説明

多機能デジタル光スイッチ

【課題】多波長スイッチを提供する。該スイッチは、光線を受光するための、少なくとも1つの光入力と、少なくとも2つの光出力とを備える。分散素子は、前記光入力から前記光線を受光し、前記光線を空間的に複数の波長成分に分離する。平行性素子は、前記複数の波長成分を平行光化するために備えられる。作動可能な光学配置は、前記平行光化された複数の波長成分を前記平行性素子から受け取る。前記作動可能な光学配置は、少なくとも1つの波長成分を、選択されたいずれか1つの光出力に指向される前に、少なくとも2回反射するデジタルマイクロミラー装置(DMD)を含む。

【発明の詳細な説明】
【関連する出願の参照】
【0001】
本出願は、2007年7月23日に出願の米国特許出願第11/781,940の「High Resolution Digital Optical Encoder/Decoder」に関し、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
インターネットおよびその他の通信による需要が伸びたため、ファイバ光学システムを使ったデータ通信の容量と速度とが急速に増加した。それに伴い、改良型の全光スイッチングシステムに対する関心が高まり、その結果、従来型のスイッチがコストが高く切替速度が遅いという問題が解決されようとしている。これらの従来型のスイッチは、例えば、様々な機械的スイッチ、電気光学スイッチ、熱光学スイッチを含む。特に、光信号から電気信号への切り替え、および同切り替え後の光信号への切り替えのようにますます複雑化し、コストが上昇した結果、改良型の全光スイッチに対する関心を高めている。
【0003】
全光スイッチにおいては、光信号を1つの入力経路から複数の異なる出力経路のうちから選択されたいずれかの出力経路への切り替えを行うが、その際、光信号から電気信号への中間変換を一切行わない。これは、典型的には、電気信号をスイッチ可能素子に加えて光信号を選択的に切り替えることによって達成される。これらの電気光学スイッチは、電気信号に反応して、光信号の光を入力経路から選択されたいずれかの出力経路へ、選択的に切り替える。
【0004】
全光型の光スイッチを実現する方式として様々な方式が知られているが、その中でも例えば、特許文献1〜4に説明されているものがある。これらの装置の多くに存在するスイッチ可能素子は、MEMSミラーのような微小電気機械システム(MEMS)光素子である。MEMSミラーは、個別に制御可能であり移動可能である(例えば、アナログ(連続)制御下、枢転可能(または回転可能)である)。そのため、反射時、光波長を1つ以上の入力ポートから複数の出力ポートのうち選択されたいずれか1つ以上へ向けることができる。このように、光スイッチを使って、システムの入出力ポート間で波長を選択的に結合することが可能である。しかし、アナログ形式で動作中のMEMSミラーを光スイッチに使用した際に、多くの問題が発生する。例えば、ミラー構造共振から発生する不安定さを防止するために、各MEMSミラーの正確な位置を検知する手段をMEMS装置に統合する必要があるが、これは、困難でありかつ達成するのは複雑過ぎる。さらに、それぞれのMEMS素子をMEMS装置に切り替えることは、近傍のMEMS素子に対して、外乱を引き起こす。特に、MEMSミラーをMEMSアレイに切り替えることは、空力連成をアレイ中の他のミラーに引き起こすことが知られており、その結果、静止状態を保つべきミラーが外乱させられる。MEMSミラーの位置は、ミラーが大電圧を要する比較的弱い静電力によって一般的に作動するため、横滑りし得る。大電圧は、ミラーの位置を外乱させる帯電を引き起こし得る。これら全ての効果が重大な問題になるのは、これらの装置が、自由空間ビームが出力ポートに結合される際に自由空間ビームが軸外配列されることによって、動的利得等化を行うときである。本技術が要求されるのは、ミラーの位置決めの際に許容範囲がより厳格な状態下である。なぜなら、角度位置レベルの関数としての減衰感度が、さらに高い減衰レベルを達成するために軸外配列が延長されるに従い、非線形に上昇するからである。このさらに高い感度により、複雑なサーボループおよび高価なミラー位置検知システムがこの技術に対して望ましいものとして開示される。
【0005】
デジタルミラーアレイは、アナログミラーアレイの多くの問題を解決する。多くのそのようなアレイが利用可能になっているが、それらは、統合式の一体型構造を備える。これらの装置は、比較的低い電圧を使うことで、2つ以上の位置の間を非常に正確にかつ安定して選択的に切り替えされる個々のミラー素子を提供する。そのようなデジタルミラーアレイの1つの分類として、デジタルマイクロミラーディスプレイまたはデジタルマイクロミラー装置(DMD)としばしば呼ばれる、空間光変調器がある。典型的には、DMDは、小型のミラーのアレイ(典型的には、1平方インチ当たり数百万)から形成されており、各ミラー素子の角度位置が少なくとも2つの位置の間でおのおの制御可能である。なお、該位置は、例えば、約10〜20度互いに角度的にずれている。ミラーベースは、ミラー素子の後ろに配置されている。個別にアドレス可能なミラー素子は、機械的ヒンジ上に傾斜可能に取り付けられている。典型的には、ミラー素子のアレイがミラーベース内の制御回路の層に重なり、この構成で全てが半導体チップ上に取り付けられる。DMDのミラー面は、概して長方形の(長方形または正方形のミラー素子から形成される)グリッドアレイから構成される。典型的なミラー素子は、約16マイクロ平方メートルであり、個々の素子は、約1ミクロンの距離をおいて互いに切り離される。少なくとも1つの軸の周りのアレイ内でミラー素子が個別に制御された傾斜を行うことによって、ミラー面から反射されたエネルギーの所定のパターンが形成される。また、ミラー面はデジタル信号に応答して、ほぼ瞬間的に再構成され、別のパターンを形成することが可能である。そのような再構成は、一般的に、約25マイクロ秒以内に達成される。
【0006】
DMDを組み込んだ光スイッチが知られており開示もされている。例えば、特許文献5〜8である。これらのスイッチには数多くの制限があるため、より高い機能レベルに装置を拡張することができない。つまり、機能的に、各ポートやもっと多くのスイッチングポートに対して複数の波長、色、光をサポートできない。また、機能的に、スイッチング中の光パワーレベルを独立して制御するといったことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許番号6、687、431
【特許文献2】米国特許番号6、661、948
【特許文献3】米国特許番号6、625、346
【特許文献4】米国特許番号6、549、699
【特許文献5】米国特許番号6、295、154
【特許文献6】米国特許番号7、203、398
【特許文献7】米国特許出願第2003/0164959
【特許文献8】米国特許出願第2002/0034356
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、多波長スイッチが提供される。該スイッチは、光線を受光するための、少なくとも1つの光入力と、少なくとも2つの光出力とを備える。分散素子は、前記光入力から前記光線を受光し、前記光線を空間的に複数の波長成分に分離する。平行性素子は、前記複数の波長成分を平行光化するために備えられる。作動可能な光学配置は、前記平行光化された複数の波長成分を前記平行性素子から受け取る。前記作動可能な光学配置は、少なくとも1つの波長成分を、選択されたいずれか1つの光出力に指向される前に、少なくとも2回反射するデジタルマイクロミラー装置(DMD)を含む。
【発明の効果】
【0009】
従って、本発明は、複数の光学処理機能を実行可能なマルチ機能を有するDMDスイッチング装置を提供することを利点とする。特に、複数の出力ポートに向けたパワーレベルをクロストーク自在に制御可能な1×Nスイッチ(ただし、N>1)を統合した装置を提供することを利点とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成された波長選択性スイッチの一実施形態の第1側面図である。
【図2】図1の線2−2に沿った、波長が入射する、マイクロミラー装置の表面の平面図である。
【図3】軸を中心として傾斜できるように傾斜可能に取り付けられた2つのミラー素子の斜視図である。
【図4】図1の線4−4に沿った、波長選択性スイッチの第2側面図である。
【図5a】個々のミラー素子から反射された光路を示す図である。
【図5b】個々のミラー素子から反射された光路を示す図である。
【図6】図4の線4−4に沿ったスイッチの他の実施形態の側面図である。
【図7】光チャンネルモニタ(OCM)を有する1×2スイッチとして構成された、図4のスイッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に詳細に示すように、DMDを利用する波長選択性スイッチが提供される。上記のスイッチとは違って、本明細書に説明される波長選択性スイッチは、波長分割多重化(WDM)または高密度波長分割多重化(DWDM)信号の異なる波長を分離するための分散素子を備えるので、複数の波長を各ポートから切り替え可能である。さらに、該スイッチは、光スイッチングに加えて、またはその代用としての、その他の機能も果たすことができる。例えば、上記のスイッチと違って、本明細書に記載のスイッチが1×Nスイッチ(ただし、N>1)として構成された場合、不所望のポート内クロストークが発生させずに、該スイッチは、各波長ベースで、動的利得等化またはパワー制御を同時に実行できる。
【0012】
なお、当初は、以下に記載の波長選択性スイッチは、出力ポートのいずれかに向けられたいずれかの波長成分が、交互に、入力ポートのいずれかに向けられるように、対称的な態様で動作する。従って、当業者なら、スイッチング経路が回帰式であるので本明細書で用いる「入力」および「出力」という用語がスイッチに対して単方向に光信号または波長成分を送信する素子に限らないということが分かるだろう。換言すれば、もし光が、所謂どの出力ポートから装置に入射しても、この出力ポートは入力ポートを担い、同様に、所謂どの入力ポートも等しく出力ポートを担うことができる。
【0013】
図1は、本発明に従って構築された波長選択性スイッチ100の一実施形態の第1側面図を示す。該スイッチは、どのような光波長と関連して使用されてもいいが、C帯(約1525〜1565nmの間の波長)またはL帯(約1565〜1625nmの間の波長)に存在する光波長と関連して使用されるのが特に適している。該スイッチは、紙面から飛び出る面に対して平行な入出力光ポート(例えば、ファイバ)のアレイ110を含むが、図1では、1つのみ図示する。コリメータレンズ115の位置は、ファイバアレイ110から出射される光を受ける位置である。コリメータレンズ115は、ファイバアレイ110の中間ファイバから延びる光軸を中心として配置される。このようにして、ファイバアレイ110中のファイバを出射した光が(コリメータ)レンズ115によって平行光になる。平行光は、その後、透過格子120に入射するが、入射した光は、透過格子120によって、その光の成分が空間的に成分波長λ、λ、λ、・・・・λに分離され、さらにその成分は、向きを変えて、第2レンズ125を通過する。レンズ125は、レンズ面における2軸に対して異なった機能を実行する。図1のページの平面において、該レンズ125は、分散波長λ〜λを平行化する。ページ外の平面において、該レンズ125は、平行ビーム(光)をマイクロミラー装置130の表面に集光させる。結果、分散軸に沿って平行化し、かつその軸に対して直交して集光した(空間的に分離した)波長のストライプが得られる。なお、該ストライプは、ミラーストリップ140(図1では、1つのみ図示する)の間に向けられ、マイクロミラー装置130の表面に対向する。
【0014】
図2は、波長が入射する、マイクロミラー装置130の表面の平面図である。なお、同図は、図1の線2−2に沿ったものである。マイクロミラー装置130のミラー面は、数千個を数える、小型且つ傾斜可能で、個別に制御可能なミラー素子(典型的には、参照符号140および145によって示される)がびっしりと引きつめられる。各ミラー素子は、概して、ミクロ単位の寸法を有する。例えば、ある1つの特定のマイクロミラー装置130は、個別に制御可能なミラー素子が768×1024個並ぶアレイから形成される。各ミラー素子は、各辺約16ミクロンの正方形で、該装置130の面に対して平行に軸の周りを回転する。図2の一点鎖線150によって示されるように、ミラー素子の軸は、各ミラー素子の、1つの角から反対側の角まで対角線上に延びる。
【0015】
ミラーストリップ140及び140(総じて「ミラーストリップ140」と呼ぶ)は、マイクロミラー装置130の表面に覆いかぶさるように配置され、軸150に平行な方向に延びる。ミラーストリップ140は、従来型のリソグラフィーなどを使って、透明窓の下面または基板の上に直接組み立てることが可能である。該基板は、マイクロミラー装置130と統合して、単一光学アセンブリを形成することができる。反射防止用コーティングを該窓の上面に加えることによって、逆方向反射を減らすこともできる。同様に、反射防止用コーティングを個々のミラーストリップの間の下面の無反射部に加えてもよい。
【0016】
図3は、軸150を中心として傾斜できるように(傾斜可能に)取り付けられたミラー素子141、145の斜視図を示す。個々のミラー素子141の非作動面50および個々のミラー素子145の表面52は、通常、同一面に位置する。なお、この状態をミラー素子のオフ(またはフロート)状態と言うことができる。制御力を加えることによって、例えば、支持部材48の動きを作動させれば、表面52が共通の面からはずれるように軸150を中心に傾斜することができる。支柱44が、素子141を元の位置に保持すれば(つまり、フロート状態)、表面50に入射する光が表面52に入射した光とは違う別の位置に反射することになる。マイクロミラー装置は、良く知られており、かつ市販の構成要素であるので、その構造や製造方法に関する詳細な説明はここではこれ以上しない。
【0017】
マイクロミラー装置130のようなマイクロミラー装置は、一般的に、2つの動作モードのうちの1つの動作モードで動作する。第1の動作モードは、アナログモードであり、このモードは、ビームステアリングと呼ばれることもある。この動作モードでは、おのおの軸を中心として個々のミラー素子の回転を制御するためのアドレス電極がミラーの望ましい偏向に対応する電圧に帯電される。マイクロミラー装置に入射する光は、ミラーの偏向によって決まる角度でミラーによって反射される。第2の動作モードは、デジタルモードである。デジタル動作すると、各ミラー素子は、軸を中心として2つの方向のどちらかの方向へ完全に偏向する。つまり、各ミラー素子は、次の3つの状態のうち1つの状態におかれるのである。その3つの状態とは、ミラー素子が互いに反対方向へ傾斜する2つの状態と、オフ(またはフロート)状態と、である。デジタル動作は、比較的大電圧を使い、ミラーを確実に完全偏向させる。図示の都合上、本発明は、デジタルモードで動作するマイクロミラー装置を念頭に入れて説明される。そのようなマイクロミラー装置は、デジタルマイクロミラー装置(DMD)と適宜呼んでも差し支えないと思われる。本発明のある実施形態では、DMDが好適に選択されるが、その場合、比較的多数のミラー素子(例えば、10以上)から各波長成分が反射できるように、十分小さいミラー素子が備えられていることが望ましい。さらに、ある実施形態では、DMD内のミラーアレイ全域に対する、ミラー素子の空間占有率は、約85%以上である。
【0018】
図4は、図1の線4−4に沿った、波長選択性スイッチの第2側面図である。この図が示す態様は、波長λがファイバアレイ110内の入力ファイバ(つまり、ファイバ110)からファイバアレイ110内の2つの出力ファイバ110と110とのうち1つの出力ファイバへ選択的に切り替えされる態様である。その他の波長λ〜λも同様に選択的に切り替え可能である。
【0019】
DMD130内のミラー素子の寸法は、光がDMD130から離れる方向へ回折するように、該スイッチ100に用いられる光波長に対して十分小さい。従って、波長λが入射するミラー素子の傾斜角によって、DMD130は、ブレイズ化格子を担い、光は、光路160に沿って、上昇および右方向へ回折することになる。または、光路165に沿って、上昇および左方向へ回折することになる。回折光は、ミラーストリップ140または140に向かって逆反射する際に自らの力を強め、様々な回折次数によって表わされる位置に、一連の光点を形成する。同様に、回折光は、次数間において、自らを相殺することになる。従って、ミラーストリップ140または140に到達する光を最大化するために、ミラーストリップは、各々、波長用の回折次数の1つに位置しているべきである。図4に示すある特定の例では、ミラー140および140は、それぞれ、マイナス2次回折およびプラス2次回折に位置する。つまり、光路160および165に沿って回折した光は、二次回折を表す。しかし、さらに一般化すると、ミラーストリップ140および140は、如何なる適切な回折次数に位置されてもよい。
【0020】
光がミラーストリップ140に入射すると、光は光路175に沿ってDMD130まで逆反射する。その一方、光がミラーストリップ140に入射すると、光は光路170に沿ってDMD130まで逆反射する。光線170または175が入射するミラー素子が、光路180に沿って最初の入射波長λが入射するミラー素子とは反対の位置へ傾斜すると、光は、光路180または182に沿って、第2コリメータレンズ125へ向かって逆反射する。なお、光路182は、光路180に対して平行である。この状態を図5aに示す。なお同図では、簡略化のため、DMD130内で、光路180が単一ミラー素子143から離れる方向へ反射されている状態、そして光路182が単一ミラー素子147から離れる方向へ反射されている状態を示す。同図に示すように、ミラー素子143および147は、反対方向へ傾斜される。なお、もし光線がDMD内の2つ以上のミラーに入射すると、該光線の異なる部分を両出力180および182に同時に向けることが可能になる。この能力をプログラマブルマルチキャスティングと呼ぶ。該キャスティングによって、複数の出力ポートに対して、光線を効果的に分割および結合できる。
【0021】
図4に再度戻って、DMD130から離れる方向への第2反射の後、光路180または182に沿って移動した後、光は、上記とは逆に、回折格子120および第1コリメータレンズ115を相互的に横切る。光が光路182に沿ってDMD130から離れる方向へ反射されていたら、光は、出力ポート110によって受光されることになる。その一方、光が光路184に沿ってDMD130から離れる方向へ反射されていたら、光は、出力ポート110によって受光されることになる。このように、波長λは、入力ポート110から、出力ポート110および110のうち選択されたいずれか1つへ切り替えされる。その他の波長λ〜λも同様に切り替えされる。
【0022】
個々の波長は、比較的ロスがない態様を取るかまたは制御可能な減衰量を有して、入力ポート110から出力ポート110および110のどちらかへ切り替え可能である。減衰を付与するには、該スイッチング波長がミラーストリップ140および140のどちらかからから受け取られたミラー素子の選択個数分だけ傾斜する。これは、図5bに関連し示されるが、同図には、入射光路180と出射光路182とが示される。図5aに関連して上記した通り、簡略化のため、光路180に関しては、単一ミラー素子143から離れる方向へ反射する様子が示され、光路182’に関しては、単一ミラー素子147から離れる方向へ反射される様子が示される。図5aでは、ミラー素子143、147が反対方向に傾斜される。その一方、図5bでは、ミラー素子143、147が両方とも同じ方向に傾斜される。その結果、光は、光路182’に沿って、ミラー素子147から離れる方向へ反射されるが、その位置では、ファイバアレイ110から遠ざかるように向き、やがて消失する。二度目にDMD130aに入射する該スイッチング波長の成分を反射するミラー素子を選択個数だけ適切に傾斜させることによって(ミラー素子147の場合など)、選択された出力ポートまたはファイバに対して向いた光は、選択量のみ減衰される。詳細には、単一ミラー素子から離れる方向へ反射する光量と等しい量だけ徐々に減衰される。図5bは、波長選択性スイッチ100の動作に関する上記のような一般的原則を示す。該スイッチング波長が回折する第1ミラー素子組(例えば、ミラー素子143)は、該スイッチング波長が指向される出力ポートを制御する。該スイッチング波長が回折する第2ミラー素子組(例えば、ミラー素子147)は、該スイッチング波長の減衰を制御する。なお、ミラー素子147がオフ(またはフロート)状態に位置している場合、光路182は、ミラーストリップ140のうちの後続の1つに反射し得る。その後、光は、DMD130に逆反射するが、その位置から、その他の追加の出力ポートの1つ以上に再度向きを変える。
【0023】
入力ポート110および出力ポート110、110に関連して上記したように、波長選択性スイッチは、1×2スイッチを担う。1×2スイッチを基礎として用いれば、そのほか多くのスイッチ構成が可能である。例えば、適当な数のミラーストリップ140が用いられると仮定した場合、単一DMDを使って、そのような1×2スイッチをいくつか形成可能である。図4では、例えば、7つのファイバまたはポートが示されるが、そのうち3つは、1×2スイッチ(中心ポートが入力ポートを担い、それ以外のポートが出力ポートを担う)を担うことができる。例えば、ポート110、110、110(この場合、110が入力ポートを担う)から1つのスイッチが形成され、その一方、ポート110、110、110(この場合、ポート110が入力ポートを担う)からその他のスイッチが形成される。図6は、このように構成された該スイッチ100を示す。図4と同様、図6および下記の図7は、図4の線4−4に沿った、該スイッチ100の側面図である。この例では、ポート110、110、110に関連した1×2スイッチは、ミラーストリップ140、140を用いる。ポート110、110、110に関連した1×2スイッチは、ミラーストリップ140、140を用いる。
【0024】
上記波長選択性スイッチ100の変形例では、光チャンネルモニタリング(OCM)性能を備える。つまり、これは、任意の隣接する2つのポートを使って達成される(この場合、どちらか一方がOCM入力を担い、もう一方が光検出器を配置できる出力ポートを担う)。図7は、図4の該スイッチ100を示すが、この場合、ポート110、110、110が1×2スイッチを担い、ポート110、110が1つのOCMを担い、ポート110、110がもう1つのOCMを担う。ポート110、110は、OCM入力を担い、ポート110、110は、検出器112、114が位置されるOCM出力を担う。なお、さらに一般化すれば、波長選択性スイッチ100内のどの2つの隣接するポートでも1×1スイッチを担うことができる。このスイッチは、OCMとしてプログラムによって動作可能になるが、その際は、波長選択性減衰性能を使って、時変波長の狭帯域を出力ポート検出器にラスタライズする。本ラスタライズは、時間関数としての検出器出力を、波長関数としての光入力パワーに、調整可能である。
【0025】
上述の説明から、本発明に基づくこれらの実施形態を修正及び変更することができ、このような修正及び変更は、請求の範囲に基づく本発明の主旨及び範囲から逸脱するものではないことを理解されたい。例えば、上記波長選択性スイッチは、様々なポートが互いに平行に設けられたファイバアレイを用いているが、本発明の他の実施形態では、2つ以上の様々なポートが互いに非平行に設けられてよい。このように、ポート内への逆方向反射は、DMDのミラー素子がオフ(またはフロート)状態にあるときに、回避される。さらに、光スイッチが切り替え機能を実行する装置として説明されたが、本明細書で説明された装置は、切り替えの代わりに、または切り替えに加えて、様々な目的に対してさらに一般化して使用することができる。例えば、該装置を光チャンネルモニタとして使用することが可能であるということはすでに説明済みである。該装置は、プログラムで制御できるマルチキャスティングなどとしても応用可能であるが、そうすれば、波長成分を2つ以上の出力ポートに向けることができる。その他の応用例として、色分散制御(chromatic dispersion control)を挙げることができる。同技術は、該装置内を通過する波長成分のおのおのが移動した光路距離を適切に調整することによって達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を受光するための、少なくとも1つの光入力と、
少なくとも2つの光出力と、
前記光入力から前記光線を受光し、前記光線を空間的に複数の波長成分に分離する分散素子と、
前記複数の波長成分を平行光化するための平行性素子と、
前記平行光化された複数の波長成分を前記平行性素子から受光する作動可能な光学配置であって、少なくとも1つの波長成分を、選択されたいずれか1つの光出力に指向される前に、少なくとも2回反射するデジタルマイクロミラー装置(DMD)を含む、前記作動可能な光学配置と、を備えることを特徴とする多波長スイッチ。
【請求項2】
前記波長成分を選択的に反射するための個別に作動可能なミラー素子のアレイを有する前記DMDは、前記平行光化された複数の波長成分を受け取り、かつ前記作動可能な光学配置は、前記DMDから反射された波長成分を受け取り、受け取った波長成分を前記DMDの選択されたいずれか1つのミラー素子へ逆指向するための光学素子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の多波長スイッチ。
【請求項3】
前記作動可能なミラー素子は、3つのアドレス可能な状態のいずれかに作動可能であることを特徴とする請求項2に記載の多波長スイッチ。
【請求項4】
前記少なくとも2つの光出力は、少なくとも3つの出力ポートを備えることを特徴とする請求項3に記載の多波長スイッチ。
【請求項5】
前記光学素子は、前記DMDの前記ミラー素子の反射面に対面する反射面を有する、複数の平面鏡を備えることを特徴とする請求項2に記載の多波長スイッチ。
【請求項6】
前記分散素子は、回折格子およびプリズムから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の多波長スイッチ。
【請求項7】
前記平面鏡は、前記DMDの反射された波長成分の各々の、事前に選択された回折次数を受け取るよう位置決めされていることを特徴とする請求項5に記載の多波長スイッチ。
【請求項8】
前記平面鏡は、前記DMDのミラー素子がオフ(またはフロート)状態であるとき、前記DMDのミラー面に平行であることを特徴とする請求項7に記載の多波長スイッチ。
【請求項9】
前記複数の平面鏡は、前記DMDに統合され、単一の一体型アセンブリを形成することを特徴とする請求項4に記載の多波長スイッチ。
【請求項10】
前記光入力および前記光出力は、互いに平行であることを特徴とする請求項1に記載の多波長スイッチ。
【請求項11】
前記光入力および前記光出力から選択される少なくとも2つのポートは、互いに非平行であることを特徴とする請求項1に記載の多波長スイッチ。
【請求項12】
前記波長成分は、前記分散素子によって再混合される前に、少なくとも2回反射されることを特徴とする請求項1に記載の多波長スイッチ。
【請求項13】
前記波長成分は、前記選択されたいずれか1つの出力に結合される前に、少なくとも2回反射されることを特徴とする請求項1に記載の多波長スイッチ。
【請求項14】
前記平面鏡は、空間的に変化する反射領域を有する前記DMDに重なる透明窓によって定義されることを特徴とする請求項9に記載の多波長スイッチ。
【請求項15】
前記波長成分は、複数のミラー素子から反射され、前記ミラー素子は、前記波長成分を2つ以上の光出力へ指向することができるように位置決め可能である請求項2に記載の多波長スイッチ。
【請求項16】
光線を受光するための、少なくとも1つの光入力と、
少なくとも3つの光出力と、
前記光線を平行光化するための平行性素子と、
前記平行光を受光する作動可能な光学配置であって、前記光線を、選択されたいずれか1つ以上の光出力に指向される前に、少なくとも2回反射するデジタルマイクロミラー装置(DMD)を含む前記作動可能な光学配置であって、前記光線を反射するための3つの状態のいずれか1つに選択的に位置決め可能である個別に作動可能なミラー素子のアレイを持つ前記作動可能な光学配置と、を備えることを特徴とする光スイッチ。
【請求項17】
前記入力ポートにおいて前記光線を受光し、
前記光線の前記波長成分を空間的に分離し、
前記空間的に分離された波長成分を平行光化し、
前記平行光化された波長成分をDMDに指向し、
前記DMDの個々のミラー素子を選択的に作動させ、前記個々の波長成分を前記DMDへ再指向する少なくとも1つの光学素子へ、個々の前記波長成分の1つを選択的に指向し、
少なくとも前記個々の波長成分のいくつかが少なくとも1つの選択された出力ポートに指向されるように、前記個々の波長成分が2回目に再指向された、前記ミラー素子を個別にいくつか選択的に作動させることを特徴とする光線の波長成分を入力ポートから少なくとも1つの出力ポートへ指向する方法。
【請求項18】
前記入力ポートにおいて前記光線を受光し、
前記光線の前記波長成分を空間的に分離し、
前記空間的に分離された波長成分を平行光化し、
前記平行光化された波長成分をDMDに指向し、
前記DMDの個々のミラー素子を選択的に作動させ、個々の波長が独立して指向される少なくとも1つの出力ポートを決め、
少なくとも1つの出力ポートに個別の波長成分を指向する前に、個別の波長成分を前記DMDに逆指向し、1つ以上の個別の波長成分を選択的に減衰することを備えることを特徴とする光線の波長成分を入力ポートから少なくとも1つの出力ポートへ指向する方法。
【請求項19】
少なくとも2つの、独立して動作可能な光スイッチを備え、前記光スイッチは、
第1光線を選択的に切り替えるための前記光スイッチの1つ目に関連する、少なくとも1つの第1光入力および2つの第1光出力、
第2光線を選択的に切り替えるための前記光スイッチの2つ目に関連する、少なくとも1つの第2光入力および1つの第2光出力、
前記第1、第2光入力から前記第1、第2光線を受光し、空間的に前記第1、第2光線を複数の第1、第2波長成分に互いに分離するする分散素子、
複数の第1、第2波長成分を平行光化するための平行性素子、
前記平行光化された複数の第1、第2波長成分を受け取る、作動可能な光学配置であって、前記複数の第1、第2波長成分の前記波長成分の各々が、選択されたいずれか1つの第1光出力および第2光出力に指向される前に、少なくとも2回反射されるデジタルマイクロミラー装置(DMD)を含む作動可能な光学配置と、を備えることを特徴とする 光スイッチング装置。
【請求項20】
前記波長成分を選択的に反射するための個別に作動可能なミラー素子のアレイを有する前記DMDは、前記平行光化された複数の第1、第2波長成分を受け取り、前記作動可能な光学配置は、前記第1、第2光スイッチにそれぞれ関連する第1、第2光学素子をさらに含み、前記第1、第2光学素子は、前記DMDから前記複数の第1、第2波長成分から反射された波長成分をそれぞれ受け取り、そして、前記波長成分を前記DMDの前記ミラー素子のうち選択されたいずれか1つへ再指向するように構成されたことを特徴とする請求項19に記載の光スイッチング装置。
【請求項21】
前記第2光スイッチが光チャンネルモニタとして構成されることを特徴とする請求項19に記載の光スイッチング装置。
【請求項22】
前記光スイッチのうちの他方に関連した、少なくとも2つの第2光出力をさらに備えることを特徴とする請求項19に記載の光スイッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534864(P2010−534864A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518332(P2010−518332)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/070751
【国際公開番号】WO2009/015139
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510021199)ニスティカ,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】