説明

多方向観察装置

【課題】 簡易な構成で同一の観察対象物を光路長の異なる複数の方向から簡易に観察可能とする。
【解決手段】 観察対象物Wに照明光を照射する照明装置と、観察対象物Wからの反射光を撮像する撮像手段3と、該撮像手段3と観察対象物Wとの間に異なる方向から観察対象物Wを観察するための光路長の異なる光路を形成する複数の光路設定部材5と、各光路上の焦点位置の像を撮像手段3に結像させる結像光学系4と、光路設定部材5を選択的に観察対象物Wと結像光学系4との間に挿脱可能な切替機構6とを備え、光路設定部材5に、複数の光路の空気換算長を一致させる焦点位置補正手段が備えられている多方向観察装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同一の観察対象物を異なる複数の方向から観察可能な多方向観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、観察対象物を横方向から観察する観察装置としては、例えば、非特許文献1に示された構造のものがある。この観察装置は、撮像手段から観察対象物までの光路をミラーによって屈曲させて、斜め方向から観察対象物を撮像するようになっている。撮像手段に向かう光軸回りにミラーを回転させることにより、ワークを傾けることなく、観察対象物を360°のあらゆる方向から観察することができるようになっている。
【非特許文献1】「マイクロスコープ/デジタル顕微鏡:オムロン制御機器」、[online]、[平成16年4月6日検索]、インターネット<URL: http://www.fa.omron.co.jp/sensing/selection/eizou/vc-hr/tokucho.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構造の観察装置では、観察対象物に焦点を合わせた後には、ミラーの回転のみによって容易に全周にわたる画像を撮像可能であるが、撮像手段に向かう光軸がミラーによって遮られているために、撮像手段は、観察対象物を直接撮像することができない。このため、斜め方向からの画像のみを用いて焦点合わせを行うことになるが、この場合には、ミラーを回転させたときにピントが合う位置は1カ所に限られる場合が多く、ミラーを回転させて異なる方向から観察するたびに焦点合わせを行う必要があるという煩わしさがある。これを回避するためには、観察対象物への焦点合わせ作業を、別の手段を用いて行う必要があり、装置が複雑化するという不都合がある。
【0004】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で同一の観察対象物を光路長の異なる複数の方向から観察可能な多方向観察装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、観察対象物に照明光を照射する照明装置と、観察対象物からの反射光を撮像する撮像手段と、該撮像手段と観察対象物との間に異なる方向から観察対象物を観察するための光路長の異なる光路を形成する複数の光路設定部材と、前記各光路上の焦点位置の像を前記撮像手段に結像させる結像光学系と、前記光路設定部材を選択的に観察対象物と結像光学系との間に挿脱可能な切替機構とを備え、前記光路設定部材に、前記複数の光路の空気換算長を一致させる焦点位置補正手段が備えられている多方向観察装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、照明装置から出射された照明光が観察対象物に照射されると、観察対象物の表面において反射され、その反射光が結像光学系により撮像手段に結像されることで、観察対象物の表面の画像を取得することが可能となる。
この場合において、切替機構の作動により、結像光学系と観察対象物との間から光路設定部材を抜き去ることにより、観察対象物からの反射光を直接結像光学系を介して撮像手段により撮像することができる。したがって、この画像に基づいて容易に焦点位置調整を行うことができる。
【0007】
また、切替機構の作動により、結像光学系と観察対象物との間にいずれかの光路設定部材が配置されると、該光路設定部材に応じて、異なる観察方向に沿う光路が形成されることになる。したがって、切替機構の作動によりこれらの光路設定部材を切り替えることで、観察対象物の表面を異なる方向から見た画像を取得することができる。
【0008】
さらに、光路設定部材には焦点位置補正手段が設けられているので、複数の光路の空気換算長が一致させられている。したがって、焦点位置を一旦調整した後には、切替機構の作動により光路設定部材を切り替えるたびに焦点位置調整を行う必要がなく、簡易に、複数の観察方向から見た観察対象物の鮮明な画像を取得することが可能となる。
【0009】
上記発明においては、前記光路設定部材のいずれかが、複数の光路を同時に形成することが好ましい。
切替機構の作動により、単一の光路を観察対象物と結像光学系との間に形成すると、その観察方向から見た観察対象物の画像を、撮像手段の全ての撮像領域を使用して取得することができる。したがって、観察対象物から撮像手段に向かう光束の開口数を最大限に確保して、拡大しても鮮明性を損なわない程度の高い解像度の画像を取得することができる。
【0010】
一方、切替機構の作動により、複数の光路を観察対象物と結像光学系との間に形成すると、撮像手段の撮像領域が各光路に応じて分割される。したがって、観察対象物から撮像手段に向かう光束の開口数が小さくなり、取得される画像の解像度は低下するが、複数の観察方向から観察対象物を同時に見た複数の画像を簡易に対応づけて記録することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同一の観察対象物を異なる複数の方向から観察した場合の画像を同一の撮像手段によって簡易に取得することができる。その結果、同一の観察対象物を複数の方向から観察する場合に、焦点位置合わせを容易に行うことができ。全ての光路上の焦点位置の像を鮮明に撮像することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態に係る多方向観察装置1について、図1〜図5を参照して説明する。
本実施形態に係る多方向観察装置1は、観察対象物、例えば、半導体ウェハWの端面を観察する装置である。
【0013】
多方向観察装置1は、半導体ウェハWの表面に向けて照明光Lを照射する照明装置2と、半導体ウェハWの表面において反射した反射光Rを撮像するCMOS(Complementary Metal
Oxide Semiconductor)イメージセンサのような撮像素子(撮像手段)3と、該撮像素子3と半導体ウェハWとの間に配置され、半導体ウェハWにおいて反射した反射光Rを撮像素子3の撮像面に結像させる結像光学系4と、半導体ウェハWの端面に対し間隔を空けて配置されるプリズム部材5と、プリズム部材5を水平方向に移動させる切替機構6とを備えている。図2中、符号7は、半導体ウェハWを搭載するステージである。
【0014】
前記撮像素子3および結像光学系4は、図2に示されるように、略水平に配される半導体ウェハWの端面Wに向かって延び、半導体ウェハWの中心を通過する略水平な光軸を備えている。結像光学系4は、半導体ウェハWの表面から反射されてきた反射光Rを集光する対物レンズ8と、撮像倍率を変更するズーム機構9と、ズーム機構9を通過した反射光Rを撮像素子3の撮像面に結像させる結像レンズ10とを備えている。ズーム機構9、結像レンズ10および撮像素子3は、図示しないベースに対して固定され、固定光学系を構成している。
【0015】
一方、対物レンズ8およびプリズム部材5は、半導体ウェハWおよび固定光学系に対して移動可能に設けられている。すなわち、対物レンズ8およびプリズム部材5は、ベースプレート11に固定されたリニアガイド12により光軸方向に直線移動可能に支持された第1のスライダ13に搭載されている。第1のスライダ13は、例えば、ステッピングモータ14とリードネジ15とによって光軸方向に駆動されるようになっている。
【0016】
また、プリズム部材5は、第1のスライダ13上に設けられたリニアガイド16によって光軸に直交する方向に直線移動可能に支持された第2のスライダ17に搭載されている。該第2のスライダ17は、ステッピングモータ18およびリードネジ19とにより、光軸に直交する水平方向に沿って移動させられるようになっている。これにより、切替機構6が構成されている。
【0017】
前記プリズム部材5は、図3に示されるように、帯板状のガラス平板20に接着された複数のプリズム(光路設定部材)21〜24を備えている。
プリズム21,22は、半導体ウェハWの厚さ寸法より若干大きな間隔をあけて、半導体ウェハWの上下面に沿って配置されている。各プリズム21,22は、相互に対向する側面の半導体ウェハW側に、半導体ウェハWに向かって漸次離れる方向に傾斜する傾斜面21a,22aを備えている。
【0018】
これらの傾斜面21a,22aの傾斜角度は、図4に示されるように、水平に配置された前記半導体ウェハWの表面に対して約30°の角度をなしており、半導体ウェハWの端面Wに直交する光軸に対して約60°の角度をなした方向から半導体ウェハWの端面Wの面取り部W近傍を観察できるようになっている。
【0019】
言い換えると、このようにしてプリズム部材5を通過した光を水平方向において撮像する撮像素子3には、図5に示されるように、2個のプリズム21,22によって挟まれた空間(図3における領域A)を通過した反射光Rにより、半導体ウェハWの端面Wを該端面Wに直交する方向から見た画像Gを得ることができるようになっている。また、2個のプリズム21,22(図3における領域A,A)を通過した反射光Rにより、約60°斜め上から見た半導体ウェハWの端部の画像Gおよび約60°斜め下から見た半導体ウェハの端部の画像Gを取得することができるようになっている。
【0020】
この場合において、本実施形態においては、図4に示されるように、半導体ウェハWの端面Wを直接水平方向から見る第1の光路Lと、プリズム21,22を介して斜め上方および斜め下方から半導体ウェハWの端部Wを見る第2の光路Lおよび第3の光路Lとが形成されている。これらの光路L〜Lは、上述した半導体ウェハWの中心を通過する光軸を含む平面P内に配されている。そして、図4から明らかなように、第1の光路Lと第2、第3の光路L,Lとは、異なる光路長を有している。
【0021】
本実施形態においては、第2、第3の光路L,Lは、空気光路とプリズム21,22内の光路とを備え、それらの光路長を足し合わせた光路長を有している。プリズム21,22内の空気換算光路長は、それらプリズム21,22の屈折率により定められる。本実施形態においては、第1の光路Lの光路長と、第2、第3の光路L,Lの光路長とが等しくなるようにプリズム21,22の屈折率が選択されている。
【0022】
その結果、各光路L〜L上の焦点位置を半導体ウェハWのそれぞれの観察位置に一致させることにより、全ての光路L〜L上における同一の観察対象物である半導体ウェハWの各観察方向からの像を、同時に撮像素子3の撮像面に結像させることができるようになっている。
【0023】
また、プリズム23,24は、前記プリズム21,22に対して、前記平面Pに直交する方向に並んで配置され、前記ガラス平板20によって連結されている。また、プリズム23,24は、図6に示されるように、撮像素子3および結像光学系4の光軸を含む平面P上に配置されたときに、半導体ウェハWに対向するように傾斜する傾斜面23a,24aを備えている。この傾斜面23a,24aの傾斜角度は、水平に配置された前記半導体ウェハWの表面に対して約30°の角度をなしており、半導体ウェハWの端面Wに直交する光軸に対して約60°の角度をなした方向から半導体ウェハWの端面Wの面取り部W近傍を観察できるようになっている。
【0024】
また、プリズム23は、図7(a)に示されるように、半導体ウェハWの面取り部Wからの反射光を内部において、平面Pに沿って反射して、端面Wを通る光軸近傍に戻す光路Lを形成している。プリズム24は、図7(c)に示されるように、半導体ウェハWの面取り部Wからの反射光を内部において平面Pに沿って反射して、端面Wを通る光軸近傍に戻す光路Lを形成している。
【0025】
また、プリズム23,24間のガラス平板20が平面P上に配されたときには、反射光Rが光軸に沿ってまっすぐに結像光学系4に入射される光路Lが形成されている。これら光路Lの光路長と光路L,Lの光路長とは相違しているが、本実施形態においても、プリズム23,24の屈折率を調節することにより、各光路L〜Lの空気換算長が等しくなるように設定されている。光路Lと光路Lの光路長は等しいので、全ての光路L〜Lの空気換算長は等しくなるように設定されている。
【0026】
また、各プリズム23,24が平面P上に配置されたときには、半導体ウェハWの上面側または下面側の面取り部W近傍の画像をそれぞれ、撮像素子3の全領域に対応する広い領域A,Aを利用して取得することができるようになっている。また、図7(b)に示されるように、プリズム23,24間のガラス平板20が平面Pの位置に配置されたときにも、半導体ウェハWの端面Wの画像を撮像素子3の全領域に対応する広い領域Aを利用して取得することができるようになっている。
【0027】
また、前記照明装置2は、例えば、レーザダイオードからなり、図1に示されるように、前記光路L〜Lが配される平面Pに対して交差する方向から照明光Lを入射させるように配置されている。入射角度は、例えば、前記平面Pの通過する半導体ウェハWの端面Wにおける接線方向に対して10°〜60°の範囲でよい。照明装置2から出射された照明光Lは、光路L〜Lが配される平面Pに対して交差する方向から入射されるため、その鏡面反射光Rは全て平面Pを横切って通過するようになっている。
【0028】
なお、ステージ7は、半導体ウェハWを略水平かつ平坦な状態に吸着保持するとともに、その中心軸線回りに水平回転させるモータ25を備えている。また、偏心して配置された半導体ウェハWの中心軸線を回転軸線に一致させる機構や、水平支持した半導体ウェハWを鉛直方向に昇降させる機構を備えていてもよい。
【0029】
このように構成された本実施形態に係る多方向観察装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る多方向観察装置1を用いて半導体ウェハWの端面W近傍の観察を行うには、半導体ウェハWをステージ7上に搭載して吸着保持させる。このとき、半導体ウェハWの中心軸線はステージ7の回転軸線に一致しているものとする。
【0030】
この状態で、照明装置2を作動させ、照明光Lを半導体ウェハWの端面W近傍に照射する。この場合に、本実施形態に係る多方向観察装置1によれば、照明光Lの入射方向が、光軸を通過する平面Pに交差する方向に配置されているので、細長い円筒面からなる端面Wおよび面取り部Wにおける鏡面反射光Rが、前記平面P内を進行して結像光学系4まで達することはない。したがって、撮像素子3におけるフレアの発生等を防止することができ、鮮明な画像Gを得ることができる。
【0031】
また、このように照明装置2を配置することにより、半導体ウェハWの端面Wおよび面取り部W等に傷やクラック等が存在する場合には、これらの傷やクラック等によって照明光Lが乱反射され、その一部が反射光Rとして、前記平面P内を進行して結像光学系4まで達することになる。したがって、半導体ウェハWの面取り部Wや端面Wに傷やクラック等が存在する場合には、これを際立たせた鮮明な画像Gを取得することができる。
【0032】
本実施形態に係る多方向観察装置1を用いて半導体ウェハWの端部の観察を行う場合には、まず、切替機構6を作動させて、半導体ウェハWの中心軸と撮像素子3および結像光学系4の光軸とを含む平面Pに交差する位置に、プリズム21,22を配置するか、または、プリズム23,24の間に配置されているガラス平板20を配置する。これにより、撮像素子3および結像光学系4の光軸は、ガラス平板20の領域Aまたは領域Aを通過して真っ直ぐに半導体ウェハWの端面Wに交わることになる。
【0033】
したがって、撮像素子3には、半導体ウェハWの端面Wを水平な光路Lまたは光路Lを介して直接観察した画像Gが取得される。そして、このとき、取得された画像Gにおいて半導体ウェハWの端面Wのピントがずれていた場合は、ステッピングモータ14を作動させて、ベースプレート11に対し対物レンズ8およびプリズム部材5を光軸方向に移動させる。これにより、焦点位置を光軸方向に変位させて、簡易にピントを調節することができる。
【0034】
この場合に、撮像素子3により取得された画像Gの中央近傍には、半導体ウェハWの端面Wの画像Gが表示されるので、観察者は、この端面Wの画像Gにおいて焦点が合致するようにスライダ11を移動させることで、直感的に簡易に焦点位置調整を行うことができる。なお、観察者が手動により焦点位置調整を行う場合の他、コントラスト比により焦点位置を自動調整する場合においても、簡易な制御で容易に調整することができる。
また、このとき得られた画像Gにおける半導体ウェハWの端面Wの上下方向位置に応じてステージ7を上下動させることにより、半導体ウェハWの上下方向位置を調節することができる。
【0035】
本実施形態においては、全ての光路L〜Lの空気換算長が等しくなるように設定されているので、光路Lまたは光路Lにおいてピントを合わせることにより、全ての光路L〜Lのピントが合う。したがって、切替機構6の作動により、どのプリズム21〜24を平面Pに交差するように配置しても、全ての光路L〜Lにおいてピントの合った鮮明な画像Gを得ることができる。
【0036】
また、本実施形態においては切替機構6により、複数のプリズム21〜24を選択的に平面P上に配置して、複数の異なる光路L〜Lを形成することができる。したがって、観察の目的に合わせて、光路L〜Lを切り替えることができる。例えば、プリズム21,22を平面P上に配置すると、3つの光路L〜Lが同時に形成され、撮像素子3においては、図5に示されるように、半導体ウェハWの端部を水平方向および斜め上下方向から見た3つの画像G〜Gを有する画像Gを取得することができる。したがって、同一の観察対象物である半導体ウェハWを異なる複数の観察方向から同一時刻に見た画像G〜Gを対応づけて記録することができる。
【0037】
一方、プリズム23,24またはそれらの間のガラス平板20を選択的に平面P上に配置すると、図7に示されるように、それぞれ単一の光路L〜Lを形成することができる。したがって、切替機構6を作動させて、これらの光路L〜Lを切り替えることにより、上記プリズム21,22を平面P上に配置した場合と同様に、半導体ウェハWの端部を水平方向および斜め上下方向から見た3つの画像G〜Gを取得することができる。しかしながら、この場合には画像G〜Gは、別々の時刻に取得されることになるため、相互の対応付けは別の手段により行う必要がある。
【0038】
この場合において、プリズム23,24またはそれらの間のガラス平板20を選択的に平面P上に配置して、それぞれ単一の光路L〜Lを形成する場合には、以下の利点がある。
すなわち、プリズム21,22を平面P上に配置した場合に、3つの光路L〜Lが同時に形成され、撮像素子の全領域が上下方向に3分割されて、狭い領域によって画像G〜Gを撮像していたのと比較すると、撮像素子の全領域を分割することなくそれぞれの画像の撮像に使用することができる利点がある。これにより、各光路L〜Lの光束が他の光路L〜Lの光束によって制限されることがなく、高い開口数を確保することができる。その結果、各画像の解像度を向上することができ、ズーム機構9により拡大した場合においても、十分な解像度が確保された鮮明な画像を得ることができる。
【0039】
半導体ウェハWの周方向の一部における端面Wの撮像が行われた後には、ステージ7のモータ25を作動させることにより、半導体ウェハWを軸線回りに所定角度だけ回転させ、その位置で上記のようにして画像Gを取得することを繰り返すことにより、半導体ウェハWの全周にわたる画像Gを取得することが可能となる。
【0040】
このように、本実施形態に係る多方向観察装置1によれば、半導体ウェハWの端面Wを複数方向から同時に観察することができる装置をコンパクトに構成することができる。そして、切替機構6の作動によって、平面P上に配置するプリズム21〜24を切り替えることにより、複数の観察方向からの同時撮影と、事後的な拡大によっても鮮明性を損なわないような高解像度の画像の取得とを簡易に切り替えることができる。したがって、撮影目的に合わせた種々の画像を取得することができる。
【0041】
また、全ての観察方向に対して、照明装置2を共通化して、さらにコンパクト化を図ることができる。さらに、照明装置2からの照明光Lの鏡面反射光Rによるフレアの発生を、全ての観察方向において防止し、傷やクラックを際立たせた鮮明な画像Gを得ることができる。
【0042】
また、全ての画像G〜Gにおいて、ピントの合った鮮明な画像Gが得られた状態で、ズーム機構9を作動させることにより、図5に鎖線で示す領域Z,Zの画像を拡大して取得することができる。なお、ズーム機構9により領域Zまで拡大した場合に、画像Gと画像G,Gとの間隔が拡大して画像G,Gが領域Zから外れてしまうことが考えられるため、この場合には、これを防止するために画像Gと画像G,Gとの隙間を詰めるような画像処理を施すことにしてもよい。
【0043】
なお、本実施形態においては、観察対象物として、半導体ウェハWを例に挙げて説明した。本発明は、これに限定されるものではなく、他の任意の観察対象物を多方向から同時に観察する場合に適用することができる。特に、半導体ウェハWに類似の円板状の部材、例えば、CDやDVDの端面検査、あるいは、飲料缶等の円柱状部材の肩部における端面と側面の同時検査、板状あるいは帯状部材の端面検査等に適用することができる。
【0044】
また、ステージ7に昇降機能を持たせることにより、半導体ウェハWをプリズム部材5に対して上下方向に移動させることとしたが、これに代えて、プリズム部材5および対物レンズ8を含むユニットを半導体ウェハWに対して昇降させることにしてもよい。また、この場合に、回転に伴う半導体ウェハWの端面Wの上下変動を検出して、これに追従させるようにプリズム部材5および対物レンズ8を含むユニットを昇降させることにしてもよい。
また、撮像手段としてはCMOSイメージセンサに代えて、CCD(荷電結合素子:Charge Coupled Device)を採用してもよい。
【0045】
また、プリズム部材5として4つのプリズム21〜24を有する場合を例に挙げて説明したが、これに代えて、またはこれに加えて、図8または図9に示されるプリズム26〜29を備えるプリズム部材5′を採用してもよい。図8に示す例は、半導体ウェハWの表裏面を同時に観察する光路L〜Lを形成する場合である。撮像素子3における撮像領域が上下に分割されるため解像度が低減されるが、同時観察が可能であるという利点がある。また、図9に示す例は、半導体ウェハWの表裏面を別々に観察する光路L10,L11を形成する場合である。同時観察はできないが、高解像度の画像を取得できる利点がある。
また、プリズム21〜29を任意に組み合わせて同時に観察する観察方向を任意に選択してもよいことは言うまでもない。
【0046】
また、3つの観察方向から観察する場合を例に挙げて説明したが、これに代えて、2つの観察方向または、4つ以上の観察方向を有する場合に本発明を適用してもよい。
また、屈折率を適当に選択して空気換算光路長を一致させるプリズムを有する場合について説明したが、これに代えて、ミラーのように光路長の補正を行うことなく複数の観察方向から観察する場合に本発明を適用してもよい。この場合には、各観察方向毎に焦点位置の調整が必要となる。
【0047】
また、光路設定部材および焦点位置補正手段をプリズムによって同時に実現することとしたが、これに代えて、ミラーとプリズムとの組み合わせにより、光路設定部材と焦点位置補正手段とを別々に実現することにしてもよい。
また、結像光学系4の光軸を含む平面P0に交差する方向から照明光Lを照射する照明装置2について説明したが、これに代えて、あるいは、これと組み合わせて選択的に切替可能に、光軸に沿って照明光を照射する同軸照明を行うことにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る多方向観察装置を部分的に示す模式的な平面図である。
【図2】図1の多方向観察装置の全体構成を示す正面図である。
【図3】図1の多方向観察装置のプリズム部材を示す斜視図であり、多方向同時観察状態を示している。
【図4】図3の焦点位置補正部材による3つの光路を示す模式図である。
【図5】図1の多方向観察装置により得られた画像例を示す図である。
【図6】図3のプリズム部材における1方向観察状態を示す斜視図である。
【図7】図6のプリズム部材による3つの光路を示す模式図である。
【図8】図7のプリズム部材の変形例を示す側面図である。
【図9】図7のプリズム部材の他の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0049】
L 照明光
〜L11 光路
平面
W 半導体ウェハ(観察対象物)
1 多方向観察装置
2 照明装置
3 撮像素子(撮像手段)
4 結像光学系
5,5′ プリズム部材(光路設定部材:焦点位置補正手段)
6 切替機構
21〜24,26〜29 プリズム(光路設定部材:焦点位置補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物に照明光を照射する照明装置と、
観察対象物からの反射光を撮像する撮像手段と、
該撮像手段と観察対象物との間に異なる方向から観察対象物を観察するための光路長の異なる光路を形成する複数の光路設定部材と、
前記各光路上の焦点位置の像を前記撮像手段に結像させる結像光学系と、
前記光路設定部材を選択的に観察対象物と結像光学系との間に挿脱可能な切替機構とを備え、
前記光路設定部材に、前記複数の光路の空気換算長を一致させる焦点位置補正手段が備えられている多方向観察装置。
【請求項2】
前記光路設定部材のいずれかが、複数の光路を同時に形成する請求項1に記載の多方向観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−133502(P2006−133502A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322335(P2004−322335)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】