニウム基)を含む複数の側鎖部分を結合している。実施形態のこの群における側鎖部分は、主鎖に沿って、距離が一定又は様々である間隔で配置されていてよい。さらに、側鎖の長さは類似していても異なっていてもよい。例えば、実施形態の1つの群では、側鎖は、1〜20個の炭素原子を有し、前述の正に帯電した基のうちの1つの(主鎖から離れた)末端で終わっている、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖でよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0046】
実施形態の1つの群では、正に帯電した主鎖は、正に帯電した複数の側鎖基(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)を有するポリペプチドである。好ましくは、このポリペプチドは、約10,000〜約1,500,000、より好ましくは約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは約100,000〜約1,000,000の分子量を有する。本発明のこの部分でアミノ酸が使用される場合、側鎖は、結合の中心においてD又はL型(立体配置R又はS)を形成してよいことが当業者には理解されよう。
【0047】
或いは、主鎖は、ペプトイドなどポリペプチドの類似体でもよい。例えば、Kessler, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32:543 (1993); Zuckermann et al. Chemtracts-Macromol. Chem. 4:80 (1992);及びSimon et al. Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 89:9367 (1992)を参照されたい。手短に言えば、ペプトイドは、α炭素原子ではなく主鎖の窒素原子に側鎖が結合されているポリグリシンである。前述したように、側鎖の一部分は、通常、正に帯電した基で終結し、正に帯電した主鎖成分を構成すると考えられる。ペプトイドの合成は、例えば、米国特許第5877278号で記述されている。この用語を本明細書で使用する場合、ペプトイド主鎖構造を有する正に帯電した主鎖は、α炭素位置に天然に存在する側鎖を持つアミノ酸から構成されていないため、「非ペプチド」とみなされる。
【0048】
例えば、ペプチドのアミド結合が、チオアミド(−CSNH−)、逆向きのチオアミド(−NHCS−)、アミノメチレン(−NHCH−)若しくは逆向きのメチレンアミノ(−CHNH−)基、ケト−メチレン(−COCH−)基、ホスフィナート(−PORCH−)、ホスホンアミダート及びホスホンアミド酸エステル(−PORNH−)、逆向きのペプチド(−NHCO−)、トランス−アルケン(−CR=CH−)、フルオロアルケン(−CF=CH−)、ジメチレン(−CHCH−)、チオエーテル(−CHS−)、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)、メチレンオキシ(−CHO−)、テトラゾール(CN)、スルホンアミド(−SONH−)、メチレンスルホンアミド(−CHRSONH−)、逆向きのスルホンアミド(−NHSO−)などの代用物によって置換されている、ポリペプチドの立体的又は電気的模倣物、並びに、例えば、Fletcher他((1998) Chem. Rev. 98:763)に総説があり、また、その中で引用されている参考文献によって詳述されている、マロン酸及び/又はgem−ジアミノ−アルキルサブユニットを有する主鎖を用いる、他の様々な主鎖を使用することができる。前述した置換の多くは、αアミノ酸から形成された主鎖に対してほぼ等配電子のポリマー主鎖を生じる。
【0049】
上記に提供した各主鎖に、正に帯電した基を有する側鎖基を結合させることができる。例えば、スルホンアミド結合の主鎖(−SONH−及び−NHSO−)は、窒素原子に結合された側鎖基を有することができる。同様に、ヒドロキシエチレン(−CH(OH)CH−)結合は、ヒドロキシ置換基に結合された側鎖基を有することができる。当業者なら、標準の合成法によって、正に帯電した側鎖基を与えるように、他の結合化学反応を容易に適合させることができる。
【0050】
特に好ましい実施形態では、正に帯電した主鎖は、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT若しくはその断片、又はアンテナペディアのタンパク質形質導入ドメイン、又はその断片若しくは混合物(式中、下付き文字n1は、0〜20、より好ましくは0〜8、さらにより好ましくは2〜5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25、より好ましくは約7〜約17、最も好ましくは約7〜約13の奇数である)から独立に選択される分枝基(効率基とも呼ぶ)を有するポリペプチドである。HIV−TAT断片が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有し、この断片が、その断片のC末端又はN末端を介して主鎖に結合しているような実施形態が、さらにより好ましい。好ましいHIV−TAT断片は、下付き文字p及びqがそれぞれ独立に、0〜8、より好ましくは2〜5の整数であるものである。別の好ましい実施形態では、正に帯電した側鎖又は分枝基は、アンテナペディア(Antp)タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、又は活性を保持しているその断片である。好ましくは、正に帯電した担体は、側鎖の正に帯電した分枝基を、担体の全重量に対するパーセンテージとして、少なくとも約0.05%、好ましくは約0.05〜45重量%、最も好ましくは約0.1〜約30重量%の量で含む。式−(gly)n1−(arg)n2を有する正に帯電した分枝基の場合、最も好ましい量は、約0.1〜約25%である。
【0051】
別の特に好ましい実施形態では、主鎖部分はポリリジンであり、正に帯電した分枝基は、リジン側鎖のアミノ基に結合している。この特に好ましい実施形態で使用されるポリリジンは、約10,000〜約1,500,000、好ましくは約25,000〜約1,200,000、最も好ましくは約100,000〜1,000,000の分子量を有する。これは、例えば、分子量が70,000より大きいポリリジン、分子量70,000〜150,000のポリリジン、分子量150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000より大きいポリリジンなど、市販されている(Sigma Chemical Company社製、セントルイス(St. Louis)、ミズーリ州、米国)ポリリジンのうちの任意のものでよい。ポリリジンの適切な選択は、組成物の残りの成分に応じて変わると考えられ、組成物に全体として正味の正電荷を与え、負に帯電した成分を合わせた長さの好ましくは1〜4倍の長さを与えるのに十分と考えられる。好ましい正に帯電した分枝基又は効率基としては、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−GlyArg)又はHIV−TATが挙げられる。別の好ましい実施形態では、正に帯電した主鎖は、ポリエチレンイミン、例えば分子量が約1,000,000のものなどの長鎖ポリアルキレンイミンである。
【0052】
ポリペプチド又はポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマー、及び前述の分枝基を有する前述の正に帯電した他の主鎖を含む、正に帯電した主鎖又は担体分子は、新規な化合物であり、本発明の一態様を構成する。
【0053】
本発明の一実施形態では、正に帯電した分枝基を有する正に帯電した担体のみが、活性物質を経皮送達するのに必要である。この事例の一実施形態では、正に帯電した担体は、前述したように、正に帯電した複数の側鎖基を有するポリペプチド(例えば、リジン、アルギニン、オルニチン、ホモアルギニンなど)である。好ましくは、ポリペプチドの分子量は、少なくとも約10,000である。この事例の別の実施形態では、正に帯電した担体は、少なくとも約100,000の分子量を有する正に帯電した複数の側鎖基を有する、ポリアルキレンイミンなどの非ペプチジルポリマーである。このようなポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンが挙げられる。いずれの場合も、経皮送達のために唯一必要な作用物質として使用するために、正に帯電した担体分子は、−(gly)n1−(arg)n2(式中、下付き文字n1は、0〜20、より好ましくは0〜8、さらにより好ましくは2〜5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25、より好ましくは約7〜約17、最も好ましくは約7〜約13の奇数である)、HIV−TAT若しくはその断片、又はアンテナペディアPTD若しくはその断片を含む、正に帯電した分枝基又は効率基を含む。好ましくは、側鎖又は分枝基は、前述した一般式−(gly)n1−(arg)n2を有する。他の好ましい実施形態は、分枝基又は効率基が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片であり、この断片が、その断片のC末端又はN末端を介して担体分子に結合しているような実施形態である。側鎖分枝基は、結合の中心においてD又はL型(立体配置R又はS)を形成してよい。好ましいHIV−TAT断片は、下付き文字p及びqがそれぞれ独立に、0〜8、より好ましくは2〜5の整数であるものである。他の好ましい実施形態は、分枝基がアンテナペディアPTD基、又はその基の活性を保持しているその断片であるものである。これらは、例えば、Console et al., J.Biol. Chem. 278:35109 (2003)により、当技術分野では公知である。
【0054】
特に好ましい実施形態では、担体はポリリジンであり、正に帯電した分枝基は、リジン側鎖のアミノ基に結合している。この特に好ましい実施形態で使用されるポリリジンは、例えば、分子量が70,000より大きいポリリジン、分子量70,000〜150,000のポリリジン、分子量150,000〜300,000のポリリジン、及び分子量が300,000より大きいポリリジンなど、市販されている(例えば、Sigma Chemical Company社製、セントルイス、ミズーリ州、米国)ポリリジンのうちの任意のものでよい。しかし、好ましくは、ポリリジンの分子量は、少なくとも約10,000である。好ましい正に帯電した分枝基又は効率基としては、例えば、−gly−gly−gly−arg−arg−arg−arg−arg−arg−arg(−GlyArg)、HIV−TAT又はその断片、及びアンテナペディアPTD又はその断片が挙げられる。
【0055】
他の成分
正に帯電した主鎖成分に加えて、本発明の多成分系組成物は、以下のもの、即ち、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、複数の負に帯電した標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴ核酸、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質を有する、負に帯電した第3の主鎖、又は負に帯電した1つの生物学的作用物質、
からなる群から少なくとも2つの成分を含む。
【0056】
本明細書で説明するように、本発明のいくつかの実施形態又は組成物における関連した態様では、いくつかのタイプの物質の経皮送達を実現するために、正に帯電した主鎖又は担体を単独で使用してもよい。本明細書において説明する生物学的に活性な作用物質の組合せ、例えば、インスリン、ボツリヌストキシン、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、免疫化に適した抗原、又は非タンパク質非核酸系作用物質の組合せもこれらの組成物において使用することができる。
【0057】
負に帯電した主鎖は、イメージング部分、標的部分、及び治療物質を担うために使用される場合、生理的pHで負電荷を持つ複数の基を有する(前述したものに類似した)様々な主鎖でよい。或いは、当業者には容易に明らかとなるように、表面の負に帯電した部分を十分に有するイメージング部分、標的部分、及び治療物質は、正に帯電した主鎖とのイオン性複合体形成のために付加的な主鎖の結合を必要としない。この文脈における十分とは、適切な密度の負に帯電した基が、イメージング部分、標的部分、又は治療物質の表面上に存在して、正に帯電した前述の主鎖とのイオン性結合を生じることを意味する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって決定することができる。負に帯電した適切な基は、カルボン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸若しくはリン酸、スルフィン酸若しくはスルホン酸などである。いくつかの実施形態では、負に帯電した主鎖は、オリゴヌクレオチドとなる。別の実施形態では、負に帯電した主鎖は、オリゴ糖(例えば、デキストラン)である。さらに別の実施形態では、負に帯電した主鎖は、ポリペプチド(例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、又はグルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基に非荷電アミノ酸が割り込んでいるポリペプチド)である。以下により詳細に説明する部分(イメージング部分、標的物質、及び治療物質)は、通常は、エステル結合を介して、これらのペンダント基を有する主鎖に結合することができる。或いは、負に帯電したアミノ酸に割り込み、又は負に帯電した主鎖の末端に結合するアミノ酸を用いて、例えば、ジスルフィド結合(システイン残基による)、アミド結合、エーテル結合(セリン又はトレオニンのヒドロキシル基による)などを介して、イメージング部分及び標的部分を結合することができる。或いは、負に帯電したポリマーが無い場合、イメージング部分及び標的部分それら自体が小型の陰イオンでもよい。或いは、当業者には容易に明らかとなるように、正に帯電した主鎖とのイオン性複合体形成のために表面に負に帯電した部分を十分に生じるように、イメージング部分、標的部分、及び治療物質それら自体を共有結合的に修飾することもできる。これらの双方の事例において、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0058】
イメージング部分
様々な診断用部分又はイメージング部分が本発明において有用であり、診断又は画像化される状態、投与経路、作用物質の感光度、作用物質の検出に使用される装置などに応じて変わると考えられる有効量で存在する。
【0059】
適切なイメージング物質又は診断用物質の例としては、放射線不透過性の造影剤、常磁性造影剤、超常磁性造影剤、光学的イメージング部分、CT造影剤、及び他の造影剤が挙げられる。例えば、放射線不透過性造影剤(X線撮像用)としては、無機及び有機のヨウ素化合物(例えば、ジアトリゾ酸)、放射線不透過性の金属及びそれらの塩(例えば、銀、金、白金など)、並びに他の放射線不透過性化合物(例えば、カルシウム塩、硫酸バリウムなどのバリウム塩、タンタル及び酸化タンタル)が挙げられる。適切な常磁性造影剤(MR撮像用)としては、ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸(Gd−DTPA)及びその誘導体、並びに、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’−三酢酸(DO3A)、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸(NOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TETA)、ヒドロキシベンジルエチレンジアミン二酢酸(HBED)などとの複合体を含めて、他のガドリニウム、マンガン、鉄、ジスプロシウム、銅、ユウロピウム、エルビウム、クロム、ニッケル、及びコバルト複合体が挙げられる。適切な超常磁性造影剤(MR撮像用)としては、磁鉄鉱、超常磁性酸化鉄、単結晶の酸化鉄、特に、負に帯電した主鎖に結合できるこれらの各作用物質の複合した形態が挙げられる。さらに別の適切なイメージング物質は、ヨウ化及び非ヨウ化並びにイオン性及び非イオン性CT造影剤を含むCT造影剤、並びにスピン標識や他の診断上有効な物質などの造影剤である。適切な光学的イメージング物質としては、例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAからなる群が挙げられる。
【0060】
診断用物質の他の例としては、それだけには限らないが、β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、などを含めて、細胞で発現されたときに容易に検出可能なタンパク質をコードするマーカー遺伝子が挙げられる。放射性核種、蛍光体(fluor)、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害因子、リガンド(特にハプテン)など多種多様の標識を使用することができる。さらに別の有用な物質は、99mTcグルコへプトン酸など放射性の化学種又は成分で標識されたものである。
【0061】
負に帯電した主鎖にイメージング部分を結合させるための選択は、様々な条件に応じて変わると考えられる。いくつかのイメージング物質は、生理的pHで中性であり、好ましくは、負に帯電した主鎖に結合され、又は、正に帯電した担体との複合体を保持するのに十分な上記の負に帯電した部分を含むように共有結合的に修飾される。他のイメージング物質は、負に帯電した主鎖が無い場合でも、正に帯電した担体との複合体を保持するのに十分な負電荷を有する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。このような負に帯電したイメージング部分の例としては、リン酸イオン(磁気共鳴画像法に有用)が挙げられる。
【0062】
標的物質(targeting agents)
様々な標的物質が、本明細書で説明する組成物において有用である。通常、標的物質は、上記のイメージング部分に関して説明した負に帯電した主鎖に結合されている。いくつかの実施形態では、標的物質及びイメージング部分は、構造的に且つ/又は化学的に異なる。例えば、イメージング部分及び標的物質は、どちらもホスファートではない。一般に、標的物質は、核酸、治療物質、又は組成物の他の成分の移動を特定の部位に向けること、或いは標的物質を含まない複合体の向性に比べて、その複合体の向性を変えることを可能にする任意の成分でよい。標的物質は、例えば、特定のタイプの細胞又は特定の所望の組織(腫瘍細胞、肝臓細胞、造血細胞など)に核酸の移動を誘導することを可能にする、細胞外標的物質でもよい。このような作用物質は、特定の細胞区画(例えばミトコンドリア、核など)に治療物質を誘導することを可能にする、細胞内標的物質でもよい。作用物質は、最も単純には、正味電荷分布を変えることによって、複合体の向性を、より陰性度の高い細胞表面及び細胞外マトリクス成分から、より多様な細胞へ、さらには詳細には最も陰性の高い表面から離れるように変える、小型の陰イオンでよい。
【0063】
標的物質又は作用物質は、好ましくは、共有結合的に又は非共有結合的に、本発明による負に帯電した主鎖に結合している。本発明の好ましい態様によれば、標的物質は、好ましくは連結基を介して、負に帯電した主鎖成分としての機能を果たすオリゴ核酸、ポリアスパラギン酸、硫酸化又はリン酸化デキストランなどに共有結合している。例えば、ヘテロ2官能性連結基(Pierce Chemical社のカタログを参照されたい)を用いて、標的物質(並びに他の生物学的作用物質)を核酸に結合する方法は、当業者には周知である。実施形態の1つの群では、標的物質は、細胞トランスフェクションを促進するため、即ち、組成物若しくはその多様な成分が膜を通って通過するのを促進するため、又は、エンドソームから出て行くのを助けるため、若しくは核膜を通過するための膜融合ペプチドである。標的物質は、例えば、糖、トランスフェリン、インスリン、又はアシアロ−オロソムコイドタンパク質など、細胞型の表面に存在する受容体に対する細胞受容体リガンドでもよい。このようなリガンドは、核内部でのトランスフェクトされたDNAの蓄積を促進する核局在シグナル(nls)配列など、細胞内型の1つでもよい。
【0064】
本発明の状況において有用な他の標的物質としては、糖、ペプチド、ホルモン、ビタミン、サイトカイン、オリゴ核酸、小型の陰イオン、脂質、又はこれらの成分に由来し、それらの対応する受容体との特異的な結合を可能にする配列若しくは断片が挙げられる。好ましくは、標的物質は、糖及び/又は抗体や抗体断片などのペプチド、細胞受容体リガンド又はその断片、受容体又は受容体断片などである。より好ましくは、標的物質は、増殖因子受容体、サイトカイン受容体、又は細胞レクチン受容体若しくは接着タンパク質受容体のリガンドである。標的物質は、アシアロ糖タンパク質受容体などのレクチンを標的とすることを可能にする糖でも、或いは、免疫グロブリンのFc断片受容体を標的とすることを可能にする抗体Fabフラグメントでもよい。
【0065】
さらに別の実施形態では、負に帯電した主鎖の不在下で標的物質を使用する。実施形態のこの群では、標的物質は、前述の正に帯電した担体とのイオン性複合体を保持するのに十分な負に帯電した部分を有する。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。実施形態のこの群に適した、負に帯電した標的物質は、生理的pHで正味の負電荷を持つタンパク質ベースの標的物質、並びに、例えば、標的とされる細胞の正味の表面電荷に基づいて標的を変えることができる、リン酸、アスパラギン酸、及びクエン酸を含む小型のポリアニオンなど、特定の細胞表面への接着を促進することができる標的物質である。
【0066】
本発明の組成物において、核酸は、デオキシリボ核酸又はリボ核酸のいずれかでよく、また、天然又は人工起源の配列を含んでよい。より具体的には、本明細書において使用する核酸としては、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、tRNA、rRNA、ハイブリッド配列、又は合成若しくは半合成配列を挙げることができる。これらの核酸は、ヒト、動物、植物、細菌、ウイルスなどに由来するものでよい。さらに、これらの核酸は、当業者には公知の任意の技術によって、具体的には、バンクのスクリーニングによって、化学合成によって、又はバンクのスクリーニングによって得られる配列の化学的若しくは酵素的修飾を含む混合した方法によって、得ることができる。さらに、これらの核酸を、プラスミドベクターなどのベクター中に組み込むこともできる。
【0067】
本発明で使用するデオキシリボ核酸は、1本鎖でも2本鎖でもよい。これらのデオキシリボ核酸は、治療用遺伝子、転写又は複製を調節するための配列、アンチセンス配列、他の細胞成分に結合するための領域をコードすることもできる。適切な治療用遺伝子は、治療効果を有するタンパク質生成物をコードする本質的に任意の遺伝子である。このようにしてコードされるタンパク質生成物は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどでよい。いくつかの場合では、タンパク質生成物は、標的細胞に対して同種でよい(即ち、後者が病変を示さない場合、標的細胞で通常発現される生成物)。この方式では、適切な核酸を使用することにより、タンパク質の発現を増大させ、例えば、細胞での不十分な発現を克服することを可能にすることができる。或いは、本発明は、タンパク質の変異、或いは過剰発現が原因で不活性又は活性が弱いタンパク質を発現させるための組成物及び方法を提供する。したがって、治療用遺伝子は、増大した安定性、改変された活性などを有する細胞タンパク質の変異体をコードしてもよい。タンパク質生成物は、標的細胞に対して異種でもよい。この場合、発現されるタンパク質は、例えば、細胞で欠けている活性を構成又は提供し、病変に対抗すること又は免疫応答を促進することを可能にする。
【0068】
より具体的には、本発明で有用な核酸は、酵素、血液派生物、ホルモン、リンフォカイン、インターロイキン、インターフェロン、TNF、増殖因子、神経伝達物質若しくはその前駆物質、又は合成酵素、又は栄養因子:BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、bFGF、VEGF、NT3、NT5、HARP/プレイオトロフィン;アポリポタンパク質A−I、A−II、A−IV、B、C−I、C−II、C−III、D、E、F、G、H、J、及びapo(a)から選択されるアポリポタンパク質型の、脂質の代謝に関与するタンパク質、例えば、リポタンパク質リパーゼ、肝臓リパーゼ、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、7−α−コレステロールヒドロキシラーゼ、ホスファチジン酸ホスファターゼなどの代謝酵素、又はコレステロールエステル輸送タンパク質やリン脂質輸送タンパク質などの脂質輸送タンパク質、HDLに結合するためのタンパク質、又は、例えば、LDL受容体、キロミクロンレムナント受容体及びスカベンジャー受容体から選択される受容体、ジストロフィン若しくはミニジストロフィン、GAXタンパク質、膵線維症に関連するCFTRタンパク質、腫瘍抑制遺伝子:p53、Rb、Rap1A、DCC、k−rev;凝固に関与するタンパク質因子:因子VII、VIII、IXをコードするものであり、或いは、これらの核酸は、DNA修復に関与する遺伝子、自殺遺伝子(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ)、トロンボモジュリン、α1−アンチトリプシン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、スーパーオキシドジスムターゼ、エラスターゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼなどをコードする遺伝子でもよい。
【0069】
本発明において有用な治療用遺伝子は、アンチセンス配列、又は標的細胞で発現されることにより、遺伝子発現若しくは細胞mRNAの転写の制御を可能にする遺伝子でもよい。特許EP140308で記載されている技術に従って、このような配列を、例えば、標的細胞において細胞mRNAの相補的RNAへと転写させ、それによって、それらがタンパク質に翻訳されるのを阻止することができる。アンチセンス配列は、選択的に標的RNAを破壊することができるリボザイムをコードする配列も含んでよい(EP321201を参照されたい)。
【0070】
先に示したように、生物学的に活性な作用物質は、ヒト又は動物において免疫応答を生じさせることができる1種又は複数の抗原性ペプチドも含んでもよい。この特定の実施形態では、本発明は、このようにして、特に微生物、ウイルス、又は癌に対する、ヒト又は動物に適用されるワクチン又は免疫療法治療薬を作製することを可能にする。それらは、具体的には、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)、HIVウイルス、B型肝炎ウイルス(EP185573を参照されたい)、仮性狂犬病ウイルスに特異的な、或いは腫瘍に特異的な(EP259212を参照されたい)抗原性ペプチドでよい。
【0071】
好ましくは、核酸は、治療用遺伝子及び/又は、所望の細胞若しくは器官において抗原性ペプチドをコードしている遺伝子の発現を可能にする配列も含んでよい。これらは、これらの配列が感染細胞において機能することができる場合に考慮される遺伝子の発現を本来担っている配列でよい。核酸は、(他のタンパク質、さらには合成タンパク質の発現を担っている)、起源の異なる配列でもよい。特に、核酸は、真核生物又はウイルスの遺伝子のプロモーター配列を含んでもよい。例えば、プロモーター配列は、感染が望まれる細胞のゲノムに由来するものでよい。同様に、プロモーター配列は、ウイルスのゲノムに由来するもの、例えば、遺伝子E1A、MLP、CMV、RSVなどのプロモーターでよい。さらに、これらの発現配列は、活性化配列、制御配列などの追加によって改変してもよい。
【0072】
さらに、核酸は、特に治療用遺伝子の上流に、治療用生成物が標的細胞の分泌経路中に合成されるように指示するシグナル配列も含んでよい。このシグナル配列は、治療用生成物の天然のシグナル配列でよいが、他の任意の機能的シグナル配列又は人工シグナル配列でもよい。
【0073】
少なくとも1つの持続因子をコードするDNA
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの持続因子をコードするDNAも含むと考えられる。このようなDNAの例は、アデノウイルスの前末端タンパク質(preterminal protein)1をコードするDNAである(Lieber, et al. Nature Biotechnology 15(13):1383-1387 (1997)を参照されたい)。アデノウイルス前末端タンパク質1、又はそれをコードする核酸は、所望の治療用導入遺伝子をコードする核酸配列に対してシス又はトランスで提供することができる。この方式で提供される場合、前末端タンパク質1又は配列は、治療用核酸を安定な核エピソームとして維持し、それにより、治療用核酸の損失を防ぎ、治療用タンパク質発現の後期の低減を防止する。
【0074】
生物学的作用物質
治療物質及び薬用化粧物質の双方を含めて、様々な生物学的作用物質が本発明において有用であり、予防的に又は別の方法で治療される状態、投与経路、作用物質の有効性、並びに患者の大きさ及び治療計画に対する感受性に応じて変わると考えられる有効量で存在する。
【0075】
負に帯電した主鎖に結合されることができる適切な治療物質は、例えば、鎮痛薬、抗喘息薬、抗生物質、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、制吐薬、降圧薬、抗インポテンツ薬、抗炎症薬、抗悪性腫瘍薬、抗HIV薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、避妊薬、排卵促進薬、抗血栓薬、プロトロンビン物質(prothrombotic agent)、ホルモン、ワクチン、免疫抑制薬、ビタミンなどを含めて、本質的に任意のクラスの作用物質中に存在し得る。或いは、十分な負に帯電した基を、治療物質に導入して、正に帯電した前述の主鎖とのイオン性複合体を生じさせることもできる。当業者には容易に明らかとなるように、リン酸化や硫酸化など多くの適切な方法が存在する。
【0076】
さらに、いくつかの作用物質は、それ自体が、正に帯電した前述の担体と結合するのに適した、負に帯電した部分を有し、負に帯電した主鎖への結合を必要としない。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0077】
適切な薬用化粧物質としては、例えば、上皮成長因子(EGF)、並びにヒト成長ホルモン、抗酸化薬、及びボツリヌストキシンが挙げられる。本発明の文脈においては、「ボツリヌストキシン」という用語は、ボツリヌスの血清型A、B、C、D、E、F、及びGだけでなく、ボツリヌスの軽鎖の活性を有するその断片も含む。
【0078】
より具体的には、本発明において有用な治療物質としては、リドカイン、ノボカイン、ブピバカイン、プロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、コカイン、メピバカイン、エチドカイン、プロパラカインロピバカイン、プリロカインなどのような鎮痛薬;アゼラスチン、ケトチフェン、トラキサノクス、コルチコステロイド、クロモリン、ネドクロミル、アルブテロール、メシル酸ビトルテロール、ピルブテロール、サルメテロール、テルブチリン(terbutyline)、テオフィリンなどの抗喘息薬;ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、スルファメチルオキサゾール、βラクタム系抗生物質、テトラサイクリンなどの抗生物質;ネホパム、オキシペルチン、イミプラミン、トラザドン(trazadone)などの抗うつ薬;ビグアニジン、スルホニル尿素などの抗糖尿病薬;クロロプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、チエチルペラジン、トリフルプロマジン、ハロペリドール、スコポラミン、ジフェニドール、トリメトベンズアミドなどの制吐薬及び抗精神病薬;アトラクリウムミバクリウム、ロクロニウム、スクシニルコリン、ドキサクリウム、ツボクラリン、及びボツリヌストキシン(BTX)などの神経筋作用物質;アムホテリジンB、ナイスタチン、カンジシジン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、フルコナゾール、シクロピロクス、エコナゾール、ナフチフィン、テルビナフィン、グリセオフルビン、シクロピロクスなどの抗真菌薬;プロパノロール、プロパフェノン、オキシプレノロール、ニフェジピン、レセルピンなどの降圧薬;一酸化窒素供与体などの抗インポテンツ薬;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、フルアザコルトなどのステロイド性抗炎症薬、並びにインドメタシン、イブプロフェン、ラミフェニゾン(ramifenizone)、プリオキシカム(prioxicam)などの非ステロイド性抗炎症薬を含む、抗炎症薬;アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ズアノルビシン(duanorubicin)、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ラパマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、シスプラスチン、エトポシド、インターフェロン、フェネステリン(phenesterine)、タキソール(類似体及び誘導体を含む)、カンプトセシン及びその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの抗悪性腫瘍薬;抗HIV薬(例えば、抗タンパク分解薬(antiproteolytics));アマンタジン、メチサゾン、イドクスウリジン、シタラビン、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、フォスカーネット、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、シドフォビル、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、リバビリン、リマンタチン(rimantatine)などの抗ウイルス薬;ダントロレン、ジアゼパムなどの抗不安薬;COX−2阻害物質;プロゲストーゲンなどの避妊薬;GPIIb/IIIa阻害物質、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、ヘパリンなどの抗血栓薬;トロンビン、第V、VII、VIII因子などのプロトロンビン物質;インスリン、成長ホルモン、プロラクチン、EGF(上皮成長因子)などのホルモン;シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾロビン(mizorobine)、FK506、プレドニゾンなどの免疫抑制薬、VEGF(血管内皮成長因子)などの血管新生作用物質;A、D、E、Kなどのビタミン;並びに他の治療的に又は医薬的に活性な作用物質が挙げられる。例えば、GOODMAN & GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, Ninth Ed. Hardman, et al., eds. McGraw-Hill, (1996)を参照されたい。
【0079】
最も好ましい実施形態では、生物学的作用物質は、インスリン、ボツリヌストキシン、VEGF、免疫化用の抗原、及び抗真菌薬から選択される。
【0080】
標的物質及びイメージング物質に関して前述したように、いくつかの生物学的物質又は薬用化粧物質は、負に帯電した主鎖の不在下で使用することができる。このような生物学的又は薬用化粧物質は、一般に、生理的pHにおいて正味の負電荷を有して、正に帯電した担体との複合体を保持するものである。例としては、ボツリヌストキシン(分子量の大きなタンパク質)、インスリン(分子量の小さなタンパク質)、非常に小型から非常に大型のものでよく、通常、タンパク質又は糖タンパク質を含む免疫化用の抗原、及び多くの抗真菌薬が挙げられる。これらの事例では、その物質又はその誘導体は、本発明の正に帯電した担体と非共有結合的に結合するのに十分な負電荷を有する。この文脈における「十分な」という用語は、例えば、それらの成分単独に対する粒子測定又は機能的分光測定の変化によって測定することができる結合を意味する。
【0081】
結合されたイメージング部分、標的物質、又は治療物質を有する、負に帯電した主鎖
イメージング部分、標的物質、及び治療物質を含めて、上記の群の成分の3つに関して、個々の化合物は、負に帯電した主鎖に結合されても、負に帯電した部分を導入するように共有結合的に修飾されても、又は、前述の正に帯電した主鎖へのイオン結合を与えるのに十分な負に帯電した部分をその化合物が含む場合は直接使用されてもよい。必要があれば、通常、その結合は、作用物質並びに主鎖上に存在する官能基を通じて、特定の作用物質を主鎖に共有結合させるのに使用される連結基を介している。様々な連結基が、本発明のこの態様において有用である。例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, CA (1996)、Wong, S.S., Ed., Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL (1991)、Senter, et al., J. Org. Chem. 55:2975-78 (1990)、及びKoneko, et al., Bioconjugate Chem. 2:133-141 (1991)を参照されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、治療物質、診断用物質、又は標的物質は、連結基に結合するために利用可能な官能基を持たないと考えられ、最初に修飾して、例えば、ヒドロキシ、アミノ、又はチオール置換基を組み込むことができる。好ましくは、置換基は、作用物質の非干渉部分に与えられ、連結基を結合するのに使用されることができ、作用物質の機能に不利益な影響を及ぼさない。
【0083】
さらに別の態様では、本発明は、少なくとも1つの結合された効率基を有する正に帯電した主鎖と、RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴ核酸、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAからなる群から選択される少なくとも1つの核酸メンバーとの非共有結合性複合体を含む組成物を提供する。本発明のこの態様では、正に帯電した主鎖は、正に帯電した前述の主鎖のうちの本質的に任意のものでよく、また、(上記の選択された主鎖と同様に)少なくとも1つの結合された効率基も含むと考えられる。適切な効率基としては、例えば、(Gly)n1−(Arg)n2(式中、下付き文字n1は、3〜約5の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約7〜約17の奇数である)又はTATドメインが挙げられる。さらに、本発明のこの態様において有用な核酸は、前述したものと同じものである。
【0084】
インスリン及びいくつかの大型分子の経皮送達
上記の正に帯電した担体を、インスリン及び約50,000以上の分子量を有するタンパク質、例えば、ボツリヌストキシン(BTX)など、治療的に血中グルコースレベルを変えないいくつかの他の生物学的に活性な作用物質、或いは、治療用の核酸ベースの作用物質、いくつかの抗真菌薬などの非タンパク質非核酸系治療物質、又は免疫化用の作用物質など他の生物学的に活性な作用物質の経皮送達のために使用できることが判明している。正に帯電した担体を使用すると、皮膚細胞の内外双方向へのタンパク質又はマーカー遺伝子の送達、及びその下の組織への有効量且つ活性型でのその送達が可能になる。例えば、インスリンは、注射を必要とせずに、皮膚を通してその下の毛細血管中に送達され、身体全体に輸送され得る。ボツリヌストキシンは、麻痺を生じ、弛緩を生じ、収縮を軽減し、痙攣を防止又は軽減し、腺分泌を低減させ、又は他の所望の効果を実現するのに有効な量で、その下の筋肉又は皮膚内の腺構造体に送達され得る。この方式の局所送達は、特にボツリヌストキシンの場合に、注射可能又は埋め込み可能な物質に比べて、投与量の減少をもたらし、毒性を低減し、所望の効果に対してより的確な投与量の最適化を可能にすることができる。この実施形態は、いくらかの好ましくは多価の小型陰イオン、例えば、リン酸、アスパラギン酸、又はクエン酸を含んでもよく、或いは、このようなポリアニオンが実質的に無い状況で実施してもよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0085】
本明細書では、「ボツリヌストキシン」という用語は、細菌によって産生されたものであれ組換え技術によって作製されたものであれ、公知の血清型のボツリヌストキシンのうちの任意のもの、並びに、人工的に作り出された変異体又は融合タンパク質を含めて、続いて発見される可能性のあるような任意の型を指すことを意図されている。前述したように、現在のところ、7種の免疫学的に異なるボツリヌス神経毒素、即ち、ボツリヌス神経毒素の血清型A、B、C、D、E、F、及びGが明らかにされており、これらのそれぞれは、型特異的抗体による中和によって区別される。これらのボツリヌストキシン血清型は、Sigma-Aldrich社及びMetabiologics社(マディソン、ウィスコンシン州)、並びに他の供給元から入手可能である。異なる血清型のボツリヌストキシンの、それらが影響を及ぼす動物種、並びにそれらが誘発する麻痺の重症度及び持続期間は様々である。少なくとも2種の型のボツリヌストキシン、即ちA型及びB型が、いくつかの病態の治療用の製剤に入れられて現在市販されている。例えば、A型は、商標「BOTOX(登録商標)」を有するAllergan社製の薬剤及び商標「DYSPORT(登録商標)」を有するIpsen社製の薬剤中に含まれ、また、B型は、商標「MYOBLOC(登録商標)」を有するElan社製の薬剤中に含まれる。
【0086】
本発明の組成物中で使用されるボツリヌストキシンは、ボツリヌストキシン誘導体、即ち、ボツリヌストキシン活性を有するが、天然又は組換え天然ボツリヌストキシンに比べて、任意の部分又は任意の鎖上に1つ又は複数の化学的又は機能的改変を含む化合物でもよい。例えば、ボツリヌストキシンは、改変された神経毒素、即ち、天然のものと比較すると、そのアミノ酸のうちの少なくとも1つが欠失、改変、又は置換されている神経毒素でもよく、或いは、改変された神経毒素は、組換えにより作製された神経毒素又はその誘導体若しくは断片でもよい。例えば、ボツリヌストキシンは、例えば、その諸特性を増強し、又は、望ましくない副作用を低減するように改変されているが、所望のボツリヌストキシン活性をなお保持しているものでよい。ボツリヌストキシンは、前述のように、細菌によって産生されるボツリヌストキシン複合体のうちの任意のものでよい。或いは、ボツリヌストキシンは、組換え技術又は合成化学技術によって調製される毒素、例えば、組換えペプチド、融合タンパク質、又は、例えば、異なるボツリヌストキシン血清型のサブユニット若しくはドメインから調製されるハイブリッド神経毒素でもよい(例えば、米国特許第6444209号を参照されたい)。ボツリヌストキシンは、必要なボツリヌストキシン活性を有することが示されている分子全体の一部分でもよく、また、このような場合、それ自体で、又は組合せ若しくは複合分子、例えば融合タンパク質の一部として使用することができる。或いは、正に帯電した主鎖は、天然のBTX結合、標的、又は内在化ドメインの無い場合でも細胞内在化を可能にするため、標的部分の有無に関わらず、本明細書で説明する正に帯電した主鎖と共に毒素の一部分を直接使用してもよい。或いは、ボツリヌストキシンは、それ自体は無毒性でもよいボツリヌストキシン前駆体、例えば、タンパク質分解で切断されると毒性になる無毒性の亜鉛プロテアーゼの形態でもよい。
【0087】
本発明はまた、ボツリヌストキシンの組合せ及び混合物の一般的使用も企図するが、ボツリヌストキシン血清型の混合物は、それらの性質及び諸特性が様々であるため、通常、現時点では投与されない。
【0088】
同様に、「インスリン」という用語は、天然供給源から抽出されたインスリン、並びに、化学的又は組換え手段によって合成的に得ることができるインスリンも含む。インスリンは、改変型、又は、例えば組換えペプチド、融合タンパク質、若しくはハイブリッド分子の形態でもよく、或いは、特定の場合には、必要な活性を有するインスリン分子の一部分でもよい。同じことが、これらの個々の経皮組成物及び方法で使用できる他のタンパク質、特に生理化学的特性が大きく変動し得る免疫化用の抗原にも当てはまる。同様に、抗真菌薬を含めて、非タンパク質非核酸系治療物質は、天然供給源から得てもよく、又は合成してもよい。
【0089】
本発明の組成物は、好ましくは、被験者又は患者、即ち、特定の治療を必要とするヒト又は他の哺乳動物の皮膚又は上皮に適用される製品の形態である。「必要とする」という用語は、医薬及び健康の双方に関連した必要性、並びに、より化粧的、美容的、又は主観的になる傾向がある必要性を含むことが意図されている。ボツリヌストキシン組成物は、例えば、顔組織の外観を変更又は改善するのに使用することもできる。
【0090】
本発明の正に帯電した担体の使用によって、顔筋若しくは他の筋肉の望ましくない痙攣などの病態、多汗症、座瘡、又は、筋肉の疼痛若しくは痙攣の軽減が望まれる、身体の別の場所の病態を治療するために、被験者に経皮的にボツリヌストキシンを投与することができる。ボツリヌストキシンは、筋肉、又は皮膚に結合した他の構造体への経皮送達のために局所的に投与される。例えば、下肢、肩、下背部を含む背中、腋か、手掌、足、頚部、鼠径部、手又は足の甲、肘、上腕、膝、上脚、臀部、胴、骨盤、又はボツリヌストキシンの投与が望まれる身体の他の任意の部分に投与してよい。
【0091】
神経性の疼痛の治療、片頭痛若しくは他の頭痛の疼痛の予防若しくは低減、座瘡の予防若しくは低減、自覚的若しくは臨床的に関わらずジストニア若しくはジストニアの収縮の予防若しくは低減、自覚的若しくは臨床的な多汗症に関連している症状の予防若しくは低減、過分泌若しくは発汗の低減、免疫応答の低減若しくは増進、又は、注射によるボツリヌストキシンの投与が提案若しくは実施されている他の状態の治療を含めて、他の状態を治療するために、ボツリヌストキシンの投与を実施してもよい。ボツリヌストキシン、血中グルコースレベルに対する治療効果を持たない他の治療用タンパク質、本明細書で説明する、免疫化に有用な他の抗原、又は、非核酸非タンパク質系治療物質、例えば、複合体を形成したボツリヌストキシンの投与は、免疫化に関連した目的のために実施してもよい。或いは、免疫応答を増強するために、例えば、例えば注射を用いない幼児期の免疫化又は様々な環境有害物質に対する免疫化のために、様々なタンパク質に対する免疫化を実現するために、複合体を調製し局所適用することもできる。驚くべきことに、本明細書で説明するボツリヌストキシン又は他の治療用タンパク質の投与は、免疫応答を低下させるために実施することもできる。本発明は、BTX及び他のタンパク質が、変更された投与経路によって送達されることを可能にし、作用物質の複合抗原提示を変更し、したがって、そのタンパク質に対する抗原の免疫応答を低減させるのに有用となり、したがって、免疫に関連した活性低下を起こさない反復投与を容易にすることができる。
【0092】
一般に、インスリン、ボツリヌストキシン、或いは、例えば、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、治療用の核酸ベースの作用物質、非タンパク質非核酸系治療物質、又は、免疫化用に投与される作用物質など他の生物学的に活性な作用物質を、通常は、1種又は複数の付加的な製薬上許容される担体又は賦形剤と共に、正に帯電した担体と混合することによって、組成物を調製する。最も単純な形態では、それらは、緩衝化してもよい生理食塩水など、製薬上許容される単純な水性の担体又は希釈剤を含有してよい。しかし、これらの組成物は、局所用の薬剤組成物又は薬用化粧組成物において一般的な他の成分、即ち、皮膚科学的に又は製薬上許容される担体、媒体、又は培地、即ち、それらが適用される組織に適合性のある担体、媒体、又は培地を含有してよい。本明細書では、「皮膚科学的に又は製薬上許容される」という用語は、そのように説明された組成物又はその成分が、これらの組織と接触して使用するのに、又は、通常は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを起こさずに、患者に使用するのに適していることを意味する。必要に応じて、本発明の組成物は、考察中の分野、特に化粧品及び皮膚科学の分野で従来使用されている任意の成分を含んでよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0093】
組成物は、予め調製しても、或いは、例えば、投与時点又は投与前に構築するためのキットを提供することによって、投与時に調製してもよい。或いは、前述したように、例えば、治療用タンパク質と、正に帯電した担体(及び場合によっては他の成分)を含有する液体、ゲル、クリームなどとを含む、皮膚パッチ又は他の分配器具を含むキットを提供することによって、ボツリヌストキシン又は他の治療用タンパク質、並びに正に帯電した主鎖又は担体を別々の形態で患者に投与してもよい。この特定の実施形態では、担体を含む液体又は他の組成物を皮膚に適用し、続いて、皮膚パッチ又は他の器具を適用することによって、この組合せを投与する。
【0094】
本発明の組成物は、有効量のインスリン、ボツリヌストキシン、又は他の有益な物質を投与するために適用される。経皮送達の場合、「有効量」という用語は、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、任意の組成物又は方法を意味する。ボツリヌストキシンの場合、本明細書では、「有効量」という用語は、所望の筋肉麻痺又は他の効果を生じるのに十分であるが、暗黙のうちに安全な量、即ち、重大な副作用を回避するのに十分な少なさの量である、上記に定義したボツリヌストキシンの量を意味する。所望の効果としては、例えば、特に顔の細い線及び/又はしわの出現を低減させること、又は、目の拡大、口角の持ち上げ、若しくは上唇から扇形に広がる線の平滑化など他の方法で顔の外観を調整することを目的として特定の筋肉を弛緩させること、或いは、筋肉の緊張の全般的な軽減が挙げられる。最後に述べた効果、即ち筋肉の緊張の全般的な軽減は、顔又は別の場所、例えば、背中若しくは下肢において実現することができる。インスリンの場合、「有効量」という用語は、同様に、所望の効果、即ち、患者又は被験者の血液中のグルコースの低下をもたらすのに十分な量を意味する。抗原の場合、「有効量」とは、抗原を1回又は連続して適用した後に、その抗原に対する免疫応答を被験者に開始させることができるのに十分な量を意味する。抗真菌薬の場合、「有効量」とは、真菌感染の症状又は徴候を軽減するのに十分な量を意味する。治療的に血中グルコースレベルを変えない他の生物学的に活性な作用物質の場合、「有効量」とは、著しい毒性を引き起こすことなく、例えば、Physicians' Desk Referenceなどでその作用物質について特徴づけられている所定の生物学的又は治療的効果を発揮するのに十分な量を意味する。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を使用する場合、特定の抗原に結合するだけ以外に生物活性を有さない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。
【0095】
これらの組成物は、単回投与による治療として適用するために、インスリン、ボツリヌストキシン、或いは、例えば、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、治療用の核酸ベースの作用物質、非タンパク質非核酸系治療物質、又は免疫化用の作用物質など他の生物学的に活性な作用物質の適切な有効量を含有してもよく、或いは、投与箇所で希釈するため、又は、複数回適用で使用するために、より濃く濃縮してもよい。通常、ボツリヌストキシン、又は、例えば、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質や治療用の核酸ベースの作用物質など他の生物学的に活性な作用物質を含有する組成物は、約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の正に帯電した担体を含有する。通常、非タンパク質非核酸系治療物質、或いは免疫化用の作用物質を含有する組成物は、約1×10−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10−9〜約50重量%の正に帯電した担体を含有する。通常、被験者への適用に適した形態では、本発明の組成物は、約0.001〜約10,000、好ましくは、約0.01〜1,000IU/gの、ボツリヌストキシン及び本明細書で説明する正に帯電した担体分子を含む組成物を含有する。担体:ボツリヌストキシンの比は、それぞれ、好ましくは、約10:1〜約1.01:1、より好ましくは約6:1〜約1.5:1の範囲である。担体分子の量、又はボツリヌストキシンに対するその比は、問題の組成物において使用するためにどの担体が選択されるかによって変わると考えられる。所与の事例における担体分子の適切な量又は比は、例えば、以下に説明するもののような1種又は複数の実験を行うことによって、容易に決定することができる。
【0096】
本発明の組成物は、潜在的に改善された薬物動態を示すより高い特異的活性を有する、より多くの純粋なボツリヌストキシンの送達を可能にする。さらに、正に帯電した担体は、外来の補助的タンパク質(例えば、400〜600mgの範囲のヒト血清アルブミン、又は250〜500mgの範囲の組換型血清アルブミン)及び多糖類系安定化剤の必要性を軽減し、BTXに対する免疫応答の有益な低下をもたらすことができる。さらに、これらの組成物は、4.5〜6.3の範囲のpHを有する生理的環境において使用するのに適し、したがって、このようなpHを有してよい。これらの組成物は、好ましくは、室温又は冷却条件下で保存してよい。
【0097】
ボツリヌストキシンを含有する組成物又は器具は、通常、1回の適用当たり皮膚1cm当たり、約1U〜約20,000U、好ましくは約1U〜約10,000Uのボツリヌストキシンの用量でボツリヌストキシンを提供するように、適用される。これらの範囲内のより多い投与量は、好ましくは、例えば、制御放出物質と組み合わせて使用し、又は、除去する前の、皮膚上での存在時間をより短くさせる。
【0098】
インスリンの場合、本発明の組成物は、約0.011U〜約5000U、好ましくは約0.1U〜約500U/グラムを含有する。ある形態のインスリンと本明細書で説明する正に帯電した担体分子を含む組成物は、好ましくは、それぞれ、約30:1〜約1.01:1、より好ましくは約6:1〜約1.25:1のインスリン:担体の範囲である。同様に、担体分子の量、又はインスリンに対するその比は、問題の組成物において使用するためにどの担体が選択されるかによって変わると考えられる。
【0099】
その形態の点で、本発明の組成物としては、液剤、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)、懸濁剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、或いは、皮膚及び組成物を使用し得る他の組織に適用するために使用される他の一般的な固体又は液体組成物を挙げることができる。このような組成物は、ボツリヌストキシン、インスリン又は他の生物学的に活性な作用物質、及び担体分子に加えて、場合によっては麻酔薬、かゆみ止め活性剤、植物エキス、コンディショニング剤、濃色化剤若しくは淡色化剤、光輝顔料、湿潤剤、マイカ、鉱物、ポリフェノール、シリコン若しくはその誘導体、日焼け止め、ビタミン、及び植物薬(phytomedicinal)を含めて、抗菌薬、保湿剤及び水和剤、浸透剤、保存剤、乳化剤、天然油又は合成油、溶剤、界面活性剤、洗浄剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、抗酸化剤、芳香剤、増量剤、増粘剤、ワックス、臭気吸収剤、染料、着色剤、散剤、粘度調節剤及び水など、このような製品において一般に使用される他の成分を含有してもよい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0100】
本発明による組成物は、インスリン、ボツリヌストキシン、又は送達しようとする他の物質と担体とが、それらが制御された方式で時間をかけて皮膚上に放出されるように、ある物質内にカプセル化又は別の方法で含有されている、制御放出組成物又は持続放出組成物の形態でよい。送達しようとする物質と担体は、マトリックス、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、マイクロスフェアなどの内部に、又は、固体粒子物質内部に含有されてよく、これらはすべて、1種又は複数の物質を時間をかけて放出するように選択及び/又は構築される。治療物質及び担体は、一緒に(例えば、同じカプセル内に)、又は別々に(別々のカプセル内に)カプセル化されてよい。
【0101】
本発明の組成物を被験者に投与することは、当然、本発明の別の態様である。ボツリヌストキシンの場合、最も好ましくは、医師又は他の医療従事者によって、又はその指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期に渡る一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。前述の目的のためにボツリヌストキシンを経皮送達するために、効果が望まれる皮膚の1つ又は複数の位置に前述の組成物を局所的に適用する。その性質が原因となって、最も好ましくは、適用するボツリヌストキシンの量は、いかなる有害又は望ましくない結果ももたらさずに所望の結果を生み出すと考えられる適用速度及び適用頻度で、注意して使用すべきである。
【0102】
インスリンの場合、入院患者又は院内治療(in-office treatment)のために、医療従事者によって、又はその指示のもとで投与を実施することになるが、さもなければ、患者によって実施される可能性がある。制御放出及び/又は観察を伴う、皮膚パッチなどによる投与は、一般的な方法であるらしく、したがって、本発明のインスリン含有組成物は、しばしば、皮膚パッチ又は他の器具に含有されて提供されることになる。免疫化に適した抗原の場合、最も好ましくは、医師又は他の医療従事者によって、又はその指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期に渡る一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。したがって、持続放出組成物も、本発明によって企図される。前述の目的のために免疫化に適した抗原を経皮送達するために、皮膚、又は爪体及び周囲の皮膚に前述の組成物を局所的に適用する。抗真菌薬などの非タンパク質非核酸系治療薬の場合、好ましくは、医師又は他の医療従事者の指示のもとで組成物を投与する。1回の治療で、又は、長期に渡る一連の定期的治療においてそれらを投与してよい。持続放出組成物は、非タンパク質非核酸系治療薬についても企図される。抗真菌薬は、例えば、人工爪体、ラッカー(lacquer)、着色剤を含むマニキュア液、ゲル、又はこれらのうちの任意のもの又はすべての組合せを使用して、指の爪若しくは足指の爪体又は周囲の解剖的構造体に投与してよい。前述の目的のためにボツリヌストキシンを経皮送達するために、前述の組成物を局所的に皮膚に適用する。
【0103】
医療従事者の指示のもとで、又は患者若しくは被験者によって、本発明の組成物を投与するためのキットは、この目的に適する特別仕様の(custom)アプリケーターも含んでよい。「特別仕様のアプリケーター」という用語は、抗真菌薬を投与するための、言及した手段を含むことを意図している。
【0104】
別の態様では、本発明は、前述の正に帯電した担体と、インスリン、ボツリヌストキシン、免疫化に適した抗原、抗真菌薬、又は、例えば、一般に、治療的に血中グルコースレベルを変えない治療用タンパク質、治療用の核酸ベースの作用物質、若しくは、非タンパク質非核酸系治療物質など他の生物学的に活性な作用物質の有効量との組合せを局所適用するための方法に関する。前述したように、適切なタイプ及び量のこれら2種の物質、具体的には担体及び生物学的に活性な作用物質を含有する本発明の組成物を使用することによって、投与を実施することができる。しかし、本発明は、必ずしも同じ組成物中ではないが、これら2種の物質を一緒に投与することも含む。例えば、治療物質又は生物学的に活性な物質を、乾燥した形態で皮膚パッチ又は他の分配器具に組み入れてよく、また、それら2種が一緒に作用して所望の経皮送達をもたらすように、パッチを適用する前に皮膚表面に正に帯電した担体を適用してもよい。したがって、この点で、2種の物質、具体的には担体及び生物学的に活性な作用物質は、一緒に若しくは協同して作用し、又は、おそらくは相互作用してインサイチュで組成物又は組合せを形成する。
【0105】
組成物の調製方法
別の態様では、本発明は、薬剤組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した第1の主鎖、或いは、複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した第2の主鎖、或いは、複数の負に帯電した標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴ核酸、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質を有する、負に帯電した第3の主鎖、又は負に帯電した1つの生物学的作用物質、
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーとを、
製薬上許容される担体と組み合わせて、正味の正電荷を有する非共有結合性複合体を形成させることを含み、且つ、メンバーのうちの少なくとも1つがi)、ii)、iii)又はv)から選択されることを条件とする方法を提供する。
【0106】
本明細書で説明するように、本発明のいくつかの実施形態又は組成物における関連した態様では、いくつかのタイプの物質の経皮送達を実現するために、正に帯電した主鎖又は担体を単独で使用してもよい。この場合、約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の正に帯電した担体を含有する、ボツリヌストキシンや血中グルコースレベルを低減しない他の治療用タンパク質など生物学的に活性な作用物質を含む組成物及び方法が好ましい。1×10−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10−9〜約50重量%の正に帯電した担体を含有する、抗真菌薬や免疫化に適した抗原などの非核酸非タンパク質系治療物質を含む組成物及び方法も好ましい。本発明のすべての態様において、担体と生物学的に活性な作用物質との結合は、非共有結合性の相互作用によるものであり、例えば、イオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0107】
本発明の広範な適用範囲は、様々な薬剤組成物を調製できる容易さによって示される。通常、組成物は、様々な正味の正電荷を有する組成物を得るための比及び順序で、正に帯電した主鎖成分を対象となる所望の成分(例えば、DNA、標的部分、イメージング部分、若しくは治療成分)と混合することによって調製される。多くの実施形態で、組成物を投与するための製薬上許容される担体及び希釈剤を用いることによって、例えば枕元で、組成物を調製することができる。或いは、組成物は、諸成分を適切に混合することによって調製し、次いで、凍結乾燥し、使用又は適切な送達媒体中に配合するまで、(通常は室温以下で)保存することもできる。
【0108】
局所投与、皮膚投与、経口投与、直腸投与、膣投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、眼内投与、経皮投与などに適した混合物を構成するように、組成物を調製することができる。本発明の薬剤組成物は、好ましくは、注射剤、特に所望の器官への直接注射、又は(皮膚及び/若しくは粘膜への)局所投与用に製薬上許容されている媒体を含有する。これらは、具体的には、無菌の等張性溶液又は乾燥組成物、特に、状況に応じて滅菌水又は生理食塩水を加えることによって、注射液剤を調製できる、凍結乾燥させた組成物でよい。例えば、注射用に使用する核酸の用量、及び投与回数は、様々な条件に応じて、特に、使用する投与方式、該当する病状、発現される遺伝子、或いは所望の治療持続期間に応じて、適合させることができる。
【0109】
或いは、組成物を局所的に適用すべき場合、例えば、経皮送達が望まれる場合、例えば、正に帯電した主鎖又は担体で皮膚が別々に処置される皮膚パッチを用いることによって、対象となる1種又は複数の成分を乾燥した形態で皮膚に適用することができる。この方式では、組成物全体は、インサイチュで本質的に形成され、患者又は被験者に投与される。
【0110】
組成物の使用方法
送達方法
様々な方法を用いて、インビボ又はエックスビボで、被験者、細胞、又は標的部位に本発明の組成物を送達することができる。実際には、治療すべき組織に最終的に組成物を接触させるのに通常使用される経路のうちの任意のものを使用することができる。好ましくは、組成物は、製薬上許容される担体と共に投与される。このような化合物を投与する適切な方法は、当業者にとって利用可能且つ周知であり、個々の組成物を投与するのに複数の経路を使用できるが、しばしば、特定の経路が、別の経路と比べてより即時的且つより効果的な反応をもたらし得る。製薬上許容される担体は、1つには、投与される個々の組成物によって、並びに、その組成物を投与するのに使用される個々の方法によって、決定される。したがって、本発明の薬剤組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed.1985を参照されたい)。
【0111】
投与は、例えば、静脈内、局所、腹腔内、真皮下、皮下、経皮、筋肉内、経口、関節内、非経口、鼻腔内、又は吸入によってでよい。したがって、投与に適した部位としては、それだけには限らないが、皮膚、気管支、胃腸管、眼、及び耳が挙げられる。これらの組成物は、通常、従来の薬剤用担体又は賦形剤を含み、また、他の医薬品物質、担体、補助剤などをさらに含むことができる。好ましくは、製剤は、本発明の組成物の約5重量%〜75重量%となり、残りの部分は、適切な医薬品賦形剤からなる。当技術分野で周知の方法によって、適切な賦形剤を、個々の組成物及び投与経路に合わせることができる(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)を参照されたい)。
【0112】
製剤は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、エマルジョン、坐剤、停留浣腸(retention enema)、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、エアロゾルなど、固体、半固体、凍結乾燥した粉末、又は液体剤形の形態をとることができる。薬剤組成物が、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態をとる実施形態では、製剤は、生物学的に活性な組成物と共に、以下のもの、即ち、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなどの希釈剤;デンプンやその誘導体などの崩壊剤(distintegrant);ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;並びに、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体などの結合剤のうちの任意のものを含有してよい。組成物は、アンプルやバイアルなどの、単位投与又は多回投与用の密閉容器に入れて提供され得る。患者に投与される用量は、時間の経過と共に患者の有益な治療応答を実現するのに十分な量でなくてはならない。本発明は、詳細には、「治療的」又は「生物学的に活性なタンパク質」という用語を使用する場合、特定の抗原に結合するだけ以外に生物活性を有さない抗体断片を除外する。しかし、免疫化に適した抗原は、免疫応答を開始するなど他の生物活性を有するため、これらは、本発明の適切な態様に含まれたままである。さらに、特定の抗原に結合し、それによってリガンド結合を妨害し、又は抗原の構造を改変することによって生物活性又は治療効果を有する作用物質も、本発明に含まれる。
【0113】
いくつかの実施形態では、持続放出又は制御放出製剤は、生物又は培養中の細胞に投与することができ、また、これらは、所望の組成物を含むことができる。例えば、注射によって、生物の組織に持続放出組成物を投与することができる。「持続放出」とは、その組成物、好ましくは、対象となる導入遺伝子をコードするもの、又は生物学的物質若しくは治療物質が、粘性がより低い媒体、例えば、生理食塩水溶液中のその組成物を投与することによって実現されると考えられるよりも長い期間、周辺組織又は培養中の細胞によって取込まれるのに利用可能とされていることを意味する。
【0114】
単独で又は他の適切な成分と組み合わせて、組成物を、吸入によって投与され得る、エアロゾル製剤(即ち、「噴霧される」ことができる)に調製することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオルメタン、プロパン、窒素など加圧された許容される高圧ガス中に入れてよい。吸入による送達のために、乾燥粉末(例えば、Nektar Therapeutics社製、サンカルロス、カリフォルニア州)としてこれらの組成物を送達することもできる。
【0115】
例えば、静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下の経路によるものなど非経口投与に適した製剤としては、抗酸化薬、緩衝剤、静菌薬、及び製剤を所期の受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性無菌注射液、並びに、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁剤が挙げられる。
【0116】
他の投与方法としては、それだけには限らないが、血管形成バルーン、カテーテル、及びゲル形成を用いた投与が挙げられる。血管形成バルーン、カテーテル、及びゲル形成による送達の方法は、当技術分野で周知である。
【0117】
イメージング法
当業者には、様々なイメージング用途に合わせて本発明の組成物を調整できることが理解されよう。一実施形態では、成分ベースの系をイメージングに用いて、仮想結腸鏡検査を実施することができる。現在のところ、仮想結腸鏡検査は、本質的には、結腸に造影剤を注入し、CT上で画像を可視化し、次いで、3D画像を復元するものである。MRに対しても同様の技術を使用することができる。しかし、大便、粘液、及び空気はすべて造影剤の妨害物となり、結腸壁の復元物に偽の表面を与えることがある。細胞標的の造影剤の添加は、これらの妨害物に打ち勝って真の壁復元物を実現するのに寄与し、また、偽陽性及び偽陰性の双方を回避するのに寄与すると考えられる。この場合に成分ベースの系を適用することができるいくつかの方法がある。最も単純には、陽イオン性の効率主鎖を、単一の造影剤、例えば、CT、MR、又は光学的なものと共に適用することができる。このようにして、細胞表面の層を可視化し、異常又は妨害物があれば、画像復元物の中で詳細にすることができる。しかし、成分ベースの系は、特異的な第2の作用物質の添加という追加の選択肢を提供する。この作用物質は、陽イオン性の効率主鎖、異なるイメージング部分、及び標的成分、例えば、結腸癌に特徴的な2種の抗原を標的とする成分からなり得た。単純なものから診断用までのイメージング部分は、1種がCT造影剤で、もう一方がMR造影剤となるように、又は、両方がMR造影剤で、1種がT2剤でもう一方がT1剤であるように、選択することができる。この方式では、以前のとおりに表面を復元することができ、また、腫瘍抗原に特異的な任意の領域を可視化し、元の復元物に重ねることができる。さらに、標的化診断システムにも同様に治療物質を組み入れることができる。(また一方では治療と組み合わせて)同様の戦略を限局性腸炎及び潰瘍性大腸炎に適用することができる。或いは、例えば、黒色腫を診断又は管理する場合に、好ましくは蛍光性イメージング部分と併用して、光学的なイメージング部分及び検出法を使用することができる。光学的イメージング物質は、例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択することができる。
【実施例1】
【0118】
本実施例は、本発明の正に帯電した主鎖又は担体を用いて、極めて大型の複合体、即ち青色蛍光タンパク質(BFP)導入遺伝子を含むプラスミドを経皮送達するのに適した組成物を例示する。
【0119】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−GlyArgに共有結合している)、分子量150,000のポリリジンに−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。第2のサイズのペプチジル担体を示すために、修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。別の対照ポリカチオン、即ち、活性化されたデンドリマーベースの作用物質である「スーパーフェクトSuperfect(登録商標)」(Qiagen社製)を、高いインビトロトランスフェクション速度の基準として選択した(即ち、同時に陽性対照及びインビトロの毒性に対する現況技術の効率の基準となる)。
【0120】
治療物質の選択
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質(BFP)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ(Gaithersburg)、メリーランド州)を使用した。BFPは、トランスフェクトされ、その後、その遺伝子を転写及び翻訳する細胞に対する同定可能なマーカーとしての機能を果たし、蛍光顕微鏡下で直接(即ち、さらに染色せずに)可視化することができる。したがって、有効搭載量(payload)の送達前に、複合体が原形質膜と核膜の双方を通過した細胞のみが、導入遺伝子を発現することができる。この特有のプラスミドは、約264万の分子量を有し、したがって、これらの複合体を介する極めて大型の治療薬の送達を評価するために選択された。
【0121】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。電荷密度の増加によりサイズは大きくなる(即ち、より多くの主鎖が複合体1つにつき存在する)が、複合体当たりの効率因子密度の増加が、これらの変化を相殺することができる。したがって、最良の結果は、低い比率(即ち、大きさに基づいて)又は高い比率(即ち、効率因子密度に基づいて)で起こり得、ここでは、KNR2についてどちらも評価する。K2効率及びスーパーフェクト効率の最適な比は、製造業者の推奨及び最大効率に関する以前の報告に基づいて選択した。細胞培養において評価される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、核酸治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。
【0122】
以下の混合物を調製した。
1)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の電荷比のK2。
2)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して15:1の比のKNR2。
3)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して10:1の比のKNR2。
4)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の比のKNR2。
5)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して1.25:1の比のKNR2。
6)CMVプロモーターによって駆動される、青色蛍光タンパク質を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して5:1の電荷比の、製造業者の推奨によるスーパーフェクト。
【0123】
細胞培養手順
細胞培養実験はすべて、処置群の正体について盲検化された観察者によって実施された。6ウェルプレートで、70%コンフルエントなHA−VSMC初代ヒト大動脈平滑筋細胞(21継代;ATCC、ロックビル(Rockville)、メリーランド州)に各溶液1.0mLを加え、10%血清を含むM−199中で、摂氏37度、10%COで48時間増殖させた。未処置の対照ウェルも同様に評価し、1群につきn=5ウェルで各群を評価した。
【0124】
効率分析
盲検化された観察者は、BFPフィルター及び平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600エピ蛍光顕微鏡を用いて、各ウェルの表面から60度、180度、及び200度で、未処置の細胞プレートの低倍率写真(全体で10倍)を撮影した。Image Pro Plus 3.0画像解析セット(Media Cybernetics社製、シルバースプリング(SilverSpring)、メリーランド州)を用いて、陽性の細胞領域全体に対するパーセントを測定した。この結果をそれぞれについて細胞領域全体に標準化し、遺伝子送達の効率(検出可能なレベルで導入遺伝子を発現する全細胞の比率)として報告した。
【0125】
毒性分析
続いて、盲検化された観察者は、色素排除アッセイ(生細胞は色素を排除するが、生育不能な細胞は排除できない)、続いて、リン酸緩衝化生理食塩水中の0.4%SDSへの可溶化で各ウェルを評価した。トランスフェクション剤の毒性の直接的な尺度として生育不能な細胞を定量的に評価するために、Spectronic Genesys 5 UV/VIS分光光度計により、595nm(青色)の波長で試料を評価した。OD595測定に先立って、一致するOD280値に濃度を調整することによって、細胞数が同一になるように試料を標準化した。
【0126】
データ処理及び統計分析
盲検化された観察者は、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社製、シルバースプリング、メリーランド州)を用いて、バッチ式(batch)画像解析によって陽性染色の総量を測定し、それぞれについて陽性染色のパーセントを決定するために、横断面領域全体にそれを標準化した。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
結果
効率:
効率性の結果は以下のとおりであった(平均値±標準誤差)
1)0.163±0.106%
2)10.642±2.195%
3)8.797±3.839%
4)15.035±1.098%
5)17.574±6.807%
6)1.199±0.573%
第4回及び第5回の試験は、ポリリジン単独及びスーパーフェクトの双方と比べて、統計学的に有意な(Fisher PLSD及びTUKEY−A事後試験を用いる1因子反復測定分散分析によってP<0.05)遺伝子送達効率の向上を示している。
【0127】
毒性
平均毒性データは以下のとおりである(OD595でのAUで示されている。生理食塩水単独の場合に示されるような低い値は、低い毒性と相関があり、条件1で示されるようなより高い値は、高い細胞毒性を示唆する。
生理食塩水−0.057A、
1)3.460A、
2)0.251A、
3)0.291A、
4)0.243A、
5)0.297A、
6)0.337A。
【0128】
結論
対照、さらには現在の基準であるスーパーフェクトのものより、より毒性が低くより効率的な遺伝子送達を、1.25対4.0の比率のKNR2及びDNAを用いて実現することができる。この実験は、この担体を用いて、極めて大型の治療用複合体を膜を通過して送達できる可能性を裏付ける。
【実施例2】
【0129】
本実施例は、単回投与後の、本発明の担体による皮膚を通過しての大型核酸の輸送を例示する。
【0130】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−GlyArgに共有結合している)、分子量150,000のポリリジンに−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾された主鎖を先と同様に「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。別の対照ポリカチオン、即ち、活性化されたデンドリマーベースの作用物質であるSuperfect(Qiagen社製)を、高いトランスフェクション速度の基準として選択した(即ち、同時に陽性対照及びインビトロの毒性に対する現況技術の効率の基準となる)。
【0131】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この場合、βgalは、トランスフェクトされ、その後、その遺伝子を転写及び翻訳する細胞に対する同定可能なマーカーとしての機能を果たし、外来酵素に対する特異的染色後に直接可視化することができる。したがって、複合体が皮膚を通過し、次いで標的細胞に到達し、有効搭載量の送達前に、原形質膜と核膜の双方を通過した細胞のみが、導入遺伝子を発現することができる。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有する。
【0132】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築する。製造業者の推奨に基づき、最大効率を決定するインビトロ実験の前に、K2効率、KNR2効率、及びスーパーフェクト効率の最適な比を選択した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、核酸治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
AK1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びペプチジル担体KNR2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィル(Setaphil)保湿剤と混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AL1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びK2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AM1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計80マイクログラム)及びスーパーフェクトを電荷比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0133】
ペプチジル担体及び核酸治療薬を用いた1回の処置後の経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black 6マウス(1群当たりn=4)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部(dorsal back)皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。処置の24時間後に、マウスをCO吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した(Waugh, J.M., M. Kattash, J. Li, E. Yuksel, M.D. Kuo, M. Lussier, A.B. Weinfeld, R. Saxena, E.D. Rabinovsky, S. Thung, S.L.C. Woo, and S.M. Shenaq. Local Overexpression of Tissue Plasminogen Activator to Prevent Arterial Thrombosis in an in vivo Rabbit Model. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 96(3): 1065-1070. 同様に、Elkins CJ, Waugh JM, Amabile PG, Minamiguchi H, Uy M, Sugimoto K, Do YS, Ganaha F, Razavi MK, Dake MD. Development of a platform to evaluate and limit in-stent restenosis. Tissue Engineering 2002. Jun;8(3): 395-407)。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0134】
毒性
上記の効率に関して分析したものに対する毒性を、対にした切片での色素排除によって評価した。これらの方法を併用することは確実ではないため、切片は、効率性又は毒性のいずれかについてのみ染色を受けた。毒性分析の場合、これらの切片を排除色素に5分間浸し、次いで、摂氏37度、10%COで30分間インキュベートした。この期間中に色素を排除しなかった細胞はすべて、生育不能とみなした。
【0135】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性(ここで使用した基質法では青色)又は細胞毒性に関して陽性の数を決定するために、マニュアルを確認しながら前述のImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。各々に対するヌクレアファーストレッド染色によって、これらの結果を横断面全体の細胞数に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー(Berkeley)、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0136】
結果
結果を以下の表にまとめ、図3に示す。正に帯電したペプチジル経皮送達担体は、K2(本質的には陰性対照)及び効率のベンチマーク標準のスーパーフェクトの双方に対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な上昇を実現した。スーパーフェクトは、K2よりも統計学的に有意な改善を達成したが、KNR2は、このモデルの系のスーパーフェクトよりも1桁以上大きな送達効率の改善を示した。
実施例2:各処置群の全数に対するパーセントとしての、β−ガラクトシダーゼ陽性細胞の平均値及び標準誤差
【0137】
【表1】

【0138】
毒性についての結果を図4に示す。この図は、処置の24時間後に生育不能のままであった領域全体のパーセントを示す。この場合、K2は、以前に説明されているように(Amabile, P.G., J.M.Waugh, T. Lewis, C.J. Elkins, T. Janus, M.D. Kuo, and M.D. Dake. Intravascular Ultrasound Enhances in vivo Vascular Gene Delivery. J.Am.Col.Cardiol. 2001 June; 37(7):1975-80)K2の輸送効率が低い用量でさえ、KNR2又はスーパーフェクトに比べて統計学的に有意な、細胞毒性を示している。
【0139】
結論
ペプチジル経皮担体は、特に、先に考察した導入遺伝子発現及び複合体全体の大きさの制約を考慮すれば、高効率で、大型の複合体を皮膚を通過して輸送することができる。(1)方法が非常に簡略化されており、画像解析がより正確であること、(2)効率の点レベルの実証(point demonstration)が、すでにII.Bで結論的に与えられていたこと、(3)非細胞性成分が断面のかなりの部分を占めるため、領域測定が、インビボの結果を理解するためのより広い範囲を提供すること、(4)さらに大きな非ペプチジル担体複合体に対する比較が容易になることを理由として、ここでは、陽性の数ではなく陽性領域を分析に使用した。
【実施例3】
【0140】
本実施例は、本発明の正に帯電したペプチジル担体を7日間連続して適用することによる、皮膚を通過しての大型核酸ベースの治療薬の経皮送達を例示する。
【0141】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−GlyArgに共有結合している)、分子量150,000のポリリジンに−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電したペプチジル主鎖を構築した。修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0142】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有し、したがって、ペプチジル担体を介する、皮膚を通過しての極めて大型の治療薬の送達を評価するために選択された。
【0143】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。実験の比は、先の実験で示した単回投与実験に対応するように選択した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、核酸治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
AK1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及びペプチジル担体KNR2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AL1と名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及びK2を電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0144】
ペプチジル担体及び核酸治療薬による1日1回の処置を7回受けた後の累積的な経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。この手順を1日のうちのほぼ同じ時間に1日1回、7日間繰り返した。7日間の処置後に、マウスをCO吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0145】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に関して陽性の領域を決定するために、マニュアルを確認しながら前述のImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。これらの結果をそれぞれについて細胞の横断面領域全体に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0146】
結果
結果を以下の表にまとめ、図5に示す。ペプチジル経皮送達担体は、K2に対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な増大を実現した。
実施例3.各処置群に対して1日1回、計7回適用後の、全領域に対するパーセントとしての、β−ガラクトシダーゼの累積的導入遺伝子発現の平均値及び標準誤差
【0147】
【表2】

【実施例4】
【0148】
非ペプチジル担体
本実施例は、7日間連続の適用において本発明の正に帯電した非ペプチジル担体を用いることによる、皮膚を通過しての大型核酸ベースの治療薬の経皮送達を例示する。
【0149】
主鎖の選択
PEI側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、30%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に30個が−GIyArgに共有結合している)、分子量1,000,000のポリエチレンイミン(PEI)に−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。大型の非ペプチジル担体を示すために、修飾された主鎖を「PEIR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のPEI(「PEI」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0150】
治療物質の選択
本実験のために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動される、大腸菌βガラクトシダーゼ(βgal)の導入遺伝子全体及びフランキング配列の一部分を含む8.5キロベースのプラスミド(pSportベースの鋳型、Gibco BRL社製、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用した。この特有のプラスミドは、約2,805,000の分子量を有する。
【0151】
試料の調製
各事例において、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、核酸治療薬の用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
ASと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び対照PEIを電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、in vivo実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
ATと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び複合体非ペプチジル担体PEIR(「PEIR」)を電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
AUと名づけた群:最終アリコート当たり8マイクログラムのβgalプラスミド(p/CMV-sport-βgal)(即ち、合計240マイクログラム)及び高度に精製されたEssentia非ペプチジル担体PEIR(「純粋なPEIR」)を電荷比5:1で混合して均質にし、Tris−EDTA緩衝液で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、インビボ実験のために200マイクロリットルずつ分取した。
【0152】
非ペプチジル担体及び核酸治療薬による1日1回の処置を7回受けた後の累積的な経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=3)は、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置を、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用された。動物は、脱毛処理は受けなかった。低体温を防止するために管理された熱環境において動物を回復させ、応答するようになった後、一晩、食物及び水を自由に与えた。この手順を1日のうちのほぼ同じ時間に1日1回、7日間繰り返した。7日間の処置後に、マウスをCO吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は、急速凍結し、以前に説明されているような切片上での摂氏37度のβ−ガラクトシダーゼ染色に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0153】
データ処理及び統計分析
データ収集及び画像解析は、盲検化された観察者が実施した。前述したように染色した切片の全体を、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で撮影した。得られた画像を、β−ガラクトシダーゼ酵素活性に関して陽性の領域を決定するために、マニュアルを確認しながらImage Pro Plusソフトウェアを用いて、バッチ式画像解析処理にかけた。これらの結果をそれぞれについて細胞の横断面領域全体に標準化し、横断面の陽性染色のパーセントとして表にした。次いで、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を続いて測定した。
【0154】
結果
結果を以下の表にまとめ、図6に示す。非ペプチジル経皮送達担体は、複合型でも超高純度型でも、PEIに対して、送達効率及び導入遺伝子発現の統計学的に有意な増大を実現した。PEIRの超高純度型は、算出される試薬の特異的活性がより高いことと一致して、標準のPEIRより高い効率になる傾向を示した。
実施例4.各処置群に対して1日1回、計7回適用後の、全領域に対するパーセントとしての、β−ガラクトシダーゼの累積的導入遺伝子発現の平均値及び標準誤差
【0155】
【表3】

【0156】
結論
非ペプチジル経皮担体は、特に、先に考察した導入遺伝子発現及び複合体全体の大きさの制約を考慮すれば、高効率で、大型の複合体を皮膚を通過して輸送することができる。効率は、ペプチジル担体のより小型の複合体で得られたものほど高くはなかったが、著しい増加が実現された。注目すべきことに、大型非ペプチジル複合体による導入遺伝子発現の分布は、ほとんど専ら毛包に位置していたのに対し、ペプチジル担体に対する結果は、断面の全体にわたって広がっていた。したがって、サイズ及び主鎖の向性は、送達のナノ力学的な標的化に使用することができる。
【実施例5】
【0157】
本実験は、1回の投与後に、標識した完全なタンパク質ボツリヌストキシンを含有する大型複合体を無傷の皮膚を通して輸送するためのペプチジル担体の使用を対照と比べて実証する。
【0158】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−GlyArgに共有結合している)、分子量112,000のポリリジンに−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾した主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0159】
治療物質
ボツリヌストキシンAの「Botox(登録商標)」ブランド(Allergan社製)を本実験のために選択した。その分子量は、約150,000である。
【0160】
試料の調製
製造業者の取扱い説明書に従って、ボツリヌストキシンに水を加えて元に戻した。計算上12倍モル過剰のスルホNHS−LCビオチン(Pierce Chemical社製)を用いて、一定分量のタンパク質をビオチン標識した。標識した生成物を「Btox-b」と呼んだ。
【0161】
各事例において、陰性度の高い大型核酸複合体の送達の際のように、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。正味の中性又は正電荷は、陰性度の高い細胞表面プロテオグリカン及び細胞外基質からタンパク質複合体が反発するのを防止する。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、Btox-bの用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
「JMW−7」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びペプチジル担体KNRを計算上の分子量比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−8」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びKを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を1.8mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0162】
ペプチジル担体及び標識したボツリヌストキシンを用いた1回の処置後の経皮送達効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、背部皮膚の頭側部分(マウスの口や肢がこの領域に届かないために選択された)に適用される、計量した用量200マイクロリットルの適切な処置の局所適用を受けた。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、マウスをCO吸入によって安楽死させ、盲検化された観察者が、処置した皮膚部分の全層を採取した。処置部分を3つの部分に等分し、頭側部分を10%中性緩衝ホルマリン中で12〜16時間固定し、次いで、パラフィン包埋するまで70%エタノール中で保存した。中央部分は急速凍結し、以下に要約するような、盲検化された観察者によるビオチン可視化に直接使用した。尾側の処置部分は、可溶化調査のために急速凍結した。
【0163】
以下のようにしてビオチン可視化を行った。手短に言えば、各切片を「NeutrAvidin(登録商標)」緩衝溶液に1時間浸した。アルカリホスファターゼ活性を可視化するために、断面を生理食塩水中で4回洗浄し、次いで、NBT/BCIP(Pierce Scientific社製)に1時間浸した。次いで、切片を生理食塩水中ですすぎ、平面アポクロマートレンズの付いたNikon E600顕微鏡で全体を撮影した。
【0164】
データ処理及び統計分析
盲検化された観察者は、Image Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社製、シルバースプリング、メリーランド州)を用いて、バッチ式画像解析によって陽性染色の総量を測定し、それぞれについて陽性染色のパーセントを決定するために、横断面領域全体にそれを標準化した。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0165】
結果
ビオチン標識したボツリヌストキシンに対して陽性な断面領域の平均を、KNR(「EB-Btox」)又はK(「nl」)のいずれかと共にBtox-bを1回局所投与した後の全領域に対するパーセントとして報告した。これらの結果を以下の表に示し、図7に例示する。図7では、標識に対して陽性の領域を、Btox-b及びペプチジル担体KNRを含む「EB-Btox」、並びに対照としてのポリカチオンKと共にBtoxbを含む「nl」による1日1回の処置を3日間行った後の全領域に対するパーセントとして決定した。各群について平均及び標準誤差を示す。
実施例5.KNR(JMW−7)又はK(JMW−8)と共にBtox-bを30分間、1回局所投与した後の、全断面に対するパーセントとしての、標識されたボツリヌストキシン領域の平均値及び標準誤差
【0166】
【表4】

【実施例6】
【0167】
実施例5は、ペプチジル経皮担体が、無傷の皮膚のマウスモデルにおける局所適用後の効率的なボツリヌストキシン輸送を可能にすることを実証した。しかし、本実験は、皮膚を通過して移動した後に、タンパク質ボツリヌストキシン複合体が機能的な形態で放出されるかどうかは示さなかった。したがって、このペプチジル担体を用いて(さらに、タンパク質を共有結合で修飾せずに)、無傷の皮膚を通って、ボツリヌストキシンを局所薬として治療的に送達させることができるかどうかを評価するために、以下の実験を構成した。
【0168】
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−GlyArgに共有結合している)、分子量112,000のポリリジンに−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を再び構築した。修飾された主鎖を「KNR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。実施例5の場合と同じボツリヌストキシン治療物質を使用し、同じ方法で調製した。以下のように試料を調製した。
「JMW−9」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びペプチジル担体KNRを計算上の分子量比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−10」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びKを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのCetaphilと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「JMW−11」と名づけた群:ポリカチオン無しの、アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)をリン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0169】
ペプチジル担体及びボツリヌストキシンを用いた1回の処置後の治療効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=4)は、つま先から大腿中央まで均一に適用される適切な処置の計量した用量400マイクロリットルの局所適用を受けた。両方の肢に処置し、両側に無作為に処置を施した。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、公表されているボツリヌストキシン投与後の足の可動性に関する指外転スコア(Aoki, KR.. A comparison of the safety margins of botulinum neurotoxin serotypes A, B, and F in mice. Toxicon. 2001 Dec; 39(12): 1815-20)に従って、マウスの指の外転能力を評価した。マウスの可動性も主観的に評価した。
【0170】
データ処理及び統計分析
2名の盲検化された観察者が、それぞれ独立に、指外転スコアを表にした。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0171】
結果
KNR(「JMW−9」)、K(「JMW−10」)、又はポリカチオン無しの希釈剤(「JMW−11」)と共にボツリヌストキシンを1回局所投与した後の平均指外転スコアを以下の表に示し、図8の代表的な顕微鏡写真において例示する。ペプチジル担体KNRは、互いに同等である両方の対照と比べて、統計学的に有意な、皮膚を通過してのボツリヌストキシンの機能的送達をもたらした。本実験をさらに独立して反復することにより(合計3回の独立した実験の全てで、KNRを伴う局所的ボツリヌストキシンから統計学的に有意な麻痺が起こり対照では起こらないという同一の結論が得られた)、本発明の研究結果が確認され、Kのある場合又は無い場合(即ち、双方の対照)に局所的ボツリヌストキシンの間で有意な差は明らかにされなかった。興味深いことに、マウスは、一貫して、麻痺した肢の方へ移動した(処置された動物の100%、並びに両対照群の対照の0%で起こった)。図8で示すように、対照のポリカチオンを加えたボツリヌストキシン、又はポリカチオン無しのボツリヌストキシン(「Btox単独」)で処置された肢は、(持ち上げられたときの防衛機構として)指を動かすことができるが、ペプチジル担体KNRを加えたボツリヌストキシン(「Essentia Btoxローション剤」)で処置された肢は動かすことができなかった。
実施例6.ペプチジル担体KNR(「JMW−9」)と共に、対照のポリカチオンK(「JMW−10」)と共に、又は単独(「JMW−11」)でボツリヌストキシンを1回局所適用した30分後の指外転スコア
【0172】
【表5】

【0173】
結論
本実験は、ペプチジル経皮担体が、治療薬を共有結合で修飾せずに、治療有効量のボツリヌス治療薬を皮膚を通過して輸送できることを実証するのに役立つ。本実験はまた、対照において局所適用された場合はボツリヌストキシンが機能しないことも裏付ける。
【実施例7】
【0174】
本実験は、本発明の非ペプチジル担体の能力を実証する。
【0175】
主鎖の選択
PEI側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、30%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に30個が−GIyArgに共有結合している)、分子量1,000,000のポリエチレンイミン(PEI)に−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電した主鎖を構築した。修飾された主鎖は、大型の非ペプチジル担体を示すために「PEIR」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のPEI(「PEI」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。実施例5と同じボツリヌストキシン治療物質を使用した。
【0176】
製造業者の取扱い説明書に従って、「BOTOX(登録商標)」製品からボツリヌストキシンを元に戻した。各事例において、陰性度の高い大型核酸複合体の送達の際のように、過剰なポリカチオンを使用して、過剰な正電荷を有する最終複合体を構築した。正味の中性又は正電荷は、陰性度の高い細胞表面プロテオグリカン及び細胞外基質からタンパク質複合体が反発するのを防止する。局所適用される組成物の合計体積及び最終pHと同様に、ボツリヌストキシンの用量を全グループにわたって標準化した。以下のように試料を調製した。
「AZ」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及び超高純度型の非ペプチジル担体PEIRを計算上の分子量比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
「BA」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのボツリヌストキシン(即ち、合計60U)及びPEIを電荷比5:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で600マイクロリットルに希釈した。得られた組成物を5.4mlのセタフィルと混合して均質にし、200マイクロリットルずつ分取した。
【0177】
1回処置後の治療効率を測定するための動物実験
処置を施す間、イソフルランの吸入によって動物を麻酔した。麻酔をかけた後、C57 black6マウス(1群当たりn=3)は、つま先から大腿中央まで均一に適用される適切な処置の計量した用量400マイクロリットルの局所適用を受けた。両方の肢に処置し、両側に無作為に処置を施した。動物は、脱毛処理は受けなかった。初回の処置の30分後に、公表されているボツリヌストキシン投与後の足の可動性に関する指外転スコア(Aoki, KR.. A comparison of the safety margins of botulinum neurotoxin serotypes A, B, and F in mice. Toxicon. 2001 Dec; 39(12): 1815-20)に従って、マウスの指の外転能力を評価した。マウスの可動性も主観的に評価した。
【0178】
データ処理及び統計分析
2名の盲検化された観察者が、それぞれ独立に、指外転スコアを表にした。続いて、Statviewソフトウェア(Abacus社製、バークリー、カリフォルニア州)を用いた、反復測定による1元配置分散分析における95%信頼度の有意性分析により、各群の平均値及び標準誤差を測定した。
【0179】
結果
超高純度PEIR(「AZ」)、又は対照のポリカチオンPEI(「BA」)と共に行うボツリヌストキシンの1回局所投与、及び再現(本実験の1回の独立した再現)後の平均の指外転スコアを以下の表に示す。非ペプチジル担体PEIRは、対照と比べて、統計学的に有意な、皮膚を通過してのボツリヌストキシンの機能的送達をもたらした。先と同様に、動物は、麻痺した肢の方向へ同じ所をめぐりながら歩くのが観察された。
実施例7.再現1。超高純度PEIR(「AZ」)、又は対照のポリカチオンPEI(「BA」)と共にボツリヌストキシンを1回局所投与した30分後の指外転スコア。平均値及び標準誤差を示す。
【0180】
【表6】

実施例7.再現2。超高純度PEIR(「AZ1」)、又は対照のポリカチオンPEI(「BA1」)と共にボツリヌストキシンを1回局所投与した30分後の指外転スコア。平均値及び標準誤差を示す。
【0181】
【表7】

【0182】
結論
本実験は、非ペプチジル経皮担体が、ボツリヌストキシンを事前に共有結合で修飾せずに、治療量のボツリヌストキシンを皮膚を通過して輸送できることを実証した。これらの研究結果は、ペプチジル輸送物質によるものを補完する。治療効果を得るために非ペプチジル又はペプチジル担体の使用を選択できることにより、個々の状況、環境、及び適用方法に合わせることが可能になり、本発明の経皮送達の場の幅が広げられる。
【0183】
これらの実施例では、担体無しの局所的ボツリヌストキシンに対する、ペプチジル又は非ペプチジル担体を用いたボツリヌストキシン浸透が、免疫化用の抗原の経皮浸透に対する、特にボツリヌスなど他の方法では皮膚をあまり通らない抗原を用いた免疫化に対する有用性をさらに証明する。機能的ボツリヌストキシンの送達は、少なくとも4つの異なる抗原決定基が完全な状態で経皮送達されることを確実にする。いずれの実施例でも担体が無い場合は機能的ボツリヌストキシンが送達されなかったという事実は、担体が、担体が無い場合の作用物質と比べて、著しい免疫化能力を与えることを裏付ける。免疫化は、免疫応答を開始するのに十分な量の抗原が皮膚を通過することを必要とするため、この手法は、免疫化用の抗原の経皮送達を可能にする。この手法は抗原の共有結合的修飾を必要とせず、ウイルス遺伝子の導入を伴う必要がないため、安全性、安定性、及び効率の点でいくつかの利点が生じる。
【実施例8】
【0184】
本実施例は、TAT効率因子を有するペプチジル及び非ペプチジル担体、並びにボツリヌストキシンとこれらの担体の構築物の作製を詳述する。
【0185】
TAT断片GGGRKKRRQRRRへのポリエチレンイミン(PEI)の結合
側鎖保護基をすべて欠いているTAT断片GGGRKKRRQRRR(6mg、0.004mmol、Sigma Genosys社製、ヒューストン(Houston)、テキサス州)を1mlの0.1M MES緩衝液に溶解した。これに、EDC(3mg、0.016mmol)、続いてPEI 400k分子量の水中50%溶液(w:v)(約0.02ml、約2.5×10−5mmol)を加えた。試験紙によって、pHが7.5であることが測定された。さらに1ml分の0.1M MESを加え、HClを添加してpHを約5に調整した。さらにEDC(5mg、0.026mmol)を加え、pH約5の反応物を一晩攪拌した。翌朝、反応混合物を凍結し、凍結乾燥した。
【0186】
SephadexG-25(Amersham Biosciences社製、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)のカラム(直径1cm×高さ14cm)を滅菌1×PBS中でスラリー状にした。分子量19kDのFITCデキストラン(Sigma社製、セントルイス、ミズーリ州)の溶出によって、カラムを標準化した。標準は、5ml PBSで最初に溶出し、6mlで中央ピークを示し、7mlで次第に消えた。前述のものに由来する凍結乾燥された反応混合物を、少量のPBS中に溶解させ、カラムに加えた。1ml PBSを連続的に適用して、これを溶出させた。画分を回収した。最初の画分は、反応体積を含めて、溶出された最初の3mlからなった。その後の各画分は1mlであった。
【0187】
溶出された画分の280nmでのUV吸光度を分析した。5〜7mlに対応する画分3、4、及び5は、中程度の吸光度ピークを示した。すべての画分を凍結乾燥し、IRスペクトルを測定した。TAT断片の特徴的なグラニジンの3重のピーク(2800〜3000cm−1)が、画分4〜6で認められた。これらの各群は、1700cm−1でアミドの伸びも示し、したがって、TAT断片及びPEIの結合体が確認された。
【0188】
TAT断片GGGRKKRRQRRR(11.6mg、0.007mmol)を用いてもう1回繰り返しを行った。この量は、PEIアミンの30個のうち1つがTAT断片と反応することが予期されるように計算した。これは、前述の元のポリリジン−オリゴアルギニン(KNR)効率因子の組成に近い。TAT断片のPEIアミンへの共有結合の成功が前述のIRによって確認された。
【0189】
TAT断片へのポリリジンの結合
1mlの0.1M MES、pH約4.5に溶かしたポリリジン(10mg 1.1×10−4mmol; Sigma社製)の溶液に、TAT断片(4mg、0.003mmol)、次いでEDC(3.5mg、0.0183mmol)を加えた。得られた反応混合物(pH約4.5)を室温で攪拌した。反応物を−78℃で一晩凍結させた。翌日、反応混合物を室温まで解凍し、飽和炭酸水素ナトリウムの添加によってpHを約8に調整した。前述したように構成し標準化したSephadex G-25カラムに、反応混合物を直接添加した。これは、5ml後から始まる7つの1ml画分に溶出された。UV280吸光度を測定し、画分2、3、及び4において対応するピークが明らかになった。凍結乾燥された画分のIRでは、画分1〜7における特徴的なグアニジンピーク(2800〜3000cm−1)が明らかになった。画分1は1730cm−1に強いピークを生じ、1600cm−1ではピークが無かったのに対し、画分2〜6の場合は反対の結果が当てはまった。したがって、ペプチジル担体、ポリリジンに対するTAT断片の共有結合の成功が確認された。
【0190】
続いて、共有結合されたTAT断片及びPEI(PEIT)、並びに共有結合されたTAT断片及びポリリジン(KNT)をボツリヌストキシンと混合して以下のような非共有結合性複合体を形成させた。
「JL−1」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びPEITを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。
「JL−2」と名づけた群:アリコート当たり2.0ユニットのBtox-b(即ち、合計20U)及びKNTを電荷比4:1で混合して均質にし、リン酸緩衝化生理食塩水で200マイクロリットルに希釈した。
【0191】
非共有結合性複合体の形成後、回転式微量遠心機中で12,000×gで5分間、粒子を遠心分離し、次いで、20マイクロリットルの脱イオン水中に再懸濁させ、IR用のゲルマニム減衰全反射セル上で蒸発させた。このようにして、複合体中のBtox-bの存在を確認した。全体として、本実験は、合成スキームを他の効率因子に適用できたこと、並びに、オリゴアルギニンの正に帯電した分枝又は効率基を含む担体を用いた先の実施例の場合と同様に、得られた担体は、生物学的に活性な作用物質―この場合ボツリヌストキシン―と複合体を形成できることを確認した。
【実施例9】
【0192】
本実験は、特定の抗原を画像化するためのペプチジル担体の能力を実証する。本実施例では、Essentiaペプチジル担体のうちの1つ、KNR2と、光学的イメージング部分、及び黒色腫を標的とする改変された抗体との複合体が、黒色腫の局所的検出に適している。
【0193】
主鎖の選択
リジン側鎖の遊離アミンに対する末端グリシンのカルボキシルを介して、18%の飽和度で(即ち、100個のリジン残基毎に18個が−GlyArgに共有結合している)、分子量150,000のポリリジンに−GlyArgを共有結合させることによって、正に帯電したペプチジル主鎖を構築した。修飾された主鎖を「KNR2」と呼んだ。対照のポリカチオンは、同じサイズ及び同じロットの未修飾のポリリジン(「K2」と呼ぶ、Sigma Chemical社製、セントルイス、ミズーリ州)であった。
【0194】
保存されているヒト黒色腫領域、ガングリオシド2に対するマウスモノクローナル抗体(IgG3、US Biologicals社製、スワンプスコット(Swampscott)(マサチューセッツ州)を、前述のEDC結合を介してポリアスパラギン酸アニオン短鎖鎖(MW3,000)に共有結合させて、「Gang2Asp」と呼ばれる誘導体化抗体を作製した。さらに、配列がATGC−J(今後「ATGC−J」と呼ぶ)であり、「J」は共有結合したテキサスレッド蛍光を示す、オリゴ核酸(Sigma Genosys社製、ウッドランドズ(Woodlands)、テキサス州)をポリアニオンとして用いて陰イオン性のイメージング物質を設計した。本実験のために、6.35マイクログラムのGang2Aspを、0.1712マイクログラムのATGC−Jと組み合わせ、次いで、総体積200マイクロリットルの脱イオン水中で17.5マイクログラムのKNR2と複合体を形成させ、KNR2:ATGC−J:Gang2Aspの最終比を5:1:1とした。この混合物を2分間ボルテックスした。得られた複合体を、水和したCellTekヒト黒色腫スライド、及び対照のCellTekサイトケラチンスライド(SDL社製、デスプレーンズ(Des Plaines)、イリノイ州)に塗布し、5分間インキュベートした後、同じ視野における黒色腫色素の明視野分布に対する蛍光分布の写真評価をした。ATGC−J無し、又はGang2Asp無しの付加的な対照も使用した。
【0195】
結果
非共有結合性複合体は、抗体が無い場合の複合体の分布ではなく、抗体誘導体の向性に従う、光学的イメージング物質の分布を与えた。より注目すべきことには、これらの複合体は、図9に示されるように、着色された黒色腫細胞の分布に一致する分布に従った。
【0196】
結論
本実験は、局所送達に適した担体を用いる、皮膚を通過して輸送するための存続可能な複合体の作製、及び光学的技術による黒色腫の可視化を実証する。このような手法は、例えば、外科的な辺縁設定と組み合わせて使用することができ、又は、定期的な黒色腫観察で使用することができる。当業者には明らかであるように、他の皮膚関連障害の局所診断にも同様に、類似した戦略を容易に使用することができる。光学的イメージング部分の極めて高い感度を前提とすると、これらの非共有結合性複合体によって、これらの障害の検出改善がかなり有望になり得る。
【0197】
本明細書に記載された実施例及び実施形態は、例示するためのものにすぎないこと、並びにそれらを踏まえた様々な修正及び変更が当業者に示唆され、且つそれらが、本出願の精神及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲の内に含まれることを理解されたい。本明細書に引用したすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明で使用する成分の概略図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態の概略図である。
【図3−4】実施例2で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図5】実施例3で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図6】実施例4で説明した、大腸菌β−ガラクトシダーゼの導入遺伝子を含むプラスミドの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図7】実施例5で説明した、ボツリヌストキシンの経皮送達の結果を示すグラフである。
【図8】実施例6で説明した、ボツリヌストキシンの経皮送達の結果を示す写真である。
【図9】実施例9のイメージング複合体について、黒色腫色素が沈着した細胞の明視野分布(パネルa及びc)の後に蛍光性の光学的イメージング物質(パネルb及びd)を示す、2種の異なる視野及び異なる拡大率(パネルa及びbの10倍に対し、パネルc及びdは拡大率40倍)の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的に血中グルコースレベルを変えない生物学的に活性なタンパク質と、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項2】
担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性なタンパク質のより多くの経皮送達を実現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
生物学的に活性なタンパク質が治療活性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
非タンパク質非核酸系の生物学的に活性な作用物質と、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性な作用物質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項5】
担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
生物学的に活性な作用物質が治療活性を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
治療用タンパク質が少なくとも50,000kDの分子量を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片若しくは混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される正に帯電した分枝基を結合した正に帯電したポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項29】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項22に記載の組成物。
【請求項31】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項32】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、及びポリオルニチンから選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項35】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミン含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項38】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項42】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項46】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項47に記載の組成物。
【請求項50】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項47に記載の組成物。
【請求項51】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片若しくは混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される正に帯電した分枝基を結合した正に帯電したポリマーを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項52】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項52に記載の組成物。
【請求項56】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項52に記載の組成物。
【請求項57】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項51に記載の組成物。
【請求項58】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項51に記載の組成物。
【請求項60】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項61】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、及びポリホモアルギニンから選択される、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項64】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
約1×10−20〜約25重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−19〜約30重量%の正に帯電した担体を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項67】
請求項4に記載の制御放出組成物。
【請求項68】
生物学的に活性なタンパク質がボツリヌストキシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項69】
ボツリヌストキシンが、ボツリヌストキシンの血清型A、B、C、D、E、F、及びGから選択される、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
ボツリヌストキシンがボツリヌストキシン誘導体を含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
ボツリヌストキシンが組換型ボツリヌストキシンを含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
生物学的に活性な作用物質を送達するための器具と、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、請求項1に記載の組成物を被験者に投与するためのキット。
【請求項73】
生物学的に活性な作用物質がボツリヌストキシンである、請求項72に記載のキット。
【請求項74】
組成物が、生物学的に活性なタンパク質を皮膚又は上皮を介して被験者に投与するための器具に含まれる、請求項72に記載のキット。
【請求項75】
器具が皮膚パッチである、請求項74に記載のキット。
【請求項76】
生物学的に活性なタンパク質を皮膚又は上皮に送達するための器具と、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片若しくは混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した担体を含む組成物とを含む、生物学的に活性なタンパク質を被験者に投与するためのキットであって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合は非共有結合性であるキット。
【請求項77】
器具が皮膚パッチである、請求項76に記載のキット。
【請求項78】
正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含む有効量の正に帯電した担体と共に、タンパク質を被験者の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、治療的に血中グルコースレベルを変えない生物学的に活性なタンパク質を被験者に投与する方法であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合は非共有結合性である方法。
【請求項79】
組成物が、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性なタンパク質のより多くの経皮送達を実現する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
生物学的に活性なタンパク質が治療活性を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含む有効量の正に帯電した担体と共に、生物学的に活性な作用物質を被験者の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、非タンパク質非核酸系の生物学的に活性な作用物質を被験者に投与する方法であって、担体と生物学的に活性な作用物質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項82】
組成物が、担体が無い場合の作用物質に比べて、生物学的に活性な作用物質のより多くの経皮送達を実現する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
生物学的に活性な作用物質が治療活性を有する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で被験者に投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、被験者に別々に投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
生物学的に活性なタンパク質及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で被験者に投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
生物学的に活性な作用物質及び担体が、被験者に別々に投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項88】
組成物が、制御放出組成物又は持続放出組成物である、請求項80に記載の方法。
【請求項89】
組成物が、制御放出組成物又は持続放出組成物である、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
治療用タンパク質がボツリヌストキシンである、請求項80に記載の方法。
【請求項91】
ボツリヌストキシンが、ボツリヌストキシンの血清型A、B、C、D、E、F、及びGから選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
ボツリヌストキシンがボツリヌストキシン誘導体を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
ボツリヌストキシンが組換型ボツリヌストキシンを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
被験者に美容的及び/又は化粧的な利点を与えるためにボツリヌストキシンが投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
筋肉痙攣又は痙攣を伴う症状を予防又は軽減するために、被験者にボツリヌストキシンが投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
ボツリヌストキシン及び正に帯電した担体が、被験者の顔の部位に局所的に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
ボツリヌストキシン及び正に帯電した担体が、被験者の顔以外の部位に局所的に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
免疫化に適した抗原と、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と抗原との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項99】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項98に記載の組成物。
【請求項100】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項102】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項103】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項104】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項103に記載の組成物。
【請求項105】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項103に記載の組成物。
【請求項106】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項103に記載の組成物。
【請求項107】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項98に記載の組成物。
【請求項108】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項107に記載の組成物。
【請求項109】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項108に記載の組成物。
【請求項110】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項109に記載の組成物。
【請求項111】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項109に記載の組成物。
【請求項112】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項109に記載の組成物。
【請求項113】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片及び混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電したポリマーを含む、請求項98に記載の組成物。
【請求項114】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項113に記載の組成物。
【請求項115】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項114に記載の組成物。
【請求項116】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項114に記載の組成物。
【請求項117】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項114に記載の組成物。
【請求項118】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項114に記載の組成物。
【請求項119】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項113に記載の組成物。
【請求項120】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(式中、下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項119に記載の組成物。
【請求項121】
分枝基が、アンテナペディアPTD基である、請求項113に記載の組成物。
【請求項122】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項113に記載の組成物。
【請求項123】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、及びポリオルニチンから選択される、請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項123に記載の組成物。
【請求項125】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項113に記載の組成物。
【請求項126】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項125に記載の組成物。
【請求項127】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項126に記載の組成物。
【請求項128】
約1×10−10〜約49.9重量%の抗原、及び約1×10−9〜約50重量%の正に帯電した担体を含有する、請求項98に記載の組成物。
【請求項129】
請求項98に記載の制御放出組成物。
【請求項130】
抗原がボツリヌストキシンである、請求項98に記載の組成物。
【請求項131】
ボツリヌストキシンが、ボツリヌストキシンの血清型A、B、C、D、E、F、及びGから選択される、請求項130に記載の組成物。
【請求項132】
ボツリヌストキシンがボツリヌストキシン誘導体を含む、請求項130に記載の組成物。
【請求項133】
ボツリヌストキシンが組換型ボツリヌストキシンを含む、請求項130に記載の組成物。
【請求項134】
抗原が小児期の免疫化に適している、請求項98に記載の組成物。
【請求項135】
皮膚又は上皮に抗原を送達するための器具、及び請求項98に記載の組成物を含む、免疫化に適した抗原を被験者に投与するためのキット。
【請求項136】
特別仕様でつくられたアプリケーターをさらに含む、請求項135に記載のキット。
【請求項137】
組成物が、免疫化に適した抗原を皮膚又は上皮を介して被験者に投与するための器具に含まれる、請求項135に記載のキット。
【請求項138】
器具が皮膚パッチである、請求項137に記載のキット。
【請求項139】
免疫化に適した抗原を皮膚又は上皮に送達するための器具と、(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片及び混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した担体を含む組成物とを含む、免疫化に適した抗原を被験者に投与するためのキットであって、担体と抗原との結合は非共有結合性であるキット。
【請求項140】
器具が皮膚パッチである、請求項139に記載のキット。
【請求項141】
正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含む有効量の正に帯電した担体と共に、免疫化に適した抗原を被験者の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、免疫化に適した抗原を被験者に投与する方法であって、担体と抗原との結合は非共有結合性である方法。
【請求項142】
免疫化に適した抗原及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で被験者に投与される、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
免疫化に適した抗原及び担体が、被験者に別々に投与される、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
主鎖が、正に帯電したポリペプチドを含む、請求項141に記載の方法。
【請求項145】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリペプチドを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項148】
主鎖が、正に帯電したポリリジンを含む、請求項144に記載の方法。
【請求項149】
主鎖が、約10,000〜約1,500,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
主鎖が、約25,000〜約1,200,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項148に記載の方法。
【請求項151】
主鎖が、約100,000〜約1,000,000の分子量を有する正に帯電したポリリジンを含む、請求項148に記載の方法。
【請求項152】
主鎖が、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項141に記載の方法。
【請求項153】
非ペプチジルポリマー主鎖が、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
ポリエチレンイミンが、約10,000〜約2,500,000の分子量を有する、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
ポリエチレンイミンが、約100,000〜約1,800,000の分子量を有する、請求項154に記載の方法。
【請求項157】
ポリエチレンイミンが、約500,000〜約1,400,000の分子量を有する、請求項154に記載の方法。
【請求項158】
担体が、−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片若しくは混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電したポリマーを含む、請求項141に記載の方法。
【請求項159】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項159に記載の方法。
【請求項162】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項159に記載の方法。
【請求項163】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項159に記載の方法。
【請求項164】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項158に記載の方法。
【請求項165】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
分枝基が、アンテナペディアPTD基である、請求項158に記載の方法。
【請求項167】
正に帯電したポリマーがポリペプチドを含む、請求項158に記載の方法。
【請求項168】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、及びポリオルニチンから選択される、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
ポリマーが、正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項158に記載の方法。
【請求項171】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
組成物が制御放出組成物である、請求項141に記載の方法。
【請求項174】
免疫化に適した抗原がボツリヌストキシンである、請求項141に記載の方法。
【請求項175】
ボツリヌストキシンが、ボツリヌストキシンの血清型A、B、C、D、E、F、及びGから選択される、請求項174に記載の方法。
【請求項176】
ボツリヌストキシンがボツリヌストキシン誘導体を含む、請求項174に記載の方法。
【請求項177】
ボツリヌストキシンが組換型ボツリヌストキシンを含む、請求項174に記載の方法。
【請求項178】
抗原が小児期の免疫化に適している、請求項141に記載の方法。
【請求項179】
環境抗原に対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項141に記載の方法。
【請求項180】
潜在的病原体に対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項141に記載の方法。
【請求項181】
潜在的バイオハザードに対する抵抗性を付与するために、免疫化に適した抗原が投与される、請求項141に記載の方法。
【請求項182】
生物学的に活性な作用物質が抗真菌薬である、請求項4に記載の組成物。
【請求項183】
約1×10−10〜約49.9重量%の生物学的に活性な作用物質、及び約1×10−9〜約50重量%の正に帯電した担体を含有する、請求項182に記載の組成物。
【請求項184】
請求項182に記載の制御放出組成物。
【請求項185】
抗真菌薬が、アムホテリジンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、及びシクロピロクスから選択される、請求項182に記載の組成物。
【請求項186】
被験者の皮膚又は上皮に抗真菌薬を送達するための器具、及び請求項182に記載の組成物を含む、抗真菌薬を被験者に投与するためのキット。
【請求項187】
特別仕様のアプリケーターをさらに含む、請求項186に記載のキット。
【請求項188】
組成物が、爪体又は隣接した解剖構造を介して被験者に抗真菌薬を投与するための器具に含まれる、請求項186に記載のキット。
【請求項189】
器具が人工爪体又はラッカーである、請求項186に記載のキット。
【請求項190】
生物学的に活性な作用物質が抗真菌薬である、請求項81に記載の方法。
【請求項191】
抗真菌薬及び担体が、双方の成分を含有する組成物の状態で被験者に投与される、請求項190に記載の方法。
【請求項192】
抗真菌薬及び担体が、被験者に別々に投与される、請求項190に記載の方法。
【請求項193】
組成物が制御放出組成物である、請求項190に記載の方法。
【請求項194】
抗真菌薬が、アムホテリジンB、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコノゾール、グリセオフルビン、ミコナゾール、ナイスタチン、及びシクロピロクスから選択される、請求項190に記載の方法。
【請求項195】
真菌感染の症状及び徴候を治療するために抗真菌薬が投与される、請求項190に記載の方法。
【請求項196】
爪体又は爪床の真菌感染の症状又は徴候を改善するために抗真菌薬が投与される、請求項190に記載の方法。
【請求項197】
−(gly)n1−(arg)n2、HIV−TAT及びその断片、並びにアンテナペディアPTD及びその断片及び混合物(式中、下付き文字n1は、0〜約20の整数であり、下付き文字n2は、独立に、約5〜約25の奇数である)から独立に選択される正に帯電した分枝基を結合した、正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項198】
正に帯電した分枝基が、式−(gly)n1−(arg)n2を有する基から独立に選択される、請求項197に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項199】
下付き文字n1が、約1〜約8の整数である、請求項198に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項200】
下付き文字n1が、約2〜約5の整数である、請求項198に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項201】
下付き文字n2が、約7〜約17の奇数である、請求項198に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項202】
下付き文字n2が、約7〜約13の奇数である、請求項198に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項203】
分枝基が、HIV−TAT及びその断片から選択される、請求項197に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項204】
結合された正に帯電した分枝基が、式(gly)−RGRDDRRQRRR−(gly)、(gly)−YGRKKRRQRRR−(gly)、又は(gly)−RKKRRQRRR−(gly)(下付き文字p及びqは、それぞれ独立に、0〜20の整数である)を有するHIV−TAT断片である、請求項203に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項205】
分枝基が、アンテナペディアPTD基又はその断片である、請求項197に記載の正に帯電したポリペプチド又は非ペプチジルポリマー。
【請求項206】
正に帯電した担体がポリペプチドを含む、請求項197に記載の正に帯電したポリマー。
【請求項207】
ポリペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、及びポリホモアルギニンから選択される、請求項206に記載の正に帯電したポリマー。
【請求項208】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項207に記載の正に帯電したポリマー。
【請求項209】
正に帯電した担体が正に帯電した非ペプチジルポリマーを含む、請求項197に記載の正に帯電したポリマー。
【請求項210】
非ペプチジルポリマーが、正に帯電したポリアルキレンイミンを含む、請求項209に記載の正に帯電したポリマー。
【請求項211】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項210に記載の正に帯電したポリマー。
【請求項212】
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した主鎖、或いは、複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した主鎖、或いは、複数の負に帯電した標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴヌクレオチド、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質を有する、負に帯電した主鎖、或いは負に帯電した生物学的作用物質
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーと
の非共有結合性複合体を含む組成物であって、
複合体が正味の正電荷を有し、メンバーのうちの少なくとも1つが、i)、ii)、iii)又はv)から選択される組成物。
【請求項213】
薬剤組成物又は薬用化粧組成物を調製するための方法であって、正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した主鎖、或いは、複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した主鎖、或いは、複数の負に帯電した標的部分、
iii)RNA、DNA、リボザイム、改変されたオリゴヌクレオチド、及び選択された導入遺伝子をコードするcDNAから選択される少なくとも1つのメンバー、
iv)少なくとも1つの持続因子をコードするDNA、並びに
v)複数の結合された生物学的作用物質又は薬用化粧物質を有する、負に帯電した主鎖、又は負に帯電した生物学的作用物質又は薬用化粧物質
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーと
を、製薬用又は薬用化粧品用に許容される担体と組み合わせて、正味の正電荷を有する非共有結合性複合体を形成させることを含み、且つ、それらのメンバーのうちの少なくとも1つがi)、ii)、iii)又はv)から選択される方法。
【請求項214】
インスリンと、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含む、インスリンの経皮送達に有効な量の担体とを含む組成物であって、担体とインスリンとの結合が非共有結合性である組成物。
【請求項215】
インスリンと正に帯電した担体とを約30:1〜約1.01:1の重量比で含有する、請求項214に記載の組成物。
【請求項216】
請求項214に記載の制御放出組成物。
【請求項217】
インスリンと、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、被験者にインスリンを投与するためのキットであって、担体とインスリンとの結合が非共有結合性であるキット。
【請求項218】
組成物が、インスリンを皮膚又は上皮を介して被験者に投与するための器具に含まれる、請求項217に記載のキット。
【請求項219】
正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含む有効量の正に帯電した担体と共に、インスリンを被験者の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、インスリンを被験者に投与する方法であって、担体とインスリンとの結合が非共有結合性である方法。
【請求項220】
組成物が制御放出組成物である、請求項219に記載の方法。
【請求項221】
イメージング部分及び標的物質と、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む組成物であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である組成物。
【請求項222】
イメージング部分及び標的物質が物理的又は化学的に異なる、請求項221に記載の組成物。
【請求項223】
イメージング部分及び標的物質の両方ともがホスファートであるとは限らない、請求項221に記載の組成物。
【請求項224】
イメージング物質が光学的イメージング物質である、請求項221に記載の組成物。
【請求項225】
イメージング物質が、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択される、請求項224に記載の組成物。
【請求項226】
イメージング物質が磁気共鳴画像法に適している、請求項221に記載の組成物。
【請求項227】
標的物質が黒色腫を認識する、請求項221に記載の組成物。
【請求項228】
イメージング部分及び標的部分を送達するための器具と、正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含み、経皮送達に有効な量で存在する担体とを含む、請求項221に記載の組成物を被験者に投与するためのキット。
【請求項229】
正に帯電した分枝基を結合した正に帯電した主鎖を含む有効量の正に帯電した担体と共に、イメージング部分及び標的物質を被験者の皮膚又は上皮に局所的に適用することを含む、イメージング部分及び標的物質を被験者に投与する方法であって、担体と生物学的に活性なタンパク質との結合が非共有結合性である方法。
【請求項230】
イメージング部分及び標的物質が物理的又は化学的に異なる、請求項229に記載の方法。
【請求項231】
イメージング部分及び標的物質の両方ともがホスファートであるとは限らない、請求項229に記載の方法。
【請求項232】
イメージング物質が光学的イメージング物質である、請求項229に記載の方法。
【請求項233】
イメージング物質が、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴン、グリーン514、緑色蛍光タンパク質、6−FAM、テキサスレッド、Hex、TET、及びHAMRAから選択される、請求項232に記載の方法。
【請求項234】
イメージング物質が磁気共鳴画像法に適している、請求項229に記載の方法。
【請求項235】
標的物質が黒色腫を認識する、請求項229に記載の方法。
【請求項236】
黒色腫の危険性のある患者をスクリーニングするために組成物が使用される、請求項229に記載の方法。
【請求項237】
黒色腫の外科的切除を補助するために組成物が使用される、請求項229に記載の方法。
【請求項238】
写真技術又は画像解析技術と共に組成物が使用される、請求項229に記載の方法。
【請求項239】
a)正に帯電した主鎖と、
b)i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した主鎖、又は複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した主鎖、又は複数の負に帯電した標的部分、及び
iii)複数の結合された生物学的作用物質を有する負に帯電した主鎖、又は負に帯電した生物学的作用物質
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーと
の非共有結合性複合体を含む組成物であって、
その複合体が正味の正電荷を有し、メンバーのうちの少なくとも1つがi)、ii)、iii)又はv)から選択される組成物。
【請求項240】
薬剤組成物又は薬用化粧組成物を調製する方法であって、
正に帯電した主鎖成分と、
i)複数の結合されたイメージング部分を有する、負に帯電した主鎖、或いは、複数の負に帯電したイメージング部分、
ii)複数の結合された標的物質を有する、負に帯電した主鎖、或いは、複数の負に帯電した標的部分、及び
iii)複数の結合された生物学的作用物質又は薬用化粧物質を有する、負に帯電した主鎖、又は負に帯電した1つの生物学的作用物質又は薬用化粧物質
からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーと
を、製薬用又は薬用化粧品用に許容される担体と組み合わせて、正味の正電荷を有する非共有結合性複合体を形成させることを含み、且つ、メンバーのうちの少なくとも1つが、i)、ii)、iii)又はv)から選択されることを条件とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公表番号】特表2007−526330(P2007−526330A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501982(P2007−501982)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/006930
【国際公開番号】WO2005/084361
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(504319459)ルバンス セラピュティックス (12)
【Fターム(参考)】