説明

多機能型電子部品

【課題】指標を容易に回転つまみの内側に設けることができる多機能型電子部品を提供する。
【解決手段】上面に指標15を表示した表示部11の下部から軸部31を突出してなる表示部材10と、表示部11の下側に設置され外周が表示部11の外周から半径方向外方に張り出すと共に軸部31に回動自在に軸支される回転つまみ100と、表示部材10の軸部31を載置して取り付ける取付台150と、回転つまみ100と取付台150の間に設置される摺動子110及び摺接パターン179と、取付台150の下側に設置され取付台150を揺動自在に支持する支持部材190と、支持部材190上に設置され取付台150の揺動によって押圧される押圧スイッチ185と、表示部材10に設けた開口13内に上下動自在に設置される押釦つまみ70と、支持部材190上に設置され押釦つまみ70によって押圧される中央スイッチ183と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転つまみを回転することでスイッチオンオフ状態または抵抗値などの電気的出力を変化するとともに、前記回転つまみを揺動させることでスイッチを操作することができ、さらには回転つまみの中央に設置した押釦つまみを押圧することでもスイッチを操作することができる多機能型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用ナビゲーションシステム、コンピュータ、各種携帯機器、各種OA機器、ゲーム機などを操作するデバイスとして、複数の操作スイッチを一体化した多機能型電子部品がある。そしてこの種の多機能型電子部品の中には、例えば特許文献1の図1に示す多機能型電子部品(1)のように、回転式電子部品を操作する回転つまみ(20)の中央に、押圧式電子部品を操作する押釦つまみ(10)を設置し、さらに回転つまみ(20)をその上面から押圧して揺動することで回転つまみ(20)を揺動式電子部品の操作用のつまみとして兼用させた構成のものがある。この多機能型電子部品(1)によれば、回転式電子部品の機能と押圧式電子部品の機能と揺動式電子部品の機能とを兼ね備えた多機能型電子部品をコンパクトに構成することができる。
【0003】
ところで上記構造の多機能型電子部品(1)において、たとえば回転つまみ(20)をその上面から押圧して揺動させる際にどの部分を押圧して揺動すれば所望の操作が行えるかを示す指標は、回転つまみ(20)を露出する開口を設けた外装ケースの前記開口周囲の表面に設けられていた。なお回転つまみ(20)は回転するので、前記指標を回転つまみ(20)の上面に設けることはできない。
【0004】
しかしながら、外装ケースに指標を設けることは、実質的に多機能型電子部品(1)の外径の大型化を意味し、また電子機器によっては、外装ケースの装飾や使い勝手の点から前記指標を回転つまみ(20)の内側に設けることが望まれていた。すなわちたとえば外装ケースに対する多機能型電子部品(1)の回転方向の設置角度を変更しただけでも外装ケースに設けた指標の位置、すなわち外装ケースの装飾を変更しなければならないが、多機能型電子部品(1)内に指標を設けておけば、外装ケースの装飾は全く変更しなくてもよいなどである。
【0005】
また上記構造の多機能型電子部品(1)においては、取付台(90)上に、摺動型物(60)とケース(40)と回転つまみ(20)とを積層するように設置しているので多機能型電子部品(1)の厚みが厚くなってしまう。
【特許文献1】特開2007−335191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、指標を容易に回転つまみの内側に設けることができる多機能型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、指標を表示した表示部の下部から軸部を突出してなる表示部材と、前記表示部材の表示部の下側に設置され外周が前記表示部の外周から半径方向外方に張り出すと共に前記軸部に回動自在に軸支される回転つまみと、前記表示部材の軸部を載置して取り付ける取付台と、前記回転つまみと取付台の間に設置され前記回転つまみの回動によって電気的出力を変化する電気的機能部と、前記取付台の下側に設置されてこの取付台を揺動自在に支持する支持部材と、前記支持部材上に設置され前記取付台の揺動によって押圧される押圧スイッチと、を具備することを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多機能型電子部品において、前記表示部材の表示部と軸部とを貫通して設けられる開口内に上下動自在に押釦つまみを設置するとともに、押釦つまみの下面から突出する押圧部を前記取付台に設けた押圧部挿通孔に上下動自在に貫通させ、さらにこの押釦つまみの押圧部の下端を前記支持部材上に設置した中央スイッチ上に設置したことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の多機能型電子部品において、前記表示部材の表示部は、略円板状であってその下面と前記回転つまみとの間にクリック機構を設置し、このクリック機構は、前記表示部材の表示部の下面に取り付けられるクリック板と、前記回転つまみの上面に形成され前記クリック板に設けた弾接部を弾接する凹凸状のクリック係合部とによって構成され、さらに前記表示部の下面には、クリック板の弾接部が前記クリック係合部の凸の部分に乗り上げた際に乗り上げた弾接部を挿入させる弾接部挿入部を設けたことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、回転つまみの外周より内側に設置される回転しない表示部材に指標を設けたので、回転つまみの内側に容易に指標を設けることができる。これによって指標を含めた多機能型電子部品全体の外径の小型化を図ることができ、また回転つまみの周囲を囲む外装ケースの装飾を、多機能型電子部品の指標を考慮することなく自由に行うことができ、その自由度が増す。
また取付台の上部には主として回転つまみと表示部材の表示部とが積層するように設置されるだけなので、厚みの薄型化も図れる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1において回転しない表示部材の軸部に回動自在に回転つまみを軸支し、請求項2において回転しない表示部材に設けた開口内に上下動自在に押釦つまみを設置しているので、回転つまみと押釦つまみの両者がそれぞれ独立して回転しない表示部材に取り付けられることとなる。したがって、回転つまみの回転と押釦つまみの上下動とがいずれも干渉せず、いずれもスムーズに行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、表示部材の表示部の下面にクリック板を取り付けるとともに、回転つまみの上面にクリック係合部を設け、さらに表示部の下面に弾接部挿入部を設けてクリック機構を構成したので、多機能型電子部品の薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる多機能型電子部品1の概略側断面図(図3のA−A断面図)、図2は多機能型電子部品1の斜視図、図3は多機能型電子部品1の平面図、図4は多機能型電子部品1を上側から見た分解斜視図、図5は多機能型電子部品1を下側から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とは取付台150から見て表示部材10の方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0014】
これらの図に示すように多機能型電子部品1は、支持部材190上に、第2回路基板部175と、取付台150と、第1回路基板部171と、摺動子110を取り付けた回転つまみ100と、押釦つまみ70と、クリック板40を取り付けた表示部材10と、を設置して構成されている。
【0015】
表示部材10は合成樹脂(この実施形態ではABS樹脂を用いているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂を用いてもよい)の成型品であり、略円板状の表示部11の下面中央に下方向に向かって突出する軸部31を設け、また表示部11の中央に表示部11と軸部31を上下に貫通する円形の開口13を設けて構成されている。表示部11の表面(上面)には、所望の指標15が設けられている。この実施形態では指標15は下記する4つの押圧スイッチ185の上部の位置にそれぞれ設けられており、各種操作(回転つまみ100を揺動した際の各種操作)の内容を示している。指標15は印刷によって形成してもよいし、表示部11表面に凹凸等を設けて形成してもよい。表示部11下面の外周近傍部分には一対の円弧状凹部からなる弾接部挿入部17が設けられている。両弾接部挿入部17の両端の間の位置には下方向に向かって突出する小突起状のクリック板取付部19(図5では一方のみ示している)が設けられている。軸部31は円筒状であり、その下辺には下方向に向かって突出する小突起状の取付台取付部33が複数個(4つ)設けられ、また軸部31の180°対向する位置には軸部31を上下方向に切り欠いてなるつまみガイド溝35が設けられている。
【0016】
クリック板40は弾性金属板(この実施形態ではステンレス板)をリング状に形成した基部41と、基部41の外周を囲む位置に配置される一対の半円弧状のアーム部43とを一体に形成して構成されている。基部41の中央に形成されている円形の開口部54は、その内径が前記表示部材10の軸部31の外径よりも若干大きい寸法に形成されている。両アーム部43は、それらの根元部分が一対の連結部45によって基部41の外周に連結されており、これら連結部45の部分にはそれぞれ前記表示部材10のクリック板取付部19を挿入する小孔からなる係止部47が設けられている。両アーム部43のそれぞれ中央位置には下方向に突出するように湾曲する弾接部49が設けられている。
【0017】
押釦つまみ70は合成樹脂(この実施形態ではABS樹脂であるが、他の各種熱可塑性の合成樹脂であってもよい)の成型品であり、略円板状の本体部71と、本体部71の下面中央から下方向に向かって突出する柱状の押圧部73とを具備し、本体部71の上面を指などで押圧操作する操作部75とし、本体部71の外周下部に薄板リング状に突出するつば部77を設けて構成されている。押圧部73の外周側面には上下方向に沿って延びる細い柱状の回り止め79が設けられている。つば部77の180°対向する位置からは半径方向外方に向かって一対のガイド突起81が突出している。両ガイド突起81は前記表示部材10のつまみガイド溝35に挿入される寸法に形成されている。
【0018】
回転つまみ100は合成樹脂(この実施形態ではポリカーボネート(PC)樹脂であるが、他の各種熱可塑性の合成樹脂であってもよい)の成型品であり、略円板状に成形され、その上面に円形凹状の表示部材収納部101を設け、その中央に円形の貫通孔からなる開口103を設け、その下面を摺動子取付面105として構成されている。表示部材収納部101の内径寸法は前記表示部材10の表示部11の外径寸法よりも若干大きく形成され、したがって回転つまみ100の外径寸法は表示部11の外径寸法よりも大きくなっている。表示部材収納部101の底面の外周近傍部分には凹凸をリング状に繰り返してなるクリック係合部107が設けられている。開口103の内径寸法は前記表示部材10の軸部31の外径寸法とほぼ同一であり、回動自在にぴったり軸部31に挿入される寸法に形成されている。摺動子取付面105には3本の下方向に向かって突出する小突起状の摺動子取付部109が突設されている。なお回転つまみ100の表示部材収納部101よりも外方のリング状の部分は、つまみ操作部102である。
【0019】
摺動子110は弾性金属板製であり、この実施形態ではリン青銅板を用いているが、他の各種材質のものを用いてもよい。摺動子110は回転つまみ100よりも小さな外径寸法を有する略円形の平板状でリング状に形成され、中央に開口部111を設けるとともに、等間隔(120°間隔)の3か所の位置に、前記回転つまみ100の摺動子取付部109を挿入する貫通孔からなる取付固定部113を設け、また各取付固定部113の側部から摺接ブラシ115を摺動子110の円形の外形に沿うように設置して構成されている。各組の摺接ブラシ115の先端近傍部分は、接点部117となっている。
【0020】
取付台150は合成樹脂(この実施形態ではPC樹脂であるが、他の各種熱可塑性の合成樹脂であってもよい)の成型品であり、略円板状に成形されており、回転つまみ100とほぼ同一の外径寸法を有し、中央には押釦つまみ70の押圧部73を挿通して軸支する略円形の押圧部挿通孔151が設けられ、上面の押圧部挿通孔151の周囲には上方向に向かって突出する筒状の突起からなる軸部153が設けられている。軸部153の側面には、前記押釦つまみ70の回り止め79に係合する軸方向(上下方向)に延びるスリットおよび溝からなる回り止め係合部155が形成されている。一方前記表示部材10の各取付台取付部33に対向する複数の位置(4か所)には、貫通孔からなる取付部157が設けられ、また外周の所定位置(本実施形態では180°対向する位置)には半径方向外方に向かって舌片状に突出する係合片159が設けられ、また前記一対の係合片159の間の外周位置には半径方向外方に向かって舌片状に突出する3つの係合補助部161が設けられている。取付台150の下面には円周上に等間隔に4つの下方向に向かって少し突出する柱状の押圧部163が設けられている。
【0021】
第1回路基板部171と第2回路基板部175は1枚のフレキシブル回路基板170に形成されている。すなわちフレキシブル回路基板170は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを設けて構成されており、この実施形態では合成樹脂フイルムとして熱可塑性のポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムを用いているが、他の各種熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の合成樹脂フイルムを用いて構成してもよい。フレキシブル回路基板170は、摺接パターン179が形成された第1回路基板部171と、中央スイッチ183と押圧スイッチ185とが形成された第2回路基板部175とを、帯状の連結部173によって連結して構成されている。
【0022】
第1回路基板部171は略円形の外形を有し、中央に取付台150の軸部153を挿通する円形の開口部177を設け、またその下面の開口部177の周囲に所望の摺接パターン179を設けて構成されている。摺接パターン179は銀などの導電ペーストを印刷するなどして形成されており、図では詳細な記載を省略しているが、この実施形態ではスイッチパターンが形成されている。また開口部177の周囲の前記表示部材10の各取付台取付部33に対向する4か所の位置には貫通孔からなる挿通部181が設けられている。
【0023】
第2回路基板部175は第1回路基板部171よりも若干大きい外径寸法の略八角形の外形を有し、その上面(前記摺接パターン179を設けた反対側の面)の中央に中央スイッチ183を設置し、中央スイッチ183の周囲の複数の位置(この実施形態では同一円周状の等間隔(90°間隔)の4か所の位置)に押圧スイッチ185を設置して構成されている。中央スイッチ183と押圧スイッチ185は何れも同一構造であり、何れについても第2回路基板部175上に形成した図示しない一対のスイッチ接点上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)183a,185aを取り付けて構成されており、反転板183a,185aを押圧してこれを反転することでスイッチがオンする構造になっている。第2回路基板部175の外周には帯状の引出部188が連結されており、その先端のコネクタ部189上には前記摺接パターン179及び中央スイッチ183及び押圧スイッチ185からの出力を取り出すコネクタ用接点パターン186が設けられている。
【0024】
支持部材190は硬質板(この実施形態では金属板(たとえばステンレス板))を略矩形状に形成して構成されており、前記取付台150の一対の係合片159に対応する外周の複数位置(この実施形態では180°で対向する2か所)には、外周辺から上方に向かって折り曲げられてほぼ垂直に立設してなる舌片状の係合片取付部191が設けられている。各係合片取付部191には、係合片159の先端部を挿入させて係合片159を取り付けるための矩形状の開口からなる係合片挿入部193が形成されている。
【0025】
次に多機能型電子部品1の組立方法を説明する。まず予め回転つまみ100の摺動子取付面105に摺動子110を設置し、その際回転つまみ100の摺動子取付部109を摺動子110の取付固定部113に挿通し、その先端を熱カシメすることで回転つまみ100に摺動子110を取り付ける。また表示部材10の下面にクリック板40を設置し、その際表示部材10の軸部31をクリック板40の開口部54に挿入し、同時に表示部材10のクリック板取付部19をクリック板40の係止部47に挿入してクリック板取付部19の先端を熱カシメし、これによって表示部材10にクリック板40を取り付ける。
【0026】
次に表示部材10の開口13にその下側から押釦つまみ70の本体部71を挿入し、操作部75を表示部材10の上面側に露出させた状態に設置する。このとき押釦つまみ70の一対のガイド突起81は表示部材10の一対のガイド溝35に上下動自在に挿入される。次にクリック板40および押釦つまみ70を設置した表示部材10の下側に、摺動子110を取り付けた回転つまみ100を設置し、その際回転つまみ100の表示部材収納部101内に表示部材10の表示部11を収納し、同時に表示部材10の軸部31を回転つまみ100の開口103に回動自在に挿入する。
【0027】
次にフレキシブル回路基板170の第1回路基板部171をその摺接パターン179を設けた側の面を上に向けた状態で、取付台150の上面に載置し、その際取付台150の軸部153を第1回路基板部171の開口部177に挿入する。そしてこの取付台150の上に前記表示部材10などを装着した回転つまみ100を設置し、その際回転つまみ100の開口103の下面に露出する表示部材10の軸部31の下端を第1回路基板部171上に当接し、同時に軸部31から突出する各取付台取付部33を第1回路基板部171の各挿通部181と取付台150の各取付部157に挿入し、各取付台取付部33の先端を取付台150の下面で熱カシメし、上記各部材を一体化する。このとき押釦つまみ70の押圧部73は取付台150の押圧部挿通孔151に挿入され、その先端は取付台150の下面側に露出する。これにより取付台150と第1回路基板部171と表示部材10とが一体に固定され、回転つまみ100は軸部31に回動自在に軸支され、クリック板40の弾接部49は回転つまみ100のクリック係合部107に弾接し、摺動子110の接点部117は第1回路基板部171上の摺接パターン179に弾接した状態になる。
【0028】
次にフレキシブル回路基板170を連結部173の部分で折り返して第2回路基板部175の押圧スイッチ185などを設置した側の面を上に向けた状態で取付台150の下側に配置し、さらに第2回路基板部175の下面側に支持部材190を重ねて設置する。その際、取付台150の一対の係合片159の先端部分を支持部材190の一対の係合片挿入部193内に両係合片取付部191を広げながら挿入して取り付ける。これにより取付台150の各押圧部163が第2回路基板部175上の各押圧スイッチ185上に載置され、この状態で各係合片159が各係合片挿入部193の内周上辺に当接することで、取付台150が支持部材190によって揺動自在に支持された状態になる。またこのとき押釦つまみ70の押圧部73の下端は中央スイッチ183上に載置される。以上により多機能型電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0029】
以上のようにして組み立てられた多機能型電子部品1は、図1に示すように、上面に指標15を表示した表示部11の下部から軸部31を突出してなる表示部材10と、表示部材10の表示部11の下側に設置され外周が表示部11の外周から半径方向外方に張り出すと共に軸部31に回動自在に軸支される回転つまみ100と、表示部材10の軸部31を載置して取り付ける取付台150と、回転つまみ100と取付台150の間に設置され回転つまみ100の回動によって電気的出力を変化する摺動子110および摺接パターン179からなる電気的機能部と、取付台150の下側に設置されてこの取付台150を揺動自在に支持する支持部材190と、支持部材190上に設置され取付台150の揺動によって押圧される押圧スイッチ185と、を具備し、さらに表示部材10の表示部11と軸部31とを貫通して設けられる開口13内に上下動自在に押釦つまみ70を設置するとともに、押釦つまみ70の下面から突出する押圧部73を取付台150に設けた押圧部挿通孔151に上下動自在に貫通させ、また押釦つまみ70の押圧部73の下端を支持部材190上に設置した中央スイッチ183上に設置して構成されている。さらに表示部材10の表示部11は略円板状であってその下面と回転つまみ100との間に、表示部材10の表示部11の下面に取り付けられるクリック板40と、回転つまみ100の上面に形成されクリック板40に設けた弾接部49を弾接する凹凸状のクリック係合部107とによって構成されるクリック機構を設置している。
【0030】
またこの多機能型電子部品1は、図1に点線で示すように、外装ケース200の内部に設置され、回転つまみ100および押釦つまみ70の部分は外装ケース200に設けた開口201内に露出される。
【0031】
以上のように構成された多機能型電子部品1において、回転つまみ100を回転すると、回転つまみ100に取り付けた摺動子110が回転つまみ100と一体に回転し、その接点部117が摺接パターン179上を摺動することで摺接パターン179からの電気的出力が変化する。同時にクリック板40の弾接部49が回転する回転つまみ100のクリック係合部107の凹凸を乗り越えてゆき、クリック感覚が生じる。ところでクリック板40の弾接部49がクリック係合部107の凸の部分に乗り上げる際に、乗り上げた弾接部49およびその両側のアーム部43は表示部11の下面に設けた弾接部挿入部17内に挿入される。言い換えれば表示部11の下面に弾接部挿入部17を設けその中に上昇する弾接部49を収納する構成としたので、別途弾接部49が上下動するスペースを表示部11とクリック板40の間に設ける必要がなく(表示部11の下面とクリック板40の基部41との間にスペースを設ける必要がなく)、多機能型電子部品1の薄型化を図ることができる。
【0032】
一方押釦つまみ70の操作部75を押圧すれば、押釦つまみ70が下降してその押圧部73が中央スイッチ183の反転板183aを押圧して反転し、中央スイッチ183がオンする。押釦つまみ70への押圧を解除すれば反転板183aの弾性復帰力によって押釦つまみ70は元の位置に戻り、中央スイッチ183はオフする。
【0033】
また回転つまみ100のつまみ操作部102の前記各指標15の何れかに対応する上面部分(その指標15の半径方向外側の上面部分)を下方向に向けて押圧すれば、回転つまみ100や表示部材10や押釦つまみ70など、取付台150上に設置されている構成部品全体が取付台150と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部163が対向する押圧スイッチ185の反転板185aを押圧して反転し、押圧スイッチ185がオンする。回転つまみ100への押圧を解除すれば、反転している反転板185aの弾性復帰力によって回転つまみ100および取付台150などの揺動していた全構成部品が一体に元の位置に自動復帰し、押圧スイッチ185はオフする。
【0034】
そしてこの多機能型電子部品1によれば、上述のように回転つまみ100の外周より内側に設置される回転しない表示部材10に指標15を設けたので、回転つまみ100の内側に容易に指標15を設けることができる。これによって指標15を含めた多機能型電子部品1全体の外径の小型化を図ることができ、また回転つまみ100の周囲を囲む外装ケース200の装飾を、多機能型電子部品1の指標15を考慮することなく自由に行うことができ、その自由度が増す。また取付台150の上部には主として回転つまみ100と表示部材10の表示部11とが積層するように設置されるだけなので、前記背景技術の欄で示した特許文献1のように取付台(90)上に、摺動型物(60)とケース(40)と回転つまみ(20)とを積層するように設置する場合に比べて、厚みの薄型化も図れる。
【0035】
また図3に示すように3つの係合補助部161は、何れも回転つまみ100の外周から半径方向外方に向けて突出しており、その上に外装ケース200を被せたときはこれら3つの係合補助部161は外装ケース200の下面の開口201よりも外方の位置に位置する。そして回転つまみ100を揺動させ、その揺動寸法が大きくなる場合、係合補助部161の内の上昇する係合補助部161が外装ケース200の下面に当接し、その位置よりも回転つまみ100が揺動しないようになる。これによって揺動量が規制され、また前記2か所のみの係合片159の係合片挿入部193への係合が外れることを確実に防止している。
【0036】
また上記多機能型電子部品1によれば、回転しない表示部材10の軸部31に回動自在に回転つまみ100を軸支し、回転しない表示部材10に設けた開口13内に上下動自在に押釦つまみ70を設置しているので、回転つまみ100と押釦つまみ70の両者がそれぞれ独立して回転しない表示部材10に取り付けられることとなる。したがって、回転つまみ100の回転と押釦つまみ70の上下動とがいずれも干渉せず、いずれもスムーズに行うことができる。
【0037】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば表示部材10の表示部11に設ける指標15の形状や位置や数、押圧スイッチ185の設置位置や数などは種々の変更が可能である。また指標15は表示部材10を透明にするなどして表示部11の下面または内部に設けてもよい。また上記実施形態では摺動子110と摺接パターン179とによって電気的機能部を構成したが、電気的機能部は回転つまみ100の回転によってその電気的出力が変化する構成であれば他の各種構成であってもよい。また場合によっては中央の押釦つまみ70と押釦つまみ70によって押圧操作される中央スイッチ183、すなわち押圧式電子部品は省略してもよい。また上記実施形態では指標15を設けた位置と回転つまみ100を押圧して揺動させる位置とを一致させているが、必ずしも一致させなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】多機能型電子部品1の概略側断面図である。
【図2】多機能型電子部品1の斜視図である。
【図3】多機能型電子部品1の平面図である。
【図4】多機能型電子部品1を上側から見た分解斜視図である。
【図5】多機能型電子部品1を下側から見た分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 多機能型電子部品
10 表示部材
11 表示部
13 開口
15 指標
17 弾接部挿入部(クリック機構)
31 軸部
40 クリック板(クリック機構)
49 弾接部
70 押釦つまみ
73 押圧部
100 回転つまみ
107 クリック係合部(クリック機構)
110 摺動子(電気的機能部)
150 取付台
151 押圧部挿通孔
170 フレキシブル回路基板
171 第1回路基板部
175 第2回路基板部
179 摺接パターン(電気的機能部)
183 中央スイッチ
185 押圧スイッチ
190 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指標を表示した表示部の下部から軸部を突出してなる表示部材と、
前記表示部材の表示部の下側に設置され外周が前記表示部の外周から半径方向外方に張り出すと共に前記軸部に回動自在に軸支される回転つまみと、
前記表示部材の軸部を載置して取り付ける取付台と、
前記回転つまみと取付台の間に設置され前記回転つまみの回動によって電気的出力を変化する電気的機能部と、
前記取付台の下側に設置されてこの取付台を揺動自在に支持する支持部材と、
前記支持部材上に設置され前記取付台の揺動によって押圧される押圧スイッチと、を具備することを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能型電子部品において、
前記表示部材の表示部と軸部とを貫通して設けられる開口内に上下動自在に押釦つまみを設置するとともに、押釦つまみの下面から突出する押圧部を前記取付台に設けた押圧部挿通孔に上下動自在に貫通させ、
さらにこの押釦つまみの押圧部の下端を前記支持部材上に設置した中央スイッチ上に設置したことを特徴とする多機能型電子部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多機能型電子部品において、
前記表示部材の表示部は、略円板状であってその下面と前記回転つまみとの間にクリック機構を設置し、
このクリック機構は、前記表示部材の表示部の下面に取り付けられるクリック板と、前記回転つまみの上面に形成され前記クリック板に設けた弾接部を弾接する凹凸状のクリック係合部とによって構成され、
さらに前記表示部の下面には、クリック板の弾接部が前記クリック係合部の凸の部分に乗り上げた際に乗り上げた弾接部を挿入させる弾接部挿入部を設けたことを特徴とする多機能型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−140689(P2010−140689A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313958(P2008−313958)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】